説明

バンプストッパ

【課題】 騒音を発生させることなく、ショックアブソーバの負担を軽減し、ショックアブソーバの応答性を向上させることのできるバンプストッパを提供する。
【解決手段】 ショックアブソーバ50とコイルバネ70からの入力荷重を受け止める懸架装置に用いられると共に、ショックアブソーバ50に備えられるピストンロッド51に対して、ショックアブソーバ50の外筒52とバンプストッパ受け止め部材61との間に取り付けられるバンプストッパ10において、ショックアブソーバ50の外筒52の衝突により、外筒52とバンプストッパ受け止め部材61との間に挟みこまれて圧縮されて、衝撃を吸収するバンプストッパ本体20と、軸方向の両端面と外径側の面が、バンプストッパ本体20に覆われるようにバンプストッパ本体20内に埋め込まれる剛性部材30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショックアブソーバとコイルバネからの入力荷重を受け止める懸架装置に用いられるバンプストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ショックアブソーバとコイルバネからの入力荷重を受け止める懸架装置が備えられている。かかる懸架装置として、ショックアブソーバとコイルバネからの入力荷重を一つのインシュレータで受け止める入力集中型(非入力分離型)の懸架装置と、両者の入力荷重を分離して受け止める入力分離型ストラット式の懸架装置(マクファーソン式懸架装置)が知られている。これらの懸架装置においては、バンプ時の車輪の過大な動きを防止するために、バンプストッパが設けられている。特に、後者の入力分離型ストラット式の懸架装置は、入力集中型のものに比べて、装置を小型化できるメリットがある。図4は従来例に係る入力分離型の懸架装置におけるバンプストッパが設けられている付近の拡大図である。
【0003】
図示のように、バンプストッパ100は、ショックアブソーバ150に備えられるピストンロッド151に対して、ショックアブソーバ150の外筒152とバンプストッパ受け止め部材160との間に取り付けられる。そして、バンプ時においては、外筒152がバンプストッパ100の先端部101に衝突し、バンプストッパ100自体が圧縮することによって、衝撃力を吸収する。
【0004】
入力分離型ストラット式の懸架装置においては、操舵時にショックアブソーバ150の外筒152は不図示のコイルバネ及びバンプストッパ受け止め部材160と共に回転し、ピストンロッド151は回転しないように構成されている。そして、バンプストッパ100については、バンプストッパ受け止め部材160側に固定される場合とピストンロッド151側に取り付けられる場合がある。前者の場合には、操舵時にバンプストッパ100はバンプストッパ受け止め部材160と共に回転することになるため、騒音の発生防止等の観点から、バンプストッパ100がピストンロッド151に接触しないようにしなければならない。そのため、必然的にバンプストッパ100の内径及び外径を大きくしなければならず、装置全体が大型化してしまう欠点がある。そこで、小型化が求められる場合には、バンプストッパ100はピストンロッド151側に取り付けられる。ただし、バンプストッパ100はピストンロッド151には固定されず、摺動可能な状態でピストンロッド151に取り付けられる。
【0005】
ここで、ショックアブソーバ150は、外筒152が往復移動するストロークが長いと、ショックアブソーバ150の負担が大きく、ショックアブソーバ150の応答性も悪くなる。このストロークを短くするために、バンプストッパの外周に剛性のリングを嵌めて、バンプストッパの径方向への膨張を抑制することで、バンプストッパの軸方向の圧縮を抑制する技術がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような技術の場合、バンプストッパに大きな圧縮力が加わると、剛性のリングには、その内周面に外径方向に向かう大きな力が作用する。そのため、剛性のリングがバンプストッパ本体から外れてしまったり、剛性のリングが破損してしまったりすることがある。また、剛性のリングが他の剛性部材(例えば、ショックアブソーバの外筒)に直接当たり、騒音の原因となることもある。これらの不具合は、入力分離型の懸架装置の場合に限らず、入力集中型の懸架装置の場合にも発生し得る。
【0006】
その他、関連する公知技術として、特許文献2〜5に開示されたものがある。
【特許文献1】実用新案登録第2521236号公報
【特許文献2】特許第3122581号公報
【特許文献3】特開2002−155983号公報
【特許文献4】実用新案登録第2547148号公報
【特許文献5】実開平6−71934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、騒音を発生させることなく、ショックアブソーバの負担を軽減し、ショックアブソーバの応答性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明のバンプストッパは、
ショックアブソーバとコイルバネからの入力荷重を受け止める懸架装置に用いられると共に、
ショックアブソーバに備えられるピストンロッドに対して、ショックアブソーバの外筒とバンプストッパ受け止め部材との間に取り付けられるバンプストッパにおいて、
前記ショックアブソーバの外筒の衝突により、該外筒とバンプストッパ受け止め部材との間に挟みこまれて圧縮されて、衝撃を吸収するバンプストッパ本体と、
軸方向の両端面と外径側の面が、前記バンプストッパ本体に覆われるように該バンプストッパ本体内に埋め込まれる剛性部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の構成によれば、バンプストッパ本体に剛性部材が埋め込まれているので、バンプストッパの圧縮を低減させることができる。これにより、ショックアブソーバの外筒が往復移動するストロークを短くすることができる。従って、ショックアブソーバの負担を軽減し、ショックアブソーバの応答性を向上させることができる。また、剛性部材は、軸方向(ピストンロッドの軸心方向)の両端面がバンプストッパ本体に覆われているので、当該剛性部材が、直接、他の剛性の部材に当たってしまうことはない。従って、剛性部材自体が騒音の原因となることを防止または抑制できる。更に、剛性部材は外径側の面がバンプストッパ本体に覆われているので、バンプストッパ本体が圧縮した際に、剛性部材の外径側の面に対して内径側に向かう力が作用する。従って、剛性部材がバンプストッパ本体から外れてしまったり、剛性部材が破損してしまったりすることを防止または抑制できる。
【0011】
ここで、前記剛性部材は、バンプストッパ本体に一体成形されているとよい。
【0012】
また、前記剛性部材には軸方向に伸びる貫通孔が設けられており、一体成形により、該貫通孔内部にバンプストッパ本体の一部が入り込んでいるとよい。
【0013】
これにより、剛性部材がバンプストッパから外れてしまうことを、より確実に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、騒音を発生させることなく、ショックアブソーバの負担を軽減し、ショックアブソーバの応答性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例
示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下に説明する実施例においては、懸架装置の一例として、入力分離型ストラット式の懸架装置を例にして説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜図3を参照して、本発明の実施例1に係るバンプストッパについて説明する。図1は本発明の実施例1に係るバンプストッパが懸架装置に取り付けられている状態を示す模式的断面図である。図2は本発明の実施例1に係るバンプストッパに備えられる剛性部材の上面図である。なお、図1中の剛性部材は、図2のAA断面に相当する。図3は本発明の実施例に係るバンプストッパが用いられた懸架装置の概略構成断面図である。
【0017】
<入力分離型ストラット式の懸架装置(マクファーソン式懸架装置)>
図3を参照して、本実施例に係るバンプストッパが用いられる入力分離型ストラット式の懸架装置について説明する。入力分離型ストラット式の懸架装置は、ピストンロッド51と外筒52を備えるショックアブソーバ50と、ピストンロッド51に取り付けられるバンプストッパ10と、ストラット上部に設けられるアッパーサポート60と、コイルバネ70とを備える。アッパーサポート60には、バンプストッパ10の衝突を受けるバンプストッパ受け止め部材61が設けられている。
【0018】
そして、入力分離型ストラット式の懸架装置は、ショックアブソーバ50とコイルバネ70からの入力荷重を分離して受け止めるように構成されている。すなわち、アッパーサポート60には、ピストンロッド51とは独立してバンプストッパ受け止め部材61やコイルバネ70を回転可能とする機構が備えられている。これにより、操舵時においては、ショックアブソーバ50の外筒52はコイルバネ70及びバンプストッパ受け止め部材61と共に回転し、ピストンロッド51は回転しないように構成されている。
【0019】
<バンプストッパの詳細>
特に、図1および図2を参照して、バンプストッパについて詳細に説明する。バンプストッパ10は、ピストンロッド51が挿通される貫通孔11を有する環状の部材であり、ピストンロッド51に対して同心的に取り付けられる。また、このバンプストッパ10は、ショックアブソーバ50の外筒52とバンプストッパ受け止め部材61との間に取り付けられる。そして、本実施例に係るバンプストッパ10は、バンプストッパ本体20と、バンプストッパ本体20内に埋め込まれる剛性部材30とを備える。
【0020】
また、バンプストッパ10は、バンプ時の車輪の過大な動きを防止するために設けられるものであり、ショックアブソーバ50の外筒52の衝撃力を吸収する機能を有する。本実施例においては、バンプストッパ本体20が外筒52の衝突により圧縮する(全長が最大80%程度縮み、元の20%程度の長さとなる)ことで、衝撃力を吸収する。バンプストッパ本体20の好適な材料としては、発泡ウレタンを挙げることができる。
【0021】
バンプストッパ本体20において、外筒52の衝突を受ける先端部(被衝突部)21は、本体中央付近に比べて肉薄である。また、当該先端部21は、ある程度撓み変形可能に構成されている。これは、外筒52が衝突した際に、バネ定数を小さくし、騒音が発生しないようにするためである。従って、バンプストッパ本体20は、外筒52の衝突直後は衝撃吸収力が弱く、その後、徐々に衝撃吸収力が高くなる。
【0022】
また、バンプストッパ10の後端側(バンプストッパ受け止め部材61側)には、ピストンロッド51の外周表面に対して摺動可能に嵌め込まれる嵌込部12が設けられている。本実施例では、この嵌込部12は、剛性部材30に設けられた貫通孔(ピストンロッド
51が挿通される貫通孔)の内周面32とバンプストッパ本体20に設けられた貫通孔のうち小径部の内周面22によって構成される。この嵌込部12は、バンプストッパ10が、ピストンロッド51に対して、ある程度固定される(位置決めされる)ために設けられている。ただし、実際には、バンプストッパ10は、上記嵌込部12がピストンロッド51の外周表面に対して摺動する。これは、バンプストッパ本体20は、外筒52の衝突により大きな衝撃力を受けて圧縮するため、実用上、バンプストッパ10をピストンロッド51に対して完全に固定させるのは、現実的ではないからである。
【0023】
このように、本実施例に係るバンプストッパ10は、ピストンロッド51に対して摺動可能に嵌め込まれるタイプである。従って、バンプストッパをアッパーサポート側に固定するタイプと比べて、ピストンロッドとバンプストッパとの間で騒音が発生するという問題がない。また、そのような問題を解消するために、バンプストッパの径を大きくする必要もない。従って、本実施例においては、バンプストッパ10を小型化することができ、懸架装置全体についても小型化することができる。
【0024】
また、本実施例に係るバンプストッパ本体20においては、小径部の内周面22のみがピストンロッド51に対して摺動するように構成され、その他の部位はピストンロッド51に対して隙間が空くように構成されている。その理由は、次の通りである。すなわち、バンプストッパ本体20が、外筒52の衝突を受けて圧縮すると、バンプストッパ本体20は径方向に膨張する。従って、この膨張を規制し過ぎると、バンプストッパ本体20の圧縮を妨げることになり、衝撃力の吸収を妨げることにもなる。そこで、バンプストッパ本体20の径方向への膨張をある程度許容するために、小径部の内周面22以外の部分は、ピストンロッド51との間に隙間を設けるようにしている。
【0025】
そして、本実施例に係るバンプストッパ10においては、上記の通り、バンプストッパ本体20内に剛性部材30が埋め込まれている。この剛性部材30は、バンプストッパ本体20の成形時に一体成形によって、バンプストッパ本体20内に埋め込まれる。ただし、剛性部材30に設けられた貫通孔(ピストンロッド51が挿通される貫通孔)の内周面32のみは露出され、その他の部分(軸方向(ピストンロッドの軸心方向)の両端面及び外径側の面)がバンプストッパ本体20により覆われる。また、剛性部材30には軸方向に伸びる貫通孔31が設けられており、上記の一体成形によって、バンプストッパ本体20の一部がこの貫通孔31の内部に入り込んでいる。
【0026】
このように、本実施例においては、バンプストッパ本体20内に剛性部材30が埋め込まれているので、外筒52の衝突により、バンプストッパ本体20が圧縮しても、剛性部材30が埋め込まれている部分は圧縮しない。すなわち、バンプストッパ10の実質的な長さ(圧縮する部分の長さ)は、バンプストッパ10の全長から剛性部材30の軸方向の長さを引いた長さとなる。従って、剛性部材30を埋め込んだ分だけ、ショックアブソーバ50の外筒52が往復移動するストロークを短くすることができる。従って、ショックアブソーバ50の負担を軽減し、ショックアブソーバ50の応答性を向上させることができる。
【0027】
また、剛性部材30は、軸方向(ピストンロッド51の軸心方向)の両端面がバンプストッパ本体20に覆われているので、剛性部材30が、直接、外筒52やバンプストッパ受け止め部材61に当たってしまうことはない。従って、剛性部材30自体が騒音の原因となることはない。
【0028】
更に、剛性部材30は外径側の面がバンプストッパ本体20に覆われているので、バンプストッパ本体20が圧縮した際に、剛性部材30の外径側の面に対して内径側に向かう力が作用する。従って、剛性部材30がバンプストッパ本体20から外れてしまったり、
剛性部材30が破損してしまったりすることもない。特に、本実施例では、剛性部材30に設けられた貫通孔31の内部に、バンプストッパ本体20の一部が入り込んでいるので、剛性部材30がバンプストッパ本体20から外れてしまうことは確実に防止される。
【0029】
なお、上述した実施例においては、バンプストッパ10が適用される懸架装置として、入力分離型ストラット式の懸架装置の場合を例にして説明したが、このバンプストッパ10は入力集中型の懸架装置についても、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明の実施例1に係るバンプストッパが懸架装置に取り付けられている状態を示す模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係るバンプストッパに備えられる剛性部材の上面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るバンプストッパが用いられた懸架装置の概略構成断面図である。
【図4】図4は従来例に係る懸架装置におけるバンプストッパが設けられている付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
10 バンプストッパ
11 貫通孔
12 嵌込部
20 バンプストッパ本体
21 先端部
22 内周面
30 剛性部材
31 貫通孔
32 内周面
50 ショックアブソーバ
51 ピストンロッド
52 外筒
60 アッパーサポート
61 バンプストッパ受け止め部材
70 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバとコイルバネからの入力荷重を受け止める懸架装置に用いられると共に、
ショックアブソーバに備えられるピストンロッドに対して、ショックアブソーバの外筒とバンプストッパ受け止め部材との間に取り付けられるバンプストッパにおいて、
前記ショックアブソーバの外筒の衝突により、該外筒とバンプストッパ受け止め部材との間に挟みこまれて圧縮されて、衝撃を吸収するバンプストッパ本体と、
軸方向の両端面と外径側の面が、前記バンプストッパ本体に覆われるように該バンプストッパ本体内に埋め込まれる剛性部材と、を備えることを特徴とするバンプストッパ。
【請求項2】
前記剛性部材は、バンプストッパ本体に一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載のバンプストッパ。
【請求項3】
前記剛性部材には軸方向に伸びる貫通孔が設けられており、一体成形により、該貫通孔内部にバンプストッパ本体の一部が入り込んでいることを特徴とする請求項1に記載のバンプストッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−46586(P2006−46586A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230979(P2004−230979)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】