説明

ヒスタミンH3受容体リガンド及びそれらの治療適用

本出願は、式(I)[式中、R1及びR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、飽和窒素含有環を形成し、Aは、飽和C1-4アルキレンであり、そしてBはC3-4アルキレン又はアルケニレン鎖である]の新規化合物;それらの製法及び、例えばアルツハイマー病などのCNS障害を治療するためのH3受容体リガンドとしてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、H3-受容体の新たなリガンド、それらの製造方法及びそれらの治療上の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンH3受容体のアンタゴニストは、脳ヒスタミンの合成及び放出を特に増加すると知られている。このメカニズムを通して、当該アンタゴニストは、覚醒状態の延長、認識プロセスの改善、食物摂食の低下、及び前庭反射の正常化を誘導する(Schwartzら、Physiol. Rev., 1991, 71 : 1-51)。
【0003】
ヒスタミンH3受容体アゴニストは、ヒスタミン、モノアミン、及び神経ペプチドを含む幾つかの神経伝達物質の放出を阻害することが知られており、そしてそれにより脳における鎮静及び睡眠促進効果を発揮する。末梢組織では、H3受容体アゴニストは、すなわち抗炎症、抗侵害受容性、胃腸性、抗分泌性平滑筋脱収縮活性を発揮する。
【0004】
以前に知られているH3受容体アンタゴニスト又はアゴニスト化合物は、4(5)位において一般的に一置換されるイミダゾール環を有する点でヒスタミンに類似している(Ganellinら、Ars Pharmaceutics, 1995, 36:3, 455-468; Starkら、Drug of the Future, 1996, 21(5), 507-520)。
【0005】
多くの特許及び特許出願は、このような構造を有するアンタゴニスト及び/又はアゴニスト化合物に関する。特に、EP 197 840号、EP 494 010号、WO 93/14070号、WO 96/29315号、WO 92/15 567号、WO 93/20061 号、WO 93/20062号、WO 95/11894号、US 5 486 526号、WO 93/12107号、WO 93/12108号、WO 95/14007号、WO 95/06037号、WO 97/29092号、EP 680 960号、WO 96/38141号、WO 96/38142号、WO 96/40126号である。
【0006】
刊行物において、Plazziら、Eur. J. Med. Chem., 1995, 30, 881;Clitherowら、Bioorg. & Med. Chem. Lett, 6 (7), 833-838 (1996);Wolinら、Bioorg. & Med. Chem. Lett, 8, 2157 (1998) もこの点で引用できる。
【0007】
それにも関わらず、このようなイミダゾール誘導体は、血液脳関門の通過が悪いこと、シトクロムP-450と相互作用すること、及び/又は幾らかの肝臓及び眼の毒性を有することといった欠点を示しうる。
【0008】
神経活性化合物として知られている非イミダゾール、例えばベタヒスチン(J-M. Arrangら、Eur. J. Pharmacol., 1985, 111 : 72-84)、フェンシクリジン(J-M. Arrangら、Eur. J. Pharmacol., 1988, 157: 31-35)、ジマプリト(dimaprit)(J.-C. Schwartzら、Agents Actions, 1990, 30: 13-23)、クロザピン(M. Kathmannら、Psychopharmacology 1994, 116: 464-468)、及びセスキテルペン(M. Takigawaら、JP 06 345 642 (20 Dec. 1994))が、H3受容体拮抗作用を示すと示唆されたが、これらの化合物の全ては、低い効力しか有さない。
【0009】
これらの化合物は、特に神経活性薬として、例えば神経弛緩薬(クロザピン)又は精神異常発現薬(フェンシクリジン)として、ヒスタミンH3受容体の発見及び特徴決定の前に治療薬として以前から知られていた。
【0010】
3受容体で試験すると、これらの化合物は、上で引用した特許出願において記載されたイミダゾール含有化合物よりもずっと低い効力しか示さなかった。
【0011】
以前の試みとは反対に、本発明者は、上記欠点を低減したイミダゾール環を含有しない強力なH3受容体リガンドの開発に成功した。これらの化合物、それらの製法及びその治療適用は、国際特許公開WO00/06254号において記載された。
【0012】
より具体的に記載すると、WO00/06254号は、特に、以下の式(IIa):
【化1】

で表される化合物を開示する。
【0013】
より正確に記載すると、式(IIa)は、上記特許においてさらに広く例示された一般的なファーマコフォアを記載する。
【0014】
製薬学的用途について、代謝安定性である化合物を得ることは望ましい。芳香族化合物を代謝するための一般的な方法は、パラ位の酸化である。そうして、この位置に置換基を有するか、又はメタ位にかさ高い置換基を有する化合物に注目することは賢明である。
【0015】
しかしながら、本発明者らは、パラ置換基を提示するWO00/06254号の化合物が一般的にシトクロム2D6又は3A4を阻害することを示すということを発見した。これらのシトクロムが両方とも生体異物の代謝及び内在性生成物の生体変化に関与するので、この化合物は医薬品として特に有害である。
【発明の開示】
【0016】
驚くべきことに、本発明者は、これらの構造の幾つかの特異的改変が、ヒトH3受容体に対してかなり良好な親和性(Ki<7nM)を示すとともに、シトクロム2D6及び3A4の阻害を劇的に低くしたということを発見した。これは、当該化合物が1μMで評価される場合、明らかに50%未満である阻害率及び/又はマイクロモルを大幅に超えるKiにより表現される。
【0017】
本発明は、これらの要件を見たすこれらの新規化合物に関する。
【0018】
さらに、本発明の好ましい化合物は、低いHERG活性を示す。良好な生体利用能を示す化合物が特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第一の目的に従って、本発明は、以下の式(I):
【化2】

[式中、
1及びR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって以下の:
【化3】

(式中、
mは4〜6であり、各Ra、Rbは独立して同一であるか又は異なっており、そしてRaは水素を表し、そしてRbは水素又はC1-C4アルキル、又は2個のRbは一緒になって結合を形成して2環、例えば以下の:
【化4】

を形成する)
で表される飽和窒素含有環を形成し、
A鎖は、飽和直鎖C1-C4アルキレン、好ましくはC2-C4アルキレンであり、
B鎖は、C3-C4直鎖アルキレン、又はC3-C4直鎖アルケニレン基から選ばれ、そして
5は、フッ素原子、-C1-C4アルキル、-O(C1-C4)アルキル、-OH、CF3、非分岐又は分岐アルケニル、非分岐又は分岐アルキニル、-O(アリール)、-CH2CN、-(O)n-X-NR89(ここでn=0又は1であり、Xはアルキレン、アルケニレン、アルキニレンを表し、R8及びR9が独立して水素、直鎖又は分岐C1-C4アルキル、アリール基、又はそれらが結合する窒素原子と一緒になって飽和又は部分的に未飽和な単環又は二環複素環を表す)から選ばれるか;
又はR4及びR5は、一緒になってフェニル基と融合した環又は複素環を形成し、当該環又は複素環は芳香族、飽和、不飽和、又は部分的に不飽和であり、
3、R4、R6、R7の各々は、同一であるか又は異なっており、独立してH、-C1-C4アルキル、ハロゲン原子、-O(C1-C4)アルキル、-OH、CF3、非分岐又は分岐アルケン、非分岐又は分岐アルキン、-O(アリール)、-CH2CN、-(O)n-X-NR89(ここで、n=0又は1、Xはアルキレン、アルケニレン、アルキニレンを表し、R8及びR9は独立して水素を表し、直鎖又は分岐C1-C4アルキル、アリール基、又はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、飽和又は部分的に不飽和単環又は二環の複素環を形成する)から選ばれる基を表し;
又はR3及びR4は一緒になってフェニル基と融合した環又は複素環を形成し、当該環又は複素環が芳香族、飽和、不飽和、又は部分的に不飽和である]
で表される新規の化合物、或いはその医薬として許容される塩、水和物、又は水和塩、或いはこれらの化合物の多型結晶構造又はその光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はエナンチオマーに関する。
【0020】
好ましくは、B鎖はC3-C4直鎖アルキレンのなかから選ばれる基から選ばれ;
Aは、飽和直鎖C2-C4 アルキレンであり;
5は、フッ素原子、-C1-C4アルキル、-O(C1-C4)アルキル、-OHから選ばれ;
各R3、R4、R6、R7は同一であるか又は異なり、独立してH、-C1-C4アルキル、ハロゲン原子、-O(C1-C4)アルキル、-OHから選ばれる基を表す。
【0021】
より好ましい態様では、B鎖は、C3-C4直鎖アルキレン又はC3-C4直鎖アルケニレンのなかから選ばれる基から選ばれ;
Aは、飽和直鎖C2-C4アルキレンであり;
5は、フッ素原子、-O(C1-C4)アルキルから選ばれ;及び/又は
各R3、R4、R6、R7は、Hを表し、又はR4及びR5は一緒になってフェニル基と融合した飽和複素環を形成し、そして各R3、R6、R7はHを表す。
【0022】
好ましい態様では、
B鎖は、C3-C4直鎖アルキレン又はC3-C4直鎖アルケニレンの中から選ばれる基から選ばれ;
Aは、飽和直鎖C2-C4アルキレンであり;
5は、フッ素原子であり、及び/又は
各R3、R4、R6、R7は、Hを表すか、又はR4及びR5は一緒になってフェニル基と融合した飽和複素環を形成し、そして各R3、R6、R7はHを表す。
【0023】
式(I)の好ましい化合物は以下の:
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-メチルフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(2-ナフチル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾフラン-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)アリル]オキシ}プロピル)ピペリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
或いはそれらの医薬として許容される塩、水和物、又は水和物塩、或いはこれらの化合物の多形結晶構造晶、又はそれらの光学的異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はエナンチオマーから選ばれる。
【0024】
より具体的に、
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
、又はこの医薬として許容される塩、水和物、又は水和物塩、又はこれらの化合物の多形結晶構造又はそれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はエナンチオマーである。
【0025】
以下の化合物:
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
又はこれらの医薬として許容される塩、水和物、又は水和物塩、又はこれらの化合物の多形結晶構造又はそれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー又はエナンチオマー
は特に関心のあるものである。
【0026】
以下の化合物:
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
又はこれらの医薬として許容される塩、水和物、又は水和物塩、又はこれらの化合物の多形結晶構造、又はこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー又はエナンチオマー
は、さらに関心の高いものである。
【0027】
本明細書の上又は以下に記載される場合に、
「アルキル」は、直鎖又は分岐状であってもよい脂肪族炭化水素基であって、鎖において1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、鎖において1〜12、好ましくは1〜4の炭素原子を有する。分岐は、1以上の低級アルキル基、例えば、メチル、エチル又はプロピルが直鎖アルキル鎖に結合されているということを意味する。代表的なアルキル基として、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、3-ペンチル、オクチル、ノニル、デシルが挙げられる。
【0028】
「アルケン」は、炭素-炭素二重結合を含み、直鎖又は分岐状でありうる脂肪族炭化水素基であって、鎖において2〜15個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルケニル基は、鎖において2〜12個の炭素原子を有し、そしてより好ましくは鎖において約2〜4個の炭素原子を有する。代表的なアルケニル基として、エテニル、プロペニル、n-ブテニル、i-ブテニル、3-メチルブタ-2-エニル、n-ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルが挙げられる。
【0029】
「アルキン」は、炭素炭素三重結合を含み、そして直鎖又は分岐状でありうる脂肪族炭化水素基であって、鎖において2〜15個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は鎖において2〜12個の炭素原子を有し;そしてより好ましくは鎖において2〜4個の炭素原子を有する。代表的なアルケニル基として、エチニル、プロピニル、n-ブチニル、2-ブチニル、3-メチルブチニル、n-ペンチニル、ヘプチニル、オクチニル及びデシニルが挙げられる。
【0030】
「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を指し;好ましくはフッ素及び塩素原子である。
【0031】
「アリール」は、6〜14個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子からなる芳香族単環又は多環炭化水素環系を意味する。代表的なアリール基としてフェニル又はナフチルが挙げられる。
【0032】
本明細書に使用されるとき、「複素環」又は「複素環の」という用語は、飽和、部分的に不飽和、又は不飽和の安定した非芳香族の3〜14、好ましくは5又は6〜10員の単環、二環、又は多環であって、ここで少なくとも環の1員がヘテロ原子である環を指す。典型的に、ヘテロ原子は、非限定的に酸素、窒素、硫黄、セレン、及びリン原子を含む。好ましいヘテロ原子は酸素、窒素、及び硫黄である。
【0033】
適切な複素環は、「The Handbook of Chemistry and Physics」第76版、CRC Press、Inc.、1995-1996、2-25〜2-26頁に開示されており、当該開示を本明細書に援用する。
【0034】
好ましくは非芳香族複素環としては、非限定的に、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキシラニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、ピペリジル 、ピペラジニル、モルホリニル、ピラニル、イミダゾリニル、ピロリニル、ピラゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチオピラニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ジヒドロ-ピラニル、テトラヒドロピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロチオピラニル、アゼパニル、並びにフェニル基との縮合から得られる融合系が挙げられる。
【0035】
本明細書に使用されるとき、「ヘテロアリール」という用語又は芳香族複素環は、5、6〜14、好ましくは5、6〜10員の芳香族へテロ単環、二環、又は多環を指す。この例として、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラゾリル、インドリル、キノリニル、プリニル、イミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、1,2,4-チアジアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾイル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル-N-オキシド、並びにフェニル基との縮合から得られる融合系が挙げられる。
【0036】
「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「複素環」などは、対応する「アルキレン」、「シクロアルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」、「アリーレン」、「ヘテロアリーレン」、「ヘテロシクレン」などであって、2個の水素原子を取り除くことにより形成されるものも指す。
【0037】
本明細書に使用されるとき、「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒト又はヒトの子供などの温血動物であって、本明細書に記載される1以上の疾患及び病気を患っているか、又は患う可能性を有する動物を指す。
【0038】
本明細書に使用されるとき、「治療有効量」は、本明細書に記載される疾患及び病気の症状を軽減し、除去し、治療し、又は管理する際に有効である本発明の化合物の量を指す。「調節する」という用語は、本明細書に記載される疾患及び病気の進行を緩め、妨げ、阻み、又は停止しうる全ての過程を指すことを意図するが、必ずしも疾患及び病気の全ての症状を完全に除去することを指さず、そして予防処置を含むことを意図する。
【0039】
本明細書に使用されるとき、「医薬として許容される」という用語は、医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は許容できる損益比で釣り合った他の合併症の問題を伴わずに、人間及び動物の組織と接触するのに適している化合物、物質、組成物、又は投与形態を指す。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「医薬として許容される塩」は、親化合物が、その酸又は塩基塩を調製することにより改変される開示化合物の誘導体を指す。医薬として許容される塩は、慣用の非毒性塩、又は形成された親化合物の4級アンモニウム塩を含む。例えば、このような慣用される非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から生成される塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸などの有機酸から生成される塩を含む。さらなる添加塩は、アンモニウム塩、例えばトロメタミン、メグルミン、エポールアミンなど、金属塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛又はマグネシウムを含む。塩酸及びシュウ酸塩が好ましい。
【0041】
医薬として許容される本発明の塩は、慣用される化学方法により塩基性又は酸性部分を含む親化合物から合成できる。一般的に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、化学量論の量の適切な塩基又は酸を含む水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒の混合物と反応させることにより調製できる。一般的に、非水性溶媒、例えばエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルが好ましい。適切な塩のリストが、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第17版、Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985, p.1418に記載され、当該文献の開示は本明細書に援用される。
【0042】
幾何異性体及び立体異性体を有する式(I)の化合物も、本発明の一部である。
【0043】
さらなる目的では、本発明は、式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0044】
本発明の化合物及び方法は、当該技術分野に周知の多くの方法において製造されうる。化合物は、例えば、以下に記載される方法、又は当業者により認められる変法を適用又は適応することにより、合成することができる。適切な変更及び置換は、容易に明らかであり、そして周知であり、又は当業者にとって科学文献から容易に獲得可能であろう。
【0045】
特に、このような方法は、R.C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH publishers,1989において見ることができる。
【0046】
本発明の化合物は、1以上の不斉置換炭素原子を含んでもよく、そして光学活性形態又はラセミ体に単離されてもよいということが認められよう。こうして、特定の立体科学形態又は異性体が具体的に記載されていない場合、全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体、及び全ての幾何異性体が意図される。このような光学活性形態を調製及び単離する方法は当該技術分野に周知である。例えば、立体異性体の混合物は、非限定的に、ラセミ体の分離、通常、逆相、及びキラルクロマトグラフィー、選択的塩形成、再結晶化など、又はキラル開始物質からの合成又は標的不斉中心の計画的合成を含む標準技術により分離されてもよい。
【0047】
本発明の化合物は、様々な合成ルートにより製造されてもよい。当該試薬及び開始物質は市販されているか、又は当業者により周知の技術によって容易に合成される。全ての置換基は、他に記載がない限り以前に定義された通りである。
【0048】
以下に記載される反応において、これらが、最終生成物において望まれる場合、望まない当該基の反応への参加を避けるために、反応性官能基、例えば、水酸基、アミノ基、イミノ基、チオ基、又はカルボキシル基を保護することは必須であってもよい。慣用される保護基は、標準の方法に従って使用されてもよく、例えば、T.W. Greene及びP. G. M. Wuts in Protective Groups in Organic Chemistry, John Wiley and Sons, 1991 ; J. F. W. McOmie in Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, 1973. を参照のこと。
【0049】
塩基の存在下で幾つかの反応を行ってもよい。この反応において使用される塩基の性質について特定の制限は存在せず、そして当該タイプの反応において慣用的に使用されるいずれの塩基も、当該分子の他の部分に悪影響を有さない限りは、ここで同じ様に使用されてもよい。適切な塩基の例として、水酸化ナトリウム、カルボン酸カリウム、トリエチルアミン、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウム及び水素化カリウム;アルキルリチウム化合物、例えばメチルリチウム及びブチルリチウム;及びアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウム・メトキシド及びナトリウムエトキシドが挙げられる。
【0050】
通常、反応は適切な溶媒中で行われる。反応又は関与する試薬について有害な影響を与えない限り、様々な溶媒が使用されてもよい。適切な溶媒の例として、芳香族、脂肪族、又は脂肪族環状炭化水素でありうる炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン;アミド類、例えばジメチルホルムアミド;アルコール類、例えばエタノール及びメタノール、並びにエーテル類、例えばジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが挙げられる。
【0051】
反応は広い範囲の温度で行うことができる。一般的に、本発明者は、0℃〜150℃(より好ましくは約室温〜100℃)の温度で反応を行うことが都合がよいことを発見した。反応に必要とされる時間は、多くの因子、特に反応温度及び試薬の性質に依存して様々に変えられてもよい。しかしながら、上で概説された好ましい条件下で、3時間〜20時間の時間は通常十分であろう。
【0052】
こうして調製された化合物は、慣用される手段により反応混合液から回収されてもよい。例えば、化合物は、反応混合液から溶媒を蒸留することにより回収されても良いし、又は必要に応じて、反応混合液の溶媒を蒸留で取り除いた後に、残渣を水に注ぎ、続いて水不混和性の有機溶媒で抽出し、そして溶媒を抽出液から蒸留することにより回収されてもよい。さらに、所望される場合、生成物は、様々な周知の技術、例えば再結晶化、再沈澱、又は様々なクロマトグラフィー技術、特にカラムクロマトグラフィー又は調製薄層クロマトグラフィーによりさらに精製することができる。
【0053】
本発明の式(I)の化合物の製造方法は、本発明の更なる目的である。
【0054】
第一態様では、本発明の式(I)の化合物は、以下の式:
【化5】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'は、それぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7、又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基(precursor group)を表す]
で表される対応化合物から得ることができる。
【0055】
本発明によると、官能基について「前駆基」という表現は、1以上の反応により、1以上の適切な試薬を用いることにより、所望の機能をもたらすことができる任意の基を指す。これらの反応は、脱保護基、並びに通常の付加、置換、又は官能基化反応を含む。
【0056】
好ましくは、Bがアルキル鎖を表す式(I)の化合物は、式(II)の対応化合物(ここで、B'がアルキル鎖を表す)から、水素付加反応により製造できる。一般的に、この反応は、Pd/C又は酸化白金などの触媒を用いることにより触媒条件下で行われる。好ましくは、この反応は、式(II)の化合物中に存在しうるA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の任意の保護基を同時に脱保護することにより行うことができる。
【0057】
第二態様では、本発明の式(I)の化合物は、以下の式(III)及び(IV):
【化6】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'はそれぞれ、A、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7、又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基を表し、そして
Xはハロゲン原子を表す]
で表される対応化合物を反応させることにより得ることができる。一般的にこの反応は、塩基条件下で行われる。
【0058】
さらなる態様では、本発明の式(I)の化合物は、以下の式(V)及び(VI):
【化7】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'は、それぞれ、A、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7、又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基を表し、そして
Yは脱離基、例えばOMs又はハロゲンを表す]
で表される対応化合物を反応させることにより得ることができる。一般的に、この反応は塩基条件下で行われる。
【0059】
さらなる態様では、本発明の式(I)の化合物は、以下の式(VII)及び(VIII):
【化8】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'は、それぞれ、A、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7、又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基を表し、そして
Zはハロゲン原子を表す]
で表される対応化合物を反応させることにより得ることができる。一般的に、この反応は、塩基条件下で行われる。
【0060】
さらに、本発明の方法は、式(I)の化合物を単離するさらなるステップを含んでもよい。単離は、上で記載される回収方法などの既知の慣用手段のいずれかによって、当業者が行うことができる。
【0061】
【化9】

【0062】
開始物質は市販されているか、又は既知の方法のいずれか、又は実施例に記載される方法を適用又は適応することにより得ることができる。
【0063】
合成は、多成分反応として1の容器内で行われてもよい。
【0064】
さらなる目的では、本発明は、医薬として許容される賦形剤又は担体と一緒に式(I)の化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0065】
当該アンタゴニストは、特にアルツハイマー病及び高齢者における他の認知障害などの病状の治療において、向精神薬効果を有し、覚醒、注意、記憶を促進し、そして気分を改善する医薬の活性成分として有利に使用される。好ましくは、当該化合物は、CNS疾患、例えば、アルツハイマー病、注意、覚醒、記憶障害、特に高齢者における精神科の病状の認知欠損、うつ病又は無力症状態の治療及び/又は予防するために使用されうる。
【0066】
これらの向知性効果は、健常者の不眠症、注意能力、及び記憶能力を刺激するために有用でありうる。本発明の化合物は、夜勤又は時間シフトへの人の適応を促進するために有用で有りうる。
【0067】
さらに、これらの薬剤は、肥満、めまい、及び乗り物酔いの治療に有用で有りうる。
【0068】
本発明の化合物を、他の精神薬、例えば神経弛緩薬と組合わせて、その効力を高め、そして副作用を低減することは有用でありうる。
【0069】
てんかんの特定の形態における適用も予測される。
【0070】
これらの治療適用は、主に分泌又は消化器運動性の刺激など末梢器官にも関する。
本発明の化合物は、高齢者のCNS疾患の治療に特に有用である。
【0071】
さらに、当該アンタゴニスト又は逆アゴニストは、てんかんを治療及び/又は予防するのに有用でありうる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「てんかん」は、脳のなかの神経細胞のクラスター又はニューロンが異常にシグナルを伝達する脳の障害を指す。てんかんは、発作性疾患としても知られている。発作は、脳における電位の突然の急騰である。てんかんは、通常アルコールの摂取停止又は過度に低い血糖値などのいくつかの既知の医学的状態により引き起こされたものではない少なくとも2回の発作を起こした後に、通常診断される。
【0073】
好ましくは、てんかんは、子供及び大人における欠神発作、薬物抵抗性側頭葉てんかん、及び光感受性てんかんからなる群から選ばれる。
【0074】
さらに、本出願はまた、パーキンソン病、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、レヴィー小体認知症、及び/又は血管性認知症の治療、及び特にこれらの症状の治療のための、本発明の化合物の使用にも関する。
【0075】
本明細書に使用されるとき、「閉塞性睡眠時無呼吸」(本明細書でOSAとも呼ばれる)は、主に睡眠時に生じ、覚醒時に眠気の形で現れうる結果を伴う呼吸障害を指す。この次第に良く認知されるようになった疾患は、睡眠時の上気道の断続的な停止により特徴付けられ、無呼吸(断続的な呼吸停止)、呼吸低下(呼吸低下の繰り返し)、又は連続又は持続性の換気の低下、及び過度の日中の眠気、神経認知異常、及びうつ病を伴う。OSAは、体内のほぼ全てのシステムに影響を与えて、つまり循環器疾患の高い発生率をもたらす(Qureshi及びBallard, J. Allergy and Clin. Immunol.,2003,112,643)。OSAの薬物治療は知られていない。
【0076】
「パーキンソン病」(PD)は、当該疾患の特徴である運動不全及び精神神経疾患を導く黒質線条体のドーパミン作動性ニューロンの変性と主に関連する。幾つかの他のアミン作動性ニューロンクラスが、パーキンソン脳において影響されていることがある一方、死後の神経化学及び免疫組織化学的研究により、ヒスタミン作動性ニューロンが、変性過程から完全に免れているということが示された(Garbargら,Lancet,1983,1,74; Nakamuraら,Neurology,1996,4,1693)。さらに、神経毒である6-ヒドロキシドーパミンの一側性投与(unilateral administration)により黒質線条体が破壊された「パーキンソン病」ラットのモデルにおいて、回転行動(抗パーキンソン活性を反映する)について抗パーキンソン薬であるレボドーパの効果は、プロトタイプのH3Rアンタゴニスト/逆アゴニストであるチオペラミドの共投与によっては改変されなかった(Huotaryら、Parkinsonism Relat. Disord.,2000,6,159)。この効果がないことは黒質線条体複合体にH3R部位が存在しないこと、又は神経変性過程の結果としてH3R部位の消失に起因するわけではない。なぜなら、黒質線条体複合体に逆にH3Rは豊富に存在しており(Pillotら、Neuroscience、2002、114、176) 、これらの部位の数は、逆に同じ動物モデルにおいて増加しているためである(Ryuら、Neurosci. Letters,1994,178,19)。まとめると、これらの発見により、PDの管理においてこの薬剤クラスの治療効果がないということが示唆された。
【0077】
疾患の中核を構成する動作の開始及び制御におけるPDの主要な特徴に加えて、PD患者の大部分(74〜81%ほど)が睡眠及び覚醒障害を示すということが、ここ10年の間に明らかになってきた(Garcia-Borregueroら、Sleep Med. Rev.,2003,7,115)。これらは、睡眠開始及び維持障害、睡眠の断片化、睡眠時異常行動(夜行性幻覚を含む)、呼吸障害の睡眠及び過度の日中の眠気(睡眠発作、つまり日中の活動における不適切かつ不所望の睡眠を含む)を含む。 この障害の群が、純粋にPDそのものに関連するのか、又は直接又は間接的なドーパミン作動性アゴニストによる治療のいくらかの関与が存在するかは完全には明らかになっていない。サーカディアンリズムの消失から得られうる当該クラスの障害の治療は、有効ではなく:例えば、日中における過度の眠気のモダフィニル治療が試され、限定的な成功しかもたらさず、そして本質的に未知の作用メカニズからなる興奮剤の適応症は、保険機関により認められていない。
【0078】
PDは、1817年にJames Parkinsonにより記載された特発性PDつまり特発性パーキンソン病を指す。PDの臨床四要件として、応答の際の身震い、動作緩慢(遅い自発運動)又は無運動(動作の低下又は消失)、歯車様(cogwheel)又は鉛管様硬直、及び方向転換及び前屈姿勢の難しさを引き起こす姿勢障害(postural impairment)が挙げられる。病気の性質決定は、黒質緻密部におけるニューロンの喪失に加えて、細胞質内の好酸性封入体(レヴィー小体)の存在である。疾患の中核を構成する動作開始及び調節におけるPDの主要な徴候に加えて、PD患者の多くの割合が睡眠障害及び覚醒障害を示す。これらの「PDに付随する睡眠及び覚醒障害」としては、特定の不眠症において、睡眠開始及び維持の障害、睡眠断片化、睡眠時移動行動、睡眠障害呼吸、日中の過度の眠気(睡眠発作を含む)、及びサーカディアン変調(睡眠-覚醒リズムの逆転)が挙げられる。
【0079】
レヴィー小体を伴う認知症(DLB)は、大脳皮質におけるこのような小体の蓄積に起因する(一方、黒質線条体緻密部におけるレヴィー小体の蓄積がPD、関連する変性疾患において観察される)。認識機能障害、注意力障害、幻覚症、うつ病、及び睡眠障害により特徴付けられる。
【0080】
アルツハイマー病の次である認知症の二番目に多い原因である血管性認知症は、記憶、適応性、及び執行機能の急激な喪失により特徴付けられ、そしてしばしば、高血圧、糖尿病、高脂血症、数年間に渡る睡眠時無呼吸症を患う患者における明らかな脳血管の損傷と関連する。
【0081】
本発明の化合物は、回転性めまい、動揺病、肥満、糖尿病、及びいわゆる「メタボリックシンドローム」の治療及び/又は予防に有用でありうる。メタボリックシンドロームは、Reavenにより最初にシンドロームXとして定義された(Diabetes 1988, 37, 1595-607)。メタボリックシンドロームは、糖尿病、耐糖能障害、インスリン抵抗性、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、脂質代謝異常、低いHDLコレステロール、高血圧、微量アルブミン尿、肥満、炎症、心血管障害及び/又は線維素溶解及び凝固異常などの代謝性障害のクラスターを指す。
【0082】
さらに、本発明の化合物は、睡眠障害、ストレス、向精神障害、痙攣、うつ病、過眠症、視床下部下垂体の分泌障害、脳循環系及び/又は免疫系障害の治療に有用で有りうる。
【0083】
本発明は、医薬として許容される担体又は賦形剤と供に本発明の化合物を治療を必要とする患者へと投与することを含む対応する治療方法にも関する。
【0084】
本明細書に記載される疾患及び病気の治療を必要とする対象の同定は、当業者の能力及び知識の範囲内である。当該技術分野における臨床医は、臨床試験、身体検査、及び病歴/家族病歴を使用することにより、このような治療を必要とするこれらの対象を容易に同定することができる。
【0085】
治療有効量は、慣用技術を用いることにより、そして同様な事情の下で得られる結果を観察することにより、当業者としての担当診断医によって容易に決定することができる。治療有効量の決定の際には、多くの因子は、担当診断医により考慮され、例えば非限定的に、以下の:対象の種;その大きさ、年齢、及び一般的健康状態;関与する具体的疾患;当該疾患の関与程度又は重篤度;個々の対象の応答性;投与される特定の化合物;投与方法、投与される調製品の生物利用能;選択された投与計画;併用薬の使用;及び他の関連する状況が挙げられる。
【0086】
所望される生物学的効果を達成するために必要とされる式(I)の化合物の量は、投与される薬剤の用量、使用される化合物の化学的性質(例えば、疎水性)、化合物の効力、疾患のタイプ、患者の疾患状態、及び投与経路に依存して変化するであろう。
【0087】
「医薬として」又は「医薬として許容される」は、動物、又は人間に適切なものとして投与される場合に、有害なアレルギー反応又は他の不所望な反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。
【0088】
本明細書に使用されるとき「医薬として許容される担体」として、任意の希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクル、例えば保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳濁剤、懸濁剤、溶媒、分散培地、被膜、抗菌薬及び抗真菌薬、等張及び吸収遅延薬などが挙げられる。このような培地及び薬剤の医薬として活性な薬剤についての使用は、当該技術分野に周知である。任意の慣用医薬又は薬剤が活性成分と適合しない場合を除き、治療組成物中へのその使用が考慮される。補助的活性成分も組成物中に取り込まれてもよい。
【0089】
本発明の文脈では、「治療する」又は「治療」という語句は、本明細書に使用されるとき、このような用語が適用される障害又は病気、又はこのような障害又は病気の1以上の症状を反転させ、軽減させ、進行を止め、又は予防することを意味する。
【0090】
「治療有効量」は、所望される治療効果をもたらすのに有効な本発明に記載される化合物/医薬の量を意味する。
【0091】
本発明に従うと、「患者」又は「それらを必要とする患者」という語句は、神経心理学的障害を患っている可能性のあるヒト又は非ヒト哺乳動物を意図する。好ましくは、患者はヒトである。
【0092】
一般的な語句において、本発明の化合物は、非経口投与用の0.1〜10%w/vの化合物を含む生理緩衝水溶液中に提供されうる。典型的な用量範囲は、1日あたり1μg/kg体重〜0.1g/kg体重であり;好ましい用量範囲は、1日あたり0.01mg/kg〜10mg/kg体重である。成人についての好ましい1日用量としては、5、50、100、及び200mgが挙げられ、そして等しい用量がヒトの子供において挙げられる。投与される薬剤の好ましい用量は、疾患又は障害の進行の程度及びタイプ、特定患者の全体としての健康状態、選択された化合物の相対的生物学的効力、化合物と賦形剤の製剤及びその投与経路などの変化に依存するようである。
【0093】
本発明の化合物は、単位用量形態で投与でき、ここで、「単位用量」という用語は、患者に投与でき、そして容易に取り扱われそしてパッケージされる1回用量を意味し、活性化合物自身、又は本明細書の以下に記載される医薬として許容される組成物のいずれかを含む生理学的及び化学的に安定な単位用量として残る。このようなものとして、典型的な1日用量範囲は、0.01〜10mg/kg体重である。一般的なガイダンスに従うと、ヒトについての単位用量は、1日あたり0.1mg〜1000mgの範囲である。好ましくは、単位用量範囲は、1日あたり1〜4回投与される1〜500mgであり、そしてさらにより好ましくは10mg〜300mgで1日あたり2回である。本明細書に提供される化合物は、1以上の医薬として許容される賦形剤と混合することにより医薬組成物中に剤形できる。このような組成物は、経口投与に使用するために特に錠剤又はカプセルに;又は非経口投与に使用するために特に溶液、懸濁液、又は乳濁液の形態に;又は鼻腔内投与用に特に粉末、鼻ドロップ、又はエアロゾルに;又は経皮的投与用に例えば局所又は経皮パッチに調製されてもよい。
【0094】
組成物は、単位用量形態で慣用的に投与されてもよいし、そして医薬品の分野に周知の方法のいずれかにより製造されてもよく、例えば、Remingtonの「The Science and Practice of Pharmacy」第20版;Gennaro、A. R.編; Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia,PA、2000に記載される様に製造されうる。医薬として適合性の結合薬及び/又はアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。経口組成物は、一般的に不活性希釈担体又は食用担体を含む。
【0095】
錠剤、ピル、粉末、カプセル、トローチなどは、以下の成分:微結晶セルロース又はトラガカントゴムなどの結合剤;スターチ又はラクトースなどの希釈剤;スターチ及びセルロース誘導体などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味料;又はペパーミント又はサリチル酸メチルなどの香味剤のいずれか1以上又は同様の性質の化合物を含むことができる。カプセルは、ハードカプセル又はソフトカプセルの形態中に存在しうる。これらは、一般的に場合により可塑剤と混合されたゼラチン混合物、並びにスターチカプセルから作成される。さらに、単位用量形態は、単位用量の物理的形態を変更する様々な他の物質、例えば糖衣、シェラック、又は腸溶剤を含みうる。他の経口投与形態シロップ又はエリクシルは、甘味料、保存剤、色素、着色剤、及び香味剤を含んでもよい。さらに、活性化合物は、易溶性、調節放出性、又は徐放性調製品及び製剤中に取り込まれてもよく、ここでこの様な徐放性製剤は好ましくは二層性である。
【0096】
好ましい製剤は、本発明の化合物が経口又は非経口投与用に剤形される医薬組成物、又はより好ましくは、本発明の化合物が錠剤として剤形される医薬組成物を含む。好ましい錠剤は、ラクトース、コーンスターチ、ケイ酸マグネシウム、クロスカルメロース・ナトリウム、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、又はタルクを、いずれかの組合せで含む。本発明の化合物は、食品又は液体中に取り込まれてもよいということは、本開示の一態様である。
【0097】
投与用の液体製剤として、滅菌水溶液又は非水性溶液、懸濁液、及び乳濁液が挙げられる。液体組成物としては、結合剤、緩衝液、保存剤、キレート薬、甘味料、香味剤及び着色剤などが挙げられる。非水性溶媒としては、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油及び有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどが挙げられる。水性担体としては、アルコールと水の混合液、緩衝溶媒、及び生理食塩水が挙げられる。特に、生体適合性、生体分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが、活性化合物の放出を制御するための有用な賦形剤であるかもしれない。静脈用ビヒクルは、液体及び栄養補充液、電解質補充液、例えばリンゲルデキストロースなどに基づいたビヒクルを含んでもよい。これらの活性化合物についての他の潜在的に有用な非経口デリバリーシステムとしては、酢酸エチレンビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、インプラント可能な輸液システム、及びリポソームが挙げられる。
【0098】
代わりの投与様式として、吸入用の製剤が挙げられる。吸入用製剤はそのような手段として乾燥粉末、エアロゾル又は液滴を含む。これらは、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩、及びデオキシコール酸塩を含む水溶液、又は鼻腔内ドロップの形態又は鼻腔内適用されるゲルとして投与用の油状溶液であってもよい。頬側投与用の製剤としては、例えば、ロゼンジ、又はトローチが挙げられ、そしてスクロース又はアカシアなどの香味基剤、及び他の賦形剤、例えばグリココール酸塩などを含んでも良い。直腸投与に適した製剤は、好ましくは単位用量座剤として存在し、固体ベースの担体、例えばココアバターを伴い、そしてサリチル酸塩を含んでもよい。皮膚への局所投与用の製剤は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、又は油の形態をとる。使用されうる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレン・グリコール、アルコール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。経皮投与に適した製剤は、別個のパッチとして与えられうるし、そして親油性乳濁液又は緩衝液、水溶液であるか、ポリマー又は粘着性物質中に溶解及び/又は分散されうる。
本発明は、以下の実施例の記載により非限定的にさらに示される。
【実施例】
【0099】
実施例1
【化10】

1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0100】
A. 0℃付近の温度で攪拌された1-(3-ヒドロキシプロピル)ピロリジン(631mg)を含むトルエンの溶液(10mL)の溶液に、水素化ナトリウムを加えた(208mg、パラフィン中に60%wt)。混合物を室温で3時間攪拌し、0℃付近に冷却し、そして3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オール・メシレート(750mg)、15-クラウン-5(30μl)、テトラブチルアンモニウム・ヨージド(8mg)を加える。混合物を還流温度で30分間加熱し、室温で一晩攪拌し、そしてジエチルオキシドで希釈した。有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、そしてシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン/メタノール94/6を溶出剤として用いて精製した。予期された生成物を含む分画を取り置き、減圧下で濃縮し、ジエチルオキシド中に溶解し、そして68.8mgのシュウ酸を含む1mlのアセトンの溶液で塩形態にした。沈澱をろ過し、ジエチルオキシドで洗浄し、そして乾燥して110mgの1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}-ピロリジン,オキサレートを78〜79℃で溶融する固体として得た。
【0101】
【化11】

【0102】
B. 3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オール・メシレートを以下の様に調製した:
0℃付近の温度で攪拌された3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オール(2.35g)を含むトリエチルアミン(2.5ml)及びジクロロメタン(50ml)の溶液に、塩化メタンスルホニル(1.7ml)を滴下して加えた。混合物を一晩攪拌し、減圧下で濃縮し、酢酸エチル中に溶解した。有機層を、水、0.1N塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、そしてヘプタン/酢酸エチル7/3を溶出剤として用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製した。予期された生成物を含む分画を取り置き、そして減圧下で濃縮して、3gの3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オール・メシレートをさらなる精製なしに用いた。
3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オールは、B. Frydman and V. Deulafeu,Tetrahedron 18 1063-72 (1962)により記載された方法に従って製造できる。
【0103】
実施例2
【化12】

トランス-1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピペリジン,オキサレート
【0104】
3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オール(270mg)を含むジメチルスルホキシド(4ml)の溶液に、粉末化水酸化カリウム(175mg、85%wt)及び少しづつ、1-(3-クロロプロピル)ピペリジン,ヒドロクロリド (250mg)を順次加える。混合物を一晩室温で攪拌し、次に水(80ml)で加水分解した。溶液を酢酸エチルで2回抽出する。混合した抽出物を水(10ml)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、そしてシリカゲル上のクロマトグラフィーにより、98/2〜90/10のジクロロメタン/メタノール勾配を用いて精製した。予想された生成物を含む分画を取り置き、減圧下で濃縮し、10mlのジクロロメタン中に溶解し、ミリポア膜上でろ過し、そして減圧下で濃縮した。こうして得られた塩基を2mlのエタノール中に溶解し、そして100μlのジエチルオキシド中に溶解する。88mgのシュウ酸を含む2mlのエタノールの溶液を加える。現れた沈澱をろ過し、ジエチルオキシドで洗浄し、40℃付近の温度で減圧下で乾燥して、185mgのトランス-1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピペリジン,オキサレートを、111〜112℃で溶融する白色粉末として得た。
【0105】
【化13】

【0106】
3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オールは、A. Srikrishnaら、Syn. Commun. 31(15) 2357-64 (2001)又はM. M. Ponpipornら、J. Med. Chem. 27(3) 309-12 (1986)により記載されるように製造できる。
【0107】
実施例3
【化14】

1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン,オキサレート
【0108】
実施例1§Aに記載される方法に従うが、1-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン(1g)、水素化ナトリウム(0.28g、パラフィン中に60%wt)、3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オール・メシレート(0.96g)、15-クラウン-5(30μl)、テトラブチル-アンモニウムヨージド(15mg)、及びトルエン(10mL)で開始し、シュウ酸を用いて塩形成した後に、230mgの1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]-プロピル}ピペリジン,オキサレートを111℃で溶融する固体として得た。
【0109】
【化15】

【0110】
実施例4
【化16】

1-{3-[3-(4-メチルフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン,オキサレート
【0111】
A. 実施例1§Aに記載される方法に従うが、1-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン(1g)、水素化ナトリウム(313mg、パラフィン中に60%wt)、3-(4-メチルフェニル)プロパン-1-オール・メシレート(911mg)、15-クラウン-5 (30μL)、テトラブチル-アンモニウムアンモニウムヨージド(8mg)及びトルエン(11mL)で開始して、シュウ酸で塩形成した後に、90mgの1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレートを109〜110℃で溶融する白色固体として得た。
【0112】
【化17】

【0113】
B.3-(4-メチルフェニル)プロパン-1-オール・メシレートを以下の様に製造できる:
実施例1§Bに記載される方法に従うが、3-(4-メチルフェニル)プロパン-1-オール(6.02g)、トリエチルアミン(2.9mL)、塩化メタンスルホニル(3.67mL)及びジクロロメタン(39mL)で開始して、3-(4-メチルフェニル)-プロパン-1-オール・メシレート(3.4g)を得て、さらに精製することなく用いた。
【0114】
3-(4-メチルフェニル)プロパン-1-オールは、H. Oelschlaeger,Arch. Pharm. Ber. Dtsch Pharm. Ges. 293 441- 51(1960)又はSA Gloverら、Tetrahedron 46(20) 7247-62 (1990)に記載される方法に従って製造できる。
【0115】
実施例5
【化18】

1-{3-[3-(2-ナフチル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン,オキサレート
【0116】
A. 実施例1§Aに記載される方法に従うが、1-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン(1g)、水素化ナトリウム(0.28g、パラフィン中に60%wt)、3-(2-ナフチル)プロパン-1-オール・メシレート(0.93g)、15-クラウン-5(30μL)、テトラブチルアンモニウムヨージド(15mg)及びトルエン(10ml)で開始して、シュウ酸で塩形成した後に、260mgの1-{3-[3-(2-ナフチル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン,オキサレートを136℃で溶融する固体として得た。
【0117】
【化19】

【0118】
B. 3-(2-ナフチル)プロパン-1-オール・メシレートは、以下の様に製造できる:
実施例1§Bに記載される方法に従ったが、3-(2-ナフチル)プロパン-1-オール(11.7mmol)、トリエチルアミン(2.5mL)、塩化メタンスルホニル(1.7mL)及びジクロロメタン(50mL)で開始して1.7gの3-(2-ナフチル)プロパン-1-オール・メシレートを得て、さらに精製をすることなく用いた。
【0119】
3-(2-ナフチル)プロパン-1-オールは、R.C. Hahnら、J. Amer. Chem. Soc. 91(13) 3558-66 (1969)又はA.D. Gribbleら、J. Med. Chem. 39(18) 3569-84(1996)により記載されるように製造できる。
【0120】
実施例6
【化20】

【0121】
A. トランス-1-{3-[3-(4-ベンジルオキシ-3-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピペリジン(340mg、28%wtジメチルスルホキシドを含む)を含むメタノール(2.5mL)の溶液中の10%炭担持パラジウムの懸濁液を、水素雰囲気下で室温にて一晩攪拌した。懸濁液をクラーセルパッドを通してろ過し、そしてろ液を減圧下で濃縮した。生成物をジエチルオキシド中に溶解し、そしてシュウ酸(61mg)を含むアセトン溶液を加える。沈澱をろ過し、ジエチルオキシドで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、150mgの1-{3-[3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}-ピペリジン,オキサレートを、110〜111℃で溶融する白色固体として得た。
【0122】
【化21】

【0123】
B. トランス-1-{3-[3-(4-ベンジルオキシ-3-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピペリジンは、以下の様に製造できる:
実施例2に記載される方法に従うが、3-(4-ベンジルオキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オール(600mg)、水酸化カリウム(308mg、85%wt)及び1-(3-クロロプロピル)ピペリジン,ヒドロクロリド(440mg)を含むジメチルスルホキシド(5ml)で開始して、28%wt/wtのDMSOを含む740mgのトランス-1-{3-[3-(4-ベンジルオキシ-3-メトキシフェニル)-アリルオキシ]-プロピル}ピペリジンを得て、さらに精製することなく用いた。3-(4-ベンジルオキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オールは、S.V.Reddyら,Chem.Lett.32(11)1038-9(2003)又はW.Guら、Tetrahedron Lett. 41 (32) 6079-82 (2000).に従って製造できる。
【0124】
実施例7
【化22】

1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0125】
トランス-1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン(330mg)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(3mL)溶液中の二酸化白金の懸濁液を、水素雰囲気下で室温で一晩攪拌した。二酸化白金のさらなる量を加え、そして懸濁液を、水素雰囲気下で室温で24時間攪拌した。懸濁液をセライトパッドを通してろ過し、そして酢酸エチルで洗浄した。酢酸エチルをろ液から蒸発させ、水酸化白金(190mg)を加え、そして懸濁液を水素雰囲気下で室温で48時間攪拌する。懸濁液をセライトを通してろ過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で濃縮し、そしてエタノール(2ml)とジエチルオキシド(200μl)の混合物中に溶解した。シュウ酸(58mg)を含むエタノール(2ml)の溶液を加える。混合液を減圧下で濃縮し、そしてジエチルオキシド中に懸濁した。沈澱をろ過し、次エチルエーテルで洗浄し、水に溶解した(5ml)。水相をアンモニアを用いてアルカリ性にし、そしてジエチルオキシド(10ml)で2回抽出した。有機抽出液を取り置き、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、そして99/10/0.1〜92/2/0.2のジクロロメタン/メタノール/アンモニアの勾配でシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製した。予期された生成物を含む分画を取り置き、減圧下で濃縮し、ジエチルオキシド(2ml)中に溶解した。シュウ酸(21mg)を含むアセトンの溶液を加え、そして現れた沈澱をろ過し、そして40℃で減圧下で乾燥させて、ジエチルオキシドのフィルム下で96mgの1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレートを106℃で溶融する白色固体として乾燥させた。
【0126】
【化23】

【0127】
B.
【化24】

【0128】
トランス-1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジンは、以下の様に製造できる:
トランス-4-フルオロ-1-[3-(3-ヨードプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]フェニル(250mg)を含むピペリジン(231μl)及びジメチルスルホキシド(2ml)の溶液中の炭酸ナトリウム(414mg)の懸濁液を一晩室温で攪拌させた。水(10ml)を加え、そして混合液をジエチルオキシド(10ml)で2回抽出し、減圧下で濃縮して、168mgのトランス-1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)アリルオキシ]-プロピル}ピロリジンを得て、さらに精製をすることなく用いた。
Rf TLC(ジクロロメタン/メタノール/アンモニア90/10/1)=0.75
【0129】
C. トランス-4-フルオロ-1-[3-(3-ヨードプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]フェニルは、以下の様に製造できる:
【化25】

【0130】
トランス-3-[3-(4-フルオロフェニル)アリルオキシ]プロパノール(800mg)、トリフェニル-ホスフィン(1.5g)及びイミダゾール(389mg)を含むトルエン溶液を60℃付近の温度に加熱する。ジイオジン(1.29g)を少しづつ加える。混合物を、60℃付近の温度でさらに1時間攪拌し、次に室温に戻した。炭酸ナトリウムの飽和水溶液(5ml)を加え、続いて、着色が残るまでジイオジンを加えた。有機層をデカンタにより分離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮して940mgのトランス-4-フルオロ-1-[3-(3-ヨードプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]フェニルを淡黄色の油として得た。
Rf TLC(ヘプタン/酢酸エチル、1/1)=0.8
【0131】
D.
【化26】

【0132】
トランス-3-[3-(4-フルオロフェニル)アリルオキシ]プロパノールは、以下の通りに調製できる:
トランス-1-(3-ブロモプロパ-1-エン-1-イル)-4-フルオロフェニル(12mmol)を含むジメチル-スルホキシド(5ml)の溶液を水酸化カリウム(1.41g、85%wt)を含む0℃付近の温度に冷却された1,3-プロパンジオール(1.85ml)及びジメチルスルホキシド(9ml)の混合液の懸濁液に加えた。混合液をさらに室温で1時間攪拌し、氷冷水(50ml)に注ぎ、そして酢酸エチルで抽出した(3回50ml)。有機層を取り置き、水(30ml)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮し、100/0〜60/40のヘプタン/酢酸エチル勾配を用いてシリカゲルでクロマトグラフィーすることにより精製した。予期された生成物を含む分画を取り置き、そして減圧下で濃縮して800mgのトランス-3-[3-(4-フルオロフェニル)アリルオキシ]プロパノールをオレンジ色の油として得た。
Rf TLC(ヘプタン/酢酸エチル、 1/1)=0.23
【0133】
トランス1-(3-ブロモプロパ-1-エン-1-イル)-4-フルオロフェニルは、H. Jendrallaら、J. Med. Chem. 34(10) 2962-3 (1991)又はR.C. Lambら、J. Org. Chem. 31 147-53 (1966)により記載されるように製造できる。
【0134】
実施例8
【化27】

トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0135】
実施例2に記載される方法に従うが、3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オール(600mg)、水酸化カリウム(456mg、85%wt)及び1-(3-クロロプロピル)ピロリジン,ヒドロクロリド(618mg)を含むジメチルスルホキシド(5mL)で開始して、40mgのトランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)アリルオキシ]-プロピル}ピロリジン,オキサレートを、143〜144℃で溶融する固体として得た。
【0136】
【化28】

【0137】
実施例9
【化29】

1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0138】
実施例7に記載される方法に従うが、トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン(185mg)及び二酸化白金(74mg)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(2ml)で開始して、シュウ酸との塩形成ののちに、110mgの1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレートを、87〜88℃で溶融するベージュ色の固体として得た。
【0139】
【化30】

【0140】
実施例10
【化31】

1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0141】
A. 実施例7に記載される方法に従うが、トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン(200mg)及び二酸化白金(73mg)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(1.8ml)で開始して、シュウ酸との塩形成後に、150mgの1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロポキシ]-プロピル}ピロリジン,オキサレートを、92〜93℃で溶融する白色固体として得た。
【0142】
【化32】

【0143】
B.トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジンは、以下の様に製造できる:
実施例2に記載された方法に従うが、トランス-3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロパ-2-エン-1-オール(710mg)、水酸化カリウム(592mg、85%wt)及び1-(3-クロロプロピル)ピロリジン,ヒドロクロリド(802mg)を含むジメチルスルホキシド(6mL)で開始して、280mgのトランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)アリルオキシ]プロピル}-ピロリジンを得た。
【0144】
【化33】

【0145】
C.
【化34】

【0146】
トランス-3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロパ-2-エン-1-オールは、以下の様に製造できる:トランス-3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロパ-2-エン酸(6.18g)及び塩化オキサリル(3.72mL)を含み、N,N-ジメチルホルムアミド(60μl)を含むジクロロメタン(40mL)の混合物を室温で3時間攪拌し、減圧下で濃縮し、そしてテトラヒドロフラン(50ml)中に溶解した。溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(2.9g)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(15ml)の懸濁液を加える間に、-8℃未満の温度で維持する。混合物を-12℃付近の温度で1時間攪拌し、水(10ml)及び1N塩酸を順次加えることにより加水分解し、そして酢酸エチルで抽出した。有機層を取り置き、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、そしてヘプタン/酢酸エチル、3/1を溶出剤として用いるシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製して、710mgのトランス-3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロパ-2-エン-1-オールを無色の油として、更に精製を用いることなく使用した。
トランス-3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロパ-2-エン酸は市販されている。
【0147】
実施例11
【化35】

1-{3-[3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0148】
A. 実施例7に記載される方法に従うが、トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン(210mg)及び二酸化白金(90mg)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(4ml)は、シュウ酸で塩形成した後に、145mgの1-{3-[3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}-ピロリジン,オキサレートを白色固体として与える。
【0149】
【化36】

【0150】
B.トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジンは、以下の通りに製造できる:
実施例2に記載される方法に従うが、トランス-3-(4-フルオロ-2-メトキシエニル)プロパ-2-エン-1-オール(400mg)、水酸化カリウム(308mg85%wt)及び1-(3-クロロプロピル)ピロリジンヒドロクロリド(417mg)を含むジメチルスルホキシド(4ml)は、320mgのトランス-1-{3-[3-(3-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジンを更に精製することなく用いる無色の油として与えた。
【0151】
C. トランス-3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オールは、以下の通りに製造できる:
実施例10§Cに記載される方法に従うが、トランス-3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)プロパ-2-エン酸(1.28g)、オキサリル・クロリド(0.7mL)、ジクロロメタン(9mL)及びN,N-ジメチルホルムアミド(13μl)そして次にテトラヒドロ-フラン(10mL)、水素化ホウ素ナトリウム(0.55g)及びN,N-ジメチルホルムアミド(4mL)で開始して、更に精製することなく用いる815mgのトランス-3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)-プロパ-2-エン-1-オールを得た。
トランス-3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)プロパ-2-エン酸は市販されている。
【0152】
実施例12
【化37】

トランス-1-{3-[3-(ベンゾフラン-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0153】
A. 実施例2に記載される方法に従うが、トランス-3-(ベンゾフラン-5-イル)プロパ-2-エン-1-オール(600mg)、水酸化カリウム(477mg、85%wt)及び1-(3-クロロプロピル)ピロリジン,ヒドロクロリド(647mg)を含むジメチルスルホキシド(5ml)で開始して、120mgのトランス-1-{3-[3-(ベンゾフラン-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレートを白色固体として与える。
【0154】
【化38】

【0155】
トランス-3-(ベンゾフラン-5-イル)プロパ-2-エン-1-オールは、T. Hiraiwaら、DE3906920(14/09/1989).に記載されるとおりに製造できる。
【0156】
実施例13
【化39】

1-{3-[3-(2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)アリル]オキシ}プロピル)ピペリジン,オキサレート
【0157】
A. 実施例7§Bに記載される方法に従うが、トランス-2,3-ジヒドロ-6-[3-(3-ヨードプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]ベンゾ[1,4]ジオキシン(200mg)、ピペリジン(165μL)及び炭酸ナトリウム(294mg)を含むジメチルスルホキシド(1.8mL)で開始して、120℃で溶融する172mgの1-{3-[3-(2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)アリル]オキシ}プロピル)-ピペリジン,オキサレートを与える。
【0158】
【化40】

【0159】
B. トランス-2,3-ジヒドロ-6-[3-(3-ヨードプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]ベンゾ[1,4]ジオキシンは、以下の通りに製造できる:
実施例7§Cに記載される方法に従うが、トランス-2,3-ジヒドロ-6-[3-(3-ヒドロキシプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]ベンゾ[1,4]ジオキシン(280mg)、トリフェニルホスフィン(455mg)、イミダゾール(114mg)及びジイオジン(355mg)を含むトルエン(2.6ml)で開始して更に精製することなく用いる透明な油として780mgのトランス-2,3-ジヒドロ-6-[3-(3-ヨードプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]ベンゾ[1,4]ジオキシンを与える。
【0160】
C. トランス-2,3-ジヒドロ-6-[3-(3-ヒドロキシプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]ベンゾ[1,4]ジオキシンを以下の通りに製造できる:
実施例7§Dに記載される方法に従うが、トランス-2,3-ジヒドロ-6-(3-ブロモプロパ-1-エン-1-イル)ベンゾ[1,4]ジオキシン及び2,3-ジヒドロ-6-(1-ブロモアリル)ベンゾ[1,4]ジオキシン(650mg)、296mgの水酸化カリウム(296mg85%wt)及び1,3-プロパンジオール(298μL)を含むジメチルスルホキシド(1.8mL)の混合物から始めて、280mgのトランス-2,3-ジヒドロ-6-[3-(3-ヒドロキシプロポキシ)プロパ-1-エン-1-イル]ベンゾ[1,4]ジオキシンを更に精製をすることなく用いる黄色油として与える。
Rf TLC (ヘプタン/酢酸エチル、2/1)=0.16
【0161】
D. トランス-2,3-ジヒドロ-6-(3-ブロモプロパ-1-エン-1-イル)ベンゾ[1,4]ジオキシンと2,3-ジヒドロ-6-(1-ブロモアリル)ベンゾ[1,4]ジオキシンとの混合物を以下の通りに製造できる:
-5℃付近の温度で攪拌された2,3-ジヒドロ-6-(1-ヒドロキシアリル)ベンゾ[1,4]ジオキシン(540mg)を含むピリジン(20μL)及び石油エーテル(2ml)の溶液に、三臭化リン(0.11ml)を含む石油エーテル(1ml)の溶液を加える。混合液を3時間半室温で攪拌し、ジエチルオキシドで希釈し、水、そして飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして濃縮して650mgのトランス-2,3-ジヒドロ-6-(3-ブロモプロパ-1-エン-1-イル)ベンゾ[1,4]ジオキシンと2,3-ジヒドロ-6-(1-ブロモアリル)ベンゾ[1,4]ジオキシンの混合物を、更に精製することなく用いる黄色油として与える。
【0162】
E.
【化41】

2,3-ジヒドロ-6-(1-ヒドロキシアリル)ベンゾ[1,4]ジオキシンは以下の通りに製造できる:
【0163】
4℃以下の温度で維持されたビニルマグネシウムブロミドを含むテトラヒドロフラン(29mL、1M)の溶液に、少しずつ2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン-6-カルバルデヒド(4.32g)を加えた。混合液をさらに0℃付近の温度で、1.75時間攪拌し、そして塩化アンモニウム水溶液を加えることにより水和する(36.5ml、1M)。混合液を、ジエチルオキシドで抽出する。有機相を取り置き、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下でろ過しそして濃縮する。ヘプタン/酢酸エチル1/1を溶出剤として用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製は、1.12gの2,3-ジヒドロ-6-(1-ヒドロキシアリル)ベンゾ[1,4]ジオキシンを更に精製することなく用いる黄色油として与える。
Rf TLC (ジクロロメタン/メタノール、95/5)=0.7
2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン-6-カルバルデヒドは、S. Corsanoら、Farmaco Ed. Sci. 38(4) 265-73 (1983)により記載されるように得ることができる。
【0164】
実施例14
【化42】

トランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン,オキサレート
【0165】
実施例2に記載される方法に従うが、トランス-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)ベンゾジオキソラン(400mg)、水酸化カリウム(283mg、85%wt)及び1-(3-クロロプロピル)ピロリジン,ヒドロクロリド(376mg)を含むジメチルスルホキシド(5mL)で開始して、90mgのトランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]-プロピル}ピロリジン,オキサレートを、109〜111℃で溶融する白色固体として与える。
【0166】
【化43】

【0167】
トランス-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)ベンゾジオキソールは、H.-L. Panら、Synthesis 10 813-4 (1980)又はW.E. Campbell、P. George Phytochemistry 21 (6) 1455-6 (1982)により記載されるように製造できる。
【0168】
実施例15:3結合
ヒトヒスタミンH3受容体を発現する膜を、最終体積200μl中に50mM・NaH2PO4/KH2PO4、pH7.5を含む結合緩衝液中で1時間室温にてインキュベートした。結合実験では、[125]ヨードプロキシファン(2000Ci/mmol;Amersham Pharmacia Biotech)濃度は、20〜40pMの範囲であった。非特異的結合を、1μMのイメティット(Imetit)の存在下で測定した。反応を、GF/Bフィルターを通して急速ろ過し、続いて、3回の氷冷結合緩衝液で洗浄することにより停止した。50μlのシンチレーション液体を用いてフィルターに結合された放射活性を液体シンチレーションカウンターで計測した。
[125]ヨードプロキシフランを用いることにより調べたhH3結合は、Kd=78±6pMを与える。
【0169】
本発明の化合物についての代表的な結果を以下に与える:
【表1】

【0170】
実施例16:シトクロム阻害
シトクロムP-450(CYPs)は、様々な生体異物及び内在性の化合物の代謝に重要な役割を果たすヘモタンパク質のスーパーファミリーを含む。生体異物代謝性CYPsの中で、5個の形態、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4は、薬剤又は生体異物の酸化代謝に関与する主要なCYPイソ型であるようである。CYP媒介性代謝の阻害、しばしば薬剤-薬剤相互作用のメカニズムは、有害な臨床効果のため薬剤の使用を制限することができる。CYP酵素阻害の潜在性は、試験分子の存在下及び不存在下において、プローブの生体内変換の代謝率を計測することにより、in vitro阻害研究を行うことによって、通常評価される。
【0171】
ヒトにおけるシトクロムP−450イソ型の触媒活性を阻害する薬剤の能力は、5個のヒト主要CYP型の活性についてのマイクロタイタープレートに基づく蛍光分析を用いて評価される。阻害可能性は、特定のCYPイソ型阻害剤と比較して、試験分子の不存在下又は濃度を増加させて存在させた下で(1nM〜100μM)ヒト組変えシトクロムイソ型と、様々なインキュベート時間にわたり蛍光モデル基質をインキュベートした後にin vitroで決定された。データを、定量的阻害パラメータとして表現した[50%阻害をもたらす阻害剤濃度(IC50値)]。
【0172】
薬剤のインキュベートを、ヒト組換えシトクロムP-450イソ型及びNADPH産生システムの存在下で、振盪しながら37℃±0.5℃で行った。シトクロムの各イソ型についてのインキュベート条件は以下のとおりであった:
【0173】
【表2】

【0174】
CEC: 7-エトキシ-3-シアノクマリン
MFC: 7-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-クマリン
O-MF: 3-O-メチルフルオレセイン
AMMC: 3-[2-(N,N-ジエチル-N-メチルアミノ)エチル]-7-メトキシ-4-メチルクマリン
BFC: 7-ベンジルオキシ-4-(トリフルオロメチル)-クマリン
【0175】
本発明の化合物についての代表的なシトクロム阻害(IC50、50%阻害)は、以下に与えられる:
【表3】

【0176】
実施例17:比較実施例
WO00/06254に開示される化合物についての活性及びシトクロム阻害(IC50)は以下に与えられる:
【表4】

本発明の化合物が驚くべきことに有意に低いシトクロム阻害を示すということは明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

[式中、
1及びR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、以下の:
【化2】

(基中、
mは、4〜6の範囲であり、各RaとRbは、独立して同一であるか又は異なり、そしてRaは水素を表し、そしてRbは水素又はC1-C4アルキルを表すか、又は2個のRbは、一緒になって結合を形成して、二環、例えば以下の:
【化3】

を形成する)
で表される飽和窒素含有環を形成し、
A鎖は、飽和C1-C4直鎖アルキレンであり、
B鎖は、C3-C4直鎖アルキレン又はC3-C4直鎖アルケニレンのなかから選ばれる基から選ばれ、そして
5は、フッ素原子、-C1-C4アルキル、-O(C1-C4)アルキル、-OH、CF3、非分岐又は分岐アルケニル、非分岐又は分岐アルキニル、-O(アリール)、-CH2CN、-(O)n-X-NR89(基中、n=0又は1、Xは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレンを表し、R8及びR9は、独立して、水素、直鎖又は分岐C1-C4アルキル、アリール基を表すか、又はそれらが結合する窒素原子と一緒になって飽和又は部分的に不飽和単環又は二環複素環を形成する)から選ばれ、
又はR4とR5は、一緒になってフェニル基と融合した環又は複素環を形成し、当該環又は複素環が芳香環、飽和、不飽和又は部分的に不飽和であり、
各R3、R4、R6、R7は、同一であるか又は異なっており、独立してH、-C1-C4アルキル、ハロゲン原子、-O(C1-C4)アルキル、-OH、CF3、非分岐又は分岐アルケン、非分岐又は分岐アルキン、-O(アリール)、-CH2CN、-(O)n-X-NR89(基中、n=0又は1、Xはアルキレン、アルケニレン、アルキニレンを表し、R8及びR9は独立して水素、直鎖又は分岐C1-C4アルキル、アリール基又はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、飽和又は部分的に不飽和単環又は二環複素環を形成する)から選ばれ;
又はR3及びR4は、一緒になってフェニル基と融合した環又は複素環を形成し、フェニル基と融合し、当該環又は複素環が芳香族、飽和、不飽和、又は部分的に不飽和である]
で表される化合物、又はそれらの医薬として許容される塩、水和物、又は水和塩、又はそれらの化合物の多形結晶構造、又はこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー又はエナンチオマー。
【請求項2】
鎖Bが、C3-C4直鎖アルキレンの中から選ばれる基から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
5が、フッ素原子、-C1-C4アルキル、-O(C1-C4)アルキルから選ばれる、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
各R3、R4、R6、R7 が同一であるか、又は異なっており、独立して、H、-C1-C4アルキル、ハロゲン原子、-O(C1-C4)アルキル、-OHから選ばれる基を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Bが、C3-C4直鎖アルキレン又はC3-C4直鎖アルケニレンの中から選ばれる基から選ばれ、
Aが、飽和直鎖C2-C4アルキレンであり;
5が、フッ素原子、-O(C1-C4)アルキルから選ばれ;
各R3、R4、R6、R7が、Hを表し、又は
4及びR5が一緒になって、フェニル基と融合した飽和複素環を表し、そしてR3、R6、R7の各々がHを表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
鎖Bが、C3-C4直鎖アルキレン又はC3-C4直鎖アルケニレンの中から選ばれる基から選ばれ;
5が、フッ素原子から選ばれ;
各R3、R4、R6、R7が、Hを表すか、又はR4及びR5は一緒になってフェニル基と融合した飽和複素環を形成し、そして各R3、R6、R7がHを表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
以下の:
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-メチルフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(2-ナフチル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾフラン-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)アリル]オキシ}プロピル)ピペリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
又はそれらの医薬として許容される塩、水和物、又は水和塩、又はこれらの化合物の多形結晶構造、又はこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、又はエナンチオマー。
【請求項8】
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、又はその医薬として許容される塩、水和物、又は水和塩、又はこれらの化合物の多形結晶、又はその光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー又はエナンチオマー。
【請求項9】
以下の:
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピペリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
1-{3-[3-(4-フルオロ-3-メトキシフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
から選ばれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物、又はこれらの医薬として許容される塩、水和物、又は水和塩、又はこれらの化合物の多形結晶、これらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー又はエナンチオマー。
【請求項10】
1-{3-[3-(4-フルオロフェニル)プロポキシ]プロピル}ピロリジン、
トランス-1-{3-[3-(ベンゾジオキソール-5-イル)アリルオキシ]プロピル}ピロリジン、
から選ばれる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物、又はこれらの医薬として許容される塩、水和物、又は水和塩、又はこれらの化合物の多形結晶構造、又はこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー又はエナンチオマー。
【請求項11】
以下の式(II):
【化4】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'が、それぞれ、A、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7、又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基を表す]
で表される、対応化合物を、適切な試薬と反応させるステップを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
以下の式(III)と(IV):
【化5】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'は、それぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7、又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基を表し、そしてXがハロゲン原子を表す]
で表される対応化合物を反応させるステップを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載される式(I)の化合物の製造方法。
【請求項13】
以下の式(V)と(VI):
【化6】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'は、それぞれ、A、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基を表し、Yは脱離基を表す]
で表される対応化合物を反応させるステップを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載される式(I)の化合物の製造方法。
【請求項14】
以下の式(VII)と(VIII):
【化7】

[式中、
A'、B'、R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6'及びR7'は、それぞれ、A、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7又はそれぞれA、B、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の前駆基を表し、Zはハロゲン原子を表す]
で表される対応化合物を反応させるステップを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載される式(I)の化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載される式(I)の化合物を、医薬として許容される賦形剤又は担体と供に含む、医薬組成物。
【請求項16】
3受容体のリガンドとして作用し、それらを必要とする患者へ投与するための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
CNS疾患又は病気を治療及び/又は予防するための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に定義される、請求項(1)に記載の化合物の使用。
【請求項18】
アルツハイマー病、注意、覚醒、記憶障害の治療及び/又は予防のための請求項17に記載の使用。
【請求項19】
精神病における認知障害の治療及び/又は予防のための、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
高齢者、うつ病又は無力症状態における障害の治療及び/又は予防のための、請求項17〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
パーキンソン病、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、レヴィー小体認知症、血管性認知症の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
てんかんの治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項23】
回転性めまい、動揺病、肥満の治療及び/又は予防のための、請求項17に記載の使用。
【請求項24】
糖尿病及びメタボリックシンドロームの治療及び/又は予防用の医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に定義される式(I)の化合物の使用。
【請求項25】
睡眠障害、ストレス、向精神障害、痙攣、うつ病、過眠症、視床下部下垂体の分泌障害、脳循環系及び/又は免疫系障害の治療及び/又は予防用の医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に定義される式(I)の化合物の使用。
【請求項26】
健常なヒトの夜勤又は時間シフトへの適応を楽にするための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載される式(I)に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−539219(P2008−539219A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508324(P2008−508324)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001018
【国際公開番号】WO2006/117611
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(501379856)
【Fターム(参考)】