パワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置
【課題】本発明の課題は、信頼性を向上させたパワーモジュールを提供することにある。
【解決手段】本発明の課題を解決するために、本発明に係るパワーモジュールは、パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する導体板と、前記パワー半導体素子と前記導体板とを封止するための封止材と、を備え、前記導体板の放熱面は前記封止材から露出され、かつ当該封止材から露出された当該導体板の放熱面が熱硬化性の熱伝導シートで覆われるように構成される。
【解決手段】本発明の課題を解決するために、本発明に係るパワーモジュールは、パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する導体板と、前記パワー半導体素子と前記導体板とを封止するための封止材と、を備え、前記導体板の放熱面は前記封止材から露出され、かつ当該封止材から露出された当該導体板の放熱面が熱硬化性の熱伝導シートで覆われるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置に関し、特にハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーの観点から、自動車には高燃費化が求められ、モータで駆動する電気自動車や、モータ駆動とエンジン駆動を組み合わせたハイブリッドカーが注目されている。自動車に用いる大容量の車載用モータはバッテリの直流電圧では駆動や制御が困難であり、昇圧し交流制御するためパワー半導体のスイッチングを利用した電力変換装置が不可欠である。また、パワー半導体は通電により発熱するため冷却構造が重要である。
【0003】
両面から冷却可能な半導体装置として、特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1に示されるように、発熱素子の両面から放熱するための一対の放熱板を備え、装置のほぼ全体を樹脂モールドし、一対の放熱板の各面を露出させるように半導体装置を構成し、一対の放熱板の各面に、圧縮変形可能な材質の絶縁シートを貼り付けた状態でトランスファーモールド金型371にクランプしてモールドする事で、部材の寸法誤差を吸収して、素子破壊や放熱面への樹脂回り込みを防止した半導体装置が知られている。
【0005】
しかしながら、絶縁耐圧の確保または熱応力の緩和の観点から、信頼性の確保が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−324816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、信頼性を向上させたパワーモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するために、本発明に係るパワーモジュールは、パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する導体板と、前記パワー半導体素子と前記導体板とを封止するための封止材と、を備え、前記導体板の放熱面は前記封止材から露出され、かつ当該封止材から露出された当該導体板の放熱面が熱硬化性の熱伝導シートで覆われるように構成される。
【0009】
これにより、パワー半導体素子と導体板の傾きを熱硬化性の熱伝導シートにより吸収できるので、高い放熱性を維持しながら、導体板の絶縁のための信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、パワーモジュールの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【図2】ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成図と回路構成図である。
【図3】本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
【図4】本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
【図5】流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
【図6】(a)は、本実施形態のパワーモジュール300aの斜視図である。(b)は、本実施形態のパワーモジュール300aの断面図である。
【図7】(a)は、理解を助けるために、モジュールケース304と絶縁シート333と第一封止樹脂348と第二封止樹脂351を取り除いた内部断面図である。(b)は、内部斜視図である。
【図8】(a)は、図7(b)の構造の理解を助けるための分解図である。(b)は、パワー半導体モジュール300の回路図である。
【図9(a)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(b)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(c)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(d)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(e)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(f)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図10】第2実施例に係るパワーモジュール300の断面模式図である。
【図11】比較例に係るパワーモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明に係る実施形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施形態に係る電力変換装置200は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成と回路構成について、図1と図2を用いて説明する。
【0014】
図1は、ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
本実施形態に係る電力変換装置では、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の構成は、自動車やトラックなどの車両駆動用電力変換装置として最適であるが、これら以外の電力変換装置、例えば電車や船舶,航空機などの電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に対しても適用可能である。
【0015】
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源及びHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記す。
【0016】
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支され、前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸が回転可能に軸支され、後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている(図示省略)。本実施形態のHEVでは、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪側DEF116の入力側にはトランスミッション118の出力軸が機械的に接続されている。トランスミッション118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側及びモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。
【0017】
インバータ部140,142は、直流コネクタ138を介してバッテリ136と電気的に接続される。バッテリ136とインバータ部140,142との相互において電力の授受が可能である。本実施形態では、モータジェネレータ192及びインバータ部140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及びインバータ部142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
【0018】
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136からインバータ部43に直流電力が供給され、インバータ部43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。インバータ部43は、インバータ部140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数,電力を制御する。モータ195の容量がモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、インバータ部43の最大変換電力がインバータ部140や142より小さいが、インバータ部43の回路構成は基本的にインバータ部140や142の回路構成と同じである。なお、電力変換装置200は、インバータ部140,インバータ部142,インバータ部43に供給される直流電流を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
次に、図2を用いてインバータ部140やインバータ部142あるいはインバータ部43の電気回路構成を説明する。なお、図2では、代表例としてインバータ部140の説明を行う。
【0019】
インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150をモータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相(U相,V相,W相)分を設けている。それぞれの上下アーム直列回路150は、その中点部分(中間電極169)から交流端子159及び交流コネクタ188を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する。
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサの電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側にコンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0020】
制御部170は、インバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。IGBT328やIGBT330は、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力は、モータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
【0021】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えてる。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えてる。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよいが、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。コンデンサモジュール500は、正極側コンデンサ端子506と負極側コンデンサ端子504と直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。なお、インバータ部140は、直流正極端子314を介して正極側コンデンサ端子506と接続され、かつ直流負極端子316を介して負極側コンデンサ端子504と接続される。
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、及びモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180から信号線182を介して出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
【0022】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相,V相,W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相,V相,W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号として、信号線176を介してドライバ回路174に出力する。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0023】
また、制御部170は、異常検知(過電流,過電圧,過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極155及び信号用エミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
本実施形態に係る電力変換装置200は、トランスミッション118を収納するためのアルミニウム製の筐体119に固定される。電力変換装置200は、底面及び上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。冷却ジャケット12は、後述するパワーモジュール300及びコンデンサモジュール500を保持するとともに、冷却媒体によって冷却する。また、冷却ジャケット12は、筐体119に固定され、かつ筐体119との対向面に入口配管13と出口配管14が形成されている。入口配管13と出口配管14が筐体119に形成された配管と接続されることにより、トランスミッション118を冷却するための冷却媒体が、冷却ジャケット12に流入及び流出する。
ケース10は、電力変換装置200を覆って、かつ筐体119側に固定される。ケース10の底は、制御回路172を実装した制御回路基板20と対向するように構成される。またケース10は、ケース10の底から外部に繋がる第1開口202と第2開口204を、ケース10の底面に形成する。コネクタ21は、制御回路基板20に接続されており、外部からの各種信号を当該制御回路基板20に伝送する。バッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。
コネクタ21とバッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、ケース10の底面に向かって延ばされ、コネクタ21は第1開口202から突出し、かつバッテリ負極側接続端子部510及びバッテリ正極側接続端子部512は第2開口204から突出する。ケース10には、その内壁の第1開口202及び第2開口204の周りにシール部材(不図示)が設けられる。
コネクタ21等の端子の勘合面の向きは、車種により種々の方向となるが、特に小型車両に搭載しようとした場合、エンジンルーム内の大きさの制約や組立性の観点から勘合面を上向きにして出すことが好ましい。特に、本実施形態のように、電力変換装置200が、トランスミッション118の上方に配置される場合には、トランスミッション118の配置側とは反対側に向かって突出させることにより、作業性が向上する。また、コネクタ21は外部の雰囲気からシールする必要があるが、コネクタ21に対してケース10を上方向から組付ける構成となることで、ケース10が筐体119に組付けられたときに、ケース10と接触するシール部材がコネクタ21を押し付けることができ、気密性が向上する。
【0025】
図4は、本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
冷却ジャケット12には、流路19が設けられ、該流路19の上面には、開口部400a〜400cが冷媒の流れ方向418に沿って形成され、かつ開口部402a〜402cが冷媒の流れ方向422に沿って形成される。開口部400a〜400cがパワーモジュール300a〜300cによって塞がれる様に、かつ開口部402a〜402cがパワーモジュール301a〜301cによって塞がれる。
また、冷却ジャケット12には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成される。コンデンサモジュール500は、収納空間405に収納されることにより、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。コンデンサモジュール500は、冷媒の流れ方向418を形成するための流路19と、冷媒の流れ方向422を形成するための流路19に挟まれるため、効率良く冷却することができる。
冷却ジャケット12には、入口配管13と出口配管14と対向する位置に突出部407が形成される。突出部407は、冷却ジャケット12と一体に形成される。補機用パワーモジュール350は、突出部407に固定され、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。補機用パワーモジュール350の側部には、バスバーモジュール800が配置される。バスバーモジュール800は、交流バスバー186や電流センサ180等により構成されるが、詳細は後述する。
このように冷却ジャケット12の中央部にコンデンサモジュール500の収納空間405を設け、その収納空間405を挟むように流路19を設け、それぞれの流路19に車両駆動用のパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301cを配置し、さらに冷却ジャケット12の上面に補機用パワーモジュール350を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。また冷却ジャケット12の流路19の主構造を冷却ジャケット12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで冷却ジャケット12と流路19とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
なお、パワーモジュール300a〜300cとパワーモジュール301a〜301cを流路19に固定することで流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次にコンデンサモジュール500や補機用パワーモジュール350や基板を取り付ける作業を行うことができる。このように、電力変換装置200の底部に冷却ジャケット12を配置し、次にコンデンサモジュール500,補機用パワーモジュール350,バスバーモジュール800,基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。
ドライバ回路基板22は、補機用パワーモジュール350及びバスバーモジュール800の上方に配置される。また、ドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。
図5は、流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
冷却ジャケット12と当該冷却ジャケット12の内部に設けられた流路19は、一体に鋳造されている。冷却ジャケット12に下面には、1つに繋がった開口部404が形成されている。開口部404は、中央部に開口を有する下カバー420によって塞がれる。下カバー420と冷却ジャケット12の間には、シール部材409a及びシール部材409bが設けられ気密性を保っている。
下カバー420には、一方の端辺の近傍であって当該端辺に沿って、入口配管13を挿入するための入口孔401と、出口配管14を挿入するための出口孔403が形成される。また下カバー420には、トランスミッション118の配置方向に向かって突出する凸部406が形成される。凸部406は、パワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301c毎に設けられる。
冷媒は、流れ方向417のように、入口孔401を通って、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第1流路部19aに向かって流れる。そして冷媒は、流れ方向418のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第2流路部19bを流れる。また冷媒は、流れ方向421のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第3流路部19cを流れる。第3流路部19cは折り返し流路を形成する。また、冷媒は、流れ方向422のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第4流路部19dを流れる。第4流路部19dは、コンデンサモジュール500を挟んで第2流路部19bと対向する位置に設けられる。さらに、冷媒は、流れ方向423のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第5流路部19e及び出口孔403を通って出口配管14に流出する。
第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19c,第4流路部19d及び第5流路部19eは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。パワーモジュール300a〜300cが、冷却ジャケット12の上面側に形成された開口部400a〜400cから挿入され(図4参照)、第2流路部19b内の収納空間に収納される。なお、パワーモジュール300aの収納空間とパワーモジュール300bの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408aが形成される。同様に、パワーモジュール300bの収納空間とパワーモジュール300cの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408bが形成される。中間部材408a及び中間部材408bは、その主面が冷媒の流れ方向に沿うように形成される。第4流路部19dも第2流路部19bと同様にパワーモジュール301a〜301cの収納空間及び中間部材を形成する。また、冷却ジャケット12は、開口部404と開口部400a〜400c及び402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。
下カバー420には、筐体119と当接し、電力変換装置200を支持するための支持部410a及び支持部410bが設けられる。支持部410aは下カバー420の一方の端辺に近づけて設けられ、支持部410bは下カバー420の他方の端辺に近づけて設けられる。これにより、電力変換装置200を、トランスミッション118やモータジェネレータ192の円柱形状に合わせて形成された筐体119の側壁に強固に固定することができる。
また、支持部410bは、抵抗器450を支持するように構成されている。この抵抗器450は、乗員保護やメンテナンス時における安全面に配慮して、コンデンサセルに帯電した電荷を放電するためのものである。抵抗器450は、高電圧の電気を継続的に放電できるように構成されているが、万が一抵抗器もしくは放電機構に何らかの異常があった場合でも、車両に対するダメージを最小限にするように配慮した構成とする必要がある。つまり、抵抗器450がパワーモジュールやコンデンサモジュールやドライバ回路基板等の周辺に配置されている場合、万が一抵抗器450が発熱,発火等の不具合を発生した場合に主要部品近傍で延焼する可能性が考えられる。
そこで本実施形態では、パワーモジュール300a〜300cやパワーモジュール301a〜301cやコンデンサモジュール500は、冷却ジャケット12を挟んで、トランスミッション118を収納した筐体119とは反対側に配置され、かつ抵抗器450は、冷却ジャケット12と筐体119との間の空間に配置される。これにより、抵抗器450が金属で形成された冷却ジャケット12及び筐体119で囲まれた閉空間に配置されることになる。なお、コンデンサモジュール500内のコンデンサセルに貯まった電荷は、図4に示されたドライバ回路基板22に搭載されたスイッチング手段のスイッチング動作によって、冷却ジャケット12の側部を通る配線を介して抵抗器450に放電制御される。本実施形態では、スイッチング手段によって高速に放電するように制御される。放電を制御するドライバ回路基板22と抵抗器450の間に、冷却ジャケット12が設けられているので、ドライバ回路基板22を抵抗器450から保護することができる。また、抵抗器450は下カバー420に固定されているので、流路19と熱的に非常に近い位置に設けられているので、抵抗器450の異常な発熱を抑制することができる。
【0026】
図6乃至図8を用いてインバータ部140およびインバータ部142に使用されるパワーモジュール300aの詳細構成を説明する。図6(a)は、本実施形態のパワーモジュール300aの斜視図である。図6(b)は、本実施形態のパワーモジュール300aの断面図である。
上下アーム直列回路を構成するパワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)が、図7及び図8に示す如く、導体板315や導体板318によって、あるいは導体板316や導体板319によって、両面から挟んで固着される。これら導体板には、信号端子325Uや信号端子325Lである信号配線を一体成型して成る補助モールド体600が組みつけられる。導体板315等は、その放熱面が露出した状態で第一封止樹脂348によって封止され、当該放熱面に絶縁シート333が熱圧着される。第一封止樹脂348により封止されたモジュール一次封止体302は、モジュールケース304の中に挿入して絶縁シート333を挟んで、CAN型冷却器であるモジュールケース304の内面に熱圧着される。ここで、CAN型冷却器とは、一面に挿入口306と他面に底を有する筒形状をした冷却器である。
モジュールケース304は、アルミ合金材料例えばAl,AlSi,AlSiC,Al−C等から構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。モジュールケース304は、挿入口306以外に開口を設けない構造であり、挿入口306は、フランジ304Bよって、その外周を囲まれている。また、図6(a)に示されるように、他の面より広い面を有する第1放熱面307A及び第2放熱面307Bがそれぞれ対向した状態で配置され、当該対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面は、当該第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより狭い幅で密閉された面を構成し、残りの一辺の面に挿入口306が形成される。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角が図6(a)に示す如く曲面を成していても良い。
このような形状の金属性のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷媒が流れる流路19内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。また、対向した第1放熱面307Aと第2放熱面307Bに、フィン305がそれぞれ均一に形成される。さらに、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bの外周には、厚みが極端に薄くなっている湾曲部304Aが形成されている。湾曲部304Aは、フィン305を加圧することで簡単に変形する程度まで厚みを極端に薄くしてあるため、モジュール一次封止体302が挿入された後の生産性が向上する。
【0027】
モジュールケース304の内部に残存する空隙には、第二封止樹脂351を充填される。また、図8に示されるように、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための直流正極配線315Aおよび直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315Bと直流負極端子319Bが形成されている。モータジェネレータ192あるいは194に交流電力を供給するための交流配線320が設けられており、その先端に交流端子321が形成されている。本実施形態では、直流正極配線315Aは導体板315と一体成形され、直流負極配線319Aは導体板319と一体成形され、交流配線320は導体板316と一体成形される。
上述のように導体板315等を絶縁シート333を介してモジュールケース304の内壁に熱圧着することにより、導体板とモジュールケース304の内壁の間の空隙を少なくすることができ、パワー半導体素子の発生熱を効率良くフィン305へ伝達できる。さらに絶縁シート333にある程度の厚みと柔軟性を持たせることにより、熱応力の発生を絶縁シート333で吸収することができ、温度変化の激しい車両用の電力変換装置に使用するのに良好となる。
【0028】
図7(a)は、理解を助けるために、モジュールケース304と絶縁シート333と第一封止樹脂348と第二封止樹脂351を取り除いた内部断面図である。図7(b)は、内部斜視図である。図8(a)は、図7(b)の構造の理解を助けるための分解図である。図8(b)は、パワー半導体モジュール300の回路図である。
【0029】
まず、パワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)と導体板の配置を、図8(b)に示された電気回路と関連付けて説明する。図7(b)に示されるように、直流正極側の導体板315と交流出力側の導体板316は、略同一平面状に配置される。導体板315には、上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極が固着される。導体板316には、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極が固着される。同様に、交流導体板318と導体板319は、略同一平面状に配置される。交流導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が固着される。導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が固着される。各パワー半導体素子は、各導体板に設けられた素子固着部322に、金属接合材160を介してそれぞれ固着される。金属接合材160は、例えばはんだ材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材、等である。
各パワー半導体素子は板状の扁平構造であり、当該パワー半導体素子の各電極は表裏面に形成されている。図7(a)に示されるように、パワー半導体素子の各電極は、導体板315と導体板318、または導体板316と導体板319によって挟まれる。つまり、導体板315と導体板318は、IGBT328及びダイオード156を介して略平行に対向した積層配置となる。同様に、導体板316と導体板319は、IGBT330及びダイオード166を介して略平行に対向した積層配置となる。また、導体板316と導体板318は中間電極329を介して接続されている。この接続により上アーム回路と下アーム回路が電気的に接続され、上下アーム直列回路が形成される。
【0030】
直流正極配線315Aと直流負極配線319Aは、樹脂材料で成形された補助モールド体600を介して対向した状態で略平行に延びる形状を成している。信号端子325Uや信号端子325Lは、補助モールド体600に一体に成形されて、かつ直流正極配線315A及び直流負極配線319Aと同様の方向に向かって延びている。補助モールド体600に用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aと信号端子325Uと信号端子325Lとの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。さらに、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aを略平行に対向するように配置したことにより、パワー半導体素子のスイッチング動作時に瞬間的に流れる電流が、対向してかつ逆方向に流れる。これにより、電流が作る磁界が互いに相殺する作用をなし、この作用により低インダクタンス化が可能となる。
図9はパワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【0031】
図9(a)に示されるように、IGBT155のコレクタ側に配置される導体板315は、台370の上に配置される。そして、導体板315の上に、はんだシート等の金属接合材160,IGBT155又はダイオード156,金属接合材160,導体板318の順に配置される。次に、これらが一括リフローされることで、電気的及び機械的に接続される。この時、IGBT155のエミッタ側の導体板318は台370の上に固定されていないので、導体板315の平行面に対して約100μm傾くおそれがある。
【0032】
図9(b)に示されるように、信号端子325Lをインサート成型しており熱可塑性樹脂からなる補助モールド体600が、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aの間に挿入され、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aを保持する。そして、信号端子325LとIGBT155のゲート端子とがワイヤボンディング327により接続される。
【0033】
図9(c)に示されるように、導体板318の上面に熱伝導シート380が配置される。この熱伝導シート380は、導体板318の上面の外周よりも3mm程度大きく加工され、かつその厚さは100μm程度である。また熱伝導シート380は、熱硬化性であり、かつ高熱伝導性である。また、熱伝導シート380は、当該熱伝導シート380の上面側で、耐熱シート381によって支持される。この耐熱シート381は、厚さが50μm程度であり、熱伝導シート380に対して離型性を有する。離型性の耐熱シート381で支持されているため、熱硬化性の高熱伝導シートの取り扱いが容易になり生産性が向上する。そして、金型371によって補助モールド体600,導体板315,導体板318等が挟み込みこまれ、175℃で180秒間、10MPaの成形条件でトランスファーモールドされる。この時、熱硬化性の熱伝導シート380が金型371内で流動し、耐熱シート381と導体板318との間に融けた熱伝導シート380が充填される。つまり、熱伝導シート380の導体板318側は当該導体板318の傾きに応じて変形し、熱伝導シート380の金型371側は当該金型371の形状に応じて平坦になる。その結果、熱硬化性の熱伝導シート380の最も薄い部分382(図9c参照)が数μm程度になることもあれば、熱伝導シート380の厚さが0μmとなって導体板318の端部が熱伝導シート380から露出することもある。しかしながら、導体板318の端部は、離型性の耐熱性シート381に接することになり、製造上問題は発生しない。
【0034】
また、熱硬化性の熱伝導シート380が金型371内で流動することで、熱伝導シート380の厚さが100μmとなることにより、導体板318傾きが100μmとなることに追従できることがわかった。このため、熱伝導シート380に薄いシートを用いる事が可能となり放熱性の向上に効果がある。
【0035】
なお、図9(c)において、熱伝導シート380は耐熱シート381によって支持されているが、上記成形条件において熱伝導シート380が一定以上の粘度を保つことができるならば、耐熱シート381は必要ない。これにより、金型371が熱伝導シート380に導体板318をクランプされると、熱伝導シート380中の熱硬化性樹脂成物が、金型371から伝達される温度によって流動され、前記金型371と導体板318と間の空間に充填され、熱伝導シート380は金型371の形状に応じて平坦になる。
【0036】
次に、図9(d)に示されるように、金型371が取り外され、離型性を有する耐熱シート381は粘着テープによって剥離される。
【0037】
次に、図9(e)に示されるように、モジュール一次封止体302の上面及び下面に絶縁部材で構成された絶縁シート333を配置した後、モジュール一次封止体302はモジュールケース304内に挿入される。
【0038】
次に、図9(f)に示されるように、140℃の真空室内で、モジュールケース304の第1放熱面307Aを加圧して、薄肉に形成された湾曲部304A及び湾曲部304Bを塑性変形させて、モジュールケース304の内壁と絶縁シート333とを接着させる。さらに、モジュールケース304とモジュール一次封止体302の隙間にポッティング用の第2封止樹脂を注入し、加熱硬化させる。
【0039】
パワーモジュール300のリードフレームに100μmの傾きが見られたが、熱硬化性の高熱伝導シートの露出面はトランスファーモールド金型371に追従して平坦になったため、200μmの絶縁シートを用いたが最小部でも150μmの絶縁距離を確保する事ができた。
【0040】
なお、図9(c)に示されるように、補助モールド体600が、直流正極配線315A及び直流負極配線319Aを支持し、さらに金型371と密着することで、第1封止材348をトランスファーモールドすることが容易になり、かつ位置決めの容易になる。
【0041】
また、図9(d)に示されるように、モジュール一次封止体302には、導体板318の放熱面が配置された側の面に凹部383が形成される。導体板318の放熱面は凹部383の底部から露出され、かつ当該底部から露出された導体板318の放熱面が熱伝導シート380で覆われる。これにより、導体板318が傾いた場合でも、絶縁距離を十分に確保することができるようになる。
【0042】
また、図9(d)に示されるように、リード状に形成された制御用の信号端子325Lは、ワイヤボンディング327との接続面がIGBT155のゲート電極が形成された面と同一方向を向くように配置される。これにより、ワイヤボンディング327を組み付ける作業の方向と、熱伝導シート380及び耐熱性シート381を配置する作業の方向が同一となって、組立作業性が向上する。
【0043】
また、図9(d)に示されるように、熱伝導シート380は、導体板318の放熱面と対向する第1部分384と、第1封止材348と対向する第2部分385とにより構成される。そして、この第2部分385と第1封止材348との界面には、熱流動によって熱伝導シート380と第1封止材348との混合部が形成される。これにより熱流動により第1封止材348と熱伝導シート380との密着力が向上する。
【0044】
また、図9(f)に示されるように、モジュールケース304は、第1放熱面307Aと第2放熱面307Bが一体となるように構成されている。これにより、絶縁シート333に掛かる熱応力が増大する傾向にある。そこで、絶縁シート333に軟質製のシート、例えば1〜60(AskerC)を用いて、モジュールケース304からの熱応力を緩和することもできる。また、絶縁シート333は、絶縁距離や熱応力から50μm〜300μmの厚さで使いたいため、熱伝導率は、1W/mK以上、絶縁強度は10kV/mm以上、体積低効率1011Ω・cm以上が望ましい。
【0045】
また、図9(f)に示されるモジュールケース304が導電性の金属により構成され、かつ導体板318に大電流が流される場合には、モジュールケース304と導体板318との間には十分な絶縁距離を確保する必要がある。そこで、熱伝導シート380は、電気絶縁性の材料で構成することで、良好な絶縁状態を維持できる。特に、本実施形態のように、同一面上に電位の異なる複数の導体板318及び導体板319を並べた場合でも、一枚の熱伝導シート380で覆うことができるため生産性が向上する。
【0046】
また、図9(f)に示される導体板318が、対向する導体板315よりも薄く形成されるために、電流バランスや熱バランスが不均衡になってしまう場合には、熱伝導シート380は導電性の材料で構成することができる。
【0047】
また、図9(f)に示される導体板318やモジュールケース304が銅材またはアルミニウム材により構成される場合には、熱伝導シート380は熱膨張率が12ppm/℃以上40ppm/℃以下であることが好ましい。これにより、銅材またはアルミニウム材の熱膨張率に近いため温度サイクル信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、図9(f)に示される熱伝導シート380に、熱ガラス転移温度が150℃以上である熱硬化性の素材を用いることにより、IGBT155の最大温度近くでも、シート物性に優れるガラス状態となるため信頼性が向上する。
【0049】
また、熱伝導シート380は、トランスファーモールドの前において、ゲル分率が50%未満の熱硬化性樹脂成分かつ熱伝導率が1W/mK以上からなる熱硬化性樹脂組成物で構成され、かつ当該熱硬化性樹脂成分が加熱によってゲル分率が50%以上になるまで熱硬化するように構成する。これにより、トランスファーモールド時に流動しリードフレームや金型371に追従した後、硬化反応の進行によって熱伝導シート380を第1封止材348や導体板318にしっかりと固定できる効果がある。
【0050】
なお、本実施形態の金属接合体160は、錫を主成分としたはんだを用いる事が望ましいが、金,銀,銅のいずれかを主成分としたものやロウ材やペーストを用いる事もできる。
【0051】
また、本実施形態の熱硬化性の熱伝導シート380は、少なくとも熱硬化性樹脂成分と熱伝導率が1W/mK以上の充填材成分からなるものを用いることが好ましい。また、熱硬化性樹脂成分は、一般的なトランスファーモールド温度である160℃以上200℃以下の温度域で一旦流動し、一般的なモールド時間である60秒〜180秒の間に硬化反応が進行して流動しなくなるものを用いることが好ましい。
【0052】
また、充填材成分には、熱伝導率が1W/mK以上であれば、絶縁性の無機充填材や導電性の金属充填材を用いる事ができる。単層シートで用いる事もできるが、複数のシートを貼り合わせ複層にしても良い。複層にする場合、少なくとももっとも厚いシートが熱伝導率1W/mK以上となる必要がある。
【0053】
なお、本実施形態では、同一平面状に複数の導体板318及び導体板319を設けるように構成されているが、一つのパワーモジュール300内に1アーム回路分のみを搭載して、IGBT155のエミッタ側とコレクタ側にそれぞれ1枚のみ導体板であっても、本実施形態に係る熱伝導シート380を用いることができる。
【0054】
本実施形態の効果を説明するために、図11に比較例に係るパワーモジュールの断面図を示す。本実施形態の熱伝導シート380の代わりにシリコーンゴムシート390を用いトランスファーモールドまで同様に製造した。トランスファーモールド時に導体板318及び導体板319の傾き100μmを吸収するために330μmのシリコーンゴムシート390が必要であった。シリコーンゴムシート390が厚いためパワーモジュールの放熱性が悪化した。また、パワーモジュールを金属製筺体391に厚さ10μmの接着シートで貼り合わせた後、溶接材392により金属製筺体391のシールを行った。シリコーンゴムシート390の熱膨張率が300ppm/℃と大きかったので、温度サイクルで接着シートの接着層に剥離が生じ絶縁耐圧が低下した。
【実施例2】
【0055】
図10は、本実施例に係るパワーモジュール300の断面模式図である。実施例1と異なる点は、放熱シート380の上面に金属シート386を配置した点である。これにより、熱伝導シート380の取り扱い性が良くなり、生産性を向上できるだけでなく、金属シート386により放熱性が良くなる効果がある。また、熱伝導シート380が導電性を有する場合は、電気的な接続が必要な場所に用いる事ができる効果がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置に関し、特にハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーの観点から、自動車には高燃費化が求められ、モータで駆動する電気自動車や、モータ駆動とエンジン駆動を組み合わせたハイブリッドカーが注目されている。自動車に用いる大容量の車載用モータはバッテリの直流電圧では駆動や制御が困難であり、昇圧し交流制御するためパワー半導体のスイッチングを利用した電力変換装置が不可欠である。また、パワー半導体は通電により発熱するため冷却構造が重要である。
【0003】
両面から冷却可能な半導体装置として、特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1に示されるように、発熱素子の両面から放熱するための一対の放熱板を備え、装置のほぼ全体を樹脂モールドし、一対の放熱板の各面を露出させるように半導体装置を構成し、一対の放熱板の各面に、圧縮変形可能な材質の絶縁シートを貼り付けた状態でトランスファーモールド金型371にクランプしてモールドする事で、部材の寸法誤差を吸収して、素子破壊や放熱面への樹脂回り込みを防止した半導体装置が知られている。
【0005】
しかしながら、絶縁耐圧の確保または熱応力の緩和の観点から、信頼性の確保が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−324816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、信頼性を向上させたパワーモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するために、本発明に係るパワーモジュールは、パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する導体板と、前記パワー半導体素子と前記導体板とを封止するための封止材と、を備え、前記導体板の放熱面は前記封止材から露出され、かつ当該封止材から露出された当該導体板の放熱面が熱硬化性の熱伝導シートで覆われるように構成される。
【0009】
これにより、パワー半導体素子と導体板の傾きを熱硬化性の熱伝導シートにより吸収できるので、高い放熱性を維持しながら、導体板の絶縁のための信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、パワーモジュールの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【図2】ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成図と回路構成図である。
【図3】本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
【図4】本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
【図5】流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
【図6】(a)は、本実施形態のパワーモジュール300aの斜視図である。(b)は、本実施形態のパワーモジュール300aの断面図である。
【図7】(a)は、理解を助けるために、モジュールケース304と絶縁シート333と第一封止樹脂348と第二封止樹脂351を取り除いた内部断面図である。(b)は、内部斜視図である。
【図8】(a)は、図7(b)の構造の理解を助けるための分解図である。(b)は、パワー半導体モジュール300の回路図である。
【図9(a)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(b)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(c)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(d)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(e)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図9(f)】パワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【図10】第2実施例に係るパワーモジュール300の断面模式図である。
【図11】比較例に係るパワーモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明に係る実施形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施形態に係る電力変換装置200は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成と回路構成について、図1と図2を用いて説明する。
【0014】
図1は、ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
本実施形態に係る電力変換装置では、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の構成は、自動車やトラックなどの車両駆動用電力変換装置として最適であるが、これら以外の電力変換装置、例えば電車や船舶,航空機などの電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に対しても適用可能である。
【0015】
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源及びHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記す。
【0016】
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支され、前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸が回転可能に軸支され、後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている(図示省略)。本実施形態のHEVでは、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪側DEF116の入力側にはトランスミッション118の出力軸が機械的に接続されている。トランスミッション118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側及びモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。
【0017】
インバータ部140,142は、直流コネクタ138を介してバッテリ136と電気的に接続される。バッテリ136とインバータ部140,142との相互において電力の授受が可能である。本実施形態では、モータジェネレータ192及びインバータ部140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及びインバータ部142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
【0018】
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136からインバータ部43に直流電力が供給され、インバータ部43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。インバータ部43は、インバータ部140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数,電力を制御する。モータ195の容量がモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、インバータ部43の最大変換電力がインバータ部140や142より小さいが、インバータ部43の回路構成は基本的にインバータ部140や142の回路構成と同じである。なお、電力変換装置200は、インバータ部140,インバータ部142,インバータ部43に供給される直流電流を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
次に、図2を用いてインバータ部140やインバータ部142あるいはインバータ部43の電気回路構成を説明する。なお、図2では、代表例としてインバータ部140の説明を行う。
【0019】
インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150をモータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相(U相,V相,W相)分を設けている。それぞれの上下アーム直列回路150は、その中点部分(中間電極169)から交流端子159及び交流コネクタ188を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する。
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサの電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側にコンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0020】
制御部170は、インバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。IGBT328やIGBT330は、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力は、モータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
【0021】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えてる。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えてる。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよいが、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。コンデンサモジュール500は、正極側コンデンサ端子506と負極側コンデンサ端子504と直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。なお、インバータ部140は、直流正極端子314を介して正極側コンデンサ端子506と接続され、かつ直流負極端子316を介して負極側コンデンサ端子504と接続される。
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、及びモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180から信号線182を介して出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
【0022】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相,V相,W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相,V相,W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号として、信号線176を介してドライバ回路174に出力する。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0023】
また、制御部170は、異常検知(過電流,過電圧,過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極155及び信号用エミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
本実施形態に係る電力変換装置200は、トランスミッション118を収納するためのアルミニウム製の筐体119に固定される。電力変換装置200は、底面及び上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。冷却ジャケット12は、後述するパワーモジュール300及びコンデンサモジュール500を保持するとともに、冷却媒体によって冷却する。また、冷却ジャケット12は、筐体119に固定され、かつ筐体119との対向面に入口配管13と出口配管14が形成されている。入口配管13と出口配管14が筐体119に形成された配管と接続されることにより、トランスミッション118を冷却するための冷却媒体が、冷却ジャケット12に流入及び流出する。
ケース10は、電力変換装置200を覆って、かつ筐体119側に固定される。ケース10の底は、制御回路172を実装した制御回路基板20と対向するように構成される。またケース10は、ケース10の底から外部に繋がる第1開口202と第2開口204を、ケース10の底面に形成する。コネクタ21は、制御回路基板20に接続されており、外部からの各種信号を当該制御回路基板20に伝送する。バッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。
コネクタ21とバッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、ケース10の底面に向かって延ばされ、コネクタ21は第1開口202から突出し、かつバッテリ負極側接続端子部510及びバッテリ正極側接続端子部512は第2開口204から突出する。ケース10には、その内壁の第1開口202及び第2開口204の周りにシール部材(不図示)が設けられる。
コネクタ21等の端子の勘合面の向きは、車種により種々の方向となるが、特に小型車両に搭載しようとした場合、エンジンルーム内の大きさの制約や組立性の観点から勘合面を上向きにして出すことが好ましい。特に、本実施形態のように、電力変換装置200が、トランスミッション118の上方に配置される場合には、トランスミッション118の配置側とは反対側に向かって突出させることにより、作業性が向上する。また、コネクタ21は外部の雰囲気からシールする必要があるが、コネクタ21に対してケース10を上方向から組付ける構成となることで、ケース10が筐体119に組付けられたときに、ケース10と接触するシール部材がコネクタ21を押し付けることができ、気密性が向上する。
【0025】
図4は、本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
冷却ジャケット12には、流路19が設けられ、該流路19の上面には、開口部400a〜400cが冷媒の流れ方向418に沿って形成され、かつ開口部402a〜402cが冷媒の流れ方向422に沿って形成される。開口部400a〜400cがパワーモジュール300a〜300cによって塞がれる様に、かつ開口部402a〜402cがパワーモジュール301a〜301cによって塞がれる。
また、冷却ジャケット12には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成される。コンデンサモジュール500は、収納空間405に収納されることにより、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。コンデンサモジュール500は、冷媒の流れ方向418を形成するための流路19と、冷媒の流れ方向422を形成するための流路19に挟まれるため、効率良く冷却することができる。
冷却ジャケット12には、入口配管13と出口配管14と対向する位置に突出部407が形成される。突出部407は、冷却ジャケット12と一体に形成される。補機用パワーモジュール350は、突出部407に固定され、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。補機用パワーモジュール350の側部には、バスバーモジュール800が配置される。バスバーモジュール800は、交流バスバー186や電流センサ180等により構成されるが、詳細は後述する。
このように冷却ジャケット12の中央部にコンデンサモジュール500の収納空間405を設け、その収納空間405を挟むように流路19を設け、それぞれの流路19に車両駆動用のパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301cを配置し、さらに冷却ジャケット12の上面に補機用パワーモジュール350を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。また冷却ジャケット12の流路19の主構造を冷却ジャケット12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで冷却ジャケット12と流路19とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
なお、パワーモジュール300a〜300cとパワーモジュール301a〜301cを流路19に固定することで流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次にコンデンサモジュール500や補機用パワーモジュール350や基板を取り付ける作業を行うことができる。このように、電力変換装置200の底部に冷却ジャケット12を配置し、次にコンデンサモジュール500,補機用パワーモジュール350,バスバーモジュール800,基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。
ドライバ回路基板22は、補機用パワーモジュール350及びバスバーモジュール800の上方に配置される。また、ドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。
図5は、流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
冷却ジャケット12と当該冷却ジャケット12の内部に設けられた流路19は、一体に鋳造されている。冷却ジャケット12に下面には、1つに繋がった開口部404が形成されている。開口部404は、中央部に開口を有する下カバー420によって塞がれる。下カバー420と冷却ジャケット12の間には、シール部材409a及びシール部材409bが設けられ気密性を保っている。
下カバー420には、一方の端辺の近傍であって当該端辺に沿って、入口配管13を挿入するための入口孔401と、出口配管14を挿入するための出口孔403が形成される。また下カバー420には、トランスミッション118の配置方向に向かって突出する凸部406が形成される。凸部406は、パワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301c毎に設けられる。
冷媒は、流れ方向417のように、入口孔401を通って、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第1流路部19aに向かって流れる。そして冷媒は、流れ方向418のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第2流路部19bを流れる。また冷媒は、流れ方向421のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第3流路部19cを流れる。第3流路部19cは折り返し流路を形成する。また、冷媒は、流れ方向422のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第4流路部19dを流れる。第4流路部19dは、コンデンサモジュール500を挟んで第2流路部19bと対向する位置に設けられる。さらに、冷媒は、流れ方向423のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第5流路部19e及び出口孔403を通って出口配管14に流出する。
第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19c,第4流路部19d及び第5流路部19eは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。パワーモジュール300a〜300cが、冷却ジャケット12の上面側に形成された開口部400a〜400cから挿入され(図4参照)、第2流路部19b内の収納空間に収納される。なお、パワーモジュール300aの収納空間とパワーモジュール300bの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408aが形成される。同様に、パワーモジュール300bの収納空間とパワーモジュール300cの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408bが形成される。中間部材408a及び中間部材408bは、その主面が冷媒の流れ方向に沿うように形成される。第4流路部19dも第2流路部19bと同様にパワーモジュール301a〜301cの収納空間及び中間部材を形成する。また、冷却ジャケット12は、開口部404と開口部400a〜400c及び402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。
下カバー420には、筐体119と当接し、電力変換装置200を支持するための支持部410a及び支持部410bが設けられる。支持部410aは下カバー420の一方の端辺に近づけて設けられ、支持部410bは下カバー420の他方の端辺に近づけて設けられる。これにより、電力変換装置200を、トランスミッション118やモータジェネレータ192の円柱形状に合わせて形成された筐体119の側壁に強固に固定することができる。
また、支持部410bは、抵抗器450を支持するように構成されている。この抵抗器450は、乗員保護やメンテナンス時における安全面に配慮して、コンデンサセルに帯電した電荷を放電するためのものである。抵抗器450は、高電圧の電気を継続的に放電できるように構成されているが、万が一抵抗器もしくは放電機構に何らかの異常があった場合でも、車両に対するダメージを最小限にするように配慮した構成とする必要がある。つまり、抵抗器450がパワーモジュールやコンデンサモジュールやドライバ回路基板等の周辺に配置されている場合、万が一抵抗器450が発熱,発火等の不具合を発生した場合に主要部品近傍で延焼する可能性が考えられる。
そこで本実施形態では、パワーモジュール300a〜300cやパワーモジュール301a〜301cやコンデンサモジュール500は、冷却ジャケット12を挟んで、トランスミッション118を収納した筐体119とは反対側に配置され、かつ抵抗器450は、冷却ジャケット12と筐体119との間の空間に配置される。これにより、抵抗器450が金属で形成された冷却ジャケット12及び筐体119で囲まれた閉空間に配置されることになる。なお、コンデンサモジュール500内のコンデンサセルに貯まった電荷は、図4に示されたドライバ回路基板22に搭載されたスイッチング手段のスイッチング動作によって、冷却ジャケット12の側部を通る配線を介して抵抗器450に放電制御される。本実施形態では、スイッチング手段によって高速に放電するように制御される。放電を制御するドライバ回路基板22と抵抗器450の間に、冷却ジャケット12が設けられているので、ドライバ回路基板22を抵抗器450から保護することができる。また、抵抗器450は下カバー420に固定されているので、流路19と熱的に非常に近い位置に設けられているので、抵抗器450の異常な発熱を抑制することができる。
【0026】
図6乃至図8を用いてインバータ部140およびインバータ部142に使用されるパワーモジュール300aの詳細構成を説明する。図6(a)は、本実施形態のパワーモジュール300aの斜視図である。図6(b)は、本実施形態のパワーモジュール300aの断面図である。
上下アーム直列回路を構成するパワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)が、図7及び図8に示す如く、導体板315や導体板318によって、あるいは導体板316や導体板319によって、両面から挟んで固着される。これら導体板には、信号端子325Uや信号端子325Lである信号配線を一体成型して成る補助モールド体600が組みつけられる。導体板315等は、その放熱面が露出した状態で第一封止樹脂348によって封止され、当該放熱面に絶縁シート333が熱圧着される。第一封止樹脂348により封止されたモジュール一次封止体302は、モジュールケース304の中に挿入して絶縁シート333を挟んで、CAN型冷却器であるモジュールケース304の内面に熱圧着される。ここで、CAN型冷却器とは、一面に挿入口306と他面に底を有する筒形状をした冷却器である。
モジュールケース304は、アルミ合金材料例えばAl,AlSi,AlSiC,Al−C等から構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。モジュールケース304は、挿入口306以外に開口を設けない構造であり、挿入口306は、フランジ304Bよって、その外周を囲まれている。また、図6(a)に示されるように、他の面より広い面を有する第1放熱面307A及び第2放熱面307Bがそれぞれ対向した状態で配置され、当該対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面は、当該第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより狭い幅で密閉された面を構成し、残りの一辺の面に挿入口306が形成される。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角が図6(a)に示す如く曲面を成していても良い。
このような形状の金属性のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷媒が流れる流路19内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。また、対向した第1放熱面307Aと第2放熱面307Bに、フィン305がそれぞれ均一に形成される。さらに、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bの外周には、厚みが極端に薄くなっている湾曲部304Aが形成されている。湾曲部304Aは、フィン305を加圧することで簡単に変形する程度まで厚みを極端に薄くしてあるため、モジュール一次封止体302が挿入された後の生産性が向上する。
【0027】
モジュールケース304の内部に残存する空隙には、第二封止樹脂351を充填される。また、図8に示されるように、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための直流正極配線315Aおよび直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315Bと直流負極端子319Bが形成されている。モータジェネレータ192あるいは194に交流電力を供給するための交流配線320が設けられており、その先端に交流端子321が形成されている。本実施形態では、直流正極配線315Aは導体板315と一体成形され、直流負極配線319Aは導体板319と一体成形され、交流配線320は導体板316と一体成形される。
上述のように導体板315等を絶縁シート333を介してモジュールケース304の内壁に熱圧着することにより、導体板とモジュールケース304の内壁の間の空隙を少なくすることができ、パワー半導体素子の発生熱を効率良くフィン305へ伝達できる。さらに絶縁シート333にある程度の厚みと柔軟性を持たせることにより、熱応力の発生を絶縁シート333で吸収することができ、温度変化の激しい車両用の電力変換装置に使用するのに良好となる。
【0028】
図7(a)は、理解を助けるために、モジュールケース304と絶縁シート333と第一封止樹脂348と第二封止樹脂351を取り除いた内部断面図である。図7(b)は、内部斜視図である。図8(a)は、図7(b)の構造の理解を助けるための分解図である。図8(b)は、パワー半導体モジュール300の回路図である。
【0029】
まず、パワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)と導体板の配置を、図8(b)に示された電気回路と関連付けて説明する。図7(b)に示されるように、直流正極側の導体板315と交流出力側の導体板316は、略同一平面状に配置される。導体板315には、上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極が固着される。導体板316には、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極が固着される。同様に、交流導体板318と導体板319は、略同一平面状に配置される。交流導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が固着される。導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が固着される。各パワー半導体素子は、各導体板に設けられた素子固着部322に、金属接合材160を介してそれぞれ固着される。金属接合材160は、例えばはんだ材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材、等である。
各パワー半導体素子は板状の扁平構造であり、当該パワー半導体素子の各電極は表裏面に形成されている。図7(a)に示されるように、パワー半導体素子の各電極は、導体板315と導体板318、または導体板316と導体板319によって挟まれる。つまり、導体板315と導体板318は、IGBT328及びダイオード156を介して略平行に対向した積層配置となる。同様に、導体板316と導体板319は、IGBT330及びダイオード166を介して略平行に対向した積層配置となる。また、導体板316と導体板318は中間電極329を介して接続されている。この接続により上アーム回路と下アーム回路が電気的に接続され、上下アーム直列回路が形成される。
【0030】
直流正極配線315Aと直流負極配線319Aは、樹脂材料で成形された補助モールド体600を介して対向した状態で略平行に延びる形状を成している。信号端子325Uや信号端子325Lは、補助モールド体600に一体に成形されて、かつ直流正極配線315A及び直流負極配線319Aと同様の方向に向かって延びている。補助モールド体600に用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aと信号端子325Uと信号端子325Lとの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。さらに、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aを略平行に対向するように配置したことにより、パワー半導体素子のスイッチング動作時に瞬間的に流れる電流が、対向してかつ逆方向に流れる。これにより、電流が作る磁界が互いに相殺する作用をなし、この作用により低インダクタンス化が可能となる。
図9はパワーモジュール300の製造工程を示す図である。
【0031】
図9(a)に示されるように、IGBT155のコレクタ側に配置される導体板315は、台370の上に配置される。そして、導体板315の上に、はんだシート等の金属接合材160,IGBT155又はダイオード156,金属接合材160,導体板318の順に配置される。次に、これらが一括リフローされることで、電気的及び機械的に接続される。この時、IGBT155のエミッタ側の導体板318は台370の上に固定されていないので、導体板315の平行面に対して約100μm傾くおそれがある。
【0032】
図9(b)に示されるように、信号端子325Lをインサート成型しており熱可塑性樹脂からなる補助モールド体600が、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aの間に挿入され、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aを保持する。そして、信号端子325LとIGBT155のゲート端子とがワイヤボンディング327により接続される。
【0033】
図9(c)に示されるように、導体板318の上面に熱伝導シート380が配置される。この熱伝導シート380は、導体板318の上面の外周よりも3mm程度大きく加工され、かつその厚さは100μm程度である。また熱伝導シート380は、熱硬化性であり、かつ高熱伝導性である。また、熱伝導シート380は、当該熱伝導シート380の上面側で、耐熱シート381によって支持される。この耐熱シート381は、厚さが50μm程度であり、熱伝導シート380に対して離型性を有する。離型性の耐熱シート381で支持されているため、熱硬化性の高熱伝導シートの取り扱いが容易になり生産性が向上する。そして、金型371によって補助モールド体600,導体板315,導体板318等が挟み込みこまれ、175℃で180秒間、10MPaの成形条件でトランスファーモールドされる。この時、熱硬化性の熱伝導シート380が金型371内で流動し、耐熱シート381と導体板318との間に融けた熱伝導シート380が充填される。つまり、熱伝導シート380の導体板318側は当該導体板318の傾きに応じて変形し、熱伝導シート380の金型371側は当該金型371の形状に応じて平坦になる。その結果、熱硬化性の熱伝導シート380の最も薄い部分382(図9c参照)が数μm程度になることもあれば、熱伝導シート380の厚さが0μmとなって導体板318の端部が熱伝導シート380から露出することもある。しかしながら、導体板318の端部は、離型性の耐熱性シート381に接することになり、製造上問題は発生しない。
【0034】
また、熱硬化性の熱伝導シート380が金型371内で流動することで、熱伝導シート380の厚さが100μmとなることにより、導体板318傾きが100μmとなることに追従できることがわかった。このため、熱伝導シート380に薄いシートを用いる事が可能となり放熱性の向上に効果がある。
【0035】
なお、図9(c)において、熱伝導シート380は耐熱シート381によって支持されているが、上記成形条件において熱伝導シート380が一定以上の粘度を保つことができるならば、耐熱シート381は必要ない。これにより、金型371が熱伝導シート380に導体板318をクランプされると、熱伝導シート380中の熱硬化性樹脂成物が、金型371から伝達される温度によって流動され、前記金型371と導体板318と間の空間に充填され、熱伝導シート380は金型371の形状に応じて平坦になる。
【0036】
次に、図9(d)に示されるように、金型371が取り外され、離型性を有する耐熱シート381は粘着テープによって剥離される。
【0037】
次に、図9(e)に示されるように、モジュール一次封止体302の上面及び下面に絶縁部材で構成された絶縁シート333を配置した後、モジュール一次封止体302はモジュールケース304内に挿入される。
【0038】
次に、図9(f)に示されるように、140℃の真空室内で、モジュールケース304の第1放熱面307Aを加圧して、薄肉に形成された湾曲部304A及び湾曲部304Bを塑性変形させて、モジュールケース304の内壁と絶縁シート333とを接着させる。さらに、モジュールケース304とモジュール一次封止体302の隙間にポッティング用の第2封止樹脂を注入し、加熱硬化させる。
【0039】
パワーモジュール300のリードフレームに100μmの傾きが見られたが、熱硬化性の高熱伝導シートの露出面はトランスファーモールド金型371に追従して平坦になったため、200μmの絶縁シートを用いたが最小部でも150μmの絶縁距離を確保する事ができた。
【0040】
なお、図9(c)に示されるように、補助モールド体600が、直流正極配線315A及び直流負極配線319Aを支持し、さらに金型371と密着することで、第1封止材348をトランスファーモールドすることが容易になり、かつ位置決めの容易になる。
【0041】
また、図9(d)に示されるように、モジュール一次封止体302には、導体板318の放熱面が配置された側の面に凹部383が形成される。導体板318の放熱面は凹部383の底部から露出され、かつ当該底部から露出された導体板318の放熱面が熱伝導シート380で覆われる。これにより、導体板318が傾いた場合でも、絶縁距離を十分に確保することができるようになる。
【0042】
また、図9(d)に示されるように、リード状に形成された制御用の信号端子325Lは、ワイヤボンディング327との接続面がIGBT155のゲート電極が形成された面と同一方向を向くように配置される。これにより、ワイヤボンディング327を組み付ける作業の方向と、熱伝導シート380及び耐熱性シート381を配置する作業の方向が同一となって、組立作業性が向上する。
【0043】
また、図9(d)に示されるように、熱伝導シート380は、導体板318の放熱面と対向する第1部分384と、第1封止材348と対向する第2部分385とにより構成される。そして、この第2部分385と第1封止材348との界面には、熱流動によって熱伝導シート380と第1封止材348との混合部が形成される。これにより熱流動により第1封止材348と熱伝導シート380との密着力が向上する。
【0044】
また、図9(f)に示されるように、モジュールケース304は、第1放熱面307Aと第2放熱面307Bが一体となるように構成されている。これにより、絶縁シート333に掛かる熱応力が増大する傾向にある。そこで、絶縁シート333に軟質製のシート、例えば1〜60(AskerC)を用いて、モジュールケース304からの熱応力を緩和することもできる。また、絶縁シート333は、絶縁距離や熱応力から50μm〜300μmの厚さで使いたいため、熱伝導率は、1W/mK以上、絶縁強度は10kV/mm以上、体積低効率1011Ω・cm以上が望ましい。
【0045】
また、図9(f)に示されるモジュールケース304が導電性の金属により構成され、かつ導体板318に大電流が流される場合には、モジュールケース304と導体板318との間には十分な絶縁距離を確保する必要がある。そこで、熱伝導シート380は、電気絶縁性の材料で構成することで、良好な絶縁状態を維持できる。特に、本実施形態のように、同一面上に電位の異なる複数の導体板318及び導体板319を並べた場合でも、一枚の熱伝導シート380で覆うことができるため生産性が向上する。
【0046】
また、図9(f)に示される導体板318が、対向する導体板315よりも薄く形成されるために、電流バランスや熱バランスが不均衡になってしまう場合には、熱伝導シート380は導電性の材料で構成することができる。
【0047】
また、図9(f)に示される導体板318やモジュールケース304が銅材またはアルミニウム材により構成される場合には、熱伝導シート380は熱膨張率が12ppm/℃以上40ppm/℃以下であることが好ましい。これにより、銅材またはアルミニウム材の熱膨張率に近いため温度サイクル信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、図9(f)に示される熱伝導シート380に、熱ガラス転移温度が150℃以上である熱硬化性の素材を用いることにより、IGBT155の最大温度近くでも、シート物性に優れるガラス状態となるため信頼性が向上する。
【0049】
また、熱伝導シート380は、トランスファーモールドの前において、ゲル分率が50%未満の熱硬化性樹脂成分かつ熱伝導率が1W/mK以上からなる熱硬化性樹脂組成物で構成され、かつ当該熱硬化性樹脂成分が加熱によってゲル分率が50%以上になるまで熱硬化するように構成する。これにより、トランスファーモールド時に流動しリードフレームや金型371に追従した後、硬化反応の進行によって熱伝導シート380を第1封止材348や導体板318にしっかりと固定できる効果がある。
【0050】
なお、本実施形態の金属接合体160は、錫を主成分としたはんだを用いる事が望ましいが、金,銀,銅のいずれかを主成分としたものやロウ材やペーストを用いる事もできる。
【0051】
また、本実施形態の熱硬化性の熱伝導シート380は、少なくとも熱硬化性樹脂成分と熱伝導率が1W/mK以上の充填材成分からなるものを用いることが好ましい。また、熱硬化性樹脂成分は、一般的なトランスファーモールド温度である160℃以上200℃以下の温度域で一旦流動し、一般的なモールド時間である60秒〜180秒の間に硬化反応が進行して流動しなくなるものを用いることが好ましい。
【0052】
また、充填材成分には、熱伝導率が1W/mK以上であれば、絶縁性の無機充填材や導電性の金属充填材を用いる事ができる。単層シートで用いる事もできるが、複数のシートを貼り合わせ複層にしても良い。複層にする場合、少なくとももっとも厚いシートが熱伝導率1W/mK以上となる必要がある。
【0053】
なお、本実施形態では、同一平面状に複数の導体板318及び導体板319を設けるように構成されているが、一つのパワーモジュール300内に1アーム回路分のみを搭載して、IGBT155のエミッタ側とコレクタ側にそれぞれ1枚のみ導体板であっても、本実施形態に係る熱伝導シート380を用いることができる。
【0054】
本実施形態の効果を説明するために、図11に比較例に係るパワーモジュールの断面図を示す。本実施形態の熱伝導シート380の代わりにシリコーンゴムシート390を用いトランスファーモールドまで同様に製造した。トランスファーモールド時に導体板318及び導体板319の傾き100μmを吸収するために330μmのシリコーンゴムシート390が必要であった。シリコーンゴムシート390が厚いためパワーモジュールの放熱性が悪化した。また、パワーモジュールを金属製筺体391に厚さ10μmの接着シートで貼り合わせた後、溶接材392により金属製筺体391のシールを行った。シリコーンゴムシート390の熱膨張率が300ppm/℃と大きかったので、温度サイクルで接着シートの接着層に剥離が生じ絶縁耐圧が低下した。
【実施例2】
【0055】
図10は、本実施例に係るパワーモジュール300の断面模式図である。実施例1と異なる点は、放熱シート380の上面に金属シート386を配置した点である。これにより、熱伝導シート380の取り扱い性が良くなり、生産性を向上できるだけでなく、金属シート386により放熱性が良くなる効果がある。また、熱伝導シート380が導電性を有する場合は、電気的な接続が必要な場所に用いる事ができる効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子と、
前記パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第1導体板と、
前記パワー半導体素子の他方の電極面とはんだを介して接続する接合面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第2導体板と、
前記パワー半導体素子と前記第1導体板と前記第2導体板を封止するための封止材と、を備え、
前記第1導体板の放熱面は前記封止材から露出され、
前記第2導体板の放熱面は前記封止材から露出され、かつ当該封止材から露出された当該第2導体板の放熱面が熱硬化性の熱伝導シートで覆われるパワーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、
前記封止材は、前記第2導体板の放熱面が配置された側の面に凹部を形成し、
前記第2導体板の放熱面は前記封止材の凹部の底部から露出され、かつ当該封止材の凹部の底部から露出された当該第2導体板の放熱面が前記熱伝導シートで覆われるパワーモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記パワー半導体素子のゲート電極にゲート信号を伝達するための制御用導体と、
前記ゲート電極と前記制御用導体とを電気的に接続するためのワイヤボンディング材と、を備え、
前記パワー半導体素子の一方の電極面には、エミッタ電極が形成され、
前記パワー半導体素子の他方の電極面には、コレクタ電極と前記ゲート電極が形成され、
前記制御用導体は、前記ワイヤボンディング材との接続面が前記パワー半導体素子の前記ゲート電極が形成された面と同一方向を向くように配置されるパワーモジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記第1導体板と一体に形成され、かつ端部に直流端子を形成する第1配線導体と、
前記第2導体板と一体に形成され、かつ端部に直流端子を形成する第2配線導体と、
前記第1配線導体と前記第2配線導体を支持し、かつ前記封止材とは異なる融点である補助封止材と、を備えるパワーモジュール。
【請求項5】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、前記第2導体板の放熱面と対向する第1部分と、前記封止材と対向する第2部分とにより構成され、
前記熱伝導シートの第2部分と前記封止材との界面には、熱流動により当該熱伝導シートと当該封止材との混合部を形成するパワーモジュール。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
第1絶縁部材を介して前記第1導体板の放熱面と対向して配置される第1放熱部材と、
第2絶縁部材を介して前記第2導体板の放熱面と対向して配置される第2放熱部材と、を備え、
前記第2絶縁部材は、前記熱伝導シートと接触して、当該熱伝導シートから伝達される熱を前記第2放熱部材に伝達するパワーモジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のパワーモジュールであって、
前記第1放熱部材と前記第2放熱部材を接続することにより構成され、かつ前記封止材を収納するためのパワーモジュールケースを備え、
前記第1絶縁部材及び前記第2絶縁部材は、所定以上の弾性を有する樹脂製シートで構成されるパワーモジュール。
【請求項8】
請求項6に記載のパワーモジュールであって、
前記第1放熱部材と前記第2放熱部材を接続することにより構成され、かつ前記封止材を収納するためのパワーモジュールケースと、
前記封止材と前記パワーモジュールケース内壁との隙間を封止するためのポッティング樹脂を備えるパワーモジュール。
【請求項9】
請求項6に記載のパワーモジュールであって、
前記第2放熱部材は、導電性の金属により構成され、
前記熱伝導シートは、電気絶縁性の材料で構成されるパワーモジュール。
【請求項10】
請求項1または6に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、導電性の材料で構成され、かつ前記第2導体板との間で電流が流入及び流出するパワーモジュール。
【請求項11】
請求項1ないし10に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記第2導体板は、銅材またはアルミニウム材により構成され、
前記熱伝導シートは、当該熱伝導シートの熱膨張率が12ppm/℃以上40ppm/℃以下であるパワーモジュール。
【請求項12】
請求項1ないし11に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、当該熱伝導シートのガラス転移温度が150℃以上であるパワーモジュール。
【請求項13】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、前記封止材によるトランスファーモールドの前において、ゲル分率が50%未満の熱硬化性樹脂成分かつ熱伝導率が1W/mK以上からなる熱硬化性樹脂組成物であり、
前記熱硬化性樹脂成分は、前記トランスファーモールド中の温度上昇により流動し、かつ流動後の加熱によってゲル分率が50%以上になるまで熱硬化するパワーモジュール。
【請求項14】
パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第1導体板と、前記パワー半導体素子の他方の電極面とはんだを介して接続する接合面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第2導体板と、前記パワー半導体素子と前記第1導体板と前記第2導体板を封止するための封止材と、を備えるパワーモジュールの製造方法であって、
当該トランスファーモールドに用いられる金型と前記封止材から露出された前記第2導体板の放熱面との間に、熱硬化性の熱伝導シートが配置される第1工程と、
前記封止材をトランスファーモールドする際に、前記金型が前記熱伝導シート及び前記第2導体板をクランプし、かつ当該熱伝導シート中の熱硬化性樹脂成物が前記金型から伝達される温度によって流動することにより、前記金型と前記第2導体板と間の空間に充填する第2工程と、
前記封止材の硬化反応の進行とともに、前記熱伝導シートの硬化反応が進行する第3工程と、を有するパワーモジュールの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のパワーモジュールの製造方法であって、
前記第1工程は、前記熱伝導シートと前記金型との間に配置されかつ離型性を有する耐熱性シートを当該熱伝導シートの上面に配置することで、当該熱伝導シートを固定することを含み、
前記耐熱性シートは、前記第3工程終了後に、粘着性を有するテープによって剥離されるパワーモジュールの製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載のパワーモジュールの製造方法であって、
前記第1工程は、前記熱伝導シートと前記金型との間に配置される金属製シートを当該熱伝導シートの上面に配置することで、当該熱伝導シートを固定することを含むパワーモジュールの製造方法。
【請求項1】
パワー半導体素子と、
前記パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第1導体板と、
前記パワー半導体素子の他方の電極面とはんだを介して接続する接合面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第2導体板と、
前記パワー半導体素子と前記第1導体板と前記第2導体板を封止するための封止材と、を備え、
前記第1導体板の放熱面は前記封止材から露出され、
前記第2導体板の放熱面は前記封止材から露出され、かつ当該封止材から露出された当該第2導体板の放熱面が熱硬化性の熱伝導シートで覆われるパワーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、
前記封止材は、前記第2導体板の放熱面が配置された側の面に凹部を形成し、
前記第2導体板の放熱面は前記封止材の凹部の底部から露出され、かつ当該封止材の凹部の底部から露出された当該第2導体板の放熱面が前記熱伝導シートで覆われるパワーモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記パワー半導体素子のゲート電極にゲート信号を伝達するための制御用導体と、
前記ゲート電極と前記制御用導体とを電気的に接続するためのワイヤボンディング材と、を備え、
前記パワー半導体素子の一方の電極面には、エミッタ電極が形成され、
前記パワー半導体素子の他方の電極面には、コレクタ電極と前記ゲート電極が形成され、
前記制御用導体は、前記ワイヤボンディング材との接続面が前記パワー半導体素子の前記ゲート電極が形成された面と同一方向を向くように配置されるパワーモジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記第1導体板と一体に形成され、かつ端部に直流端子を形成する第1配線導体と、
前記第2導体板と一体に形成され、かつ端部に直流端子を形成する第2配線導体と、
前記第1配線導体と前記第2配線導体を支持し、かつ前記封止材とは異なる融点である補助封止材と、を備えるパワーモジュール。
【請求項5】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、前記第2導体板の放熱面と対向する第1部分と、前記封止材と対向する第2部分とにより構成され、
前記熱伝導シートの第2部分と前記封止材との界面には、熱流動により当該熱伝導シートと当該封止材との混合部を形成するパワーモジュール。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
第1絶縁部材を介して前記第1導体板の放熱面と対向して配置される第1放熱部材と、
第2絶縁部材を介して前記第2導体板の放熱面と対向して配置される第2放熱部材と、を備え、
前記第2絶縁部材は、前記熱伝導シートと接触して、当該熱伝導シートから伝達される熱を前記第2放熱部材に伝達するパワーモジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のパワーモジュールであって、
前記第1放熱部材と前記第2放熱部材を接続することにより構成され、かつ前記封止材を収納するためのパワーモジュールケースを備え、
前記第1絶縁部材及び前記第2絶縁部材は、所定以上の弾性を有する樹脂製シートで構成されるパワーモジュール。
【請求項8】
請求項6に記載のパワーモジュールであって、
前記第1放熱部材と前記第2放熱部材を接続することにより構成され、かつ前記封止材を収納するためのパワーモジュールケースと、
前記封止材と前記パワーモジュールケース内壁との隙間を封止するためのポッティング樹脂を備えるパワーモジュール。
【請求項9】
請求項6に記載のパワーモジュールであって、
前記第2放熱部材は、導電性の金属により構成され、
前記熱伝導シートは、電気絶縁性の材料で構成されるパワーモジュール。
【請求項10】
請求項1または6に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、導電性の材料で構成され、かつ前記第2導体板との間で電流が流入及び流出するパワーモジュール。
【請求項11】
請求項1ないし10に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記第2導体板は、銅材またはアルミニウム材により構成され、
前記熱伝導シートは、当該熱伝導シートの熱膨張率が12ppm/℃以上40ppm/℃以下であるパワーモジュール。
【請求項12】
請求項1ないし11に記載のいずれかのパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、当該熱伝導シートのガラス転移温度が150℃以上であるパワーモジュール。
【請求項13】
請求項1に記載のパワーモジュールであって、
前記熱伝導シートは、前記封止材によるトランスファーモールドの前において、ゲル分率が50%未満の熱硬化性樹脂成分かつ熱伝導率が1W/mK以上からなる熱硬化性樹脂組成物であり、
前記熱硬化性樹脂成分は、前記トランスファーモールド中の温度上昇により流動し、かつ流動後の加熱によってゲル分率が50%以上になるまで熱硬化するパワーモジュール。
【請求項14】
パワー半導体素子の一方の電極面とはんだを介して接続する接続面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第1導体板と、前記パワー半導体素子の他方の電極面とはんだを介して接続する接合面を形成し、かつ当該接続面とは反対側の面が放熱面を形成する第2導体板と、前記パワー半導体素子と前記第1導体板と前記第2導体板を封止するための封止材と、を備えるパワーモジュールの製造方法であって、
当該トランスファーモールドに用いられる金型と前記封止材から露出された前記第2導体板の放熱面との間に、熱硬化性の熱伝導シートが配置される第1工程と、
前記封止材をトランスファーモールドする際に、前記金型が前記熱伝導シート及び前記第2導体板をクランプし、かつ当該熱伝導シート中の熱硬化性樹脂成物が前記金型から伝達される温度によって流動することにより、前記金型と前記第2導体板と間の空間に充填する第2工程と、
前記封止材の硬化反応の進行とともに、前記熱伝導シートの硬化反応が進行する第3工程と、を有するパワーモジュールの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のパワーモジュールの製造方法であって、
前記第1工程は、前記熱伝導シートと前記金型との間に配置されかつ離型性を有する耐熱性シートを当該熱伝導シートの上面に配置することで、当該熱伝導シートを固定することを含み、
前記耐熱性シートは、前記第3工程終了後に、粘着性を有するテープによって剥離されるパワーモジュールの製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載のパワーモジュールの製造方法であって、
前記第1工程は、前記熱伝導シートと前記金型との間に配置される金属製シートを当該熱伝導シートの上面に配置することで、当該熱伝導シートを固定することを含むパワーモジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図9(d)】
【図9(e)】
【図9(f)】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図9(d)】
【図9(e)】
【図9(f)】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−217546(P2011−217546A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84768(P2010−84768)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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