バーチャルスライド用標本像取得装置
【課題】スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化でき、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化可能なバーチャルスライド用標本像取得装置を提供する。
【解決手段】標本Dを一方向に搬送する搬送手段Cと、標本像を対物レンズBa−nを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を標本像取得手段により撮像して対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置である。標本像取得手段は、複数組の対物レンズBa−n及び、複数組の対物レンズBa−nを、その視野Baf−nが主走査方向に沿う異なる区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段Aを備えている。
【解決手段】標本Dを一方向に搬送する搬送手段Cと、標本像を対物レンズBa−nを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を標本像取得手段により撮像して対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置である。標本像取得手段は、複数組の対物レンズBa−n及び、複数組の対物レンズBa−nを、その視野Baf−nが主走査方向に沿う異なる区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段Aを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーチャルスライド用の標本像を取得する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病理専門医等による光学顕微鏡を用いた標本の観察においては、低倍率、例えば、倍率が10倍でNAが0.4程度の対物レンズを用いて標本の全体像を観察しながらステージ(又はステージ上の標本)を移動させて診断を要する部位を探し、次いで、高倍率、例えば、倍率が40倍でNAが0.85〜0.95程度の対物レンズに切り替えて、その部位を拡大して精細に観察するといった手法がとられている。
【0003】
しかし、診断を要する部位を観察するために、その都度、ステージ(又はステージ上の標本)を移動させたり、対物レンズを切り替えて観察視野を切り替えたり拡大すると操作が煩雑化する。また、診断を要する部位が標本中に複数箇所散在するような場合、それぞれの部位における標本全体の領域に対する相対的な位置を把握することが難しく、病変の確認に多大な労力を要していた。
【0004】
また、現在、医師不足等が問題となるなかで、病理専門医のいない中小の病院や遠隔地の医療施設等が多く存在する。さらには、特殊領域の病理専門医でなければ診断が難しい特殊・希少病変も存在する。そのような場合には、病理専門医に診断を求めるためにスライドガラス上の標本を輸送しなければならず、診断結果が出るまで日数がかかっていた。
【0005】
近年、スライドガラス上の標本を高精細なデジタル画像として撮像・蓄積しておき、蓄積した標本のデジタル画像をパソコン等の表示装置上において、倍率や観察位置を変えて表示させることによって、擬似的に顕微鏡観察をすることができるようするバーチャルスライド作成システムが提案されている。
【0006】
バーチャルスライド作成システムは、一般に、照明光学系と撮像手段と標本を保持し且つ所定方向に移動可能なステージを備えた顕微鏡と、それらの動作制御を含む全般の制御を行う制御手段と、撮像手段で撮像したデジタル画像を記憶する記憶手段を有して構成される。制御手段は、スライドガラス上の標本の観察領域を倍率に応じて微小な領域に細分化し、ステージを移動させながらその細分化した領域を順次走査して撮像手段に撮像させ、撮像した個々の領域の全体像の領域に対する位置情報を付加して記憶手段に記憶させる。
【0007】
バーチャルスライド作成システムで作成されたデジタル画像は、バーチャルスライド表示システムを介して、ネットワーク接続された病理専門医のコンピュータの表示画面に、所望の倍率で所望の観察部位を表示させることができる。
【0008】
このため、バーチャルスライドシステムによれば、従来の光学顕微鏡を用いた病理診断のような煩雑な操作が不要となる上、病変の確認作業の軽減や時間短縮が可能となる。また、バーチャルスライドがデジタルデータであるため、遠隔地からであっても病理専門医に対して即時に標本のデジタル画像データを伝送することができ、病理医から早期の診断結果を得ることができる。
さらには、標本のデジタル画像が共有できる。このため、複数の病理専門医から同一の標本について同時期に観察・診断を受けることもできる。
【0009】
しかるに、従来、バーチャルスライド装置には、例えば、次の特許文献1〜3、非特許文献1に記載のような、複数枚の試料(スライドガラス)からの標本像を、スライドローダーを介して自動的に取り込むものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−292999号公報
【特許文献2】特開2003−248176号公報
【特許文献3】特表2001−519944号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】『バーチャルスライドシステム 顕微鏡遠隔観察システム MIRAX Family』製品カタログ、カールツァイスマイクロイメージング株式会社
【0012】
これらの装置では、スライドローダーを介してスライドガラストレイからスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を取り出してステージにセットし、ステージを所定の撮影位置に移動させる。又は、スライドローダーの機能を兼ねるステージを介して、スライドガラストレイからスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を取り出して、所定の撮像位置に移動させる。その後、撮像位置において一枚のスライドガラス標本ごとにステージをX−Y方向に移動させて細分化された夫々の区画の標本像を、撮像手段を介して撮像する。全ての区画の撮像が完了後にステージを所定方向に移動させて、スライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を元のスライドガラストレイに戻すか、別のスライドガラストレイに収納するようになっている。
【0013】
ところで、バーチャルスライドを実現するためには、撮像手段を介して撮像される標本のデジタル画像には、上述したように、所定の倍率ごとに観察領域が細分化され、しかも、所定の深度ごとに焦点があった高精細な画像であることが求められ、そのためには、一つの標本に対し3次元の大量のデジタル画像を撮像し記憶しておくことが必要となる。しかも、病理専門医には不特定多数の患者の標本を診断することが求められる。
このため、バーチャルスライド装置を病理診断に活用して、作業の効率化を進めるために、大量のスライドガラス標本の画像を自動的且つ高速に取得する必要がある。
【0014】
しかし、上述した特許文献1〜3、非特許文献1に記載のバーチャルスライドシステムのようにスライドローダー又はスライドローダー機能を備えたステージでスライドガラストレイからスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を取り出して撮影位置に移動させた後に、一枚のスライドガラス標本ごとにステージをX−Y方向に移動させて細分化された夫々の区画の標本像を、撮像手段を介して撮像し、全ての区画の撮像が完了後にスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)をスライドガラストレイに収納するためにステージを移動させるのでは、ステージの移動方向の切替回数が煩雑化する。このため、一枚当たりのスライドガラス標本の画像を取得するための作業時間が長くかかり、大量の標本画像を取得する場合に作業時間が莫大なものになっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化でき、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化可能なバーチャルスライド用標本像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明によるバーチャルスライド用標本像取得装置は、標本を一方向に搬送する搬送手段と、標本像を対物レンズを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を前記標本像取得手段により撮像して、前記対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置であって、前記標本像取得手段は、複数組の対物レンズ及び、該複数組の対物レンズを、その視野が主走査方向に沿う異なる前記区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段を備えたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その対物レンズの視野が、主走査方向の区画を連続してカバーすることができる位置に配置するのが好ましい。
【0018】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向に複数の標本を配置可能に構成されているのが好ましい。
【0019】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向及び主走査方向に複数の標本を配置可能に構成されているのが好ましい。
【0020】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その視野が、主走査方向の全区画を連続してカバーすることができる位置に、配置するのが好ましい。
【0021】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されているのが好ましい。
【0022】
また、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、主走査方向に変更可能に構成されているのが好ましい。
【0023】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、所定の一点を中心とする回転方向に変更可能に構成されているのが好ましい。
【0024】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段が、倍率の異なる前記対物レンズを同時に保持し、且つ、該倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、前記搬送手段の搬送により、主走査方向に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、該対物レンズを配置可能に構成されているのが好ましい。
【0025】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えるのが好ましい。
【0026】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本像取得手段に備わる各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段を備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化でき、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化可能なバーチャルスライド用標本像取得装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置の基本構成の一例を示す概念図で、(a)は側方から見た図、(b)は搬送手段に対する対物レンズの配置を上方から見た図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は全体構成の一例を示す斜視図、(b)は(a)の構成を上方から見た図、(c)は搬送手段を側方から見た図である。
【図3】第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の搬送手段に対する対物レンズの配置を示す概念図である。
【図4】(a)〜(i)は実施例1のバーチャルスライド用標本像取得装置により標本における搬送方向に沿う方向での位置が同じで、搬送方向に直交する方向での位置が異なる区画の全てが撮像されるまでの、標本と対物レンズの視野との相対的位置関係の変化を示す説明図である。
【図5】第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における、搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの撮像対象区画を示す説明図である。
【図6】第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の一変形例を示す概念図である。
【図7】本発明の第二実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は対物レンズ保持手段に、倍率が20倍の対物レンズと倍率が40倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図、(b)は対物レンズ保持手段に、倍率が1.25倍の対物レンズと倍率が20倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態の第一例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。
【図9】第一例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図8(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図8(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図、(c)は図8に示した対物レンズ保持手段の断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態の第二例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。
【図11】第二例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図10(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図10(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図である。
【図12】本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置における搬送手段上での標本と対物レンズとの位置関係を概念的に示す説明図である。
【図13】本発明の第四実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は標本におけるスライドガラスの一例を示す説明図、(b)は搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの各撮像光学系による撮像対象領域を示す説明図、(c)は(b)に示すように時間差をもって各撮像光学系を介して撮像された撮像対象領域の画像を、画像処理手段を介して合成した状態を示す説明図である。
【図14】本発明の第五実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図である。
【図15】図14のバーチャルスライド用標本像取得装置における一つの撮像撮像光学系の概略構成を示す説明図である。
【図16】第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。
【図17】図14に示すバーチャルスライド用標本像取得装置における感度調整手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第六実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果を詳細に説明する。
本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、標本を一方向に搬送する搬送手段と、標本像を対物レンズを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を前記標本像取得手段により撮像して、前記対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置であって、前記標本像取得手段は、複数組の対物レンズ及び、該複数組の対物レンズを、その視野が主走査方向に沿う異なる前記区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段を備える。
【0030】
図1は本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置の基本構成の一例を示す概念図で、(a)は側方から見た図、(b)は搬送手段に対する対物レンズの配置を上方から見た図である。図1中、Aは対物レンズ保持手段、B−n(n:1以上の整数)は複数組のそれぞれの撮像光学系、Ba−n(n:1以上の整数)は各撮像光学系に備わる対物レンズ、Bb−n(n:1以上の整数)は各撮像光学系に備わる撮像素子、Cは搬送手段、Dは標本である。
例えば、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、図1に示すように、対物レンズ保持手段Aを介して、n組の撮像光学系B−nにおける夫々の対物レンズBa−nの視野Baf−nが、搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に一列には配置されずに、搬送手段Cの搬送により、標本Dにおける搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができるように、X方向及びY方向に位置をずらして配置されている。
【0031】
このようにすれば、標本Dを一方向(図1ではX方向)に搬送するだけで、標本Dにおける搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に、搬送手段Cと標本像取得手段との相対的な位置を変化させることなく、標本Dにおける搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続する所望の区画の画像を取得することができる。このため、スライドガラス標本の画像を取得する場合における、搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の切替回数を極力少なくすることができ、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0032】
本発明において、主走査方向とは、画像の読み取り方向について、スライドガラス標本Dを搬送する搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)をいい、副走査方向とは、画像の読み取り方向について、スライドガラス標本Dの移動方向、即ち、搬送手段Cの搬送方向(X方向)と平行な方向をいう。
【0033】
なお、撮像光学系の視野がスライドガラスの全範囲をカバーするようにした顕微鏡としては、マイクロレンズアレイの配列を、スライドの搬送方向に対して垂直な方向に対して、スライド上の観察対象の全範囲をカバーすることができるように、位置をずらして配置した構成の顕微鏡が、例えば、US7184610B2に記載されている。
【0034】
しかし、マイクロレンズアレイでは、個々のレンズ径が小さいため、生体の病変等を観察するのに十分な解像度が得難く、倍率を高倍率化することが難しい上、収差が大きく発生し易い。このため、本発明のようなバーチャルスライド用標本取得装置で対象とする標本の画像を取得するための用途には、マイクロレンズアレイは適さない。
【0035】
ところで、従来、一般の顕微鏡においては、観察者の観察時における顕微鏡操作のし易さ、観察操作スペースの確保のために、顕微鏡全体の小型化が必要とされてきた。また、高度な顕微鏡装置においては、装置自体の価格が高額なものとなるが、多くの観察者が利用できるようにするために、低価格化を図ることが必要とされてきた。
しかし、バーチャルスライド観察では、観察者が実物の標本を直接的に観察するわけではなく、バーチャルスライド用標本取得装置を介して複数種類の倍率で撮像された標本画像を、バーチャルスライド用標本取得装置とは別体のデジタル画像表示装置を用いて所望倍率に選択して観察する。このため、バーチャルスライド観察においては、バーチャルスライド用標本取得装置を大型化しても、観察者によるデジタル画像表示装置の操作には何ら支障を及ぼさない。
本件出願人は、この点に着目したことにより、従来一般の顕微鏡において課題とされてきた顕微鏡本体の小型化や低コスト化とは正反対の大型化、コスト高となる本発明のバーチャルスライド用標本取得装置を導出するに至った。
【0036】
そして、例えば、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その対物レンズの視野が、主走査方向の区画を連続してカバーすることができる位置に配置するように構成する。
このようにすれば、搬送手段を一方向へ搬送するだけで、一つの標本の全区画の画像を取得することが可能となり、標本の全区画の画像を取得するために必要な撮像時間を短縮化することができる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0037】
そして、例えば、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向に複数の標本を配置可能に構成するのが好ましい。
【0038】
または、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向及び主走査方向に複数の標本を配置可能に構成されているのが好ましい。
このようにすれば、大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、前記一方向に直交する方向に配列した分、スライドガラス標本の画像取得処理に要する時間の短縮化の効果を累積させることが可能となるので、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0039】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その視野が、主走査方向の全区画を連続してカバーすることができる位置に、配置するように構成するのが好ましい。
このようにすれば、大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、前記一方向に直交する方向に配列した分、スライドガラス標本の画像取得処理に要する時間の短縮化の効果を累積させることが可能となるので、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0040】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されているのが好ましい。
対物レンズは、倍率に応じて視野が異なり、対物レンズの倍率が小さい場合は物体側の視野が大きく、倍率が大きくなるにしたがって物体側の視野が小さくなる。
このため、例えば、対物レンズ保持手段を介して、所定倍率の対物レンズを上述のようにずらして複数配置した構成において、主走査方向の連続する区画をカバーしていても、より倍率の高いレンズに交換したときに、対物レンズ保持手段に保持する複数の対物レンズ同士の相対的な位置が交換前の倍率の低い対物レンズ同士の相対的な位置と同じである場合には、視野が狭くなったことにより、上記複数の区画の間にカバーできない領域が生じてしまう。
しかるに、対物レンズ保持手段を、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成すれば、異なる倍率の対物レンズに交換しても主走査方向の連続する区画をカバーできる。
【0041】
例えば、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、主走査方向に変更可能に構成するのが好ましい。
【0042】
また、例えば、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、所定の一点を中心とする回転方向に変更可能に構成されているのが好ましい。
【0043】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段が、倍率の異なる前記対物レンズを同時に保持し、且つ、該倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、前記搬送手段の搬送により、主走査方向に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、該対物レンズを配置可能に構成されているのが好ましい。
このようにすれば、標本を一方向に搬送するだけで、主走査方向に搬送手段と標本像取得手段との相対的な位置を変化させる動作をすることなく、主走査方向に沿って連続する所望の区画の画像を取得することができ、しかも、倍率の異なる対物レンズを交換することなく、異なる所望の倍率の画像が得られる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理をより高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより大幅に短縮化することが可能となる。
【0044】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えるのが好ましい。
【0045】
上述のように、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、対物レンズ保持手段が、対物レンズを搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)には一列に配置せずに、搬送方向に沿って、X方向及びY方向に位置をずらして配置するように構成されている。
この場合、各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して取得される(ストライプ又はタイル)画像は、取得される時間が、搬送方向に対する位置に応じてずれる。従って、各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して取得した画像については、搬送手段上におけるX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせて合成する必要がある。
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置では、搬送手段上に複数の標本を載置して連続撮像するので、撮像した画像は複数の標本の部分画像が帯状に連なった状態となる。
【0046】
しかるに、本発明のように、前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えれば、夫々の各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像した帯状の画像を介して標本(スライドガラス)の識別ができる。そして、帯状の境界識別パターンを各部分画像を合成する際の位置あわせの基準にして、搬送手段上のX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせることができ、一つの標本画像の合成が容易になる。
【0047】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本像取得手段に備わる各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段を備えている。
本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本像取得手段に備わる各撮像素子としては、エリアセンサ、ラインセンサ又はTDIセンサを用いることができる。エリアセンサを用いる場合には、搬送手段による搬送動作を所定ピッチ、即ち、対物レンズの視野領域毎に搬送及び中断を繰り返して、所定区画毎の標本画像を取得する。また、ラインセンサ又はTDIセンサを用いる場合には、搬送手段による搬送動作は連続して行い、連続したストライプ状の標本画像を取得する。本発明において、好ましくは、前記各撮像素子としては、3板式カラーラインセンサ又はカラーエリアセンサからなり、前記感度調整手段は、3原色のストライプパターンが配置されたテスト標識を前記各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、前記各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するのが好ましい。
【0048】
一般に、バーチャルスライド用標本像取得装置は、観察対象である標本像の色に基づいて病変の有無等を判定するといった検査に用いることができるように、標本の画像をカラーで取得する構成となっている。従って、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、各撮像素子には、3板式のカラーラインセンサ又はカラーエリアセンサを用いることが望まれる。
なお、これら3板式のカラーラインセンサ又はカラーエリアセンサ以外に、本発明においては、公知のRGBトライリニア式又は3ライン式のカラーラインセンサを用いることができる。更に、ベイヤー配列等、公知の配列のカラーフィルタを用いることができる。
ところで、3板式におけるそれぞれの色のラインセンサ又はエリアセンサを用いたカメラは、個体差があり、個々のカメラにおける感度、色等の特性にバラツキが生じることがある。そのようなバラツキを持った個々のカメラで取得したストライプ又はタイル画像を貼り合わせて全体画像を合成した場合、全体画像の画質が不均一となって見難くなり、明るさや色が区画によるバラツキのために病変有無の正確な診断が阻害されるおそれがある。
【0049】
しかるに、本発明のように、前記感度調整手段を介して、3原色のストライプパターンが配置されたテスト標識を前記各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、前記各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成すれば、標本の全体にわたって画質が均一化した高画質なカラーのスライド写真が得られ、その結果、病変有無の診断精度が向上する。
【0050】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記各撮像素子は、3板式カラーラインセンサ又はカラーエリアセンサからなり、前記感度調整手段は、その各色に対し所定の濃度諧調を持たせた3原色のストライプパターンが配置されたテスト標識を前記各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、前記各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するのが好ましい。
【0051】
このようにすれば、濃淡の異なるデータを比較しながら感度補正を行うことができるので、標本の全体にわたって画質がより均一化した、より高画質なカラーのスライド写真が得られ、病変有無の診断精度がより一層向上する。
【0052】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
第一実施形態
図2は本発明の第一実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は全体構成の一例を示す斜視図、(b)は(a)の構成を上方から見た図、(c)は搬送手段を側方から見た図である。図3は第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の搬送手段に対する対物レンズの配置を示す概念図である。図4(a)〜(i)は実施例1のバーチャルスライド用標本像取得装置により標本における搬送方向に沿う方向での位置が同じで、搬送方向に直交する方向での位置が異なる区画の全てが撮像されるまでの、標本と対物レンズの視野との相対的位置関係の変化を示す説明図である。図5は第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における、搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの撮像対象区画を示す説明図である。図6は第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の一変形例を示す概念図である。
【0053】
第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置は、図2(a)に示すように、標本10を搬送するための搬送手段1と、標本10の像を所定倍率に拡大して撮像するための標本像取得手段2と、標本10を搬送手段1に搬入するための搬入ローダー3と、標本10を搬送手段1から搬出するための搬出ローダー4と、制御装置5と、表示装置6を有している。
【0054】
搬送手段1は、環状ベルト1aと搬送軸1b1,1b2とを備えている。
環状ベルト1aは、複数の標本10を搬送方向に配列可能な長さを有している。標本10は、図示省略したホルダに装着されている。
搬送軸1b1,1b2は、図2(c)に示すように、環状ベルト1aの内側面に介在している。また、搬送軸1b1,1b2には、図示省略したモータ等の回転駆動手段が備えられており、回転することによって環状ベルト1aを循環して搬送可能に構成されている。
また、搬送軸1b1,1b2に備わるモータ等の回転駆動手段は、制御装置5の制御部5aを介して回転速度、回転量が制御されている。
【0055】
標本像取得手段2は、対物レンズ2a−n(n:1以上の整数)と撮像素子としてのエリアセンサ(図2において省略)とからなる撮像光学系を備えたエリアセンサカメラ(図2において省略)の組を複数組有するとともに、対物レンズ保持手段7を有している。
対物レンズ保持手段7は、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−n(n:1以上の整数)の視野が、搬送手段1の搬送により、標本10における搬送手段1の搬送方向(図2では矢印A、即ちX方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成されている。
【0056】
搬入ローダー3は、図示省略したホルダに装着された標本10を環状ベルト1a上に載置するように構成されている。
搬出ローダー4は、環状ベルト1a上に載置された標本10を搬出するように構成されている。
【0057】
制御装置5は、図2(a)に示すように、制御部5aと、記憶領域5bと、画像加工部5cを備えている。
制御部5aは、搬送手段1の搬送動作、標本像取得手段2の画像取得動作、搬入ローダー3の搬入動作、搬出ローダー4の搬出動作を制御するように構成されている。
記憶領域5bは、標本像取得手段2を介して標本10における所定の区画が撮像されるごとに、当該区画の画像を位置情報と関連付けて記憶する機能を備えている。
画像加工部5cは、記憶領域5bに記憶された一つの標本10における各区画の画像に関連付けられた位置情報より全区画の画像を検索し、検索した各区画の画像を接合して一つの標本画像を合成するように構成されている。
表示装置6は、画像加工部5cを介して合成された標本画像を表示することができるように構成されている。
【0058】
ここで、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズの配置について図3を用いて説明する。図3では、便宜上、対物レンズ2a−nの物体側視野により、一つの標本10において撮像対象領域となる試料搭載部10a(即ち、カバーガラスで覆われた部位)が縦横25の区画に区分けされるものとする。なお、実際は、より細分化された区画となっている。なお、図3では標本10における試料搭載部10aのみ示し、スライドガラスは図示を省略してある。
搬送手段1は、制御部5aを介して、一方向(図3ではX方向)にのみ搬送するように制御されている。また、搬送手段1は、制御部5aを介して、所定位置(夫々のラインセンサカメラ又はエリアセンサカメラによる撮像位置)に搬送された標本10の試料搭載部10aに対し、区分けした一つの区画における一方向に沿う辺の長さ分(例えば、X軸方向の辺の位置X1から位置X2までの長さ分)を所定のピッチP1で搬送するように制御されている。
【0059】
対物レンズ2a−1〜2a−5は、それぞれ、標本10において区分けした一区画をカバーする視野2af−1〜2af−5を有している。
対物レンズ保持手段7は、対物レンズ2a−1〜2a−5のそれぞれの視野が、標本10における、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)での一区画の座標位置(Y1〜Y5)に対応するように、対物レンズ2a−1〜2a−5を搬送手段1上に斜めに配置した状態で保持可能に構成されている。
【0060】
このように構成された第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置を用いた標本像の取得手順について説明する。
図示省略したホルダにスライドガラス標本10を装着する。そして、ホルダに装着した標本10を、搬入ローダー3に挿入しておく。
搬入ローダー3は、挿入された標本10を環状ベルト1aの上に順次載置する。
搬送手段1は、標本10を環状ベルト1aに載置した状態で標本像取得手段2に向けて矢印A方向(図3、図4ではX方向)に搬送する。
【0061】
ここで、図4(a)に示すように、標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX1、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断する。ここでは、このときの時刻をT1とする。次いで、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X1、Y1)を撮像する。
【0062】
撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。即ち、画像記憶領域5bは、制御部5aを介して、当該区画の位置情報(X軸方向の辺の位置情報、及びY軸方向の辺の位置情報)キー情報とするとともにその区画に対応する画像を一つのデータとして記憶する。
【0063】
次いで、搬送手段1は、矢印A方向に所定ピッチP1で搬送を再開する。そして、図4(b)に示すように、一方向(X方向)の辺の位置がX2、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断する。ここでは、このときの時刻をT2とする。次いで、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10における区画(X2、Y1)を撮像する。
撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。
【0064】
次いで、搬送手段1は、矢印A方向に所定ピッチP1で搬送を再開する。そして、図4(c)に示すように、一方向(X方向)の辺の位置がX3、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断する。ここでは、このときの時刻をT3とする。なお、このときには、一方向(X方向)の辺の位置がX1、Y方向の辺の位置がY2である区画が対物レンズ2a−2の視野2af−2に入る位置に搬送されている。次いで、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X3、Y1)を、対物レンズ2a−2と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X1、Y2)を、それぞれ撮像する。
撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。
【0065】
以後、同様の搬送手段1による搬送処理〜エリアセンサカメラによる撮像処理及び画像記憶領域5bへの記憶処理を、標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX5、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−5の視野2af−5に入る位置に搬送されるまで繰り返すことにより、図4(d)〜図4(i)に示すように、標本10における、搬送方向に対して垂直な方向の全区画の画像が取得される。
さらに、同様の搬送手段1による搬送処理〜エリアセンサカメラによる撮像処理及び画像記憶領域5bへの記憶処理を、標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX5、Y方向の辺の位置がY5である区画が対物レンズ2a−5の視野2af−5に入る位置に搬送されるまで繰り返すことにより、標本10の試料搭載部10aにおける、全区画の画像が、図5に示すような時間差で取得され、一枚のスライドガラス標本10に対する画像取得処理が完了する。
【0066】
次いで、搬送手段1は、矢印A方向に搬送を再開する。そして、次の標本10の試料搭載部10aが、図4(a)に示したように、一方向(X方向)の辺の位置がX1、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断して、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、次のスライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X1、Y1)を撮像する。撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。以後、上述した同様の手順を繰り返して、搬送手段1による搬送処理〜エリアセンサカメラによる撮像処理及び画像記憶領域5bへの記憶処理を、次の標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX5、Y方向の辺の位置がY5である区画が対物レンズ2a−5の視野2af−5に入る位置に搬送されるまで繰り返す。これにより、次の標本10の試料搭載部10aにおける、全区画の画像が、図5に示したような時間差で取得され、次の一枚のスライドガラス標本10に対する画像取得処理が完了する。
【0067】
このようにして、複数の標本10を対象として同様の処理を繰り返すことで、搬送手段1の環状ベルト1a上に載置されたスライドガラス標本10の画像を取得することができる。
【0068】
標本像取得手段2で画像取得処理が完了した標本10は、搬送手段1を介して順次搬出ローダー4に搬送される。搬出ローダー4は、標本10を順次搬出する。
【0069】
第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、対物レンズ保持手段7を、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−nの視野2af−nが、搬送手段1の搬送により、標本10の試料搭載部10aにおける搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成したので、搬送手段1を一方向へ搬送するだけで、一つの標本10の全区画の画像を取得することが可能となり、標本10における試料搭載部10aの全区画の画像を取得するために必要な撮像時間を短縮化することができる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0070】
しかも、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、搬送手段1を、複数の標本10を搬送方向(X方向)に配列可能に構成したので、より一層大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより一層大幅に短縮化することができる。
【0071】
また、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、搬送手段1を循環して一方向に搬送可能にしたので、搬送手段1の搬送光路上にスライドガラス標本に対する搬入や搬出のためのローダー3,4を配置することによって、搬送手段1の搬送方向を切り替えることなく、画像取得処理前の段階におけるスライドガラス標本の搬送手段1への搬入や画像取得処理後の段階におけるスライドガラス標本の搬送手段1からの搬出をすることができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより一層短縮化することができる。
【0072】
なお、図2に示した例のバーチャルスライド用標本像取得装置では、搬送手段1を、複数の標本10を搬送方向(X方向)に配列可能に構成したが、搬送手段1を、搬送手段1の搬送方向(X方向)及び搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に複数の標本10を配置可能に構成するとともに、対物レンズ保持手段7を、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−nの視野2af−nが、搬送手段1の搬送により、全てのスライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成してもよい。
このようにすれば、搬送手段を一方向へ搬送するだけで、搬送手段の搬送方向に対して垂直な方向に配置した枚数分のスライドガラス標本の試料搭載部10aにおける全区画の画像を取得することが可能となり、標本の試料搭載部10aにおける全区画の画像を取得するために必要な撮像時間を大幅に短縮化することができる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができる上、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0073】
あるいは、搬送手段1を、搬送手段1の搬送方向(X方向)及び搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に複数の標本10を配置可能に構成するとともに、対物レンズ保持手段7を、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−nの視野2af−nが、搬送手段1の搬送により、少なくとも一つの標本10の試料搭載部10aにおける搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)沿って連続するそれぞれの区画又は全区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成してもよい。
この場合には、対物レンズ保持手段7が、保持する対物レンズ2a−nで標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画をカバーするように、例えば、図6に示すように、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向に(Y方向)に、対物レンズ保持手段7を移動制御可能に、制御部5aを構成する。
【0074】
このようにすれば、大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、搬送手段1の搬送方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に配列した分、スライドガラス標本の画像取得処理に要する時間の短縮化の効果を累積させることが可能となるので、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することができる。
また、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画をカバーするように、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に移動させるようにすることによって、対物レンズ保持手段7で保持する対物レンズの個数を減らすことができ、製造コストを抑えることができる。
【0075】
第二実施形態
図7は本発明の第二実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は対物レンズ保持手段に、倍率が20倍の対物レンズと倍率が40倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図、(b)は対物レンズ保持手段に、倍率が1.25倍の対物レンズと倍率が20倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0076】
第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、対物レンズ保持手段7が、倍率の異なる対物レンズを同時に保持し、且つ、倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、搬送手段1の搬送により、標本における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズを配置可能に構成されている。
【0077】
撮像光学系の視野数が一定である場合、撮像光学系の物体側視野(実視野)は、対物レンズの倍率に依存する。即ち、対物レンズの倍率をm、視野数をFN、物体側視野をFOVとすると、
FOV=FN/m
と表すことができる。
対物レンズの倍率が2倍になると、物体側視野は2分の1になる。従って、倍率がn倍の対物レンズをm個配置することによって、標本における所望の連続する区画を対物レンズの視野でカバーすることができる場合において、倍率がn×n倍の対物レンズを用いた場合には、標本における所望の連続する区画を対物レンズの視野でカバーするには、n×n倍の対物レンズがm×n個必要となる。これに対し、対物レンズの外径は、倍率が異なっても大きさにそれほどの違いはない。
表1に第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置に好適な対物レンズの倍率に対する物体側視野、外径の一例を示す。
【0078】
そこで、第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、対物レンズ保持手段7は、20倍の対物レンズ2a20−nと40倍の対物レンズ2a40−nとを、図7(a)に示すように、1:2の割合で同時に保持し、夫々の対物レンズの視野2a20f−n、2a40f−nで標本における搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に関し、同じ範囲をカバーすることができるように構成されている。また、対物レンズ保持手段7は、1.25倍の対物レンズ2a1.25−nと20倍の対物レンズ2a20−nとを、図7(b)に示すように、1:16の割合で同時に保持し、夫々のレンズの視野2a1.25f−n、2a20f−nで標本における搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に関し、同じ範囲をカバーすることができるように構成されている。
その他の構成は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0079】
このように構成された第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、搬送手段1を一方向に搬送するだけで、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に対し、搬送手段1と標本像取得手段2との相対的な位置を変化させる動作をすることなく、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続する所望の区画の画像を取得することができ、しかも、倍率の異なる対物レンズを交換することなく、異なる所望の倍率の画像が得られる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理をより高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより大幅に短縮化することが可能となる。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0080】
なお、第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置において、対物レンズ保持手段7が、倍率の異なる対物レンズを同時に保持し、且つ、倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、搬送手段1の搬送により、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って時間差でカバーすることができる範囲は、一つの標本10における全区画となるように構成するのが好ましい。
【0081】
あるいは、対物レンズ保持手段7が、倍率の異なる対物レンズを同時に保持し、且つ、倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、搬送手段1の搬送により、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って時間差でカバーすることができる範囲は、一つの標本10における全区画でなく所定の連続する区画であってもよい。その場合には、図6に示したのと同様に、対物レンズ保持手段7が、保持する対物レンズ2a−nで標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画をカバーするように、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向に(Y方向)に、対物レンズ保持手段7を移動制御可能に、制御部5aを構成するとよい。
【0082】
第三実施形態
図8は本発明の第三実施形態の第一例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。図9は第一例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図8(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図8(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図、(c)は図8に示した対物レンズ保持手段の断面図である。図10は本発明の第三実施形態の第二例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。図11は第二例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図10(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図10(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0083】
第三実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、対物レンズ保持手段7は、同じ倍率の対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する対物レンズの倍率に応じて、対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されている。
【0084】
例えば、第一の例の対物レンズ保持手段7は、図8(a)に示すように、20倍の対物レンズ2a20−1,2a20−2を、それらの対物レンズの視野2a20f−1,2a20f−2が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように配置した状態から、図8(b)に示すように、40倍の対物レンズ2a40−1,2a40−2に交換した場合に、夫々の対物レンズ2a40−1,2a40−2の位置を、搬送手段1の搬送方向に対して垂直な方向に変更し、さらに、対物レンズ2a40−3,2a40−4を、それらの対物レンズの視野2a40f−1,2a40f−2,2a40f−3,2a40f−4が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように配置可能に構成されている。
【0085】
詳しくは、第一の例の対物レンズ保持手段7は、図9に示すように、対物レンズガイド枠7an(ここでは、n:1〜4)と、対物レンズ保持板7bn(ここでは、n:1〜4)を有している。
対物レンズガイド枠7anは、搬送手段1の搬送方向に対して垂直方向に設けられており、対物レンズ2a−nを備えた対物レンズ保持板7bnを保持するとともに、対物レンズ2a−nを備えた対物レンズ保持板7bnを摺動状態で搬送手段1の搬送方向に対して垂直方向にガイド可能に形成されている。
対物レンズ保持板7bnは、図9(c)に示すように、中央部7bn1で対物レンズ2a−n(ここでは、2a20−n又は2a40−n)を着脱可能に保持するとともに、対物レンズガイド枠7an内を摺動可能に構成されている。
【0086】
そして、第一の例の対物レンズ保持手段7を備えたバーチャルスライド用標本像取得装置において、20倍の対物レンズ2a20−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−1,2a20−2を、それぞれ、対物レンズ保持板7b1,7b2に取付ける。次いで、対物レンズ2a20−1,2a20−2が取付けられた対物レンズ保持板7b1,7b2を、それぞれ、対物レンズガイド枠7a1,7a2に挿し込み、図9(a)に示す位置まで、対物レンズガイド枠7a1,7a2内を摺動させる。
一方、40倍の対物レンズ2a40−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−nで用いた個数(ここでは2個)の2倍の個数(ここでは4個)の対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4を、それぞれ、対物レンズ保持板7b1,7b2,7b3,7b4に取付ける。次いで、対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4が取付けられた対物レンズ保持板7b1,7b2,7b3,7b4を、それぞれ、対物レンズガイド枠7a1,7a2,7a3,7a4に挿し込み、図9(b)に示す位置まで、対物レンズガイド枠7a1,7a2,7a3,7a4内を摺動させる。
【0087】
また、例えば、第二の例の対物レンズ保持手段7は、図10(a)に示すように、20倍の対物レンズ2a20−1,2a20−2を、それらの対物レンズの視野2a20f−1,2a20f−2が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように配置した状態から、図10(b)に示すように、40倍の対物レンズ2a40−1,2a40−2に交換した場合に、夫々の対物レンズ2a40−1,2a40−2の位置を、所定の一点Oを中心とする回転方向に変更し、さらに、対物レンズ2a40−3,2a40−4も、所定の一点Oを中心とする回転方向の所定位置に配置し、それらの対物レンズの視野2a40f−1,2a40f−2,2a40f−3,2a40f−4が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように構成されている。
【0088】
詳しくは、第二の例の対物レンズ保持手段7は、図11に示すように、所定の点Oを中心とする同心円状に設けられ、夫々所定の点Oを中心として回転する回転円板7cn(ここでは、n:1〜4)で構成されている。また、対物レンズ保持手段7は、搬送手段1により搬送される標本10に対し、点Oがずれて配置されている。
回転円板7cnは、それぞれ、対物レンズ2a−nを着脱可能に保持する保持部(図示省略)を有している。
【0089】
そして、第二の例の対物レンズ保持手段7を備えたバーチャルスライド用標本像取得装置において、20倍の対物レンズ2a20−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−1、2a20−2を、それぞれ、回転円板7c1,7c2に取付ける。次いで、対物レンズ2a20−1、2a20−2が取付けられた回転円板7c1,7c2を、それぞれ、点Oを中心として、図11(a)に示す位置まで回転させる。
一方、40倍の対物レンズ2a40−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−nで用いた個数(ここでは2個)の2倍の個数(ここでは4個)の対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4を、それぞれ、回転円板7c1,7c2,7c3,7c4に取付ける。次いで、対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4が取付けられた回転円板7c1,7c2,7c3,7c4を、それぞれ、点Oを中心として、図11(b)に示す位置まで回転させる。
その他の構成は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0090】
対物レンズ2a−nは、倍率に応じて視野が異なる。より詳しくは、対物レンズ2a−nの倍率が小さい場合は物体側の視野が大きく、倍率が大きくなるにしたがって物体側の視野が小さくなる。
このため、例えば、対物レンズ保持手段7を介して、所定倍率の対物レンズ2a−nを上述のようにずらして複数配置した構成において、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の連続する区画をカバーしていた場合であっても、より倍率の高い対物レンズ2a−nに交換した場合、対物レンズ保持手段7に保持する複数の対物レンズ同士の相対的な位置が交換前の倍率の低い対物レンズと同じであると、視野が狭くなったことにより、上記複数の区画の間にカバーできない領域が生じてしまう。
しかるに、第三実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、対物レンズ保持手段7を、同じ倍率の対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する対物レンズの倍率に応じて、対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成したので、異なる倍率の対物レンズに交換しても搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の連続する区画をカバーできる。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0091】
第四実施形態
図12は本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置における搬送手段上での標本と対物レンズとの位置関係を概念的に示す説明図である。図13は本発明の第四実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は標本におけるスライドガラスの一例を示す説明図、(b)は搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの各撮像光学系による撮像対象領域を示す説明図、(c)は(b)に示すように時間差をもって各撮像光学系を介して撮像された撮像対象領域の画像を、画像処理手段を介して合成した状態を示す説明図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0092】
第四実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、図13(a)に示すように、標本10におけるスライドガラス10bが、搬送手段1の搬送方向(X方向)に標本10を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターン10c1,10c2を有している。
また、図2に示した画像処理手段5の画像加工部5cが、各撮像光学系を介して撮像された標本画像データごとに、2箇所の識別パターン10c1,10c2で挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における2箇所の識別パターン10c1,10c2の位置を揃えて一つの標本画像を合成する機能を備えて構成されている。
その他の構成は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0093】
上述のように、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、対物レンズ保持手段7が、対物レンズ2a−nを搬送方向に対して垂直な方向に一列には配置せずに、搬送方向(X方向)に沿って、X方向及びY方向に位置をずらして配置するように構成されている。
この場合、各対物レンズ2a−nを経由し各対物レンズ2a−nに対応する撮像素子を介して取得される(ストライプ又はタイル)画像は、例えば、図5に示したように、取得される時間が、搬送方向に対する位置に応じてずれる。従って、各対物レンズ2a−nを経由し各対物レンズに対応する撮像素子を介して取得した画像については、搬送手段1上におけるX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせて合成する必要がある。
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置では、例えば、図12に示すように、搬送手段1上に複数の標本10を載置して連続撮像する。このため、撮像した画像は複数の標本10の部分画像が帯状に連なった状態となる。
しかるに、第四実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、標本10におけるスライドガラス10bが、搬送手段1の搬送方向に標本10を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターン10c1,10c2を有するとともに、さらに、各撮像光学系を介して撮像された標本画像データごとに、2箇所の識別パターン10c1,10c2で挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における2箇所の識別パターン10c1,10c2の位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段5cを備えたので、図13(b)に示すように、夫々の撮像光学系(図示省略)を介して撮像した帯状の画像を介して標本10(におけるスライドガラス10b)の識別ができる。そして、帯状の境界識別パターンを、各部分画像を合成する際の位置合わせの基準にして、図13(c)に示すように、搬送手段1上のX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせることができ、一つの標本画像の合成が容易になる。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0094】
第五実施形態
図14は本発明の第五実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図、図15は図14のバーチャルスライド用標本像取得装置における一つの撮像撮像光学系の概略構成を示す説明図である。図16は第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。図17は図14に示すバーチャルスライド用標本像取得装置における感度調整手順を示すフローチャートである。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0095】
第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段5dを備えている。
各撮像素子は、図15に示すように、R・G・Bの3板式カラーラインセンサ(又はカラーエリアセンサ)で構成されている。そして、図15の例では、結像レンズ2b0−nと、青色光反射ダイクロイックミラー2b1−nを有するプリズムと、赤色光反射ダイクロイックミラー2b2−nを有するプリズムと、青色光反射ダイクロイックミラー2b1−nの反射光路上に配置された青色光用ラインセンサ2bB−nと、赤色光反射ダイクロイックミラー2b2−nの反射光路上に配置された赤色光用ラインセンサ2bR−nと、赤色光反射ダイクロイックミラー2b2−nの透過光路上に配置された緑色光用サインセンサ2bG−nとで、3板式カラーラインセンサカメラ2b−nが構成されている。3板式カラーラインセンサカメラ2b−nは、図14に示すように、一組の撮像光学系において、対物レンズ2a−nと対になっている。
感度調整手段5dは、図16に示すような、スライドガラス10bの試料搭載部10a上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のストライプパターンPR,PG,PBが配置されたテスト標識を備えたテスト用スライド10’を、3板式カラーラインセンサカメラ2b−nの各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成されている。
【0096】
そして、第五実施形態のバーチャルスライド用標本取得装置における各撮像素子の感度調整は、図17に示す手順で行われるようになっている。なお、ここでは、図14に示すように、撮像素子2bR−n,2bG−n,2bB−nを有するラインセンサカメラ2b−nがN組あるものとする。
まず、第一番目のラインセンサカメラ2−1を基準カメラとして設定する(ステップS1)。次いで、赤色光用ラインセンサ2bR−1、緑色光用ラインセンサ2bG−1、青色光用ラインセンサ2bB−1、夫々についての感度差の許容範囲を設定する(ステップS2)。次いで、テスト用スライド10’を搬送手段1の上にセットする(ステップS3)。
そして、搬送手段1を介してテスト用スライド10’を搬送しながら第一番目のラインセンサカメラ2b−1から第N番目のラインセンサカメラ2b−Nの夫々を介して、順に、テスト標識のストライプパターンの画像を撮像し、画像記憶領域5bに記憶する(ステップS4)。
【0097】
次に、感度調整手段5dが、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における赤色光用ラインセンサ2bR−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における赤色光用ラインセンサ2bR−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける赤色光用ラインセンサ2bR−Nの夫々の画像データの光強度との差分を取得する(ステップS5)。同様に、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における緑色光用ラインセンサ2bG−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における緑色光用ラインセンサ2bG−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける緑色光用ラインセンサ2bG−Nの夫々の画像データの光強度との差分を取得する(ステップS6)。また、同様に、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における青色光用ラインセンサ2bB−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における青色光用ラインセンサ2bB−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける青色光用ラインセンサ2bB−Nの夫々の画像データの光強度との差分を取得する(ステップS7)。
【0098】
次に、感度調整手段5dは、取得した光強度の差分が許容範囲外であるか否かを判定し(ステップS8、S10、S12)、許容範囲外である場合に許容範囲外のラインセンサの感度を調整する(ステップS9、S11、S13)。
詳しくは、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における赤色光用ラインセンサ2bR−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における赤色光用ラインセンサ2bR−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける赤色光用ラインセンサ2bR−Nのうちの画像データの光強度の差分に許容範囲外がある場合には、許容範囲外の当該赤色光用ラインセンサの感度を調整する(ステップS9)。また、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における緑色光用ラインセンサ2bG−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における緑色光用ラインセンサ2bG−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける緑色光用ラインセンサ2bG−Nのうちの画像データの光強度の差分に許容範囲外がある場合には、許容範囲外の当該緑色光用ラインセンサの感度を調整する(ステップS11)。また、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における青色光用ラインセンサ2bB−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における青色光用ラインセンサ2bB−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける青色光用ラインセンサ2bB−Nのうちの画像データの光強度の差分に許容範囲がある場合には、許容範囲外の当該青色光用ラインセンサの感度を調整する(ステップS13)。
この感度調整処理を全てのラインセンサが設定した誤差の許容範囲内になるまで行う(ステップS14)。
【0099】
一般に、バーチャルスライド用標本像取得装置は、観察対象である標本像の色に基づいて病変の有無等を判定するといった検査に用いることができるように、標本の画像をカラーで取得する構成となっている。従って、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、各撮像素子には、3板式のカラーラインセンサ又はカラーエリアセンサを用いることが望まれる。
ところで、3板式におけるそれぞれの色のラインセンサ又はエリアセンサを用いたカメラは、個体差があり、個々のカメラにおける感度、色等の特性にバラツキが生じることがある。そのようなバラツキを持った個々のカメラで取得したストライプ又はタイル画像を貼り合わせて全体画像を合成した場合、全体画像の画質が不均一となって見難くなり、明るさや色が区画によるバラツキのために病変有無の正確な診断が阻害されるおそれがある。
【0100】
しかるに、第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置のように、感度調整手段5dを介して、3原色のストライプパターンPR,PG,PBが配置されたテスト標識を各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成すれば、標本10の全体にわたって画質が均一化した高画質なカラーのスライド写真が得られ、その結果、病変有無の診断精度が向上する。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装と略同じである。
【0101】
第六実施形態
図18は本発明の第六実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0102】
第六実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置は、第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と同様、各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段5dを備えている。
各撮像素子は、図15に示したのと同様、R・G・Bの3板式カラーラインセンサ(又はカラーエリアセンサ)で構成されている。3板式カラーラインセンサ(又はカラーエリアセンサ)で構成されている。
感度調整手段5dは、図18に示すような、スライドガラス10bの試料搭載部10a上に、その各色に対し所定の濃度諧調を持たせたR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のストライプパターンPR”,PG”,PB”が配置されたテスト標識を備えたテスト用スライド10”を、3板式カラーラインセンサカメラ2b−nの各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成されている。
その他の構成は第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0103】
第六実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、濃淡の異なるデータを比較しながら感度補正を行うことができるので、標本の全体にわたって画質がより均一化した、より高画質なカラーのスライド写真が得られる。
その他の作用効果は、第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0104】
以上、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置の実施形態を説明したが、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の構成要件を満足するものであれば、各実施形態に特有な構成を組み合わせる等、どのように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、バーチャルスライドを用いて病理診断を行う医療、医学の分野に有用である。
【符号の説明】
【0106】
1,C 搬送手段
1a 環状ベルト
1b1、1b2 搬送軸
2 標本像取得手段
2a−n、Ba−n 対物レンズ
2af−n、Baf−n 対物レンズの視野
2b−n 3板式カラーラインセンサカメラ(又は3板式カラーエリアセンサカメラ)
2b0−n 結像レンズ
2b1−n 青色光反射ダイクロイックミラー
2b2−n 赤色光反射ダイクロイックミラー
2bB−n 青色光用ラインセンサ
2bR−n 赤色光用ラインセンサ
2bG−n 緑色光用ラインセンサ
3 搬入ローダー
4 搬出ローダー
5 制御装置
5a 制御部
5b 記憶領域
5c 画像加工部
5d 感度調整手段
6 表示装置
7 対物レンズ保持手段
7an 対物レンズガイド枠
7bn 対物レンズ保持板
7cn 回転円板
10 (スライドガラス)標本
10a 試料搭載部
10b スライドガラス
10c1、10c2 境界識別用の識別パターン
10’、10” テスト用スライド
PR、PR” 赤色のテスト用ストライプパターン
PG、PG” 緑色のテスト用ストライプパターン
PB、PB” 青色のテスト用ストライプパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーチャルスライド用の標本像を取得する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病理専門医等による光学顕微鏡を用いた標本の観察においては、低倍率、例えば、倍率が10倍でNAが0.4程度の対物レンズを用いて標本の全体像を観察しながらステージ(又はステージ上の標本)を移動させて診断を要する部位を探し、次いで、高倍率、例えば、倍率が40倍でNAが0.85〜0.95程度の対物レンズに切り替えて、その部位を拡大して精細に観察するといった手法がとられている。
【0003】
しかし、診断を要する部位を観察するために、その都度、ステージ(又はステージ上の標本)を移動させたり、対物レンズを切り替えて観察視野を切り替えたり拡大すると操作が煩雑化する。また、診断を要する部位が標本中に複数箇所散在するような場合、それぞれの部位における標本全体の領域に対する相対的な位置を把握することが難しく、病変の確認に多大な労力を要していた。
【0004】
また、現在、医師不足等が問題となるなかで、病理専門医のいない中小の病院や遠隔地の医療施設等が多く存在する。さらには、特殊領域の病理専門医でなければ診断が難しい特殊・希少病変も存在する。そのような場合には、病理専門医に診断を求めるためにスライドガラス上の標本を輸送しなければならず、診断結果が出るまで日数がかかっていた。
【0005】
近年、スライドガラス上の標本を高精細なデジタル画像として撮像・蓄積しておき、蓄積した標本のデジタル画像をパソコン等の表示装置上において、倍率や観察位置を変えて表示させることによって、擬似的に顕微鏡観察をすることができるようするバーチャルスライド作成システムが提案されている。
【0006】
バーチャルスライド作成システムは、一般に、照明光学系と撮像手段と標本を保持し且つ所定方向に移動可能なステージを備えた顕微鏡と、それらの動作制御を含む全般の制御を行う制御手段と、撮像手段で撮像したデジタル画像を記憶する記憶手段を有して構成される。制御手段は、スライドガラス上の標本の観察領域を倍率に応じて微小な領域に細分化し、ステージを移動させながらその細分化した領域を順次走査して撮像手段に撮像させ、撮像した個々の領域の全体像の領域に対する位置情報を付加して記憶手段に記憶させる。
【0007】
バーチャルスライド作成システムで作成されたデジタル画像は、バーチャルスライド表示システムを介して、ネットワーク接続された病理専門医のコンピュータの表示画面に、所望の倍率で所望の観察部位を表示させることができる。
【0008】
このため、バーチャルスライドシステムによれば、従来の光学顕微鏡を用いた病理診断のような煩雑な操作が不要となる上、病変の確認作業の軽減や時間短縮が可能となる。また、バーチャルスライドがデジタルデータであるため、遠隔地からであっても病理専門医に対して即時に標本のデジタル画像データを伝送することができ、病理医から早期の診断結果を得ることができる。
さらには、標本のデジタル画像が共有できる。このため、複数の病理専門医から同一の標本について同時期に観察・診断を受けることもできる。
【0009】
しかるに、従来、バーチャルスライド装置には、例えば、次の特許文献1〜3、非特許文献1に記載のような、複数枚の試料(スライドガラス)からの標本像を、スライドローダーを介して自動的に取り込むものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−292999号公報
【特許文献2】特開2003−248176号公報
【特許文献3】特表2001−519944号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】『バーチャルスライドシステム 顕微鏡遠隔観察システム MIRAX Family』製品カタログ、カールツァイスマイクロイメージング株式会社
【0012】
これらの装置では、スライドローダーを介してスライドガラストレイからスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を取り出してステージにセットし、ステージを所定の撮影位置に移動させる。又は、スライドローダーの機能を兼ねるステージを介して、スライドガラストレイからスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を取り出して、所定の撮像位置に移動させる。その後、撮像位置において一枚のスライドガラス標本ごとにステージをX−Y方向に移動させて細分化された夫々の区画の標本像を、撮像手段を介して撮像する。全ての区画の撮像が完了後にステージを所定方向に移動させて、スライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を元のスライドガラストレイに戻すか、別のスライドガラストレイに収納するようになっている。
【0013】
ところで、バーチャルスライドを実現するためには、撮像手段を介して撮像される標本のデジタル画像には、上述したように、所定の倍率ごとに観察領域が細分化され、しかも、所定の深度ごとに焦点があった高精細な画像であることが求められ、そのためには、一つの標本に対し3次元の大量のデジタル画像を撮像し記憶しておくことが必要となる。しかも、病理専門医には不特定多数の患者の標本を診断することが求められる。
このため、バーチャルスライド装置を病理診断に活用して、作業の効率化を進めるために、大量のスライドガラス標本の画像を自動的且つ高速に取得する必要がある。
【0014】
しかし、上述した特許文献1〜3、非特許文献1に記載のバーチャルスライドシステムのようにスライドローダー又はスライドローダー機能を備えたステージでスライドガラストレイからスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)を取り出して撮影位置に移動させた後に、一枚のスライドガラス標本ごとにステージをX−Y方向に移動させて細分化された夫々の区画の標本像を、撮像手段を介して撮像し、全ての区画の撮像が完了後にスライドガラス標本(又はスライドホルダに装着されたスライドガラス標本)をスライドガラストレイに収納するためにステージを移動させるのでは、ステージの移動方向の切替回数が煩雑化する。このため、一枚当たりのスライドガラス標本の画像を取得するための作業時間が長くかかり、大量の標本画像を取得する場合に作業時間が莫大なものになっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化でき、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化可能なバーチャルスライド用標本像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明によるバーチャルスライド用標本像取得装置は、標本を一方向に搬送する搬送手段と、標本像を対物レンズを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を前記標本像取得手段により撮像して、前記対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置であって、前記標本像取得手段は、複数組の対物レンズ及び、該複数組の対物レンズを、その視野が主走査方向に沿う異なる前記区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段を備えたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その対物レンズの視野が、主走査方向の区画を連続してカバーすることができる位置に配置するのが好ましい。
【0018】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向に複数の標本を配置可能に構成されているのが好ましい。
【0019】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向及び主走査方向に複数の標本を配置可能に構成されているのが好ましい。
【0020】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その視野が、主走査方向の全区画を連続してカバーすることができる位置に、配置するのが好ましい。
【0021】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されているのが好ましい。
【0022】
また、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、主走査方向に変更可能に構成されているのが好ましい。
【0023】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、所定の一点を中心とする回転方向に変更可能に構成されているのが好ましい。
【0024】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段が、倍率の異なる前記対物レンズを同時に保持し、且つ、該倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、前記搬送手段の搬送により、主走査方向に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、該対物レンズを配置可能に構成されているのが好ましい。
【0025】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えるのが好ましい。
【0026】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本像取得手段に備わる各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段を備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化でき、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化可能なバーチャルスライド用標本像取得装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置の基本構成の一例を示す概念図で、(a)は側方から見た図、(b)は搬送手段に対する対物レンズの配置を上方から見た図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は全体構成の一例を示す斜視図、(b)は(a)の構成を上方から見た図、(c)は搬送手段を側方から見た図である。
【図3】第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の搬送手段に対する対物レンズの配置を示す概念図である。
【図4】(a)〜(i)は実施例1のバーチャルスライド用標本像取得装置により標本における搬送方向に沿う方向での位置が同じで、搬送方向に直交する方向での位置が異なる区画の全てが撮像されるまでの、標本と対物レンズの視野との相対的位置関係の変化を示す説明図である。
【図5】第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における、搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの撮像対象区画を示す説明図である。
【図6】第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の一変形例を示す概念図である。
【図7】本発明の第二実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は対物レンズ保持手段に、倍率が20倍の対物レンズと倍率が40倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図、(b)は対物レンズ保持手段に、倍率が1.25倍の対物レンズと倍率が20倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態の第一例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。
【図9】第一例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図8(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図8(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図、(c)は図8に示した対物レンズ保持手段の断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態の第二例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。
【図11】第二例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図10(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図10(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図である。
【図12】本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置における搬送手段上での標本と対物レンズとの位置関係を概念的に示す説明図である。
【図13】本発明の第四実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は標本におけるスライドガラスの一例を示す説明図、(b)は搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの各撮像光学系による撮像対象領域を示す説明図、(c)は(b)に示すように時間差をもって各撮像光学系を介して撮像された撮像対象領域の画像を、画像処理手段を介して合成した状態を示す説明図である。
【図14】本発明の第五実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図である。
【図15】図14のバーチャルスライド用標本像取得装置における一つの撮像撮像光学系の概略構成を示す説明図である。
【図16】第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。
【図17】図14に示すバーチャルスライド用標本像取得装置における感度調整手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第六実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果を詳細に説明する。
本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、標本を一方向に搬送する搬送手段と、標本像を対物レンズを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を前記標本像取得手段により撮像して、前記対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置であって、前記標本像取得手段は、複数組の対物レンズ及び、該複数組の対物レンズを、その視野が主走査方向に沿う異なる前記区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段を備える。
【0030】
図1は本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置の基本構成の一例を示す概念図で、(a)は側方から見た図、(b)は搬送手段に対する対物レンズの配置を上方から見た図である。図1中、Aは対物レンズ保持手段、B−n(n:1以上の整数)は複数組のそれぞれの撮像光学系、Ba−n(n:1以上の整数)は各撮像光学系に備わる対物レンズ、Bb−n(n:1以上の整数)は各撮像光学系に備わる撮像素子、Cは搬送手段、Dは標本である。
例えば、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、図1に示すように、対物レンズ保持手段Aを介して、n組の撮像光学系B−nにおける夫々の対物レンズBa−nの視野Baf−nが、搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に一列には配置されずに、搬送手段Cの搬送により、標本Dにおける搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができるように、X方向及びY方向に位置をずらして配置されている。
【0031】
このようにすれば、標本Dを一方向(図1ではX方向)に搬送するだけで、標本Dにおける搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に、搬送手段Cと標本像取得手段との相対的な位置を変化させることなく、標本Dにおける搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続する所望の区画の画像を取得することができる。このため、スライドガラス標本の画像を取得する場合における、搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の切替回数を極力少なくすることができ、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0032】
本発明において、主走査方向とは、画像の読み取り方向について、スライドガラス標本Dを搬送する搬送手段Cの搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)をいい、副走査方向とは、画像の読み取り方向について、スライドガラス標本Dの移動方向、即ち、搬送手段Cの搬送方向(X方向)と平行な方向をいう。
【0033】
なお、撮像光学系の視野がスライドガラスの全範囲をカバーするようにした顕微鏡としては、マイクロレンズアレイの配列を、スライドの搬送方向に対して垂直な方向に対して、スライド上の観察対象の全範囲をカバーすることができるように、位置をずらして配置した構成の顕微鏡が、例えば、US7184610B2に記載されている。
【0034】
しかし、マイクロレンズアレイでは、個々のレンズ径が小さいため、生体の病変等を観察するのに十分な解像度が得難く、倍率を高倍率化することが難しい上、収差が大きく発生し易い。このため、本発明のようなバーチャルスライド用標本取得装置で対象とする標本の画像を取得するための用途には、マイクロレンズアレイは適さない。
【0035】
ところで、従来、一般の顕微鏡においては、観察者の観察時における顕微鏡操作のし易さ、観察操作スペースの確保のために、顕微鏡全体の小型化が必要とされてきた。また、高度な顕微鏡装置においては、装置自体の価格が高額なものとなるが、多くの観察者が利用できるようにするために、低価格化を図ることが必要とされてきた。
しかし、バーチャルスライド観察では、観察者が実物の標本を直接的に観察するわけではなく、バーチャルスライド用標本取得装置を介して複数種類の倍率で撮像された標本画像を、バーチャルスライド用標本取得装置とは別体のデジタル画像表示装置を用いて所望倍率に選択して観察する。このため、バーチャルスライド観察においては、バーチャルスライド用標本取得装置を大型化しても、観察者によるデジタル画像表示装置の操作には何ら支障を及ぼさない。
本件出願人は、この点に着目したことにより、従来一般の顕微鏡において課題とされてきた顕微鏡本体の小型化や低コスト化とは正反対の大型化、コスト高となる本発明のバーチャルスライド用標本取得装置を導出するに至った。
【0036】
そして、例えば、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その対物レンズの視野が、主走査方向の区画を連続してカバーすることができる位置に配置するように構成する。
このようにすれば、搬送手段を一方向へ搬送するだけで、一つの標本の全区画の画像を取得することが可能となり、標本の全区画の画像を取得するために必要な撮像時間を短縮化することができる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0037】
そして、例えば、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向に複数の標本を配置可能に構成するのが好ましい。
【0038】
または、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記搬送手段は、副走査方向及び主走査方向に複数の標本を配置可能に構成されているのが好ましい。
このようにすれば、大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、前記一方向に直交する方向に配列した分、スライドガラス標本の画像取得処理に要する時間の短縮化の効果を累積させることが可能となるので、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0039】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その視野が、主走査方向の全区画を連続してカバーすることができる位置に、配置するように構成するのが好ましい。
このようにすれば、大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、前記一方向に直交する方向に配列した分、スライドガラス標本の画像取得処理に要する時間の短縮化の効果を累積させることが可能となるので、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0040】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段は、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されているのが好ましい。
対物レンズは、倍率に応じて視野が異なり、対物レンズの倍率が小さい場合は物体側の視野が大きく、倍率が大きくなるにしたがって物体側の視野が小さくなる。
このため、例えば、対物レンズ保持手段を介して、所定倍率の対物レンズを上述のようにずらして複数配置した構成において、主走査方向の連続する区画をカバーしていても、より倍率の高いレンズに交換したときに、対物レンズ保持手段に保持する複数の対物レンズ同士の相対的な位置が交換前の倍率の低い対物レンズ同士の相対的な位置と同じである場合には、視野が狭くなったことにより、上記複数の区画の間にカバーできない領域が生じてしまう。
しかるに、対物レンズ保持手段を、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成すれば、異なる倍率の対物レンズに交換しても主走査方向の連続する区画をカバーできる。
【0041】
例えば、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、主走査方向に変更可能に構成するのが好ましい。
【0042】
また、例えば、前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、所定の一点を中心とする回転方向に変更可能に構成されているのが好ましい。
【0043】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記対物レンズ保持手段が、倍率の異なる前記対物レンズを同時に保持し、且つ、該倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、前記搬送手段の搬送により、主走査方向に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、該対物レンズを配置可能に構成されているのが好ましい。
このようにすれば、標本を一方向に搬送するだけで、主走査方向に搬送手段と標本像取得手段との相対的な位置を変化させる動作をすることなく、主走査方向に沿って連続する所望の区画の画像を取得することができ、しかも、倍率の異なる対物レンズを交換することなく、異なる所望の倍率の画像が得られる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理をより高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより大幅に短縮化することが可能となる。
【0044】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えるのが好ましい。
【0045】
上述のように、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、対物レンズ保持手段が、対物レンズを搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)には一列に配置せずに、搬送方向に沿って、X方向及びY方向に位置をずらして配置するように構成されている。
この場合、各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して取得される(ストライプ又はタイル)画像は、取得される時間が、搬送方向に対する位置に応じてずれる。従って、各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して取得した画像については、搬送手段上におけるX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせて合成する必要がある。
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置では、搬送手段上に複数の標本を載置して連続撮像するので、撮像した画像は複数の標本の部分画像が帯状に連なった状態となる。
【0046】
しかるに、本発明のように、前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えれば、夫々の各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像した帯状の画像を介して標本(スライドガラス)の識別ができる。そして、帯状の境界識別パターンを各部分画像を合成する際の位置あわせの基準にして、搬送手段上のX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせることができ、一つの標本画像の合成が容易になる。
【0047】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本像取得手段に備わる各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段を備えている。
本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記標本像取得手段に備わる各撮像素子としては、エリアセンサ、ラインセンサ又はTDIセンサを用いることができる。エリアセンサを用いる場合には、搬送手段による搬送動作を所定ピッチ、即ち、対物レンズの視野領域毎に搬送及び中断を繰り返して、所定区画毎の標本画像を取得する。また、ラインセンサ又はTDIセンサを用いる場合には、搬送手段による搬送動作は連続して行い、連続したストライプ状の標本画像を取得する。本発明において、好ましくは、前記各撮像素子としては、3板式カラーラインセンサ又はカラーエリアセンサからなり、前記感度調整手段は、3原色のストライプパターンが配置されたテスト標識を前記各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、前記各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するのが好ましい。
【0048】
一般に、バーチャルスライド用標本像取得装置は、観察対象である標本像の色に基づいて病変の有無等を判定するといった検査に用いることができるように、標本の画像をカラーで取得する構成となっている。従って、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、各撮像素子には、3板式のカラーラインセンサ又はカラーエリアセンサを用いることが望まれる。
なお、これら3板式のカラーラインセンサ又はカラーエリアセンサ以外に、本発明においては、公知のRGBトライリニア式又は3ライン式のカラーラインセンサを用いることができる。更に、ベイヤー配列等、公知の配列のカラーフィルタを用いることができる。
ところで、3板式におけるそれぞれの色のラインセンサ又はエリアセンサを用いたカメラは、個体差があり、個々のカメラにおける感度、色等の特性にバラツキが生じることがある。そのようなバラツキを持った個々のカメラで取得したストライプ又はタイル画像を貼り合わせて全体画像を合成した場合、全体画像の画質が不均一となって見難くなり、明るさや色が区画によるバラツキのために病変有無の正確な診断が阻害されるおそれがある。
【0049】
しかるに、本発明のように、前記感度調整手段を介して、3原色のストライプパターンが配置されたテスト標識を前記各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、前記各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成すれば、標本の全体にわたって画質が均一化した高画質なカラーのスライド写真が得られ、その結果、病変有無の診断精度が向上する。
【0050】
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、前記各撮像素子は、3板式カラーラインセンサ又はカラーエリアセンサからなり、前記感度調整手段は、その各色に対し所定の濃度諧調を持たせた3原色のストライプパターンが配置されたテスト標識を前記各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、前記各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するのが好ましい。
【0051】
このようにすれば、濃淡の異なるデータを比較しながら感度補正を行うことができるので、標本の全体にわたって画質がより均一化した、より高画質なカラーのスライド写真が得られ、病変有無の診断精度がより一層向上する。
【0052】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
第一実施形態
図2は本発明の第一実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は全体構成の一例を示す斜視図、(b)は(a)の構成を上方から見た図、(c)は搬送手段を側方から見た図である。図3は第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の搬送手段に対する対物レンズの配置を示す概念図である。図4(a)〜(i)は実施例1のバーチャルスライド用標本像取得装置により標本における搬送方向に沿う方向での位置が同じで、搬送方向に直交する方向での位置が異なる区画の全てが撮像されるまでの、標本と対物レンズの視野との相対的位置関係の変化を示す説明図である。図5は第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における、搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの撮像対象区画を示す説明図である。図6は第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置の一変形例を示す概念図である。
【0053】
第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置は、図2(a)に示すように、標本10を搬送するための搬送手段1と、標本10の像を所定倍率に拡大して撮像するための標本像取得手段2と、標本10を搬送手段1に搬入するための搬入ローダー3と、標本10を搬送手段1から搬出するための搬出ローダー4と、制御装置5と、表示装置6を有している。
【0054】
搬送手段1は、環状ベルト1aと搬送軸1b1,1b2とを備えている。
環状ベルト1aは、複数の標本10を搬送方向に配列可能な長さを有している。標本10は、図示省略したホルダに装着されている。
搬送軸1b1,1b2は、図2(c)に示すように、環状ベルト1aの内側面に介在している。また、搬送軸1b1,1b2には、図示省略したモータ等の回転駆動手段が備えられており、回転することによって環状ベルト1aを循環して搬送可能に構成されている。
また、搬送軸1b1,1b2に備わるモータ等の回転駆動手段は、制御装置5の制御部5aを介して回転速度、回転量が制御されている。
【0055】
標本像取得手段2は、対物レンズ2a−n(n:1以上の整数)と撮像素子としてのエリアセンサ(図2において省略)とからなる撮像光学系を備えたエリアセンサカメラ(図2において省略)の組を複数組有するとともに、対物レンズ保持手段7を有している。
対物レンズ保持手段7は、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−n(n:1以上の整数)の視野が、搬送手段1の搬送により、標本10における搬送手段1の搬送方向(図2では矢印A、即ちX方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成されている。
【0056】
搬入ローダー3は、図示省略したホルダに装着された標本10を環状ベルト1a上に載置するように構成されている。
搬出ローダー4は、環状ベルト1a上に載置された標本10を搬出するように構成されている。
【0057】
制御装置5は、図2(a)に示すように、制御部5aと、記憶領域5bと、画像加工部5cを備えている。
制御部5aは、搬送手段1の搬送動作、標本像取得手段2の画像取得動作、搬入ローダー3の搬入動作、搬出ローダー4の搬出動作を制御するように構成されている。
記憶領域5bは、標本像取得手段2を介して標本10における所定の区画が撮像されるごとに、当該区画の画像を位置情報と関連付けて記憶する機能を備えている。
画像加工部5cは、記憶領域5bに記憶された一つの標本10における各区画の画像に関連付けられた位置情報より全区画の画像を検索し、検索した各区画の画像を接合して一つの標本画像を合成するように構成されている。
表示装置6は、画像加工部5cを介して合成された標本画像を表示することができるように構成されている。
【0058】
ここで、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズの配置について図3を用いて説明する。図3では、便宜上、対物レンズ2a−nの物体側視野により、一つの標本10において撮像対象領域となる試料搭載部10a(即ち、カバーガラスで覆われた部位)が縦横25の区画に区分けされるものとする。なお、実際は、より細分化された区画となっている。なお、図3では標本10における試料搭載部10aのみ示し、スライドガラスは図示を省略してある。
搬送手段1は、制御部5aを介して、一方向(図3ではX方向)にのみ搬送するように制御されている。また、搬送手段1は、制御部5aを介して、所定位置(夫々のラインセンサカメラ又はエリアセンサカメラによる撮像位置)に搬送された標本10の試料搭載部10aに対し、区分けした一つの区画における一方向に沿う辺の長さ分(例えば、X軸方向の辺の位置X1から位置X2までの長さ分)を所定のピッチP1で搬送するように制御されている。
【0059】
対物レンズ2a−1〜2a−5は、それぞれ、標本10において区分けした一区画をカバーする視野2af−1〜2af−5を有している。
対物レンズ保持手段7は、対物レンズ2a−1〜2a−5のそれぞれの視野が、標本10における、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)での一区画の座標位置(Y1〜Y5)に対応するように、対物レンズ2a−1〜2a−5を搬送手段1上に斜めに配置した状態で保持可能に構成されている。
【0060】
このように構成された第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置を用いた標本像の取得手順について説明する。
図示省略したホルダにスライドガラス標本10を装着する。そして、ホルダに装着した標本10を、搬入ローダー3に挿入しておく。
搬入ローダー3は、挿入された標本10を環状ベルト1aの上に順次載置する。
搬送手段1は、標本10を環状ベルト1aに載置した状態で標本像取得手段2に向けて矢印A方向(図3、図4ではX方向)に搬送する。
【0061】
ここで、図4(a)に示すように、標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX1、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断する。ここでは、このときの時刻をT1とする。次いで、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X1、Y1)を撮像する。
【0062】
撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。即ち、画像記憶領域5bは、制御部5aを介して、当該区画の位置情報(X軸方向の辺の位置情報、及びY軸方向の辺の位置情報)キー情報とするとともにその区画に対応する画像を一つのデータとして記憶する。
【0063】
次いで、搬送手段1は、矢印A方向に所定ピッチP1で搬送を再開する。そして、図4(b)に示すように、一方向(X方向)の辺の位置がX2、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断する。ここでは、このときの時刻をT2とする。次いで、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10における区画(X2、Y1)を撮像する。
撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。
【0064】
次いで、搬送手段1は、矢印A方向に所定ピッチP1で搬送を再開する。そして、図4(c)に示すように、一方向(X方向)の辺の位置がX3、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断する。ここでは、このときの時刻をT3とする。なお、このときには、一方向(X方向)の辺の位置がX1、Y方向の辺の位置がY2である区画が対物レンズ2a−2の視野2af−2に入る位置に搬送されている。次いで、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X3、Y1)を、対物レンズ2a−2と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、スライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X1、Y2)を、それぞれ撮像する。
撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。
【0065】
以後、同様の搬送手段1による搬送処理〜エリアセンサカメラによる撮像処理及び画像記憶領域5bへの記憶処理を、標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX5、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−5の視野2af−5に入る位置に搬送されるまで繰り返すことにより、図4(d)〜図4(i)に示すように、標本10における、搬送方向に対して垂直な方向の全区画の画像が取得される。
さらに、同様の搬送手段1による搬送処理〜エリアセンサカメラによる撮像処理及び画像記憶領域5bへの記憶処理を、標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX5、Y方向の辺の位置がY5である区画が対物レンズ2a−5の視野2af−5に入る位置に搬送されるまで繰り返すことにより、標本10の試料搭載部10aにおける、全区画の画像が、図5に示すような時間差で取得され、一枚のスライドガラス標本10に対する画像取得処理が完了する。
【0066】
次いで、搬送手段1は、矢印A方向に搬送を再開する。そして、次の標本10の試料搭載部10aが、図4(a)に示したように、一方向(X方向)の辺の位置がX1、Y方向の辺の位置がY1である区画が対物レンズ2a−1の視野2af−1に入る位置に搬送されたとき、搬送手段1は矢印A方向(X方向)への搬送を中断して、対物レンズ2a−1と同じ撮像光学系内のエリアセンサカメラが、次のスライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける区画(X1、Y1)を撮像する。撮像された画像は、当該区画の位置情報を関連付けて画像記憶領域5bに記憶される。以後、上述した同様の手順を繰り返して、搬送手段1による搬送処理〜エリアセンサカメラによる撮像処理及び画像記憶領域5bへの記憶処理を、次の標本10の試料搭載部10aにおける一方向(X方向)の辺の位置がX5、Y方向の辺の位置がY5である区画が対物レンズ2a−5の視野2af−5に入る位置に搬送されるまで繰り返す。これにより、次の標本10の試料搭載部10aにおける、全区画の画像が、図5に示したような時間差で取得され、次の一枚のスライドガラス標本10に対する画像取得処理が完了する。
【0067】
このようにして、複数の標本10を対象として同様の処理を繰り返すことで、搬送手段1の環状ベルト1a上に載置されたスライドガラス標本10の画像を取得することができる。
【0068】
標本像取得手段2で画像取得処理が完了した標本10は、搬送手段1を介して順次搬出ローダー4に搬送される。搬出ローダー4は、標本10を順次搬出する。
【0069】
第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、対物レンズ保持手段7を、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−nの視野2af−nが、搬送手段1の搬送により、標本10の試料搭載部10aにおける搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成したので、搬送手段1を一方向へ搬送するだけで、一つの標本10の全区画の画像を取得することが可能となり、標本10における試料搭載部10aの全区画の画像を取得するために必要な撮像時間を短縮化することができる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0070】
しかも、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、搬送手段1を、複数の標本10を搬送方向(X方向)に配列可能に構成したので、より一層大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより一層大幅に短縮化することができる。
【0071】
また、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、搬送手段1を循環して一方向に搬送可能にしたので、搬送手段1の搬送光路上にスライドガラス標本に対する搬入や搬出のためのローダー3,4を配置することによって、搬送手段1の搬送方向を切り替えることなく、画像取得処理前の段階におけるスライドガラス標本の搬送手段1への搬入や画像取得処理後の段階におけるスライドガラス標本の搬送手段1からの搬出をすることができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより一層短縮化することができる。
【0072】
なお、図2に示した例のバーチャルスライド用標本像取得装置では、搬送手段1を、複数の標本10を搬送方向(X方向)に配列可能に構成したが、搬送手段1を、搬送手段1の搬送方向(X方向)及び搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に複数の標本10を配置可能に構成するとともに、対物レンズ保持手段7を、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−nの視野2af−nが、搬送手段1の搬送により、全てのスライドガラス標本10の試料搭載部10aにおける搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成してもよい。
このようにすれば、搬送手段を一方向へ搬送するだけで、搬送手段の搬送方向に対して垂直な方向に配置した枚数分のスライドガラス標本の試料搭載部10aにおける全区画の画像を取得することが可能となり、標本の試料搭載部10aにおける全区画の画像を取得するために必要な撮像時間を大幅に短縮化することができる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理を高速化することができる上、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することが可能となる。
【0073】
あるいは、搬送手段1を、搬送手段1の搬送方向(X方向)及び搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に複数の標本10を配置可能に構成するとともに、対物レンズ保持手段7を、複数組の撮像光学系のそれぞれに備わる対物レンズ2a−nの視野2af−nが、搬送手段1の搬送により、少なくとも一つの標本10の試料搭載部10aにおける搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)沿って連続するそれぞれの区画又は全区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズ2a−nを配置可能に構成してもよい。
この場合には、対物レンズ保持手段7が、保持する対物レンズ2a−nで標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画をカバーするように、例えば、図6に示すように、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向に(Y方向)に、対物レンズ保持手段7を移動制御可能に、制御部5aを構成する。
【0074】
このようにすれば、大量のスライドガラス標本についての画像取得処理をすることができ、搬送手段1の搬送方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に配列した分、スライドガラス標本の画像取得処理に要する時間の短縮化の効果を累積させることが可能となるので、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間を大幅に短縮化することができる。
また、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画をカバーするように、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に移動させるようにすることによって、対物レンズ保持手段7で保持する対物レンズの個数を減らすことができ、製造コストを抑えることができる。
【0075】
第二実施形態
図7は本発明の第二実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図で、(a)は対物レンズ保持手段に、倍率が20倍の対物レンズと倍率が40倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図、(b)は対物レンズ保持手段に、倍率が1.25倍の対物レンズと倍率が20倍の対物レンズを備えたときの配置関係を示す図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0076】
第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、対物レンズ保持手段7が、倍率の異なる対物レンズを同時に保持し、且つ、倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、搬送手段1の搬送により、標本における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、対物レンズを配置可能に構成されている。
【0077】
撮像光学系の視野数が一定である場合、撮像光学系の物体側視野(実視野)は、対物レンズの倍率に依存する。即ち、対物レンズの倍率をm、視野数をFN、物体側視野をFOVとすると、
FOV=FN/m
と表すことができる。
対物レンズの倍率が2倍になると、物体側視野は2分の1になる。従って、倍率がn倍の対物レンズをm個配置することによって、標本における所望の連続する区画を対物レンズの視野でカバーすることができる場合において、倍率がn×n倍の対物レンズを用いた場合には、標本における所望の連続する区画を対物レンズの視野でカバーするには、n×n倍の対物レンズがm×n個必要となる。これに対し、対物レンズの外径は、倍率が異なっても大きさにそれほどの違いはない。
表1に第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置に好適な対物レンズの倍率に対する物体側視野、外径の一例を示す。
【0078】
そこで、第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、対物レンズ保持手段7は、20倍の対物レンズ2a20−nと40倍の対物レンズ2a40−nとを、図7(a)に示すように、1:2の割合で同時に保持し、夫々の対物レンズの視野2a20f−n、2a40f−nで標本における搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に関し、同じ範囲をカバーすることができるように構成されている。また、対物レンズ保持手段7は、1.25倍の対物レンズ2a1.25−nと20倍の対物レンズ2a20−nとを、図7(b)に示すように、1:16の割合で同時に保持し、夫々のレンズの視野2a1.25f−n、2a20f−nで標本における搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に関し、同じ範囲をカバーすることができるように構成されている。
その他の構成は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0079】
このように構成された第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、搬送手段1を一方向に搬送するだけで、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に対し、搬送手段1と標本像取得手段2との相対的な位置を変化させる動作をすることなく、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って連続する所望の区画の画像を取得することができ、しかも、倍率の異なる対物レンズを交換することなく、異なる所望の倍率の画像が得られる。その結果、スライドガラス標本一枚当たりの画像取得処理をより高速化することができ、大量のスライドガラス標本の画像取得処理に要する時間をより大幅に短縮化することが可能となる。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0080】
なお、第二実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置において、対物レンズ保持手段7が、倍率の異なる対物レンズを同時に保持し、且つ、倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、搬送手段1の搬送により、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って時間差でカバーすることができる範囲は、一つの標本10における全区画となるように構成するのが好ましい。
【0081】
あるいは、対物レンズ保持手段7が、倍率の異なる対物レンズを同時に保持し、且つ、倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、搬送手段1の搬送により、標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って時間差でカバーすることができる範囲は、一つの標本10における全区画でなく所定の連続する区画であってもよい。その場合には、図6に示したのと同様に、対物レンズ保持手段7が、保持する対物レンズ2a−nで標本10における搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の全区画をカバーするように、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向に(Y方向)に、対物レンズ保持手段7を移動制御可能に、制御部5aを構成するとよい。
【0082】
第三実施形態
図8は本発明の第三実施形態の第一例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。図9は第一例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図8(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図8(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図、(c)は図8に示した対物レンズ保持手段の断面図である。図10は本発明の第三実施形態の第二例にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は対物レンズの倍率が第一の倍率のときの対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図、(b)は第一の倍率の対物レンズから第一の倍率の二倍の対物レンズに交換した場合における、対物レンズ保持手段を介して保持される対物レンズの、連続する所定の区画に対する相対的な位置を示す図である。図11は第二例のバーチャルスライド用標本像取得装置における対物レンズ保持手段の構成を示す説明図で、(a)は図10(a)と同じ位置に対物レンズを保持した状態を示す図、(b)は図10(b)と同じ位置に対物ンズを保持した状態を示す図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0083】
第三実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、対物レンズ保持手段7は、同じ倍率の対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する対物レンズの倍率に応じて、対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されている。
【0084】
例えば、第一の例の対物レンズ保持手段7は、図8(a)に示すように、20倍の対物レンズ2a20−1,2a20−2を、それらの対物レンズの視野2a20f−1,2a20f−2が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように配置した状態から、図8(b)に示すように、40倍の対物レンズ2a40−1,2a40−2に交換した場合に、夫々の対物レンズ2a40−1,2a40−2の位置を、搬送手段1の搬送方向に対して垂直な方向に変更し、さらに、対物レンズ2a40−3,2a40−4を、それらの対物レンズの視野2a40f−1,2a40f−2,2a40f−3,2a40f−4が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように配置可能に構成されている。
【0085】
詳しくは、第一の例の対物レンズ保持手段7は、図9に示すように、対物レンズガイド枠7an(ここでは、n:1〜4)と、対物レンズ保持板7bn(ここでは、n:1〜4)を有している。
対物レンズガイド枠7anは、搬送手段1の搬送方向に対して垂直方向に設けられており、対物レンズ2a−nを備えた対物レンズ保持板7bnを保持するとともに、対物レンズ2a−nを備えた対物レンズ保持板7bnを摺動状態で搬送手段1の搬送方向に対して垂直方向にガイド可能に形成されている。
対物レンズ保持板7bnは、図9(c)に示すように、中央部7bn1で対物レンズ2a−n(ここでは、2a20−n又は2a40−n)を着脱可能に保持するとともに、対物レンズガイド枠7an内を摺動可能に構成されている。
【0086】
そして、第一の例の対物レンズ保持手段7を備えたバーチャルスライド用標本像取得装置において、20倍の対物レンズ2a20−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−1,2a20−2を、それぞれ、対物レンズ保持板7b1,7b2に取付ける。次いで、対物レンズ2a20−1,2a20−2が取付けられた対物レンズ保持板7b1,7b2を、それぞれ、対物レンズガイド枠7a1,7a2に挿し込み、図9(a)に示す位置まで、対物レンズガイド枠7a1,7a2内を摺動させる。
一方、40倍の対物レンズ2a40−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−nで用いた個数(ここでは2個)の2倍の個数(ここでは4個)の対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4を、それぞれ、対物レンズ保持板7b1,7b2,7b3,7b4に取付ける。次いで、対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4が取付けられた対物レンズ保持板7b1,7b2,7b3,7b4を、それぞれ、対物レンズガイド枠7a1,7a2,7a3,7a4に挿し込み、図9(b)に示す位置まで、対物レンズガイド枠7a1,7a2,7a3,7a4内を摺動させる。
【0087】
また、例えば、第二の例の対物レンズ保持手段7は、図10(a)に示すように、20倍の対物レンズ2a20−1,2a20−2を、それらの対物レンズの視野2a20f−1,2a20f−2が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように配置した状態から、図10(b)に示すように、40倍の対物レンズ2a40−1,2a40−2に交換した場合に、夫々の対物レンズ2a40−1,2a40−2の位置を、所定の一点Oを中心とする回転方向に変更し、さらに、対物レンズ2a40−3,2a40−4も、所定の一点Oを中心とする回転方向の所定位置に配置し、それらの対物レンズの視野2a40f−1,2a40f−2,2a40f−3,2a40f−4が、標本10における連続する所定区画をカバーできるように構成されている。
【0088】
詳しくは、第二の例の対物レンズ保持手段7は、図11に示すように、所定の点Oを中心とする同心円状に設けられ、夫々所定の点Oを中心として回転する回転円板7cn(ここでは、n:1〜4)で構成されている。また、対物レンズ保持手段7は、搬送手段1により搬送される標本10に対し、点Oがずれて配置されている。
回転円板7cnは、それぞれ、対物レンズ2a−nを着脱可能に保持する保持部(図示省略)を有している。
【0089】
そして、第二の例の対物レンズ保持手段7を備えたバーチャルスライド用標本像取得装置において、20倍の対物レンズ2a20−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−1、2a20−2を、それぞれ、回転円板7c1,7c2に取付ける。次いで、対物レンズ2a20−1、2a20−2が取付けられた回転円板7c1,7c2を、それぞれ、点Oを中心として、図11(a)に示す位置まで回転させる。
一方、40倍の対物レンズ2a40−nを用いて標本10の画像を取得する場合には、対物レンズ2a20−nで用いた個数(ここでは2個)の2倍の個数(ここでは4個)の対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4を、それぞれ、回転円板7c1,7c2,7c3,7c4に取付ける。次いで、対物レンズ2a40−1、2a40−2、2a40−3、2a40−4が取付けられた回転円板7c1,7c2,7c3,7c4を、それぞれ、点Oを中心として、図11(b)に示す位置まで回転させる。
その他の構成は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0090】
対物レンズ2a−nは、倍率に応じて視野が異なる。より詳しくは、対物レンズ2a−nの倍率が小さい場合は物体側の視野が大きく、倍率が大きくなるにしたがって物体側の視野が小さくなる。
このため、例えば、対物レンズ保持手段7を介して、所定倍率の対物レンズ2a−nを上述のようにずらして複数配置した構成において、搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の連続する区画をカバーしていた場合であっても、より倍率の高い対物レンズ2a−nに交換した場合、対物レンズ保持手段7に保持する複数の対物レンズ同士の相対的な位置が交換前の倍率の低い対物レンズと同じであると、視野が狭くなったことにより、上記複数の区画の間にカバーできない領域が生じてしまう。
しかるに、第三実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、対物レンズ保持手段7を、同じ倍率の対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する対物レンズの倍率に応じて、対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成したので、異なる倍率の対物レンズに交換しても搬送手段1の搬送方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)の連続する区画をカバーできる。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0091】
第四実施形態
図12は本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置における搬送手段上での標本と対物レンズとの位置関係を概念的に示す説明図である。図13は本発明の第四実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の要部構成を示す概念図で、(a)は標本におけるスライドガラスの一例を示す説明図、(b)は搬送時間の経過に対する、標本の全区画が撮像されるまでの各撮像光学系による撮像対象領域を示す説明図、(c)は(b)に示すように時間差をもって各撮像光学系を介して撮像された撮像対象領域の画像を、画像処理手段を介して合成した状態を示す説明図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0092】
第四実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、図13(a)に示すように、標本10におけるスライドガラス10bが、搬送手段1の搬送方向(X方向)に標本10を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターン10c1,10c2を有している。
また、図2に示した画像処理手段5の画像加工部5cが、各撮像光学系を介して撮像された標本画像データごとに、2箇所の識別パターン10c1,10c2で挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における2箇所の識別パターン10c1,10c2の位置を揃えて一つの標本画像を合成する機能を備えて構成されている。
その他の構成は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0093】
上述のように、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、対物レンズ保持手段7が、対物レンズ2a−nを搬送方向に対して垂直な方向に一列には配置せずに、搬送方向(X方向)に沿って、X方向及びY方向に位置をずらして配置するように構成されている。
この場合、各対物レンズ2a−nを経由し各対物レンズ2a−nに対応する撮像素子を介して取得される(ストライプ又はタイル)画像は、例えば、図5に示したように、取得される時間が、搬送方向に対する位置に応じてずれる。従って、各対物レンズ2a−nを経由し各対物レンズに対応する撮像素子を介して取得した画像については、搬送手段1上におけるX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせて合成する必要がある。
また、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置では、例えば、図12に示すように、搬送手段1上に複数の標本10を載置して連続撮像する。このため、撮像した画像は複数の標本10の部分画像が帯状に連なった状態となる。
しかるに、第四実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、標本10におけるスライドガラス10bが、搬送手段1の搬送方向に標本10を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターン10c1,10c2を有するとともに、さらに、各撮像光学系を介して撮像された標本画像データごとに、2箇所の識別パターン10c1,10c2で挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における2箇所の識別パターン10c1,10c2の位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段5cを備えたので、図13(b)に示すように、夫々の撮像光学系(図示省略)を介して撮像した帯状の画像を介して標本10(におけるスライドガラス10b)の識別ができる。そして、帯状の境界識別パターンを、各部分画像を合成する際の位置合わせの基準にして、図13(c)に示すように、搬送手段1上のX方向の位置が同じ画像同士を貼り合わせることができ、一つの標本画像の合成が容易になる。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0094】
第五実施形態
図14は本発明の第五実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置の概略構成を示す説明図、図15は図14のバーチャルスライド用標本像取得装置における一つの撮像撮像光学系の概略構成を示す説明図である。図16は第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。図17は図14に示すバーチャルスライド用標本像取得装置における感度調整手順を示すフローチャートである。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0095】
第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置では、各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段5dを備えている。
各撮像素子は、図15に示すように、R・G・Bの3板式カラーラインセンサ(又はカラーエリアセンサ)で構成されている。そして、図15の例では、結像レンズ2b0−nと、青色光反射ダイクロイックミラー2b1−nを有するプリズムと、赤色光反射ダイクロイックミラー2b2−nを有するプリズムと、青色光反射ダイクロイックミラー2b1−nの反射光路上に配置された青色光用ラインセンサ2bB−nと、赤色光反射ダイクロイックミラー2b2−nの反射光路上に配置された赤色光用ラインセンサ2bR−nと、赤色光反射ダイクロイックミラー2b2−nの透過光路上に配置された緑色光用サインセンサ2bG−nとで、3板式カラーラインセンサカメラ2b−nが構成されている。3板式カラーラインセンサカメラ2b−nは、図14に示すように、一組の撮像光学系において、対物レンズ2a−nと対になっている。
感度調整手段5dは、図16に示すような、スライドガラス10bの試料搭載部10a上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のストライプパターンPR,PG,PBが配置されたテスト標識を備えたテスト用スライド10’を、3板式カラーラインセンサカメラ2b−nの各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成されている。
【0096】
そして、第五実施形態のバーチャルスライド用標本取得装置における各撮像素子の感度調整は、図17に示す手順で行われるようになっている。なお、ここでは、図14に示すように、撮像素子2bR−n,2bG−n,2bB−nを有するラインセンサカメラ2b−nがN組あるものとする。
まず、第一番目のラインセンサカメラ2−1を基準カメラとして設定する(ステップS1)。次いで、赤色光用ラインセンサ2bR−1、緑色光用ラインセンサ2bG−1、青色光用ラインセンサ2bB−1、夫々についての感度差の許容範囲を設定する(ステップS2)。次いで、テスト用スライド10’を搬送手段1の上にセットする(ステップS3)。
そして、搬送手段1を介してテスト用スライド10’を搬送しながら第一番目のラインセンサカメラ2b−1から第N番目のラインセンサカメラ2b−Nの夫々を介して、順に、テスト標識のストライプパターンの画像を撮像し、画像記憶領域5bに記憶する(ステップS4)。
【0097】
次に、感度調整手段5dが、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における赤色光用ラインセンサ2bR−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における赤色光用ラインセンサ2bR−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける赤色光用ラインセンサ2bR−Nの夫々の画像データの光強度との差分を取得する(ステップS5)。同様に、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における緑色光用ラインセンサ2bG−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における緑色光用ラインセンサ2bG−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける緑色光用ラインセンサ2bG−Nの夫々の画像データの光強度との差分を取得する(ステップS6)。また、同様に、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における青色光用ラインセンサ2bB−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における青色光用ラインセンサ2bB−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける青色光用ラインセンサ2bB−Nの夫々の画像データの光強度との差分を取得する(ステップS7)。
【0098】
次に、感度調整手段5dは、取得した光強度の差分が許容範囲外であるか否かを判定し(ステップS8、S10、S12)、許容範囲外である場合に許容範囲外のラインセンサの感度を調整する(ステップS9、S11、S13)。
詳しくは、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における赤色光用ラインセンサ2bR−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における赤色光用ラインセンサ2bR−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける赤色光用ラインセンサ2bR−Nのうちの画像データの光強度の差分に許容範囲外がある場合には、許容範囲外の当該赤色光用ラインセンサの感度を調整する(ステップS9)。また、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における緑色光用ラインセンサ2bG−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における緑色光用ラインセンサ2bG−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける緑色光用ラインセンサ2bG−Nのうちの画像データの光強度の差分に許容範囲外がある場合には、許容範囲外の当該緑色光用ラインセンサの感度を調整する(ステップS11)。また、第一番目のラインセンサカメラ2b−1における青色光用ラインセンサ2bB−1の画像データの光強度と、第二番目のラインセンサカメラ2b−2における青色光用ラインセンサ2bB−2〜第N番目のラインセンサカメラ2b−Nにおける青色光用ラインセンサ2bB−Nのうちの画像データの光強度の差分に許容範囲がある場合には、許容範囲外の当該青色光用ラインセンサの感度を調整する(ステップS13)。
この感度調整処理を全てのラインセンサが設定した誤差の許容範囲内になるまで行う(ステップS14)。
【0099】
一般に、バーチャルスライド用標本像取得装置は、観察対象である標本像の色に基づいて病変の有無等を判定するといった検査に用いることができるように、標本の画像をカラーで取得する構成となっている。従って、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置においては、各撮像素子には、3板式のカラーラインセンサ又はカラーエリアセンサを用いることが望まれる。
ところで、3板式におけるそれぞれの色のラインセンサ又はエリアセンサを用いたカメラは、個体差があり、個々のカメラにおける感度、色等の特性にバラツキが生じることがある。そのようなバラツキを持った個々のカメラで取得したストライプ又はタイル画像を貼り合わせて全体画像を合成した場合、全体画像の画質が不均一となって見難くなり、明るさや色が区画によるバラツキのために病変有無の正確な診断が阻害されるおそれがある。
【0100】
しかるに、第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置のように、感度調整手段5dを介して、3原色のストライプパターンPR,PG,PBが配置されたテスト標識を各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成すれば、標本10の全体にわたって画質が均一化した高画質なカラーのスライド写真が得られ、その結果、病変有無の診断精度が向上する。
その他の作用効果は、第一実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装と略同じである。
【0101】
第六実施形態
図18は本発明の第六実施形態にかかるバーチャルスライド用標本像取得装置における各撮像素子の感度調整に用いるテストパターンの一例を示す説明図である。
なお、第一実施形態と同じ構成の部材については、図示は省略する。
【0102】
第六実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置は、第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と同様、各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段5dを備えている。
各撮像素子は、図15に示したのと同様、R・G・Bの3板式カラーラインセンサ(又はカラーエリアセンサ)で構成されている。3板式カラーラインセンサ(又はカラーエリアセンサ)で構成されている。
感度調整手段5dは、図18に示すような、スライドガラス10bの試料搭載部10a上に、その各色に対し所定の濃度諧調を持たせたR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のストライプパターンPR”,PG”,PB”が配置されたテスト標識を備えたテスト用スライド10”を、3板式カラーラインセンサカメラ2b−nの各撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度が、各撮像素子のうちの一つの撮像素子で撮像したときの各色の画像データの光強度に一致するように、他の撮像素子の感度を調整するように構成されている。
その他の構成は第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0103】
第六実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置によれば、濃淡の異なるデータを比較しながら感度補正を行うことができるので、標本の全体にわたって画質がより均一化した、より高画質なカラーのスライド写真が得られる。
その他の作用効果は、第五実施形態のバーチャルスライド用標本像取得装置と略同じである。
【0104】
以上、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置の実施形態を説明したが、本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の構成要件を満足するものであれば、各実施形態に特有な構成を組み合わせる等、どのように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のバーチャルスライド用標本像取得装置は、バーチャルスライドを用いて病理診断を行う医療、医学の分野に有用である。
【符号の説明】
【0106】
1,C 搬送手段
1a 環状ベルト
1b1、1b2 搬送軸
2 標本像取得手段
2a−n、Ba−n 対物レンズ
2af−n、Baf−n 対物レンズの視野
2b−n 3板式カラーラインセンサカメラ(又は3板式カラーエリアセンサカメラ)
2b0−n 結像レンズ
2b1−n 青色光反射ダイクロイックミラー
2b2−n 赤色光反射ダイクロイックミラー
2bB−n 青色光用ラインセンサ
2bR−n 赤色光用ラインセンサ
2bG−n 緑色光用ラインセンサ
3 搬入ローダー
4 搬出ローダー
5 制御装置
5a 制御部
5b 記憶領域
5c 画像加工部
5d 感度調整手段
6 表示装置
7 対物レンズ保持手段
7an 対物レンズガイド枠
7bn 対物レンズ保持板
7cn 回転円板
10 (スライドガラス)標本
10a 試料搭載部
10b スライドガラス
10c1、10c2 境界識別用の識別パターン
10’、10” テスト用スライド
PR、PR” 赤色のテスト用ストライプパターン
PG、PG” 緑色のテスト用ストライプパターン
PB、PB” 青色のテスト用ストライプパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本を一方向に搬送する搬送手段と、標本像を対物レンズを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を前記標本像取得手段により撮像して、前記対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置であって、
前記標本像取得手段は、
複数組の対物レンズ及び、
該複数組の対物レンズを、その視野が主走査方向に沿う異なる前記区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段を備えた
ことを特徴とするバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項2】
前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その対物レンズの視野が、主走査方向の区画を連続してカバーすることができる位置に配置することを特徴とする請求項1に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、副走査方向に複数の標本を配置可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバーチャルスライド用標本画像取得装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、副走査方向及び主走査方向に複数の標本を配置可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項5】
前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その視野が、主走査方向の全区画を連続してカバーすることができる位置に、配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項6】
前記対物レンズ保持手段は、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項7】
前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、主走査方向に変更可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項8】
前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、所定の一点を中心とする回転方向に変更可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項9】
前記対物レンズ保持手段が、倍率の異なる前記対物レンズを同時に保持し、且つ、該倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、前記搬送手段の搬送により、主走査方向に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、該対物レンズを配置可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項10】
前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、
前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本画像取得装置。
【請求項11】
前記標本像取得手段に備わる各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本画像取得装置。
【請求項1】
標本を一方向に搬送する搬送手段と、標本像を対物レンズを介して所定倍率に拡大して撮像する標本像取得手段とを有し、標本を複数の区画に区分けし、各区画の標本像を前記標本像取得手段により撮像して、前記対物レンズの単一視野よりも広い領域の標本像を取得するバーチャルスライド用標本像取得装置であって、
前記標本像取得手段は、
複数組の対物レンズ及び、
該複数組の対物レンズを、その視野が主走査方向に沿う異なる前記区画をカバーすることができる位置に、配置する対物レンズ保持手段を備えた
ことを特徴とするバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項2】
前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その対物レンズの視野が、主走査方向の区画を連続してカバーすることができる位置に配置することを特徴とする請求項1に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、副走査方向に複数の標本を配置可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバーチャルスライド用標本画像取得装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、副走査方向及び主走査方向に複数の標本を配置可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項5】
前記対物レンズ保持手段は、前記複数組の対物レンズを、その視野が、主走査方向の全区画を連続してカバーすることができる位置に、配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項6】
前記対物レンズ保持手段は、同じ倍率の前記対物レンズを同時に保持し、且つ、保持する該対物レンズの倍率に応じて、該対物レンズ同士の相対的位置を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項7】
前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、主走査方向に変更可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項8】
前記対物レンズ保持手段は、保持する前記対物レンズの倍率に応じて、夫々の該対物レンズの位置を、所定の一点を中心とする回転方向に変更可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項9】
前記対物レンズ保持手段が、倍率の異なる前記対物レンズを同時に保持し、且つ、該倍率の異なる対物レンズごとに、各対物レンズの視野が、前記搬送手段の搬送により、主走査方向に沿って連続するそれぞれの区画を時間差でカバーすることができる位置に、該対物レンズを配置可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバーチャルスライド用標本像取得装置。
【請求項10】
前記標本におけるスライドガラスが、副走査方向に該標本を挟む2箇所の所定位置に、境界識別用の識別パターンを有し、さらに、
前記標本像取得手段において各対物レンズを経由し該各対物レンズに対応する撮像素子を介して撮像された標本画像データごとに、前記2箇所の識別パターンで挟まれた部分画像群を抽出し、抽出した各部分画像群における該2箇所の識別パターンの位置を揃えて一つの標本画像を合成する画像処理手段を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本画像取得装置。
【請求項11】
前記標本像取得手段に備わる各撮像素子の感度が、一致するように調整する感度調整手段を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のバーチャルスライド用標本画像取得装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−197872(P2010−197872A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44622(P2009−44622)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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