説明

パターン形成装置

【課題】 所望の微細パターンを高い精度で効率よく形成するパターン形成装置を得る。
【解決手段】 液体材料から複数の液滴を生成するミスト生成部103と、生成された複数の液滴を荷電する荷電部114と、複数の液滴から、第1の粒径の液滴を抽出し、第1の粒径と大きさの異なる第2の粒径の液滴を除去するミスト分級部104と、第1の粒径の液滴を散布するミスト散布部106と、第1の粒径の液滴の散布方向に設置された基板設置部107を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや光学薄膜デバイスの製造において、基板上に微細なパターンを形成するための技術が提案されている。
例えば特許文献1には、任意の平面形状パターンを有する圧電体薄膜を低コストかつ短いタクトタイムで形成するための技術が開示されており、圧電体材料に対して高い親和性を有する第1の領域と、第1の領域に比して材料に対する親和性が低い第2の領域とを基体上に形成し、第1の領域及び第2の領域が形成された基体上に材料のミストを供給することにより、第1の領域に材料のパターンを形成するという方法が示されている。
ここで、溶液をミストで供給する方法としては、例えば、液体を噴射して壁に衝突させ、飛散したミストをキャリアガスで搬送するインジェクション法や、超音波より飛散させたミストを搬送する方法が適用される。
【特許文献1】特開2005−72473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、供給されるミストのサイズは一様ではなく分布がある。上記の第2の領域の幅よりも大きいサイズのミストが第2の領域に供給されると、第2の領域をまたいで両側の第1の領域とつながってしまい、ミストの移動が困難になる。一方、第2の領域の幅に対してミストサイズが小さすぎると、第2の領域上にミストが残りやすい。
【0004】
本発明の目的は、所望の微細パターンを高い精度で効率よく形成するパターン形成装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるパターン形成装置は、液体材料から複数の液滴を生成するミスト生成部と、複数の液滴から、第1の粒径の液滴を抽出し、上記第1の粒径と大きさの異なる第2の粒径の液滴を除去するミスト分級部と、上記第1の粒径の液滴を散布するミスト散布部と、上記第1の粒径の液滴の散布方向に設置された基板設置部とを備える。
これにより、形成するパターンに合わせたサイズの液滴を供給することができるので、所望の微細パターンを高い精度で効率よく形成することができる。
【0006】
また、上記のパターン形成装置において、上記基板設置部に電気的極性を与える電圧印加部を備えることにより、帯電した液滴を基板上に引き寄せることができるので、パターン形成の速度が向上する。
【0007】
また、上記のパターン形成装置において、上記ミスト生成部と上記ミスト分級部との間に、上記複数の液滴を荷電するための荷電部を備えることにより、液滴の帯電効率を高めることができるので、パターン形成の速度が向上する。
【0008】
また、上記パターン形成装置において、上記ミスト分級部と上記ミスト散布部とをつなぐ配管の表面は撥液層を有し、上記撥液層の上記第1の粒径の液滴に対する親和性が、上記配管の上記第1の粒径の液滴に対する親和性より小さいようにすることにより、配管内に液滴が付着しにくくなり、パターン形成の効率が向上する。
【0009】
また、上記基板設置部が回転する機構を含むようにすることにより、基板上の液滴に遠心力を加えて移動させることができる。
また、上記基板設置部が振動する機構を含むようにすることにより、基板上の液滴に振動を伝達して移動させることができる。
また、上記基板設置部が発熱する機構を含むようにすることにより、基板上の液滴に熱を伝達して移動しやすくすることができる。
【0010】
また、上記ミスト散布部と上記基板設置部は、減圧チャンバー内に設置してもよい。これにより、ミスト散布部から基板上へ散布される液滴の速度を大きくすることができるので、基板上に液滴を配置するまでの時間を短縮することができる。
【0011】
また、上記ミスト生成部と上記ミスト分級部との間に少なくとも上記第2の粒径の液滴を回収する液体材料回収機構を備えるようにすれば、材料の利用効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
実施例1.
図1は、本発明によるパターン形成装置100の構成を示すブロック図である。パターン形成装置100は、例えば光学薄膜デバイスや半導体デバイス等の成膜を行う装置である。
図に示すように、パターン形成装置100は、キャリアガス供給部101、原料液供給部102、ミスト生成部103、荷電部114、ミスト分級部104、チャンバー105、ミスト散布部106、基板200を設置するための基板設置部107、電極108、直流電源109を備えている。
ミスト散布部106、基板設置部107、電極108、直流電源109はチャンバー105内に設置されており、チャンバー105には排気口110が設けられている。基板設置部107と電極108は直流電源109に接続されている。
キャリアガス供給部101、原料液供給部102、ミスト生成部103、荷電部114、ミスト分級部104、およびミスト散布部106は、配管150を介して接続されている。
【0013】
ミスト分級部104には、ここでは静電分級器を用いる。
図2は、帯電微粒子の電気移動度の粒子径依存性を利用した静電分級器の原理を説明する図である。この静電分級器は、内筒と外筒からなる二重円筒構造を有しており、上方からシースガスを供給し、外筒の側面のスリットからミスト状の粒子を含むサンプルガスを供給する。外筒と内筒の間には10V〜10kV程度の直流電圧が印加され、サンプルガス中のミスト状粒子は、二重円筒部内でシースガスによって下向きに流されながら、静電気力によって内筒に引きつけられる。このとき、小さい粒子は内筒に引きつけられやすいので内筒の上流側に、大きい粒子はシースガスに流されやすいので、内筒の下流側に到達する。一定の電圧条件のもとでは、ある粒径の粒子だけが内筒に設けられた出口から取り出される。
【0014】
次に、パターン形成装置100の動作について説明する。
原料液供給部102からミスト生成部103へ液体状の材料が供給されると、ミスト生成部103において材料のミスト(複数の液滴)が形成される。形成されたミストはキャリアガス供給部101から供給されるキャリアガスに流されて配管150内を通り、荷電部114に供給されて荷電された後、ミスト分級部104に供給される。
【0015】
ミスト分級部104では、上述した原理により、一定の電圧条件のもと、ある粒径のミストだけが抽出される。ミスト分級部104において分級されたミストは、配管150を通ってミスト散布部106に供給される。ここで、ミスト分級部104とミスト散布部106をつなぐ配管150の内壁表面には撥液層が形成されている。このため、ミストが配管内に付着しにくく、ミストの利用効率を高めることができる。
なお、ミスト生成部103からミスト散布部106までの間の全ての配管150の内壁に撥液層を形成すれば、さらに高い効果が得られる。
【0016】
ミストはチャンバー105内のミスト散布部106から散布され、基板設置部107上に設置された基板200上に供給される。
ミストは電気的な極性を有しており、プラスかマイナスに帯電している。図に示すように、直流電源109によって電極108側はプラス、基板設置部107はマイナスに帯電しているので、プラスに帯電したミストが基板200上に引き寄せられる。
ここで、基板200の表面には、例えば微細パターンを形成する材料物質に対して親和性を有する第1の領域と、第1の領域よりも前記材料物質に対して親和性の低い第2の領域が形成されている。基板200上に供給されたミスト300のうち、第2の領域上に堆積したものは、撥液されて第1の領域上に移動する。
【0017】
ミスト散布部106から散布されるミストの粒径は、第2の領域の最短の幅よりも小さい値であることが好ましい。
例えば、図3に示すように、基板上に0.2μm間隔で材料を配置する場合、第2の領域の最短の幅は0.2μmである。しかし、0.2μmの粒径のミストが供給されると、ミストは基板200上では若干広がって径が大きくなるため、第2の領域(撥液部)をまたいで隣接する第1の領域(親液部)同士がつながってしまう。
この状態では、第2の領域から第1の領域への材料の移動が困難なため、供給するミストの粒径は第2の領域の最短の幅よりも小さい値に設定するのが望ましい。なお、ミストの粒径が小さすぎても第2の領域上にミストが残り移動しにくくなる。
【0018】
ここで、第2の領域上に堆積したミストが第1の領域上へ移動せずに残ってしまうことを避けるため、基板200上でミストが動きやすいようにする必要がある。例えば、排気口109からの排気速度をあげることにより、基板200上での第2の領域から第1の領域へのミストの移動度を高めることができる。また、キャリアガス供給部101から供給されるキャリアガスの流量を大きくすることによっても同様の効果が得られる。
【0019】
また、チャンバー105を減圧チャンバーとしてもよい。これにより、ミスト散布部106から基板200上へ散布されるミストの速度を大きくすることができるので、基板200上へのミストの堆積時間を短縮することができる。また、ミストの運動エネルギーが大きいことから、基板200上でのミストの移動度も高められる。
【0020】
実施例2.
図4は、本発明の実施例2によるパターン形成装置100の構成を示すブロック図である。実施例1との違いは、ミスト生成部103、ミスト分級部104、およびミスト散布部106の位置関係である。
図に示すように、ミスト生成部103の下方にミスト分級部104が、ミスト分級部104の下方にミスト散布部106が配置されるように構成されている。
【0021】
これにより、ミスト生成部103からミスト散布部106までのミストが流れる経路が直線状になり、配管150に折れ曲がった部分を設ける必要が無くなる。配管150の折れ曲がり部分ではミストの衝突が発生しやすく、ミストが配管150に付着してしまったり、衝突により粒径が変化したりすることが発生する。実施例2のような構成にすればこのような問題を回避し、ミストの供給効率を高めることができる。
【0022】
実施例3.
実施例3では、基板設置部107は、基板設置部107の下方に設けられた回転軸(図示せず)を中心として回転するように構成されている。これにより、ミストが移動しやすくなり、パターン形成の速度と精度をより向上させることができる。
【0023】
また、基板設置部107に振動機構を設けてもよい。振動機構としては、例えば超音波振動発生器やパーツフィーダーを用いることができる。
振動機構を用いて基板設置部107を振動させることにより、基板設置部107上に載置してある基板200上のミスト300を移動しやすくする。これにより、パターン形成の速度と精度がより向上する。
【0024】
また、振動機構の代わりに、基板設置部107に発熱する発熱機構を設けてもよい。
基板設置部107が発熱することにより、基板設置部107上に設置された基板200が加熱され、基板200上のミスト300に熱が伝えられてミストのエネルギーが増加する。
上述の振動機構と発熱機構とは同時に設けられていても良い。
【0025】
実施例4.
実施例4では、直流電源109の代わりに、高周波電圧源(図示せず)を備える。
【0026】
直流電源109の場合には、基板設置部107はプラスかマイナスのどちらか一方に帯電するため、それに対応してマイナスかプラスどちらかに帯電したミストしか基板200上に引き寄せる効果がない。よって、基板設置部107と同じ極性のミストは、基板200まで到達せずに排気口110から排気されてしまい、パターン形成には利用されない。
【0027】
この実施例では高周波電圧源112によって基板設置部107に電圧を印加するようにしたので、マイナス、プラスどちらに帯電したミストでも、基板200に引き寄せることができる。よってミストの利用効率が高くなり、パターン形成の速度が向上する。
【0028】
実施例5.
図5は、本発明の実施例5による微細パターン形成装置100の構成を示すブロック図である。この実施例では、チャンバー105内で、基板200上に堆積しなかったミストを回収するミスト回収部113が設けられている。
回収されたミストは配管150を通って原料液供給部102内に回収され再利用される。
これにより、材料の利用効率を高めることができる。また、基板200上に堆積されなかったミストがミスト散布部106付近に堆積するのを防ぐことができるので、基板200上への液だれを防止する効果もある。
また、ミスト生成部103およびミスト分級部104にミスト回収機構を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1による微細パターン形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】静電分級器の原理を説明する図である。
【図3】第2の領域の幅とミストの粒径の関係を説明する図である。
【図4】本発明の実施例2によるパターン形成装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例5によるパターン形成装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
100 パターン形成装置、101 キャリアガス供給部、102 原料液供給部、103 ミスト生成部、104 ミスト分級部、105 チャンバー、106 ミスト散布部、107 基板設置部、108 電極、109 直流電源、110 排気口、113 ミスト回収装置、114 荷電部、150 配管、200 基板、300 ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料から複数の液滴を生成するミスト生成部と、
前記複数の液滴から、第1の粒径の液滴を抽出し、前記第1の粒径と大きさの異なる第2の粒径の液滴を除去するミスト分級部と、
前記第1の粒径の液滴を散布するミスト散布部と、
前記第1の粒径の液滴の散布方向に設置された基板設置部と、を備えることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成装置において、前記基板設置部に電気的極性を与える電圧印加部を備えることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパターン形成装置において、前記ミスト生成部と前記ミスト分級部との間に、前記複数の液滴を荷電するための荷電部を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパターン形成装置において、前記ミスト分級部と前記ミスト散布部とをつなぐ配管の表面は撥液層を有し、前記撥液層の前記第1の粒径の液滴に対する親和性が、前記配管の前記第1の粒径の液滴に対する親和性より小さいことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のパターン形成装置において、前記基板設置部は、回転する機構を含むことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパターン形成装置において、前記基板設置部は、振動する機構を含むことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパターン形成装置において、前記基板設置部は、発熱する機構を含むことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパターン形成装置において、前記ミスト散布部と前記基板設置部は、減圧チャンバー内に設置されることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパターン形成装置において、前記ミスト生成部と前記ミスト分級部との間に少なくとも前記第2の粒径の液滴を回収する液体材料回収機構を備えることを特徴とするパターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−27536(P2007−27536A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209689(P2005−209689)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】