説明

パワーモジュール及びパワー半導体装置

【課題】生産性が高く、小型軽量化が実現可能なパワーモジュール及びパワー半導体装置を提供する。
【解決手段】パワーモジュール101の厚みと同じ高さを有する少なくとも一対の金属ブロック112−1,112−2を備え、各金属ブロックの放熱面112aは、パワーモジュールの側面に露出する。電力用半導体素子111は、各金属ブロックにおけるパワーモジュールの厚み方向に沿う素子保持面112b間に挟んで保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体素子を有するパワーモジュール、及び該パワーモジュールを備えたパワー半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なパワー半導体装置は、一個の冷却器に、一個もしくは複数のパワーモジュールを、熱伝導グリスを介してネジ固定する構成を有する。また、小型軽量化を追求したパワー半導体装置としては、日本国特許第4016907号等に開示されるものが一例として挙げられる。該特許では、水冷冷却器をパワーモジュールの両面に配置してスタックすることで冷却器の両面を利用し、小型軽量化を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4016907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される半導体モジュールでは、特許文献1の図4に示されるように、一対の電極放熱板の間にIGBT素子を挟んだ構造となっている。このような半導体モジュールは、トランスファモールド工法で製造されるが、封止に用いる樹脂は、100気圧程度の圧力で金型内に送り込まれる。よって、例えば10μm程度以上の隙間があれば樹脂の染み出しが発生する。このような染み出しが上記電極放熱板の露出部に発生し、いわゆる樹脂バリを形成した場合には、樹脂の熱伝導率が金属の数百分の一程度であることから、上記電極放熱板の放熱性は極端に低下する。
【0005】
封止の際には、上型及び下型のそれぞれが上記一対の電極放熱板のそれぞれに接触して樹脂封止が行われるが、上記隙間の発生を防止するため、上型及び下型に対して数十から数百トンの加圧力が作用される。一方、上述のように上記半導体モジュールは、一対の電極放熱板の間にIGBT素子を挟んだ構造となっていることから、上記加圧力は、直接に上記IGBT素子に作用する。その結果、IGBT素子が破損する可能性がある。一方、破損防止のため加圧力を低下させると、上記樹脂バリの発生の可能性が生じてしまう。
このように従来の半導体モジュールでは、生産性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、生産性が高く、小型軽量化が実現可能なパワーモジュール及びパワー半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様におけるパワーモジュールは、動作により発熱する電力用半導体素子を内蔵し対向する2つの側面にて規定される厚みを有するパワーモジュールであって、上記厚みと同じ高さを有し、かつ上記2つの側面にそれぞれ露出し対向する放熱面、及び上記放熱面に垂直な素子保持面を有する金属ブロックを少なくとも一対備え、上記一対の金属ブロックは、互いに上記素子保持面を対向させて配置され、上記電力用半導体素子は、上記素子保持面間に挟まれて保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様におけるパワーモジュールによれば、パワーモジュールの厚みと同じ高さを有する少なくとも一対の金属ブロックを備え、各金属ブロックの放熱面は、パワーモジュールの側面に露出する。また、電力用半導体素子は、各金属ブロックにおけるパワーモジュールの厚み方向に沿う素子保持面間に挟んで保持される。よって、電力用半導体素子は、2つの放熱面へ放熱が可能であり、電力用半導体素子の放熱性を向上させることができる。さらに、このように放熱性が向上することで、従来のような大型部品である冷却器は不要となる。よって、パワー半導体装置の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
【0009】
さらに、パワーモジュールをトランスファモールド工法にて作製する場合、金型は各金属ブロックの放熱面に接触し、金型押さえ圧力は、各金属ブロックに作用し、放熱面に垂直に位置する素子保持面間に挟んで保持される電力用半導体素子に直接作用することは無い。したがって電力用半導体素子の破壊、及びいわゆる樹脂バリは、発生せず、安定してパワーモジュールの生産が可能である。よって、従来に比べて生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図2A】図1に示すパワーモジュールの斜視図である。
【図2B】図1に示すパワーモジュールの斜視図であり、金属ブロックを透視した状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2におけるパワー半導体装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図5】図4に示すパワーモジュールの斜視図であり、金属ブロックを透視した状態を示す図である。
【図6】図4に示すパワーモジュールを備えたパワー半導体装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図8】図7に示すパワーモジュールの斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態5におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図10】図9に示すパワーモジュールの斜視図である。
【図11】図9に示すパワーモジュールを備えたパワー半導体装置の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態6におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図13】図12の部分拡大図である。
【図14】本発明の実施の形態6におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態7におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態8におけるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図17】図16に示すパワーモジュールの斜視図である。
【図18A】図16に示すパワーモジュールの斜視図である。
【図18B】図16に示すパワーモジュールの斜視図である。
【図19】図16に示すパワーモジュールの回路構成を示す図である。
【図20】図16に示すパワーモジュールを備えたパワー半導体装置の構成を示す図である。
【図21A】複数のパワーモジュールを備えたパワー半導体装置の構成を示す図である。
【図21B】図21Aに示すパワーモジュールの回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態であるパワーモジュール、及び該パワーモジュールを備えたパワー半導体装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0012】
実施の形態1.
本実施の形態1におけるパワーモジュールの一例の断面図を図1に示し、また、その斜視図を図2A及び図2Bに示す。本実施形態におけるパワーモジュール101は、基本的構成部分として、パワー素子111と、それぞれ同形状にてなる一対の金属ブロック112−1,112−2とを備え、対向する2つの側面に相当する第1主面101a及び第2主面101bにて規定される厚みtを有する。厚みtは、一例として2mmから10mm程度が適当である。
尚、後述の実施形態にて説明するように、金属ブロック112−1,112−2対の数は、一対に限定するものではない。
【0013】
金属ブロック112−1,112−2は、アルミニウムや銅などの、熱伝導率及び導電性の高い材料が用いられ、本実施形態では、それぞれ同形状で、図2A及び図2Bに示すような直方体形状にてなる。このような金属ブロック112−1,112−2のそれぞれは、当該パワーモジュール101の上記第1主面101a及び上記第2主面101bに露出し対向する放熱面112a、112aと、上記厚みtと同じ高さを有し放熱面112aに垂直な一つの素子保持面112bとを有する。尚、各金属ブロック112−1,112−2において、それぞれの放熱面112aは、パワーモジュール101の第1主面101a及び第2主面101bと面一となる。又、放熱面112aからの放熱効果を高めるため、放熱面112aの面積は、素子保持面112bの面積よりも大きいのが好ましい。つまり図2Bに示すように、各金属ブロック112−1,112−2は、図示の奥行き方向つまりパワーモジュール101の長さ方向101cに細長い直方体形状である。
【0014】
このような2つの金属ブロック112−1及び金属ブロック112−2は、図1等に示すように、互いの素子保持面112bを対向させて配置され、2つの素子保持面112bの間に導電層113を介してパワー素子111を保持する。ここで、2つの素子保持面112b間の隙間112cは、金属ブロック112−1と、金属ブロック112−2との電気的絶縁を確保するための距離であり、必要な耐電圧特性に合わせて設定される。
【0015】
パワー素子111は、その材質として、SiやGaAs、SiCなどが用いられて作製され、動作により発熱するIGBTのような電力用半導体素子であり、そのサイズは、例えば一辺が5〜20mm程度、厚み0.1〜1mm程度である。パワー素子111からの放熱性を高めるためには、パワー素子111を長方形状とし、パワーモジュール101の第1主面101a及び第2主面101bに平行な辺を、垂直な辺よりも長く構成するのが好ましい。上述したように、金属ブロック112−1,112−2を、パワーモジュール101の長さ方向101cに細長く形成することは、これに対応したものである。
【0016】
このようなパワー素子111の、互いに対向する第1主面111a及び第2主面111bには、それぞれ電極が形成されている。これらの電極の内、一方もしくは両方は、第1主面111a及び第2主面111bの少なくとも一方の縁端部に、耐電圧性を確保するために、導電層113と接しない絶縁領域111cを設けている。本実施形態では、図示するように第2主面111bのみに絶縁領域111cを設けているが、第1主面111a及び第2主面111bにおける各縁端部に絶縁領域111cを設けてもよい。パワー素子111のその他の電極は、それぞれ導電層113を介して金属ブロック112−1及び金属ブロック112−2と電気的に接続される。
【0017】
導電層113として、半田、導電性接着剤などが用いられる。導電層113の厚みは、例えば10μmから1mm程度である。導電層113の厚みは、薄いほうが放熱性が高まり好ましい。しかしながら、パワー素子111の素材と金属ブロック112−1,112−2の素材との線膨張係数が倍以上異なる構成の場合、パワー素子111に熱応力が発生する。よってこのような構成では、弾性率がパワー素子111及び金属ブロック112−1,112−2よりも低い導電層113を用いることで、上記熱応力を低減することができる。このような場合、導電層113の厚みは大きいほど好ましい。
【0018】
上述のように配置、構成された、パワー素子111及び導電層113を含む金属ブロック112−1,112−2は、封止樹脂114にてモールドされる。該モールドにより、パワーモジュール101の筐体が形成される。又モールドに際し、金属ブロック112−1、112−2の放熱面112aは、上述したように、パワーモジュール101の第1主面101a及び第2主面101bとそれぞれ同一面を形成し、第1主面101a及び第2主面101bにそれぞれ露出する。
【0019】
封止樹脂114は、熱硬化型樹脂が一般的に用いられ、シリカフィラー入りのエポキシ樹脂が通常用いられる。封止樹脂114について、絶縁性が高く、耐熱性がある樹脂であれば上述の樹脂に限らないのは言うまでもない。
もちろん金属ブロック112−1、112−2は、本実施形態のような直方体に限定されるものではなく、パワーモジュール101の第1主面101a及び第2主面101bに露出するおよそ平行な放熱面112aを有せばよく、直方体に限定されるものではない。例えば放熱面に投影したときの形状が平行四辺形や台形形状や凹凸形状でもよく、その場合には、封止樹脂114との接着面積が増大するので密着性が増すなどの効果が更に得られる。
【0020】
以上のような構成を有するパワーモジュール101における封止樹脂114による封止方法について説明する。
一般的に、熱硬化型樹脂を封止に用いる工法は、トランスファモールドという名称で広く半導体装置の封止技術として用いられている。この工法の特徴は、上金型、下金型にキャビティとよばれる凹み部があり、該凹み部に封止する部材を入れた状態で、熱硬化型樹脂を加圧注入し、樹脂硬化後に成型物を取り出すものである。このプロセスでは、溶融した樹脂の粘度は、水に近い程度に低く、例えば0.1mm以下の隙間でさえ樹脂は、通過してしまう。よって、金型同士は、高い面精度で作製する必要があり、数十から数百tという高い加圧力で金型を押し付けあうことで隙間をなくし、初めて加工が可能となる。
【0021】
このようなトランスファモールド工法の場合、金型押さえ圧力が直接パワー素子にかかる従来の構造では、パワー素子の破壊が問題となる。
これに対し本実施形態における構造では、上述のように金属ブロック112−1、112−2のそれぞれの厚みは、パワーモジュール101の厚みtを規定し、つまり厚みtに同じである。よって、樹脂封止を行いパワーモジュール101の厚さtを規定する上金型及び下金型に、金属ブロック112−1、112−2の放熱面112aを接触させ、かつ金属ブロック112−1、112−2を上金型及び下金型にて挟むことで、上金型と下金型とが型締めされたときの厚さtと、金属ブロック112−1、112−2の厚さtとは同一となる。よって、金属ブロック112−1,112−2は、金型押さえ圧力を受け止めることができる。
【0022】
さらに、金型の型締め方向に相当する、パワーモジュール101の厚さtの厚み方向101dに平行な素子保持面112b、112bの間にパワー素子111を保持している。よって、金型の型締めの際にもパワー素子111には金型押さえ圧力は、作用しない。
したがってパワー素子111の破壊は、発生せず、パワーモジュール101の安定した生産が可能であり、生産性の向上を図ることができる。
【0023】
又、上述のように、金属ブロック112−1、112−2の放熱面112aは、パワーモジュール101の第1主面101a及び第2主面101bにそれぞれ露出する。また、パワー素子111は、導電層113を介して金属ブロック112−1及び金属ブロック112−2に接続されている。よって、パワー素子111から発生した熱は、金属ブロック112−1及び金属ブロック112−2の両方に伝導し、パワーモジュール101の第1主面101a及び第2主面101bの両面から放熱を行うことができ、放熱性は向上している。又、パワー素子111の第1主面111a及び第2主面111bに形成されている電極とそれぞれ電気的に接続された金属ブロック112−1及び金属ブロック112−2は、パワーモジュール101の第1主面101a及び第2主面101bのいずれにも存在する。よって、パワーモジュール101に対する配線を容易に行うことができるという効果がある。
【0024】
実施の形態2.
図3には、上述した実施の形態1のパワーモジュール101を備えた、本発明の実施の形態2におけるパワー半導体装置102が示されている。
パワー半導体装置102は、実施の形態1におけるパワーモジュール101を厚み方向101dから冷却器120、120で挟んだ構造である。即ち、パワーモジュール101における第1主面101aには、金属ブロック112−1,112−2に形成した電極(不図示)に電気的にそれぞれ接続される配線部材122が設けられる。配線部材122は、当該パワーモジュール101と外部との導通路を形成する。このような配線部材122、及びパワーモジュール101における第2主面101bには、それぞれ絶縁層121が形成される。さらにこれらの絶縁層121を介して厚み方向101dから冷却器120、120が設けられている。
【0025】
このような構成を有するパワー半導体装置102によれば、金属ブロック112−1,112−2の放熱面112aにそれぞれ対向して冷却器120を設けたことから、パワー素子111からの熱抵抗を低減でき、かつ装置の小型化を図ることが可能となる。
【0026】
尚、さらに加圧手段(不図示)を用いて厚み方向101dから冷却器120とパワーモジュール101との密着性を高めるように構成してもよい。又、例えば接着性の絶縁層121を用いて、冷却器120とパワーモジュール101とを密着させてもよい。このように密着性の向上を図ることで、パワーモジュール101の放熱性をさらに向上させることができる。
【0027】
さらにまた、半田付け可能なメタライズを付与したセラミック基板などの絶縁層121を用い、パワーモジュール101、配線部材122、及び冷却器120と、絶縁層121とを半田付けにて接続するようにしてもよい。このように構成することで、パワー半導体装置102の取り扱い性が向上し、また、パワーモジュール101と冷却器120との保持力に変動が生じず安定した放熱性を得ることができる。
【0028】
実施の形態3.
図4及び図5には、本発明の実施の形態3におけるパワーモジュール103が示されている。
パワーモジュール103は、上述した実施の形態1のパワーモジュール101に外部端子に相当する主端子125を設けた構成である。よって、パワーモジュール101に関する構成部分については、ここでの説明を省略する。以下では、パワーモジュール101との相違部分である主端子125についてのみ説明を行う。
【0029】
主端子125は、CuやAl,Feなどの導電性のある金属からなる短冊形状であり、その厚みは、例えば0.3mmから1mm程度が実用的である。このような主端子125は、金属ブロック112−1,112−2における放熱面112a、素子保持面112b以外の側面に対応する端子形成面112d、112dにそれぞれ立設される。尚、本実施形態では、金属ブロック112−1,112−2において、パワーモジュール101の長さ方向101cに直交する側面を端子形成面112d、112dとしている。
【0030】
主端子125と端子形成面112dとの固着方法としては、レーザ溶接などの高エネルギ密度の接合手段を用いることができる。又、主端子125、125における、端子形成面112dとの固着端部近傍は封止樹脂114による封止工程にて封止されるが、先端部を含めてその他の部分は、パワーモジュール103の筐体表面から外部へ突出する。
【0031】
このように構成されるパワーモジュール103では、上述したパワー半導体装置102とは異なり、金属ブロック112−1,112−2の放熱面112aが露出したパワーモジュールの主面に、配線部材122を構成する必要はなくなる。よって、図6に示すように、パワーモジュール103を用いてパワー半導体装置103−1を構成する場合には、パワーモジュール103における第1主面101aに対しても直接に絶縁層121を配置することが可能となる。よって、第1主面101a及び第2主面101bと、冷却器120、120との間の熱抵抗を最小限にすることができる。したがって、実施の形態2の構成に比べて放熱性をより高めることができ、かつパワー半導体装置の小型化が可能である。
【0032】
実施の形態4.
図7及び図8には、本発明の実施の形態4におけるパワーモジュール104が示されている。パワーモジュール104は、上述の実施の形態3におけるパワーモジュール103の放熱面112aを含む第1主面101a及び第2主面101bを覆って絶縁層130を設けた構成を有する。絶縁層130の表面は、当該パワーモジュール104における第1主面104a及び第2主面104bを形成する。
【0033】
このような絶縁層130として、セラミック板や絶縁樹脂などが挙げられる。セラミック板として、例えばアルミナや窒化アルミニウム、炭化珪素等の素材が挙げられ、このようなセラミック板は、放熱性と絶縁性とを兼ね備えた材料として有効である。又、絶縁層130の厚みは、例えば0.3mm程度から1mm程度のものが利用可能である。
【0034】
又、絶縁層130として、例えばAgPd、AgPt、MoMnなどの金属微粉末をガラスと一緒に練りこんだ印刷ペーストを所定箇所に印刷供給し、加熱炉で焼成することで、メタセラ基板と呼ばれる、はんだ付可能なセラミック板を用いることもできる。このようなセラミック板を用いることで、パワーモジュール104に内蔵される金属ブロック112−1,112−2と絶縁層130とを半田にて固定することが可能となる。
【0035】
パワーモジュール104に備わるパワーモジュール103では、実施の形態1におけるパワーモジュール101が有する、パワー素子111の破壊が発生せず安定した生産が可能である、という上述の効果を奏することができる。さらに、絶縁層130を設けたパワーモジュール104によれば、パワーモジュール104の反りを低減できるという効果が得られる。
即ち、セラミックの線膨張係数は10ppm/℃以下であるのに対して、銅は18ppm/℃、アルミニウムは23ppm/℃であり、両者間には大きな隔たりがある。よって、バイメタル効果により、一般的には、パワー素子の発熱に応じてパワーモジュールには反りが発生する。
【0036】
これに対し、本実施形態のパワーモジュール104では、厚み方向101dに直交する両側面に、およそ均等に絶縁層130を備えたことで、反りを低減できる。一般的には、パワーモジュールの反りが大きくなると、冷却器とパワーモジュールとの固着界面に隙間が生じ、熱抵抗が増大するという不具合が生じるため、パワーモジュールの動作温度をあまり大きくできないという課題がある。しかしながら、本実施形態のパワーモジュール104では、パワー素子111をパワーモジュール104のおよそ中心部に配置し、かつパワー素子111から見て上下の厚みをほぼ均等にできる。このため、パワー素子111からの放熱経路の温度分布が上下でほぼ対称にでき、結果、バランスが取れているので、パワーモジュール104の反りを低減できる。例えばパワー素子111が片方の主面に偏っていると、温度分布がつき、パワー素子111に近い側の主面と反対側の主面との温度が異なってくるため、反りが発生しやすくなる。このようにパワー素子111をパワーモジュール104の中心付近に配置することで、反りを低減できる。このため動作温度を高くしても反りにより隙間ができる、などの不具合が発生せず、動作温度を高くしても放熱性を維持できる。
【0037】
又、本実施形態のパワーモジュール104のように、絶縁層130の内蔵化により、対となる金属ブロック112−1,112−2の各素子保持面112b、112b間の隙間112cに溝などを形成せずとも、金属ブロック112−1と金属ブロック112−2との絶縁距離を確保できるという特徴がある。したがって、パワーモジュール104に備わるパワーモジュール103における放熱面112aの利用率を向上させることができる。
又、本実施形態においてもパワーモジュール103は、図5に示す構成と同様に、主端子125を金属ブロック112−1、112−2の側面112dに固着している。よって、金属ブロック112−1、112−2の放熱面112aには、絶縁層130のみを配することができ、簡便かつ最大限に放熱性を高めることができる。
【0038】
実施の形態5.
図9及び図10には、本発明の実施の形態5におけるパワーモジュール105が示されている。
パワーモジュール105では、実施の形態3にて説明したように作製されたパワーモジュール103に対して、金属ブロック112−1、112−2の放熱面112a、112aに絶縁層135,135を設け、さらに絶縁層135を覆って保護層140,140を設けた構造を有する。保護層140の表面は、当該パワーモジュール105における第1主面105a及び第2主面105bを形成する。尚、本実施形態におけるパワーモジュール105は、上述の実施形態4におけるパワーモジュール104に保護層140をさらに設けた構成に類似するが、パワーモジュール104に備わる絶縁層130に代えて絶縁層135を有する。
【0039】
絶縁層135は、本実施形態では、エポキシ系の熱硬化樹脂に、BN,AlN,アルミナ、シリカなどの絶縁性フィラーを含有した、熱伝導率が数〜数十W/mKの絶縁材料が実用化可能である。このような絶縁材料は、ロールtoロールタイプの生産設備で製造できるため、生産性が高いという利点がある。即ち、原料を混ぜて、PETフィルムのようなシート材料上に供給し、巻き取りながら、一定の間隙のローラーを通すことで、一定膜厚の絶縁層を形成し、所定の形状にカットし、接着することで絶縁層を構成可能である。
【0040】
一方、上述のような絶縁材料は、湿気にさらされると絶縁性が低下するという問題を有する。これに対し本実施形態のパワーモジュール105では、上記問題を解決するために、絶縁層135がパワーモジュールの主面に露出しないように、絶縁層135を覆い保護層140を設けた。保護層140として、本実施形態では、例えば銅箔やステンレス箔、アルミ箔などが使用可能である。
【0041】
上述のような構成を有する本実施形態のパワーモジュール105によれば、パワーモジュール105に備わるパワーモジュール103では、実施の形態1におけるパワーモジュール101が有する、パワー素子111の破壊が発生せず安定した生産が可能である、という上述の効果を奏することができる。さらに、保護層140を設けたことで、絶縁層135への水分の浸入を防止することができる。したがって、例えば屋外のような湿度が不安定な過酷な環境においても、本実施形態のパワーモジュール105は、高い絶縁性を保証することができ、高い耐久性を実現可能である。
【0042】
又、図11は、本実施形態のパワーモジュール105を用いたパワー半導体装置105−1を示している。上述したように絶縁層135は、パワーモジュール105に内蔵されているため、パワーモジュール105と冷却器120とを当接させることでパワー半導体装置105−1が構成可能である。したがって、構造が簡素化されるという効果が得られる。又、金属ブロック112−1,112−2は、外界には露出していないため、絶縁距離などの制約も非常に小さくなり、設計の自由度を向上させることができる。
【0043】
実施の形態6
図12から図14には、本発明の実施の形態6におけるパワーモジュール106が示されている。
上述した各実施形態のパワーモジュールでは、一つのパワーモジュールにパワー素子111が一つ備わる場合を示しているが、本実施形態では複数のパワー素子を有する構成を示している。図12は、本実施形態のパワーモジュール106の平面図を示しており、紙面に垂直な方向がパワーモジュール106の高さ(厚み)方向に相当する。パワーモジュール106においても、一対となる2つの金属ブロック150−1、150−2を有する。ここで、金属ブロック150−1、150−2は、上述の金属ブロック112−1,112−2に対応する部材であり、対向して位置する放熱面150aをそれぞれ有するとともに、放熱面150aに垂直で上記高さ方向に平行に位置する素子保持面150b−1、150b−2を有する。素子保持面150b−1、150b−2の間には、本実施形態では2つのパワー素子111−1、111−2が導電層113(図13)を介して保持されている。又、金属ブロック112−1,112−2の端子形成面112dに対応する、金属ブロック150−1、150−2の端子形成面150dには、主端子125が突設されている。
【0044】
本実施形態では、2つのパワー素子111−1、111−2は、異種のものであり、また、厚みを異にする。パワー素子111−1、111−2の厚みの相違に対応するため、図示するように、本実施形態では金属ブロック150−1の素子保持面150b−1には、段差152を設けている。このように金属ブロック150−1に段差152を設けることで、厚みの異なるパワー素子111を同一モジュール内に収納可能となり、パワー半導体装置の小型化を図ることができる。
【0045】
又、パワー素子111−1、111−2が異種のため、一方のパワー素子111−1には、制御端子151が接続され、パワー素子111−1の電極と制御端子151とは電気的に導通路が形成されている。図13には、制御端子151部分の拡大断面図を示す。制御端子151は、パワー素子111−1の制御用電極と導電層153を介して固定される。尚、制御端子151は、細長い部材であり、金属ブロック150−1には、制御端子151を外部へ導くための溝154が形成されている。該溝154には、絶縁層155が設けられ、金属ブロック150−1と制御端子151との電気的絶縁が図られている。尚、溝154を最小限の大きさにとどめることで、放熱性を損なわずにパワー半導体装置を構成可能となる。このような制御端子151を備えることで、様々な回路構成に対応可能となる。
【0046】
図14には、金属ブロック150−1の素子保持面150b−1を透視した状態を図示する。尚、図示の上下方向が、パワーモジュール106の高さ(厚み)方向106dに相当する。図示のように、パワー素子111−1の端部かつ辺の中央付近に制御端子151を設けることで、放熱経路が溝154を通る距離を最小限にでき、熱抵抗への影響を最小限にすることができる。即ち、溝154部分では、放熱の断面積が溝154の深さ分、少なくなるが、パワー素子111−1の発熱は、面状の分布発熱であるので、放熱経路としてはパワー素子111−1の中央部の発熱のみが、溝154の影響を受け、パワーモジュール106の主面に近づくほど影響は低くなる。よって、溝154は、パワー素子111−1の中央部に配置することで、溝154による熱抵抗への影響を最小限にとどめることができる。
【0047】
又、図14に示すように、パワーモジュール106においてもパワーモジュール105の構成と同様に、金属ブロック150−1、150−2の放熱面150a、150aに絶縁層135,135を設け、さらに絶縁層135を覆って保護層140,140を設けた構造を有する。保護層140の表面は、当該パワーモジュール106における第1主面106a及び第2主面106bを形成する。
【0048】
上述のような構成を有する本実施形態のパワーモジュール106においても、金属ブロック112−1,112−2の場合と同様に、金属ブロック150−1、150−2の素子保持面150b−1、150b−2の間にパワー素子111−1、111−2を保持していることから、実施の形態1におけるパワーモジュール101が有する、パワー素子111の破壊が発生せず安定した生産が可能である、という上述の効果を奏することができる。
【0049】
実施の形態7
本実施形態では、パワーモジュールが複数のパワー素子を備える場合における金属ブロックの他の形状例を示している。即ち、図15は、本実施形態のパワーモジュール107の平面図を示しており、紙面に垂直な方向がパワーモジュール107の高さ(厚み)方向に相当する。パワーモジュール107においても、一対となる2つの金属ブロック160−1、160−2を有する。ここで、金属ブロック160−1、160−2は、上述の金属ブロック112−1,112−2に対応する部材であり、対向して位置する放熱面160aをそれぞれ有するとともに、放熱面160aに垂直で上記高さ方向に平行に位置する素子保持面160b、160bを有する。本実施形態において素子保持面160b、160bは、図示するような階段状の形状にてなる。このような素子保持面160b、160bの間には、本実施形態では2つのパワー素子111−1、111−2が導電層(不図示)を介して保持されている。
パワーモジュール107におけるその他の構成部分は、上述の各実施形態のいずれかにおける構成を用いることができ、ここでの説明及び図示を省略する。
【0050】
パワーモジュール107においても、上述の各実施形態と同様に、実施の形態1におけるパワーモジュール101が有する、パワー素子111の破壊が発生せず安定した生産が可能である、という上述の効果を奏することができる。
又、本実施形態のように、パワー素子111−1,111−2をずらして配置することで、パワー素子間の熱干渉を抑制できる。よって熱抵抗が下がり、パワー半導体装置としての底面積を更に抑制可能である。
【0051】
実施の形態8
図16から図19には、本発明の実施の形態8におけるパワーモジュール108が示されている。本実施形態のパワーモジュール108は、図9及び図10を参照して説明した本発明の実施の形態5におけるパワーモジュール105に対して、さらに金属ブロック112−3を追加しパワー素子111−2を追加した構成を有する。又、図18A及び図18Bに示すように、2つのパワー素子111−1,111−2をそれぞれ制御するための制御端子151−1,151−2が主端子125とは反対側に引き出されている。尚、図18A及び図18Bでは、封止樹脂114の図示を省略している。図19には、本実施形態のパワーモジュール108の回路構成を示す。図示のようなハーフブリッジ回路が一つのパワーモジュール108中に内蔵されている。
【0052】
このように、金属ブロック112−1〜112−3の各放熱面112aに垂直な各素子保持面112bにパワー素子111−1,111−2を搭載したことで、複雑な構成のパワー素子を一つのパワーモジュールの中に搭載可能である。
【0053】
又、パワーモジュール108を用いてパワー半導体装置を構成した状態を図20に示す。複数の相を別のモジュールとするよりも、一個の樹脂筐体に内包した方が、全体として小型化できる。このような構成において、パワー素子111−1,111−2間の熱干渉が問題となるのは、熱抵抗の大きなパッケージの場合であって、本実施形態のような極めて低い熱抵抗の場合には、放熱面112aと平行な方向への熱の広がりはほとんどなく、熱は直線的に伝達される傾向が強い。即ち、パワー素子111−1,111−2間の距離を短くしても熱干渉による悪影響が低いといえる。このような構成においては、パワー半導体装置の小型化においては、絶縁距離やパッケージを構成する上での肉厚などが支配的になる傾向が強い。本実施形態のように熱は垂直に、電流は水平に伝達することで、極めてコンパクトなパワー半導体装置を構成することが可能である。
【0054】
また、図21A及び図21Bに示す半導体装置110は、上側冷却器120−1、下側冷却器120−2、3個のパワーモジュール109A〜109C、出力バスバー110a、及びPNバスバー110bを備えている。
各パワーモジュール109A〜109Cからは、P端子109b、出力端子109a、N端子109c、及び制御端子が外部に引き出されて配置されている。一対の冷却器120−1,120−2に挟まれた空間内に、3個のパワーモジュール109A〜109Cが配列され、P端子109b、出力端子109a、及びN端子109cは、電力用半導体装置110の側面に近接して引き出されている。そして出力バスバー110a及びPNバスバー110bから露出した電極と、パワーモジュール109A〜109CのP端子109b、N端子109c及び出力端子109aとを、例えば溶接やはんだ付などで接合する。PNバスバー110b及び出力バスバー110aは、図示しない外部接続電極と結合されており、モータや電源と結合される。また、制御端子には、図示しない制御基板と例えばコネクタやスルーホールはんだ付などで電気的に結合される。
【0055】
このようにして、6個のスイッチを一体化した、モータ駆動用電力用半導体装置を構成している。尚、この例ではモータ駆動用のインバータ回路を示したが、同様に4スイッチで溶接用インバータを構成するなど、様々なバリエーションに適用可能である。
このように本実施形態によればパワー半導体装置が小型軽量化できる。
【符号の説明】
【0056】
101 パワーモジュール、102 パワー半導体装置、
103〜108 パワーモジュール、111 パワー素子、
112−1,112−2 金属ブロック、112a 放熱面、
112b 素子保持面、120 冷却器、125 主端子、
130,135 絶縁層、140 保護層、151 制御端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作により発熱する電力用半導体素子を内蔵し対向する2つの側面にて規定される厚みを有するパワーモジュールであって、
上記厚みと同じ高さを有し、かつ上記2つの側面にそれぞれ露出し対向する放熱面、及び上記放熱面に垂直な素子保持面を有する金属ブロックを少なくとも一対備え、
上記一対の金属ブロックは、互いに上記素子保持面を対向させて配置され、上記電力用半導体素子は、上記素子保持面間に挟まれて保持される、ことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
上記金属ブロックにおいて上記放熱面及び上記素子保持面以外の端子形成面に固定される外部端子をさらに備えた、請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項3】
上記放熱面が露出した上記側面を覆う絶縁層をさらに備えた、請求項1又は2記載のパワーモジュール。
【請求項4】
上記放熱面が露出した上記側面を覆う絶縁層と、該絶縁層を覆う保護層とをさらに備えた、請求項1又は2記載のパワーモジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のパワーモジュールを備えたことを特徴とするパワー半導体装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【公開番号】特開2010−161188(P2010−161188A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2232(P2009−2232)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】