説明

バイオフィルム生物の阻害

本発明は、少なくとも2つの抗バイオフィルム剤を含む製品に関するものであり、抗バイオフィルム剤の少なくとも1つは、抗微生物ペプチドである。第2の抗バイオフィルム剤は、通常、分散剤または抗付着剤である。微生物感染の治療における製品の使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルムの予防および治療に関して有用な製品、組成物、方法、および使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物のバイオフィルムは、ポリマー物質の細胞外マトリクス内に根付いた、生物学的な、または非生物的な表面に対して付着性の、微生物細胞の群集である。様々な微生物(関連するバクテリオファージおよび他のウイルスを含む、細菌、真菌、および/または原生動物)を、これらのバイオフィルムにおいて見ることができる。バイオフィルムは、自然界で遍在しており、広範な環境においてよく見られる。バイオフィルムが多くの感染に関与していること、特にそれらが感染の治療を困難にしていることが、科学界および医学界において次第に認められてきている。
【0003】
バイオフィルムは、哺乳動物における多くの病態の病原因子であり、ヒトにおける感染の80%に関与する。例には、皮膚および創傷感染、中耳感染、胃腸管感染、腹膜感染、尿生殖路感染、口腔軟組織感染、歯垢の形成、眼の感染(コンタクトレンズの汚染を含む)、心内膜炎、嚢胞性線維症における感染、ならびに人工関節、歯科インプラント、カテーテル、および心臓インプラントなどの留置型医療用デバイスの感染が含まれる。
【0004】
浮遊性微生物(すなわち、液体媒質中で懸濁または増殖している微生物)は、典型的に、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)およびEuropean Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing(EUCAST)によって記載されているように、抗微生物剤に対する感受性の調査のためのモデルとして用いられる。バイオフィルムにおける微生物は、それらの浮遊性の同等物よりも抗微生物治療に対して著しく耐性が高い。しかし、バイオフィルム微生物の抗生物質に対する感受性を研究するための、標準化された方法はない。
【0005】
バイオフィルムの形成は、微生物が表面に接着する能力のみに限定されるわけではない。バイオフィルム中で増殖している微生物は、バイオフィルムが最初に発生する実際の物理的基底と相互作用するよりも、互いの間で、より相互作用することができる。例えば、この現象は、接合による遺伝子伝播を促し、これは、浮遊性細胞間よりもバイオフィルム中の細胞間で、大きい割合で生じる。このことは、細菌間での水平遺伝子伝播の機会が増大することを意味し、かつ、これは、耐性微生物から感受性微生物への、抗生物質に対する耐性または病原性を決定する遺伝子の伝播を容易にし得るため、重要である。細菌は、クオラムセンシングとして知られているシステムによって互いに連絡することができ、このシステムを介してシグナル伝達分子が環境内に放出され、それらの濃度が周辺の微生物によって検出され得る。クオラムセンシングによって、細菌がそれらの挙動を連係させることが可能となり、その結果、細菌の生存能力が増強される。クオラムセンシングに対する応答には、栄養の利用可能性に対する適合、同一の栄養について競合し得る他の微生物に対する防御、および細菌にとって危険である可能性がある毒性化合物の回避が含まれる。宿主(例えば、ヒト、他の動物、または植物)に感染している間の病原性細菌にとって、感染をうまく達成することができるように宿主細胞の免疫応答を免れるために、それらの病原性を連携させることは非常に重要である。
【0006】
バイオフィルムの形成は、嚢胞性線維症および歯周炎などの多くの感染性疾患において、および留置型医療用デバイスの存在の結果としての血流感染および尿路感染において重要な役割を果たす。バイオフィルムに関連する微生物がそれらの宿主において疾患を引き起こすための示唆されるメカニズムには、(i)バイオフィルムのマトリクスによる抗微生物剤の浸透の遅延、(ii)留置型医療用デバイスのバイオフィルムからの細胞または細胞集合体の脱離、(iii)エンドトキシンの生産、(iv)宿主免疫系に対する耐性、(v)抗微生物剤に対する耐性および/または病原性を決定する遺伝子の水平遺伝子伝播による耐性生物の発生のためのニッチの提供、ならびに(vi)増殖速度の改変(すなわち、代謝的休眠)が含まれる(DonlanおよびCosterton、Clin Microbiol Rev 15:167〜193頁、2002年;ParsekおよびSingh、Annu Rev Microbiol 57:677〜701頁、2003年;Costerton J W、Resistance of biofilms to stress.「The biofilm primer」(Springer Berlin Heidelberg).56〜64頁.2007年)。
【0007】
最近の実験的証拠によって、バイオフィルム内に、特殊な、代謝していない存続細胞(休眠細胞)の小さな亜集団が存在することが示されている。これらの細胞が、抗微生物剤に対するバイオフィルムの高い耐性/抵抗性に関与し得ると考えられている。多剤抵抗性の存続細胞は、浮遊性の集団およびバイオフィルムの集団の両方において存在し、酵母および細菌は、この亜集団に生存機能を付与する類似の戦略を発達させたと考えられる。ポリマー性のマトリクスによってもたらされた防御によって、存続細胞が排除を回避すること、および再増殖のための増殖源となることが可能になる。存続細胞が微生物バイオフィルムの多剤抵抗性に多大に関与し得ることが証明されている(LaFleurら、Antimicrob Agents Chemother.50:3839〜46頁,2006年;Lewis、Nature Reviews Microbiology 5、48〜56頁、2007年)。
【発明の概要】
【0008】
依然として、バイオフィルムの形成を予防するため、および微生物バイオフィルムに関連する症状を治療するための、より良い治療法が必要とされている。
【0009】
本発明の第1の態様によると、少なくとも2つの抗バイオフィルム剤を含む製品が提供され、この製品において、抗バイオフィルム剤の少なくとも1つは、抗微生物ペプチドである。他方の抗バイオフィルム剤は、分散剤または抗付着剤とすることができる。
【0010】
「抗バイオフィルム剤」という用語は、本明細書において、微生物バイオフィルムを消滅させることができるかまたはその増殖を阻害することができる作用物質を説明するために用いられる。抗バイオフィルム剤は、バイオフィルムの構造、例えば細胞外粘液マトリクスを崩壊させることができてもよく、または、バイオフィルム内の微生物細胞を消滅させることができるかもしくはその増殖を阻害することができてもよい。
【0011】
本発明はさらに、抗微生物ペプチドを環境に投与するステップを含む、前記環境におけるバイオフィルムの形成を予防する方法を提供する。有利には、本方法は、本発明に従った製品を環境に投与するステップを含む。
【0012】
本発明はさらに、治療上有効な量の抗微生物ペプチド、例えば陽イオン性ペプチドの投与を含む予防法または治療法によって、微生物の感染、特に微生物バイオフィルムを治療するための方法を提供する。典型的には、本方法は、治療上有効な量の
− 第1の抗バイオフィルム剤、および
− 第1の抗バイオフィルム剤とは異なる第2の抗バイオフィルム剤
の逐次投与または併用投与を伴い、第1および第2の抗バイオフィルム剤の少なくとも1つは、抗微生物ペプチド、例えば陽イオン性ペプチドである。
【0013】
上述の活性作用物質は、自由なまたは固定された組み合わせで投与することができる。自由な組み合わせは、全ての活性作用物質を自由な組み合わせで含有する、組み合わせパッケージとして提供され得る。固定された組み合わせは、錠剤またはカプセルであることが多い。
【0014】
本発明には、予防法もしくは治療法によって、微生物の感染、特に微生物バイオフィルムの感染を治療するための医薬品の製造における、抗微生物ペプチド、または上記に概説した活性作用物質の組み合わせの使用が含まれる。
【0015】
製品は、バイオフィルム内に存在する、とりわけ存続細胞に対する抗菌活性を示すという利点を有し、これはバイオフィルムを根絶するための必須のステップである。
【0016】
本発明の作用物質は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性の部分を含有する親化合物から合成することができる。通常、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態を、水もしくは有機溶媒またはこの2つの混合物内で、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができ、通常、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水媒質が好ましい。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、US、1985年、1418頁において見られ、この開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。また、Stahlら編、「Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use」、Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley−VCH、2002年も参照されたい。「薬学的に許容される」という表現は、本明細書において、妥当な効果/リスク比に見合いながら、正しい医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、人間または場合によっては動物の組織と接触させる使用に適した、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために用いられる。
【0017】
したがって、本発明は、開示された化合物の薬学的に許容される塩を含み、親化合物は、その酸性または塩基性の塩、例えば、例えば無機または有機の酸または塩基から形成される従来の非毒性の塩または第4級アンモニウム塩を生じさせることにより、修飾される。このような酸付加塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンフルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が含まれる。塩基性の塩には、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土塁金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩、ならびにアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩が含まれる。また、塩基性の窒素含有基を、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、およびヨウ化ブチルなどの低級ハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルなどの硫酸ジアルキル、ならびに硫酸ジアミル、そして、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチル、およびヨウ化ステアリルなどの長鎖ハロゲン化合物、臭化ベンジルおよび臭化フェネチルなどのハロゲン化アラルキルなどの作用物質で、4級化することができる。
【0018】
したがって、本発明は、少なくとも
− 第1の抗バイオフィルム剤、および
− 第1の抗バイオフィルム剤とは異なる第2の抗バイオフィルム剤
を通常含む薬学的製品を含み、第1および第2の抗バイオフィルム剤の少なくとも1つは、抗微生物ペプチド、例えば陽イオン性ペプチドである。
【0019】
第1の抗バイオフィルム剤
第1の抗バイオフィルム剤は、抗微生物ペプチド、例えば抗菌ペプチドであってよい。好ましくは、第1の抗バイオフィルム剤は、以下「第1の抗微生物剤」と呼ばれる、抗微生物ペプチドである。第1の抗微生物剤は、式I:
((X)(Y) (I)
(式中、lおよびmは、1から10の整数、例えば1から5であり、nは、1から10の整数であり、XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、独立して、疎水性アミノ酸または陽イオン性アミノ酸である)に従ったアミノ酸を含むことができる。
【0020】
好ましくは、第1の抗微生物剤は、XおよびYが陽イオン性アミノ酸である式(I)に従ったアミノ酸を含む。
【0021】
抗微生物ペプチドは、2から200個のアミノ酸、例えば、3個、4個、5個、6個、または7個から100個までのアミノ酸を含むことができ、これには、3個、4個、5個、6個、または7個から10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、または50個までのアミノ酸が含まれる。一実施形態によると、抗微生物ペプチドは、3または4から50個のアミノ酸を含む。あるいは、ペプチドは、27個を超えるアミノ酸、典型的には27から300個のアミノ酸、適切には27個から200個のアミノ酸を含み得る。
【0022】
ペプチドは、100から200個のアミノ酸、20から100個のアミノ酸、20および45個のアミノ酸、例えば、20個、25個、30個、35個、40個、42個、または45個のアミノ酸を含むことができる。ペプチドは、3から15個の間のアミノ酸、例えば5から15個のアミノ酸を含むことができる。
【0023】
本明細書において用いられる場合、「疎水性」という用語は、無極性であり、通常は水性溶液によって反発される、生理的なpHで荷電していない側鎖を有するアミノ酸を言う。
【0024】
本明細書において用いられる場合、「陽イオン性」という用語は、0以上の正味電荷を有するアミノ酸を言う。通常、「陽イオン性」という用語は、0よりも大きい正味電荷を有するアミノ酸を言う。
【0025】
通常、疎水性アミノ残基は、−1.10以上の疎水性、および0以上の電荷を有する。
【0026】
疎水性アミノ酸には、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、およびメチオニンが含まれ得る。
【0027】
好ましくは、Xおよび/またはYは、例えば、ヒスチジン、アルギニン、およびリシンからなる群から選択される、陽イオン性アミノ酸である。さらに好ましくは、Xおよび/またはYは、アルギニンまたはリシンである。Xおよび/またはYは、非天然のアミノ酸から選択され得、例えば陽イオン性アミノ酸であるオルニチンであり得る。
【0028】
Xおよび/またはYは、本明細書において定義される陽イオン性アミノ酸の光学異性体、例えば、D−またはL−アミノ酸であり得る。さらに、Xおよび/またはYは、交互アミノ酸であり得る。
【0029】
アミノ酸は、天然のものまたは合成のものであり得る。本発明はまた、上記のアミノ酸の既知の異性体(構造異性体、立体異性体、配座異性体、および立体配置異性体)および構造類似体、ならびに、天然の修飾(例えば、翻訳後修飾)、または限定はしないがリン酸化、グリコシル化、スルホニル化、および/もしくは水酸化を含む化学的修飾を受けたものを含む。
【0030】
一実施形態によると、ペプチドは、陽イオン性アミノ酸または疎水性アミノ酸であるXおよびYの1つまたは複数の置換基を含み得る。しかし、ペプチドは、陽イオン性アミノ酸または疎水性アミノ酸であるXおよびYを主に含む。典型的には、ペプチドは、1から5個の置換基、適切には1から3個の置換基、通常は1個の置換基を含み得る。置換基は、末端であっても末端でなくてもよい。
【0031】
置換基は、アミノ酸または非アミノ酸からなり得る。置換基は、荷電していてもいなくてもよい。典型的には、置換基の1つまたは複数は、荷電していないアミノ酸である。あるいは、またはさらに、置換基の1つまたは複数は、システアミンなどの非アミノ酸であり得る。
【0032】
好ましくは、XおよびYは同一であり、リシンまたはアルギニンである。
【0033】
一実施形態によると、ペプチドは、アルギニンではない1つまたは複数のアミノ酸で置換されていてよいアルギニンアミノ酸を主に含む。
【0034】
通常、ペプチドは、7から20個のアルギニンアミノ酸を含み、これは、場合によっては1から5個のアルギニン以外のアミノ酸で置換されており、典型的には3から5個のアルギニン以外の置換基で置換されている。
【0035】
あるいは、ペプチドは、7から20個のリシンアミノ酸を含み得、これは、場合によっては1から5個のリシン以外のアミノ酸で置換されており、典型的には3から5個のリシン以外の置換基で置換されている。
【0036】
さらなる実施形態によると、ペプチドは、27から300個のリシンアミノ酸、通常は27から200個のリシンアミノ酸を含み得る。典型的には、ペプチドは、リシン以外のアミノ酸での、末端以外での置換基を含まない。
【0037】
式(I)のペプチドにおいて、lおよびmは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10とすることができ、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10とすることができる。
【0038】
式(I)のペプチドにおいて、lは1とすることができ、nは1とすることができ、mは4から9の間とすることができ、例えば、mは、3、4、5、6、7、8、または9とすることができる。
【0039】
式(I)のペプチドにおいて、l、n、および/またはmは、1から5の間、例えば、1、2、3、4、または5とすることができる。
【0040】
式(I)のペプチドにおいて、lおよびmは、0から7の間の整数とすることができ、nは、1から10の間の整数とすることができる。
【0041】
式(I)のペプチドにおいて、lおよびmは、0、1、または2とすることができ、nは、1から10の間の整数とすることができる。
【0042】
式(I)のペプチドにおいて、XおよびYは同一であってもよく、lは0とすることができ、mは1とすることができ、nは3、4、5、6、7、8、9、または10とすることができる。
【0043】
式(I)のペプチドにおいて、XおよびYは同一であってもよく、lおよびmは1とすることができ、nは2、3、4、または5とすることができる。
【0044】
式(I)のペプチドにおいて、XおよびYは同一であってもよく、lは1とすることができ、mは2とすることができ、nは1、2、3、または4とすることができる。
【0045】
式(I)のペプチドにおいて、XおよびYは同一であってもよく、lおよびmは2とすることができ、nは1、2、3、または4とすることができる。
【0046】
好ましくは、第1の抗微生物剤は、ポリリシンおよびポリアルギニンからなる群から選択されるペプチド配列を含む。
【0047】
一実施形態において、第1の抗微生物剤は、ポリリシンを含む。
【0048】
別の実施形態において、第1の抗微生物剤は、ポリアルギニンを含む。
【0049】
本発明のさらなる態様によると、バイオフィルムの治療または予防における第1の抗微生物剤の使用が提供される。
【0050】
典型的には、第1の抗微生物剤は、以下に記載される本発明の製品の形態である。
【0051】
第2の抗バイオフィルム剤
第2の抗バイオフィルム剤は、バイオフィルムの形成を阻害する任意の作用物質とすることができる。例えば、第2の抗バイオフィルム剤は、細菌の付着、疎水性、またはスライムの生産を阻害し得る。第2の抗バイオフィルム剤は、分散剤および抗付着剤から選択され得る。
【0052】
本発明の一実施形態によると、第2の抗バイオフィルム剤はペプチドではない。
【0053】
「分散剤」という用語は、バイオフィルムの粒子を分散させることができる任意の作用物質を含むことを意図したものである。特に、分散剤は、細菌などの微生物によって生産されたスライム、バイオフィルムの一部を形成する粘液、例えばバイオフィルムの微生物が付着する細胞によって生産された粘液、および細菌などのバイオフィルムの微生物の分散を促進し得る。
【0054】
分散剤は、粘液溶解剤であり得る。粘液溶解剤は、例えばDNase、アルギナーゼ、プロテアーゼ、またはカルボヒドラーゼなどの酵素であり得る。あるいは、粘液溶解剤は、小分子、例えばアミノチオールなどのアミンまたはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの酸であり得る。アミンは、アセチルシステインおよびシステアミンから選択され得る。
【0055】
「抗付着剤」という用語は、細胞間、タンパク質間、および生物間、例えば微生物間の付着を阻害して、それによってバイオフィルムの形成を予防するかまたはバイオフィルムの自己破壊を促進することができる、任意の作用物質を含むことを意図したものである。特に、抗付着剤は、微生物バイオフィルムに直面した全ての細胞型、特に遊離している生存微生物、すなわち浮遊性細胞の、表面または基質への付着を予防し得る。抗付着剤には、限定はしないが、ヒアルロナン、ヘパリン、またはカーボポール934が含まれ得る。
【0056】
第2の抗バイオフィルム剤は、抗菌剤とすることができる。抗菌剤は、粘液溶解剤、例えば、粘液溶解活性および抗菌活性の両方を有する粘液溶解剤であり得る。好ましくは、抗菌剤はシステアミンである。
【0057】
本発明の製品
本発明の製品は、抗微生物ペプチドを含み得る。
【0058】
好ましい製品は、抗微生物ペプチドおよび粘液溶解剤を含む。
【0059】
本発明の製品における第1の抗バイオフィルム剤と第2の抗バイオフィルム剤との比は、1:10から10:1であり得、通常は少なくとも2:1、例えば少なくとも3:1または4:1であり得る。一実施形態によると、第1の抗バイオフィルム剤と第2の抗バイオフィルム剤との比は、およそ1:1である。好ましくは、第1の抗バイオフィルム剤は陽イオン性ペプチドであり、第2の抗バイオフィルム剤は粘液溶解剤であり、陽イオン性ペプチド:粘液溶解剤の比は2:1から4:1までの範囲である。さらなる実施形態によると、比はおよそ1:1であり得る。
【0060】
活性作用物質は、同時に、逐次的に、または個別に投与することができる。活性作用物質は、組み合わせパッケージとして提供され得る。組み合わせパッケージは、本発明の製品と、活性作用物質のそれぞれを同時に、個別に、または逐次的に投与するための指示とを含有し得る。逐次的な投与では、活性作用物質は、任意の順序で投与することができる。
【0061】
本発明の製品の活性作用物質は、1つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、および/または担体をさらに含有する医薬組成物として提供されてもよい。これは、固定された組み合わせおよび自由な組み合わせの両方に適用される。
【0062】
本発明の活性作用物質は、当業者に知られている任意の適切な経路によって、好ましくはこのような経路に適した医薬組成物の形態で、かつ意図した治療に有効な用量で投与することができる。活性化合物および活性組成物は、例えば、非経口的に、経口的に、鼻腔内に、気管支内に、経腸的に、経皮的に、舌下に、直腸に、膣に、眼に、または局所的に投与することができる。局部投与および全身投与の両方が考慮される。
【0063】
非経口投与(本明細書において用いられる「非経口」は、静脈内、筋肉内、経腸、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内への注射および点滴を含む投与態様を言い、そのうち静脈内(連続的な静脈内投与を含む)が最も好ましい)を目的として、水性プロピレングリコール内の溶液、および対応する水溶性塩の無菌水性溶液を用いることができる。このような水性溶液は、必要に応じて適切に緩衝化することができ、液体希釈剤はまず、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされる。これらの水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内への注射という目的に特に適している。これに関して、用いられる無菌水性媒質は、全て、当業者に周知の標準的な技術によって容易に得ることができる。
【0064】
本発明の製品はまた、鼻腔内に、または吸入によって投与することができ、適切な推進剤を使用して、または使用せずに加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、噴霧器から発せられる、乾燥粉末吸入剤またはエアロゾルスプレーの形態で都合良く送達される。
【0065】
あるいは、本発明の製品は、坐剤もしくはペッサリーの形態で投与することができるか、または、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、もしくは粉末の形態で局所的に塗布することができる。本発明の製品は、例えば皮膚パッチ、デポー、または皮下注射を用いて、皮膚に、または経皮的に投与することができる。これらはまた、肺経路または直腸経路によって投与することができる。
【0066】
経口投与では、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、懸濁液、または液体の形態であり得る。医薬組成物は、好ましくは、特定の量の活性成分を含有する投薬単位の形態で作製される。このような投薬単位の例は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、またはジャガイモデンプンなどの従来の添加剤、結晶セルロース、セルロール誘導体、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤、およびタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を伴う、カプセル、錠剤、粉末、顆粒、または懸濁液である。活性成分はまた、組成物として注射することによって投与することができ、この組成物において、例えば生理食塩水、デキストロース、または水を適切な担体として用いることができる。
【0067】
本発明の製品にはまた、経口製剤としての/経口製剤における適用があり、製品は、例えば、フィルム、テープ、ゲル、ミクロスフェア、トローチ、チューインガム、歯磨き剤、およびマウスウォッシュから選択される担体内に製剤される。
【0068】
投与される、治療的に活性な化合物の量、および、本発明の化合物および/または組成物を用いて病状を治療するための投薬レジメンは、対象の年齢、体重、性別、および医学的状態、疾患の重症度、投与の経路および頻度、ならびに用いられる特定の化合物、ならびに治療される個体の薬物動態特性を含む様々な因子に依存し、したがって、広く変化し得る。投薬は通常、化合物が全身に投与される場合よりも局部に投与される場合に、また治療のためよりも予防のための場合に、より少なくなる。このような治療は、必要な度に、かつ医師によって必要であると判断された時間にわたり、投与することができる。当業者には、投薬レジメまたは投与される阻害剤の治療上有効な量が各個人に最適化される必要があり得ることが理解されよう。医薬組成物は、約0.1から2000mgの範囲、好ましくは約0.5から500mgの範囲、最も好ましくは約1から200mgの間の活性成分を含有し得る。体重1kg当たり約0.01から100mg、好ましくは体重1kg当たり約0.1から約50mgの間、最も好ましくは体重1kg当たり約1から20mgの1日用量が適切であり得る。1日用量は、1日当たり1から4回に分けて投与することができる。
【0069】
本発明の製品は、好ましくは、気道に投与される。したがって、本発明はまた、本発明の製品を含むエアロゾル状の薬学的製剤を提供する。また、本発明の製品を含有する噴霧器または吸入剤も提供される。
【0070】
さらに、本発明の製品は、持続放出投薬形態などとしての製剤に適している場合がある。製剤は、場合によって一定期間にわたり例えば腸管または気道の特定の部分で活性作用物質を放出するように構成され得る。コーティング、外皮、および保護マトリクスを、例えば、乳酸・グリコール酸共重合体、リポソーム、マイクロエマルジョン、微粒子、ナノ粒子、またはワックスなどのポリマー物質から作製することができる。これらのコーティング、外皮、および保護マトリクスは、例えばステント、カテーテル、腹膜透析管、排出デバイスなどの留置型デバイスを被覆するために有用である。
【0071】
本発明の製品には、相乗的に有効な量の、本明細書において定義された各活性作用物質が含まれ得る。したがって、本発明には、相乗的に有効な量の(i)第1の抗バイオフィルム剤、(ii)第1の抗バイオフィルムとは異なり典型的には抗微生物ペプチドである第2の抗バイオフィルム剤を含む製品が含まれる。製品は、微生物の感染、例えばバイオフィルム感染の治療において前記作用物質を同時に、個別に、または逐次的に投与するための医薬品の製造において用いることができる。本明細書において用いられる「相乗的に」は、共に作用して、個別に用いられた作用物質の予想される組み合わせ効果よりも大きい効果をもたらす、本発明の製品の2つ以上の作用物質の作用を説明し得る。
【0072】
本発明のさらなる態様において、本発明の製品を塗布するかまたは接着させるための基質が提供される。好ましくは、基質は、創傷への塗布または創傷部位への送達に適している。好ましくは、基質によって、基質から創傷床への本発明の製品の活性作用物質の運搬が可能になり、それらの抗バイオフィルム効果が達成される。基質は、包帯、例えば創傷用の包帯であり得る。包帯は、布材料を含み得るか、または、コラーゲン様の材料であり得る。基質は、創傷への塗布に適した任意の形態であり得、典型的には、基質は、ヒドロゲル、コロイド、軟膏、クリーム、ゲル、フォーム、またはスプレーの形態であり得る。
【0073】
本発明の製品にはまた、消毒剤または殺生物剤として/において、適用することができる。これに関連して、本発明のペプチドまたは医薬組成物は、単独で、または他の殺菌作用物質と組み合わせて、治療される表面に塗布することができる。本明細書において用いられる場合、「治療される表面」は、本明細書において定義される基質であってよく、医療用デバイスおよび留置型デバイス、例えば、ステント、カテーテル、腹膜透析管、排出デバイス、人工関節、歯科インプラントなどを含み得る。
【0074】
方法および使用
本発明は、本発明に従った製品を環境に投与するステップを含む、前記環境におけるバイオフィルムの形成を予防する方法を提供する。本方法は、インビボであってもエクスビボであってもよい。
【0075】
一実施形態によると、本方法は、抗微生物ペプチドを投与するステップを含む。
【0076】
有利には、本方法は、
− 第1の抗バイオフィルム剤、および
− 第1の抗バイオフィルム剤とは異なる第2の抗バイオフィルム剤
を投与するステップを含み、第1および第2の抗バイオフィルム剤の少なくとも1つは、抗微生物ペプチド、例えば陽イオン性ペプチドである。
【0077】
環境は、細菌、真菌、酵母、ウイルス、および原生動物から選択される任意のバイオフィルム形成微生物を含み得る。
【0078】
典型的には、微生物は、細菌、例えばグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌である。細菌病原体は、例えばStaphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidisなどのStaphylococcus属種、例えばEnterococcus faecalisなどのEnterococcus属種、Streptococcus pyogenes、Listeria属種、Pseudomonas属種、例えばMycobacterium tuberculosisなどのMycobacterium属種、Enterobacter属種、Campylobacter属種、Salmonella属種、例えばStreptococcus群AまたはB、Streptoccocus pneumoniaeなどのStreptococcus属種、例えばHelicobacter pyloriなどのHelicobacter属種、例えばNeisseria gonorrhea、Neisseria meningitidisなどのNeisseria属種、Borrelia burgdorferi、例えばShigella flexneriなどのShigella属種、Escherichia coli、例えばHaemophilus influenzaeなどのHaemophilus属種、例えばChlamydia trachomatis、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia psittaciなどのChlamydia属種、Francisella fularensis、例えばBacillus anthracisなどのBacillus属種、例えばClostridium botulinumなどのClostridia属種、例えばYersinia pestisなどのYersinia属種、Treponema属種、例えばBurkholderia malleiおよびB pseudomalleiなどのBurkholderia属種からなる群から選択される細菌種に由来し得る。
【0079】
特に、細菌には、例えばPseudomonas aeruginosaなどのPseudomonas属種、例えばStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisなどのStaphylococcus属種、例えばHaemophilus influenzaなどのHaemophilus spp、例えばBurkholderia cepaciaなどのBurkholderia属種、Streptococcus属種、例えばPropionibacterium acnesなどのPropionibacterium属種が含まれ得る。好ましくは、細菌は、例えばPseudomonas aeruginosaなどのPseudomonas属種、ならびに例えばStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisなどのStaphylococcus属種から選択される。
【0080】
ウイルス病原体は、ヒト免疫不全ウイルス(HTV1および2)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV1および2)、エボラウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV−2、HPV−5、HPV−8、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−52、HPV−54、およびHPV−56)、パポバウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタインバーウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎およびC型肝炎ウイルス、天然痘ウイルス、ロタウイルス、またはSARSコロナウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来し得る。
【0081】
寄生病原体は、Trypanosoma属種(Trypanosoma cruzi、Trypansosoma brucei)、Leishmania属種、Giardia属種、Trichomonas属種、Entamoeba属種、Naegleria属種、Acanthamoeba属種、Schistosoma属種、Plasmodium属種、Crytosporidiwn属種、Isospora属種、Balantidium属種、Loa Loa、Ascaris lumbricoides、Dirofilaria immitis、例えばToxoplasma gondiiなどのToxoplasma ssp.からなる群から選択される寄生病原体に由来し得る。真菌病原体は、Candida属種(例えば、C.albicans)、Epidermophyton属種、Exophiala属種、Microsporiim属種、Trichophyton属種(例えば、T.rubrumおよびT.interdigitale)、Tinea属種、Aspergillus属種、Blastomyces属種、Blastoschizomyces属種、Coccidioides属種、Cryptococcus属種、Histoplasma属種、Paracoccidiomyces属種、Sporotrix属種、Absidia属種、Cladophialophora属種、Fonsecaea属種、Phialophora属種、Lacazia属種、Arthrographis属種、Acremonium属種、Actinomadura属種、Apophysomyces属種、Emmonsia属種、Basidiobolus属種、Beauveria属種、Chrysosporium属種、Conidiobolus属種、Cunninghamella属種、Fusarium属種、Geotrichum属種、Graphium属種、Leptosphaeria属種、Malassezia属種、Mucor属種、Neotestudina属種、Nocardia属種、Nocardiopsis属種、Paecilomyces属種、Phoma属種、Piedraia属種、Pneumocystis属種、Pseudallescheria属種、Pyrenochaeta属種、Rhizomucor属種、Rhizopus属種、Rhodotorula属種、Saccharomyces属種、Scedosporium属種、Scopulariopsis属種、Sporobolomyces属種、Syncephalastrum属種、Trichoderma属種、Trichosporon属種、Ulocladium属種、Ustilago属種、Verticillium属種、Wangiella属種の属の真菌病原体に由来し得る。
【0082】
さらなる実施形態によると、微生物は、真菌、特にカンジダであり得る。
【0083】
本発明の方法は、限定はしないが家庭、職場、実験室、産業環境、水域環境(例えば、パイプラインシステム)、本明細書において定義されるような留置型デバイスを含む医療用デバイス、歯科機器または歯科インプラント、動物の身体、例えばヒトの身体を含む、様々な環境におけるバイオフィルムの形成を最小化するため、好ましくは予防するために用いることができる。
【0084】
したがって、本発明の方法は、ヒトの歯または歯科インプラント、例えば義歯における、プラークまたはう蝕の形成を予防するために、口内で用いることができる。
【0085】
本発明の方法は、特に微生物の感染の治療において、ヒトの身体におけるバイオフィルムの形成を予防または制限するために用いることができる。バイオフィルムの感染に関連する症状には、局所的感染、口腔感染、および全身感染が含まれ得る。局所的感染には、創傷、潰瘍、および病変、例えば切り傷または火傷などの皮膚創傷、ならびにそれに関連する症状が含まれ得る。
【0086】
口腔感染には、歯肉炎、歯周炎、および粘膜炎が含まれ得る。
【0087】
全身感染には、嚢胞性線維症、および粘膜感染に関連する他の症状、例えば胃腸、尿生殖器、または呼吸器への感染が含まれ得る。
【0088】
本発明の別の態様は、治療上有効な量の本発明の製品を哺乳動物に投与することによって、哺乳動物、特にヒトにおける微生物バイオフィルムの感染の存在に関連する疾患または状態の進行を治療するか、予防するか、または遅らせる方法にある。
【0089】
「効果的な」量または「治療上有効な量」は、妥当な効果/リスク比に見合いながら、正しい医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく所望の効果をもたらすために十分な、1つまたは複数の活性物質の量を意味する。
【0090】
本発明の一態様によると、本方法は、抗微生物ペプチドを投与するステップを含む。
【0091】
有利には、本方法は、
− 第1の抗バイオフィルム剤、および
− 第1の抗バイオフィルム剤とは異なる第2の抗バイオフィルム剤
を投与するステップを含み、第1および第2の抗バイオフィルム剤の少なくとも1つは、抗微生物ペプチド、例えば陽イオン性ペプチドである。
【0092】
本発明はさらに、上記に概説した活性作用物質の組み合わせの予防法または治療法によって微生物の感染、特に微生物バイオフィルムの感染を治療するための医薬品の製造における、本発明の製品の使用を提供する。
【0093】
さらに、本発明は、予防法または治療法によって微生物の感染、特に微生物バイオフィルムの感染を治療するための医薬品の製造における、上記の抗微生物ペプチドの使用を提供する。
【0094】
したがって、本発明の製品は、皮膚および創傷感染、中耳感染、胃腸管感染、腹膜感染、尿生殖路感染、口腔軟組織感染、歯垢の形成、眼の感染(コンタクトレンズの汚染を含む)、心内膜炎、嚢胞性線維症における感染、ならびに本明細書において記載されるような留置型医療用デバイスの感染からなる群から選択される疾患または状態の予防、進行の予防、または治療において有用であり得る。
【0095】
本発明にはまた、本発明の製品を1つまたは複数の他の抗菌剤、例えば抗生物質と共に哺乳動物に投与する治療方法が含まれる。
【0096】
本発明は、驚くべきことに、ある分散剤、特に粘液溶解剤がバイオフィルムの存続細胞の増殖を阻害することを見出した。したがって、本発明にはまた、粘液溶解剤、例えばシステアミンを環境に投与することを含む、前記環境におけるバイオフィルムの形成を治療/予防する方法が含まれる。粘液溶解剤は、単独で、または別の抗微生物剤、例えば抗微生物ペプチドと組み合わせて投与することができる。
【0097】
本発明はまた、治療上有効な量の分散剤、特に粘液溶解剤、例えばシステアミンを投与することを含む予防法または治療法によって、微生物の感染、特に微生物バイオフィルムを治療するための方法を提供する。
【0098】
本発明はさらに、微生物の感染、特に微生物バイオフィルムの感染を治療するための医薬品の製造における、分散剤、特に粘液溶解剤、例えばシステアミンの使用を提供する。
【0099】
本明細書において言及される活性作用物質は、例えば、遊離酸、遊離塩基、エステル、ならびに他のプロドラッグ、塩、および互変異性体などの異なる形態で存在してもよく、本発明は、作用物質の全ての異型を含む。
【0100】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたり、文脈上別段の必要性がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が用いられる場合、明細書は、文脈上別段の必要性がない限り、複数形および単数形を考慮しているものと理解される。
【0101】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載される特性、整数、特徴、化合物、化学的部分、または基は、本明細書において記載されている任意の他の態様、実施形態、または実施例と矛盾しない限り、それらに適用可能であると理解される。
【0102】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたり、「含む(comprise)」および「含有する」という語、ならびにこれらの語の変型、例えば「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、「限定はしないが包含する」ことを意味し、他の部分、付加物、構成要素、整数、またはステップを排除することを意図したものではない(かつ、排除しない)。
【0103】
通常、「およそ」という用語は、この用語が適用される任意の数値の10%以下の範囲を包含することを意図したものである。
【0104】
本発明のさらなる態様および実施形態は、以下の記載および特許請求の範囲において説明される。
【0105】
以下、本発明を、以下の図面を参照して、例示としてのみ記載する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】P.aeruginosa ATCC BAA−47浮遊性細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の抗菌活性を示す図である。
【図2】P.aeruginosa ATCC BAA−47浮遊性細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図3】S.aureus DSM 11729浮遊性細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の抗菌活性を示す図である。
【図4】S.aureus DSM 11729浮遊性細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図5】グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌のバイオフィルム細胞に対するNP339の活性を示す図である。
【図6】グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の存続細胞に対するNP339の活性を示す図である。
【図7】グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌のバイオフィルム細胞に対するNP341の活性を示す図である。
【図8】グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の存続細胞に対するNP341の活性を示す図である。
【図9】グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌のバイオフィルム細胞に対するNM001(システアミン)の活性を示す図である。
【図10】グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の存続細胞に対するNM001(システアミン)の活性を示す図である。
【図11】P.aeruginosa ATCC BAA−47バイオフィルム細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図12】P.aeruginosa ATCC BAA−47存続細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の抗菌活性を示す図である。
【図13】P.aeruginosa ATCC BAA−47存続細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図14a】P.aeruginosa DSM 1128バイオフィルム細胞に対するNP339およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図14b】P.aeruginosa ATCC BAA−47バイオフィルム細胞に対するNP339およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図14c】P.aeruginosa DSM 1299バイオフィルム細胞に対するNP339およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図14d】P.aeruginosa ATCC27853バイオフィルム細胞に対するNP339およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図15a】P.aeruginosa DSM 1128存続細胞に対するNP339およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図15b】P.aeruginosa ATCC BAA−47存続細胞に対するNP339およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図16】S.aureus DSM 11729バイオフィルム細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の抗菌活性を示す図である。
【図17】S.aureus DSM 11729バイオフィルム細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図18】S.aureus DSM 11729存続細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の抗菌活性を示す図である。
【図19】S.aureus DSM 11729存続細胞に対するNP108およびNM001(システアミン)の組み合わせの抗菌活性を示す図である。
【図20a】P.aeruginosa 27853浮遊性細胞に対する、単独の、およびNP341と組み合わされた、粘液溶解剤N−アセチルシステインの活性を示す図である。
【図20b】P.aeruginosa 27853浮遊性細胞に対する、単独の、およびNP341と組み合わされた、粘液溶解剤N−アセチルシステインの活性を示す図である。
【図21a】P.aeruginosa 27853浮遊性細胞に対する、単独の、およびNP341と組み合わせた、NM001(システアミン)の活性を示す図である。
【図21b】P.aeruginosa 27853浮遊性細胞に対する、単独の、およびNP341と組み合わせた、NM001(システアミン)の活性を示す図である。
【図22】(a)24時間後の、未処理対照であるS.aureusバイオフィルムを示す図である。(b)2mg/mlのNM001(システアミン)で処理した24時間後のS.aureusバイオフィルムを示す図である。(c)0.2mg/mlのコリスチンで処理した24時間後のS.aureusバイオフィルムを示す図である。(d)2mg/mlのペプチドNP108で処理した24時間後のS.aureusバイオフィルムを示す図である。
【図23】(a)24時間後の、未処理対照であるS.aureusバイオフィルムを示す図である。(b)2mg/mlのNM001(システアミン)で処理した24時間後のS.aureusバイオフィルムを示す図である。(c)0.2mg/mlのコリスチンで処理した24時間後のS.aureusバイオフィルムを示す図である。(d)2mg/mlのペプチドNP108で処理した24時間後のS.aureusバイオフィルムを示す図である。
【図24】(a)24時間後の、未処理対照であるP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。(b)2mg/mlのNM001(システアミン)で処理した24時間後のP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。(c)0.2mg/mlのコリスチンで処理した24時間後のP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。(d)2mg/mlのペプチドNP108で処理した24時間後のP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。
【図25】(a)24時間後の、未処理対照であるP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。(b)2mg/mlのNM001(システアミン)で処理した24時間後のP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。(c)0.2mg/mlのコリスチンで処理した24時間後のP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。(d)2mg/mlのペプチドNP108で処理した24時間後のP.aeruginosaバイオフィルムを示す図である。
【図26】P.aeruginosa PAO1バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP432の活性を示す図である。
【図27】P.aeruginosa PAO1バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP445の活性を示す図である。
【図28】P.aeruginosa PAO1バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP458の活性を示す図である。
【図29】P.aeruginosa PAO1バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP462の活性を示す図である。
【図30】S.aureus ATCC25923バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP432の活性を示す図である。
【図31】S.aureus ATCC25923バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP445の活性を示す図である。
【図32】S.aureus ATCC25923バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP458の活性を示す図である。
【図33】S.aureus 25923バイオフィルムに対する、単独の、およびNM001(システアミン)と組み合わされた、またはNP108と組み合わされたNP462の活性を示す図である。
【0107】
表1:グラム陰性のP.aeruginosa株およびグラム陽性のStaphylococcus属種に対する、試験対象の抗微生物剤の活性の概要。
表2:S.epidermidis、S.aureus及びP.aeruginosaに対する、試験対象の抗微生物剤の活性の概要。
【0108】

【0109】

【0110】

【実施例】
【0111】
細菌バイオフィルムに対する抗微生物剤の活性
材料および方法
1.1 細菌株
Pseudomonas aeruginosa ATCC27853、P.aeruginosa BAA−47(PAO1)、P.aeruginosa DSM1128、P.aeruginosa DSM1299、およびS.epidermidis ATCC35984、S.epidermidis ATCC12228、Staphylococcus aureus 25923、およびメチシリン耐性Staphylococcus aureus DSM 11729(MRSA)(DSMZ、Braunschweig、Germany)をこの研究において用いた。P.aeruginosaの4つの臨床単離物(NH57388A〜D、Hoffmannら、2005頁、2007年)を得、抗微生物剤に対する感受性の試験に用いた。
【0112】
1.2 抗微生物化合物の調製
この研究において試験された抗微生物剤は、10〜20kDaのポリ−L−リシンに対応する陽イオン性ペプチドNP108、臭化水素酸塩、およびシステアミン(NM001)であった。両作用物質は、Sigma−Aldrich(Gillingham、UK)から入手し、ストック溶液を、14〜18MΩcmの純水中に20mg/mlで調製した(Purite HP40水精製システム、Oxon、UK)。溶解した後、調製物を0.22μmのフィルター(Millipore、Watford、England)を用いて濾過滅菌し、−20℃で保存した。
【0113】
以下のNovaBiotics抗微生物ペプチドもまた調べた。
NP339 dRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdR
NP340 Ac−dRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdR−CONH
NP341 dRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdRdR−CONH
NP352 RRRRRRRRRRRRRRR
NP432 RRRFRFFFRFRRR
NP438 HHHFRFFFRFRRR
NP441 HHPRRKPRRPKRRHH
NP445 KKFPWRLRLRYGRR
NP449 KKPRRKPRRPKRKK−システアミン
NP451 HHPRRKPRRPKRHH−システアミン
NP457 RRRRR−システアミン
NP458 RRRRRHH−システアミン
【0114】
NovaBiotics抗微生物ペプチドは、Fmoc合成を用いて、NeoMPS(Strasbourg、France)によって合成され、少なくとも95%の純度であった。
【0115】
1.3 細菌接種材料の調製
細菌接種材料は、CLSI M26−A法において記載されている0.5マクファーランド濁度標準で標準化された、ミューラーヒントン培養液において活性に増殖している培養物の希釈法によって得た。
【0116】
1.4 最小阻害濃度(MIC)の決定
バイオフィルム形成の予防を決定するために、細菌接種材料および抗微生物剤の両方をプレートに同時に添加した。プレートを37℃で24時間にわたりインキュベートし、光学密度をマイクロタイタープレートリーダー(BioTek Powerwave XS、Winooski、USA)で、625nmで読み取った。細菌の増殖の完全な阻害を示す抗微生物の最低濃度として、MICを得た。
【0117】
1.5 部分阻害濃度(FIC)の決定
FICは、抗微生物剤の組み合わせが相乗的、付加的、拮抗的、または中立的であるかどうかを示す相互作用係数に対応する。FICは、以下のように、組み合わされた作用物質の活性(作用物質A+作用物質BのMIC)を、単独の作用物質の活性(作用物質Aまたは作用物質BのMIC)と比較することによって決定される(Singhら、2000年)。
FIC=MICA[combination]/MICA[alone]+MICB[combination]/MICB[alone]
【0118】
2つの抗微生物剤の付加的な組み合わせは、1というFICインデックスによって示され、一方、1未満のFICインデックスは、相乗的な組み合わせを示す。中立的な組み合わせでは1から4の間のFICとなり、4を超えるFICインデックスは、2つの抗微生物剤の間での拮抗的な効果を示す。
【0119】
FICはまた、細菌バイオフィルムに対する、組み合わされた2つの抗微生物剤の相互作用を評価するためにも計算された。MICの代わりにMBECを用いて、同一の式が適用される。
【0120】
1.6 最小バイオフィルム根絶濃度(MBEC)の決定
ミューラーヒントン内の全容積が100μlの細菌接種材料を、96ウェルプレート(チャレンジプレート)の各ウェルに添加し、プレートを、回転振とうプラットフォーム(Grant−bio PS−3D、Shepreth、England)上で、24rpmで、37℃で24時間にわたりインキュベートして、バイオフィルムを形成させた。
【0121】
次に、チャレンジプレートを無菌PBS(1×)で1回すすぎ、ミューラーヒントン内の抗微生物剤の2倍連続希釈物をチャレンジプレートに添加した。チャレンジプレートを、回転振とうプラットフォーム(Grant−bio PS−3D、Shepreth、England)上で、24rpmで、37℃で24時間にわたりインキュベートした。
【0122】
各チャレンジプレートの上清を新たなプレート内に移し、光学密度を、マイクロタイタープレートリーダー(BioTek Powerwave XS、Winooski、USA)で、625nmで測定した。MBECを、細菌の増殖を示さない抗微生物の最低濃度によって得た。
【0123】
1.7 バイオフィルム内の存続細胞の推定
チャレンジプレートから上清を移した後、バイオフィルムを無菌PBS(1×)で1回すすぎ、4μMのSYTO9を含有する100μlのBacLight生存/死滅蛍光染色溶液(Invitrogen、Paisley、UK)および無菌PBS(1×)内の20μMのヨウ化プロピジウム(PI)を、チャレンジプレートのウェルに添加した。プレートを暗所で15分間にわたり室温でインキュベートし、蛍光を、感度を50に設定し、最下位の光学的位置を選択した、蛍光マイクロタイタープレートリーダー(BioTek Synergy HT、Winooski、USA)で、SYTO9およびPI蛍光についてそれぞれ485(ex)/528(em)および485(ex)/645(em)で読み取った。Axiovert 40蛍光顕微鏡(Zeiss、Gottingen、Germany)でバイオフィルムを直接観察することにより、生存している、および死滅した細菌の存在を同定することが可能となり、バイオフィルムの画像を100から400倍の倍率で得た。
【0124】
存続細胞の相対的な生存能力を、生存/死滅の蛍光測定値比によって決定し、顕微鏡での観察を用いて、生存細胞の存否の確認を行った。
【0125】
2. 結果
2.1 バイオフィルム形成の予防
グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の両方によるバイオフィルム形成の予防について評価するために、細菌接種材料および抗微生物剤をプレートに同時に添加した。抗微生物剤の濃度範囲は、グラム陰性細菌P.aeruginosa ATCC BAA−47に対しては0〜500μg/mlのNP108および0〜320μg/mlのシステアミンであり、グラム陽性のMRSAに対しては0〜1000μg/mlのNP108および0〜320μg/mlのシステアミンであった。
【0126】
2.1.1 P.aeruginosa ATCC BAA−47に対する活性
NP108のMICは62.5μg/mlであり、システアミンでは320μg/mlであった。NP108は250μg/mlで殺菌性であり、一方、システアミンは、320μg/mlまで殺菌性ではなかった(データは示していない)。
【0127】
160μg/mlのシステアミンの存在下では、NP108のMICは31.25μg/mlまで低減した。システアミンの濃度を2倍にすると(すなわち320μg/ml)、NP108の濃度にかかわらず、増殖は観察されなかった。
【0128】
この組み合わせについてのFICの決定は、抗微生物剤が付加的な効果(FIC=1)を有することを示す。さらに、125μg/mlのNP108および320μg/mlのシステアミンの存在下で殺菌活性が得られ(データは示していない)、このことは、これらの作用物質の付加的な効果を裏付けるものである。
【0129】
2.1.2 S.aureus DSM 11729に対する活性
NP108のMICは125μg/mlであり、システアミンでは320μg/ml超であった。NP108は125μg/mlで殺菌性であり、一方、システアミンは、320μg/mlまで殺菌性ではなかった(データは示していない)。
【0130】
システアミンの濃度が増大すると、任意の所与の濃度のNP108で、増殖の阻害が高まった。40μg/mlのシステアミンの存在下では、NP108のMICは31.25μg/mlまで低減し、320μg/mlのシステアミンを添加すると15.625μg/mlまで低下した。
【0131】
この組み合わせについてのFICの決定は、抗微生物剤が少なくとも付加的な効果(FIC<1)を有することを示す。さらに、31.25μg/mlのNP108および160μg/ml以上のシステアミンの存在下、ならびに62.5μg/mlのNP108および80μg/ml以上のシステアミンの存在下で殺菌活性が得られ(データは示していない)、このことは、これらの作用物質の付加的な効果を裏付けるものである。
【0132】
補足1は、S.aureus DSM 11729浮遊性細胞に対する、短い直鎖状アルギニンペプチド(NP339、NP340、NP341、およびNP352)の経時的な活性を示す。
【0133】
補足2は、S.aureus DSM11729およびP.aeruginosa BAA−47浮遊性細胞に対する、NP108、システアミン、組み合わされた両化合物の活性、ならびにNP339およびNP341の活性の概要である。
【0134】
2.2 形成されたバイオフィルムの破壊
細菌バイオフィルムに対するNP108およびシステアミンの活性の評価を、24時間齢のバイオフィルムで実施し、組み合わされた両化合物の活性もまた決定した。細菌バイオフィルムに対する抗微生物剤の活性を、バイオフィルム細胞および存続細胞に対するそれらの活性によって決定した。
【0135】
2.2.1 細菌バイオフィルムに対するNP339の活性
図5は、156から625μg/mlのMBECをもたらす、3つのStaphylococcus種のバイオフィルムに対するNP339の高い活性を示す。S.aureus 25923に対する最高用量のNP339での光学密度の増大は、微生物バイオフィルムの複合的で不均一な性質によるアーチファクトであると考えられる。対照的に、NP339はP.aeruginosa BAA−47(PAO1)の増殖を低減させたが、試験した最高用量(すなわち、5mg/ml)でも、バイオフィルム細胞の100%を阻害するには不十分であった。
【0136】
図6は、NP339が存続細胞に対して活性であることを証明するものである。試験対象の4つの株のバイオフィルム細胞に対するNP339の活性とは対照的に、NP339は、P.aeruginosa BAA−47(PAO1)の存続細胞よりもStaphylococcus種の存続細胞に対して活性が弱かった。NP339は、625μg/mlで、P.aeruginosa BAA−47(PAO1)存続細胞の生存能力を阻害することができた。
【0137】
2.2.2 細菌バイオフィルムに対するNP341の活性
NP339(図5)と同様に、NP341は、バイオフィルム細胞の生存能力の有意な低減を示した。MRSA 11729およびS.epidermidis 12228でのMBECは625μg/mlであった。NP341は、MRSA 11729およびP.aeruginosa BAA−47(PAO1)のバイオフィルム細胞の生存能力を、2から3倍、低減させた。
【0138】
NP339で見られるように、P.aeruginosa存続細胞の生存能力は、625μg/mlのNP341で完全に阻害された。3つのStaphylococcus種の存続細胞の生存能力は、25から50%減少した。
【0139】
2.2.3 細菌バイオフィルムに対するシステアミンの活性
図9は、システアミンが、試験対象のグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌のバイオフィルム細胞に対する抗微生物活性を有することを証明するものである。
【0140】
図10は、試験対象のグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の存続細胞に対するシステアミンの活性を示す。
【0141】
ここで示される結果は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌のバイオフィルムに対する、直鎖状の短い陽イオン性ペプチドNP339およびNP341の抗微生物活性を示す。これらの化合物は、グラム陰性細菌よりもグラム陽性細菌のバイオフィルム細胞に対して効果的であると考えられ、一方、これは存続細胞に対しては逆である。システアミンは、高い濃度でバイオフィルム細胞に対して活性を示したが、試験した最低濃度(すなわち、6.25mg/ml)で、グラム陽性およびグラム陰性の存続細胞の両方の生存能力を抑制した。
【0142】
2.2.4 P.aeruginosa ATCC BAA−47に対する、組み合わされたNP108およびシステアミンの活性
これらの2つの抗微生物剤の組み合わせは、250μg/mlのNP108および62.5から500μg/mlのシステアミンの存在下で、細菌の増殖を完全に阻害した。31.25μg/mlのシステアミンを500μg/mlのNP108に添加すると同様の効果が得られたが、31.25μg/mlのシステアミンと250μg/mlのNP108とを合わせると、細菌の増殖は部分的にしか阻害されなかった。
【0143】
これらのMBEC値(MBECNP108[alone]>500μg/ml、MBECNP108[combination]=250μg/ml、MBECcysteamine[combination]=62.5μg/ml、MBECcysteamine[alone]≧100.00μg/ml)で得られたFICは、およそ0.5であり、これは、これらの2つの抗微生物剤間の相乗効果を示す。これは、浮遊性細胞に対するNP108/システアミンの組み合わせの活性からの観察(図2)と一致する。
【0144】
存続細胞に対するNP108およびシステアミンの活性を、蛍光染色法を用いて評価して、細胞の相対的な生存能力を決定した。用いた核酸結合蛍光分子はSYTO9およびPIであり、これは、それぞれ、全ての細菌細胞(緑色の蛍光)および膜が崩壊した細胞(赤い蛍光)を通過する。したがって、放射された緑(生存)/赤(死滅)蛍光の比は、細菌集団の相対的な生存能力の指標であり、バイオフィルム内の存続細胞に対応する、残った生存細胞の存在を推定するために用いられる。
【0145】
図12は、NP108またはシステアミンで治療したバイオフィルムの相対的な生存能力が依然として顕著であったことを示し、このことは、P.aeruginosa ATCC BAA−47の存続細胞に対するこれらの化合物の活性の欠如を示す。
【0146】
図13は、NP108およびシステアミンの組み合わせが、単独のいずれかの化合物(図12)よりも、P.aeruginosa ATCC BAA−47の存続細胞に対して高い活性を示したことを証明するものである。これらの細胞に対する最も有効な組み合わせは、250〜500μg/mlのNP108および62.5〜500μg/mlのシステアミンであった。これらの組み合わせは、バイオフィルム内の最低の相対的な生存能力を示した。同様の結果が、31.25μg/mlのNP108および500μg/mlのシステアミンで得られ、250μg/mlのシステアミンでは部分的な阻害のみが観察された。
【0147】
存続細胞に対するこれらの化合物の活性は、バイオフィルム細胞に対して得られた最適な組み合わせのプロファイル(図11)に類似していた。さらに、蛍光染色されたバイオフィルムを顕微鏡によって直接的に観察すると、250〜500μg/mlのNP108および62.5〜500μg/mlのシステアミンの存在下では生存細胞が観察され得なかったため(データは示していない)、存続細胞に対するこれらの組み合わせの活性が裏付けられた。
【0148】
2.2.5 P.aeruginosaに対する組み合わされたNP339およびシステアミンの活性
図14(a)〜(d)は、Pseudomonas aeruginosaの4つの株に対する、最大10mg/mlまで増大する濃度のシステアミンと組み合わされた、NP339の3つの濃度、すなわち1μg/ml、10μg/ml、および100μg/mlの活性を示す。
【0149】
これらのデータは、システアミンと組み合わされたNP339の、P.aeruginosaバイオフィルム細胞に対する増大した抗微生物活性を明らかに実証するものである。以下の図面は、これらの株のうち2つの株の持続細胞に対するこれらの組み合わせの活性の例を示す。
【0150】
図16は、S.aureus DSM 11729バイオフィルム細胞に対するNP108およびシステアミンの活性を示す。システアミンでのMBECは250μg/mlであり、一方、NP108は125μg/mlでこれらの細胞の増殖を阻害した。
【0151】
NP108およびシステアミンの組み合わせは、31.25μg/mlのNP108および62.5μg/mlのシステアミンの存在下で、細菌の増殖の完全な阻害を示し、いずれかの化合物の濃度が低くなると、部分的な阻害を示した(図17)。したがって、これらのMBEC(MBECNP108[alone] 125μg/ml、MBECNP108[combination]=31.25μg/ml、MBECcysteamine[alone]=250μg/ml、MBECcysteamine[combination]=62.5μg/ml)で得られたFICは0.5であり、このことは、これらのグラム陽性細菌のバイオフィルムに対するこれらの2つの抗微生物剤間の相乗効果を示す。同様の結果が、グラム陰性細菌のバイオフィルムで観察された(図11)。これはまた、S.aureus DSM 11729の浮遊性細胞に対するNP108/システアミンの組み合わせの活性の観察結果(図4)と一致する。
【0152】
P.aeruginosa ATCC BAA−47存続細胞に対して観察された活性の欠如と同様に(図12)、NP108またはシステアミンで治療したS.aureus DSM 11729バイオフィルムの相対的な生存能力は依然として顕著であり、このことは、これらのグラム陽性細菌の存続細胞に対する、低濃度でのこれらの化合物の活性の欠如を示す(図18)。
【0153】
NP108およびシステアミンの組み合わせは、単独のいずれかの化合物よりも、S.aureus DSM 11729の存続細胞に対して高い活性を示した(図19)。これらの細胞に対する最も有効な組み合わせは、250〜500μg/mlのNP108および125〜250μg/mlのシステアミンであった。これらの組み合わせは、バイオフィルム内の最低の相対的な生存能力を示した。同様の結果が、62.5μg/mlのNP108および500μg/mlのシステアミンで得られた。いずれかの化合物の濃度が低くなった組み合わせは、バイオフィルム内の高い相対的な生存能力を示した。
【0154】
グラム陰性の存続細胞とは異なり、蛍光染色したS.aureus DSM 11729バイオフィルムを顕微鏡で直接観察すると、NP108およびシステアミンの組み合わされた最も高い濃度で、残った生存細胞の存在が示された(データは示していない)。
【0155】
表1は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対する、短いアルギニンペプチドNP339、NP341、ポリ−L−リシンNP108、システアミン、およびNP108とシステアミンとの組み合わせの活性の概要を示す。
【0156】

【0157】
注記:
1− 補足1は、Staphylococcus aureus DSM 11729に対する、試験対象の短いアルギニン抗微生物剤のMICを示す。
2− 補足2は、P.aeruginosa ATCC27853に対する、NP341と組み合わされた粘液溶解剤システアミンおよびN−アセチルシステインの活性を示す。
【0158】
補足1:データ(示されていない)は、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)DSM 11729の浮遊性細胞に対する、48時間の短い直鎖状アルギニンペプチドの活性を示す。凡例で示される試験対象の濃度範囲はmg/mlで示される。データ(示されていない)は、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)DSM 11729の浮遊性細胞に対する、48時間の短い直鎖状アルギニンペプチドの活性を示す。経時的な活性は、細菌の増殖の阻害が、抗微生物剤の用量および細胞への曝露時間に関連することを示す。完全な殺菌活性は、48時間で、0.5mg/mlを超える濃度のNP339、NP340、およびNP352で観察され、0.125および0.25mg/mlは、少なくとも24時間で完全な阻害を示し、0.06および0.03mg/mlなどの、より低い濃度は、それぞれ少なくとも20時間および15時間で完全な阻害を示した。0.25mg/mlが48時間で完全な阻害を示したことを除いて、同様の結果がNP341で得られた。
【0159】
補足2:しかし、3〜6mg/mlのN−アセチルシステインと組み合わされると、MBECに達するために必要なNP341はわずか205μg/mlである(図20a)。存続細胞に対して、これらの2つの化合物の組み合わせで活性の同様の増大が観察され、1024μg/mlのNP341+3128μg/mlのN−アセチルシステインは、存続細胞のおよそ75%を阻害し、これは、2つの化合物のいずれかを単独で用いた際に得られたものよりもはるかに高い阻害である(図20b)。
【0160】
NP341とシステアミンまたはN−アセチルシステインとの組み合わせは、単独のいずれかの化合物の活性と比較して増大した抗細菌活性を示す。P.aeruginosa ATCC27853に対するNP341単独のMBECは、2mg/mlを超え、システアミンでは100mg/ml超であった(図21a)。これは、P.aeruginosa ATCC27853のバイオフィルム細胞に対して、2つの化合物間で協調的な効果がないことを示す。しかし、このような協調は、存続細胞に対しては観察され、205μg/mlのNP341+3mg/mlのシステアミンは、存続細胞のおよそ75%を阻害し、これは、単独の2つの化合物のいずれかよりもはるかに高いものである(図21b)。
【0161】
NP339と組み合わせて用いる場合、システアミンを少量でも添加すると、NP339のMBEC値が低減されることが観察された(図14a〜d)。より興味深いことには、NP339とシステアミンとの組み合わせもまた、P.aeruginosa DSM1128およびP.aeruginosa BAA−47の存続細胞に対して増大した活性を示した(図15a〜b)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの抗バイオフィルム剤を含む製品であって、前記抗バイオフィルム剤の少なくとも1つが抗微生物ペプチドである、製品。
【請求項2】
他方の抗バイオフィルム剤が、分散剤または抗付着剤である、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
抗微生物ペプチドが、抗菌ペプチドである、請求項1または請求項2に記載の製品。
【請求項4】
抗微生物ペプチドが、式I:
((X)(Y) (I)
(式中、lおよびmは、1から10の整数、例えば1から5であり、nは、1から10の整数であり、XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、独立して、疎水性アミノ酸または陽イオン性アミノ酸である)に従ったアミノ酸を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項5】
抗微生物ペプチドが、XおよびYが陽イオン性アミノ酸である式(I)に従ったアミノ酸を含む、請求項4に記載の製品。
【請求項6】
抗微生物ペプチドが、2から200の間のアミノ酸を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
Xおよび/またはYが陽イオン性アミノ酸である、請求項1から6のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
Xおよび/またはYが、ヒスチジン、アルギニン、およびリシンからなる群から選択される、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
Xおよび/またはYが、アルギニンおよびリシンからなる群から選択される、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
分散剤が、バイオフィルムの粒子を分散させることができる作用物質である、請求項2から9のいずれか1項に記載の製品。
【請求項11】
分散剤が粘液溶解剤である、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
分散剤が酵素である、請求項10から12のいずれか1項に記載の製品。
【請求項13】
酵素が、DNase、アルギナーゼ、プロテアーゼ、およびカルボヒドラーゼからなる群から選択される、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
分散剤がアミンである、請求項10から12のいずれか1項に記載の製品。
【請求項15】
アミンがアミノチオールである、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
アミンが、アセチルシステインおよびシステアミンから選択される、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
分散剤が酸である、請求項10から12のいずれか1項に記載の製品。
【請求項18】
酸がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
抗付着剤が、細胞間、タンパク質間、および生物間の付着を阻害することができる作用物質である、請求項2から9のいずれか1項に記載の製品。
【請求項20】
抗付着剤が、ヒアルロナン、ヘパリン、およびカーボポール934からなる群から選択される、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
相乗的に有効な量の(i)第1の抗バイオフィルム剤、および(ii)第2の抗バイオフィルム剤を含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の製品であって、第2の抗バイオフィルム剤が、第1の抗バイオフィルム剤とは異なり、抗微生物ペプチドである、製品。
【請求項22】
消毒剤または殺生物剤として用いるための、請求項1から21のいずれか1項に記載の製品。
【請求項23】
医薬品として用いるための、請求項1から21のいずれか1項に記載の製品。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1項に記載の製品が塗布または接着されている基質。
【請求項25】
包帯、医療用デバイス、および留置型デバイスからなる群から選択される、請求項24に記載の基質。
【請求項26】
留置型デバイスが、ステント、カテーテル、腹膜透析管、排出デバイス、人工関節、および歯科インプラントからなる群から選択される、請求項25に記載の基質。
【請求項27】
請求項1から21のいずれか1項に記載の製品と、1つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、および/または担体とを含む、医薬組成物。
【請求項28】
微生物感染またはそれに関連する疾患もしくは状態の治療における、請求項1から21のいずれか1項に記載の製品の使用。
【請求項29】
微生物感染またはそれに関連する疾患もしくは状態の治療における、式Iに従ったアミノ酸を含む抗微生物ペプチドの使用。
【請求項30】
感染またはそれに関連する疾患もしくは状態が、皮膚および創傷感染、中耳感染、胃腸管感染、腹膜感染、尿生殖路感染、口腔軟組織感染、歯垢の形成、眼の感染、心内膜炎、嚢胞性線維症における感染、ならびに留置型医療用デバイスの感染からなる群から選択される、請求項28または29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
請求項1から21のいずれか1項に記載の製品または請求項24から26のいずれか1項に記載の基質を環境に投与するステップを含む、前記環境におけるバイオフィルムの形成を予防する方法。
【請求項32】
式Iに従ったアミノ酸を含む抗微生物ペプチドを環境に投与するステップを含む、前記環境におけるバイオフィルムの形成を予防する方法。
【請求項33】
環境が、細菌、真菌、酵母、ウイルス、および原生動物から選択されるバイオフィルム形成微生物を含む、請求項31または32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
微生物が細菌である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
細菌が、Pseudomonas属種、Staphylococcus属種、Haemophilus属種、Burkholderia属種、Streptococcus属種、Propionibacterium属種からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
細菌が、Pseudomonas属種およびStaphylococcus属種から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
細菌が、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、またはStaphylococcus epidermidisである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
環境が口腔である、請求項32から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ヒトの歯または歯科インプラントにおけるプラークまたはう蝕の形成を予防するための、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
治療上有効な量の
第1の抗バイオフィルム剤、および
第1の抗バイオフィルム剤とは異なる第2の抗バイオフィルム剤
の逐次投与または併用投与を含む予防法または治療法によって、微生物感染を治療する方法であって、第1および第2の抗バイオフィルム剤の少なくとも1つが抗微生物ペプチドである、方法。
【請求項41】
第1の抗バイオフィルム剤が抗微生物ペプチドであり、第2の抗バイオフィルム剤が、分散剤および抗付着剤から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
微生物感染が局所的感染である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
局所的感染が、創傷、潰瘍、および病変から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
微生物感染が口腔感染である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項45】
口腔感染が、歯肉炎、歯周炎、および粘膜炎から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
微生物感染が全身感染である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項47】
全身感染が粘膜感染である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
粘膜感染が、胃腸、尿生殖器、または呼吸器の感染である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
粘膜感染が嚢胞性線維症である、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
有効な量のシステアミンを環境に投与することを含む、前記環境におけるバイオフィルムの形成を治療または予防するための方法。
【請求項51】
微生物感染、特に微生物バイオフィルム感染の治療における、システアミンの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2012−522037(P2012−522037A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502770(P2012−502770)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000631
【国際公開番号】WO2010/112848
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(508066991)ノバビオティクス・リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】NOVABIOTICS LIMITED
【Fターム(参考)】