説明

ハードコートフィルムおよびその製造方法

【課題】ロール・ツー・ロールでの加工によってハードコート層や低屈折率層を形成したフィルム基材を巻取る際に生じるブロッキングや巻ズレといった巻異常を防止し、コスト面、製造面からの負荷が小さい巻異常の防止手段を提供する。
【解決手段】フィルム基材1の少なくとも片面に、ハードコート層2を備えるハードコートフィルム4が、ハードコート層2の幅方向の両端に、1または2以上の帯状の端部ハードコート層3を備え、端部ハードコート層3の膜厚が、ハードコート層2の膜厚より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール・ツー・ロールで搬送したフィルム基材にハードコート層を形成したハードコートフィルムおよびその製造方法に関する。具体的には、ロール・ツー・ロールで搬送したフィルム基材にハードコート層を形成した後、フィルム基材を巻取る際に発生するブロッキングや巻ズレといった巻異常を解消することができるハードコートフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの普及が急速に進み、薄型フィルムでの高硬度・低反射率・高防汚性といった機能を有する光学フィルムが注目されている。液晶ディスプレイ用の偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルムは、様々な機能を持たせるために樹脂層が形成されている。機能層には、例えば帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、反射を抑えるための反射防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層といったものがある。特に、ハードコート層については、ディプレイ用途では必須になっており、ハードコート層単層で用いるだけでなく反射防止層の下層の役割も果たしており重要な技術となっている。
【0003】
そのような中、ディスプレイの大型化にともない、光学フィルムの基材として多く使用されているトリアセチルセルロースやポリエチレンテレフタレートも、広幅化・長尺化が進んでいる。製造面では、上記光学フィルムの殆どがロール・ツー・ロールでの加工が行われ、ハードコート層や低屈折率層を形成した後に巻取る際、ブロッキングや巻ズレといった巻異常が発生することが少なくない。ブロッキングは、ロール内でフィルム基材が接触することで様々な箇所で発生する。そのブロッキング部が剥離する際、フィルム基材が微小な変形を伴うため、ディスプレイ用途としては使用できない。また、巻ズレは、フィルム基材巻取り時に、微小な巻取りテンション変動により発生し、巻替えなどの対応を図らざるを得ない。そこで、ブロッキング対策や巻ズレといった巻異常防止の技術が、現在期待されている。
【0004】
ブロッキング対策では、耐ブロッキング性の高いポリエチレンテレフタレートなどをラミネーションすることや、基材ナーリング部を加圧し目標の高さを作り出す技術や、成膜後にナーリング部に積層し高さを作り対応する技術(例えば、特許文献1、2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−282529号公報
【特許文献2】特開2005−219272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のようなブロッキング対策は、耐ブロッキング性の高いフィルムをラミネーションすることで基材のブロッキングを防止しているが、コスト面、製造面からの負荷が大きい。また、巻ズレ対策としては、巻取り時に当て板などで巻ズレを防止せざるを得ない状況であり、クリーン環境が必要なディスプレイ用ハードコートフィルムなどの製造では、当て板からの発塵対策が重要となり、効果の高い巻ズレ対策は実施されていないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、ロール・ツー・ロールでの加工によってハードコート層や低屈折率層を形成したフィルム基材を巻取る際に生じるブロッキングや巻ズレといった巻異常を防止し、コスト面、製造面からの負荷が小さい巻異常の防止手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、フィルム基材の少なくとも片面に、ハードコート層を備えるハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層の幅方向の両端に、1または2以上の帯状の端部ハードコート層を備え、前記端部ハードコート層の膜厚が、前記ハードコート層の膜厚より大きいことを特徴とするハードコートフィルムである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記ハードコート層が、少なくとも電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層形成用組成物により形成されることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルムである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記ハードコート層が、多官能(メタ)アクリルモノマーと、光ラジカル重合開始剤と、重合性基を有する含フッ素化合物とを含むハードコート層形成用組成物により形成されることを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルムである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記ハードコート層の膜厚が、2μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコートフィルムである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記ハードコート層の膜厚が、前記端部ハードコート層の膜厚より小さく、前記ハードコート層の膜厚と前記端部ハードコート層の膜厚との差が、3μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハードコートフィルムである。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のハードコートフィルムを用いた偏向更板用保護フィルムである。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のハードコートフィルムを用いたディスプレイ用全面板用フィルムである。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、フィルム基材の少なくとも片面に、ハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法において、幅方向に塗布量を調整することができるドクターブレードを用いた塗布方法により、前記フィルム基材の片面に、前記ハードコート層と、前記ハードコート層の幅方向の両端に位置し、膜厚が前記ハードコート層の膜厚より大きい1または2以上の帯状の端部ハードコート層とを同時に形成する工程を有することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハードコートフィルムをロール・ツー・ロールで作製する際、フィルム端部を高くすることで、ロール内のフィルムを支柱し、ブロッキングを防止することができるとともに、端部でブロッキングを発生させることで、フィルムの滑り性を低下させることで巻ズレ防止を図ることができるため、ブロッキングや巻ズレといった巻異常の不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明におけるハードコートフィルムの一実施形態の平面図を模式的に表した図である。
【図2】本発明におけるハードコートフィルムの一実施形態の断面図を模式的に表した図である。
【図3】本発明におけるハードコート層および端部ハードコート層を形成ために用いるドクターブレードおよびコーティングロールを模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態は、以下に記載する実施の形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も、本発明の実施の形態の範囲に含まれうるものである。
【0019】
図1は、本発明のハードコートフィルムの一実施形態の平面図である。また、図2は、本発明のハードコートフィルムの一実施形態の断面図である。本発明のハードコートフィルム4は、フィルム基材1の少なくとも片面に、ハードコート層2を備える。また、ハードコート層の幅方向(X方向)の両端に、1または2以上の帯状の端部ハードコート層3を備える。
【0020】
フィルム基材1は、公知の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらに耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより、機能を付加させたものも使用できる。また、フィルム基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでなく、複数の層を積層されたものであってもよい。フィルム基材1の厚みは、限定するものではないが、用途に応じて、6μm以上200μm以下が使用しやすい。
【0021】
本発明のハードコート層2は、表面硬度を向上させるための層であり、各種樹脂を含むハードコート層形成用組成物により形成される。ハードコート層形成用組成物に含まれる樹脂としては、公知の樹脂を用いることができるが、表面硬度を向上させることを考慮すると、電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。
【0022】
電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート等が挙げられる。また、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。上記のうち、表面硬度を向上させることを考慮すると、多官能(メタ)アクリルモノマーを用いることが好ましい。
【0023】
ここで、多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物が好ましい。その他には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものや、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどが挙げられる。また、メラミンやイソシアヌル酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いることができるが、本発明では、特にウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーを用いると、ハードコート層2および端部ハードコート層3の硬度ならびに可撓性を著しく向上させることができる。
【0024】
なお、本発明において「(メタ)アクリルモノマー」とは、「アクリルモノマー」と「メタクリルモノマー」の両方を示している。例えば、「多官能(メタ)アクリルモノマー」は「多官能アクリルモノマー」と「多官能メタクリルモノマー」の両方を示している。また、本発明の多官能(メタ)アクリルモノマーは、オリゴマーであっても構わない。
【0025】
市販されている多官能アクリル系モノマーとしては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、ナガセケムテックス株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村化学工業株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成株式会社;(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
【0026】
また、他の電離放射線硬化性樹脂としては、重合性基を有する含フッ素化合物が挙げられる。ハードコート層形成用組成物が重合性基を有する含フッ素化合物を含むことにより、そのハードコート層形成用組成物により形成されたハードコート層表面に防汚特性を付与することができる。重合性基を有しないフッ素系添加剤を用いる場合、添加剤がハードコート層表面に浮いて存在する状態となるため、布等で拭くことでハードコート表面から取り去られてしまうこととなる。このことから、一度布等で表面を拭取ってしまうと、防汚性が無くなるという欠点を有している。そこで、防汚特性を有するフッ素化合物に重合性基を持たせることで、ハードコート層形成時にフッ素系添加剤も合せて重合することとなり、布等で表面を拭いても防汚特性が維持されるという利点を有している。
【0027】
重合性基を有する含フッ素化合物として、さらに好ましくは、この重合性基が(メタ)アクリレート基を有する化合物である。これは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと共重合することも可能となり、電離放射線によるラジカル重合によって高硬度化が図れるためである。
【0028】
このような重合性基を有する含フッ素化合物としては、オプツールDAC(ダイキン工業(株)製)、SUA1900L10、SUA1900L6(新中村化学(株)製)、UT3971(日本合成(株)製)、ディフェンサTF3001、ディフェンサTF3000、ディフェンサTF3028(大日本インキ(株)製)、ライトプロコートAFC3000(共栄社化学(株)製)、KNS5300(信越シリコーン(株)製)、UVHC1105、UVHC8550(GE東芝シリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0029】
重合性基を有する含フッ素化合物の使用量は、ハードコート層形成用組成物の多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、0.01重量%以上10重量%以下が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は、十分な防汚特性を発現せず、表面エネルギーも20mN/mよりも大きい値を示し、10重量%を超える場合は、重合性モノマー、溶剤との相溶性が良くないために、塗液の白濁化、沈殿発生が起こってしまい、塗液・ハードコート層の欠陥発生などの不都合を招く場合がある。
【0030】
ハードコート層形成用組成物は、上記電離放射線硬化型樹脂の重合反応を開始するための光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、電離放射線を照射することで、ラジカルを発生し、電離放射線硬化型樹脂の重合反応を開始する。光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0031】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成用組成物の上記電離放射線硬化型樹脂に対して、0.01重量%以上10重量%以下が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は電離放射線を照射した際に十分な硬化反応が進行せず、10重量%を超える場合はハードコート層下部まで十分に電離放射線が届かなくなってしまう。
【0032】
ハードコート層形成用組成物は、必要に応じて、上述した各成分の他にも、電離放射線による反応を損なわない範囲内で、ハードコート層の特性を改良するための改質剤や、ハードコートフィルムの製造時の熱重合や、ハードコート層形成用組成物の貯蔵時の暗反応を防止するための熱重合防止剤を含有してもよい。
【0033】
改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これら改質剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物の固形分100重量%中、0.01重量%以上5重量%以下が好ましい。
【0034】
熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどが挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物の固形分100重量%中、0.005重量%以上0.05重量%以下が好ましい。
【0035】
また、ハードコート層形成用組成物は、ハードコート層に防眩性の機能を付与するために、各種粒子を含んでもよい。粒子としては、例えば、アクリル粒子、アクリルスチレン粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子、メラミン粒子といった有機粒子や、シリカ粒子タルク、各種アルミノケイ酸塩、カオリンクレー、MgAlハイドロタルサイト、などの無機粒子から適宜選択される。
【0036】
上記粒子の平均粒子経としては、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、このときのハードコート層2の平均膜厚は、2μm以上20μm以下であることが好ましい。粒子の平均粒子径が0.5μmに満たない場合、ハードコート層2表面に凹凸を形成することが困難となる。一方、粒子の平均粒子径が10μmを超えるような場合、得られるハードコートフィルム4の質感が粗くなってしまい、高精細なディスプレイ表面に適さないハードコートフィルム4となってしまうことがある。また、ハードコート層2の平均膜厚が2μmに満たない場合、ディスプレイ表面に設けられるだけの十分な耐擦傷性を得ることができなくなってしまうことがある。一方、ハードコート層2の平均膜厚が20μmを超えるような場合、製造されるハードコートフィルム4のカールの度合いが大きくなってしまい、取り扱いが困難となることがある。
【0037】
また、ハードコート層形成用組成物は、フィルム基材1の表面に塗布するために、溶剤を含んでもよい。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール・ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン・オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、水等が挙げられ、1種、または、2種以上の混合物として用いてよいが、これらに限定されるものではない。また、溶媒を用いる場合、フィルム基材1の表面に形成された塗膜から溶媒を除去するために、公知の方法により乾燥を行う。
【0038】
ハードコート層2は、単独の層としてハードコートフィルムを構成していてもよく、ハードコート層2の表面に、反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、防眩性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能等を有する機能層を設けてもよい。
【0039】
本発明の端部ハードコート層3は、ハードコートフィルム4をロール・ツー・ロールで作製する際、ハードコートフィルム4の端部を高くすることで、ロール内のハードコートフィルム4を支柱してブロッキングを防止する機能を有する層である。また、端部ハードコート層3は、端部でブロッキングを発生させることで、ハードコートフィルム4の滑り性を低下させて巻ズレを防止する機能を有するである。
【0040】
端部ハードコート層3は、ハードコート層2と同様、各種樹脂を含むハードコート層形成用組成物により形成される。端部ハードコート層3を形成するハードコート層形成用組成物に含まれる成分としては、上述したハードコート層2を形成するハードコート層形成用組成物に含まれる成分を用いることができる。ただし、端部ハードコート層3は、ロール内のハードコートフィルム4を支柱してブロッキングを防止し、ハードコートフィルム4の滑り性を低下させて巻ズレを防止する効果を達成することができれば、ハードコート層2を形成するハードコート層形成用組成物と異なる成分を有するハードコート層形成用組成物を用いて形成してもよい。
【0041】
特に、端部ハードコート層3は、後述するように、ハードコート層2と同時に形成することが好ましいため、ハードコート層2および端部ハードコート層3それぞれのハードコート層形成用組成物を調製する工程を短縮する観点から、ハードコート層2を形成するハードコート層形成用組成物に含まれる成分と同一の成分を用いることがより好ましい。
【0042】
ハードコート層2および端部ハードコート層3は、それぞれのハードコート層形成用組成物をフィルム基材1の表面に公知の塗布方法で塗布することで形成される。塗布方法としては、ウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法)等が挙げられる。
【0043】
ハードコート層2および端部ハードコート層3は、フィルム基材1の表面に同時に形成されることが好ましい。ハードコート層2および端部ハードコート層3がフィルム基材1の表面に同時に形成されることによって、搬送され、巻き取られたロール内のハードコートフィルム4を、端部ハードコート層3が支柱してブロッキングを防止することができる。また、端部ハードコート層3が端部でブロッキングを発生させることによって、ハードコートフィルム4の滑り性を低下させて巻ズレを防止することができる。
【0044】
ハードコート層2および端部ハードコート層3をフィルム基材1の表面に同時に形成する方法としては、幅方向に塗布量を調整することができるドクターブレードを用いた塗布方法を用いることが好ましい。
【0045】
ドクターブレードを用いた塗布方法としては、上記塗布方法のうち、グラビアロールコーティング法、リバースコーティング法、マイクログラビアコーティング法、などが挙げられるが、端部の塗布が容易に制御できる、マイクログラビアコーティング法が特に好ましい。
【0046】
ハードコート層2は、塗液であるハードコート層形成用組成物をコーティングロールに供給し、ドクターブレードによりコーティングロールに供給された余剰の塗液を掻き落とし、フィルム基材1への塗布量を調整することによって形成することができるが、幅方向の端部の塗布量をドクターブレードによって調整することによって、ハードコート層2とともに端部ハードコート層3も同時に形成することができる。具体的には、フィルム基材1への端部への塗布量が、ハードコート層2を形成するための塗布量よりも多くなるように、ドクターブレードの端部に切削加工を施すことで、ハードコート層2および端部ハードコート層3を同時に形成することができる。例えば、図3のように、切削加工により両端部に溝部7を設けたドクターブレード6とコーティングロール5を用いると、コーティングロール5に供給された塗液のうち、ドクターブレードの溝部7を通過する塗液が、ドクターブレードの中央部を通過する塗液より多くなる。これにより、フィルム基材への両端部への塗布量が、中央部への塗布量よりも多くなるため、ハードコート層と、ハードコート層より膜厚が大きい端部ハードコート層を同時に形成することができる。
【0047】
塗液であるハードコート層形成用組成物を用いてフィルム基材1の表面に形成された塗膜を硬化させる方法としては、活性線、特に紫外線を照射する方法が好適であり、これらの方法を用いる場合には、ハードコート層形成用組成物に、光ラジカル重合開始剤を加えることにより紫外線照射にて硬化させることができる。紫外線照射においては、400nm以下の波長を含む光であればよく、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を用いることができる。また、必要に応じて加熱工程を加えてもよい。
【0048】
ハードコート層2の膜厚については、一般的なハードコート層の厚みで使用可能で特に限定されないが、2μm以上50μm以下であることが好ましい。ハードコート層2の膜厚が2μmに満たない場合、十分な硬度を得ることができない。また、ハードコート層2の膜厚が50μmを超える場合、厚くなることでフィルム全体がたわむレベルでの塗布量では、ロール内において、自重によりフィルム間が張り付き易く、耐ブロッキングの効果が弱くなることが考えられる。
【0049】
また、ハードコート層2の膜厚は、端部ハードコート層3の膜厚より小さく、ハードコート層2の膜厚と端部ハードコート層3の膜厚との差が、3μm以上10μm以下であることが好ましい。ハードコート層2の膜厚が、端部ハードコート層3の膜厚と等しいか、それより大きい場合、ロール内でハードコート層2とフィルム基材1との間でブロッキングが生じるため好ましくない。また、ハードコート層2の膜厚と端部ハードコート層3の膜厚との差が3μmに満たない場合、ロール内でハードコート層2とフィルム基材1との間で十分に支柱することができない。一方、ハードコート層2の膜厚と端部ハードコート層3の膜厚との差が10μmを超える場合、ロール内の支柱が不安定となり、特にロール・ツー・ロールで巻き取る際の搬送フィルムの微少な蛇行などにより巻きズレが生じ易い。
【0050】
端部ハードコート層3は、ハードコート層2の幅方向の両端に形成されることが好ましい。端部ハードコート層3がハードコート層2の幅方向の一方の端のみに形成される場合、ロール状態において、ハードコート層3が形成されていない端部に巻き緩み(たるみ)や、ロール・ツー・ロールで巻き取る際に、巻き絞まり(ねじれ)などを引き起こす原因となる。
【0051】
また、端部ハードコート層3は、ハードコート層2の幅方向の両端に1または2以上形成されることが好ましい。特に、ハードコート層2の幅方向の両端に、2以上形成されることがより好ましい。端部ハードコート層3がハードコート層2の幅方向の両端に2以上形成されることにより、安定した支柱を形成できることと、巻きズレが発生した際に、急激な巻きズレを防止することができる。
【0052】
端部ハードコート層3の形状は、ロールの支柱を安定させるという観点から、図1のように帯状であることが好ましい。
【0053】
端部ハードコート層3の幅は、2mm以上10mm以下であることが好ましい。この範囲で形成することで、ロールの支柱を安定させることができ、ブロッキングや巻ズレを防止することができる。
【0054】
ハードコート層2と、ハードコート層2と最も近い端部ハードコート層3との距離は、0mm以上10mm以下であることが好ましい。この範囲の距離にすることで、ハードコート層2部分の自重によるたるみを最大限に防止することができる。なお、ハードコート層2と、ハードコート層2と最も近い端部ハードコート層3は、上記範囲の通り、接していてもよい。
【0055】
端部ハードコート層3は、ハードコート層2から20mmの範囲内に形成されることが好ましい。この範囲で形成することで、ハードコート層2部分の自重によるたるみを最大限に防止することができる。
【0056】
端部ハードコート層3が複数形成される場合、各端部ハードコート層3間の距離は1mm以上5mm以下であることが好ましい。この範囲の距離にすることで、ロールの支柱を安定させることができ、ブロッキングや巻ズレを防止することができる。
【0057】
ハードコート層2および端部ハードコート層3を形成した後の巻取り条件については、巻締りが発生するレベルでの高テンションでは、耐ブロッキングや巻ズレ防止の効果が弱くなるため、用途に応じて1N/cm以上5N/cm以下を目安とする。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
フィルム基材である厚み40μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースに、幅方向に塗布量を調整することができるドクターブレードを用いたマイクログラビアコーティング法により、下記ハードコート層形成用組成物を用いて、膜厚5μmのハードコート層を形成し、同時に、膜厚12μmで、幅5mmの端部ハードコート層を、ハードコート層の両端部に各1本ずつ形成した。作製したハードコートフィルムは、巻取りテンション2N/cmで2000m巻取り、ブロッキング、巻ズレの評価を行った。
【0060】
[ハードコート層形成用組成物]
多官能(メタ)アクリルモノマー:PE−3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、共栄社化学社製) ・・・90.5重量部
光ラジカル重合開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ社製
・・・1.5重量部
重合性基を有する含フッ素化合物:オプツールDAC(ダイキン工業社製)
・・・0.5重量部
溶剤:酢酸エチル ・・・100重量部
【0061】
<実施例2>
フィルム基材の厚みを80μm、端部ハードコート層の膜厚を8μmに変更したほかは、実施例1と同様にハードコートを作製し、ブロッキング、巻ズレの評価を行った。
【0062】
<実施例3>
端部ハードコート層の幅を3mm、端部ハードコート層の本数をハードコート層の両端部に各2本ずつに変更したほかは、実施例1と同様にハードコートを作製し、ブロッキング、巻ズレの評価を行った。
【0063】
<実施例4>
フィルム基材を厚み38μmのポリエチレンテレフタレートに変更したほかは、実施例1と同様にハードコートを作製し、ブロッキング、巻ズレの評価を行った。
【0064】
<比較例>
端部ハードコート層を形成しなかったほかは、実施例1と同様にハードコートを作製し、ブロッキング、巻ズレの評価を行った。
【0065】
実施例、比較例のブロッキングおよび巻ズレの評価の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1の通り、実施例により作製されたハードコートフィルムは、ロール状に巻取ってもブロッキングを発生させることはなく、また、巻ズレを発生させることなくロール状に巻取ることができた。
【符号の説明】
【0068】
1・・・フィルム基材
2・・・ハードコート層
3・・・端部ハードコート層
4・・・ハードコートフィルム
5・・・コーティングロール
6・・・ドクターブレード
7・・・ドクターブレードの溝部
X・・・幅方向
Y・・・流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の少なくとも片面に、ハードコート層を備えるハードコートフィルムにおいて、
前記ハードコート層の幅方向の両端に、1または2以上の帯状の端部ハードコート層を備え、前記端部ハードコート層の膜厚が、前記ハードコート層の膜厚より大きいことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層が、少なくとも電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層形成用組成物により形成されることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が、多官能(メタ)アクリルモノマーと、光ラジカル重合開始剤と、重合性基を有する含フッ素化合物とを含むハードコート層形成用組成物により形成されることを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層の膜厚が、2μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層の膜厚が、前記端部ハードコート層の膜厚より小さく、前記ハードコート層の膜厚と前記端部ハードコート層の膜厚との差が、3μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のハードコートフィルムを用いた偏向更板用保護フィルム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のハードコートフィルムを用いたディスプレイ用全面板用フィルム。
【請求項8】
フィルム基材の少なくとも片面に、ハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法において、
幅方向に塗布量を調整することができるドクターブレードを用いた塗布方法により、前記フィルム基材の片面に、前記ハードコート層と、前記ハードコート層の幅方向の両端に位置し、膜厚が前記ハードコート層の膜厚より大きい1または2以上の帯状の端部ハードコート層とを同時に形成する工程を有することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−218618(P2011−218618A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88435(P2010−88435)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】