説明

パラレルメカニズム装置

【課題】 エンドエファクタの位置及び姿勢をより精度よく制御できるようにする一方で、その駆動機構をコンパクトに構成することを目的としている。
【解決手段】 加工装置は、6本のストラッド16を備え、これらストラッド16は、ベースフレーム20のノード22に2本1組で可動コア24を介して支持される。ストラッド16は自在軸継手17を介して加工ヘッド18に連結される。可動コア24は、半球型の一対の単位コアからなり、各ストラッド16は単位コア24aを貫通して設けられる。ストラッド16には、レール16aとラック16bとが固定され、単位コア24a内にはレール16aを案内するガイドと、ラック16bに噛合してモータ駆動されるピニオンとが設けられる。単位コア内において、ストラッド16の一方側にはガイドが配設され、他方側にはピニオンが配設され、ストラッド16等に被さるようにモータが配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルメカニズム機構を利用した加工装置等のパラレルメカニズム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からベースとエンドエフェクタとを複数の駆動軸(ストラッド)によって接続し、各ストラッドを協調してその軸方向に進退(伸縮)駆動することによりエンドエファクタの位置及び姿勢を制御するパラレルメカニズム機構を利用した装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、図6に示すような装置が開示されている。
【0004】
この装置は、同図に示すように6本のストラッド3を備えており、2本1組のストラッド3を、ベースフレーム1に設けられた3箇所のノード2(リング状の支持部分)で支持した構成となっている。各ストラッド3は、球型の可動コア5を介してノード2に対してその軸方向変位及び揺動が可能な状態で支持されており、1つのノード2に支持される2本のストラッド3の先端は、互いに他のノード2に支持されるストラッド3の先端に連結され、2本1組で自在軸継手を介してエンドエフェクタ6に連結されている。
【0005】
各可動コア5は、半球型の一対の単位コアが組み合わされることにより構成されており、各ストラッド3がそれぞれ単位コアを貫通する状態で設けられている。そして、各ストラッド3がこれら単位コアの内部に収納された駆動手段により駆動されることにより、各ストラッド3の軸方向の移動量に応じたエンドエファクタ6の位置及び姿勢の切換えが行われるように構成されている。
【特許文献1】特表2004−512476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置において、駆動手段は、ガイド部材を兼ねる複数のローラにより前記ストラッドをその両側から挟み込み、そのうちの一つ(駆動ローラ)をモータにより駆動することによりその摩擦力でストラッドを駆動するように構成されている。そのため、スリップによる駆動誤差が生じる可能性がある。従って、この点を改善してエンドエファクタの位置及び姿勢をより精度良く制御できるようにすることが望まれる。なおこの場合、各単位コアは、上記の通り半球型に構成されるため、モータを初めとするストラッドの駆動機構をこの半球型のスペース内にコンパクトに収め、これにより可動コアの大型化を抑えて装置全体をコンパクトに構成するのが好ましい。特に、エンドエファクタの位置及び姿勢の高速切換えが要求される場合には高出力のモータが要求されるが、そのような場合でも、可動コア(単位コア)をコンパクトに構成できるように配慮する必要がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、エンドエファクタの位置及び姿勢をより精度よく制御できるようにする一方で、その駆動機構をコンパクトに構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、半球型の一対の単位コアが互いに重ね合わされてなる複数個の球型可動コアと、これら可動コアを所定の配置で転動可能に保持するベースフレームと、前記可動コアの各単位コアにそれぞれ貫通した状態で設けられる複数本のストラッドと、これらストラッドの先端に連結されるエンドエフェクタと、前記各単位コア内に収容されるモータを有し、かつこのモータの作動により前記単位コアに対して前記ストラッドをその軸方向に相対的に進退駆動する駆動手段とを備え、前記複数本のストラッドをそれぞれ前記駆動手段により個別に駆動することにより前記エンドエフェクタの位置及び姿勢を制御するように構成されたパラレルメカニズム装置において、前記駆動手段は、前記ストラッドのうち一方の側面に設けられてその軸方向に延びる被ガイド部と、前記ストラッドのうち他方の側面に設けられてその軸方向に延びるラックと、前記被ガイド部を案内するガイド部材と、前記ラックに噛合して前記モータにより回転駆動されるピニオンとを有し、前記単位コア内において、前記ストラッドを挟んでその軸方向と直交する方向の一方側に前記ガイド部材が配設される一方、他方側に前記ピニオンが配設され、さらに前記モータがストラッドを挟んで単位コア同士の合わせ面側とは反対側の位置に該ストラッド、ガイド部材およびピニオンに被さるように配設されているものである(請求項1)。
【0009】
この構成によると、モータの回転運動がラックとピニオンの噛合わせによりストラッドの直進運動に変換され、これによりストラッドがガイド部材に沿って進退駆動される。このような駆動方式によると、ストラッドに対する駆動伝達部分で従来のようなスリップが生じる余地がなく、スリップによる駆動誤差の発生が解消される。しかも、ストラッドの一方の側面に被ガイド部を、他方の側面にラックを設け、単位コア内においてガイド部材とピニオンとをストラッドの両側に振分けて配置しているので、単位コアの最大直径部分にガイド部材とピニオンとが効率良く配置される。さらに、モータがその上側に被さるように配置されるため、前記最大直径部分から離れた位置でもモータの収納スペースが好適に確保され、比較的高出力(トルク)の大面積のモータを効率良く収容することが可能となる。
【0010】
このパラレルメカニズム装置においては、前記ガイド部材として複数のガイド部材が前記ストラッドと平行な方向に並べられた状態で離間配置されているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
すなわち、単位コア内部の最大直径部分の広いスペースを利用して複数のガイド部材を配置することにより、ガイド部材の摺動面積を抑えながらストラッドを安定して案内することが可能となる。
【0012】
また、このパラレルメカニズム装置において、前記モータは、前記単位コアに固定される筒型のステータと、その内側に回転可能に支持される筒型のロータとを備えた中空型モータからなり、かつ前記ストラッドと直交する軸回りに回転駆動力を発生するように前記可動コア内に配設され、前記ロータの内側のスペースには、前記モータの回転位置検出用のエンコーダが配設されているのが好ましい(請求項3)。
【0013】
この構成によると、前記モータとしてロータ径の比較的大きい高出力(トルク)のモータを搭載する一方で、ロータ内側のスペースをエンコーダの収容スペースとして利用した合理的な構成が達成される。
【0014】
また、上記の各パラレルメカニズム装置においては、前記ピニオンとして前記ラックに対してその長手方向に間隔を隔てて噛合する一対のピニオンが設けられるとともに前記モータの回転駆動力をこれらピニオンに伝達する駆動伝達機構が設けられ、さらにこの駆動伝達機構に、前記各ピニオンを互いに反対回りに付勢するプリロード機構が組込まれているのが好ましい(請求項4)。
【0015】
この構成によると、各ピニオンが互いに反対回りに付勢されることによりラックとピニオンの間のバックラッシュが解消される。そのため、バックラッシュによる駆動誤差の発生が有効に防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパラレルメカニズム装置によると、ラックとピニオンを使ったギア駆動方式によりストラッドを駆動するため、フリクション駆動方式の従来装置のようにスリップを伴うことがなく、確実に、かつ正確にストラッドを駆動することができる。従って、スリップによる駆動誤差の発生を防止して、エンドエファクタの位置及び姿勢を精度よく制御できるようになる。しかも、単位コア内に、ストラッドを中心としてガイド部材、ピニオンおよびモータといった駆動機構をコンパクトに配置することができるので、単位コア(可動コア)をコンパクトに構成してパラレルメカニズム装置の省スペース化に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1および図2は本発明に係るパラレルメカニズム装置からなる加工装置を概略的に示しており、図1は側面図で、図2は平面図でそれぞれ加工装置を示している。
【0019】
これらの図に示すように、加工装置は、固定台11と、その上に敷設された一対の固定レール13に沿って移動するベース本体12を有しており、このベース本体12上に装置本体10を備えている。ベース本体12は、サーボモータ14を駆動源とする駆動機構に連結されており、前記モータ14の作動により装置本体10と一体に固定レール13に沿って移動するようになっている。なお、図2では、固定レール13やモータ14はカバーによって被われている。
【0020】
装置本体10は、三角形を基本としたトラス構造からなるベースフレーム20を有している。このフレーム20には、三角形の配置で3つのノード22(リング状の支持部分)が設けられており、これらノード22にそれぞれ2本のストラッド16が挿入されている。
【0021】
各ストラッド16は、後述する可動コア24を介してその軸方向変位および揺動が可能な状態でノード22に対して支持されている。
【0022】
1つのノード22に支持される各ストラッド16の先端は、互いに他のノード22に挿入されたストラッド16の先端に連結されており、それぞれ2本1組として自在軸継手17を介して加工ヘッド18(エンドエフェクタ)に連結されている。詳しく図示していないが加工ヘッド18には、主軸およびこの主軸を回転駆動するためのモータ等からなる主軸ユニットが内蔵されており、前記主軸にエンドミル等の回転工具が装着可能となっている。
【0023】
なお図1中、符号19は、ベースフレーム20に設けられる不図示の支持部分と加工ヘッド18とを連結する伸縮可能な中空ロッドで、前記主軸ユニットに対する電力や冷却オイルの供給ラインがこのこの中空ロッド19の内部に収納されている。この中空ロッド19と加工ヘッド18とは自在軸継手を介して連結されており、これにより加工ヘッド18の位置および姿勢の変更に中空ロッド19が追従可能となっている。
【0024】
前記可動コア24は、図3に示すように、半球型の一対の単位コア24aからなり、これら単位コア24aが重ね合わされることによって全体として球型に構成されている。
【0025】
両単位コア24aは、周方向に一列に並ぶ複数の剛球29(図4に示す)を介して互いに重ね合わされており、さらにその全体をスフェリカルベアリング25により転動可能に保持された状態で、このベアリング25を介して前記ノード22に保持されている。これにより、両単位コア24aが一体的に転動可能に、しかも単位コア24a同士がそれらの合わせ面と直交する軸回りに相対的に回転可能な状態でノード22に対して支持されている。なお、スフェリカルベアリング25は、同図に示すように一対の単位ベアリング25a,25bから構成され、これら単位ベアリング25a,25bが可動コア24の互いに反対側から嵌め合わされることにより可動コア24を転動可能に保持するように構成されている。
【0026】
そして、可動コア24の各単位コア24aに対してそれぞれストラッド16が貫通して設けられ、これら単位コア24a内に収納される後記サーボモータ35により各ストラッド16がその軸方向に個別に進退駆動されることにより、図1に二点鎖線で示すように、各ストラッド16の移動量に応じた加工ヘッド18の位置及び姿勢の切換えが行われるようになっている。
【0027】
以下、図4および図5を参照しつつ可動コア24(単位コア24a)の構成とともにストラッド16の駆動機構について詳細に説明する。
【0028】
これらの図に示すように、各単位コア24aは、有底ドーム型の中空のケース30を有している。このケース30は、その内部が内底部31と平行な中間フレーム32により上下(図4で上下)に仕切られている。ケース30の側面部分であって、その底部近傍には一軸方向に開口する一対の開口部30aが形成されており、前記ストラッド16が、一方側の開口部30aからケース30内に挿入され、前記内底部31と中間フレーム32との間を通って他方側の開口部30aを介してケース30から導出されている。これによりストラッド16が、ケース30の中央を横断するように単位コア24aを貫通している。
【0029】
ストラッド16は、中空の矩形断面を有しており例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)から構成されている。ストラッド16には、その一方(図4では左側)の側面に長手方向に亘ってレール16a(本発明の被ガイド部に相当)が一体的に固定されている。このレール16aは、ケース30の内底部31に固定された一対のガイド33(本発明のガイド部材に相当)、詳しくはストラッド16と平行な方向に並べられた状態で離間配置される一対のガイド33に装着されており、これによって単位コア24aに対してストラッド16がその長手方向に相対的に移動可能となっている。
【0030】
一方、ストラッド16の側面のうちレール16aとは反対側の側面には、ストラッド16の長手方向に延びるラック16bが一体的に固定されている。このラック16bは外向き、つまり歯先がストラッド16側とは反対側を向く状態で固定されており、このラック16bに対して外側から一対のピニオン52,56が噛合している。
【0031】
両ピニオン52,56は、ストラッド16を挟んで前記ガイド33とは反対側のスペースに、ストラッド16の長手方向に所定の間隔を隔てて配設されている。
【0032】
これらのピニオン52,56はそれぞれ、ケース30と中間フレーム32との間に回転自在に支持された支持軸53,57に固着されている。これらの支持軸53,57には、さらにギア51,55が段違いで固着されており、これらギア51,55に対して、前記支持軸53,57の略中間位置に配置される支持軸45に固着された上下一対のギア46,47がそれぞれ噛合している。この支持軸45には、前記ギア46,47の上側に、さらに第3のギア44が固着されており、このギア44が、中間フレーム32の下面に垂下姿勢で支持された中間ギア42を介して駆動ギア41に噛合している。つまり、後述するサーボモータ35によりこの駆動ギア41が回転駆動されると、その回転駆動力がギア42,44を介して支持軸45に伝達され、さらにギア46,51を介して支持軸53へ伝達されるとともにギア47,55を介して支持軸57へ伝達される。これによりピニオン52,56が同一方向に同速度で回転駆動され、両ピニオン52,56とラック16bとの噛み合いにより前記ストラッド16が前記両ガイド33に案内されつつその長手方向に進退駆動されるようになっている。
【0033】
なお、サーボモータ35の回転駆動力を両ピニオン52,56に伝達する上記の駆動伝達機構には、ピニオン52,56を互いに反対回り(当実施形態では、図5中に破線矢印で示す方向)にプリロードするための機構(プリロード機構)が組込まれており、これによりラック16bとピニオン52,56の間のバックラッシュが解消されるようになっている。具体的に説明すると、前記ピニオン52,56にそれぞれ回転駆動力を伝達するギア51,55、およびこれらギア51,55に噛合するギア46,47がそれぞれハスバギアから構成され、かつ一方側のピニオン52への駆動伝達用のギア46、51の歯の傾き方向と他方側のピニオン56に対する駆動伝達用のギア47、55の歯の傾き方向とが互いに逆向きに設定されている。また、図4に示すように、ギア46,47が固着されている支持軸45の末端支持部分に皿バネ48が介装されており、その弾発力で支持軸45が軸方向に付勢されるように構成されている。つまり、皿バネ48の弾発力により支持軸45を介してギア46,47が軸方向に押し上げられると、上記のようにギア46,51およびギア47、55がハスバギアから構成されている結果、軸方向の変位がギア51,55の回転方向の変位に変換される。このとき、ギア46,51およびギア47、55の歯の傾き方向が互いに逆向きに設けられていることにより、ギア51,55が互いに反対回りに回転し、さらにピニオン52,56が互いに反対回りに回転してそれぞれラック16bの歯面に当接した状態となる。このように皿バネ48の弾発力によりピニオン52,56が互いに反対回りに付勢された状態とされる結果、ラック16bとピニオン52,56との間のバックラッシュが解消されるようになっている。
【0034】
一方、ケース30内において中間フレーム32よりも上側のスペース、つまりストラッド16を挟んで単位コア24a同士の合わせ面側とは反対側の位置には、ピニオン52,56を駆動するサーボモータ35がストラッド16、ガイド33およびピニオン52,56等に被さるように配置されている。
【0035】
このサーボモータ35は、図4に示すように、ケーシング35aを介して中間フレーム32に固定される円筒型のステータ36と、このステータ36内に配置されて前記ケーシング35aに回転可能に支持される円筒型のロータ37とを備えた中空のサーボモータからなり、前記ロータ37の内側のスペースには、さらに回転位置検出用のエンコーダ38が配設された構成となっている。
【0036】
サーボモータ35は、その回転中心がストラッド16の略真上に位置するように配置されている。そして、前記ロータ37およびエンコーダ38の出力軸が、中間フレーム32にベアリング40を介して下向きに支持されている前記駆動ギア41に対して連結されている。これによりサーボモータ35が作動してロータ37が回転すると、これと一体的に駆動ギア41が回転するようになっている。
【0037】
なお、可動コア24を構成する一対の単位コア24aの内部構成は、両単位コア24aの合わせ面を境に点対称の構成となっており(図4参照)、それ以外の構成は全く共通した構成となっている。
【0038】
以上説明した加工装置では、加工ヘッド18に回転工具をセットし、各ストラッド16を個別に進退駆動することにより、加工ヘッド18の位置や姿勢をワークに対して切換えながら加工を進めるが、この加工装置では、ストラッド16の駆動機構に関して、上記のようにストラッド16をガイド33により案内しながら、ラック16bとピニオン52,56との噛合わせによりストラッド16を駆動するように構成しているので、フリクション駆動によりストラッドを駆動する従来のこの種の装置、つまりストラッド16を複数のローラで挟み込み、ローラの摩擦力でストラッドを進退駆動する装置に比べて加工ヘッド18の位置や姿勢の制御を精度良く行うことができる。
【0039】
すなわち、従来の装置では、ローラの摩擦力でストラッドを駆動するため、ローラの摩耗や押付力の不足によりスリップが発生し、これにより駆動誤差が発生する可能性がある。これに対して上記の加工装置によると、ラック16bとピニオン52,56との噛合わせによりストラッド16を駆動するギア駆動方式を採用しているのでスリップが発生する余地がなく、スリップによる駆動誤差を伴うことがない。しかも、この加工装置ではストラッド16をダブルピニオン駆動とし、さらに上記のようにプリロード機構を設けてピニオン52,56を互いに反対回りに付勢することにより両ピニオン52,56とラック16bの間のバックラッシュを解消するように構成しているので、ギア駆動方式を採用しながらもバックラッシュによる駆動誤差を伴うことが殆どない。
【0040】
また、従来の装置では、ローラがストラッドのガイドとしての機能を兼ねているため、ストラッドに対する各ローラの押付圧をバランスさせることが要求されるが、実際には各ローラの押付圧をバランス良く保つことが難しい。そのため、ストラッドの移動には振れや誤差を伴うこととなり正確に軸方向に進退駆動することが難しい。これに対して、この加工装置では、ストラッド16にレール16aを固定しこれを単位コア24aに設けたガイド33により案内する構成となっているので、ストラッド16をその軸方向に確実に、かつ正確に移動させることができる。特に、この装置では、各単位コア24a内にそれぞれガイド33を2つ並べて離間配置し、これらガイド33によりストラッド16(レール16a)を案内するように構成しているので、摺動面積を抑えながら、ストラッド16をスムーズかつ安定した状態で案内することができる。
【0041】
従って、この加工装置によると、ストラッド16への駆動伝達機構およびストラッド16の案内機構の双方に関してその駆動誤差を従来装置に比して軽減することができ、その結果、加工ヘッド18の位置や姿勢の制御をより精度良く行うことができる。
【0042】
その上、この加工装置では、ストラッド16の一方の側面にレール16aを、他方の側面にラック16bを設けることにより、単位コア24a内において、ガイド33とピニオン52,56等とをストラッド16の両側に振分けて配置するようにしているので、単位コア24aの最大直径部分にガイド33とピニオン52,56等とを効率良く配置することができる。しかも、その上側、すなわちストラッド16、ガイド33およびピニオン52,56等の上側に被さるようにサーボモータ35を配置しているため、単位コア24aの最大直径部分から離れた位置でもサーボモータ35の収納スペースを好適に確保することができ、比較的高出力(トルク)の大面積のサーボモータ35を効率良く単位コア24a内に収容することができる。そのため、ストラッド16を駆動するための機構を半球型のスペース内にコンパクトに収めることができる。特に、サーボモータ35に関しては、上記のように中空型のモータを採用し、このモータ内側のスペースを利用してエンコーダ38を収容するように構成しているので、ケース30内の限られたスペース内にロータ径の比較的大きい高出力(トルク)のモータを搭載した上でエンコーダ38を効率よく収容することができる。
【0043】
従って、加工ヘッド18の位置及び姿勢の高速切換えが要求されるような場合でも、高出力のサーボモータ35を使ってストラッド16を確実、かつ正確に駆動することができる一方で、単位コア24a(可動コア24)をコンパクトに構成することができ、加工装置の省スペース化の要請に貢献することができるという利点もある。
【0044】
なお、以上説明した加工装置は、本発明に係るパラレルメカニズム装置の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、ストラッド16をダブルピニオン駆動とし、上記のようにプリロード機構を設けることによりラック16bとピニオン52,56との間のバックラッシュを解消するようにしているが、加工精度上、バックラッシュによる駆動誤差を無視できるような場合にはプリロード機構を省略した構成としてもよい。具体的には、皿バネ48を省略し、ギア46,47,51,55を平歯車から構成するようにしてもよい。また、ストラッド16をシングルピニオン駆動としてもよい。
【0046】
また、実施形態では、本発明のパラレルメカニズム装置として、回転工具を使ってワークを加工する加工装置を例について説明したが、本発明は、これ以外の装置についても勿論適用可能である。例えば、上記加工ヘッド18の代わりにエンドエフェクタとして溶接用ヘッドを備えた溶接装置や、エンドエフェクタとして塗装用ノズルを備えた塗装装置等についても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るパラレルメカニズム装置である加工装置を示す側面略図である。
【図2】加工装置を示す平面略図である。
【図3】加工装置の分解斜視図である。
【図4】単位コア(可動コア)の構成を示す断面図である(図5のA−A断面図)。
【図5】単位コア(可動コア)の構成を示す断面図である。
【図6】従来のパラレルメカニズム装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
10 装置本体
16 ストラッド
16a レール
16b ラック
17 自在軸継手
18 加工ヘッド
20 ベースフレーム
22 ノード
24 可動コア
24a 単位コア
35 サーボモータ
52,56 ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球型の一対の単位コアが互いに重ね合わされてなる複数個の球型可動コアと、これら可動コアを所定の配置で転動可能に保持するベースフレームと、前記可動コアの各単位コアにそれぞれ貫通した状態で設けられる複数本のストラッドと、これらストラッドの先端に連結されるエンドエフェクタと、前記各単位コア内に収容されるモータを有し、かつこのモータの作動により前記単位コアに対して前記ストラッドをその軸方向に相対的に進退駆動する駆動手段とを備え、前記複数本のストラッドをそれぞれ前記駆動手段により個別に駆動することにより前記エンドエフェクタの位置及び姿勢を制御するように構成されたパラレルメカニズム装置において、
前記駆動手段は、前記ストラッドのうち一方の側面に設けられてその軸方向に延びる被ガイド部と、前記ストラッドのうち他方の側面に設けられてその軸方向に延びるラックと、前記被ガイド部を案内するガイド部材と、前記ラックに噛合して前記モータにより回転駆動されるピニオンとを有し、
前記単位コア内において、前記ストラッドを挟んでその軸方向と直交する方向の一方側に前記ガイド部材が配設される一方、他方側に前記ピニオンが配設され、さらに前記モータがストラッドを挟んで単位コア同士の合わせ面側とは反対側の位置に該ストラッド、ガイド部材およびピニオンに被さるように配設されている
ことを特徴とするパラレルメカニズム装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラレルメカニズム装置において、
前記ガイド部材として複数のガイド部材が前記ストラッドと平行な方向に並べられた状態で離間配置されている
ことを特徴とするパラレルメカニズム装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパラレルメカニズム装置において、
前記モータは、前記単位コアに固定される筒型のステータと、その内側に回転可能に支持される筒型のロータとを備えた中空型モータからなり、かつ前記ストラッドと直交する軸回りに回転駆動力を発生するように前記単位コア内に配設され、
前記ロータの内側のスペースに、前記モータの回転位置検出用のエンコーダが配設されている
ことを特徴とするパラレルメカニズム装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のパラレルメカニズム装置において、
前記ピニオンとして前記ラックに対してその長手方向に間隔を隔てて噛合する一対のピニオンが設けられるとともに前記モータの回転駆動力をこれらピニオンに伝達する駆動伝達機構が設けられ、さらにこの駆動伝達機構に、前記各ピニオンを互いに反対回りに付勢するプリロード機構が組込まれている
ことを特徴とするパラレルメカニズム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−281383(P2006−281383A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105664(P2005−105664)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成16年11月1日から11月8日 社団法人日本工作機械工業会、株式会社東京ビッグサイト共催の「JIMTOF2004(第22回 日本国際工作機械見本市)」に出品
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【Fターム(参考)】