説明

パラメータ制御装置および方法

【課題】 選択画面などを表示するディスプレイが無くても、簡単な構成で、タッチ型操作子に割り当てる操作対象のパラメータを切り替えることができるようにすることを目的とする。
【解決手段】 ユーザが指などでタッチするための所定の領域を有し、ユーザが該タッチした指などを前記所定の領域内で移動させることで操作対象のパラメータの値の制御を可能とするパラメータ制御装置であって、ユーザにより為された操作が、操作対象のパラメータの値を制御するための第1の操作態様の操作か、または、それとは異なる第2の操作態様の操作かを判定し、第1の操作態様の操作が為されたときには、その操作内容に応じて、操作対象のパラメータの値を変更し、第2の操作態様の操作が為されたときには、その操作内容に応じて、操作対象のパラメータの種類を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作子に操作対象として割り当てられたパラメータの値を変更するためのパラメータ制御装置および方法に関し、特に、操作子に割り当てる操作対象のパラメータを切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作対象のパラメータの値をタッチ操作で変更できるタッチ型(スライダ型)操作子が知られている。タッチ型操作子は、音響信号のレベル設定その他の種々のパラメータを操作対象として割り当て、該割り当てたパラメータの値を変更する手段として多く利用されている。各種の音楽装置では、設定するべきパラメータの種類が非常に多くなることがあり、その反面、装置のパネル上に設ける操作子の数は(パネル面の面積が限られているため)所定数以下に抑えなければならない場合がある。そのため、1つの操作子に操作対象のパラメータを割り当て、所定の操作により該操作対象のパラメータを切り替えながら操作していくことが良く行われている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、タッチバーとは別のキーを使って、タッチバーに割り当てる操作対象のパラメータを変更する技術である。
【0003】
また、操作子に割り当てるパラメータを切り替える技術として、下記特許文献2に記載の技術がある。該文献には、パネル上に表示器とアサイナブル操作子とを備える電子音楽装置において、表示画面の切り替えに合わせてアサイナブル操作子に対応付ける操作対象のパラメータを切り替えるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−15198号公報
【特許文献2】特開2010−233005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチ型操作子に割り当てるパラメータを切り替えたいとき、特許文献1や特許文献2に記載の方式では、タッチ型操作子とは別に、切り替えを指示する複数の操作子やディスプレイが必要であり、構成が複雑になり、操作も複雑になってしまう。
【0006】
本発明の目的は、操作対象のパラメータの切り替えを、簡潔な構成、簡易な操作性、で行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、パラメータ制御装置であって、操作を受け付ける操作領域と、受け付けた操作の態様と内容を検出する検出手段と、検出した態様が、第1態様であるか、あるいは、第2態様であるかを判定する判定手段と、前記検出した態様が第1態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータの値を変更するパラメータ値変更手段と、前記検出した態様が第2態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータを切り替えるパラメータ切り替え手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のパラメータ制御装置において、前記判定手段は、前記第1態様と第2態様のほかに、検出した態様が第3態様であるか否かを判定するものであり、前記パラメータ値変更手段は、前記検出した態様が第1態様であると判定されたときは、その操作の内容に応じて、通常の分解能でその操作領域の操作対象のパラメータの値を変更し、前記検出した態様が第3態様であると判定されたときは、その操作の内容に応じて、通常より細かい分解能でその操作領域の操作対象のパラメータの値を変更することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、操作を受け付ける操作領域と、該操作領域の操作内容に応じて操作対象のパラメータの値を制御する処理手段とを備えたシステムにおけるパラメータ制御方法であって、前記処理手段が、前記操作領域において行われる操作の態様と内容を検出するステップと、前記処理手段が、前記操作領域に対する操作の態様が、第1態様であるか、あるいは、第2態様であるかを判定する判定ステップと、前記処理手段が、前記検出された操作の態様が第1態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータの値を変更するステップと、前記処理手段が、前記検出された操作の態様が第2態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータを切り替えるステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切り替えを指示するための複数の操作子やディスプレイを別途に設ける必要がなく、操作対象のパラメータの切り替えを、簡潔な構成、簡易な操作性、で行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態のコントローラーを適用したシステムの構成例を示す図
【図2】コントローラーのハードウェア構成図
【図3】コントローラーのパネル外観図
【図4】スライダ拡大図
【図5】スライダの操作処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態であるコントローラーを適用したシステム例を示す。PC102は、汎用のパーソナルコンピュータであり、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)と呼ばれる統合音楽ソフトウェアが動作している。PC102には汎用のキーボードやマウスを接続でき、それらを使ってDAWを操作することができる。DAWを実行することにより、PC102は、音楽制作の各種の機能(例えば、ハードディスクレコーディング機能、MIDIデータやオーディオデータの作成編集機能、ミキシング機能、シーケンサー機能など)を実現する音楽装置の役割を果たす。PC102には、電子楽器103、デジタルミキサ104、およびスピーカ105が接続されている。例えば、電子楽器103やデジタルミキサ104から出力されたオーディオ信号をPC102のDAWで録音したり、PC102から出力されたオーディオ信号を電子楽器103やデジタルミキサ104に入力させることができる。また、PC102から出力されたオーディオ信号をスピーカ105で放音させることなどが可能である。コントローラー101は、PC102上で実行されるDAWをユーザが手元で簡単に操作するための操作装置であり、DAW専用に設計された装置である。図1の各構成要素(各装置)101〜105は、それぞれが単体の独立した装置であり、相互に外部接続(装置に外付け)されているものである。
【0014】
図2は、コントローラー101のハードウェア構成を示す。コントローラー101は、中央処理装置(CPU)201、ROM(リードオンリメモリ)202、RAM(ランダムアクセスメモリ)203、検出回路204、操作子205、表示回路206、およびUSBインターフェース(I/F)207を備える。210は、これら各部を相互に接続するバスラインであり、コントロールバス、データバス、およびびアドレスバスを総称したものである。
【0015】
CPU201は、このコントローラー101の全体の動作を制御する処理装置である。ROM202は、CPU201が実行する制御プログラムや各種のデータを格納する不揮発性メモリである。RAM203は、CPU101が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用する揮発性メモリである。操作子205は、このコントローラー101の外部パネル上に設けられたボタン(スイッチ)やタッチ型操作子である。検出回路204は、操作子205の操作を検出し、その操作情報をCPU201に送出する。表示回路206は、上記操作子205に備えられている各LEDの点灯・消灯を行う回路である。USB I/F207は、当該コントローラー101をPC102に接続するためのUSB(Universal Serial Bus)規格のインタフェースである。
【0016】
図3は、コントローラー101のパネル外観図である。コントローラー101は、例えば左手でコントローラー101全体を保持し、右手で操作する程度の大きさである。301で示すSW1〜9、306で示すSW10〜12、およびモード切替SW305は、上記操作子205のうちのボタンに相当する。ボタン301,305,306は、それぞれ、指などで押し込んだ後その指などを移動させることなく離す操作(以下「押し込み操作」という)を行うことで、そのボタンに割り当てられている機能やパラメータをオン/オフ等するハードウェアスイッチであり、オン/オフ等の状態を示すためのLEDを備えている。ボタン302(SW7)は、後述するシフトスイッチとして使用する。303は、上記操作子205のうちのタッチ型操作子(ハードウェアのスライダ型操作子と同様に使用するので、以下単に「スライダ」と呼ぶ)に相当する。スライダ303は、指などで押し込みその指を左右に移動させたのち離す操作(以下「スライド操作」という。なお、指などの移動可能な範囲はスライダ303の矩形の範囲内に限定される。)や、スライダの長手方向の任意の位置で押し込み操作を行うことで、割り当てられているパラメータの値を変更(増減)させるハードウェア操作子であり、指などの移動範囲内に複数のLEDを備えている。なお、「スライド操作」や「押し込み操作」における「押し込む」は、指などで軽く触れる操作も含むものとする。
【0017】
図4に、スライダ303の拡大図を示す。図3,4のスライダ303の矩形は、ユーザが指などでスライド操作や押し込み操作を行うための領域(操作を受け付ける領域)を示す。304は、スライダ303の指の移動範囲を4つに分けた部分領域を示す。この4つの部分領域は、スライダ303の操作対象パラメータを切り替えるときに利用するが、そのパラメータ切り替えの操作については後述する。図4の401は、スライダ303に設けられているLEDを示す。ここでは点灯している1つのLED401を示したが、同様のLEDがスライダ303の指の移動範囲内(図のスライダ303を示す矩形の範囲内)に並べられている。それらのLEDの中でどの位置のLEDを点灯させるかによって、割り当てられているパラメータの現在値を表現する。
【0018】
スライダ303には、操作対象パラメータが常に1つ割り当てられている。本明細書中で、「操作対象パラメータ」とは、スライダ303、つまり本発明の構成要素である操作領域における操作に基づいて値が制御されるパラメータを意味する。すなわち、スライダ303に、現在、操作対象として設定されているのが「操作対象パラメータ」である。また、「操作領域」はユーザからの操作を受け付けられる領域を意味するものであり、本実施形態ではスライダを表す図3,4の矩形303が「操作領域」に相当する。この操作領域は、複数の態様での操作を受け付けられる領域である。
【0019】
コントローラー101により、PC102上で実行されているDAWに対して各種の指示を与えることができる。コントローラー101とPC102とはUSBインターフェースで接続されており、コントローラー101で操作子205の操作を検出すると、該操作された操作子を特定するIDとその操作内容を示すデータがPC102上のDAWに送信される。PC102のメインメモリまたはハードディスクなどの記憶装置上には、DAWが音楽制作の各種の機能を果たすために使用する各種のパラメータ領域が設けられており、それぞれのパラメータ値が記憶されている。また、コントローラー101のどの操作子にどのパラメータが割り当てられているかを示す割り当て情報が、PC102のメインメモリまたはハードディスクなどの記憶装置上に記憶されている。PC102上で動作しているDAWは、コントローラー101から送信される操作子を特定するIDとその操作内容を示すデータを受信すると、上記割り当て情報を参照してそのIDで特定される操作子に割り当てられているパラメータを特定し、受信した操作内容に応じて、上記記憶装置上に記憶されているそのパラメータの値を書き替える。書き替えられたパラメータの値に応じて、上記操作された操作子のLEDの表示状態を変更する必要がある場合は、PC102からLEDの表示状態を変更するためのデータをコントローラー101に送信し、コントローラー101は該データに応じて操作子のLEDの点灯/消灯状態を制御する。コントローラー101の操作子で制御できるDAWのパラメータは、DAWに関係する全てのパラメータである。例えば、信号処理の内容を制御するパラメータ(音量レベルの値やパンの値など)、機能を制御するパラメータ(早送り速度や巻き戻し速度など)、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)に関するパラメータ、GUIを制御するパラメータ(ウィンドウのスクロールバーの操作量など)などがある。
【0020】
図3および図4に示したスライダ303の操作方法には複数の態様がある。
【0021】
第1の操作態様は、今回の操作が発生した時点(後述する図5の処理が起動された時点)でスライダ303に割り当てられている操作対象パラメータの値を変更する操作の態様である。第1の操作態様は、スライダ303以外の操作子に対して何らの操作を行うことなく、スライダ303を単独でスライド操作する態様である。なお、「スライダ303以外の操作子に対して何らの操作を行うことなく」というのは、特にモード切替SW305とシフトSW302が押されていないことが条件であることを示すものである。モード切替SW305とシフトSW302以外の他のSWについては、スライダ303と同時に押されていたとしても、当該他のSWで制御する機能とスライダ303で操作する機能とが関連しない限り、当該他のSWとスライダ303とが同時操作されても問題はない。通常(モード切替SW305およびシフトSW302を押さない状態のとき)、スライダ303のLEDは、割り当てられているパラメータの現在値を示す位置のLEDが点灯した状態であり、これを見ることでユーザはパラメータの現在値を知ることができる。この状態で、スライダ303内の任意の位置で第1の操作態様のスライド操作を行うと、指の左右の移動距離に応じた量だけ、操作対象パラメータの値を増減することができる。なお、パラメータの値を増加させるか減少させるかは、指の移動方向に応じて決定する。
【0022】
第1の操作態様の操作は、押し込み操作により行うこともできる。例えば、モード切替SW305を押さない状態で、図4の点灯LED401の右側あるいは左側のLEDが消灯している領域で押し込み操作を行うことにより、操作対象パラメータの値を、所定量(その量は予め設定しておくことができる)だけ、当該押し込み操作を行った位置が点灯LEDの右側か左側かに応じて、増減させることができる。この場合、押し込みを所定時間以上続けてから指を離した場合、その押し込みを続けている間はパラメータ値の前記所定量の増減を繰り返すようにしてもよい。
【0023】
スライダ303の第2の操作態様は、スライダ303の操作対象パラメータの種類を切り替える操作の態様である。具体的には、モード切替SW305を押しながら(このときスライダ303内のLEDは全消灯する)、スライダ303内の4つの部分領域304の中の何れか1つの部分領域内を押し込み操作する操作である。操作対象パラメータは、パラメータA,B,C,Dの4種類の中からユーザが選択できる。図3,4では、4つのパラメータ種類に対応する部分領域を矢印(←→)で示した。例えば、スライダ303の操作対象パラメータを「パラメータC」に切り替えたいときは、モード切替SW305を押しながら、スライダ303内の切り替えたいパラメータを指定できる部分領域、つまり「パラメータC」の矢印に相当する部分領域内の任意の位置を押し込み操作する。なお、モード切替SW305を押し続けている間、現在割り当てられているパラメータ種類に対応するスライダ303内の部分領域のLEDを点灯させることにより、現在どのパラメータ種類が割り当てられているかを示すようにしてもよい。また、モード切替SW305を押しながら、スライダ303でスライド操作を行った場合は、そのスライド操作の指を離した位置で押し込み操作が為されたとみなしてパラメータ種類の切り替えを行うようにしてもよい。
【0024】
なお、上記部分領域の分け方や、どのパラメータ種類をどの部分領域で指定できるようにするかは、予め設計時に定められているものとする。ただし、これらをユーザが任意に設定できるようにしてもよい。また、部分領域がどのように分けられているかや、どの部分領域でどのパラメータを指定できるかが分かるように、図3,4の304のような表示や印刷をパネル面に行うとよい。
【0025】
スライダ303の第3の操作態様は、上記第1の操作態様の操作でパラメータ値の変更を行う場合に比較して、より細かい分解能で、パラメータ値の変更を行う操作の態様である。具体的には、(モード切替SW305を押さない状態で)シフトSW302を押しながら、スライダ303のスライド操作を行うことで、通常より細かい分解能でパラメータ値の変更を行うことができる。すなわち、スライダ303に対して行う第1の操作態様の操作および第3の操作態様の操作は、何れも、スライド操作した指の移動距離に応じて操作対象パラメータの値を変更する点は同じであるが、シフトSW302を押さない状態のときは通常の分解能でパラメータ値を変更し、シフトSW302を押した状態のときは通常より細かい分解能でパラメータ値を変更する。例えば、スライド操作した指の移動距離に所定の係数(この係数が分解能の値となる)を乗算してパラメータ値の変更量を決定するのであれば、シフトSW302を押さない状態のときの係数を大きくし、シフトSW302を押した状態のときの係数を小さくすればよい。
【0026】
第3の操作態様の操作は、押し込み操作により行うこともできる。例えば、モード切替SW305を押さない状態で、シフトSW302を押しながら、図4の点灯LED401の右側あるいは左側のLEDが消灯している領域で押し込み操作を行うことにより、操作対象パラメータの値を、所定量(分解能に相当するその量は、第1の操作態様の操作をスライダ303に対する押し込み操作で行う場合の所定量より小さい値に予め設定しておく)だけ、当該押し込み操作を行った位置が点灯LEDの右側か左側かに応じて、増減させることができる。この場合、押し込みを所定時間以上続けてから指を離した場合、その押し込みを続けている間はパラメータ値の前記所定量の増減を繰り返すようにしてもよい。
【0027】
図5は、CPU201が実行するスライダの操作処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、スライダ303に対する操作が終わったときに実行される。上述したようにスライダ303に対する操作には第1〜第3の操作態様があるが、何れの操作態様の操作の場合も、スライド操作または押し込み操作で指を離したとき(リリースしたとき)に、CPU201がそれを検出し本処理を実行する。
【0028】
まず、ステップ501で、今回行われた操作の操作態様と操作内容を検出する。検出された操作態様が第1または第3の操作態様である場合は、操作内容として、その操作がスライド操作か押し込み操作かを示す情報、スライド操作であった場合は指の移動方向と移動距離に関する情報、および、押し込み操作であった場合は指を離した位置に関する情報が検出される。検出された操作態様が第2の操作態様である場合は、操作内容として、指を離した位置に関する情報が検出される。
【0029】
ステップ502で、検出された操作の操作態様を判断する。第1の操作態様であった場合はステップ503→504→505と進み、ステップ505で、使用する分解能の値を通常の値に設定する。第3の操作態様であった場合はステップ503→504→506と進み、ステップ506で、使用する分解能の値を通常より細かい値に設定する。第2の操作態様であった場合はステップ503→509と進む。
【0030】
ステップ505,506の後、ステップ507で、検出された操作内容に応じて、現在設定されている操作対象パラメータの値を変更する。この処理は、今回の第1または第3の操作態様の操作がスライド操作であった場合は、ステップ505または506で決定された分解能の値を用いて、ステップ501で検出された指の移動方向と移動距離に応じて、操作対象パラメータの値を増減する処理である。また、今回の第1または第3の操作態様の操作が押し込み操作であった場合は、ステップ505または506で決定された分解能の値を用いて、ステップ501で検出された指を離した位置に応じて、操作対象パラメータの値を増減する処理である。ステップ508では、変更後のパラメータの値に応じて、スライダ303内のLEDの点灯状態を変更する。
【0031】
第2の操作態様の場合は、ステップ509で、ステップ501で検出された操作内容に応じて新たに操作対象とするパラメータの種類を決定し、ステップ510で、決定した種類のパラメータを新たな操作対象として設定する。ステップ509の処理は、具体的には、指を離した位置が図3,4に示した4つの部分領域304の何れであるかに応じてパラメータ種類を決定する処理、例えばパラメータAの部分領域で指を離したのであれば操作対象をパラメータAとし、パラメータBの部分領域で指を離したのであれば操作対象をパラメータBとし、…という処理である。その後、ステップ508に進み、新たに操作対象とされたパラメータの値に応じてスライダ303内のLEDの点灯状態を変更する。
【0032】
なお、図5のフローはCPU201が実行する処理として説明したが、実際にはPC102で動作しているDAWが各種のパラメータを制御しているので、図5の処理はコントローラー101のCPU201とPC102でDAWを実行しているCPUとが協働して行っている。コントローラー101のCPU201からPC102のDAWに指示を与えてDAW側でのパラメータの制御を行っている点を広くとらえて、図5ではコントローラー101のCPU201の処理として説明した。この場合、コントローラー101側CPU201とPC102側CPUとの役割分担は、設計により任意に決めることができる。
【0033】
実際には、本実施形態では、コントローラー101において検出された操作情報をそのままPC102に送信し、PC102側のDAWで図5の処理を行っている。この場合、コントローラー101側では図5の制御に関する各種のデータ(例えば、スライダ303に現在設定されている操作対象のパラメータの種類、そのパラメータの現在値など)を持つ必要はなく、それらのデータはPC102側で持てばよい。また、ステップ508では、PC102側のDAWからの指令をコントローラー101で受信してLEDの表示変更を行えばよいが、LEDの表示変更を迅速に行うために、LED表示に関するデータをコントローラー101側でも持つようにしてもよい。
【0034】
一方、コントローラー101のCPU201で、図5のステップ507,510以外の全てのステップの処理を行い、ステップ507ではパラメータ値の変更コマンドをコントローラー101からPC102のDAWに送信してパラメータ値の変更を実行し、ステップ510では決定したパラメータ種類への切り替えコマンドをコントローラー101からPC102のDAWに送信してパラメータ種類の変更を実行してもよい。この場合、図5の制御に関する各種のデータは、コントローラー101側でも持つ必要がある。
【0035】
なお、スライダ303に割り当てる操作対象パラメータは、連続的に値が変化するものに限らず、離散的な値を取るものでもよい。
【0036】
上記実施形態では、横方向に指を操作するスライダ303としたが、縦方向に操作するものとしてもよい。また、スライダ303を実現するハードウェア構成は任意である。例えば、スライダ303の指を押し込み操作する領域に複数のオン/オフスイッチを並べて配置し、指の押し込み操作や移動やリリースを検出するようにしたものでもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、スライダ303を単体のハードウェア操作子で構成したが、タッチパネルディスプレイの一部を操作領域として構成してもよい。例えば、PC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォンなどに見られる全面がタッチパネルディスプレイになっており、そこに操作子を表すオブジェクトを表示し、表示されたオブジェクトをタッチ操作することで、パラメータ値の変更を行うものでもよい。
【0038】
上記実施形態では、PC102とコントローラー101とを接続したシステムに本発明を適用した例を示したが、本発明は、例えばデジタルミキサなどの装置のパネル面に図3に示したスライダやスイッチを配置して構成することも可能である。この場合、パネル面にハードウェア操作子であるスライダやスイッチを配置したものに本発明を適用することもできるし、パネル面に配置されたタッチパネルディスプレイ上にスライダやスイッチに相当するオブジェクトを表示し、表示されたオブジェクトをタッチ操作することで、パラメータ値の変更を行うものに本発明を適用することもできる。また、汎用のPCでタッチパネルディスプレイを備えたものにおいて、該タッチパネルディスプレイ上にスライダやスイッチに相当するオブジェクトを表示したものに適用することもできる。さらに、PCやデジタルミキサに接続してそれらをリモートコントロールするための汎用コントローラーであって、タッチパネルディスプレイを備えたものに、本発明を適用することも可能である。
【0039】
上記実施形態では、モード切替SW305を押しながらスライダ303の部分領域を押し込み操作する操作を第2の操作態様としたが、スライダ303の4つの部分領域の何れか1つを、所定時間内に複数回押し込み操作したり(マウスのダブルクリックのような操作)、所定時間以上長く押し込み操作したりすることで、パラメータの種類を切り替えるようにしてもよい。
【0040】
上記実施形態では、モード切替SW305やシフトSW302を押さない状態でのスライダ303の操作を第1の操作態様とし、モード切替SW305を押した状態でのスライダ303の操作を第2の操作態様とし、シフトSW302を押した状態でのスライダ303の操作を第3の態様とした。これは、実施形態として、ユーザの利便性を考慮した好適で実用的な構成例を説明したものである。すなわち、ユーザにより頻繁に行われるであろう操作(第1の態様の操作、すなわち通常の分解能でのパラメータの値の調整)を、最も簡単な、最も操作しやすい、最も一般的な態様の操作で実現し、一時的に、ときどき行われる操作(例えば第2の操作態様、すなわち操作対象パラメータの種類の変更)を少し特徴的な、先の第1の操作態様の操作よりも少し操作しにくい態様の操作で実現しているものである。
【0041】
ただし、少なくとも、同じ操作領域に対する操作の態様として、3つの異なる操作態様があればよい。従って、例えば、(1)他のスイッチを押すことなくスライダ303を操作すること、(2)所定の切替SWを押しながらスライダ303を操作すること、(3)シフトSWを押しながらスライダ303を操作すること、(4)スライダ303内の任意の位置を所定時間内に複数回押し込み操作すること、(5)スライダ303内の任意の位置を所定時間以上長く押し込み操作すること、などの種々の異なる操作の態様を、適宜、第1から第3の操作態様として使用することが可能である。
【0042】
上記実施形態における操作内容は、パラメータの値の変更量や新しい値を指示できる情報であればよい。上記操作内容は、指の移動量や操作位置以外に、操作した圧力や、操作している時間などでもよい。例えば、操作対象パラメータの値をスライダ303のスライド操作(第1の操作態様の操作)で調整する代わりに、スライダ303の任意の位置を指で押す圧力に応じて操作対象パラメータの値を調整したり、スライダ303の任意の位置を指で押し続けた時間に応じて操作対象パラメータの値を調整したりする構成でもよい。第2や第3の操作態様の操作でも同様であり、例えば、モード切替SWを押しながら、スライダ303の任意の位置を押すとき、そのスライダ303における指の圧力に応じてパラメータ種類の切替を行うようにしてもよい。
【0043】
上記実施形態では、スライダ303の部分領域を4つとして説明したが、部分領域の数は任意の個数で構成してよい。また、スライダ303の部分領域として使う領域は、必ずしもスライダ(操作領域)の全領域とする必要はなく、操作領域の一部を使う構成でもよい。いずれにせよ、パラメータの値を変更する操作領域、それ自体(その全領域あるいは一部領域)を使って、その操作領域へ割り当てる操作対象パラメータの種類の変更を指示できる構成であればよい。
【0044】
上記実施形態によれば、選択画面などを表示するディスプレイを備えていない装置であっても、タッチ型操作子に対する第2の操作態様の操作により、該タッチ型操作子自身に割り当てる操作対象パラメータの切り替えを行うことができるので、操作対象パラメータの切り替えのための構成が非常に簡易でコンパクトである。例えば、タッチ型操作子の他に、切り替えスイッチだけ設ければよい。また、パラメータの値の調整に使う操作子、そのものを使って、その操作子に設定する操作対象のパラメータの種類も切り替えるため、その切り替えの操作が簡易で、分かり易くなり、パラメータの種類の切り替えとパラメータの値の調整を連続的に迅速に、円滑に、行えるようになる。また、タッチ型操作子の所定の部分領域を、所定時間以上長押ししたり所定時間以内に複数回タッチすることで切り替える方式では、タッチ型操作子だけあれば自分自身の第2の操作態様の操作で自分自身に割り当てるパラメータを切り替えることができ、その構成が非常に簡易である。構成が簡易になることによりコストを抑えることもできる。また、操作する構成要素が少なく、簡単、迅速、正確な操作ができ、操作性があがる。さらに、シフトスイッチを押しながら通常操作を行うという簡単な操作で、パラメータの値を微調整することもできる。
【符号の説明】
【0045】
101…コントローラー、102…PC、103…電子楽器、104…デジタルミキサ、105…スピーカ、201…中央処理装置(CPU)、202…ROM(リードオンリメモリ)、203…RAM(ランダムアクセスメモリ)、204…検出回路、205…操作子、206…表示回路、207…USBインターフェース(I/F)、210…バスライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータ制御装置であって、
操作を受け付ける操作領域と、
受け付けた操作の態様と内容を検出する検出手段と、
検出した態様が、第1態様であるか、あるいは、第2態様であるかを判定する判定手段と、
前記検出した態様が第1態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータの値を変更するパラメータ値変更手段と、
前記検出した態様が第2態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータを切り替えるパラメータ切り替え手段と
を備えることを特徴とするパラメータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラメータ制御装置において、
前記判定手段は、前記第1態様と第2態様のほかに、検出した態様が第3態様であるか否かを判定するものであり、
前記パラメータ値変更手段は、前記検出した態様が第1態様であると判定されたときは、その操作の内容に応じて、通常の分解能でその操作領域の操作対象のパラメータの値を変更し、前記検出した態様が第3態様であると判定されたときは、その操作の内容に応じて、通常より細かい分解能でその操作領域の操作対象のパラメータの値を変更する
ことを特徴とするパラメータ制御装置。
【請求項3】
操作を受け付ける操作領域と、該操作領域の操作内容に応じて操作対象のパラメータの値を制御する処理手段とを備えたシステムにおけるパラメータ制御方法であって、
前記処理手段が、前記操作領域において行われる操作の態様と内容を検出するステップと、
前記処理手段が、前記操作領域に対する操作の態様が、第1態様であるか、あるいは、第2態様であるかを判定する判定ステップと、
前記処理手段が、前記検出された操作の態様が第1態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータの値を変更するステップと、
前記処理手段が、前記検出された操作の態様が第2態様であると判定されたとき、その操作の内容に応じて、その操作領域の操作対象のパラメータを切り替えるステップと
を備えることを特徴とするパラメータ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8252(P2013−8252A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141265(P2011−141265)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】