説明

バイオガスシステム

【課題】メタン発酵で得られるバイオガスを高カロリー化し、消化液の処理または利用もすることができるバイオガスシステムを提供すること。
【解決手段】バイオマスをメタン発酵槽104に導入して60℃以上の高温で、且つ発酵によって生じる自然発酵圧により0.2〜5MPaに加圧された状態でメタン発酵するメタン発酵手段1と、前記メタン発酵槽104から抜き出される消化液を減圧して二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去手段2と、前記二酸化炭素除去手段2で二酸化炭素が除去された消化液をアンモニアストリッピング装置302に導入しアンモニアを放散させるアンモニアストリッピング手段3とを有することを特徴とするバイオガスシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオガスシステムに関し、詳しくはメタン発酵で得られるバイオガスを高カロリー化し、消化液の処理または利用もすることができるバイオガスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
畜産し尿などの有機性廃棄物をメタン発酵処理し、メタンガスを得て電気や熱を回収するバイオガスシステムはバイオエネルギー技術として注目されているが、欧米ほど普及が進んでいない。
【0003】
その理由として、日本は小規模な施設が多いこともあり、メタン発酵により発生するメタンガスから電力を回収する場合、発電量はせいぜい数百kW程度と、得られるエネルギー量が少なく、経済的な利点が少ないことが挙げられる。
【0004】
また、メタン発酵後の消化液の処理が難しいことも一因として挙げられる。
【0005】
メタン発酵後の消化液は、農地に肥料として還元することができるが、従来はメタン発酵温度を37℃または55℃で行う方法が主流であり(特許文献3)、消化液中に含まれる雑菌が死滅していないため衛生的に問題があった。それを解消するためには加温して消化液中の雑菌を死滅させる必要があり、加温のためにエネルギーを必要とするのでコスト高となってしまっていた。
【0006】
更にメタン発酵の消化液は窒素成分が多量に含まれており、そのまま農地に肥料として還元すると地下水の汚染や、牧草の窒素過多による家畜への健康被害が引き起こされることもあるので、水で希釈したり、添加物を加える必要があった。
【特許文献1】2006−224090号公報(メタン発酵温度55℃)
【特許文献2】2004−358400号公報(メタン発酵温度50〜60℃)
【特許文献3】平11−290827号公報(メタン発酵温度37℃、55℃)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、メタン発酵の普及には、バイオガスから得られるエネルギー量を増加させることと、消化液を低コストで処理または利用できるシステムを構築することが不可欠であると考え、鋭意研究を継続した結果、本発明に至った。
【0008】
そこで、本発明の課題は、メタン発酵で得られるバイオガスを高カロリー化し、消化液の処理または利用もすることができるバイオガスシステムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の課題は以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0011】
(請求項1)
バイオマスをメタン発酵槽に導入して60℃以上の高温で、且つ発酵によって生じる自然発酵圧により0.2〜5MPaに加圧された状態でメタン発酵するメタン発酵手段と、
前記メタン発酵槽から抜き出される消化液を減圧して二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去手段と、
前記二酸化炭素除去手段で二酸化炭素が除去された消化液をアンモニアストリッピング装置に導入しアンモニアを放散させるアンモニアストリッピング手段とを有することを特徴とするバイオガスシステム。
【0012】
(請求項2)
前記メタン発酵槽内に投与するバイオマスが、60℃〜70℃の環境下に1時間以上、あるいは70℃を超える環境下に10分以上置かれることを特徴とする請求項1記載のバイオガスシステム。
【0013】
(請求項3)
前記60℃〜70℃の環境又は70℃を超える環境が、メタン発酵槽内に形成されることを特徴とする請求項2記載のバイオガスシステム。
【0014】
(請求項4)
前記60℃〜70℃の環境又は70℃を超える環境が、バイオマスがメタン発酵槽内に投入される以前に形成されることを特徴とする請求項2記載のバイオガスシステム。
【0015】
(請求項5)
前記アンモニアストリッピング手段でストリッピングしたアンモニアを回収するアンモニア回収手段を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のバイオガスシステム。
【0016】
(請求項6)
前記アンモニア回収手段で回収されたアンモニアを導入して亜硝酸化及び脱窒を行う処理手段を有することを特徴とする請求項5記載のバイオガスシステム。
【0017】
(請求項7)
前記共脱窒処理手段が、前記アンモニア回収手段で回収されたアンモニアを導入し、亜硝酸とアンモニアとの反応によって共脱窒することを特徴とする請求項6記載のバイオガスシステム。
【0018】
(請求項8)
前記アンモニア回収手段で回収したアンモニアを、外気から遮断された植物栽培施設内に投与する投入手段を有することを特徴とする請求項7に記載のバイオガスシステム
【0019】
(請求項9)
前記二酸化炭素除去手段で放散除去された二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を、外気から遮断された植物栽培施設内に投与する投入手段を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバイオガスシステム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、メタン発酵で得られるバイオガスを高カロリー化し、消化液の処理または利用もすることができるバイオガスシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
本発明のメタン発酵システムに導入するバイオマス(有機性廃棄物)としては、例えば畜産廃棄物(例えば牛、羊、山羊、ニワトリなどの家畜糞尿)や緑農廃棄物(例えば生ごみ、農水産業廃棄物、食品加工廃棄物等など)、廃水処理汚泥(例えば下水処理汚泥やし尿処理汚泥など)などを挙げることができ、これらバイオマスの2以上の種類を組み合わせてメタン発酵原料とする共発酵を行うこともできる。
【0023】
図1は本発明のバイオガスシステムを実施する好ましい態様を示すフロー図である。
【0024】
図1において、1はメタン発酵手段である。メタン発酵手段1はスクリューポンプ101と、熱交換器102と、輸送管103と、メタン発酵槽104と、1又は2以上の攪拌機105と、消化液排出管106と、バイオガスホルダー107を備えている。
【0025】
バイオマスはスクリューポンプ101により輸送管103に定量的に搬送され、メタン発酵槽104に送られる。また、メタン発酵槽104に至る過程で、熱交換器102によって加温される。メタン発酵槽104には攪拌機105以外に、図示しないが、加温ヒーター、圧力センサ、温度センサ、圧力調整弁(例えば5MPa以上に加圧された場合に圧力を放出する)などが設けられていることが好ましい。
【0026】
メタン発酵槽104では60℃以上の高温、好ましくは65℃〜75℃で、強制的に加圧することなく発酵によって生じる自然発酵圧によって槽内の圧力を0.2MPa〜5MPaの範囲、好ましくは0.3〜2MPa、さらに好ましくは0.5〜1MPaまで上昇させてメタン発酵が行われる。
【0027】
なお、「強制的に加圧することなく」というのは、コンプレッサなどの加圧装置を用いて人為的に発酵槽内の圧力を上げる手法を採用していないことを意味している。
【0028】
また、「発酵によって生じる自然発酵圧」というのは、密閉された発酵槽内でメタン発酵など生物的な反応によってメタンなどの気体成分が生じることによってメタン発酵槽内の圧力が高い状態になることを意味する。
【0029】
本発明では、メタン発酵槽104内に投与するバイオマスは、60℃〜70℃の環境下に1時間以上1日以下置かれ、あるいは70℃を超える環境下に10分以上30分以下置かれることを特徴としており、その60℃〜70℃の環境又は70℃を超える環境は、メタン発酵槽内に形成されていてもよいし、あるいは60℃〜70℃の環境又は70℃を超える環境は、バイオマスがメタン発酵槽内に投入される以前に形成されていてもよい。
【0030】
バイオマスがメタン発酵槽内に投入される以前に上記環境を形成するためには、原料のバイオマスを、排出管106から排出される消化液と熱交換器102で熱交換し、バイオマスを加温する。消化液は発酵槽内の発酵温度が60℃以上と高いので、その温度(熱含量)を利用できる。
【0031】
本発明では、熱交換によるメタン発酵槽へ導入するバイオマスの加温が十分でない場合には、図示しないが熱交換器を含む加温ヒーターを別に設けて加温し、60℃〜70℃の環境又は70℃を超える環境を、バイオマスがメタン発酵槽内に投入される以前に形成する。
【0032】
60℃〜70℃の環境下に1時間以上1日以下、あるいは70℃を超える環境下に10分以上30分以下という、高温の環境下に置かれることによってバイオマス中の病原菌などが殺菌され、衛生上の問題を解決することができる。なお、この温度保持時間には効果の上で必要な上限はない。
【0033】
これによって、消化液の殺菌や雑草の種子の不活性化を行う工程を省略することができる。
【0034】
常圧の中温発酵においてはバイオガス中のメタン濃度は40%程度で、ほかに二酸化炭素や硫化水素が含まれているが、60℃以上の高温発酵で、かつ加圧された状態でメタン発酵することにより、生成ガス中の、水に可溶な性質をもつ二酸化炭素や硫化水素は消化液に吸収されるため、バイオガス中のメタン濃度を70%以上にすることができる。また、バイオガス中に硫化水素がほとんどなくなるため、脱硫装置を設ける必要がなくなる。
【0035】
かかる加圧されたメタン発酵を行うメタン発酵槽には耐圧構造を持つ球形またはローリー型のメタン発酵槽を用いることが好ましい。
【0036】
メタン発酵により得られたメタンガスはバイオガスホルダー107で貯留する。得られたバイオガスは例えば液状のブタンまたはプロパンにメタンを溶解させるガスホルダーによって大容量のメタンを貯留することができる。
【0037】
2は二酸化炭素除去手段である。二酸化炭素除去手段2は脱気装置201を備えている。
【0038】
熱交換後の消化液から放出された二酸化炭素を回収する容器などを設ければ、二酸化炭素を回収できる。
【0039】
消化液中には加圧された状態で二酸化炭素が溶解しているので脱気装置201内で減圧して常圧に戻すだけで50%以上の溶解していた二酸化炭素が放出される。
【0040】
脱気装置201は、単に消化液を減圧することのできる弁をもつタンク状としてもよいし、棚段等を設けた気液接触塔とし、気液接触塔下部から空気を導入して、消化液を気液接触塔の上部に設けられた散布部から散布してさらに二酸化炭素を回収することもできるし、消化液をためたタンク内にエアレーション管を設けて外部の空気を取り込んで消化液をエアレーションし、二酸化炭素を回収することもできる。
【0041】
3はアンモニアストリッピング手段である。アンモニアストリッピング手段3には送液ポンプ301と、アンモニアストリッピング装置302を備えている。
【0042】
アンモニアストリッピング装置302の構成例を図2に示す。
【0043】
303は二酸化炭素を除去した消化液を導入する循環タンクであり、架台304の上に設置し、該循環タンク303の上方にアンモニア放散塔305が設けられ、タワー形式に構成できる。また、充填材307の目詰まりを防止するため、循環タンクに消化液を導入する前にスクリーンを設け、粗大な固形物を取り除くことが好ましい。
【0044】
アンモニア放散塔305の例としては、内部に多孔板306が設けられ、多孔板306上に樹脂、金属、セラミックで形成される各種の充填材307が充填される。充填材307の上方にはスプレーノズル308が設けられ、消化液を充填材307に散布可能に構成されている。スプレーノズル308は配管309を介して循環ポンプ310に接続されている。充填材307に散布された消化液は、図2においては接続管311を介して循環タンク303に貯留され、循環ポンプ310でスプレーノズル308に送られ、循環するように構成されているが、循環タンクを経ずに排出される場合もある。312は、アンモニア放散塔に空気を導入するコンプレッサまたはブロワである。
【0045】
アンモニアストリッピング装置でアンモニア成分を除いた消化液は脱窒消化液として排出される。
【0046】
図2においては循環タンク303に設けられたドレンバルブ313から排出される。
【0047】
脱窒消化液は窒素成分が除去されているので有機性排水として処理しやすい状態になっており、有機性排水処理施設において処理することができる。また、そのまま液肥として農地還元することも容易に行える。
【0048】
また、メタン発酵槽104において60〜70℃で1時間以上1日以下、または70℃以上で10分以上30分以下という高温条件におかれ、病原体等が殺菌されているので、衛生的な肥料として農地に還元することもできる。
【0049】
消化液中のアンモニアはガス状あるいはミスト状で排出管314を介してアンモニア放散塔305の上方から排出される。
【0050】
図1にはアンモニアストリッピングをした後のアンモニア処理手段の例として共脱窒を行う例が示されている。
【0051】
共脱窒は、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化する独立栄養型のアンモニア酸化細菌と、前記亜硝酸性窒素とアンモニアの反応により窒素を生成するアナモックス菌を担持した繊維性処理材を用いて同時に脱窒を行うものである。
【0052】
凝縮器4は水を導入し、アンモニアストリッピング装置302において、ガス状あるいはミスト状となったアンモニアを水に吸収させアンモニア水とする。
【0053】
アンモニアは充填塔やぬれ壁型の気液接触装置などによって比較的容易にアンモニア水として回収できる。
【0054】
アンモニア水は、凝集器4から共脱窒リアクタ5に導入し、共脱窒を行う。リアクタ5で脱窒処理されて窒素分を除いた水の一部は凝集器4へ返送され再びアンモニアを吸収する。
【0055】
図3は共脱窒リアクタの一例を示す図であり、同図において、共脱窒リアクタ5は独立栄養性アンモニア酸化細菌と、アナモックス菌を担持した微生物担体501を備えており、該微生物担体501は、上下を支持杆502、503によって支持されている。微生物担体501は、平板状のものが複数枚並設される態様であっても、円筒状に形成されたものが環状に配置される態様であってもよい。また微生物担体501は、図示しないが、渦巻状に形成されていてもよい。
【0056】
504は凝集器4からのアンモニア水(以下、被処理液とする)を導入する被処理液導入部であり、505は処理液排出部である。506は空気導入部であり、507は空気移送管である。反応槽5の上部には図示しない窒素ガス排出部を有している。
【0057】
また、508はpH制御部、509は温度制御部である。
【0058】
共脱窒リアクタ5では、共脱窒リアクタ5内の温度、被処理液のpH、DO、酸化還元電位(ORP)の少なくともいずれか一つ以上を調整して、アンモニア性窒素から亜硝酸を生成し、該生成した亜硝酸とアンモニアの反応により窒素を生成して共脱窒を行うように反応速度論的な制御を行う。
【0059】
微生物担体501としては、厚さ5mm以上の不織布(ポリアクリロニトリル繊維など)にアンモニア酸化細菌とアナモックス菌(アンモニア−亜硝酸共脱窒菌)を担持した担体が用いられる。
【0060】
この態様において、共脱窒リアクタ5内の微生物担体501は、表面に沿って被処理液が流通する構造であってもよいし、あるいは微生物担体501内を被処理液が流通する構造であってもよく、更に両者を組み合わせた構造であってもよい。
【0061】
次に、本発明において採用される共脱窒リアクタの他の例について説明する。
【0062】
この態様は、菌を担持した導電性微生物担持電極を備え、導電性微生物担持電極に対してカーボンプレートなどを用いた対極を設置しており、微生物電極の電位を調節することによってアンモニア含有水の共脱窒を行うことができる。
【0063】
図4は、電位制御方式の共脱窒リアクタを示す概略断面図であり、共脱窒リアクタ5は、基本的に本体50Aと蓋体50Bとからなる反応槽50Cを備えている。
【0064】
該反応槽50Cはアンモニア性窒素を含有する液体を導入する被処理液導入部50と、処理液排出部51と、窒素ガス排出部52と、空気導入部53とを備えている。
【0065】
また反応槽50Cは、アンモニア酸化と脱窒を行う導電性微生物担持電極54と隔膜(イオン交換膜)を介して対極55からなる一対の電極を備えている。56はリード線である。
【0066】
導電性微生物担持電極54は、一例として、導電性の炭素繊維製フェルトあるいはクロスを例えば渦巻状に巻設して筒状に形成したものが用いられる。
【0067】
導電性微生物担持電極54としては、たとえば、導電性炭素繊維のフェルト(不織布)あるいはクロス(布)以外に、好ましくは1200℃以上、より好ましくは1500℃以上で焼成し、空気を遮断して焼成した各種炭化物などが挙げられ、導電性を十分に付与したものが好ましい。更に表面処理によって表面の導電性をほとんど損なうことなく水素過電圧を向上せしめたものも好ましく使用できる。
【0068】
導電性微生物担持電極54には、アンモニア性窒素から亜硝酸性窒素を生成するアンモニア酸化細菌と、亜硝酸性窒素とアンモニア性窒素から窒素を生成する共脱窒菌(アナモックス菌)が担持される。
【0069】
アンモニア酸化細菌および共脱窒菌は、導電性微生物担持電極54を構成する導電性繊維表面に直接担持されることによってその代謝活性が電極電位の規制を受けることになる。
【0070】
導電性の炭素繊維製フェルトあるいはクロスには、アンモニア酸化細菌が生息するように担持される領域と、共脱窒菌が生息するように担持される領域がゾーン分割されていることが好ましい。
【0071】
例えば、導電性の炭素繊維製フェルトあるいはクロスが渦巻状に巻設して筒状に形成された導電性微生物担持電極54上にアンモニア酸化細菌や共脱窒菌を担持する際には、筒状の中心部側に、空気供給管の先端が配置される場合には、その近傍にアンモニア酸化細菌群が生息するように担持され、また空気供給されない筒状外周側領域では共脱窒菌が生息するように担持されることが好ましい。
【0072】
導電性微生物担持電極におけるアンモニア酸化細菌担持部分と共脱窒菌担持分を接触させているのは、亜硝酸生成の平衡電位と窒素が安定して存在する平衡電位の領域が共通しているためである。
【0073】
導電性微生物担持電極54と対極55との間には隔膜あるいは隔壁57が設けられ、両者の電気的短絡を防止している。58は参照極である。参照極58としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)電極を使用できる。
【0074】
この共脱窒リアクタ5においては、微生物担持電極54と対極55からなる一対の電極に、アンモニア性窒素から亜硝酸性窒素を生成する反応は生起し進行するが、硝酸性窒素を生成する反応は生起しない電位を印加する。
【0075】
この印加電位の制御においては、pHの影響を考慮する必要があるので、印加電位の制御をより確実に行うには、被処理液のpH値を測定して、その値を印加電位の制御に反映させることは好ましい態様である。
【0076】
59は消化液のpHを測定するpH測定部であり、測定データは電位制御部510に入力する。電位制御部510はpH測定部59からのデータに基き、pH調整信号や電位印加部511への電位印加信号を出力し、4NH+3O→2HNO+2NH+2HOの反応によって亜硝酸を生成し、次いで、HNO+NH→N+2HOの反応によって窒素ガスを生成するように制御して、共脱窒を行う。
【0077】
電位制御部510による電位制御を行うことによって、例えば一酸化二窒素の生成など好ましくない副反応が生じる危険性を排除し、アンモニアを窒素ガスに変換して排出することができる。
【0078】
本発明のバイオガスシステムでは二酸化炭素除去手段2で回収した二酸化炭素およびアンモニアストリッピング手段3で回収したアンモニアを産業に資源として利用する手段を設けることもできる。
【0079】
図5には、二酸化炭素およびアンモニアを資源として利用する例を示している。
【0080】
二酸化炭素回収手段2で消化液から分離された、組成のほとんどが二酸化炭素であるガスはライン202を通して外気から遮断された植物栽培施設6へ運ばれる。
【0081】
外気から遮断された植物栽培施設としてはビニールハウス、ガラス室のほか、植物工場とよばれる植物栽培施設が挙げられる。
【0082】
このような植物栽培施設では光合成を促進し、栽培植物の成長と品質の向上を促すために二酸化炭素を供給しており、主に灯油やプロパンガスを燃焼させたガスを供給している。
【0083】
二酸化炭素除去手段2で回収した二酸化炭素を施設内に供給することで、メタン発酵で発生した二酸化炭素を有効に利用することができるほか、化石燃料などの消費を削減できるという効果もある。
【0084】
同様に、アンモニアストリッピング手段3で回収されたアンモニアも凝縮器4でアンモニア性窒素含有水とした後、液肥として供給することで、外気から遮断された植物栽培施設6で栽培される植物の窒素源として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のメタン発酵システムを実施する好ましい態様を示すフロー図
【図2】本発明に用いるアンモニアストリッピング装置の例を示す図
【図3】本発明に用いる共脱窒リアクタの例を示す図
【図4】本発明に用いる共脱窒リアクタの別の例を示す図
【図5】回収した二酸化炭素およびアンモニアを利用する態様を示すフロー図
【符号の説明】
【0086】
1:メタン発酵手段
101:スクリューポンプ
102:熱交換器
103:輸送管
104:メタン発酵槽
105:攪拌機
106:消化液排出管
107:バイオガスホルダー
2:二酸化炭素除去手段
201:脱気装置
202:ライン
3:アンモニアストリッピング手段
301:送液ポンプ
302:アンモニアストリッピング装置
303:循環タンク
304:架台
305:アンモニア放散塔
306:多孔板
307:充填材
308:スプレーノズル
309:配管
310:循環ポンプ
311:接続管
312:コンプレッサまたはブロワ
313:ドレンバルブ
314:排出管
4:アンモニア回収凝縮器
5:共脱窒リアクタ
50:被処理液導入部
50A:本体
50B:蓋体
50C:反応槽
51:処理液排出部
52:窒素ガス排出部
53:空気導入部
54:導電性微生物担持電極
54A:領域
54B:領域
55:対極
56:リード線
57:隔壁
58:参照極
59:pH測定部
501:微生物担体
502、503支持杆
504:被処理液導入部
505:処理液排出部
506:空気導入部
507:空気移送管
508:pH制御部
509:温度制御部
510:電位制御部
511:電位印加部
6:植物栽培施設

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスをメタン発酵槽に導入して60℃以上の高温で、且つ発酵によって生じる自然発酵圧により0.2〜5MPaに加圧された状態でメタン発酵するメタン発酵手段と、
前記メタン発酵槽から抜き出される消化液を減圧して二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去手段と、
前記二酸化炭素除去手段で二酸化炭素が除去された消化液をアンモニアストリッピング装置に導入しアンモニアを放散させるアンモニアストリッピング手段とを有することを特徴とするバイオガスシステム。
【請求項2】
前記メタン発酵槽内に投与するバイオマスが、60℃〜70℃の環境下に1時間以上、あるいは70℃を超える環境下に10分以上置かれることを特徴とする請求項1記載のバイオガスシステム。
【請求項3】
前記60℃〜70℃の環境又は70℃を超える環境が、メタン発酵槽内に形成されることを特徴とする請求項2記載のバイオガスシステム。
【請求項4】
前記60℃〜70℃の環境又は70℃を超える環境が、バイオマスがメタン発酵槽内に投入される以前に形成されることを特徴とする請求項2記載のバイオガスシステム。
【請求項5】
前記アンモニアストリッピング手段でストリッピングしたアンモニアを回収するアンモニア回収手段を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のバイオガスシステム。
【請求項6】
前記アンモニア回収手段で回収されたアンモニアを導入して亜硝酸化及び脱窒を行う処理手段を有することを特徴とする請求項5記載のバイオガスシステム。
【請求項7】
前記共脱窒処理手段が、前記アンモニア回収手段で回収されたアンモニアを導入し、亜硝酸とアンモニアとの反応によって共脱窒することを特徴とする請求項6記載のバイオガスシステム。
【請求項8】
前記アンモニア回収手段で回収したアンモニアを、外気から遮断された植物栽培施設内に投与する投入手段を有することを特徴とする請求項7に記載のバイオガスシステム
【請求項9】
前記二酸化炭素除去手段で放散除去された二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を、外気から遮断された植物栽培施設内に投与する投入手段を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバイオガスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−253875(P2008−253875A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95732(P2007−95732)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】