説明

バンドクリップ

【課題】余長部分のカットを不要としつつも、作業効率の低下を抑制し、且つ、異音の発生についても抑制することが可能なバンドクリップを提供する。
【解決手段】バンドクリップ1は、電線束からなるワイヤーハーネスを巻き締めるバンド部10と、バンド部10を巻締状態で固定するバンド固定部20と、対象物に係合するクリップ30とが一体となったものである。また、バンド部10は、バンド部10の外周側に設けられるアーチ部13を有し、アーチ部13は、バンド部10が挿通可能な挿通孔13aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線束からなるワイヤーハーネスを結束するバンドクリップが知られている。このようなバンドクリップは、主として、ワイヤーハーネスを巻き締める長尺のバンド部と、バンド部を巻締状態で固定するバンド固定部と、車両パネル等の対象物に係合するクリップ部とからなっている。また、バンドクリップは以下のようにして作業者に使用される。すなわち、まず作業者は、長尺のバンド部をワイヤーハーネスに巻き締め、巻き締めた後にバンド部をバンド固定部によって固定する。これにより、ワイヤーハーネスは、バンドクリップに巻き締め固定されることとなる。この状態で、作業者は、クリップ部を車両パネル等に係合させる。以上により、ワイヤーハーネスは、車両パネル等に固定された状態で配索されることとなる。
【0003】
また、複数のワイヤーハーネスを結束するバンドクリップが提案されている。このバンドクリップは、バンド固定部を複数有しており、或るワイヤーハーネスにバンド部を巻き締めた後にバンド部を特定のバンド固定部によって固定する。このとき、バンド部には余長部分が存在している。このため、バンド部の余長部分を他のワイヤーハーネスに巻き締め、巻き締め後にバンド部を特定のバンド固定部によって固定することで、複数のワイヤーハーネスを結束することができる(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、従来及び特許文献1に記載のバンドクリップでは、バンド部に余長部分が生じてしまう。すなわち、従来のバンドクリップではワイヤーハーネスの径が小さい場合、バンド部の長手方向の長さが、ワイヤーハーネスの外周よりも大幅に長くなり、バンド部の先端がバンド固定部に固定されず、余長部分が生じてしまう。特許文献1に記載のバンドクリップであっても同様に、複数のワイヤーハーネスを巻き締めた後に余長部分が生じてしまう。このため、余長部分による見栄えの低下などの問題が生じてしまう。そこで、余長部分をカットすることが従来行われているが、カットした場合には余長部分がゴミとして残ることとなってしまう。
【0005】
そこで、余長部分のカットを不要としたバンドクリップが提案されている。このバンドクリップは、バンド部の先端にフックを有しており、ワイヤーハーネスの径が小さく、余長部分が生じたとしても、バンド部先端のフックをバンドクリップの所定箇所に固定することで、余長部分のカットを不要としている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−159064号公報
【特許文献2】特開平8−291807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載のバンドクリップでは、余長部分が生じた場合、巻き締め後のバンド部の内側、すなわち巻き締め後のバンド部とワイヤーハーネスとの間に、フックを押し込まなければならない。このため、バンド部をワイヤーハーネスに強く巻き締めた場合には、フックの押し込み作業が容易ではなく、作業効率の低下につながってしまう。一方、バンド部をワイヤーハーネスに弱く巻き締めることで、フックの押し込み作業が容易となるが、この場合、ワイヤーハーネスの結束力自体が弱く、ワイヤーハーネスが車両の振動等によって異音を発生させる原因になりかねない。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、余長部分のカットを不要としつつも、作業効率の低下を抑制し、且つ、異音の発生についても抑制することが可能なバンドクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバンドクリップは、電線束からなるワイヤーハーネスを巻き締めるバンド部と、前記バンド部を巻締状態で固定するバンド固定部と、対象物に係合するクリップとが一体となったものであって、バンド部は、当該バンド部が巻き締められた状態で外周側に設けられるアーチ部を有し、アーチ部は、当該バンド部が挿通可能な挿通孔を有している。
【0009】
また、本発明のバンドクリップにおいて、アーチ部は、当該バンド部の長手方向に亘って複数設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明のバンドクリップにおいて、アーチ部は、挿通孔の内壁に、バンド部が挿通孔に挿通された場合に当該バンド部を押圧する突起部を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明のバンドクリップにおいて、バンド部は、当該バンド部の先端に設けられ、先端側からその反対側となる後端側に向かって肉厚が次第に厚くなる傾斜構造となったヘッド部を有し、ヘッド部の後端側の肉厚は、挿通孔の肉厚方向の大きさよりも大きくなっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のバンドクリップにおいて、ヘッド部は、当該バンド部が巻き締められた状態で内周側に係止部を有し、バンド部は、当該バンド部が巻き締められた状態で外周側に、係止部に係止可能な被係止部が長手方向に亘って形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明のバンドクリップにおいて、バンド部は、長手方向に亘って、長手方向と直交する方向に形成された複数の溝部を有し、バンド固定部及び各アーチ部は、複数の溝部に選択的に係合する舌部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバンドクリップによれば、バンド部はアーチ部を有し、アーチ部は、バンド部が挿通可能な挿通孔を有しているため、バンド部がバンド固定部に固定され、余長部分が生じたとしても、余長部分をアーチ部の挿通孔に挿通させることで、余長部分をワイヤーハーネスに沿うように収めることができる。よって、余長部分のカットを不要とすることができる。さらに、アーチ部は、バンド部が巻き締められた状態で外周側に設けられているため、ワイヤーハーネスにバンド部を強く巻き締めたとしても、ワイヤーハーネスとバンド部との間にフック等を押し込む必要がなく、作業効率の低下を抑制することができる。さらには、作業効率の向上を考慮してバンド部を弱く巻き締める必要がなく、ワイヤーハーネスとバンド部との間に隙間が生じて異音の発生してしまう事態も抑制することができる。
【0015】
また、アーチ部はバンド部の長手方向に亘って複数設けられているため、ワイヤーハーネスを巻き締めた後のバンド部先端といずれかのアーチ部との距離が近くなる。これにより、ワイヤーハーネスを巻き締めた後に、バンド部の先端側とアーチ部の距離が遠くなってしまい、バンド部先端側が自由状態となってしまう事態を抑制することができる。
【0016】
また、アーチ部は挿通孔の内壁に突起部を有するため、挿通孔に挿通されたバンド部を突起部により押圧保持することとなり、バンド部が挿通孔から抜けてしまう頻度を抑制することができる。
【0017】
また、バンド部は、当該バンド部の先端に設けられ、先端側からその反対側となる後端側に向かって肉厚が次第に厚くなる傾斜構造となったヘッド部を有するため、アーチ部の挿通孔に対して挿通の容易化を図ることができる。特に、ヘッド部の後端側の肉厚は、挿通孔の肉厚方向の大きさよりも大きくなっているため、バンド部に対してアーチ部から抜けようとする力が加わったとしても、アーチ部とヘッド部後端側が接触し、バンド部が挿通孔から抜けてしまう頻度を抑制することができる。
【0018】
また、ヘッド部は係止部を有し、バンド部は、係止部に係止可能な被係止部が長手方向に亘って形成されているため、バンド部をアーチ部の挿通孔に挿通させた後に、係止部を被係止部に係止させることで、アーチ部がバンド部の先端側を保持しなくとも、バンド部の先端が固定されて、先端側が自由状態となることによる見栄えの低下を抑制することができる。特に、係止部は、バンド部が巻き締められた状態でヘッド部の内周側に位置し、被係止部は、バンド部が巻き締められた状態で外周側に位置するため、係止にあたり、ヘッド部をワイヤーハーネスとバンド部との間に押し込む必要がなく、作業効率の低下についても抑制することができる。
【0019】
バンド部は、長手方向に亘って、長手方向と直交する方向に形成された複数の溝部を有し、バンド固定部及び各アーチ部は、複数の溝部に選択的に係合する舌部を有する。このため、バンド固定部の舌部に溝部を係合させることができると共に、バンド部を挿通孔に挿通させることで、アーチ部の舌部に溝部を係合させることができる。従って、アーチ部においてもバンド部を固定でき、バンド部が挿通孔から抜けてしまう頻度を抑制することができる。特に、バンド固定部と各アーチ部の舌部によって係合される相手側が、バンド部に形成された複数の溝部であるため、係合相手側を共通とすることできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るバンドクリップの外観図を示す構成図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示している。図1に示すように、バンドクリップ1は、電線束からなるワイヤーハーネスを結束するものである。このバンドクリップ1は、バンド部10と、バンド固定部20と、クリップ30と、パネル押え部40とを備え、これらがナイロン樹脂やポリプロピレン樹脂などの樹脂により一体成型された構造となっている。
【0021】
図2は、図1に示したバンド部10の詳細を示す斜視図である。図2に示すように、バンド部10は、外装により覆われたワイヤーハーネスを巻き締めるものであって、ワイヤーハーネスを巻き締めるために長尺形状に形成されている。このバンド部10は、本体部11とヘッド部12と複数のアーチ部13とを有している。
【0022】
本体部11は、薄肉長尺状に形成されており、図1に示すように、長手方向と直交する直交方向に複数の溝部11aが形成されている。複数の溝部11aは、バンド部10をワイヤーハーネスに巻き締めた状態において内周となる側(以下、内周側という)に形成されており、長手方向に亘って連続的に設けられている。さらに、本体部11は、図1及び図2に示すように、複数の溝部11aと同様に形成される複数の被係止部11bを有している。複数の被係止部11bは、バンド部10をワイヤーハーネスに巻き締めた状態において外周となる側(以下、外周側という)に形成されており、長手方向に亘って連続的に設けられている。
【0023】
ヘッド部12は、バンド部10の先端に設けられ、先端側からその反対側となる後端側に向かって肉厚が次第に厚くなる傾斜構造となっている。このヘッド部12は、図1に示すように係止部12aを有しいている。係止部12aは、バンド部10の内周側に設けられた突出片である。
【0024】
アーチ部13は、バンド部10の外周側に設けられると共に、バンド部10の長手方向に亘って複数設けられている。各アーチ部13には挿通孔13aが形成されている。挿通孔13aは、バンド部10が挿通可能な孔である。この挿通孔13aは、図2に示すように、ヘッド部12の後端側の肉厚t1よりも、肉厚方向の大きさt2が小さくなっている。このため、バンド部10を挿通孔13aに挿通させる場合、樹脂よりなるヘッド部12とアーチ部13とを互いに弾性変形させながら挿通させることとなる。さらに、アーチ部13は、舌部13bを有している。舌部13bは、本体部11の外周側に突出したアーム状部材であって、本体部11の複数の溝部11aに選択的に係合する構造となっている。
【0025】
また、図1に示すように、バンド固定部20は、バンド部10がワイヤーハーネスを巻き締めた巻き締め状態で、バンド部10を固定するものである。このバンド固定部20には挿通空間21が形成されている。挿通空間21は、ワイヤーハーネスを巻き締める際に、バンド部10が挿通される空間であり、バンド固定部20を貫通して形成されている。さらに、バンド固定部20は、舌部22を有している。舌部22は、挿通空間21内に設けられたアーム状部材であって、本体部11の複数の溝部11aに選択的に係合する構造となっている。
【0026】
クリップ30は、対象物である車両パネル等に係合するものであって、バンド固定部20上に形成されている。このクリップ30は、中心に位置する支柱31と、該支柱31の両側に形成されたアンカー32とからなっている。このクリップ30は、例えば、車両パネルに設けられた取付孔に挿入される。挿入時においてアンカー32は、弾性変形しながら取付孔を通過し、通過時点でアンカー32が開くことにより、取付孔に係合する構造となっている。
【0027】
パネル押え部40は、弾性を有する円盤状の板部材であり、クリップ30を車両パネル等の取付孔に係合させたとき、車両パネル等に圧接して、その係合を維持すると共に取付孔を塞ぐ役割を果たす。
【0028】
次に、第1実施形態に係るバンドクリップ1の使用方法について説明する。まず、作業者等は、ビニールテープ等によって各電線が束になったワイヤーハーネスを用意する。次に、作業者等は、バンド固定部20側の電線載置箇所P(図1(b)参照)にワイヤーハーネスを載置する。そして、作業者等は、ワイヤーハーネスをバンド部10によって巻き締める。このとき、作業者等は、バンド固定部20の挿通空間21にバンド部10を挿通させ、挿通空間21にバンド部10を挿通したことによって突出したバンド部10の先端側を引っ張ることによって、ワイヤーハーネスを巻き締める。さらに、巻き締めの際には、バンド部10の内周側が舌部22の先端に接触するが、舌部22がアーム状に形成されているため、アームの撓みによって複数の溝部11aの段を乗り越えるようにして、ワイヤーハーネスは巻き締められることとなる。
【0029】
そして、作業者等がバンド部10の先端を最大限に引っ張ることで、巻き締めは完了する。従来であれば、この巻き締め完了後にバンド部10の余長部分をカットするが、第1実施形態に係るバンドクリップ1では、余長部分をカットすることなく、バンド部10を各アーチ部13の挿通孔13aに順次挿通させていく。このときの様子について図3を参照して説明する。
【0030】
図3は、第1実施形態に係るバンドクリップ1の使用方法を説明する断面図である。なお、図3においては、アーチ部13は4つである場合を例に説明する。バンド部10をバンド固定部20によって固定した後、作業者等は、最も後端側に存在する第1アーチ部131の挿通孔13a1にヘッド部12を挿通させる。その後、作業者等は、第2〜第4アーチ部132〜134の挿通孔13a2〜13a4に順次ヘッド部12を挿通させていく。これにより、図3に示すように、余長部分はワイヤーハーネスに沿うように収まることとなる。また、ヘッド部12が傾斜構造となっているため、作業者等は、挿通孔13aにバンド部10を容易に挿通することができる。
【0031】
挿通後、作業者等は、ヘッド部12の係止部12a(図1参照)を、バンド部10の外周側に形成される被係止部11b(図1及び図2参照)に係合させる。これにより、バンド部10の先端に設けられるヘッド部12が本体部11に固定されることとなる。すなわち、バンド部10の先端側が自由状態となって見栄えが低下してしまう事態を抑制することとなる。
【0032】
なお、図3に示すような状態において、バンド部10がアーチ部13から抜ける方向に力が加わったとしても、傾斜構造、アーチ部13の舌部13b、ヘッド部12の係止部12aなどによって、バンド部10が挿通孔13aから抜けてしまう頻度を抑制することとなる。
【0033】
以上、第1実施形態に係るバンドクリップ1によれば、バンド部10はアーチ部13を有し、アーチ部13は、バンド部10が挿通可能な挿通孔13aを有している。このため、バンド部10がバンド固定部20に固定され、余長部分が生じたとしても、余長部分をアーチ部13の挿通孔13aに挿通させることで、余長部分をワイヤーハーネスに沿うように収めることができる。よって、余長部分のカットを不要とすることができる。さらに、アーチ部13は、バンド部10の外周側に設けられているため、ワイヤーハーネスにバンド部10を強く巻き締めたとしても、ワイヤーハーネスとバンド部との間にフック等を押し込む必要がなく、作業効率の低下を抑制することができる。さらには、作業効率の向上を考慮してバンド部10を弱く巻き締める必要がなく、ワイヤーハーネスとバンド部10との間に隙間が生じて異音の発生してしまう事態も抑制することができる。
【0034】
また、アーチ部13はバンド部10の長手方向に亘って複数設けられているため、ワイヤーハーネスを巻き締めた後のバンド部10先端といずれかのアーチ部13との距離が近くなる。これにより、ワイヤーハーネスを巻き締めた後に、バンド部10の先端側とアーチ部13の距離が遠くなってしまい、バンド部10先端側が自由状態となってしまう事態を抑制することができる。
【0035】
また、バンド部10は、当該バンド部10の先端に設けられ、先端側からその反対側となる後端側に向かって肉厚が次第に厚くなる傾斜構造となったヘッド部12を有する。このため、アーチ部13の挿通孔13aに対して挿通の容易化を図ることができる。特に、ヘッド部12の後端側の肉厚は、挿通孔13aの肉厚方向の大きさよりも大きくなっているため、バンド部10に対してアーチ部13から抜けようとする力が加わったとしても、アーチ部13とヘッド部12後端側が接触し、バンド部10が挿通孔13aから抜けてしまう頻度を抑制することができる。
【0036】
また、ヘッド部12は係止部12aを有し、バンド部10は、係止部12に係止可能な被係止部11bが長手方向に亘って形成されているため、バンド部10をアーチ部13の挿通孔に挿通させた後に、係止部12aを被係止部11bに係止させることで、アーチ部13がバンド部10の先端側を保持しなくとも、バンド部10の先端が固定されて、先端側が自由状態となることによる見栄えの低下を抑制することができる。特に、係止部12aは、バンド部10が巻き締められた状態でヘッド部12の内周側に位置し、被係止部11bは、バンド部10の外周側に位置するため、係止にあたり、ヘッド部12をワイヤーハーネスとバンド部10との間に押し込む必要がなく、作業効率の低下についても抑制することができる。
【0037】
また、バンド部10は、長手方向に亘って、長手方向と直交する方向に形成された複数の溝部11aを有し、各アーチ部13及びバンド固定部20は、複数の溝部11aに選択的に係合する舌部13b,22を有する。このため、バンド固定部20の舌部22に溝部11aを係合させることができると共に、バンド部10を挿通孔13aに挿通させることで、アーチ部13の舌部13bに溝部11aを係合させることができる。従って、アーチ部13においてもバンド部10を固定でき、バンド部10が挿通孔13aから抜けてしまう頻度を抑制することができる。特に、各アーチ部13とバンド固定部20との舌部13b,22によって係合される相手側が、バンド部10に形成された複数の溝部11aであるため、係合相手側を共通とすることできる。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るバンドクリップ1は、第1実施形態のものと同様であるが、一部構成が第1実施形態のものと異なっている。以下、相違点について説明する。
【0039】
図4は、第2実施形態に係るバンドクリップ1のバンド部10の詳細を示す構成図であり、(a)斜視図を示し、(b)は(a)のb−b断面図を示している。図4(a)に示すように、第2実施形態においてバンド部10は、アーチ部13を1つだけ有している。また、アーチ部13は、図4(b)に示すように、挿通孔13aの内壁に突起部13cを有している。突起部13cは、バンド部10が挿通孔13aに挿通された場合に当該バンド部10を押圧するものである。具体的に、突起部13cは、アーチ部13の内壁から内周側に向かって突出しており、挿通孔13aに挿通されたバンド部10を、バンド部10の外周側から押圧する構成となっている。
【0040】
次に、第2実施形態に係るバンドクリップ1の使用方法について説明する。まず、作業者等は、ワイヤーハーネスを用意し、バンド固定部20側の電線載置箇所P(図1(b)参照)にワイヤーハーネスを載置する。そして、作業者等は、ワイヤーハーネスをバンド部10によって巻き締める。その後、作業者等は、余長部分をカットすることなく、バンド部10をアーチ部13の挿通孔13aに挿通させる。このときの様子について図5を参照して説明する。
【0041】
図5は、第2実施形態に係るバンドクリップ1の使用方法を説明する断面図である。バンド部10をバンド固定部20によって固定した後、作業者等は、アーチ部13の挿通孔13aにヘッド部12を挿通させる。これにより、図5に示すように、余長部分はワイヤーハーネスに沿うように収まることとなる。さらに、第2実施形態においてアーチ部13は突起部13cを有しているため、突起部13cによりバンド部10が押圧され、バンド部10がアーチ部13から抜ける方向に力が加わったとしても、バンド部10が挿通孔13aから抜けてしまう頻度を抑制することとなる。
【0042】
以上、第2実施形態に係るバンドクリップ1によれば、第1実施形態と同様に、余長部分のカットを不要とすることができ、作業効率の低下を抑制することができる。さらには、ワイヤーハーネスとバンド部10との間に隙間が生じて異音の発生してしまう事態も抑制することができる。また、アーチ部13とヘッド部12後端側が接触し、バンド部10が挿通孔13aから抜けてしまう頻度を抑制することができる。また、係止部12aを被係止部11bに係止させることで、アーチ部13がバンド部10の先端側を保持しなくとも、バンド部10の先端が固定されて、先端側が自由状態となることによる見栄えの低下を抑制することができる。特に、係止にあたり、ヘッド部12をワイヤーハーネスとバンド部10との間に押し込む必要がなく、作業効率の低下についても抑制することができる。
【0043】
さらに、第2実施形態によれば、アーチ部13は挿通孔13aの内壁に突起部13cを有するため、挿通孔13aに挿通されたバンド部10を突起部13cにより押圧保持することとなり、バンド部10が挿通孔13aから抜けてしまう頻度を抑制することができる。
【0044】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、上記実施形態において被係止部11bは、長手方向に亘って連続的に設けられる複数の溝であるが、これに限らず、長手方向に亘って連続的に設けられていれば、係止孔などであってもよい。なお、第1実施形態では、被係止部11bを複数の溝によって構成しているため、本体部11の両面に溝が形成されることとなり、本体部11に可撓性を持たせる点で有利である。
【0045】
さらに、上記実施形態では傾斜構造となるヘッド部12を有しているが、これに限らず、ヘッド部12を有さしていなくともよい。また、バンド部10は舌部13bや突起部13cによって保持される構成に限らず、本体部11の肉厚と貫通孔13aの肉厚方向の大きさが同程度となっている構成であってもよい。これによっても、アーチ部13で本体部11を保持でき、余長部分が自由状態で残ってしまう事態を防止することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係るバンドクリップの外観図を示す構成図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示している。
【図2】図1に示したバンド部の詳細を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るバンドクリップの使用方法を説明する断面図である。
【図4】第2実施形態に係るバンドクリップのバンド部の詳細を示す構成図であり、(a)斜視図を示し、(b)は(a)のb−b断面図を示している。
【図5】第2実施形態に係るバンドクリップの使用方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…バンドクリップ
10…バンド部
11…本体部
11a…複数の溝部
11b…被係止部
12…ヘッド部
12a…係止部
13…アーチ部
13a…挿通孔
13b…舌部
13c…突起部
20…バンド固定部
21…挿通空間
22…舌部
30…クリップ
31…支柱
32…アンカー
40…パネル押え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線束からなるワイヤーハーネスを巻き締めるバンド部と、前記バンド部を巻締状態で固定するバンド固定部と、対象物に係合するクリップとが一体となったバンドクリップであって、
前記バンド部は、当該バンド部が巻き締められた状態で外周側に設けられるアーチ部を有し、
前記アーチ部は、当該バンド部が挿通可能な挿通孔を有している
ことを特徴とするバンドクリップ。
【請求項2】
前記アーチ部は、当該バンド部の長手方向に亘って複数設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のバンドクリップ。
【請求項3】
前記アーチ部は、前記挿通孔の内壁に、前記バンド部が前記挿通孔に挿通された場合に当該バンド部を押圧する突起部を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のバンドクリップ。
【請求項4】
前記バンド部は、当該バンド部の先端に設けられ、先端側からその反対側となる後端側に向かって肉厚が次第に厚くなる傾斜構造となったヘッド部を有し、
前記ヘッド部の後端側の肉厚は、挿通孔の肉厚方向の大きさよりも大きくなっている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のバンドクリップ。
【請求項5】
前記ヘッド部は、当該バンド部が巻き締められた状態で内周側に係止部を有し、
前記バンド部は、当該バンド部が巻き締められた状態で外周側に、前記係止部に係止可能な被係止部が長手方向に亘って形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のバンドクリップ。
【請求項6】
前記バンド部は、長手方向に亘って、長手方向と直交する方向に形成された複数の溝部を有し、
前記バンド固定部及び前記各アーチ部は、前記複数の溝部に選択的に係合する舌部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のバンドクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−115241(P2009−115241A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289968(P2007−289968)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】