説明

パルス伝送回路

【課題】充分小さい遅延時間で、ゲート信号などを伝達できるようにする。
【解決手段】フォトカプラ1を用いた信号伝送回路と、パルストランス4を用いた信号伝送回路とを入力部においてそれぞれ並列に接続し、出力部においてフォトカプラによる信号伝送回路の出力と、パルストランスによる信号伝送回路の出力とが互いに加算されるように接続することで、フォトカプラ1による遅延時間をパルストランス4により補償し、遅れ時間を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチング電源などにおいて、ゲート信号を絶縁して伝送する場合に用いて好適なパルス伝送回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源などにおいては、制御回路と主回路とは互いに異なる電位で運用されることがあり、このような場合には、回路内のスイッチング素子のオン/オフを制御するゲート信号を絶縁して伝送することが必要になる。
このような回路として例えば特許文献1に開示されるような例があり、その例を図3として示す。
【0003】
図3において、1はフォトカプラで、2,3は抵抗であり互いに絶縁された電源P1,P2に接続される。P1,P2はそれぞれN1,N2に対して、正の電圧を持つようにする。なお、ここではP1,P2は互いに同じ値の電圧としている。また、入力端子INは、図示されないスイッチ素子により、N1に対し短絡または開放状態にされる。
【0004】
図4に図3の動作波形を示す。
いま、図3の入力端子INがN1と短絡されると、フォトカプラ1のフォトダイオードには図4にIfで示す入力電流が流れ、遅延時間Td1後にフォトカプラ1のフォトトランジスタが動作することで、出力端子OUTはN2電位となる。その後、端子INが開放されるとIfが遮断され、遅延時間Td2後に端子OUTはP2電位となる。このような動作により、出力側に信号が伝達されることになる。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−050580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば並列に接続された複数のスイッチング回路を同時に動作させる場合には、各回路へのゲート信号のタイミングを厳密に合わせる必要がある。なぜならば、タイミングがずれると、特定の回路に電流が集中したり、または或る回路の出力電圧を別の回路で短絡してしまい、結果として過電流を生じるからである。
高速のスイッチング素子では数ns〜数10ns程度以内の遅れで動作できるものもあるが、フォトカプラは高速のものでも100ns程度の遅延時間が存在し、さらにこの値は一定ではなく個体のばらつきや、温度変化または経年変化により或る範囲に分布する。このため、同時に動作すべき素子が動作を終えているタイミングで、別の素子はまだ動作を開始していないという場合もあり、上述のような問題が生じる。
【0007】
一方、他の絶縁信号伝送手段としてはパルストランスを用いるものがあり、遅延時間は一般的にフォトカプラよりも小さくできるが、下記のような問題がある。
(1)パルストランスを小型化するためには、極力小さい鉄心を用いる必要があるが、磁気飽和を避けるために、磁束密度を飽和値以内にする必要がある。磁束密度はコイルの巻数に反比例するので、巻数を増やせば磁束密度を下げられるが、限られた体積の中で巻数を増やすには、巻線を細くする必要がある。巻線材料の入手性、巻線の信頼性の問題でこれには限度があるため、パルストランス自体の小型化には限界がある。
【0008】
(2)パルストランスでは、直流や低周波の成分を伝送することができない。一方、ゲート信号は、状態に応じて時比率(スイッチング動作の一周期に占めるオン期間の割合)が大きく変化する場合がある。これに対応し、誤りなく信号を伝送するための回路がトランスの前後に必要となる。これは、例えば信号をさらに高周波の交流に変調し、トランスで絶縁した後に復調するなどの方法で実現できるが、回路規模が大きくなり小型化,低コスト化の妨げとなる。
【0009】
この発明は以上のような点に鑑みなされたもので、その課題は充分小さい遅延時間で、ゲート信号などを伝達できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、この発明では、フォトカプラを用いた第1の信号伝送回路と、パルストランスを用いた第2の信号伝送回路とを入力部においてそれぞれ並列に接続し、出力部において前記第1の信号伝送回路の出力と、前記第2の信号伝送回路の出力とが互いに加算されるように接続し、かつ前記パルストランスの伝送可能なパルス幅を、前記フォトカプラの遅延時間よりも長く、入力信号のパルス幅よりも十分に短くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、最小限の大きさのパルストランスを組み合わせるだけで、ゲート信号を十分小さな遅延時間で伝送することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1はこの発明の実施の形態を示す回路図である。
図1からも明らかなように、図3の回路にパルストランス4を並列に接続した点が特徴である。なお、5〜7は抵抗、8〜10はダイオード、11はツェナーダイオードである。
【0013】
図2は図1の動作を説明する波形図である。
いま、図1の入力端子INがN1と短絡されると、電流Ifが流れるとともにパルストランス4の一次側に電圧V1が印加される。パルストランス4の遅延時間を無視するものとすると、その変圧比倍(図1では1:1としている)の電圧V2が瞬時に二次側に発生する。このとき、フォトカプラ1の出力電圧Vcは、遅延があるためP2のままである。ここで、抵抗6,7の抵抗値が抵抗3の抵抗値に対して十分大きく、かつ互いに等しいものとすると、抵抗6,7の接続点電圧はVc,V2の分圧値(極性を考慮した加算値)となるため、ほぼ0Vまで瞬時に低下し、これにより遅延無く「L」レベルの信号が伝達される。
【0014】
遅延時間Td1後にVcが0Vになると、OUT端子の電圧は負になろうとするが、ダイオード10によりクランプされるため、ほぼ0Vに留まる。パルストランス4はその後飽和し、V1,V2は0Vになってパルストランス4の入力は短絡状態になるが、その一次電流は抵抗5で制限される。
【0015】
端子INが開放されると、パルストランス4の励磁電流がツェナーダイオード11→ダイオード8→P1の経路で流れ、V1=V2=−Vrとなる。このとき、ツェナーダイオード11は、入力信号のOFF直後に、一定値の負の入力電圧をパルストランス4に与えるために設けられる。Vcは遅延Td2により未だ0Vなので、OUT端子の電圧はほぼVr/2となる。この電圧を、後段の回路が「H」レベルとして認識するように予め設定しておけば、遅延無く「H」レベルの信号を伝達できることになる。
【0016】
その後、Vc=P2電圧になると、OUT端子の電圧はP2電圧を超えようとするが、ダイオード9によりクランプされるため、P2電圧よりわずかに高い電圧に留まる。パルストランス4の励磁電流はツェナーダイオード11の電圧により減少し、0Aになると再びV1=V2=0Vとなるが、このときは既にVc=P2電圧なので、OUT端子の電圧はP2電圧のままとなる。
【0017】
なお、パルストランス4は遅延時間の間だけ信号を伝達できれば良く、その後は飽和しても構わないため巻数を少なくでき、結果として小形のものを用いることができる。また直流,低周波成分の伝送はフォトカプラ1が行なうため、これらを伝えるための複雑な回路が不要となり、小形且つ安価な回路で遅延の無い伝送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態を示す回路図
【図2】図1の動作を説明する波形図
【図3】従来例を示す回路図
【図4】図3の動作を説明する波形図
【符号の説明】
【0019】
1…フォトカプラ、2,3〜5〜7…抵抗、4…パルストランス、8〜10…ダイオード、11…ツェナーダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトカプラを用いた第1の信号伝送回路と、パルストランスを用いた第2の信号伝送回路とを入力部においてそれぞれ並列に接続し、出力部において前記第1の信号伝送回路の出力と、前記第2の信号伝送回路の出力とが互いに加算されるように接続し、かつ前記パルストランスの伝送可能なパルス幅を、前記フォトカプラの遅延時間よりも長く、入力信号のパルス幅よりも十分に短くすることを特徴とするパルス伝送回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−193557(P2008−193557A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27724(P2007−27724)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】