説明

パルス駆動回路

【課題】高周波増幅用のFETのドレインに印加されるパルス電圧の安定化を図る。
【解決手段】駆動用電源11の出力電圧に基づきMOS−FETQ1を駆動する。Q1はパルス信号源12から出力される基準パルス信号bでスイッチングさせ、Q1オン時は、コンデンサC1の電荷を移行させて得られる電圧でQ1を非飽和状態で駆動する。Q1のスイッチングによりソース電極に得られるパルス電圧を、ゲート電極に供給される高周波信号を増幅する高周波電力FETQ2の駆動電圧としてドレイン電極に印加する。Q2のドレイン電極に発生するパルス電圧dと基準パルス信号bの電圧をオペアンプOP2で比較し、Q1のゲート電極にフィードバックする。非飽和状態で駆動されるQ1にフィードバックさせたことで、Q1に印加されるパルス内ドレイン電圧の低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、レーダ送信機などに用いられるマイクロ波やミリ波の高周波信号の増幅を行うパワートランジスタを、パルス駆動させるためのパルス駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波信号を増幅するFETドレインパルス駆動回路は、電源制御用MOS−FETをオン/オフさせてパルス電圧を生成させている。
【0003】
図5は、従来のパルス駆動回路を示し、MOS−FETQ1を、パルス発生器PGで生成される駆動パルス信号でオン/オフさせて高周波電力FETQ2のドレインパルス電圧を生成している。この場合、パルス信号でQ1をオン/オフさせることで、高周波電力FETQ2にパルス状のドレイン電圧を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−16045公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MOS−FETQ1がオンした時は、遠くにある電源11は配線のインダクタンスの影響のため急に電荷を供給することができない。そこで高周波電力FETQ2の近くにコンデンサC1を置き、急な電荷の供給に対応している。C1はパルスオフ時に充電し、パルスオン時に放電する。
【0006】
しかし、パルスオン時は、コンデンサC1が放電につれてドレイン電圧が漸次低下する図7に示すcの電圧となる。この電圧がQ2のドレインに印加されるが、Q2のドレイン電圧は、図7のeに示すように漸次低下するパルス電圧となる。Q2の出力は図6の(e)に示すようにRFパルス内振幅が低下する問題があった。
【0007】
この発明の目的は、高周波電力増幅用のFETのドレインに印加されるパルス電圧の安定化を図ることのできるパルス駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、この実施形態によれば、パルス駆動回路は、高周波電力用FETとコンデンサを供給する直流電源と、パルス電圧を生成するMOS−FETと、MOS−FETをスイッチングさせる基準パルス信号を生成するパルス信号源と、前記MOS−FETのスイッチングにより得られるパルス電圧がドレイン電極に印加して駆動し、ゲート電極に供給される高周波信号を増幅する高周波電力用FETと、前記パルス電圧と前記基準パルス信号の電圧を比較し、前記MOS−FETのゲート電極にフィードバックする手段と、を具備したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】パルス駆動回路に関する一実施形態について説明するための回路構成図である。
【図2】図1の動作について説明するための波形図である。
【図3】図2の一部の波形の時間と電圧の関係を拡大して説明するための説明図である。
【図4】パルス駆動回路に関する他の実施形態について説明するための説明図である。
【図5】従来の回路構成図である。
【図6】図5の動作について説明するための波形図である。
【図7】図4要部のポイントにおける時間と電圧の関係について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、パルス駆動回路に関する一実施形態について説明するための回路構成図である。
【0012】
図1に示すV1は、例えば24Vの直流源であり、この直流源V1は、抵抗R1、インダクタL1を介して、スイッチング素子として例えばMOS型FETQ1のドレイン電極に接続される。直流源V1、抵抗R1それにインダクタL1は、Q1の駆動用電源11を構成している。
【0013】
インダクタL1とQ1のドレイン電極の接続点と基準電位点との間には、直流源V1との間にインダクタL1が介挿接続されている。このため、Q1のオン/オフに対するインダクタL1による応答性の悪さを補償するコンデンサC1が介挿接続される。
【0014】
PGは、パルス信号aを発生させるパルス発生器であり、このパルス発生器PGの出力は、オペアンプOP1の非反転入力+に供給される。オペアンプOP1の出力は、オペアンプOP2の非反転入力+に供給されるとともに、直列接続された可変抵抗器VR、抵抗R2を介して基準電位点に接続される。可変抵抗器VRと抵抗R2の接続点は、オペアンプOP1の反転入力−に接続される。パルス発生器PG、オペアンプOP1、抵抗R2それに可変抵抗器VRは、Q1をスイッチングするための基準パルス信号bを生成するパルス信号源12を構成している。
【0015】
オペアンプOP2の出力は、Q1のゲート電極に接続される。オペアンプOP2の反転入力−は、Q1のソース電極に接続されるとともに、高周波電力FETQ2のドレイン電極に接続される。
【0016】
Q2としては、例えばGaN(窒化ガリウム)やGaAS(ガリウム砒素)等の電力増幅用FETが用いられる。Q2のソース電極は、基準電位点に接続され、ゲート電極には高周波信号RFが供給される。Q2のドレイン電極は、カップリングコンデンサC2を介して出力端子13に接続される。
【0017】
次に、図2、図3の波形図を参照し、図1の動作について説明する。図2(a)〜(e)は、図1のa〜eの各ポイントにおける信号波形を示し、図3は図2(c)および(e)の時間と電圧の関係を拡大して示したものである。
【0018】
パルス発生器PGから出力された図2(a)に示すパルス信号aは、オペアンプOP1の非反転入力+に供給する。オペアンプOP1では、出力が非反転入力+の値となるような定電圧制御が行われ、オペアンプOP1の出力を、パルス信号源12の基準パルス信号bとして出力する。基準パルス信号bは、オペアンプOP2の非反転入力+に供給する。オペアンプOP2では、基準パルス信号bの電圧とQ1のソース電極の電圧を比較し、比較出力でQ1を非飽和領域で駆動する。
【0019】
駆動用電源11では、例えば直流電圧24Vの直流源V1が、Q1がオンしたときにC1から電荷を放出し、オフしたときに電荷をC1に蓄積し、図2(c)に示す電圧cを出力する。パルスがオンしたとき、直流源からの電荷は供給が遅く、パルス立ち上がりが遅い。このため、コンデンサC1に予め電荷を蓄積しておき、Q1がオンしたときのエネルギー移行時は、コンデンサC1に蓄えられた電荷を利用することでパルスの立ち上がりを速くしている。
【0020】
Q1のオンによりコンデンサC1に蓄積された電荷は、Q2のドレイン電圧として印加する。Q2のドレイン電圧は、Q2のドレイン電極(Q1のソース電極)の電圧を、オペアンプOP2を介してQ1のゲート電極にフィードバックさせ、Q1を非飽和状態で駆動させることによってQ1の出力を制御している。
【0021】
なお、Q1のソース電極の電圧とパルス信号源12の基準パルス信号bの電圧とを比較し、Q1のゲート電極にフィードバックする一連の処理は、フィードバック手段を構成する。
【0022】
従って、Q2のドレイン電極に印加される電圧は、Q1のドレイン電極に印加される電圧よりも低い値となる。しかも、パルス信号源12の基準パルス信号bの電圧とQ2のドレイン電極の電圧との比較出力をQ1のゲートにフィードバックさせている。このためQ2のドレイン電極には図2(e)の平坦なパルス電圧を得ることができる。
【0023】
ところで、非飽和領域で動作させる関係で、従来に比して出力されるパルス電圧の振幅が小さくなる。Q2のドレイン電極に印加されるパルス電圧を従来と同じ値を得るために、この実施形態では一例として駆動用電源11の直流源V1の値を従来20Vとしたのに対し、24Vとしている。Q1を非飽和領域で動作させると、Q1での電圧ドロップがおおきくなるため効率性がやや劣るものの、パルス内振幅変動および位相変動を抑えなければならない用途において効果を発揮する。
【0024】
このように、Q1に印加されるドレイン電圧と基準パルス信号電圧とを比較し、電源制御用のQ1にフィードバックさせたことで、Q1に印加されるパルス内ドレイン電圧の低下を防止することができる。
【0025】
この実施形態では、電力増幅用トランジスタのパルス内ドレイン電圧の低下を防止することができることから、パルス内振幅変動および位相変動が少ない高周波パルス信号を生成することができる。
【0026】
図4は、他の実施形態について説明するための説明図である。高周波電力増幅用FETが用いられるQ2は、チャネルの温度上昇に伴いQ2の出力電力がパルス信号の後半部に行くほどQ2から出力される高周波パルス信号の振幅が図4(e’)に示すように低下することが知られている。
【0027】
そこで、パルス信号源12から出力される基準パルス信号bの後半部に向けて漸次振幅を高くなるような図4(b’)に示す基準パルス信号を生成させるようにした。基準パルス信号の後半部に行くほど漸次振幅を大きくし、Q2のドレイン電圧をフィードバックさせたことにより、Q2のチャネルの温度上昇に伴うパルス信号の後半部の出力電力の低下を相殺できる。これにより、Q2のチャネルの温度上昇に伴うパルス内振幅変動に対する補償を行うことができる。
【0028】
この実施形態は、電力増幅用のトランジスタのパルス内ドレイン電圧に正の傾斜をつけることで、パルス内チャネル温度上昇に対する出力パルス信号のパルス内振幅変動を抑えることが可能となる。
【0029】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。オペアンプの非反転入力+に任意の補正波形を入力することで、ドレイン波形の操作が自由に行えるようになる。
【0030】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
11 駆動用電源
12 パルス信号源
L1 インダクタ
C1 コンデンサ
Q1 MOS−FET
Q2 高周波電力FET
OP1,OP2 オペアンプ
VR 可変抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサに電荷を蓄積する駆動用電源と、
前記コンデンサの電荷移行に基づき得られる電圧で駆動するMOS−FETによる第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタをスイッチングさせる基準パルス信号を生成するパルス信号源と、
前記第1のトランジスタのスイッチングにより得られるパルス電圧がドレイン電極に印加して駆動し、ゲート電極に供給される高周波信号を増幅するFETによる第2のトランジスタと、
前記パルス電圧と前記基準パルス信号の電圧を比較し、前記第1のトランジスタのゲート電極にフィードバックする手段と、を具備したことを特徴とするパルス駆動回路。
【請求項2】
前記パルス信号源から生成される基準パルス信号の後半部の振幅を漸次上昇させたことを特徴とする請求項1記載のパルス駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−114784(P2012−114784A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263452(P2010−263452)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】