説明

パワー半導体ユニット

【課題】バスバーの熱を効率良く吸収して、ユニット全体の温度上昇を抑制することができるパワー半導体ユニットを提供する。
【解決手段】 パワー半導体ユニット1は、パワー半導体素子2、パワー半導体素子2が実装される絶縁基板3、パワー半導体素子2に給電するバスバー4、及び冷却器8を備える。バスバー4は、パワー半導体素子2への給電のための複数の導電部10と、導電部10を支持する基台11と、基台11に内蔵された冷却部12とを有する。冷却部12は、基台11内に形成された密閉空間13、その密閉空間13に充填された二相冷媒14から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体ユニットに関し、特に電気自動車やハイブリッド車等の車両に用いられるパワー半導体ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に用いられるパワー半導体ユニットとして、特開2009−135278号公報に記載されるように、パワー半導体素子が実装された絶縁基板と、パワー半導体素子にボンディングワイヤによって電気的に接続されるバスバーと、絶縁基板を搭載する冷却器とを有するものが知られている。そして、パワー半導体素子と冷却器とを一体に構成することにより、パワー半導体素子からの熱を効率良く冷却器に伝達し、ユニット全体を冷却することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高直流電圧を車両のモータに印加して出力効率を高める場合、パワー半導体素子の発熱量が大きくなり、ボンディングワイヤからバスバーに伝達する熱量が増加してバスバーの温度が上昇するので、上述のパワー半導体ユニットの冷却構造では対応し難く、ユニットの冷却性能を高める必要がある。
【0005】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、バスバーの熱を効率良く吸収して、ユニット全体の温度上昇を抑制することができるパワー半導体ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパワー半導体ユニットは、パワー半導体素子と、パワー半導体素子に給電するバスバーとを備えたパワー半導体ユニットにおいて、バスバーは、パワー半導体素子への給電のための複数の導電部と、複数の導電部を支持する基台と、基台の内部に設けられ複数の導電部を冷却する冷却部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るパワー半導体ユニットでは、バスバーの導電部を支持する基台の内部に冷却部が設けられているので、バスバーの熱を吸収してバスバーを直接冷却することができる。従って、パワー半導体ユニット全体の温度上昇を抑制することができる。
【0008】
本発明に係るパワー半導体ユニットにおいて、冷却部は、二相冷媒により構成されていることが好適である。この場合にあっては、二相冷媒を用いてバスバーの熱を効率良く吸収し冷却することができ、バスバーの温度上昇を抑えることができる。
【0009】
本発明に係るパワー半導体ユニットにおいて、冷却部は、複数の導電部に対して1対1に設けられていることが好適である。この場合にあっては、冷却部が複数の導電部の各々に対応してバスバーの熱を効率良く吸収することができ、バスバーの温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バスバーの熱を効率良く吸収して、ユニット全体の温度上昇を抑制することができるパワー半導体ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るパワー半導体ユニットの断面図である。
【図2】3相インバータを示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は実施形態に係るパワー半導体ユニットの断面図である。図1に示すように、パワー半導体ユニット1は、パワー半導体素子2と、パワー半導体素子2が実装される絶縁基板3と、パワー半導体素子2に給電するバスバー4と、パワー半導体素子2、絶縁基板3及びバスバー4を冷却する冷却器8とを備えている。パワー半導体素子2は、例えばインバータ回路を構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子やダイオード等である。
【0014】
図2は、3相インバータを示す電気回路図である。図2に示すように、インバータの回路は、三相インバータブリッジによって構成されている。すなわち、このインバータの回路は、直列に接続された2つのIGBT素子Q11,Q12からなる組(ブリッジ)が3組並列に接続されて成り、IGBT素子Q11のコレクタが正電圧側の直流電源ラインPと接続され、IGBT素子Q12のエミッタが負電圧側の直流電源ラインNと接続されている。IGBT素子Q11のエミッタとIGBT素子Q12のコレクタとの接続点は、モータ(図示せず)の電源入力端子と接続されている。また、各IGBT素子Q11,Q12と並列に、ダイオードD11,D12が逆方向接続されている。
【0015】
図1に示すように、パワー半導体素子2の表面側に位置するエミッタ2aはボンディングワイヤ6によってバスバー4に電気的に接続されており、その裏面側に位置するコレクタ2bが半田層5によって絶縁基板3に固定されている。絶縁基板3は、DBA(Direct Brazed Aluminum)基板であり、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる上部金属層3aと、絶縁体である窒化アルミニウム層3bと、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる下部金属層3cとを積層した構造を有している。上部金属層3aは、半田層5を介してパワー半導体素子2のコレクタ2bに電気的に接続されている。下部金属層3cは、ロウ付けで冷却器8と接合されている。
【0016】
冷却器8は、平板状に形成された冷却天板9を有する。冷却天板9の上面9aには、絶縁基板3とバスバー4とがそれぞれ搭載されている。冷却器8は、熱伝導性の高いアルミニウムや銅などの材料により構成されている。
【0017】
バスバー4は、パワー半導体素子2への給電のための複数の導電部10と、導電部10を支持する基台11とを備えている。基台11は、バスバー4のハウジングを構成しており、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂材料から形成されている。導電部10は、電気伝導性の高いアルミニウムや銅等の材料により形成され、基台11と共にインサート成型されている。また、導電部10は、ボンディングワイヤ6,7を介してパワー半導体素子2のエミッタ2aとコレクタ2bに電気的に接続されている。
【0018】
基台11の内部には、導電部10を冷却する複数の冷却部12が設けられている。これらの冷却部12は、複数の導電部10に対して1対1に配置され、基台11に内蔵されている。具体的には、基台11の内部であって導電部10の各々の直下位置には、断面矩形状の密閉空間13がそれぞれ形成されている。密閉空間13の内部には、二相冷媒14が充填されている。そして、密閉空間13とその内部に充填された二相冷媒14とは、冷却部12を構成する。
【0019】
冷却部12は、導電部10におけるボンディングワイヤ6,7との接合箇所の直下位置に配置されるのが好適である。このようにすれば、これらの接合箇所を直接冷却することができる。なお、二相冷媒14としては、気液二相冷媒若しくは固体から液体になる融解熱で冷却するものが挙げられる。
【0020】
このように構成されたパワー半導体ユニット1では、パワー半導体素子2が発生する熱量が、半田層5と絶縁基板3とを経由して冷却器8に伝わる。冷却器8は、その伝熱を吸収してパワー半導体素子2及び絶縁基板3を冷却する。また、パワー半導体素子2が発生する熱量の一部が、ボンディングワイヤ6,7を経由してバスバー4に伝わり、バスバー4が発生する熱量と共に、冷却部12内の二相冷媒14によって吸収される。これによって、パワー半導体素子2及びバスバー4は効率良く冷却される。なお、バスバー4の断面積は、溶断電流によって決まるため発熱温度が上昇するほど大きくなる。
【0021】
本発明に係るパワー半導体ユニット1では、バスバー4の導電部10を支持する基台11に冷却部12が内蔵されており、バスバー4の熱を吸収してバスバー4を直接冷却することができる。従って、パワー半導体ユニット1全体の温度上昇を抑制することができる。その結果、バスバー4の薄型化が可能となり、パワー半導体ユニット1の小型化を図ることができる。
【0022】
また、冷却部12は、複数の導電部19に対して1対1に設けられているので、導電部10の各々に対応してこれらの発熱を吸収して冷却することにより、バスバー4の温度上昇を抑制することができる。しかも、冷却部12は、基台11の内部に形成された密閉空間13とその密閉空間13内に充填された二相冷媒14とからなるため、バスバー4の熱を効率良く吸収することが可能となる。
【0023】
更に、このようにバスバー4を直接冷却しユニット全体の温度上昇を抑制することにより、素子高温化に対応することが可能となる。すなわち、例えばパワー半導体素子2をSi素子(ジャンクション温度150℃)からSiC素子(ジャンクション温度250℃)に切り替えた場合、ボンディングワイヤ6,7を経由してバスバー4に伝わる熱量によってバスバー4の温度上昇が高くなるが、冷却部12がその伝熱を効率良く吸収してバスバー4を冷却することができるため、パワー半導体ユニット1全体の温度上昇を防止することが可能となる。
【0024】
また、従来ではハウジング樹脂(例えばPPSの場合)の耐熱温度が200℃を超えた場合、その下に配置された冷却器を利用して冷却が必要であるが、本実施形態に係るパワー半導体ユニット1では、ハウジングを構成した基台11の下に配置されている冷却器8のみならず、バスバー4の内部に配置された冷却部12を利用してバスバー4の内部から熱を吸収することができるので、基台11を効率良く冷却し、ハウジング樹脂の信頼性の低下を防止することが可能となる。
【0025】
更に、ボンディングワイヤ6及び7を含む配線の接合寿命は、パワー半導体素子2のパワーサイクルに起因している。本実施形態に係るパワー半導体ユニット1では、バスバー4の内部に内蔵された冷却部12を利用しバスバー4の熱を吸収して直接冷却するので、配線とバスバー4の温度上昇を抑制することができ、接合寿命を延ばすことが可能となる。また、バスバー4の温度上昇を抑制することにより、基台11の樹脂界面の剥離の発生を防止することができる。その結果、パワー半導体ユニット1の信頼性を高めることができる。
【0026】
本発明に係るパワー半導体ユニットは、上記の実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係るパワー半導体ユニットは、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係るパワー半導体ユニットを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。例えば、上記の実施形態において、配線の接合方法として、ワイヤーボンドを用いたが、テープボンドやダイレクトリードボンドを用いてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…パワー半導体ユニット、2…パワー半導体素子、4…バスバー、10…導電部、11…基台、12…冷却部、13…密閉空間、14…二相冷媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子に給電するバスバーとを備えたパワー半導体ユニットにおいて、
前記バスバーは、前記パワー半導体素子への給電のための複数の導電部と、前記複数の導電部を支持する基台と、前記基台の内部に設けられ前記複数の導電部を冷却する冷却部とを有することを特徴とするパワー半導体ユニット。
【請求項2】
前記冷却部は、二相冷媒により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパワー半導体ユニット。
【請求項3】
前記冷却部は、前記複数の導電部に対して1対1に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパワー半導体ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−114308(P2011−114308A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271948(P2009−271948)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】