バンプストッパー
【課題】ストッパー部材のゴムボリュームが多く、バンプ時の変形により保持金具に当たる可能性がなく、その上保持金具の防食処理も簡易且つ確実に施し得て、ストッパー部材ばかりでなく保持金具の耐久性をも上げ、真に耐久性を備えたバンプストッパーを提供する。
【解決手段】円錐柱状にゴム素材にて構成したストッパー部材2と、このストッパー部材2を保持して固着すると共に他部材3に取り付け可能とする保持金具4とからなり、この保持金具4に近在するストッパー部材2の外周面5に反保持金具側に向いた溝6を設け、この溝6にてバンプ時のストッパー部材2の変形部7が保持金具4に当接しないようにし、さらに保持金具4の表面をゴム素材にて覆うことで、バンプ時に高い緩衝力を得且つ耐久性が極めて高く、その上コスト低下も図ることができる。
【解決手段】円錐柱状にゴム素材にて構成したストッパー部材2と、このストッパー部材2を保持して固着すると共に他部材3に取り付け可能とする保持金具4とからなり、この保持金具4に近在するストッパー部材2の外周面5に反保持金具側に向いた溝6を設け、この溝6にてバンプ時のストッパー部材2の変形部7が保持金具4に当接しないようにし、さらに保持金具4の表面をゴム素材にて覆うことで、バンプ時に高い緩衝力を得且つ耐久性が極めて高く、その上コスト低下も図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車走行時の大きな揺れであるバンプ時に、緩衝しながらその揺れを止めるためのバンプストッパーに関し、より詳しくは、ストッパー部材とそれを保持して固着する保持金具とからなり、この保持金具に近在するストッパー部材の外周面に保持金具側を底辺とする環状の溝を設け、この溝の変形作用によってバンプ時のストッパー部材の変形部が保持金具に当接しないようにしたバンプストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
バンプストッパーは、例えば、自動車のサスペンションが可動範囲の限界近くまで撓んだときに働き、ホイールからの衝撃がボディーに直接伝わらないようにするためのものであり、その構造は、保持金具に自動車の車体のバンプに耐えられるゴム製のストッパー部材を保持して固着している。したがって、車体からのバンプ時の荷重は相当大きなものであるから、それを吸収するために、ストッパー部材のゴムボリュームを大きくし、その大変形によりバンプ時の大荷重を受け止める構造としている。一方、保持金具も当然バンプ時の大荷重に耐えられなければならず、それには腐食などによる劣化を防止する必要がある。このような状況に対処するものとして、以下のような技術が知られている。
【特許文献1】特開2000−291707
【特許文献2】実開平7−41099
【特許文献3】特開平9−52505
【特許文献4】特開平9−300931
【0003】
特許文献1のバンプストッパーは、図11に示すように、保持金具50にゴム製のストッパー部材51が装着され自動車のサスペンションに使用される。保持金具50は、底壁52と、この底壁52周縁から立ち上がる側壁53と、この側壁53に続いて外方に広がるフランジ54とを備え、一方、ストッパー部材51は、円筒状をなしその内周面及び外周面に蛇腹状に内周溝55及び外周溝56を設けている。そして、ストッパー部材51が保持金具50方向に圧縮された際、圧縮されたストッパー部材51の外方への変形部が、内周溝55及び外周溝56の影響により、フランジ54に乗り上げ、サスペンションに保持金具50が直接当たらず保護する。一方、ストッパー部材51の内方への変形部はその円筒内の空洞で吸収され、ストッパー部材51自体の座屈を防ぐことが出来る。
【0004】
特許文献2のバンプストッパーは、図12に示すように、保持金具60にゴム製のストッパー部材61が装着され、このストッパー部材61は、保持金具60に保持固着するロッド嵌合部62とこれに続く蛇腹状の弾性伸縮部63を有し、ロッド嵌合部62と弾性伸縮部63との境界に環状溝64を設けて、なるものである。そして、特にストッパー部材61が保持金具60方向に圧縮された際、圧縮されたストッパー部材61のロッド嵌合部62の変形が環状溝64により吸収され、圧縮力及び引張力を受けた際の弾性伸縮部63の適正な弾性変形を確保することが出来る。
【0005】
特許文献3のバンプストッパーは、図13に示すように、保持金具70にゴム製で円筒状のストッパー部材71が装着され、このストッパー部材71は、その外周面及び内周面に環状溝72及び73を設け、且つストッパー部材71先端の当接部を肉厚(t1<t2)にして、なるものである。そして、ストッパー部材71が当接して保持金具70方向に圧縮された際、肉厚部分t2により過度の変形を抑制し集中させず、座屈の心配もなくすことが出来る。
【0006】
特許文献4のバンプストッパーは、図14に示すように、保持金具80にゴム製で円筒状のストッパー部材81が装着され、ストッパー部材81の外周に環状溝82が設けられ且つ保持金具80にストッパー部材81の基部83が遊嵌状態で保持されて、なるものである。そして、非バンプ時、ストッパー部材81が自由長となり、ストッパー部材81に対し比較的容易に撓み変形でき、応力集中が生じず、動的バネ定数が低く抑えられ、乗り心地が良好であるが、バンプ時、ストッパー部材81の撓みが増大すると、基部83が保持金具80内に充満し拘束されるので、ストッパー部材81の剛性が増し、動的バネ定数が高くなり、ストッパー機能を発揮する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものは、バンプ時に円筒状のストッパー部材51の内周溝55及び外周溝56により、外方への変形部が保持金具50のフランジ54に乗り上げ、サスペンションに直接当たらないから、サスペンションは保護されるが、ゴム製のストッパー部材51は金属製のフランジ54に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。しかも、内方への変形部はストッパー部材51が円筒であるため吸収され易く、その分外方への変形部が量的に少なくなり、ストッパー部材51自体の上記損傷を少なくしている。その反面、バンプ時の衝撃に対し、ストッパー部材51が円筒であるから、ゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0008】
特許文献2のものは、バンプ時、ストッパー部材61のロッド嵌合部62の変形部が環状溝64により吸収されるが、蛇腹状のゴム製の弾性伸縮部63が金属製の保持金具60に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。しかも、内方への変形部は、特許文献1のものと同様に、ストッパー部材61に吸収され易く、変形部が量的に少なくなり、ストッパー部材61自体の上記損傷を少なくしている反面、バンプ時の衝撃に対しゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0009】
特許文献3のものは、バンプ時、環状溝72及び73により、ストッパー部材71の変形部が吸収され、さらにストッパー部材71先端部の肉厚部分t2により過度の変形を抑制し集中させないが、ゴム製のストッパー部材71が金属製の保持金具70に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。また、特許文献1のものと同様に、バンプ時の衝撃に対しストッパー部材71のゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0010】
特許文献4のものは、バンプ時、ストッパー部材81の基部83が保持金具80内に充満し拘束されることで、ストッパー機能を発揮するが、ゴム製のストッパー部材81が金属製の保持金具80に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。また、特許文献1のものと同様に、バンプ時の衝撃に対しストッパー部材81のゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ストッパー部材のゴムボリュームが多いのに、バンプ時の変形により保持金具に当たる可能性がなく、その上保持金具の防食処理も簡易且つ確実に施すことが出来、ストッパー部材ばかりか保持金具の耐久性も上げ、真に耐久性を備えたバンプストッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、円錐柱状にゴム素材にて構成したストッパー部材と、該ストッパー部材を保持して固着すると共に他部材に取り付け可能とする保持金具とからなり、前記ストッパー部材の外周面の前記保持金具に近在する部位に反保持金具側に向いた溝を設け、該溝にてバンプ時の前記ストッパー部材の変形部が前記保持金具に当たらないようにしたことを特徴とするバンプストッパーが提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記溝の向きは、前記保持金具の保持固着面に対して、20度から70度の範囲であるバンプストッパーが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、前記ストッパー部材の保持固着部及び前記他部材との取付面を除いた前記保持金具の部位に、前記ゴム素材による被覆面を形成したバンプストッパーが提供される。
【0015】
また、本発明によれば、前記保持金具にゴム素材の供給孔を設け、前記保持金具にストッパー部材を成形する際、前記被覆面を一体に成形したバンプストッパーが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記ゴム素材による被覆面と前記取付面との境界にシール部を設けたバンプストッパーが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバンプストッパーは、バンプ時に、他部材に取り付けた円錐柱状のストッパー部材に大荷重がかかると、外方にのみ変形するが、その外方変形は反保持金具側に向いた溝により吸収されて、保持金具側に向かわないため保持金具に当接することがない。したがって、ストッパー部材のゴムボリュームが多いのに、金属製の保持金具に当たらないから、ストッパー部材が損傷することなく耐久性が増し、しかも、ゴムボリュームが多い分緩衝力を高く維持出来る効果がある。
【0018】
また、本発明のバンプストッパーは、ストッパー部材における溝の反保持金具側の向きが保持金具の保持固着面に対して、20度から70度の範囲、好ましくは35度から55度の範囲にあることにより、ストッパー部材の外方変形は確実に保持金具側に向かわずに溝に吸収され、保持金具に当接することがない。したがって、上記の効果がより確実に達成される。
【0019】
また、本発明のバンプストッパーは、ストッパー部材の保持固着部及び他部材との取付面を除いた保持金具の部位に、ゴム素材による被覆面を形成してあると、空気中に剥き出した部分がないため腐食しないというメリットがある。したがって、上記の効果に加えて、別工程となる塗装工程が省かれるため省力化に寄与し、かつ、保持金具の防食処理が簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材ばかりでなく保持金具の耐久性も上げることができ、ともに耐久性を備えることが出来る効果がある。
【0020】
また、本発明のバンプストッパーは、保持金具にゴム素材供給孔を設けてあることにより、保持金具にストッパー部材を成形する際、供給孔から供給されるゴム素材が被覆する面にも回り、その面をゴム素材にて覆い一体に成形することができる。したがって、上記の効果に加えて、別工程となる塗装がなくなるばかりでなく、保持金具にストッパー部材を成形する際、ゴム素材にて被覆する面も覆うことが出来、投錨効果により一体性が保持できる効果がある。
【0021】
また、本発明のバンプストッパーは、ゴム素材による被覆面を形成出来ない保持金具の取付面と被覆面との境界に、シール部を設けてあると、腐食の原因となる湿気を遮断して、取付面を腐食させない。したがって、上記の効果に加えて、保持金具の取付面にも別工程となる塗装が必要なくなり、保持金具の防食処理が簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材ばかりか保持金具の耐久性も上げ、真に耐久性を備えることが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例】
【0023】
図1は本発明のバンプストッパーを示す断面図、図2は図1のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図、図3は本発明のバンプストッパーの変形例を示す断面図、図4は図3のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
これらの図面において、バンプストッパー1は、円錐柱状にゴム素材にて構成したストッパー部材2と、このストッパー部材2を保持して固着すると共に他部材3に取り付け可能とする保持金具4とからなり、このストッパー部材2の外周面5の保持金具4に近在する部位に反保持金具側に向いた溝6を設け、この溝6にてバンプ時のストッパー部材2の変形部7が保持金具4に当接しないように構成されている。
【0024】
前記ストッパー部材2は、空洞の無い円錐柱状であり、従来例である特許文献1ないし4のように、空洞のある円筒状のものとは、先ず、形状面で相違する。したがって、ストッパー部材2は、ゴムボリュームが多く、その分大荷重に対し緩衝力を高く維持することが出来るものである。ストッパー部材2のゴム素材は特に限定されることなく、天然ゴム(NR)及び/又は合成ゴムの単独又はブレンド品が使用できる。
【0025】
このような材質のストッパー部材2は、その外周面5の保持金具4に近在する部位に反保持金具側に向いた溝6を設けてあり、この溝6の向きは、溝6の軸線10と前記保持金具4の保持固着面11に対しての角度αが20度から70度の範囲であり、特に35度から55度の範囲が特に好ましい。この溝6の向き角度αが70度を超えると、バンプ時のストッパー部材2の変形部7が外方に広がりすぎて、溝6とラッパ状周縁12の間のゴムが保持金具4に当たる可能性が出て来る。また、この角度αが20度に満たないと、バンプ時のストッパー部材2の変形部7の逃げ場が無くなり、保持金具4のラッパ状周縁12に当たってしまい、当該部分が損傷する。なお、溝6の向き角度αが、図3、4に示すように70度程度であると、金型の上型をそのまま上方にスムーズに抜くことが出来、本発明のバンプストッパー1の作製が極めて容易となる。
【0026】
前記保持金具4は、外方に広がっているラッパ状周縁12がある円形のトレー状に形成され、その中心部にボルト孔13が開けられて、このボルト孔13にボルト14が通され、前記他部材3に取り付け固定出来るようになっている。したがって、保持金具4のラッパ状周縁12により、仮にバンプ時のストッパー部材2の変形部7が当たったとしても、損傷の度合が緩衝される。そして、この保持金具4には、ストッパー部材2の保持固着部15及び他部材2との取付面16を除いた部位17に、ストッパー部材2と同じゴム素材による被覆面18を形成している。
【0027】
したがって、このゴム素材による被覆面18が保持金具4にあることで、空気中に剥き出した部分が無くなり、保持金具の酸化による腐食が著しく抑制される。この保持金具4の剥き出し部分は、通常別工程の塗装が施されるが、保持金具4上にゴム素材のストッパー部材2を固着させる際、このゴム素材による被覆面18を形成しておくことによって、保持金具4の防食処理が簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材2ばかりでなく保持金具4の耐久性も上げることができ、ストッパー部材2も保持金具4も共に耐久性を備えたものとなる。
【0028】
保持金具4にゴム素材による被覆面18を形成する際に、より効果的な方法としては、保持金具4の一部にゴム素材供給孔20を開けておき、保持金具4にストッパー部材2を成形する際、この供給孔20を介して供給された一部のゴム素材は、投錨効果によって保持金具4の表裏を一体に覆った状態で被覆面が成形されることになる。したがって、別工程となる塗装がなくなるばかりでなく、保持金具4にストッパー部材2を成形する際、ゴム素材にて被覆面18を含めて容易に一体に形成することが出来る。
【0029】
保持金具4の被覆面18の部分拡大図を図9、図10に示した。図9はゴム素材供給孔20を形成せずに保持金具4の被覆面18をゴムで覆った状態を示しており、図10は、保持金具4の一部にゴム素材供給孔20を形成しておき、ゴム素材の一部をこの供給孔20を介して供給することによって、被覆面18をゴム素材で覆った状態を示している。このゴム素材供給孔20は、好ましくは、保持金具4のラッパ状周縁12のストッパー部材2の保持固着部15及び他部材2との取付面16を除いた部位17よりも若干上方に形成することが好ましく、これによって、シール部21が取付面16にまでは回らずに、ラッパ状周縁12のR部分で止まっているために、取付面16の固着を阻害することがない。
【0030】
なお、保持金具4における前記他部材2との取付面16は、構造上ゴム素材にて覆うことは出来ないが、被覆面18と取付面16との境界にシール部21を設けてある。シール部21の拡大図を図9に示した。このシール部21により、腐食の原因となる湿気を遮断して、取付面16を腐食させないようになっている。このため、保持金具4の取付面16に別工程となる塗装工程が不要となり、保持金具4の取付面16にも防食処理を簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材2ばかりでなく保持金具4の耐久性をも上げることができる。
【0031】
上記構成からなる本発明のバンプストッパー1は、次のようにして作製される。
まず、天然ゴム(NR)及び/又は合成ゴムの他に、各種の添加剤を均一となるように混合した後、加硫温度以下(例えば、100℃程度)で十分混練する。一方、ボルト孔13にボルト14を固着した保持金具4を金型にセットし、この金型の注入口から上記の混練組成物を200kg/cm2 程度の圧力で注入し、次いで約170℃で15分間加硫接着することで、本発明のバンプストッパー1が得られる。その際、保持金具4の小さな供給孔20から混練ブレンド品が被覆する面にも回り、その面をゴム組成物にて覆い被覆面18を一体に成形することになり、さらにこの被覆面18と取付面16との境界にシール部21も一体に成形される。また、既述のとおり、ストッパー部材2の溝6の向き角度αが70度程度であると、金型の上型をそのまま上方にスムーズに抜くことが出来、バンプストッパー1の作製が極めて容易となる。
【0032】
以上のように作製されたバンプストッパー1は、自動車のサスペンションに隣接して斜めに上下2個取り付けられる。その結果、自動車の走行時にバンプが発生した場合に、相手部材にストッパー部材2が当たり、その位置で強制的にバンプを止め、しかもストッパー部材2の圧縮変形により、その際の衝撃を緩衝して、直接的に伝わらないようにしている。
【0033】
次に、上記構成の本発明のバンプストッパー1の実効性について実証する。
〈実験例1〉
バンプストッパーを図1に示す形状とし、溝の向き角度αは約45度であり、相手部材に1KNから徐々に最終的に10KNまで荷重をかけて、その間のストッパー部材の変形の状況を目視にて観察すると共に、保持部材のラッパ状周縁との当接具合を見る。
その結果を図2に示す。
【0034】
〈実験例2〉
供試したバンプストッパーを図3に示す形状とし、溝の向き角度αを約70度とし、実験例1の場合と同様に観察し、その結果を図4に示す。
【0035】
〈比較例1〉
供試したバンプストッパーを溝のない図5に示す形状とし、実験例1の場合と同様に観察し、その結果を図6に示す。
【0036】
〈比較例2〉
供試したバンプストッパーを図7に示す形状とし、溝の向き角度αは0度であり、実験例1の場合と同様に観察し、その結果を図8に示す。
【0037】
本発明の実施例である実験例1、2は、図2、4に示すように、ストッパー部材に10KNの大荷重をかけても、その変形部は実質的に保持部材のラッパ状周縁に当接していない。実験例2は、舌状の変形部がラッパ状周縁に当たっているように見えるが、上部の変形部との間に隙間があるため、舌状の変形部がラッパ状周縁上に乗っている状況であり、実質的には当接していない。これに対して、比較例1、2は、図6、8に示すように、ストッパー部材に10KNの大荷重をかけると、その変形部は実質的に保持部材のラッパ状周縁に当接している。したがって、本発明の実験例1、2はストッパー部材の損傷発生の可能性が限りなく低いのに対して、比較例1、2は損傷発生の可能性が限りなく高いことが理解される。
【0038】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバンプストッパーは、より強いバンプ時の変形に耐えるべく、ストッパー部材のゴムボリュームが多い場合に、利用可能性が高く、特に保持金具の防食処理も簡易且つ確実に施して低コストを目指すと共に、ストッパー部材ばかりでなく保持金具の耐久性をも上げて、真に耐久性を備えたバンプストッパーを得たい場合にその利用可能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例に示したバンプストッパーを示す断面図である。
【図2】図1のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例に示したバンプストッパーの変形例を示す断面図である。
【図4】図3のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図5】比較例1のバンプストッパーを示す断面図である。
【図6】図5のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図7】比較例2のバンプストッパーを示す断面図である。
【図8】図7のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図9】保持金具の被覆面の部分拡大図である。
【図10】保持金具にゴム素材供給孔を形成した時の被覆面の部分拡大図である。
【図11】従来のバンプストッパーの一例を示す断面図である。
【図12】従来のバンプストッパーの他の一例を示す断面図である。
【図13】従来のバンプストッパーの他の一例を示す断面図である。
【図14】従来のバンプストッパーの他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:バンプストッパー
2,51,61,71,81:ストッパー部材
3:他部材
4,50,60,70,80:保持金具
5:外周面
6:溝
7:変形部
8:相手部材
10:軸線
11:保持固着面
12:ラッパ状周縁
13:ボルト孔
14:ボルト
15:保持固着部
16:取付面
17:部位
18:被覆面
20:ゴム素材供給孔
21:シール部
52:底壁
53:側壁
54:フランジ
55:内周溝
56:外周溝
62:ロッド嵌合部
63:弾性伸縮部
64,72,73,82:環状溝
83:基部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車走行時の大きな揺れであるバンプ時に、緩衝しながらその揺れを止めるためのバンプストッパーに関し、より詳しくは、ストッパー部材とそれを保持して固着する保持金具とからなり、この保持金具に近在するストッパー部材の外周面に保持金具側を底辺とする環状の溝を設け、この溝の変形作用によってバンプ時のストッパー部材の変形部が保持金具に当接しないようにしたバンプストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
バンプストッパーは、例えば、自動車のサスペンションが可動範囲の限界近くまで撓んだときに働き、ホイールからの衝撃がボディーに直接伝わらないようにするためのものであり、その構造は、保持金具に自動車の車体のバンプに耐えられるゴム製のストッパー部材を保持して固着している。したがって、車体からのバンプ時の荷重は相当大きなものであるから、それを吸収するために、ストッパー部材のゴムボリュームを大きくし、その大変形によりバンプ時の大荷重を受け止める構造としている。一方、保持金具も当然バンプ時の大荷重に耐えられなければならず、それには腐食などによる劣化を防止する必要がある。このような状況に対処するものとして、以下のような技術が知られている。
【特許文献1】特開2000−291707
【特許文献2】実開平7−41099
【特許文献3】特開平9−52505
【特許文献4】特開平9−300931
【0003】
特許文献1のバンプストッパーは、図11に示すように、保持金具50にゴム製のストッパー部材51が装着され自動車のサスペンションに使用される。保持金具50は、底壁52と、この底壁52周縁から立ち上がる側壁53と、この側壁53に続いて外方に広がるフランジ54とを備え、一方、ストッパー部材51は、円筒状をなしその内周面及び外周面に蛇腹状に内周溝55及び外周溝56を設けている。そして、ストッパー部材51が保持金具50方向に圧縮された際、圧縮されたストッパー部材51の外方への変形部が、内周溝55及び外周溝56の影響により、フランジ54に乗り上げ、サスペンションに保持金具50が直接当たらず保護する。一方、ストッパー部材51の内方への変形部はその円筒内の空洞で吸収され、ストッパー部材51自体の座屈を防ぐことが出来る。
【0004】
特許文献2のバンプストッパーは、図12に示すように、保持金具60にゴム製のストッパー部材61が装着され、このストッパー部材61は、保持金具60に保持固着するロッド嵌合部62とこれに続く蛇腹状の弾性伸縮部63を有し、ロッド嵌合部62と弾性伸縮部63との境界に環状溝64を設けて、なるものである。そして、特にストッパー部材61が保持金具60方向に圧縮された際、圧縮されたストッパー部材61のロッド嵌合部62の変形が環状溝64により吸収され、圧縮力及び引張力を受けた際の弾性伸縮部63の適正な弾性変形を確保することが出来る。
【0005】
特許文献3のバンプストッパーは、図13に示すように、保持金具70にゴム製で円筒状のストッパー部材71が装着され、このストッパー部材71は、その外周面及び内周面に環状溝72及び73を設け、且つストッパー部材71先端の当接部を肉厚(t1<t2)にして、なるものである。そして、ストッパー部材71が当接して保持金具70方向に圧縮された際、肉厚部分t2により過度の変形を抑制し集中させず、座屈の心配もなくすことが出来る。
【0006】
特許文献4のバンプストッパーは、図14に示すように、保持金具80にゴム製で円筒状のストッパー部材81が装着され、ストッパー部材81の外周に環状溝82が設けられ且つ保持金具80にストッパー部材81の基部83が遊嵌状態で保持されて、なるものである。そして、非バンプ時、ストッパー部材81が自由長となり、ストッパー部材81に対し比較的容易に撓み変形でき、応力集中が生じず、動的バネ定数が低く抑えられ、乗り心地が良好であるが、バンプ時、ストッパー部材81の撓みが増大すると、基部83が保持金具80内に充満し拘束されるので、ストッパー部材81の剛性が増し、動的バネ定数が高くなり、ストッパー機能を発揮する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものは、バンプ時に円筒状のストッパー部材51の内周溝55及び外周溝56により、外方への変形部が保持金具50のフランジ54に乗り上げ、サスペンションに直接当たらないから、サスペンションは保護されるが、ゴム製のストッパー部材51は金属製のフランジ54に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。しかも、内方への変形部はストッパー部材51が円筒であるため吸収され易く、その分外方への変形部が量的に少なくなり、ストッパー部材51自体の上記損傷を少なくしている。その反面、バンプ時の衝撃に対し、ストッパー部材51が円筒であるから、ゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0008】
特許文献2のものは、バンプ時、ストッパー部材61のロッド嵌合部62の変形部が環状溝64により吸収されるが、蛇腹状のゴム製の弾性伸縮部63が金属製の保持金具60に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。しかも、内方への変形部は、特許文献1のものと同様に、ストッパー部材61に吸収され易く、変形部が量的に少なくなり、ストッパー部材61自体の上記損傷を少なくしている反面、バンプ時の衝撃に対しゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0009】
特許文献3のものは、バンプ時、環状溝72及び73により、ストッパー部材71の変形部が吸収され、さらにストッパー部材71先端部の肉厚部分t2により過度の変形を抑制し集中させないが、ゴム製のストッパー部材71が金属製の保持金具70に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。また、特許文献1のものと同様に、バンプ時の衝撃に対しストッパー部材71のゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0010】
特許文献4のものは、バンプ時、ストッパー部材81の基部83が保持金具80内に充満し拘束されることで、ストッパー機能を発揮するが、ゴム製のストッパー部材81が金属製の保持金具80に当たり損傷をまぬがれず、耐久性に難がある。また、特許文献1のものと同様に、バンプ時の衝撃に対しストッパー部材81のゴムボリュームが少ない分、緩衝力が低下している。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ストッパー部材のゴムボリュームが多いのに、バンプ時の変形により保持金具に当たる可能性がなく、その上保持金具の防食処理も簡易且つ確実に施すことが出来、ストッパー部材ばかりか保持金具の耐久性も上げ、真に耐久性を備えたバンプストッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、円錐柱状にゴム素材にて構成したストッパー部材と、該ストッパー部材を保持して固着すると共に他部材に取り付け可能とする保持金具とからなり、前記ストッパー部材の外周面の前記保持金具に近在する部位に反保持金具側に向いた溝を設け、該溝にてバンプ時の前記ストッパー部材の変形部が前記保持金具に当たらないようにしたことを特徴とするバンプストッパーが提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記溝の向きは、前記保持金具の保持固着面に対して、20度から70度の範囲であるバンプストッパーが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、前記ストッパー部材の保持固着部及び前記他部材との取付面を除いた前記保持金具の部位に、前記ゴム素材による被覆面を形成したバンプストッパーが提供される。
【0015】
また、本発明によれば、前記保持金具にゴム素材の供給孔を設け、前記保持金具にストッパー部材を成形する際、前記被覆面を一体に成形したバンプストッパーが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記ゴム素材による被覆面と前記取付面との境界にシール部を設けたバンプストッパーが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバンプストッパーは、バンプ時に、他部材に取り付けた円錐柱状のストッパー部材に大荷重がかかると、外方にのみ変形するが、その外方変形は反保持金具側に向いた溝により吸収されて、保持金具側に向かわないため保持金具に当接することがない。したがって、ストッパー部材のゴムボリュームが多いのに、金属製の保持金具に当たらないから、ストッパー部材が損傷することなく耐久性が増し、しかも、ゴムボリュームが多い分緩衝力を高く維持出来る効果がある。
【0018】
また、本発明のバンプストッパーは、ストッパー部材における溝の反保持金具側の向きが保持金具の保持固着面に対して、20度から70度の範囲、好ましくは35度から55度の範囲にあることにより、ストッパー部材の外方変形は確実に保持金具側に向かわずに溝に吸収され、保持金具に当接することがない。したがって、上記の効果がより確実に達成される。
【0019】
また、本発明のバンプストッパーは、ストッパー部材の保持固着部及び他部材との取付面を除いた保持金具の部位に、ゴム素材による被覆面を形成してあると、空気中に剥き出した部分がないため腐食しないというメリットがある。したがって、上記の効果に加えて、別工程となる塗装工程が省かれるため省力化に寄与し、かつ、保持金具の防食処理が簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材ばかりでなく保持金具の耐久性も上げることができ、ともに耐久性を備えることが出来る効果がある。
【0020】
また、本発明のバンプストッパーは、保持金具にゴム素材供給孔を設けてあることにより、保持金具にストッパー部材を成形する際、供給孔から供給されるゴム素材が被覆する面にも回り、その面をゴム素材にて覆い一体に成形することができる。したがって、上記の効果に加えて、別工程となる塗装がなくなるばかりでなく、保持金具にストッパー部材を成形する際、ゴム素材にて被覆する面も覆うことが出来、投錨効果により一体性が保持できる効果がある。
【0021】
また、本発明のバンプストッパーは、ゴム素材による被覆面を形成出来ない保持金具の取付面と被覆面との境界に、シール部を設けてあると、腐食の原因となる湿気を遮断して、取付面を腐食させない。したがって、上記の効果に加えて、保持金具の取付面にも別工程となる塗装が必要なくなり、保持金具の防食処理が簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材ばかりか保持金具の耐久性も上げ、真に耐久性を備えることが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例】
【0023】
図1は本発明のバンプストッパーを示す断面図、図2は図1のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図、図3は本発明のバンプストッパーの変形例を示す断面図、図4は図3のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
これらの図面において、バンプストッパー1は、円錐柱状にゴム素材にて構成したストッパー部材2と、このストッパー部材2を保持して固着すると共に他部材3に取り付け可能とする保持金具4とからなり、このストッパー部材2の外周面5の保持金具4に近在する部位に反保持金具側に向いた溝6を設け、この溝6にてバンプ時のストッパー部材2の変形部7が保持金具4に当接しないように構成されている。
【0024】
前記ストッパー部材2は、空洞の無い円錐柱状であり、従来例である特許文献1ないし4のように、空洞のある円筒状のものとは、先ず、形状面で相違する。したがって、ストッパー部材2は、ゴムボリュームが多く、その分大荷重に対し緩衝力を高く維持することが出来るものである。ストッパー部材2のゴム素材は特に限定されることなく、天然ゴム(NR)及び/又は合成ゴムの単独又はブレンド品が使用できる。
【0025】
このような材質のストッパー部材2は、その外周面5の保持金具4に近在する部位に反保持金具側に向いた溝6を設けてあり、この溝6の向きは、溝6の軸線10と前記保持金具4の保持固着面11に対しての角度αが20度から70度の範囲であり、特に35度から55度の範囲が特に好ましい。この溝6の向き角度αが70度を超えると、バンプ時のストッパー部材2の変形部7が外方に広がりすぎて、溝6とラッパ状周縁12の間のゴムが保持金具4に当たる可能性が出て来る。また、この角度αが20度に満たないと、バンプ時のストッパー部材2の変形部7の逃げ場が無くなり、保持金具4のラッパ状周縁12に当たってしまい、当該部分が損傷する。なお、溝6の向き角度αが、図3、4に示すように70度程度であると、金型の上型をそのまま上方にスムーズに抜くことが出来、本発明のバンプストッパー1の作製が極めて容易となる。
【0026】
前記保持金具4は、外方に広がっているラッパ状周縁12がある円形のトレー状に形成され、その中心部にボルト孔13が開けられて、このボルト孔13にボルト14が通され、前記他部材3に取り付け固定出来るようになっている。したがって、保持金具4のラッパ状周縁12により、仮にバンプ時のストッパー部材2の変形部7が当たったとしても、損傷の度合が緩衝される。そして、この保持金具4には、ストッパー部材2の保持固着部15及び他部材2との取付面16を除いた部位17に、ストッパー部材2と同じゴム素材による被覆面18を形成している。
【0027】
したがって、このゴム素材による被覆面18が保持金具4にあることで、空気中に剥き出した部分が無くなり、保持金具の酸化による腐食が著しく抑制される。この保持金具4の剥き出し部分は、通常別工程の塗装が施されるが、保持金具4上にゴム素材のストッパー部材2を固着させる際、このゴム素材による被覆面18を形成しておくことによって、保持金具4の防食処理が簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材2ばかりでなく保持金具4の耐久性も上げることができ、ストッパー部材2も保持金具4も共に耐久性を備えたものとなる。
【0028】
保持金具4にゴム素材による被覆面18を形成する際に、より効果的な方法としては、保持金具4の一部にゴム素材供給孔20を開けておき、保持金具4にストッパー部材2を成形する際、この供給孔20を介して供給された一部のゴム素材は、投錨効果によって保持金具4の表裏を一体に覆った状態で被覆面が成形されることになる。したがって、別工程となる塗装がなくなるばかりでなく、保持金具4にストッパー部材2を成形する際、ゴム素材にて被覆面18を含めて容易に一体に形成することが出来る。
【0029】
保持金具4の被覆面18の部分拡大図を図9、図10に示した。図9はゴム素材供給孔20を形成せずに保持金具4の被覆面18をゴムで覆った状態を示しており、図10は、保持金具4の一部にゴム素材供給孔20を形成しておき、ゴム素材の一部をこの供給孔20を介して供給することによって、被覆面18をゴム素材で覆った状態を示している。このゴム素材供給孔20は、好ましくは、保持金具4のラッパ状周縁12のストッパー部材2の保持固着部15及び他部材2との取付面16を除いた部位17よりも若干上方に形成することが好ましく、これによって、シール部21が取付面16にまでは回らずに、ラッパ状周縁12のR部分で止まっているために、取付面16の固着を阻害することがない。
【0030】
なお、保持金具4における前記他部材2との取付面16は、構造上ゴム素材にて覆うことは出来ないが、被覆面18と取付面16との境界にシール部21を設けてある。シール部21の拡大図を図9に示した。このシール部21により、腐食の原因となる湿気を遮断して、取付面16を腐食させないようになっている。このため、保持金具4の取付面16に別工程となる塗装工程が不要となり、保持金具4の取付面16にも防食処理を簡易且つ確実に施すことが出来て、ストッパー部材2ばかりでなく保持金具4の耐久性をも上げることができる。
【0031】
上記構成からなる本発明のバンプストッパー1は、次のようにして作製される。
まず、天然ゴム(NR)及び/又は合成ゴムの他に、各種の添加剤を均一となるように混合した後、加硫温度以下(例えば、100℃程度)で十分混練する。一方、ボルト孔13にボルト14を固着した保持金具4を金型にセットし、この金型の注入口から上記の混練組成物を200kg/cm2 程度の圧力で注入し、次いで約170℃で15分間加硫接着することで、本発明のバンプストッパー1が得られる。その際、保持金具4の小さな供給孔20から混練ブレンド品が被覆する面にも回り、その面をゴム組成物にて覆い被覆面18を一体に成形することになり、さらにこの被覆面18と取付面16との境界にシール部21も一体に成形される。また、既述のとおり、ストッパー部材2の溝6の向き角度αが70度程度であると、金型の上型をそのまま上方にスムーズに抜くことが出来、バンプストッパー1の作製が極めて容易となる。
【0032】
以上のように作製されたバンプストッパー1は、自動車のサスペンションに隣接して斜めに上下2個取り付けられる。その結果、自動車の走行時にバンプが発生した場合に、相手部材にストッパー部材2が当たり、その位置で強制的にバンプを止め、しかもストッパー部材2の圧縮変形により、その際の衝撃を緩衝して、直接的に伝わらないようにしている。
【0033】
次に、上記構成の本発明のバンプストッパー1の実効性について実証する。
〈実験例1〉
バンプストッパーを図1に示す形状とし、溝の向き角度αは約45度であり、相手部材に1KNから徐々に最終的に10KNまで荷重をかけて、その間のストッパー部材の変形の状況を目視にて観察すると共に、保持部材のラッパ状周縁との当接具合を見る。
その結果を図2に示す。
【0034】
〈実験例2〉
供試したバンプストッパーを図3に示す形状とし、溝の向き角度αを約70度とし、実験例1の場合と同様に観察し、その結果を図4に示す。
【0035】
〈比較例1〉
供試したバンプストッパーを溝のない図5に示す形状とし、実験例1の場合と同様に観察し、その結果を図6に示す。
【0036】
〈比較例2〉
供試したバンプストッパーを図7に示す形状とし、溝の向き角度αは0度であり、実験例1の場合と同様に観察し、その結果を図8に示す。
【0037】
本発明の実施例である実験例1、2は、図2、4に示すように、ストッパー部材に10KNの大荷重をかけても、その変形部は実質的に保持部材のラッパ状周縁に当接していない。実験例2は、舌状の変形部がラッパ状周縁に当たっているように見えるが、上部の変形部との間に隙間があるため、舌状の変形部がラッパ状周縁上に乗っている状況であり、実質的には当接していない。これに対して、比較例1、2は、図6、8に示すように、ストッパー部材に10KNの大荷重をかけると、その変形部は実質的に保持部材のラッパ状周縁に当接している。したがって、本発明の実験例1、2はストッパー部材の損傷発生の可能性が限りなく低いのに対して、比較例1、2は損傷発生の可能性が限りなく高いことが理解される。
【0038】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバンプストッパーは、より強いバンプ時の変形に耐えるべく、ストッパー部材のゴムボリュームが多い場合に、利用可能性が高く、特に保持金具の防食処理も簡易且つ確実に施して低コストを目指すと共に、ストッパー部材ばかりでなく保持金具の耐久性をも上げて、真に耐久性を備えたバンプストッパーを得たい場合にその利用可能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例に示したバンプストッパーを示す断面図である。
【図2】図1のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例に示したバンプストッパーの変形例を示す断面図である。
【図4】図3のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図5】比較例1のバンプストッパーを示す断面図である。
【図6】図5のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図7】比較例2のバンプストッパーを示す断面図である。
【図8】図7のバンプストッパーに大荷重をかけた場合のストッパー部材の変形状態を示す断面図である。
【図9】保持金具の被覆面の部分拡大図である。
【図10】保持金具にゴム素材供給孔を形成した時の被覆面の部分拡大図である。
【図11】従来のバンプストッパーの一例を示す断面図である。
【図12】従来のバンプストッパーの他の一例を示す断面図である。
【図13】従来のバンプストッパーの他の一例を示す断面図である。
【図14】従来のバンプストッパーの他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:バンプストッパー
2,51,61,71,81:ストッパー部材
3:他部材
4,50,60,70,80:保持金具
5:外周面
6:溝
7:変形部
8:相手部材
10:軸線
11:保持固着面
12:ラッパ状周縁
13:ボルト孔
14:ボルト
15:保持固着部
16:取付面
17:部位
18:被覆面
20:ゴム素材供給孔
21:シール部
52:底壁
53:側壁
54:フランジ
55:内周溝
56:外周溝
62:ロッド嵌合部
63:弾性伸縮部
64,72,73,82:環状溝
83:基部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム素材からなる円錐柱状に構成したストッパー部材と、該ストッパー部材を保持して固着すると共に他部材に取り付け可能とする保持金具とからなり、前記ストッパー部材の外周面の前記保持金具に近在する部位に保持金具側を底辺とする環状の溝を設けたことを特徴とするバンプストッパー。
【請求項2】
前記溝の向きは、前記保持金具の保持固着面に対して、20度から70度の範囲である請求項1記載のバンプストッパー。
【請求項3】
前記ストッパー部材の保持固着部及び前記他部材との取付面を除いた前記保持金具の部位に、前記ゴム素材による被覆面を形成した請求項1または2記載のバンプストッパー。
【請求項4】
前記保持金具にゴム素材の供給孔を設け、前記保持金具にストッパー部材を成形する際に、供給孔を介してゴム素材が供給されることによって、前記被覆面を一体に成形した請求項1ないし3のいずれか1項記載のバンプストッパー。
【請求項5】
前記ゴム素材による被覆面と前記取付面との境界にシール部を設けた請求項1ないし4の1項に記載のバンプストッパー。
【請求項1】
ゴム素材からなる円錐柱状に構成したストッパー部材と、該ストッパー部材を保持して固着すると共に他部材に取り付け可能とする保持金具とからなり、前記ストッパー部材の外周面の前記保持金具に近在する部位に保持金具側を底辺とする環状の溝を設けたことを特徴とするバンプストッパー。
【請求項2】
前記溝の向きは、前記保持金具の保持固着面に対して、20度から70度の範囲である請求項1記載のバンプストッパー。
【請求項3】
前記ストッパー部材の保持固着部及び前記他部材との取付面を除いた前記保持金具の部位に、前記ゴム素材による被覆面を形成した請求項1または2記載のバンプストッパー。
【請求項4】
前記保持金具にゴム素材の供給孔を設け、前記保持金具にストッパー部材を成形する際に、供給孔を介してゴム素材が供給されることによって、前記被覆面を一体に成形した請求項1ないし3のいずれか1項記載のバンプストッパー。
【請求項5】
前記ゴム素材による被覆面と前記取付面との境界にシール部を設けた請求項1ないし4の1項に記載のバンプストッパー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−105524(P2008−105524A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289511(P2006−289511)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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