説明

パターン形成方法

【課題】ブロックコポリマーの自己組織化より形成されるエッチングマスクを用いた微細加工技術において、十分なエッチング耐性と高いアスペクト比の双方を有し、しかも自己組織化により形成されるパターンを被加工物に対して忠実かつ簡便な工程で転写することができるパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】ブロックコポリマー、ケイ素化合物、およびこれらの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物を被加工体上に塗布することによって、該被加工体上に前記組成物層を形成し、前記組成物層において、前記ブロックコポリマーの自己組織化により、前記ケイ素化合物が偏在したエッチング耐性を有する相と、ポリマー相からなるエッチング耐性の低い相にミクロ相分離を生じさせることによって、微細パターンが形成されたパターン層を形成し、前記微細パターンが形成されたパターン層をマスクとして、前記被加工体をエッチング加工することを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンを形成する方法に関し、特に、周期的な配列構造を有するパターンを微細加工する方法であって、ブロックコポリマーの自己組織的な相分離構造を利用するパターン形成方法に関するものである。
【0002】
本発明によるパターン形成方法は、例えば、高密度記録媒体や高集積化電子部品などの製造に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0003】
近年におけるパーソナルコンピュータなどの情報機器の飛躍的な機能向上は、半導体装置の製造などに用いられる微細加工技術の進歩によるところが極めて大きい。これまで、加工寸法の微細化は、リソグラフィーに用いられる露光光源の短波長化によって専ら進められてきた。しかし、加工寸法が微細化し、パターンが高密度化するほど、製造工程におけるリソグラフィーのコストは膨大なものになってきている。次世代の半導体装置、あるいはパターンド・メディア(patterned media)などの微細加工を施した高密度記録媒体においてはパターンの寸法を100nm以下にまで微細化することが要求されている。このための露光光源としては、電子線などが用いられるようになると考えられるが、加工のスループットの点において大きな課題が残されている。
【0004】
このような状況を背景として、より安価で、しかも高いスループットを実現できる加工方法として、材料が自己組織的に特定の規則配列パターンを形成する現象を利用する方法が提案されている。その中でも特に、「ブロックコポリマー」を利用する方法によれば、ブロックコポリマーを適当な溶媒に溶解した溶液を被加工体上に塗布する簡便な工程によって単層の規則配列したパターンを形成することが可能であり、微細加工方法としての応用も報告されている(たとえば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0005】
これらの方法では、ブロックコポリマーの相分離構造の一つのポリマー相をオゾン処理、プラズマエッチング、電子線照射などにより除去して凹凸状のパターンを形成し、この凹凸状パターンをマスクとして下地基板の加工を行うことが提案されている。
【0006】
しかし、一般的にブロックコポリマーの相分離構造の膜厚方向のサイズは基板上に2次元方向に形成されるパターンのサイズと同じ程度かそれ以下しかないため、マスクとして形成されるパターンのエッチング耐性を十分に確保することが困難である。したがって、このようなブロックコポリマーマスクの相分離構造をそのままエッチングマスクとして用いて被加工体をエッチングした場合、十分にアスペクト比の高い構造を加工することができない。
【0007】
このような問題を解決するために、ブロックコポリマーの自己組織化パターンをブロックコポリマーの下層に設けたパターントランスファー膜にプラズマエッチングなどによって一旦転写し、そのパターントランスファー膜をエッチングマスクとしてさらに下層の厚膜のレジスト膜を酸素プラズマによりエッチングすることにより、下地のレジスト膜に高いアスペクト比のパターンを転写する方法も提案されている(特許文献1および非特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、この方法でも、ブロックコポリマーからパターントランスファー膜への転写の際には高いアスペクト比が得られないことが原因で、パターンを忠実に転写することが困難な場合がある。エッチングのアスペクト比が十分でないということはブロックコポリマー膜には膜厚分布や自己組織化パターンの微小なムラがパターントランスファー膜へのエッチング深さのばらつきとして強調されてパターントランスファー膜に転写されることになる。これは、極端な場合には下地のレジスト膜でのパターンの一部消失にもなりかねない。
【0009】
かかる欠点の解決策として、エッチングアスペクト比の異なるジブロックコポリマーのエッチング選択比の増幅方法が提案されているが(特許文献2参照)、この方法は、ジブロックコポリマーの一方の成分をプラズマエッチングで凹みとし、そこへケイ素化合物などのエッチング耐性の高い成分をスピンコート塗布により埋め込み再度のプラズマエッチングによりパターンを下層膜へ転写するというもので、工程が煩雑化するという問題がある。
【0010】
一方、自己組織化を利用する場合は、その規則配列の配列方向を制御することも重要である。磁気記録媒体の高密度化を実現するものとして期待されているパターンド・メディアの場合、再生や記録に際しては、パターニングされた磁性体粒子の一つ一つにアクセスする必要がある。この場合、再生ヘッドを記録列にトラッキングするためには、磁性体粒子の配列を一方向に揃える必要がある。
【0011】
さらに、単一電子などを情報として扱う量子効果デバイスのような電子素子は、現在の半導体デバイスをより高密度化および低消費電力化する可能性を有するものとして期待されている。この場合も、量子効果を発現する構造に対して、信号検出のための電極を配置する必要がある 従って、量子効果を発現する微細構造は、所定の配列を有すると同時に、形成されている領域も任意に制御できることが必要とされる。
【0012】
ブロックコポリマーの自己組織化の配列方向を制御するために、基板上に溝構造を形成しておきそれをガイドにして粒子の配列方向を揃える方法が提案されている(非特許文献4参照)。これらの方法では、ジブロックコポリマーの配列方向を揃えることは可能であるが、前述したとおり、やはり、ジブロックブロックの相分離構造のアスペクト比自体は依然として低いためエッチングにより十分アスペクト比の高いパターンを形成することは不可能である。また、ジブロックコポリマーをある任意の領域にのみ堆積させる方法は今のところない。
【0013】
また、特定のブロックコポリマーの自己組織化現象を利用して微細パターンを形成する技術に関する研究もなされている(非特許文献5参照)。しかし、これらの研究において提案されている方法においても相溶性の問題については解決すべき多くの課題があり、安定的に高品質の微細パターンを形成する方法については有効なものとはいえない。
【特許文献1】特開2001−151834号公報
【特許文献2】特開2003−155365号公報
【非特許文献1】P.Manskyら; Appl. Phys. Lett., vol.68、p.2586
【非特許文献2】M.Parkら; Science, vol.276、p.1401
【非特許文献3】M.Parkら; Appl. Phys. Lett. vol.79 p.257
【非特許文献4】R.A. Segalmanら; Bulletin of the American Physical Society, Vol.45, No.1, p.559、同 vol.46, No.1, p.1000、M.Trawickら;同 vol.46, No.1, p.1000
【非特許文献5】Erik M. Freerら; Nano Letters, 2005, Vol.5, No. 10, p.2014-2018
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ブロックコポリマーの自己組織化より形成されるエッチングマスクを用いた微細加工技術において、十分なエッチング耐性と高いアスペクト比の双方を有し、しかも自己組織化により形成されるパターンを被加工物に対して忠実かつ簡便な工程で転写することができるパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明に係るパターン形成方法は、ブロックコポリマー、ケイ素化合物、およびこれらの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物を被加工体上に塗布することによって、該被加工体上に前記組成物層を形成し、前記組成物層において、前記ブロックコポリマーの自己組織化により、前記ケイ素化合物が偏在したエッチング耐性を有する相と、ポリマー相を含むエッチング耐性の低い相に相分離を生じさせることによって、微細パターンが形成されたパターン層を形成し、前記微細パターンが形成されたパターン層をマスクとして、前記被加工体をエッチング加工することを特徴とする。
【0016】
本発明は上記の態様の他に、上記の方法によって得られたパターン形成物を包含する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るパターン形成方法においては、ブロックコポリマー、ケイ素化合物、およびこれらの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物層において、ブロックコポリマーの自己組織化により、ケイ素化合物が偏在したエッチング耐性を有する相と、ポリマー相からなるエッチング耐性の低い相にミクロ相分離を生じさせることによって微細パターンが形成するようにしたので、高いアスペクト比の微細マスクパターンを簡便な工程によって迅速に形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るパターン形成方法は、ブロックコポリマー、ケイ素化合物、およびこれらの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物を被加工体上に塗布することによって、該被加工体上に前記組成物層を形成し、前記組成物層において、前記ブロックコポリマーの自己組織化により、前記ケイ素化合物が偏在したエッチング耐性を有する相と、ポリマー相からなるエッチング耐性の低い相にミクロ相分離を生じさせることによって、微細パターンが形成されたパターン層を形成し、前記微細パターンが形成されたパターン層をマスクとして、前記被加工体をエッチング加工することを特徴としている。
【0019】
以下、本発明に係るパターン形成方法を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の方法の実施態様に係る工程断面図である。
【0021】
まず、同図(a)に表したように、被加工体1の上に第1のレジスト層としてブロックコポリマー層2を形成する。このブロックコポリマー層2は、ブロックコポリマー、ケイ素化合物、およびこれらの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物を被加工体上に塗布することによって形成される。
【0022】
上記のブロックコポリマーとしては、自己組織的相分離化性能を有するコポリマーが用いられ、好ましくは、少なくともポリエチレンオキサイドをコポリマー成分として含むものであることが特に好ましい。
【0023】
具体的には、好ましい例として、2種類のポリマー鎖AとBとが結合したA−B型の「ジブロックコポリマー」を挙げることができる。このようなA−B型のジブロックコポリマーとしては、ポリスチレン−ポリイソブテン、ポリスチレン−イソプレン、ポリジメチルシロキサン−ポリイソブテン、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド、ポリスチレン−ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリ(シアノビフェニルオキシ)ヘキシルメタクリレート、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン−ポリメタクリル酸、ポリエチレンオキシド−ポリビニルピリジン、ポリスチレン−ポリビニルピリジン、ポリイソプレ−ポリヒドロキシスチレン、などが好適に使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
さらに、本発明においては、2種類のポリマー鎖がA−B−A型に結合したものや、3種類のポリマー鎖がA−B−C型に結合した「トリブロックコポリマー」を用いることもできる。
【0025】
上記の2種類のポリマー鎖がA−B−A型に結合したコポリマーとしては、上記のA−B型のジブロックコポリマーの一方成分が他方成分の末端にさらに結合した構造が挙げられる。
【0026】
さらに、上記の3種類のポリマー鎖がA−B−C型に結合したトリブロックコポリマーとしては、A−B型、A−B−A型のブロックコポリマーを構成する成分から選択される3種の組み合わせが挙げられ、例えば、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、ポリヒドロキシスチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどから選択されるポリマーなどが好適に用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
【0027】
次に、ケイ素化合物としては、本発明の方法を実現し得るものである限り特に限定されるものではないが、一般的に、シロキサン結合を有するシロキサン化合物もしくはその誘導体が好適に用いられ得る。さらに具体的には、本発明に好適なケイ素化合物としては、上記のブロックコポリマーの一つの成分のみと親和性であるか、あるいは、前記ブロックコポリマーが、第1の成分と第2の成分の少なくとも2つの成分を有し、前記第1の成分と前記ケイ素化合物とが親和性であり、かつ、前記第2の成分と前記ケイ素化合物とが非親和性であるものが好ましく用いられる。ブロックコポリマーの全成分と親和性を有するケイ素化合物を用いた場合は、ブロックコポリマーの相分離においてケイ素化合物の一方の相のみへの偏在が期待できず、また、良溶媒として共通の溶媒が適用できないばあい、膜形成時に一方成分のみが析出するなどの不都合が生ずることに留意すべきである。
【0028】
具体的なケイ素化合物としては、溶液中または塗布後の安定性、ブロックコポリマーとの相溶性などを考慮すると、下記一般式(1)〜(4)に示す構造を有するのケイ素化合物が好ましく用いられ得る。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0029】
これら例示したシリケート類、ハイドロジェンシロキサン、メチルシロキサン、などの有機または無機系のケイ素含有化合物が好ましく用いられる。なお、ハイドロジェンシルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサンなども他の成分との好適な組み合わせによっては適用可能ではあるが、本発明者の知見によれば、これらのケイ素化合物は、ブロックコポリマー混合液とした際に凝集物が生じやすく、このため保存安定性、成膜後の膜質安定性の点で問題がある。
【0030】
上記ケイ素化合物ならびにブロックコポリマーは、それぞれの成分に適合した溶媒に溶解して組成物を調製する。使用する溶媒としては、上記ブロックコポリマーおよびケイ素化合物を溶解させる溶媒が用いられる。具体的には、エチレングリコール構造を含むエーテル、好ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒が好ましく用いられ得る。溶媒の好ましい具体例としては、例えば、MIBK、アセトンなどのケトン類、メタノールエタノール、IPAなどのアルコール類、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのエーテル誘導体などが挙げられる。
【0031】
特に、上記のケイ素含有化合物の担体として望ましいポリエチレンオキサイドのブロックコポリマーを用いる場合にあっては、少なくとも1種の溶媒としてエチレンオキサイド誘導体が含まれていることが望ましい。エチレンオキサイド誘導体としては、溶媒沸点などの観点より、上述したジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが望ましい。
【0032】
上記各成分からなる組成物において、ポリマーとケイ素化合物からなる固形成分の含有量としては、組成物全体に対して0.5〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは、1〜10重量%である。
【0033】
また、上記ケイ素化合物の含有量としては、混合するポリマーの組成比にも依るが、ポリマー成分に対して1〜1000重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜500重量%、特に好ましくは、50〜300重量%である。
【0034】
図1(a)に示すように、上記の調製された組成物を被加工体1上に適当な手段で塗布し、必要に応じて、溶媒雰囲気または適当な温度でアニ−ル処理を行うことによって、ポリマー相2Aとポリマー相2Bとに相分離して規則配列構造が形成される。なお、この場合において、分子量の比較的小さいブロックコポリマーの場合、基板への塗布後溶媒が揮発していく過程で規則配列構造が形成される場合もある。ここに示した例においては、相分離構造が1層である構造を示しており、これは膜厚を調製することにより形成可能である。図1(a)では、ポリマー相2Aをマトリックスとし、ポリマー相2A中にポリマー相2Bが2次元的に規則配列した構造を形成する。このとき、2A相または2B相のいずれか一方のみケイ素化合物が偏在化した状態となる。このような規則配列構造を構成するポリマー相2および2Bの形状およびサイズは、ブロックコポリマーを構成する各ブッロクのポリマー鎖(A、BおよびC)の長さおよび、添加するケイ素化合物の量に依存し、これらを調整することによって、例えば100nm程度あるいはそれ以下の微細なサイズに制御することができる。
【0035】
また、本発明においては、図1(b)に示すように、上記ポリマー相のうちでエッチング耐性の低い相(ケイ素化合物が偏在していない相)を、加熱処理または/および酸素プラズマ処理によって除去することもでき、このようなポリマー相の有機成分を選択的に除去するためには、プラズマ、光、電子線などのエネルギー線や熱などを照射すればよい。
【0036】
通常の有機成分であれば、例えば、200〜450℃で加熱すれば分解、気化により除去可能であり、また、酸素プラズマ処理による選択的な除去も可能である。このような加熱、酸化処理において、ポリマー相AまたはBに偏在したケイ素含有化合物は、図1(c)に示すように、架橋反応により微細構造を保持した膜構造を形成することになる。図1(b)に示す例においては、2A相にケイ素化合物が偏在した状態(すなわち、2A相がエッチング耐性を有する相)を示す。
【0037】
このようにして、サイズ100nm以下の規則配列パターンの相分離構造を有するブロックコポリマー膜の少なくとも一つのポリマー相2Bを選択的に除去することにより、凹部3が規則的に配列したレジスト層(ポリマー相)2Aを形成することができる(図1(c))。
【0038】
次に、このようにして形成されたマスクパターンを用いて、図1(d)および図1(e)に示すように、被加工体1を直接エッチングすることにより、高いアスペクト比で被加工体1に微細パターンを形成することができる。なお、被加工体1に残存しているポリマー相2Aは適当な手段により除去し得る。
【0039】
図2に示す例は、予めエッチングマスクとなるレジスト層のパターンを被加工体に形成する場合の態様を示すものである。
【0040】
すなわち、図2に示す実施態様においては、まず(a)に示すように、予めエッチングマスクとなるレジスト層20の凹凸パターンを被加工体1上に形成する。次いで、レジスト層20の凹部に前記図1の場合と同様の方法で塗工組成物を被加工体1上に適当な手段で塗布し、必要に応じて、溶媒雰囲気または適当な温度でアニ−ル処理を行うことによって、ポリマー相2Aとポリマー相2Bとに相分離して規則配列構造が形成される。
【0041】
次に、図2(c)に示すように、上記ポリマー相のうちでエッチング耐性の低い相(ケイ素化合物が偏在していない相)を、加熱処理または/および酸素プラズマ処理によって除去し、レジスト層20をマスクとして、エッチングを実施することによって、さらにその下層の被加工体1をエッチングする(図2(d)、(e)および(f))。従って、このエッチングに際しては、レジスト層20がエッチングマスクとなるよう、その材料とエッチング方法を選択する必要がある。
【0042】
このように、図2に示す態様においては、ブロックコポリマーの組成物層を形成する前の状態において、予め被加工体の表面に凹凸パターンを形成するようにしたので、形成されたブロックコポリマー層の前記配列構造は、前記凹凸パターンに対応して配向することになるので、規則構造の配向を積極的に制御することができる。この場合、ガイドとなる表層凸凹パターンの作成はその目的を達成するものであればいかなる材料でも良いが、加工部以外のマスク形成としては、前述したケイ素化合物を材料が好ましい。
【0043】
上記ポリマー組成物の塗工は、たとえば、基板(被加工体)上にスピンコート、ディップ、スプレー、インクジェットなどで塗布して、インプリント工程に供することができる。
【0044】
また、被加工体としては、特に限定されないが、プラスチック基板、硝子基板、シリコン基板などが一般的である。必要に応じ、表面処理または各種膜を形成後、上記のような適切な方法に従って、組成物層(薄膜)を形成する。
【0045】
上述したように、本発明によれば、比較的簡便な工程によって効率的に100nm以下のレベルの微細な規則的パターンを形成することができる。また、従来法に比べて工程数を減少させることができることから、工程増加に伴う汚染の増加を防止して品質の向上を図ることができるとともにプロセスの安定性を向上させることができる点でもすぐれている。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は、下記の実施例の態様に限定されるものではない。
【0047】
実施例1
塗布用のポリマー溶液として、分子量9500のポリスチレン(PS)と分子量9500のポリエチレンオキサイド(PEO)からなるジブロックコポリマーをDiglymeに溶解し、2.5%の溶液を調製した。この溶液250mgにメチルシロキサン誘導体を溶液に調整した東京応化製T−7(5500T)を125mg添加して均一溶液を得た。
【0048】
得られた溶液をポアサイズ0.5μmのメンブレンフィルタでろ過し、シリコンウエハ(基板)上に厚さ30nmになるように塗布した。塗布した基板を窒素雰囲気オーブンに入れ、昇温速度1.5℃/分で400℃まで加熱し2時間その温度を保持した。
【0049】
得られた焼成膜の断面のTEM観察では約23nmピッチのホールが形成されていることが判った。次に、得られたパターンをマスクとしてSFガスでエッチングを行うことにより、シリコン基板へパターンを転写することが出来た。
【0050】
実施例2
ブロックコポリマーとして分子量3800のポリスチレン(PS)と分子量6500のポリエチレンオキサイド(PEO)を用いたほかは実施例1と同様の方法で微細構造膜の作製を行った。
【0051】
得られた焼成膜は、ピッチ15nmのホールが形成されており、実施例と同様の処理により下層のシリコン基板へのパターン転写を行った。
【0052】
実施例3
ブロックコポリマーとして分子量3000のポリスチレン(PS)と分子量3000のポリエチレンオキサイド(PEO)を用いたほかは実施例1と同様の方法で微細構造膜の作製を行った。
【0053】
得られた焼成膜は、ピッチ15nmのシリンダーが形成されており、実施例と同様の処理により下層のシリコン基板へのパターン転写を行った。
【0054】
実施例4
実施例1と同様にポリマーとケイ素化合物の混合液を基板に塗布し、加熱条件は200℃まで1.5℃/分で昇温し、200℃で2時間保持した。次に、酸素プラズマに供し、有機物の完全除去を行った基板上の微細構造は実施例1で得られたものと同質であった。
【0055】
実施例5
分子量3000のポリスチレンと分子量3000のポリエチレンオキシドからなるジブロックコポリマーをdiglymeに溶解し、T−7(5500T)と混合溶液を作製し基板に塗布した。
【0056】
120℃の温度で90秒加熱して溶媒を除去した後、基板を酸素プラズマで有機物を除去した。得られたパターンは、実施例3で得られたパターンと同等であった。
【0057】
参考例1
ケイ素化合物として、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)(東京応化製東京応化製T−12(600V)を用いたほかは、実施例1と同様の方法でジブロックコポリマーとケイ素化合物の混合液を調製し、焼成処理を行った。
【0058】
得られた焼成膜を顕微鏡で観察すると凝集物が多く観察され、均一平坦膜にはなっていなかった。
【0059】
参考例2
ジブロックコポリマーの溶媒としてトルエンを用いたほかは実施例1と同様組成でポリマーとケイ素化合物の混合液を調製したが、ジブロックコポリマーのトルエンへの溶解性が低く、濃度を1.2%としても均一溶液が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施態様を示す工程断面図。
【図2】本発明の一実施態様を示す工程断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 被加工体
2 組成物層
3 凹部
20 レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマー、ケイ素化合物、およびこれらの成分を溶解させる溶媒を含んでなる組成物を被加工体上に塗布することによって、該被加工体上に前記組成物層を形成し、
前記組成物層において、前記ブロックコポリマーの自己組織化により、前記ケイ素化合物が偏在したエッチング耐性を有する相と、ポリマー相を含むエッチング耐性の低い相に相分離を生じさせることによって、微細パターンが形成されたパターン層を形成し、
前記微細パターンが形成されたパターン層をマスクとして、前記被加工体をエッチング加工することを特徴とする、パターン形成方法。
【請求項2】
前記エッチング耐性の低い相を、加熱処理または/および酸素プラズマ処理によって除去する工程を含む、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーが、自己組織的相分離化性能を有するコポリマーを含み、好ましくは、少なくともポリエチレンオキサイドをコポリマー成分として含むものからなる、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記ケイ素化合物が、シロキサン結合を有するシロキサン化合物もしくはその誘導体を含み、前記ブロックコポリマーの一つの成分のみと親和性である、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーが、第1の成分と第2の成分の少なくとも2つの成分を有し、前記第1の成分と前記ケイ素化合物とが親和性であり、かつ、前記第2の成分と前記ケイ素化合物とが非親和性である、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記溶媒が、エチレングリコール構造を含むエーテル、好ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によって得られたパターン形成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−43873(P2008−43873A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221555(P2006−221555)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度経済産業省「大容量光ストレージ技術の開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】