説明

パラレルリンク型作業装置

【課題】パラレルリンク型作業装置において、可動部に動力を伝達する動力伝達部のリンク等がベースの領域からはみ出ないようにする。
【解決手段】ベース4に扁平な回転型アクチュエータ6を3つ設ける。アクチュエータ6は、その回転出力軸がベース4に対して平行で、ベース4の中央に向き、かつベース4の中央から放射状に並ぶように配置、固定されている。各回転型アクチュエータ6の回転出力軸と可動部5とを平行リンク機構21で構成される動力伝達部で連結する。3つの回転型アクチュエータ6を駆動して可動部5の位置を制御する。ベース4に設けられたエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7で回転動力伝達手段15を介して可動部5に設けたエンドエフェクタ20を回転させる。平行リンク機構21はベース4の内側領域で移動することから、リンク等がベースの領域からはみ出ることはなく、安全が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルリンク型作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースとなる固定部材に複数のアクチュエータを取り付け、該アクチュエータの出力部に連結されたリンクをそれぞれ駆動して、各リンクの先端に取り付けた可動部の位置、姿勢を制御するようにしたパラレルリンク型作業装置は、種々の形態のものが開発されている。
【0003】
回転力を出力する回転型アクチュエータを駆動源として使用するパラレルリンク型作業装置として、例えば、固定部材に正三角形状の各辺にモータの出力軸が沿うように3つのモータを配置し、各モータの出力軸と可動部間を平行リンク機構で連結し、3つのモータを駆動制御することによって、可動部の姿勢(水平姿勢)を保持してその位置を制御できるようにしたパラレルリンク型作業装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
又、2つのモータを対向させて、その出力軸が6角形の基台の辺に平行となるように、6角形の基台の1つ置きの辺に配置し、各モータの出力軸にはリンクが接続され、該リンクの先端にはアームが接続され、アームの先端には1つのブラケット(可動部)が接続され、各モータの回転位置を制御することによってブラケット(可動部)の位置及び姿勢を制御するようにした6自由度のパラレルロボットに関する発明も知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特表昭63−501860号公報
【特許文献2】特開平6−270077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の回転型アクチュエータを使用したパラレルリンク型作業装置では、アクチュエータがベースの辺と略平行に配置されている。リンクはベースとなる固定部材の辺に対して略直角方向に揺動するように配置されている。そのため、リンク−ジョイント−ロッド−ジョイントからなる可動部を駆動するための動力伝達部の揺動は、ベース辺に対して直角な面上で行われている。
ところで、可動部の動作範囲を広くするためには、アクチュエータの揺動にともなう動力伝達部の空間的な変位量を大きくする必要があり、そのためには、動力伝達部のリンクやロッドを必要に応じて長くするのが一般的である。
【0007】
そうすると、動力伝達部の揺動面が固定部材のベース辺と直角であるために、動力伝達部が揺動した際に動力伝達部のリンクやロッドがベースでカバーされる領域より外にはみ出す。しかも、このはみ出し量は一定ではなく変化する。
このことは、人と共存して作業を行うことを想定した小出力の小型パラレルリンク型作業装置においては、接触や巻き込みの危険性のため、大変不都合な問題であった。
【0008】
回転型アクチュエータを用いたパラレルリンク型作業装置で可動部をある位置に位置決めする場合、動力伝達部のリンクの回転角は1つまたは2つが選択可能であり、動力伝達部のリンクやロッドがベースより外にはみ出す量が少ない回転角を選択して制御するということも想定できるが、これは後述する理由で採用することができない。
【0009】
図15は、従来の回転型アクチュエータを使用したパラレルリンク型作業装置のアクチュエータと可動部の配置を模式的に示したものである。この図15において、可動部100とベース(図示せず)は平行で、かつ可動部100中心線とベース中心線が一致している状態を示している。又、可動部100と連結され、図示していないアクチュエータの動力を伝達する動力伝達部のリンク101、ロッド102は1つしか図示していない。アクチュエータ(図示せず)の出力軸に取り付けられたリンク101の他端はジョイントでロッド102に接続され、該ロッド102の他端が可動部100にジョイントで接続されている。なお、この図15に示す状態では、可動部100面とベース面の距離に拘わらず、可動部100に接続される全てのロッドが可動部100に対して同じ角度をなしている。又、図16は図15のをリンク101の回転平面103と垂直な方向から見たときの説明図である。この回転平面103は、ベース中心から外方向に放射する方向と平行な面である。
【0010】
可動部100がある位置に位置決めされているときに、任意のアクチュエータ及び該アクチュエータに接続された動力伝達部において、図16に示すように、リンク101の回転中心と可動部100−ロッド102間のジョイント中心を結ぶ仮想線に対してロッド102が角度θの位相にあったとすると、前記仮想線に対して線対称となる位相がθ’である場合、ロッド102が前記仮想線に対してθ’の位相であっても、可動部100を同一位置に位置決め可能である。
しかし、前記仮想線に対して位相θ’の動力伝達部の状態は、負荷能力の問題で採用されない。それは以下の理由による。
【0011】
回転型パラレルリンク型作業装置の可動部100は、複数の動力伝達部(リンク101、ロッド102等)で空間的に支持されており、可動部100に作用する力は動力伝達部で負荷される。作用する外力に対して、動力伝達部の負荷能力が大きければ可動部100は剛に支持され、負荷能力が小さければ可動部100は柔に支持される。動力伝達部の負荷能力は、可動部100の面に対する動力伝達部の傾き角度、即ちロッド102の両端を結んだ線が可動部100の面となす角度(図16のα又はβの角度)により変化する。前記傾き角度が水平に近いほど、外力の水平成分に対する負荷能力が高くなり、垂直成分に対する負荷能力は低くなる。逆に前記傾き角度が垂直に近いほど、外力の垂直成分に対する負荷能力が高くなり、水平成分に対する負荷能力は低くなる。
【0012】
可動部100の位置、姿勢によって各動力伝達部の傾き角度は変化する。もし、各動力伝達部の傾き角度がそれぞれ異なっていれば、ある動力伝達部の負荷能力が低下しても残りの動力伝達部で負荷することが可能となるが、前記のように全ての動力伝達部で傾き角度が同一となる場合においては、全ての動力伝達部の負荷能力が同様に変化するので全体の負荷能力が変化することになる。特に各動力伝達部の傾き角度が直角に近づく、即ち各動力伝達部が平行に近づくほど、可動部100に水平に作用する外力に対して負荷能力が低下するので、水平方向の移動に高加速度を要求される事の多いパラレルリンク型作業装置ではそうなることを避けなければならない。このように、動力伝達部の空間的な姿勢を検討するに当たっては、各動力伝達部の角度が同一になる状態において検討を行い、可動部100の位置により傾き角度が直角になることがないか検討する必要がある。
【0013】
図16に示す位置に可動部100があるとき、リンク101の回転角度は図示のA、Bの2通りが考えられ、それに応じてロッド102の可動部100に対する角度もαとβの2つが考えられる。ところで、リンク101の回転中心位置は可動部100のロッド接続個所よりも外側(ベース中心から遠ざかる方向)にあるのが一般的であるので、ロッド102がベース中心からより内側にくるときのロッド角度βは、ベース中心からより内側にくるときのロッド角度αよりも必ず大きくなる。場合によってはβは直角に近づくため、水平方向の外力に対して不利であるので、アーム角度はAしか選ぶことができないのである。その結果、ロッド102とリンク101を接続するジョイント部分が、ベースより外方向にはみ出すことになる。
モータ等の回転型アクチュエータを、その回転出力軸が正三角形等のベースの辺に沿って配設されたものでは、上述したように、動力伝達部のアクチュエータの回転出力軸に取り付けられたリンク101は、ベースの辺を回転中心軸として該辺に直交する面103上で回転することになるから、必ず、リンク101とロッド102の接続点が、ベースよりはみ出して移動することになり、リンク101、ロッド102と人体や衣服を巻き込む等の恐れがあり、安全性に問題がある。この点を解決するには、リンク101とロッド102の接続点が最大はみ出す位置まで、ベースをカバーするような部材を配設することが、想定できるが、この対処法では小型のパラレルリンク型作業装置という目的からして不都合である。
以上の問題に鑑み、本発明では動力伝達部がベースからはみ出してしまう問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願請求項1に係る発明は、ベースと、可動部と、前記ベースの所定の位置に固定される3つの回転型アクチュエータと、該3つの回転型アクチュエータによって前記可動部の位置が制御されるように前記各回転型アクチュエータの回転出力軸と前記可動部を平行リンク機構で構成される動力伝達部で連結し、
前記ベースに取り付けられた少なくとも一つのエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータと、前記可動部に設けられ、エンドエフェクタの姿勢を制御する少なくとも一つの回転軸を有する回転機構と、前記エンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータの回転動力を前記回転機構の回転軸に伝達する少なくとも一つの回転動力伝達手段とを備え、3つの回転型アクチュエータにより前記可動部の位置が制御されると共に前記エンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータによりエンドエフェクタの姿勢が制御されるパラレルリンク型作業装置であって、
前記回転型アクチュエータは、扁平な形状を有するアクチュエータで構成され、前記回転出力軸の中心線はベースに対して平行で、かつベースの中央から放射状に並び、前記回転出力軸が前記ベース中央に向くように所定の位置に配置、固定されているものである。
請求項2係る発明は、前記回転型アクチュエータを、前記回転出力軸の中心線がベースの中央から等間隔に放射状に並ぶように所定の位置に配置、固定したものとした。又、請求項3に係る発明は、前記回転型アクチュエータを、前記ベースから垂下したアクチュエータ取付部材に取り付けられているものとした。請求項4に係る発明は、前記回転型アクチュエータを、前記ベースから上方に立設されたアクチュエータ取付部材に取り付けられているものとした。又、請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、アクチュエータ取付部材間を連接するカバーを設けた。請求項6に係る発明は、前記回転型アクチュエータを、減速器を使用しているものとした。
【発明の効果】
【0015】
動力伝達部の揺動をベース辺に対して平行にし、動力伝達部の揺動領域をベースがカバーする領域内とすることができ、作業者や周囲の配置物に対して動力伝達部が接触したり、巻き込みを起こすことを防止できる。また、扁平な形状のアクチュエータを使用しているため、外形の大型化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明に関連するパラレルリンク型作業装置の参考例の概要図である。図2は、図1の構成のパラレルリンク型作業装置を斜め上方から見たときの説明図であって、アクチュエータの配置を示すために、ベースとアクチュエータ固定部材は図示していない。
図3はエンドエフェクタの駆動系の説明図である。
この参考例は、6つの回転型アクチュエータ6を使用して可動部5の位置と姿勢を任意に決めることができ、かつ、可動部5上に固定した回転軸17をベース4に固定した1つのエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7を使用して連続回転させることができるようにした6自由度パラレルリンク型作業装置である。
【0017】
パラレルリンク型作業装置1のベース4は、基台3に固定された複数の支柱8により支持されている。該ベース4は、この参考例では六角形状に形成され、各辺から垂下したアクチュエータ取付部材9を有し、該アクチュエータ取付部材9に可動部5の位置、姿勢を制御するための位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6がそれぞれ取り付けられている。さらに、ベース4には1つのエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7(このアクチュエータも位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6と同様に回転型で構成されている)が取り付けられている。
アクチュエータ6は可動部5の位置及び姿勢を制御するための回転型アクチュエータであり、該回転型アクチュエータ6の回転出力軸12にはリンク11が固定されており、回転出力軸12と一体的に回転することができるようになっている。
【0018】
可動部5の位置と姿勢を制御するための回転型アクチュエータ6は、六角形のベース4の各辺に対してその回転出力軸12が垂直で、ベース4の中心に対して等間隔で放射状で、しかも、ベース4の中心に向かう向きに配置されている。回転型アクチュエータ6と可動部5は動力伝達部で接続されている。この動力伝達部は、回転型アクチュエータ6の回転出力軸12に固定されたリンク11と該リンク11とジョイント13を介してその一端が接続されたロッド10と、該ロッド10の他端で可動部5と接続するジョイント14で構成されている。
【0019】
ベース4の中心部に取り付けられたエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7の回転出力軸には図3に示すように、ジョイント19を介して回転動力伝達手段15が接続され、該回転動力伝達手段15の他端にはジョイント18を介して回転機構16が接続され、該回転機構16の回転軸17には可動部5の反対側に突出するようにエンドエフェクタ20が取り付けられるようになっている。回転動力伝達手段15は、この参考例ではスプライン穴を有するシャフト15aと該スプライン穴と係合するスプライン歯を有するシャフト15bで構成されるスプライン継手で構成された伸縮自在なシャフトで構成されている。
【0020】
又、ロッド10の両端に設けられたジョイント13、14は、一方のジョイントの自由度が2自由度であれば、他方のジョイントは3自由度の合計5自由度を構成している。さらに、回転動力伝達手段15の両端に設けられたジョイント18、19は、2自由度のジョイントで構成されている。
各位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6を駆動することによって、リンク11、ジョイント13、ロッド10、ジョイント14を介して、可動部5の3次元空間上の位置(直交するX、Y、Z軸上の位置)及び姿勢を制御する。又、エンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7を駆動しジョイント19、回転動力伝達手段15、ジョイント18を介して回転機構16の回転軸17の回転位置を制御して、エンドエフェクタ20の回転位置を制御することによって、各種作業を実施する。可動部5の位置や姿勢が変化しても、ベース4上に設けられたエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7の回転出力軸と可動部5上の回転機構16とを連結する回転動力伝達手段15は伸縮し、かつ、回転動力伝達手段15と可動部5の連結、及び回転動力伝達手段15とアクチュエータ7の回転出力軸との連結が2自由度のジョイント18、19で連結されているから、可動部5の位置、姿勢を変えても、エンドエフェクタ20の回転位置をアクチュエータ7で制御できるものである。しかも、このアクチュエータ7は、可動部5に搭載せず、ベース4に設けられているから、可動部5を軽量に構成することができるものである。
【0021】
上述したように、各位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6は、その回転出力軸12がベース4の中心に向かように放射状にベース4に固定されており、該回転出力軸12に固定されたリンク11は、該回転出力軸12の中心線に対して垂直な面上を回転する。
すなわち、この参考例では、六角形のベース4の各辺から垂下したアクチュエータ取付部材9に各位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6が取り付けられ、各位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6の回転出力軸12はベース4の中心に向かうように六角形の各辺に対してそれぞれ垂直に配置されているから、該回転出力軸12に固着されたリンク11は六角形のそれぞれの辺と平行な面上を回転する。
【0022】
そのため、リンク11とロッド10との接続点であるジョイント13がベース4より外にはみ出す可能性がある場合は、リンク11が水平(六角形のベース4のリンク11を駆動する回転型アクチュエータ6を取り付けた辺と平行)となったときであり、この状態でリンク11とロッド10との接続点がベース4からはみ出さないように六角形ベース4の辺の長さを決定すればよい。この場合、各位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6の回転出力軸12を六角形ベース4の辺の中間点に配置しておけば、六角形ベース4の辺の長さはリンク11の長さの2倍程度で良いものであり、ベース4自体が格別大きなものにはならない。従来のベースの辺に対して直交する方向に揺動するパラレルリンク型作業装置の場合と比較すると、従来のものは、リンクの回転面がベースの辺に対して直交する面であるから、必ずリンクとロッドの接続点がベース領域からはみ出ることになる。しかし、本参考例では、上述したように、リンク11がベース4でカバーされた領域からはみ出ることがないから、このリンク11,ロッド10の移動により、人体や衣服を巻き込む恐れが少なくなり、安全性を向上させることができる。
【0023】
可動部の位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6の種類は特に指定されないが、外径が大きく全長が短い外形を有する扁平なアクチュエータを用いる。すなわち、その回転出力軸方向の長さよりも、該軸方向と直交する方向の長さの方が長い扁平なアクチュエータで構成するもので、このアクチュエータをモータで構成する場合、例えば、電磁式アクチュエータや、特開2005−278331号公報に記載されたような多数の電極を有するロータとステータを多数積層してなる回転型静電式アクチュエータ等を用いればよい。
なお、エンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7も可動部の位置・姿勢制御用の回転型アクチュエータ6と同様に扁平なアクチュエータで構成してもよいものであり、この参考例では、同じアクチュエータを使用した例を示している。又、これらの回転型アクチュエータ6、7は、内部に減速器を備えるものを使用してもよいものである。
なお、上述した参考例では、可動部5がベース4に対して下方にある例が示されているが、安全性に影響がない限り、これを回転または倒置して配置しても何ら問題ない。
【0024】
図4は、本発明の第1の実施形態のパラレルリンク型作業装置の概要図であり、図5はベース、支柱、基台を取り除き、図4において斜め上方から見た説明図である。なお、図4、図5において、参考例の要素と同等の要素に対しては同一の符号を付している。
この第1の実施形態は、3つの位置制御用の回転型アクチュエータ6を使用して、可動部5の姿勢をベース4に対して保持したまま、3方向(3次元空間上の直交するX、Y、Z軸上の位置)に移動することができ、また、可動部5上に固定した回転機構16の回転軸17をベース4に固定した1つのエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7を使用して回転させることによって、該回転軸17に取り付けられたエンドエフェクタの回転、その回転位置を制御できるものであり、4自由度を有するパラレルリンク型作業装置である。
【0025】
可動部5上の回転軸17を回転するためのアクチュエータ7を除き、可動部5の位置を制御するための回転型アクチュエータ6は、六角形ベース4の1つ飛びの3辺に対してその回転出力軸が垂直であると同時に前記出力軸の中心線はベース4に対して平行であり、ベース4の中心に向けて等間隔で放射状に配置されている。
位置制御用の3つの回転型アクチュエータ6の回転出力軸12には、それぞれ平行リンク機構21で構成される動力伝達部を介して可動部5と連接されている。すなわち、回転型アクチュエータ6の回転出力軸12には、リンク22が固定されており、回転出力軸12と一体的に回転することができるようになっている。また、リンク22にはジョイント24、24を介して2本のロッド23、23が接続され、2本のロッド23,23の他端はジョイント25、25を介して可動部5に接続されている。リンク22→ロッド23→可動部5→ロッド23は平行四辺形の各辺に相当するように設計、配置されており、これにより平行リンク機構21が形成されている。可動部5には、3つの平行リンク機構21が接続されることになるため、その姿勢が固定される。この実施形態では、リンク22とロッド23の接続部、ロッド23と可動部5の接続部をベース4に対して平行にしているため、可動部5は常にベース4に対して水平の姿勢を保つことができる。
【0026】
可動部5上に設けられた回転機構16の回転軸17に取り付けられるエンドエフェクタ20を駆動する手段は、参考例と同じであり、ベース4上に固定したアクチュエータ7によりジョイント19、回転動力伝達手段15、ジョイント18、回転機構16の回転軸17を介してエンドエフェクタ20を駆動制御する。
回転動力伝達手段15の両端のジョイント18、19はユニバーサルジョイントなどの2自由度のジョイントで、また、回転動力伝達手段15はスプライン継手などの回転を伝え、伸縮自在の要素を使用することにより、可動部5が移動しても回転を伝達することが可能である。
【0027】
また、この第1の実施形態においても、可動部5がベース4に対して下方にある例を示されているが、安全性に問題がない限り、これを回転または倒置して配置しても何ら問題ない。
そして、この第1の実施形態においても、参考例と同様に扁平な回転型アクチュエータ6、7を用い、かつ、可動部5の位置制御用の回転型アクチュエータ6を、その回転出力軸12をベース4に対して平行で、ベース4の中心に向けて放射状に、等間隔にベース4に配置とする。これによって、該回転出力軸12に取り付けられる平行リンク機構21のリンク22が回転出力軸12の中心線に対して垂直な面上を回転するので、リンク22とロッド23との接続点がベースよりはみ出ることはなく、該パラレルリンク型作業装置が動作中に、人体や衣服等の巻き込みを極力回避でき、安全性を向上させることができるものである。
【0028】
図6、図7は、本発明に関連する別の参考例の概要説明図である。この別の参考例と第1の実施形態と相違する点は、可動部5の位置制御用の回転型アクチュエータ6が第1の実施形態とは逆向きにベース4に取り付けられ、かつカバー26が設けられている点であり、他の構成は第1の実施形態と同じである。図6は、この別の参考例のパラレルリンク型作業装置2aの側面図であり、図7は、図6において可動部側から見上げた図である。
【0029】
この別の参考例は、可動部5の位置を制御する3つの回転型アクチュエータ6が、その回転出力軸をベース4の中心から外の方向に向くように放射状に六角形状のベース4から、1つ飛びの辺に沿って垂下するアクチュエータ取付部材9に取り付けられている。
そして、回転型アクチュエータ6が取り付けられた六角形状のベース4の辺には、平行リンク機構21のリンクの運動領域を覆うようにベース4から垂下するカバー26が取り付けられている。これによって、平行リンク機構21のリンク22及びリンク22とロッド23との接続点は、カバー26によって覆われ、露出部分が少なくなることから、人体や衣服が、平行リンク機構21の運動によって、巻き込まれることを防止し、安全性を高めている。
なお、他の構成、及びパラレルリンク型作業装置の動作は第1の実施形態と同じである。
【0030】
図8は、図4,図5に示した本発明の第1の実施形態の変形例の第2の実施形態のパラレルリンク型作業装置2bの概要図である。第1の実施形態と相違する点は、位置制御用の回転型アクチュエータ6を取り付けるアクチュエータ取付部材9aがベースから上方に立設されていること、及び平行リンク機構21のロッド23を通すための開口部29がベース4に設けられている点であり、他は第1の実施形態と同じ構成である。この配置にすることで、作業空間とパラレルリンク機構の空間を分離することができる。又、パラレルリンク型作業装置としての動作は第1の実施形態と同じである。この第2の実施形態においても、平行リンク機構21の回転型アクチュエータ6の回転出力軸に取り付けられるリンク22がベース4からはみ出ることはなく、第1の実施形態と同様に安全性を向上させることができるものである。
【0031】
図9は、上述した第2の実施形態を変更した第3の実施形態の要部概要図である。この第3の実施形態は、第2の実施形態にさらに、カバー9bを付加したものであり、他は第2の実施形態と同じである。この第3の実施形態では、ベース4から立設されたアクチュエータ取付部材9a間を連接するようにした板部材からなるカバー9bが設けられることによって、六角形のベース4の各辺をアクチュエータ取付部材9aとカバー9bでとりかこみ、平行リンク機構21のリンク22の揺動領域が露出しないように覆って安全性を確保したものである。さらに、このアクチュエータ取付部材9aとカバー9bで囲まれた領域の天井部を蓋する蓋部を設けてこの領域(リンク22の揺動領域)を封鎖空間としてより安全性を図ってもよい。なお、他の構成、及びパラレルリンク型作業装置としての作用、動作は第2の実施形態と同じである。
【0032】
図10は、本発明の別の参考例の概要図である。又、図11はこの参考例における位置制御用の回転型アクチュエータ6と可動部5との連結関係を説明する説明図である。
この参考例は、図8に示した第2の実施形態の変形であり、第2の実施形態におけるベース4から立設された3つのアクチュエータ取付部材9aが所定角度傾けられており、このアクチュエータ取付部材9aに取り付けられる位置制御用の回転型アクチュエータ6も所定角度傾けて固定されたパラレルリンク型作業装置2dとなっている点で相違している。なお、図10ではアクチュエータ取付部材9aは図示していない。
【0033】
図11に示すように、位置制御用の回転型アクチュエータ6が水平面(ベース4の面又は基台3の面)に対して所定角度α傾けられていることから、平行リンク機構21を形成する2つのロッド23は所定角度α傾けてリンク22及び可動部5にジョイント24、25で連結されている。
以上の点が第2の実施形態と相違するものであり、他は第2の実施形態と同じである。
このように、平行リンク機構を維持するようにロッド23の接続個所に角度をつけることができれば、各平行リンク機構間で干渉が起こらない限り、また安全性に影響がない限り位置制御用の回転型アクチュエータ6を傾ける方向に特に制約はない。
【0034】
図12は本発明の応用例の概要図である。又、図13はこの応用例において、位置が制御される第1の可動部5’と、それを制御する3つの回転型アクチュエータ6と、第1の可動部5’の位置を制御する平行リンク機構21と基台3のみを図示したものである。さらに、図14は、この応用例において、その姿勢が制御される第2の可動部5”と、それを制御する3つの回転型アクチュエータ6と、支持ポスト31と第2の可動部5”の姿勢を制御する姿勢制御用ロッドと基台3のみを図示したものである。
【0035】
この応用例のパラレルリンク型作業装置30は、位置が制御される第1の可動部5’と姿勢が制御される第2の可動部5”の、2つの可動部を有する6自由度のパラレルリンク型作業装置である。第1の可動部5’は3つの平行リンク機構21によって一定の姿勢に拘束されており、3つの回転型アクチュエータ6によって位置のみを制御される。すなわち、この第1の可動部5’の位置を制御する機構は、前述した図4,図5に示した第1の実施形態と同じ構成であり、第1の実施形態における可動部5がこの応用例の第1の可動部5’である。
この第1の可動部5’を駆動する機構は、前述した第1の実施形態と同じであることから、詳細な説明は省略する。
【0036】
一方、第2の可動部5”は基台3に設けられた支持ポスト31に球面ジョイント32を介して接続されており、その位置は拘束されている。3つの回転型アクチュエータ6の回転出力軸12にはリンク11が固定されており、該リンク11とロッド10の一端がジョイント13を介して接続され、ロッド10の他端はジョイント14を介して第2の可動部5”に接続されており、3つの回転型アクチュエータ6の動力を姿勢制御用のロッド10により伝達することで、3軸まわりの回転を行い、第2の可動部5”の姿勢を変化させることができる。すなわち、第2の可動部5”を駆動する機構は、図1〜図3で説明した参考例において、3つのアクチュエータを削除し、3つの回転型アクチュエータ6で第2の可動部5”を駆動するようにしたこと、及び第2の可動部5”が支持ポスト31に球面ジョイント32を介して姿勢変化が可能に取り付けられている点で参考例と相違するものである。他の構成は参考例と同じである。
【0037】
第1の実施形態と同様に第1の可動部5’に設けられた回転機構16の回転軸にエンドエフェクタ20を取り付け、かつ第2の可動部5”上にも、第1の可動部5’上のエンドエフェクタ20と対向する向きにエンドエフェクタ33を固定し、2つの板間の位置関係を変化させることで組立作業等を行うようにしたものである。
上述した各実施形態では、可動部5に設けた回転機構16に1つの回転軸17を有し、該回転軸17を駆動するエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ7及び回転動力伝達手段15をそれぞれ1つ設けた例を示したが、回転機構16に1以上の回転軸17を設けるような場合には、その回転軸の数に合わせて、各回転軸を駆動するエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータ及び該アクチュエータの回転力をそれぞれの回転軸に伝達する回転動力伝達手段をそれぞれ設けるようにしてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に関連するパラレルリンク型作業装置の参考例の概要図である。
【図2】同参考例のパラレルリンク型作業装置を斜め上方から見たときの説明図である。
【図3】同参考例におけるエンドエフェクタの駆動系の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のパラレルリンク型作業装置の概要図である。
【図5】同第1の実施形態において、ベース、支柱、基台を取り除き斜め上方から見たときの説明図である。
【図6】本発明に関連する別の参考例の概要説明図である。
【図7】同別の参考例の図6において可動部側から見上げた図である。
【図8】本発明の第2の実施形態のパラレルリンク型作業装置の概要図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の要部概要図である。
【図10】本発明の関連するさらに別の参考例の要部概要図である。
【図11】同参考例における位置制御用の回転型アクチュエータと可動部との連結関係を説明する説明図である。
【図12】本発明の応用例の概要図である。
【図13】同応用例における位置制御板の駆動系の説明図である。
【図14】同応用例における姿勢制御板の駆動系の説明図である。
【図15】従来の回転型アクチュエータを使用したパラレルリンク型作業装置のアクチュエータと可動部の配置を模式的に示した説明図である。
【図16】図15に示す従来のパラレルリンク型作業装置のリンクの回転平面と垂直な方向から見たときの説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1、2、2a〜2d パラレルリンク型作業装置
3 基台
4 ベース
5 可動部
6、7 アクチュエータ
8 支柱
9 アクチュエータ取付部材
10 ロッド
11 リンク
12 回転出力軸
13、14、18、19、24、25 ジョイント
15 回転動力伝達手段
16 回転機構
17 回転軸
20、33 エンドエフェクタ
21 平行リンク機構
22 リンク
23 ロッド
31 支持ポスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、可動部と、前記ベースの所定の位置に固定される3つの回転型アクチュエータと、該3つの回転型アクチュエータによって前記可動部の位置が制御されるように前記各回転型アクチュエータの回転出力軸と前記可動部を平行リンク機構で構成される動力伝達部で連結し、
前記ベースに取り付けられた少なくとも一つのエンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータと、前記可動部に設けられ、エンドエフェクタの姿勢を制御する少なくとも一つの回転軸を有する回転機構と、前記エンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータの回転動力を前記回転機構の回転軸に伝達する少なくとも一つの回転動力伝達手段とを備え、3つの回転型アクチュエータにより前記可動部の位置が制御されると共に前記エンドエフェクタ姿勢制御用のアクチュエータによりエンドエフェクタの姿勢が制御されるパラレルリンク型作業装置であって、
前記回転型アクチュエータは、扁平な形状を有するアクチュエータで構成され、前記回転出力軸の中心線はベースに対して平行で、かつベースの中央から放射状に並び、前記回転出力軸が前記ベース中央に向くように所定の位置に配置、固定されていることを特徴とするパラレルリンク型作業装置。
【請求項2】
前記回転型アクチュエータは、前記回転出力軸の中心線がベースの中央から等間隔に放射状に並ぶように所定の位置に配置、固定されていることを特徴とする請求項1に記載のパラレルリンク型作業装置。
【請求項3】
前記回転型アクチュエータは、前記ベースから垂下したアクチュエータ取付部材に取り付けられている請求項1又は請求項2に記載のパラレルリンク型作業装置。
【請求項4】
前記回転型アクチュエータは、前記ベースから上方に立設されたアクチュエータ取付部材に取り付けられている請求項1又は請求項2に記載のパラレルリンク型作業装置。
【請求項5】
アクチュエータ取付部材間を連接したカバーが設けられている請求項4に記載のパラレルリンク型作業装置。
【請求項6】
前記回転型アクチュエータは、減速器を使用している請求項1乃至5の内いずれか1項に記載のパラレルリンク型作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−45739(P2009−45739A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257438(P2008−257438)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【分割の表示】特願2007−108727(P2007−108727)の分割
【原出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】