説明

バリ取り装置

【課題】 コンベアに対するブラシ部材の相対高さの調整を自動で行え、調整のばらつきを抑え、かつ調整作業が容易なバリ取り装置を提供する。
【解決手段】 バリが上面に形成されたワークWを水平に搬送するコンベア1と、コンベア1の上方に配置されたバリ取りヘッド2と、コンベア1に対するバリ取りヘッド2の相対高さを調整する相対高さ調整機構3とを備える。バリ取りヘッド2は、ブラシ軸心O1回りに回転自在なロール状のブラシ部材20と、ブラシ部材20を旋回軸心O2回りに旋回自在に支持する旋回支持部材26とを有する。相対高さ調整機構3は、昇降駆動源50によりコンベア1またはバリ取りヘッド2を昇降させる。ブラシ部材20の下端を検出可能な投受光式のブラシ下端検出手段50と、ブラシ部材20の下端の検出に基づき昇降駆動源50を制御する昇降制御手段61とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレスやその他各種の板材加工機により、切断や孔明け加工等の板金加工が行われて生じたバリを除去するバリ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板金からなるワークのバリを除去するバリ取り装置として、バリが上面に形成されたワークをコンベアによって水平方向に搬送し、このワークに対して水平なブラシ軸心回りに回転するロール状のブラシ部材を上方から接触させることで、ワーク上面のバリを除去する構成のものがある(例えば特許文献1)。この種のバリ装置では、ブラシ部材をブラシ軸心回りに回転させるだけでなく、ブラシ部材のブラシ軸心方向の各部を満遍なくワークに接触させるために、ブラシ部材を鉛直方向の旋回軸心回りに旋回させる。
【0003】
前記ブラシ部材は、例えば芯部材の周囲に、短冊状の布やすりや紙やすりからなる無数のブラシ毛をロール状に植え付けたものである。このブラシ部材は、ワークとの接触によりブラシ毛の先端が摩耗することにより、使用に伴って各ブラシ毛の長さが短くなってくる。そのため、ブラシ毛の長さの変化に合わせて、コンベアに対するブラシ部材の相対高さを調整する必要がある。従来、このブラシの摩耗に対応する相対高さの調整は、昇降用駆動源に対する手動のスイッチ操作で行っていた。また、ワークの板厚等の加工条件を変更する場合にも、コンベアに対するブラシ部材の相対高さを調整する必要がある。従来、この加工原点の変更に伴う相対高さの調整も、手動のスイッチ操作で行なっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−58241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
板金からなるワークの場合、従来、手動のスイッチ操作でコンベアに対するブラシ部材の相対高さを調整していたため、調整のばらつきが生じた。また、バリ取り装置は全体がカバーに覆われており、このカバーの内部に身体を入れて相対高さの確認をしなければならず、調整作業が厄介であった。バリ取り装置のブラシの摩耗に対応する相対高さの調整は、定期的に、例えば1日に1回程度の割合で行う必要がある。さらに、加工原点の変更に伴う相対高さの調整が重なると、作業が多くなり、作業者の負担も増え、生産能率が低下する。
【0006】
この発明の目的は、コンベアに対するブラシ部材の相対高さの調整を自動で行え、調整のばらつきを抑え、かつ調整作業が容易なバリ取り装置を提供することである。
この発明の他の目的は、コンベアによるワークの搬送の邪魔にならず、設置上の制約が少ない、投受光式のブラシ下端検出手段の配置とすることである。
この発明のさらに他の目的は、コンベアを昇降させてコンベアに対するブラシ部材の相対高さを調整する場合に、加工原点の変更に伴うコンベア高さの調整を自動で行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のバリ取り装置は、バリが上面に形成されたワークを搬送面の上に載せて水平に搬送するコンベアと、このコンベアの上方に配置されたバリ取りヘッドと、前記コンベアに対する前記バリ取りヘッドの相対高さを調整する相対高さ調整機構とを備える。前記バリ取りヘッドは、水平なブラシ軸心回りに回転自在な少なくとも一つのロール状のブラシ部材と、このブラシ部材を鉛直方向の旋回軸心回りに旋回自在に支持する旋回支持部材とを有する。前記相対高さ調整機構は、前記コンベアまたは前記バリ取りヘッドを昇降自在に支持する昇降支持手段と、前記コンベアまたは前記バリ取りヘッドを昇降させる昇降駆動源とを有する。前記コンベアのフレームに設けられて前記ブラシ部材の下端を検出可能な投受光式のブラシ下端検出手段と、このブラシ下端検出手段による前記ブラシ部材の下端の検出に基づき前記昇降駆動源を制御する昇降制御手段とを設ける。
【0008】
この構成のバリ取り装置は、コンベアに対してバリ取りヘッドがワークの板厚等の加工条件に合った適正な相対高さとなるように、コンベアまたはバリ取りヘッドの高さを調整する。ブラシ部材をブラシ軸心回りに回転させつつ、バリ取りヘッドを旋回軸心回りに旋回させる。その状態で、コンベアにより、このコンベアの搬送面にワークを載せて水平に搬送する。搬送されるワークに対しブラシ部材の下端が接触して、ワークの上面に形成されたバリを除去する。ブラシ部材を旋回させることで、ブラシ部材のブラシ軸心方向の各部が均等にワークの上面に接触して、良好な状態でバリの除去が行われる。
【0009】
運転に伴ってブラシ部材が摩耗して短くなるため、例えば定期的に、コンベアに対するバリ取りヘッドの相対高さを調整する。また、ワークの板厚等の加工条件を変更する場合にも、コンベアに対するバリ取りヘッドの相対高さを調整する。これらの相対高さの調整は、投受光式のブラシ下端検出手段でブラシ部材の下端を検出し、その検出に基づき昇降制御手段が昇降駆動源を制御することで、自動で行われる。そのため、相対高さ調整のばらつきを抑えられる。また、作業者は、例えば相対高さの調整を開始するスイッチを操作するだけでよく、従来のように、バリ取り装置のカバーの内部に身体を入れて相対高さの確認をしなくて済むため、調整作業が容易である。
【0010】
ブラシ部材のブラシ毛は、一般的に短冊状の布や紙に砥粒を付着させたものであり、剛性を有していない。そのため、ブラシ毛は、上方や側方に位置するときには真っ直ぐな状態になっていないが、ブラシ軸心に対し下方に位置するときは真っ直ぐな状態になっている。ブラシ下端検出手段は、ブラシ軸心に対し下方に位置するブラシの下端を検出するため、その検出結果にブラシ毛の短縮が正確に反映される。そのため、上記相対高さの調整を精度良く行える。
【0011】
この発明において、前記ブラシ下端検出手段は、投光部および受光部が、コンベアの搬送路を挟んで両側にあって、これら投光部および受光部の対向方向が、コンベア搬送面に対して平行でかつコンベアの搬送方向に対して斜めとなる配置とされていてもよい。
ブラシ下端検出手段の投光部および受光部を、コンベアの搬送路を挟んで両側に配置すれば、コンベアによるワークの搬送の邪魔にならない。また、上記投光部および受光部の対向方向が、コンベア搬送面に対して平行でかつコンベアの搬送方向に対して斜めとなるように、投光部および受光部を配置とすると、投光部および受光部の設置上の制約が少なくなり、設計が容易になる。特に、ブラシ部材がコンベアの搬送路に沿って複数並んで設けられている場合には、上記のように投光部および受光部を配置とすることで、1組のブラシ下端検出手段で各ブラシ部材の下端のうちで最も下位に位置する下端を検出することが可能になる。
【0012】
この発明において、前記昇降支持手段は前記コンベアを昇降自在に支持するものであり、かつ前記昇降駆動源は前記コンベアを昇降させるものであり、前記相対高さ調整機構は、定められた基準高さに対する前記コンベアの高さを検出するコンベア高さ検出手段を有し、前記ブラシ下端検出手段は前記コンベアの搬送面から上方に離れた高さ位置にある場合、前記昇降制御手段は、前記ブラシ下端検出手段が前記ブラシ部材の下端を検出したとき、前記コンベア高さ検出手段が検出した高さに、前記ブラシ下端検出手段の前記コンベアの搬送面からの高さを加算した高さとなる高さ位置、またはこの高さ位置に定められたオフセット量を加算した高さ位置を原点位置とし、この原点位置に前記コンベアを昇降させるように前記昇降駆動源を制御するようにしてもよい。
【0013】
上記構成であると、ブラシ下端検出手段がブラシ部材の下端を検出すると、昇降制御手段の制御で昇降駆動源を駆動して、コンベアを原点位置に昇降させる。原点位置は、例えばコンベアの搬送面の高さ位置である。その場合、コンベア高さ検出手段が検出した高さに、ブラシ下端検出手段のコンベアの搬送面からの高さを加算することで、原点位置が求められる。また、原点位置は、ワークの上面の高さ位置としてもよい。その場合は、コンベア高さ検出手段が検出した高さに、ブラシ下端検出手段のコンベアの搬送面からの高さを加算し、さらに定められたオフセット量を加算することで、原点位置が求められる。上記オフセット量は、通常はワークの板厚である。オフセット量には、ワークの板厚以外に、例えばブラシ部材の下端がワークの上面を叩くように、ワークの上面とブラシ部材の下端との位置関係を調整する調整量を含む場合もある。
このように、コンベアを昇降させることで、加工原点の変更に伴うコンベア高さの調整を自動で行える。
【発明の効果】
【0014】
この発明のバリ取り装置は、バリが上面に形成されたワークを搬送面の上に載せて水平に搬送するコンベアと、このコンベアの上方に配置されたバリ取りヘッドと、前記コンベアに対する前記バリ取りヘッドの相対高さを調整する相対高さ調整機構とを備え、前記バリ取りヘッドは、水平なブラシ軸心回りに回転自在な少なくとも一つのロール状のブラシ部材と、このブラシ部材を鉛直方向の旋回軸心回りに旋回自在に支持する旋回支持部材とを有し、前記相対高さ調整機構は、前記コンベアまたは前記バリ取りヘッドを昇降自在に支持する昇降支持手段と、前記コンベアまたは前記バリ取りヘッドを昇降させる昇降駆動源とを有し、前記コンベアのフレームに設けられて前記ブラシ部材の下端を検出可能な投受光式のブラシ下端検出手段と、このブラシ下端検出手段による前記ブラシ部材の下端の検出に基づき前記昇降駆動源を制御する昇降制御手段とを設けたため、コンベアに対するブラシ部材の相対高さの調整を自動で行え、調整のばらつきを抑え、かつ調整作業が容易である。
【0015】
前記ブラシ下端検出手段は、投光部および受光部が、コンベアの搬送路を挟んで両側にあって、これら投光部および受光部の対向方向が、コンベア搬送面に対して平行でかつコンベアの搬送方向に対して斜めとなる配置とされている場合は、投光部および受光部が、コンベアによるワークの搬送の邪魔にならず、設置上の制約が少ない。
【0016】
前記昇降支持手段は前記コンベアを昇降自在に支持するものであり、かつ前記昇降駆動源は前記コンベアを昇降させるものであり、前記相対高さ調整機構は、定められた基準高さに対する前記コンベアの高さを検出するコンベア高さ検出手段を有し、前記ブラシ下端検出手段は前記コンベアの搬送面から上方に離れた高さ位置にあり、前記昇降制御手段は、前記ブラシ下端検出手段が前記ブラシ部材の下端を検出したとき、前記コンベア高さ検出手段が検出した高さに、前記ブラシ下端検出手段の前記コンベアの搬送面からの高さを加算した高さとなる高さ位置、またはこの高さ位置に定められたオフセット量を加算した高さ位置を原点位置とし、この原点位置に前記コンベアを昇降させるように前記昇降駆動源を制御すると、加工原点の変更に伴うコンベア高さの調整を自動で行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかるバリ取り装置の機構部分の破断正面図に制御系のブロック図を加えた図、(B)は同機構部分を異なる断面で示す破断正面図の部分図である。
【図2】同バリ取り装置の機構部分の破断側面図である。
【図3】同バリ取り装置の機構部分の平面図である。
【図4】(A)は同バリ取り装置のブラシ部材の斜視図、(B)はそのブラシ毛の拡大斜視図である。
【図5】コンベアの昇降高さの説明図である。
【図6】この発明の異なる実施形態にかかるバリ取り装置の主要部の平面図である。
【図7】この発明のさらに異なる実施形態にかかるバリ取り装置の主要部の平面図である。
【図8】この発明のさらに異なる実施形態にかかるバリ取り装置の主要部の平面図である。
【図9】この発明のさらに異なる実施形態にかかるバリ取り装置の主要部の平面図である。
【図10】この発明のさらに異なる実施形態にかかるバリ取り装置の主要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1ないし図3に示すように、このバリ取り装置は、ワークWを載せて水平に搬送するコンベア1と、このコンベア1の上方に配置されたバリ取りヘッド2と、前記コンベア1に対する前記バリ取りヘッド2の相対高さを調整する相対高さ調整機構3とを備える。これらコンベア1、バリ取りヘッド2、および相対高さ調整機構3は、上下に長い直方体形状の機枠4に組み付けられている。機枠4の前面、背面、および左右の側面には、一部の開口(図示せず)を除いてカバー5が取り付けられている。
【0019】
コンベア1は、前記機枠4を前後に貫通して水平に設置されている。コンベア1は、コンベアフレーム10の前後両端に配した従動ローラ11と駆動ローラ12とに無端の搬送ベルト13を掛装したベルトコンベアであり、搬送ベルト13の上面が搬送面13aとされる。搬送用モータ14の回転が、ベルト、チェーン等の無端可撓部材を用いた伝動装置15を介して駆動ローラ12に伝達されて、搬送ベルト13が作動する。正転状態では、搬送面13aが前方から後方へ移動する。なお、後述する伝動装置31,36,39,51も、ベルト、チェーン等の無端可撓部材を用いた伝動装置である。
【0020】
バリ取りヘッド2は、水平なブラシ軸心O1回りに回転自在なロール状のブラシ部材20を有する。このブラシ部材20は、図4(A)のように、中心が前記ブラシ軸心O1と一致する中心軸21の外周に筒状体22を嵌合して設け、この筒状体22の外周に無数のブラシ毛23を放射状に植え込んだものであり、外形がロール状をしている。図4(B)のように、各ブラシ毛23は、布や紙製の短冊状片23aの表面に砥粒23bを付着させたものである。短冊状片23aの幅方向が円周方向となるように、換言すれば中心軸21の軸方向に対して直交方向となるように、各ブラシ毛23が筒状体22に植え込まれている。なお、ロール状のブラシ部材20の外周部となる短冊状片23aの先端部分は、垂れや、曲がり、ねじれ等がランダムに生じていてもよい。
【0021】
図1(A)に示すように、上記ブラシ部材20は、中心軸21の両端がそれぞれ軸受25を介して旋回支持部材26に支持されることで、水平なブラシ軸心O1回りに回転自在となっている。旋回支持部材26は、下部が二股に分かれた形状であって、上端がスラスト軸受27を介して機枠4の上部フレーム部4aに鉛直方向の旋回軸心O2回りに旋回自在に支持され、二股になった下端で前記ブラシ部材20の中心軸21を回転自在に支持している。
【0022】
ブラシ部材20は、機枠4の背面部に設置したブラシ回転用モータ30(図3)の回転動力により、ブラシ軸心O1回りに回転させられる。詳しくは、ブラシ回転用モータ30の回転が、伝動装置31(図3)を介して旋回支持部材26の旋回入力軸32に伝達され、この旋回入力軸32から一対のベベルギア33,34を介して水平伝動軸35へ伝達され、さらに水平伝動軸35から伝動装置36を介してブラシ部材20の中心軸21へ伝達される。
【0023】
また、旋回支持部材26は、機枠4の背面部に設置した旋回用モータ38(図3)の回転駆動により、旋回軸心O2回りに旋回させられる。詳しくは、旋回用モータ38の回転が、伝動装置39(図3)を介して旋回支持部材26の上端に固定したプーリ39aに伝達される。プーリ39aは、伝動装置39の一構成要素である。
【0024】
相対高さ調整機構3は、この実施形態の場合、コンベア1を昇降させることで、コンベア1に対するバリ取りヘッド2の相対高さを調整する構成である。図1(A)および図2に示すように、コンベアフレーム10には、各左右フレーム部10aの前後2箇所ずつ、計4箇所に垂下部材41が設けられ、各垂下部材41にそれぞれ固定された昇降体42が、機枠4に設けられた鉛直方向の昇降ガイド43に摺動自在に嵌合している。昇降体42と昇降ガイド43とで昇降支持手段44を構成し、この昇降支持手段44によりコンベア1を昇降自在に支持している。
【0025】
また、図1(B)および図2に示すように、各左右フレーム部10aのそれぞれに、前後一対の垂下部材41間に架け渡して水平部材45が設けられ、各水平部材45の前後中央部に鉛直方向のねじ孔を有するボールナット46が固定して設けられている。左右のボールナット46にはねじ軸47がそれぞれ螺合し、ボールナット46とねじ軸47とでボールねじ機構48を構成している。
【0026】
上記ボールねじ機構48のねじ軸47は、機枠4の下部に設置したサーボモータからなる昇降駆動源50により回転駆動させる。すなわち、昇降駆動源50の回転は、伝動装置51により機枠4に回転自在に支持された左右伝動軸52に伝達され、この左右伝達軸52の左右両端部から左右のねじ軸47へ、べベルギア53,54を介して伝達される。
【0027】
回転駆動源50を回転駆動すると、左右のねじ軸47が回転する。そのねじ軸47の回転が、ボールねじ機構48により上下方向の進退動作に変換されて、コンベア1が昇降する。図5に示すように、コンベア1の昇降高さレベルHは、定められた基準高さレベルHに対する高さhとして、コンベア高さ検出手段55(図1)に検出される。基準高さレベルHは、例えばコンベア1の昇降可能範囲の最下端の位置とする。コンベア高さ検出手段55は、コンベア1の昇降量を実測するものであっても、昇降駆動源50の出力量から算出するものであってもよい。
【0028】
図1ないし図3に示すように、このバリ取り装置には、ブラシ部材20の下端を検出可能な投受光式のブラシ下端検出手段60が設けられている。ブラシ下端検出手段60は、例えば光電スイッチであって、コンベアフレーム10の各左右フレーム部10aにそれぞれ設置された投光部60aおよび受光部60bを有する。投光部60aおよび受光部60bは、コンベア1の搬送面13aから上方に任意に定めた一定距離a(図5)だけ離れた高さ位置に、互いに前後方向にずらして配置されている。具体的には、この実施形態の場合、投光部60aは左側の左右フレーム部10aにおける平面視で機枠4の前端の位置に配置され、受光部60bは右側の左右フレーム部10aにおける平面視で機枠4の後端の位置に配置されている。つまり、投光部60aおよび受光部60bはコンベア1の搬送路を挟んで両側にあって、かつこれら投光部60aおよび受光部60bの対向方向が、コンベア搬送面13aに対して平行でかつコンベア1の搬送方向に対して斜めとなる配置とされている。
【0029】
上記ブラシ下端検出手段60の受光部60bの検出信号は、昇降制御手段61(図1)へ送信される。昇降制御手段61は、コンピュータによる数値制御式のものであり、定期的なブラシ摩耗調整時や、ワークWの板厚の変更等に伴う加工原点調整時に、前記受光部60bの検出信号と、オフセット量入力手段62(図1)から入力されるオフセット量を指定する信号とに基づき、昇降駆動源50を制御する。ここで言うオフセット量は、ワークWの板厚に応じてコンベア1を昇降させる量、およびワークWの上面とブラシ部材20の下端との位置関係を調整するためにコンベア1を昇降させる量のことである。このオフセット量は、ワークW毎に予め定められている。したがって、一般的には、オフセット量は、加工プログラム(図示せず)から昇降制御手段61に与えられる。この場合、加工プログラムがオフセット量入力手段62となる。オフセット量入力手段62は、加工プログラムとは別に設けてもよい。
【0030】
具体的には、昇降制御手段61は、以下のように昇降駆動源50を制御する。すなわち、一旦コンベア1を運転時よりも下方に位置させ、その位置からコンベア1を上昇させる。ブラシ下端検出手段60がブラシ部材20の下端を検出すると、その時のコンベア高さ検出手段55が検出した高さhに、ブラシ下端検出手段60の搬送面13aからの高さaを加算した高さとなる高さ位置を原点位置として定める。そして、この原点位置にコンベア1を昇降させるように、昇降駆動源50を制御する。併せて、オフセット量入力手段62から与えられるオフセット量だけコンベア1を昇降させるように、昇降駆動源50を制御する。これら原点位置へのコンベア1の昇降、およびオフセット量分のコンベア1の昇降は、実際には別々に行われるのではなく同時に行われる。
【0031】
この構成のバリ取り装置の動作を説明する。コンベア1に対してバリ取りヘッド2がワークWの板厚等の加工条件に合った適正な相対高さとなるように、コンベア1の高さを調整する。ブラシ部材20をブラシ軸心O1回りに回転させつつ、バリ取りヘッド2を旋回軸心O2回りに旋回させる。その状態で、コンベア1により、このコンベア1の搬送面13aにワークWを載せて水平に搬送する。搬送されるワークWに対しブラシ部材20の下端が接触して、ワークWの上面に形成されたバリを除去する。ブラシ部材20を旋回させることで、ブラシ部材20のブラシ軸心O1方向の各部が均等にワークWの上面に接触して、良好な状態でバリの除去が行われる。
【0032】
運転に伴ってブラシ部材20の各ブラシ毛23が摩耗して短くなるため、例えば定期的にコンベア1をブラシ毛23の摩耗分だけ上昇させて、コンベア1に対するバリ取りヘッド2の相対高さを調整する。また、ワークWの板厚等の加工条件を変更する場合にも、コンベア1に対するバリ取りヘッド2の相対高さを調整する。これらの相対高さの調整は、先に説明したように、投受光式のブラシ下端検出手段60でブラシ部材20の下端を検出し、その検出に基づき昇降制御手段61が昇降駆動源50を制御することで、自動で行われる。そのため、相対高さ調整のばらつきを抑えられる。また、作業者は、例えば相対高さの調整を開始するスイッチを操作するだけでよく、従来のように、バリ取り装置のカバー5の内部に身体を入れて相対高さを確認しなくて済むため、調整作業が容易である。
【0033】
ブラシ部材20のブラシ毛23は剛性を有していないため、ブラシ毛23は、上方や側方に位置するときには真っ直ぐな状態になっていないが、ブラシ軸心O1に対し下方に位置するときは真っ直ぐな状態になっている。ブラシ下端検出手段60は、ブラシ軸心O1に対し下方に位置するブラシ20の下端を検出するため、その検出結果にブラシ毛の短縮が正確に反映される。そのため、上記相対高さの調整を精度良く行える。
【0034】
ブラシ下端検出手段60の投光部60aおよび受光部60bは、コンベア1の搬送路を挟んで両側に配置されているため、コンベア1によるワークWの搬送の邪魔にならない。また、投光部60aおよび受光部60bの対向方向が、コンベア搬送面13aに対して平行でかつコンベア1の搬送方向に対して斜めとなるように、投光部60aおよび受光部60bを配置したことで、投光部60aおよび受光部60bの設置上の制約が少なく、設計が容易である。
【0035】
この実施形態では、コンベア1を昇降させてコンベア1に対するバリ取りヘッド2の相対高さを調整するが、バリ取りヘッド2を昇降させてコンベア1に対するバリ取りヘッド2の相対高さを調整するようにしてもよい。
【0036】
上記実施形態はブラシ部材20が1個であるが、ブラシ部材20を複数設けてもよい。
図6の例は、バリ取りヘッド2に、ブラシ軸心O1A回りに回転自在な2個のブラシ部材20Aと、ブラシ軸心O1B回りに回転する2個のブラシ部材20Bとが設けられている。ブラシ部材20A,20Bは、旋回支持部材(図示せず)により、それぞれコンベア1の搬送方向に沿って並ぶ旋回軸心O2A,O2B回りに旋回自在に支持されている。各ブラシ部材20A,20Bは、回転駆動源(図示せず)の駆動でブラシ軸心O1B回りに回転しつつ、旋回駆動源(図示せず)の駆動で旋回軸心O2A,O2B回りに旋回する。
【0037】
ブラシ下端検出手段60は、投光部60aおよび受光部60bの対向方向が、コンベア搬送面13aに対して平行でかつコンベア1の搬送方向に対して斜めであり、投光部60aは旋回軸心O2Bよりも搬送方向の下流側に位置し、受光部60bは旋回軸心O2Aよりも搬送方向の上流側に位置している。このように投光部60aおよび受光部60bを配置すると、1組の投光部60aおよび受光部60bで、全てのブラシ部材20A,20Bの中からブラシ毛23が最も長いブラシ部材の下端を検出することができる。それにより、加工原点の調整やブラシ摩耗に対する調整時に、ブラシ毛23が最も長いブラシ部材に合わせてコンベア1を昇降させることができる。
【0038】
図7の例は、平行に並べて設けた2個のブラシ部材20C,20Dを有する。各ブラシ部材20C,20Dは、ブラシ軸心O1C,O1D回りにそれぞれ回転し、共通の旋回軸心O2回りに旋回する。
【0039】
図8の例は、図7の例におけるブラシ部材20C,20Dをそれぞれ2つに分割したものであり、前記同様に、各ブラシ部材20C,20Dは、ブラシ軸心O1C,O1D回りにそれぞれ回転し、共通の旋回軸心O2回りに旋回する。
【0040】
図9の例は、平面視で放射状に4個のブラシ部材20E,20E,20F,20Fを有する。一対のブラシ部材20Eはブラシ軸心O1E回りに回転し、一対のブラシ部材20Fはブラシ軸心O1F回りに回転する。各ブラシ部材20E,20E,20F,20Fは、共通の旋回軸心O2回りに旋回する。
【0041】
図10の例は、平面視で放射状に6個のブラシ部材20G,20G,20H,20H,20I,20Iを有する。一対のブラシ部材20Gはブラシ軸心O1G回りに回転し、一対のブラシ部材20Hはブラシ軸心O1H回りに回転し、一対のブラシ部材20Iはブラシ軸心O1I回りに回転する。各ブラシ部材20G,20G,20H,20H,20I,20Iは、共通の旋回軸心O2回りに旋回する。
【0042】
図7ないし図10の各例においても、ブラシ下端検出手段60は、投光部60aおよび受光部60bが、コンベア1の搬送路を挟んで両側にあって、これら投光部60aおよび受光部60bの対向方向が、コンベア搬送面13aに対して平行でかつコンベア1の搬送方向に対して斜めとなる配置とされている。それにより、投光部60aおよび受光部60bが、コンベア1によるワークWの搬送の邪魔にならず、投光部60aおよび受光部60bの設置上の制約が少なく、設計が容易である。
【符号の説明】
【0043】
1…コンベア
2…バリ取りヘッド
3…相対高さ調整機構
10…コンベアフレーム
13…搬送ベルト
13a…搬送面
20,20A〜20I…ブラシ部材
23…ブラシ毛
26…旋回支持部材
44…昇降支持手段
50…昇降駆動源
60…ブラシ下端検出手段
60a…投光部
60b…受光部
61…昇降制御手段
O1,O1A〜O1I…ブラシ軸心
O2,O2A,O2B…旋回軸心
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリが上面に形成されたワークを搬送面の上に載せて水平に搬送するコンベアと、このコンベアの上方に配置されたバリ取りヘッドと、前記コンベアに対する前記バリ取りヘッドの相対高さを調整する相対高さ調整機構とを備え、
前記バリ取りヘッドは、水平なブラシ軸心回りに回転自在な少なくとも一つのロール状のブラシ部材と、このブラシ部材を鉛直方向の旋回軸心回りに旋回自在に支持する旋回支持部材とを有し、
前記相対高さ調整機構は、前記コンベアまたは前記バリ取りヘッドを昇降自在に支持する昇降支持手段と、前記コンベアまたは前記バリ取りヘッドを昇降させる昇降駆動源とを有し、
前記コンベアのフレームに設けられて前記ブラシ部材の下端を検出可能な投受光式のブラシ下端検出手段と、このブラシ下端検出手段による前記ブラシ部材の下端の検出に基づき前記昇降駆動源を制御する昇降制御手段とを設けた、
バリ取り装置。
【請求項2】
前記ブラシ下端検出手段は、投光部および受光部が、コンベアの搬送路を挟んで両側にあって、これら投光部および受光部の対向方向が、コンベア搬送面に対して平行でかつコンベアの搬送方向に対して斜めとなる配置とされている請求項1記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記昇降支持手段は前記コンベアを昇降自在に支持するものであり、かつ前記昇降駆動源は前記コンベアを昇降させるものであり、前記相対高さ調整機構は、定められた基準高さに対する前記コンベアの高さを検出するコンベア高さ検出手段を有し、前記ブラシ下端検出手段は前記コンベアの搬送面から上方に離れた高さ位置にあり、
前記昇降制御手段は、前記ブラシ下端検出手段が前記ブラシ部材の下端を検出したとき、前記コンベア高さ検出手段が検出した高さに、前記ブラシ下端検出手段の前記コンベアの搬送面からの高さを加算した高さとなる高さ位置、またはこの高さ位置に定められたオフセット量を加算した高さ位置を原点位置とし、この原点位置に前記コンベアを昇降させるように前記昇降駆動源を制御する請求項1または請求項2記載のバリ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−250333(P2012−250333A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126112(P2011−126112)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】