説明

バルブメタル酸化物及びバルブメタル酸化物のアグロメレート粉末、及びその製造方法

固体電解質コンデンサにとりわけ適したバルブメタルアグロメレート粉末、及びバルブメタルオキシドアグロメレート粉末が記載されており、これは焼結後、高い嵩密度を有する、すなわち閉鎖孔が少ない多孔質焼結体になる。アグロメレート粉末は、良好な圧縮性と、比表面積に依存した優れた滑り係数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ製造用の、バルブメタル及びバルブメタル酸化物のアグロメレート粉末(バルブメタルは、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、Al)、及びその混合物と合金、特にニオブ及び/又はタンタルの合金、又はニオブ亜酸化物、並びにコンデンサ用のアノード焼結体に関する。
【0002】
非常に大きな活性コンデンサ面積を有しており、それゆえより小さい、モバイルコミュニケーション電子工学に適している構造の固体電解質コンデンサとしては、主に、相応して導電性の担体に施与されたニオブ若しくはタンタルの五酸化物遮断層が使用されるが、これはその安定性(バルブメタル)、比較的高い誘電率と、電気化学的生成により非常に均一な層厚で製造可能な絶縁性五酸化物層を利用するものである。担体としては相応する五酸化物の金属性、又は導電性の低級酸化性の(亜酸化物)前駆体が使用される。同時にコンデンサ電極(アノード)でもある担体は、焼結により製造される高多孔性のスポンジ状構造から成り、この構造は極めて微細な一次構造若しくは既にスポンジ状の二次構造の焼結により製造されるものである。担体構造の表面は、電解質により五酸化物に酸化され(化成され)、この際に五酸化物層の厚さは、電解質酸化の最大電圧(化成電圧)によって決まる。対極は、熱により二酸化マンガンに反応する硝酸マンガンでスポンジ状構造を浸漬することによって、又はポリマー電解質の液状前駆体で、若しくは導電性ポリマー(例えばPEDT)のポリマー分散液で浸漬及び重合することによって、生成させる。電極に対する電気的な接触は、片面では担体構造生成の際に焼結されたタンタル線材又はニオブ線材によって、もう片方の面では線材に対して絶縁された金属コンデンサスリーブによって形成される。
【0003】
コンデンサの容量Cは、以下の式
【数1】

[式中、Fはコンデンサ面積、εは誘電率、dは1ボルト形成電圧あたりの絶縁層の厚さ、VFは化成電圧を表す]
により計算される。
【0004】
極めて微細な一次構造及び/又は二次構造の焼結によって、非常に大きな活性コンデンサ面積が得られるが、表面が活性でない閉鎖孔も生じてしまう。よって閉鎖孔は粉末から製造されたコンデンサの体積に対する容量を下げる。閉鎖孔のない二次構造を使用する場合には、体積に対して比較的高い容量が原因で、容量損失のないアノード体製造の際により高い焼結温度が使用され、このことが従来の粉末の使用に比して再度、焼結部(Sinterhals)の強化と、より良好な線材結合につながる。より良好な線材結合、及びより強固な焼結部は、より安定的なアノード体、及びより良好な漏電性能、ESR性能、及びピーク電流性能(コンデンサのサージ性能とも呼ばれる)をもたらす。
【0005】
従って、コンデンサ中で閉鎖孔の数と体積を可能な限り低く保つことが望ましい。
【0006】
コンデンサアノードの開孔性、及びコンデンサ製造のために使用される二次構造(アグロメレート粉末)の開孔性のための基準が嵩密度であり、嵩密度は焼結体の質量と、固体含分の体積及び閉鎖孔の体積の合計との比として定義される。アノード構造の嵩密度の測定は、水銀浸透多孔質測定法(水銀多孔質測定法)によって行われる。コンデンサアノード生成のための通常の焼結法により、理論的な固体材料密度の80〜88%の嵩密度が得られる。
【0007】
幅広い、又は二項的な(bimodal)多孔質分布を生成するために、ニオブ又はタンタルからのコンデンサアノードの多孔質構造に影響を与える方法はすでに公知であり、ここでは焼結の間にいわゆる細孔形成剤が使用される。この際に一方では(EP 1291100 A1、WO 2006/057455)細孔形成剤として、焼結温度に加熱すると分解又は蒸発する有機物質が、又は焼結後に酸アルカリ処理により焼結構造から除去可能な金属又は金属酸化物、又は水素化金属が使用され、そして他方では(DE 19855998 A1)、ガス状細孔形成剤(これにより接着結合された多孔質アグロメレートが得られる)が使用され、基本的に焼結の際にその多孔性が得られる。
【0008】
この方法の場合、細孔形成剤は、既に閉鎖孔を有する焼結アグロメレートが存在している比較的遅い方法段階で使用され、閉鎖孔形成の有効な阻止は起こらない。
【0009】
さらに、有機細孔形成剤を使用する限り、炭素によるコンデンサアノード体の汚染(Kontamination)が不利となる。そして、金属又は金属化合物を使用する限り、汚染の可能性がある上に、焼結された構造からそれらを除去するために多大なコストが必要となる。
【0010】
本発明の課題は、高い嵩密度を有するアノード体が製造可能な、コンデンサアグロメレート粉末を利用可能にすることである。
【0011】
本発明の課題はまた、高い嵩密度を有し、これにより高い体積効率(容量/体積、CV/cm3)を有する、固体電解質コンデンサのためのアノードを利用可能にすることである。
【0012】
本発明の課題はさらに、コンデンサへのさらなる加工後に、より良好な線材引張強度、漏電性能、ESR性能、及び/又はピーク電流性能を有する、アノード体を利用可能にすることである。
【0013】
本発明の対象は、バルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のアノード体であり、好ましくはニオブ、タンタル、及びニオブ亜酸化物のアノード体、さらに好ましくは、式NbOx(ただし、0.7<x<1.3、特に好ましくは、0.8<x<1.1)のニオブ亜酸化物アノード体であり、嵩密度が理論密度の88%超、好適には90%超、とりわけ好ましくは理論密度の92%超のものである。本発明によれば、最大94%の嵩密度、及び(密な)アノード材料の理論密度を超える嵩密度が達成可能である。本発明によるアノード体の場合、閉鎖孔の積層体積は、(密な)アノード材料の体積の12%未満、好適には10%未満、とりわけ好適には8%未満である。本発明の意味合いにおいてバルブメタルとは、ニオブ、タンタル、及びチタンの群の金属と理解される。
【0014】
本発明によるアグロメレート粉末は好ましくは、電子顕微鏡撮像から測定された平均断面測定値が0.1〜2μmであり、ASTM B 822(「マスターサイザー」、湿潤剤Daxad 11)により測定されたアグロメレートサイズD10が3〜50μm、D50が20〜200μm、そしてD90が30〜400μの焼結された一次粒子から成る。アグロメレート粉末粒子は任意の形態、例えば球状、変形球状、繊維、チップ、不規則形状などを有していてよい(球形アグロメレート粉末粒子が好ましい)が、この際に上記全ての形態は閉鎖孔の体積が僅かである。アグロメレート粉末は、60秒/25g未満という良好な流動性(Hall準拠、ASTM B 213)を有する。嵩質量(Scott準拠、ASTM B 329)は、ニオブ亜酸化物及びニオブ金属粉末の場合、有利には0.7〜1.3g/cm3にあり、タンタル金属粉末の場合には1.0〜2.5g/cm3にあり得る。比表面積(「BET」ASTM D 3663)は、有利には0.5〜20m2/gであり得る。本発明によるアグロメレート粉末は好適には、水銀浸透により測定される多孔性(開孔)が、50〜70体積%であり、このうち細孔体積の90%超が、直径0.1〜5μmの細孔により形成される。
【0015】
通常のドープ剤、例えば窒素、リン、及び/又はバナジウムを除いた不純物含分は、出来る限り低いことが望ましい。特に好ましい粉末は、Fe、Cr、Ni、Cu、アルカリ金属の含分が20ppm未満、並びにフッ化物と塩化物の含分がそれぞれ50ppm未満である。炭素含分は、好ましくは40ppm未満である。窒素含分は有利には、10〜6000ppmである。本発明によるニオブ金属亜酸化物粉末中のリン含分は一般的に、悪影響をもたらさない。ニオブ粉末及びタンタル金属粉末中では、二次構造及びアノード構造生成の間の焼結活性を低下させるため、リンを500ppmまで使用する。場合により、アノード構造の焼結前に、リン酸、リン酸水素アンモニウム、又はリン酸アンモニウムによって粉末を処理することができる。その他の(ただしそれほど重要ではない)不純物は、Al、B、Ca、Mn、及びTiについて、好適には10ppm未満であり、Siは20ppm未満である。
【0016】
本発明によるアグロメレート粉末の特徴はさらに、従来技術の粉末よりも大きい圧縮係数α、及び粉末のより良好なプレス加工性につながる、高められた滑り係数ηである。好適には、BET比表面積(m2/g)×滑り係数の積が、本発明によるニオブ亜酸化物粉末の場合0.33〜0.75、好適には0.45〜0.58であり、本発明によるタンタル粉末の場合、0.62〜0.95、好適には0.65〜0.86であり、本発明によるニオブ粉末の場合、0.38〜0.8、好適には0.42〜0.6である。本発明によるアグロメレート粉末の圧縮係数は好適には、ニオブ亜酸化物粉末については0.07より大きく、ニオブ粉末及びタンタル粉末については0.08より大きい。
【0017】
本発明の対象はまた、プレス後にプレス密度が2.8g/cm3であり、1340℃超の温度、好ましくは1400℃超の温度で20分間の焼結後に、嵩密度が88%超、好適には90%超、とりわけ好適には92%超のアノード体が製造可能な、ニオブ亜酸化物アグロメレート粉末である。
【0018】
本発明の対象はさらに、プレス後にプレス密度が5g/cm3より大きく、1250℃以上の温度で20分間の焼結後に、嵩密度が88%超、好適には90%超、とりわけ好適には92%超のアノード体が製造可能な、タンタルアグロメレート粉末である。
【0019】
本発明の対象はまた、プレス後にプレス密度が3.14g/cm3であり、1165℃以上、好ましくは1180℃以上の温度で20分間の焼結後に、嵩密度が88%超のアノード体が製造可能な、ニオブアグロメレート粉末である。
【0020】
本発明の対象はまた、バルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のアグロメレート粉末の製造方法であり、本方法は、アグロメレート粉末の前駆体粒子を微粒子状細孔形成剤と混合し、この混合物を圧縮し、細孔形成剤を蒸発若しくは分解させることによって、高多孔性で接着結合された前駆体粒子のアグロメレートが生成し、この接着結合されたアグロメレートを焼結橋(Sinterbrueck)形成のために充分な温度及び所要時間の温度処理に供し、そして少なくとも部分的に焼結されたアグロメレートをそれ自体公知の方法でバルブメタル及び/又はバルブメタル酸化物のアグロメレート粉末にさらに加工することを特徴とする。
【0021】
混合物の圧縮は、乾燥状態で圧力下、混合物の圧密(Kompaktierung)により行うことができるか、又は湿潤状態で例えば水中への混合物のスラリー化、超音波を用いたスラリーの圧縮、上澄み液の注ぎ出し、及び乾燥によって行うことができる。
【0022】
式NbOxのタンタル、ニオブ、及び/又はニオブ亜酸化物のアグロメレートは好適には、0.7<x<1.3で、特に好ましくは、0.8<x<1.1で製造する。
【0023】
本発明により使用される前駆体粒子は、好適には一次粒子であるか、又は僅かな一次粒子から構成された、バルブメタルの二次粒子のみから成り、このバルブメタルは、とりわけニオブ及び/又はタンタル、及び/又はこれらの酸化物、とりわけニオブ及び/又はタンタルの五酸化物であり、最小広がり方向で平均一次粒径が1μm未満、さらに好適には0.5μm未満、とりわけ好適には0.3μm未満である。粒子は任意の形状を有していてよい。前駆体粒子は好適には、比表面積が80m2/g超、とりわけ好ましくは100m2/g超である。
【0024】
特に好ましくは前駆体粒子として、水酸化物若しくは水和五酸化物、例えばフッ化ニオブ及び/又はフッ化タンタルの水溶液から、アンモニアにより沈殿させると生じるものであって、なお25〜35質量%という充分な水含分と、180m2/g超(Nbの場合)若しくは100m2/g超(Taの場合)という比表面積を有するものを使用する。
【0025】
細孔形成剤としては、アンモニウム塩、例えばハロゲン化物、炭酸塩、又はシュウ酸塩が好ましい。特に好ましくは、塩化アンモニウム、及び/又はシュウ酸アンモニウムを使用する。
【0026】
細孔形成剤は好適には、平均粒径が0.5〜20μm、好適には1.0〜10μm、とりわけ好ましくは1.5〜5μmで、好適には前駆体粒子の体積に対して10〜90体積%、好ましくは15〜60体積%、さらに好ましくは20〜50体積%、特に好ましくは30〜45体積%の量で使用する。
【0027】
前駆体粒子は、好適には水による湿潤圧縮でスラリー化する。良好な濡れ性を有する、他の容易に蒸発する有機液体は、例えばメタノール、アルコール、ケトン、及び/又はエステル、並びにこれらの水との混合物が、同様に適している。
【0028】
前駆体粒子のスラリーと、微粒子状の細孔形成剤とを激しく混合させる。引き続き、混合物を振動により、好適には超音波を用いて圧縮する。場合により上澄みの液体を除去して、湿ったケーキが生成する。
【0029】
前駆体粒子と細孔形成剤粒子との混合物から成る湿ったケーキは、引き続きゆっくりと最大150℃の温度に加熱することによって、輸送ガス流中で乾燥させ、そしてゆっくりとさらに350〜600℃に加熱することによって、細孔形成剤を完全にケーキから除去する。
【0030】
代替的には前駆体粒子を、微粒子状の細孔形成剤とともに強力な乾燥混合後に30〜100barの圧力下で圧縮することができ、引き続き相応した加熱によって細孔形成剤を除去できる。
【0031】
接着結合された前駆体粒子から成る乾燥ケーキは、場合により破砕及びふるい分け後、焼結橋形成に充分な温度に加熱し、その結果、細孔体積が大きい、焼結された開孔性前駆体アグロメレート粉末が生じ、この粉末にはほとんど閉鎖孔がない。
【0032】
焼結した前駆体アグロメレート粉末を、それ自体公知の方法で、さらに以下に記載するように、バルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のアグロメレート粉末へと、さらに加工する。
【0033】
本発明の対象はさらに、バルブメタル及び/又はバルブメタル酸化物のアグロメレート粉末の製造方法であり、本方法は、アグロメレート粉末の前駆体粒子を、過酸化水素又は二酸化炭素含有水中でスラリー化し、乾燥によって、酸素ガス又は二酸化炭素を放出させながら水を除去し、その結果、高多孔性で接着結合された前駆体粒子のアグロメレートが生成し、この接着結合されたアグロメレートを焼結橋形成のために充分な温度及び所要時間の温度処理に供し、そして少なくとも部分的に焼結されたアグロメレートをそれ自体公知の方法でバルブメタル及び/又はバルブメタル酸化物のアグロメレート粉末にさらに加工することを特徴とする。
【0034】
スラリー乾燥の間に、スラリーから水を取り除き、この際に酸素ガスを放出しながら過酸化水素が分解し、若しくは残っている水中での二酸化炭素の溶解限度が上回る。スラリー中の微細な前駆体粒子は、放出ガスのための気泡核(Blaeschenkeim)として作用する。なお充分な湿分が存在する場合には、気泡はスラリーから消えず、又は大きな泡にアグロメレート化し、その結果、大きな細孔体積を有する開孔性ケーキが生じる。泡により形成される細孔の大きさとケーキの細孔体積は、最初に溶解される二酸化炭素若しくは過酸化水素の量によって制御可能である。
【0035】
スラリーの製造は、二酸化炭素を細孔形成剤として使用する場合、二酸化炭素雰囲気下で前駆体粒子を水へ分散するか、又は好適には使用する水酸化物若しくは水和五酸化物、例えばフッ化ニオブ及び/又はフッ化タンタルの水溶液からアンモニアにより沈殿で生成し、なお25〜35質量%という充分な水含分と、100m2/g超という比表面積を有するものを、二酸化炭素雰囲気下で場合により圧力下で撹拌する。
【0036】
こうして得られる乾燥ケーキは、水を完全に除去するため、100〜500℃の温度に加熱する。
【0037】
接着結合された前駆体粒子から成る乾燥させたケーキは、場合により破砕及びふるい分け後、焼結橋形成に充分な温度に加熱し、その結果、焼結された開孔性前駆体アグロメレート粉末が生じ、この粉末にはほとんど閉鎖孔がない。
【0038】
前駆体としてニオブ及び/又はタンタル金属粉末を使用する場合、ここから得られる焼結された前駆体アグロメレート粉末はマグネシウム片と混合し、酸素不含雰囲気で加熱することにより、又は高真空中で脱酸素化し、引き続き所望のアグロメレート径に粉砕する。
【0039】
場合によってはそれ自体公知の方法で、窒素及び/又はリン及び/又はバナジウムによるドープを、脱酸素前に、窒素及び/又はリン又はバナジウム含有化合物の溶液による含浸で行うことができる。
【0040】
前駆体粉末として五酸化物を使用する場合、ドープはWO 00/67936に記載のそれ自体公知の方法で行うことができ、五酸化ニオブの場合には好適にはまず水素含有雰囲気で加熱して二酸化物に還元し、気体状マグネシウムによって金属に還元し、場合によりドープする。
【0041】
NbOx粉末(xは前掲の通り)製造のためには、上記の五酸化物前駆体アグロメレート粉末から出発する。これは場合により、二酸化物への水素還元後、相応する微粒子状のニオブ金属粉末と激しく撹拌し、そして水素含有雰囲気で加熱し、その結果、酸化物と金属の間で酸素交換が起こる。好適には微粒子状ニオブ金属粉末として、本発明により得られるニオブ金属−前駆体アグロメレート粉末を使用する。
【0042】
さらに好ましい方法によれば、五酸化物−前駆体アグロメレート粉末は場合により水素還元後、ニオブ金属粉末と一緒に新たに細孔形成剤と混合し、圧縮し、細孔形成剤を除去し、場合によりふるい分けし、そして接着結合された粉末混合物アグロメレートを水素雰囲気下で加熱して、酸素平衡作用を起こす。
【0043】
本発明によるニオブ亜酸化物粉末、ニオブ金属粉末、及びタンタル金属粉末は、比容量が20,000〜300,000μFV/g、残留電流が1nA/μFV未満、好適には0.2nA/μFV未満の固体電解質コンデンサの、通常の方法による製造に適している。
【0044】
ここでアノード体を製造するための粉末は、プレス形態で組み込まれるニオブ線材又はタンタル線材のために、結合剤及び潤滑剤の存在下、ニオブ粉末又はニオブ亜酸化物粉末の場合には最大2.3〜3.5g/cm3の圧縮密度で、若しくはタンタル粉末の場合には4.5〜7g/cm3の圧縮密度で未焼結体へとプレスし、この際に非常に有利な圧縮強度を有する未焼結体が得られる。接触線材を含むプレス体は、引き続き好適にはニオブ又はタンタルボートで1000〜1500℃で、10〜25分の焼結時間にわたって、10-8barの高真空で焼結する。焼結温度及び焼結時間は好適には、後にコンデンサの容量から計算可能なコンデンサ表面積が、粉末について測定された比表面積のなお65〜45%であるように選択する。
【0045】
本発明の対象はさらに、バルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のコンデンサアノード焼結体を含むコンデンサである。本発明によるコンデンサは、様々な電気装置で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ニオブ亜酸化試料の密度と加圧の典型的なダイヤグラムである。
【0047】
実施例:
A)前駆体粒子の製造
V1:
脱イオン水100lの容器(Vorlage)に、15時間にわたってH2NbF7水溶液75l/hを連続的に、Nb81g/l及び9%のNH3水溶液75l/hという濃度で加え、その結果、pH値は7.6±0.4である。溶液の温度は、63℃に保つ。得られた懸濁液は、圧力濾過ヌッチェによって濾別し、3%のNH3水溶液で、そして引き続き脱イオン水で洗浄する。得られる湿った水酸化ニオブ(V)を24時間、100℃で、乾燥トレーで乾燥させる。得られる水酸化ニオブ(V)は、比表面積が201m2/gであり、球状の形状を有する。
【0048】
V2:
エトキシドニオブ(V)溶液100体積部に、脱イオン水40体積部を撹拌しながら添加する。沈殿した水酸化ニオブ(V)(ニオブ酸)は、ヌッチェを介して濾別し、脱イオン水で洗浄する。引き続き、水酸化ニオブ(V)を17時間、100℃で乾燥させる。この粉末は、比表面積が130m2/gであり、不規則な形状である。
【0049】
V3:
前駆体粒子V1を4時間、500℃で空気中でか焼し、そしてそれからジェットミルでD90が<10μm(超音波処理無しのマスターサイザー)に粉砕する。比表面積が89m2/gのNb25が得られる。
【0050】
V4:
脱イオン水100lの容器に、30時間にわたってH2TaF7水溶液75l/hを連続的に、Ta155.7g/l及び9%のNH3水溶液75l/hという濃度で入れ、この際にpH値は7.6±0.4であり、溶液の温度は69℃に維持する。濾別、NH3溶液及び脱イオン水での洗浄、24時間100℃での乾燥後、比表面積が106m2/gの球形状をした水酸化タンタル(V)が得られる。
【0051】
V5:
前駆体粒子V4を2時間、500℃で空気中でか焼し、ジェットミルでD90<10μmに粉砕する。比表面積が83m2/gのTa25が得られる。
【0052】
B)焼結されたアグロメレート五酸化物粉末の製造(P1〜P14)
焼結された五酸化物粉末P1〜P14を製造するため、表1、コラム1に記載した前駆体を使用する。
【0053】
これらの前駆体は、コラム2に記載された細孔形成剤(平均粒径1.5μm)と、表1、コラム3に記載された量(五酸化物に対する質量%)で、水性懸濁液で(コラム4では「湿潤」)、又は乾燥状態で(コラム4では「乾燥」)混合する。湿潤混合の場合、取り外した(abgesetzt)固体混合物の懸濁液を超音波によって圧縮し、上澄みの水を注ぎ出し、そして110℃で15時間にわたって乾燥させる。乾燥混合の場合、乾燥した粉末混合物を水力学的な実験用プレス機(母型直径5cm、充填高さ3cm)で75barで、1分にわたって圧縮する。
【0054】
【表1】

【0055】
乾燥した(接着結合されたアグロメレート)若しくはプレスされた(プレス成形体)粉末混合物は、引き続き細孔形成剤を分解させるために表1のコラム5に記載された温度で、同様に同箇所に記載された時間、加熱する。この後、コラム6に記載された温度及び所要時間で、空気中で焼結する。
【0056】
焼結アグロメレートは、ハサミ型破砕機(Backenbrecher)で小さく砕き、ローラミルで粉砕し、そして<300μmにふるい分けする。
【0057】
C)金属粉末の製造(M1〜M14)
五酸化物粉末P1〜P14を、五酸化ニオブの場合には、1300℃で水素により二酸化ニオブに還元後、900℃で輸送ガスとしてのアルゴン下、マグネシウム蒸気による還元により6時間、冷却、不活性化、300μm未満へのふるい分け、8%の硫酸による酸化マグネシウムの除去、及び脱イオン水による中性洗浄によって、金属粉末M1〜M14にする。表2には、BET比表面積、マスターサイザー後のD50値(超音波処理無し)と、鉄、クロム及びニッケル、フッ素及び塩素、並びにナトリウム及びカリウムの不純物含分の合計が記載されている。
【0058】
【表2】

【0059】
D)ニオブ亜酸化物粉末の製造(S1〜S10)
ニオブ亜酸化物粉末を製造するために、それぞれ表3のコラム1に記載された五酸化ニオブを、表3のコラム2に記載されたニオブ金属の三倍の化学量論、及びコラム3に記載された細孔形成剤(金属と五酸化物に対して20質量%)と乾燥混合し、75barで圧縮し、そして600℃で3時間にわたって細孔形成剤を除去するために温度処理する。
【0060】
それから乾燥ケーキを水素雰囲気で4時間、表3に記載された反応温度に加熱し、冷却し、不活性化し、<300μgにふるい分けする。表6には、BET比表面積、マスターサイザー後のD50値(超音波処理無し)と、鉄、クロム及びニッケル、フッ素及び塩素、並びにナトリウム及びカリウムの不純物含分の合計が記載されている。さらに、圧縮係数α、及び滑り係数η(以下に定義する)、並びに滑り係数η×BET表面積の積が記載されている。
【0061】
【表3】

【0062】
E)脱酸素化された金属−アグロメレート粉末の製造(D1〜D14)
粉末M1〜M8、及びM10〜M14を、脱酸素化のためにそれぞれ、8質量%(ニオブ金属粉末)若しくは5質量%(タンタル金属粉末)のマグネシウム片と混合し、そして燐100ppmドープのために充分な量でNH42PO4溶液を混合し、そしてアルゴン下で2時間、850℃に加熱し、冷却して不活性化し、そして<300μmにふるい分けする。粉末M9の2つの試料は850℃及び750℃の温度で脱酸素化し、以降M9a、及びM9bと呼ぶ。表4及び5には、BET比表面積、マスターサイザー後のD50値(超音波処理無し)、鉄、クロム及びニッケル、フッ素及び塩素、並びにナトリウム及びカリウムの不純物含分の合計が記載されている。さらに、圧縮係数α、及び滑り係数η(以下で定義する)、並びに滑り係数η×BET表面積の積が記載されている。
【0063】
F)アノード体の製造
脱酸素化された金属粉末D1〜D14及びニオブ亜酸化物粉末S1〜S8から、直径3.6mm、長さ3.6mmのアノード体を、プレス形態で組み込まれるタンタル線材のために、厚さ0.3mmから、表4、5、及び6に記載された圧縮密度(g/cm3)で圧縮し、引き続き高真空下で20分にわたって表に記載された温度で焼結する。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
圧縮係数α(圧密性α)、及び滑り係数ηは、KZK Powder Tech社(米国、バージニア州、シャンティリー在)の粉末試験センターモデルPTC-03DTで測定した。
【0068】
圧縮係数の測定は、粉末(結合剤又は潤滑剤無し)を、直径D=12.7mmの母型に満たし、プレススタンプで高さH=12.694mmにプレスし、ここでプレススタンプの圧力pcを、プレスの間に測定する。ニオブ亜酸化試料の密度と加圧の典型的なダイヤグラムを、図1に提示する。
【0069】
圧縮係数αは、以下の等式により決まる:
【数2】

【0070】
前記式中、ρrpは粉末のタップ密度であり、ρraは圧力pr下の加圧後のプレス体の平均密度であり、p0は粉末の重力圧(粉末の質量÷母型の断面積)である。
【0071】
滑り係数測定のため付加的に、タンタルの場合には圧縮密度が4.8g/cm3に達したところで、ニオブの場合には圧縮密度が3.14g/cm3に達したところで、ニオブ亜酸化物の場合には圧縮密度が2.8g/cm3に達したところで、母型の底部で圧力pdを測定する。ここで、滑り係数ηは、以下の式により決まる:
【数3】

【0072】
前記式中、Sは断面周囲πDであり、Fは、断面積πD2/4である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩密度が理論密度の88%超である、バルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のコンデンサアノード焼結体。
【請求項2】
嵩密度が理論密度の90%超、好適には92%超である、請求項1に記載のアノード焼結体。
【請求項3】
組成が
NbOx
[式中、0.7<x<1.3]
である、請求項1又は2に記載のアノード体。
【請求項4】
タンタル又はニオブから成る、請求項1又は2に記載のアノード体。
【請求項5】
BET比表面積(m2/g)×滑り係数ηの積が0.33〜0.75、好適には0.45〜0.58である、ニオブ亜酸化物アグロメレート粉末。
【請求項6】
圧縮係数が0.07超である、ニオブ亜酸化物アグロメレート粉末。
【請求項7】
BET比表面積(m2/g)×滑り係数ηの積が0.62〜0.95、好適には0.65〜0.86である、タンタルアグロメレート粉末。
【請求項8】
圧縮係数が0.08超である、タンタルアグロメレート粉末。
【請求項9】
BET比表面積(m2/g)×滑り係数ηの積が0.38〜0.8、好適には0.42〜0.6である、ニオブアグロメレート粉末。
【請求項10】
圧縮係数が0.08超である、ニオブアグロメレート粉末。
【請求項11】
プレス密度2.8g/cm3でプレスし、1340℃の温度で20分間の焼結後に、嵩密度が88%超、好適には90%超、とりわけ好適には92%超のアノード体が製造可能な、ニオブ亜酸化物アグロメレート粉末。
【請求項12】
プレス密度5g/cm3超でプレスし、1250℃以上の温度で20分間の焼結後に、嵩密度が88%超、好適には90%超、とりわけ好ましくは92%超のアノード体が製造可能な、タンタルアグロメレート粉末。
【請求項13】
プレス密度3.14g/cm3でプレスし、1165℃以上の温度で20分間の焼結後に、嵩密度が88%超のアノード体が製造可能な、ニオブアグロメレート粉末。
【請求項14】
コンデンサアノード焼結体の製造に適したバルブメタル及び/又はバルブメタル酸化物のアグロメレート粉末の製造方法において、
アグロメレート粉末の前駆体粒子を微粒子状細孔形成剤と混合し、圧縮によって高多孔性の接着結合された前駆体粒子のアグロメレートを生成し、細孔形成剤を熱により除去し、接着結合されたアグロメレートを、焼結橋形成に充分な温度及び所要時間の温度処理に供し、この少なくとも部分的に焼結されたアグロメレートを、それ自体公知の方法でバルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のアグロメレート粉末にさらに加工することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項15】
細孔形成剤として、蒸発温度、昇華温度、又は分解温度が600℃未満のアンモニウム塩を使用することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細孔形成剤として、微粒子状の塩化アンモニウム及び/又はシュウ酸アンモニウムを使用することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細孔形成剤を、前駆体化合物の体積に対して10〜90体積%の量で使用することを特徴とする、請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
コンデンサアノード焼結体の製造に適したバルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のアグロメレート粉末の製造方法において、
アグロメレート粉末の前駆体粒子を、過酸化水素又は二酸化炭素含有水の中でスラリー化し、乾燥によって酸素ガス若しくは二酸化炭素を放出させながら水を除去し、その結果、高多孔性の接着結合された前駆体粒子のアグロメレートが生成され、この接着結合されたアグロメレートを、焼結橋形成に充分な温度及び所要時間の温度処理に供し、この少なくとも部分的に焼結されたアグロメレートを、それ自体公知の方法でバルブメタル及び/又はバルブメタル酸化物のアグロメレート粉末にさらに加工することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項19】
前駆体粒子が、80m2/g超、好適には1002/g超の比表面積を有することを特徴とする、請求項14から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のコンデンサアノード焼結体の化成により製造される、コンデンサアノード。
【請求項21】
請求項5から13までのいずれか1項に記載のアグロメレート粉末のプレスと焼結により製造される、コンデンサアノード。
【請求項22】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のバルブメタル及び/又はバルブメタル亜酸化物のコンデンサアノード焼結体を含む、コンデンサ。
【請求項23】
請求項20に記載のコンデンサアノードを含む、コンデンサ。
【請求項24】
請求項21に記載のコンデンサアノードを含む、コンデンサ。
【請求項25】
電気的装置における、請求項22から25までのいずれか1項に記載のコンデンサの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−503343(P2012−503343A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528274(P2011−528274)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060912
【国際公開番号】WO2010/034577
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】