説明

パン製造機

【課題】短時間で簡単にあんを作ることができるパン製造機を提供すること。
【解決手段】まず110〜130℃の設定温度で90%以上のヒータ通電率であん材料を加熱し、設定温度を越えるとヒータ7を切り、練り羽根9に回転時間を0.2秒以下、停止時間を回転時間の10倍以上とした間欠回転をさせて攪拌し、設定温度より下がると練り羽根9を止め80%以上のヒータ通電率で加熱し、最後に冷却工程を設けヒータを切って自然冷却することにより、あん材料の飛散、焦げ付きを防ぎつつ、短時間で簡単にあんを作ることができ、同じ練り羽根9でパン生地も練れるパン製造機を、変速装置やファンモータを使うことなく安価に提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭において使用されるパンに加えてあんも作れるパン製造機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のあんを作る方法としては、特許文献1に示されるように、業務用のあん類製造方法であり、小型煮炊攪拌機に入れてあんを製造するが、これは家庭用ではなく、製パン機能がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−102360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパン製造機はパン生地を練り上げるには無負荷で毎分300回転程度の回転数が必要であるが、同じ回転数であん材料を攪拌すると数秒間回転させただけで、あん材料がパン容器の外に飛散するという問題があり、それを防ぐには可変式の減速機構を設けてゆっくりした回転に変える必要があり、コスト高になるという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、あん材料が飛散することなく、短時間で簡単にあんを作ることができるパン製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のパン製造機は、スタートすると予熱工程に入り、温度検知部が110〜130℃の設定温度に達するまで、90%以上のヒータ通電率であん材料を加熱するようにしたものである。
【0007】
これによって、従来より高い設定温度とヒータ通電率で、あん材料を素早く加熱して煮込み工程に入ることができるため、よく煮詰まったあんを短時間で作り上げることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパン製造機によれば、スタートすると予熱工程に入り、温度検知部が110〜130℃の設定温度に到達するまで、90%以上のヒータ通電率であん材料を加熱することにより、あん材料を素早く加熱することができ、短時間であん材料を焦げ付かせることなく、あんを作ることができる。
【0009】
また、あん材料の飛散、焦げ付きを防止し温度を均一にしながら、高い設定温度であん材料を素早く煮詰められるため、短時間で簡単にあんを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1、2におけるパン製造機の断面図
【図2】本発明の実施の形態1、2における練り羽根の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1におけるパン製造機の温度制御特性図
【図4】本発明の実施の形態2におけるパン製造機の温度制御特性図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在なパン容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置を備え、前記制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記予熱工程において温度検知部が110〜130℃の設定温度に到達するまで、90%以上のヒータ通電率であん材料を加熱するようにしたパン製造機としたものであり、従来より高い設定温度とヒータ通電率であん材料を素早く加熱するため、短時間で素材から水分を溶出させて、材料の砂糖を溶解させることができる。
【0012】
第2の発明は、材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在な容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置を備え、前記制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記煮込み工程において設定温度を110〜130℃に設定し、温度検知部の温度が設定温度を越えると、ヒータを切って練り羽根の間欠回転によりあん材料を攪拌し、温度検知部の温度が設定温度より下がると、練り羽根を止めて80%以上のヒータ通電率で、あん材料を加熱するようにしたパン製造機としたものであり、パン容器とあん材料の温度が上がりすぎてあん材料が焦げ付く前に自動的にヒータを切って、間欠回転による攪拌により、あん材料の温度を均一にしながら、高い設定温度とヒータ通電率であん材料を素早く加熱するため、短時間で焦げ付きを防ぎながらあん材料を煮詰めることができる。
【0013】
第3の発明は、材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在な容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置を備え、前記制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記あんコースにおいて練り羽根の回転数を0.2秒以下、停止時間を回転時間の10倍以上でかつ1秒以上に設定した間欠回転を繰り返すことにより、あん材料の攪拌を行なうパン製造機としたものであり、パン生地を練り上げる時と同じ回転速度でも、回転時間を微小時間に設定し、回転量を小さくおさえることにより、あん材料の飛散を防ぐとともに、あん材料は練り羽根の広い面の小さな動きで攪拌されるため、あん材料の温度の均一化と焦げ付き防止を図ることができ、変速機構がなくても同じ練り羽根を使ってパン生地を練り上げることもできる。
【0014】
第4の発明は、材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在な容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置を備え、前記制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記あんコースにおいて練り羽根の回転数を段階的に変化させ、停止時間を回転時間の10倍以上でかつ1秒以上に設定した間欠回転を繰り返すことにより、あん材料の攪拌を行なうパン製造機としたものであり、パン生地を練り上げる時と同じ回転速度でも、回転時間を微小時間に設定し、回転量を小さくおさえることにより、あん材料の飛散を防ぐとともに、あん材料の状態によって練り羽根の回転数を変えることにより、より良いあんを作ることができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態のパン製造機について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1、図2において1はシャーシで、板金で形成した本体2とモータ3と焼成室4と容器取付台5が取り付けられている。焼成室4の内部には、パン材料がセットされ着脱自在なパン容器6と、ヒータ7と、焼成室4内部の温度を検知する温度検知部8が設けられている。9はモータ3によって小プーリ10、ベルト11、大プーリ12を介して回転され、パン材料の混練やあん材料の攪拌を行うもので、パン容器6の軸13に嵌合される穴を具備したボス部14に、略L字形の平板部15を突設して形成されている。また、練り羽根9はパン生地を練り上がるのに適した回転速度、つまり無負荷で毎分300回転程度に設定され、それに合わせて小プーリ10と大プーリ12の径寸法を決めている。16は焼成室4を開閉する外蓋で、複数の排気孔17が設けられた内蓋18と、イーストをセットするイースト容器19と、イーストを投入する開閉弁20を具備している。21はイースト容器19と一体的に設けられた排気ダクトで、排気孔17の上方に配され、焼成室4内の蒸気を後方の排気口(図示せず)より外気へ排出している。22は温度検知部8により検知された温度情報に基づいてモータ3やヒータ7の通電を制御する制御装置で、パンの焼上げコース、生地コースやあんコース等のプログラムを内蔵し、パンの混練、ねかし、発酵、焼成やあんの予熱、加熱、冷却の各工程を自動的に行う。23は動作状態の表示やコース選択、調理スタート等を行う操作部材、24はレバー25を介して開閉弁20を駆動するソレノイドである。
【0018】
以上のように構成されたパン製造機について、図3を用いてその動作を工程ごとに説明する。
【0019】
まず、あんの材料、例えば小豆あんであれば、煮た小豆と砂糖を、練り羽根9をセットしたパン容器6にいれて、スタート釦を押すと予熱工程に入り、ヒータ7が90%の通電率で通電されあん材料が加熱され、温度検知部8の温度が120℃を越えると、煮込み工程に移行する。するとあん材料の温度が上がるにつれて、砂糖が溶けてシロップを形成し始め、小豆がそのシロップ中に浮かんだ状態になっていく。この間、練り羽根9は間欠回転するため、あん材料が焦げ付くこともない。また、設定温度を高めの120℃としヒータ通電率を90%にすることにより、素早くあん材料を加熱して小豆をつぶしやすい状態にすることができる。なお、ここでは予熱工程の設定温度を120℃としヒータ通電率90%で行っているが、これは一実施例であり材料の種類や容量に応じて最適条件は変わり、設定温度は110〜130℃、ヒータ通電率は90%以上、工程時間は10〜20分に設定すれば、前記と同様な作用効果が得られる。
【0020】
次に40分の煮込み工程に入り、予熱工程と同様に制御装置22により高温の115℃に温度調節しながら、温度検知部8の温度が設定温度の115℃を越えヒータ7が切られた時のみ、モータ3に0.08秒ON、2秒OFFのパターンで通電され練り羽根9が間欠回転する。また、前述のようにあん材料は小豆の浮かんだシロップ状になり、温度が上がるにつれて沸騰状態となって、ふきこぼれが発生する恐れがあるため、急激に温度が上がらないよう、ヒータ通電率は予熱工程より多少低い80%に設定している。この時、練り羽根9の回転時間を0.08秒と微小時間に設定することにより、パン生地を練る時と同じ無負荷で毎分300回転程度の高速回転でも、練り羽根9は90°以下の小刻みな回転速度で動き、それを温度検知部8が設定温度の120℃以下になるまで約2秒毎に繰り返すため、モータ3の通電率は約1.2%となり、あん材料の飛散を発生させることなくあん材料を攪拌することができ、あん材料の温度を均一にしながら焦げ付きも防止することができる。また、それによって煮込み温度を従来より高温の115℃に設定することが可能となるため、あん材料を効率よく煮詰めることができ、短時間で程よいあんをつくることができる。
【0021】
なお、ここでは前記のようにふきこぼれを防止するため、ヒータ通電率を80%としているが、これは一実施例であり、材料の種類や容量によってはヒータ通電率をもっと上げ
てもふきこぼれが発生することはなく、調理時間を短縮することもでき、ヒータ通電率は80%以上に設定しておけば、前記と同様な作用効果が得られる。また、練り羽根の回転時間を0.08秒に設定したが、0.2秒以下であればあん材料が飛散することはなく、材料の種類や容量によっては、0.2秒以下の範囲内で変えて攪拌性能の向上を図っても構わない。
【0022】
最後に残時間が5分を表示すると、冷却工程に移行する。冷却工程に入ると、制御装置22によりヒータ7が切られ、出来上がったあんが自然冷却される。そのため、冷却工程が終わった調理完了直後に外蓋16を開いて、あんを覗き込んだり取り出したりしても、火傷の恐れはなく、安全性を確保することができる。
【0023】
なお、ここでは冷却工程を5分間にしているが、5〜15分であれば焼成室4内の雰囲気温度が100〜80℃に下がるため、調理完了直後に外蓋16を開いても前記と同様に火傷の恐れはなく、安全性を確保することができる。
【0024】
また、練り羽根9を面を立てて形成することにより、パン生地を練り上げることができるとともに、変速機構がなく同じ練り羽根9を使っても、回転時間を微小時間に設定することで、練り羽根9の広い面の小さな動きによる攪拌が可能となるため、あん材料の飛散や焦げ付きを防止しながらあんを作ることができるパン製造機を安価に提供することができる。
【0025】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における本体の構成は実施の形態1と同じであるため、同一の箇所には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0026】
図4は、本発明の第2の実施の形態のパン製造機の温度制御特性図であり、実施の形態1のパン製造機と比較して、予熱工程および煮込み工程のモータの通電率を段階的に変化させるようにしたことが相違する。第2の実施の形態における動作について図4を中心に説明する。
【0027】
まず、あんの材料、例えば小豆あんであれば、煮た小豆と砂糖を、練り羽根9をセットしたパン容器6にいれて、スタート釦を押すと、予熱工程に入り、ヒータ7が90%の通電率で通電されてあん材料が加熱され、温度検知部8の温度が120℃を検知すると、煮込み工程に移行する。制御装置22が動作してヒータ7が切られた時のみ、モータ3に0.02秒ON、2秒OFFのパターンで通電され練り羽根9が間欠回転する。
【0028】
煮込み工程に入り、予熱工程と同様に制御装置22により高温の115℃に温度調節しながら、温度検知部8の温度が設定温度の115℃を越えヒータ7が切られた時のみ、モータ3に0.04秒ON、2秒OFFのパターンである通電され、ある一定時間T1が経過すると、モータ3に0.06秒ON、2秒OFFのパターンで通電され、またある一定時間T2が経過すると、モータ3に0.08秒ON、2秒OFFのパターンで通電され練り羽根9が間欠運転する。
【0029】
以上のように、本実施の形態のパン製造機では、あん材料の状態によって、練り羽根の回転数が段階的に変化するため、よりよいあんを作ることができる。なお、本実施例におけるT1、T2、T3の値は実施の一例であり、状況に応じて数値を設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかるパン製造機は、あんコース選択時に、あん専用の調理シ
ーケンスで調理することが可能となるので、カレー、シチューなどのように、調理物を攪拌または混練しながら加熱調理する調理器などの用途としても適用できる。また、業務用としても適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
3 モータ
4 焼成室
6 パン容器
7 ヒータ
8 温度検知部
9 練り羽根
22 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在なパン容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置とを備え、前記制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記予熱工程において温度検知部が110〜130℃の設定温度に到達するまで、90%以上のヒータ通電率で、あん材料を加熱するようにしたパン製造機。
【請求項2】
材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在なパン容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置とを備え、前記制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記煮込み工程において温度検知部が110〜130℃の設定温度に設定し、温度検知部の温度が設定温度を超えると、ヒータを切って練り羽根の間欠回転によりあん材料を攪拌し、温度検知部の温度が設定温度より下がると、練り羽根を止めて80%以上のヒータ通電率で、あん材料を加熱するようにしたパン製造機。
【請求項3】
材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在なパン容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置とを備え、制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記あんコースにおいて練り羽根の回転時間を0.2秒以下、停止時間を回転時間の10倍以上でかつ1秒以上に設定した間欠回転を繰り返すことにより、あん材料の攪拌を行なうパン製造機。
【請求項4】
材料を混練または攪拌する練り羽根を有する着脱自在なパン容器とヒータと温度検知部とを具備した焼成室と、練り羽根を回転させるモータと、前記ヒータやモータ等の通電を制御する制御装置とを備え、制御装置のプログラムには、予熱工程と煮込み工程と冷却工程とを有するあんコースを有し、前記あんコースにおいて練り羽根の回転時間を段階的に変化させ、停止時間を回転時間の10倍以上でかつ1秒以上に設定した間欠回転を繰り返すことにより、あん材料の攪拌を行なうパン製造機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−24223(P2012−24223A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164555(P2010−164555)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】