説明

パターン修正装置およびそれに用いられる塗布ユニット

【課題】10μm前後の細線で電極断線部などを修正することができ、かつ、欠陥部周辺の汚染が小さなパターン修正装置を提供する。
【解決手段】このパターン修正装置では、フィルム3に開けられた孔3aと電極2の欠陥部2aとを隙間Gを開けて対峙させ、修正ペースト10が付着した塗布針9先端の平坦面9aで孔3aを閉蓋するようにしてフィルム3を所定の面圧で基板1に押圧し、欠陥部2aに修正ペースト10を塗布した後、塗布針9を退避させてフィルム3の復元力でフィルム3を基板1から剥離させる。したがって、毛細管現象によって修正ペースト10がフィルム3と基板1の隙間に侵入することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパターン修正装置およびそれに用いられる塗布ユニットに関し、特に、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置およびそれに用いられる塗布ユニットに関する。より特定的には、この発明は、フラットパネルディスプレイの製造工程において発生する電極のオープン欠陥を修正するパターン修正装置およびそれに用いられる塗布ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの大型化、高精細化に伴い、ガラス基板上に形成された電極や液晶カラーフィルタなどに欠陥が存在する確率が高くなっており、歩留まりの向上を図るため欠陥を修正する方法が提案されている。
【0003】
たとえば、液晶ディスプレイのガラス基板の表面には電極が形成されている。この電極が断線している場合、塗布針先端に付着させた導電性の修正ペースト(修正液)を断線部に塗布し、電極の長さ方向に塗布位置をずらしながら複数回塗布して電極を修正する(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
また、欠陥部を覆うようにフィルムを設け、欠陥部とフィルムとをレーザ光を用いて略同時に除去し、除去した部分にフィルムをマスクとして修正インク(修正液)を塗布し、その後、フィルムを剥離除去する方法がある(たとえば特許文献2,3)。
【特許文献1】特開平8−292442号公報
【特許文献2】特開平11−125895号公報
【特許文献3】特開2005−95971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電極を修正する方法では、塗布針先端に導電性の修正ペーストを付着させ、断線部に修正ペーストを転写するため、その塗布径は先端部を平らに加工する面で決まり、10μm前後の塗布径を実現するのは困難であり、これを用いた細線形成も同様に難しかった。
【0006】
一方、フィルムをマスクとして使用する方法では、10μm前後の細線で電極断線部などを修正することが可能であるが、修正インクを孔に塗布した時点で、フィルムと基板との隙間に毛細管現象で修正インク、あるいはその溶媒が吸い込まれ、基板を汚染することも考えられる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、10μm前後の細線で電極断線部などを修正することができ、かつ、欠陥部周辺の汚染が小さなパターン修正装置およびそれに用いられる塗布ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るパターン修正装置は、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置において、フィルムにレーザ光を照射して欠陥部に応じた形状の孔を開けるレーザ照射手段と、孔の開口部を欠陥部に隙間を開けて対峙させる位置決め手段と、孔を含む所定範囲でフィルムを基板に押圧するとともに、孔を介して欠陥部に修正液を塗布する塗布手段と、塗布手段がフィルムを基板に押圧するときの面圧を所望の値に調整するための調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、調整手段は、塗布手段に交換可能に設けられた錘である。
また好ましくは、塗布手段は、先端に平坦面を有する塗布針と、塗布針の基端部が固定されるとともに錘が交換可能に設けられ、直動案内部材によって上下動可能に支持された固定部材と、固定部材の下端に当接され、固定部材を上下動させる駆動手段とを含み、修正液が付着した塗布針の平坦面でフィルムの孔を閉蓋するようにして、フィルムを基板に押圧するとともに孔を介して欠陥部に修正液を塗布する。
【0010】
また、この発明に係る塗布ユニットは、基板上に形成された微細パターンの欠陥部に修正液を塗布するための塗布ユニットにおいて、その底に孔が開口され、修正液が注入された容器と、容器の孔と略同じ径を有し、先端に平坦面が形成された塗布針と、塗布針を上下動可能に支持する直動案内部材と、塗布針を下方に移動させて塗布針の先端部を容器の孔から突出させ、塗布針の先端部に付着した修正液を欠陥部に塗布するための駆動手段と、修正液を欠陥部に塗布するときの塗布針の先端の面圧を所望の値に調整するための調整手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るパターン修正装置では、フィルムにレーザ光を照射して欠陥部に応じた形状の孔を開けるレーザ照射手段と、孔の開口部を欠陥部に隙間を開けて対峙させる位置決め手段と、孔を含む所定範囲でフィルムを基板に押圧するとともに、孔を介して欠陥部に修正液を塗布する塗布手段と、塗布手段がフィルムを基板に押圧するときの面圧を所望の値に調整するための調整手段とが設けられる。したがって、孔を開けたフィルムをマスクとして用いるので、10μm前後の細線で電極断線部などを修正することができる。また、修正液を欠陥部に塗布するときのみ所望の面圧でフィルムを基板に接触させるので、毛細管現象によって修正液がフィルムと基板の隙間に侵入することを防止することができ、修正液によって欠陥部周辺の基板が汚染されるのを防止することができる。
【0012】
また、この発明に係る塗布ユニットでは、その底に孔が開口され、修正液が注入された容器と、容器の孔と略同じ径を有し、先端に平坦面が形成された塗布針と、塗布針を上下動可能に支持する直動案内部材と、塗布針を下方に移動させて塗布針の先端部を容器の孔から突出させ、塗布針の先端部に付着した修正液を欠陥部に塗布するための駆動手段と、修正液を欠陥部に塗布するときの塗布針の先端の面圧を所望の値に調整するための調整手段とが設けられる。したがって、この塗布ユニットを使用すれば、上記パターン修正装置を容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態について説明する前に、この発明の基礎となるパターン修正方法について説明する。図1は、修正対象の基板1を示す図である。図1において、基板1上には微細パターンである電極2が形成され、電極2にはオープン欠陥部(断線欠陥部)2aが発生している。
【0014】
このパターン修正方法では、図2に示すように、欠陥部2aに応じた形状の孔3aの開いたフィルム3をマスクとして使用する。欠陥部2aに孔3aを位置合わせした状態で、フィルム3は基板1の上面に隙間Gを開けて対峙される。フィルム3は、たとえば薄膜のポリイミドフィルムであり、その幅はマスクとして使用するのに十分な幅であればよく、たとえば、5mm〜15mm程度にスリットしたロール状フィルムである。フィルム3の厚さFtは、その下が透けて見える程度のものが好ましく、たとえば10〜25μm程度である。
【0015】
図2に示すように、孔3aは、たとえば、短軸長がSwで長軸長がSlの長方形形状である。欠陥部2aの両端に位置する正常な電極面2bにも修正ペーストが塗布されるように、長軸長Slは欠陥部2aよりも長く設定される。これにより、修正部の抵抗値を低減するとともに、修正部の密着性を高めることができる。
【0016】
孔3aは、フィルム3の表面にレーザ光を照射することにより形成される。レーザとしては、YAG第3高調波レーザやYAG第4高調波レーザ、あるいはエキシマレーザなどのパルスレーザを用いる。たとえば、図3に示すように、レーザ部4は観察光学系5の上部に設けられ、観察光学系5の下端に対物レンズ6が設けられる。フィルム3は、2本の固定ローラ7により、対物レンズ6と基板1の間に張り渡される。レーザ光は、レーザ部4から観察光学系5および対物レンズ6を介してフィルム3に照射される。孔3aの形状および大きさは、たとえばレーザ部4に内蔵される可変スリット(図示せず)により決定され、孔3aは対物レンズ6で集光されたレーザ光の断面形状に加工される。このとき、レーザアブレーションにより発生する異物(ごみ)が基板1上に落下しないように、遮蔽板8をフィルム3と基板1の間に配置することが好ましい。
【0017】
このように、欠陥部2aにフィルム3が付着、あるいは密着した状態でレーザ光による孔3aの加工を行わないので、電極2や欠陥部2aの近傍をレーザパワーによって損傷することはない。また、フィルム3を浮かした状態で孔3aを開けるので、フィルム3の裏面に異物が付着することを抑制することができる。
【0018】
孔3aの形成が終了した時点では、孔3a周りのフィルム3上面には、孔3a部を除去(レーザアブレーション)した際に発生した異物(ごみ)が飛散しており、異物の除去のため、孔3aを中心としたその周りの広い範囲に弱いパワーでレーザ光を照射してもよい。このとき、レーザをYAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いレーザパワーで孔3aを中心とする広い範囲にレーザ光を照射すれば、異物のみを除去することも可能であり、新たに異物が発生することを防止することができる。なお、フィルム3を反転させる機構を設ければ、フィルム3の裏面も同様に処理することができる。レーザ部4としては、孔3aを開けるためのレーザ光と、異物を除去するためのレーザ光の2種類のレーザ光のうちのいずれかのレーザ光を選択的に出射できるものを使用するとよい。
【0019】
フィルム3は、図示しないフィルム供給リールから供給され、固定ローラ7を経由して図示しないフィルム巻き取りリールで回収される。フィルム3は、図示しないXYZステージにより、XYZ方向に移動可能とされる。XYZステージは、欠陥部2aと孔3aとの位置調整に使用される。
【0020】
次に、たとえば画像処理結果、あるいは、それぞれの位置座標データに基づいて基板1に対してフィルム3を相対的に移動させ、図2に示すように、欠陥部2aの上方にフィルム3の孔3aを位置決めしてフィルム3と基板1が隙間Gを開けて対峙した状態にする。この工程は手動で行なっても構わない。フィルム3は一定の張力によって張られた状態にある。隙間Gは、フィルム3を支持する支点(たとえば図3に示した固定ローラ7)の間隔やフィルム3の厚さによって異なるが、たとえば10〜1000μm程度に設定される。基板1の表面に凹凸がある場合、基板1に対峙したフィルム3が、基板1とは接触しない程度の隙間Gを保ってもよいし、孔3aを含む微小範囲が、欠陥部2aと接触しないような隙間Gを保つようにしてもよい。
【0021】
修正ペーストの塗布手段としては、たとえば、図4に示す塗布針9が用いられる。塗布針9の先端部は尖っているが、その先端は平坦に加工されている。塗布針9先端の平坦面9aの直径は、たとえば、30〜100μm程度であり、孔3aの大きさに合わせて最適な直径のものを選択して使用する。孔3aが平坦面9aにすべて収まるような塗布針9を選択して使用することが好ましい。このような塗布針9を用いれば、1回の塗布動作で孔3a全体に修正ペースト10を充填することができる。
【0022】
塗布針9先端の平坦面9aの周りに修正ペースト10が付着した状態で、平坦面9aで孔3aの開口部を閉蓋するようにして塗布針9を上方から押し付けると、フィルム3が変形して孔3aの周りの微小範囲のフィルム3が欠陥部2aの周囲に付着し、欠陥部2aに修正ペースト10が充填される。塗布針9は、図示しないガイド(直動軸受)上を上下に進退可能にしたものであり、塗布針9を含む可動部の自重のみでフィルム3を押す。塗布針9が下降してフィルム3に接触して、フィルム3を基板1に接触させた後もさらに下降させようとしても、塗布針9がガイドに沿って上方に退避するので、塗布針9の平坦面9aは過負荷とならない。塗布針9の駆動手段(図示せず)は、制御手段(図示せず)により、時間管理されて制御される。
【0023】
孔3aを含む微小範囲のフィルム3が欠陥部2aの周囲に接触する時間は、塗布針9がフィルム3を押している間だけであり、修正ペースト10がフィルム3と基板1(欠陥部2a近傍)との隙間に毛細管現象で流れる前に、塗布針9を上方に退避させる。塗布針9がフィルム3から離れれば、フィルム3の弾性で元の状態に戻り、孔3aを含む微小範囲のフィルム3は欠陥部2aの周囲から離れる。そのため、フィルム3が基板1に接触する時間は極わずかである。
【0024】
図5は、塗布針9を上方に退避させた状態を示し、フィルム3は基板1から離れた状態に復帰しており、欠陥部2aには、孔3aの形状と略同形状の修正層10Aが残る。また、余分に塗布された修正ペースト10はフィルム3の表面に残る。このように、フィルム3をマスクとして修正を行なうので、塗布針9による塗布形状よりも微細な修正層10A(パターン)を得ることが可能となる。
【0025】
塗布された修正ペースト10には、修正ペースト10の仕様に合わせて紫外線硬化、加熱硬化処理、あるいは乾燥処理が施される。図5の状態で硬化処理を行なってもよい。また、レーザ照射による熱分解反応で金属膜を析出する必要があれば、欠陥部2aの上方からフィルム3を除去した後で連続発振のレーザで硬化処理(金属膜析出処理)を行なってもよい。
【0026】
このような方法で欠陥部2aの修正を行えば、塗布された修正ペースト10が基板1とフィルム3との隙間に毛細管現象で吸い込まれることも無く、孔3aよりも広い範囲に渡って基板1を汚染する心配もなくなる。また、塗布が終了した時点で、フィルム3は欠陥部2aや基板1から完全に離れているため、その後の工程でフィルム3を除去する際には、フィルム3が修正層10Aに接触して修正層10Aを崩す心配がない。
【0027】
修正ペースト10の粘度が大きければ、基板1とフィルム3との隙間に毛細管現象で吸い込まれる可能性は低くなるが、逆に流動性が悪くなって、孔3a全体に入らないため、欠陥部2aに修正ペースト10が付着しないことも想定される。それに対して、前述の方法では、塗布時のみ孔3a近傍のフィルム3を基板1に押圧するので、毛細管現象の影響を最小限に留めることができる。したがって、修正ペースト10の粘度は小さくても構わない。
【0028】
また、1つの欠陥部2aを修正する際、1回の塗布で修正を完了する方が好ましい。その理由は、塗布回数が多くなると、孔3aに付着する修正ペースト10の量が多くなって、フィルム3と基板1との隙間に修正ペースト10が吸い込まれる、あるいは修正層10Aの形状が崩れる可能性も考えられるからである。一方、複数回同じ位置に塗布することで修正層10Aの膜厚を厚くすることもできるので、使用する修正ペースト10の仕様に合わせて塗布回数を決めることが望ましい。
【0029】
また、修正ペースト10としては、電極2の欠陥部2aを修正する場合、金、銀などの金属ナノ粒子を用いた金属ナノペーストや金属錯体溶液(たとえば、パラジウム錯体溶液)、金属コロイドを用いることができる。
【0030】
孔3aの大きさは、塗布針9の平坦面9aで孔3aの開口部全体を1回で押圧できる程度にすることが望ましく、たとえば、塗布針9の平坦面9aの径が50μmであれば、孔3aの長軸長Slは50μm以下となる。なお、孔3aの開口部の短軸長Swは、フィルム3の厚さFtとがFt>Swの関係を満たすようにすれば、孔3a内に入った修正ペースト10を孔3a内に留める力(付着力)F1が、フィルム3と基板1との隙間に作用する毛細管現象による吸引力F2よりも大きくなり、修正ペースト10がフィルム3と基板1との隙間に吸い込まれることを防止することができる。ただし、上記力F1,F2は修正ペースト10の表面張力や粘度、基板1やフィルム3の濡れ性に依存して変化するので、修正の安定性を増すためには、Ft/2>Swの関係を満たすようにする方がより好ましい。
【0031】
また、図6(a)は、塗布針9を用いて修正ペースト10を欠陥部2aに塗布する塗布ユニット11の要部を示す断面図である。図6(a)において、欠陥部2aとフィルム3が一定の隙間を持って対峙し、かつ欠陥部2aと孔3aとが位置合わせされた状態にあり、塗布ユニット11は、対物レンズ6の直下で、かつ、欠陥部2aの真上に挿入された状態にある。このとき、塗布ユニット11の挿入スペースを確保するため、対物レンズ6は低倍率のものに切り換えることが望ましい。たとえば、10倍の対物レンズ6の作動距離WDは30mm程度あるので、塗布ユニット11の高さを低く設計すれば、対物レンズ6とフィルム3の間に塗布ユニット11を容易に挿入することができる。
【0032】
塗布ユニット11は、その底に第1の孔12aが開口され、修正ペースト10が注入された容器12と、第2の孔13aが開口され、容器12を密封する蓋13と、第1および第2の孔12a,13aと略同じ径を有する塗布針9とを含む。塗布針9の先端の平坦面9aは、第2の孔13aを貫通して修正ペースト10内に浸漬される。第1および第2の孔12a,13aの径は、それらに貫通する塗布針9の径よりも少し大きいが微小であるので、修正ペースト10の表面張力や容器12の撥水・撥油性により、第1の孔12aからの修正ペースト10の漏れはほとんど無い。
【0033】
容器12に形成され、修正ペースト10を注入するための穴は、孔12aに近づくに従って断面積が小さくなるテーパ形状を有する。したがって、修正ペースト10が少ない場合でも塗布針9の平坦面9aを含む先端部を浸漬することができ、経済的である。修正ペースト10の量は、たとえば20μl(マイクロリットル)である。修正ペースト10は日持ちしないものもあり、容器12は定期的に交換する。あるいは、使用済み容器12を洗浄後、再利用することも可能である。容器12を手でつかみ易い構造とし、かつ、磁石の吸引力を利用して容器12を着脱自在に支持すれば、容器12の着脱が簡単になり、使い勝手が向上する。
【0034】
塗布針9の基端部は塗布針固定板14に固着され、塗布針固定板14は図示しないガイド(直動案内部材)により上下動可能なように支持される。この状態から、図6(b)に示すように、塗布針9の平坦面9aを容器12の底面に設けた第1の孔12aから突出させると、塗布針9の平坦面9aには修正液10が付着する。さらに塗布針9を下降させると、平坦面9aで孔3aの開口部を閉蓋するようにフィルム3上を押圧するので、フィルム3が変形して孔3aの周りの微小範囲のフィルム3が欠陥部2aの周囲に付着し、欠陥部2aに修正ペースト10が充填される。塗布針9は、図示しないガイド(直動案内部材)によって上下に進退可能に支持されており、塗布針9を含む可動部の自重のみでフィルム3を押す。塗布針9が下降してフィルム3を基板1に接触した後もさらに下降させようとしても、塗布針9がガイドに沿って上方に退避するので、塗布針9の平坦面9aは過負荷とならない。塗布針9の駆動手段(図示せず)は、制御手段(図示せず)により、時間管理されて制御される。
【0035】
この塗布ユニット11を用いれば、塗布針9を欠陥部2aと容器(インクタンクまたはペーストタンク)との間を往復動させる工程が省略されるため、欠陥修正に要する時間が短縮される。
【0036】
また、修正ペースト10は孔12a,13aを除いて密閉された容器12内に入っており、塗布針9は容器12の蓋13の孔13aに微小な隙間を持って常に挿入された状態にあるため、修正ペースト10が大気に直接触れる面積は少ない。したがって、修正ペースト10の希釈液(溶媒)の蒸発を防止することができ、修正ペースト10の使用可能な日数(交換周期)を長くすることが可能となり、パターン修正装置の保守が軽減化される。
【0037】
また、塗布動作の待機状態において塗布針9の平坦面9aを修正ペースト10の中に浸けているため、塗布針9の平坦面9aに付着した修正ペースト10の乾燥を防ぐことができ、塗布針9の平坦面9aを含む先端部の洗浄工程も省略可能となる。
【0038】
このように、塗布ユニット11を小型にできるので、平坦面9aの径が異なる複数の塗布ユニット11を用意しておき、欠陥部2aの大きさに応じて塗布針9を選択して使用することも可能である。
【0039】
ここまでは、本願発明の基礎となるパターン修正方法の内容である。ここで、孔3aの長軸が100μmのように長い場合には、孔3aの長さ方向に塗布針9を移動させながら、複数回に分けて塗布ペースト10を塗布することも考えられるが、上述の理由により、塗布針9の平坦面9aの径が大きなもの、この場合には100μm以上の径を持つ塗布針9を用いて、1回で塗布することが好ましい。
【0040】
図7(a)(b)は、基板1上に配置されたフィルム3を上方から見た図である。図7(a)(b)において、2点鎖線は塗布針9の平坦面9aの大きさを示している。図7(a)に比べて図7(b)の方が欠陥部2aは長く、孔3aも長い。このため、図7(a)に比べて図7(b)の方が平坦面9aが大きな塗布針9を使用している。
【0041】
しかしながら、塗布針9の平坦面9aの面積が大きくなると、同じ塗布手段を使っていれば塗布面圧が低下し、平坦面9aがフィルム3を基板1に押し付ける圧力が弱くなる。上述の塗布ユニット11を用いた場合の塗布面圧は、フィルム3に与えられた張力の影響が無いと仮定した場合、塗布針9を含めて上下に可動する可動部材の自重と、塗布針9の平坦面9aの面積で決定される。ここで、可動部材の自重が同じ場合、平坦面9aの径が大きいほど塗布面圧は低下する。たとえば、直径50μmの平坦面9aを持つ塗布針9から、直径100μmの平坦面9aを持つ塗布針9に変更すると、平坦面の面積は4倍になるので、面圧は1/4に低下する。
【0042】
また、欠陥部2aに凹凸があれば、押圧している部分のフィルム3と基板1との間に隙間が生じ易くなる。また、フィルム3の張力が高く設定されている場合は、塗布針9とともに上下に可動する部材全体の重量をフィルム3が支えるため、フィルム3が下方に変位する量が抑えられて、塗布針9の平坦面9aがフィルム3を基板1に押し付ける圧力が弱まり、フィルム3と基板1の密着性が低下する。これらの場合には、修正ペースト10がフィルム3と基板1との間に吸い込まれ、修正層2Aの描画パターンが膨らむ。
【0043】
図8(a)は塗布面圧が適正な場合の修正層10Aを示す図であり、この場合、電極2と略同じ幅の修正層10Aが得られる。図8(b)は塗布面圧が低下した場合の修正層10Aを示す図であり、この場合、使用する修正ペースト10の種類や粘度によって異なるが、パターン2の幅よりも大きくはみ出した修正層10Aが得られる。
【0044】
このように、平坦面9aが大きな塗布針9を使用したり、フィルム3の張力を増したりすると、塗布面圧が低下してフィルム3と基板1との密着性が悪くなる部分が生じ、修正ペースト10がフィルム3と基板1の隙間に吸い込まれ、描画形状が崩れる。そこで、本願発明では、使用する塗布針9先端の平坦面9aの面積、あるいはフィルム3の張力に応じて、塗布面圧を最適値に調整するための調整手段を設ける。調整手段は、具体的には、塗布針9と一緒に可動する部材に交換可能に取り付けられる錘である。
【0045】
図9は、この発明の一実施の形態によるパターン修正装置の要部を示す断面図である。図9において、このパターン修正装置では、塗布針9とともに上下に可動する可動部材、ここでは塗布針固定板14に塗布面圧を調整するための錘15が交換可能に固定される。塗布針固定板14に錘15を交換可能に固定する方法としては、ネジで固定する方法、磁石で固定する方法などがあるが、固定方法はこれらに限定されるものではない。また、錘15としては、塗布針9の平坦面9aの大きさに応じて、適正な面圧が得られるような重量のものが選択される。錘15の重量を微調整できるように、錘15を複数に分割できるようにしてもよい。
【0046】
なお、塗布針9を含む可動部材の自重を、張力を与えられたフィルム3が受ける場合には、その分を考慮して錘15の重量を大きく設定することが好ましい。また、塗布面圧を変える場合、塗布針9を固定する塗布針固定板14の重量(形状、体積)や材質を変えることも可能であるが、この場合には、適切な塗布面圧になるように、複数の塗布針固定板14を用意しておき、選択して使用することが必要となり、経済的とは言えない。
【0047】
図10は、塗布ユニット11の全体構成を示す断面図である。図10において、支持台20に直動案内部材21が設けられ、直動案内部材21のスライド部には、L字形状のアーム22の基端部が固定される。アーム22は、直動案内部材21によって上下動可能に支持される。また、アーム22の基端部には、塗布面圧を調整するための錘15が交換可能に固定される。
【0048】
塗布針9の基端部は塗布針固定板14に固着され、塗布針固定板14はアーム22の先端部22aに取り付けられる。支持台20を介してアーム22の反対側には、出力軸23aを下向きにしてエアシリンダ23が配置される。エアシリンダ23の出力軸23aの先端には、先端にピン24aを固着した駆動板24が水平に固定され、出力軸23aと一体となって上下動する。ピン24aは、アーム22の基端部に設けた切り欠き部に下方から当接していて、エアシリンダ23の出力軸23aの上下動に応じてアーム22を上下に移動させる機能を持つ。
【0049】
直動案内部材21の上下には、支持台20に固定されたストッパ25,26が設けられ、アーム22の上下動はストッパ25,26により制限される。なお、直動案内部材21にストッパ機能が内蔵されていれば、ストッパ25,26は無くてもよい。
【0050】
アーム22の先端部22aの上面と、塗布針固定板14の下面にはそれぞれ磁石27,28が埋設固着されており、それらは互いに異なる極性で向かい合うように配置され、磁石27と28の位置は完全に重ならないようにお互いに少しずらしてある。磁石27,28の吸引力により、アーム22の先端部22aに設けた2辺の突き当て部(図示せず)に押し付ける方向に塗布針固定板14が吸引されて位置固定される。エアシリンダ23の出力軸23aが上下動すると、アーム22を介して塗布針固定板14が上下に移動し、それに合わせて塗布針9が上下に移動する。
【0051】
この塗布ユニット11は、修正ペースト10を入れた容器12を、塗布針9に対して相対的に上下動させる機構を備えたものである。容器12は、L字形状のアーム29の先端部29aに固定される。アーム29の先端部29aの下面には磁石30が埋設固着され、修正ペースト10を注入した容器12は、容器12に固着されたピン31が磁石30に吸引されることでアーム29に固定される。アーム29の基端部は直動案内部材32を介してアーム22に結合される。アーム29は、直動案内部材32により、アーム22に対して相対的に上下動可能に保持される。
【0052】
アーム22とアーム29の上下方向の相対移動量は、アーム22に固定支持されたピン33と、アーム29に設けた切り欠き孔29bにより限定される。すなわち、相対移動範囲は、ピン33が切り欠き孔29bの中を移動可能な範囲となるため、直動案内部材32に抜け防止のためのストッパを設けなくてもよい。直動案内部材21の下側のストッパ26は、アーム29の動作範囲を制限するストッパを兼ねている。
【0053】
図10では、エアシリンダ23の出力軸23aが上方にあり(この例では出力軸23aが引き込まれた状態)、アーム22は上端に位置し、アーム29は、ピン33に吊り下がる状態、すなわち、切り欠き孔29bの上端とピン33が接する状態にある。このとき、塗布針9の平坦面9aを含む先端部は、容器12に入れた修正ペースト10に浸漬された状態にある。
【0054】
ここで塗布指令が与えられると、図6(a)に示すように塗布ユニット11の先端部が対物レンズ6とフィルム3との隙間に挿入され、塗布針9の直下に孔3aおよび欠陥部2aが位置するように位置決めされる。次に、エアシリンダ23の出力軸23aを下方に突出させる。エアシリンダ23の出力軸23aが下方に突出すると、出力軸23aに固定された駆動板24、および、駆動板24の先端に固着したピン24aも一緒に下方に移動するので、ピン24aによって支えられたアーム22もそれに合わせて下方に移動する。また、アーム22に固着したピン33に吊り下げられた状態でアーム29もそれに合わせて下方に移動するが、始めの間は、2つのアーム22,29の上下方向の相対位置は変化しない。
【0055】
アーム29の基端部の下端がストッパ26に当接すると、アーム29の下降が停止され、その後は、アーム22のみが下降する。アーム22のみが下降すると、アーム22に固定された塗布針9の先端は、容器12の底面に設けた第1の孔12aから突出を開始し、その突出は、アーム22の基端部の下端がストッパ26に当接することで停止する。この状態では、塗布針9の先端の平坦面9aに修正ペースト10が付着しており、塗布の準備が完了する。その後、図示しないZステージを用いて塗布ユニット11全体を下降させ、図6(b)に示したように、塗布針9の先端をフィルム3を介して欠陥部2aに押圧させる。これにより、塗布針9の先端の平坦面9aに付着していた修正ペースト10が欠陥部2aに塗布される。
【0056】
塗布針9の先端の平坦面9aがフィルム3を介して欠陥部2aに接触してから、さらに、塗布ユニット11を0.5mmから1mm程度下方に移動させるが、この際、塗布針9は、直動案内部材21によりアーム22とともに上方に退避するので、塗布針9に過大な力は働かない。塗布後、エアシリンダ23の出力軸23aを上方に引き込んで元の状態に戻り、1回の塗布が完了する。
【0057】
このときの塗布面圧は、塗布針9とともに上下に移動する部材、すなわち塗布針9、塗布針固定板14、アーム22、磁石27,28、直動案内部材32の案内部、ピン33、錘15の総重量を塗布針9先端の平坦面9aの面積で割ったものになる。なお、塗布針9とともに上下動する部材に錘15を固定できれば、錘15の固定位置は問わない。
【0058】
このように、錘15により塗布面圧を適正値に調整することで、塗布針9の平坦面9aの径が大きなものを使用した場合であっても、面圧が低下してフィルム3と基板1との密着性が悪くなることを防止することが可能となり、修正ペースト10がフィルム3と基板1の隙間に吸い込まれて描画形状を崩すことを抑制することができる。
【0059】
また、修正部のパターンに凹凸部があるような場合、たとえば、複数の電極2が互いに交差して積層されている場合には、フィルム3を基板1に密着させることが難しくなるが、塗布面圧を高めて密着性を向上させることにより、フィルム3と基板1の隙間に修正ペースト10が吸い込まれることを防止することができる。
【0060】
今まで説明してきた方法は、細線パターンを容易に、かつ、安定して形成することができるため、たとえば、液晶パネルのTFT(薄膜トランジスタ)パネルの電極修正のように、10μm以下のパターン形成が必要な場合に適用可能である。また、電極以外では、液晶カラーフィルタのブラックマトリックスは高精細化に伴い線幅が20μmを切っており、この修正にも適用可能である。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】修正対象の基板を示す図である。
【図2】この発明の基礎となるパターン修正方法を示す図である。
【図3】図2に示したフィルムに孔を開ける方法を示す断面図である。
【図4】図2で示した欠陥部に修正ペーストを塗布する方法を示す断面図である。
【図5】図4に示した塗布針を上方に退避させた状態を示す断面図である。
【図6】図4に示した塗布針を含む塗布ユニットの構成を示す断面図である。
【図7】図1〜図6に示したパターン修正方法の問題点を説明するための図である。
【図8】図1〜図6に示したパターン修正方法の問題点を説明するための他の図である。
【図9】この発明の一実施の形態によるパターン修正装置の要部を示す断面図である。
【図10】図9に示した塗布ユニットの全体構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基板、2 電極、2a オープン欠陥部、2b 電極面、3 フィルム、3a 孔、4 レーザ部、5 観察光学系、6 対物レンズ、7 固定ローラ、8 遮蔽板、9 塗布針、9a 平坦面、10 修正ペースト、10A 修正層、11 塗布ユニット、12 容器、12a 第1の孔、13 蓋、13a 第2の孔、14 塗布針固定板、15 錘、20 支持台、21,32 直動案内部材、22 アーム、22a 先端部、23 エアシリンダ、23a 出力軸、24 駆動板、24a ピン、25,26 ストッパ、27,28,30 磁石、29 アーム、29a 先端部、33 ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置において、
フィルムにレーザ光を照射して前記欠陥部に応じた形状の孔を開けるレーザ照射手段と、
前記孔の開口部を前記欠陥部に隙間を開けて対峙させる位置決め手段と、
前記孔を含む所定範囲で前記フィルムを前記基板に押圧するとともに、前記孔を介して前記欠陥部に修正液を塗布する塗布手段と、
前記塗布手段が前記フィルムを前記基板に押圧するときの面圧を所望の値に調整するための調整手段とを備えたことを特徴とする、パターン修正装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記塗布手段に交換可能に設けられた錘であることを特徴とする、請求項1に記載のパターン修正装置。
【請求項3】
前記塗布手段は、
先端に平坦面を有する塗布針と、
前記塗布針の基端部が固定されるとともに前記錘が交換可能に設けられ、直動案内部材によって上下動可能に支持された固定部材と、
前記固定部材の下端に当接され、前記固定部材を上下動させる駆動手段とを含み、
前記修正液が付着した前記塗布針の前記平坦面で前記フィルムの孔を閉蓋するようにして、前記フィルムを前記基板に押圧するとともに前記孔を介して前記欠陥部に前記修正液を塗布することを特徴とする、請求項2に記載のパターン修正装置。
【請求項4】
基板上に形成された微細パターンの欠陥部に修正液を塗布するための塗布ユニットにおいて、
その底に孔が開口され、前記修正液が注入された容器と、
前記容器の孔と略同じ径を有し、先端に平坦面が形成された塗布針と、
前記塗布針を上下動可能に支持する直動案内部材と、
前記塗布針を下方に移動させて前記塗布針の先端部を前記容器の孔から突出させ、前記塗布針の先端部に付着した前記修正液を前記欠陥部に塗布するための駆動手段と、
前記修正液を前記欠陥部に塗布するときの前記塗布針の先端の面圧を所望の値に調整するための調整手段とを備えたことを特徴とする、塗布ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−192901(P2008−192901A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26798(P2007−26798)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】