説明

パイロット式流量制御バルブ

【課題】従来に増して流量を多く確保でき、或いは流量を一定に維持したまま主弁を小径化でき、以て全体のサイズをよりコンパクト化することのできるパイロット式流量制御バルブを提供する。
【解決手段】主弁16と、背圧室42と、1次側の液を背圧室42に導入して圧力上昇させる導入小孔44と、圧抜流路としてのパイロット流路46と、パイロット流路46の開度の変化により主弁16を追従して進退移動させるパイロット弁48とを有し、主弁16に対して閉弁方向に作用する背圧室42の圧力と、開弁方向に作用する1次側及び2次側圧力との差圧に基づいて主弁16を移動させるパイロット式流量制御バルブにおいて、主弁16に、差圧を受けて駆動力を発生させる弁機能をもたない差圧駆動部34を設けるとともに、差圧駆動部34とは別途に、差圧の影響を排除し、差圧駆動部34の駆動力によって一体に進退移動し、主弁座14との間の間隙を大小変化させる弁機能部としての流調弁部36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パイロット弁の移動により主弁を追従して移動させることで流量制御を行うパイロット式流量制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水栓として各種のものが用いられているが、これら水栓は主流路の開度を変化させる主弁を主弁座に対して接近離間方向に進退移動させる際に大きな力を要し、操作が重いといった問題があった。
【0003】
そこで水栓における流量制御バルブをパイロット式流量制御バルブ、即ちパイロット弁を進退移動させることによって、主弁をこれに追従して進退移動させ、主流路の開度を変化させるパイロット式流量制御バルブとして構成することが行われている。
【0004】
このパイロット式流量制御バルブとして、(イ)主流路上に設けられ、主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる主弁と、(ロ)主弁の背後に形成され、内部の圧力を主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)背圧室に連通し、主流路の主弁よりも上流側の1次側の液を背圧室に導入して圧力上昇させる導入小孔と、(ニ)背圧室に連通して設けられ、背圧室の液を主流路の主弁よりも下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜流路としてのパイロット流路と、(ホ)主弁の進退移動方向に進退移動し、パイロット流路の開度を変化させることによって主弁を追従して同方向に進退移動させるパイロット弁と、を有し、背圧室の圧力と、主弁に対して開弁方向に作用する1次側圧力及び2次側圧力との差圧に基づいて主弁を進退移動させるようになしたパイロット式流量制御バルブが知られている。
例えば下記特許文献1に、この種のパイロット式流量制御バルブを単水栓用の制御バルブに適用した例が、また下記特許文献2に混合水栓用の湯水混合バルブに適用した例がそれぞれ開示されている。
【0005】
このパイロット式流量制御バルブにあっては、パイロット弁を進退移動させると、例えばパイロット流路の開度を大きくする方向にパイロット弁を後退移動させると、背圧室の液が下流側の2次側に抜け出ることによって、主弁を閉弁方向に押圧する背圧室の圧力が低下し、そのことによって主弁がパイロット弁に追従して開弁方向に後退移動する。
【0006】
また逆にパイロット流路の開度を小さくする方向にパイロット弁を前進移動させると、背圧室の圧力が増大することによって、主弁がパイロット弁に追従して閉弁方向に前進移動する。
【0007】
ところで、従来この種のパイロット式流量制御バルブにあっては、流量を多く確保することが難しい問題があり、或いは流量を多く確保しようとすると主弁が大径化し、制御バルブが大型化してしまうといった固有の問題を有していた。
【0008】
以下にその理由を、図8の具体例に基づいて詳しく説明する。
図8において、200はバルブボデー(バルブケース)201に設けられた主流路で、200-1は流入口に続く上流側の1次側の流路、200-2は流出口に到る下流側の2次側の流路を表している。
【0009】
202は、主流路200上に設けられたダイヤフラム弁から成る主弁で、円筒部の先端にて構成された主弁座208に向けて図中上下方向に進退移動する。
主弁202は、その進退移動につれて主弁座208との間の間隙を変化させ、即ち弁開度を変化させ、1次側の流路200-1から2次側の流路200-2への液の流入量、即ち制御バルブにおける流量を変化させ調節する。
ここで主弁202は、ゴム製のダイヤフラム膜204と、これを保持する硬質の保持部材206とから成っている。
【0010】
210は、主弁202の背後(図中上側)に形成された背圧室で、211は主弁202を貫通して設けられた導入小孔である。
導入小孔211は、主流路200における1次側の流路200-1の液を背圧室210へと流入させて、背圧室210の圧力を増大させる。
【0011】
212は、主弁202を貫通して設けられたパイロット流路で、このパイロット流路212は、背圧室210の液を2次側の流路200-2に抜いて背圧室210の圧力を減少させる。
【0012】
216は、主弁202に設けられたパイロット弁座214に向けて進退移動し、パイロット流路212の開度を変化させるパイロット弁である。
パイロット弁216は、その進退移動によってパイロット流路212を通じて背圧室210から抜ける液の量を変化させ、以て背圧室210の圧力を増減変化させる。
【0013】
このパイロット式制御バルブにあっては、主弁202の図中上面に対して、背圧室210の圧力が図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用する。
一方その下面に対しては、主弁座208より外周側の部分において1次側の流路200-1の圧力(1次側圧力)が図中上向きの開弁方向の押圧力として作用する。
【0014】
また主弁座208より内側の部分において2次側の流路200-2の圧力(2次側圧力)が、同じく図中上向きの開弁方向の押圧力として作用する。
主弁202は、その背圧室の圧力とこれとは反対方向に作用する1次側圧力及び2次側圧力の差圧を駆動力として図中上下方向に進退移動する。
【0015】
而して背圧室210の圧力は、パイロット弁216の進退移動により増減変化せしめられ、その結果として主弁202はパイロット弁216の図中上下方向の進退移動に追従して、これと同方向に且つ同じ距離だけ進退移動し、弁開度を変化させる。
【0016】
このパイロット式制御バルブにあっては、主弁202の下面が外周部の1次側圧力の受圧面と、それより内側の部分即ち主弁座208よりも径方向内側の2次側圧力の受圧面とに分かれる。
図中Sはその1次側圧力の受圧面積を表し、またSは2次側圧力の受圧面積を表している(但しパイロット流路212,導入小孔211の面積分も影響してくるが、これらは微小であるため便宜上ここではそれらについては無視する)。
一方、Aは主弁座208の内側に形成される流路(2次側の流路200-2)の流路面積を表しており、この流路面積Aは2次側圧力の受圧面積Sと等しい。
【0017】
このパイロット式制御バルブにおいては、主弁202の下面の2次側圧力の受圧面積Sを除いた部分が1次側圧力の受圧面積Sとなるが、このパイロット式制御バルブでは、主弁202に対する図中上向きの開弁方向の駆動力を得るために、1次側圧力の受圧面積Sを一定以上確保することが必要である。
【0018】
その結果、2次側圧力の受圧面積S、即ち流路面積Aが主弁202の径に対して一定以下に小径とならざるを得ず、その結果として流路面積Aを流れる液の流量を多く確保することが難しいといった問題を生ずるのである。
或いは流量を多く確保しようとすると、これに伴って主弁202の径が大径化してしまい、パイロット式制御バルブそのものが大型化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−214480号公報
【特許文献2】特開2008−133860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来に増して流量を多く確保でき、或いは流量を一定に保持したまま主弁を小径化でき、以て全体のサイズをよりコンパクト化することのできるパイロット式流量制御バルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1のものは、(イ)主流路上に設けられ、主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる主弁と、(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)該背圧室に連通し、前記主流路の前記主弁よりも上流側の1次側の液を該背圧室に導入して圧力上昇させる導入小孔と、(ニ)該背圧室に連通して設けられ、該背圧室の液を前記主流路の該主弁よりも下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜流路としてのパイロット流路と、(ホ)前記主弁の進退移動方向に進退移動し、前記パイロット流路の開度を変化させることによって該主弁を追従して同方向に進退移動させるパイロット弁と、を有し、前記背圧室の圧力と、該主弁に対して開弁方向に作用する1次側圧力及び2次側圧力との差圧に基づいて該主弁を進退移動させるようになしたパイロット式流量制御バルブにおいて、前記主弁には、前記差圧を受けて主弁移動のための駆動力を発生させる弁機能をもたない差圧駆動部を設けるとともに、該差圧駆動部とは別途に、前記差圧の影響を排除し、該差圧駆動部の駆動力によって該差圧駆動部と一体に前記主弁座に向けて進退移動し、該主弁座との間の間隙を大小変化させて流量調節を行う弁機能部としての流調弁部を設けたことを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、請求項1において、前記差圧駆動部は軸部を有していて該軸部が、2次側空間を画成する仕切壁の嵌合孔に前記主弁の進退移動方向に液密且つ摺動可能に嵌合しているとともに、前記流調弁部は該2次側空間に設けてあって、前記2次側圧力を前進方向と後退方向との両方に同じ圧力で受けていることを特徴とする。
【0023】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記流調弁部及び前記主弁座は、前記差圧駆動部における前記2次側圧力の受圧面よりも大径となしてあることを特徴とする。
【0024】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記制御バルブは単水栓用の制御バルブであることを特徴とする。
【0025】
請求項5のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記制御バルブは混合水栓用の湯水混合バルブであることを特徴とする。
【0026】
請求項6のものは、請求項5において、前記制御バルブが、(a)弁開度を互い逆の関係で大小変化させる水側主弁及び湯側主弁と、(b)混合水温度に感応して軸方向に伸縮し、該混合水温度が設定温度よりも高くなったときに前記水側主弁を開き、前記湯側主弁を閉じる方向にそれら水側主弁及び湯側主弁を移動させる感温動作部材と、(c)該水側主弁及び湯側主弁に対し該感温動作部材による移動方向と逆方向の付勢力を作用させるばねと、を有し、前記水側及び湯側の各主弁の下流側の混合水温度を自動調節する自動温度調節機能付きの湯水混合バルブであって、前記背圧室が、前記水側主弁又は/及び湯側主弁に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させるものとなしてあるとともに、該背圧室の圧力を受ける該水側主弁,湯側主弁の少なくとも一方の主弁に前記差圧駆動部と流調弁部とが設けてあり、前記パイロット弁が該感温動作部材の伸縮動作により前記混合水温度に感応して進退移動し、前記背圧室の圧力を増減させることで前記水側主弁又は/及び湯側主弁を開閉方向に移動させ、前記混合水温度を自動調節するものとなしてあることを特徴とする。
【0027】
請求項7のものは、請求項6において、前記水側主弁と湯側主弁との一方の主弁が、対応して設けられた水側背圧室,湯側背圧室の一方の背圧室の圧力を受けて駆動される水圧駆動又は湯圧駆動の弁となしてあるとともに、それら水側主弁及び湯側主弁は一体に移動する弁となしてあり、前記一方の主弁に、前記差圧駆動部と流調弁部とが設けてあるとともに、他方の主弁が該流調弁部に一体に構成してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0028】
以上のように本発明は、主弁に対して閉弁方向に作用する背圧室の圧力と、主弁に対して開弁方向に作用する1次側圧力及び2次側圧力との差圧を受けて、主弁移動のための駆動力を発生させる弁機能をもたない差圧駆動部を主弁に設けるとともに、その差圧の影響を排除し、差圧駆動部の駆動力によって差圧駆動部と一体に主弁座に向けて進退移動し、主弁座との間の間隙を大小変化させて流量調節を行う弁機能部としての流調弁部を差圧駆動部とは別途に主弁に設けたものである。
【0029】
即ち、従来のパイロット式制御バルブにあっては主弁の全体が背圧室,1次側圧力及び2次側圧力を受ける差圧駆動部をなしていたのに対し、本発明のパイロット式制御バルブにあっては、その一部にて差圧駆動部を構成し、そしてこの差圧駆動部とは別途に、差圧の影響を排除し、差圧駆動部の駆動力にて進退移動する流調弁部を設けたもので、かかる本発明によれば、主弁における2次側圧力の受圧面の径、詳しくは差圧駆動部における2次側圧力の受圧面の径に拘束されることなく、流調弁部の径を自由に設定することが可能であり、かかる流調弁部の径を2次側圧力の受圧面に対して大径化することができる(請求項3)。
【0030】
そしてこのことにより、主弁の径を一定に維持しつつ即ちパイロット式制御バルブのサイズを大型化することなく、流量を従来に増して多く確保することが可能となる。
或いは流量を一定に維持しつつ主弁の径を従来より小径化でき、パイロット式制御バルブのサイズを従来よりも小型化、コンパクト化することができる。
【0031】
この場合において、上記差圧駆動部には軸部を設けてその軸部を、2次側空間を画成する仕切壁の嵌合孔に主弁の進退移動方向に液密且つ摺動可能に嵌合するとともに、流調弁部を2次側空間に設けて、その2次側空間の圧力を前進方向と後退方向との両方に同じ圧力で受けるように構成しておくことができる(請求項2)。
このようにすれば背圧室,1次側圧力及び2次側圧力の影響が排除された上記の流調弁部を容易に且つ簡単な構造で構成することが可能となる。
【0032】
本発明のパイロット式制御バルブは、単水栓用制御バルブとして好適に適用することができ(請求項4)、或いは混合水栓における湯水混合バルブとして好適に適用することができる(請求項5)。
【0033】
この場合において、本発明をハンドルの操作量に応じて水側主弁,湯側主弁の位置を定め、その後それら水側主弁,湯側主弁の位置を固定状態として水と湯との混合量を決定する、所謂ミキシングタイプの湯水混合バルブ(ミキシングバルブ)に適用することも可能であるが、本発明は、請求項6に従ってこれを自動温度調節機能付きのパイロット式湯水混合バルブとして構成することができる。
【0034】
而して本発明のパイロット式流量制御バルブを請求項6従ってパイロット式湯水混合バルブとして構成するに際し、これを様々な形態のパイロット式バルブとなすことができる。
例えばパイロット式湯水混合バルブを、以下の(A),(B),(C)の構成を有するパイロット式バルブとして構成することができる。
【0035】
(A)(イ)水側主弁の背後に形成され、内部の圧力を水側主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室としての水側背圧室と、(ロ)水流入口からの1次側の水を水側背圧室の内部に導入して圧力上昇させる水側導入小孔と、(ハ)水側背圧室の水を水側主弁の下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜流路としての水側パイロット流路と、(ニ)水側主弁の進退移動方向に進退移動し、水側パイロット流路の開度を変化させることによって水側主弁を同方向に追従して進退移動させる水側パイロット弁とを有するものとなすとともに、湯側主弁を水側主弁と一体に構成して、水側主弁を水圧駆動弁として湯側主弁を一体に移動させるようになしたパイロット式湯水混合バルブ。
【0036】
(B)(イ)湯側主弁の背後に形成され、内部の圧力を湯側主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室としての湯側背圧室と、(ロ)湯流入口からの1次側の湯を湯側背圧室の内部に導入して圧力上昇させる湯側導入小孔と、(ハ)湯側背圧室の湯を湯側主弁の下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜流路としての湯側パイロット通路と、(ニ)湯側主弁の進退移動方向に進退移動し、湯側パイロット流路の開度を変化させることによって湯側主弁を同方向に追従して進退移動させる湯側パイロット弁とを有するものとなすとともに、水側主弁を湯側主弁と一体に構成して、湯側主弁を湯圧駆動弁として水側主弁を一体に移動させるようになしたパイロット式湯水混合バルブ。
【0037】
(C)水側主弁と湯側主弁とが互いに別体且つ独立して移動可能とされているとともに(イ)水側主弁,湯側主弁の背後に形成され、内部の圧力を水側主弁,湯側主弁に対して閉弁方向の押圧力としてそれぞれ作用させる背圧室としての水側背圧室,湯側背圧室と、(ロ)水流入口,湯流入口からの1次側の水,湯をそれら背圧室の内部に導入して圧力上昇させる水側導入小孔,湯側導入小孔と、(ハ)水側,湯側の各背圧室の水,湯を水側主弁,湯側主弁の各下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜流路としての水側パイロット流路,湯側パイロット流路と、(ニ)水側主弁,湯側主弁の各進退移動方向に進退移動し、各パイロット流路の開度を変化させることで水側主弁,湯側主弁をそれぞれ同方向に追従して進退移動させる水側パイロット弁,湯側パイロット弁と、を有するものとなしてあるパイロット式湯水混合バルブ。
【0038】
更にこの請求項6において、水側主弁と湯側主弁との一方の主弁を、対応して設けた水側背圧室,湯側背圧室の一方の背圧室の圧力を受けて駆動される水圧駆動又は湯圧駆動の弁となしておくとともに、それら水側主弁及び湯側主弁を一体に移動するものとなしておき、そして一方の主弁に上記の差圧駆動部と流調弁部とを設けておくとともに、他方の主弁をその流調弁部に一体に構成しておくことができる(請求項7)。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態であるパイロット式流量制御バルブの図である。
【図2】同実施形態の作用説明図である。
【図3】図2に続く作用説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態の図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図4におけるパイロット弁ユニットの図である。
【図7】同実施形態の作用説明図である。
【図8】従来のパイロット式流量制御バルブの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明のパイロット式流量制御バルブを単水栓用に構成した場合の実施形態を示したもので、図中10はバルブボデー(バルブケース)12に形成された主流路で、10-1,10-2はそれぞれ主流路10における上流側の1次側の流路,下流側の2次側の流路をそれぞれ表している。
また14は、主流路10上に設けられた円筒部の先端部にて構成された主弁座を表している。
【0041】
16は、主流路10上に設けられたダイヤフラム弁から成る主弁で、ゴム製のダイヤフラム膜18と、これよりも硬質の樹脂製の保持部材20とを有しており、そのダイヤフラム膜18の外周部が全周に亘りバルブボデー12に固定されている。
【0042】
22はバルブボデー12に一体に構成された仕切壁で、この仕切壁22は、バルブケース12内部を軸直角方向に横切る状態に設けられた第1部分24と、その外周端部で図中下向きに軸方向に延びる第2部分26とを有している。
この仕切壁22は、図中下側(内側)に2次側空間を形成する。
【0043】
上記主弁16は、中心部に断面円形の中心軸部28を有しており、この中心軸部28が仕切壁22、詳しくは第1部分24の中心部に形成された円形の嵌合孔30に挿通されている。
中心軸部28は、シール部材32による水密(液密)シール状態の下でこの嵌合孔30に対し図中上下方向、即ち主弁16の進退移動方向に摺動可能に嵌合している。
【0044】
この実施形態において、主弁16は、中心軸部28及び仕切壁22の上側の部分が弁機能をもたない差圧駆動部34をなしている。
また仕切壁22の図中下側の内側において、中心軸部28から径方向外方に張り出した部分が弁機能部としての流調弁部36をなしている。
【0045】
ここで流調弁部36の外周面及び仕切壁22における第2部分26の内周面は何れも円形をなしており、その第2部分26の内周面に対して、流調弁部36の外周面がシール部材38による水密シール状態の下で図中上下方向、即ち主弁16の進退移動方向に摺動可能に嵌合している。
尚この流調弁部36の、上記の主弁座14に対して上下に対向する部分は弾性のシール部材40にて構成されている。
【0046】
42は主弁16の図中上側の背後に形成された背圧室で、この背圧室42は、内部の圧力を主弁16に対して図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0047】
主弁16には、差圧駆動部34を図中上下方向に貫通する導入小孔44が設けられている。
この導入小孔44は、1次側の流路10-1の水(液)を背圧室42に導入して背圧室42の圧力を上昇せしめる。
主弁16にはまた、その全体を図中上下に貫通する状態でパイロット流路46がその中心部に設けられている。
【0048】
このパイロット流路46は、背圧室42内の水(液)を2次側の流路10-2に流出させる水抜流路(圧抜流路)としてのもので、背圧室42内の水がこのパイロット流路46を通じて2次側の流路10-2に流出することで、背圧室42の圧力が減少せしめられる。
【0049】
48はパイロット弁で、その先端部(図中下端部)に弾性のシール部材50が設けられている。
このパイロット弁48は、主弁16に設けられたパイロット弁座52に向けて図中上下方向(軸方向)に進退移動し、パイロット流路46の開度を増減変化させる。
【0050】
このパイロット弁48には軸部54が一体に構成されており、その軸部54が、バルブボデー12に対してねじ結合され、回転操作によってパイロット弁48が図中上下方向に進退移動せしめられるようになっている。
【0051】
主弁16における上記の中心軸部28には横孔56が設けられており、この横孔56を介して、2次側の流路10-2の2次側圧力が仕切壁22と流調弁部36との間に形成される2次圧室58に導入されている。
即ちこの実施形態において、流調弁部36は仕切壁22の図中下側に形成される2次側空間に設けてある。
【0052】
この実施形態において、仕切壁22における第2部分26の内周面の径は、主弁座14の径と同径且つ径方向の同一位置に位置させてあり、従って流調弁部36は、2次側圧力を図中下向きの閉弁方向即ち前進方向と、図中上向きの開弁方向即ち後退方向との両方向に同じ圧力で受けており、それら逆向きの2次側圧力は互いに相殺されている。
即ち流調弁部36は背圧室42の圧力,1次側圧力,2次側圧力の何れの圧力の影響も排除した形で設けられている。
【0053】
一方差圧駆動部34は、その上面において背圧室42の圧力を図中下向きの閉弁方向即ち前進方向の圧力として受けており、またその下面の中心軸部28の外周側の部分において、1次側圧力を図中上向きの開弁方向即ち後退方向の圧力として受けている。
更に中心軸部28の下面において2次側圧力を図中上向きの開弁方向即ち後退方向の圧力として受けている。
【0054】
差圧駆動部34は、これら背圧室42の図中下向きの閉弁方向の圧力と、図中上向きの開弁方向の1次側圧力及び2次側圧力との差圧を受けて、主弁16移動のための駆動力を発生させる。
図1中S′は差圧駆動部34における1次側圧力の受圧面積を表しており、またS′は2次側圧力の受圧面積を表している。
一方Aは主弁座14の内側に形成される流路の流路面積を表している。
【0055】
この図から明らかなように、この実施形態では図8に示した従来のパイロット式制御バルブのように2次側圧力の受圧面積と流路面積とが等しいものではなく、流路が2次側圧力の受圧面よりも大径をなしていて流路面積Aが2次側圧力の受圧面積S′に対して大きくされており、2次側圧力の受圧面積による制限を受けることなく流路面積Aが大きく確保されている。
【0056】
本実施形態において、上記のパイロット弁48は図中上下方向の進退移動によってパイロット流路46の開度を変化させ、これにより背圧室42の圧力を変化させることで、主弁16を同方向に同じ距離で追従して進退移動させる。
その際の作用が図2及び図3に詳しく示してある。
【0057】
図2(I)は、主弁16が閉弁した状態、詳しくは流調弁部36が主弁座14に着座して閉弁した状態、及びパイロット弁48がパイロット弁座52に着座して閉弁した状態をそれぞれ表している。
この状態からパイロット弁48が図中上向きに後退移動すると、パイロット流路46が開かれて背圧室42内の水がパイロット流路46を通じて2次側の流路10-2へと流出する。
【0058】
すると背圧室42の圧力が低下するため、差圧駆動部34に作用する背圧室42の圧力と、1次側圧力(及び2次側圧力)の圧力をバランスさせるように、主弁16が図中上向きに後退移動する(図2(II))。
そしてその圧力がバランスしたところで主弁16の図中上向きの移動即ち後退移動が停止する。このときパイロット弁48とパイロット弁座52との間の間隙は微小な一定の追従間隙に保持される(図2(III))。
このようにして主弁16が図中上向きに後退移動することで、流調弁部36が主弁座14から図中上向きに離間して主流路10を開き、主流路10に流れを生ぜしめる。
【0059】
図2(III)に示す状態から更にパイロット弁48が後退移動すると、このパイロット弁48との間に上記の一定の微小な追従間隙を維持しつつ、主弁16即ち流調弁部36がパイロット弁48に追従して図中上向きに後退移動し、主流路10の開度を更に大として、主流路10を流れる流量を増大せしめる(図2(IV))。
【0060】
一方これとは逆にパイロット弁48が図3に示しているように図中下向きに前進移動すると、同じく差圧駆動部34に作用する背圧室の圧力と1次側及び2次側の圧力をバランスさせるようにして主弁16、即ち流調弁部36が図中下向きに前進移動し(図3(I)〜(IV))、主流路10の開度を減少させる。これによって主流路10を流れる水の流量が減少せしめられる。
【0061】
以上のように本実施形態のパイロット式制御バルブにあっては、主弁16の一部にて弁機能をもたない差圧駆動部34を構成し、そしてこの差圧駆動部34とは別途に、圧力の影響を排除し、差圧駆動部34の駆動力にて進退移動する流調弁部36を弁機能部として設けていることから、主弁16における2次側圧力の受圧面の径に拘束されることなく、流調弁部36の径を自由に設定することが可能であり、かかる流調弁部36の径を2次側圧力の受圧面に対して大径化することができる。
【0062】
そしてこのことにより、主弁16の径を一定に維持しつつ、即ちパイロット式流量制御バルブのサイズを大型化することなく、流量を従来に増して多く確保することが可能となる。
或いは流量を一定に維持したまま、主弁16の径を小径化でき、パイロット式流量制御バルブのサイズを小型化、コンパクト化することができる。
【0063】
また本実施形態によれば、背圧室42,1次側圧力及び2次側圧力の影響を排除した形で流調弁部36を容易に且つ簡単な構造で構成することができる。
【0064】
図4〜図7は、本発明を自動温度調節機能付きのパイロット式湯水混合バルブ(以下単に湯水混合バルブとする)に適用した場合の実施形態を示している。
図4において、60はこの湯水混合バルブのバルブボデー(バルブケース)を示している。
このバルブボデー60には、水流入口,湯流入口にそれぞれ続いて形成された1次側流路としての水流入流路62,湯流入流路64がそれぞれ設けられている。
【0065】
これら水流入流路62,湯流入流路64から流入した水と湯とは、2次側流路である混合室66内の混合流路68を流通してそこで水と湯とが十分に混合され、そしてその混合水が流出口70から図中右方に流出する。
このバルブボデー60にはまた、後述の水側流調弁部92,湯側流調弁部94に各対応して水側主弁座72,湯側主弁座74がそれぞれ形成されている。
【0066】
76は水圧駆動されるダイヤフラム弁から成る水側主弁で、図5に拡大して示しているように、この例において水側主弁76は円形の中心軸部78を有しており、この中心軸部78が、バルブボデー60に一体に形成された仕切壁80の円形の嵌合孔82に対し、シール部材84による水密シール状態の下で図中左右方向に摺動可能に嵌合している。
ここで仕切壁80は、バルブボデー60内部且つこの仕切壁80よりも図中右側に2次側空間を画成している。
【0067】
水側主弁76は、上記の中心軸部78及び仕切壁80より図中左側の部分が差圧駆動部86を成しており、また仕切壁80より図中右側において中心軸部78から径方向外方に突出した部分が弁機能部としての流調弁部88を成している。
【0068】
この流調弁部88もまた外周面が円形をなしており、その外周面がバルブボデー60の円形の内周面に対し、シール部材90による水密シール状態の下で図中左右方向に摺動可能に嵌合している。
この流調弁部88は、図中右端部が水側流調弁部92を成しており、また図中左端部が湯側流調弁部94を成している。
即ちこの実施形態では湯側主弁が湯側流調弁部94として構成されている。
【0069】
この実施形態では、水圧駆動の水側主弁76が図中右方に移動すると、水側流調弁部92の弁開度が小,湯側流調弁部94の弁開度が大となり、また水側主弁76が図中左方に移動すると、水側流調弁部92の弁開度が大,湯側流調弁部94の弁開度が小となり、それぞれの弁開度の変化に応じて水と湯との流入量を変化させる。
尚、図から明らかなように水側流調弁部92と湯側流調弁部94とは、軸方向において互いに逆向きに形成されている。
【0070】
ここで湯流入流路64を通じて流入した湯は、湯側の2次側の流路96を通じて混合流路68へと到り、そこで水流入流路62から流入した水と混合される。
この実施形態では、流路96を介して2次圧室98が2次側の混合流路68と連通し、そこに2次側圧力が導入される。
【0071】
図5において、上記の差圧駆動部86の図中左側の背後には、水側背圧室100が形成されている。
水側背圧室100は、その内部の圧力を水側主弁76に対して図中右方向の閉弁方向(ここでは水側流調弁部92の閉弁方向)の押圧力として作用させる。
【0072】
この水側背圧室100とは反対側の図中右側、即ち差圧駆動部86と仕切壁80との間には1次圧室102が形成されており、そこに水流入流路62からの水が図中波線で示す連通路104,106を通じて導入されるようになっている。
即ち1次圧室102に1次側圧力が導入されるようになっている。
この1次圧室102と水側背圧室100とは、差圧駆動部86を貫通して設けられた導入小孔111を介して連通しており、この1次圧室102に導入された水が、この導入小孔111を通じて水側背圧室100に流入せしめられる。
【0073】
差圧駆動部86は、水側背圧室100による右向きの圧力と、1次圧室102内の左向きの圧力及び中心軸部78に対して図中左向きに働く2次側圧力との差圧を受けて、水側主弁76移動のための駆動力を発生する。
上記の流調弁部88は、この差圧駆動部86で発生した駆動力によって図中左右方向に進退移動せしめられる。
【0074】
水側主弁76は、その中心部に軸方向に貫通の孔を有していて、そこに後述のスリーブ142-1が挿通されている。
そしてその貫通孔とスリーブ142-1との間に、環状のパイロット流路112が形成されている。
【0075】
108は水側パイロット弁で、この水側パイロット弁108が水側主弁76に形成された水側パイロット弁座110に向けて図中左右方向に進退移動することで、パイロット流路112の開度が変化せしめられる。
即ち水側背圧室100の圧力が、水側パイロット弁108の進退移動に伴って増減変化せしめられる。
【0076】
従ってこの実施形態においても、水側パイロット弁108が図中左右方向に進退移動することで、水側主弁76がこれに追従して水側パイロット弁108と同方向に且つ一定の追従間隙を維持しつつ進退移動せしめられる。
このとき水側流調弁部92,湯側流調弁部94がそれぞれ逆の関係で弁開度を大小変化させ、水と湯との流入量を変化させる。即ち混合水温度を変化させる。
【0077】
図4において、120は軸部122においてハンドルに一体回転に連結される円筒形状の回転部で、バルブボデー60の内面に回転可能に嵌合されている。
この回転部120の内側には、軸方向に進退移動する円筒形状の第1の進退部材124が配置されており、この進退部材124が、かかる進退部材124に形成された雄ねじ126と、回転部120に形成された雌ねじ128とにおいてねじ結合されている。
【0078】
この進退部材124はまた、バルブボデー60における内筒部130に対し、軸方向の係合溝と係合突条とを有する回止め機構132により回止めされている。
従って回転部120が回転させられると、進退部材124がねじ送りで図中左右方向に移動せしめられる。
【0079】
進退部材124の更に内側には、有底円筒形状をなす第2の進退部材134が配置されている。
この第2の進退部材134は、バルブボデー60における上記の内筒部130に対して外嵌状態に摺動可能に嵌合されているとともに、第1の進退部材124に対し緩衝ばね機構136を介して連結されている。
【0080】
従って進退部材124が図中左右方向に進退移動すると、その進退移動が緩衝ばね機構136を介して第2の進退部材134に伝えられ、かかる第2の進退部材134が、内筒部130の外面に沿って図中左右方向に進退移動せしめられる。
【0081】
ここで緩衝ばね機構136は次のように作用する。即ち上記の水側流調弁部92又は湯側流調弁部94が、対応する水側主弁座72又は湯側主弁座74に当接することで、その後における温調軸140の移動ができなくなったとき、緩衝ばね機構136におけるばね(コイルばね)が軸方向に撓むことによって、加えられた過大な操作力を吸収する。
【0082】
この第2の進退部材134の底部138には、水側主弁76を図中左右方向に移動させるための温調軸140の図中左端部が結合されている。
従って第2の進退部材134が図中左右方向に進退移動すると、この温調軸140がこれと一体に図中左右方向に進退移動せしめられる。
【0083】
この温調軸140には、図6にも示しているようにスリーブ142-1,142-2,142-3,142-4が外嵌状態に且つ左右方向に相対移動可能に嵌合されている。
そして真中のスリーブ142-1に、上記の水側パイロット弁108が一体に構成されている。
この水側パイロット弁108は、シール部材144による水密シール状態の下で、上記の内筒部130の内面に左右方向に摺動可能に嵌合されている。
図中右端側のスリーブ142-3は、温調軸140に対し止め輪にて図中右端が規定され、また左端側のスリーブ142-4は、同じく止め輪にて温調軸140に対し図中左端が規定されている。
【0084】
そしてスリーブ142-2と142-3との間に、感温動作部材としての形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばね146が介装され、その付勢力をスリーブ142-1に対して、即ち水側パイロット弁108に対し図中左向きに及ぼしている。
【0085】
またスリーブ142-4とスリーブ142-1との間に、詳しくは水側パイロット弁108との間に、コイルばねから成るバイアスばね148が介装され、その付勢力をスリーブ142-1に対して、即ち水側パイロット弁108に対して図中右向きに及ぼしている。
【0086】
以上の説明から明らかなように、この実施形態では水側パイロット弁108が温調軸140に対して図中左右方向の軸方向に相対移動可能な状態で温調軸140により保持されており、そしてこの水側パイロット弁108に対し、図中右側と左側とに配置された感温ばね146とバイアスばね148とがその付勢力を逆向きに及ぼしており、且つ感温ばね146とバイアスばね148とが合計の長さを一定に保持しつつ水側パイロット弁108とともに温調軸140と一緒に移動するように、それらが温調軸140に組み付けられ、全体としてパイロット弁ユニット150を構成している。
【0087】
この実施形態の湯水混合バルブでは、ハンドルの回転操作によって回転部120を回転させると、第1の進退部材124がねじ送りで図中左右方向に進退移動させられる。
そしてこの進退部材124の進退移動に伴って、第2の進退部材134が同方向に進退移動させられ、またこれによって温調軸140が左右方向に進退移動させられる。
【0088】
このとき、図7に示しているように水側パイロット弁108が一体に移動してパイロット流路112の開度を変化させ、これにより水側流調弁部92及び湯側流調弁部94を進退移動させて、それぞれの弁開度を互いに逆の関係で大小変化させる。
即ちハンドルによって回転部120が回転させられることによって、混合水温度が所望温度に設定される。
【0089】
そしてそのような操作によって水側温調弁部92,湯側温調弁部94を設定位置に位置させた状態で、混合室66内の混合水温度が設定温度に対して高くなったときには、感温ばね146が伸張して図中左向きの付勢力を高め、これにより水側温調弁部92の弁開度を大とする方向に、また湯側温調弁部94の弁開度を小とする方向に、それら水側温調弁部92,湯側温調弁部94の位置を水側パイロット弁108の移動を介して変化させ、混合水温度を設定温度に自動調節する。
【0090】
以上に示した本実施形態においても、図5に示しているように水側主弁76に弁機能をもたない差圧駆動部86と、差圧の影響を排除した流調弁部88とが設けられていることから、流路面積Aを2次側圧力の受圧面積S′に関り無く大きく取ることができ、従って水側主弁76を特に大径化しなくても、混合水流量を多く確保することができる。
或いは同一の混合水流量の下で水側主弁を小径化することができる。
【0091】
尚この実施形態のものは、見方を変えれば、水側主弁及び湯側主弁を共通の一体の主弁76として構成し、そしてその主弁76に水圧駆動の差圧駆動部86を設けるとともに、その主弁76に互いに逆向きをなす水側及び湯側の各弁部を水側流調弁部92,湯側流調弁部74として一体に構成したものと見ることもできる。
【0092】
上記の湯水混合バルブでは、水側主弁76に湯側主弁(湯側流調弁部94)を一体に構成し、そして水側主弁76を駆動弁として、これを水側パイロット弁108の移動に追従して移動させるようになしているが、水側主弁及び湯側主弁を一体移動する状態に設けるとともに、水側背圧室100に代えて湯側主弁の背後に湯側背圧室を形成し、そして湯流入口からの1次側の湯(熱水)を湯側背圧室に導入する湯側の導入小孔,湯側背圧室の湯を2次側に抜く湯側のパイロット流路を、それぞれ水側の導入小孔111,水側のパイロット流路112に代えて設け、湯側主弁を湯圧駆動の弁としてこれを湯側のパイロット弁の移動によりこれに追従して移動させ、そして水側主弁を流調弁部に水側流調弁部として一体に構成することも可能である。
【0093】
或いは水側主弁,湯側主弁をそれぞれ別体且つ独立して移動するように設けた上で、水側主弁の背後に水側背圧室を、湯側主弁の背後に湯側背圧室を、更にそれら水側背圧室,湯側背圧室の圧力を増減させる水側の導入小孔,湯側の導入小孔,水側のパイロット流路,湯側のパイロット流路をそれぞれ設けた上で、水側主弁及び湯側主弁のそれぞれに差圧駆動部及び流調弁部を設け、水側のパイロット弁と湯側のパイロット弁とを同期して軸方向に移動させることで、水側主弁と湯側主弁とを互いに逆の関係で弁開度を大小変化させるように構成するといったことも可能である。
【0094】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では主弁が何れもダイヤフラム弁から成っているが、これをピストン弁として構成することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 主水路
14 主弁座
16 主弁
22,80 仕切壁
28,78 中心軸部
30,82 嵌合孔
34,86 差圧駆動部
36,88 流調弁部
42 背圧室
44,111 導入小孔
46,112 パイロット流路
48 パイロット弁
72 水側主弁座
74 湯側主弁座
76 水側主弁
100 水側背圧室
108 水側パイロット弁
146 感温ばね
148 バイアスばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)主流路上に設けられ、主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる主弁と、(ロ)該主弁の背後に形成され、内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(ハ)該背圧室に連通し、前記主流路の前記主弁よりも上流側の1次側の液を該背圧室に導入して圧力上昇させる導入小孔と、(ニ)該背圧室に連通して設けられ、該背圧室の液を前記主流路の該主弁よりも下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜流路としてのパイロット流路と、(ホ)前記主弁の進退移動方向に進退移動し、前記パイロット流路の開度を変化させることによって該主弁を追従して同方向に進退移動させるパイロット弁と、を有し、前記背圧室の圧力と、該主弁に対して開弁方向に作用する1次側圧力及び2次側圧力との差圧に基づいて該主弁を進退移動させるようになしたパイロット式流量制御バルブにおいて、
前記主弁には、前記差圧を受けて主弁移動のための駆動力を発生させる弁機能をもたない差圧駆動部を設けるとともに、該差圧駆動部とは別途に、前記差圧の影響を排除し、該差圧駆動部の駆動力によって該差圧駆動部と一体に前記主弁座に向けて進退移動し、該主弁座との間の間隙を大小変化させて流量調節を行う弁機能部としての流調弁部を設けたことを特徴とするパイロット式流量制御バルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記差圧駆動部は軸部を有していて該軸部が、2次側空間を画成する仕切壁の嵌合孔に前記主弁の進退移動方向に液密且つ摺動可能に嵌合しているとともに、前記流調弁部は該2次側空間に設けてあって、前記2次側圧力を前進方向と後退方向との両方に同じ圧力で受けていることを特徴とするパイロット式流量制御バルブ。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記流調弁部及び前記主弁座は、前記差圧駆動部における前記2次側圧力の受圧面よりも大径となしてあることを特徴とするパイロット式流量制御バルブ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記制御バルブは単水栓用の制御バルブであることを特徴とするパイロット式流量制御バルブ。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記制御バルブは混合水栓用の湯水混合バルブであることを特徴とするパイロット式流量制御バルブ。
【請求項6】
請求項5において、前記制御バルブが、(a)弁開度を互い逆の関係で大小変化させる水側主弁及び湯側主弁と、(b)混合水温度に感応して軸方向に伸縮し、該混合水温度が設定温度よりも高くなったときに前記水側主弁を開き、前記湯側主弁を閉じる方向にそれら水側主弁及び湯側主弁を移動させる感温動作部材と、(c)該水側主弁及び湯側主弁に対し該感温動作部材による移動方向と逆方向の付勢力を作用させるばねと、を有し、前記水側及び湯側の各主弁の下流側の混合水温度を自動調節する自動温度調節機能付きの湯水混合バルブであって、
前記背圧室が、前記水側主弁又は/及び湯側主弁に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させるものとなしてあるとともに、該背圧室の圧力を受ける該水側主弁,湯側主弁の少なくとも一方の主弁に前記差圧駆動部と流調弁部とが設けてあり、
前記パイロット弁が該感温動作部材の伸縮動作により前記混合水温度に感応して進退移動し、前記背圧室の圧力を増減させることで前記水側主弁又は/及び湯側主弁を開閉方向に移動させ、前記混合水温度を自動調節するものとなしてあることを特徴とする混合水温度の制御バルブ。
【請求項7】
請求項6において、前記水側主弁と湯側主弁との一方の主弁が、対応して設けられた水側背圧室,湯側背圧室の一方の背圧室の圧力を受けて駆動される水圧駆動又は湯圧駆動の弁となしてあるとともに、それら水側主弁及び湯側主弁は一体に移動する弁となしてあり、
前記一方の主弁に、前記差圧駆動部と流調弁部とが設けてあるとともに、他方の主弁が該流調弁部に一体に構成してあることを特徴とする混合水温度の制御バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169131(P2010−169131A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10421(P2009−10421)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】