説明

パッドコンディショニング用焼結体およびその製造方法

【課題】0.35μmルール以下の調高精細配線ルールのLSI等用の半導体材料表面を研磨するCMP研磨パッドをコンディショニングするための研磨工具を実現できる、パッドコンディショニング用焼結体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】超砥粒焼結体の研磨面に並んだ研磨単位を有する研磨用焼結体は、超砥粒焼結体表面の加工をレーザーカットにより行うため、研磨単位を緻密に、鋭いエッジを保ったままで形成することが可能であり、その高密度研磨単位列によって、LSI等用の半導体材料表面を研磨するCMP研磨パッドをコンディショニングするための研磨工具を提供することができる。また、円形超砥粒焼結体の素材から、円形中心に位置する正6角形から2枚、その正六角形の外側に位置する6枚の合同な素材片から6枚の研磨パッチを切り出した、研磨パッチである。パッチ角部は研磨時に被研磨材に損傷を与えないように、輪郭が丸められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結体研磨部を持つ工具のための研磨用焼結体およびその製造方法に関する。とくに本発明は、各種半導体材料の表面、ハードディスクのディスク面等を研磨する、主に硬質ウレタンや不織布で構成された化学的機械的研磨(chemical-mechanical polishing:CMPと略す)パッド用の、パッドコンディショニングに用いるに好適な研磨用焼結体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超LSIデバイスにおける配線の多層化が進むにつれて、層間絶縁膜やシリコン等金属膜ウェハの平坦化に、また、ハードディスクの高密度化が進むにつれて、ハードディスクのディスク面の平坦化に、CMPが用いられてきている。そしてCMPで用いられる研磨パッド(一般に硬質発泡ポリウレタン製や不織布製)の高い平坦化およびウェハ研磨速度を維持するためには、該研磨パッドの表面を常時または間欠的にコンディショニングする必要がある。
【0003】
電子産業で使用されるメモリーチップ、その他のLSIデバイスの製造工程には、シリコンウエハ表面や、多層構造における層間絶縁膜の超精密平坦化が不可欠であり、これは一般に、研磨剤を含むスラリーと研磨パッドを用いたシステムにより行われている。研磨パッドは一般に硬質発泡ポリウレタン製や不織布製であるが、平坦性およびウエハ研磨速度を維持するためには、常時または間欠的にパッドの表面をコンディショニングする必要があり、この目的のために、主として、ダイヤモンド砥粒を電着により基板に固着した工具、或いは、一般に超硬合金で裏打ちされている焼結ダイヤモンド層にピラミッド状突起の列を設けた工具(コンディショナー、ドレッサー)が知られている。
【0004】
電着タイプのコンディショニング用の工具の例として、円板形基台の円形表面の中央に、砥粒を配置しない中空領域を、その外側に第一の、さらにその外側に第二の砥粒層領域をそれぞれ設け、第一の砥粒層領域には、間隔をおいて小砥粒層部が複数列設けられ、各小砥粒層部は、略部分球面状を呈する隆起部の表面に、超砥粒を金属めっき層で固着したものであって、第二の砥粒層領域は、リング状の円周隆起部に超砥粒を金属めっき層で固着して構成されている回転研磨工具が公知である(特許文献1)。
このような電着タイプの工具は、砥粒の基板への固着が電着されたニッケルにより物理的に固着されているだけであることから保持力が必ずしも満足いくものではなく、使用中にダイヤモンド砥粒が脱落し、工具寿命は十分に長いものではなかった。
【0005】
また、ダイヤモンド等からなる砥粒をレジンボンド材で円形回転平面上に固着した砥材層を有し、該砥材層表面に放射状および同心円状にスリットを設けた研磨工具が公知である(特許文献2)。
しかし、レジンボンド材による砥粒の保持強度は必ずしも満足できるレベルにないため、用途によっては充分な工具寿命が得られず、また電着工具においても満足できるレベルにはなかった。
【0006】
また、凸部を有する台金の作用面に、気相合成法により多結晶ダイヤモンド薄膜を形成してなるドレッサが公知である(特許文献3)。
しかし、気相合成法による形成では、台金の小さな凹凸に忠実にダイヤモンド薄膜を形成することは困難で、必ずしも十分な精度が得られず、また、薄膜と台金との接合力も十分とはいえない。
【0007】
上記のような従来の研磨工具(パッドコンディショナー)は、基板(台金)に、粒子径がそれぞれ異なる複数個の砥粒粒子を固着した構造の故に、一様な砥粒(頂点)レベルが得にくいので、コンディショニング工程では基板(台金)面に対して最も突き出た粒子のみが使用される結果、過度の負荷に供されるこれらの粒子の消耗が激しく、結局本来の工具寿命に達する前に使用不可となることが多い。
【0008】
上記のような、金属めっき層で固着された個々の超砥粒粒子に代えて、ピラミッド状の突起の列を焼結ダイヤモンドで形成した工具、特に、半導体ウェハ等の表面を高精度かつ高能率で加工可能なCMPパッドのコンディショニングに好適なCMPパッドコンディショナーとして使用する研磨工具およびその製造方法が提供された(特許文献4)。この従来技術において研磨単位と称される突起群は、超硬合金で裏打ちされている焼結ダイヤモンド層に、ワイヤカットで切り込むことにより形成される。研磨単位の形状は面間角度が90°のピラミッド型(四角錐)や四角錐台、他にも三角錐や三角錐台等が記載されている。
【0009】
また、焼結ダイヤモンド層に、表面に対して一定レベル内に位置する平坦な頂面を持つ研磨単位を複数個配置した研磨工具であって、研磨単位は焼結ダイヤモンド層へワイヤカット等での切込みにより、先端が平面の、整列された四角や三角の角柱乃至角錐台上の切れ刃を形成する研磨工具が、本発明者により提供された(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−337050号公報
【特許文献2】特開2004−291184号公報
【特許文献3】特開平10−071559号公報
【特許文献4】国際公開WO2007−023949号公報
【特許文献5】特開2011−20182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者が当該分野で研究を進めるなかで、特許文献4および5のものであっても、特に近年必要となりつつある、例えば配線幅が35μmルール以下の超高精細配線を有するLSI用等の半導体材料表面を研磨するためのCMPパッド用のコンディショナーとしては、必ずしも満足できるものとはいえない。
本発明の課題は、かかる超高精細配線を有するLSI用等として好適な半導体材料表面を得るためのパッドを、より高機能に、合理的にコンディショニングするコンディショナーを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、なお鋭意検討する中で、ダイヤモンド等の超砥粒焼結体からなる研磨部を有するパッドコンディショナーとして、研磨用焼結体の、研磨部における研磨単位となる突起の形状を、従来に無い微小寸法、微小ピッチかつ鋭利なエッジとすることにより、特に微小線幅のLSI等に用いられる半導体材料表面研磨用CMPパッドを好適にコンディショニングすることができることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下のパッドコンディショニング用焼結体、該焼結体の製造方法、該焼結体からなる研磨パッチ、該研磨パッチの製造方法および該研磨パッチを有する工具に関する。
[1]相互に略同一平面上にある頂部を有する複数の研磨単位が、焼結体の超砥粒表層部を加工することにより200μm以下のピッチで複数個整列して形成された、超砥粒焼結体からなる、パッドコンディショニング用燒結体。
[2]加工が、レーザー加工によりおこなわれたものである、前記[1]に記載の研磨用焼結体。
[3]レーザーが青色レーザーである、前記[2]に記載の研磨用焼結体。
[4]パッドが、CMPパッドである、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
[5]研磨単位の頂面と側壁面最上部との成す角が、90°〜60°である、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
[6]研磨単位の頂面が多角形、または多角形の一部または全部の辺を隣接頂点を結ぶ内側または外側に湾曲した湾曲線で置き換えた形状であり、多角形の1辺の長さが、30μm以上である、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
[7]研磨単位の底部からの高さが、50μm以下である、前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
[8]超砥粒がダイヤモンドである、前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
[9]青色レーザーを含むレーザー加工により、ダイヤモンド焼結体からなる研磨部の、表層部に溝加工することにより、相互に略同一平面上にある頂部を有する研磨単位が、200μm以下のピッチで複数個形成する、研磨用燒結体製造方法。
【0014】
[10]前記[1]〜[8]の超砥粒焼結体からなるパッドコンディショニング用焼結体からなる、研磨パッチであり、円板状の焼結体素材(1)の中心を通る直線(2)と、該直線に直交する半径(3)、(3’)、を2等分した点(4)、(4’)を通り、該直線(2)に平行な線と円板の中心を通り該直径と60°の角度をなす2本の直線(6)、(7)との交点(8)、(9)、(10)、(11)を結ぶ前記直線(2)に平行な線分(12)、(12’)、を1辺とする正六角形と前記直線(2)とで円板を分割して得られる4枚の分割片の、該正六角形の外側に位置する2つの部分を、前記2本の直線(6)、(7)でさらにそれぞれ3分割して得られる、6枚の合同な分割片(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、および正六角形の3辺と直径とを辺とする2枚の台形状の分割片から、前記6枚の分割辺とほぼ合同な2枚の焼結体分割片(19)、(20)を切り出すことによって得られる、8枚のほぼ合同な焼結体分割片の、円弧状の辺の両端部角を丸めたものからなる、8枚のほぼ合同な形状の研磨パッチ。
[11]前記[10]に記載の8枚の合同な焼結体分割片を、さらに円板外形をなしていた円弧と同心円をなす円弧(23)で2つまたはそれ以上のパッチ片に分割し、円弧状の辺の両端部角を丸めて得られる、8枚のほぼ合同な研磨パッチの複数の組からなる、研磨パッチ。
[12]前記[10]に記載の研磨パッチにおいて、正六角形の内側の2枚の焼結体分割片(19)、(20)を、それぞれ正六角形の1辺で接している、外側の焼結体分割片(13)、(14)と結合した、瓢箪型のくびれを有する2枚のほぼ合同な切片(28)、(29)の組と、1辺が円弧である台形様の4枚のほぼ合同な切片(14)、(15)、(17)、(18)の組とからなる、6枚の研磨パッチ。
[13]前記[10]〜[12]のいずれかに記載の研磨パッチを、円形基板の外周部分に、1種または複数種の研磨パッチが、円周方向に均等に配置されるように設けた、研磨工具。
[14]前記[1]〜[8]に記載の研磨用焼結体からなり、円板状の焼結体素材(1)の中心を通る直線(2)と、該直線に直交する半径(3)、(3’)を2等分した点(4)、(4’)を通り該直線に平行な線と円板の中心を通り該直径と60°の角度をなす2本の直線(6)、(7)との交点(8)、(9)、(10)、(11)を結ぶ前記直線に平行な線分(12)、(12’)を1辺とする正六角形とで円板を4枚に分割し、該正六角形の外側に位置する2つの部分を、前記2本の直線(6)(7)でさらにそれぞれ3分割して得られる、6枚の合同な分割片(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、および正六角形の3辺と直径とを辺とする2枚の台形状の分割片(19)、(20)から切り出すことにより、円板状の焼結体素材から8枚の焼結体分割片を得る、研磨パッチ製造方法。
[15]前記[14]に記載の方法において、正六角形の内側の2枚の焼結体分割片(19)、(20)と、それぞれ正六角形の1辺で接している、外側の焼結体分割片(13)、(14)との間は切断せずに、瓢箪型のくびれを有する2枚の合同な切片(28)、(29)として残す、1辺が円弧である台形様の4枚の合同な切片(14)、(15)、(17)、(18)の組と、瓢箪型の括れを有する2枚の合同な切片(28)、(29)とから切り出すことにより、円板状焼結体素材から6枚の研磨パッチを製造する方法である。
【0015】
研磨単位の列のピッチの短いコンディショナーは、青色レーザー加工によりダイヤモンド等の超砥粒焼結体に研磨単位の列を形成することにより得られるものである。
この焼結体は、研磨部が、超硬合金の裏打ち材に焼結一体化したダイヤモンド焼結体からなるものが好ましく、研磨単位が、該研磨部を彫りこむように加工することにより形成される。
また、レーザー加工が微細加工を可能とするものであることにより、研磨単位の頂面は、多角形であるか、または湾曲した輪郭線を有する多面体形状の頂面を有する研磨単位となるように加工される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、パッドコンディショニング用超砥粒焼結体を、レーザー加工により加工して研磨単位を形成しているため、従来のワイヤカットと比較して、研磨単位の列のピッチが格段に短く、また、焼結体のエッジを鈍らせる作用が格段に少ないので、従来の研磨工具に比して、より高精度の研磨単位形状をもつパッドコンディショニング用工具が得られる。
そのために、本願発明のパッドコンディショニング用超砥粒焼結体は、従来のワイヤカットによる超砥粒焼結体の研磨工具では成し得なかった、超精細配線ルールのLSI等に用いることの出来る半導体材料表面を得るためのCMPパッドを、実現することができたものである。
さらに本願発明のパッドコンディショニング用超砥粒焼結体は、超精細配線ルール用半導体材料の表面研磨用CMPパッドのコンディショニングが可能である上に、CMPパッドのコンディショニングによる磨り減りを防止する効果が大きく、それでいてコンディショニングによるCMPパッドの研磨効果は高いという、従来に全く無かった格別の効果を奏するものである。
このコンディショナーは、ダイヤモンド等の超砥粒焼結体からなる研磨部をもつコンディショナーであり、超砥粒焼結体からなる研磨部に複数の研磨単位を形成するに際し、短波長で強力な青色レーザー加工により、短いピッチの研磨単位が形成可能である。
【0017】
本発明の研磨用焼結体は、結合材の溶融温度以上で焼結されていることにより、超砥粒の固着強度が大きく、実質上脱落がないという利点がある。とくに超砥粒としてダイヤモンド粒子を用いた場合、ダイヤモンドは、製造工程において結合材金属が溶融しかつダイヤモンドが熱力学的に安定な温度圧力条件下に供されており、ダイヤモンド微粒子が結合材金属への部分溶解を介して強力に一体化されていることにより、固着強度がさらに大きいため、実質上脱落がなくなる。
【0018】
さらに研磨単位が形成されている研磨部は、表面が充分な厚さを持つ超砥粒焼結体で構成されていることにより、研磨単位が使用により磨滅しても、研磨単位を容易に再生して、本発明の工具として再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるコンディショニング用焼結体の一例(研磨単位が四角錐台のもの)の表面を示す平面図である。
【図2】本発明によるコンディショニング用焼結体の一例の写真である。
【図3】本発明によるコンディショニング用焼結体の研磨単位の各種の例を示す説明図(平面図および側面図)である。
【図4】本発明によるコンディショニング用焼結体の製造方法を示す説明図である。
【図5】本発明によるコンディショニング用焼結体の実施例の切り出し例を示す図である。
【図6】本発明によるコンディショニング用焼結体を用いた実施例の加工具の平面図である。
【図7】本発明による8枚研磨パッチ切り出しを説明する図である。
【図8】本発明による8枚研磨パッチ切り出しを示す図である。
【図9】本発明の別の態様による16枚研磨パッチ切り出しを示す図である。
【図10】本発明のさらに別の態様による6枚研磨パッチ切り出しを示す図である。
【図11】本発明による研磨パッチを用いた研磨用工具を示す図である。
【図12】本発明の別の態様による研磨パッチを用いた研磨工具を示す平面図および側面図である。
【図13】本発明のさらに別の態様による2種の研磨パッチを用いた研磨工具を示す平面図および側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の研磨用焼結体の材料となる超砥粒焼結体は、ダイヤモンドやc−BN(立方晶窒化硼素)等の超砥粒の粉末を常法により超高圧高温工程で処理して得られる。この状態の焼結体は超砥粒焼結体は歪みが大きいので型放電加工などにより予備的にあらかた平坦化しておく。次いで、本発明で特定する態様にて溝及び突起側面を段階的に形成していくことにより、研磨単位、即ち、直接研磨対象と接触する突起部分を創生する。なお超砥粒焼結体として市販品を利用する場合は、仕様によるが、表面が平坦化されているので、上記平坦化予備処理は省略できる。
前記溝の形成には、レーザーカット、とくに青色レーザー、例えばYAGレーザーを用いて、短いピッチで研磨単位を形成し、研磨単位の研磨作用をおこなうエッジが比較的鋭利な状態を保って加工することができる。
【0021】
本発明の研磨用焼結体において、上記研磨単位は、例えば、円形、または同心の中心円形孔を有する円環状焼結体層へ、レーザー加工機で切り込むことにより、創生することができる。レーザー加工機は、スキャン動作により所望の形状での焼結体層への切り込み加工を、焼結体層へのダメージを与えずにおこなうことが可能であるため、エッジの鈍りの少ない任意の形状の研磨単位が形成可能である。レーザー加工動作の能率等を考慮すると、直線状にスキャンすることが好ましい。
【0022】
研磨単位が頂部に直線状の稜線を呈する形状(図3;No.1 三角錐台、No.3 六角錐台、 No.4 四角錐台)や、稜線が湾曲しているもの(図3 ; No.2)などであってもよい。研磨単位は、レーザー加工機により形成されるので、ワイヤカット放電加工に比べて、格段に細かい密度で形成でき、研磨単位の形状も、ワイヤカット放電加工に比較して、エッジの鋭い状態がたもたれるものである。
【0023】
上記例において、各研磨単位が有効な研磨部分として機能するために、各研磨単位の頂部エッジは充分に鋭く、かつ隣接研磨単位同士は、200μm以下という従来なかった短い間隔で隔てられる。エッジの長さは、各研磨単位頂部が多角形であり、一辺の長さが30μm以上という長さを有している。また、研磨単位の頂面と研磨単位側壁上端部とのなす角は、90〜60°、好ましくは90〜75°程度である。
【0024】
溝の深さ(研磨単位の溝底からの高さ)は、50μm以下で、切屑を排除できる程度の深さがあれば良い。溝が深すぎると、研磨単位の強度が不足する上、過剰な超砥粒層の厚さが必要となるが、レーザー加工においては、精密な加工が可能であり、ピッチを短くすることが出来るため、溝の深さも従来に比べて浅いものが実現できる。
【0025】
研磨単位の形状としては、研磨単位の各側面を傾斜させて錐台状、例えば、四角錐台状または三角錐台状とした、図3に例示するようなものとすることが好ましい。
また、整列した角柱状や角柱台状研磨単位において、長方形や三角形のひとつまたは複数方向の側面を専用の工具で研磨することにより、頂部の縁又は頂点を鋭利化する、いわゆる「刃付け」を行なうと、さらに良好な切れ味が達成できる。研磨単位が、多角形柱、多角形錐台であり、頂部が多角形(典型的には、三角形または四角形)の場合、頂部の面の少なくとも一辺に刃付けを行なうが、研磨単位が四角錐状または三角錐状の場合は、刃付けを行なわなくても十分な切れ味を達成することができる。
【0026】
焼結超砥粒層としては、ダイヤモンド焼結体(PCD)やc−BN焼結体(PcBN)の一方の面を超硬合金即ち炭化タングステン系複合材、或は周期律表第6a族金属の炭化物を主成分とする複合材のブロックで裏打ちされた構造のものを用い、複合材側を接着剤等によって工具基板に固着し、反対側に区分溝を形成して研磨部として使用する。
【0027】
このような焼結体は、典型的には一軸加圧型の高温超高圧静水圧プレスで調製された円板状のものが市販されている。
【0028】
四角錐台状研磨単位の作製においては、例えば図4に示すように、研磨部の表面にYAGレーザー等のレーザー加工機で一定溝間隔(ピッチ)で第一の方向の平行溝群および錐台状体両側面を形成した後、研磨部を固着した基板ごと円環中心軸の周囲に90°回転し、同じようにして第二の方向の平行溝群を一定溝間隔で、また各溝に隣接する錐台体傾斜側面を形成することにより、直交する2組の平行溝群、および溝に沿って整列した四角錐台状研磨単位を得るようにしてもよい。
【0029】
三角錐体の場合においても、第一の方向の平行溝群および溝に隣接する角錐台の傾斜面を形成後、焼結体素材を中心軸の周囲に120°回転し、同様に一定溝間隔で第二の方向の平行溝群、および隣接する傾斜側面の形成をレーザーカットにより行う。操作完了後、研磨部をさらに120°回転し同じ操作を行うことによって、120°で交差する第三方向の平行溝群、および隣接する傾斜側面、溝に沿って整列した三角錐台状研磨単位を得るようにしてもよい。
【0030】
上記研磨単位において、錐台状体頂部の溝底面に対する突き出し高さは三角形、四角形共に50μm以下とすることができる。レーザーカットであるからこその微細加工により、研磨単位の整列ピッチが200μm以下であるため、従来よりも突き出しが浅くても、研磨部本体がパッド等のワークと直接接触することがなく、研磨単位の強度が不足したり、過剰な超砥粒層の厚さが必要となることがない。
さらにレーザーカットであるため、エッジの鈍りが少なく、本発明のような小さな突き出し高さでも、十分な研磨作用が得られる。
【0031】
上記研磨単位の研磨性能は、錐(台)状体の頂部に含有される超砥粒の粒度に依存する。超砥粒がダイヤモンド粒子である場合、即ち研磨部を構成する焼結体が焼結ダイヤモンド(PCD)層である場合、ダイヤモンド粒子は、40-60μm以下の公称粒度のもの、たとえば、8-16μmや0-2μmなどの各公称粒度のPCD層が利用できるが、公称粒度8-16μm以下が好ましく、特に公称粒度0-2μmが好ましい。
【0032】
本発明の研磨用焼結体に用い得るダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド粒子を、裏打ち材としての超硬合金および、必要に応じてコバルト等の結合材金属と共に、ダイヤモンドが熱力学的に安定な超高圧高温条件下に供して得られる。焼結体から本発明のパッドコンディショニング用超砥粒焼結体への加工はレーザーカット、典型的には青色レーザーカットによる表面の加工による研磨単位の形成によって実現できる。
焼結体素材から、研磨用焼結体を切り出すための輪郭カットにおいては、レーザーカットの他、ワイヤカット放電加工等の、一般的加工手段が利用可能である。
【0033】
本発明においては、研磨単位の三角錐台または四角錐台等の多角形錐台体は、レーザーカットにより形成されるため、エッジが鋭くなり、また、エッジの綿密度も高いものであるため、特に0.35μm以下の超精細配線ルールのLSI用の半導体材料表面の研磨に用いるCMPパッドの効果的なコンディショニングが初めて可能となり、コンディショニングに際しての、CMPパッドの無用な摩滅も少なく抑えることが出来る。
また、ピッチの短い研磨単位列であるため、研磨作用をなすエッジの綿密度が高くなり、必要な超砥粒焼結体材料も、従来の長いピッチのものと比較して少なくて済む。
また、研磨単位の高さを従来のように高くする必要がなく、必要とされる超砥粒焼結体部分の厚みは従来よりも少なくて済む。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
厚さ0.5mm、直径60mmの焼結ダイヤモンド層を超硬合金ブロックと一体化した、全体厚さ3.2mmの円板状ダイヤモンド焼結体をワイヤカットによって図5のように切断し、同一形状の円弧状パッチを大小2種類、各8個切り出した。より大なる円弧は8個について長さ約27mm、より小なる円弧は長さ約21mm、円弧中央における幅は、16個について同様の約7mmであった。
これらの円弧状焼結体片を大小それぞれについて5個づつ取り、平らな金属板上に向きを揃えて固定し、各ダイヤモンド層表面に青色レーザーで切込みにより、底部に対する高さ50μmの四角錐台状研磨単位群を130μmピッチの格子状に形成して研磨パッチとした。格研磨単位頂部は一辺30μmの正方形状、側壁面は軸方向に対して15°の傾斜をつけた。
【0035】
これらの研磨パッチを外形108mmの円形基板の外周部分に、5個づつ交互にそれぞれ72°ごとに、各々の同心円上に配置した。各パッチは中心において長手方向を円周方向に対して30°傾斜させてそれぞれ配置し、接着剤で固定し図6に示す工具を得た。
この工具を不織布および硬質ウレタン(共にCeiba Technologies製)の研磨試験に供して表1の結果を得た。
【表1】

この値は、例えば特許文献5に開示される、ワイヤカットにより研磨単位を形成した従来技術のダイヤモンド焼結体研磨工具、これは研磨単位の頂面四角形の辺の長さが100μmでピッチが1500μmのものと頂面四角形の辺200μmでピッチが2000μmのもの、と比較すると、カットレートは従来技術の80〜120μm/hと比べて百倍以上も低く、すなわち、コンディショニングされる硬質ウレタンの減りが少なく、それでいて表面粗さは従来技術のダイヤモンド焼結体研磨工具と同等または優れている、ということを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のパッドコンディショニング用焼結体は、CMPパッドコンディショナーとして、特に高精細回路ルールで製造されるLSI用の半導体材料表面の研磨に用いるためのC<Pパッドのコンディショナーとして極めて優秀である。
【0037】
本発明は、また、以上記載した、ダイヤモンド等の超砥粒焼結体からなる研磨部をもつ回転式研磨工具に用いるに好適な、円板状材料を最も効率的に利用できる、超砥粒焼結体研磨パッチおよびその製法に関する。
かかる研磨パッチおよびその製法により、上述したレーザーカットした微小ピッチ、小突起かつ鋭利なエッジを有する焼結体にかかる技術と相俟って、パッドに対する高機能なコンディショニングを可能にするばかりでなく、極めて合理的、経済的なコンディショナーを提供することが可能となる。
なお、本発明において、「円板状」と記載されている場合の円は、数学的な厳密な意味の真円のみを指すのではなく、焼結体等の実際の物質においてほぼ円形であって中心が近似的に一点に定めうる程度のものをも包含する。
【0038】
ダイヤモンド等の超砥粒焼結体は、焼結体素材が円板状であり、その円板から、回転式研磨工具用の焼結体研磨パッチを、最も有効に無駄なく切り出すために、該円板の任意の位置の直径を決定し、該直径に直交する半径を2等分した点を通り、該直径に平行な線と円板の中心を通り該直径と60°の角度をなす2本の直径との交点を結ぶ該直径に平行な線分を1辺とする正六角形と該直径とで円板を4枚に分割し、該正六角形の外側に位置する2つの部分を、前記2本の直径でさらにそれぞれ3分割して得られる、6枚の合同な分割片、および正六角形の3辺と直径とを辺とする2枚の台形状の分割片から切り出した、前記6枚の分割辺と合同な2枚の焼結体分割片を切り出すことによって得られる、8枚の合同な焼結体分割片からなる本願発明の焼結体研磨パッチが得られる。
さらに円板外形をなしていた円弧と同心円をなす円弧で2つに分割して得られる合同な8枚が2組となった焼結体研磨パッチによって、本願発明の焼結体研磨パッチが得られる。
また、本願発明の別の態様においては、前記正六角形と該直径とで円板を4枚に分割することに代えて、該直径と、正六角形の該直径に平行でない4個の辺と、および円板の中心を通り該直径と60°の角度をなす2本の直径の正六角形の外側に位置する部分とで円板を分割することによって得られる、2枚の合同な1辺が円弧である瓢箪型のくびれを有する切片の組と、1辺が円弧である台形様の4枚の合同な切片の組とからなる素材が得られ、瓢箪型の切片は、さらにくびれの2つの頂点を結ぶ線に対称な外形となるように直線状の部分を加工することにより、合同な4枚の台形様切片と、その合同な台形様切片を、円弧状辺に向かい合う直線辺で接合した形の2枚の瓢箪型切片とを得る。
これらの態様の8枚、16枚または6枚の研磨パッチは、研磨効果を向上させるために、円弧側の角部分は丸く加工されて、研磨時に被研磨材に食い込むことが無いようにされていることが好ましい。
【0039】
本発明の研磨パッチは、レーザーカットして研磨単位を研磨面に多数形成した研磨パッチを得るための超砥粒焼結体を、最も無駄なく円板状の焼結体素材から切り出すことのできる、超砥粒焼結体研磨パッチであるので、製造が困難で高価な超砥粒焼結体を最も無駄なく使用して製造することが可能となる。
また、合同な形状の研磨パッチを、複数の円板状焼結体から得られるため、研磨パッチを接着して製作する研磨工具作成時において、寸法あわせ等する必要がなく、また、本発明の研磨パッチは、必要以上に細分化した大きさでないため、研磨工具作成時の研磨パッチ接着作業が不合理に煩雑化することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0040】
図1 Y:研磨単位頂面
1:パッドコンディショニング用焼結体表面
2:研磨単位頂面エッジ
3:研磨単位間の溝底面
図3 No.1:三角錐台である研磨単位の正面図および側面図
No.2:湾曲辺を有する四角錐台である研磨単位の正面図および側面図
No.3:六角錐台である研磨単位の正面図および側面図
No.4:四角錐台である研磨単位の正面図および側面図
図4 5:ダイヤモンド焼結体
6:レーザースキャンユニット
7:YAGレーザー
図5 8:円弧状焼結体片(大)
9:円弧状焼結体片(小)
図6 10:工具円形基板
11:焼結体研磨パッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に略同一平面上にある頂部を有する複数の研磨単位が、焼結体の超砥粒表層部を加工することにより200μm以下のピッチで複数個整列して形成された、超砥粒焼結体からなる、パッドコンディショニング用燒結体。
【請求項2】
加工が、レーザー加工によりおこなわれたものである、請求項1に記載の研磨用焼結体。
【請求項3】
レーザーが青色レーザーである、請求項2に記載の研磨用焼結体。
【請求項4】
パッドが、CMPパッドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
【請求項5】
研磨単位の頂面と側壁面最上部との成す角が、90°〜60°である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
【請求項6】
研磨単位の頂面が多角形、または多角形の一部または全部の辺を隣接頂点を結ぶ内側または外側に湾曲した湾曲線で置き換えた形状であり、多角形の1辺の長さが、30μm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
【請求項7】
研磨単位の底部からの高さが、50μm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
【請求項8】
超砥粒がダイヤモンドである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の研磨用焼結体。
【請求項9】
青色レーザーを含むレーザー加工により、ダイヤモンド焼結体からなる研磨部の、表層部に溝加工することにより、相互に略同一平面上にある頂部を有する研磨単位が、200μm以下のピッチで複数個形成する、研磨用燒結体製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8に記載の研磨用焼結体からなり、円板状の焼結体素材(1)の中心を通る直線(2)と、該直線に直交する半径(3)、(3’)を2等分した点(4)、(4’)を通り、該直線(2)に平行な線と円板の中心を通り該直線と60°の角度をなす2本の直線(6)、(7)との交点(8)、(9)、(10)、(11)を結ぶ前記直線に平行な線分(12)、(12’)を1辺とする正六角形と前記直線(2)とで円板を分割して得られる4枚の分割片の、該正六角形の外側に位置する2つの部分を、前記2本の直線(6)、(7)でさらにそれぞれ3分割して得られる、6枚の合同な分割片(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、および正六角形の3辺と直径とを辺とする2枚の台形状の分割片から、前記6枚の分割辺とほぼ合同な2枚の焼結体分割片(19)、(20)を切り出すことによって得られる、8枚のほぼ合同な焼結体分割片の、円弧状の辺の両端部角を丸めたものからなる、8枚のほぼ合同な形状の研磨パッチ。
【請求項11】
請求項10に記載の8枚の合同な焼結体分割片を、さらに円板外形をなしていた円弧と同心円をなす円弧(23)で2つまたはそれ以上のパッチ片に分割し、円弧状の辺の両端部角を丸めて得られる、8枚のほぼ合同な研磨パッチの複数の組からなる、研磨パッチ。
【請求項12】
請求項10に記載の研磨パッチにおいて、正六角形の内側の2枚の焼結体分割片(19)、(20)を、それぞれ正六角形の1辺で接している、外側の焼結体分割片(13)、(14)と結合した、瓢箪型のくびれを有する2枚のほぼ合同な切片(28)、(29)の組と、1辺が円弧である台形様の4枚のほぼ合同な切片(14)、(15)、(17)、(18)の組とからなる、
6枚の研磨パッチ。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の研磨パッチを、円形基板の外周部分に、1種または複数種の研磨パッチが、円周方向に均等に配置されるように設けた、研磨工具。
【請求項14】
請求項1〜8に記載の研磨用焼結体からなり、円板状の焼結体素材(1)の中心を通る直線(2)と、該直線に直交する半径(3)、(3’)を2等分した点(4)、(4’)を通り該直線に平行な線と円板の中心を通り該直径と60°の角度をなす2本の直線(6)、(7)との交点(8)、(9)、(10)、(11)を結ぶ前記直線(2)に平行な線分(12)、(12’)を1辺とする正六角形とで円板を4枚に分割し、該正六角形の外側に位置する2つの部分を、前記2本の直線(6)、(7)でさらにそれぞれ3分割して得られる、6枚の合同な分割片(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、および正六角形の3辺と直径とを辺とする2枚の台形状の分割片(19)、(20)から切り出すことにより、円板状の焼結体素材から8枚の焼結体分割片を得る、研磨パッチ製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、正六角形の内側の2枚の焼結体分割片(19)、(20)と、それぞれ正六角形の1辺で接している、外側の焼結体分割片(13)、(14)との間は切断せずに、瓢箪型のくびれを有する2枚の合同な切片(28)、(29)として残す、1辺が円弧である台形様の4枚の合同な切片(14)、(15)、(17)、(18)の組と、瓢箪型の括れを有する2枚の合同な切片(28)、(29)とから切り出すことにより円板状の焼結体素材から6枚の研磨パッチを製造する方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−213833(P2012−213833A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80945(P2011−80945)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(309021168)新技術開発株式会社 (10)
【Fターム(参考)】