パーキンソン病のインビボ遺伝子治療
本発明は、遺伝子治療、特にパーキンソン病の治療のための生物活性ニュールツリンを送達するためのインビボ遺伝子治療の方法および組成物に関する。別の態様においては、本発明は、シグナルペプチドとニュールツリンとの間の機能的プロ領域なしに成熟またはN末端切断ニュールツリンに連結した哺乳類シグナルペプチドを含んで成るウイルス発現構成物に関する。これらのウイルス発現構成物は、インビボ遺伝子治療における生物活性ニュールツリンの効率的な分泌に必要である。本発明は、増大した量のニュールツリンを産生することが可能な哺乳類細胞のほか、これらの細胞の生物活性ニュールツリンの組換え産生および治療的使用のための使用にも関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2003年10月20日に出願されたデンマーク特許出願第DKPA200301543号明細書の優先権を請求する。これは2003年10月22日に出願された米国仮特許出願第60/512,918号明細書の利益を請求する。同出願および本出願における引例はすべて出典明示によりその全体を本明細書の一部とする。
【0002】
(技術分野)
本発明は、遺伝子治療、特に、パーキンソン病の治療のために生物活性ニュールツリンを送達するインビボ遺伝子治療のための方法および組成物に関する。別の態様においては、本発明は、シグナルペプチドとニュールツリンとの間の機能的プロ領域なしに成熟またはN末端切断ニュールツリンに連結された哺乳類シグナルペプチドを含んで成るウイルス発現構成物に関する。これらのウイルス発現構成物は、インビボ遺伝子治療における生物活性ニュールツリンの効率的な分泌に必要である。本発明は、多量のニュールツリンを産生することが可能な哺乳類細胞、および生物活性ニュールツリンの組換え産生および治療的使用のためのこれら細胞の使用にも関する。
【0003】
(従来技術)
パーキンソン病(PD)は、100万〜150万人のアメリカ人を苦しめる壊滅的な神経変性障害である。35,000以上の新しい症例が毎年診断されている。パーキンソン病の発生率は、50歳以上の群で最も高いが、驚くべき数の新しい症例が若い患者において報告されている。
【0004】
パーキンソン病の基本的な特徴は動作緩慢(運動緩徐)、手、腕、顎、および顔の振戦または震え、四肢および胴体の硬直、および姿勢の不安定である。これらの症状が進行すると、患者は歩行、会話、または他の単純な日常生活の課題を達成する困難を経験しうる。これらの行動上の欠損は、スムーズで意図的な動作の生成に関与する脳における黒質線条体系の変性と関係がある。特に、黒質に位置した神経細胞は変性し、これらの細胞によって作られるドーパミンの随伴喪失が認められる。黒質神経細胞は線条体に軸索または突起を伸ばし、ここでドーパミンが分泌され、利用される。線条体内のドーパミンの80%の喪失が、PDの症状が出現する前に起こる必要があると推定されている。
【0005】
現時点では、レボドパ(商標名シネメット(Sinemet))がパーキンソン病の主たる治療薬である。脳において、レボドバはドーパミンに変換され、これによりパーキンソン病患者の脳内のドーパミン欠損が修正される。レボドパが末梢デカルボキシラーゼ阻害剤カルビドバと併用されると、PD患者は劇的な利点を経験する。しかし、問題は、レボドパ療法はPDの症状を弱めるが、失われた神経細胞を元に戻すことはなく、疾患の進行を止めることはないことである。PDが進行すると、患者は漸増用量のレボドパを必要とし、最も顕著には、不随意運動の障害および硬直の副作用が出現する。実際に、運動障害の専門家はしばしば、レボドパの使用を遅らせ、最初に他のドーパミン作動薬を使用し、患者がそれを最も必要とする場合に疾患過程の後半のためにレボドパの使用を確保しておく。
【0006】
したがって、レボドパには制限があり、パーキンソン病に対する追加の治療法が確立される必要がある。この点で、PDの外科的治療における関心が再燃している。最近、脳深部電気刺激法と呼ばれる方法が相当の注目を得ている。この方法では、電極がPDにおいて活動亢進している脳領域に配置され、これら脳領域の電気的刺激が活動亢進を修正するようになっている。一部の患者においては、劇的な利点が達成されうる。他の外科的介入は、黒質線条体系の機能の改善をめざしている。ドーパミン作動性細胞の移植片は、パーキンソン病の動物モデルにおける運動障害の改善に成功している。ヒトにおけるドーパミン作動性細胞移植の初期臨床試験は成功しているが、一重盲検臨床試験は、高齢患者ではなく若い患者における利点を示した。しかし、移植片を受ける患者の一部は、不随意運動の障害を来たした。したがって、現時点では、細胞移植片は依然として実験的方法とみなすべきである。
【0007】
別の方法では、黒質ニューロンの変性および神経伝達物質ドーパミンの随伴喪失の予防をめざしている。
【0008】
世界中の多くの実験室は、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)が、ラットおよび霊長類で行われた試験における黒質線条体系の変性の構造的および機能的結果を予防しうることを明らかにした。GDNFのCNSへの送達は、タンパク質の注射、ポンプによる送達を使用する前臨床試験、およびインビボ遺伝子治療において達成されている。多くの試験では、GDNFを発現するAAVまたはレンチウイルスを使用するCNSの形質導入を記載している(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、特許文献3、特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。
【0009】
パーキンソン病の治療の他のインビボ遺伝子治療法としては、芳香族Lアミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、suthalamicグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)を発現するウイルスによる形質導入が挙げられる(非特許文献11、非特許文献12)。
【0010】
GDNFはヒトにおけるパーキンソン病の治療の有望な候補であるとみられるが、GDNF治療は特定の副作用、主に体重減少および異痛が生じることが報告されている(非特許文献13)。したがって、技術上、パーキンソン病の治療の別の方法、特に黒質ニューロンの変性の予防をめざす方法を開発する必要がある。
【0011】
ニュールツリンは、主にGFRα2受容体による成長受容体およびシグナルのGDNFファミリーのメンバーである。NTNおよびGDNFの受容体は異なった形で空間的および時間的に発現される。したがって、NTNおよびGDNFの治療効果は異なることを予想しなければならない。これは浸透圧ミニポンプによって送達されるGDNFとNTNの比較において確認される(非特許文献13)。成人ドーパミン作動性ニューロンの6−ヒドロキシドーパミン誘発変性によるエクスビボ遺伝子治療試験の比較(本発明者によって使用されたものと同じ動物モデル)においては、著者らはGDNFとNTNの両方は黒質ドーパミン作動性ニューロンの死を阻止するが、GDNFのみがチロシンヒドロキシラーゼ染色の強度増大および広範な発芽を誘発することに注目した(非特許文献14)。
【0012】
PDモデルにおけるCNSへのタンパク質製剤としてのニュールツリンの送達、またはNTN過剰発現細胞の移植により、GDNFで得られる結果と同等の結果は得られていない。タンパク質治療試験においては、これはニュールツリンタンパク質製剤の安定性による問題によるとみられる(沈殿および短い半減期)。
【0013】
これまで、ニュールツリンを使用するパーキンソン病のインビボ遺伝子治療に関する報告はない。AAVを発現するニュールツリンを使用する1つの遺伝子治療試験では網膜障害の治療が焦点であった(非特許文献15)。しかし、著者らは、網膜変性のrdモデルの治療上の処置は、NTNまたはGFRα−2の発現の単純な調節によって達成されるとは思われないと結論づけた。したがって、今日まで、ニュールツリンを使用するインビボ遺伝子治療は依然として推測的である。
【特許文献1】国際公開第03/018821号パンフレット(Ozawa et.al)
【特許文献2】米国特許公開第2002187951号明細書(Aebischer et.al)
【特許文献3】米国特許公開第2002031493号明細書(Rohne−Poulenc Rorer SA)
【特許文献4】US6,180,613 Roeckefeller University
【非特許文献1】Kordower,Ann Neurol,2003 53(suppl 3),s120−s134
【非特許文献2】Georgievska et.al 2002,Exp Nerol 117(2), 461−474
【非特許文献3】Georgievska et.al 2002,NeuroReport 13(1), 75−82
【非特許文献4】Wang et.al, 2002, Gene Therapy, 9(6), 381−389
【非特許文献5】Kozlowski et.al 2000, Exp Neurol, 166(1), 1,15
【非特許文献6】Bensadoun 2000, Exp Neurol, 164(1), 15−24
【非特許文献7】Connor et.al 1999, Gene Therapy, 6(12), 1936−1951
【非特許文献8】Mandel et.al 1997, PNAS, 94(25), 14083−88
【非特許文献9】Lapchak et.al 1997, Brain Research, 777 (1,2), 153−160
【非特許文献10】Bilang−Bleuel et.al 1997, PNAS 94(16), 8818−8823
【非特許文献11】Marutso, Nippon Naika Gakkai Zasshi, 2003, 92 (8), 1461−1466
【非特許文献12】HowarDNAture Biotechnology, 2003, 21 (10), 1117−18
【非特許文献13】Hoane et.al 1999, 160(1):235−43
【非特許文献14】Akerud et.al, J Neurochemistry, 73, 1:70−78
【非特許文献15】Jomary et.al 2000, Molecular Vision 7:36−41
【0014】
(発明の開示)
本発明者は、6−OHDA病変モデルにおける線条体へのGDNFファミリー成長因子のウイルス形質導入送達に基づく一連の前臨床動物試験を行った。6−OHDA病変モデルはパーキンソン病の公知の動物モデルである。これらの実験は―驚いたことに―ニュールツリンをコードするウイルスによる形質導入が、GDNFによる形質導入によって得られる効果と少なくとも同じほど優れている治療効果をもたらすことを示した。これらのデータは、パーキンソン病モデルにおけるニュールツリンのインビボ遺伝子治療送達の効果の最初の前臨床的証拠を示す。
【0015】
パーキンソン病の治療の好ましい神経栄養因子としてのニュールツリンの特異性は、6−OHDA病変モデルにおける、別の神経栄養因子、ノイブラスチン(アルテミン(Artemin))の効果の欠如によって確認される。
【0016】
したがって、第1の態様において、本発明はパーキンソン病を治療する方法に関し、前記方法は、それを必要とする個体の中枢神経系に治療有効量のウイルス発現ベクターを投与するステップを含んで成り、前記ベクターは操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含んで成り、前記ポリペプチドは、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んで成る。
【0017】
本発明者は、特定の症例において、プレプロニュールツリンをコードする構成物を使用するとニュールツリンの分泌に関する問題がありうることも判定した。インビトロトランスフェクションおよび形質導入とヒトまたはマウスプロプレニュールツリンによるインビボ形質導入は、添付の実施例に記載されているように、結果としてきわめて限定されたニュールツリンの分泌をもたらした。形質導入またはトランスフェクションに同じベクターおよび同じ細胞を使用する同じ条件下に、GDNFは相当な量で分泌した。
【0018】
相当に高い分泌レベルを得る1つの方法が、本発明者によって検討されている。この方法は、プロペプチドをコードするニュールツリン遺伝子のその部分の削除を含む。本実施形態による発現構成物は、ニュールツリンの成熟もしくは切断形態、または成熟もしくは切断ニュールツリンの配列変種に直接融合したシグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、天然ニュールツリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドでありうる。
【0019】
相当に高い分泌レベルを得る別の方法は、免疫グロブリン重鎖シグナルペプチド(IgSP)を含むがこれに限定されない異種シグナルペプチドでの天然ニュールツリンシグナルペプチドの置換を含む。特に好ましい実施形態においては、異種シグナルペプチドはデルタプロNTNに融合されている。デルタプロニュールツリンによって機能的プロ領域を含まないニュールツリンポリペプチドが意図されている。
【0020】
ニュールツリンによる所見と対照的に、GDNFのプロ部の削除およびGDNFシグナルペプチドのIgSPシグナルペプチドによる置換は、結果として、プロプレGDNFからの分泌と比べGDNFの分泌の大幅な削減をもたらした。
【0021】
NTNのプレプロ部のGDNFのプレプロ部の置換は、結果として、NTNの分泌の大幅な増大をもたらさなかったことも確認された。したがって、NTNとGDNFとの差は、単に2つの神経栄養因子のプロプロ部の差のせいにすることはできない。
【0022】
プレプロNTNの場合およびGDNFのプロプロ部による発現構成物において、未処理プロNTNに分子量が対応するタンパク質が哺乳類細胞から分泌したことが確認された。このプロNTNは、GFRα1またはGFRα2のいずれかに結合できなかったことも確認された。「プロ−レス(pro−less)」発現構成物を使用した場合、成熟ニュールツリンに分子量が対応するタンパク質が分泌した。このタンパク質は、インビボ実験によって証明されるように生物活性であり、GFRα1またはGFRα2に結合することができた。
【0023】
本発明に記載された高効率に発現構成物を使用する1つの重要な利点は、患者に投与されるウイルス組成物の量が減少しうることである。したがって、同じ治療効果のために、ウイルスが少ない組成物が製造される必要があり、少量の組成物の投与によって、少ない副作用が予想されうる。さらに、注射はより正確に行われうる。
【0024】
別の態様においては、本発明は、ウイルス発現ベクターの使用に関し、前記ベクターは、操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含んで成り、前記ポリペプチドは、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んで成る、
パーキンソン病の治療薬を調製するための使用に関する。
【0025】
別の態様においては、本発明は、操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含んで成るポリヌクレオチド配列を含んで成るウイルス発現ベクターに関し、前記ポリペプチドは、哺乳類細胞において機能することが可能なシグナルペプチドと、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択されるニュールツリンとを含んで成る。かかるウイルス発現ベクターは、機能的ニュールツリンプロ領域の欠如によって特徴づけられる。
【0026】
このウイルス発現ベクターは、治療的に重要な量のニュールツリンの発現および分泌をもたらすという点でインビボ遺伝子治療に特に有用である。ウイルス発現ベクターは、多量の生物活性ニュールツリンを分泌する哺乳類細胞を生成するためにも使用されうる。
【0027】
別の態様において、本発明は、本発明によるベクター、および1つもしくはそれ以上の医薬上許容される補助剤、賦形剤、担体、および/または希釈剤を含んで成る医薬組成物に関する。この医薬組成物はインビボおよびエクスビボ遺伝子治療に使用されうる。
【0028】
別の態様において、本発明は、本発明によるベクターで形質導入された単離宿主細胞に関する。
【0029】
かかる形質導入された宿主細胞は、周知のNTN産生細胞と比較し、かつ無傷プロペプチドを有するニュールツリンをコードするウイルスベクターで形質導入された細胞と比較して予想外に多量のニュールツリンを産生することがわかった。したがって、本発明の形質導入された宿主細胞は、ニュールツリンの工業規模の生産のための有望な細胞源となる。
【0030】
別の態様において、本発明は、伝染性ベクター粒子を産生することが可能なパッケージング細胞系に関し、前記ベクター粒子は、5’レトロウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、ニュールツリンおよび異種シグナルペプチドを含んで成る融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されるプロモーター、第2鎖DNA合成の起点、および3’レトロウイルスLTRを含んで成る。融合タンパク質は、機能的ニュールツリンプロ領域を含んで成ることはない。
【0031】
これらのパッケージング細胞系は、本発明によるウイルスベクターを製造するために使用されうる。それらは、カプセル化され、CNSに移植されるとインビボ遺伝子治療に有用でもありうる。
【0032】
別の態様においては、本発明は、本発明によるベクターで形質導入されている少なくとも1つの細胞を含んで成るヒト以外のキメラ哺乳類に関する。ニュールツリンを過剰発現するかかる動物は、遺伝子プロファイリング用に、かつ薬剤のスクリーニングおよび開発において使用されうる。
【0033】
好ましくは、形質導入された細胞は、個別動物の遺伝子型を有し、すなわち、同種または異種移植片ではない。
【0034】
別の態様において、本発明は、植込み式細胞培養デバイスに関し、前記デバイスは、
それを通じて成長因子の拡散を可能にする半透膜と、
少なくとも1つの本発明による単離宿主細胞と
を含んで成る。
【0035】
これらのカプセルは、中枢神経系への移植時にニュールツリンの局所送達用に使用されうる。成長因子の局所および長期送達が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むがこれらに限定されない多くのCNS障害の治療の好ましい投与法である。
【0036】
別の態様においては、本発明は、標的細胞の感染用のウイルスベクターを分泌する生きたパッケージング細胞を含んで成るコアであって、ウイルスベクターは本発明によるベクターであるコアと、前記コアを取囲む外側ジャケットであって、前記ジャケットは透過性生体適合性材料を含んで成り、前記材料は、その上を直径約100nmのレトロウイルスベクターの通過を可能にするように選択された多孔性を有し、前記ウイルスベクターの前記カプセルからの放出を可能にする外側ジャケットとを含んで成る生体適合性カプセルに関する。
【0037】
本発明のカプセルは、カプセル法を使用する患者における所望の部位にウイルス粒子の送達を提供する。ベクター産生細胞系のカプセル化は、一回の注入とは反対に、標的部位へのウイルス粒子の連続的送達を可能にする。また、反復療法が可能であり、免疫攻撃の可能性が低い。カプセルは、パッケージング細胞から放出されるウイルス粒子の通過を可能にするのに十分に大きな孔を有し、さらにカプセルへの宿主細胞の通過を阻止する。
【0038】
このカプセル法は、デバイスが容易に回収(治療の終了)または外移植および再移植(治療の修正)されうるため治療の安全性および制御を増大させる。さらに、カプセルデバイスが開放されておらず、または外部に置かれることがないため感染の機会は減少する。
【0039】
最後に、カプセル化はパッケージング細胞が患者内で移動するのを防ぎ、かつ植込み時のパッケージング細胞の生存を延長するため、この治療に必要な細胞の数は少ない可能性がある。これは患者の免疫反応をさらに低下させることにおいて有利でありうる。
【0040】
別の態様において、本発明は、本発明によるウイルスベクターの薬剤としての使用に関する。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、神経系障害の治療のための薬物調製のための本発明によるウイルスベクターの使用に関する。
【0042】
別の態様において、本発明は、CNS障害の治療のための薬物調製のための本発明によるベクターの使用に関する。
【0043】
さらに、本発明は、神経系疾患を治療する方法に関し、前記方法は、それを必要とする個体に、
本発明のベクターの治療有効量、または
本発明の医薬組成物の治療有効量、または
本発明によるパッケージング細胞系を含んで成る生体適合性デバイス
を投与するステップを含んで成る。
【0044】
本発明の本態様によれば、神経系疾患の改善されたインビボ遺伝子治療法が提供される。添付の実施例によって証明されるように、本発明のウイルスベクターによるインビボ形質導入は、コードされた治療的因子、例えば、ニュールツリンのこれまでに見られない分泌および組織分布、および結果として、改善された治療効果をもたらす。
【0045】
さらに別の態様において、本発明は、神経系疾患を治療する方法に関し、前記方法は、それを必要とする個体に、
i.本発明の形質導入された細胞の治療有効量、または
ii.本発明による植込み式デバイス
を移植するステップを含んで成る。
【0046】
本態様は、エクスビボ遺伝子治療、およびニュールツリンの増大量を分泌することが可能な治療的細胞の移植に基づく神経系障害を治療する別の方法を提供する。
【0047】
別の態様において、本発明は、ニュールツリンまたはその機能的同等物を500ng/106細胞/24時間以上の量で分泌する能力がある哺乳類細胞に関する。
【0048】
本発明に記載されたニュールツリン産生細胞は、従来技術の哺乳類細胞で見られる少なくとも1桁を超える量のニュールツリンを産生する。本発明の細胞を産生するニュールツリンは、タンパク質が正確に処理され、グリコシル化され、かつ折畳まれるとともに、培養培地から容易に回収されうる利点を有する哺乳類細胞を使用して発酵槽においてタンパク質を産生することを可能にする。
【0049】
(図面の簡単な記載)
図1:さまざまな哺乳類のIgSP配列の配置。ヒトIgSP(配列番号1、Genbank#AASC18285)、アカゲザルIgSP(配列番号2、Genbank#AAC02637)、マーモセットIgSP(配列番号3、Genbank#AAM89745)、マウスIgSP(配列番号4、Genbank#AAA38502)、ブタIgSP(配列番号5、Genbank#AAA79743)、ラットIgSP(配列番号6、Genbank#AAA51349)。
【0050】
図2:さまざまな神経栄養因子からのシグナル配列の表。ヒト神経成長因子(hNGF、Genbank#NP_002497、配列番号40)、マウス神経成長因子(mNGF、Genbank#P01139、配列番号41)、ヒトGDNF(hGDNF、Genbank#NP_000505、配列番号 42)、マウスGDNF(mGDNF、配列番号43、Genbank受入番号U36449)、推定マウスGDNFシグナル配列(配列番号44、GenbankNM_010275からのN末端19アミノ酸、開始コドンはU36449と比べ誤って予測されているようである)、ヒトノイブラスチン(Neublastin)(hNBN、Genbank#NP_476501、配列番号45)、ヒトペルセフィン(Persephin)(hPSP、Genbank#NP_004149、配列番号46)、ヒトニュールツリン(配列番号37)、マウスニュールツリン(配列番号38)、ラットニュールツリン(配列番号39)。
【0051】
図3:pNS1nIgSP.NTNプラスミドマップ。
図4:野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンのサンドイッチELISA。
【0052】
図5:野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンの機能的RetL2 ELISAアッセイ。
【0053】
図6:野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞の溶解物からのニュールツリン調製物のウェスタンブロット。
図7:ニュールツリンを安定に発現するARPE−19細胞によって産生されるニュールツリン量の定量化。
図8:pHR’−sC.IgSP−hgNTN.Wベクターマップ、インビボ遺伝子治療試験に使用されるレンチウイルスベクター。
図9:レンチウイルスベクターまたは6−OHDAの線条体内注射を示す概略図。
【0054】
図10:レンチウイルスベクターで形質導入され、その後にヒトNTNまたはヒトGDNFに対する抗体を使用する免疫組織化学のために処理されたラットの線条体の冠状断面。
上左パネルは、hNTNのために処理された無傷、非操作線条体を示す。シグナルは検出できない。同様に、無傷側ではrLV−wtNTN形質導入線条体においてシグナルは検出されない(上右パネル)。それに反して、hNTNに対する顕著な特異的染色がrLV−IgSP形質導入線条体において確認され(下右パネル)、拡散した染色パターンは、GDNF免疫組織化学で染色されたrLV−GDNF形質導入動物において確認されたものと酷似している(下左パネル)。
【0055】
図11:rLV−IgSPNTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用。無傷側では、多くのTH免疫反応性細胞が黒質が確認されうる(ドーパミン作動性細胞を示す)(左パネル、上列)。6−OHDA病変にさらされた側では、残りのTH免疫反応性ニューロンプロフィールの数は、wtNTN処置動物において大幅に減少している(中央パネル、上列)。それに反して、さらに多くのTH免疫反応性ニューロンが、IgSP−NTN治療を受けた雄動物において残っている(右パネル、上列)。定量化(棒グラフ)は、IgSP−NTNがGDNF治療によって見られる効果と同様の毒性損傷からの顕著な救出を誘発することを示す。以前にはインビボで黒質ドーパミンニューロンを救出しないことを示したNBNは、IgSPに融合されると保護することはない。
【0056】
図12:デルタプロニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号15)およびコードされるポリペプチド(配列番号16)。
図13:IgSPニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号17)およびコードされるポリペプチド(配列番号18)。
図14:プレプロGDNFニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号50)およびコードされるポリペプチド(配列番号51)。
【0057】
図15:(A)wtプレプロNTN、GDNFからのプレプロ部を有するNTN(ppG−NTN、配列番号50))、dプロNTN(配列番号15)、およびIgSP−NTN(配列番号17)を含むNTN発現構成物。後者のDNA配列はイントロンを含有する。さらに詳細については本文を参照。(B)トランスフェクトされたHEK293細胞からの溶解物およびならし培地のNTNウェスタンブロット。矢印は、それぞれ、wtプロNTN、プロ(GDNF)−NTN、および成熟NTNのサイズのバンドを示す。ここで留意すべきは、標準はwtNTNよりもわずかに高い分子量を有するNTN−Hisであることである。(C)NTN構成物でトランスフェクトされた4種類の細胞系からのならし培地におけるNTNのGFRa2結合活性。(D)溶解物(GFRa2に結合されていない)、およびGFRa2に結合したならし培地からのNTNのNTNウェスタンブロット。(E)NTN構成物でトランスフェクトされた4つの細胞系からのならし培地でのNTNサンドイッチELISA。データは代表的な実験からの平均±SEM(n=3)で表されており、*はwt構成物でトランスフェクトされた細胞との有意差を示す(P<0.05、順位でのクラスカル・ワリス一元分析後、スチューデント・ニューマン・クールズ法)。
【0058】
図16:レンチウイルス構成物の線条体内注射後の導入遺伝子のインビボ発現。レンチウイルスベクターで形質導入され、その後にGFPに対する抗体を使用する免疫組織化学のために処理されたラットの線条体(A)、ヒトNTN(B、D、E、F、G)、またはGDNF(C)の冠状断面。GFP対照群においては、明確な細胞内染色パターンがGFPに対する抗体を使用する免疫組織化学後に確認された(A)。rLV−NTN形質導入線条体(B、E)においては、弱い細胞内免疫反応(矢印)は確認されるが、細胞外NTNシグナルは確認されない。その一方で、rLV−IgSP形質導入線条体(D、F)においては、NTNに対する細胞内(矢印)および顕著な特異的細胞外染色パターンも確認される。(C)rLV−GDNF形質導入された動物におけるGDNF免疫染色は、タンパク質の分泌による同様に拡散した染色パターンを示す。(G)SN部におけるNTN免疫反応性線維は網状になり、NTNが線条体においてIgSP−NTN形質導入細胞から順行性に輸送されることを示す。バー1mm(A−D、G)または62.5μm(E−F)。
【0059】
図17:rLV−IgSP−NTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用。(A)4種類の治療群における無傷側と比べた病変側におけるTHを発現する黒質ニューロンの数。(B)病変側におけるVMAT免疫反応性黒質ニューロンの数。データは平均±SEM(n=5〜7)で表されており、*はGFP群との有意差を示す(P<0.05、一元ANOVA、ダネット法)。
【0060】
図18:GFP、NTN、IgSP−NTN、およびGDNF処置動物の黒質緻密部の冠状断面。無傷側では、多くのTH免疫反応性細胞が確認されうる(A)。6−OHDA病変にさらされた側では、残りのTH免疫反応性ニューロンプロフィールの数は、wtNTNまたはGFP処置動物において大幅に減少している(B、D)。それに反して、さらに多くのTH免疫反応性ニューロンが、GDNF(H)またはIgSP−NTN治療(C)を受けた動物において残っている。GDNFおよびIgSP−NTN処置動物におけるTH染色強度の減少に注意。高倍率の無傷側におけるTH−IR細胞(E)、IgSP−NTN処置動物の病変側(G)、およびNTN処置動物の病変側(F)。黒の矢印はTH発現が減少したニューロンを指し、白の矢印はTH発現が正常のニューロンを指す。バー1mm(A−E、H)または25μm(E−G)。
【0061】
(定義)
機能的ニュールツリンプロ領域は、シグナルペプチドと成熟ペプチドとの間に位置しており、プロペプチドはシグナルペプチドの開裂後のフリンによって成熟ペプチドから開裂可能である。「ニュールツリンプロ領域」は、例えば、配列番号12のアミノ酸−72〜−3、配列番号13のアミノ酸−72〜−3、配列番号14のアミノ酸−72〜−3に対応する少なくともアミノ酸を含んで成る領域を意味する。これらのプロプレニュールツリンが1つ以上の可能なプロ部位(RXXRモチーフ)を含有し、かつシグナルペプチダーゼによる実際の開裂が変動しうると、機能的プロ領域の正確な長さはそれに応じて変動しうる。
【0062】
シグナルペプチド−真核シグナルペプチド。真核シグナルペプチドは、分泌され、または膜成分となることが決まっているタンパク質上に存在するペプチドである。これは通常、タンパク質に対するN末端である。本文脈では、シグナルペプチドとしてシグナルP(バージョン2.0または好ましくはバージョン3.0)で識別されるすべてのシグナルペプチドがシグナルペプチドとみなされる。
【0063】
哺乳類シグナルペプチドは、小胞体(endoplamic reticulum)を通じて分泌される哺乳類タンパク質由来のシグナルペプチドである。
【0064】
異種シグナルペプチド−天然にニュールツリンポリペプチドと操作可能に連結されていないシグナルペプチド。
【0065】
本明細書で使用される成熟ヒトニュールツリンポリペプチドは、天然ヒトプレプロニュールツリンのC末端102アミノ酸、すなわち、配列番号12のアミノ酸1−102を意味する。
【0066】
本明細書で使用される成熟マウスニュールツリンポリペプチドは、天然マウスプレプロニュールツリンのC末端100アミノ酸、すなわち、配列番号13のアミノ酸1−100を意味する。
【0067】
本明細書で使用される成熟ラットニュールツリンポリペプチドは、天然ラットプレプロニュールツリンのC末端100アミノ酸、すなわち、配列番号14のアミノ酸1−100を意味する。
【0068】
本明細書で使用されるニュールツリンポリペプチドは、天然ヒトニュールツリンのアミノ酸8−101(配列番号12)、天然マウスニュールツリンのアミノ酸6−99(配列番号13)、または天然ラットニュールツリンのアミノ酸6−99(配列番号14)を含んで成り、各々、天然配列において15までのアミノ酸置換を有するポリペプチドを意味する。一部の文脈では、これは「分泌されたニュールツリンポリペプチド」が、すでに分泌されているものとは対照的に分泌されるポリペプチドを意味すると理解される。
【0069】
生物活性(Biocativity):GFRα2とともに二量化されるとRETと結合し、RET二量化および自己リン酸化を誘発する能力。生物活性は、実施例に記載されているようにRET L2 ELISAアッセイで測定されうる。生物活性は、GFRα1とともに二量化されるとRETと結合し、RET二量化および自己リン酸化を誘発する能力でもありうる。生物活性は、実施例に記載されているようにRET L1 ELISAアッセイで測定されうる。
【0070】
配列同一性:基準アミノ酸配列と変種アミノ酸配列との間の配列同一性は、クラスタル(Clustal)W(1.82)のデフォルト設定を使用して配列を調整することによって行われる。完全に保存された残基の数を計算し、基準配列における残基の数で割る。
【0071】
(発明の詳細な記載)
I.シグナル配列
分泌経路への分泌およびタンパク質の標的化は、シグナルペプチドまたはシグナル配列として周知の短いアミノ末端配列の付着によって行われる(von Heijne, G. (1985) J. Mol. Biol. 184, 99−105; Kaiser, C. A. & Botstein, D. (1986), Mol. Cell. Biol. 6, 2382−2391)。シグナルペプチドそのものは最適な機能に必要ないくつかの要素を含有し、その最も重要なものは疎水性成分である。疎水性配列の直前にはしばしば1つまたは複数の塩基性アミノ酸があるが、シグナルペプチドのカルボキシル末端には、シグナルぺプチダーゼ開裂部位を規定する単一の介在アミノ酸によって分離される一対の小さな非荷電アミノ酸がある。
【0072】
好ましい哺乳類シグナルペプチドは長さが15〜30個のアミノ酸である(真核生物の平均は23個のアミノ酸)。さまざまなタンパク質のシグナルペプチドの一般的な構造は一般に正電荷を持つn領域の後、疎水性のh領域、および中性であるが極性のc領域によって記載される。(−3、−1)規則は、−3位および−1位(開裂部位に対して)での残基が、開裂が正確に発生するために小さくかつ中性であるべきことを示す。
【0073】
真核シグナル配列のn領域は、ほんの少しArgリッチである。h領域は短く、きわめて疎水性である。c領域は短く、確認可能なパターンを有さない。上記のように、−3位および−1位は小さな中性の残基から成る。開裂部位に対するアミノ酸残基C末端は真核生物においてはあまり重要ではない。
【0074】
C領域において、−1および−3位での残基は最も重要である。これらは小さな非荷電アミノ酸である。−1位での残基は、好ましくは、A、G、S、I、T、またはCである。より好ましくは、−1位はA、G、またはSである。−3位での残基は、好ましくは、A、V、S、T、G、C、I、またはDである。より好ましくは、−3位はA、V、S、またはTである。
【0075】
疎水性領域は一般的に疎水性残基から成る。これらはA、I、L、F、V、およびMを含む。好ましくは、−6位〜−13位である。この領域を構成する8個のアミノ酸のうち、少なくとも4個の残基は疎水性であるが、より好ましくは、少なくとも5個、より好ましくは、少なくとも6個、例えば7もしくは8個である。
【0076】
数多くのシグナルペプチドが、本発明によるニュールツリン構成物において使用されうる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド(IgSP)など異種シグナルペプチドなど機能的シグナルペプチドでありうる。シグナルペプチドは、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタなど適切な種由来でありうる。好ましくは、ヒト由来である。
【0077】
添付の実施例によって証明されているように、ニュールツリンプロペプチドを含まないIgSPの使用は一般に、インビトロおよびインビボで生物活性ニュールツリンの分泌の改善をもたらす。結果は、レンチウイルス形質導入細胞およびプラスミドトランスフェクト細胞の両方で再現性であった。細胞は、IgSPコード配列が、ニュールツリンの天然プレプロ部を除き、成熟タンパク質をコードする遺伝子に直接融合されると、生物学的に活性のタンパク質として成熟タンパク質を分泌する。
【0078】
別の実施形態において、シグナルペプチドは、天然ヒトニュールツリンシグナルペプチドなど天然ニュールツリンシグナルペプチドである。本文脈において、天然ニュールツリンシグナルペプチドおよびニュールツリンポリペプチドの後者の構成物は、デルタプロニュールツリンと呼ばれる。ニュールツリンのプロ部をコードする配列を簡単に除去することにより、プレプロニュールツリンの発現と比べ生物活性ニュールツリンの分泌の予想外の増大が生じる。
【0079】
生物活性ニュールツリンの分泌が機能的ニュールツリンまたはGDNFプロペプチドをコードする発現構成物と比べプロレス発現構成物を使用することによって強く促進され、かつ機能的プロ領域の存在が非生物活性ニュールツリンの分泌をもたらすという複合所見により、本発明者は、機能的プロペプチドが生物活性ニュールツリンの分泌の必須部位であると結論づけるに至った。プロ領域の欠如もニュールツリンの分泌レベルを強く促進する。IgSPなど強いシグナルペプチドの選択は、分泌をさらに一層促進しうる。
【0080】
本発明の一実施形態において、コードシグナルペプチドは、NGFシグナルペプチド(配列番号40または配列番号41)、GDNFシグナルペプチド(配列番号42または配列番号43、ペルセフィンシグナルペプチド(配列番号46)、およびノイブラスチンシグナルペプチド(配列番号45)からなる群から選択される。好ましくは、これらのシグナルペプチドはマウスまたはヒト、より好ましくは、ヒトである。
【0081】
実施例6におけるシグナルペプチド予測は、NGFおよびGDNFシグナルペプチドを有する成熟ニュールツリンがIgSPと同じく強いシグナルペプチドであることを示す。成熟ニュールツリンに連結したペルセフィンシグナルペプチドも強いシグナルペプチドであることが予測される。デルタプロ発現構成物(成熟またはN末端切断NTNに連結したNTNシグナルペプチド)は、あまり強くないシグナルペプチドであると評価されている。これは実施例に示されている定量的データによって確認される。
【0082】
特定のシグナルペプチドの各々は、成熟マウス、ラット、またはヒトNTN(配列番号10、配列番号11、または配列番号8)と、または実施例6、およびIgSPNTN(配列番号18〜24)およびデルタプロNTN(配列番号16および配列番号25〜30)の配列表に示されているこれらのいずれかのN末端切断形態と個別に結合されうる。
【0083】
シグナルペプチドの開裂
発現構成物へ組込む特定のニュールツリン形態を決定する前に、シグナルペプチド(SP)の開裂の可能性を従来技術の予測ツールを使用してチェックすることができる。かかる好ましい予測ツールの1つが、シグナル(Signal)PのWWWサーバー(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP−2.0/)で入手可能であるシグナルPソフトウェアであり、または好ましくは、同じサーバーから新しいバージョン3.0が入手可能である(http://www.cbs.dtu.dk/services/signalP/)。
【0084】
シグナルPWWWサーバーは、あなたの配列における各位置の0〜1の3つのスコアを戻す:
Cスコア(生の開裂部位スコア)
開裂部位対他の配列位置を認識するためにトレーニングされたネットワークからの出力スコア。以下のようにトレーニングされる:
高 +1の位置(開裂部位直後)
低 他のすべての位置。
Sスコア(シグナルペプチドスコア)
シグナルペプチド対非シグナルペプチド位置を認識するためにトレーニングされたネットワークからの出力スコア。以下のようにトレーニングされる:
高 開裂部位前のすべての位置
低 開裂部位後および非分泌タンパク質のN末端における30の位置。
Yスコア(複合開裂部位スコア)
開裂部位位置の予測は、Cスコアが高く、Sスコアが高い値から低い値へ変化する場所を観察することによって最適化される。Yスコアは、Sスコアの勾配とCスコアの高さを結合することによってこれを形式化する。
【0085】
具体的には、Yスコアは、CスコアとSスコアの平滑化導関数との幾何平均である(すなわち、現在の位置の前のd位置および後のd位置を越える平均Sスコア間の差であり、ここでdは選択されたネットワークアンサンブルとともに変動する)。
【0086】
3つのスコアはすべてデータの異なるパーティションでトレーニングされた5つのネットワークの平均である。
【0087】
各配列について、シグナルPは最大のC、S、およびYスコア、およびN末端と予測開裂部位との平均Sスコアを報告する。これらの値は、シグナルペプチドと非シグナルペプチドとを区別するために使用される。あなたの配列がシグナルペプチドを有すると予測される場合は、開裂部位は最大Yスコアを示す位置の直前にあることが予測される。
【0088】
典型的なシグナルペプチドについては、CおよびYスコアは+1の位置で高くなるが、Sスコアが開裂部位の前で高く、その後に低くなる。
【0089】
対照用に、この予測を野性型ニュールツリンシグナルペプチドの予測開裂(プレプロNTN(配列番号12)のアミノ酸番号19と20との間の開裂)と比較することができる。マウスとラットのプレプロニュールツリンについては、開裂予測はあまり確実ではない。開裂はアミノ酸23と24との間で起こると予測されるが、ヒトプレプロNTNにおけるのと同じ位置での開裂(clevge)の可能性もある。
【0090】
開裂部位位置の最良の予測は、Yスコア最大の位置によって提供される。配列型(シグナルペプチドまたは非分泌タンパク質)の最良の予測は、平均Sスコア(位置1とYスコア最大の直前の位置との間の領域におけるSスコアの平均)によって示される。すなわち、平均Sスコアが0.5よりも大きい場合は、配列はシグナルペプチドであると予測される。したがって、好ましい実施形態において、平均Sスコアは0.5よりも大きい。
【0091】
新しいシグナルP(バージョン3.0)は、「シグナルペプチデッドネス(signal peptidedness)を表す、新しいスコアD、またはDmax(判別スコア)も含む。Dスコアは、問題のタンパク質を有する前記シグナルペプチドを使用して分泌のレベルを修正することがわかっている。少なくとも0.6など少なくとも0.5、例えば、少なくとも0.8など少なくとも0.7のDmax値を示すシグナルペプチドニュールツリンタンパク質をコードするニュールツリン発現構成物を使用することが好ましい。
【0092】
好ましいシグナルペプチドニュールツリン構成物は、シグナルP−NNまたはシグナルP−HMMプログラムのいずれかにおけるSPとニュールツリンとの間の予測開裂を有するものである。特に好ましいのは、シグナルP−NNとシグナルP−HMMの両方におけるこの位置で予測シグナルペプチドを有するニュールツリン構成物である。
【0093】
シグナルペプチドがIgSPであると、構成物のニュールツリン部は、長さが102〜96個のアミノ酸のヒトニュールツリン、または長さが100〜96個のアミノ酸のマウスもしくはラットのニュールツリンを含みうる。これらの場合のすべてにおいて、シグナルP−NNとシグナルP−HMMの両方は、19アミノ酸シグナルペプチド後のシグナルペプチドの開裂を予測する。
【0094】
他の好ましいシグナルペプチドとしては、GDNFおよびNGFシグナルペプチドのほか、ペルセフィンシグナルペプチドが挙げられる。
【0095】
別の好ましい実施形態において、発現構成物はシグナルペプチドニュールツリンタンパク質をコードし、ここで開裂は、シグナルPバージョン2.0、または好ましくは、バージョン3.0によって予測されるように、成熟ニュールツリンにおける最初の基準システイン前に発生する。
【0096】
References: Henrik Nielsen, Jacob Engelbrecht, Soren Brunak and Gunnar von Heijne: Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Engineering, 10, 1−6 (1997). For the SignalP−HMM output model: Henrik Nielsen and Anders Krogh: Prediction of signal peptides and signal anchors by a hidden Markov model. In Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology (ISMB 6), AAAI Press, Menlo Park, California, pp. 122−130 (1998).
Improved prediction of signal peptides: SignalP 3.0. Jannick Dyrlov Bendtsen, Henrik Nielsen, Gunnar von Heijne and Soren Brunak. J. Mol. Biol., 340:783−795, 2004.
【0097】
IgSP
特に好ましい実施形態によれば、シグナルペプチドは免疫グロブリン重鎖からのシグナルペプチドである。添付の実施例によって証明されているように、本シグナルペプチドの使用は一般に、インビトロおよびインビボにおけるコードニュールツリンの分泌の改善をもたらす。結果は、レンチウイルス形質導入細胞(インビボおよびインビトロ)およびプラスミドトランスフェクト細胞(インビトロ)の両方で再現性であった。細胞は、IgSPコード配列が、成熟タンパク質をコードする遺伝子に直接融合される場合でも(すなわち、ニュールツリンの天然プレプロ部を除き)、正確なサイズの成熟タンパク質を産生する。
【0098】
免疫グロブリンシグナルペプチドは、大きな群の哺乳類から周知の小さな19アミノ酸ペプチドである。ヒト、アカゲザル、マーモセット、ラット、マウス、およびブタからの配列は図1に配置されている。ヒトIgSPと比べた配列同一率は、21(ブタ)〜68(マーモセット)パーセントのばらつきがある。比較的大きなばらつきは、特定の配列がシグナルペプチドの生物学的機能を実質的に変更することなく大幅に変化しうることを示す。添付の実施例によって証明されているように種間反応性はあることも確認される。これらは、ラット(インビボ実験)およびヒト細胞(ARPE19細胞)のほか、チャイニーズハムスター細胞(CHO)およびラット細胞(HiB5)において機能的であったマウスIgSPで行われた。
【0099】
好ましくは、IgSPは、マウスIgSPがマウス、ラット、およびヒトにおいて機能的であることが周知であるため、マウスまたはヒト起源である。ヒトにおける使用のために、IgSPは、好ましくは、種間副作用のリスクを削減するためにヒト起源である。
【0100】
II.ニュールツリン
ニュールツリンはGDNF(グリア細胞系由来神経栄養因子)の4つのメンバーの1つである。これはGFRα2およびGFRα1コレセプターを通じてシグナルを示す。ニュールツリンは、多くの変性疾患を治療する治療上の候補として提案されている。細胞変性がニューロン変性を伴う場合、疾患としては、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、虚血性脳卒中、急性脳損傷、急性脊髄損傷、神経系腫瘍、多発性硬化症、末梢神経外傷または損傷、神経毒への曝露、糖尿病、または感染源によって引き起こされる腎不全および損傷など代謝疾患が挙げられるが、これらに限定されない。細胞変性が骨髄細胞変性を伴う場合、疾患としては、例えば、好酸球減少症および/または好塩基球減少症を含む白血球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血、血小板減少症のほか、上記のいずれかの幹細胞の不足など不十分な血球の障害が挙げられるが、これらに限定されない。特に本発明の構成物および方法で投与されるニュールツリンが、パーキンソン病の治療において使用されうる。
【0101】
ニュールツリンは最初、国際公開第97/08196号パンフレット(ワシントン大学(University of Washington)に記載された。ヒトニュールツリンのプレプロ形態は配列番号12に記載され、マウスニュールツリンのプレプロ形態は配列番号13に記載され、かつラットニュールツリンのプレプロ形態は配列番号14に記載されている。ニュールツリンの成熟形態としては、配列番号12(配列番号8に示されているヒト成熟NTN)のアミノ酸番号1−102、配列番号13(配列番号10に示されているマウス成熟NTN)の1−100、および配列番号14(配列番号11に示されているラット成熟)の1−100が挙げられる。
【0102】
成熟ヒトニュールツリンをコードするヌクレオチド配列は、本出願の配列番号7に記載されている。コードタンパク質の長さが102個のアミノ酸であり、配列番号8に記載されている。成熟マウスニュールツリンは配列番号10に記載されている。成熟ラットニュールツリン配列は配列番号11に記載されている。実施例1および3は、ヒト成熟ニュールツリンをクローン化するための方法を記載している。好ましくは、本発明の文脈で使用されるニュールツリンはヒト成熟ニュールツリンであるが、同様に、対応するマウスおよびラットの配列が使用されうることが意図されている。
【0103】
本発明の配列変種は、コードされた生物学的に活性のニュールツリンに関して適切に規定されている。GDNFファミリーの成長因子間の配列同一率は、成長因子の成熟部にわたって測定されると約50%の範囲にある。密接な関係がある成長因子間のかかる差により、ニュールツリンの配列が成長因子の生物活性を変更することなく変化しうることが意図されている。本発明の一実施形態において、ニュールツリンの配列変種は成長因子をコードする配列であり、これはヒトまたはマウスもしくはラットのニュールツリン(配列番号9および配列番号10および11)のC末端96アミノ酸との少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、配列変種は、前記ニュールツリンと少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも99%を有する。特に好ましい実施形態においては、配列同一性は、ヒトニュールツリン(配列番号9)のC末端96アミノ酸との比較によって判定される。
【0104】
アミノ酸配列における変更がタンパク質の生物学的機能に影響を及ぼすことなく自由に行われえないことは、当技術分野で周知である。ニュールツリンの生物学的機能に深刻に影響を及ぼすことなく変更されえない最も可能性が高いアミノ酸残基としては、何よりもまず、成熟部の7個の保存された基準システイン残基(配列番号8の残基nr8、35、39、69、70、99、および101)である。
【0105】
他のGDNFファミリーの神経栄養因子に対するニュールツリンの配置は、アミノ酸残基がニュールツリンの配列変種の生物学的機能の保存に最も重要であることに関する情報を当業者に提供する。好ましい実施形態において、ニュールツリンの配列変種は野生型ヒトNTN(hNTN)に対応する位置での完全保存残基を含んで成る。より好ましい実施形態において、配列変種は、野生型hNTNに対応する位置で完全保存および強保存残基を含んで成る。さらにより好ましい実施形態において、NTNの配列変種は、野生型hNTNに対応する位置で完全に、強く、かつ弱く保存された残基を含んで成る。
【0106】
【表1】
* 単一の完全に保存された残基を有する位置を示す。:
: 以下の「強」群の1つが完全に保存されていることを示す:
−STA、NEQK、NHQK、NDEQ、QHRK、MILV、MILF、HY、FYW。
・ 以下の「弱」群の1つが完全に保存されていることを示す:
−CSA、ATV、SAG、STNK、STPA、SGND、SNDEQK、NDEQHK、NEQHRK、VLIM、HFY。
【0107】
【表2】
【0108】
部位特異的突然変異誘発法およびPCR介在突然変異誘発法など標準の方法によって突然変異をニュールツリンへ導入することができる。好ましくは、保存アミノ酸置換は、1つもしくはそれ以上の予測された非必須アミノ酸残基で行われる。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術内で規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、NTNタンパク質における予測された非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。
【0109】
アミノ酸ファミリーの関連性は、側鎖相互作用に基づき判定もされうる。置換アミノ酸は、完全に保存された「強」残基または完全に保存された「弱」残基でありうる。保存アミノ酸残基の「強」群は、以下の群のいずれか1つでありうる。すなわち、STA、NEQK、NHQK、NDEQ、QHRK、MILV、MILF、HY、FYWであり、ここで一文字アミノ酸コードは互いに置換されうるアミノ酸によってグループ分けされる。同様に、保存残基の「弱」群は、以下のいずれか1つでありうる。すなわち、CSA、ATV、SAG、STNK、STPA、SGND、SNDEQK、NDEQHK、NEQHRK、VLIM、HFYであり、ここで各群内の文字は一文字アミノ酸コードを表す。
【0110】
GDNFファミリー成長因子は、N末端切断形態において生物学的に活性であることが周知である(切断GDNFを記載する米国特許第6,184,200号明細書、切断ノイブラスチンを記載する国際公開第02/072826号パンフレット)。ニュールツリンもN末端切断形態において生物活性であると考えられている。本発明者は、ヒト成熟ニュールツリンおよび対応する切断ラットおよびマウスタンパク質のC末端101、100、99、98、97、または96アミノ酸から成るN末端切断ニュールツリンをコードするDNA配列の使用を意図した。成熟タンパク質と同じほどに生物活性であると考えられる最も短いヒト形態は、配列番号9に記載された96アミノ酸から成る。同様に、マウスおよびラットタンパク質は、C末端96アミノ酸に至るまでN末端切断でありうる。現在、最初の基準システイン残基にN末端が残される1つのアミノ酸残基が必要であると考えられている。
【0111】
C末端は、最後の基準システイン残基に対するアミノ酸残基C末端の除去によって切断もされうる。ヒト、マウス、およびラットにおいて、これはC末端アミノ酸の削除に相当する。本発明の好ましい実施形態において、このC末端アミノ酸は削除されていない。
【0112】
III.神経変性障害の治療のための標的組織
グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)コード配列を含んで成るウイルスベクターを使用するパーキンソン病を治療または予防または改善する方法が公知である。GDNFのCNSへの送達は、前臨床試験において、タンパク質注射、ポンプによる送達、およびインビボ遺伝子治療によって達成されている。多くの試験ではGDNFを発現するAAVまたはレンチウイルスを使用するCNS細胞の形質導入が記載されている(Kordower, Ann Neurol, 2003 53 (suppl 3), s120−s134;国際公開第03/018821号パンフレット, Ozawa et.al;米国特許公開第2002187951号明細書, Aebischer et.al; Georgievska et.al 2002, Exp Nerol 117(2), 461−474; Georgievska et.al 2002, NeuroReport 13(1), 75−82; Wang et.al, 2002, Gene Therapy, 9(6), 381−389;米国特許公開第2002031493号明細書, Rohne−Poulenc Rorer SA;米国特許第6,180,613号明細書 Roeckefeller University; Kozlowski et.al 2000, Exp Neurol, 166(1), 1,15; Bensadoun 2000, Exp Neurol, 164(1), 15−24; Connor et.al 1999, Gene Therapy, 6(12), 1936−1951; Mandel et.al 1997, PNAS, 94(25), 14083−88; Lapchak et.al 1997, Brain Research, 777 (1,2), 153−160; Bilang−Bleuel et.al 1997, PNAS 94(16), 8818−8823)。これらの方法は、本発明のウイルスベクターを使用する中枢神経へのニュールツリンの送達において使用されうる。
【0113】
インビボ遺伝子治療の1つの重要なパラメータは、適切な標的組織の選択である。脳の領域が、神経栄養因子、特にニュールツリンに対するその反応性維持のために選択される。ヒトにおいて、成人に達しても神経栄養因子に対する反応性を維持するCNSニューロンとしては、コリン作動性前脳基底部ニューロン、内嗅皮質ニューロン、視床ニューロン、青斑核ニューロン、脊髄感覚ニューロン、および脊髄運動ニューロンが挙げられる。ニュールツリンに対する反応性が維持された細胞の別の特徴は、Retと、2つのコレセプターGFRα1およびGFRα2の1つとの発現である。
【0114】
このニューロンの複雑なネットワークのコリン作動性コンパートメント内の異常は、AD、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病としても周知)を含む多くの神経変性障害に関与している。コリン作動性前脳基底部(特に、前脳基底部のCh4領域)は特に適切な標的組織である。
【0115】
霊長類前脳内では、巨細胞性ニューロンCh1−Ch4が、大脳皮質、視床、およびへんとう体外基底核へのコリン作動性神経支配を提供する。ADなど神経変性疾患を有する対象において、神経成長因子(NGF)受容体を有するCh4領域(マイネルト基底核)におけるニューロンは正常対照と比べ顕著な萎縮を受ける(see, e. g., Kobayashi, et.al., Mol. Chem. Neuropathol., 15: 193−206 (1991))。
【0116】
正常対象において、ニューロトロフィンは、発達中の交感神経および感覚ニューロンの死を阻止し、成体ラットおよび霊長類におけるコリン作動性ニューロン変性を阻止する(Tuszynski, et.al., Gene Therapy, 3 : 305314 (1996))。結果として生じる前脳基底部の領域における機能性ニューロンの喪失は、ADなど神経変性症状にかかっている対象によって経験される認識衰退と因果関係があると考えられている(Tuszynski, et.al., supra and, Lehericy, et.al., J. Comp. Neurol., 330: 15−31 (1993))。
【0117】
ヒトADにおいて、前脳基底部ニューロン喪失は、直径約1cmの実質内部位にわたって起こる。かかる大領域にわたる罹患ニューロンを治療するには、10個以上の別々のインビボ遺伝子ベクター送達部位でのベクター組成物による治療が望ましい。しかし、前脳基底部への局所注射処置においては、脳の罹患部位は、少ない送達部位(例えば5個以下)の選択で臨床的に重要な数のコリン作動性ニューロンの修復のために十分となるように小さくなる可能性がある。
【0118】
重要なことには、特定のインビボ遺伝子送達部位がニューロン喪失の部位において群を成すために選択される。かかる部位は、磁気共鳴映像法(MRI)および生検を含む多くの周知の方法を使用して臨床的に確認されうる。ヒトにおいては、MRIなど非侵襲的インビボ影像法が好ましいであろう。ニューロン喪失の部位が確認されると、送達部位が定位分布のために選択され、NTNの各単位投与量が500μmで、またはそれ以内で、標的細胞から、かつ別の送達部位から約10mm以内で脳へ送達される。
【0119】
IV.投与要件および送達プロトコール
別の重要なパラメータは標的組織へ送達されるニュールツリンの投与量である。この点で、「単位投与量」は一般にニュールツリン組成物のニュールツリン/mlの濃度を指す。ウイルスベクターについて、ニュールツリン濃度は、ニュールツリン組成物のウイルス粒子/mlの数によって規定されうる。好ましくは、ウイルス発現ベクターを使用するニュールツリンの送達のために、ニュールツリンの各単位投与量は、ニュールツリン組成物2.5〜25μLとなり、ここで組成物は医薬上許容される液体中のウイルス発現ベクターを含み、ニュールツリン組成物ml当たり1010から1015までのニュールツリン発現ウイルス粒子を提供する。かかる高力価は特にアデノ随伴ウイルスに有用である。レンチウイルスでは、力価は通常、低く、実施例に記載されているように決定されたml当たり108〜1010形質導入単位(TU/ml)である。
【0120】
パーキンソン病の治療におけるニュールツリンウイルスの投与に関する指針は、インビボ遺伝子治療を使用するGDNFの送達に関する多くの引例において見出されうる。
【0121】
好ましい実施形態において、投与部位は脳の線条体、特に尾状および/または被殻である。被殻への注射は、脳のさまざまな遠隔領域、例えば、淡蒼球、へんとう体、視床下核、または黒質に位置した標識標的部位でありうる。淡蒼球における細胞の形質導入は一般に、視床における細胞の逆行性標識をもたらす。好ましい実施形態において、(各)標的部位(またはその1つ)は黒質である。注射は線条体と黒質の両方へでもありうる。
【0122】
所定の標的部位内では、ベクター系は標的部位を形質導入しうる。標的細胞は、ニューロン、星状細胞、乏枝神経膠細胞、小膠細胞、または上衣細胞など神経組織において見出される細胞でありうる。好ましい実施形態において、標的細胞はニューロン、特にTH陽性ニューロンである。
【0123】
ベクター系は、好ましくは、直接注射によって投与される。脳(特に線条体)への注射の方法が当技術分野で公知である(Bilang−Bleuel et.al (1997) Proc. AcaDNAti. Sci. USA 94:8818−8823; Choi−Lundberg et.al (1998) Exp. Neurol.154:261−275; Choi−Lundberg et.al (1997) Science 275:838−841; and Mandel et.al (1997) ) Proc. AcaDNAtl. Sci. USA 94:14083−14088)。定位注射が投与されうる。
【0124】
上記のように、脳などの組織における形質導入のために、きわめて少量を使用することが必要であり、したがってウイルス調製は超遠心分離法によって濃縮される。結果として生じる調製物は、少なくとも108t.u./ml、好ましくは、108〜1010t.u./ml、より好ましくは、少なくとも109t.u./mlを有することになる。(力価は、実施例2に記載されているように、ml当たり形質導入単位(t.u./ml)で表される)。導入遺伝子発現の分散の改善は、注射部位の数を増大させ、かつ注射の速度を低下させることによって獲得されうることが見出されている(上記のHorellouとMallet(1997年) )。通常、1〜10個、より一般的に2〜6個の注射部位が使用される。1−5×109t.u./mlを含んで成る用量では、注射の速度は一般に0.1〜10μl/分、通常、約1μl/分である。
【0125】
本発明によって提供される改善されたベクターの高い分泌効率により、臨床効果を得るために注射すべきウイルス組成物は、プレプロNTNをコードするベクターが使用される場合よりも少量となる。
【0126】
ニュールツリン組成物は、マイクロインジェクション、注入、スクレープローディング、エレクトロポレーション、または外科的切開によって送達部位へ直接、組成物を直接送達するために適した他の手段によって標的組織における各送達細胞部位に送達される。送達は、(送達されるニュールツリン組成物の総量によって)約5〜10分間にわたるなど、ゆっくり行われる。
【0127】
当業者は、本発明によって使用される直接送達法がインビボ遺伝子治療に付随する限定的な危険因子、すなわち、導入遺伝子をコードするニュールツリンを有するベクターで非標的細胞の形質導入の可能性を未然に防ぐことを理解するであろう。本発明において、送達は直接であり、送達部位は分泌ニュールツリンの拡散が脳の管理された所定の領域にわたって起こり、標的ニューロンとの接触を最適化すると同時に、非標的細胞との接触を最小限にするように選択される。
【0128】
V.ウイルスベクター
概して、遺伝子治療では患者の細胞へ新しい遺伝物質を移動し、患者に治療上の利点をもたらすことが求められる。かかる利点としては、広範囲の疾患、障害、および他の症状の治療または予防が挙げられる。
【0129】
エクスビボ遺伝子治療法は、単離細胞の修飾を含み、これらは次いで患者へ注入され、移植(graft)され、または移植(transplant)される。例えば、米国特許第4,868,116号明細書、同第5,399,346号明細書、および同第5,460,959号明細書を参照。インビボ遺伝子治療では宿主患者組織をインビボで直接標的化することが求められる。
【0130】
遺伝子導入ベクターとして有用なウイルスとしては、パポバウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレトロウイルスが挙げられる。適切なレトロウイルスとしては、HIV、SIV、FIV、EIAV、MoMLVから成る群が挙げられる。
【0131】
中枢神経系の障害の治療のための好ましいウイルスは、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスである。両方の型のウイルスは細胞分裂なしにゲノムへ一体化することができ、両方の型は神経系、特に中枢神経系における適応用に前臨床動物試験で試験されている。
【0132】
AAVの調製用の方法は当技術分野で記載されており、例えば、米国特許第5,677,158号明細書、米国特許第6,309,634号明細書、および米国特許第6,451,306号明細書は、AAVの中枢神経系への送達の実施例を記載している。
【0133】
特殊で好ましい型のレトロウイルスとしては、細胞を形質導入し、細胞分裂なしにそのゲノムへ一体化することができるレンチウイルスが挙げられる。したがって、好ましくは、ベクターは複製欠損レンチウイルス粒子である。かかるレンチウイルス粒子は、5’レンチウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドシグナルに操作可能に連結したプロモーター、第2鎖DNA合成の起点、および3’レンチウイルスLTRを含んで成るレンチウイルスベクターから製造されうる。神経細胞へのレンチウイルスの調製およびインビボ投与の方法は、米国特許公開第20020037281号明細書(レンチウイルスベクターを使用する神経細胞の形質導入)および米国特許公開第20020187951号明細書(神経変性疾患のためのレンチウイルス介在成長因子遺伝子治療)に記載されている。
【0134】
レトロウイルスベクターは、7〜8kbを有し、かつ細胞感染能を有するとともに、高効率で宿主細胞へ安定に一体化される遺伝物質を有するため、ヒト臨床試験において最も一般的に使用されている。例えば、国際公開第95/30761号パンフレット、国際公開第95/24929号パンフレットを参照。オンコウイルス科は、外因性核酸配列の患者への移動および一体化のために少なくとも1回の標的細胞増殖を必要とする。レトロウイルスベクターはランダムに患者のゲノムへ一体化する。
【0135】
3つのクラスのレトロウイルス粒子が記載されており、マウス細胞に効率的に感染しうる同種指向性、および多くの種の細胞に感染しうる両種性である。第3のクラスとしては、ウイルスを産生した種以外の別の種の細胞に感染しうる異種性レトロウイルスが挙げられる。分裂細胞のゲノムへのみ一体化するその能力は、発達試験における細胞系統を製造し、かつ癌または腫瘍へ治療用遺伝子または自殺遺伝子を送達するためにレトロウイルスを魅力的にした。これらのベクターは、成人患者において細胞分裂の相対的欠如が認められる、癌治療のための中枢神経系において特に有用でありうる。
【0136】
ヒト患者における使用のために、レトロウイルスベクターは複製欠損でなけばならない。これにより、標的組織における感染性レトロウイルス粒子の生成がさらに阻止され−−その代わりに複製欠損ベクターが標的細胞ゲノムへ安定に組込まれる「自家」導入遺伝子になる。一般的に、複製欠損ベクターにおいては、gag遺伝子、env遺伝子、およびpol遺伝子が(他のウイルスゲノムの大部分とともに)削除されている。異種DNAが、削除ウイルス遺伝子の代わりに挿入される。異種遺伝子は内因性異種プロモーター、標的細胞において活性の別の異種プロモーター、またはレトロウイルス5’LTR(ウイルスLTRはさまざまな組織において活性である)の支配下にありうる。一般的に、レトロウイルスベクターは約7〜8kbの導入遺伝子能を有する。
【0137】
複製欠損レトロウイルスベクターは、例えば、遺伝子工学的パッケージング細胞系から、トランスにおける複製およびアセンブリに必要なウイルスタンパク質の供給を必要とする。パッケージング細胞は複製可能ウイルスおよび/またはヘルパーウイルスを放出しないことが重要である。これは、ψシグナルを欠くRNAからウイルスタンパク質を発現し、かつ個別の転写単位からgag/pol遺伝子およびenv遺伝子を発現することによって達成されている。また、一部の第2および第3世代のレトロウイルス(retrivirus)においては、5’LTRはこれらの遺伝子の発現を制御する非ウイルスプロモーターで置換されており、3’プロモーターは近位プロモーターのみを含有するために最小化されている。これらのデザインは、複製可能なベクター、またはヘルパーウイルスの産生をもたらす組換えの可能性を最小限にする。例えば、参照により本明細書で援用される、米国特許第4,861,719号明細書を参照。
【0138】
VI.発現ベクター
本発明において使用するためのニュールツリンの組換え発現のためのベクターの構成は、当業者には詳細な説明を必要としない従来の方法を使用して達成されうる。しかし、検討のために、当業者は、Maniatis et.al., in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982)を参考にしたいであろう。
【0139】
本発明において使用されるキメラ発現構成物は、実施例に記載されているように、例えば、PCRによって所望の断片(シグナル配列およびニュールツリンコード配列)を増幅し、これらを重複型PCRにおいて融合することによって作出しうる。好ましいシグナル配列の一部が比較的短いと、ニュールツリンコード配列を増幅するために使用される5’PCRプライマーは、シグナル配列をコードする配列のほかTATAボックスおよび他の調節要素を含みうる。
【0140】
手短に言えば、組換え発現
ベクターの構成では標準のライゲーション法が使用される。構成されたベクターにおける正確な配列を確認する分析のために、遺伝子は、例えば、メッシング(Messing)らの方法(Nucleic Acids Res., 9: 309−, 1981)、マクサム(Maxam)らの方法(Methods in Enzymology, 65: 499, 1980)、または当業者に周知であろう他の適切な方法を使用する配列である。
【0141】
開裂断片のサイズ分離は、例えば、マニアティス(Maniatis)ら(Molecular Cloning, pp. 133−134,1982)によって記載されている従来のゲル電気泳動を使用して行われる。
【0142】
遺伝子の発現は、転写レベル、翻訳レベル、または翻訳後レベルで制御される。転写開始は遺伝子発現における早期および重大な事象である。これはプロモーターおよびエンハンサー配列に依存し、かつこれらの配列と相互作用する特定の細胞因子によって影響される。多くの遺伝子の転写単位はプロモーター、かつ場合によっては、エンハンサーまたは調節要素から成る(Banerji et.al., Cell 27: 299 (1981); Corden et.al., Science 209: 1406 (1980); and Breathnach and Chambon, Ann. Rev. Biochem. 50: 349 (1981))。レトロウイルスについては、レトロウイルスゲノムの複製に関与する制御要素が末端繰り返し(LTR)に存在する(Weiss et.al., eds., The molecular biology of tumor viruses: RNA tumor viruses, Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982))。モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRは、プロモーターおよびエンハンサー 配列を含有する(Jolly et.al., Nucleic Acids Res. 11: 1855 (1983); Capecchi et.al., In : Enhancer and eukaryetic gene expression, Gulzman and Shenk, eds., pp. 101−102, Cold Spring Harbor Laboratories (NY 1991)。他の有力なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)および他の野性型ウイルスプロモーター由来のものが挙げられる。
【0143】
多くの非ウイルスプロモーターのプロモーターおよびエンハンサー領域も記載されている(Schmidt et.al., Nature 314: 285 (1985); Rossi and deCrombrugghe, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5590−5594 (1987))。静止細胞における導入遺伝子の発現を維持し、増大させるための方法としては、I型コラーゲン(1および2)、SV40、およびLTRプロモーターを含むプロモーターの使用が挙げられる(Prockop and Kivirikko, N. Eng. J. Med. 311: 376 (1984) ; Smith and Niles, Biochem. 19: 1820 (1980) ; de Wet et.al., J. Biol. Chem., 258: 14385 (1983))。
【0144】
本発明の一実施形態によれば、プロモーターは、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター、JeTプロモーター(米国特許第6,555,674号明細書)、SV40プロモーター,および延長因子1アルファプロモーター(EF1−アルファ)からなる群から選択される構成的プロモーターである。
【0145】
誘導性/抑制性プロモーターの例として、Tet−On、Tet−Off、ラパマイシン誘導性プロモーター、Mx1が挙げられる。
【0146】
導入遺伝子発現を推進するウイルスおよび非ウイルスプロモーターの使用に加えて、エンハンサー配列を使用し、導入遺伝子発現のレベルを増大させることができる。エンハンサーは、その固有の遺伝子だけではなく、一部の外来遺伝子の転写活性を増大させうる(Armelor, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70 : 2702 (1973))。 例えば、本発明において、コラーゲンエンハンサー配列は、コラーゲンプロモーター2(I)と使用され、導入遺伝子発現を増大させうる。また、SV40ウイルスに見られるエンハンサー要素を使用し、導入遺伝子発現を増大させることができる。このエンハンサー配列は、そのすべてが参照により本明細書で援用される、Gruss et.al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 943 (1981); Benoist and Chambon, Nature 290: 304 (1981), and Fromm and Berg, J. Mol. Appl. Genetics, 1 : 457 (1982)によって記載されている72の塩基対反復から成る。この反復配列は、さまざまなプロモーターと直列に存在すると多くの異なるウイルスおよび細胞遺伝子の転写を増大させうる(Moreau et.al., Nucleic Acids Res. 9 : 6047 (1981))。
【0147】
別の発現増強配列としては、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素、WPRE、SP163、ラットインスリンイントロンまたは他のイントロン、CMVエンハンサー、およびチキン[ベータ]グロブリンインシュレータ、または他のインシュレータが挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
導入遺伝子発現は、プロモーター活性を調節するサイトカインを使用することにより長期の安定した発現のためにも増大されうる。一部のサイトカインは、コラーゲン2(I)およびLTRプロモーターからの導入遺伝子の発現を調節することが報告されている(Chua et.al., connective Tissue Res., 25: 161−170 (1990); Elias et.al., Annals N. Y. Acad. Sci., 580 : 233−244 (1990)); Seliger et.al., J. Immunol. 141: 2138−2144 (1988) and Seliger et.al., J. Virology 62: 619−621 (1988))。例えば、形質転換成長因子(TGF)、インターロイキン(IL)−1、およびインターフェロン(INF)は、LTRなどさまざまなプロモーターによって推進される導入遺伝子の発現をダウンレギュレートする。腫瘍壊死因子(TNF)およびTGF1はアップレギュレートし、かつこれらを使用し、プロモーターによって推進される導入遺伝子の発現を制御することができる。有用と証明しうる他のサイトカインとしては、塩基性線維芽細胞(bFGF)および表皮性成長因子(EGF)が挙げられる。
【0149】
コラーゲンエンハンサー配列(Coll(E))を有するコラーゲンプロモーターも使用し、その免疫保護状態にもかかわらず処置脳において生成されうるベクターに対する別の免疫反応を抑制することによって導入遺伝子発現を増大させることができる。また、ステロイド、例えば、デキサメタゾンを含む抗炎症薬が、ベクター組成物送達直後に処置宿主に投与され、好ましくは、サイトカイン介在炎症反応が消退するまで投与が継続される。シクロスポリンなど免疫抑制剤も投与し、LTRプロモーターおよびColl(E)プロモーターエンハンサーをダウンレギュレートするインターフェロンの産生を削減し、かつ導入遺伝子発現を削減することができる。
【0150】
ベクターは、Creリコンビナーゼタンパク質、およびLoxP配列をコードする配列など別の配列を含んで成りうる。ノイブラスチンの一時的発現を確実にする別の方法が、結果として、細胞へのCreリコンビナーゼの投与(Daewoong et.al, Nature Biotechnology 19:929−933)またはウイルス構成物へのリコンビナーゼをコードする遺伝子を組込むことによって(Pluck, Int J Exp Path, 77:269−278)、挿入DNA配列の一部の除去がもたらされるCre−LoxP系の使用によるものである。LoxP部位とともにウイルス構成物におけるリコンビナーゼのための遺伝子および構造的遺伝子(ノイブラスチン)を組込むことは、この場合は、結果として、約5日間の構造的遺伝子の発現をもたらす。
【0151】
VII.医薬製剤
本発明において使用するためのニュールツリン組成物を形成するには、発現ウイルスベクターをコードするニュールツリンを医薬上許容される懸濁液、溶液、または乳剤へ配置することができる。適切な溶剤としては、生理的食塩水およびリポソーム製剤が挙げられる。
【0152】
さらに具体的には、医薬上許容される担体としては、非水溶液、懸濁液、および乳剤の滅菌水を挙げることができる。非水性溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、乳剤、または生理的食塩水および緩衝溶剤を含む懸濁液が挙げられる。非経口賦形剤としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガーまたは固定油が挙げられる。
【0153】
静脈内賦形剤としては、液体および栄養補充薬、電解質補充薬(例えばリンガーデキストロースに基づくもの)などが挙げられる。
【0154】
保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在しうる。さらに、ニュールツリン導入遺伝子の組成物が、その後の再構成および本発明による使用のために、当技術分野で公知の手段を使用して凍結乾燥されうる。
【0155】
コロイド分散系も標的遺伝子送達に使用されうる。
【0156】
コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達賦形剤として有用である人工膜小胞である。サイズ範囲が0.2〜4.0μmである大単層小胞(LUV)は、大きな高分子を含有する水性バッファーの実質的な割合をカプセル化しうることが証明されている。RNA、DNA、および無傷ビリオンは水性内部内にカプセル化され、生物学的に活性の形態で細胞に送達されうる(Fraley, et.al., Trends Biochem. Sci., 6: 77,1981)。哺乳類細胞に加えて、リポソームは、植物、酵母、および細菌細胞において操作可能にコードする導入遺伝子の送達に使用されている。リポソームが高利的な遺伝子導入賦形剤であるために、以下の特徴が示されるべきである。すなわち(1)高効率でニュールツリンをコードすると同時にその生物活性を損なうことがない遺伝子のカプセル化、(2)非標的細胞と比べ標的細胞への優先的かつ実質的な結合、(3)高効率での標的細胞の細胞質への小胞の水性内容物の送達、(4)遺伝情報の正確かつ有効な表現(Mannino, et.al., Biotechniques, 6: 682,1988)。
【0157】
リポソームの組成物は通常、リン脂質、特に高相転移温度リン脂質の組合せ、通常、ステロイド、特にコレステロールとの組合せである。他のリン脂質または他の脂質も使用されうる。リポソームの物理特性は、pH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に依存する。
【0158】
リポソーム製造において有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セロブロシド、およびガングリオシドなどホスファチジル化合物が挙げられる。特に有用なのは、ジアシルホスファチジルグリセロールであり、この場合、脂質部分は14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原子を含有し、飽和している。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0159】
リポソームの標的は解剖学的および機構的因子に基づき分類されうる。解剖学的分類は、選択性のレベル、例えば、臓器特異的、細胞特異的、および細胞小器官特異的に基づく。機構的標的は、受動的または能動的であるかどうかに基づき区別されうる。受動的標的では、洞様毛細血管を含有する臓器における網内系(RES)の細胞に分布するリポソームの自然な傾向を利用する。
【0160】
他方、能動的標的は、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、またはタンパク質など特定のリガンドにリポソームを結合し、または局在の天然起源部位以外の臓器および細胞型への標的を達成するためにリポソームの組成物またはサイズを変更することによるリポソームの変化を含む。
【0161】
標的遺伝子送達系の表面はさまざまな方法で修飾されうる。リポソーム標的送達系の場合には、脂質群はリポソームの脂質二重層へ組込まれ、リポソーム二重層との安定した関係で標的リガンドを維持することができる。さまざまな連結群が、脂質鎖標的リガンドと結合するために使用されうる。
【0162】
送達系の別の例としては、本発明に記載されているベクター粒子を産生する能力があるパッケージング細胞の組成物の治療部位への移植が挙げられる。かかる細胞のカプセル化および移植の方法が当技術分野で、特に国際公開第97/44065号パンフレット(細胞治療薬(Cytotherapeutics)から周知である。レンチウイルス粒子を産生する能力があるパッケージング細胞系を選択することによって、治療部位における非分裂細胞の形質導入が得られる。分裂細胞のみを形質導入することが可能なレトロウイルスを使用することによって、形質導入は治療部位における新規(de−novo)分化細胞に限定される。
【0163】
VIII.細胞のカプセル化
カプセル化細胞治療は、宿主内の移植前に半透過性生体適合性材料で細胞を取囲むことによってレシピエント宿主免疫系から細胞を単離する考えに基づく。本発明は、ニュールツリン分泌細胞が免疫アイソレータリーカプセルでカプセル化されるデバイスを含む。「免疫アイソレータリーカプセル」は、レシピエント宿主への移植とともに、デバイスのコアにおける細胞に対する宿主の免疫系の有害作用を最小限にすることを意味する。細胞は、微小孔性膜によって形成された移植可能なポリマーカプセル内にそれらを封入することによって宿主かた免疫単離される。この方法は、宿主と移植組織との間の細胞と細胞の接触を阻止し、直接表示による抗原認識を除去する。使用される膜は、その分子量に基づき抗体および補体など分子の拡散を制御するように調整もされうる(Lysaght et.al., 56 J. 細胞 Biochem. 196 (1996), Colton, 14 Trends Biotechnol. 158 (1996))。カプセル化法を使用することにより、免疫抑制剤の使用の有無によって免疫拒絶なしに細胞を宿主へ移植することができる。有用な生体適合性ポリマーカプセルは通常、液体媒質中に懸濁され、または固定化基質内に固定化される細胞を含有するコア、および生体適合性であり、かつ有害な免疫学的攻撃からコアにおける細胞を保護するのに十分である単離細胞を含有することがない選択透過性基質または膜(「ジャケット」)の周囲または末梢領域を含有する。カプセル化は免疫系の要素をカプセルに入ることを妨げ、それによってカプセル化細胞を免疫破壊から守る。カプセル膜の半透過性は、目的とする生物学的に活性の分子がカプセルから周囲の宿主組織へ容易に拡散することも可能にする。
【0164】
カプセルは、生体適合性材料で製造されうる。「生体適合性材料」は、宿主における移植後に、カプセルの拒絶をもたらし、または、例えば分解により手術不可能にするのに十分な有害な宿主反応を引き起こすことがない材料である。生体適合性材料は、宿主免疫系の要素など大きな分子に対して比較的不透過性であるが、インスリン、成長因子、および栄養素に対して透過性であると同時に、代謝廃棄物が除去されることを可能にする。さまざまな生体適合性材料が、本発明の組成物による成長因子の送達に適している。さまざまな外面形態および他の機械的および構造的特徴を有する多くの生体適合性材料が周知である。好ましくは、本発明のカプセルは、参照により援用される国際公開第92/19195号パンフレットまたは国際公開第95/05452号パンフレット、または米国特許第5,639,275号明細書、同第5,653,975号明細書、同第4,892,538号明細書、同第5,156,844号明細書、同第5,283,187号明細書、または参照により援用される米国特許第5,550,050号明細書によって記載されたものと同様であろう。かかるカプセルは、代謝物、栄養素、および治療薬の通過を可能にすると同時に、宿主免疫系の有害作用を最小限にする。生体適合性材料の要素は、周囲半透膜および内部の細胞支持足場を含みうる。好ましくは、形質転換細胞は、選択透過性膜によってカプセル化される足場へ播種される。糸状細胞支持足場は、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセトニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブトエステル、絹、綿、キチン、カーボン、または生体適合性金属からなる群から選択される生体適合性材料で製造されうる。また、結合線維構造物が細胞移植用に使用されうる(参照により援用される、米国特許第5,512,600号明細書)。生体分解性ポリマーとしては、ポリ(乳酸)PLA、ポリ(乳−コグリコール酸)PLGA、およびポリ(グリコール酸)PGA、およびその同等物が挙げられる。フォーム足場は、移植細胞が付着しうる表面を提供するために使用されている(参照により援用される、PCT国際特許出願第98/05304号明細書)。織メッシュチューブが血管移植片として使用されている(参照により援用される国際公開第99/52573号パンフレット)。また、コアはヒドロゲルで形成された固定化基質から成り、これは細胞の位置を安定化する。ヒドロゲルは、実質的に水から成るゲルの形態での架橋親水性ポリマーの三次元ネットワークである。
【0165】
ポリアクリル酸塩(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/塩化コビル)のほか、その誘導体、コポリマー、および混合物を含むさまざまなポリマーおよびポリマー混合物を使用し、周囲半透膜を製造することができる。好ましくは、周囲半透膜は生体適合性半透過性中空線維膜である。かかる膜、およびそれらを製造する方法は、参照により援用される、米国特許第5,284,761号明細書および同第5,158,881号明細書によって開示されている。周囲半透膜は、参照により援用される、米国特許第4,976,856号明細書または米国特許第4,968,733号明細書によって記載されているものなどポリエーテルスルホン中空線維で形成されている。別の周囲半透膜材料はポリ(アクリロニトリル/塩化コビル)である。
【0166】
カプセルは、生物活性を維持し、製品または機能の送達のアクセスを提供するために適した、例えば、円筒形、長方形、円板状、パッチ状、卵形、星形、または球形を含む構成でありうる。さらに、カプセルは、巻かれまたは包まれてメッシュ状または入れ子構造になりうる。カプセルが移植された後に回収される場合は、移植の部位からカプセルの移動をもたらす傾向がある構成、例えばレシピエント宿主血管へ移動するに十分に小さい球形のカプセルは好ましくない。長方形、パッチ、円板、円筒、および平板など一部の形状は大きな構造的完全性を提供し、回収が望ましい場合には好ましい。
【0167】
マクロカプセルが使用される場合、好ましくは、103〜108細胞がカプセル化され、最も好ましくは、105〜107細胞が各デバイスでカプセル化される。投与量は、少数または多数のカプセル、好ましくは、患者当たり1〜10カプセルを移植することによって制御されうる。
【0168】
足場は細胞外基質(ECM)分子でコーティングされうる。細胞外基質分子の適切な例としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、およびフィブロネクチンが挙げられる。足場の表面もプラズマ照射で処理し、電荷を与えて細胞の付着を増強することによって修正されうる。
【0169】
ポリマー接着剤または圧着、ノッチングおよびヒートシールの使用を含むカプセルを密閉する適切な方法を使用することができる。また、例えば、参照により援用される、米国特許第5,653,687号明細書に記載されているように、適切な「ドライ」シール法も使用されうる。
【0170】
カプセル化細胞デバイスは周知の方法に従って移植される。多くの移植部位が、本発明のデバイスおよび方法のために意図されている。これらの移植部位としては、脳、脊髄を含む中枢神経系(参照により援用される、米国特許第5,106,627号明細書、同第5,156,844号明細書、および同第5,554,148号明細書を参照)、および眼の水および硝子体液(参照により援用される、国際公開第97/34586号パンフレットを参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
ARPE−19細胞系は、カプセル化細胞ベースの送達技術の優れたプラットフォーム細胞系であり、非カプセル化細胞ベースの送達技術にも有用である。ARPE−19細胞系は頑健である(すなわち、細胞系は、中枢神経系または眼内環境における移植など厳しい条件下に生存可能である)。ARPE−19細胞は、治療目的の物質を分泌するように遺伝子組換えが行われうる。ARPE−19細胞は寿命が比較的長い。ARPE−19細胞はヒト起源である。さらに、カプセル化ARPE−19細胞は優れたインビボデバイス生存を有する。ARPE−19細胞は、ごくわずかな宿主免疫反応を引き起こす。さらに、ARPE−19細胞は非発癌性である。
【0172】
カプセルをCNSへ移植するための方法および装置が米国特許第5,487,739号明細書に記載されている。
【0173】
一態様において、本発明は、標的細胞の感染用のウイルスベクターを分泌する生きたパッケージング細胞を含んで成るコアであって、ウイルスベクターは本発明によるベクターであるコアと、前記コアを取囲む外側ジャケットであって、前記ジャケットは透過性生体適合性材料を含んで成り、前記材料は、その上を直径約100nmのレトロウイルスベクターの通過を可能にするように選択された多孔性を有し、前記ウイルスベクターの前記カプセルからの放出を可能にする外側ジャケットとを含んで成る生体適合性カプセルに関する。
【0174】
好ましくは、コアはさらに基質を含んで成り、パッケージング細胞は基質によって固定化されている。一実施形態によれば、ジャケットはヒドロゲルまたは熱可塑性材料を含んで成る。
【0175】
パッケージング細胞のカプセル化のための方法およびデバイスは、参照によりその全体が本明細書で援用される、米国特許第6,027,721号明細書に開示されている。
【0176】
IX.医学的使用および治療方法
一態様において、本発明は、神経系障害の治療用薬物の調製のための本発明によるベクターの使用に関する。神経系障害は末梢神経系または中枢神経系の障害でありうる。
【0177】
治療によって、治癒的治療だけではなく、予防的(preventive)(完全な予防ではない)または予防的(prophylactic)治療も意図される。治療は改善的または対症的でもありうる。
【0178】
好ましくは、CNS障害は神経変性または神経学的疾患である。神経変性または神経学的疾患は、末梢神経、骨髄、脊髄の外傷性病変、脳虚血性ニューロン損傷、神経障害、末梢神経障害、神経因性疼痛、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症と関係がある記憶障害などの病変および外傷性ニューロンに影響を及ぼす疾患でありうる。多発性硬化症の神経変性要素も本発明に従って治療可能である。
【0179】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、神経変性疾患がパーキンソン病である(実施例を参照)。
【0180】
別の好ましい実施形態においては、疾患は筋萎縮性側索硬化症(Amyltrophic Lateral Sclerosis)または脊髄損傷である。
【0181】
本発明のベクターは、網膜色素変性症、黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症など眼疾患の治療にも使用されうる。
【0182】
神経系疾患は、それを必要とする個体に本発明のウイルスベクターの治療有効量、または本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することによって治療されうる。
【0183】
パーキンソン病については、カプセルおよびウイルスベクターの送達は、「投与要件および送達プロトコール」で上述されている。ALSおよび脊髄損傷については、細胞またはウイルスベクターを分泌するニュールツリンを有するカプセルは、髄腔内、脳室内、または腰椎内に送達されうる。脊髄損傷については、送達は病変および/または外傷性ニューロンを有する部位に対してでもありうる。カプセルまたはウイルスベクターの送達は、下位運動ニューロンに近接して頸部/腰部拡張部に対してでもありうる。特にALSについては、本発明の発現構成物をコードする修飾狂犬病ウイルスが罹患筋組織へ注射され、それによって罹患運動ニューロンへの逆行性輸送が達成される。
【0184】
本発明の焦点はインビボ遺伝子治療であるが、それを必要とする個体に、
i.本発明による形質導入された細胞の治療有効量、
ii.形質導入された細胞を含んで成る植込み式デバイス、または
iii.パッケージング細胞系を含んで成る生体適合性デバイス
を移植することによって神経系疾患が治療されうることも意図されている。
【0185】
前記移植は、自家移植、同種移植、または異種移植を含んで成りうる。
【0186】
全部ではないが、大部分の眼科疾患および障害は、3種類の徴候、すなわち、(1)血管形成、(2)炎症、および(3)変性の1つもしくはそれ以上と関係がある。これらの障害を治療するには、本発明のウイルスベクター、治療用細胞、およびカプセル化細胞が、眼へのニュールツリンの送達を可能にする。
【0187】
本発明によるウイルスベクターの送達は、網膜下注射、硝子体内注射、または経強膜注射を使用して行われうる。
【0188】
例えば、糖尿病性網膜症は、血管形成および網膜変性によって特徴づけられる。本発明では、眼内、好ましくは、硝子体内、または眼周囲、好ましくは、テノン嚢下領域のいずれかにNTNを送達するデバイスを移植することによって糖尿病性網膜症を治療ことが意図される。発明者は、本適応のためにカプセル、裸細胞、またはウイルスベクターの硝子体への送達を最も好む。網膜症としては、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、および毒性網膜症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
ブドウ膜炎は、炎症および二次変性を伴う。本発明では、NTNを分泌するカプセルまたは裸細胞の眼内、好ましくは、硝子体または前房の移植によって、または本発明によるウイルスベクターを硝子体に投与することによってブドウ膜炎を治療することが意図されている。
【0190】
網膜色素変性症は、比較すると、一次網膜変性によって特徴づけられる。本発明では、NTNを分泌するデバイスまたは裸細胞の眼内、好ましくは、硝子体の配置によって、または本発明によるウイルスベクターを硝子体に投与することによって網膜色素変性症を治療することが意図されている。
【0191】
年齢関連性黄斑変性は、血管形成と網膜変性の両方を伴う。本発明では、この障害を、本発明によるカプセルまたは裸細胞を使用し、NTNを眼内、好ましくは、硝子体に送達することによって、または本発明によるウイルスベクターを使用し、NTNを眼内、好ましくは、硝子体に投与することによって治療することが意図される。年齢関連性黄斑変性としては、乾燥性年齢関連性黄斑変性、滲出性年齢関連性黄斑変性、および近視性変性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
緑内障は、眼圧の増大および網膜神経節細胞の喪失によって特徴づけられる。本発明で意図される緑内障の治療としては、網膜細胞を緑内障関連性損傷から守り、眼内、好ましくは、硝子体内に、カプセル、裸細胞のウイルスベクターのいずれかによって送達されるNTNの送達が挙げられる。
【0193】
眼内、好ましくは、硝子体内に、発明者は、ニュールツリンの送達を50pg〜500ng、好ましくは、100pg〜100ng、最も好ましくは、1ng〜50ng/眼/患者/日の投与量範囲を意図している。眼周囲送達については、好ましくは、テノン嚢下腔または領域に、1μg/患者/日までのわずかに高い投与量範囲が意図されている。
【0194】
本発明は、眼内新血管形成、多くの眼疾患および障害と関係し、大半の重篤な視力喪失の原因である症状の治療に有用でありうる。例えば、発明者は、網膜虚血関連性眼内新血管形成、糖尿病における失明の主な原因、および多くの他の疾患、患者が角膜移植片不全にかかりやすくなる角膜新血管形成、および糖尿病性網膜症、中心網膜静脈閉塞、およびおそらく年齢関連性黄斑変性に合併する新血管形成の治療を意図している。
【0195】
本発明の一実施形態においては、生物活性ニュールツリンを分泌する生きた細胞がカプセル化され、(球後麻酔下に)眼の硝子体へ外科的に挿入される。硝子体配置のために、デバイスは角膜を通じて移植されうるが、デバイスの一部、または結合部が角膜を通じて突き出る。最も好ましくは、デバイスの全体が硝子体内へ移植され、デバイスの一部が角膜内または角膜を通じて突き出ないことである。好ましくは、デバイスは角膜(または他の適切な眼内構造物)に結合される。結合は縫合用アイレット、または他の適切な固定手段を含んで成りうる(例えば、米国特許第6,436,427号明細書を参照)。デバイスは、所望の予防または治療を達成するのに必要な限り硝子体内に残存しうる。かかる治療としては、例えば、ニューロンまたは光受容体生存の促進、または網膜もしくは脈絡膜の新血管形成の修復、もしくは阻害および/または逆転のほか、ブドウ膜、網膜、および眼神経炎症の阻害が挙げられる。本実施形態は、NTNを網膜に送達するために好ましい。
【0196】
硝子体の配置により、NTNは網膜またはRPEに送達されうる。
【0197】
別の実施形態において、細胞装填デバイスが眼周囲、テノン嚢として周知の腔内または腔下に移植される。本実施形態は、硝子体への移植よりも侵襲的ではなく、したがって一般に好ましい。この投与経路は、RPEまたは網膜へのNTNの送達も可能にする。本実施形態は、脈絡膜の新血管形成および眼神経ならびに眼球血管膜の炎症を治療するために特に好ましい。一般に、この移植部位からの送達は、脈絡膜血管系、網膜血管系、および眼神経へのNTNの循環を可能にするであろう。
【0198】
本実施形態によれば、発明者は、黄斑変性(脈絡膜新血管形成)を治療するために脈絡膜血管系へのNTNの眼周囲送達(テノン嚢下に移植)を好む。
【0199】
本発明のデバイスおよび方法を使用することによるNTNの脈絡膜血管系(眼周囲)または硝子体(眼内)への直接送達は、不明瞭または潜在性の脈絡膜新血管形成の治療を可能にしうる。これは、補助的または維持療法によって再発性脈絡膜新血管形成を削減または予防する方法も提供しうる。
【0200】
投与量は、当技術分野で周知の適切な方法によって変動されうる。これには(1)デバイス当たりの細胞の数、(2)眼当たりのデバイスの数、または(3)細胞当たりのNTN産生レベルの変更が含まれる。発明者は、デバイス当たり103〜108細胞、より好ましくは、デバイス当たり5*104〜5*106細胞の使用を好む。
【0201】
X.宿主細胞
一態様において、本発明は、本発明によるベクターで形質導入された単離宿主細胞に関する。これらの細胞は、好ましくは、コードニュールツリンを正確に分泌し、かつ処理する能力があるため哺乳類宿主細胞である。
【0202】
好ましい種としては、齧歯類(マウス、ラット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル、ヒトから成る群が挙げられる。
【0203】
本発明のベクターでの形質導入の優れた候補である初代培養および細胞系の例としては、CHO、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、ニューロン細胞、胎児細胞、ARPE−19、MDX12、C2C12、HeLa、HepG2、線条体細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロンから成る群が挙げられる。
【0204】
本発明は、遺伝子組換えされてNTNを過剰発現し、かつ患者に移植されて生物活性NTNポリペプチドを局所に送達することができる裸またはカプセル化細胞によるNTNのバイオデリバリーに適した細胞にも関する。かかる細胞は概して治療用細胞と呼ばれうる。
【0205】
本発明の好ましい実施形態において、治療用細胞系は異種不死化遺伝子の挿入で不死化されていない。本発明が、裸細胞、または―好ましくは、カプセル化細胞に関係なく、細胞移植に部分的に適している細胞に関すると、かかる不死化細胞系は、それらがヒト体内で無制御に増殖を開始し、場合によっては腫瘍を形成する固有のリスクがあるため好ましくない。
【0206】
好ましくは、治療用細胞系は接触阻止細胞系である。接触阻止細胞系によって、ペトリ皿で培養されると、密集して成長し、実質的に分化を停止する細胞系が意図されている。これは、限定された数の細胞が単層から逃れる可能性を排除しない。接触阻止細胞は3D、例えば、カプセル内でも成長しうる。カプセル内部でも、細胞は密集して成長し、次いで大幅に増殖速度を落とし、または完全に分化を停止する。特に好ましい型の細胞としては、本来、接触阻止であり、かつ培養で安定した単層を形成する上皮細胞が挙げられる。
【0207】
さらに好ましくは、網膜色素上皮細胞(RPE細胞)である。RPE細胞源は哺乳類網膜からの一次細胞単離によるものである。RPE細胞を回収するためのプロトコールは明確であり(Li and Turner, 1988, Exp. Eye Res. 47:911−917; Lopez et.al., 1989, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 30:586−588)、ルーチンの方法とみなされている。RPE細胞同時移植の大部分の公表された報告では、細胞はラット由来である(Li and Turner, 1988; Lopez et.al., 1989)。本発明によれば、RPE細胞はヒト由来である。単離一次RPE細胞に加えて、培養ヒトRPE細胞が本発明の実施において使用されうる。
【0208】
別の実施形態において、治療用細胞系は、ヒト線維芽細胞系、ヒト星状細胞系、ヒト中脳細胞系、および、好ましくは、TERT、SV40T、またはvmycで不死化されているヒト内皮細胞系からなる群から選択される。
【0209】
不死ヒト星状細胞系を生成するための方法は以前に報告されている(Price TN, Burke JF, Mayne LV. A novel human astrocyte cell line (A735) with astrocyte−specific neurotransmitter function. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 1999 May;35(5):279−88.)。このプロトコールを使用し、星状細胞系を生成することができる。
【0210】
そのプロトコールの以下の3つの変種が、好ましくは、追加のヒト星状細胞系を生成するために行われている。
【0211】
5〜12週齢胎児から切開したヒト胎児脳組織を12〜16週齢組織の代わりに使用することができる。
【0212】
不死化遺伝子v−myc、またはTERT(テロメラーゼ)をSV40T抗原の代わりに使用することができる。
【0213】
レトロウイルス遺伝子導入をリン酸カルシウム沈殿法によるプラスミドでのトランスフェクションの代わりに使用することができる。
【0214】
XI.ニュールツリン産生細胞の支持基質
本発明はさらに、哺乳類神経系または眼への移植前に支持基質でのニュールツリン産生細胞のインビトロ培養を含んで成る。移植前の微小担体への細胞の予備接着は、移植細胞の長期生存を増強するために考えられており、長期の機能的利点を提供する。
【0215】
移植細胞、すなわち、移植NTN分泌細胞の長期生存を増大させるために、移植すべき細胞はインビトロで移植前に支持基質に付着されうる。支持基質が構成されうる材料としては、インビトロインキュベーション後に細胞が接着し、かつその上で細胞が成長しうるとともに、移植細胞を破壊し、またはその生物学的もしくは治療的活性を損なう毒性反応、または炎症反応を誘発することなく哺乳類体内へ移植されうる材料が挙げられる。かかる材料は、合成もしくは天然化学物質であり、または生体起源を有する物質でありうる。
【0216】
基質材料としては、ガラスおよび他の酸化ケイ素、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアリギネート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、アクリロニトリルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリペンテント、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾ゼラチンおよび天然および体系化コラーゲン、デキストランおよびセルロース(例えば、ニトロセルロース)を含む天然および修飾多糖類、寒天、およびマグネタイトが挙げられるが、これらに限定されない。吸収性または非吸収性のいずれかの材料を使用することができる。また、当技術分野で公知である細胞外基質材料も意図されている。細胞外基質材料は市販されており、またはかかる基質を分泌する細胞を成長させ、分泌細胞を除去し、移植される細胞を基質と相互作用させ、これに接着させることによって調製されうる。その上で移植される細胞が成長し、またはそれと細胞が混合される基質材料は、RPE細胞の固有産物でありうる。したがって、例えば、基質材料は、移植されるRPE細胞によって産生され、分泌される細胞外基質または基底膜材料でありうる。
【0217】
細胞接着、生存、および機能を改善するには、固体基質が、場合により、当技術分野で周知の因子によりその外面でコーティングされ、細胞接着、成長、または生存を促進しうる。かかる因子としては、細胞接着分子、細胞外基質、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、グリコアミノグリカン、またはプロテオグリカンもしくは成長因子が挙げられる。
【0218】
あるいは、移植細胞が付着される固体基質は多孔性材料で構成され、成長または生存促進因子もしくは複数の因子は基質材料へ組込まれ、そこからインビボで移植後にゆっくり放出されうる。
【0219】
本発明による支持体に付着されうると、移植使用される細胞は一般に支持体の「外面」上にある。支持体は固体または多孔性でありうる。しかし、多孔性支持体であっても、細胞は介在膜または他のバリアなしに外部環境と直接接触している。したがって、本発明によれば、細胞は、それらが接着する表面が、粒子またはビーズ自体の外側にない多孔性支持材料の内部折り畳みまたは畳み込みの形でありうるとしても支持体の「外面」上にあるとみなされる。
【0220】
支持体の構成は、好ましくは、ビーズにおけるように球形であるが、円筒形、楕円形、フラットシートまたはストリップ、針またはピン状などであってもよい。支持基質の好ましい形態はガラス玉である。別の好ましいビーズはポリスチレンビーズである。
【0221】
ビーズサイズは、直径約10μm〜1mm、好ましくは、約90μm〜約150μmでありうる。さまざまな微小担体ビーズの説明については、例えば、isher Biotech Source 87−88, Fisher Scientific Co., 1987, pp. 72−75; Sigma Cell Culture Catalog, Sigma Chemical Co., St, Louis, 1991, pp. 162−163; Ventrex Product Catalog, Ventrex Laboratories, 1989を参照、これらの引例は参照により本明細書で援用される。ビーズサイズの上限は、望ましくない宿主反応のビーズ刺激によって決定されるが、これは移植細胞の機能を妨げ、または周囲組織に損傷をもたらしうる。ビーズサイズの上限は、投与の方法によっても決定されうる。かかる制限は、当業者によって容易に決定される。
【0222】
XII.ニュールツリンのインビトロ産生
別の態様において、本発明は、ニュールツリンまたはその機能的同等物を500ng/106細胞/24時間以上の量で分泌する能力がある哺乳類細胞に関する。好ましくは、細胞は、少なくとも1000ng/106細胞/24時間、より好ましくは、少なくとも5000、より好ましくは、少なくとも10,000、より好ましくは、少なくとも15,000、より好ましくは、少なくとも20,000、より好ましくは、少なくとも25,000、より好ましくは、少なくとも30,000、より好ましくは、少なくとも35,000分泌することが可能である。実施例1によって示されているように、最良のプラスミドトランスフェクトARPE19細胞は、20,000ng/106細胞/24時間超産生する。発現は、WPREなどエンハンサー要素の包含によってさらに増大されうる(米国特許第6,136,567号明細書)。従来技術のBHK細胞と比べると(Hoane et.al 2000, Experimental Neurology 162:189−193)、これらの量はきわめて高い。
【0223】
かかる高い産生細胞は、ARPE−19細胞、CHO細胞、BHK細胞、R1.1細胞、COS細胞、キラー細胞、ヘルパーT細胞、細胞毒性Tリンパ球、およびマクロファージからなる群から選択されうる。HEK293細胞およびHiB5細胞も適切な生成細胞である。
【0224】
したがって、ニュールツリンまたはその切断もしくは突然変異または生物活性配列変種は、これらの細胞を培養し、培養培地からニュールツリンを回収することによって多量に産生されうる。哺乳類産生ニュールツリンは、生物活性であるために再び折リ重ねられる必要はない。別の利点は、ニュールツリンが成熟ペプチドとして分泌され、プロペプチドを含まないことである。本発明者によって、プレプロニュールツリンとしてのニュールツリンの発現が結果として、GFRα1またはGFRα2に結合することがなく、したがって生物活性ではない、プロニュールツリンの分泌をもたらすことが証明されている。
【0225】
これらのニュールツリン産生細胞は同様に治療的目的に使用され、生物活性ニュールツリンの局所送達のために裸(支持または非支持)細胞またはカプセル化細胞のいずれかとして移植されうる。
【0226】
(実施例)
実施例1:ニュールツリン構成物によるインビトロトランスフェクション
材料と方法
ゲノムNTN配列のクローン化
PureGeneキット(ジェントラ(Gentra)、バイオテック・ライン(Biotech Line)、デンマーク)を使用して、ヒトゲノムNTNをHEK293細胞系(ATCC、米国)から精製したゲノムDNAからクローン化した。プライマーNTNゲノム.1s+BamHI(5’−TATAGGATCCGGAGGACACCAGCATGTAG−3’、配列番号52)およびNTNゲノム.1as(5’−TCGCCGAGGATGAATCACCA−3’、配列番号53)によるPCRをテンプレートとしてHEK293gDNAを使用して行った。pfxポリメラーゼ(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)を5%DMSO(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)で補充したその対応バッファーにおいて使用した。得られたPCR断片を、BamHIおよびXhoI制限部位を使用することにより、pcDNA3neo(インビトロジェン(Invitrogen))の特注誘導体であるpNS1n(ニューロサーチ(NeuroSearch)でクローン化し、結果としてベクターpNS1n.hNTNゲノムを得た。これは結果として成熟NTN(配列番号7)をコードする配列のクローン化をもたらした。
【0227】
ベクター構成
IgSP−NTN発現ベクターpNS1n.IgSP.NTNのクローン化:プライマーNTNs−IgSP.フラップ(5’−GGTGAATTCGGCGCGGTTGGGGGCGCGGCCT−3’、配列番号54)およびNTN−594as+XhoI(5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’、配列番号55)を使用することにより、pNS1n.hNTNゲノムベクターからPCRによってNTNの成熟断片を増幅した。第2のPCR反応において、プライマーIgSPKozak1s+BamHI(5’−TATAGGATCCGCCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATC−3’、配列番号56)およびIgSPas−NTN.フラップ(5’−CCAACCGCGCCGAATTCACCCCTGTAGAAAG−3’、配列番号57)を使用することにより、pNUT−IgSP−CNTFベクター(米国特許第6,361,771号明細書)からIgSP配列を増幅した。第3のPCR反応において、2つの断片を重複によって融合した。等量の2つの産物をテンプレートとして、プライマーIgSPKozak1s+BamHIおよび NTN−594as+XhoIとともに使用した。
【0228】
プラスミドベースの発現ベクターを生成するために、結果として生じる断片をBamHI/XhoIで消化したpNS1nでクローン化した。このベクターにおいて、IgSP−NTN配列はCMVプロモーターの転写制御下に配置される(図3を参照)。さらに、ベクターは、哺乳類細胞で発現されるとG418抵抗性を与えるNeo遺伝子を含有する。IgSP−NTNをコードする断片のヌクレオチド配列は図13に記載されている。
【0229】
細胞培養
自然に発生するヒト網膜色素上皮細胞系(Dunn et.al. 1996)であるARPE−19を37℃下、5%CO2で成長させた。成長培地は、10%ウシ胎仔血清(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)で補充したグルタマックス(Glutamax)とのDMEM/栄養ミックスF−12(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)で構成された。細胞は1:5の比で約週2回継代された。
【0230】
一時的トランスフェクション試験
ARPE−19細胞を一連のNTN発現ベクターでトランスフェクトした。手短に言えば、細胞を6ウェルプレート(コーニング・コスター(Corning Costar)、バイオテック・ライン(Biotech Line)、デンマーク)に105細胞/ウェルの密度で接種した。翌日、Fugene6(ロシュ(Roche)、ドイツ)を使用し、メーカーの説明に従って、細胞をNTN発現プラスミドで二重のウェル中でトランスフェクトした。72時間のトランスフェクション後、サンプルアリコートをRetL2およびNTN ELISAのために細胞上清から取った。細胞をウェスタンブロット分析のために回収した。
【0231】
安定トランスフェクション
ARPE−19細胞をT150「剥離(peel−off)」フラスコ(TPP、スイス)中に2.4*106細胞/フラスコの密度で接種した。Fugene6を使用して10μgのDNA/フラスコで細胞をトランスフェクトした。72時間のトランスフェクション後、800μg/mlのG418(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)を安定クローンの選択のために成長培地に添加した。個別クローンの形成後、単一クローンをその後の分析のために拡大した。
【0232】
NTN ELISA
この従来の免疫アッセイにおいて、NTNは結合され、NTN特異的抗体を使用してサンプリから検出される。手短に言えば、Maxisorpプレート(ヌンク(Nunc)、デンマーク)を1μg/mlのモノクローナル抗ヒトNTN抗体(#MAB387、R&D系、TriChem、デンマーク)でコーティング溶液(0.0025M Na2CO3/0.0025 M NaHCO3、pH=8.2)中、16時間4℃下のインキュベーションによってコーティングした。PBST(PBS(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)中0.05%Tween−20(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)中での洗浄後、ウェルをブロッキングバッファー(PBS中1%ウシ血清アルブミン(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)および5%ショ糖)中、1時間、室温下にブロックした。PBST中での洗浄後、基準としてNTN産生(prodicing)細胞および組換えNTN(#387−NE、R&D系、TriChem、デンマーク)から培地サンプルのARPE−19成長培地中の希釈液で3時間、室温下にインキュベートした。ブロッキングバッファー中の1μg/mlポリクローナル抗ヒトNTN抗体(#AF387、R&D系、TriChem、デンマーク)をウェルに添加し、16時間4℃下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、1%正常マウス血清(DAKO、デンマーク)で補充したブロッキングバッファー中0.02%抗ヤギHRP(DAKO、デンマーク)中でウェルを2時間、室温下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、TMB基質溶液(プロメガ(Promega)、Ramcon、デンマーク)を添加し、インキュベーションを15分間、室温下に行った。1N HClのウェルへの添加によって色形成を停止し、ELK−800プレートリーダー(Cambrex、デンマーク)を使用してA450を測定した。
【0233】
RetL2 ELISA
RetL2 ELISAによりNTN特異的GFRα2受容体と結合したNTNの複合体とのRet−Ap接合体が検出される。手短に言えば、Opti−plateプレート(パッカード・インスツルメンツ(Packard Instruments)、Perkin Elmer、デンマーク)を50mM NaHCO3(pH=9.6)中100μl 1μg/mlヤギ抗ヒトFc(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ(Jackson Immunoresearch Laboratories)、TriChem、デンマーク)で16時間、4℃下にコーティングした。PBST中で洗浄後、PBST中0.2%I−Block(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で1時間、室温下にブロックした後、PBST中で簡単に洗浄した。ARPE−19成長培地における組換えNTNのNTN産生細胞および希釈液のサンプルをその後にRET−AP順化培地(バイオゲン(Biogen)、米国)中1μg/mlのGFRα2/Fc融合タンパク質(R&D系、TriChem、デンマーク)を含むウェルで1.5時間、室温下にインキュベートした。次いで、ウェルを最初にPBST中で洗浄し、次にAPバッファー(200mM Tris(pH=9.8)、10mM MgCl2)で洗浄後、APバッファー中で10%サファイアエンハンサー(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)および2%CSPD(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で30分間のインキュベーションを行った。発光を定量化した。
【0234】
ウェスタンブロット
細胞をPBS中で洗浄し、96℃サンプルバッファー(2%SDS、0.4M Tris(pH=8.0)、10mMジチオスレイトール、および0.25Na3VO4)中で溶解した。メーカーの推奨(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)、デンマーク)に従ってMultiPhor II系を使用してSDS−PAGEを変性させることによってタンパク質を分離し、PVDF膜(バイオラード(BioRad)、デンマーク)にブロッティングした。膜の免疫染色のために、標準ウェスタンブロット法を使用した(Maniatis、XX)。ポリクローナルNTN#AF477抗体(R&Dシステムズ(Systems)、TriChem、デンマーク)を検出抗体として使用した。ECL系(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)、デンマーク)を使用して膜を展開し、フィルム露光にさらした。
【0235】
結果
IgSP要素は培養細胞からのNTN放出の大幅な増大を介在する
一時的にトランスフェクトした細胞から、IgSP発現ベクターは結果として、wtNTNおよびpp(GDNF)−NTNプラスミドと比べ、細胞培養上清へのNTN分泌の強い増大をもたらした。GDNFシグナルペプチドおよびプロペプチドの使用も、天然NTNシグナルペプチドと比べ分泌を改善したが、IgSP要素とは同程度ではなかった。NTN分泌に対するIgSPの好ましい効果は、NTNに対する抗体を使用する標準のELISA法によって(図4)、および機能的RetL2ELISAアッセイによって(図5)検出されたが、ここでNTNのその受容体、GFRα2との結合は、GFRコレセプターRetとの三元複合体の形成によって検出される。特に、野性型NTNのプレプロペプチドをGNDFのものと置換することによって、組換え細胞から豊富に発現されることが知られた因子は結果として、両方のELISAによって測定されたように、NTNタンパク質発現の明らかな増大をもたらさなかった。
【0236】
プロペプチド要素の欠如は細胞内NTNタンパク質処理に影響を及ぼすとみられる
トランスフェクト細胞の溶解物からのタンパク質を対照として組換えニュールツリンで変性ゲル電気泳動によって分離した。IgSP−NTNトランスフェクト細胞からの溶解物を装填したレーンにおいてのみ、組換えニュールツリンとサイズが同様のバンドが確認された(図6、6.4と21.3kDaマーカーとの間に位置したバンド)。wtNTNとpp(GDNF)−NTNトランスフェクト細胞の両方について、NTN抗体によって検出された顕著なタンパク質は、細胞からの組換えNTNおよびIgSPよりも大幅に高い分子量を有した。これは、IgSP−NTNがインビトロで相当に十分に発現される所見と併せて、wtNTNおよびpp(GDNF)−NTNではなく、IgSP−NTNが、細胞内機構によって分泌に対して正確に処理されることを示す。
【0237】
単離クローンからの高いNTN発現
NTNを安定に発現するARPE−19細胞は、pNS1n.IgSP.NTNでのトランスフェクションによって単離後、G418でクローンの選択を行った。NTN発現レベルの範囲は単離クローンから確認された(図7)。最も高い生成細胞、ARPE−19/pNS1n.IgSP.NTN#24は、2000ng NTN/105細胞/24時間まで生成した。
【0238】
実施例2:ニュールツリンによるラットのインビボ形質導入
材料と方法
レンチウイルスIgSP−NTN構成物の生成およびウイルス保存
レンチウイルス構成物を生成するために、IgSP−NTN断片(実施例1)を、BamHIおよびXhoIでGFPを切断し、代わりにBamHI/XhoI断片としてIgSP−NTNを挿入することによって、pHR’−CMV−GFP−W−SINへクローン化した(図8)。pHR’−CMV−GFP−W−SINは、自己不活性化レンチウイルス移入構成物の誘導体、WPRE要素を含むpHR’−SIN−18である(Dull et.al., J.Virol., 72(11):8463−71(1998); Zufferey et.al., J.Virol., 72(12):9873−80(1998): Zufferey et.al. J.virol., 73 (4):2886−92 (1999))。
【0239】
複製欠損LV−sC.IgSP.NTN.Wウイルス粒子は、pMD.G(VSV−G疑似タイピングベクター)およびpBR8.91(パッケージングベクター)とpHsC.IgSP.NTN.Wの293T細胞への同時トランスフェクションによって生成され(Zufferey et.al., Nat. Biotech., 15:871−75(1997))、transで必要なウイルスタンパク質を提供する。手短に言えば、10%FCS(Life Technologies, 10099−141)で補充した4.5g/lグルコースおよびグルタマックス(Life Technologies, 32430−027)を含むDMEM中で培養した293T細胞を、トランスフェクションの前日に、T75フラスコに接種する(2×106細胞/フラスコ)。各T75フラスコで細胞は、メーカーの指示に従いリポフェクタミン+を使用して、5μg pMD.G、15μg pBR8.91、および20μgの移入ベクターでトランスフェクトされる。細胞上清を含有するウイルスがトランスフェクションの2〜3日後に収集され、0.45μm酢酸セルロースまたはポリスルホンフィルタを通じてろ過滅菌され、50,000xgで90分間、4℃下に超遠心分離によって濃縮される。2回目の超遠心分離後、濃縮ウイルスペレットはDMEM中に再懸濁され、分割され、−80℃下に保存される。ウイルス力価を測定するために、逆転写(RT)活性が評価され(Cepko and Pear, Current Protocols in Molecular Biology, 9.13.5−6, supplement 36)、形質導入単位(TU)/mlが、基準として既知の形質導入活性を有するEGFPレンチウイルスを使用して測定されたRT活性から計算される。
【0240】
同様のウイルスバッチをヒトおよびマウスプレプロNTN、プレプロGDNF、およびGFPで作った。
【0241】
外科的方法
合計21匹の若年成体雌スプラグ・ドーレイ(Sprague−Dawley)ラット(B&Kユニバーサル(Universal)、ストックホルム、スウェーデン)を使用し、12時間明:暗サイクル下に収容し、ラットには食事と水を自由に与えた。ローゼンブラッド(Rosenblad)ら(2000年)に従ってウイルス注射および6−OHDA病変を行った。注射手順は図9に示されている。手短に言えば、イソフロウラン麻酔下(1.5〜2%)、GFP、hNTN、mNTN、IgSP−hNTN、またはGDNFに対するcDNAを有するrLVベクターを動物に注射した(n=6/群)。4回の沈殿(1×108t.u./mLの0.5μl/沈殿)を以下の配位で2本の針管に沿って線条体へ行った:AP=1.0mm、ML=2.6mm、DV1=5.0mm、DV2=4.5mm、およびAP=0.0mm、ML=3.7mm、DV1=5.0mm、DV2=4.5mm。歯バーを−3.3mmに設定した。rLV注射の14日後、動物を再麻酔し、10μlハミルトン(Hamilton)注射器で20μg 6−OHDA(シグマ(Sigma):遊離塩基として計算し、0.02%アスコルビン酸で補充した3μlの冷えた生理食塩水中に溶解)の単一沈殿を以下の配位で右線条体へ注射した:AP=1.0mm、ブレグマに対してML=3.0mm、硬膜に対してDV=5.0mm、および門歯バーを0.0mmに設定した。
【0242】
組織学
6−OHDA注射の21日後、動物をペントバルビタールナトリウムで深く麻酔し、1分間生理食塩水で心臓灌流した後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中冷えた4%PFA200mlで灌流した。脳を切開し、同じ固定剤中で3〜4時間、後固定し、次いで25%ショ糖/0.1Mリン酸緩衝液へ48時間移した。5組の40μm切片を凍結ミクロトーム上で切断した。ヤギ抗hNTNまたはヤギ抗hGDNF一次抗体(R&D系、2%正常ウマ血清および0.25%トリトンX−100を含有するリン酸緩衝生理食塩水中1:2000)で切片をインキュベートした後、ビオチン化ウマ抗マウス(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、米国)で2時間インキュベーションを行い、かつメーカーの指示(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、米国)に従って、アビジン−ビオチン複合体(ABC)キットによってhNTNおよびhGDNFの免疫組織化学を行った。最後に、色反応を色原体として3’3’−ジアミノベンジジンを使用して発現させた。
【0243】
結果
hNTNの免疫組織化学的局在:
hNTNに対して染色した切片の検査は、野性型hNTNコードレンチウイルスベクター注射(rLV−hNTN)を投与した動物の線条体において、形質導入された線条体細胞の近くで細胞外免疫反応は確認されなかった(図10)。その一方で、rLV−IgSPhNTNの注射を投与した動物は顕著な染色パターンを有し、免疫反応性物質が形質導入部位の周りの線条体において(細胞外に)散在性に広がった(図10)。
【0244】
hNTNの機能性:
hNTNの神経保護的効果を黒質TH+(ドーパミン作動性)ニューロンを計算することによって評価した。無傷側と比べると、6−OHDA病変およびrLV−GFPウイルスを投与した動物は、黒質に残存する明らかにわずかなTH+ニューロンを有した(23+/−3.4%)。rLV−hNTNを受けた動物は、TH+ニューロンにおける顕著な病変誘発削減も示した(30+/−7.7%残存)。それに反して、rLV−IgSPNTN処置群では、病変側のTH+ニューロンの数は無傷側の数の91+/−1.2%であり、これはGDNF治療を受ける群において確認されたもの(86+/−3.2%)と同様であった。
【0245】
実施例3:NTN発現構成物の調製
ベクター構成物。pHR’−CMV.SIN.hNTN.WPRE:野生型ヒトプレプロNTNを以下のようにpHR’−CMV.SIN−PLT7.WPREクローン化した。すなわち、(Zufferey et.al. 1998; Zufferey et.al., 1999)のようにウッドチャック(Woodchuck)調節後要素(WPRE)を含有するpHR’−CMV−SIN−18の誘導体であるpHR’−CMV.SIN−PLT7.WPREを、BamHIとXhoI部位との間のポリリンカー部位の添加によって(未公表結果)、BamHIおよびXhoIで消化した。ヒトプレプロNTNをベクターpJDM2174(=pBluescriptにおけるヒトプレプロNTN)(ジェフ・ミルブラント(Milbrandt)から寄贈)からBamHI、XhoI断片として切断し、BamHI/XhoI消化レンチウイルス移入ベクターへライゲートした。ヒトプレプロNTNを対照として使用した。
【0246】
pNS1n.hNTN:実施例1に記載されているように調製した。
【0247】
pNS1n.ppGDNF.hNTN:GDNFのプレプロ領域を以下のプライマーを使用して完全長ヒトGDNFクローンからPCR増幅した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGAATTCGCCACCATGAAGTTATGGGATGTCG−3’(配列番号58)、および3’プライマー:5’−CCAACCGCGCCCTTTTCAGTCTTTTAATGG−3’(配列番号59)。3’プライマーは、3’末端における成熟NTNの5’末端の10個の塩基を含有する。成熟ヒトNTNを以下のプライマーを使用してヒト完全長NTN(pJDM2174)からPCR増幅した。すなわち、5’プライマー: 5’−ACTGAAAAGGGCGCGGTTGGGGGCGCGGCCT−3’(配列番号60)、および3’プライマー:5’−TAGACTCGAGGTCGACGGTATC−3’(配列番号61)。5’プライマーは、ヒトGDNFのプロ領域の3’末端の10個の塩基を含有する。プレプロGDNFを以下のプライマーを使用して重複型PCRによって成熟NTNに融合した。すなわち、5’プライマー:5’− TATAGAATTCGCCACCATGAAGTTATGGGATGTCG−3’(配列番号58)、および 3’プライマー:5’−TAGACTCGAGGTCGACGGTATC−3’(配列番号61)。結果として生じるプレプロGDNF成熟NTN断片をEcoRIおよびXhoIで消化し、発現ベクターpNS1n(上記)のEcoRIとXhoI部位間に挿入した。ヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドは図14に示されている。
【0248】
pHR’−CMV.SIN.IgSP.NTN.WPREおよびpNS1n.IgSP.NTN:マウス免疫グロブリン重鎖遺伝子V−領域(GenBank acc. #:M18950)(IgSP)からのシグナルペプチドを、以下のプライマーを使用してpNUT−IgSP−hCNTF(米国特許第6,361,741号明細書を参照)からPCR増幅した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGGATCCGCCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATC−3’(配列番号56)、3’プライマー:5’−CCAACCGCGCCGAATTCACCCCTGTAGAAAG−3’(配列番号57)。3’プライマーは、ヒト成熟NTN配列の5’末端から10個の塩基を含有する。ヒト成熟NTNを、以下のプライマーを使用して完全長成熟NTN(pNS1n.NTNゲノム、実施例1を参照)を含有するヒトNTNのゲノムクローンからPCR増幅した。すなわち、5’プライマー:5’−GGTGAATTCGGCGCGGTTGGGGGCGCGGCCT−3’(配列番号54)、および3’プライマー:5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’(配列番号55)。5’プライマーは、IgSP配列の3’末端から10個の塩基を含有する。IgSPヒト成熟NTN配列をテンプレートとしてIgSPおよびヒト成熟NTNPCR断片(上記)および以下のプライマーを使用して重複型PCRによって生成した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGGATCCGCCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATC−3’(配列番号56)、および3’プライマー:5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’(配列番号55)。ヒト成熟NTNに融合したIgSPを含有する最後のPCR断片をBamHIとXhoIで消化し、pHR’−CMV.SIN−PLT7.WPRE(上記)とpNS1n(上記)のBamHIとXhoI部位との間でクローン化した。ヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドは図13に示されている。
【0249】
pNS1n−dプロNTN:ヒトデルタ−プロNTN DNA配列をテンプレートとして完全長成熟NTN(pNS1n.NTNゲノム、実施例1を参照)のゲノムクローンおよび以下のプライマーを使用して1つのPCR反応において生成した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGGATCCGCCACCATGCAGCGCTGGAAGGCGGCGGCCTTGGCCTCAGTGCTCTGCAGCTCCGTGCTGTCCGCGCGGTTGGGGGCGCGG−3’(配列番号62)、および3’プライマー:5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’(配列番号55)。デルタプロNTN PCR断片をBamHIとXhoIで消化し、pNS1nのBamHIとXhoI部位との間でクローン化した(上記)。デルタプロNTNのヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドは図14に示されている。
【0250】
レンチウイルスベクターの製造。複製欠損ウイルス粒子を、異なる移入ベクター構成物の各々をpMD.G(VSV−G疑似タイピングベクター)およびpBR8.91(パッケージングベクター)(Zufferey et.al.,1997)と293T細胞への同時トランスフェクションによって生成し、transで必要なウイルスタンパク質を提供した。手短に言えば、10%FCS(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))で補充した4.5g/lグルコースおよびグルタマックス(Glutamax)(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen))を含むDMEM中で培養した293T細胞を、トランスフェクションの前日に、20本のT75フラスコに接種した(2×106細胞/フラスコ)。各T75フラスコで細胞は、メーカーの指示に従いリポフェクタミン+(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen))を使用して、5μg pMD.G、15μg pBR8.91、および20μgの移入ベクターでトランスフェクトした。細胞上清を含有するウイルスをトランスフェクションの2〜3日後に収集し、0.45μm酢酸セルロースまたはポリスルホンフィルタを通じてろ過滅菌し、50,000xgで90分間、4℃下に超遠心分離によって濃縮した。2回目の超遠心分離後、濃縮ウイルスペレットをDMEM中に再懸濁し、分割し、−80℃下に保存した。ウイルス力価を測定するために、逆転写(RT)活性を評価し(Cepko and Pear, Current Protocols in Molecular Biology, 9.13.5−6, supplement 36)、形質導入単位(TU)/mlを 基準として既知の形質導入活性を有するEGFPレンチウイルスを使用して測定されたRT活性から計算した。
【0251】
実施例4:発現NTNタンパク質の分析。
細胞培養。自然に発生するヒト網膜色素上皮細胞系(Dunn et.al. 1996)であるARPE−19を10%ウシ胎仔血清(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)で補充したグルタマックス(Glutamax)とのDMEM/栄養ミックスF−12(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)で構成された培地中で成長させ、HEK293およびCHO細胞を10%ウシ胎仔血清(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)を有するDMEM(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)で成長させ、CHO細胞用の培地にはさらに20mg/L Lプロリンを補充した。ARPE−19細胞は、ATCC(受入番号CRL−2302)から入手可能である。ARPE−19、HEK293、およびCHO細胞を37℃下に成長し、HiB5細胞を5%CO2中33℃下に成長させた。
【0252】
一時的トランスフェクション試験。細胞を6ウェルプレート(コーニング・コスター(Corning Costar)、バイオテック・ライン(Biotech Line)、デンマーク)に105細胞/ウェルの密度で接種した。翌日、異なる発現プラスミドで三重のウェル中で細胞をトランスフェクトした。ARPE−19細胞はFugene6および3μgプラスミド/ウェルを使用してトランスフェクトしたが、その他の3つの細胞系は、メーカーに指示に従って2μgプラスミド/ウェルおよびリポフェクタミン・プラス(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)を使用して三重のウェル中でトランスフェクトした。翌日、新鮮成長培地をウェルに添加し、馴化培地を収集し、細胞を回収する前にさらに24時間、細胞をインキュベートした。EGFP用のcDNAを含有する同じベクターと平行にトランスフェクトしたウェルにおけるEGFP発現の評価によって、十分なトランスフェクション効率を確実にした。
【0253】
NTNウェスタンブロット。細胞をPBS中で洗浄し、96℃ホットサンプルバッファー(2%SDS、100mM DTT、60mM Tris、pH7.5、ブロムフェノールブルー)中で溶解した。5倍濃縮サンプルバッファーを馴化培地に添加した。一部の実験では、NTNを馴化培地からGFRα2によって捕獲した。これは、50mM Na2CO3/NaHCO3、pH9)中でヤギ抗ヒトFc(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、米国))でコーティングされていたELISAプレート中3時間サンプルを一夜インキュベートした後、PBS中1%BSA中で1時間ブロックし、その後に0.1%HSAとともにPBS中GFRα2−Ig融合タンパク質(R&D系、英国)で1時間インキュベートすることによって行われた。サンプルによるインキュベーション後、ウェルをPBST中で洗浄し、96℃サンプルバッファーを添加した。サンプルを5分間煮沸し、次いでPVDF膜にエレクトロブロットされた8〜18%勾配SDSゲル上で電気泳動した。1:500に希釈したポリクローナルNTN抗体(#AF477、R&D系、英国)の後、HRP連結抗ヤギ抗体を使用してNTNを検出した。ECL+系(アマシャム・ライフ・ライフサイエンス(Amersham Life Science))を使用する化学発光によってバンドを検出した。
【0254】
GFRa2/GFRa1 ELISA。GFRα2ELISAにより、GFRα2受容体と結合されたNTNの複合体とのRetアルカリホスファターゼ(Ret−AP)接合体(Sanicola et.al. 1997)の結合が検出される。手短に言えば、Opti−plateプレート(パッカード・インスツルメンツ(Packard Instruments)、Perkin Elmer、デンマーク)を50mM NaHCO3(pH=9.6)中100μl 1μg/mlヤギ抗ヒトFc(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ(Jackson Immunoresearch Laboratories)、TriChem、デンマーク)で16時間、4℃下にコーティングした。PBST中で洗浄後、PBST中0.2%I−Block(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で1時間、室温下にブロックした後、PBST中で簡単に洗浄した。ARPE−19成長培地における組換えヒトNTN(R&Dシステムズ(Systems)英国)のNTN産生細胞および標準希釈液のサンプルをその後に、RET−AP融合タンパク質発現293EBNA細胞(バイオゲン(Biogen)Idec、米国から寄贈)からの馴化培地中1μg/mlのGFRα2/Fc融合タンパク質(R&Dシステムズ(Systems)英国)を含むウェルで1.5時間、室温下にインキュベートした。次いで、ウェルを最初にPBST中で洗浄し、次にAPバッファー(200mM Tris(pH=9.8)、10mM MgCl2)で洗浄後、APバッファー中で10%サファイアエンハンサー(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)および2%CSPD(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で30分間のインキュベーションを行った。マイクロベータ・トリルック・カウンタ(Microbeta Trilux Counter)(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、デンマーク)を使用して発光を定量化した。馴化培地でのGFRα1との結合活性を同様に測定したが、ただし、GFRα2/Fcの代わりに1μg/mlのGFRα1/Fc融合タンパク質(R&D系、英国)を添加した。サンプル中の相対GFRα2結合活性を、組換えNTNの標準曲線を使用し、かつ1に設定したwt構成物でトランスフェクトした細胞からの値で計算した。
【0255】
NTN ELISA。Maxisorpプレート(ヌンク(Nunc)、デンマーク)を1μg/mlのモノクローナル抗ヒトNTN抗体(#MAB387、R&Dシステムズ(Systems)、英国)でコーティング溶液(2.5mM Na2CO3/2.5mM NaHCO3、pH=8.2)中、16時間4℃下のインキュベーションによってコーティングした。PBST(PBS中0.05%Tween−20(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)中での洗浄後、ウェルをブロッキングバッファー(PBS中1%ウシ血清アルブミン(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)および5%ショ糖)中、1時間、室温下にブロックした。PSBST中での洗浄後、NTN産生細胞からの希釈培地サンプルで3時間、室温下にインキュベートした。組換えNTN(#387−NE、R&Dシステムズ(Systems)、英国)を標準として使用した。ブロッキングバッファー中の1μg/mlポリクローナル抗ヒトNTN抗体(#AF387、R&Dシステムズ(Systems)、英国)をウェルに添加し、16時間4℃下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、1%正常マウス血清(DAKO、デンマーク)で補充したブロッキングバッファー中0.02%抗ヤギHRP(DAKO、デンマーク)中でウェルを2時間、室温下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、TMB基質溶液(プロメガ(Promega)、Ramcon、デンマーク)を添加し、15分後の1N HClの添加によって色形成を停止した。ELK−800プレートリーダー(Cambrex、デンマーク)を使用してA450を測定した。
【0256】
インビトロでのNTNの発現。ヒトNTNは197アミノ酸(aa)プレプロタンパク質を19aa推定シグナルペプチドの後、76aaのプロ領域でコードする。プロNTNは配列RXXRでタンパク質分解的に開裂され、102aaの成熟NTNを生成する。活性NTNの分泌に対するプレプロ部の影響を特徴づけるために、発明者は異なる構成物を作った(図15A)。生物学的に活性のGDNFがトランスフェクション後にさまざな細胞型から容易に分泌されるため、GDNFのプレプロ部を有するNTN構成物を作った(ppG−NTN)。また、プロ部がない2つの構成物が確立され、1つはwtNTNシグナルペプチド(dpro−NTN)を有し、1つはIgSP(IgSP−NTN)を有する。DNA構成物を哺乳類発現ベクターpNS1nへサブクローン化し、一時的にHEK293細胞、CHO細胞、ラット海馬細胞系HiB5、またはヒト網膜上皮細胞系ARPE−19へトランスフェクトした。NTNに対する抗体を使用するウェスタンブロットを細胞溶解物および馴化培地で行った。図15Bは、HEK293細胞からの結果を示す。同様の結果はその他の3つの細胞系で得られた(データは示さず)。wtNTNでトランスフェクトされた細胞において、サイズがモノマープロNTNに対応するバンド(〜22kDa)が細胞溶解物および馴化培地において検出された。GDNFプロ領域を有するNTNに対応する、より小さなサイズのバンド(〜19.6kDa)が、ppG−NTNでトランスフェクトされた細胞からの細胞溶解物および馴化培地で確認された。したがって、NTNのプロ形態は発現され、分泌されるが、試験細胞系において検出可能なレベルで処理されない。dpro−NTNまたはIgSP−NTNでトランスフェクトされた細胞において、サイズが成熟モノマーNTNに対応するバンド(〜12.5kDa)が溶解物および馴化培地で確認された。NTNのレベルは、wtNTN SPよりもIgSPによる構成物を使用すると明らかに高かった。
【0257】
次いで、発明者は、NTNのその受容体、GFRα2との結合がGFRαコレセプターRetとの三元複合体の形成によって検出される機能的アッセイを使用して馴化培地におけるNTNのレベルを試験した(図15C)。wtNTNまたはppG−NTNでトランスフェクトされた細胞からの馴化培地は、低レベルの活性NTNを示した(HEK293、ARPE−19、HiB5、およびCHO細胞において、それぞれ、7.5±0.6ng/ml、1.5±0.9ng/ml、38.6±3.3ng/ml、および18.3±1.7ng/ml)。しかし、サンプルにおけるGFRα2結合活性は、drop−NTN構成物を使用すると増大した(HEK293、ARPE−19、HiB5、およびCHO細胞において、それぞれ、90±19、117±13、7.5±1.7、および4.1±0.9倍高いNTN結合)。ウェスタンブロットの結果に一致して、NTN活性はIgSP−NTN構成物を使用するとさらに増強された(HEK293、ARPE−19、HiB5、およびCHO細胞において、それぞれ、278±13、771±50、162±29、および66±18倍高いNTN結合)。同様の結果は、GFRα1コレセプターによるアッセイを行うと得られた(データは示さず)。pNS1n−EGFPで一時的にトランスフェクトした細胞からの細胞上清は、アッセイの特異性を確認する検出不能なNTN活性を示した(データは示さず)。発明者は、馴化培地からのNTNがGFRα2−IgコートELISAプレートと結合していたサンプルでNTNウェスタンブロットを行った。この結合ステップを加えると、NTNのプロ形態は検出されなかったが、成熟NTNのサイズのバンドが、IgSP構成物でトランスフェクトした細胞からのサンプルで確認され、dpro−NTNベクターを使用すると程度は低かった(図15D)。また、異なるNTN構成物でトランスフェクトした細胞からの馴化培地でのNTNサンドイッチELISAを行った。モノクローナルNTN抗体を使用し、ELISAプレート上でNTNを捕獲し、その後にポリクローナルNTN抗体を使用して捕獲NTNを検出した。両抗体は、ウェスタンブロットに使用されるとNTNのプロ形態を認識したが、図15Eに示されているように、NTNプロ形態はNTN ELISAにおいて検出されなかった。この所見は、NTNのプロ部が固有の折畳みNTNとの抗体の結合を阻止するが、変性NTNとの結合は阻止しないことを示す。NTNサンドイッチELISAにより、wtNTN SPをIgSPと交換すると馴化培地でのNTNのレベルが増強することが確認された(細胞系によって2〜8倍)。
【0258】
実施例5:パーキンソン病モデルにおけるインビボ遺伝子治療。
外科的方法。合計24匹の若年成体雌スプラグ・ドーレイ(Sprague−Dawley)ラット(Mollegaarden、デンマーク)を使用し、12時間明:暗サイクル下に収容し、ラットには食事と水を自由に与えた。わずかな変更を含むローゼンブラッド(Rosenblad)ら(2000年)に従ってウイルス注射および6−OHDA病変を行った。手短に言えば、イソフロウラン麻酔下(1.5〜2%)、GFP、hNTN、IgSP−hNTN、またはGDNFに対するcDNAを有するrLVベクター(3×105TU/動物)を動物に注射した(n=5〜7/群)。4回の沈殿(0.75μl/沈殿)を以下の配位で2本の針管に沿って線条体へ行った:AP=1.0mm、ML=−2.6mm、DV1=−5.0mm、DV2=−4.5mm、およびAP=0.0mm、ML=−3.7mm、DV1=−5.0mm、DV2=−4.5mm。歯バーを−2.3mmに設定した。rLV注射の14日後、動物を再麻酔し、10μlハミルトン(Hamilton)注射器で20μg 6−OHDA(シグマ(Sigma):遊離塩基として計算し、0.02%アスコルビン酸で補充した3μlの冷えた生理食塩水中に溶解)の単一沈殿を以下の配位で右線条体へ注射した:AP=0.5mm、ML=−3.4mm、硬膜に対してDV=−5.0mm、および歯バーを0.0mmに設定した。注射速度は、1μl/分であり、回収前にさらに3分間、ガラスピペットを適所に放置した。
【0259】
アンフェタミン誘導回転。rLV注射後10日目、およびさらに6−OHDA注射の4週間後、ラットに対しアンフェタミン(2.5mg/kg、メコベンゾン(Mecobenzon)、デンマーク)を注射し、90分にわたって自動ロトメータボウル(rotometer bowl)における回転反応をモニタリングした。回転非対称スコアは毎分正味90°の回転で表され、同側回転(すなわち、注射部位に向かって)を正値とした。
【0260】
組織学。6−OHDA注射の28日後、動物をペントバルビタールナトリウムで深く麻酔し、1分間生理食塩水で心臓灌流した後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中冷えた4%PFA200mlで灌流した。脳を切開し、同じ固定剤中で3〜4時間、後固定し、次いで25%ショ糖/0.1Mリン酸緩衝液へ48時間移した。6組の40μm切片を凍結ミクロトーム上で切断した。以前に記載されているように(Rosenblad et.al., 2003)免疫組織化学を行った。手短に言えば、2%正常ウマまたはブタ血清および0.25%トリトンX−100を含有するリン酸緩衝生理食塩水中で1:2000に希釈したヤギ抗hNTNまたはヤギ抗hGDNF一次抗体(R&D系、英国)、1:2000に希釈したチキン抗GFP、マウス抗TH、またはウサギ抗VWAT抗体(ケミコン(Chemicon)でインキュベートした後、適切なビオチン化二次抗体(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、米国)で2時間インキュベーションを行い、かつメーカーの指示(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、米国)に従って、アビジン−ビオチン複合体(ABC)キットによって行った。最後に、色反応を色原体として3’3’−ジアミノベンジジンを使用して発現させた。
【0261】
形態学的分析。SNにおけるTHまたはVMAT免疫反応性細胞の数の定量化。ブラインデッド観察者が、以前に記載されているように(Sauer and Oertel, 1994)、黒質緻密部における免疫反応性ニューロンの数を評価した。手短に言えば、副視神経路の内側終核のレベルに集中した3つの連続切片(MTN, −5.3 in the atlas of Paxinos and Watson, 1997)を使用し、MTNの側方にある全染色ニューロンを40倍の倍率で計算した。細胞数は、無傷側における数のパーセンテージの平均±S.E.M.で表されている。
【0262】
線条体線維密度測定。線条体DA神経支配をTHに対して染色した切片における3つの吻側尾側レベルで線条体の光学密度(OD)を測定することによって評価した。オリンパス(Olympus)DP50デジタルカメラおよび一定照明テーブルを使用し、デジタル画像を収集した。無傷および病変側でのODをスキャンイメージ(ScanImage)バージョン4.02ソフトウェアを使用して測定した。各切片の脳梁をバックグラウンド染色の基準として使用した。
【0263】
ラット6−OHDA病変モデルにおけるインビボ神経防護作用。次に、発明者は、IgSP−NTN構成物もインビボで活性NTNの持続的分泌をどの程度示しうるか調査することを求めた。したがって、発明者は、wtプレプロNTNをコードする組換えレンチウイルスベクター(rLV−wtNTN)およびIgSP−NTNをコードする組換えレンチウイルスベクター(rLV−IgSPNTN)を生成し、それらによって、NTNタンパク質注射がDAニューロンの喪失を阻止することが以前に証明されている(Horger et.al, 1998; Rosenblad et.al, 1999)PDの動物モデルにおける神経防護作用が得られるかどうかを試験した。グリーン蛍光タンパク質(GFP、rLV−GFP)またはGDNF(rLV−GDNF)をコードするベクターを、それぞれ陰性および陽性の対照ベクターとして使用した。
【0264】
導入遺伝子発現の免疫組織化学的局在
rLV−GFP処置動物からの切片の検査は、尾状核被殻の中心頭部において、約2×0.5mmの形質導入細胞の柱を示した(図16A)。形質導入細胞の大部分は、線条体の中程度の棘状突起ニューロンの形態を有した。星状膠細胞形態を有する小規模の細胞が線条体で確認され、付加脳梁では乏突起膠細胞が確認された。GFP発現細胞は、明確な細胞内発現パターンを示した。その一方で、rLV−GDNFで処置し、GDNF免疫組織化学のために処理した動物からの線条体および黒質の切片は、線条体におけるびまん性染色を示したが、これは形質導入細胞からのGDNFの分泌と一致する(図16C)。rLV−wtNTN注射を投与した動物において、NTN免疫組織化学はrLV−wtNTN形質導入線条体細胞の近くで細胞外免疫反応を示さなかった(図16B)。高倍率では、点状細胞質染色を有するわずかなNTN免疫反応性細胞が注射経路に沿って確認された(図16E)。その一方で、rLV−IgSP−NTNを投与した動物は、線条体における顕著なびまん性染色(細胞外)を有し(図16D)、これはGDNF処置動物において確認されたものと同様であり、分泌と一致する。NTN免疫反応性細胞プロフィールもrLV−IgSP−NTN注射動物において確認されたが、免疫反応性物質の大部分は細胞外に位置していた(図16F)。rLV−GDNFおよびrLV−IgSPNTNを投与した動物において、黒質網様部におけるそれぞれの抗体による顕著な標識が認められた(データは示さず、図16G)。免疫反応性線維の高密度網状組織は、それらが吻方に線条体に誘導されうるように明らかに黒質突起に由来した。この結果は、GDNFについてすでに記載されているように(Rosenblad et.al. 1999)、NTNが黒質経路内で線条体から順行性に輸送されうることを示す。
【0265】
線条体内6−OHDA病変後4週間の時点で、残存するドーパミン作動性黒質ニューロンの数をTHを発現するニューロンを計算することによって評価した(図17Aおよび図18)。対照のrLV−GFP処置動物では明らかに少ないTH免疫反応性(IR)ニューロンが、無傷対側部位と比べ、病変側の黒質(23±3.4%)で確認された(図17Aおよび18D)。同様に、rLV−NTNを投与した動物(図17Aおよび18B)は、TH−IRニューロンにおける顕著な病変誘導削減を示した(30±7.7%残存)。その一方で、rLV−IgSPNTN処置群は病変側での有意に高いパーセンテージのTH−IRニューロンを有し(91±1.2%、p<0.01)(図17Aおよび18C)、これはGDNF治療を受けた群において確認されたもの(86±3.2%、p<0.01)(図17Aおよび18H)と区別がついた。
【0266】
TH−IR黒質ニューロンの数の差がTH酵素の調節によるものではなかったことを確認するために、発明者は、隣接した部分において、これらの神経栄養因子による調節を受けにくいことが証明されているVMAT−IRニューロンの数を定量化した(Rosenblad et.al, 2003; Georgievska et.al, 2002; Kirik et.al, 2001)。図17Bに示されているように、rLV−IgSPNTNまたはrLVGDNFによる形質導入は、rLV−GFPまたはrLV−NTN処置動物(それぞれ、15.5±2.4%、および24.9±6.4%)と比べ、病変側で黒質におけるVMAT−IRニューロンの数を大幅に保存した(それぞれ、無傷側におけるそれの75.2±6.8%、および59.9±4.2%)が、これはTH染色で確認された結果に対応する。
【0267】
黒質におけるTH−IRおよびVMAT−IRニューロンの保護に加えて、rLV−IgSPNTN処置動物からの試料において、TH染色強度が、無傷側のTH−IRニューロン(図18E)、またはrLV−GFPまたはrLV−wtNTN処置動物の病変側(図18F)と比べ、多くの残存する黒質ニューロンが減少した(図18G)ことが注目された。TH染色強度の削減もGDNFによる治療後に確認されたが、これは以前の報告(Georgievska et.al, 2002)と一致し、この現象に精通しているが、試料にはブラインデッドの観察は、IgSPNTN処置動物における「GDNF様」削減をGDNF投与後に見られるものと区別することはできなかった。
【0268】
TH免疫組織化学のために処理された線条体部分の検査は、全群において中心および外側尾状核被殻が6−OHDA注射側でTH−IR線維を欠いていることを示した。病変側でのTH−IR神経支配の密度定量化は、15〜25%が4週間時点で残存していることを示した。これは線条体内6−OHDA病変モデルにおける初期の試験(Rosenblad et.al, 1999; Georgievska et.al, 2002)と合致し、TH−IR線条体神経支配の回復が病変の発現後4週間以上かかることを示している。一貫して、線条体におけるドーパミン除神経の高感度尺度として使用されうる(Kirik et.al, 1998)アンフェタミン誘導回転は、病変後4週間の時点で治療群のいずれの間にも同側回転の数における有意差を示さなかった(4.5±1.5〜13.4±3.3正味同側回転/分、p>0.05反復測定2元配置分散分析ANOVA)。ウイルス形質導入後10日、ただし6−OHDA病変前の時点で評価されたアンフェタミン誘導回転は、rLV−GFPまたはrLV−NTN群(それぞれ、0.1±0.9および−0.1±1.6)と比べ、IgSP−NTN群(3.3±1.5)およびGDNF群(1.9±1.3)におけるわずかであるが非有意ではない対側回転の偏りを示したが、これはGDNF治療後に起こることが以前に報告された(Georgievska et.al, 2002; Georgievska et.al, 2003)ものと同様のIgSP−NTN形質導入側でのDA機能のアップレギュレーションと一致する。
【0269】
総合すれば、発明者の結果は、レンチウイルスベクターからのNTNの分泌が、プロ領域の除去、および野生型シグナルペプチドの異種ペプチドでの置換によって大幅に強化されうることを示す。活性NTNの分泌の強化は、形質導入された線条体細胞においてインビボでも確認され、GDNFについて以前に報告されているものと同様のレンチウイルス送達法を使用し、インビボで病変黒質ドーパミンニューロンの効率的な神経保護を初めて可能にした。
【0270】
文献リスト(実施例3〜5)
DUNN, K. C., A. E. AOTAKI−KEEN, F. R. PUTKEY, and L. M. HJELMELAND. 1996. ARPE−19, a human retinal pigment epithelial cell line with differentiated properties. Exp.Eye Res. 62: 155−169.
GEORGIEVSKA, B., D. KIRIK, and A. BJORKLUND. 2002. Aberrant sprouting and downregulation of tyrosine hydroxylase in lesioned nigrostriatal dopamine neurons induced by long−lasting overexpression of glial cell line derived neurotrophic factor in the striatum by lentiviral gene transfer. Exp.Neurol. 177: 461−474.
GEORGIEVSKA, B., D. KIRIK, and A. BJORKLUND. 2004. Overexpression of glial cell line−derived neurotrophic factor using a lentiviral vector induces time− and dose−dependent downregulation of tyrosine hydroxylase in the intact nigrostriatal dopamine system. J.Neurosci. 24: 6437−6445.
HORGER, B. A., M. C. NISHIMURA, M. P. ARMANINI, L. C. WANG, K. T. POULSEN, C. ROSENBLAD, D. KIRIK, B. MOFFAT, L. SIMMONS, E. JOHNSON, JR., J. MILBRANDT, A. ROSENTHAL, A. BJORKLUND, R. A. VANDLEN, M. A. HYNES, and H. S. PHILLIPS. 1998. Neurturin exerts potent actions on survival and function of midbrain dopaminergic neurons. J.Neurosci. 18: 4929−4937.
KIRIK, D., B. GEORGIEVSKA, C. ROSENBLAD, and A. BJORKLUND. 2001. Delayed infusion of GDNF promotes recovery of motor function in the partial lesion model of Parkinson’s disease. Eur.J.Neurosci. 13: 1589−1599.
KIRIK, D., C. ROSENBLAD, and A. BJORKLUND. 1998. Characterization of behavioral and neurodegenerative changes following partial lesions of the nigrostriatal dopamine system induced by intrastriatal 6−hydroxydopamine in the rat. Exp.Neurol. 152: 259−277.
RENFRANZ, P. J., M. G. CUNNINGHAM, and R. D. MCKAY. 1991. Region−specific differentiation of the hippocampal stem cell line HiB5 upon implantation into the developing mammalian brain. Cell 66: 713−729.
ROSENBLAD, C., B. GEORGIEVSKA, and D. KIRIK. 2003. Long−term striatal overexpression of GDNF selectively downregulates tyrosine hydroxylase in the intact nigrostriatal dopamine system. Eur.J.Neurosci. 17: 260−270.
ROSENBLAD, C., M. GRONBORG, C. HANSEN, N. BLOM, M. MEYER, J. JOHANSEN, L. DAGO, D. KIRIK, U. A. PATEL, C. LUNDBERG, D. TRONO, A. BJORKLUND, and T. E. JOHANSEN. 2000. In vivo protection of nigral dopamine neurons by lentiviral gene transfer of the novel GDNF−family member neublastin/artemin. Mol.Cell Neurosci. 15: 199−214.ROSENBLAD, C., D. KIRIK, B. DEVAUX, B. MOFFAT, H. S. PHILLIPS, and A. BJORK−LUND. 1999. Protection and regeneration of nigral dopaminergic neurons by neurturin or GDNF in a partial lesion model of Parkinson’s disease after administration into the striatum or the lateral ventricle. Eur.J.Neurosci. 11: 1554−1566.
SANICOLA, M., C. HESSION, D. WORLEY, P. CARMILLO, C. EHRENFELS, L. WALUS, S. ROBINSON, G. JAWORSKI, H. WEI, R. TIZARD, A. WHITTY, R. B. PEPINSKY, and R. L. CATE. 1997. Glial cell line−derived neurotrophic factor−dependent RET activation can be mediated by two different cell−surface accessory proteins. Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 94: 6238−6243.
SAUER, H. and W. H. OERTEL. 1994. Progressive degeneration of nigrostriatal dopamine neu−rons following intrastriatal terminal lesions with 6−hydroxydopamine: a combined retrograde tracing and immunocytochemical study in the rat. Neuroscience 59: 401−415.
ZUFFEREY, R., J. E. DONELLO, D. TRONO, and T. J. HOPE. 1999. Woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element enhances expression of transgenes delivered by ret−roviral vectors. J.Virol. 73: 2886−2892.
ZUFFEREY, R., T. DULL, R. J. MANDEL, A. BUKOVSKY, D. QUIROZ, L. NALDINI, and D. TRONO. 1998. Self−inactivating lentivirus vector for safe and efficient in vivo gene delivery. J.Virol. 72: 9873−9880.
ZUFFEREY, R., D. NAGY, R. J. MANDEL, L. NALDINI, and D. TRONO. 1997. Multiply attenuated lentiviral vector achieves efficient gene delivery in vivo. Nat.Biotechnol. 15: 871−875.
【0271】
実施例6.シグナル(Signal)P 3.0を使用するシグナルペプチド処理予測
シグナルPバージョン3.0を使用するシグナルペプチド開裂の位置の予測。予測は、デルタプロNTN、IgSP−NTN、およびさまざまな成長因子からのシグナルペプチドを有するNTNを使用して行われた。
【0272】
【表3】
【0273】
【表4】
【0274】
【表5】
【0275】
【表6】
【0276】
【表7】
【0277】
【表8】
【0278】
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】さまざまな哺乳類のIgSP配列の配置を示す。
【図2】さまざまな神経栄養因子からのシグナル配列の表を示す。
【図3】pNS1nIgSP.NTNプラスミドマップを示す。
【図4】野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンのサンドイッチELISAを示す。
【図5】野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンの機能的RetL2 ELISAアッセイを示す。
【図6】野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞の溶解物からのニュールツリン調製物のウェスタンブロットを示す。
【図7】ニュールツリンを安定に発現するARPE−19細胞によって産生されるニュールツリン量の定量化を示す。
【図8】pHR’−sC.IgSP−hgNTN.Wベクターマップ、インビボ遺伝子治療試験に使用されるレンチウイルスベクターを示す。
【図9】レンチウイルスベクターまたは6−OHDAの線条体内注射を示す。
【図10】レンチウイルスベクターで形質導入され、その後にヒトNTNまたはヒトGDNFに対する抗体を使用する免疫組織化学のために処理されたラットの線条体の冠状断面を示す。
【図11】rLV−IgSPNTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用を示す。
【図12】デルタプロニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号15)およびコードされるポリペプチド(配列番号16)を示す。
【図13】IgSPニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号17)およびコードされるポリペプチド(配列番号18)を示す。
【図14】プレプロGDNFニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号50)およびコードされるポリペプチド(配列番号51)を示す。
【図15−1】(A)wtプレプロNTN、GDNFからのプレプロ部を有するNTN(ppG−NTN、配列番号50))、dプロNTN(配列番号15)、およびIgSP−NTN(配列番号17)を含むNTN発現構成物を示す。(B)トランスフェクトされたHEK293細胞からの溶解物およびならし培地のNTNウェスタンブロット。矢印は、それぞれ、wtプロNTN、プロ(GDNF)−NTN、および成熟NTNのサイズのバンドを示す。(C)NTN構成物でトランスフェクトされた4種類の細胞系からのならし培地におけるNTNのGFRa2結合活性を示す。
【図15−2】(D)溶解物(GFRa2に結合されていない)、およびGFRa2に結合したならし培地からのNTNのNTNウェスタンブロットを示す。(E)NTN構成物でトランスフェクトされた4つの細胞系からのならし培地でのNTNサンドイッチELISAを示す。
【図16】レンチウイルス構成物の線条体内注射後の導入遺伝子のインビボ発現を示す。
【図17】rLV−IgSP−NTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用を示す。
【図18】GFP、NTN、IgSP−NTN、およびGDNF処置動物の黒質緻密部の冠状断面を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2003年10月20日に出願されたデンマーク特許出願第DKPA200301543号明細書の優先権を請求する。これは2003年10月22日に出願された米国仮特許出願第60/512,918号明細書の利益を請求する。同出願および本出願における引例はすべて出典明示によりその全体を本明細書の一部とする。
【0002】
(技術分野)
本発明は、遺伝子治療、特に、パーキンソン病の治療のために生物活性ニュールツリンを送達するインビボ遺伝子治療のための方法および組成物に関する。別の態様においては、本発明は、シグナルペプチドとニュールツリンとの間の機能的プロ領域なしに成熟またはN末端切断ニュールツリンに連結された哺乳類シグナルペプチドを含んで成るウイルス発現構成物に関する。これらのウイルス発現構成物は、インビボ遺伝子治療における生物活性ニュールツリンの効率的な分泌に必要である。本発明は、多量のニュールツリンを産生することが可能な哺乳類細胞、および生物活性ニュールツリンの組換え産生および治療的使用のためのこれら細胞の使用にも関する。
【0003】
(従来技術)
パーキンソン病(PD)は、100万〜150万人のアメリカ人を苦しめる壊滅的な神経変性障害である。35,000以上の新しい症例が毎年診断されている。パーキンソン病の発生率は、50歳以上の群で最も高いが、驚くべき数の新しい症例が若い患者において報告されている。
【0004】
パーキンソン病の基本的な特徴は動作緩慢(運動緩徐)、手、腕、顎、および顔の振戦または震え、四肢および胴体の硬直、および姿勢の不安定である。これらの症状が進行すると、患者は歩行、会話、または他の単純な日常生活の課題を達成する困難を経験しうる。これらの行動上の欠損は、スムーズで意図的な動作の生成に関与する脳における黒質線条体系の変性と関係がある。特に、黒質に位置した神経細胞は変性し、これらの細胞によって作られるドーパミンの随伴喪失が認められる。黒質神経細胞は線条体に軸索または突起を伸ばし、ここでドーパミンが分泌され、利用される。線条体内のドーパミンの80%の喪失が、PDの症状が出現する前に起こる必要があると推定されている。
【0005】
現時点では、レボドパ(商標名シネメット(Sinemet))がパーキンソン病の主たる治療薬である。脳において、レボドバはドーパミンに変換され、これによりパーキンソン病患者の脳内のドーパミン欠損が修正される。レボドパが末梢デカルボキシラーゼ阻害剤カルビドバと併用されると、PD患者は劇的な利点を経験する。しかし、問題は、レボドパ療法はPDの症状を弱めるが、失われた神経細胞を元に戻すことはなく、疾患の進行を止めることはないことである。PDが進行すると、患者は漸増用量のレボドパを必要とし、最も顕著には、不随意運動の障害および硬直の副作用が出現する。実際に、運動障害の専門家はしばしば、レボドパの使用を遅らせ、最初に他のドーパミン作動薬を使用し、患者がそれを最も必要とする場合に疾患過程の後半のためにレボドパの使用を確保しておく。
【0006】
したがって、レボドパには制限があり、パーキンソン病に対する追加の治療法が確立される必要がある。この点で、PDの外科的治療における関心が再燃している。最近、脳深部電気刺激法と呼ばれる方法が相当の注目を得ている。この方法では、電極がPDにおいて活動亢進している脳領域に配置され、これら脳領域の電気的刺激が活動亢進を修正するようになっている。一部の患者においては、劇的な利点が達成されうる。他の外科的介入は、黒質線条体系の機能の改善をめざしている。ドーパミン作動性細胞の移植片は、パーキンソン病の動物モデルにおける運動障害の改善に成功している。ヒトにおけるドーパミン作動性細胞移植の初期臨床試験は成功しているが、一重盲検臨床試験は、高齢患者ではなく若い患者における利点を示した。しかし、移植片を受ける患者の一部は、不随意運動の障害を来たした。したがって、現時点では、細胞移植片は依然として実験的方法とみなすべきである。
【0007】
別の方法では、黒質ニューロンの変性および神経伝達物質ドーパミンの随伴喪失の予防をめざしている。
【0008】
世界中の多くの実験室は、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)が、ラットおよび霊長類で行われた試験における黒質線条体系の変性の構造的および機能的結果を予防しうることを明らかにした。GDNFのCNSへの送達は、タンパク質の注射、ポンプによる送達を使用する前臨床試験、およびインビボ遺伝子治療において達成されている。多くの試験では、GDNFを発現するAAVまたはレンチウイルスを使用するCNSの形質導入を記載している(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、特許文献3、特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。
【0009】
パーキンソン病の治療の他のインビボ遺伝子治療法としては、芳香族Lアミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、suthalamicグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)を発現するウイルスによる形質導入が挙げられる(非特許文献11、非特許文献12)。
【0010】
GDNFはヒトにおけるパーキンソン病の治療の有望な候補であるとみられるが、GDNF治療は特定の副作用、主に体重減少および異痛が生じることが報告されている(非特許文献13)。したがって、技術上、パーキンソン病の治療の別の方法、特に黒質ニューロンの変性の予防をめざす方法を開発する必要がある。
【0011】
ニュールツリンは、主にGFRα2受容体による成長受容体およびシグナルのGDNFファミリーのメンバーである。NTNおよびGDNFの受容体は異なった形で空間的および時間的に発現される。したがって、NTNおよびGDNFの治療効果は異なることを予想しなければならない。これは浸透圧ミニポンプによって送達されるGDNFとNTNの比較において確認される(非特許文献13)。成人ドーパミン作動性ニューロンの6−ヒドロキシドーパミン誘発変性によるエクスビボ遺伝子治療試験の比較(本発明者によって使用されたものと同じ動物モデル)においては、著者らはGDNFとNTNの両方は黒質ドーパミン作動性ニューロンの死を阻止するが、GDNFのみがチロシンヒドロキシラーゼ染色の強度増大および広範な発芽を誘発することに注目した(非特許文献14)。
【0012】
PDモデルにおけるCNSへのタンパク質製剤としてのニュールツリンの送達、またはNTN過剰発現細胞の移植により、GDNFで得られる結果と同等の結果は得られていない。タンパク質治療試験においては、これはニュールツリンタンパク質製剤の安定性による問題によるとみられる(沈殿および短い半減期)。
【0013】
これまで、ニュールツリンを使用するパーキンソン病のインビボ遺伝子治療に関する報告はない。AAVを発現するニュールツリンを使用する1つの遺伝子治療試験では網膜障害の治療が焦点であった(非特許文献15)。しかし、著者らは、網膜変性のrdモデルの治療上の処置は、NTNまたはGFRα−2の発現の単純な調節によって達成されるとは思われないと結論づけた。したがって、今日まで、ニュールツリンを使用するインビボ遺伝子治療は依然として推測的である。
【特許文献1】国際公開第03/018821号パンフレット(Ozawa et.al)
【特許文献2】米国特許公開第2002187951号明細書(Aebischer et.al)
【特許文献3】米国特許公開第2002031493号明細書(Rohne−Poulenc Rorer SA)
【特許文献4】US6,180,613 Roeckefeller University
【非特許文献1】Kordower,Ann Neurol,2003 53(suppl 3),s120−s134
【非特許文献2】Georgievska et.al 2002,Exp Nerol 117(2), 461−474
【非特許文献3】Georgievska et.al 2002,NeuroReport 13(1), 75−82
【非特許文献4】Wang et.al, 2002, Gene Therapy, 9(6), 381−389
【非特許文献5】Kozlowski et.al 2000, Exp Neurol, 166(1), 1,15
【非特許文献6】Bensadoun 2000, Exp Neurol, 164(1), 15−24
【非特許文献7】Connor et.al 1999, Gene Therapy, 6(12), 1936−1951
【非特許文献8】Mandel et.al 1997, PNAS, 94(25), 14083−88
【非特許文献9】Lapchak et.al 1997, Brain Research, 777 (1,2), 153−160
【非特許文献10】Bilang−Bleuel et.al 1997, PNAS 94(16), 8818−8823
【非特許文献11】Marutso, Nippon Naika Gakkai Zasshi, 2003, 92 (8), 1461−1466
【非特許文献12】HowarDNAture Biotechnology, 2003, 21 (10), 1117−18
【非特許文献13】Hoane et.al 1999, 160(1):235−43
【非特許文献14】Akerud et.al, J Neurochemistry, 73, 1:70−78
【非特許文献15】Jomary et.al 2000, Molecular Vision 7:36−41
【0014】
(発明の開示)
本発明者は、6−OHDA病変モデルにおける線条体へのGDNFファミリー成長因子のウイルス形質導入送達に基づく一連の前臨床動物試験を行った。6−OHDA病変モデルはパーキンソン病の公知の動物モデルである。これらの実験は―驚いたことに―ニュールツリンをコードするウイルスによる形質導入が、GDNFによる形質導入によって得られる効果と少なくとも同じほど優れている治療効果をもたらすことを示した。これらのデータは、パーキンソン病モデルにおけるニュールツリンのインビボ遺伝子治療送達の効果の最初の前臨床的証拠を示す。
【0015】
パーキンソン病の治療の好ましい神経栄養因子としてのニュールツリンの特異性は、6−OHDA病変モデルにおける、別の神経栄養因子、ノイブラスチン(アルテミン(Artemin))の効果の欠如によって確認される。
【0016】
したがって、第1の態様において、本発明はパーキンソン病を治療する方法に関し、前記方法は、それを必要とする個体の中枢神経系に治療有効量のウイルス発現ベクターを投与するステップを含んで成り、前記ベクターは操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含んで成り、前記ポリペプチドは、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んで成る。
【0017】
本発明者は、特定の症例において、プレプロニュールツリンをコードする構成物を使用するとニュールツリンの分泌に関する問題がありうることも判定した。インビトロトランスフェクションおよび形質導入とヒトまたはマウスプロプレニュールツリンによるインビボ形質導入は、添付の実施例に記載されているように、結果としてきわめて限定されたニュールツリンの分泌をもたらした。形質導入またはトランスフェクションに同じベクターおよび同じ細胞を使用する同じ条件下に、GDNFは相当な量で分泌した。
【0018】
相当に高い分泌レベルを得る1つの方法が、本発明者によって検討されている。この方法は、プロペプチドをコードするニュールツリン遺伝子のその部分の削除を含む。本実施形態による発現構成物は、ニュールツリンの成熟もしくは切断形態、または成熟もしくは切断ニュールツリンの配列変種に直接融合したシグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、天然ニュールツリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドでありうる。
【0019】
相当に高い分泌レベルを得る別の方法は、免疫グロブリン重鎖シグナルペプチド(IgSP)を含むがこれに限定されない異種シグナルペプチドでの天然ニュールツリンシグナルペプチドの置換を含む。特に好ましい実施形態においては、異種シグナルペプチドはデルタプロNTNに融合されている。デルタプロニュールツリンによって機能的プロ領域を含まないニュールツリンポリペプチドが意図されている。
【0020】
ニュールツリンによる所見と対照的に、GDNFのプロ部の削除およびGDNFシグナルペプチドのIgSPシグナルペプチドによる置換は、結果として、プロプレGDNFからの分泌と比べGDNFの分泌の大幅な削減をもたらした。
【0021】
NTNのプレプロ部のGDNFのプレプロ部の置換は、結果として、NTNの分泌の大幅な増大をもたらさなかったことも確認された。したがって、NTNとGDNFとの差は、単に2つの神経栄養因子のプロプロ部の差のせいにすることはできない。
【0022】
プレプロNTNの場合およびGDNFのプロプロ部による発現構成物において、未処理プロNTNに分子量が対応するタンパク質が哺乳類細胞から分泌したことが確認された。このプロNTNは、GFRα1またはGFRα2のいずれかに結合できなかったことも確認された。「プロ−レス(pro−less)」発現構成物を使用した場合、成熟ニュールツリンに分子量が対応するタンパク質が分泌した。このタンパク質は、インビボ実験によって証明されるように生物活性であり、GFRα1またはGFRα2に結合することができた。
【0023】
本発明に記載された高効率に発現構成物を使用する1つの重要な利点は、患者に投与されるウイルス組成物の量が減少しうることである。したがって、同じ治療効果のために、ウイルスが少ない組成物が製造される必要があり、少量の組成物の投与によって、少ない副作用が予想されうる。さらに、注射はより正確に行われうる。
【0024】
別の態様においては、本発明は、ウイルス発現ベクターの使用に関し、前記ベクターは、操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含んで成り、前記ポリペプチドは、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んで成る、
パーキンソン病の治療薬を調製するための使用に関する。
【0025】
別の態様においては、本発明は、操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含んで成るポリヌクレオチド配列を含んで成るウイルス発現ベクターに関し、前記ポリペプチドは、哺乳類細胞において機能することが可能なシグナルペプチドと、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択されるニュールツリンとを含んで成る。かかるウイルス発現ベクターは、機能的ニュールツリンプロ領域の欠如によって特徴づけられる。
【0026】
このウイルス発現ベクターは、治療的に重要な量のニュールツリンの発現および分泌をもたらすという点でインビボ遺伝子治療に特に有用である。ウイルス発現ベクターは、多量の生物活性ニュールツリンを分泌する哺乳類細胞を生成するためにも使用されうる。
【0027】
別の態様において、本発明は、本発明によるベクター、および1つもしくはそれ以上の医薬上許容される補助剤、賦形剤、担体、および/または希釈剤を含んで成る医薬組成物に関する。この医薬組成物はインビボおよびエクスビボ遺伝子治療に使用されうる。
【0028】
別の態様において、本発明は、本発明によるベクターで形質導入された単離宿主細胞に関する。
【0029】
かかる形質導入された宿主細胞は、周知のNTN産生細胞と比較し、かつ無傷プロペプチドを有するニュールツリンをコードするウイルスベクターで形質導入された細胞と比較して予想外に多量のニュールツリンを産生することがわかった。したがって、本発明の形質導入された宿主細胞は、ニュールツリンの工業規模の生産のための有望な細胞源となる。
【0030】
別の態様において、本発明は、伝染性ベクター粒子を産生することが可能なパッケージング細胞系に関し、前記ベクター粒子は、5’レトロウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、ニュールツリンおよび異種シグナルペプチドを含んで成る融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されるプロモーター、第2鎖DNA合成の起点、および3’レトロウイルスLTRを含んで成る。融合タンパク質は、機能的ニュールツリンプロ領域を含んで成ることはない。
【0031】
これらのパッケージング細胞系は、本発明によるウイルスベクターを製造するために使用されうる。それらは、カプセル化され、CNSに移植されるとインビボ遺伝子治療に有用でもありうる。
【0032】
別の態様においては、本発明は、本発明によるベクターで形質導入されている少なくとも1つの細胞を含んで成るヒト以外のキメラ哺乳類に関する。ニュールツリンを過剰発現するかかる動物は、遺伝子プロファイリング用に、かつ薬剤のスクリーニングおよび開発において使用されうる。
【0033】
好ましくは、形質導入された細胞は、個別動物の遺伝子型を有し、すなわち、同種または異種移植片ではない。
【0034】
別の態様において、本発明は、植込み式細胞培養デバイスに関し、前記デバイスは、
それを通じて成長因子の拡散を可能にする半透膜と、
少なくとも1つの本発明による単離宿主細胞と
を含んで成る。
【0035】
これらのカプセルは、中枢神経系への移植時にニュールツリンの局所送達用に使用されうる。成長因子の局所および長期送達が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むがこれらに限定されない多くのCNS障害の治療の好ましい投与法である。
【0036】
別の態様においては、本発明は、標的細胞の感染用のウイルスベクターを分泌する生きたパッケージング細胞を含んで成るコアであって、ウイルスベクターは本発明によるベクターであるコアと、前記コアを取囲む外側ジャケットであって、前記ジャケットは透過性生体適合性材料を含んで成り、前記材料は、その上を直径約100nmのレトロウイルスベクターの通過を可能にするように選択された多孔性を有し、前記ウイルスベクターの前記カプセルからの放出を可能にする外側ジャケットとを含んで成る生体適合性カプセルに関する。
【0037】
本発明のカプセルは、カプセル法を使用する患者における所望の部位にウイルス粒子の送達を提供する。ベクター産生細胞系のカプセル化は、一回の注入とは反対に、標的部位へのウイルス粒子の連続的送達を可能にする。また、反復療法が可能であり、免疫攻撃の可能性が低い。カプセルは、パッケージング細胞から放出されるウイルス粒子の通過を可能にするのに十分に大きな孔を有し、さらにカプセルへの宿主細胞の通過を阻止する。
【0038】
このカプセル法は、デバイスが容易に回収(治療の終了)または外移植および再移植(治療の修正)されうるため治療の安全性および制御を増大させる。さらに、カプセルデバイスが開放されておらず、または外部に置かれることがないため感染の機会は減少する。
【0039】
最後に、カプセル化はパッケージング細胞が患者内で移動するのを防ぎ、かつ植込み時のパッケージング細胞の生存を延長するため、この治療に必要な細胞の数は少ない可能性がある。これは患者の免疫反応をさらに低下させることにおいて有利でありうる。
【0040】
別の態様において、本発明は、本発明によるウイルスベクターの薬剤としての使用に関する。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、神経系障害の治療のための薬物調製のための本発明によるウイルスベクターの使用に関する。
【0042】
別の態様において、本発明は、CNS障害の治療のための薬物調製のための本発明によるベクターの使用に関する。
【0043】
さらに、本発明は、神経系疾患を治療する方法に関し、前記方法は、それを必要とする個体に、
本発明のベクターの治療有効量、または
本発明の医薬組成物の治療有効量、または
本発明によるパッケージング細胞系を含んで成る生体適合性デバイス
を投与するステップを含んで成る。
【0044】
本発明の本態様によれば、神経系疾患の改善されたインビボ遺伝子治療法が提供される。添付の実施例によって証明されるように、本発明のウイルスベクターによるインビボ形質導入は、コードされた治療的因子、例えば、ニュールツリンのこれまでに見られない分泌および組織分布、および結果として、改善された治療効果をもたらす。
【0045】
さらに別の態様において、本発明は、神経系疾患を治療する方法に関し、前記方法は、それを必要とする個体に、
i.本発明の形質導入された細胞の治療有効量、または
ii.本発明による植込み式デバイス
を移植するステップを含んで成る。
【0046】
本態様は、エクスビボ遺伝子治療、およびニュールツリンの増大量を分泌することが可能な治療的細胞の移植に基づく神経系障害を治療する別の方法を提供する。
【0047】
別の態様において、本発明は、ニュールツリンまたはその機能的同等物を500ng/106細胞/24時間以上の量で分泌する能力がある哺乳類細胞に関する。
【0048】
本発明に記載されたニュールツリン産生細胞は、従来技術の哺乳類細胞で見られる少なくとも1桁を超える量のニュールツリンを産生する。本発明の細胞を産生するニュールツリンは、タンパク質が正確に処理され、グリコシル化され、かつ折畳まれるとともに、培養培地から容易に回収されうる利点を有する哺乳類細胞を使用して発酵槽においてタンパク質を産生することを可能にする。
【0049】
(図面の簡単な記載)
図1:さまざまな哺乳類のIgSP配列の配置。ヒトIgSP(配列番号1、Genbank#AASC18285)、アカゲザルIgSP(配列番号2、Genbank#AAC02637)、マーモセットIgSP(配列番号3、Genbank#AAM89745)、マウスIgSP(配列番号4、Genbank#AAA38502)、ブタIgSP(配列番号5、Genbank#AAA79743)、ラットIgSP(配列番号6、Genbank#AAA51349)。
【0050】
図2:さまざまな神経栄養因子からのシグナル配列の表。ヒト神経成長因子(hNGF、Genbank#NP_002497、配列番号40)、マウス神経成長因子(mNGF、Genbank#P01139、配列番号41)、ヒトGDNF(hGDNF、Genbank#NP_000505、配列番号 42)、マウスGDNF(mGDNF、配列番号43、Genbank受入番号U36449)、推定マウスGDNFシグナル配列(配列番号44、GenbankNM_010275からのN末端19アミノ酸、開始コドンはU36449と比べ誤って予測されているようである)、ヒトノイブラスチン(Neublastin)(hNBN、Genbank#NP_476501、配列番号45)、ヒトペルセフィン(Persephin)(hPSP、Genbank#NP_004149、配列番号46)、ヒトニュールツリン(配列番号37)、マウスニュールツリン(配列番号38)、ラットニュールツリン(配列番号39)。
【0051】
図3:pNS1nIgSP.NTNプラスミドマップ。
図4:野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンのサンドイッチELISA。
【0052】
図5:野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンの機能的RetL2 ELISAアッセイ。
【0053】
図6:野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞の溶解物からのニュールツリン調製物のウェスタンブロット。
図7:ニュールツリンを安定に発現するARPE−19細胞によって産生されるニュールツリン量の定量化。
図8:pHR’−sC.IgSP−hgNTN.Wベクターマップ、インビボ遺伝子治療試験に使用されるレンチウイルスベクター。
図9:レンチウイルスベクターまたは6−OHDAの線条体内注射を示す概略図。
【0054】
図10:レンチウイルスベクターで形質導入され、その後にヒトNTNまたはヒトGDNFに対する抗体を使用する免疫組織化学のために処理されたラットの線条体の冠状断面。
上左パネルは、hNTNのために処理された無傷、非操作線条体を示す。シグナルは検出できない。同様に、無傷側ではrLV−wtNTN形質導入線条体においてシグナルは検出されない(上右パネル)。それに反して、hNTNに対する顕著な特異的染色がrLV−IgSP形質導入線条体において確認され(下右パネル)、拡散した染色パターンは、GDNF免疫組織化学で染色されたrLV−GDNF形質導入動物において確認されたものと酷似している(下左パネル)。
【0055】
図11:rLV−IgSPNTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用。無傷側では、多くのTH免疫反応性細胞が黒質が確認されうる(ドーパミン作動性細胞を示す)(左パネル、上列)。6−OHDA病変にさらされた側では、残りのTH免疫反応性ニューロンプロフィールの数は、wtNTN処置動物において大幅に減少している(中央パネル、上列)。それに反して、さらに多くのTH免疫反応性ニューロンが、IgSP−NTN治療を受けた雄動物において残っている(右パネル、上列)。定量化(棒グラフ)は、IgSP−NTNがGDNF治療によって見られる効果と同様の毒性損傷からの顕著な救出を誘発することを示す。以前にはインビボで黒質ドーパミンニューロンを救出しないことを示したNBNは、IgSPに融合されると保護することはない。
【0056】
図12:デルタプロニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号15)およびコードされるポリペプチド(配列番号16)。
図13:IgSPニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号17)およびコードされるポリペプチド(配列番号18)。
図14:プレプロGDNFニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号50)およびコードされるポリペプチド(配列番号51)。
【0057】
図15:(A)wtプレプロNTN、GDNFからのプレプロ部を有するNTN(ppG−NTN、配列番号50))、dプロNTN(配列番号15)、およびIgSP−NTN(配列番号17)を含むNTN発現構成物。後者のDNA配列はイントロンを含有する。さらに詳細については本文を参照。(B)トランスフェクトされたHEK293細胞からの溶解物およびならし培地のNTNウェスタンブロット。矢印は、それぞれ、wtプロNTN、プロ(GDNF)−NTN、および成熟NTNのサイズのバンドを示す。ここで留意すべきは、標準はwtNTNよりもわずかに高い分子量を有するNTN−Hisであることである。(C)NTN構成物でトランスフェクトされた4種類の細胞系からのならし培地におけるNTNのGFRa2結合活性。(D)溶解物(GFRa2に結合されていない)、およびGFRa2に結合したならし培地からのNTNのNTNウェスタンブロット。(E)NTN構成物でトランスフェクトされた4つの細胞系からのならし培地でのNTNサンドイッチELISA。データは代表的な実験からの平均±SEM(n=3)で表されており、*はwt構成物でトランスフェクトされた細胞との有意差を示す(P<0.05、順位でのクラスカル・ワリス一元分析後、スチューデント・ニューマン・クールズ法)。
【0058】
図16:レンチウイルス構成物の線条体内注射後の導入遺伝子のインビボ発現。レンチウイルスベクターで形質導入され、その後にGFPに対する抗体を使用する免疫組織化学のために処理されたラットの線条体(A)、ヒトNTN(B、D、E、F、G)、またはGDNF(C)の冠状断面。GFP対照群においては、明確な細胞内染色パターンがGFPに対する抗体を使用する免疫組織化学後に確認された(A)。rLV−NTN形質導入線条体(B、E)においては、弱い細胞内免疫反応(矢印)は確認されるが、細胞外NTNシグナルは確認されない。その一方で、rLV−IgSP形質導入線条体(D、F)においては、NTNに対する細胞内(矢印)および顕著な特異的細胞外染色パターンも確認される。(C)rLV−GDNF形質導入された動物におけるGDNF免疫染色は、タンパク質の分泌による同様に拡散した染色パターンを示す。(G)SN部におけるNTN免疫反応性線維は網状になり、NTNが線条体においてIgSP−NTN形質導入細胞から順行性に輸送されることを示す。バー1mm(A−D、G)または62.5μm(E−F)。
【0059】
図17:rLV−IgSP−NTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用。(A)4種類の治療群における無傷側と比べた病変側におけるTHを発現する黒質ニューロンの数。(B)病変側におけるVMAT免疫反応性黒質ニューロンの数。データは平均±SEM(n=5〜7)で表されており、*はGFP群との有意差を示す(P<0.05、一元ANOVA、ダネット法)。
【0060】
図18:GFP、NTN、IgSP−NTN、およびGDNF処置動物の黒質緻密部の冠状断面。無傷側では、多くのTH免疫反応性細胞が確認されうる(A)。6−OHDA病変にさらされた側では、残りのTH免疫反応性ニューロンプロフィールの数は、wtNTNまたはGFP処置動物において大幅に減少している(B、D)。それに反して、さらに多くのTH免疫反応性ニューロンが、GDNF(H)またはIgSP−NTN治療(C)を受けた動物において残っている。GDNFおよびIgSP−NTN処置動物におけるTH染色強度の減少に注意。高倍率の無傷側におけるTH−IR細胞(E)、IgSP−NTN処置動物の病変側(G)、およびNTN処置動物の病変側(F)。黒の矢印はTH発現が減少したニューロンを指し、白の矢印はTH発現が正常のニューロンを指す。バー1mm(A−E、H)または25μm(E−G)。
【0061】
(定義)
機能的ニュールツリンプロ領域は、シグナルペプチドと成熟ペプチドとの間に位置しており、プロペプチドはシグナルペプチドの開裂後のフリンによって成熟ペプチドから開裂可能である。「ニュールツリンプロ領域」は、例えば、配列番号12のアミノ酸−72〜−3、配列番号13のアミノ酸−72〜−3、配列番号14のアミノ酸−72〜−3に対応する少なくともアミノ酸を含んで成る領域を意味する。これらのプロプレニュールツリンが1つ以上の可能なプロ部位(RXXRモチーフ)を含有し、かつシグナルペプチダーゼによる実際の開裂が変動しうると、機能的プロ領域の正確な長さはそれに応じて変動しうる。
【0062】
シグナルペプチド−真核シグナルペプチド。真核シグナルペプチドは、分泌され、または膜成分となることが決まっているタンパク質上に存在するペプチドである。これは通常、タンパク質に対するN末端である。本文脈では、シグナルペプチドとしてシグナルP(バージョン2.0または好ましくはバージョン3.0)で識別されるすべてのシグナルペプチドがシグナルペプチドとみなされる。
【0063】
哺乳類シグナルペプチドは、小胞体(endoplamic reticulum)を通じて分泌される哺乳類タンパク質由来のシグナルペプチドである。
【0064】
異種シグナルペプチド−天然にニュールツリンポリペプチドと操作可能に連結されていないシグナルペプチド。
【0065】
本明細書で使用される成熟ヒトニュールツリンポリペプチドは、天然ヒトプレプロニュールツリンのC末端102アミノ酸、すなわち、配列番号12のアミノ酸1−102を意味する。
【0066】
本明細書で使用される成熟マウスニュールツリンポリペプチドは、天然マウスプレプロニュールツリンのC末端100アミノ酸、すなわち、配列番号13のアミノ酸1−100を意味する。
【0067】
本明細書で使用される成熟ラットニュールツリンポリペプチドは、天然ラットプレプロニュールツリンのC末端100アミノ酸、すなわち、配列番号14のアミノ酸1−100を意味する。
【0068】
本明細書で使用されるニュールツリンポリペプチドは、天然ヒトニュールツリンのアミノ酸8−101(配列番号12)、天然マウスニュールツリンのアミノ酸6−99(配列番号13)、または天然ラットニュールツリンのアミノ酸6−99(配列番号14)を含んで成り、各々、天然配列において15までのアミノ酸置換を有するポリペプチドを意味する。一部の文脈では、これは「分泌されたニュールツリンポリペプチド」が、すでに分泌されているものとは対照的に分泌されるポリペプチドを意味すると理解される。
【0069】
生物活性(Biocativity):GFRα2とともに二量化されるとRETと結合し、RET二量化および自己リン酸化を誘発する能力。生物活性は、実施例に記載されているようにRET L2 ELISAアッセイで測定されうる。生物活性は、GFRα1とともに二量化されるとRETと結合し、RET二量化および自己リン酸化を誘発する能力でもありうる。生物活性は、実施例に記載されているようにRET L1 ELISAアッセイで測定されうる。
【0070】
配列同一性:基準アミノ酸配列と変種アミノ酸配列との間の配列同一性は、クラスタル(Clustal)W(1.82)のデフォルト設定を使用して配列を調整することによって行われる。完全に保存された残基の数を計算し、基準配列における残基の数で割る。
【0071】
(発明の詳細な記載)
I.シグナル配列
分泌経路への分泌およびタンパク質の標的化は、シグナルペプチドまたはシグナル配列として周知の短いアミノ末端配列の付着によって行われる(von Heijne, G. (1985) J. Mol. Biol. 184, 99−105; Kaiser, C. A. & Botstein, D. (1986), Mol. Cell. Biol. 6, 2382−2391)。シグナルペプチドそのものは最適な機能に必要ないくつかの要素を含有し、その最も重要なものは疎水性成分である。疎水性配列の直前にはしばしば1つまたは複数の塩基性アミノ酸があるが、シグナルペプチドのカルボキシル末端には、シグナルぺプチダーゼ開裂部位を規定する単一の介在アミノ酸によって分離される一対の小さな非荷電アミノ酸がある。
【0072】
好ましい哺乳類シグナルペプチドは長さが15〜30個のアミノ酸である(真核生物の平均は23個のアミノ酸)。さまざまなタンパク質のシグナルペプチドの一般的な構造は一般に正電荷を持つn領域の後、疎水性のh領域、および中性であるが極性のc領域によって記載される。(−3、−1)規則は、−3位および−1位(開裂部位に対して)での残基が、開裂が正確に発生するために小さくかつ中性であるべきことを示す。
【0073】
真核シグナル配列のn領域は、ほんの少しArgリッチである。h領域は短く、きわめて疎水性である。c領域は短く、確認可能なパターンを有さない。上記のように、−3位および−1位は小さな中性の残基から成る。開裂部位に対するアミノ酸残基C末端は真核生物においてはあまり重要ではない。
【0074】
C領域において、−1および−3位での残基は最も重要である。これらは小さな非荷電アミノ酸である。−1位での残基は、好ましくは、A、G、S、I、T、またはCである。より好ましくは、−1位はA、G、またはSである。−3位での残基は、好ましくは、A、V、S、T、G、C、I、またはDである。より好ましくは、−3位はA、V、S、またはTである。
【0075】
疎水性領域は一般的に疎水性残基から成る。これらはA、I、L、F、V、およびMを含む。好ましくは、−6位〜−13位である。この領域を構成する8個のアミノ酸のうち、少なくとも4個の残基は疎水性であるが、より好ましくは、少なくとも5個、より好ましくは、少なくとも6個、例えば7もしくは8個である。
【0076】
数多くのシグナルペプチドが、本発明によるニュールツリン構成物において使用されうる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド(IgSP)など異種シグナルペプチドなど機能的シグナルペプチドでありうる。シグナルペプチドは、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタなど適切な種由来でありうる。好ましくは、ヒト由来である。
【0077】
添付の実施例によって証明されているように、ニュールツリンプロペプチドを含まないIgSPの使用は一般に、インビトロおよびインビボで生物活性ニュールツリンの分泌の改善をもたらす。結果は、レンチウイルス形質導入細胞およびプラスミドトランスフェクト細胞の両方で再現性であった。細胞は、IgSPコード配列が、ニュールツリンの天然プレプロ部を除き、成熟タンパク質をコードする遺伝子に直接融合されると、生物学的に活性のタンパク質として成熟タンパク質を分泌する。
【0078】
別の実施形態において、シグナルペプチドは、天然ヒトニュールツリンシグナルペプチドなど天然ニュールツリンシグナルペプチドである。本文脈において、天然ニュールツリンシグナルペプチドおよびニュールツリンポリペプチドの後者の構成物は、デルタプロニュールツリンと呼ばれる。ニュールツリンのプロ部をコードする配列を簡単に除去することにより、プレプロニュールツリンの発現と比べ生物活性ニュールツリンの分泌の予想外の増大が生じる。
【0079】
生物活性ニュールツリンの分泌が機能的ニュールツリンまたはGDNFプロペプチドをコードする発現構成物と比べプロレス発現構成物を使用することによって強く促進され、かつ機能的プロ領域の存在が非生物活性ニュールツリンの分泌をもたらすという複合所見により、本発明者は、機能的プロペプチドが生物活性ニュールツリンの分泌の必須部位であると結論づけるに至った。プロ領域の欠如もニュールツリンの分泌レベルを強く促進する。IgSPなど強いシグナルペプチドの選択は、分泌をさらに一層促進しうる。
【0080】
本発明の一実施形態において、コードシグナルペプチドは、NGFシグナルペプチド(配列番号40または配列番号41)、GDNFシグナルペプチド(配列番号42または配列番号43、ペルセフィンシグナルペプチド(配列番号46)、およびノイブラスチンシグナルペプチド(配列番号45)からなる群から選択される。好ましくは、これらのシグナルペプチドはマウスまたはヒト、より好ましくは、ヒトである。
【0081】
実施例6におけるシグナルペプチド予測は、NGFおよびGDNFシグナルペプチドを有する成熟ニュールツリンがIgSPと同じく強いシグナルペプチドであることを示す。成熟ニュールツリンに連結したペルセフィンシグナルペプチドも強いシグナルペプチドであることが予測される。デルタプロ発現構成物(成熟またはN末端切断NTNに連結したNTNシグナルペプチド)は、あまり強くないシグナルペプチドであると評価されている。これは実施例に示されている定量的データによって確認される。
【0082】
特定のシグナルペプチドの各々は、成熟マウス、ラット、またはヒトNTN(配列番号10、配列番号11、または配列番号8)と、または実施例6、およびIgSPNTN(配列番号18〜24)およびデルタプロNTN(配列番号16および配列番号25〜30)の配列表に示されているこれらのいずれかのN末端切断形態と個別に結合されうる。
【0083】
シグナルペプチドの開裂
発現構成物へ組込む特定のニュールツリン形態を決定する前に、シグナルペプチド(SP)の開裂の可能性を従来技術の予測ツールを使用してチェックすることができる。かかる好ましい予測ツールの1つが、シグナル(Signal)PのWWWサーバー(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP−2.0/)で入手可能であるシグナルPソフトウェアであり、または好ましくは、同じサーバーから新しいバージョン3.0が入手可能である(http://www.cbs.dtu.dk/services/signalP/)。
【0084】
シグナルPWWWサーバーは、あなたの配列における各位置の0〜1の3つのスコアを戻す:
Cスコア(生の開裂部位スコア)
開裂部位対他の配列位置を認識するためにトレーニングされたネットワークからの出力スコア。以下のようにトレーニングされる:
高 +1の位置(開裂部位直後)
低 他のすべての位置。
Sスコア(シグナルペプチドスコア)
シグナルペプチド対非シグナルペプチド位置を認識するためにトレーニングされたネットワークからの出力スコア。以下のようにトレーニングされる:
高 開裂部位前のすべての位置
低 開裂部位後および非分泌タンパク質のN末端における30の位置。
Yスコア(複合開裂部位スコア)
開裂部位位置の予測は、Cスコアが高く、Sスコアが高い値から低い値へ変化する場所を観察することによって最適化される。Yスコアは、Sスコアの勾配とCスコアの高さを結合することによってこれを形式化する。
【0085】
具体的には、Yスコアは、CスコアとSスコアの平滑化導関数との幾何平均である(すなわち、現在の位置の前のd位置および後のd位置を越える平均Sスコア間の差であり、ここでdは選択されたネットワークアンサンブルとともに変動する)。
【0086】
3つのスコアはすべてデータの異なるパーティションでトレーニングされた5つのネットワークの平均である。
【0087】
各配列について、シグナルPは最大のC、S、およびYスコア、およびN末端と予測開裂部位との平均Sスコアを報告する。これらの値は、シグナルペプチドと非シグナルペプチドとを区別するために使用される。あなたの配列がシグナルペプチドを有すると予測される場合は、開裂部位は最大Yスコアを示す位置の直前にあることが予測される。
【0088】
典型的なシグナルペプチドについては、CおよびYスコアは+1の位置で高くなるが、Sスコアが開裂部位の前で高く、その後に低くなる。
【0089】
対照用に、この予測を野性型ニュールツリンシグナルペプチドの予測開裂(プレプロNTN(配列番号12)のアミノ酸番号19と20との間の開裂)と比較することができる。マウスとラットのプレプロニュールツリンについては、開裂予測はあまり確実ではない。開裂はアミノ酸23と24との間で起こると予測されるが、ヒトプレプロNTNにおけるのと同じ位置での開裂(clevge)の可能性もある。
【0090】
開裂部位位置の最良の予測は、Yスコア最大の位置によって提供される。配列型(シグナルペプチドまたは非分泌タンパク質)の最良の予測は、平均Sスコア(位置1とYスコア最大の直前の位置との間の領域におけるSスコアの平均)によって示される。すなわち、平均Sスコアが0.5よりも大きい場合は、配列はシグナルペプチドであると予測される。したがって、好ましい実施形態において、平均Sスコアは0.5よりも大きい。
【0091】
新しいシグナルP(バージョン3.0)は、「シグナルペプチデッドネス(signal peptidedness)を表す、新しいスコアD、またはDmax(判別スコア)も含む。Dスコアは、問題のタンパク質を有する前記シグナルペプチドを使用して分泌のレベルを修正することがわかっている。少なくとも0.6など少なくとも0.5、例えば、少なくとも0.8など少なくとも0.7のDmax値を示すシグナルペプチドニュールツリンタンパク質をコードするニュールツリン発現構成物を使用することが好ましい。
【0092】
好ましいシグナルペプチドニュールツリン構成物は、シグナルP−NNまたはシグナルP−HMMプログラムのいずれかにおけるSPとニュールツリンとの間の予測開裂を有するものである。特に好ましいのは、シグナルP−NNとシグナルP−HMMの両方におけるこの位置で予測シグナルペプチドを有するニュールツリン構成物である。
【0093】
シグナルペプチドがIgSPであると、構成物のニュールツリン部は、長さが102〜96個のアミノ酸のヒトニュールツリン、または長さが100〜96個のアミノ酸のマウスもしくはラットのニュールツリンを含みうる。これらの場合のすべてにおいて、シグナルP−NNとシグナルP−HMMの両方は、19アミノ酸シグナルペプチド後のシグナルペプチドの開裂を予測する。
【0094】
他の好ましいシグナルペプチドとしては、GDNFおよびNGFシグナルペプチドのほか、ペルセフィンシグナルペプチドが挙げられる。
【0095】
別の好ましい実施形態において、発現構成物はシグナルペプチドニュールツリンタンパク質をコードし、ここで開裂は、シグナルPバージョン2.0、または好ましくは、バージョン3.0によって予測されるように、成熟ニュールツリンにおける最初の基準システイン前に発生する。
【0096】
References: Henrik Nielsen, Jacob Engelbrecht, Soren Brunak and Gunnar von Heijne: Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Engineering, 10, 1−6 (1997). For the SignalP−HMM output model: Henrik Nielsen and Anders Krogh: Prediction of signal peptides and signal anchors by a hidden Markov model. In Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology (ISMB 6), AAAI Press, Menlo Park, California, pp. 122−130 (1998).
Improved prediction of signal peptides: SignalP 3.0. Jannick Dyrlov Bendtsen, Henrik Nielsen, Gunnar von Heijne and Soren Brunak. J. Mol. Biol., 340:783−795, 2004.
【0097】
IgSP
特に好ましい実施形態によれば、シグナルペプチドは免疫グロブリン重鎖からのシグナルペプチドである。添付の実施例によって証明されているように、本シグナルペプチドの使用は一般に、インビトロおよびインビボにおけるコードニュールツリンの分泌の改善をもたらす。結果は、レンチウイルス形質導入細胞(インビボおよびインビトロ)およびプラスミドトランスフェクト細胞(インビトロ)の両方で再現性であった。細胞は、IgSPコード配列が、成熟タンパク質をコードする遺伝子に直接融合される場合でも(すなわち、ニュールツリンの天然プレプロ部を除き)、正確なサイズの成熟タンパク質を産生する。
【0098】
免疫グロブリンシグナルペプチドは、大きな群の哺乳類から周知の小さな19アミノ酸ペプチドである。ヒト、アカゲザル、マーモセット、ラット、マウス、およびブタからの配列は図1に配置されている。ヒトIgSPと比べた配列同一率は、21(ブタ)〜68(マーモセット)パーセントのばらつきがある。比較的大きなばらつきは、特定の配列がシグナルペプチドの生物学的機能を実質的に変更することなく大幅に変化しうることを示す。添付の実施例によって証明されているように種間反応性はあることも確認される。これらは、ラット(インビボ実験)およびヒト細胞(ARPE19細胞)のほか、チャイニーズハムスター細胞(CHO)およびラット細胞(HiB5)において機能的であったマウスIgSPで行われた。
【0099】
好ましくは、IgSPは、マウスIgSPがマウス、ラット、およびヒトにおいて機能的であることが周知であるため、マウスまたはヒト起源である。ヒトにおける使用のために、IgSPは、好ましくは、種間副作用のリスクを削減するためにヒト起源である。
【0100】
II.ニュールツリン
ニュールツリンはGDNF(グリア細胞系由来神経栄養因子)の4つのメンバーの1つである。これはGFRα2およびGFRα1コレセプターを通じてシグナルを示す。ニュールツリンは、多くの変性疾患を治療する治療上の候補として提案されている。細胞変性がニューロン変性を伴う場合、疾患としては、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、虚血性脳卒中、急性脳損傷、急性脊髄損傷、神経系腫瘍、多発性硬化症、末梢神経外傷または損傷、神経毒への曝露、糖尿病、または感染源によって引き起こされる腎不全および損傷など代謝疾患が挙げられるが、これらに限定されない。細胞変性が骨髄細胞変性を伴う場合、疾患としては、例えば、好酸球減少症および/または好塩基球減少症を含む白血球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血、血小板減少症のほか、上記のいずれかの幹細胞の不足など不十分な血球の障害が挙げられるが、これらに限定されない。特に本発明の構成物および方法で投与されるニュールツリンが、パーキンソン病の治療において使用されうる。
【0101】
ニュールツリンは最初、国際公開第97/08196号パンフレット(ワシントン大学(University of Washington)に記載された。ヒトニュールツリンのプレプロ形態は配列番号12に記載され、マウスニュールツリンのプレプロ形態は配列番号13に記載され、かつラットニュールツリンのプレプロ形態は配列番号14に記載されている。ニュールツリンの成熟形態としては、配列番号12(配列番号8に示されているヒト成熟NTN)のアミノ酸番号1−102、配列番号13(配列番号10に示されているマウス成熟NTN)の1−100、および配列番号14(配列番号11に示されているラット成熟)の1−100が挙げられる。
【0102】
成熟ヒトニュールツリンをコードするヌクレオチド配列は、本出願の配列番号7に記載されている。コードタンパク質の長さが102個のアミノ酸であり、配列番号8に記載されている。成熟マウスニュールツリンは配列番号10に記載されている。成熟ラットニュールツリン配列は配列番号11に記載されている。実施例1および3は、ヒト成熟ニュールツリンをクローン化するための方法を記載している。好ましくは、本発明の文脈で使用されるニュールツリンはヒト成熟ニュールツリンであるが、同様に、対応するマウスおよびラットの配列が使用されうることが意図されている。
【0103】
本発明の配列変種は、コードされた生物学的に活性のニュールツリンに関して適切に規定されている。GDNFファミリーの成長因子間の配列同一率は、成長因子の成熟部にわたって測定されると約50%の範囲にある。密接な関係がある成長因子間のかかる差により、ニュールツリンの配列が成長因子の生物活性を変更することなく変化しうることが意図されている。本発明の一実施形態において、ニュールツリンの配列変種は成長因子をコードする配列であり、これはヒトまたはマウスもしくはラットのニュールツリン(配列番号9および配列番号10および11)のC末端96アミノ酸との少なくとも70%の配列同一性を有する。より好ましくは、配列変種は、前記ニュールツリンと少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも99%を有する。特に好ましい実施形態においては、配列同一性は、ヒトニュールツリン(配列番号9)のC末端96アミノ酸との比較によって判定される。
【0104】
アミノ酸配列における変更がタンパク質の生物学的機能に影響を及ぼすことなく自由に行われえないことは、当技術分野で周知である。ニュールツリンの生物学的機能に深刻に影響を及ぼすことなく変更されえない最も可能性が高いアミノ酸残基としては、何よりもまず、成熟部の7個の保存された基準システイン残基(配列番号8の残基nr8、35、39、69、70、99、および101)である。
【0105】
他のGDNFファミリーの神経栄養因子に対するニュールツリンの配置は、アミノ酸残基がニュールツリンの配列変種の生物学的機能の保存に最も重要であることに関する情報を当業者に提供する。好ましい実施形態において、ニュールツリンの配列変種は野生型ヒトNTN(hNTN)に対応する位置での完全保存残基を含んで成る。より好ましい実施形態において、配列変種は、野生型hNTNに対応する位置で完全保存および強保存残基を含んで成る。さらにより好ましい実施形態において、NTNの配列変種は、野生型hNTNに対応する位置で完全に、強く、かつ弱く保存された残基を含んで成る。
【0106】
【表1】
* 単一の完全に保存された残基を有する位置を示す。:
: 以下の「強」群の1つが完全に保存されていることを示す:
−STA、NEQK、NHQK、NDEQ、QHRK、MILV、MILF、HY、FYW。
・ 以下の「弱」群の1つが完全に保存されていることを示す:
−CSA、ATV、SAG、STNK、STPA、SGND、SNDEQK、NDEQHK、NEQHRK、VLIM、HFY。
【0107】
【表2】
【0108】
部位特異的突然変異誘発法およびPCR介在突然変異誘発法など標準の方法によって突然変異をニュールツリンへ導入することができる。好ましくは、保存アミノ酸置換は、1つもしくはそれ以上の予測された非必須アミノ酸残基で行われる。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術内で規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、NTNタンパク質における予測された非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。
【0109】
アミノ酸ファミリーの関連性は、側鎖相互作用に基づき判定もされうる。置換アミノ酸は、完全に保存された「強」残基または完全に保存された「弱」残基でありうる。保存アミノ酸残基の「強」群は、以下の群のいずれか1つでありうる。すなわち、STA、NEQK、NHQK、NDEQ、QHRK、MILV、MILF、HY、FYWであり、ここで一文字アミノ酸コードは互いに置換されうるアミノ酸によってグループ分けされる。同様に、保存残基の「弱」群は、以下のいずれか1つでありうる。すなわち、CSA、ATV、SAG、STNK、STPA、SGND、SNDEQK、NDEQHK、NEQHRK、VLIM、HFYであり、ここで各群内の文字は一文字アミノ酸コードを表す。
【0110】
GDNFファミリー成長因子は、N末端切断形態において生物学的に活性であることが周知である(切断GDNFを記載する米国特許第6,184,200号明細書、切断ノイブラスチンを記載する国際公開第02/072826号パンフレット)。ニュールツリンもN末端切断形態において生物活性であると考えられている。本発明者は、ヒト成熟ニュールツリンおよび対応する切断ラットおよびマウスタンパク質のC末端101、100、99、98、97、または96アミノ酸から成るN末端切断ニュールツリンをコードするDNA配列の使用を意図した。成熟タンパク質と同じほどに生物活性であると考えられる最も短いヒト形態は、配列番号9に記載された96アミノ酸から成る。同様に、マウスおよびラットタンパク質は、C末端96アミノ酸に至るまでN末端切断でありうる。現在、最初の基準システイン残基にN末端が残される1つのアミノ酸残基が必要であると考えられている。
【0111】
C末端は、最後の基準システイン残基に対するアミノ酸残基C末端の除去によって切断もされうる。ヒト、マウス、およびラットにおいて、これはC末端アミノ酸の削除に相当する。本発明の好ましい実施形態において、このC末端アミノ酸は削除されていない。
【0112】
III.神経変性障害の治療のための標的組織
グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)コード配列を含んで成るウイルスベクターを使用するパーキンソン病を治療または予防または改善する方法が公知である。GDNFのCNSへの送達は、前臨床試験において、タンパク質注射、ポンプによる送達、およびインビボ遺伝子治療によって達成されている。多くの試験ではGDNFを発現するAAVまたはレンチウイルスを使用するCNS細胞の形質導入が記載されている(Kordower, Ann Neurol, 2003 53 (suppl 3), s120−s134;国際公開第03/018821号パンフレット, Ozawa et.al;米国特許公開第2002187951号明細書, Aebischer et.al; Georgievska et.al 2002, Exp Nerol 117(2), 461−474; Georgievska et.al 2002, NeuroReport 13(1), 75−82; Wang et.al, 2002, Gene Therapy, 9(6), 381−389;米国特許公開第2002031493号明細書, Rohne−Poulenc Rorer SA;米国特許第6,180,613号明細書 Roeckefeller University; Kozlowski et.al 2000, Exp Neurol, 166(1), 1,15; Bensadoun 2000, Exp Neurol, 164(1), 15−24; Connor et.al 1999, Gene Therapy, 6(12), 1936−1951; Mandel et.al 1997, PNAS, 94(25), 14083−88; Lapchak et.al 1997, Brain Research, 777 (1,2), 153−160; Bilang−Bleuel et.al 1997, PNAS 94(16), 8818−8823)。これらの方法は、本発明のウイルスベクターを使用する中枢神経へのニュールツリンの送達において使用されうる。
【0113】
インビボ遺伝子治療の1つの重要なパラメータは、適切な標的組織の選択である。脳の領域が、神経栄養因子、特にニュールツリンに対するその反応性維持のために選択される。ヒトにおいて、成人に達しても神経栄養因子に対する反応性を維持するCNSニューロンとしては、コリン作動性前脳基底部ニューロン、内嗅皮質ニューロン、視床ニューロン、青斑核ニューロン、脊髄感覚ニューロン、および脊髄運動ニューロンが挙げられる。ニュールツリンに対する反応性が維持された細胞の別の特徴は、Retと、2つのコレセプターGFRα1およびGFRα2の1つとの発現である。
【0114】
このニューロンの複雑なネットワークのコリン作動性コンパートメント内の異常は、AD、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病としても周知)を含む多くの神経変性障害に関与している。コリン作動性前脳基底部(特に、前脳基底部のCh4領域)は特に適切な標的組織である。
【0115】
霊長類前脳内では、巨細胞性ニューロンCh1−Ch4が、大脳皮質、視床、およびへんとう体外基底核へのコリン作動性神経支配を提供する。ADなど神経変性疾患を有する対象において、神経成長因子(NGF)受容体を有するCh4領域(マイネルト基底核)におけるニューロンは正常対照と比べ顕著な萎縮を受ける(see, e. g., Kobayashi, et.al., Mol. Chem. Neuropathol., 15: 193−206 (1991))。
【0116】
正常対象において、ニューロトロフィンは、発達中の交感神経および感覚ニューロンの死を阻止し、成体ラットおよび霊長類におけるコリン作動性ニューロン変性を阻止する(Tuszynski, et.al., Gene Therapy, 3 : 305314 (1996))。結果として生じる前脳基底部の領域における機能性ニューロンの喪失は、ADなど神経変性症状にかかっている対象によって経験される認識衰退と因果関係があると考えられている(Tuszynski, et.al., supra and, Lehericy, et.al., J. Comp. Neurol., 330: 15−31 (1993))。
【0117】
ヒトADにおいて、前脳基底部ニューロン喪失は、直径約1cmの実質内部位にわたって起こる。かかる大領域にわたる罹患ニューロンを治療するには、10個以上の別々のインビボ遺伝子ベクター送達部位でのベクター組成物による治療が望ましい。しかし、前脳基底部への局所注射処置においては、脳の罹患部位は、少ない送達部位(例えば5個以下)の選択で臨床的に重要な数のコリン作動性ニューロンの修復のために十分となるように小さくなる可能性がある。
【0118】
重要なことには、特定のインビボ遺伝子送達部位がニューロン喪失の部位において群を成すために選択される。かかる部位は、磁気共鳴映像法(MRI)および生検を含む多くの周知の方法を使用して臨床的に確認されうる。ヒトにおいては、MRIなど非侵襲的インビボ影像法が好ましいであろう。ニューロン喪失の部位が確認されると、送達部位が定位分布のために選択され、NTNの各単位投与量が500μmで、またはそれ以内で、標的細胞から、かつ別の送達部位から約10mm以内で脳へ送達される。
【0119】
IV.投与要件および送達プロトコール
別の重要なパラメータは標的組織へ送達されるニュールツリンの投与量である。この点で、「単位投与量」は一般にニュールツリン組成物のニュールツリン/mlの濃度を指す。ウイルスベクターについて、ニュールツリン濃度は、ニュールツリン組成物のウイルス粒子/mlの数によって規定されうる。好ましくは、ウイルス発現ベクターを使用するニュールツリンの送達のために、ニュールツリンの各単位投与量は、ニュールツリン組成物2.5〜25μLとなり、ここで組成物は医薬上許容される液体中のウイルス発現ベクターを含み、ニュールツリン組成物ml当たり1010から1015までのニュールツリン発現ウイルス粒子を提供する。かかる高力価は特にアデノ随伴ウイルスに有用である。レンチウイルスでは、力価は通常、低く、実施例に記載されているように決定されたml当たり108〜1010形質導入単位(TU/ml)である。
【0120】
パーキンソン病の治療におけるニュールツリンウイルスの投与に関する指針は、インビボ遺伝子治療を使用するGDNFの送達に関する多くの引例において見出されうる。
【0121】
好ましい実施形態において、投与部位は脳の線条体、特に尾状および/または被殻である。被殻への注射は、脳のさまざまな遠隔領域、例えば、淡蒼球、へんとう体、視床下核、または黒質に位置した標識標的部位でありうる。淡蒼球における細胞の形質導入は一般に、視床における細胞の逆行性標識をもたらす。好ましい実施形態において、(各)標的部位(またはその1つ)は黒質である。注射は線条体と黒質の両方へでもありうる。
【0122】
所定の標的部位内では、ベクター系は標的部位を形質導入しうる。標的細胞は、ニューロン、星状細胞、乏枝神経膠細胞、小膠細胞、または上衣細胞など神経組織において見出される細胞でありうる。好ましい実施形態において、標的細胞はニューロン、特にTH陽性ニューロンである。
【0123】
ベクター系は、好ましくは、直接注射によって投与される。脳(特に線条体)への注射の方法が当技術分野で公知である(Bilang−Bleuel et.al (1997) Proc. AcaDNAti. Sci. USA 94:8818−8823; Choi−Lundberg et.al (1998) Exp. Neurol.154:261−275; Choi−Lundberg et.al (1997) Science 275:838−841; and Mandel et.al (1997) ) Proc. AcaDNAtl. Sci. USA 94:14083−14088)。定位注射が投与されうる。
【0124】
上記のように、脳などの組織における形質導入のために、きわめて少量を使用することが必要であり、したがってウイルス調製は超遠心分離法によって濃縮される。結果として生じる調製物は、少なくとも108t.u./ml、好ましくは、108〜1010t.u./ml、より好ましくは、少なくとも109t.u./mlを有することになる。(力価は、実施例2に記載されているように、ml当たり形質導入単位(t.u./ml)で表される)。導入遺伝子発現の分散の改善は、注射部位の数を増大させ、かつ注射の速度を低下させることによって獲得されうることが見出されている(上記のHorellouとMallet(1997年) )。通常、1〜10個、より一般的に2〜6個の注射部位が使用される。1−5×109t.u./mlを含んで成る用量では、注射の速度は一般に0.1〜10μl/分、通常、約1μl/分である。
【0125】
本発明によって提供される改善されたベクターの高い分泌効率により、臨床効果を得るために注射すべきウイルス組成物は、プレプロNTNをコードするベクターが使用される場合よりも少量となる。
【0126】
ニュールツリン組成物は、マイクロインジェクション、注入、スクレープローディング、エレクトロポレーション、または外科的切開によって送達部位へ直接、組成物を直接送達するために適した他の手段によって標的組織における各送達細胞部位に送達される。送達は、(送達されるニュールツリン組成物の総量によって)約5〜10分間にわたるなど、ゆっくり行われる。
【0127】
当業者は、本発明によって使用される直接送達法がインビボ遺伝子治療に付随する限定的な危険因子、すなわち、導入遺伝子をコードするニュールツリンを有するベクターで非標的細胞の形質導入の可能性を未然に防ぐことを理解するであろう。本発明において、送達は直接であり、送達部位は分泌ニュールツリンの拡散が脳の管理された所定の領域にわたって起こり、標的ニューロンとの接触を最適化すると同時に、非標的細胞との接触を最小限にするように選択される。
【0128】
V.ウイルスベクター
概して、遺伝子治療では患者の細胞へ新しい遺伝物質を移動し、患者に治療上の利点をもたらすことが求められる。かかる利点としては、広範囲の疾患、障害、および他の症状の治療または予防が挙げられる。
【0129】
エクスビボ遺伝子治療法は、単離細胞の修飾を含み、これらは次いで患者へ注入され、移植(graft)され、または移植(transplant)される。例えば、米国特許第4,868,116号明細書、同第5,399,346号明細書、および同第5,460,959号明細書を参照。インビボ遺伝子治療では宿主患者組織をインビボで直接標的化することが求められる。
【0130】
遺伝子導入ベクターとして有用なウイルスとしては、パポバウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレトロウイルスが挙げられる。適切なレトロウイルスとしては、HIV、SIV、FIV、EIAV、MoMLVから成る群が挙げられる。
【0131】
中枢神経系の障害の治療のための好ましいウイルスは、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスである。両方の型のウイルスは細胞分裂なしにゲノムへ一体化することができ、両方の型は神経系、特に中枢神経系における適応用に前臨床動物試験で試験されている。
【0132】
AAVの調製用の方法は当技術分野で記載されており、例えば、米国特許第5,677,158号明細書、米国特許第6,309,634号明細書、および米国特許第6,451,306号明細書は、AAVの中枢神経系への送達の実施例を記載している。
【0133】
特殊で好ましい型のレトロウイルスとしては、細胞を形質導入し、細胞分裂なしにそのゲノムへ一体化することができるレンチウイルスが挙げられる。したがって、好ましくは、ベクターは複製欠損レンチウイルス粒子である。かかるレンチウイルス粒子は、5’レンチウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドシグナルに操作可能に連結したプロモーター、第2鎖DNA合成の起点、および3’レンチウイルスLTRを含んで成るレンチウイルスベクターから製造されうる。神経細胞へのレンチウイルスの調製およびインビボ投与の方法は、米国特許公開第20020037281号明細書(レンチウイルスベクターを使用する神経細胞の形質導入)および米国特許公開第20020187951号明細書(神経変性疾患のためのレンチウイルス介在成長因子遺伝子治療)に記載されている。
【0134】
レトロウイルスベクターは、7〜8kbを有し、かつ細胞感染能を有するとともに、高効率で宿主細胞へ安定に一体化される遺伝物質を有するため、ヒト臨床試験において最も一般的に使用されている。例えば、国際公開第95/30761号パンフレット、国際公開第95/24929号パンフレットを参照。オンコウイルス科は、外因性核酸配列の患者への移動および一体化のために少なくとも1回の標的細胞増殖を必要とする。レトロウイルスベクターはランダムに患者のゲノムへ一体化する。
【0135】
3つのクラスのレトロウイルス粒子が記載されており、マウス細胞に効率的に感染しうる同種指向性、および多くの種の細胞に感染しうる両種性である。第3のクラスとしては、ウイルスを産生した種以外の別の種の細胞に感染しうる異種性レトロウイルスが挙げられる。分裂細胞のゲノムへのみ一体化するその能力は、発達試験における細胞系統を製造し、かつ癌または腫瘍へ治療用遺伝子または自殺遺伝子を送達するためにレトロウイルスを魅力的にした。これらのベクターは、成人患者において細胞分裂の相対的欠如が認められる、癌治療のための中枢神経系において特に有用でありうる。
【0136】
ヒト患者における使用のために、レトロウイルスベクターは複製欠損でなけばならない。これにより、標的組織における感染性レトロウイルス粒子の生成がさらに阻止され−−その代わりに複製欠損ベクターが標的細胞ゲノムへ安定に組込まれる「自家」導入遺伝子になる。一般的に、複製欠損ベクターにおいては、gag遺伝子、env遺伝子、およびpol遺伝子が(他のウイルスゲノムの大部分とともに)削除されている。異種DNAが、削除ウイルス遺伝子の代わりに挿入される。異種遺伝子は内因性異種プロモーター、標的細胞において活性の別の異種プロモーター、またはレトロウイルス5’LTR(ウイルスLTRはさまざまな組織において活性である)の支配下にありうる。一般的に、レトロウイルスベクターは約7〜8kbの導入遺伝子能を有する。
【0137】
複製欠損レトロウイルスベクターは、例えば、遺伝子工学的パッケージング細胞系から、トランスにおける複製およびアセンブリに必要なウイルスタンパク質の供給を必要とする。パッケージング細胞は複製可能ウイルスおよび/またはヘルパーウイルスを放出しないことが重要である。これは、ψシグナルを欠くRNAからウイルスタンパク質を発現し、かつ個別の転写単位からgag/pol遺伝子およびenv遺伝子を発現することによって達成されている。また、一部の第2および第3世代のレトロウイルス(retrivirus)においては、5’LTRはこれらの遺伝子の発現を制御する非ウイルスプロモーターで置換されており、3’プロモーターは近位プロモーターのみを含有するために最小化されている。これらのデザインは、複製可能なベクター、またはヘルパーウイルスの産生をもたらす組換えの可能性を最小限にする。例えば、参照により本明細書で援用される、米国特許第4,861,719号明細書を参照。
【0138】
VI.発現ベクター
本発明において使用するためのニュールツリンの組換え発現のためのベクターの構成は、当業者には詳細な説明を必要としない従来の方法を使用して達成されうる。しかし、検討のために、当業者は、Maniatis et.al., in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982)を参考にしたいであろう。
【0139】
本発明において使用されるキメラ発現構成物は、実施例に記載されているように、例えば、PCRによって所望の断片(シグナル配列およびニュールツリンコード配列)を増幅し、これらを重複型PCRにおいて融合することによって作出しうる。好ましいシグナル配列の一部が比較的短いと、ニュールツリンコード配列を増幅するために使用される5’PCRプライマーは、シグナル配列をコードする配列のほかTATAボックスおよび他の調節要素を含みうる。
【0140】
手短に言えば、組換え発現
ベクターの構成では標準のライゲーション法が使用される。構成されたベクターにおける正確な配列を確認する分析のために、遺伝子は、例えば、メッシング(Messing)らの方法(Nucleic Acids Res., 9: 309−, 1981)、マクサム(Maxam)らの方法(Methods in Enzymology, 65: 499, 1980)、または当業者に周知であろう他の適切な方法を使用する配列である。
【0141】
開裂断片のサイズ分離は、例えば、マニアティス(Maniatis)ら(Molecular Cloning, pp. 133−134,1982)によって記載されている従来のゲル電気泳動を使用して行われる。
【0142】
遺伝子の発現は、転写レベル、翻訳レベル、または翻訳後レベルで制御される。転写開始は遺伝子発現における早期および重大な事象である。これはプロモーターおよびエンハンサー配列に依存し、かつこれらの配列と相互作用する特定の細胞因子によって影響される。多くの遺伝子の転写単位はプロモーター、かつ場合によっては、エンハンサーまたは調節要素から成る(Banerji et.al., Cell 27: 299 (1981); Corden et.al., Science 209: 1406 (1980); and Breathnach and Chambon, Ann. Rev. Biochem. 50: 349 (1981))。レトロウイルスについては、レトロウイルスゲノムの複製に関与する制御要素が末端繰り返し(LTR)に存在する(Weiss et.al., eds., The molecular biology of tumor viruses: RNA tumor viruses, Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982))。モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRは、プロモーターおよびエンハンサー 配列を含有する(Jolly et.al., Nucleic Acids Res. 11: 1855 (1983); Capecchi et.al., In : Enhancer and eukaryetic gene expression, Gulzman and Shenk, eds., pp. 101−102, Cold Spring Harbor Laboratories (NY 1991)。他の有力なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)および他の野性型ウイルスプロモーター由来のものが挙げられる。
【0143】
多くの非ウイルスプロモーターのプロモーターおよびエンハンサー領域も記載されている(Schmidt et.al., Nature 314: 285 (1985); Rossi and deCrombrugghe, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5590−5594 (1987))。静止細胞における導入遺伝子の発現を維持し、増大させるための方法としては、I型コラーゲン(1および2)、SV40、およびLTRプロモーターを含むプロモーターの使用が挙げられる(Prockop and Kivirikko, N. Eng. J. Med. 311: 376 (1984) ; Smith and Niles, Biochem. 19: 1820 (1980) ; de Wet et.al., J. Biol. Chem., 258: 14385 (1983))。
【0144】
本発明の一実施形態によれば、プロモーターは、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター、JeTプロモーター(米国特許第6,555,674号明細書)、SV40プロモーター,および延長因子1アルファプロモーター(EF1−アルファ)からなる群から選択される構成的プロモーターである。
【0145】
誘導性/抑制性プロモーターの例として、Tet−On、Tet−Off、ラパマイシン誘導性プロモーター、Mx1が挙げられる。
【0146】
導入遺伝子発現を推進するウイルスおよび非ウイルスプロモーターの使用に加えて、エンハンサー配列を使用し、導入遺伝子発現のレベルを増大させることができる。エンハンサーは、その固有の遺伝子だけではなく、一部の外来遺伝子の転写活性を増大させうる(Armelor, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70 : 2702 (1973))。 例えば、本発明において、コラーゲンエンハンサー配列は、コラーゲンプロモーター2(I)と使用され、導入遺伝子発現を増大させうる。また、SV40ウイルスに見られるエンハンサー要素を使用し、導入遺伝子発現を増大させることができる。このエンハンサー配列は、そのすべてが参照により本明細書で援用される、Gruss et.al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 943 (1981); Benoist and Chambon, Nature 290: 304 (1981), and Fromm and Berg, J. Mol. Appl. Genetics, 1 : 457 (1982)によって記載されている72の塩基対反復から成る。この反復配列は、さまざまなプロモーターと直列に存在すると多くの異なるウイルスおよび細胞遺伝子の転写を増大させうる(Moreau et.al., Nucleic Acids Res. 9 : 6047 (1981))。
【0147】
別の発現増強配列としては、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素、WPRE、SP163、ラットインスリンイントロンまたは他のイントロン、CMVエンハンサー、およびチキン[ベータ]グロブリンインシュレータ、または他のインシュレータが挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
導入遺伝子発現は、プロモーター活性を調節するサイトカインを使用することにより長期の安定した発現のためにも増大されうる。一部のサイトカインは、コラーゲン2(I)およびLTRプロモーターからの導入遺伝子の発現を調節することが報告されている(Chua et.al., connective Tissue Res., 25: 161−170 (1990); Elias et.al., Annals N. Y. Acad. Sci., 580 : 233−244 (1990)); Seliger et.al., J. Immunol. 141: 2138−2144 (1988) and Seliger et.al., J. Virology 62: 619−621 (1988))。例えば、形質転換成長因子(TGF)、インターロイキン(IL)−1、およびインターフェロン(INF)は、LTRなどさまざまなプロモーターによって推進される導入遺伝子の発現をダウンレギュレートする。腫瘍壊死因子(TNF)およびTGF1はアップレギュレートし、かつこれらを使用し、プロモーターによって推進される導入遺伝子の発現を制御することができる。有用と証明しうる他のサイトカインとしては、塩基性線維芽細胞(bFGF)および表皮性成長因子(EGF)が挙げられる。
【0149】
コラーゲンエンハンサー配列(Coll(E))を有するコラーゲンプロモーターも使用し、その免疫保護状態にもかかわらず処置脳において生成されうるベクターに対する別の免疫反応を抑制することによって導入遺伝子発現を増大させることができる。また、ステロイド、例えば、デキサメタゾンを含む抗炎症薬が、ベクター組成物送達直後に処置宿主に投与され、好ましくは、サイトカイン介在炎症反応が消退するまで投与が継続される。シクロスポリンなど免疫抑制剤も投与し、LTRプロモーターおよびColl(E)プロモーターエンハンサーをダウンレギュレートするインターフェロンの産生を削減し、かつ導入遺伝子発現を削減することができる。
【0150】
ベクターは、Creリコンビナーゼタンパク質、およびLoxP配列をコードする配列など別の配列を含んで成りうる。ノイブラスチンの一時的発現を確実にする別の方法が、結果として、細胞へのCreリコンビナーゼの投与(Daewoong et.al, Nature Biotechnology 19:929−933)またはウイルス構成物へのリコンビナーゼをコードする遺伝子を組込むことによって(Pluck, Int J Exp Path, 77:269−278)、挿入DNA配列の一部の除去がもたらされるCre−LoxP系の使用によるものである。LoxP部位とともにウイルス構成物におけるリコンビナーゼのための遺伝子および構造的遺伝子(ノイブラスチン)を組込むことは、この場合は、結果として、約5日間の構造的遺伝子の発現をもたらす。
【0151】
VII.医薬製剤
本発明において使用するためのニュールツリン組成物を形成するには、発現ウイルスベクターをコードするニュールツリンを医薬上許容される懸濁液、溶液、または乳剤へ配置することができる。適切な溶剤としては、生理的食塩水およびリポソーム製剤が挙げられる。
【0152】
さらに具体的には、医薬上許容される担体としては、非水溶液、懸濁液、および乳剤の滅菌水を挙げることができる。非水性溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、乳剤、または生理的食塩水および緩衝溶剤を含む懸濁液が挙げられる。非経口賦形剤としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガーまたは固定油が挙げられる。
【0153】
静脈内賦形剤としては、液体および栄養補充薬、電解質補充薬(例えばリンガーデキストロースに基づくもの)などが挙げられる。
【0154】
保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在しうる。さらに、ニュールツリン導入遺伝子の組成物が、その後の再構成および本発明による使用のために、当技術分野で公知の手段を使用して凍結乾燥されうる。
【0155】
コロイド分散系も標的遺伝子送達に使用されうる。
【0156】
コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達賦形剤として有用である人工膜小胞である。サイズ範囲が0.2〜4.0μmである大単層小胞(LUV)は、大きな高分子を含有する水性バッファーの実質的な割合をカプセル化しうることが証明されている。RNA、DNA、および無傷ビリオンは水性内部内にカプセル化され、生物学的に活性の形態で細胞に送達されうる(Fraley, et.al., Trends Biochem. Sci., 6: 77,1981)。哺乳類細胞に加えて、リポソームは、植物、酵母、および細菌細胞において操作可能にコードする導入遺伝子の送達に使用されている。リポソームが高利的な遺伝子導入賦形剤であるために、以下の特徴が示されるべきである。すなわち(1)高効率でニュールツリンをコードすると同時にその生物活性を損なうことがない遺伝子のカプセル化、(2)非標的細胞と比べ標的細胞への優先的かつ実質的な結合、(3)高効率での標的細胞の細胞質への小胞の水性内容物の送達、(4)遺伝情報の正確かつ有効な表現(Mannino, et.al., Biotechniques, 6: 682,1988)。
【0157】
リポソームの組成物は通常、リン脂質、特に高相転移温度リン脂質の組合せ、通常、ステロイド、特にコレステロールとの組合せである。他のリン脂質または他の脂質も使用されうる。リポソームの物理特性は、pH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に依存する。
【0158】
リポソーム製造において有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セロブロシド、およびガングリオシドなどホスファチジル化合物が挙げられる。特に有用なのは、ジアシルホスファチジルグリセロールであり、この場合、脂質部分は14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原子を含有し、飽和している。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0159】
リポソームの標的は解剖学的および機構的因子に基づき分類されうる。解剖学的分類は、選択性のレベル、例えば、臓器特異的、細胞特異的、および細胞小器官特異的に基づく。機構的標的は、受動的または能動的であるかどうかに基づき区別されうる。受動的標的では、洞様毛細血管を含有する臓器における網内系(RES)の細胞に分布するリポソームの自然な傾向を利用する。
【0160】
他方、能動的標的は、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、またはタンパク質など特定のリガンドにリポソームを結合し、または局在の天然起源部位以外の臓器および細胞型への標的を達成するためにリポソームの組成物またはサイズを変更することによるリポソームの変化を含む。
【0161】
標的遺伝子送達系の表面はさまざまな方法で修飾されうる。リポソーム標的送達系の場合には、脂質群はリポソームの脂質二重層へ組込まれ、リポソーム二重層との安定した関係で標的リガンドを維持することができる。さまざまな連結群が、脂質鎖標的リガンドと結合するために使用されうる。
【0162】
送達系の別の例としては、本発明に記載されているベクター粒子を産生する能力があるパッケージング細胞の組成物の治療部位への移植が挙げられる。かかる細胞のカプセル化および移植の方法が当技術分野で、特に国際公開第97/44065号パンフレット(細胞治療薬(Cytotherapeutics)から周知である。レンチウイルス粒子を産生する能力があるパッケージング細胞系を選択することによって、治療部位における非分裂細胞の形質導入が得られる。分裂細胞のみを形質導入することが可能なレトロウイルスを使用することによって、形質導入は治療部位における新規(de−novo)分化細胞に限定される。
【0163】
VIII.細胞のカプセル化
カプセル化細胞治療は、宿主内の移植前に半透過性生体適合性材料で細胞を取囲むことによってレシピエント宿主免疫系から細胞を単離する考えに基づく。本発明は、ニュールツリン分泌細胞が免疫アイソレータリーカプセルでカプセル化されるデバイスを含む。「免疫アイソレータリーカプセル」は、レシピエント宿主への移植とともに、デバイスのコアにおける細胞に対する宿主の免疫系の有害作用を最小限にすることを意味する。細胞は、微小孔性膜によって形成された移植可能なポリマーカプセル内にそれらを封入することによって宿主かた免疫単離される。この方法は、宿主と移植組織との間の細胞と細胞の接触を阻止し、直接表示による抗原認識を除去する。使用される膜は、その分子量に基づき抗体および補体など分子の拡散を制御するように調整もされうる(Lysaght et.al., 56 J. 細胞 Biochem. 196 (1996), Colton, 14 Trends Biotechnol. 158 (1996))。カプセル化法を使用することにより、免疫抑制剤の使用の有無によって免疫拒絶なしに細胞を宿主へ移植することができる。有用な生体適合性ポリマーカプセルは通常、液体媒質中に懸濁され、または固定化基質内に固定化される細胞を含有するコア、および生体適合性であり、かつ有害な免疫学的攻撃からコアにおける細胞を保護するのに十分である単離細胞を含有することがない選択透過性基質または膜(「ジャケット」)の周囲または末梢領域を含有する。カプセル化は免疫系の要素をカプセルに入ることを妨げ、それによってカプセル化細胞を免疫破壊から守る。カプセル膜の半透過性は、目的とする生物学的に活性の分子がカプセルから周囲の宿主組織へ容易に拡散することも可能にする。
【0164】
カプセルは、生体適合性材料で製造されうる。「生体適合性材料」は、宿主における移植後に、カプセルの拒絶をもたらし、または、例えば分解により手術不可能にするのに十分な有害な宿主反応を引き起こすことがない材料である。生体適合性材料は、宿主免疫系の要素など大きな分子に対して比較的不透過性であるが、インスリン、成長因子、および栄養素に対して透過性であると同時に、代謝廃棄物が除去されることを可能にする。さまざまな生体適合性材料が、本発明の組成物による成長因子の送達に適している。さまざまな外面形態および他の機械的および構造的特徴を有する多くの生体適合性材料が周知である。好ましくは、本発明のカプセルは、参照により援用される国際公開第92/19195号パンフレットまたは国際公開第95/05452号パンフレット、または米国特許第5,639,275号明細書、同第5,653,975号明細書、同第4,892,538号明細書、同第5,156,844号明細書、同第5,283,187号明細書、または参照により援用される米国特許第5,550,050号明細書によって記載されたものと同様であろう。かかるカプセルは、代謝物、栄養素、および治療薬の通過を可能にすると同時に、宿主免疫系の有害作用を最小限にする。生体適合性材料の要素は、周囲半透膜および内部の細胞支持足場を含みうる。好ましくは、形質転換細胞は、選択透過性膜によってカプセル化される足場へ播種される。糸状細胞支持足場は、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセトニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブトエステル、絹、綿、キチン、カーボン、または生体適合性金属からなる群から選択される生体適合性材料で製造されうる。また、結合線維構造物が細胞移植用に使用されうる(参照により援用される、米国特許第5,512,600号明細書)。生体分解性ポリマーとしては、ポリ(乳酸)PLA、ポリ(乳−コグリコール酸)PLGA、およびポリ(グリコール酸)PGA、およびその同等物が挙げられる。フォーム足場は、移植細胞が付着しうる表面を提供するために使用されている(参照により援用される、PCT国際特許出願第98/05304号明細書)。織メッシュチューブが血管移植片として使用されている(参照により援用される国際公開第99/52573号パンフレット)。また、コアはヒドロゲルで形成された固定化基質から成り、これは細胞の位置を安定化する。ヒドロゲルは、実質的に水から成るゲルの形態での架橋親水性ポリマーの三次元ネットワークである。
【0165】
ポリアクリル酸塩(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/塩化コビル)のほか、その誘導体、コポリマー、および混合物を含むさまざまなポリマーおよびポリマー混合物を使用し、周囲半透膜を製造することができる。好ましくは、周囲半透膜は生体適合性半透過性中空線維膜である。かかる膜、およびそれらを製造する方法は、参照により援用される、米国特許第5,284,761号明細書および同第5,158,881号明細書によって開示されている。周囲半透膜は、参照により援用される、米国特許第4,976,856号明細書または米国特許第4,968,733号明細書によって記載されているものなどポリエーテルスルホン中空線維で形成されている。別の周囲半透膜材料はポリ(アクリロニトリル/塩化コビル)である。
【0166】
カプセルは、生物活性を維持し、製品または機能の送達のアクセスを提供するために適した、例えば、円筒形、長方形、円板状、パッチ状、卵形、星形、または球形を含む構成でありうる。さらに、カプセルは、巻かれまたは包まれてメッシュ状または入れ子構造になりうる。カプセルが移植された後に回収される場合は、移植の部位からカプセルの移動をもたらす傾向がある構成、例えばレシピエント宿主血管へ移動するに十分に小さい球形のカプセルは好ましくない。長方形、パッチ、円板、円筒、および平板など一部の形状は大きな構造的完全性を提供し、回収が望ましい場合には好ましい。
【0167】
マクロカプセルが使用される場合、好ましくは、103〜108細胞がカプセル化され、最も好ましくは、105〜107細胞が各デバイスでカプセル化される。投与量は、少数または多数のカプセル、好ましくは、患者当たり1〜10カプセルを移植することによって制御されうる。
【0168】
足場は細胞外基質(ECM)分子でコーティングされうる。細胞外基質分子の適切な例としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、およびフィブロネクチンが挙げられる。足場の表面もプラズマ照射で処理し、電荷を与えて細胞の付着を増強することによって修正されうる。
【0169】
ポリマー接着剤または圧着、ノッチングおよびヒートシールの使用を含むカプセルを密閉する適切な方法を使用することができる。また、例えば、参照により援用される、米国特許第5,653,687号明細書に記載されているように、適切な「ドライ」シール法も使用されうる。
【0170】
カプセル化細胞デバイスは周知の方法に従って移植される。多くの移植部位が、本発明のデバイスおよび方法のために意図されている。これらの移植部位としては、脳、脊髄を含む中枢神経系(参照により援用される、米国特許第5,106,627号明細書、同第5,156,844号明細書、および同第5,554,148号明細書を参照)、および眼の水および硝子体液(参照により援用される、国際公開第97/34586号パンフレットを参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
ARPE−19細胞系は、カプセル化細胞ベースの送達技術の優れたプラットフォーム細胞系であり、非カプセル化細胞ベースの送達技術にも有用である。ARPE−19細胞系は頑健である(すなわち、細胞系は、中枢神経系または眼内環境における移植など厳しい条件下に生存可能である)。ARPE−19細胞は、治療目的の物質を分泌するように遺伝子組換えが行われうる。ARPE−19細胞は寿命が比較的長い。ARPE−19細胞はヒト起源である。さらに、カプセル化ARPE−19細胞は優れたインビボデバイス生存を有する。ARPE−19細胞は、ごくわずかな宿主免疫反応を引き起こす。さらに、ARPE−19細胞は非発癌性である。
【0172】
カプセルをCNSへ移植するための方法および装置が米国特許第5,487,739号明細書に記載されている。
【0173】
一態様において、本発明は、標的細胞の感染用のウイルスベクターを分泌する生きたパッケージング細胞を含んで成るコアであって、ウイルスベクターは本発明によるベクターであるコアと、前記コアを取囲む外側ジャケットであって、前記ジャケットは透過性生体適合性材料を含んで成り、前記材料は、その上を直径約100nmのレトロウイルスベクターの通過を可能にするように選択された多孔性を有し、前記ウイルスベクターの前記カプセルからの放出を可能にする外側ジャケットとを含んで成る生体適合性カプセルに関する。
【0174】
好ましくは、コアはさらに基質を含んで成り、パッケージング細胞は基質によって固定化されている。一実施形態によれば、ジャケットはヒドロゲルまたは熱可塑性材料を含んで成る。
【0175】
パッケージング細胞のカプセル化のための方法およびデバイスは、参照によりその全体が本明細書で援用される、米国特許第6,027,721号明細書に開示されている。
【0176】
IX.医学的使用および治療方法
一態様において、本発明は、神経系障害の治療用薬物の調製のための本発明によるベクターの使用に関する。神経系障害は末梢神経系または中枢神経系の障害でありうる。
【0177】
治療によって、治癒的治療だけではなく、予防的(preventive)(完全な予防ではない)または予防的(prophylactic)治療も意図される。治療は改善的または対症的でもありうる。
【0178】
好ましくは、CNS障害は神経変性または神経学的疾患である。神経変性または神経学的疾患は、末梢神経、骨髄、脊髄の外傷性病変、脳虚血性ニューロン損傷、神経障害、末梢神経障害、神経因性疼痛、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症と関係がある記憶障害などの病変および外傷性ニューロンに影響を及ぼす疾患でありうる。多発性硬化症の神経変性要素も本発明に従って治療可能である。
【0179】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、神経変性疾患がパーキンソン病である(実施例を参照)。
【0180】
別の好ましい実施形態においては、疾患は筋萎縮性側索硬化症(Amyltrophic Lateral Sclerosis)または脊髄損傷である。
【0181】
本発明のベクターは、網膜色素変性症、黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症など眼疾患の治療にも使用されうる。
【0182】
神経系疾患は、それを必要とする個体に本発明のウイルスベクターの治療有効量、または本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することによって治療されうる。
【0183】
パーキンソン病については、カプセルおよびウイルスベクターの送達は、「投与要件および送達プロトコール」で上述されている。ALSおよび脊髄損傷については、細胞またはウイルスベクターを分泌するニュールツリンを有するカプセルは、髄腔内、脳室内、または腰椎内に送達されうる。脊髄損傷については、送達は病変および/または外傷性ニューロンを有する部位に対してでもありうる。カプセルまたはウイルスベクターの送達は、下位運動ニューロンに近接して頸部/腰部拡張部に対してでもありうる。特にALSについては、本発明の発現構成物をコードする修飾狂犬病ウイルスが罹患筋組織へ注射され、それによって罹患運動ニューロンへの逆行性輸送が達成される。
【0184】
本発明の焦点はインビボ遺伝子治療であるが、それを必要とする個体に、
i.本発明による形質導入された細胞の治療有効量、
ii.形質導入された細胞を含んで成る植込み式デバイス、または
iii.パッケージング細胞系を含んで成る生体適合性デバイス
を移植することによって神経系疾患が治療されうることも意図されている。
【0185】
前記移植は、自家移植、同種移植、または異種移植を含んで成りうる。
【0186】
全部ではないが、大部分の眼科疾患および障害は、3種類の徴候、すなわち、(1)血管形成、(2)炎症、および(3)変性の1つもしくはそれ以上と関係がある。これらの障害を治療するには、本発明のウイルスベクター、治療用細胞、およびカプセル化細胞が、眼へのニュールツリンの送達を可能にする。
【0187】
本発明によるウイルスベクターの送達は、網膜下注射、硝子体内注射、または経強膜注射を使用して行われうる。
【0188】
例えば、糖尿病性網膜症は、血管形成および網膜変性によって特徴づけられる。本発明では、眼内、好ましくは、硝子体内、または眼周囲、好ましくは、テノン嚢下領域のいずれかにNTNを送達するデバイスを移植することによって糖尿病性網膜症を治療ことが意図される。発明者は、本適応のためにカプセル、裸細胞、またはウイルスベクターの硝子体への送達を最も好む。網膜症としては、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、および毒性網膜症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
ブドウ膜炎は、炎症および二次変性を伴う。本発明では、NTNを分泌するカプセルまたは裸細胞の眼内、好ましくは、硝子体または前房の移植によって、または本発明によるウイルスベクターを硝子体に投与することによってブドウ膜炎を治療することが意図されている。
【0190】
網膜色素変性症は、比較すると、一次網膜変性によって特徴づけられる。本発明では、NTNを分泌するデバイスまたは裸細胞の眼内、好ましくは、硝子体の配置によって、または本発明によるウイルスベクターを硝子体に投与することによって網膜色素変性症を治療することが意図されている。
【0191】
年齢関連性黄斑変性は、血管形成と網膜変性の両方を伴う。本発明では、この障害を、本発明によるカプセルまたは裸細胞を使用し、NTNを眼内、好ましくは、硝子体に送達することによって、または本発明によるウイルスベクターを使用し、NTNを眼内、好ましくは、硝子体に投与することによって治療することが意図される。年齢関連性黄斑変性としては、乾燥性年齢関連性黄斑変性、滲出性年齢関連性黄斑変性、および近視性変性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
緑内障は、眼圧の増大および網膜神経節細胞の喪失によって特徴づけられる。本発明で意図される緑内障の治療としては、網膜細胞を緑内障関連性損傷から守り、眼内、好ましくは、硝子体内に、カプセル、裸細胞のウイルスベクターのいずれかによって送達されるNTNの送達が挙げられる。
【0193】
眼内、好ましくは、硝子体内に、発明者は、ニュールツリンの送達を50pg〜500ng、好ましくは、100pg〜100ng、最も好ましくは、1ng〜50ng/眼/患者/日の投与量範囲を意図している。眼周囲送達については、好ましくは、テノン嚢下腔または領域に、1μg/患者/日までのわずかに高い投与量範囲が意図されている。
【0194】
本発明は、眼内新血管形成、多くの眼疾患および障害と関係し、大半の重篤な視力喪失の原因である症状の治療に有用でありうる。例えば、発明者は、網膜虚血関連性眼内新血管形成、糖尿病における失明の主な原因、および多くの他の疾患、患者が角膜移植片不全にかかりやすくなる角膜新血管形成、および糖尿病性網膜症、中心網膜静脈閉塞、およびおそらく年齢関連性黄斑変性に合併する新血管形成の治療を意図している。
【0195】
本発明の一実施形態においては、生物活性ニュールツリンを分泌する生きた細胞がカプセル化され、(球後麻酔下に)眼の硝子体へ外科的に挿入される。硝子体配置のために、デバイスは角膜を通じて移植されうるが、デバイスの一部、または結合部が角膜を通じて突き出る。最も好ましくは、デバイスの全体が硝子体内へ移植され、デバイスの一部が角膜内または角膜を通じて突き出ないことである。好ましくは、デバイスは角膜(または他の適切な眼内構造物)に結合される。結合は縫合用アイレット、または他の適切な固定手段を含んで成りうる(例えば、米国特許第6,436,427号明細書を参照)。デバイスは、所望の予防または治療を達成するのに必要な限り硝子体内に残存しうる。かかる治療としては、例えば、ニューロンまたは光受容体生存の促進、または網膜もしくは脈絡膜の新血管形成の修復、もしくは阻害および/または逆転のほか、ブドウ膜、網膜、および眼神経炎症の阻害が挙げられる。本実施形態は、NTNを網膜に送達するために好ましい。
【0196】
硝子体の配置により、NTNは網膜またはRPEに送達されうる。
【0197】
別の実施形態において、細胞装填デバイスが眼周囲、テノン嚢として周知の腔内または腔下に移植される。本実施形態は、硝子体への移植よりも侵襲的ではなく、したがって一般に好ましい。この投与経路は、RPEまたは網膜へのNTNの送達も可能にする。本実施形態は、脈絡膜の新血管形成および眼神経ならびに眼球血管膜の炎症を治療するために特に好ましい。一般に、この移植部位からの送達は、脈絡膜血管系、網膜血管系、および眼神経へのNTNの循環を可能にするであろう。
【0198】
本実施形態によれば、発明者は、黄斑変性(脈絡膜新血管形成)を治療するために脈絡膜血管系へのNTNの眼周囲送達(テノン嚢下に移植)を好む。
【0199】
本発明のデバイスおよび方法を使用することによるNTNの脈絡膜血管系(眼周囲)または硝子体(眼内)への直接送達は、不明瞭または潜在性の脈絡膜新血管形成の治療を可能にしうる。これは、補助的または維持療法によって再発性脈絡膜新血管形成を削減または予防する方法も提供しうる。
【0200】
投与量は、当技術分野で周知の適切な方法によって変動されうる。これには(1)デバイス当たりの細胞の数、(2)眼当たりのデバイスの数、または(3)細胞当たりのNTN産生レベルの変更が含まれる。発明者は、デバイス当たり103〜108細胞、より好ましくは、デバイス当たり5*104〜5*106細胞の使用を好む。
【0201】
X.宿主細胞
一態様において、本発明は、本発明によるベクターで形質導入された単離宿主細胞に関する。これらの細胞は、好ましくは、コードニュールツリンを正確に分泌し、かつ処理する能力があるため哺乳類宿主細胞である。
【0202】
好ましい種としては、齧歯類(マウス、ラット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル、ヒトから成る群が挙げられる。
【0203】
本発明のベクターでの形質導入の優れた候補である初代培養および細胞系の例としては、CHO、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、ニューロン細胞、胎児細胞、ARPE−19、MDX12、C2C12、HeLa、HepG2、線条体細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロンから成る群が挙げられる。
【0204】
本発明は、遺伝子組換えされてNTNを過剰発現し、かつ患者に移植されて生物活性NTNポリペプチドを局所に送達することができる裸またはカプセル化細胞によるNTNのバイオデリバリーに適した細胞にも関する。かかる細胞は概して治療用細胞と呼ばれうる。
【0205】
本発明の好ましい実施形態において、治療用細胞系は異種不死化遺伝子の挿入で不死化されていない。本発明が、裸細胞、または―好ましくは、カプセル化細胞に関係なく、細胞移植に部分的に適している細胞に関すると、かかる不死化細胞系は、それらがヒト体内で無制御に増殖を開始し、場合によっては腫瘍を形成する固有のリスクがあるため好ましくない。
【0206】
好ましくは、治療用細胞系は接触阻止細胞系である。接触阻止細胞系によって、ペトリ皿で培養されると、密集して成長し、実質的に分化を停止する細胞系が意図されている。これは、限定された数の細胞が単層から逃れる可能性を排除しない。接触阻止細胞は3D、例えば、カプセル内でも成長しうる。カプセル内部でも、細胞は密集して成長し、次いで大幅に増殖速度を落とし、または完全に分化を停止する。特に好ましい型の細胞としては、本来、接触阻止であり、かつ培養で安定した単層を形成する上皮細胞が挙げられる。
【0207】
さらに好ましくは、網膜色素上皮細胞(RPE細胞)である。RPE細胞源は哺乳類網膜からの一次細胞単離によるものである。RPE細胞を回収するためのプロトコールは明確であり(Li and Turner, 1988, Exp. Eye Res. 47:911−917; Lopez et.al., 1989, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 30:586−588)、ルーチンの方法とみなされている。RPE細胞同時移植の大部分の公表された報告では、細胞はラット由来である(Li and Turner, 1988; Lopez et.al., 1989)。本発明によれば、RPE細胞はヒト由来である。単離一次RPE細胞に加えて、培養ヒトRPE細胞が本発明の実施において使用されうる。
【0208】
別の実施形態において、治療用細胞系は、ヒト線維芽細胞系、ヒト星状細胞系、ヒト中脳細胞系、および、好ましくは、TERT、SV40T、またはvmycで不死化されているヒト内皮細胞系からなる群から選択される。
【0209】
不死ヒト星状細胞系を生成するための方法は以前に報告されている(Price TN, Burke JF, Mayne LV. A novel human astrocyte cell line (A735) with astrocyte−specific neurotransmitter function. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 1999 May;35(5):279−88.)。このプロトコールを使用し、星状細胞系を生成することができる。
【0210】
そのプロトコールの以下の3つの変種が、好ましくは、追加のヒト星状細胞系を生成するために行われている。
【0211】
5〜12週齢胎児から切開したヒト胎児脳組織を12〜16週齢組織の代わりに使用することができる。
【0212】
不死化遺伝子v−myc、またはTERT(テロメラーゼ)をSV40T抗原の代わりに使用することができる。
【0213】
レトロウイルス遺伝子導入をリン酸カルシウム沈殿法によるプラスミドでのトランスフェクションの代わりに使用することができる。
【0214】
XI.ニュールツリン産生細胞の支持基質
本発明はさらに、哺乳類神経系または眼への移植前に支持基質でのニュールツリン産生細胞のインビトロ培養を含んで成る。移植前の微小担体への細胞の予備接着は、移植細胞の長期生存を増強するために考えられており、長期の機能的利点を提供する。
【0215】
移植細胞、すなわち、移植NTN分泌細胞の長期生存を増大させるために、移植すべき細胞はインビトロで移植前に支持基質に付着されうる。支持基質が構成されうる材料としては、インビトロインキュベーション後に細胞が接着し、かつその上で細胞が成長しうるとともに、移植細胞を破壊し、またはその生物学的もしくは治療的活性を損なう毒性反応、または炎症反応を誘発することなく哺乳類体内へ移植されうる材料が挙げられる。かかる材料は、合成もしくは天然化学物質であり、または生体起源を有する物質でありうる。
【0216】
基質材料としては、ガラスおよび他の酸化ケイ素、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアリギネート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、アクリロニトリルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリペンテント、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾ゼラチンおよび天然および体系化コラーゲン、デキストランおよびセルロース(例えば、ニトロセルロース)を含む天然および修飾多糖類、寒天、およびマグネタイトが挙げられるが、これらに限定されない。吸収性または非吸収性のいずれかの材料を使用することができる。また、当技術分野で公知である細胞外基質材料も意図されている。細胞外基質材料は市販されており、またはかかる基質を分泌する細胞を成長させ、分泌細胞を除去し、移植される細胞を基質と相互作用させ、これに接着させることによって調製されうる。その上で移植される細胞が成長し、またはそれと細胞が混合される基質材料は、RPE細胞の固有産物でありうる。したがって、例えば、基質材料は、移植されるRPE細胞によって産生され、分泌される細胞外基質または基底膜材料でありうる。
【0217】
細胞接着、生存、および機能を改善するには、固体基質が、場合により、当技術分野で周知の因子によりその外面でコーティングされ、細胞接着、成長、または生存を促進しうる。かかる因子としては、細胞接着分子、細胞外基質、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、グリコアミノグリカン、またはプロテオグリカンもしくは成長因子が挙げられる。
【0218】
あるいは、移植細胞が付着される固体基質は多孔性材料で構成され、成長または生存促進因子もしくは複数の因子は基質材料へ組込まれ、そこからインビボで移植後にゆっくり放出されうる。
【0219】
本発明による支持体に付着されうると、移植使用される細胞は一般に支持体の「外面」上にある。支持体は固体または多孔性でありうる。しかし、多孔性支持体であっても、細胞は介在膜または他のバリアなしに外部環境と直接接触している。したがって、本発明によれば、細胞は、それらが接着する表面が、粒子またはビーズ自体の外側にない多孔性支持材料の内部折り畳みまたは畳み込みの形でありうるとしても支持体の「外面」上にあるとみなされる。
【0220】
支持体の構成は、好ましくは、ビーズにおけるように球形であるが、円筒形、楕円形、フラットシートまたはストリップ、針またはピン状などであってもよい。支持基質の好ましい形態はガラス玉である。別の好ましいビーズはポリスチレンビーズである。
【0221】
ビーズサイズは、直径約10μm〜1mm、好ましくは、約90μm〜約150μmでありうる。さまざまな微小担体ビーズの説明については、例えば、isher Biotech Source 87−88, Fisher Scientific Co., 1987, pp. 72−75; Sigma Cell Culture Catalog, Sigma Chemical Co., St, Louis, 1991, pp. 162−163; Ventrex Product Catalog, Ventrex Laboratories, 1989を参照、これらの引例は参照により本明細書で援用される。ビーズサイズの上限は、望ましくない宿主反応のビーズ刺激によって決定されるが、これは移植細胞の機能を妨げ、または周囲組織に損傷をもたらしうる。ビーズサイズの上限は、投与の方法によっても決定されうる。かかる制限は、当業者によって容易に決定される。
【0222】
XII.ニュールツリンのインビトロ産生
別の態様において、本発明は、ニュールツリンまたはその機能的同等物を500ng/106細胞/24時間以上の量で分泌する能力がある哺乳類細胞に関する。好ましくは、細胞は、少なくとも1000ng/106細胞/24時間、より好ましくは、少なくとも5000、より好ましくは、少なくとも10,000、より好ましくは、少なくとも15,000、より好ましくは、少なくとも20,000、より好ましくは、少なくとも25,000、より好ましくは、少なくとも30,000、より好ましくは、少なくとも35,000分泌することが可能である。実施例1によって示されているように、最良のプラスミドトランスフェクトARPE19細胞は、20,000ng/106細胞/24時間超産生する。発現は、WPREなどエンハンサー要素の包含によってさらに増大されうる(米国特許第6,136,567号明細書)。従来技術のBHK細胞と比べると(Hoane et.al 2000, Experimental Neurology 162:189−193)、これらの量はきわめて高い。
【0223】
かかる高い産生細胞は、ARPE−19細胞、CHO細胞、BHK細胞、R1.1細胞、COS細胞、キラー細胞、ヘルパーT細胞、細胞毒性Tリンパ球、およびマクロファージからなる群から選択されうる。HEK293細胞およびHiB5細胞も適切な生成細胞である。
【0224】
したがって、ニュールツリンまたはその切断もしくは突然変異または生物活性配列変種は、これらの細胞を培養し、培養培地からニュールツリンを回収することによって多量に産生されうる。哺乳類産生ニュールツリンは、生物活性であるために再び折リ重ねられる必要はない。別の利点は、ニュールツリンが成熟ペプチドとして分泌され、プロペプチドを含まないことである。本発明者によって、プレプロニュールツリンとしてのニュールツリンの発現が結果として、GFRα1またはGFRα2に結合することがなく、したがって生物活性ではない、プロニュールツリンの分泌をもたらすことが証明されている。
【0225】
これらのニュールツリン産生細胞は同様に治療的目的に使用され、生物活性ニュールツリンの局所送達のために裸(支持または非支持)細胞またはカプセル化細胞のいずれかとして移植されうる。
【0226】
(実施例)
実施例1:ニュールツリン構成物によるインビトロトランスフェクション
材料と方法
ゲノムNTN配列のクローン化
PureGeneキット(ジェントラ(Gentra)、バイオテック・ライン(Biotech Line)、デンマーク)を使用して、ヒトゲノムNTNをHEK293細胞系(ATCC、米国)から精製したゲノムDNAからクローン化した。プライマーNTNゲノム.1s+BamHI(5’−TATAGGATCCGGAGGACACCAGCATGTAG−3’、配列番号52)およびNTNゲノム.1as(5’−TCGCCGAGGATGAATCACCA−3’、配列番号53)によるPCRをテンプレートとしてHEK293gDNAを使用して行った。pfxポリメラーゼ(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)を5%DMSO(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)で補充したその対応バッファーにおいて使用した。得られたPCR断片を、BamHIおよびXhoI制限部位を使用することにより、pcDNA3neo(インビトロジェン(Invitrogen))の特注誘導体であるpNS1n(ニューロサーチ(NeuroSearch)でクローン化し、結果としてベクターpNS1n.hNTNゲノムを得た。これは結果として成熟NTN(配列番号7)をコードする配列のクローン化をもたらした。
【0227】
ベクター構成
IgSP−NTN発現ベクターpNS1n.IgSP.NTNのクローン化:プライマーNTNs−IgSP.フラップ(5’−GGTGAATTCGGCGCGGTTGGGGGCGCGGCCT−3’、配列番号54)およびNTN−594as+XhoI(5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’、配列番号55)を使用することにより、pNS1n.hNTNゲノムベクターからPCRによってNTNの成熟断片を増幅した。第2のPCR反応において、プライマーIgSPKozak1s+BamHI(5’−TATAGGATCCGCCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATC−3’、配列番号56)およびIgSPas−NTN.フラップ(5’−CCAACCGCGCCGAATTCACCCCTGTAGAAAG−3’、配列番号57)を使用することにより、pNUT−IgSP−CNTFベクター(米国特許第6,361,771号明細書)からIgSP配列を増幅した。第3のPCR反応において、2つの断片を重複によって融合した。等量の2つの産物をテンプレートとして、プライマーIgSPKozak1s+BamHIおよび NTN−594as+XhoIとともに使用した。
【0228】
プラスミドベースの発現ベクターを生成するために、結果として生じる断片をBamHI/XhoIで消化したpNS1nでクローン化した。このベクターにおいて、IgSP−NTN配列はCMVプロモーターの転写制御下に配置される(図3を参照)。さらに、ベクターは、哺乳類細胞で発現されるとG418抵抗性を与えるNeo遺伝子を含有する。IgSP−NTNをコードする断片のヌクレオチド配列は図13に記載されている。
【0229】
細胞培養
自然に発生するヒト網膜色素上皮細胞系(Dunn et.al. 1996)であるARPE−19を37℃下、5%CO2で成長させた。成長培地は、10%ウシ胎仔血清(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)で補充したグルタマックス(Glutamax)とのDMEM/栄養ミックスF−12(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)で構成された。細胞は1:5の比で約週2回継代された。
【0230】
一時的トランスフェクション試験
ARPE−19細胞を一連のNTN発現ベクターでトランスフェクトした。手短に言えば、細胞を6ウェルプレート(コーニング・コスター(Corning Costar)、バイオテック・ライン(Biotech Line)、デンマーク)に105細胞/ウェルの密度で接種した。翌日、Fugene6(ロシュ(Roche)、ドイツ)を使用し、メーカーの説明に従って、細胞をNTN発現プラスミドで二重のウェル中でトランスフェクトした。72時間のトランスフェクション後、サンプルアリコートをRetL2およびNTN ELISAのために細胞上清から取った。細胞をウェスタンブロット分析のために回収した。
【0231】
安定トランスフェクション
ARPE−19細胞をT150「剥離(peel−off)」フラスコ(TPP、スイス)中に2.4*106細胞/フラスコの密度で接種した。Fugene6を使用して10μgのDNA/フラスコで細胞をトランスフェクトした。72時間のトランスフェクション後、800μg/mlのG418(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)を安定クローンの選択のために成長培地に添加した。個別クローンの形成後、単一クローンをその後の分析のために拡大した。
【0232】
NTN ELISA
この従来の免疫アッセイにおいて、NTNは結合され、NTN特異的抗体を使用してサンプリから検出される。手短に言えば、Maxisorpプレート(ヌンク(Nunc)、デンマーク)を1μg/mlのモノクローナル抗ヒトNTN抗体(#MAB387、R&D系、TriChem、デンマーク)でコーティング溶液(0.0025M Na2CO3/0.0025 M NaHCO3、pH=8.2)中、16時間4℃下のインキュベーションによってコーティングした。PBST(PBS(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)中0.05%Tween−20(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)中での洗浄後、ウェルをブロッキングバッファー(PBS中1%ウシ血清アルブミン(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)および5%ショ糖)中、1時間、室温下にブロックした。PBST中での洗浄後、基準としてNTN産生(prodicing)細胞および組換えNTN(#387−NE、R&D系、TriChem、デンマーク)から培地サンプルのARPE−19成長培地中の希釈液で3時間、室温下にインキュベートした。ブロッキングバッファー中の1μg/mlポリクローナル抗ヒトNTN抗体(#AF387、R&D系、TriChem、デンマーク)をウェルに添加し、16時間4℃下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、1%正常マウス血清(DAKO、デンマーク)で補充したブロッキングバッファー中0.02%抗ヤギHRP(DAKO、デンマーク)中でウェルを2時間、室温下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、TMB基質溶液(プロメガ(Promega)、Ramcon、デンマーク)を添加し、インキュベーションを15分間、室温下に行った。1N HClのウェルへの添加によって色形成を停止し、ELK−800プレートリーダー(Cambrex、デンマーク)を使用してA450を測定した。
【0233】
RetL2 ELISA
RetL2 ELISAによりNTN特異的GFRα2受容体と結合したNTNの複合体とのRet−Ap接合体が検出される。手短に言えば、Opti−plateプレート(パッカード・インスツルメンツ(Packard Instruments)、Perkin Elmer、デンマーク)を50mM NaHCO3(pH=9.6)中100μl 1μg/mlヤギ抗ヒトFc(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ(Jackson Immunoresearch Laboratories)、TriChem、デンマーク)で16時間、4℃下にコーティングした。PBST中で洗浄後、PBST中0.2%I−Block(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で1時間、室温下にブロックした後、PBST中で簡単に洗浄した。ARPE−19成長培地における組換えNTNのNTN産生細胞および希釈液のサンプルをその後にRET−AP順化培地(バイオゲン(Biogen)、米国)中1μg/mlのGFRα2/Fc融合タンパク質(R&D系、TriChem、デンマーク)を含むウェルで1.5時間、室温下にインキュベートした。次いで、ウェルを最初にPBST中で洗浄し、次にAPバッファー(200mM Tris(pH=9.8)、10mM MgCl2)で洗浄後、APバッファー中で10%サファイアエンハンサー(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)および2%CSPD(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で30分間のインキュベーションを行った。発光を定量化した。
【0234】
ウェスタンブロット
細胞をPBS中で洗浄し、96℃サンプルバッファー(2%SDS、0.4M Tris(pH=8.0)、10mMジチオスレイトール、および0.25Na3VO4)中で溶解した。メーカーの推奨(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)、デンマーク)に従ってMultiPhor II系を使用してSDS−PAGEを変性させることによってタンパク質を分離し、PVDF膜(バイオラード(BioRad)、デンマーク)にブロッティングした。膜の免疫染色のために、標準ウェスタンブロット法を使用した(Maniatis、XX)。ポリクローナルNTN#AF477抗体(R&Dシステムズ(Systems)、TriChem、デンマーク)を検出抗体として使用した。ECL系(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)、デンマーク)を使用して膜を展開し、フィルム露光にさらした。
【0235】
結果
IgSP要素は培養細胞からのNTN放出の大幅な増大を介在する
一時的にトランスフェクトした細胞から、IgSP発現ベクターは結果として、wtNTNおよびpp(GDNF)−NTNプラスミドと比べ、細胞培養上清へのNTN分泌の強い増大をもたらした。GDNFシグナルペプチドおよびプロペプチドの使用も、天然NTNシグナルペプチドと比べ分泌を改善したが、IgSP要素とは同程度ではなかった。NTN分泌に対するIgSPの好ましい効果は、NTNに対する抗体を使用する標準のELISA法によって(図4)、および機能的RetL2ELISAアッセイによって(図5)検出されたが、ここでNTNのその受容体、GFRα2との結合は、GFRコレセプターRetとの三元複合体の形成によって検出される。特に、野性型NTNのプレプロペプチドをGNDFのものと置換することによって、組換え細胞から豊富に発現されることが知られた因子は結果として、両方のELISAによって測定されたように、NTNタンパク質発現の明らかな増大をもたらさなかった。
【0236】
プロペプチド要素の欠如は細胞内NTNタンパク質処理に影響を及ぼすとみられる
トランスフェクト細胞の溶解物からのタンパク質を対照として組換えニュールツリンで変性ゲル電気泳動によって分離した。IgSP−NTNトランスフェクト細胞からの溶解物を装填したレーンにおいてのみ、組換えニュールツリンとサイズが同様のバンドが確認された(図6、6.4と21.3kDaマーカーとの間に位置したバンド)。wtNTNとpp(GDNF)−NTNトランスフェクト細胞の両方について、NTN抗体によって検出された顕著なタンパク質は、細胞からの組換えNTNおよびIgSPよりも大幅に高い分子量を有した。これは、IgSP−NTNがインビトロで相当に十分に発現される所見と併せて、wtNTNおよびpp(GDNF)−NTNではなく、IgSP−NTNが、細胞内機構によって分泌に対して正確に処理されることを示す。
【0237】
単離クローンからの高いNTN発現
NTNを安定に発現するARPE−19細胞は、pNS1n.IgSP.NTNでのトランスフェクションによって単離後、G418でクローンの選択を行った。NTN発現レベルの範囲は単離クローンから確認された(図7)。最も高い生成細胞、ARPE−19/pNS1n.IgSP.NTN#24は、2000ng NTN/105細胞/24時間まで生成した。
【0238】
実施例2:ニュールツリンによるラットのインビボ形質導入
材料と方法
レンチウイルスIgSP−NTN構成物の生成およびウイルス保存
レンチウイルス構成物を生成するために、IgSP−NTN断片(実施例1)を、BamHIおよびXhoIでGFPを切断し、代わりにBamHI/XhoI断片としてIgSP−NTNを挿入することによって、pHR’−CMV−GFP−W−SINへクローン化した(図8)。pHR’−CMV−GFP−W−SINは、自己不活性化レンチウイルス移入構成物の誘導体、WPRE要素を含むpHR’−SIN−18である(Dull et.al., J.Virol., 72(11):8463−71(1998); Zufferey et.al., J.Virol., 72(12):9873−80(1998): Zufferey et.al. J.virol., 73 (4):2886−92 (1999))。
【0239】
複製欠損LV−sC.IgSP.NTN.Wウイルス粒子は、pMD.G(VSV−G疑似タイピングベクター)およびpBR8.91(パッケージングベクター)とpHsC.IgSP.NTN.Wの293T細胞への同時トランスフェクションによって生成され(Zufferey et.al., Nat. Biotech., 15:871−75(1997))、transで必要なウイルスタンパク質を提供する。手短に言えば、10%FCS(Life Technologies, 10099−141)で補充した4.5g/lグルコースおよびグルタマックス(Life Technologies, 32430−027)を含むDMEM中で培養した293T細胞を、トランスフェクションの前日に、T75フラスコに接種する(2×106細胞/フラスコ)。各T75フラスコで細胞は、メーカーの指示に従いリポフェクタミン+を使用して、5μg pMD.G、15μg pBR8.91、および20μgの移入ベクターでトランスフェクトされる。細胞上清を含有するウイルスがトランスフェクションの2〜3日後に収集され、0.45μm酢酸セルロースまたはポリスルホンフィルタを通じてろ過滅菌され、50,000xgで90分間、4℃下に超遠心分離によって濃縮される。2回目の超遠心分離後、濃縮ウイルスペレットはDMEM中に再懸濁され、分割され、−80℃下に保存される。ウイルス力価を測定するために、逆転写(RT)活性が評価され(Cepko and Pear, Current Protocols in Molecular Biology, 9.13.5−6, supplement 36)、形質導入単位(TU)/mlが、基準として既知の形質導入活性を有するEGFPレンチウイルスを使用して測定されたRT活性から計算される。
【0240】
同様のウイルスバッチをヒトおよびマウスプレプロNTN、プレプロGDNF、およびGFPで作った。
【0241】
外科的方法
合計21匹の若年成体雌スプラグ・ドーレイ(Sprague−Dawley)ラット(B&Kユニバーサル(Universal)、ストックホルム、スウェーデン)を使用し、12時間明:暗サイクル下に収容し、ラットには食事と水を自由に与えた。ローゼンブラッド(Rosenblad)ら(2000年)に従ってウイルス注射および6−OHDA病変を行った。注射手順は図9に示されている。手短に言えば、イソフロウラン麻酔下(1.5〜2%)、GFP、hNTN、mNTN、IgSP−hNTN、またはGDNFに対するcDNAを有するrLVベクターを動物に注射した(n=6/群)。4回の沈殿(1×108t.u./mLの0.5μl/沈殿)を以下の配位で2本の針管に沿って線条体へ行った:AP=1.0mm、ML=2.6mm、DV1=5.0mm、DV2=4.5mm、およびAP=0.0mm、ML=3.7mm、DV1=5.0mm、DV2=4.5mm。歯バーを−3.3mmに設定した。rLV注射の14日後、動物を再麻酔し、10μlハミルトン(Hamilton)注射器で20μg 6−OHDA(シグマ(Sigma):遊離塩基として計算し、0.02%アスコルビン酸で補充した3μlの冷えた生理食塩水中に溶解)の単一沈殿を以下の配位で右線条体へ注射した:AP=1.0mm、ブレグマに対してML=3.0mm、硬膜に対してDV=5.0mm、および門歯バーを0.0mmに設定した。
【0242】
組織学
6−OHDA注射の21日後、動物をペントバルビタールナトリウムで深く麻酔し、1分間生理食塩水で心臓灌流した後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中冷えた4%PFA200mlで灌流した。脳を切開し、同じ固定剤中で3〜4時間、後固定し、次いで25%ショ糖/0.1Mリン酸緩衝液へ48時間移した。5組の40μm切片を凍結ミクロトーム上で切断した。ヤギ抗hNTNまたはヤギ抗hGDNF一次抗体(R&D系、2%正常ウマ血清および0.25%トリトンX−100を含有するリン酸緩衝生理食塩水中1:2000)で切片をインキュベートした後、ビオチン化ウマ抗マウス(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、米国)で2時間インキュベーションを行い、かつメーカーの指示(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、米国)に従って、アビジン−ビオチン複合体(ABC)キットによってhNTNおよびhGDNFの免疫組織化学を行った。最後に、色反応を色原体として3’3’−ジアミノベンジジンを使用して発現させた。
【0243】
結果
hNTNの免疫組織化学的局在:
hNTNに対して染色した切片の検査は、野性型hNTNコードレンチウイルスベクター注射(rLV−hNTN)を投与した動物の線条体において、形質導入された線条体細胞の近くで細胞外免疫反応は確認されなかった(図10)。その一方で、rLV−IgSPhNTNの注射を投与した動物は顕著な染色パターンを有し、免疫反応性物質が形質導入部位の周りの線条体において(細胞外に)散在性に広がった(図10)。
【0244】
hNTNの機能性:
hNTNの神経保護的効果を黒質TH+(ドーパミン作動性)ニューロンを計算することによって評価した。無傷側と比べると、6−OHDA病変およびrLV−GFPウイルスを投与した動物は、黒質に残存する明らかにわずかなTH+ニューロンを有した(23+/−3.4%)。rLV−hNTNを受けた動物は、TH+ニューロンにおける顕著な病変誘発削減も示した(30+/−7.7%残存)。それに反して、rLV−IgSPNTN処置群では、病変側のTH+ニューロンの数は無傷側の数の91+/−1.2%であり、これはGDNF治療を受ける群において確認されたもの(86+/−3.2%)と同様であった。
【0245】
実施例3:NTN発現構成物の調製
ベクター構成物。pHR’−CMV.SIN.hNTN.WPRE:野生型ヒトプレプロNTNを以下のようにpHR’−CMV.SIN−PLT7.WPREクローン化した。すなわち、(Zufferey et.al. 1998; Zufferey et.al., 1999)のようにウッドチャック(Woodchuck)調節後要素(WPRE)を含有するpHR’−CMV−SIN−18の誘導体であるpHR’−CMV.SIN−PLT7.WPREを、BamHIとXhoI部位との間のポリリンカー部位の添加によって(未公表結果)、BamHIおよびXhoIで消化した。ヒトプレプロNTNをベクターpJDM2174(=pBluescriptにおけるヒトプレプロNTN)(ジェフ・ミルブラント(Milbrandt)から寄贈)からBamHI、XhoI断片として切断し、BamHI/XhoI消化レンチウイルス移入ベクターへライゲートした。ヒトプレプロNTNを対照として使用した。
【0246】
pNS1n.hNTN:実施例1に記載されているように調製した。
【0247】
pNS1n.ppGDNF.hNTN:GDNFのプレプロ領域を以下のプライマーを使用して完全長ヒトGDNFクローンからPCR増幅した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGAATTCGCCACCATGAAGTTATGGGATGTCG−3’(配列番号58)、および3’プライマー:5’−CCAACCGCGCCCTTTTCAGTCTTTTAATGG−3’(配列番号59)。3’プライマーは、3’末端における成熟NTNの5’末端の10個の塩基を含有する。成熟ヒトNTNを以下のプライマーを使用してヒト完全長NTN(pJDM2174)からPCR増幅した。すなわち、5’プライマー: 5’−ACTGAAAAGGGCGCGGTTGGGGGCGCGGCCT−3’(配列番号60)、および3’プライマー:5’−TAGACTCGAGGTCGACGGTATC−3’(配列番号61)。5’プライマーは、ヒトGDNFのプロ領域の3’末端の10個の塩基を含有する。プレプロGDNFを以下のプライマーを使用して重複型PCRによって成熟NTNに融合した。すなわち、5’プライマー:5’− TATAGAATTCGCCACCATGAAGTTATGGGATGTCG−3’(配列番号58)、および 3’プライマー:5’−TAGACTCGAGGTCGACGGTATC−3’(配列番号61)。結果として生じるプレプロGDNF成熟NTN断片をEcoRIおよびXhoIで消化し、発現ベクターpNS1n(上記)のEcoRIとXhoI部位間に挿入した。ヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドは図14に示されている。
【0248】
pHR’−CMV.SIN.IgSP.NTN.WPREおよびpNS1n.IgSP.NTN:マウス免疫グロブリン重鎖遺伝子V−領域(GenBank acc. #:M18950)(IgSP)からのシグナルペプチドを、以下のプライマーを使用してpNUT−IgSP−hCNTF(米国特許第6,361,741号明細書を参照)からPCR増幅した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGGATCCGCCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATC−3’(配列番号56)、3’プライマー:5’−CCAACCGCGCCGAATTCACCCCTGTAGAAAG−3’(配列番号57)。3’プライマーは、ヒト成熟NTN配列の5’末端から10個の塩基を含有する。ヒト成熟NTNを、以下のプライマーを使用して完全長成熟NTN(pNS1n.NTNゲノム、実施例1を参照)を含有するヒトNTNのゲノムクローンからPCR増幅した。すなわち、5’プライマー:5’−GGTGAATTCGGCGCGGTTGGGGGCGCGGCCT−3’(配列番号54)、および3’プライマー:5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’(配列番号55)。5’プライマーは、IgSP配列の3’末端から10個の塩基を含有する。IgSPヒト成熟NTN配列をテンプレートとしてIgSPおよびヒト成熟NTNPCR断片(上記)および以下のプライマーを使用して重複型PCRによって生成した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGGATCCGCCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATC−3’(配列番号56)、および3’プライマー:5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’(配列番号55)。ヒト成熟NTNに融合したIgSPを含有する最後のPCR断片をBamHIとXhoIで消化し、pHR’−CMV.SIN−PLT7.WPRE(上記)とpNS1n(上記)のBamHIとXhoI部位との間でクローン化した。ヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドは図13に示されている。
【0249】
pNS1n−dプロNTN:ヒトデルタ−プロNTN DNA配列をテンプレートとして完全長成熟NTN(pNS1n.NTNゲノム、実施例1を参照)のゲノムクローンおよび以下のプライマーを使用して1つのPCR反応において生成した。すなわち、5’プライマー:5’−TATAGGATCCGCCACCATGCAGCGCTGGAAGGCGGCGGCCTTGGCCTCAGTGCTCTGCAGCTCCGTGCTGTCCGCGCGGTTGGGGGCGCGG−3’(配列番号62)、および3’プライマー:5’−TATACTCGAGTCACACGCAGGCGCACTCGC−3’(配列番号55)。デルタプロNTN PCR断片をBamHIとXhoIで消化し、pNS1nのBamHIとXhoI部位との間でクローン化した(上記)。デルタプロNTNのヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドは図14に示されている。
【0250】
レンチウイルスベクターの製造。複製欠損ウイルス粒子を、異なる移入ベクター構成物の各々をpMD.G(VSV−G疑似タイピングベクター)およびpBR8.91(パッケージングベクター)(Zufferey et.al.,1997)と293T細胞への同時トランスフェクションによって生成し、transで必要なウイルスタンパク質を提供した。手短に言えば、10%FCS(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))で補充した4.5g/lグルコースおよびグルタマックス(Glutamax)(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen))を含むDMEM中で培養した293T細胞を、トランスフェクションの前日に、20本のT75フラスコに接種した(2×106細胞/フラスコ)。各T75フラスコで細胞は、メーカーの指示に従いリポフェクタミン+(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen))を使用して、5μg pMD.G、15μg pBR8.91、および20μgの移入ベクターでトランスフェクトした。細胞上清を含有するウイルスをトランスフェクションの2〜3日後に収集し、0.45μm酢酸セルロースまたはポリスルホンフィルタを通じてろ過滅菌し、50,000xgで90分間、4℃下に超遠心分離によって濃縮した。2回目の超遠心分離後、濃縮ウイルスペレットをDMEM中に再懸濁し、分割し、−80℃下に保存した。ウイルス力価を測定するために、逆転写(RT)活性を評価し(Cepko and Pear, Current Protocols in Molecular Biology, 9.13.5−6, supplement 36)、形質導入単位(TU)/mlを 基準として既知の形質導入活性を有するEGFPレンチウイルスを使用して測定されたRT活性から計算した。
【0251】
実施例4:発現NTNタンパク質の分析。
細胞培養。自然に発生するヒト網膜色素上皮細胞系(Dunn et.al. 1996)であるARPE−19を10%ウシ胎仔血清(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)で補充したグルタマックス(Glutamax)とのDMEM/栄養ミックスF−12(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)で構成された培地中で成長させ、HEK293およびCHO細胞を10%ウシ胎仔血清(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)を有するDMEM(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)で成長させ、CHO細胞用の培地にはさらに20mg/L Lプロリンを補充した。ARPE−19細胞は、ATCC(受入番号CRL−2302)から入手可能である。ARPE−19、HEK293、およびCHO細胞を37℃下に成長し、HiB5細胞を5%CO2中33℃下に成長させた。
【0252】
一時的トランスフェクション試験。細胞を6ウェルプレート(コーニング・コスター(Corning Costar)、バイオテック・ライン(Biotech Line)、デンマーク)に105細胞/ウェルの密度で接種した。翌日、異なる発現プラスミドで三重のウェル中で細胞をトランスフェクトした。ARPE−19細胞はFugene6および3μgプラスミド/ウェルを使用してトランスフェクトしたが、その他の3つの細胞系は、メーカーに指示に従って2μgプラスミド/ウェルおよびリポフェクタミン・プラス(インビトロジェン(Invitrogen)、デンマーク)を使用して三重のウェル中でトランスフェクトした。翌日、新鮮成長培地をウェルに添加し、馴化培地を収集し、細胞を回収する前にさらに24時間、細胞をインキュベートした。EGFP用のcDNAを含有する同じベクターと平行にトランスフェクトしたウェルにおけるEGFP発現の評価によって、十分なトランスフェクション効率を確実にした。
【0253】
NTNウェスタンブロット。細胞をPBS中で洗浄し、96℃ホットサンプルバッファー(2%SDS、100mM DTT、60mM Tris、pH7.5、ブロムフェノールブルー)中で溶解した。5倍濃縮サンプルバッファーを馴化培地に添加した。一部の実験では、NTNを馴化培地からGFRα2によって捕獲した。これは、50mM Na2CO3/NaHCO3、pH9)中でヤギ抗ヒトFc(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、米国))でコーティングされていたELISAプレート中3時間サンプルを一夜インキュベートした後、PBS中1%BSA中で1時間ブロックし、その後に0.1%HSAとともにPBS中GFRα2−Ig融合タンパク質(R&D系、英国)で1時間インキュベートすることによって行われた。サンプルによるインキュベーション後、ウェルをPBST中で洗浄し、96℃サンプルバッファーを添加した。サンプルを5分間煮沸し、次いでPVDF膜にエレクトロブロットされた8〜18%勾配SDSゲル上で電気泳動した。1:500に希釈したポリクローナルNTN抗体(#AF477、R&D系、英国)の後、HRP連結抗ヤギ抗体を使用してNTNを検出した。ECL+系(アマシャム・ライフ・ライフサイエンス(Amersham Life Science))を使用する化学発光によってバンドを検出した。
【0254】
GFRa2/GFRa1 ELISA。GFRα2ELISAにより、GFRα2受容体と結合されたNTNの複合体とのRetアルカリホスファターゼ(Ret−AP)接合体(Sanicola et.al. 1997)の結合が検出される。手短に言えば、Opti−plateプレート(パッカード・インスツルメンツ(Packard Instruments)、Perkin Elmer、デンマーク)を50mM NaHCO3(pH=9.6)中100μl 1μg/mlヤギ抗ヒトFc(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ(Jackson Immunoresearch Laboratories)、TriChem、デンマーク)で16時間、4℃下にコーティングした。PBST中で洗浄後、PBST中0.2%I−Block(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で1時間、室温下にブロックした後、PBST中で簡単に洗浄した。ARPE−19成長培地における組換えヒトNTN(R&Dシステムズ(Systems)英国)のNTN産生細胞および標準希釈液のサンプルをその後に、RET−AP融合タンパク質発現293EBNA細胞(バイオゲン(Biogen)Idec、米国から寄贈)からの馴化培地中1μg/mlのGFRα2/Fc融合タンパク質(R&Dシステムズ(Systems)英国)を含むウェルで1.5時間、室温下にインキュベートした。次いで、ウェルを最初にPBST中で洗浄し、次にAPバッファー(200mM Tris(pH=9.8)、10mM MgCl2)で洗浄後、APバッファー中で10%サファイアエンハンサー(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)および2%CSPD(トロピックス(Tropix)、Roche、デンマーク)で30分間のインキュベーションを行った。マイクロベータ・トリルック・カウンタ(Microbeta Trilux Counter)(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、デンマーク)を使用して発光を定量化した。馴化培地でのGFRα1との結合活性を同様に測定したが、ただし、GFRα2/Fcの代わりに1μg/mlのGFRα1/Fc融合タンパク質(R&D系、英国)を添加した。サンプル中の相対GFRα2結合活性を、組換えNTNの標準曲線を使用し、かつ1に設定したwt構成物でトランスフェクトした細胞からの値で計算した。
【0255】
NTN ELISA。Maxisorpプレート(ヌンク(Nunc)、デンマーク)を1μg/mlのモノクローナル抗ヒトNTN抗体(#MAB387、R&Dシステムズ(Systems)、英国)でコーティング溶液(2.5mM Na2CO3/2.5mM NaHCO3、pH=8.2)中、16時間4℃下のインキュベーションによってコーティングした。PBST(PBS中0.05%Tween−20(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)中での洗浄後、ウェルをブロッキングバッファー(PBS中1%ウシ血清アルブミン(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、デンマーク)および5%ショ糖)中、1時間、室温下にブロックした。PSBST中での洗浄後、NTN産生細胞からの希釈培地サンプルで3時間、室温下にインキュベートした。組換えNTN(#387−NE、R&Dシステムズ(Systems)、英国)を標準として使用した。ブロッキングバッファー中の1μg/mlポリクローナル抗ヒトNTN抗体(#AF387、R&Dシステムズ(Systems)、英国)をウェルに添加し、16時間4℃下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、1%正常マウス血清(DAKO、デンマーク)で補充したブロッキングバッファー中0.02%抗ヤギHRP(DAKO、デンマーク)中でウェルを2時間、室温下にインキュベートした。PBST中で洗浄後、TMB基質溶液(プロメガ(Promega)、Ramcon、デンマーク)を添加し、15分後の1N HClの添加によって色形成を停止した。ELK−800プレートリーダー(Cambrex、デンマーク)を使用してA450を測定した。
【0256】
インビトロでのNTNの発現。ヒトNTNは197アミノ酸(aa)プレプロタンパク質を19aa推定シグナルペプチドの後、76aaのプロ領域でコードする。プロNTNは配列RXXRでタンパク質分解的に開裂され、102aaの成熟NTNを生成する。活性NTNの分泌に対するプレプロ部の影響を特徴づけるために、発明者は異なる構成物を作った(図15A)。生物学的に活性のGDNFがトランスフェクション後にさまざな細胞型から容易に分泌されるため、GDNFのプレプロ部を有するNTN構成物を作った(ppG−NTN)。また、プロ部がない2つの構成物が確立され、1つはwtNTNシグナルペプチド(dpro−NTN)を有し、1つはIgSP(IgSP−NTN)を有する。DNA構成物を哺乳類発現ベクターpNS1nへサブクローン化し、一時的にHEK293細胞、CHO細胞、ラット海馬細胞系HiB5、またはヒト網膜上皮細胞系ARPE−19へトランスフェクトした。NTNに対する抗体を使用するウェスタンブロットを細胞溶解物および馴化培地で行った。図15Bは、HEK293細胞からの結果を示す。同様の結果はその他の3つの細胞系で得られた(データは示さず)。wtNTNでトランスフェクトされた細胞において、サイズがモノマープロNTNに対応するバンド(〜22kDa)が細胞溶解物および馴化培地において検出された。GDNFプロ領域を有するNTNに対応する、より小さなサイズのバンド(〜19.6kDa)が、ppG−NTNでトランスフェクトされた細胞からの細胞溶解物および馴化培地で確認された。したがって、NTNのプロ形態は発現され、分泌されるが、試験細胞系において検出可能なレベルで処理されない。dpro−NTNまたはIgSP−NTNでトランスフェクトされた細胞において、サイズが成熟モノマーNTNに対応するバンド(〜12.5kDa)が溶解物および馴化培地で確認された。NTNのレベルは、wtNTN SPよりもIgSPによる構成物を使用すると明らかに高かった。
【0257】
次いで、発明者は、NTNのその受容体、GFRα2との結合がGFRαコレセプターRetとの三元複合体の形成によって検出される機能的アッセイを使用して馴化培地におけるNTNのレベルを試験した(図15C)。wtNTNまたはppG−NTNでトランスフェクトされた細胞からの馴化培地は、低レベルの活性NTNを示した(HEK293、ARPE−19、HiB5、およびCHO細胞において、それぞれ、7.5±0.6ng/ml、1.5±0.9ng/ml、38.6±3.3ng/ml、および18.3±1.7ng/ml)。しかし、サンプルにおけるGFRα2結合活性は、drop−NTN構成物を使用すると増大した(HEK293、ARPE−19、HiB5、およびCHO細胞において、それぞれ、90±19、117±13、7.5±1.7、および4.1±0.9倍高いNTN結合)。ウェスタンブロットの結果に一致して、NTN活性はIgSP−NTN構成物を使用するとさらに増強された(HEK293、ARPE−19、HiB5、およびCHO細胞において、それぞれ、278±13、771±50、162±29、および66±18倍高いNTN結合)。同様の結果は、GFRα1コレセプターによるアッセイを行うと得られた(データは示さず)。pNS1n−EGFPで一時的にトランスフェクトした細胞からの細胞上清は、アッセイの特異性を確認する検出不能なNTN活性を示した(データは示さず)。発明者は、馴化培地からのNTNがGFRα2−IgコートELISAプレートと結合していたサンプルでNTNウェスタンブロットを行った。この結合ステップを加えると、NTNのプロ形態は検出されなかったが、成熟NTNのサイズのバンドが、IgSP構成物でトランスフェクトした細胞からのサンプルで確認され、dpro−NTNベクターを使用すると程度は低かった(図15D)。また、異なるNTN構成物でトランスフェクトした細胞からの馴化培地でのNTNサンドイッチELISAを行った。モノクローナルNTN抗体を使用し、ELISAプレート上でNTNを捕獲し、その後にポリクローナルNTN抗体を使用して捕獲NTNを検出した。両抗体は、ウェスタンブロットに使用されるとNTNのプロ形態を認識したが、図15Eに示されているように、NTNプロ形態はNTN ELISAにおいて検出されなかった。この所見は、NTNのプロ部が固有の折畳みNTNとの抗体の結合を阻止するが、変性NTNとの結合は阻止しないことを示す。NTNサンドイッチELISAにより、wtNTN SPをIgSPと交換すると馴化培地でのNTNのレベルが増強することが確認された(細胞系によって2〜8倍)。
【0258】
実施例5:パーキンソン病モデルにおけるインビボ遺伝子治療。
外科的方法。合計24匹の若年成体雌スプラグ・ドーレイ(Sprague−Dawley)ラット(Mollegaarden、デンマーク)を使用し、12時間明:暗サイクル下に収容し、ラットには食事と水を自由に与えた。わずかな変更を含むローゼンブラッド(Rosenblad)ら(2000年)に従ってウイルス注射および6−OHDA病変を行った。手短に言えば、イソフロウラン麻酔下(1.5〜2%)、GFP、hNTN、IgSP−hNTN、またはGDNFに対するcDNAを有するrLVベクター(3×105TU/動物)を動物に注射した(n=5〜7/群)。4回の沈殿(0.75μl/沈殿)を以下の配位で2本の針管に沿って線条体へ行った:AP=1.0mm、ML=−2.6mm、DV1=−5.0mm、DV2=−4.5mm、およびAP=0.0mm、ML=−3.7mm、DV1=−5.0mm、DV2=−4.5mm。歯バーを−2.3mmに設定した。rLV注射の14日後、動物を再麻酔し、10μlハミルトン(Hamilton)注射器で20μg 6−OHDA(シグマ(Sigma):遊離塩基として計算し、0.02%アスコルビン酸で補充した3μlの冷えた生理食塩水中に溶解)の単一沈殿を以下の配位で右線条体へ注射した:AP=0.5mm、ML=−3.4mm、硬膜に対してDV=−5.0mm、および歯バーを0.0mmに設定した。注射速度は、1μl/分であり、回収前にさらに3分間、ガラスピペットを適所に放置した。
【0259】
アンフェタミン誘導回転。rLV注射後10日目、およびさらに6−OHDA注射の4週間後、ラットに対しアンフェタミン(2.5mg/kg、メコベンゾン(Mecobenzon)、デンマーク)を注射し、90分にわたって自動ロトメータボウル(rotometer bowl)における回転反応をモニタリングした。回転非対称スコアは毎分正味90°の回転で表され、同側回転(すなわち、注射部位に向かって)を正値とした。
【0260】
組織学。6−OHDA注射の28日後、動物をペントバルビタールナトリウムで深く麻酔し、1分間生理食塩水で心臓灌流した後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中冷えた4%PFA200mlで灌流した。脳を切開し、同じ固定剤中で3〜4時間、後固定し、次いで25%ショ糖/0.1Mリン酸緩衝液へ48時間移した。6組の40μm切片を凍結ミクロトーム上で切断した。以前に記載されているように(Rosenblad et.al., 2003)免疫組織化学を行った。手短に言えば、2%正常ウマまたはブタ血清および0.25%トリトンX−100を含有するリン酸緩衝生理食塩水中で1:2000に希釈したヤギ抗hNTNまたはヤギ抗hGDNF一次抗体(R&D系、英国)、1:2000に希釈したチキン抗GFP、マウス抗TH、またはウサギ抗VWAT抗体(ケミコン(Chemicon)でインキュベートした後、適切なビオチン化二次抗体(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch)、米国)で2時間インキュベーションを行い、かつメーカーの指示(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、米国)に従って、アビジン−ビオチン複合体(ABC)キットによって行った。最後に、色反応を色原体として3’3’−ジアミノベンジジンを使用して発現させた。
【0261】
形態学的分析。SNにおけるTHまたはVMAT免疫反応性細胞の数の定量化。ブラインデッド観察者が、以前に記載されているように(Sauer and Oertel, 1994)、黒質緻密部における免疫反応性ニューロンの数を評価した。手短に言えば、副視神経路の内側終核のレベルに集中した3つの連続切片(MTN, −5.3 in the atlas of Paxinos and Watson, 1997)を使用し、MTNの側方にある全染色ニューロンを40倍の倍率で計算した。細胞数は、無傷側における数のパーセンテージの平均±S.E.M.で表されている。
【0262】
線条体線維密度測定。線条体DA神経支配をTHに対して染色した切片における3つの吻側尾側レベルで線条体の光学密度(OD)を測定することによって評価した。オリンパス(Olympus)DP50デジタルカメラおよび一定照明テーブルを使用し、デジタル画像を収集した。無傷および病変側でのODをスキャンイメージ(ScanImage)バージョン4.02ソフトウェアを使用して測定した。各切片の脳梁をバックグラウンド染色の基準として使用した。
【0263】
ラット6−OHDA病変モデルにおけるインビボ神経防護作用。次に、発明者は、IgSP−NTN構成物もインビボで活性NTNの持続的分泌をどの程度示しうるか調査することを求めた。したがって、発明者は、wtプレプロNTNをコードする組換えレンチウイルスベクター(rLV−wtNTN)およびIgSP−NTNをコードする組換えレンチウイルスベクター(rLV−IgSPNTN)を生成し、それらによって、NTNタンパク質注射がDAニューロンの喪失を阻止することが以前に証明されている(Horger et.al, 1998; Rosenblad et.al, 1999)PDの動物モデルにおける神経防護作用が得られるかどうかを試験した。グリーン蛍光タンパク質(GFP、rLV−GFP)またはGDNF(rLV−GDNF)をコードするベクターを、それぞれ陰性および陽性の対照ベクターとして使用した。
【0264】
導入遺伝子発現の免疫組織化学的局在
rLV−GFP処置動物からの切片の検査は、尾状核被殻の中心頭部において、約2×0.5mmの形質導入細胞の柱を示した(図16A)。形質導入細胞の大部分は、線条体の中程度の棘状突起ニューロンの形態を有した。星状膠細胞形態を有する小規模の細胞が線条体で確認され、付加脳梁では乏突起膠細胞が確認された。GFP発現細胞は、明確な細胞内発現パターンを示した。その一方で、rLV−GDNFで処置し、GDNF免疫組織化学のために処理した動物からの線条体および黒質の切片は、線条体におけるびまん性染色を示したが、これは形質導入細胞からのGDNFの分泌と一致する(図16C)。rLV−wtNTN注射を投与した動物において、NTN免疫組織化学はrLV−wtNTN形質導入線条体細胞の近くで細胞外免疫反応を示さなかった(図16B)。高倍率では、点状細胞質染色を有するわずかなNTN免疫反応性細胞が注射経路に沿って確認された(図16E)。その一方で、rLV−IgSP−NTNを投与した動物は、線条体における顕著なびまん性染色(細胞外)を有し(図16D)、これはGDNF処置動物において確認されたものと同様であり、分泌と一致する。NTN免疫反応性細胞プロフィールもrLV−IgSP−NTN注射動物において確認されたが、免疫反応性物質の大部分は細胞外に位置していた(図16F)。rLV−GDNFおよびrLV−IgSPNTNを投与した動物において、黒質網様部におけるそれぞれの抗体による顕著な標識が認められた(データは示さず、図16G)。免疫反応性線維の高密度網状組織は、それらが吻方に線条体に誘導されうるように明らかに黒質突起に由来した。この結果は、GDNFについてすでに記載されているように(Rosenblad et.al. 1999)、NTNが黒質経路内で線条体から順行性に輸送されうることを示す。
【0265】
線条体内6−OHDA病変後4週間の時点で、残存するドーパミン作動性黒質ニューロンの数をTHを発現するニューロンを計算することによって評価した(図17Aおよび図18)。対照のrLV−GFP処置動物では明らかに少ないTH免疫反応性(IR)ニューロンが、無傷対側部位と比べ、病変側の黒質(23±3.4%)で確認された(図17Aおよび18D)。同様に、rLV−NTNを投与した動物(図17Aおよび18B)は、TH−IRニューロンにおける顕著な病変誘導削減を示した(30±7.7%残存)。その一方で、rLV−IgSPNTN処置群は病変側での有意に高いパーセンテージのTH−IRニューロンを有し(91±1.2%、p<0.01)(図17Aおよび18C)、これはGDNF治療を受けた群において確認されたもの(86±3.2%、p<0.01)(図17Aおよび18H)と区別がついた。
【0266】
TH−IR黒質ニューロンの数の差がTH酵素の調節によるものではなかったことを確認するために、発明者は、隣接した部分において、これらの神経栄養因子による調節を受けにくいことが証明されているVMAT−IRニューロンの数を定量化した(Rosenblad et.al, 2003; Georgievska et.al, 2002; Kirik et.al, 2001)。図17Bに示されているように、rLV−IgSPNTNまたはrLVGDNFによる形質導入は、rLV−GFPまたはrLV−NTN処置動物(それぞれ、15.5±2.4%、および24.9±6.4%)と比べ、病変側で黒質におけるVMAT−IRニューロンの数を大幅に保存した(それぞれ、無傷側におけるそれの75.2±6.8%、および59.9±4.2%)が、これはTH染色で確認された結果に対応する。
【0267】
黒質におけるTH−IRおよびVMAT−IRニューロンの保護に加えて、rLV−IgSPNTN処置動物からの試料において、TH染色強度が、無傷側のTH−IRニューロン(図18E)、またはrLV−GFPまたはrLV−wtNTN処置動物の病変側(図18F)と比べ、多くの残存する黒質ニューロンが減少した(図18G)ことが注目された。TH染色強度の削減もGDNFによる治療後に確認されたが、これは以前の報告(Georgievska et.al, 2002)と一致し、この現象に精通しているが、試料にはブラインデッドの観察は、IgSPNTN処置動物における「GDNF様」削減をGDNF投与後に見られるものと区別することはできなかった。
【0268】
TH免疫組織化学のために処理された線条体部分の検査は、全群において中心および外側尾状核被殻が6−OHDA注射側でTH−IR線維を欠いていることを示した。病変側でのTH−IR神経支配の密度定量化は、15〜25%が4週間時点で残存していることを示した。これは線条体内6−OHDA病変モデルにおける初期の試験(Rosenblad et.al, 1999; Georgievska et.al, 2002)と合致し、TH−IR線条体神経支配の回復が病変の発現後4週間以上かかることを示している。一貫して、線条体におけるドーパミン除神経の高感度尺度として使用されうる(Kirik et.al, 1998)アンフェタミン誘導回転は、病変後4週間の時点で治療群のいずれの間にも同側回転の数における有意差を示さなかった(4.5±1.5〜13.4±3.3正味同側回転/分、p>0.05反復測定2元配置分散分析ANOVA)。ウイルス形質導入後10日、ただし6−OHDA病変前の時点で評価されたアンフェタミン誘導回転は、rLV−GFPまたはrLV−NTN群(それぞれ、0.1±0.9および−0.1±1.6)と比べ、IgSP−NTN群(3.3±1.5)およびGDNF群(1.9±1.3)におけるわずかであるが非有意ではない対側回転の偏りを示したが、これはGDNF治療後に起こることが以前に報告された(Georgievska et.al, 2002; Georgievska et.al, 2003)ものと同様のIgSP−NTN形質導入側でのDA機能のアップレギュレーションと一致する。
【0269】
総合すれば、発明者の結果は、レンチウイルスベクターからのNTNの分泌が、プロ領域の除去、および野生型シグナルペプチドの異種ペプチドでの置換によって大幅に強化されうることを示す。活性NTNの分泌の強化は、形質導入された線条体細胞においてインビボでも確認され、GDNFについて以前に報告されているものと同様のレンチウイルス送達法を使用し、インビボで病変黒質ドーパミンニューロンの効率的な神経保護を初めて可能にした。
【0270】
文献リスト(実施例3〜5)
DUNN, K. C., A. E. AOTAKI−KEEN, F. R. PUTKEY, and L. M. HJELMELAND. 1996. ARPE−19, a human retinal pigment epithelial cell line with differentiated properties. Exp.Eye Res. 62: 155−169.
GEORGIEVSKA, B., D. KIRIK, and A. BJORKLUND. 2002. Aberrant sprouting and downregulation of tyrosine hydroxylase in lesioned nigrostriatal dopamine neurons induced by long−lasting overexpression of glial cell line derived neurotrophic factor in the striatum by lentiviral gene transfer. Exp.Neurol. 177: 461−474.
GEORGIEVSKA, B., D. KIRIK, and A. BJORKLUND. 2004. Overexpression of glial cell line−derived neurotrophic factor using a lentiviral vector induces time− and dose−dependent downregulation of tyrosine hydroxylase in the intact nigrostriatal dopamine system. J.Neurosci. 24: 6437−6445.
HORGER, B. A., M. C. NISHIMURA, M. P. ARMANINI, L. C. WANG, K. T. POULSEN, C. ROSENBLAD, D. KIRIK, B. MOFFAT, L. SIMMONS, E. JOHNSON, JR., J. MILBRANDT, A. ROSENTHAL, A. BJORKLUND, R. A. VANDLEN, M. A. HYNES, and H. S. PHILLIPS. 1998. Neurturin exerts potent actions on survival and function of midbrain dopaminergic neurons. J.Neurosci. 18: 4929−4937.
KIRIK, D., B. GEORGIEVSKA, C. ROSENBLAD, and A. BJORKLUND. 2001. Delayed infusion of GDNF promotes recovery of motor function in the partial lesion model of Parkinson’s disease. Eur.J.Neurosci. 13: 1589−1599.
KIRIK, D., C. ROSENBLAD, and A. BJORKLUND. 1998. Characterization of behavioral and neurodegenerative changes following partial lesions of the nigrostriatal dopamine system induced by intrastriatal 6−hydroxydopamine in the rat. Exp.Neurol. 152: 259−277.
RENFRANZ, P. J., M. G. CUNNINGHAM, and R. D. MCKAY. 1991. Region−specific differentiation of the hippocampal stem cell line HiB5 upon implantation into the developing mammalian brain. Cell 66: 713−729.
ROSENBLAD, C., B. GEORGIEVSKA, and D. KIRIK. 2003. Long−term striatal overexpression of GDNF selectively downregulates tyrosine hydroxylase in the intact nigrostriatal dopamine system. Eur.J.Neurosci. 17: 260−270.
ROSENBLAD, C., M. GRONBORG, C. HANSEN, N. BLOM, M. MEYER, J. JOHANSEN, L. DAGO, D. KIRIK, U. A. PATEL, C. LUNDBERG, D. TRONO, A. BJORKLUND, and T. E. JOHANSEN. 2000. In vivo protection of nigral dopamine neurons by lentiviral gene transfer of the novel GDNF−family member neublastin/artemin. Mol.Cell Neurosci. 15: 199−214.ROSENBLAD, C., D. KIRIK, B. DEVAUX, B. MOFFAT, H. S. PHILLIPS, and A. BJORK−LUND. 1999. Protection and regeneration of nigral dopaminergic neurons by neurturin or GDNF in a partial lesion model of Parkinson’s disease after administration into the striatum or the lateral ventricle. Eur.J.Neurosci. 11: 1554−1566.
SANICOLA, M., C. HESSION, D. WORLEY, P. CARMILLO, C. EHRENFELS, L. WALUS, S. ROBINSON, G. JAWORSKI, H. WEI, R. TIZARD, A. WHITTY, R. B. PEPINSKY, and R. L. CATE. 1997. Glial cell line−derived neurotrophic factor−dependent RET activation can be mediated by two different cell−surface accessory proteins. Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 94: 6238−6243.
SAUER, H. and W. H. OERTEL. 1994. Progressive degeneration of nigrostriatal dopamine neu−rons following intrastriatal terminal lesions with 6−hydroxydopamine: a combined retrograde tracing and immunocytochemical study in the rat. Neuroscience 59: 401−415.
ZUFFEREY, R., J. E. DONELLO, D. TRONO, and T. J. HOPE. 1999. Woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element enhances expression of transgenes delivered by ret−roviral vectors. J.Virol. 73: 2886−2892.
ZUFFEREY, R., T. DULL, R. J. MANDEL, A. BUKOVSKY, D. QUIROZ, L. NALDINI, and D. TRONO. 1998. Self−inactivating lentivirus vector for safe and efficient in vivo gene delivery. J.Virol. 72: 9873−9880.
ZUFFEREY, R., D. NAGY, R. J. MANDEL, L. NALDINI, and D. TRONO. 1997. Multiply attenuated lentiviral vector achieves efficient gene delivery in vivo. Nat.Biotechnol. 15: 871−875.
【0271】
実施例6.シグナル(Signal)P 3.0を使用するシグナルペプチド処理予測
シグナルPバージョン3.0を使用するシグナルペプチド開裂の位置の予測。予測は、デルタプロNTN、IgSP−NTN、およびさまざまな成長因子からのシグナルペプチドを有するNTNを使用して行われた。
【0272】
【表3】
【0273】
【表4】
【0274】
【表5】
【0275】
【表6】
【0276】
【表7】
【0277】
【表8】
【0278】
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】さまざまな哺乳類のIgSP配列の配置を示す。
【図2】さまざまな神経栄養因子からのシグナル配列の表を示す。
【図3】pNS1nIgSP.NTNプラスミドマップを示す。
【図4】野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンのサンドイッチELISAを示す。
【図5】野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞からインビトロで産生されたニュールツリンの機能的RetL2 ELISAアッセイを示す。
【図6】野生型NTN(配列番号12)、GDNFプレプロペプチドを有するNTN(配列番号51)、およびIgSPを有するNTN(配列番号18)をコードする構成物でトランスフェクトされた細胞の溶解物からのニュールツリン調製物のウェスタンブロットを示す。
【図7】ニュールツリンを安定に発現するARPE−19細胞によって産生されるニュールツリン量の定量化を示す。
【図8】pHR’−sC.IgSP−hgNTN.Wベクターマップ、インビボ遺伝子治療試験に使用されるレンチウイルスベクターを示す。
【図9】レンチウイルスベクターまたは6−OHDAの線条体内注射を示す。
【図10】レンチウイルスベクターで形質導入され、その後にヒトNTNまたはヒトGDNFに対する抗体を使用する免疫組織化学のために処理されたラットの線条体の冠状断面を示す。
【図11】rLV−IgSPNTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用を示す。
【図12】デルタプロニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号15)およびコードされるポリペプチド(配列番号16)を示す。
【図13】IgSPニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号17)およびコードされるポリペプチド(配列番号18)を示す。
【図14】プレプロGDNFニュールツリン発現構成物を示す実施例1および3からのDNA挿入(配列番号50)およびコードされるポリペプチド(配列番号51)を示す。
【図15−1】(A)wtプレプロNTN、GDNFからのプレプロ部を有するNTN(ppG−NTN、配列番号50))、dプロNTN(配列番号15)、およびIgSP−NTN(配列番号17)を含むNTN発現構成物を示す。(B)トランスフェクトされたHEK293細胞からの溶解物およびならし培地のNTNウェスタンブロット。矢印は、それぞれ、wtプロNTN、プロ(GDNF)−NTN、および成熟NTNのサイズのバンドを示す。(C)NTN構成物でトランスフェクトされた4種類の細胞系からのならし培地におけるNTNのGFRa2結合活性を示す。
【図15−2】(D)溶解物(GFRa2に結合されていない)、およびGFRa2に結合したならし培地からのNTNのNTNウェスタンブロットを示す。(E)NTN構成物でトランスフェクトされた4つの細胞系からのならし培地でのNTNサンドイッチELISAを示す。
【図16】レンチウイルス構成物の線条体内注射後の導入遺伝子のインビボ発現を示す。
【図17】rLV−IgSP−NTNによる黒質ドーパミンニューロンの神経防護作用を示す。
【図18】GFP、NTN、IgSP−NTN、およびGDNF処置動物の黒質緻密部の冠状断面を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病を治療する方法であって、それを必要とする個体の中枢神経系に治療有効量のウイルス発現ベクターを投与することを含み、ここで該ベクターが操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含み、該ポリペプチドが、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んでなる、方法。
【請求項2】
成熟NTN(配列番号8、配列番号10、および配列番号11)、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
配列変種が、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
NTNがヒトまたはマウスNTNである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
NTNがヒトNTNである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
NTNがヒト成熟NTN(配列番号8)である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
個体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
投与されるウイルス組成物が、少なくとも108t.u./mL、好ましくは108〜1010t.u./mL、より好ましくは少なくとも109t.u./mLを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
投与される組成物の量が注射部位当たり1−10μLである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
投与されるウイルス組成物が、少なくとも1010t.u./mL〜1015t.u./mLを有する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ウイルスが線条体に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ウイルスが黒質に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
パーキンソン病の治療薬を調製するための、ウイルス発現ベクターの使用であって、該ベクターが操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含み、該ポリペプチドが、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んでなる、使用。
【請求項16】
成熟NTN(配列番号8、配列番号10、および配列番号11)、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択される、請求項15記載の使用。
【請求項17】
NTNがヒトまたはマウスNTNである、請求項15記載の使用。
【請求項18】
NTNがヒトNTNである、請求項15記載の使用。
【請求項19】
NTNがヒト成熟NTN(配列番号8)である、請求項15記載の使用。
【請求項20】
前記投与されるウイルス組成物が、少なくとも108t.u./mL、好ましくは108〜1010t.u./mL、より好ましくは少なくとも109t.u./mLを有する、請求項15記載の使用。
【請求項21】
ウイルスベクターがレンチウイルスである、請求項20記載の使用。
【請求項22】
投与されるウイルス組成物が少なくとも1010t.u./mL〜1015t.u./mLを有する、請求項15記載の使用。
【請求項23】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルスである、請求項22記載の使用。
【請求項24】
操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含むポリヌクレオチド配列を含んでなるウイルス発現ベクターであって、該ポリペプチドが、哺乳類細胞において機能することが可能なシグナルペプチドと、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択されるニュールツリンとを含んでなる、ウイルス発現ベクター。
【請求項25】
ポリヌクレオチド配列が機能的ニュールツリンプロ領域をコードしない、請求項24記載のベクター。
【請求項26】
シグナルペプチドがNGFシグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項27】
シグナルペプチドがGDNFシグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項28】
シグナルペプチドがペルセフィン(Persephin)シグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項29】
シグナルペプチドがノイブラスチン(Neublastin)シグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項30】
シグナルペプチドが、ヒトNGFシグナルペプチド(配列番号40)、マウスNGFシグナルペプチド(配列番号41)、ヒトGDNFシグナルペプチド(配列番号42)、マウスGDNFシグナルペプチド(配列番号43)からなる群から選択される、請求項24記載のベクター。
【請求項31】
シグナルペプチドが免疫グロブリンGシグナルペプチド(IgSP)である、請求項24記載のベクター。
【請求項32】
IgSPが、マウスIgSP(配列番号4)、ラットIgSP(配列番号6)、ブタIgSP(配列番号5)、サルIgSP(配列番号2または配列番号3)、ヒトIgSP(配列番号1)からなる群から選択される、請求項30記載のベクター。
【請求項33】
IgSPがマウスIgSP(配列番号4)である、請求項32記載のベクター。
【請求項34】
IgSPがヒトIgSP(配列番号1)である、請求項32記載のベクター。
【請求項35】
HIV、SIV、FIV、EIAV、AAV、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスからなる群から選択される、請求項24記載のベクター。
【請求項36】
複製欠損レンチウイルス粒子である、請求項24記載のベクター。
【請求項37】
ベクター粒子が、5’レンチウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドシグナルに操作可能に連結したプロモーター、第2鎖DNA合成の起点、および3’レンチウイルスLTRを含んで成るレンチウイルスベクターから産生される、請求項24記載のベクター。
【請求項38】
融合タンパク質の発現の誘導能を有するプロモーターが、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター、JeTプロモーター、SV40プロモーター、延長因子1アルファプロモーター(EF1−アルファ)からなる群から選択される、請求項24〜37のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項39】
プロモーターが、Tet−On、Tet−OFF、ラパマイシン誘導性プロモーター、Mx1などの誘導性/抑制性プロモーターである、請求項24〜38のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項40】
ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素、WPRE、SP163、ラットインスリンII−イントロンまたは他のイントロン、CMVエンハンサー、およびチキン[ベータ]−グロビンインシュレータまたは他のインシュレータなどの少なくとも1つの発現増強配列をさらに含んでなる、請求項24〜39のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項41】
Creリコンビナーゼタンパク質をコードする配列、およびLoxP配列をさらに含んでなる、請求項24〜40のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項42】
請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクター、および医薬上許容される補助剤、賦形剤、担体、および/または希釈剤の1つもしくはそれ以上を含んでなる医薬組成物。
【請求項43】
請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターで形質導入された単離宿主細胞。
【請求項44】
哺乳類宿主細胞である、請求項43記載の宿主細胞。
【請求項45】
哺乳類が、齧歯類(マウス、ラット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル、ヒトからなる群から選択される、請求項44記載の宿主細胞。
【請求項46】
CHO、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、ニューロン細胞、胎児細胞、ARPE−19、C2C12、HeLa、HepG2、線条体細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロンからなる群から選択される、請求項44記載の宿主細胞。
【請求項47】
伝染性ベクター粒子の産生能を有するパッケージング細胞系であって、該ベクター粒子が5’レトロウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、哺乳動物細胞において機能化が可能なシグナルペプチドでタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されるプロモーター、およびニュールツリンを含んでなるレトロウイルス由来ゲノムを含んでなり、該NTNが、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびNTNの配列変種、第2鎖DNA合成の起点、および3’レトロウイルスLTRからなる群から選択されるヒト、マウス、またはラットニュールツリンである、パッケージング細胞系。
【請求項48】
ベクター粒子が複製欠損である、請求項47記載のパッケージング細胞系。
【請求項49】
ゲノムがレンチウイルス由来であり、かつLTRがレンチウイルスである、請求項48記載のパッケージング細胞系。
【請求項50】
請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターで形質導入されている少なくとも1つの細胞を含んでなるヒト以外のキメラ哺乳類。
【請求項51】
少なくとも1つの形質導入された細胞が前記哺乳類のゲノムを含んでなる、請求項50記載の哺乳類。
【請求項52】
植込み式細胞培養デバイスであって、
i.それを通じて成長因子の拡散を可能にする半透膜と、
ii.請求項43〜46のいずれか一項によって規定された少なくとも1つの単離宿主細胞、または請求項74〜79のいずれか一項において規定された単離宿主細胞と
を含んでなるデバイス。
【請求項53】
半透膜が免疫アイソレータリー(immunoisolatory)である、請求項52記載のデバイス。
【請求項54】
半透膜が微小孔性である、請求項52記載のデバイス。
【請求項55】
半透膜内に配置された基質をさらに含んでなる、請求項52記載のデバイス。
【請求項56】
24時間当たり10ng超の生物学的に活性なニュールツリン、好ましくは、20ng超の、より好ましくは40ng/24時間超の、より好ましくは60ng/24時間超の生物学に活性なニュールツリンの分泌能を有する、請求項52記載のデバイス。
【請求項57】
テザーアンカー(tether anchor)をさらに含んでなる、請求項52記載のデバイス。
【請求項58】
標的細胞の感染用のウイルスベクターを分泌する生きたパッケージング細胞を含んでなるコアであって、該ウイルスベクターが請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターであるコアと、該コアを取囲む外側ジャケットであって、該ジャケットが透過性生体適合性材料を含んでなり、該材料が、その上を直径約100nmのレトロウイルスベクターの通過を可能にするように選択された多孔性を有し、該ウイルスベクターの該カプセルからの放出を可能にする外側ジャケットとを含んでなる生体適合性カプセル。
【請求項59】
コアがさらに基質を含んでなり、該パッケージング細胞が該基質によって固定化されている、請求項58記載のカプセル。
【請求項60】
ジャケットがヒドロゲルまたは熱可塑性材料を含んでなる、請求項58記載のカプセル。
【請求項61】
薬物として請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項62】
神経系障害の治療用薬物を調製するための請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項63】
CNS障害の治療用薬物を調製するための請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項64】
CNS障害が神経変性疾患である、請求項62記載の使用。
【請求項65】
神経変性疾患が、末梢神経、骨髄、脊髄の外傷性病変、脳虚血性ニューロン損傷、神経障害、末梢神経障害、神経因性疼痛、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症と関係がある記憶障害などの病変および外傷性ニューロンに影響を及ぼす神経変性疾患である、請求項64記載の使用。
【請求項66】
神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項64記載の使用。
【請求項67】
神経変性疾患が脊髄損傷である、請求項64記載の使用。
【請求項68】
神経変性疾患が筋萎縮性側索硬化症である、請求項64記載の使用。
【請求項69】
疾患が、網膜色素変性症、黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症など眼疾患である、請求項64記載の使用。
【請求項70】
神経系疾患を治療する方法であって、それを必要とする個体に、
i.請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの治療有効量、または
ii.請求項42に記載の医薬組成物の治療有効量
を投与することを含む、方法。
【請求項71】
ベクターまたは組成物が該個体の線条体へ注射される、請求項70記載の方法。
【請求項72】
神経系疾患を治療する方法であって、それを必要とする個体に、
i.請求項43〜46に記載の形質導入された細胞の治療有効量、
ii.請求項74〜81に記載の細胞の治療有効量、
iii.請求項52〜57のいずれかに記載の植込み式デバイス、または
iv.請求項58〜60のいずれかに記載の生体適合性デバイス
を移植することを含んでなる、方法。
【請求項73】
移植が、自家移植、同種移植、または異種移植を含む、請求項71記載の方法。
【請求項74】
ニュールツリンまたはその機能的同等物を500ng/106細胞/24時間を超える量で分泌する能力がある哺乳類細胞。
【請求項75】
少なくとも1000ng/106細胞/24時間、より好ましくは、少なくとも5000、より好ましくは、少なくとも10,000、より好ましくは、少なくとも15,000、より好ましくは、少なくとも20,000、より好ましくは、少なくとも25,000、より好ましくは、少なくとも30,000、より好ましくは、少なくとも35,000の分泌能を有する、請求項74記載の細胞。
【請求項76】
ARPE−19細胞、CHO細胞、BHK細胞、R1.1細胞、COS細胞、キラー細胞、ヘルパーT細胞、細胞毒性Tリンパ球、およびマクロファージからなる群から選択される、請求項74記載の細胞。
【請求項77】
前記哺乳類が、齧歯類(マウス、ラット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル、ヒトからなる群から選択される、請求項74記載の細胞。
【請求項78】
ヒト細胞である、請求項77記載の細胞。
【請求項79】
CHO、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、ニューロン細胞、胎児細胞、ARPE−19、MDX12、C2C12、HeLa、HepG2、線条体細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロンからなる群から選択される、請求項74記載の細胞。
【請求項80】
請求項24〜41のいずれかに記載のベクターで形質導入されている、請求項74記載の哺乳類細胞。
【請求項81】
支持基質に付着されている請求項74〜79のいずれかに記載の哺乳類細胞。
【請求項82】
ニュールツリンまたはその機能的同等物を産生する方法であって、前記方法が、請求項74〜79のいずれか一項に記載の細胞を培養し、該ニュールツリンを培地から回収すること、を含んでなる方法。
【請求項1】
パーキンソン病を治療する方法であって、それを必要とする個体の中枢神経系に治療有効量のウイルス発現ベクターを投与することを含み、ここで該ベクターが操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含み、該ポリペプチドが、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んでなる、方法。
【請求項2】
成熟NTN(配列番号8、配列番号10、および配列番号11)、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
配列変種が、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
NTNがヒトまたはマウスNTNである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
NTNがヒトNTNである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
NTNがヒト成熟NTN(配列番号8)である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
個体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
投与されるウイルス組成物が、少なくとも108t.u./mL、好ましくは108〜1010t.u./mL、より好ましくは少なくとも109t.u./mLを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
投与される組成物の量が注射部位当たり1−10μLである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
投与されるウイルス組成物が、少なくとも1010t.u./mL〜1015t.u./mLを有する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ウイルスが線条体に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ウイルスが黒質に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
パーキンソン病の治療薬を調製するための、ウイルス発現ベクターの使用であって、該ベクターが操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含み、該ポリペプチドが、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびかかるNTNの配列変種からなる群から選択される哺乳類細胞、およびヒト、マウス、またはラットのニュールツリン(NTN)において機能することが可能なシグナルペプチドを含んでなる、使用。
【請求項16】
成熟NTN(配列番号8、配列番号10、および配列番号11)、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択される、請求項15記載の使用。
【請求項17】
NTNがヒトまたはマウスNTNである、請求項15記載の使用。
【請求項18】
NTNがヒトNTNである、請求項15記載の使用。
【請求項19】
NTNがヒト成熟NTN(配列番号8)である、請求項15記載の使用。
【請求項20】
前記投与されるウイルス組成物が、少なくとも108t.u./mL、好ましくは108〜1010t.u./mL、より好ましくは少なくとも109t.u./mLを有する、請求項15記載の使用。
【請求項21】
ウイルスベクターがレンチウイルスである、請求項20記載の使用。
【請求項22】
投与されるウイルス組成物が少なくとも1010t.u./mL〜1015t.u./mLを有する、請求項15記載の使用。
【請求項23】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルスである、請求項22記載の使用。
【請求項24】
操作可能に連結されたポリペプチドの発現を誘導することが可能なプロモーター配列を含むポリヌクレオチド配列を含んでなるウイルス発現ベクターであって、該ポリペプチドが、哺乳類細胞において機能することが可能なシグナルペプチドと、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、および成熟またはN末端切断NTNの配列変種からなる群から選択されるニュールツリンとを含んでなる、ウイルス発現ベクター。
【請求項25】
ポリヌクレオチド配列が機能的ニュールツリンプロ領域をコードしない、請求項24記載のベクター。
【請求項26】
シグナルペプチドがNGFシグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項27】
シグナルペプチドがGDNFシグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項28】
シグナルペプチドがペルセフィン(Persephin)シグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項29】
シグナルペプチドがノイブラスチン(Neublastin)シグナルペプチドである、請求項24記載のベクター。
【請求項30】
シグナルペプチドが、ヒトNGFシグナルペプチド(配列番号40)、マウスNGFシグナルペプチド(配列番号41)、ヒトGDNFシグナルペプチド(配列番号42)、マウスGDNFシグナルペプチド(配列番号43)からなる群から選択される、請求項24記載のベクター。
【請求項31】
シグナルペプチドが免疫グロブリンGシグナルペプチド(IgSP)である、請求項24記載のベクター。
【請求項32】
IgSPが、マウスIgSP(配列番号4)、ラットIgSP(配列番号6)、ブタIgSP(配列番号5)、サルIgSP(配列番号2または配列番号3)、ヒトIgSP(配列番号1)からなる群から選択される、請求項30記載のベクター。
【請求項33】
IgSPがマウスIgSP(配列番号4)である、請求項32記載のベクター。
【請求項34】
IgSPがヒトIgSP(配列番号1)である、請求項32記載のベクター。
【請求項35】
HIV、SIV、FIV、EIAV、AAV、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスからなる群から選択される、請求項24記載のベクター。
【請求項36】
複製欠損レンチウイルス粒子である、請求項24記載のベクター。
【請求項37】
ベクター粒子が、5’レンチウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドシグナルに操作可能に連結したプロモーター、第2鎖DNA合成の起点、および3’レンチウイルスLTRを含んで成るレンチウイルスベクターから産生される、請求項24記載のベクター。
【請求項38】
融合タンパク質の発現の誘導能を有するプロモーターが、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター、JeTプロモーター、SV40プロモーター、延長因子1アルファプロモーター(EF1−アルファ)からなる群から選択される、請求項24〜37のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項39】
プロモーターが、Tet−On、Tet−OFF、ラパマイシン誘導性プロモーター、Mx1などの誘導性/抑制性プロモーターである、請求項24〜38のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項40】
ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素、WPRE、SP163、ラットインスリンII−イントロンまたは他のイントロン、CMVエンハンサー、およびチキン[ベータ]−グロビンインシュレータまたは他のインシュレータなどの少なくとも1つの発現増強配列をさらに含んでなる、請求項24〜39のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項41】
Creリコンビナーゼタンパク質をコードする配列、およびLoxP配列をさらに含んでなる、請求項24〜40のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項42】
請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクター、および医薬上許容される補助剤、賦形剤、担体、および/または希釈剤の1つもしくはそれ以上を含んでなる医薬組成物。
【請求項43】
請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターで形質導入された単離宿主細胞。
【請求項44】
哺乳類宿主細胞である、請求項43記載の宿主細胞。
【請求項45】
哺乳類が、齧歯類(マウス、ラット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル、ヒトからなる群から選択される、請求項44記載の宿主細胞。
【請求項46】
CHO、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、ニューロン細胞、胎児細胞、ARPE−19、C2C12、HeLa、HepG2、線条体細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロンからなる群から選択される、請求項44記載の宿主細胞。
【請求項47】
伝染性ベクター粒子の産生能を有するパッケージング細胞系であって、該ベクター粒子が5’レトロウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、哺乳動物細胞において機能化が可能なシグナルペプチドでタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されるプロモーター、およびニュールツリンを含んでなるレトロウイルス由来ゲノムを含んでなり、該NTNが、プロNTN、成熟NTN、N末端切断成熟NTN、およびNTNの配列変種、第2鎖DNA合成の起点、および3’レトロウイルスLTRからなる群から選択されるヒト、マウス、またはラットニュールツリンである、パッケージング細胞系。
【請求項48】
ベクター粒子が複製欠損である、請求項47記載のパッケージング細胞系。
【請求項49】
ゲノムがレンチウイルス由来であり、かつLTRがレンチウイルスである、請求項48記載のパッケージング細胞系。
【請求項50】
請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターで形質導入されている少なくとも1つの細胞を含んでなるヒト以外のキメラ哺乳類。
【請求項51】
少なくとも1つの形質導入された細胞が前記哺乳類のゲノムを含んでなる、請求項50記載の哺乳類。
【請求項52】
植込み式細胞培養デバイスであって、
i.それを通じて成長因子の拡散を可能にする半透膜と、
ii.請求項43〜46のいずれか一項によって規定された少なくとも1つの単離宿主細胞、または請求項74〜79のいずれか一項において規定された単離宿主細胞と
を含んでなるデバイス。
【請求項53】
半透膜が免疫アイソレータリー(immunoisolatory)である、請求項52記載のデバイス。
【請求項54】
半透膜が微小孔性である、請求項52記載のデバイス。
【請求項55】
半透膜内に配置された基質をさらに含んでなる、請求項52記載のデバイス。
【請求項56】
24時間当たり10ng超の生物学的に活性なニュールツリン、好ましくは、20ng超の、より好ましくは40ng/24時間超の、より好ましくは60ng/24時間超の生物学に活性なニュールツリンの分泌能を有する、請求項52記載のデバイス。
【請求項57】
テザーアンカー(tether anchor)をさらに含んでなる、請求項52記載のデバイス。
【請求項58】
標的細胞の感染用のウイルスベクターを分泌する生きたパッケージング細胞を含んでなるコアであって、該ウイルスベクターが請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターであるコアと、該コアを取囲む外側ジャケットであって、該ジャケットが透過性生体適合性材料を含んでなり、該材料が、その上を直径約100nmのレトロウイルスベクターの通過を可能にするように選択された多孔性を有し、該ウイルスベクターの該カプセルからの放出を可能にする外側ジャケットとを含んでなる生体適合性カプセル。
【請求項59】
コアがさらに基質を含んでなり、該パッケージング細胞が該基質によって固定化されている、請求項58記載のカプセル。
【請求項60】
ジャケットがヒドロゲルまたは熱可塑性材料を含んでなる、請求項58記載のカプセル。
【請求項61】
薬物として請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項62】
神経系障害の治療用薬物を調製するための請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項63】
CNS障害の治療用薬物を調製するための請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項64】
CNS障害が神経変性疾患である、請求項62記載の使用。
【請求項65】
神経変性疾患が、末梢神経、骨髄、脊髄の外傷性病変、脳虚血性ニューロン損傷、神経障害、末梢神経障害、神経因性疼痛、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症と関係がある記憶障害などの病変および外傷性ニューロンに影響を及ぼす神経変性疾患である、請求項64記載の使用。
【請求項66】
神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項64記載の使用。
【請求項67】
神経変性疾患が脊髄損傷である、請求項64記載の使用。
【請求項68】
神経変性疾患が筋萎縮性側索硬化症である、請求項64記載の使用。
【請求項69】
疾患が、網膜色素変性症、黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症など眼疾患である、請求項64記載の使用。
【請求項70】
神経系疾患を治療する方法であって、それを必要とする個体に、
i.請求項24〜41のいずれか一項に記載のベクターの治療有効量、または
ii.請求項42に記載の医薬組成物の治療有効量
を投与することを含む、方法。
【請求項71】
ベクターまたは組成物が該個体の線条体へ注射される、請求項70記載の方法。
【請求項72】
神経系疾患を治療する方法であって、それを必要とする個体に、
i.請求項43〜46に記載の形質導入された細胞の治療有効量、
ii.請求項74〜81に記載の細胞の治療有効量、
iii.請求項52〜57のいずれかに記載の植込み式デバイス、または
iv.請求項58〜60のいずれかに記載の生体適合性デバイス
を移植することを含んでなる、方法。
【請求項73】
移植が、自家移植、同種移植、または異種移植を含む、請求項71記載の方法。
【請求項74】
ニュールツリンまたはその機能的同等物を500ng/106細胞/24時間を超える量で分泌する能力がある哺乳類細胞。
【請求項75】
少なくとも1000ng/106細胞/24時間、より好ましくは、少なくとも5000、より好ましくは、少なくとも10,000、より好ましくは、少なくとも15,000、より好ましくは、少なくとも20,000、より好ましくは、少なくとも25,000、より好ましくは、少なくとも30,000、より好ましくは、少なくとも35,000の分泌能を有する、請求項74記載の細胞。
【請求項76】
ARPE−19細胞、CHO細胞、BHK細胞、R1.1細胞、COS細胞、キラー細胞、ヘルパーT細胞、細胞毒性Tリンパ球、およびマクロファージからなる群から選択される、請求項74記載の細胞。
【請求項77】
前記哺乳類が、齧歯類(マウス、ラット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル、ヒトからなる群から選択される、請求項74記載の細胞。
【請求項78】
ヒト細胞である、請求項77記載の細胞。
【請求項79】
CHO、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、ニューロン細胞、胎児細胞、ARPE−19、MDX12、C2C12、HeLa、HepG2、線条体細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロンからなる群から選択される、請求項74記載の細胞。
【請求項80】
請求項24〜41のいずれかに記載のベクターで形質導入されている、請求項74記載の哺乳類細胞。
【請求項81】
支持基質に付着されている請求項74〜79のいずれかに記載の哺乳類細胞。
【請求項82】
ニュールツリンまたはその機能的同等物を産生する方法であって、前記方法が、請求項74〜79のいずれか一項に記載の細胞を培養し、該ニュールツリンを培地から回収すること、を含んでなる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−509109(P2007−509109A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536086(P2006−536086)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052586
【国際公開番号】WO2005/039643
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506135604)エヌエスジーン・アクティーゼルスカブ (6)
【氏名又は名称原語表記】NsGene A/S
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052586
【国際公開番号】WO2005/039643
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506135604)エヌエスジーン・アクティーゼルスカブ (6)
【氏名又は名称原語表記】NsGene A/S
【Fターム(参考)】
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