バイオマス原料の炭化水素液体輸送燃料への転換
炭素含有原料を液体輸送燃料に転換する方法が開示される。その方法は、炭素含有原料を主としてH2,CO,CO2およびN2からなる発生炉ガスに転換する工程と、発生炉ガスを基材触媒と反応させてフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物の組み合わせを生産する工程とを含んでいてもよく、FT生成物は液体輸送燃料を含む。FT生成物の一部は、追加量の液体輸送燃料を生産するように触媒的に変換されてもよい。FT生成物または変換されたFT生成物の一部は、追加量の安定化液体輸送燃料を生産するために水素化されてもよい。炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するために、1つ以上のモジュール式ユニットを利用するための装置も開示される。装置は、発生炉ガス反応器、フィッシャー・トロプシュ反応器、生成物変換反応器、および水素化反応器を含んでいてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、その全内容を参照によりすべての目的で本願に組み入れる、2008年8月8日に提出された、米国仮出願第61/087,327号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、バイオマス原料の炭化水素液体輸送燃料への転換に関する。
【背景技術】
【0003】
天然ガスを炭化水素液体輸送燃料に転換するための商用のガス・トゥー・リキッド(GTL)装置は、水素(H2)と一酸化炭素(CO)を含む合成ガス(a.k.a.合成ガス)への、天然ガス(または他の化石燃料をベースとする資源)の酸素吹き込み転換を用いた、多様な複合精製装置ベースの操作に基づくことが多い。
【0004】
炭素含有原料を合成ガスに転換するために、空気ではなく酸素を用いることが必要と考えられており、このことがプロセスの設備および運転コストを相当に増大させる。炭素含有材料をCOとH2の混合物にガス化させるために空気を用いることにより、窒素分子(N2)含量は大きくなる。CO,H2,COおよびN2の混合物は、一般には発生炉ガスと呼ばれる。発生炉ガス中の高いN2含量は、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成反応を妨害すると考えられてきた。合成ガスは、遷移金属をベースとする触媒によって触媒的に活性化される一連のフィッシャー・トロプシュ合成反応を介して、液体炭化水素燃料とワックスに転換される。主要なFT合成反応は、水素と一酸化炭素を液体炭化水素燃料と水に転換するものである。
【0005】
nCO+2nH2⇔−{CH2}n−+nH2O[反応1]
反応1が示すように、各CO分子は、炭化水素生成物(液体燃料とワックス)および1分子の水(H2O)を生成するために、2分子のH2を必要とする。バイオマス・トゥー・リキッド(BTL)装置において、水素欠乏合成ガス(約1:1モル比のCO:H2を含む)を生成するためのバイオマスのガス化は、反応1を維持することができない。したがって、BTL装置のためには、水蒸気の一部とガス化バイオマス中のCOを、CO2を副生成物としてさらなるH2に転換する水性ガスシフト(WGS)反応を介して、CO:H2比を調整してもよい。
【0006】
CO+H2O⇔H2+CO2[反応2]
多くのBTL装置において、WGS反応は、ガス中の約半分のCOが、等モル量の水蒸気(反応1から供給されるものであってもよい)と反応してH2とCOを生産するように、鉄をベースとするフィッシャー・トロプシュ触媒によって触媒される。残りのCOは、FT合成生成物に転換される。
【0007】
殆どの大規模GTLおよびBTL装置においては、高度に精製された合成ガス(主としてCOおよびH2、ある程度のCO2を含むが、N2は約5%未満)が、約1.72×106Pa(G)〜約2.75×106Pa(G)(250〜400psig)の圧力下において重パラフィンFT合成ワックスに転換される。一連の精製装置ベースの操作において、FT合成ワックス生成物は、ガソリンおよびディーゼル燃料生成物に分解され、保存中にそれらを安定化するように水素化される。商用GTL設備は、通常は非常に大きく(典型的には、一日に数千バレルのガソリンおよびディーゼル生成物を生産する)、ガス化および燃料アップグレーディング装置を支援するための、酸素および水素のオンサイト発生プラントを有する。
【0008】
残念ながら、大規模GTLおよびBTL装置は、建設に多額の設備投資を必要とする。また、FT燃料製造のために利用するバイオマス供給源の付近に、こうした装置を建設することができるかを制限する可能性のある規制、環境および都市計画当局の適切な許可を受ける必要もある。上記装置は、FT燃料をそれらの最終目的地(たとえば、ガソリンスタンド)に送達するための燃料輸送インフラに連結するか、その近くに配置する必要もある。これらの大規模装置に典型的な、多額の設備投資および供給源から最終用途への物流の難しさに鑑みて、より小さく分散された様式でFT燃料を生産するための新規かつより簡単な方法および装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の見識は、小さいバイオ精製所は経済性が悪いであろうというものであった。しかしながら、小規模のバイオ精製所は、それらの供給源近くの低コストあるいは場合によっては負のコストの原料を使用して、生成物の分配コストの大半だけでなく、原料と生成物の輸送を減らすか、無くしてしまうことも可能にする。この小規模パラダイムは、大幅に簡素化された転換プロセスと合わさって、原料が安く、輸送コストや不足故に比較燃料が高額となる場所に、小規模バイオ精製所を迅速に設立することを可能にすると考えられる。小型の工場組み立てのモジュール式バイオ精製所は、現場に建設される大規模なバイオ精製所に比べて、非常に短時間での設置、作動が可能となろう。
【0010】
現場で液体FT燃料を生産するための、小型のモジュール式液体燃料生成および加工装置について述べる。製法および装置は、FT液体燃料に転換されうる、空気中でガス化されたバイオマスから製造される発生炉ガスの生成を含んでいてもよい。この製法の利点は、空気(高価な純粋な酸素ではなく)を、FT合成において使用するガスを生産するために用いることができ、製法のコストと複雑性を大幅に低減できるということである。こうした製法と装置は、最初のFT生成物をガソリン、ディーゼル、および/または航空燃料などの液体燃料製品に精製することを含んでいてもよい。これらの小規模製法および装置は、大きさ、コストともに、従来の商用GTLおよびBTL装置のごくわずかですむ。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための方法を含む。本方法は、炭素含有原料を主としてH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換し、発生炉ガスを基材触媒と反応させて、フィッシャー・トロプシュ(FT)生成物(FT生成物は液体輸送燃料を含む)の組み合わせを生成させる工程を含んでいてもよい。本方法は、望ましくないFT生成物の一部を触媒的に変換させて、追加量の所望の液体輸送燃料を生産する工程を含んでいてもよい。さらに、本方法は、FT生成物の一部を水素化して、追加量の安定化された液体輸送燃料を生産する工程を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の実施形態は、炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための方法も含む。装置は、炭素含有原料を、主としてH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換するように動作可能な発生炉ガス反応器を含んでいてもよい。装置は、発生炉ガス反応器に連通するように結合されたフィッシャー・トロプシュ反応器を含んでいてもよく、フィッシャー・トロプシュ反応器は、単純な貫流に基づく一方向発生炉ガスの一部をFT生成物の組み合わせに転換するように動作可能であり、FT生成物は液体輸送燃料を含んでいる。装置は、フィッシャー・トロプシュ反応器に連通するように結合された生成物変換反応器を含んでいてもよく、生成物変換反応器は、FT生成物の一部を触媒的に転換して追加量の所望の液体輸送燃料を生産するように動作可能である。さらに、装置は、生成物変換反応器に連通するように結合された水素化反応器を含んでいてもよく、水素化反応器は、少なくとも部分的に副生成物ガス中の残余水素を供給源とする水素を用いて、FT生成物の一部を水素化して、追加量の安定化された液体輸送燃料を生産するように動作可能である。
【0013】
さらなる実施形態および特徴は、一部は以下の説明に記載するが、一部は明細書を検討することにより当業者に明らかになるか、本発明の実施によって知ることができるであろう。本発明の特徴および利点は、明細書に記載の手段、組み合わせ、および方法によって、実現および達成されてもよい。
【0014】
本発明の性質および利点は、明細書の残りの部分と図面を参照してさらに理解されるであろうが、図面中、いくつかの図面を通して類似の要素を記載するために同様の参照符号を用いる。いくつかの例において、参照符号に副符号を付け、その後にハイフンを付けて複数の類似の要素の1つを示す。存在する副符号に対する指定なく参照符号に言及する場合、すべての当該複数の類似要素に言及するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による炭素含有原料を液体輸送燃料へ転換する装置の選択された要素を示す簡略図。
【図2】本発明の実施形態による炭素含有原料を液体輸送燃料へ転換する方法における、選択された工程を示すフローチャート。
【図3A】本発明の実施形態による単一の装置モジュールの簡略図。
【図3B】本発明の実施形態による複数の連結された装置モジュールの簡略図。
【図4A】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4B】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4C】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4D】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4E】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図5A】本発明の実施形態による複数のFT反応器導管の束ねられた構成の例を示す図。
【図5B】本発明の実施形態による複数のFT反応器導管の束ねられた構成の例を示す図。
【図6】本発明の実施形態による冷却導管を保持するFT反応器導管の断面の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
炭素含有原料を、輸送燃料のなかでも、とりわけガソリン、ディーゼル、および航空燃料などの液体輸送燃料に転換するための方法および装置について説明する。炭素含有原料は、主として水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)および窒素(N2)を含む発生炉ガスを作るために空気の存在下でガス化されるバイオマス(たとえば、ウッドチップ)を含んでいてもよい。窒素は、空気によって大量に供給され、発生炉ガスの体積の約半分を占めることもある。
【0017】
発生炉ガスは、最初に窒素分子(N2)を除去することなく、直接、フィッシャー・トロプシュ反応器に送られてもよい。驚くべきことに、発生炉ガス中のN2がフィッシャー・トロプシュ触媒の機能性を妨害することはなく、むしろ、温度緩和ヒートシンクとして作用することによりFT生成物の生産速度を安定化させうることが発見された。N2の熱容量は、温度上昇のない、より大きな径のFT反応器(たとえば、転換FT反応器については、直径約2.54cm(約1インチ)に対して、約5.08〜約8.9cm(約2〜約3.5インチ))を可能にする。
【0018】
発生炉ガス中の原位置水性ガスシフト(WGS)反応を触媒するためにフィッシャー・トロプシュ触媒を選択または処理してもよい。バイオマス原料から作られる、窒素で希釈された発生炉ガスは典型的には、約1:0.7のCO:H2比を有するが、この比は、FT生成物の生成を維持するためには、約1:2に近くすべきである。フィッシャー・トロプシュ触媒がWGS反応を触媒できる場合、CO:H2比の調整は、物理的に離れたWGS反応器においてではなく、FT触媒部位において効率的に起こりうる。
【0019】
本発明の個々の装置は、従来のフィッシャー・トロプシュ装置よりも著しく簡単であり、バイオマス原料供給源(たとえば、雑木林)および/またはガレージ、ガソリンスタンド、マリーナ、空港などの輸送燃料貯蔵所に併設して小型で移動可能な運用ができるほど簡単なものでありうる。図3Aに示す単一ユニット300のような単一の独立型モジュール式ユニットを組み合わせて、より大きな液体燃料生産能力をもつ設備を作成してもよい。図3Bは、たとえば、2×3配列で配置された6つの個々のユニット302a〜fの構成を示している。個々のユニット302a〜fは、互いに連結されて、炭素含有原料を単一ユニット300に比べてより大量におよび/またはより高速で、液体輸送燃料および他のFT生成物に転換する。
【0020】
図3Bに示すユニット302a〜fの配列は、複数のユニットを互いに連結させうる多くの方法のうちの1つにすぎないことが理解されよう。ユニットのモジュール的な性質が、複数の連結されたユニットの調整における柔軟性を可能にする。たとえば、単一ユニットは、運用の燃料生産要件によって求められるように、1つまたはそれ以上の追加のモジュール式ユニットに連結されてもよい。個々のユニットは、燃料製品のニーズが時間とともに変化していくことに応じて、配列に追加したり配列から除去したりしてもよい。この柔軟なプロセスにより、コストの中でも、とりわけ建設コストと時間、燃料生産コスト、炭素原料を装置に、および液体燃料を最終用途の輸送車両に輸送するのに要するエネルギーを著しく低減させることができる。本装置および方法の実施形態のさらなる詳細については、以下に示す。
【0021】
例示的装置
図1は、本発明の実施形態によって炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための装置100の選択された要素の簡略図である。装置100は、炭素含有原料を空気と混合して発生炉ガスを作る発生炉ガス反応器102を含んでいてもよい。原料は、ガス状、液体または固体炭化水素を含んでいてもよい。これらの炭化水素の例としては、石炭、泥炭、プラスチック、重油、軽質オレフィン炭化水素、天然ガス、メタン、エタン、および/または他のガス状または液体アルカン、アルケンまたはアルキンが挙げられる。
【0022】
発生炉ガス反応器102は、炭素含有バイオマスおよび空気を発生炉ガスに転換するガス化反応器を含んでいてもよい。このバイオマスとしては、バイオマスのなかでも、とりわけ木質バイオマス、非木質バイオマス、セルロース製品、段ボール、繊維板、紙、プラスチックおよび食料品などが挙げられる。バイオマスとしては、ゴミの供給者が施設(たとえば、製造施設、オフィスビル、レストランなど)からゴミを除去してもらうために実際に料金を支払うような、負のコストを有しうる人間のゴミも挙げられる。多くのタイプのバイオマスは、油や石炭などの従来の炭化水素燃料源に比べて、硫黄および重金属の混入量が少ない。バイオマスの水分含量は、約5重量%〜約35重量%(たとえば、約5重量%〜約20重量%)に調整してもよく、ガス化反応器内に配置されて、ここで空気の存在下に加熱されて、発生炉ガスを形成する。
【0023】
原料がバイオマスの場合、発生炉ガスは、供給された空気からの酸素分子(O2)とバイオマスの部分的燃焼の生成物であってもよい。これは、バイオマスの最大部分を、完全に酸化されたH2OとCO2(この両方のガスが発生炉ガス中には存在するが)の代わりに、H2とCOに部分的に酸化するように設計された制御部分燃焼プロセスである。本装置の実施形態に組み込んでもよいモジュール式バイオマスガス化反応器が、2006年6月28日に提出され、名称を「自動化されたモジュール式バイオマス電力発生のための方法および装置(“Method And Apparatus For Automated,Modular,Biomass Power Generation”)」とし、その全内容があらゆる目的のために参照により本願に組み入れられる米国特許出願第11/427,231号明細書に記載されている。
【0024】
空気中の窒素分子(N2)は、炭素含有原料とは比較的非反応性であり、その殆どが発生炉ガス中に変化せずに残る。空気は約79体積%のN2を含み、N2は発生炉ガスの約40〜50体積%を占めうる。典型的には、従来のFT GTLおよびBTL装置は、空気分離ユニット(ASU)を用いて空気中の大半またはすべてのN2を除去し、ガス化装置102には純化された酸素だけを送って、FT反応器104に送るための低窒素含有合成ガスを作る。しかしながら、驚くべきことに、ガス化において用いられる空気からN2を分離する必要はなく、空気からの窒素によって希釈された発生炉ガスは、FT反応器104に直接送られてもよく、FT生成物を作るために成功裏に利用されるということが発見された。
【0025】
FT反応器104は、上記反応1に示すようにCOおよびH2をFT生成物に転換するための基材触媒を含んでいてもよい。基材触媒は、繊維金属および/または、鉄および/または酸化鉄などの遷移金属酸化物に基づく材料であってよい。触媒基材に使用される鉄含有鉱物としては、限定はされないが、鉱物のなかでもとりわけマグネタイトおよびヘマタイトが挙げられる。基材触媒は、CO:H2比を1:2に向けて傾けるための原位置水性ガスシフト(WGS)反応(反応2を参照のこと)も触媒するように選択および/または処理してもよい。たとえば、基材触媒が鉄含有触媒の場合、それをWGS反応触媒にする銅またはカリウム促進剤で処理してもよい。基材触媒は、基材触媒上のFT反応部位を活性化するために還元性雰囲気に曝してもよい。
【0026】
上述のように、窒素(N2)が発生炉ガス中に残っている場合には、その熱容量によって、より多くの量のFT基材触媒をFT反応器104中に充填できるようになるかもしれない。図4A〜Eは、本発明の実施形態によってFT基材触媒を保持するためのFT反応器導管の断面形状の例を示す。図4Aは、直径約5.1〜約8.9cm(約2〜約3.5インチ)の円筒形の管によって基材触媒が保持されうる円形導管幾何学形状を示しており、これに対し、従来のBTL装置については約2.54cm(約1インチ)である。図4B〜Eは、基材触媒のホルダが、正方形(図4B)、楕円形(図4C)、三角形(図4D)、台形(図4E)、および六角形(図4F)などの非円形形状を有する導管の幾何学形状を示したものである。さらに別の形状(たとえば、多角形、半球形など)を用いてもよいことが理解されよう。発生炉ガスは、約250℃から約300℃の温度で導管を流れるようにするとよい。窒素は、FT反応器104が、従来のBTL装置が約2.07×106Pa(G)(約300psig)付近で動作するのに比べ、約1.72×106Pa(G)(約250psig)以下(たとえば、1.03×106Pa(G)(150psig))のより低い圧力下で動作することを可能にしうる。
【0027】
また、複数の導管をFT反応器104中で多導管配列に束ねてもよいことも理解すべきである。図5Aは、たとえば、それぞれ円形の断面形状を有する複数の導管504の六角形配置502を示している。さらなる実施形態(図示せず)において、個々の導管は、2つまたはそれ以上の異なる断面形状を含むものであってもよく、異なる幾何学的配置(たとえば、正方形、三角形、円形、楕円形など)を有していてもよい。導管束のスケーラビリティが、個々の導管504の7つの配列502の六角形配置506を示した図5Bに例示されている。図5AおよびBは、図3AおよびBに示すような全モジュール式ユニットのスケーラビリティと同様に、FT反応器104のスケーラビリティを図示したものである。
【0028】
さらに、FT反応器104は、導管内のFT基材触媒と熱的に連結される冷却構造を保持する導管を含んでいてもよいことを理解すべきである。図6は、FT触媒基材604に加えて3本の内側冷却管606a〜cを保持する導管602の一例を示している。冷却管606a〜cは、周囲のFT触媒基材604から熱を吸収して、導管602から輸送する冷却剤608の流れを含んでいてもよい。冷却剤は、冷却管606a〜cと適合性があり、反応器の動作中にFT触媒基材604の温度を安定化できるような速度で熱エネルギーを吸収することのできる任意の冷却剤流体(すなわち、液体またはガス)であってよい。
【0029】
FT反応器104によって生成されたFT生成物は、ガソリン、合成パラフィンケロシン(SPK)、ディーゼル燃料、および航空燃料などの液体輸送燃料を含んでいてもよい。FT生成物は、パラフィンワックスなどのより高分子の炭化水素だけでなく、メタン、エタン、プロパン、ブタン、軽質オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレンおよびブチレン)などの低分子の炭化水素を含んでいてもよい。これらの低分子のおよび高分子の生成物は、生成物変換反応器106および水素化反応器108によってさらなる液体輸送燃料に転換されてもよい。
【0030】
FT反応器104には随意でホットワックストラップ105を連結してもよい。このトラップは、FT生成物の一部を構成する炭化水素ワックスを捕捉する。トラップ105は、有用なFT生成物でもあるワックスを回収するように構成してもよい。
【0031】
生成物変換反応器106は、より高分子の炭化水素(たとえば、ワックス)を液体輸送燃料に触媒的に分解してもよく、たとえば軽質オレフィン中の不飽和炭素間結合を縮合して、アルキル置換芳香族液体輸送燃料を製造してもよい。分解プロセスは、約20重量%から5重量%未満のより高分子のワックス様炭化水素FT生成物の量を低減するものであってよい。
【0032】
生成物変換反応器106は、ZSM−5合成ゼオライト(たとえば、H−ZSM−5)などのクラッキング触媒を含んでいてもよい。これらのゼオライトは、一般的な商用製品として市販されている。たとえば、本発明の生成物変換反応器106の実施形態において用いる適切なゼオライトとしては、ゼオリスト・インターナショナル製のH−ZSM−5が挙げられる。
【0033】
生成物変換反応器106によって生成される分解された炭化水素生成物のいくつかだけでなく、FT反応器104によって生成されるFT生成物のいくつかを、水素化反応器108において水素化させて、さらなる液体輸送燃料を製造してもよい。水素化反応器108は、副生成物ガス中に残った水素分子(H2)と、変換された、および/または変換されていないFT生成物中の不飽和炭素間結合との反応を触媒して、不飽和液体輸送燃料を生産する水素化触媒を含んでいる。FT反応器104中のFT触媒が、WGS反応をも触媒している場合には、副生成物ガス中には水素化反応器108のためにさらなる外部水素供給源が必要ないほど十分な水素分子が存在しうる。
【0034】
水素化触媒としては、アルミナ上0.5%パラジウムなどの、パラジウムまたはプラチナ含有触媒が挙げられる。この物質は、アルドリッヒ・ケミカル・カンパニー(Aldrich No.520675)から市販されている。
【0035】
例示的方法
図2は、本発明の実施形態による炭素含有原料を液体輸送燃料に転換する方法200における選択工程を示したフローチャートである。方法200は、炭素含有原料を発生炉ガスに転換する工程(202)を含んでいてもよい。原料がメタンなどの単純なアルカンの場合、メタンが空気によって部分的に酸化されることによって、発生炉ガスである、窒素分子中に希釈された合成ガス(すなわちH2+CO)が生じる。メタンにおけるC:H比は、バイオマスなどの他の炭素原料に比べて高いので、CO:H2比もまた高く、すでに持続的FT反応工程に必要な1:2比になっているかもしれない(反応1を参照のこと)。
【0036】
バイオマスのような原料を発生炉ガスにガス化させる場合には、CO:H2比は約1:0.7であり、1:2近くに調整(204)すべきである。この比の調整は、発生炉ガスが生成されるのと同じ場所において、フィッシャー・トロプシュ反応の部位における原位置で、別のWGS反応器において、またはこれらの場所の組み合わせにおいて、水性ガスシフト(WGS)反応によってなされてもよい。
【0037】
最初からまたはWGS反応の助けをかりて、発生炉ガスのCO:H2比が約1:2になったところで、触媒的FT反応によって発生炉ガスの少なくとも一部をFT生成物(206)に転換させてもよい。上述のように、FT生成物のいくつかは、追加の転換または処理を必要としない液体輸送燃料である。他のFT生成物は、液体輸送燃料になるには小さすぎるか、大きすぎる分子であり、これらの生成物の一部を、さらなる輸送燃料にさらに転換してもよい。
【0038】
これらのさらなる転換過程は、FT生成物をさらに触媒的に分解する工程を含んでいてもよい(208)。高分子のワックス様のFT生成物を、より低分子の液体輸送燃料に分解してもよく、またより低分子のFT生成物を組み合わせて、輸送燃料のオレフィン性アルキル置換芳香族成分を形成してもよい。芳香族化合物1モルの形成中に3モルの水素が放出されるが、これらをオレフィン生成物の水素化および飽和のために利用できる。転換過程は、FT生成物のいくつかを水素化する工程(210)を含んでいてもよい。これらには、まだ1つ以上の不飽和結合を有する触媒的に変換された生成物だけでなく、FT反応からの直接生成物を含んでいてもよい。
【0039】
本装置および方法によって生産される液体輸送燃料は、乗物のなかでも、とりわけ車、トラック、船、および航空機を含む輸送用の乗物において用いられる室温の液体およびガスを含んでいてもよい。本装置から出される最初の液体輸送燃料混合物は、従来の蒸留および精製技術によって精製輸送燃料に分離してもよい。燃料中には、硫黄および他の混入物が比較的少ないので、最終輸送燃料を製造するために必要なスクラバー/精製設備が少なくてすむ。
【0040】
実施形態は、炭素含有原料を液体輸送燃料ではなく炭化水素ワックスに優先して転換するための方法を含んでいてもよい。これらの実施形態は、FT生成物の触媒的分解および水素化をバイパスして、その代わりにそれらをFT反応の部位に1回以上再循環させる工程を含んでいてもよい。FT生成物をFT触媒にさらに暴露することにより、低分子の生成物がさらに結合して、炭化水素ワックスを含む、より高分子のものになる。重液および固体ワックスは、装置のホットワックストラップから回収してもよい。
【0041】
例示的装置
例示的装置は、バイオマスのガス化からの圧縮発生炉ガスで動作することが実証されている。こうした装置は、触媒活性の損失を殆どまたは全く伴わずに、繰り返し、中断し、温度循環を行い、液体FT輸送燃料の生産を再開することができた。続くFT生成物のハイオクタン合成ガソリンおよびハイセタン合成ディーゼル画分への分離は、単純な蒸留工程によって容易に達成される。
【0042】
例示的フィッシャー・トロプシュ反応器装置
FT反応器装置の実施形態は、FTプロセスを、小さい分散されたモジュール式用途により受け入れられやすくするために、比較的低い圧力(たとえば、約1.17×106Pa(G)(約170psig)から約1.65×106Pa(G)(約240psig))で動作する固定床発生炉ガス・トゥー・リキッド装置を含んでいてもよい。本装置において用いられるFT触媒は、FT合成反応だけでなく、原位置水性ガスシフト反応も触媒することのできる安価な鉄鉱物ベースの粒状物質に基づくものであってもよい。このように、ガス化されたバイオマスは、CO:H2のモル比を1:2近くに調整するために別のWGS反応器を通過する必要がない。
【0043】
基材触媒の調製は、基材を無機塩溶液の混合物と混合し、FTS反応に対するWGS反応の相対速度を調整することを含んでいてもよい。無機塩は、生産されるFT生成物の量とタイプに影響を与えるように選択してもよい。調製には、基材表面上の触媒部位を活性化するために、水素で基材を還元することを含んでいてもよい。さらに、触媒的に活性な型の炭素を、還元された基材上に沈積させてもよい。
【0044】
基材触媒は、発生炉ガス中の大量のN2を利用して、高温における液体FT輸送燃料の反応速度および収率を高めることができる。これに対し、従来のFT触媒は、N2が存在せず、主としてCOおよびH2を含む純粋な合成ガスを用いて作用するように設計されている。基材触媒は、発生炉ガスを、生成物のなかでも、とりわけメタン、エタン、プロパン、ブタン、軽質オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、ガソリン、合成パラフィンケロシン(SPK)、ディーゼル燃料およびワックスを含む様々なFT生成物に転換することができる。ワックスや軽質オレフィンなど、これらの生成物のいくつかは、クラッキング、重合、および/または水素化と組み合わせたアルキル化によって、さらなる安定な液体燃料に転換されてもよい。本発明の反応器装置の実施形態は、生成物の変換および/または水素化のための下流反応器を含んでいてもよい。
【0045】
例示的生成物変換反応器
下流加工工程において、高分子量のワックスを室温液体燃料に転換し、軽質オレフィンをメチルおよびエチル置換芳香族ガソリンおよびディーゼル構成物質に縮合するために、未加工のFT生成物をゼオライトクラッキング触媒の充填床に送ってもよい。ゼオライトは、ワックスを分解し、軽質オレフィンを芳香族化するためのゼオリスト・インターナショナル製のH−ZSM−5触媒であってよい。多目的ZSM−5ゼオライトは、当初は重油を分解し、オレフィンを重合させ、芳香族化合物をアルキル化し、メタノールを芳香族ガソリン抗生物質に転換するために1970年代にモービル・オイル・カンパニーによって開発された。最近の試験では、H−ZSM−5触媒が、ワックス様FT炭化水素を約20重量%〜約5重量%低下させることが実証された。
【0046】
例示的水素化反応器
別の下流加工工程において、生成物変換操作からの脱ワックス液体燃料を、オレフィン部位を飽和させて、液体燃料生成物を安定化させるために、パラジウム水素化触媒の固定床を通過させるようにしてもよい。アルミナ上の約0.5%パラジウム(たとえば、Aldrich No.520675)を含む水素化触媒を、水素化反応器において使用してもよい。この操作からの試験では、プロセスガス中の残留水素の部分圧(12体積%程度)が、反応性オレフィン部位を水素化および安定化するのに十分であることが示された。
【0047】
FT生成物分布の分析
BTL装置の実施形態からのFT生成物(a.k.a.合成燃料)をGC/MS分析したところ、分枝炭化水素が合成ガソリン画分の主たる構成物質であり、いくらかのメチルおよびエチル置換単環式芳香族化合物を伴うことが実証された。未加工の合成ガソリン画分は、予測される比較的高いオクタン価を有している。殆どの超低硫黄FT液体燃料と同様に、直鎖炭化水素は、CPCの合成ディーゼル(合成ディーゼル)製品の主たる構成物質である。しかしながら、我々の合成ディーゼルは、H−ZSM−5生成物変換操作からの少量の(たとえば、15重量%未満)メチルおよびエチル単環式芳香族化合物も含んでいる。これにより、望ましい低い曇点を有し、より典型的な高パラフィンFT燃料に比べて弾性シールに関して予期される問題の少ないFT燃料が得られる。
【0048】
推定生成物収率
卓上連続フロー装置は、2段階シミュレーションにおいて75%以上のCOの転換をみせたが、その半分は液体燃料のFT生産のためのCOの消費であり、残りの半分はさらなる水素を生成させ、WGS反応を介して廃水を除去するためであった。炭化水素生成物の70%がガソリンおよびディーゼル燃料画分であると想定すると、装置の予測される収率は、乾バイオマス1トンあたりに、合成燃料約159リットル(約42ガロン)である。この量の液体炭化水素燃料は、エタノール約257リットル(約68ガロン)分のエネルギーを含有する。
【0049】
WGS反応によるCOの消費は、装置の排ガスからの水素を回収および再利用するための水素選択性膜を採用することによって低減してもよいが、これにより、液体燃料の予測収率を15%増加させ、乾バイオマス1トンあたりの予測炭化水素が約182リットル(48ガロン)になる(1トンあたりエタノール約295リットル(78ガロン)に相当)。生成物の分離は、気液分離法および液体の蒸留による。この単経路プロセスからの副生成物ガスは、残留水素、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどを含む。この副生成物混合物は、可燃性であり、ボイラー内で燃焼させて蒸気を生み出すか、内燃または外燃機関の燃料となって、全プロセスに動力を供給するプロセス熱および電力を生み出すことができる。
【0050】
いくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱しない限りにおいて、様々な改変、代替構成および均等物を用いてもよいことは当業者によって理解されるであろう。さらに、本発明を不要に不明瞭にすることを避けるために、数多くの周知のプロセスおよび要素については説明をしなかった。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定するものとしてとらえられるべきでない。
【0051】
値の範囲が与えられる場合には、各介在する値は、その範囲の上限と下限の間の、文脈中で特記しない限り、下限の単位の10分の1までが具体的に開示されるものとする。記載範囲内の任意の記載値または介在値と、当該記載範囲内の任意の他の記載または介在値の間のそれぞれのより小さい範囲が含まれる。これらのより小さい範囲の上限および下限は、それぞれ独立して範囲内に含まれても除外されてもよく、より小さな範囲における、上限と下限の一方または両方が含まれる、もしくはその両方が含まれない各範囲もまた、記載範囲内の任意の具体的に除外された限界の支配下で本発明の範囲に含まれる。記載範囲が上限および下限の一方または両方を含む場合、それら含まれる上限および下限の一方または両方を除いた範囲もまた含まれる。
【0052】
本明細書および添付の請求項において用いる、単数形は、文脈中で明記しない限り複数の指示対象を含む。したがって、たとえば、「プロセス」という場合、複数のそうしたプロセスを含み、「触媒」という場合、1つ以上の触媒および当業者によって知られる均等物などを含む。
【0053】
また、本明細書および下記請求項において用いる「含む」は、記載の特徴、整数、成分または工程の存在を明記することを意図しており、1つ以上の他の特徴、整数、成分、工程、行為または群の存在または追加を除外するものではない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、その全内容を参照によりすべての目的で本願に組み入れる、2008年8月8日に提出された、米国仮出願第61/087,327号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、バイオマス原料の炭化水素液体輸送燃料への転換に関する。
【背景技術】
【0003】
天然ガスを炭化水素液体輸送燃料に転換するための商用のガス・トゥー・リキッド(GTL)装置は、水素(H2)と一酸化炭素(CO)を含む合成ガス(a.k.a.合成ガス)への、天然ガス(または他の化石燃料をベースとする資源)の酸素吹き込み転換を用いた、多様な複合精製装置ベースの操作に基づくことが多い。
【0004】
炭素含有原料を合成ガスに転換するために、空気ではなく酸素を用いることが必要と考えられており、このことがプロセスの設備および運転コストを相当に増大させる。炭素含有材料をCOとH2の混合物にガス化させるために空気を用いることにより、窒素分子(N2)含量は大きくなる。CO,H2,COおよびN2の混合物は、一般には発生炉ガスと呼ばれる。発生炉ガス中の高いN2含量は、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成反応を妨害すると考えられてきた。合成ガスは、遷移金属をベースとする触媒によって触媒的に活性化される一連のフィッシャー・トロプシュ合成反応を介して、液体炭化水素燃料とワックスに転換される。主要なFT合成反応は、水素と一酸化炭素を液体炭化水素燃料と水に転換するものである。
【0005】
nCO+2nH2⇔−{CH2}n−+nH2O[反応1]
反応1が示すように、各CO分子は、炭化水素生成物(液体燃料とワックス)および1分子の水(H2O)を生成するために、2分子のH2を必要とする。バイオマス・トゥー・リキッド(BTL)装置において、水素欠乏合成ガス(約1:1モル比のCO:H2を含む)を生成するためのバイオマスのガス化は、反応1を維持することができない。したがって、BTL装置のためには、水蒸気の一部とガス化バイオマス中のCOを、CO2を副生成物としてさらなるH2に転換する水性ガスシフト(WGS)反応を介して、CO:H2比を調整してもよい。
【0006】
CO+H2O⇔H2+CO2[反応2]
多くのBTL装置において、WGS反応は、ガス中の約半分のCOが、等モル量の水蒸気(反応1から供給されるものであってもよい)と反応してH2とCOを生産するように、鉄をベースとするフィッシャー・トロプシュ触媒によって触媒される。残りのCOは、FT合成生成物に転換される。
【0007】
殆どの大規模GTLおよびBTL装置においては、高度に精製された合成ガス(主としてCOおよびH2、ある程度のCO2を含むが、N2は約5%未満)が、約1.72×106Pa(G)〜約2.75×106Pa(G)(250〜400psig)の圧力下において重パラフィンFT合成ワックスに転換される。一連の精製装置ベースの操作において、FT合成ワックス生成物は、ガソリンおよびディーゼル燃料生成物に分解され、保存中にそれらを安定化するように水素化される。商用GTL設備は、通常は非常に大きく(典型的には、一日に数千バレルのガソリンおよびディーゼル生成物を生産する)、ガス化および燃料アップグレーディング装置を支援するための、酸素および水素のオンサイト発生プラントを有する。
【0008】
残念ながら、大規模GTLおよびBTL装置は、建設に多額の設備投資を必要とする。また、FT燃料製造のために利用するバイオマス供給源の付近に、こうした装置を建設することができるかを制限する可能性のある規制、環境および都市計画当局の適切な許可を受ける必要もある。上記装置は、FT燃料をそれらの最終目的地(たとえば、ガソリンスタンド)に送達するための燃料輸送インフラに連結するか、その近くに配置する必要もある。これらの大規模装置に典型的な、多額の設備投資および供給源から最終用途への物流の難しさに鑑みて、より小さく分散された様式でFT燃料を生産するための新規かつより簡単な方法および装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の見識は、小さいバイオ精製所は経済性が悪いであろうというものであった。しかしながら、小規模のバイオ精製所は、それらの供給源近くの低コストあるいは場合によっては負のコストの原料を使用して、生成物の分配コストの大半だけでなく、原料と生成物の輸送を減らすか、無くしてしまうことも可能にする。この小規模パラダイムは、大幅に簡素化された転換プロセスと合わさって、原料が安く、輸送コストや不足故に比較燃料が高額となる場所に、小規模バイオ精製所を迅速に設立することを可能にすると考えられる。小型の工場組み立てのモジュール式バイオ精製所は、現場に建設される大規模なバイオ精製所に比べて、非常に短時間での設置、作動が可能となろう。
【0010】
現場で液体FT燃料を生産するための、小型のモジュール式液体燃料生成および加工装置について述べる。製法および装置は、FT液体燃料に転換されうる、空気中でガス化されたバイオマスから製造される発生炉ガスの生成を含んでいてもよい。この製法の利点は、空気(高価な純粋な酸素ではなく)を、FT合成において使用するガスを生産するために用いることができ、製法のコストと複雑性を大幅に低減できるということである。こうした製法と装置は、最初のFT生成物をガソリン、ディーゼル、および/または航空燃料などの液体燃料製品に精製することを含んでいてもよい。これらの小規模製法および装置は、大きさ、コストともに、従来の商用GTLおよびBTL装置のごくわずかですむ。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための方法を含む。本方法は、炭素含有原料を主としてH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換し、発生炉ガスを基材触媒と反応させて、フィッシャー・トロプシュ(FT)生成物(FT生成物は液体輸送燃料を含む)の組み合わせを生成させる工程を含んでいてもよい。本方法は、望ましくないFT生成物の一部を触媒的に変換させて、追加量の所望の液体輸送燃料を生産する工程を含んでいてもよい。さらに、本方法は、FT生成物の一部を水素化して、追加量の安定化された液体輸送燃料を生産する工程を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の実施形態は、炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための方法も含む。装置は、炭素含有原料を、主としてH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換するように動作可能な発生炉ガス反応器を含んでいてもよい。装置は、発生炉ガス反応器に連通するように結合されたフィッシャー・トロプシュ反応器を含んでいてもよく、フィッシャー・トロプシュ反応器は、単純な貫流に基づく一方向発生炉ガスの一部をFT生成物の組み合わせに転換するように動作可能であり、FT生成物は液体輸送燃料を含んでいる。装置は、フィッシャー・トロプシュ反応器に連通するように結合された生成物変換反応器を含んでいてもよく、生成物変換反応器は、FT生成物の一部を触媒的に転換して追加量の所望の液体輸送燃料を生産するように動作可能である。さらに、装置は、生成物変換反応器に連通するように結合された水素化反応器を含んでいてもよく、水素化反応器は、少なくとも部分的に副生成物ガス中の残余水素を供給源とする水素を用いて、FT生成物の一部を水素化して、追加量の安定化された液体輸送燃料を生産するように動作可能である。
【0013】
さらなる実施形態および特徴は、一部は以下の説明に記載するが、一部は明細書を検討することにより当業者に明らかになるか、本発明の実施によって知ることができるであろう。本発明の特徴および利点は、明細書に記載の手段、組み合わせ、および方法によって、実現および達成されてもよい。
【0014】
本発明の性質および利点は、明細書の残りの部分と図面を参照してさらに理解されるであろうが、図面中、いくつかの図面を通して類似の要素を記載するために同様の参照符号を用いる。いくつかの例において、参照符号に副符号を付け、その後にハイフンを付けて複数の類似の要素の1つを示す。存在する副符号に対する指定なく参照符号に言及する場合、すべての当該複数の類似要素に言及するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による炭素含有原料を液体輸送燃料へ転換する装置の選択された要素を示す簡略図。
【図2】本発明の実施形態による炭素含有原料を液体輸送燃料へ転換する方法における、選択された工程を示すフローチャート。
【図3A】本発明の実施形態による単一の装置モジュールの簡略図。
【図3B】本発明の実施形態による複数の連結された装置モジュールの簡略図。
【図4A】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4B】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4C】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4D】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図4E】本発明の実施形態によるFT反応器導管の断面形状の例を示す図。
【図5A】本発明の実施形態による複数のFT反応器導管の束ねられた構成の例を示す図。
【図5B】本発明の実施形態による複数のFT反応器導管の束ねられた構成の例を示す図。
【図6】本発明の実施形態による冷却導管を保持するFT反応器導管の断面の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
炭素含有原料を、輸送燃料のなかでも、とりわけガソリン、ディーゼル、および航空燃料などの液体輸送燃料に転換するための方法および装置について説明する。炭素含有原料は、主として水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)および窒素(N2)を含む発生炉ガスを作るために空気の存在下でガス化されるバイオマス(たとえば、ウッドチップ)を含んでいてもよい。窒素は、空気によって大量に供給され、発生炉ガスの体積の約半分を占めることもある。
【0017】
発生炉ガスは、最初に窒素分子(N2)を除去することなく、直接、フィッシャー・トロプシュ反応器に送られてもよい。驚くべきことに、発生炉ガス中のN2がフィッシャー・トロプシュ触媒の機能性を妨害することはなく、むしろ、温度緩和ヒートシンクとして作用することによりFT生成物の生産速度を安定化させうることが発見された。N2の熱容量は、温度上昇のない、より大きな径のFT反応器(たとえば、転換FT反応器については、直径約2.54cm(約1インチ)に対して、約5.08〜約8.9cm(約2〜約3.5インチ))を可能にする。
【0018】
発生炉ガス中の原位置水性ガスシフト(WGS)反応を触媒するためにフィッシャー・トロプシュ触媒を選択または処理してもよい。バイオマス原料から作られる、窒素で希釈された発生炉ガスは典型的には、約1:0.7のCO:H2比を有するが、この比は、FT生成物の生成を維持するためには、約1:2に近くすべきである。フィッシャー・トロプシュ触媒がWGS反応を触媒できる場合、CO:H2比の調整は、物理的に離れたWGS反応器においてではなく、FT触媒部位において効率的に起こりうる。
【0019】
本発明の個々の装置は、従来のフィッシャー・トロプシュ装置よりも著しく簡単であり、バイオマス原料供給源(たとえば、雑木林)および/またはガレージ、ガソリンスタンド、マリーナ、空港などの輸送燃料貯蔵所に併設して小型で移動可能な運用ができるほど簡単なものでありうる。図3Aに示す単一ユニット300のような単一の独立型モジュール式ユニットを組み合わせて、より大きな液体燃料生産能力をもつ設備を作成してもよい。図3Bは、たとえば、2×3配列で配置された6つの個々のユニット302a〜fの構成を示している。個々のユニット302a〜fは、互いに連結されて、炭素含有原料を単一ユニット300に比べてより大量におよび/またはより高速で、液体輸送燃料および他のFT生成物に転換する。
【0020】
図3Bに示すユニット302a〜fの配列は、複数のユニットを互いに連結させうる多くの方法のうちの1つにすぎないことが理解されよう。ユニットのモジュール的な性質が、複数の連結されたユニットの調整における柔軟性を可能にする。たとえば、単一ユニットは、運用の燃料生産要件によって求められるように、1つまたはそれ以上の追加のモジュール式ユニットに連結されてもよい。個々のユニットは、燃料製品のニーズが時間とともに変化していくことに応じて、配列に追加したり配列から除去したりしてもよい。この柔軟なプロセスにより、コストの中でも、とりわけ建設コストと時間、燃料生産コスト、炭素原料を装置に、および液体燃料を最終用途の輸送車両に輸送するのに要するエネルギーを著しく低減させることができる。本装置および方法の実施形態のさらなる詳細については、以下に示す。
【0021】
例示的装置
図1は、本発明の実施形態によって炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための装置100の選択された要素の簡略図である。装置100は、炭素含有原料を空気と混合して発生炉ガスを作る発生炉ガス反応器102を含んでいてもよい。原料は、ガス状、液体または固体炭化水素を含んでいてもよい。これらの炭化水素の例としては、石炭、泥炭、プラスチック、重油、軽質オレフィン炭化水素、天然ガス、メタン、エタン、および/または他のガス状または液体アルカン、アルケンまたはアルキンが挙げられる。
【0022】
発生炉ガス反応器102は、炭素含有バイオマスおよび空気を発生炉ガスに転換するガス化反応器を含んでいてもよい。このバイオマスとしては、バイオマスのなかでも、とりわけ木質バイオマス、非木質バイオマス、セルロース製品、段ボール、繊維板、紙、プラスチックおよび食料品などが挙げられる。バイオマスとしては、ゴミの供給者が施設(たとえば、製造施設、オフィスビル、レストランなど)からゴミを除去してもらうために実際に料金を支払うような、負のコストを有しうる人間のゴミも挙げられる。多くのタイプのバイオマスは、油や石炭などの従来の炭化水素燃料源に比べて、硫黄および重金属の混入量が少ない。バイオマスの水分含量は、約5重量%〜約35重量%(たとえば、約5重量%〜約20重量%)に調整してもよく、ガス化反応器内に配置されて、ここで空気の存在下に加熱されて、発生炉ガスを形成する。
【0023】
原料がバイオマスの場合、発生炉ガスは、供給された空気からの酸素分子(O2)とバイオマスの部分的燃焼の生成物であってもよい。これは、バイオマスの最大部分を、完全に酸化されたH2OとCO2(この両方のガスが発生炉ガス中には存在するが)の代わりに、H2とCOに部分的に酸化するように設計された制御部分燃焼プロセスである。本装置の実施形態に組み込んでもよいモジュール式バイオマスガス化反応器が、2006年6月28日に提出され、名称を「自動化されたモジュール式バイオマス電力発生のための方法および装置(“Method And Apparatus For Automated,Modular,Biomass Power Generation”)」とし、その全内容があらゆる目的のために参照により本願に組み入れられる米国特許出願第11/427,231号明細書に記載されている。
【0024】
空気中の窒素分子(N2)は、炭素含有原料とは比較的非反応性であり、その殆どが発生炉ガス中に変化せずに残る。空気は約79体積%のN2を含み、N2は発生炉ガスの約40〜50体積%を占めうる。典型的には、従来のFT GTLおよびBTL装置は、空気分離ユニット(ASU)を用いて空気中の大半またはすべてのN2を除去し、ガス化装置102には純化された酸素だけを送って、FT反応器104に送るための低窒素含有合成ガスを作る。しかしながら、驚くべきことに、ガス化において用いられる空気からN2を分離する必要はなく、空気からの窒素によって希釈された発生炉ガスは、FT反応器104に直接送られてもよく、FT生成物を作るために成功裏に利用されるということが発見された。
【0025】
FT反応器104は、上記反応1に示すようにCOおよびH2をFT生成物に転換するための基材触媒を含んでいてもよい。基材触媒は、繊維金属および/または、鉄および/または酸化鉄などの遷移金属酸化物に基づく材料であってよい。触媒基材に使用される鉄含有鉱物としては、限定はされないが、鉱物のなかでもとりわけマグネタイトおよびヘマタイトが挙げられる。基材触媒は、CO:H2比を1:2に向けて傾けるための原位置水性ガスシフト(WGS)反応(反応2を参照のこと)も触媒するように選択および/または処理してもよい。たとえば、基材触媒が鉄含有触媒の場合、それをWGS反応触媒にする銅またはカリウム促進剤で処理してもよい。基材触媒は、基材触媒上のFT反応部位を活性化するために還元性雰囲気に曝してもよい。
【0026】
上述のように、窒素(N2)が発生炉ガス中に残っている場合には、その熱容量によって、より多くの量のFT基材触媒をFT反応器104中に充填できるようになるかもしれない。図4A〜Eは、本発明の実施形態によってFT基材触媒を保持するためのFT反応器導管の断面形状の例を示す。図4Aは、直径約5.1〜約8.9cm(約2〜約3.5インチ)の円筒形の管によって基材触媒が保持されうる円形導管幾何学形状を示しており、これに対し、従来のBTL装置については約2.54cm(約1インチ)である。図4B〜Eは、基材触媒のホルダが、正方形(図4B)、楕円形(図4C)、三角形(図4D)、台形(図4E)、および六角形(図4F)などの非円形形状を有する導管の幾何学形状を示したものである。さらに別の形状(たとえば、多角形、半球形など)を用いてもよいことが理解されよう。発生炉ガスは、約250℃から約300℃の温度で導管を流れるようにするとよい。窒素は、FT反応器104が、従来のBTL装置が約2.07×106Pa(G)(約300psig)付近で動作するのに比べ、約1.72×106Pa(G)(約250psig)以下(たとえば、1.03×106Pa(G)(150psig))のより低い圧力下で動作することを可能にしうる。
【0027】
また、複数の導管をFT反応器104中で多導管配列に束ねてもよいことも理解すべきである。図5Aは、たとえば、それぞれ円形の断面形状を有する複数の導管504の六角形配置502を示している。さらなる実施形態(図示せず)において、個々の導管は、2つまたはそれ以上の異なる断面形状を含むものであってもよく、異なる幾何学的配置(たとえば、正方形、三角形、円形、楕円形など)を有していてもよい。導管束のスケーラビリティが、個々の導管504の7つの配列502の六角形配置506を示した図5Bに例示されている。図5AおよびBは、図3AおよびBに示すような全モジュール式ユニットのスケーラビリティと同様に、FT反応器104のスケーラビリティを図示したものである。
【0028】
さらに、FT反応器104は、導管内のFT基材触媒と熱的に連結される冷却構造を保持する導管を含んでいてもよいことを理解すべきである。図6は、FT触媒基材604に加えて3本の内側冷却管606a〜cを保持する導管602の一例を示している。冷却管606a〜cは、周囲のFT触媒基材604から熱を吸収して、導管602から輸送する冷却剤608の流れを含んでいてもよい。冷却剤は、冷却管606a〜cと適合性があり、反応器の動作中にFT触媒基材604の温度を安定化できるような速度で熱エネルギーを吸収することのできる任意の冷却剤流体(すなわち、液体またはガス)であってよい。
【0029】
FT反応器104によって生成されたFT生成物は、ガソリン、合成パラフィンケロシン(SPK)、ディーゼル燃料、および航空燃料などの液体輸送燃料を含んでいてもよい。FT生成物は、パラフィンワックスなどのより高分子の炭化水素だけでなく、メタン、エタン、プロパン、ブタン、軽質オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレンおよびブチレン)などの低分子の炭化水素を含んでいてもよい。これらの低分子のおよび高分子の生成物は、生成物変換反応器106および水素化反応器108によってさらなる液体輸送燃料に転換されてもよい。
【0030】
FT反応器104には随意でホットワックストラップ105を連結してもよい。このトラップは、FT生成物の一部を構成する炭化水素ワックスを捕捉する。トラップ105は、有用なFT生成物でもあるワックスを回収するように構成してもよい。
【0031】
生成物変換反応器106は、より高分子の炭化水素(たとえば、ワックス)を液体輸送燃料に触媒的に分解してもよく、たとえば軽質オレフィン中の不飽和炭素間結合を縮合して、アルキル置換芳香族液体輸送燃料を製造してもよい。分解プロセスは、約20重量%から5重量%未満のより高分子のワックス様炭化水素FT生成物の量を低減するものであってよい。
【0032】
生成物変換反応器106は、ZSM−5合成ゼオライト(たとえば、H−ZSM−5)などのクラッキング触媒を含んでいてもよい。これらのゼオライトは、一般的な商用製品として市販されている。たとえば、本発明の生成物変換反応器106の実施形態において用いる適切なゼオライトとしては、ゼオリスト・インターナショナル製のH−ZSM−5が挙げられる。
【0033】
生成物変換反応器106によって生成される分解された炭化水素生成物のいくつかだけでなく、FT反応器104によって生成されるFT生成物のいくつかを、水素化反応器108において水素化させて、さらなる液体輸送燃料を製造してもよい。水素化反応器108は、副生成物ガス中に残った水素分子(H2)と、変換された、および/または変換されていないFT生成物中の不飽和炭素間結合との反応を触媒して、不飽和液体輸送燃料を生産する水素化触媒を含んでいる。FT反応器104中のFT触媒が、WGS反応をも触媒している場合には、副生成物ガス中には水素化反応器108のためにさらなる外部水素供給源が必要ないほど十分な水素分子が存在しうる。
【0034】
水素化触媒としては、アルミナ上0.5%パラジウムなどの、パラジウムまたはプラチナ含有触媒が挙げられる。この物質は、アルドリッヒ・ケミカル・カンパニー(Aldrich No.520675)から市販されている。
【0035】
例示的方法
図2は、本発明の実施形態による炭素含有原料を液体輸送燃料に転換する方法200における選択工程を示したフローチャートである。方法200は、炭素含有原料を発生炉ガスに転換する工程(202)を含んでいてもよい。原料がメタンなどの単純なアルカンの場合、メタンが空気によって部分的に酸化されることによって、発生炉ガスである、窒素分子中に希釈された合成ガス(すなわちH2+CO)が生じる。メタンにおけるC:H比は、バイオマスなどの他の炭素原料に比べて高いので、CO:H2比もまた高く、すでに持続的FT反応工程に必要な1:2比になっているかもしれない(反応1を参照のこと)。
【0036】
バイオマスのような原料を発生炉ガスにガス化させる場合には、CO:H2比は約1:0.7であり、1:2近くに調整(204)すべきである。この比の調整は、発生炉ガスが生成されるのと同じ場所において、フィッシャー・トロプシュ反応の部位における原位置で、別のWGS反応器において、またはこれらの場所の組み合わせにおいて、水性ガスシフト(WGS)反応によってなされてもよい。
【0037】
最初からまたはWGS反応の助けをかりて、発生炉ガスのCO:H2比が約1:2になったところで、触媒的FT反応によって発生炉ガスの少なくとも一部をFT生成物(206)に転換させてもよい。上述のように、FT生成物のいくつかは、追加の転換または処理を必要としない液体輸送燃料である。他のFT生成物は、液体輸送燃料になるには小さすぎるか、大きすぎる分子であり、これらの生成物の一部を、さらなる輸送燃料にさらに転換してもよい。
【0038】
これらのさらなる転換過程は、FT生成物をさらに触媒的に分解する工程を含んでいてもよい(208)。高分子のワックス様のFT生成物を、より低分子の液体輸送燃料に分解してもよく、またより低分子のFT生成物を組み合わせて、輸送燃料のオレフィン性アルキル置換芳香族成分を形成してもよい。芳香族化合物1モルの形成中に3モルの水素が放出されるが、これらをオレフィン生成物の水素化および飽和のために利用できる。転換過程は、FT生成物のいくつかを水素化する工程(210)を含んでいてもよい。これらには、まだ1つ以上の不飽和結合を有する触媒的に変換された生成物だけでなく、FT反応からの直接生成物を含んでいてもよい。
【0039】
本装置および方法によって生産される液体輸送燃料は、乗物のなかでも、とりわけ車、トラック、船、および航空機を含む輸送用の乗物において用いられる室温の液体およびガスを含んでいてもよい。本装置から出される最初の液体輸送燃料混合物は、従来の蒸留および精製技術によって精製輸送燃料に分離してもよい。燃料中には、硫黄および他の混入物が比較的少ないので、最終輸送燃料を製造するために必要なスクラバー/精製設備が少なくてすむ。
【0040】
実施形態は、炭素含有原料を液体輸送燃料ではなく炭化水素ワックスに優先して転換するための方法を含んでいてもよい。これらの実施形態は、FT生成物の触媒的分解および水素化をバイパスして、その代わりにそれらをFT反応の部位に1回以上再循環させる工程を含んでいてもよい。FT生成物をFT触媒にさらに暴露することにより、低分子の生成物がさらに結合して、炭化水素ワックスを含む、より高分子のものになる。重液および固体ワックスは、装置のホットワックストラップから回収してもよい。
【0041】
例示的装置
例示的装置は、バイオマスのガス化からの圧縮発生炉ガスで動作することが実証されている。こうした装置は、触媒活性の損失を殆どまたは全く伴わずに、繰り返し、中断し、温度循環を行い、液体FT輸送燃料の生産を再開することができた。続くFT生成物のハイオクタン合成ガソリンおよびハイセタン合成ディーゼル画分への分離は、単純な蒸留工程によって容易に達成される。
【0042】
例示的フィッシャー・トロプシュ反応器装置
FT反応器装置の実施形態は、FTプロセスを、小さい分散されたモジュール式用途により受け入れられやすくするために、比較的低い圧力(たとえば、約1.17×106Pa(G)(約170psig)から約1.65×106Pa(G)(約240psig))で動作する固定床発生炉ガス・トゥー・リキッド装置を含んでいてもよい。本装置において用いられるFT触媒は、FT合成反応だけでなく、原位置水性ガスシフト反応も触媒することのできる安価な鉄鉱物ベースの粒状物質に基づくものであってもよい。このように、ガス化されたバイオマスは、CO:H2のモル比を1:2近くに調整するために別のWGS反応器を通過する必要がない。
【0043】
基材触媒の調製は、基材を無機塩溶液の混合物と混合し、FTS反応に対するWGS反応の相対速度を調整することを含んでいてもよい。無機塩は、生産されるFT生成物の量とタイプに影響を与えるように選択してもよい。調製には、基材表面上の触媒部位を活性化するために、水素で基材を還元することを含んでいてもよい。さらに、触媒的に活性な型の炭素を、還元された基材上に沈積させてもよい。
【0044】
基材触媒は、発生炉ガス中の大量のN2を利用して、高温における液体FT輸送燃料の反応速度および収率を高めることができる。これに対し、従来のFT触媒は、N2が存在せず、主としてCOおよびH2を含む純粋な合成ガスを用いて作用するように設計されている。基材触媒は、発生炉ガスを、生成物のなかでも、とりわけメタン、エタン、プロパン、ブタン、軽質オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、ガソリン、合成パラフィンケロシン(SPK)、ディーゼル燃料およびワックスを含む様々なFT生成物に転換することができる。ワックスや軽質オレフィンなど、これらの生成物のいくつかは、クラッキング、重合、および/または水素化と組み合わせたアルキル化によって、さらなる安定な液体燃料に転換されてもよい。本発明の反応器装置の実施形態は、生成物の変換および/または水素化のための下流反応器を含んでいてもよい。
【0045】
例示的生成物変換反応器
下流加工工程において、高分子量のワックスを室温液体燃料に転換し、軽質オレフィンをメチルおよびエチル置換芳香族ガソリンおよびディーゼル構成物質に縮合するために、未加工のFT生成物をゼオライトクラッキング触媒の充填床に送ってもよい。ゼオライトは、ワックスを分解し、軽質オレフィンを芳香族化するためのゼオリスト・インターナショナル製のH−ZSM−5触媒であってよい。多目的ZSM−5ゼオライトは、当初は重油を分解し、オレフィンを重合させ、芳香族化合物をアルキル化し、メタノールを芳香族ガソリン抗生物質に転換するために1970年代にモービル・オイル・カンパニーによって開発された。最近の試験では、H−ZSM−5触媒が、ワックス様FT炭化水素を約20重量%〜約5重量%低下させることが実証された。
【0046】
例示的水素化反応器
別の下流加工工程において、生成物変換操作からの脱ワックス液体燃料を、オレフィン部位を飽和させて、液体燃料生成物を安定化させるために、パラジウム水素化触媒の固定床を通過させるようにしてもよい。アルミナ上の約0.5%パラジウム(たとえば、Aldrich No.520675)を含む水素化触媒を、水素化反応器において使用してもよい。この操作からの試験では、プロセスガス中の残留水素の部分圧(12体積%程度)が、反応性オレフィン部位を水素化および安定化するのに十分であることが示された。
【0047】
FT生成物分布の分析
BTL装置の実施形態からのFT生成物(a.k.a.合成燃料)をGC/MS分析したところ、分枝炭化水素が合成ガソリン画分の主たる構成物質であり、いくらかのメチルおよびエチル置換単環式芳香族化合物を伴うことが実証された。未加工の合成ガソリン画分は、予測される比較的高いオクタン価を有している。殆どの超低硫黄FT液体燃料と同様に、直鎖炭化水素は、CPCの合成ディーゼル(合成ディーゼル)製品の主たる構成物質である。しかしながら、我々の合成ディーゼルは、H−ZSM−5生成物変換操作からの少量の(たとえば、15重量%未満)メチルおよびエチル単環式芳香族化合物も含んでいる。これにより、望ましい低い曇点を有し、より典型的な高パラフィンFT燃料に比べて弾性シールに関して予期される問題の少ないFT燃料が得られる。
【0048】
推定生成物収率
卓上連続フロー装置は、2段階シミュレーションにおいて75%以上のCOの転換をみせたが、その半分は液体燃料のFT生産のためのCOの消費であり、残りの半分はさらなる水素を生成させ、WGS反応を介して廃水を除去するためであった。炭化水素生成物の70%がガソリンおよびディーゼル燃料画分であると想定すると、装置の予測される収率は、乾バイオマス1トンあたりに、合成燃料約159リットル(約42ガロン)である。この量の液体炭化水素燃料は、エタノール約257リットル(約68ガロン)分のエネルギーを含有する。
【0049】
WGS反応によるCOの消費は、装置の排ガスからの水素を回収および再利用するための水素選択性膜を採用することによって低減してもよいが、これにより、液体燃料の予測収率を15%増加させ、乾バイオマス1トンあたりの予測炭化水素が約182リットル(48ガロン)になる(1トンあたりエタノール約295リットル(78ガロン)に相当)。生成物の分離は、気液分離法および液体の蒸留による。この単経路プロセスからの副生成物ガスは、残留水素、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどを含む。この副生成物混合物は、可燃性であり、ボイラー内で燃焼させて蒸気を生み出すか、内燃または外燃機関の燃料となって、全プロセスに動力を供給するプロセス熱および電力を生み出すことができる。
【0050】
いくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱しない限りにおいて、様々な改変、代替構成および均等物を用いてもよいことは当業者によって理解されるであろう。さらに、本発明を不要に不明瞭にすることを避けるために、数多くの周知のプロセスおよび要素については説明をしなかった。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定するものとしてとらえられるべきでない。
【0051】
値の範囲が与えられる場合には、各介在する値は、その範囲の上限と下限の間の、文脈中で特記しない限り、下限の単位の10分の1までが具体的に開示されるものとする。記載範囲内の任意の記載値または介在値と、当該記載範囲内の任意の他の記載または介在値の間のそれぞれのより小さい範囲が含まれる。これらのより小さい範囲の上限および下限は、それぞれ独立して範囲内に含まれても除外されてもよく、より小さな範囲における、上限と下限の一方または両方が含まれる、もしくはその両方が含まれない各範囲もまた、記載範囲内の任意の具体的に除外された限界の支配下で本発明の範囲に含まれる。記載範囲が上限および下限の一方または両方を含む場合、それら含まれる上限および下限の一方または両方を除いた範囲もまた含まれる。
【0052】
本明細書および添付の請求項において用いる、単数形は、文脈中で明記しない限り複数の指示対象を含む。したがって、たとえば、「プロセス」という場合、複数のそうしたプロセスを含み、「触媒」という場合、1つ以上の触媒および当業者によって知られる均等物などを含む。
【0053】
また、本明細書および下記請求項において用いる「含む」は、記載の特徴、整数、成分または工程の存在を明記することを意図しており、1つ以上の他の特徴、整数、成分、工程、行為または群の存在または追加を除外するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有原料を液体輸送燃料に転換する方法であって、
炭素含有原料をH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換する工程と、
発生炉ガスを基材触媒と反応させて、フィッシャー・トロプシュ(FT)生成物の組み合わせを生産する工程であって、前記FT生成物は液体輸送燃料を含む工程と、
FT生成物の一部を触媒的に変換させて、追加量の液体輸送燃料を生産する工程と、
FT生成物の一部を水素化して、追加量の液体輸送燃料を生成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
炭素含有原料はバイオマスを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオマスは、約5重量%〜約35重量%の水分含量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
バイオマスは、約5重量%〜約20重量%の水分含量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭素含有原料は、メタン、石油精製副生成物、石炭または泥炭を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液体輸送燃料は、ガソリン、ディーゼル燃料、航空燃料、および合成パラフィンケロシンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
N2は、発生炉ガスの約30体積%〜約60体積%を構成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
発生炉ガスの一部を水性ガスシフト(WGS)反応に供することによりH2:COの比を増加させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
WGS反応は、基材触媒によって触媒されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
FT生成物は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、軽質オレフィン、ガソリン、合成パラフィンケロシン、ケロシン、航空燃料、ディーゼル燃料、燃料油、およびワックスからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
軽質オレフィンは、エチレン、プロピレンまたはブチレンを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
FT生成物の一部を触媒的に変換させる工程は、
FT生成物をゼオライト触媒に接触させる工程と、
ワックスを含むFT生成物構成物質を、ゼオライト触媒を用いてより低分子の2つ以上の炭化水素に分割する工程と、
軽質オレフィンを含むFT生成物構成物質をアルキル芳香族化合物に芳香族化させる工程と、
軽質オレフィンを重合させてより高分子のオレフィン化合物を形成する工程と含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アルキル芳香族化合物は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、プロピルトルエン、ブチルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、およびブチルトルエンからなる群より選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
FT生成物の一部を水素化する工程は、触媒的な変換工程によって生産される不飽和炭化水素を水素化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
FT生成物の一部を水素化する工程は、FT生成物の少なくとも一部をパラジウム、プラチナ、またはパラジウムとプラチナとの組み合わせを含む水素化触媒の固定床に流す工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
パラジウム水素化触媒は、アルミナ基材上に約0.5重量%のパラジウムを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
FT生成物の一部を水素化する工程は、水素化のための水素を、発生炉ガスのみから、または発生炉ガスから部分的に供給する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
FT生成物の一部を水素化する工程は、水素化のための水素を副生成物ガスまたは排副生成物ガスから回収される水素から供給することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
基材触媒を発生炉ガス中のN2によって冷却することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
発生炉ガスを基材触媒と反応させるための圧力は、約1.72×106Pa(G)(約250psig)以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
発生炉ガスを基材と反応させるための温度は、約300℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
発生炉ガスを基材触媒と反応させるための温度は、約250℃〜約300℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための装置であって、
炭素含有原料をN2,CO,H2およびCO2を含む発生炉ガスに転換するように動作可能な発生炉ガス反応器と、
発生炉ガス反応器に連通するように結合されたフィッシャー・トロプシュ反応器であって、フィッシャー・トロプシュ反応器は、発生炉ガスの一部をフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物の組み合わせに転換するように動作可能であり、FT生成物は液体輸送燃料を含む、フィッシャー・トロプシュ反応器と、
フィッシャー・トロプシュ反応器に連通するように結合された変換反応器であって、FT生成物の一部を触媒的に転換して、追加量の液体輸送燃料を生産するように動作可能な変換反応器と、
クラッキング反応器に連通するように結合された水素化反応器であって、FT生成物の一部を水素化して追加量の液体輸送燃料を生産するように動作可能な水素化反応器と
を含む装置。
【請求項24】
発生炉ガス反応器は、バイオマスおよび空気を発生炉ガスに転換するように動作可能なバイオマスガス化反応器であることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
バイオマスは、木質バイオマス、非木質バイオマス、セルロース製品、リグニン生成物または副生成物、段ボール、繊維ボード、紙、プラスチックおよび食料品からなる群より選択されることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、フィッシャー・トロプシュ触媒を充填した導管を含み、前記導管は、約19.4cm2(約3平方インチ)から約64.5cm2(約10平方インチ)の範囲の内部断面積を有することを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項27】
導管は、円形、楕円形、三角形、正方形、矩形、台形、多角形からなる群より選択される断面形状を有することを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
導管は、約5.1cm(約2インチ)から約7.6cm(約3.5インチ)の範囲の直径を有する円筒管を含むことを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項29】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、それぞれフィッシャー・トロプシュ触媒を充填した複数の導管を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項30】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、鉄を含むフィッシャー・トロプシュ触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項31】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、H2OとCOの間の水性ガスシフト反応を触媒して、H2およびCO2を生産するように動作可能なフィッシャー・トロプシュ触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項32】
変換反応器は、ワックスを触媒的に分解し、軽質オレフィンを芳香族化し、かつ軽質オレフィンを重合化することが可能なゼオライト触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項33】
ゼオライトは、ZSM−5ゼオライトを含むことを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項34】
水素化反応器は、パラジウムを含む水素化触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項35】
水素化触媒は、アルミナ上のパラジウムを含むことを特徴とする請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記装置は、単一モジュールの場合と比べてより高速で炭素含有原料を液体輸送燃料に転換する調整された装置を形成するように、1つまたはそれ以上の追加のモジュールと連結可能な単一モジュールであることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項37】
炭素含有原料を炭化水素ワックスに転換するための方法であって、
炭素含有原料をH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換する工程と、
発生炉ガスを基材触媒と反応させて、フィッシャー・トロプシュ(FT)生成物の組み合わせを生産する工程であって、FT生成物は炭化水素ガスおよび液体、および炭化水素ワックスの第1の部分を含む工程と、
炭化水素ガスおよび液体の少なくとも一部を基材触媒と反応させて炭化水素ワックスの第2の部分を生産する工程とを含む方法。
【請求項1】
炭素含有原料を液体輸送燃料に転換する方法であって、
炭素含有原料をH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換する工程と、
発生炉ガスを基材触媒と反応させて、フィッシャー・トロプシュ(FT)生成物の組み合わせを生産する工程であって、前記FT生成物は液体輸送燃料を含む工程と、
FT生成物の一部を触媒的に変換させて、追加量の液体輸送燃料を生産する工程と、
FT生成物の一部を水素化して、追加量の液体輸送燃料を生成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
炭素含有原料はバイオマスを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオマスは、約5重量%〜約35重量%の水分含量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
バイオマスは、約5重量%〜約20重量%の水分含量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭素含有原料は、メタン、石油精製副生成物、石炭または泥炭を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液体輸送燃料は、ガソリン、ディーゼル燃料、航空燃料、および合成パラフィンケロシンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
N2は、発生炉ガスの約30体積%〜約60体積%を構成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
発生炉ガスの一部を水性ガスシフト(WGS)反応に供することによりH2:COの比を増加させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
WGS反応は、基材触媒によって触媒されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
FT生成物は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、軽質オレフィン、ガソリン、合成パラフィンケロシン、ケロシン、航空燃料、ディーゼル燃料、燃料油、およびワックスからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
軽質オレフィンは、エチレン、プロピレンまたはブチレンを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
FT生成物の一部を触媒的に変換させる工程は、
FT生成物をゼオライト触媒に接触させる工程と、
ワックスを含むFT生成物構成物質を、ゼオライト触媒を用いてより低分子の2つ以上の炭化水素に分割する工程と、
軽質オレフィンを含むFT生成物構成物質をアルキル芳香族化合物に芳香族化させる工程と、
軽質オレフィンを重合させてより高分子のオレフィン化合物を形成する工程と含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アルキル芳香族化合物は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、プロピルトルエン、ブチルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、およびブチルトルエンからなる群より選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
FT生成物の一部を水素化する工程は、触媒的な変換工程によって生産される不飽和炭化水素を水素化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
FT生成物の一部を水素化する工程は、FT生成物の少なくとも一部をパラジウム、プラチナ、またはパラジウムとプラチナとの組み合わせを含む水素化触媒の固定床に流す工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
パラジウム水素化触媒は、アルミナ基材上に約0.5重量%のパラジウムを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
FT生成物の一部を水素化する工程は、水素化のための水素を、発生炉ガスのみから、または発生炉ガスから部分的に供給する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
FT生成物の一部を水素化する工程は、水素化のための水素を副生成物ガスまたは排副生成物ガスから回収される水素から供給することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
基材触媒を発生炉ガス中のN2によって冷却することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
発生炉ガスを基材触媒と反応させるための圧力は、約1.72×106Pa(G)(約250psig)以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
発生炉ガスを基材と反応させるための温度は、約300℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
発生炉ガスを基材触媒と反応させるための温度は、約250℃〜約300℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
炭素含有原料を液体輸送燃料に転換するための装置であって、
炭素含有原料をN2,CO,H2およびCO2を含む発生炉ガスに転換するように動作可能な発生炉ガス反応器と、
発生炉ガス反応器に連通するように結合されたフィッシャー・トロプシュ反応器であって、フィッシャー・トロプシュ反応器は、発生炉ガスの一部をフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物の組み合わせに転換するように動作可能であり、FT生成物は液体輸送燃料を含む、フィッシャー・トロプシュ反応器と、
フィッシャー・トロプシュ反応器に連通するように結合された変換反応器であって、FT生成物の一部を触媒的に転換して、追加量の液体輸送燃料を生産するように動作可能な変換反応器と、
クラッキング反応器に連通するように結合された水素化反応器であって、FT生成物の一部を水素化して追加量の液体輸送燃料を生産するように動作可能な水素化反応器と
を含む装置。
【請求項24】
発生炉ガス反応器は、バイオマスおよび空気を発生炉ガスに転換するように動作可能なバイオマスガス化反応器であることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
バイオマスは、木質バイオマス、非木質バイオマス、セルロース製品、リグニン生成物または副生成物、段ボール、繊維ボード、紙、プラスチックおよび食料品からなる群より選択されることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、フィッシャー・トロプシュ触媒を充填した導管を含み、前記導管は、約19.4cm2(約3平方インチ)から約64.5cm2(約10平方インチ)の範囲の内部断面積を有することを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項27】
導管は、円形、楕円形、三角形、正方形、矩形、台形、多角形からなる群より選択される断面形状を有することを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
導管は、約5.1cm(約2インチ)から約7.6cm(約3.5インチ)の範囲の直径を有する円筒管を含むことを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項29】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、それぞれフィッシャー・トロプシュ触媒を充填した複数の導管を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項30】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、鉄を含むフィッシャー・トロプシュ触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項31】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、H2OとCOの間の水性ガスシフト反応を触媒して、H2およびCO2を生産するように動作可能なフィッシャー・トロプシュ触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項32】
変換反応器は、ワックスを触媒的に分解し、軽質オレフィンを芳香族化し、かつ軽質オレフィンを重合化することが可能なゼオライト触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項33】
ゼオライトは、ZSM−5ゼオライトを含むことを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項34】
水素化反応器は、パラジウムを含む水素化触媒を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項35】
水素化触媒は、アルミナ上のパラジウムを含むことを特徴とする請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記装置は、単一モジュールの場合と比べてより高速で炭素含有原料を液体輸送燃料に転換する調整された装置を形成するように、1つまたはそれ以上の追加のモジュールと連結可能な単一モジュールであることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項37】
炭素含有原料を炭化水素ワックスに転換するための方法であって、
炭素含有原料をH2,CO,CO2およびN2を含む発生炉ガスに転換する工程と、
発生炉ガスを基材触媒と反応させて、フィッシャー・トロプシュ(FT)生成物の組み合わせを生産する工程であって、FT生成物は炭化水素ガスおよび液体、および炭化水素ワックスの第1の部分を含む工程と、
炭化水素ガスおよび液体の少なくとも一部を基材触媒と反応させて炭化水素ワックスの第2の部分を生産する工程とを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【公表番号】特表2012−504664(P2012−504664A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522243(P2011−522243)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/052980
【国際公開番号】WO2010/017372
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(507422404)コミュニティ パワー コーポレイション (2)
【出願人】(511170700)アフォグナック ネイティブ コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】AFOGNAK NATIVE CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/052980
【国際公開番号】WO2010/017372
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(507422404)コミュニティ パワー コーポレイション (2)
【出願人】(511170700)アフォグナック ネイティブ コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】AFOGNAK NATIVE CORPORATION
【Fターム(参考)】
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