ヒトおよび動物のブドウ球菌(Staphylococcus)感染症において使用するための新しいタンパク質
本発明は、SEQ ID NO: 1に示す配列を含む、ply_pitti26と呼ばれるポリペプチド、ならびにこのポリペプチドの変種に関する。さらに、本発明は、該ポリペプチドおよびその変種をコードする核酸およびベクター、ならびにこれらの核酸および/またはベクターを含む宿主細胞に関する。最後に、本発明は、特に、ブドウ球菌に感染するかまたは曝露された対象を治療または予防するための、該ポリペプチド、その変種、核酸配列、ベクター、および宿主細胞の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SEQ ID NO: 1に示す配列を含む、ply_pitti26と呼ばれるポリペプチド、ならびにこのポリペプチドの変種に関する。さらに、本発明は、該ポリペプチドおよびその変種をコードする核酸およびベクター、ならびにこれらの核酸および/またはベクターを含む宿主細胞に関する。最後に、本発明は、特に、ブドウ球菌に感染するかまたは曝露された対象を治療または予防するための、該ポリペプチド、その変種、核酸配列、ベクター、および宿主細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ブドウ球菌感染症は、世界各地で、死亡率の高い重度の疾患の主要原因である。グラム陽性病原菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、皮膚および軟部組織の様々な感染症、ならびに菌血症および心内膜炎のような生命を脅かす感染症の原因である。さらに、黄色ブドウ球菌は、食中毒にしばしば関与する。低pH値および高塩濃度に耐性があるため、この病原菌は、特に動物起源の様々な食料製品中で増殖して、耐熱性エンテロトキシンを産生する。特に感染リスクのある者は、手術後または血液透析中の患者、ならびに未熟児および免疫無防備状態の者、または人工器官を必要とする者である。ブドウ球菌感染症は、分布率が高く(人口の約25〜30%が無症候性キャリアである)、黄色ブドウ球菌の抗生物質耐性株の出現が増加しているため、特に懸念されている世界的な健康問題である。MRSA(methicillin resistant Staphylococcus aureus)は、このグループの有名なメンバーであり、院内感染症の主要原因である。さらに、多くの多耐性株があり、バンコマイシン、リネゾリド、またはダプトマイシンのような「最終防御ラインの薬物」に耐性があるものさえある。抗生物質耐性ブドウ球菌による感染症により、世界の健康予算に莫大な費用がかかる。これは、患者は病院に長期間滞在することをしばしば必要とし、他の患者から隔離されなければならないためである。
【0003】
コアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌(S. aureus)に加えて、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌のグループに由来する病原菌も重要である。例えば、S.ヘモリチカス(haemolyticus)は角膜炎を引き起こし、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)は、重篤な感染症に関連している移植された器具上のバイオフィルム中にしばしば存在し(エンドプラスチチス(endoplastitis))、S.サプロフィチカス(saprophyticus)は、尿路感染症の原因である。ヒト感染症以外に、ウシ感染症もまた重要な役割を果たす。特に、ウシ乳房炎、すなわち乳腺の感染症は、商業的に重要である。これは、黄色ブドウ球菌に加えて、表皮ブドウ球菌、S.シミュランス(simulans)、色素産生ブドウ球菌(S. chromogenes)、S.ヒイカス(hyicus)、S.ワーネリ(warneri)、およびS.キシローサス(xylosus)のようないくつかのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌によって引き起こされる。
【0004】
標準的な抗生物質療法は、ますます効果が無くなってきている。したがって、細菌感染症を治療するための新しい戦略が必要とされている。これらには、新しい抗生物質の開発、ならびに抗微生物ペプチドの探索が含まれる。抗体および推定上のワクチンの使用またはファージ療法が、代替のアプローチである。しかしながら、これらの方法はすべて、重大な不利益を示す。広範囲に及んで使用されると、新規な抗生物質もまた、新しい耐性を増大させると考えられ、抗微生物ペプチドおよびモノクローナル抗体は、療法での常用が可能になるまで、多くの追加投資を必要とする;黄色ブドウ球菌に対する免疫化戦略はこれまで成功しておらず、ファージ療法は、免疫応答および組織侵入ならびにファージによる細菌毒素の望まれない移動の可能性に関する問題を引き起こす。単離されたペプチドグリカン加水分解酵素、いわゆるエンドリシンの使用は、ファージ療法の進歩したものである。エンドリシンは、対応するバクテリオファージの宿主生物である細菌の細胞壁を酵素的に加水分解する。
【0005】
関連技術の説明
宿主細菌に感染した後、バクテリオファージは宿主細胞内で新しいファージ粒子を産生する。複製サイクルの最後に、新しいファージ世代を放つために、宿主細胞は溶解されなければならない。エンドリシンは、この宿主細胞溶解のための道具として産生される。エンドリシンはまた、感染されていない細菌細胞に外因的に添加された場合も細菌細胞壁に作用することが判明した(「非感染からの溶解(lysis from without)」)。食品中の混入細菌を死滅させるためのエンドリシンの使用は、1991年にGassonによって最初に開示された(特許文献1/GB 2,255,561)。マウスのモデル系を用いたインビボでの最初の治療的適用および予防的適用は、2001年にFischettiのグループによって説明された(非特許文献1/NelsonおよびFischetti, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4107-4112; 非特許文献2/Loeffler et al., 2001, Science, 94, 2170-2172)。この研究では、A群連鎖球菌に対するエンドリシンの局所適用(経口適用)および肺炎球菌(pneumococci)に対するエンドリシンの局所適用(鼻咽頭適用)を説明している。後に、炭疽菌(Bacillus anthracis)に対する適用も追加された(非特許文献3/Schuch et al., 2002, Nature 418, 884-889)。Entenza et al. (非特許文献4/2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 4789-4792)は、ラットにおいて心内膜炎を引き起こす肺炎球菌に対するCpl-1リシンの使用を報告している。エンドリシンPlyGBSは、マウスモデルの腟および口腔咽頭中のB群連鎖球菌を死滅させるために使用された(非特許文献5/Cheng et al., 2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 111-117)。Fischetti (非特許文献6/2006, BMC Oral Health, 6, 16-19)は、病原細菌を駆除するためのファージ溶菌酵素の使用を要約している。
【0006】
US5,997,862(特許文献2)では、ファージ由来リシンを用いて細菌感染症を治療および予防するための多数の治療方法および薬学的組成物が開示されている。いくつかのその他の特許は、例えば、皮膚科感染症、眼感染症、口および歯の感染症、気道感染症、様々な疾患、一般的な細菌感染症を治療するためのファージ由来リシンの特異的組成物および使用、リシン組成物の非経口使用、ならびに包帯組成物の使用を教示している。US 2007-077235(特許文献3)では、動物の乳腺炎を治療するためのリシン組成物を説明している。
【0007】
エンドリシンは5つのクラスに分類することができる:(1)N-アセチルムラミダーゼ(リゾチーム)、(2)エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、および(3)溶菌性トランスグリコシラーゼ(すべてペプチドグリカンの糖部分を切断する)、(4)エンドペプチダーゼ(ペプチド部分を切断する)、および(5)N-アクチルムラモイル(actylmuramoyl)-L-アラニンアミダーゼ(糖主鎖とペプチドリンカーの間のアミド結合を切断する)。エンドリシンは、酵素活性または細胞結合活性を示す異なるポリペプチドドメイン、それぞれいわゆるEAD(enzymatically active domain)およびCBD(cell binding domain)の組合せを呈するモジュール構成を示す。主に、EADはエンドリシンのN末端部分に位置し、CBDはC末端部分に位置するが、この経験則の例外もまたある。異なる細胞壁溶解酵素間でモジュールを交換して、さらに新しい機能特性を示すこともある新しい機能的酵素を作製できることもまた、示されている (非特許文献7/Diaz et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 8125-8129; 非特許文献8/Croux et al., 1993, Molecular Microbiology, 9, 1019-1025; 非特許文献9/Donovan et al., 2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996)。
【0008】
エンドリシンは、典型的には抗生物質よりも特異的であるため、耐性の発達が急速に起こる見込みは少ない。したがって、ブドウ球菌細菌に作用する適切なエンドリシンの使用は、個別の感染症と戦うために望ましい手段である。ブドウ球菌細菌に対して活性ないくつかのエンドリシンが、関連技術分野で既に説明されている。ファージP68に関連するタンパク質17は、黄色ブドウ球菌の臨床分離株に対しても抗微生物活性を示すブドウ球菌エンドリシンである(非特許文献10/Takac et al., 2005, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 49, 2934-2940)。黄色ブドウ球菌ファージTwortに由来するエンドリシンplyTWは、細菌細胞に対する加水分解活性のためにN末端の酵素的に活性な断片しか必要とせず、リソスタフィンとの相同性を有するC末端部分は不必要のように思われる(非特許文献11/Loessner et al., 1998, FEMS Microbiol. Lett, 162, 265-274)。Donovan et al. (非特許文献12/2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996)は、乳腺炎の治療において潜在的な用途がある、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)B30エンドリシンとスタフィロコッカス・シミュランス(Staphylococcus simulans)のリソスタフィンとのキメラエンドリシンを作り出した。いくつかのグループが、抗微生物用途において黄色ブドウ球菌バクテリオファージphi11のエンドリシンを使用した。Navarre et al (非特許文献13/1999, J. Biol. Chem., 274, 15847-15856)は、phi11エンドリシンの複数の酵素活性を特定し、アミダーゼドメインが欠失した変異体が依然として活性であることを示した。Donovan et al. (非特許文献14/2006, FEMS Microbiol. Lett, 265, 133-139)は、乳腺炎病原菌に対するアッセイ法において、完全体のphi11エンドリシンならびにC末端切断型を使用した。phi11エンドリシンおよびphi12エンドリシンの様々な変異体が、黄色ブドウ球菌細胞壁、加熱不活性化した細胞、およびまた細菌バイオフィルムに対する様々な活性アッセイ法において試験された(非特許文献15/SassおよびBierbaum,2007, Appl. & Environment. Microbiol., 73, 347-352)。スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)ファージΦWMYのエンドリシンであるLysWMYは、phi11エンドリシンの近縁であることが報告されているが、アミダーゼドメインならびに細胞結合ドメインが欠失した場合も、完全な活性を保持した(非特許文献16/Yokoi et al., 2005, Gene 351, 97-108)。この結果から、異なるエンドリシンモジュールの機能およびそれらの相互作用は、近縁のエンドリシンでさえ等価ではないことが示される。
【0009】
ブドウ球菌細菌に対する様々なエンドリシンが当技術分野において公知であるが、効率的な方法で作製することができ、さらに、ブドウ球菌属の微生物に対して高い活性を示す効率的なブドウ球菌エンドリシンが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】GB 2,255,561
【特許文献2】US5,997,862
【特許文献3】US 2007-077235
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】NelsonおよびFischetti, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4107-4112
【非特許文献2】Loeffler et al., 2001, Science, 94, 2170-2172
【非特許文献3】Schuch et al., 2002, Nature 418, 884-889
【非特許文献4】Entenza et al. 2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 4789-4792
【非特許文献5】Cheng et al., 2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 111-117
【非特許文献6】Fischetti 2006, BMC Oral Health, 6, 16-19)
【非特許文献7】Diaz et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 8125-8129
【非特許文献8】Croux et al., 1993, Molecular Microbiology, 9, 1019-1025
【非特許文献9】Donovan et al., 2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996
【非特許文献10】Takac et al., 2005, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 49, 2934-2940
【非特許文献11】Loessner et al., 1998, FEMS Microbiol. Lett, 162, 265-274)。Donovan et al.
【非特許文献12】2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996
【非特許文献13】1999, J. Biol. Chem., 274, 15847-15856Donovan et al
【非特許文献14】2006, FEMS Microbiol. Lett, 265, 133-139
【非特許文献15】SassおよびBierbaum,2007, Appl. & Environment. Microbiol., 73, 347-352
【非特許文献16】Yokoi et al., 2005, Gene 351, 97-108
【発明の概要】
【0012】
この課題は、特許請求の範囲において開示する主題によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の特定の局面を例示するために、以下の図面を提供する。これらは本発明を限定することを決して意図しない。
【図1】図1は、様々なブドウ球菌エンドリシンのモジュール構成の概略図を提供する。エンドリシンは、CHAP(cysteine, histidine-dependent amidohydrolases/peptidases)ドメインおよびアミダーゼ(N-アセチル-ムラミル-L-アラニンアミダーゼ、ami)酵素ドメイン、ならびに細胞結合ドメイン(CBD)としてのSH3モジュールから構築されている。
【図2】図2は、加熱不活性化したブドウ球菌細胞に対する活性(acitivity)試験における溶解領域を示す寒天プレートである。溶解プレートは、寒天最上層で試験される個々のブドウ球菌株を含む。試験しようとするエンドリシン構築物のプラスミドを含む大腸菌(E. coli)株または単離したエンドリシンの調製物のいずれかをプレートの上層に点描する。個々の宿主細菌に対する溶解活性に応じて、インキュベーション後に溶解領域が現れる。1番は、溶解が起こらなかった(-)例を示す。2番、3番、および4番は、各エンドリシン変種の弱い(+)、中程度の(++)、または強い(+++)溶菌活性を表す。図面の寒天プレートは、EADplypitti26_CBDplyUSAのいくつかの点変異の活性を試験したアッセイ法を例示的に示す。
【図3】図3は、様々な人工のブドウ球菌エンドリシン構築物の比較を示す。本発明による人工エンドリシン構築物を、発現および溶解性(図3A)ならびに濁度アッセイ法での活性(図3B)に関してこの図面で示す。構築物3は、EADplypitti26_CBDplyUSAの同義語であり、構築物5は、EADplypitti26_CBDplypitti20の同義語であり、構築物9および5は、別の人工エンドリシンである。SDSゲル上のレーンの不溶性沈殿画分に「P」、および可溶性上清画分に「S」の印を付けている。分子量の基準を縁に表示している。完全長エンドリシン構築物の位置に矢印を付けている。37℃での発現および溶解性の試験を実施例2で説明するようにして実施し、実施例5のように(ただし、タンパク質発現後の未処理の細胞抽出物を用いて)活性試験を実施する。
【図4】図4は、発現後の溶解性の比較を示す。30℃でエンドリシン構築物を発現させた後に実施した溶解性試験(実施例2で説明する)を示す。図4Aは、野生型plypitti26の溶解性試験でのSDSゲルを示し、図4Bは、EADplypitti26_CBDplyUSAを用いた個々の試験を示す。「P」は不溶性「沈殿画分」を示すのに対し、「S」は上清中に存在する可溶性タンパク質画分を示す。エンドリシンのバンドに星印(asterics)を付けている。図4Aの矢印は、plypitti26よりいくらかだけゆっくりと移動する大腸菌タンパク質を示す。分子量マーカーのレーンには「M」の印を付けている。
【図5】図5は、未処理細胞に対するEADplypitti26_CBDplyUSAおよび野生型plypitti26の溶解活性の比較を示す。精製したplypitti26(1番、2番、3番)またはEADplypitti26_CBDplyUSA(4番、5番、6番)を添加した後、黄色ブドウ球菌細胞において、濃度依存性の溶解プロファイルを記録した。このアッセイ法は、実施例5で説明するようにして実施した。それぞれ2μg、5μg、または10μgの単離したエンドリシンタンパク質を細菌細胞懸濁液に添加し(添加を矢印で示す。線の番号が大きいほど、タンパク質濃度が高い)、完全に溶解するまで、試料の濁度の減少を記録した。
【図6】図6は、ヒト血清における溶解活性を示す。図6は、ヒト血清において実施した濁度アッセイ法によって測定した、EADplypitti26_CBDplyUSAによる黄色ブドウ球菌細胞の溶解を示す。光学濃度(abs)の減少を分析時間に対して測定する。濃度25μg/ml(------)、50μg/ml(-・-・-・-・-・)、または100μg/ml(-・・-・・-・・-)のEADplypitti26_CBDplyUSAを0時点に添加した。実線は、エンドリシンを添加しない対照を表す。このアッセイ法は、実施例6で説明する。
【図7】図7は、野生型pitti26と比較した、EADplypitti26_CBDplyUSAの安定性を示す。この図面は、保存緩衝液中、25℃でインキュベートした後のエンドリシン調製物を示すSDSゲルの写真を示す(実施例6を参照されたい)。図7Aでは、EADplypitti26_CBDplyUSAをゲルに添加し、図7Bはplypitti26タンパク質を示す。最初のレーンは分子基準を示し、25℃でのインキュベーション時間(単位:時間)を伴う。完全長エンドリシンの位置に矢印を付けている。
【図8】図8は、トロンビンに対する安定性を示す。図8Aは、トロンビンによる消化前後のEADplypitti26_CBDplyUSA(レーン3、4)および野生型plypitti26(レーン1、2)を示すSDSゲルの写真である。最初のレーン(M)は、分子量の基準である。レーン1およびレーン3は対照(トロンビン無添加)であり、レーン2およびレーン4はトロンビン添加後のタンパク質試料を示す。完全長エンドリシンの位置に矢印を付けている。図8Bは、トロンビンによる消化前後の濁度測定を用いた、活性アッセイ法を示す。左にplypitti26を示し、右にEADplypitti26_CBDplyUSAを示す。実線は、トロンビンを添加しない場合の溶菌活性を示し、点線は、トロンビン消化後の残存活性を示す。この実験は、実施例8で説明する。
【図9】図9は、ヒト血液における安定性を示す。図9は、37℃のヒト血液中でプレインキュベーションした後のEADplypitti26_CBDplyUSAの安定性を示す。プレインキュベーション無しの場合に達成された活性レベルを100%に設定する。(●)は、緩衝液中でのプレインキュベーション後の活性を示し、(▲)は、ヒトEDTA-血液中での各プレインキュベーション後を示す。これらのアッセイ法は、実施例9で説明する。
【図10】図10Aは、改変されたEADplypitti26_CBDplyUSAであるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のアミノ酸配列を示す。図10Bおよび10Cは、改変されたEADplypitti26_CBDplyUSAであるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5をコードする核酸配列を示す。
【図11】図11は、緩衝液中での溶解活性を示す。図11は、黄色ブドウ球菌細胞に対する、様々なエンドリシン構築物の溶解活性の比較を示す。濃度1μg/ml(左のパネル)または10μg/mlのタンパク質を添加した後に、分およびmgタンパク質当たりで達成される600nmでの吸光度の減少(ΔA600/(分・mg))を測定する。使用したタンパク質構築物は、左から右に、plypitti26(チェック柄)、EADplypitti26_CBDplyUSA(横線)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5(灰色)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8(白色)、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5(縦線)、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5(黒色)、リソスタフィン(白黒チェック)である。
【図12】図12は、ヒト血清における溶解活性を示す。図12は、黄色ブドウ球菌細胞に対する、様々なエンドリシン構築物の溶解活性の比較を示す。濃度10μg/ml(左のパネル)または25μg/mlのタンパク質を添加した後に、分およびmgタンパク質当たりで達成される600nmでの吸光度の減少(ΔA600/(分・mg))を測定する。使用したタンパク質構築物は、左から右に、EADplypitti26_CBDplyUSA(横線)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5(灰色)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8(白色)、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5(縦線)、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5(黒色)である。
【図13】図13は、ブドウ球菌エンドリシンの熱安定性を示す。図13は、ブドウ球菌エンドリシンの熱変性の進行中に測定される代表的な曲線を示す。温度を漸増させながら(T、℃)波長360nmでの吸光度(A360)を測定する。図13は、濃度0.1mg/mlのEADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5を用いて測定した濁度シグナルを示す。矢印は、タンパク質の凝集が始まるため、A360シグナルが有意に増加する温度を示す。この温度を凝集温度Taggrと定義する。
【図14】図14は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の薬物動態試験を示す。図14Aは、タンパク質の静脈内注射後の様々な時点にマイクロタイタープレート形式の濁度アッセイ法によって測定した、ラット血清中のエンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の残存活性を示す。図に示す活性値(ΔA620/分)は、注射後の時点にそれぞれ3匹のラットから採取した試料において測定した、平均値±標準偏差を表す。図14Bは、タンパク質の静脈内注射後5分目に採取したラット血清における(黒色の棒)変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のエンドリシン活性を、免疫前血清中で150μg/mlタンパク質を用いた対照(灰色の棒)または調合緩衝液中の150μg/mlタンパク質と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書において使用される「エンドリシン」または「ペプチドグリカン加水分解酵素」という用語は、細菌の細胞壁を加水分解するのに適した酵素を意味する。この酵素は、エンドリシンの「酵素的に活性なドメイン」(EAD)の性質である次の活性の内の少なくとも1種を含む:エンドペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、N-アセチル-ムラモイル-L-アラニン-アミダーゼ(アミダーゼ)、N-アセチル-ムラミダーゼ(リゾチームもしくは溶菌性トランスグリコシラーゼ)、またはN-アセチル-グルコサミニダーゼ。または、酵素はファージもしくはプロファージにコードされるか、または細菌にコードされる関連酵素、いわゆる「自己溶菌酵素」に由来する。さらに、エンドリシンは通常、酵素的に不活性であり、宿主細菌の細胞壁に結合する領域、いわゆるCBD(cell wall binding domain)も含む。エンドリシンという用語はまた、エンドペプチダーゼドメインおよびCBDを含むリソスタフィンおよびALE-1も意味する。
【0015】
本明細書において使用される「モジュール」という用語は、特定の機能が割り当てられた、エンドリシンのサブユニットを意味する。一般に、モジュールは、CHAPモジュール、amiモジュール、またはSH3モジュールのような比較的小さな機能単位である。
【0016】
本明細書において使用される「ドメイン」という用語は、特定の機能が割り当てられ、かつ構造的ドメインとも一致し得る、エンドリシンのサブユニットを意味する。ドメインという用語は、複数のモジュールから構成され得るEADドメインとCBDドメインの対立(antagonism)を説明するために優先的に使用される。
【0017】
本明細書において使用される「CBD」という用語は、タンパク質のC末端にしばしば存在する、エンドリシンの細胞壁結合ドメインまたは細胞壁ターゲティングドメインを意味する。CBDドメインは、細胞壁を加水分解するという観点からは酵素活性を持たないが、細菌細胞壁へのエンドリシンの結合をしばしば媒介する。CBDはSH3ドメインを含んでよい。
【0018】
本明細書において使用される「EAD」という用語は、細菌ペプチドグリカンの加水分解を担う、エンドリシンの酵素的に活性なドメインを意味する。これは、エンドリシンの少なくとも1種の酵素活性を含む。EADはまた、複数の酵素的に活性なモジュールから構成されてもよい。
【0019】
「CHAP」ドメイン(cysteine, histidine-dependent amidohydrolase/peptidase)は、細菌、バクテリオファージ(bacteriphage)、古細菌、およびトリパノソーマ(Trypanosomidae)科の真核生物に由来するタンパク質中に存在する、アミノ酸110個〜140個の間の領域である。これらのタンパク質は、主にペプチドグリカン加水分解の際に機能し得る。CHAPドメインは普通、細菌型SH3ドメインおよびアミダーゼドメインのいくつかのファミリーと関連している。CHAPドメインを含むタンパク質は、求核攻撃メカニズムにおいて触媒的システイン残基を利用し得る。CHAPドメインは、2種の不変のアミノ酸残基、システインおよびヒスチジンを含む。これらの残基は、CHAPドメインを含むタンパク質の想定される活性部位の一部分を形成する。
【0020】
本明細書において使用される「ami」という用語は、アミダーゼ活性を提示する酵素的に定義されたモジュールを意味し、すなわち、これは、ペプチドグリカン骨格中のN-アセチルムラミンと通常はペプチドリンカー中のL-alaである隣接したアミノ酸の間のアミド結合を加水分解する。アミダーゼの活性は、しばしば金属イオン依存性である。
【0021】
本明細書において使用される「ペプチダーゼ_M23」という用語は、エンドペプチダーゼとしてグリシル-グリシルペプチド結合を切断する亜鉛依存性メタロペプチダーゼドメインを意味する。ペプチダーゼ_M23ドメインは、例えばリソスタフィンおよびALE-1中に存在する。
【0022】
Src相同性ドメイン3とも呼ばれる本明細書において使用される「SH3」ドメインという用語は、他の結合相手と相互作用するタンパク質に特徴的な、アミノ酸約60個の小さな非触媒タンパク質ドメインを意味する。これは、プロリンリッチコンセンサスモチーフによって特定される。SH3ドメインは通常CBD内に位置する。ペプチドグリカン加水分解酵素中に存在するSH3ドメインは、しばしばSH3bタイプまたはSH3_5タイプである。
【0023】
本明細書において使用される「シャッフリング」という用語は、異なる酵素に由来する異なるポリペプチド断片を新しいキメラポリペプチド構築物に組み合わせることを意味する。この文脈において、酵素は優先的にエンドリシンであり、断片は優先的にモジュールである。通常、これらの断片は、核酸レベルで分子生物学的方法によって組み合わされる。構造的な理由またはクローニングに関する理由から、小さなリンカー配列を断片の間に導入してもよい。
【0024】
本明細書において使用される「野生型」という用語は、タンパク質もしくはポリペプチドの天然に存在するアミノ酸配列、または該タンパク質もしくはポリペプチドをコードする核酸分子のヌクレオチド配列を意味する。
【0025】
本明細書において使用される「変種」という用語は、天然に存在するタンパク質の改変型を意味する。変種は、ポリペプチドのシャッフリングもしくはポリペプチドの変異、またはタグもしくはマーカーの付加、または様々な実行可能な手段の組合せによって、作製される。変種を作製するのに適した変異は、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、または置換(アミノ酸交換、点変異)である。欠失、付加、または交換するアミノ酸の数は、1個〜数百個まで様々である。タンパク質変種をコードする核酸のそれぞれの改変は、遺伝コードによって決定される。
【0026】
本発明者らは、バクテリオファージを単離するための標準的技術を用いて、ブドウ球菌に対して活性ないくつかの溶菌性バクテリオファージを汚水試料から単離した(Adams, 1959, Bacteriophages中、Interscience Pub., New York, 447〜451頁)。分子生物学的技術を用いて、流行株から単離した黄色ブドウ球菌株内で、いくつかの溶原性ファージを同定した。
【0027】
1つの単離されたファージはpitti26と名付けられた。単離された溶原性ファージのファージゲノム内で、エンドリシンタンパク質が同定され、単離された。1つの好ましいエンドリシンが溶菌性ファージpitti26から単離され、ply_pitti26 (SEQ ID NO: 1)と名付けられた。別のエンドリシンが溶菌性ファージpitti20内で同定され、ply_pitti20と名付けられた。プロファージに由来するエンドリシンplyUSAは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株USA300のゲノム(Diep et al., The Lancet, 2006, 367, 731-739; データバンク登録NC_007793)中に組み込まれたプロファージΦSA2usaのゲノム中で同定された。
【0028】
ブドウ球菌細菌に特異的なバクテリオファージエンドリシンは、典型的には、2つの酵素的に活性なドメイン、すなわちCHAPドメインおよびアミダーゼドメイン(ami)、ならびにSH3bタイプまたはSH3_5タイプのSH3ドメインとしばしば定義される細胞結合ドメイン(CBD)から構成される。
【0029】
リソスタフィンおよびリソスタフィンのホモログであるALE-1は、黄色ブドウ球菌細胞壁を特異的に溶解するペプチドグリカン加水分解酵素であり、どちらのタンパク質も、ペプチドグリカン鎖間のペンタグリシン結合を切断するエンドペプチダーゼドメイン(ペプチダーゼ_M23)、ならびにCBDまたはターゲティンドメインとして機能するC末端SH3bドメインを含む。リソスタフィンは、スタフィロコッカス・シミュランス次亜種スタフィロリチカス(staphylolyticus)によって分泌され、ALE-1は、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)EPK1によって分泌される。リソスタフィンは、成熟するとN末端のタンデムリピートを失う前駆タンパク質として産生される。ALE-1は、翻訳後プロセシングされないN末端反復ドメインを含む。ALE-1の細胞壁ターゲティングドメインは、92個のC末端アミノ酸(残基271〜362)からなることが決定された(Lu et al., 2006, J. Biol. Chem., 281, 549-558)。このドメインは、リソスタフィンのC末端SH3bドメインに非常に似ている(同一性82%)。
【0030】
本発明の発明者らは、エンドリシンplypitti26のCHAPドメインおよびアミダーゼドメインを、プロファージエンドリシンplyUSAの細胞結合ドメイン、エンドリシンplypitti20の細胞結合ドメイン、リソスタフィンの細胞壁ターゲティングドメイン、ALE-1の細胞壁ターゲティングドメインと組み合わせて、ブドウ球菌感染症に対する治療物質もしくは予防物質として、またはブドウ球菌に対する消毒もしくは公衆衛生のための抗微生物物質として、またはブドウ球菌診断法の手段としてエンドリシン変種を使用するための新しい特性を有するキメラエンドリシンを作製した。新しい特性は、例えば、緩衝液系中、血液または血清のような治療に関連した溶液中でのキメラエンドリシンのより高い活性、ブドウ球菌属または黄色ブドウ球菌種、好ましくはMRSA株内で認識する宿主域の拡大、好ましくは発現後のキメラエンドリシンのより高い溶解性、および、より高いタンパク質安定性、好ましくは、熱安定性、長期安定性、またはプロテアーゼに対する安定性である。単離したエンドリシンplypitti26ならびにキメラ酵素を用いて、ブドウ球菌属の細菌を溶解することができる。
【0031】
1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO: 1に示す配列を含む、ply_pitti26と呼ばれるポリペプチドに関する。
【0032】
さらなる局面において、本発明は、SEQ ID NO: 1に示す配列を含むply_pitti26と呼ばれるこのポリペプチドの変種に関する。下記の態様は、ply_pitti26の変種とみなされる:
a)ply_pitti26のCBDが、別のブドウ球菌特異的エンドリシンまたはリソスタフィンもしくはALE-1のCBDドメインで置換された配列を含むポリペプチド、
b)ply_pitti26の少なくとも最初のN末端アミノ酸および多くとも最初の28個のN末端アミノ酸を除いて、ply_pitti26の配列を含むポリペプチド、
c)ply_pitti26の配列中に1つまたは複数の点変異または置換を含むポリペプチド、
d) SEQ ID NO: 1に加えて、マーカー部分、タグ、または他の機能的ポリペプチド配列を含むポリペプチド、ならびに
e)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列中に挿入された1つまたは複数の付加的なアミノ酸残基を含むポリペプチド、
f)a)、b)、c)、d)およびe)の任意の組合せ。
【0033】
前述したように、本発明は、SEQ ID NO: 1の配列を含むポリペプチドならびにその変種に関する。該ポリペプチドならびにその変種は、本発明によるポリペプチドであるとみなされる。これらはすべて、ブドウ球菌細菌を溶解することができるエンドリシンとして機能するという共通の特徴を有する。ブドウ球菌に対する該特異性は、当技術分野において公知であるか、または下記に説明する複数の方法によって、例えば、1種または複数種の前記ブドウ球菌種を含む試料に組換えエンドリシン変種を添加し、(組換え)エンドリシン添加後の濁度の変化を測定することによって、試験することができる。
【0034】
好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、ply_pitti26のCBDドメインが別のエンドリシンのCBDで置換されているポリペプチドである。原則的には、結果として生じる(組換え)エンドリシンがブドウ球菌細菌、特に黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.シミュランス、S.サプロフィチカス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、および/またはS.キシローサスに対する特異性を保持する限り、抗ブドウ球菌エンドリシンに由来する他のCBDドメインの選択に関して制約は無い。特に好ましい態様において、前記組換えエンドリシンは、SH3タイプのエンドリシン細胞結合ドメインを含む。好ましくは、CBDドメインは、ply_USAもしくはply_pitti20またはリソスタフィンもしくはALE-1のエンドリシンCBDドメインより選択される。ply_USAのCBDとしては、特に、SEQ ID NO: 3に示す配列が好ましい。ply_pitti20のCBDとしては、特に、SEQ ID NO: 5に示す配列が好ましい。CBDを交換された、ply_pitti26のこのような組換えエンドリシン変種の例をSEQ ID NO: 7およびSEQ ID NO: 11に示す。
【0035】
さらに好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、特定の数のN末端残基を除くply_pitti26の配列を含む。本発明の発明者らは、28個を超えるN末端アミノ酸残基がSEQ ID NO: 1から除去された場合には、エンドリシン活性が失われることを発見した。したがって、ply_pittii26の適切な変種は、原則的に、SEQ ID NO: 1の配列を含むが、SEQ ID NO: 1の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、または28個のN末端アミノ酸残基を欠く。ply_pitti26の4個、9個、または28個のN末端アミノ酸残基を欠く変種が、特に好ましい。
【0036】
好ましい態様において、ply_pitti26と呼ばれるポリペプチドの変種は、SEQ ID NO: 1に対して単一または複数の置換を示す。特に、他のアミノ酸残基に置換される部位は、F19、W22、W36、F42、Y44、L55、L56、F67、L74、Y78、W107、Y115、I116、Y119、W123、W128、W137、W139、W154、E163、R167、E179、E189、Y200、Y275、Y276、C282、F300、C303、および/またはW310である。位置はすべてSEQ ID NO: 1に関して示す。
【0037】
さらにより好ましい態様において、F、W、Y、I、およびLなどの疎水性アミノ酸残基、特に、タンパク質の表面にあると予想されるものが、R、D、E、N、K、Q、H、S、T、M、G、Aなど疎水性が低めのアミノ酸と交換され、その際、Aが特に好ましい。疎水性タンパク質は凝集する傾向があるため、該置換により、タンパク質の溶解性が上昇する。アミノ酸残基が表面に露出する可能性は、同種のタンパク質またはモジュールの構造が公知である場合には、そのタンパク質の高分解能構造またはモデルから予測することができる。荷電アミノ酸は、しばしばプロテアーゼの認識部位であるため、E、DおよびR、Kなどの荷電アミノ酸は、非荷電アミノ酸と優先的に交換される(例えば、Eの代わりにQまたはA、Dの代わりにNまたはA、RまたはKの代わりにA)。システインは酸化条件下でジスルフィド架橋を構築する傾向があり、これは酵素の構造および機能にとって潜在的に有害であるため、システインはAまたはSと優先的に交換される。
【0038】
以下の変異群より選択される、SEQ ID NO: 1の配列の変異が特に好ましい。置換はすべて、SEQ ID NO: 1中の位置に関して与えられる:W22R、F42A、Y44A L55H、L56T、F67T、Y115S、W123M、W137A、W139A、W154H、E163Q、E163A、R167A、E179Q、E179A、E187Q、E189Q、Y200A、Y200H、Y275A、Y275M、Y276A、C282A、F300A、C303S、W310A、および/またはW310M。該置換は、SEQ ID NO: 1の一重変異体でもよく、または2つもしくはそれ以上の該置換の組合せでもよい。SEQ ID NO: 1の好ましい多重変異体は、次の多重変異体を含む群より選択される:
【0039】
さらに好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、ビオチンもしくはストレプトアビジンなど付加的なマーカー部分、またはHAタグ(アミノ酸配列EQKLISEEDL)、Hisタグ(Nieba et al., 1997, Anal. Biochem., 252, 217-228)、Strepタグ (Voss およびSkerra, 1997, Protein Eng., 10, 975-982)、Mycタグ (Evan et al., Mol&Cell Biol, 5, 3610-3616)、GSTタグ(Peng et al. 1993, Protein Expr. Purif, 412, 95-100)、JSタグ(WO 2008/077397)、システインタグ(EP1399551)、もしくは当技術分野において公知の他のタグなどのタグを含む。他の好ましい機能的ポリペプチド配列は、例えば、プロテアーゼ切断部位である。いくつかの態様において、前述したply_pitti26変種は、ply_pitti26または該変種の生物工学的作製を容易にするのに役立ち得る。
【0040】
さらに好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、1つまたは複数の付加的なアミノ酸残基を含む。好ましくは、本発明によるポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、または4つの付加的なアミノ酸残基を含み、これらの残基は連続した残基でもよく、またはそれらは別個の位置に挿入されてもよい。1つまたは2つのアミノ酸残基の付加が好ましく、1つのアミノ酸残基の付加がより好ましい。位置1(position one)の後に1つのアミノ酸残基を付加することが最も好ましく、好ましくは、アミノ酸残基Aの付加である。1つまたは複数のアミノ酸残基がply_pitti26中に挿入される場合には、アミノ酸置換のために好ましい位置であると上記に説明した位置は、挿入されるアミノ酸残基の数および位置に対して調整されなければならない。例示的に、アミノ酸残基が位置2に挿入される場合には、位置F19はF20になり、W22はW23になるなどである。複数のアミノ酸残基が挿入される場合には、新しい位置がそれに応じて調整されなければならない。
【0041】
上記に例示したply_pitti26変種は、厳密には別々の態様とみなしてはならず、その代わりに一緒にされ得ることを理解すべきである。例えば、本発明によるply_pitti26の変種は、そのような組換えエンドリシンがブドウ球菌に対して依然として特異的であることを条件として、SEQ ID NO: 1のN末端切断、先に示した1種または複数種の置換、別のエンドリシンのCBDドメイン、1種または複数種のアミノ酸付加、ならびに例えばHisタグの群より選択される1種または複数種の変種を含んでよい。当業者は、該変種のどれが自分の目的に適しているかを容易に理解すると考えられ、当技術分野において日常的な方法によって、例えば、ブドウ球菌を含む溶液の光学濃度に対する溶菌活性の影響を分析することによって、そのような変種をブドウ球菌に対する活性について常に試験することができる。このような組合せ変種の例示的な例を、SEQ ID NO: 9(plyUSAのCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26)ならびにSEQ ID NO: 13(ply_pitti20のCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26)に示す。
【0042】
CBDを置換され、さらに位置2にアミノ酸1個を付加されたply_pitti26変種の例示的な例をSEQ ID NO: 28(plyUSAのCBDおよび位置2の付加的なアミノ酸残基Aを有するply_pitti26)に示し、これをEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2と呼ぶ。
【0043】
CBDを置換され、1つまたは複数のアミノ酸が置換され、さらに位置2に付加的なアミノ酸残基を有するply_pitti26変種の別の例示的な例を後述する。SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を有するポリペプチドが特に好ましい。該ポリペプチドは、SEQ ID NO: 7に示すplyUSAのCDBを有するply_pitti26に由来し、次の5つの単一アミノ酸置換:L56H、L57T、E164A、R168A、およびY201H、ならびに1つの付加的なA2を有する。この変種は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5と名付けられる。注釈「_M5」は、ply_pitti26のEAD内部に5つの単一アミノ酸置換:L56H、L57T、E164A、R168A、およびY201Hの特に好ましい組合せを含む構築物すべてを表す。注釈「Add2」は、ply_pitti26のEADの位置2に付加的な単一のアミノ酸残基を含む構築物すべてを表す。ply_pitti26のEADをリソスタフィンのCBDと組み合わせた、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5と名付けられ、SEQ ID NO: 20に示すアミノ酸配列を有する変種、またはply_pitti26のEADをALE-1リシンのCBDと組み合わせた、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5と名付けられ、SEQ ID NO: 22に示すアミノ酸配列を有する変種が、さらに特に好ましい。
【0044】
さらに、SEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を有するポリペプチドが特に好ましい。該ポリペプチドは、SEQ ID NO: 7に示すplyUSAのCDBを有するply_pitti26に由来し、次の8つの単一アミノ酸置換:L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H、S238L、R355Q、およびA368V、ならびに1つの付加的なA2を有する。この変種は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8と名付けられる。
【0045】
別の局面において、本発明は、本発明のポリペプチドの内の1つをコードする核酸分子に関する。例えば、縮重した遺伝コードを考慮すると、本発明によるポリペプチドの内の1つをコードする核酸分子を構築する多くの方法があり得ることは、当業者には明らかである。本発明のポリペプチドのアミノ酸配列に関する知識を有する当業者は、自分の目的に最も合う適切なヌクレオチド配列を選択することができ、例えば、その配列中のコドン使用は、所望の発現宿主のコドン使用に適合されている。本発明のポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子は、それぞれ、本発明の核酸配列またはヌクレオチド配列であるとみなされる。
【0046】
好ましい態様において、前記核酸分子は、SEQ ID NO: 1の配列を含むエンドリシンをコードする。好ましくは、前記核酸は、SEQ ID NO: 2に示すヌクレオチド配列を含む。
【0047】
別の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、ply_pitti26の変種、特に、CBDドメインが別のブドウ球菌バクテリオファージエンドリシンのCBDで置換された変種である。plyUSAもしくはply_pitti20またはリソスタフィンもしくはALE-1のCBDをコードするヌクレオチド配列の例示的な例は、それぞれ、SEQ ID NO: 4およびSEQ ID NO: 6、ならびにSEQ ID NO: 25およびSEQ ID NO: 27に示す。本発明のヌクレオチド配列を例示するその他の例は、それぞれ、SEQ ID NO: 8(ply_USAのCBDを有するply_pitti26をコードする)、SEQ ID NO: 10(ply_USAのCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26をコードする)、SEQ ID NO: 12(ply_pitti20のCBDを有するply_pitti26をコードする)、ならびにSEQ ID NO: 14(ply_pitti20のCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26をコードする)に示す。
【0048】
好ましい態様において、核酸分子は、SEQ ID NO: 15の配列を含むリペプチド、すなわち、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5をコードする。好ましくは、該ヌクレオチドは、SEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 17に示すヌクレオチド配列を含む。SEQ ID NO: 16は、ファージpitti26およびプロファージΦSA2usaからそれぞれ単離されたヌクレオチド配列であり、置換されたアミノ酸残基、すなわち、L56H、L57T、E164A、R168A、およびY201Hをコードするヌクレオチドコドンの改変、ならびに付加的なアミノ酸残基A2をコードする挿入コドンを有する。SEQ ID NO: 17はSEQ ID NO: 16に由来するが、大腸菌K12における発現のためにコドン最適化されている。さらなる好ましい態様は、同じくコドン最適化されているSEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 21、およびSEQ ID NO: 23のヌクレオチド配列であり、それぞれ、本発明によるポリペプチドであるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、およびEADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5をコードする。
【0049】
さらなる局面において、本発明は、本発明の核酸配列を含むベクターに関する。好ましくは、該ベクターは、適切な宿主細胞における本発明の前記ポリペプチドの発現を提供する。該宿主細胞は、単なる生物工学的理由、例えば、収率、溶解性、コストなどを理由として選択してもよいが、該細胞が対象に投与される予定である場合には、医学的観点から選択してもよく、例えば、非病理学的な細菌または酵母、ヒト細胞である。該ベクターは、本発明による前記ポリペプチドの構成的発現または誘導発現を提供し得る。
【0050】
本発明のさらなる局面において、前述のポリペプチドおよび/または細胞は、対象においてブドウ球菌感染症を治療または予防するため、特に、黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.シミュランス、S. サプロフィチカス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、および/またはS.キシローサスによる感染症を治療または予防するための方法において使用される。該対象は、ヒト対象または動物、特に、畜産および/もしくは酪農において使用される動物、例えばウシでよい。該治療方法は、感染部位または感染症に対して予防的に処置される部位に、十分な量の本発明の前記ポリペプチドを適用することを含む。
【0051】
特に、前記治療方法は、特に黄色ブドウ球菌による感染症、皮膚、軟部組織、菌血症、および/または心内膜炎の治療または予防のためであり得る。
【0052】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、角膜炎、特にS.ヘモリチカスによって引き起こされる角膜炎を治療するための方法において使用される。
【0053】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、エンドプラスチチス、特に表皮ブドウ球菌によって引き起こされるエンドプラスチチスを治療または予防するために使用される。
【0054】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、尿路感染症、特にS.サプロフィチカスによって引き起こされるエンドプラスチチスを治療または予防するために使用される。
【0055】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、動物、特に家畜ウシおよび酪農ウシにおいてブドウ球菌感染症を治療(または予防)する方法において使用される。特に、本出願のポリペプチドは、ウシ乳房炎、特に、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、S.シミュランス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、およびS.キシローサスによって引き起こされるウシ乳房炎を治療(または予防)する方法において使用するのに適している。
【0056】
さらに、本発明のポリペプチドは、特に、外科手術の前もしくは後、または、例えば血液透析の間に、消毒剤として予防的に使用され得る。同様に、未熟児および免疫無防備状態者、または人工器官を必要とする対象も、予防的にまたは急性感染の間に、本発明のポリペプチドで処置することができる。同じ背景で、ブドウ球菌、特に黄色ブドウ球菌または黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染症を、予防的にまたは急性期の間に、本発明のポリペプチドで治療してもよい。この態様において、本発明のポリペプチドは、界面活性剤、テンシド(tensid)、溶剤、抗生物質、ランチビオティックス、またはバクテリオシンのような消毒溶液中で有用な他の成分と組み合わせて、消毒薬としても使用され得る。
【0057】
特に好ましい態様において、治療すべき(または予防すべき)感染症が、多耐性ブドウ球菌株によって、特に、バンコマイシン、リネゾリド、またはダプトマイシンに対して耐性の株によって引き起こされる場合には、本発明のポリペプチドが医学的治療のために使用される。
【0058】
さらに、本発明のポリペプチドは、抗生物質、ランチビオティックス、バクテリオシン、他のエンドリシンなど従来の抗菌剤と組み合わせてそれらを投与することにより、治療方法において使用することができる。
【0059】
本発明による治療(または予防)方法で使用される投薬量および投与経路は、治療しようとする個々の疾患/感染部位に依存する。投与経路は、例えば、特定の態様において、経口、局所、鼻咽頭、非経口、静脈内、直腸、または他の任意の投与経路でよい。
【0060】
本発明のポリペプチドを感染部位(または感染する危険にさらされた部位)に適用するために、エンドリシンが感染部位に到達するまで、プロテアーゼ、酸化、免疫応答などの周囲の影響からそれが保護されるように、本発明のポリペプチドを製剤化することができる。
【0061】
したがって、本発明のポリペプチドは、カプセル剤、糖衣錠、丸剤、坐剤、注射液剤、または他の任意の医学的に適当なガレノス製剤として製剤化することができる。いくつかの態様において、これらのガレノス製剤は、適切な担体、安定化剤、矯味剤、緩衝剤、または他の適切な試薬を含んでよい。
【0062】
例えば、局所適用の場合、本発明のポリペプチドは、ローション剤または絆創膏によって投与することができる。
【0063】
鼻咽頭適用の場合、本発明によるポリペプチドは、鼻へのスプレーによって適用するために、生理食塩水中に配合してもよい。
【0064】
腸の治療の場合、例えば、ウシ乳房炎では、坐剤製剤を想定することができる。あるいは、経口投与を検討してもよい。この場合、感染部位に到達するまで、本発明のポリペプチドを過酷な消化性環境から保護しなければならない。これは、例えば、胃における消化の初期段階を生き延び、その後で腸環境中に本発明のポリペプチドを分泌する細菌を運搬体として用いることによって遂行することができる。
【0065】
医学的適用はすべて、本発明のポリペプチドがブドウ球菌細菌に遭遇した場合に特異的かつ直ちにそれらを溶解する作用に依拠する。これは、病原細菌および細菌量の減少をもたらすことにより、処置された対象の健康状態に即座に影響を与え、同時に免疫系を救援する。したがって、当業者が直面する主要な任務は、治療しようとする個々の疾患に対して正確に本発明のポリペプチドを製剤化することである。この目的のために、これらの用途に対する従来の医薬のために使用されるのと同じガレノス製剤を通常は使用することができる。
【0066】
本発明のさらなる局面において、前述のポリペプチドおよび/または細胞は、担体物質を任意で含む薬学的組成物の構成要素である。
【0067】
さらに別の局面において、ポリペプチドおよび/または細胞は、化粧品組成物の一部分である。前述したように、いくつかのブドウ球菌種は、皮膚のような患者の身体の周囲に露出した表面に刺激を引き起こし得る。このような刺激を防ぐために、または前記ブドウ球菌病原菌の軽微な症状を解消するために、特殊な化粧品調製物が使用され得、これは、既に存在するかまたは新しく定着しつつあるブドウ球菌を溶解するために十分な量の本発明のポリペプチドを含む。
【0068】
さらなる局面において、本発明は、食料品、食品加工機器、食品加工工場、食料品と接触する表面、例えば、棚および食品保管区域、ならびにブドウ球菌細菌が食品材料に潜在的に寄生し得る他のあらゆる状況における、本発明による前記ポリペプチドの使用に関する。
【0069】
本発明の別の局面は、ブドウ球菌の診断学における、本発明による前記ポリペプチドの使用に関する。この局面において、本発明によるポリペプチドは、ブドウ球菌細菌を特異的に溶解する手段として使用される。本発明によるポリペプチドによる細菌細胞の溶解は、Triton X-100のような界面活性剤、または細菌の細胞外被を弱めるポリミキシンBのような他の添加物を添加することによって支援することができる。特異的細胞溶解は、PCRのような核酸に基づいた方法、核酸ハイブリダイゼーションもしくはNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)、IMS、免疫蛍光法、もしくはELISA法のような免疫学的方法、またはブドウ球菌細菌に特異的なタンパク質を使用する酵素アッセイ法のような細菌細胞の細胞内容物に依拠する他の方法を用いた後続のブドウ球菌細菌の特異的検出のための最初の段階として必要とされる。
【0070】
本発明のさらなる局面は、本発明によるポリペプチド、Triton X-100のような界面活性剤、または細菌の細胞外被を弱めるポリミキシンBのような他の添加物を含む診断キットに関する。キットは、PCR手段、核酸ハイブリダイゼーションもしくはNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)手段、IMS、免疫蛍光法、もしくはELISA法のような免疫学的方法、またはブドウ球菌細菌に特異的なタンパク質を使用する酵素アッセイ法のような細菌細胞の細胞内容物に依拠する他の方法のような、検出用のさらなる手段および物質を含んでよい。
【0071】
実施例
クローニング手順はすべて、Sambrook et al.(Molecular cloning. A laboratory manual; 第2版 Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989)に従い、標準的技術を用いて実施した。変異および欠失もまた、標準的技術を用いて導入した。
【0072】
実施例1:本発明によるエンドリシンのクローニング
EADplypitti26_CBDplyUSAの場合、CHAP-Ami2ドメインのヌクレオチド配列を溶菌性ファージpitti26(独自の分離株(own isolate) )から増幅し、CBD配列をplyUSAから増幅した。EADplypitti26_CBDplypitti20の場合、CBDはplypitti20(独自の分離株)に由来した。これらの断片をライゲーションによって結合し、制限部位NcoIおよびBamHIを介して発現ベクターpET14b中にクローニングした。配列にC末端Hisタグを付加するために、制限部位NcoIおよびBamHIを介して発現ベクターpQE60中に新しい構築物をクローニングした。この構築物は、C末端の付加的な配列Ser-Arg-Ser-(His6)を含む。
【0073】
実施例2:本発明によるエンドリシンの発現および溶解性の試験
クローニングされた構築物を発現させるために、大腸菌HMS174(DE3)(pET14b構築物)および大腸菌M15(pQE構築物)をそれぞれ使用した。アンピシリンおよびリファンピシン(HMS174(DE3))またはアンピシリン(M15)を含むLB培地中で、30℃または37℃で振盪しながら細胞を増殖させ、OD600nm 0.4〜0.6(中期対数期)で、1mM IPTGを用いて誘導した。さらに3〜4時間振盪した後、遠心分離によって細胞を回収し、-20℃で凍結した。
【0074】
溶解性試験のために、回収した細胞を溶解緩衝液(20mM Tris/HCl pH8.0、5mM EDTA)中に再懸濁し、超音波処理し(2×30秒)、遠心分離した。上清とちょうど同じ体積の緩衝液中に沈殿物を溶解した。試料体積が同一の沈殿物画分および上清画分を12% SDS-PAGEで解析した。
【0075】
37℃で発現した際、組換えによって作製したエンドリシンの溶解性は一般に良くなかったのに対し、EADplypitti26_CBDplyUSAの溶解性は、30℃では、野生型plypitti26より有意に高かった。ほぼすべてのタンパク質が、plypitti26を含む不溶性沈殿物画分中に存在したが、約30%〜40%の可溶性画分が、EADplypitti26_CBDplyUSAの発現の際に存在した。これは、EADplypitti26_CBDplypitti20にも同様にあてはまる。
【0076】
実施例3:本発明によるエンドリシンの精製
本発明によるエンドリシン構築物の可溶性Hisタグ化型を精製するために、製造業者の取扱い説明書に従ってNi-NTA-セファロースカラム(Amersham)を使用した。細胞沈殿物を平衡緩衝液(25mM Tris/HCl pH8.0、500mM NaCl、20mMイミダゾール、0.1% Tween 20、10%グリセロール)中に再懸濁し、遠心分離し、同じ緩衝液で平衡にしたカラムに添加した。溶出緩衝液(25mM Tris/HCl pH8.0、500mMイミダゾール、0.1% Tween 20、10%グリセロール)中でタンパク質の溶出を実施し、溶出した画分をSDS-PAGEで解析した。精製されたエンドリシンを含む合一した画分を、保存緩衝液(20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4)に対して透析し、-20℃で保存した。
【0077】
Hisタグ無しの本発明によるエンドリシンの可溶型の精製は、例えば、Streamline HSTカラム、Superdexカラム、およびHiTrap Capto MMCカラム(GE Healthcare)を用いる、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および疎水性クロマトグラフィーによる標準的な精製手順に従った。
【0078】
封入体中に沈積した不溶性エンドリシン材料(実施例2の沈殿物画分)が、変性条件下で可溶化され、続いてリフォールディングされる場合には、活性エンドリシンの量が増加し得る。封入体中に沈積するタンパク質の量は、例えば発現温度を37℃に上げることによって増加させることができる。可溶化およびリフォールディングのために適切な条件は、例えば、Navarre et al., 1999, J. Biol. Chem. 274, 15847-15856に記載されている。
【0079】
実施例4:寒天プレート活性アッセイ法
脳心臓浸出物培地(Oxoid)中で、37℃で約18時間増殖させたブドウ球菌株の一晩培養物を遠心分離によって採取し、細胞沈殿物を1×DPBS(Merck)中に再懸濁し、それによって、元の体積の100分の1に減少させ、80℃で20分間、加熱不活性化した。これらの細胞を超音波処理し、アンピシリンおよびIPTGを含むLB上層寒天(0.7%寒天(Bacto);100μg/mlアンピシリン(Sigma);1mM IPTG(Roth))中に溶解し、「溶解プレート」の調製のために使用した。タンパク質溶液、または所望のタンパク質をコードするプラスミドを含む大腸菌の溶液で、これらのプレートの表面を覆うことができる。溶菌タンパク質が活性であり、少なくとも部分的に可溶型および活性型でそれぞれ発現される場合には、プレート上の溶解領域が視認できる。
【0080】
寒天プレートアッセイ法を用いて、異なるコアグラーゼ陽性ブドウ球菌株(黄色ブドウ球菌)およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌株(例えば、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.サプロフィチカス、S.シミュランス)を用いてEADplypitti26_CBDplyUSAの溶解活性を野生型形態のpitti26と比べて試験した。これは、寒天プレート溶解アッセイ法において実施した。濃縮し熱失活させた(例えば、80℃で20分)ブドウ球菌細胞を、密集した細菌叢が実現されるように上層寒天中に定着させる。単離されたエンドリシン溶液(5μl〜10μl)または各エンドリシンを含むプラスミドを含む大腸菌形質転換体のいずれかを、上層寒天の表面に点描する。これらのプレートを30℃で数時間(1時間〜12時間)インキュベートし、次いで、エンドリシンスポットの周囲の溶解領域を確認する。通常、溶解領域の直径の増加はまた、より効率的な細胞溶解を示唆する溶解領域の透明化(clearing)と同時に起こる。これらの結果を表1に示す。
【0081】
(表1)EADplypitti26_CBDplyUSAおよびplypitti26による溶解の宿主域
【0082】
表1は、野生型エンドリシンPitti26と比べたEADplypitti26_CBDplyUSAの宿主域を示す。寒天プレート活性アッセイ法を用いて、様々なブドウ球菌株に対する溶解活性を試験した。図2の説明文で説明するように、強い(+++)、中程度(++)、弱い(+)、および溶解無し(-)と定義する。最初の列は、PROFOSカルチャーコレクションに対応する株番号を示す。2番目の列では、個々の株の由来を挙げる。「臨床分離株」とは、ブドウ球菌感染症と診断された患者から分離された株を意味する。DSMZの番号は、「Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen」(Braunschweig)から取り寄せることができる株を表し、残りのものは、本発明者らの研究室に由来する独自の分離株である。溶解アッセイ法により、特に、黄色ブドウ球菌以外のコアグラーゼ陰性株に対して、EADplypitti26_CBDplyUSAの活性が野生型酵素plypitti26の活性よりもしばしば優れていることが実証された。これはまた、EADplypitti26_CBDplyUSAがplypitti26と比べて広い宿主域を有することも意味する。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌以外の種)は、衰弱し免疫力が低下した者における感染症に関与しており、留置器具または他の移植物を装着している者においてバイオフィルム形成の問題を引き起こし、乳腺炎に関与している。S.サプロフィチカスは、尿路感染症において特殊な問題を引き起こす。
【0083】
実施例5:溶解活性を検査するための濁度アッセイ法
エンドリシン機能に関して本発明者らが使用する第2の活性試験は、細菌細胞の溶解を光度計中で「稼働状態で」測定する濁度試験である。600nmでの吸光度は、細胞培養物の密度の指標であり、細胞が溶解すると減少し、その際、試料も目に見えて透明になる。前述の寒天プレートアッセイ法とは異なり、このアッセイ法は、熱処理されていない細菌細胞を使用し、したがって、より厳密で、医学的用途における実状により近い。ファージエンドリシンによる細菌溶解の結果、濁度アッセイ法によって測定される光学濃度(OD)は急減少する。OD600が約0.8に達するまで(対数期)、脳心臓浸出物(Oxoid)中で標的細菌を増殖させた。細胞を回収し、OD600が1になるまで、2mM CaCl2を加えたTBST緩衝液(20mM Tris/HCl pH7.5、60mM NaCl、0.1% Tween)中に再懸濁した。図面に示した最終タンパク質濃度になるまで、少量の濃縮したエンドリシン溶液を添加する。安定なベースラインに到達するまで、光度計(Jasco)において試料体積1mlで、OD600の変化を30℃で追跡した。試験タンパク質の添加は、測定を中断せずに行った。
【0084】
様々な濃度の単離されたplypitti26エンドリシンおよびEADplypitti26_CBDplyUSAエンドリシンを、黄色ブドウ球菌細胞に対して試験した。EADplypitti26_CBDplyUSAは、同じタンパク質濃度でplypitti26よりも高い活性を一般に示したことから、天然に存在するエンドリシンと比べて優れた特性がやはり示唆された。アッセイ法で使用した比較的低いタンパク質濃度において、完全な溶解(残留する吸光が無いことによって示される)は、EADplypitti26_CBDplyUSAでは、数分間という非常に短い時間間隔で実現される。また、1μg、0.5μg、およびさらに0.2μgという低いタンパク質濃度でも試験を実施したところ、より長い期間に渡って同様に完全な溶解が起こった。結果として得られる比活性(タンパク質1mgおよび1分当たりのΔOD600と定義される)をEADplypitti26_CBDplyUSAに関して算出したところ、値は約50ユニットであった。この比活性を現況技術の完全長型phi11エンドリシンおよび切断型phi11エンドリシン(0.8ユニットと1.5ユニットの間である(Donovan et al., 2006, FEMS Microbiol. Lett, 265, 133-139))と比較すると、EADplypitti26_CBDplyUSAが極めて効率的なブドウ球菌エンドリシンであることが判明する。plypitti26でさえ、phi11エンドリシンより有意に優れている。
【0085】
実施例6:ヒト血清における活性アッセイ法
血清におけるEADplypitti26_CBDplyUSAの活性を、実施例5による光度測定濁度アッセイ法を用いて試験した。対数期の黄色ブドウ球菌細胞を血清中に再懸濁し、続いて、様々な濃度のEADplypitti26_CBDplyUSAを用いた溶解アッセイ法を実施した。このアッセイ法により、ヒト血清中の黄色ブドウ球菌細胞の溶解を直接測定することが可能になる。血清中での効率的な溶解のためには、オスモルを(osmolytically)最適化した溶解緩衝液中での溶解と比較して約10倍の量のタンパク質が必要とされる。さらに、溶解の動態は、緩衝液中よりも血清中の方が遅い。
【0086】
ヒト血清におけるEADplypitti26_CBDplyUSAの活性を試験した。最適化された標準的アッセイ法条件下よりも、いくらか高いタンパク質濃度が必要とされ、溶解はいくらか遅いが、EADplypitti26_CBDplyUSAはまた、ヒト血漿中に存在する条件下でも黄色ブドウ球菌細胞に対する効率的なリシンであることが実証され得る。
【0087】
実施例7:室温での長期のインキュベーションの間の安定性
保存緩衝液中(20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4)、25℃で最長1週間インキュベートした後、plypitti26と比較したEADplypitti26_CBDplyUSAの安定性を試験した。タンパク質の分解をSDS-PAGEおよび濁度アッセイ法によってモニターした。EADplypitti26_CBDplyUSAは試験期間全体に渡って安定であり、変化は観察されなかったが、plypitti26は、インキュベーション時間が9時間より長いと明らかに分解し、120時間のインキュベーション後には完全長タンパク質は視認できなかったが、より小さな断片に相当するタンパク質バンドが視認できるようになった。
【0088】
試験したタンパク質の残存する活性を、標準条件下で濁度アッセイ法を用いて記録した(実施例5を参照されたい)。SDS-PAGEによって得た安定性データによれば、EADplypitti26_CBDplyUSAは、plypitti26と比較して遅い活性低下を示す。EADplypitti26_CBDplyUSAは、長期間、完全に活性なままであるが、plypitti26の活性は4時間後に既に顕著に低下する。
【0089】
これは活性低下と相関関係があり、完全長エンドリシンのみがこれらの条件下で酵素的に活性であることが示唆された。この実験により、特にEADplypitti26_CBDplyUSAが、室温でさえ、妥当な期間、安定であることが実証された。タンパク質を低温、例えば冷蔵庫中で4℃で、またはディープフリーザー中で-20℃もしくは-80℃の温度で保存した場合、この安定性は大幅に増す。
【0090】
実施例8:トロンビンおよびV8プロテアーゼに対するプロテアーゼ安定性
プロテアーゼ安定性アッセイ法のために、トロンビン50μgを最終濃度1.1mg/mlの各タンパク質と共に25℃で一晩インキュベートした。インキュベーション緩衝液は20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4であった。翌日、タンパク質試料をSDS-ゲル上および濁度アッセイ法において解析した。少量のEADplypitti26_CBDplyUSAしか、アッセイ法の時間の間に分解しないのに対し、plypitti26の完全長タンパク質は同じ条件下で全く残らない。これは、EADplypitti26_CBDplyUSAがトロンビンとのインキュベーション後に依然として著しく活性であるのに対し、plypitti26はその活性を完全に失うことを意味する。EADplypitti26_CBDplyUSAはトロンビン耐性を性質として示し、これにより、創傷内または静脈内に適用するのに役立つ。
【0091】
エンドリシン(濃度0.2mg/ml)およびV8プロテアーゼ(1μg/ml)を次の緩衝液:20mM Tris/HCl、100mM NaCl、pH8.0中、25℃で一晩インキュベートして、V8プロテアーゼに対するプロテアーゼ安定性を試験した。翌日、タンパク質試料をSDS-ゲル上および濁度アッセイ法において解析した。
【0092】
実施例9:ヒト血液における安定性
保存緩衝液(20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4)またはヒトEDTA-血液中で、指定した時間、37℃でEADplypitti26_CBDplyUSAをプレインキュベーションした後、濁度アッセイ法(実施例5)によって活性を測定した。指定した時間、ヒト血液試料を遠心分離して赤血球を沈降させ、上清に由来するタンパク質溶液100μlを添加して濁度アッセイ法を開始する。最長で2時間インキュベーションすると、緩衝液中でのプレインキュベーションおよび血液中でのプレインキュベーション後にほぼ同一の活性が測定される。EADplypitti26_CBDplyUSAは血液中37℃で4時間のインキュベーション後にほぼ完全に不活性化されるのに対し、対照のインキュベーションでは80%の残存活性が測定される。
【0093】
実施例10:改変エンドリシン
本発明者らは、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplypitti20、EADplypitti26_CBDALE1、およびEADplypitti26_CBDLSの配列から開始して、いくつかの改変キメラエンドリシンを作製した。
【0094】
N末端切断
いくつかのN末端切断型のEADplypitti26_CBDplyUSAを構築し、寒天プレートアッセイ法によって活性を試験した。N末端をそれぞれアミノ酸4個および9個分短縮した2つの構築物は、プレーティングアッセイ法において溶菌活性を示したが、アミノ酸29個分短縮した構築物はもはや活性を示さなかった。
【0095】
部位特異的変異誘発
plypitti26、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplypitti20、EADplypitti26_CBDALE1、およびEADplypitti26_CBDLSをさらに安定化し可溶化するために、単一アミノ酸置換に対する特異的プライマーを用いて、アミノ酸配列内の選択した位置における部位特異的変異を実施し、寒天プレート活性アッセイ法を用いて各変異体の活性を試験した。本発明者らは、標準的な部位特異的変異誘発方法によって、疎水性アミノ酸(F、W、Y、I、L)を疎水性のより低いアミノ酸R、D、E、N、K、Q、H、S、T、M、G、Aに置換した。荷電アミノ酸EおよびRは、非荷電アミノ酸と優先的に交換した(Eの代わりにQまたはA、Rの代わりにA)。Cは、AまたはSと優先的に交換した。表2に挙げた置換は、ブドウ球菌感染症に対する治療物質、診断用物質、および予防物質としてのエンドリシンの活性を維持するか、または特性を改善することが判明した。
【0096】
(表2)ブドウ球菌に対する溶菌活性を示すplypitti26、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplypitti20、EADplypitti26_CBDALE1、およびEADplypitti26_CBDLSにおける単一アミノ酸変異を示す改変エンドリシン
好ましい態様であるEADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5、またはEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8と同様に、アミノ酸が付加されたplypitti26変種中、例えば、位置2に付加的なAを有する変種中に単一アミノ酸変異が存在する場合には、単一アミノ酸変異の番号は変わることを理解すべきである。
【0097】
実施例11:黄色ブドウ球菌細胞に対する様々な溶解タンパク質の緩衝液中での溶解活性の比較
このアッセイ法は、実施例5で説明したプロトコール「溶解活性を検査するための濁度アッセイ法」に従って実施した。吸光度の減少がほぼ直線状になる溶解曲線の最初の傾きから比活性(ΔA600/(分・mg))を算出した。1μg/mlおよび10μg/mlの溶解タンパク質濃度を用いて、このアッセイ法を実施した。タンパク質濃度10μg/mlでの比活性の方が一般に低く、測定される吸光度減少(ΔA600/分)は、タンパク質濃度と比例関係にはないことが認められる。実験から、緩衝液中の溶解活性は次の順序で得られた:優れたものから順に、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA、plypitti26、リソスタフィン。リソスタフィンは、このアッセイ法において最も弱い能力を示し、plypitti26が2番目に弱い。しかしながら、驚くべきことに、組合せまたはplypitti26のEADおよびリソスタフィンのCBD、すなわちEADplypitti26_CBDLS-Add2_M5は、2番目に良い能力を示す。これはまた、ALE1リシンはリソスタフィンと非常に良く似ているため、変種EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5にも反映される。plypitti26変種であるEADplypitti26_CBDplyUSAおよびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、plypitti26より優れた溶解活性を示す。
【0098】
実施例12:黄色ブドウ球菌細胞に対する、様々な溶解タンパク質のヒト血清における溶解活性の比較
このアッセイ法は、実施例6で説明したプロトコール「ヒト血清における活性アッセイ法」に従って実施した。吸光度の減少がほぼ直線状になる溶解曲線の最初の傾きから比活性(ΔA600/(分・mg))を算出した。10μg/mlおよび25μg/mlの溶解タンパク質濃度を用いて、このアッセイ法を実施した。タンパク質濃度25μg/mlでの比活性の方がいくらか低く、測定される吸光度減少(ΔA600/分)は、タンパク質濃度と比例関係にはないことが認められる。10μg/mlの溶解タンパク質を用いた実験から、ヒト血清中の溶解活性は次の順序で得られた:優れたものから順に、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8。ヒト血清中の様々なエンドリシン構築物の溶解効率は、緩衝液で測定されたものと異なることが判明した。エンドリシンplypitti26は、ヒト血清中では黄色ブドウ球菌に対して溶菌活性を示さなかったが、未知の因子によって阻害されるように思われる。plyUSAのCBDを提示するplypitti26の改変変種、すなわちEADplypitti26_CBDplyUSAおよびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5およびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8は、plypitti26よりも優れた特異的溶解活性をヒト血清中で示す。リソスタフィンのCBDを使用する構築物EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5は、ヒト血清において最も優れた特異的溶解活性を示すが、リソスタフィンの緩衝液中での溶解活性は非常に乏しかった。ALE-1リシンのCBDを使用する構築物EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5は、ヒト血清において3番目に優れた特異的溶解活性を示す。
【0099】
実施例13:熱安定性アッセイ法
光度計中で波長360nmでタンパク質凝集を測定する熱安定性アッセイ法において、ブドウ球菌エンドリシンの熱安定性を測定した。タンパク質(濃度0.1mg/ml)を緩衝液(20mM Hepes、10mM CaCl2、50mMアルギニンを含む、pH7.5)中に溶解した。緩衝化したタンパク質溶液を含むキュベットを光度計中に置き、1分当たり1℃ずつ上げて加熱した。室温〜約65℃の間の温度で、360nmでの吸光度(A360)を測定した。タンパク質変性が無い場合、A360シグナルはわずかな勾配しか示さないが、特定の温度、凝集温度Taggrから始まって、吸光線は上昇し始め、ある種のピークを示す。このシグナル変化は、タンパク質の凝集および付随する不活性化と一致する。したがって、観察される凝集温度Taggrは、タンパク質の熱安定性の指標である。様々なブドウ球菌エンドリシン変種のTaggrの比較を表3に示す。
【0100】
(表3)
【0101】
この実験で測定したうちで、ply_pitti26が最も安定度の低い酵素であることが判明した。ply_pitti26のCBDをplyUSA由来のCBDまたはリソスタフィン由来のCBDに交換すると、安定性が5℃上昇する。EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5は最も安定なエンドリシンで、Taggrは56℃であり、続いて、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA、およびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8がそれぞれ55℃のTaggrを示す。ply_pitti26のCBDをALE-1リシン由来のCBDと交換しても、わずか1℃の安定化しか起こらない。
【0102】
実施例14:ブドウ球菌感染症に対する治療物質、診断用物質、および予防物質として使用するために有利な特性に関する、plypitti26およびその変種の特徴付け
plypitti26に由来する様々なキメラエンドリシンおよび最高7個の単一アミノ酸変異を示す改変タンパク質を、エンドリシンの活性および安定性に関する様々な特性に関して比較した。プロテアーゼ耐性は実施例8で説明したプロトコールに従って試験し、緩衝液中および血清中での溶解活性はそれぞれ実施例5および実施例6に従って試験し、宿主域は寒天プレートアッセイ法(実施例4)で決定し、長期のインキュベーションの間の安定性は実施例7で説明したアッセイ法を用いて試験した。これらの結果を表4に半定量的様式で要約する。
【0103】
(表4)本発明による用途のためのブドウ球菌エンドリシンply_pitti26の様々なタンパク質変種の特性の比較
+++:各アッセイ法で測定された特性が、測定された他のエンドリシン構築物と比べて非常に良い
++:各アッセイ法で測定された特性が、測定された他のエンドリシン構築物と比べて良い
+:各アッセイ法で測定された特性が、測定された他のエンドリシン構築物と比べて目立たない
-:測定された他のエンドリシン構築物と比べて、各アッセイ法で使用した条件下で特性は測定不可能である
n.d.:各エンドリシン構築物を用いて決定されない特性
【0104】
本発明において説明したようにして構築したplypitti26の変種はすべて、安定性もしくは活性または両方が、天然に存在するエンドリシンよりも有利である。変異E164A(またはEADpitti26_CBDUSAにおけるE163A)および変異R168A(またはEADpitti26_CBDUSAにおけるR167A)を示す変種だけでなく、キメラ構築物EADpitti26_CBDUSA、EADpitti26_CBDUSA-Add2、およびEADpitti26_CBDpitti20も、plypitti26より優れたトロンビン耐性を示す。変種EADpitti26_CBDUSA-Add2_M5(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)において、ならびに程度は落ちるが、変種EADpitti26_CBDUSA、EADpitti26_CBDUSA-Add2、およびEADpitti26_CBDpitti20において、トロンビン消化後に残存するエンドリシン活性を試験すると、同様にこれが顕著である。このことから、2つの戦略がプロテアーゼ耐性の改善をもたらすことが示される。第1に、プロテアーゼの基質認識に関与している残基の変異(この場合、R168Qのような単一アミノ酸置換)であり、第2に、プロテアーゼの消化部位の接近容易性が低減する可能性が高い、タンパク質の全体的な立体構造の変化(この場合、CBD交換によるキメラ構築物の構築)である。変種EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T)、ならびに特に変種EADPitti26_CBDUSA-Add2、EADpitti26_CBDUSA-Add2(E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)、EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)、およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)のブドウ球菌細胞に対する溶解活性は、plypitti26より優れていた。変種EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)はまた、ヒト血清中で非常に良い〜良い溶解活性を示す。特に変異L56H、L57T、およびY201Hが、タンパク質の溶解活性のために有益であることが判明した。ブドウ球菌属67株、黄色ブドウ球菌32株、および黄色ブドウ球菌MRSA 12株を用いて、plypitti26変種の宿主域を試験した。宿主域に関する非常に良い感受性(+++)は、80%を超えるブドウ球菌株、90%を超える黄色ブドウ球菌株、および75%を超える黄色ブドウ球菌MRSA株の溶解を意味し、ほぼすべての変種がブドウ球菌細胞に対して非常に良い宿主域感受性を示す。Plypitti26宿主域感受性は若干低く、キメラ構築物EADpitti26_CBDpitti20の感受性は、ブドウ球菌属およびMRSA株由来の細胞に対して弱い。室温での長期の安定性は、試験した全変種においてplypitti26と比べて改善していた。保存安定性に関して特に好ましいのは、変種EADpitti26_CBDUSA、EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T)、およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201Hである。変異L56HおよびL57Tは、plypitti26の安定性および溶解性に対して正の効果をもたらす。要約すれば、提示した変種はすべて、天然に存在するエンドリシンplypitti26より優れた利点を示す。試験した特性すべてに渡って最も優れた能力を示す変種EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)が特に好ましい。
【0105】
実施例15:免疫原性研究
ブドウ球菌感染症に対する治療物質または予防物質としてエンドリシンを使用する場合、外来タンパク質によって誘発される生物の免疫応答に関する情報を得るために、これらのタンパク質の免疫原性を動物モデルにおいて試験しなければならない。静脈内療法の免疫原性研究のために、1群当たり10匹の雌Balb/cマウスを動物モデルとして使用した。調合緩衝液(25 mM Tris pH7.5、10mMクエン酸、10mM CaCl2、300mMアルギニン)に溶かしたplypitti26エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を、3つの群に対してt=0時間、24時間、および48時間に、15mg/kg体重の投与量でゆっくりと低圧で静脈ボーラス注射することにより適用した。終点の血清抜き取り(withdrawal)は、3つの群に対してそれぞれ2週間後または4週間後または8週間後に行った。各群のマウス3匹には、エンドリシンを含まない緩衝液の投薬を対照として行った。腹腔内注射の免疫原性対照研究のために、1群当たり3匹の雌Balb/cマウスを動物モデルとして使用した。この場合、plypitti26エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を、3つの群に対してt=0時間、14日目、および28日目に、15mg/kg体重の投与量でアジュバント(aduivans)と共に水/油乳濁液を腹腔内注射することにより適用した。終点の血清抜き取りは、3つの群に対してそれぞれ10日後または21日後または35日後に行った。マイクロタイタープレートに結合させたEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5および免疫応答をもたらす多様な抗体グループに対する二次抗体による比色シグナル検出を用いたELISAアッセイ法によって、免疫原性の程度を試験した。静脈内注射および腹腔内注射の結果を表5および表6に示す。対照に由来するバックグラウンドシグナルより有意に低いシグナルが引き続き得られる最も低い抗体力価を示す。
【0106】
(表5)EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の静脈内注射後の抗体力価
【0107】
(表6)EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の腹腔内注射後の抗体力価
【0108】
EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を静脈内注射した後の方が、強力な免疫応答の対照として使用した腹腔内注射の場合と比べて抗体力価は低かったことが認められる。
【0109】
実施例16:マウス抗血清によるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の活性の中和
静脈内注射後の免疫応答の間に作られた、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5に対する抗体が、エンドリシンの活性を中和できるかどうかを試験するために、ブドウ球菌細胞壁調製物に対する溶解活性をマイクロタイタープレート濁度アッセイ法において試験した。緩衝液(20mM Hepes、150mM NaCl、pH7.4)に溶かしたEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5(0.1mg/ml)を、実施例15で説明したプロトコールに従う静脈内注射後4週目および8週目に生成したマウス抗血清の段階希釈物(希釈率0、0.5、0.2、0.1、0.05、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001)と共に30℃で1時間、インキュベートした。様々な段階希釈物をインキュベートした溶液10μlをブドウ球菌細胞壁調製物190mlと混合し、約2.0のA620から開始して、620nmでの吸光度の減少を経時的に測定した。ΔA620=0.1の吸光度減少に必要とされる時間は、エンドリシン活性の指標である。各希釈率の免疫前血清を添加した後に測定される試料の活性は、活性の対照としての機能を果たした。表7に示す活性値は、実施例15で説明したようにしてEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5をそれぞれ静脈内注射したマウス7匹の血清に由来する平均値を表す。
【0110】
(表7)EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の静脈内注射によって得られる血清による中和後のブドウ球菌細胞壁調製物に対するエンドリシン活性
【0111】
活性アッセイ法により、本発明によるブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、静脈内注射後に生成する抗体によって有意なレベルまで不活性化されないことが示される。これに対して、抗血清添加後には大半の試料においてエンドリシン活性の軽微な活性化が観察される。したがって、静脈内注射後の免疫応答の間に生成した抗体は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のエンドリシン活性を有意な程度まで中和できない。
【0112】
実施例17:マウスにおけるブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の高用量での毒性
EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の潜在的な毒性を試験するために、健常な雌CFW1マウス10匹に、体重1kg当たりエンドリシン100mgの投与量で静脈内にボーラス注射した。1時間、6時間、および22時間後に、注射を繰り返した。注射体積は、緩衝液(20mM Tris、10mM CaCl2、10mMクエン酸、300mMアルギニン、pH7.5)中、それぞれ0.2mlであった。次の5日間、マウスの臨床徴候、体重、および死亡率を毎日管理した。試験したマウスのどれも、次の5日間の間に体重減少も発熱または振戦のような他の臨床徴候も示さなかったことから、高用量のブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5でさえ、静脈内注射を繰り返した後に健常マウスに対して毒性ではないことが示唆された。動物モデルから、ブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、毒性作用を伴わずにブドウ球菌感染症の療法または予防に適用できると思われる。
【0113】
実施例18:ブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を用いた薬物動態試験
生体におけるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の半減期を決定するために、ラットでの薬物動態試験を実施した。雄のスプラーグドーリー(CD)ラット24匹の脚静脈に、体重1kg当たりエンドリシン12mgの投与量で静脈内接種した。EADplypitti26_CBDplyUSA_M5を緩衝液(20mM Tris、10mM CaCl2、10mMクエン酸、300mMアルギニン、pH7.5)中に溶解した。静脈内注射後5分目、15分目、30分目、60分目、120分目、240分目、または480分目に各3匹の動物を屠殺した。対照群の動物3匹には、緩衝液のみを注射して与えた。屠殺後、血液試料を直ちに採取し、血清を調製し、液体窒素中で凍結させた。さらに、器官である心臓、腎臓、肝臓、脾臓、および肺を調製し、同様に液体窒素中で凍結させた。マイクロリットルプレート形式で濁度アッセイ法を実施して、エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の残存活性を測定した。血清20μlを、620nmでの吸光度がA620=2.0であるブドウ球菌細胞壁調製物200μlと混合した。A620が0.1減少する(ΔA620=0.1)のに必要とされる時間を、エンドリシン活性の指標として利用した。対照として、緩衝液および免疫前血清に溶かした、それぞれ濃度(150μg/ml)のEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5エンドリシンの活性を測定した。EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5エンドリシンの半減期を測定するための第2のアッセイ法は、希釈率1:105の抗EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5エンドリシンポリクローナルウサギ抗血清および二次抗体としてのアルカリホスファターゼ-ヤギ抗ウサギIgGコンジュゲートを用いた、タンパク質のウェスタンブロット解析であった。また、解凍した器官をガラスビーズおよびスパーテルを用いてホモジナイズすることによって調製した器官抽出物に対しても、このウェスタンブロット解析を使用した。器官抽出物、血液試料、および血清試料をSDS-ポリアクリルアミドゲルに添加し、分離されたポリペプチドバンドをPVDFメンブランにブロットし、説明した抗体を用いて発色させた。
【0114】
活性アッセイ法から、ラットでの静脈内注射後の変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の半減期は約60分であることが示された。添加後2時間目には、測定可能な残存活性はほとんど無かった。5分後に採取した最初の試料を、免疫前血清および調合緩衝液中のタンパク質の活性と比較したところ、添加直後には活性損失はほとんど無いことが示され、これは、血液細胞または血管上皮細胞にタンパク質が吸着することが原因であり得る。様々な器官から採取した試料においても実施したウェスタンブロットアッセイ法から、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のタンパク質バンドの消滅は、活性損失と一致することが明らかになった。血液、血清、および検査した器官で非常に類似した薬物動態が観察されたことから、タンパク質のクリアランスは、身体の様々な部分で類似していることが示唆された。観察された唯一の相違は、血液試料、血清試料、心臓試料、肺試料、肝臓試料、および脾臓試料中では完全長型としてエンドリシンは視認できるのに対し、腎臓試料中ではすべての時点でタンパク質断片が検出されることであった。エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、ラット腎臓中では、この器官中に存在するプロテアーゼによって消化されるように思われる。薬物動態試験により、ブドウ球菌感染症の療法および予防において使用するのに適した潜在的な薬学的物質として、ブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5が確認された。
【0115】
実施例19:黄色ブドウ球菌細胞によるマウスの全身感染後のエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5の有効性の研究
ブドウ球菌感染症に対する治療物質としてのエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5の有効性を試験するために、黄色ブドウ球菌細胞を静脈内投与してマウスを感染させ、エンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5を用いた静脈経由治療を、試験動物の生存に関して他の治療と比較した。雌の健常なCFW1マウス48匹の静脈内に、DSMZ11823株の黄色ブドウ球菌細胞をマウス1匹当たり2×108個接種した。これらのマウスを動物6匹ずつの7群に分けた。最初の3群のマウスは、高投薬量(タンパク質100mg/kg体重)、中程度の投薬量(タンパク質25mg/kg体重)、または低投薬量(タンパク質5mg/kg体重)のエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-AAd2_M5で処置した。これらは感染後1時間目、6時間目、および22時間目の3回の静脈内注射で与えた。マウスの1つの群には、調合緩衝液(20mM Tris、10mM CaCl2、10mMクエン酸、300mMアルギニン、pH7.5)を同じように注射した。3群のマウスは、高投薬量(タンパク質20mg/kg体重)、中程度の投薬量(タンパク質5mg/kg体重)、または低投薬量(タンパク質1.25mg/kg体重)の抗生物質バンコマイシンで処置した。マウスの1つの群には、まったく処置を施さず、これは黄色ブドウ球菌細胞の菌力に関する対照としての機能を果たした。感染後の5日間、マウスの生存を観察した。これらの結果を表8に要約する。
【0116】
(表8)様々な処置を実行した後の、黄色ブドウ球菌感染後のマウスの生存
【0117】
黄色ブドウ球菌細胞を2×108細胞の濃度でマウスに静脈内接種した後にエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5を静脈内適用すると、試験した3種の投薬量すべてで、観察期間内の全マウスの生存が保証されることが判明した。処置をしない場合、対照群の動物はすべて3日目に死亡していた。この群の動物すべてが2日目に既に死亡していたことから、エンドリシン用の調合緩衝液それ自体が、いくらか負の効果を有するように思われた。抗生物質バンコマイシンによる処置後、高投薬量および中投薬量で処置した群の動物はすべて生存したが、低投薬量の抗生物質で処置した群では一部の動物が死亡した。有効性研究から、エンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5は、黄色ブドウ球菌感染症を治療するための優良な手段、および耐性がしばしば発生する抗生物質治療の代替手段であると思われる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、SEQ ID NO: 1に示す配列を含む、ply_pitti26と呼ばれるポリペプチド、ならびにこのポリペプチドの変種に関する。さらに、本発明は、該ポリペプチドおよびその変種をコードする核酸およびベクター、ならびにこれらの核酸および/またはベクターを含む宿主細胞に関する。最後に、本発明は、特に、ブドウ球菌に感染するかまたは曝露された対象を治療または予防するための、該ポリペプチド、その変種、核酸配列、ベクター、および宿主細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ブドウ球菌感染症は、世界各地で、死亡率の高い重度の疾患の主要原因である。グラム陽性病原菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、皮膚および軟部組織の様々な感染症、ならびに菌血症および心内膜炎のような生命を脅かす感染症の原因である。さらに、黄色ブドウ球菌は、食中毒にしばしば関与する。低pH値および高塩濃度に耐性があるため、この病原菌は、特に動物起源の様々な食料製品中で増殖して、耐熱性エンテロトキシンを産生する。特に感染リスクのある者は、手術後または血液透析中の患者、ならびに未熟児および免疫無防備状態の者、または人工器官を必要とする者である。ブドウ球菌感染症は、分布率が高く(人口の約25〜30%が無症候性キャリアである)、黄色ブドウ球菌の抗生物質耐性株の出現が増加しているため、特に懸念されている世界的な健康問題である。MRSA(methicillin resistant Staphylococcus aureus)は、このグループの有名なメンバーであり、院内感染症の主要原因である。さらに、多くの多耐性株があり、バンコマイシン、リネゾリド、またはダプトマイシンのような「最終防御ラインの薬物」に耐性があるものさえある。抗生物質耐性ブドウ球菌による感染症により、世界の健康予算に莫大な費用がかかる。これは、患者は病院に長期間滞在することをしばしば必要とし、他の患者から隔離されなければならないためである。
【0003】
コアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌(S. aureus)に加えて、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌のグループに由来する病原菌も重要である。例えば、S.ヘモリチカス(haemolyticus)は角膜炎を引き起こし、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)は、重篤な感染症に関連している移植された器具上のバイオフィルム中にしばしば存在し(エンドプラスチチス(endoplastitis))、S.サプロフィチカス(saprophyticus)は、尿路感染症の原因である。ヒト感染症以外に、ウシ感染症もまた重要な役割を果たす。特に、ウシ乳房炎、すなわち乳腺の感染症は、商業的に重要である。これは、黄色ブドウ球菌に加えて、表皮ブドウ球菌、S.シミュランス(simulans)、色素産生ブドウ球菌(S. chromogenes)、S.ヒイカス(hyicus)、S.ワーネリ(warneri)、およびS.キシローサス(xylosus)のようないくつかのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌によって引き起こされる。
【0004】
標準的な抗生物質療法は、ますます効果が無くなってきている。したがって、細菌感染症を治療するための新しい戦略が必要とされている。これらには、新しい抗生物質の開発、ならびに抗微生物ペプチドの探索が含まれる。抗体および推定上のワクチンの使用またはファージ療法が、代替のアプローチである。しかしながら、これらの方法はすべて、重大な不利益を示す。広範囲に及んで使用されると、新規な抗生物質もまた、新しい耐性を増大させると考えられ、抗微生物ペプチドおよびモノクローナル抗体は、療法での常用が可能になるまで、多くの追加投資を必要とする;黄色ブドウ球菌に対する免疫化戦略はこれまで成功しておらず、ファージ療法は、免疫応答および組織侵入ならびにファージによる細菌毒素の望まれない移動の可能性に関する問題を引き起こす。単離されたペプチドグリカン加水分解酵素、いわゆるエンドリシンの使用は、ファージ療法の進歩したものである。エンドリシンは、対応するバクテリオファージの宿主生物である細菌の細胞壁を酵素的に加水分解する。
【0005】
関連技術の説明
宿主細菌に感染した後、バクテリオファージは宿主細胞内で新しいファージ粒子を産生する。複製サイクルの最後に、新しいファージ世代を放つために、宿主細胞は溶解されなければならない。エンドリシンは、この宿主細胞溶解のための道具として産生される。エンドリシンはまた、感染されていない細菌細胞に外因的に添加された場合も細菌細胞壁に作用することが判明した(「非感染からの溶解(lysis from without)」)。食品中の混入細菌を死滅させるためのエンドリシンの使用は、1991年にGassonによって最初に開示された(特許文献1/GB 2,255,561)。マウスのモデル系を用いたインビボでの最初の治療的適用および予防的適用は、2001年にFischettiのグループによって説明された(非特許文献1/NelsonおよびFischetti, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4107-4112; 非特許文献2/Loeffler et al., 2001, Science, 94, 2170-2172)。この研究では、A群連鎖球菌に対するエンドリシンの局所適用(経口適用)および肺炎球菌(pneumococci)に対するエンドリシンの局所適用(鼻咽頭適用)を説明している。後に、炭疽菌(Bacillus anthracis)に対する適用も追加された(非特許文献3/Schuch et al., 2002, Nature 418, 884-889)。Entenza et al. (非特許文献4/2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 4789-4792)は、ラットにおいて心内膜炎を引き起こす肺炎球菌に対するCpl-1リシンの使用を報告している。エンドリシンPlyGBSは、マウスモデルの腟および口腔咽頭中のB群連鎖球菌を死滅させるために使用された(非特許文献5/Cheng et al., 2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 111-117)。Fischetti (非特許文献6/2006, BMC Oral Health, 6, 16-19)は、病原細菌を駆除するためのファージ溶菌酵素の使用を要約している。
【0006】
US5,997,862(特許文献2)では、ファージ由来リシンを用いて細菌感染症を治療および予防するための多数の治療方法および薬学的組成物が開示されている。いくつかのその他の特許は、例えば、皮膚科感染症、眼感染症、口および歯の感染症、気道感染症、様々な疾患、一般的な細菌感染症を治療するためのファージ由来リシンの特異的組成物および使用、リシン組成物の非経口使用、ならびに包帯組成物の使用を教示している。US 2007-077235(特許文献3)では、動物の乳腺炎を治療するためのリシン組成物を説明している。
【0007】
エンドリシンは5つのクラスに分類することができる:(1)N-アセチルムラミダーゼ(リゾチーム)、(2)エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、および(3)溶菌性トランスグリコシラーゼ(すべてペプチドグリカンの糖部分を切断する)、(4)エンドペプチダーゼ(ペプチド部分を切断する)、および(5)N-アクチルムラモイル(actylmuramoyl)-L-アラニンアミダーゼ(糖主鎖とペプチドリンカーの間のアミド結合を切断する)。エンドリシンは、酵素活性または細胞結合活性を示す異なるポリペプチドドメイン、それぞれいわゆるEAD(enzymatically active domain)およびCBD(cell binding domain)の組合せを呈するモジュール構成を示す。主に、EADはエンドリシンのN末端部分に位置し、CBDはC末端部分に位置するが、この経験則の例外もまたある。異なる細胞壁溶解酵素間でモジュールを交換して、さらに新しい機能特性を示すこともある新しい機能的酵素を作製できることもまた、示されている (非特許文献7/Diaz et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 8125-8129; 非特許文献8/Croux et al., 1993, Molecular Microbiology, 9, 1019-1025; 非特許文献9/Donovan et al., 2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996)。
【0008】
エンドリシンは、典型的には抗生物質よりも特異的であるため、耐性の発達が急速に起こる見込みは少ない。したがって、ブドウ球菌細菌に作用する適切なエンドリシンの使用は、個別の感染症と戦うために望ましい手段である。ブドウ球菌細菌に対して活性ないくつかのエンドリシンが、関連技術分野で既に説明されている。ファージP68に関連するタンパク質17は、黄色ブドウ球菌の臨床分離株に対しても抗微生物活性を示すブドウ球菌エンドリシンである(非特許文献10/Takac et al., 2005, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 49, 2934-2940)。黄色ブドウ球菌ファージTwortに由来するエンドリシンplyTWは、細菌細胞に対する加水分解活性のためにN末端の酵素的に活性な断片しか必要とせず、リソスタフィンとの相同性を有するC末端部分は不必要のように思われる(非特許文献11/Loessner et al., 1998, FEMS Microbiol. Lett, 162, 265-274)。Donovan et al. (非特許文献12/2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996)は、乳腺炎の治療において潜在的な用途がある、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)B30エンドリシンとスタフィロコッカス・シミュランス(Staphylococcus simulans)のリソスタフィンとのキメラエンドリシンを作り出した。いくつかのグループが、抗微生物用途において黄色ブドウ球菌バクテリオファージphi11のエンドリシンを使用した。Navarre et al (非特許文献13/1999, J. Biol. Chem., 274, 15847-15856)は、phi11エンドリシンの複数の酵素活性を特定し、アミダーゼドメインが欠失した変異体が依然として活性であることを示した。Donovan et al. (非特許文献14/2006, FEMS Microbiol. Lett, 265, 133-139)は、乳腺炎病原菌に対するアッセイ法において、完全体のphi11エンドリシンならびにC末端切断型を使用した。phi11エンドリシンおよびphi12エンドリシンの様々な変異体が、黄色ブドウ球菌細胞壁、加熱不活性化した細胞、およびまた細菌バイオフィルムに対する様々な活性アッセイ法において試験された(非特許文献15/SassおよびBierbaum,2007, Appl. & Environment. Microbiol., 73, 347-352)。スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)ファージΦWMYのエンドリシンであるLysWMYは、phi11エンドリシンの近縁であることが報告されているが、アミダーゼドメインならびに細胞結合ドメインが欠失した場合も、完全な活性を保持した(非特許文献16/Yokoi et al., 2005, Gene 351, 97-108)。この結果から、異なるエンドリシンモジュールの機能およびそれらの相互作用は、近縁のエンドリシンでさえ等価ではないことが示される。
【0009】
ブドウ球菌細菌に対する様々なエンドリシンが当技術分野において公知であるが、効率的な方法で作製することができ、さらに、ブドウ球菌属の微生物に対して高い活性を示す効率的なブドウ球菌エンドリシンが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】GB 2,255,561
【特許文献2】US5,997,862
【特許文献3】US 2007-077235
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】NelsonおよびFischetti, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4107-4112
【非特許文献2】Loeffler et al., 2001, Science, 94, 2170-2172
【非特許文献3】Schuch et al., 2002, Nature 418, 884-889
【非特許文献4】Entenza et al. 2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 4789-4792
【非特許文献5】Cheng et al., 2005, Antimicrob. Agents Chemother., 49, 111-117
【非特許文献6】Fischetti 2006, BMC Oral Health, 6, 16-19)
【非特許文献7】Diaz et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 8125-8129
【非特許文献8】Croux et al., 1993, Molecular Microbiology, 9, 1019-1025
【非特許文献9】Donovan et al., 2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996
【非特許文献10】Takac et al., 2005, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 49, 2934-2940
【非特許文献11】Loessner et al., 1998, FEMS Microbiol. Lett, 162, 265-274)。Donovan et al.
【非特許文献12】2006, Appl. & Environm. Microbiol., 72, 2988-2996
【非特許文献13】1999, J. Biol. Chem., 274, 15847-15856Donovan et al
【非特許文献14】2006, FEMS Microbiol. Lett, 265, 133-139
【非特許文献15】SassおよびBierbaum,2007, Appl. & Environment. Microbiol., 73, 347-352
【非特許文献16】Yokoi et al., 2005, Gene 351, 97-108
【発明の概要】
【0012】
この課題は、特許請求の範囲において開示する主題によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の特定の局面を例示するために、以下の図面を提供する。これらは本発明を限定することを決して意図しない。
【図1】図1は、様々なブドウ球菌エンドリシンのモジュール構成の概略図を提供する。エンドリシンは、CHAP(cysteine, histidine-dependent amidohydrolases/peptidases)ドメインおよびアミダーゼ(N-アセチル-ムラミル-L-アラニンアミダーゼ、ami)酵素ドメイン、ならびに細胞結合ドメイン(CBD)としてのSH3モジュールから構築されている。
【図2】図2は、加熱不活性化したブドウ球菌細胞に対する活性(acitivity)試験における溶解領域を示す寒天プレートである。溶解プレートは、寒天最上層で試験される個々のブドウ球菌株を含む。試験しようとするエンドリシン構築物のプラスミドを含む大腸菌(E. coli)株または単離したエンドリシンの調製物のいずれかをプレートの上層に点描する。個々の宿主細菌に対する溶解活性に応じて、インキュベーション後に溶解領域が現れる。1番は、溶解が起こらなかった(-)例を示す。2番、3番、および4番は、各エンドリシン変種の弱い(+)、中程度の(++)、または強い(+++)溶菌活性を表す。図面の寒天プレートは、EADplypitti26_CBDplyUSAのいくつかの点変異の活性を試験したアッセイ法を例示的に示す。
【図3】図3は、様々な人工のブドウ球菌エンドリシン構築物の比較を示す。本発明による人工エンドリシン構築物を、発現および溶解性(図3A)ならびに濁度アッセイ法での活性(図3B)に関してこの図面で示す。構築物3は、EADplypitti26_CBDplyUSAの同義語であり、構築物5は、EADplypitti26_CBDplypitti20の同義語であり、構築物9および5は、別の人工エンドリシンである。SDSゲル上のレーンの不溶性沈殿画分に「P」、および可溶性上清画分に「S」の印を付けている。分子量の基準を縁に表示している。完全長エンドリシン構築物の位置に矢印を付けている。37℃での発現および溶解性の試験を実施例2で説明するようにして実施し、実施例5のように(ただし、タンパク質発現後の未処理の細胞抽出物を用いて)活性試験を実施する。
【図4】図4は、発現後の溶解性の比較を示す。30℃でエンドリシン構築物を発現させた後に実施した溶解性試験(実施例2で説明する)を示す。図4Aは、野生型plypitti26の溶解性試験でのSDSゲルを示し、図4Bは、EADplypitti26_CBDplyUSAを用いた個々の試験を示す。「P」は不溶性「沈殿画分」を示すのに対し、「S」は上清中に存在する可溶性タンパク質画分を示す。エンドリシンのバンドに星印(asterics)を付けている。図4Aの矢印は、plypitti26よりいくらかだけゆっくりと移動する大腸菌タンパク質を示す。分子量マーカーのレーンには「M」の印を付けている。
【図5】図5は、未処理細胞に対するEADplypitti26_CBDplyUSAおよび野生型plypitti26の溶解活性の比較を示す。精製したplypitti26(1番、2番、3番)またはEADplypitti26_CBDplyUSA(4番、5番、6番)を添加した後、黄色ブドウ球菌細胞において、濃度依存性の溶解プロファイルを記録した。このアッセイ法は、実施例5で説明するようにして実施した。それぞれ2μg、5μg、または10μgの単離したエンドリシンタンパク質を細菌細胞懸濁液に添加し(添加を矢印で示す。線の番号が大きいほど、タンパク質濃度が高い)、完全に溶解するまで、試料の濁度の減少を記録した。
【図6】図6は、ヒト血清における溶解活性を示す。図6は、ヒト血清において実施した濁度アッセイ法によって測定した、EADplypitti26_CBDplyUSAによる黄色ブドウ球菌細胞の溶解を示す。光学濃度(abs)の減少を分析時間に対して測定する。濃度25μg/ml(------)、50μg/ml(-・-・-・-・-・)、または100μg/ml(-・・-・・-・・-)のEADplypitti26_CBDplyUSAを0時点に添加した。実線は、エンドリシンを添加しない対照を表す。このアッセイ法は、実施例6で説明する。
【図7】図7は、野生型pitti26と比較した、EADplypitti26_CBDplyUSAの安定性を示す。この図面は、保存緩衝液中、25℃でインキュベートした後のエンドリシン調製物を示すSDSゲルの写真を示す(実施例6を参照されたい)。図7Aでは、EADplypitti26_CBDplyUSAをゲルに添加し、図7Bはplypitti26タンパク質を示す。最初のレーンは分子基準を示し、25℃でのインキュベーション時間(単位:時間)を伴う。完全長エンドリシンの位置に矢印を付けている。
【図8】図8は、トロンビンに対する安定性を示す。図8Aは、トロンビンによる消化前後のEADplypitti26_CBDplyUSA(レーン3、4)および野生型plypitti26(レーン1、2)を示すSDSゲルの写真である。最初のレーン(M)は、分子量の基準である。レーン1およびレーン3は対照(トロンビン無添加)であり、レーン2およびレーン4はトロンビン添加後のタンパク質試料を示す。完全長エンドリシンの位置に矢印を付けている。図8Bは、トロンビンによる消化前後の濁度測定を用いた、活性アッセイ法を示す。左にplypitti26を示し、右にEADplypitti26_CBDplyUSAを示す。実線は、トロンビンを添加しない場合の溶菌活性を示し、点線は、トロンビン消化後の残存活性を示す。この実験は、実施例8で説明する。
【図9】図9は、ヒト血液における安定性を示す。図9は、37℃のヒト血液中でプレインキュベーションした後のEADplypitti26_CBDplyUSAの安定性を示す。プレインキュベーション無しの場合に達成された活性レベルを100%に設定する。(●)は、緩衝液中でのプレインキュベーション後の活性を示し、(▲)は、ヒトEDTA-血液中での各プレインキュベーション後を示す。これらのアッセイ法は、実施例9で説明する。
【図10】図10Aは、改変されたEADplypitti26_CBDplyUSAであるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のアミノ酸配列を示す。図10Bおよび10Cは、改変されたEADplypitti26_CBDplyUSAであるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5をコードする核酸配列を示す。
【図11】図11は、緩衝液中での溶解活性を示す。図11は、黄色ブドウ球菌細胞に対する、様々なエンドリシン構築物の溶解活性の比較を示す。濃度1μg/ml(左のパネル)または10μg/mlのタンパク質を添加した後に、分およびmgタンパク質当たりで達成される600nmでの吸光度の減少(ΔA600/(分・mg))を測定する。使用したタンパク質構築物は、左から右に、plypitti26(チェック柄)、EADplypitti26_CBDplyUSA(横線)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5(灰色)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8(白色)、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5(縦線)、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5(黒色)、リソスタフィン(白黒チェック)である。
【図12】図12は、ヒト血清における溶解活性を示す。図12は、黄色ブドウ球菌細胞に対する、様々なエンドリシン構築物の溶解活性の比較を示す。濃度10μg/ml(左のパネル)または25μg/mlのタンパク質を添加した後に、分およびmgタンパク質当たりで達成される600nmでの吸光度の減少(ΔA600/(分・mg))を測定する。使用したタンパク質構築物は、左から右に、EADplypitti26_CBDplyUSA(横線)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5(灰色)、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8(白色)、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5(縦線)、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5(黒色)である。
【図13】図13は、ブドウ球菌エンドリシンの熱安定性を示す。図13は、ブドウ球菌エンドリシンの熱変性の進行中に測定される代表的な曲線を示す。温度を漸増させながら(T、℃)波長360nmでの吸光度(A360)を測定する。図13は、濃度0.1mg/mlのEADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5を用いて測定した濁度シグナルを示す。矢印は、タンパク質の凝集が始まるため、A360シグナルが有意に増加する温度を示す。この温度を凝集温度Taggrと定義する。
【図14】図14は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の薬物動態試験を示す。図14Aは、タンパク質の静脈内注射後の様々な時点にマイクロタイタープレート形式の濁度アッセイ法によって測定した、ラット血清中のエンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の残存活性を示す。図に示す活性値(ΔA620/分)は、注射後の時点にそれぞれ3匹のラットから採取した試料において測定した、平均値±標準偏差を表す。図14Bは、タンパク質の静脈内注射後5分目に採取したラット血清における(黒色の棒)変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のエンドリシン活性を、免疫前血清中で150μg/mlタンパク質を用いた対照(灰色の棒)または調合緩衝液中の150μg/mlタンパク質と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書において使用される「エンドリシン」または「ペプチドグリカン加水分解酵素」という用語は、細菌の細胞壁を加水分解するのに適した酵素を意味する。この酵素は、エンドリシンの「酵素的に活性なドメイン」(EAD)の性質である次の活性の内の少なくとも1種を含む:エンドペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、N-アセチル-ムラモイル-L-アラニン-アミダーゼ(アミダーゼ)、N-アセチル-ムラミダーゼ(リゾチームもしくは溶菌性トランスグリコシラーゼ)、またはN-アセチル-グルコサミニダーゼ。または、酵素はファージもしくはプロファージにコードされるか、または細菌にコードされる関連酵素、いわゆる「自己溶菌酵素」に由来する。さらに、エンドリシンは通常、酵素的に不活性であり、宿主細菌の細胞壁に結合する領域、いわゆるCBD(cell wall binding domain)も含む。エンドリシンという用語はまた、エンドペプチダーゼドメインおよびCBDを含むリソスタフィンおよびALE-1も意味する。
【0015】
本明細書において使用される「モジュール」という用語は、特定の機能が割り当てられた、エンドリシンのサブユニットを意味する。一般に、モジュールは、CHAPモジュール、amiモジュール、またはSH3モジュールのような比較的小さな機能単位である。
【0016】
本明細書において使用される「ドメイン」という用語は、特定の機能が割り当てられ、かつ構造的ドメインとも一致し得る、エンドリシンのサブユニットを意味する。ドメインという用語は、複数のモジュールから構成され得るEADドメインとCBDドメインの対立(antagonism)を説明するために優先的に使用される。
【0017】
本明細書において使用される「CBD」という用語は、タンパク質のC末端にしばしば存在する、エンドリシンの細胞壁結合ドメインまたは細胞壁ターゲティングドメインを意味する。CBDドメインは、細胞壁を加水分解するという観点からは酵素活性を持たないが、細菌細胞壁へのエンドリシンの結合をしばしば媒介する。CBDはSH3ドメインを含んでよい。
【0018】
本明細書において使用される「EAD」という用語は、細菌ペプチドグリカンの加水分解を担う、エンドリシンの酵素的に活性なドメインを意味する。これは、エンドリシンの少なくとも1種の酵素活性を含む。EADはまた、複数の酵素的に活性なモジュールから構成されてもよい。
【0019】
「CHAP」ドメイン(cysteine, histidine-dependent amidohydrolase/peptidase)は、細菌、バクテリオファージ(bacteriphage)、古細菌、およびトリパノソーマ(Trypanosomidae)科の真核生物に由来するタンパク質中に存在する、アミノ酸110個〜140個の間の領域である。これらのタンパク質は、主にペプチドグリカン加水分解の際に機能し得る。CHAPドメインは普通、細菌型SH3ドメインおよびアミダーゼドメインのいくつかのファミリーと関連している。CHAPドメインを含むタンパク質は、求核攻撃メカニズムにおいて触媒的システイン残基を利用し得る。CHAPドメインは、2種の不変のアミノ酸残基、システインおよびヒスチジンを含む。これらの残基は、CHAPドメインを含むタンパク質の想定される活性部位の一部分を形成する。
【0020】
本明細書において使用される「ami」という用語は、アミダーゼ活性を提示する酵素的に定義されたモジュールを意味し、すなわち、これは、ペプチドグリカン骨格中のN-アセチルムラミンと通常はペプチドリンカー中のL-alaである隣接したアミノ酸の間のアミド結合を加水分解する。アミダーゼの活性は、しばしば金属イオン依存性である。
【0021】
本明細書において使用される「ペプチダーゼ_M23」という用語は、エンドペプチダーゼとしてグリシル-グリシルペプチド結合を切断する亜鉛依存性メタロペプチダーゼドメインを意味する。ペプチダーゼ_M23ドメインは、例えばリソスタフィンおよびALE-1中に存在する。
【0022】
Src相同性ドメイン3とも呼ばれる本明細書において使用される「SH3」ドメインという用語は、他の結合相手と相互作用するタンパク質に特徴的な、アミノ酸約60個の小さな非触媒タンパク質ドメインを意味する。これは、プロリンリッチコンセンサスモチーフによって特定される。SH3ドメインは通常CBD内に位置する。ペプチドグリカン加水分解酵素中に存在するSH3ドメインは、しばしばSH3bタイプまたはSH3_5タイプである。
【0023】
本明細書において使用される「シャッフリング」という用語は、異なる酵素に由来する異なるポリペプチド断片を新しいキメラポリペプチド構築物に組み合わせることを意味する。この文脈において、酵素は優先的にエンドリシンであり、断片は優先的にモジュールである。通常、これらの断片は、核酸レベルで分子生物学的方法によって組み合わされる。構造的な理由またはクローニングに関する理由から、小さなリンカー配列を断片の間に導入してもよい。
【0024】
本明細書において使用される「野生型」という用語は、タンパク質もしくはポリペプチドの天然に存在するアミノ酸配列、または該タンパク質もしくはポリペプチドをコードする核酸分子のヌクレオチド配列を意味する。
【0025】
本明細書において使用される「変種」という用語は、天然に存在するタンパク質の改変型を意味する。変種は、ポリペプチドのシャッフリングもしくはポリペプチドの変異、またはタグもしくはマーカーの付加、または様々な実行可能な手段の組合せによって、作製される。変種を作製するのに適した変異は、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、または置換(アミノ酸交換、点変異)である。欠失、付加、または交換するアミノ酸の数は、1個〜数百個まで様々である。タンパク質変種をコードする核酸のそれぞれの改変は、遺伝コードによって決定される。
【0026】
本発明者らは、バクテリオファージを単離するための標準的技術を用いて、ブドウ球菌に対して活性ないくつかの溶菌性バクテリオファージを汚水試料から単離した(Adams, 1959, Bacteriophages中、Interscience Pub., New York, 447〜451頁)。分子生物学的技術を用いて、流行株から単離した黄色ブドウ球菌株内で、いくつかの溶原性ファージを同定した。
【0027】
1つの単離されたファージはpitti26と名付けられた。単離された溶原性ファージのファージゲノム内で、エンドリシンタンパク質が同定され、単離された。1つの好ましいエンドリシンが溶菌性ファージpitti26から単離され、ply_pitti26 (SEQ ID NO: 1)と名付けられた。別のエンドリシンが溶菌性ファージpitti20内で同定され、ply_pitti20と名付けられた。プロファージに由来するエンドリシンplyUSAは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株USA300のゲノム(Diep et al., The Lancet, 2006, 367, 731-739; データバンク登録NC_007793)中に組み込まれたプロファージΦSA2usaのゲノム中で同定された。
【0028】
ブドウ球菌細菌に特異的なバクテリオファージエンドリシンは、典型的には、2つの酵素的に活性なドメイン、すなわちCHAPドメインおよびアミダーゼドメイン(ami)、ならびにSH3bタイプまたはSH3_5タイプのSH3ドメインとしばしば定義される細胞結合ドメイン(CBD)から構成される。
【0029】
リソスタフィンおよびリソスタフィンのホモログであるALE-1は、黄色ブドウ球菌細胞壁を特異的に溶解するペプチドグリカン加水分解酵素であり、どちらのタンパク質も、ペプチドグリカン鎖間のペンタグリシン結合を切断するエンドペプチダーゼドメイン(ペプチダーゼ_M23)、ならびにCBDまたはターゲティンドメインとして機能するC末端SH3bドメインを含む。リソスタフィンは、スタフィロコッカス・シミュランス次亜種スタフィロリチカス(staphylolyticus)によって分泌され、ALE-1は、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)EPK1によって分泌される。リソスタフィンは、成熟するとN末端のタンデムリピートを失う前駆タンパク質として産生される。ALE-1は、翻訳後プロセシングされないN末端反復ドメインを含む。ALE-1の細胞壁ターゲティングドメインは、92個のC末端アミノ酸(残基271〜362)からなることが決定された(Lu et al., 2006, J. Biol. Chem., 281, 549-558)。このドメインは、リソスタフィンのC末端SH3bドメインに非常に似ている(同一性82%)。
【0030】
本発明の発明者らは、エンドリシンplypitti26のCHAPドメインおよびアミダーゼドメインを、プロファージエンドリシンplyUSAの細胞結合ドメイン、エンドリシンplypitti20の細胞結合ドメイン、リソスタフィンの細胞壁ターゲティングドメイン、ALE-1の細胞壁ターゲティングドメインと組み合わせて、ブドウ球菌感染症に対する治療物質もしくは予防物質として、またはブドウ球菌に対する消毒もしくは公衆衛生のための抗微生物物質として、またはブドウ球菌診断法の手段としてエンドリシン変種を使用するための新しい特性を有するキメラエンドリシンを作製した。新しい特性は、例えば、緩衝液系中、血液または血清のような治療に関連した溶液中でのキメラエンドリシンのより高い活性、ブドウ球菌属または黄色ブドウ球菌種、好ましくはMRSA株内で認識する宿主域の拡大、好ましくは発現後のキメラエンドリシンのより高い溶解性、および、より高いタンパク質安定性、好ましくは、熱安定性、長期安定性、またはプロテアーゼに対する安定性である。単離したエンドリシンplypitti26ならびにキメラ酵素を用いて、ブドウ球菌属の細菌を溶解することができる。
【0031】
1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO: 1に示す配列を含む、ply_pitti26と呼ばれるポリペプチドに関する。
【0032】
さらなる局面において、本発明は、SEQ ID NO: 1に示す配列を含むply_pitti26と呼ばれるこのポリペプチドの変種に関する。下記の態様は、ply_pitti26の変種とみなされる:
a)ply_pitti26のCBDが、別のブドウ球菌特異的エンドリシンまたはリソスタフィンもしくはALE-1のCBDドメインで置換された配列を含むポリペプチド、
b)ply_pitti26の少なくとも最初のN末端アミノ酸および多くとも最初の28個のN末端アミノ酸を除いて、ply_pitti26の配列を含むポリペプチド、
c)ply_pitti26の配列中に1つまたは複数の点変異または置換を含むポリペプチド、
d) SEQ ID NO: 1に加えて、マーカー部分、タグ、または他の機能的ポリペプチド配列を含むポリペプチド、ならびに
e)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列中に挿入された1つまたは複数の付加的なアミノ酸残基を含むポリペプチド、
f)a)、b)、c)、d)およびe)の任意の組合せ。
【0033】
前述したように、本発明は、SEQ ID NO: 1の配列を含むポリペプチドならびにその変種に関する。該ポリペプチドならびにその変種は、本発明によるポリペプチドであるとみなされる。これらはすべて、ブドウ球菌細菌を溶解することができるエンドリシンとして機能するという共通の特徴を有する。ブドウ球菌に対する該特異性は、当技術分野において公知であるか、または下記に説明する複数の方法によって、例えば、1種または複数種の前記ブドウ球菌種を含む試料に組換えエンドリシン変種を添加し、(組換え)エンドリシン添加後の濁度の変化を測定することによって、試験することができる。
【0034】
好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、ply_pitti26のCBDドメインが別のエンドリシンのCBDで置換されているポリペプチドである。原則的には、結果として生じる(組換え)エンドリシンがブドウ球菌細菌、特に黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.シミュランス、S.サプロフィチカス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、および/またはS.キシローサスに対する特異性を保持する限り、抗ブドウ球菌エンドリシンに由来する他のCBDドメインの選択に関して制約は無い。特に好ましい態様において、前記組換えエンドリシンは、SH3タイプのエンドリシン細胞結合ドメインを含む。好ましくは、CBDドメインは、ply_USAもしくはply_pitti20またはリソスタフィンもしくはALE-1のエンドリシンCBDドメインより選択される。ply_USAのCBDとしては、特に、SEQ ID NO: 3に示す配列が好ましい。ply_pitti20のCBDとしては、特に、SEQ ID NO: 5に示す配列が好ましい。CBDを交換された、ply_pitti26のこのような組換えエンドリシン変種の例をSEQ ID NO: 7およびSEQ ID NO: 11に示す。
【0035】
さらに好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、特定の数のN末端残基を除くply_pitti26の配列を含む。本発明の発明者らは、28個を超えるN末端アミノ酸残基がSEQ ID NO: 1から除去された場合には、エンドリシン活性が失われることを発見した。したがって、ply_pittii26の適切な変種は、原則的に、SEQ ID NO: 1の配列を含むが、SEQ ID NO: 1の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、または28個のN末端アミノ酸残基を欠く。ply_pitti26の4個、9個、または28個のN末端アミノ酸残基を欠く変種が、特に好ましい。
【0036】
好ましい態様において、ply_pitti26と呼ばれるポリペプチドの変種は、SEQ ID NO: 1に対して単一または複数の置換を示す。特に、他のアミノ酸残基に置換される部位は、F19、W22、W36、F42、Y44、L55、L56、F67、L74、Y78、W107、Y115、I116、Y119、W123、W128、W137、W139、W154、E163、R167、E179、E189、Y200、Y275、Y276、C282、F300、C303、および/またはW310である。位置はすべてSEQ ID NO: 1に関して示す。
【0037】
さらにより好ましい態様において、F、W、Y、I、およびLなどの疎水性アミノ酸残基、特に、タンパク質の表面にあると予想されるものが、R、D、E、N、K、Q、H、S、T、M、G、Aなど疎水性が低めのアミノ酸と交換され、その際、Aが特に好ましい。疎水性タンパク質は凝集する傾向があるため、該置換により、タンパク質の溶解性が上昇する。アミノ酸残基が表面に露出する可能性は、同種のタンパク質またはモジュールの構造が公知である場合には、そのタンパク質の高分解能構造またはモデルから予測することができる。荷電アミノ酸は、しばしばプロテアーゼの認識部位であるため、E、DおよびR、Kなどの荷電アミノ酸は、非荷電アミノ酸と優先的に交換される(例えば、Eの代わりにQまたはA、Dの代わりにNまたはA、RまたはKの代わりにA)。システインは酸化条件下でジスルフィド架橋を構築する傾向があり、これは酵素の構造および機能にとって潜在的に有害であるため、システインはAまたはSと優先的に交換される。
【0038】
以下の変異群より選択される、SEQ ID NO: 1の配列の変異が特に好ましい。置換はすべて、SEQ ID NO: 1中の位置に関して与えられる:W22R、F42A、Y44A L55H、L56T、F67T、Y115S、W123M、W137A、W139A、W154H、E163Q、E163A、R167A、E179Q、E179A、E187Q、E189Q、Y200A、Y200H、Y275A、Y275M、Y276A、C282A、F300A、C303S、W310A、および/またはW310M。該置換は、SEQ ID NO: 1の一重変異体でもよく、または2つもしくはそれ以上の該置換の組合せでもよい。SEQ ID NO: 1の好ましい多重変異体は、次の多重変異体を含む群より選択される:
【0039】
さらに好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、ビオチンもしくはストレプトアビジンなど付加的なマーカー部分、またはHAタグ(アミノ酸配列EQKLISEEDL)、Hisタグ(Nieba et al., 1997, Anal. Biochem., 252, 217-228)、Strepタグ (Voss およびSkerra, 1997, Protein Eng., 10, 975-982)、Mycタグ (Evan et al., Mol&Cell Biol, 5, 3610-3616)、GSTタグ(Peng et al. 1993, Protein Expr. Purif, 412, 95-100)、JSタグ(WO 2008/077397)、システインタグ(EP1399551)、もしくは当技術分野において公知の他のタグなどのタグを含む。他の好ましい機能的ポリペプチド配列は、例えば、プロテアーゼ切断部位である。いくつかの態様において、前述したply_pitti26変種は、ply_pitti26または該変種の生物工学的作製を容易にするのに役立ち得る。
【0040】
さらに好ましい態様において、ply_pitti26の変種は、1つまたは複数の付加的なアミノ酸残基を含む。好ましくは、本発明によるポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、または4つの付加的なアミノ酸残基を含み、これらの残基は連続した残基でもよく、またはそれらは別個の位置に挿入されてもよい。1つまたは2つのアミノ酸残基の付加が好ましく、1つのアミノ酸残基の付加がより好ましい。位置1(position one)の後に1つのアミノ酸残基を付加することが最も好ましく、好ましくは、アミノ酸残基Aの付加である。1つまたは複数のアミノ酸残基がply_pitti26中に挿入される場合には、アミノ酸置換のために好ましい位置であると上記に説明した位置は、挿入されるアミノ酸残基の数および位置に対して調整されなければならない。例示的に、アミノ酸残基が位置2に挿入される場合には、位置F19はF20になり、W22はW23になるなどである。複数のアミノ酸残基が挿入される場合には、新しい位置がそれに応じて調整されなければならない。
【0041】
上記に例示したply_pitti26変種は、厳密には別々の態様とみなしてはならず、その代わりに一緒にされ得ることを理解すべきである。例えば、本発明によるply_pitti26の変種は、そのような組換えエンドリシンがブドウ球菌に対して依然として特異的であることを条件として、SEQ ID NO: 1のN末端切断、先に示した1種または複数種の置換、別のエンドリシンのCBDドメイン、1種または複数種のアミノ酸付加、ならびに例えばHisタグの群より選択される1種または複数種の変種を含んでよい。当業者は、該変種のどれが自分の目的に適しているかを容易に理解すると考えられ、当技術分野において日常的な方法によって、例えば、ブドウ球菌を含む溶液の光学濃度に対する溶菌活性の影響を分析することによって、そのような変種をブドウ球菌に対する活性について常に試験することができる。このような組合せ変種の例示的な例を、SEQ ID NO: 9(plyUSAのCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26)ならびにSEQ ID NO: 13(ply_pitti20のCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26)に示す。
【0042】
CBDを置換され、さらに位置2にアミノ酸1個を付加されたply_pitti26変種の例示的な例をSEQ ID NO: 28(plyUSAのCBDおよび位置2の付加的なアミノ酸残基Aを有するply_pitti26)に示し、これをEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2と呼ぶ。
【0043】
CBDを置換され、1つまたは複数のアミノ酸が置換され、さらに位置2に付加的なアミノ酸残基を有するply_pitti26変種の別の例示的な例を後述する。SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を有するポリペプチドが特に好ましい。該ポリペプチドは、SEQ ID NO: 7に示すplyUSAのCDBを有するply_pitti26に由来し、次の5つの単一アミノ酸置換:L56H、L57T、E164A、R168A、およびY201H、ならびに1つの付加的なA2を有する。この変種は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5と名付けられる。注釈「_M5」は、ply_pitti26のEAD内部に5つの単一アミノ酸置換:L56H、L57T、E164A、R168A、およびY201Hの特に好ましい組合せを含む構築物すべてを表す。注釈「Add2」は、ply_pitti26のEADの位置2に付加的な単一のアミノ酸残基を含む構築物すべてを表す。ply_pitti26のEADをリソスタフィンのCBDと組み合わせた、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5と名付けられ、SEQ ID NO: 20に示すアミノ酸配列を有する変種、またはply_pitti26のEADをALE-1リシンのCBDと組み合わせた、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5と名付けられ、SEQ ID NO: 22に示すアミノ酸配列を有する変種が、さらに特に好ましい。
【0044】
さらに、SEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を有するポリペプチドが特に好ましい。該ポリペプチドは、SEQ ID NO: 7に示すplyUSAのCDBを有するply_pitti26に由来し、次の8つの単一アミノ酸置換:L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H、S238L、R355Q、およびA368V、ならびに1つの付加的なA2を有する。この変種は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8と名付けられる。
【0045】
別の局面において、本発明は、本発明のポリペプチドの内の1つをコードする核酸分子に関する。例えば、縮重した遺伝コードを考慮すると、本発明によるポリペプチドの内の1つをコードする核酸分子を構築する多くの方法があり得ることは、当業者には明らかである。本発明のポリペプチドのアミノ酸配列に関する知識を有する当業者は、自分の目的に最も合う適切なヌクレオチド配列を選択することができ、例えば、その配列中のコドン使用は、所望の発現宿主のコドン使用に適合されている。本発明のポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子は、それぞれ、本発明の核酸配列またはヌクレオチド配列であるとみなされる。
【0046】
好ましい態様において、前記核酸分子は、SEQ ID NO: 1の配列を含むエンドリシンをコードする。好ましくは、前記核酸は、SEQ ID NO: 2に示すヌクレオチド配列を含む。
【0047】
別の好ましい態様において、コードされるポリペプチドは、ply_pitti26の変種、特に、CBDドメインが別のブドウ球菌バクテリオファージエンドリシンのCBDで置換された変種である。plyUSAもしくはply_pitti20またはリソスタフィンもしくはALE-1のCBDをコードするヌクレオチド配列の例示的な例は、それぞれ、SEQ ID NO: 4およびSEQ ID NO: 6、ならびにSEQ ID NO: 25およびSEQ ID NO: 27に示す。本発明のヌクレオチド配列を例示するその他の例は、それぞれ、SEQ ID NO: 8(ply_USAのCBDを有するply_pitti26をコードする)、SEQ ID NO: 10(ply_USAのCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26をコードする)、SEQ ID NO: 12(ply_pitti20のCBDを有するply_pitti26をコードする)、ならびにSEQ ID NO: 14(ply_pitti20のCBDおよび付加的なC末端Hisタグを有するply_pitti26をコードする)に示す。
【0048】
好ましい態様において、核酸分子は、SEQ ID NO: 15の配列を含むリペプチド、すなわち、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5をコードする。好ましくは、該ヌクレオチドは、SEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 17に示すヌクレオチド配列を含む。SEQ ID NO: 16は、ファージpitti26およびプロファージΦSA2usaからそれぞれ単離されたヌクレオチド配列であり、置換されたアミノ酸残基、すなわち、L56H、L57T、E164A、R168A、およびY201Hをコードするヌクレオチドコドンの改変、ならびに付加的なアミノ酸残基A2をコードする挿入コドンを有する。SEQ ID NO: 17はSEQ ID NO: 16に由来するが、大腸菌K12における発現のためにコドン最適化されている。さらなる好ましい態様は、同じくコドン最適化されているSEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 21、およびSEQ ID NO: 23のヌクレオチド配列であり、それぞれ、本発明によるポリペプチドであるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、およびEADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5をコードする。
【0049】
さらなる局面において、本発明は、本発明の核酸配列を含むベクターに関する。好ましくは、該ベクターは、適切な宿主細胞における本発明の前記ポリペプチドの発現を提供する。該宿主細胞は、単なる生物工学的理由、例えば、収率、溶解性、コストなどを理由として選択してもよいが、該細胞が対象に投与される予定である場合には、医学的観点から選択してもよく、例えば、非病理学的な細菌または酵母、ヒト細胞である。該ベクターは、本発明による前記ポリペプチドの構成的発現または誘導発現を提供し得る。
【0050】
本発明のさらなる局面において、前述のポリペプチドおよび/または細胞は、対象においてブドウ球菌感染症を治療または予防するため、特に、黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.シミュランス、S. サプロフィチカス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、および/またはS.キシローサスによる感染症を治療または予防するための方法において使用される。該対象は、ヒト対象または動物、特に、畜産および/もしくは酪農において使用される動物、例えばウシでよい。該治療方法は、感染部位または感染症に対して予防的に処置される部位に、十分な量の本発明の前記ポリペプチドを適用することを含む。
【0051】
特に、前記治療方法は、特に黄色ブドウ球菌による感染症、皮膚、軟部組織、菌血症、および/または心内膜炎の治療または予防のためであり得る。
【0052】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、角膜炎、特にS.ヘモリチカスによって引き起こされる角膜炎を治療するための方法において使用される。
【0053】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、エンドプラスチチス、特に表皮ブドウ球菌によって引き起こされるエンドプラスチチスを治療または予防するために使用される。
【0054】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、尿路感染症、特にS.サプロフィチカスによって引き起こされるエンドプラスチチスを治療または予防するために使用される。
【0055】
さらに好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、動物、特に家畜ウシおよび酪農ウシにおいてブドウ球菌感染症を治療(または予防)する方法において使用される。特に、本出願のポリペプチドは、ウシ乳房炎、特に、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、S.シミュランス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、およびS.キシローサスによって引き起こされるウシ乳房炎を治療(または予防)する方法において使用するのに適している。
【0056】
さらに、本発明のポリペプチドは、特に、外科手術の前もしくは後、または、例えば血液透析の間に、消毒剤として予防的に使用され得る。同様に、未熟児および免疫無防備状態者、または人工器官を必要とする対象も、予防的にまたは急性感染の間に、本発明のポリペプチドで処置することができる。同じ背景で、ブドウ球菌、特に黄色ブドウ球菌または黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染症を、予防的にまたは急性期の間に、本発明のポリペプチドで治療してもよい。この態様において、本発明のポリペプチドは、界面活性剤、テンシド(tensid)、溶剤、抗生物質、ランチビオティックス、またはバクテリオシンのような消毒溶液中で有用な他の成分と組み合わせて、消毒薬としても使用され得る。
【0057】
特に好ましい態様において、治療すべき(または予防すべき)感染症が、多耐性ブドウ球菌株によって、特に、バンコマイシン、リネゾリド、またはダプトマイシンに対して耐性の株によって引き起こされる場合には、本発明のポリペプチドが医学的治療のために使用される。
【0058】
さらに、本発明のポリペプチドは、抗生物質、ランチビオティックス、バクテリオシン、他のエンドリシンなど従来の抗菌剤と組み合わせてそれらを投与することにより、治療方法において使用することができる。
【0059】
本発明による治療(または予防)方法で使用される投薬量および投与経路は、治療しようとする個々の疾患/感染部位に依存する。投与経路は、例えば、特定の態様において、経口、局所、鼻咽頭、非経口、静脈内、直腸、または他の任意の投与経路でよい。
【0060】
本発明のポリペプチドを感染部位(または感染する危険にさらされた部位)に適用するために、エンドリシンが感染部位に到達するまで、プロテアーゼ、酸化、免疫応答などの周囲の影響からそれが保護されるように、本発明のポリペプチドを製剤化することができる。
【0061】
したがって、本発明のポリペプチドは、カプセル剤、糖衣錠、丸剤、坐剤、注射液剤、または他の任意の医学的に適当なガレノス製剤として製剤化することができる。いくつかの態様において、これらのガレノス製剤は、適切な担体、安定化剤、矯味剤、緩衝剤、または他の適切な試薬を含んでよい。
【0062】
例えば、局所適用の場合、本発明のポリペプチドは、ローション剤または絆創膏によって投与することができる。
【0063】
鼻咽頭適用の場合、本発明によるポリペプチドは、鼻へのスプレーによって適用するために、生理食塩水中に配合してもよい。
【0064】
腸の治療の場合、例えば、ウシ乳房炎では、坐剤製剤を想定することができる。あるいは、経口投与を検討してもよい。この場合、感染部位に到達するまで、本発明のポリペプチドを過酷な消化性環境から保護しなければならない。これは、例えば、胃における消化の初期段階を生き延び、その後で腸環境中に本発明のポリペプチドを分泌する細菌を運搬体として用いることによって遂行することができる。
【0065】
医学的適用はすべて、本発明のポリペプチドがブドウ球菌細菌に遭遇した場合に特異的かつ直ちにそれらを溶解する作用に依拠する。これは、病原細菌および細菌量の減少をもたらすことにより、処置された対象の健康状態に即座に影響を与え、同時に免疫系を救援する。したがって、当業者が直面する主要な任務は、治療しようとする個々の疾患に対して正確に本発明のポリペプチドを製剤化することである。この目的のために、これらの用途に対する従来の医薬のために使用されるのと同じガレノス製剤を通常は使用することができる。
【0066】
本発明のさらなる局面において、前述のポリペプチドおよび/または細胞は、担体物質を任意で含む薬学的組成物の構成要素である。
【0067】
さらに別の局面において、ポリペプチドおよび/または細胞は、化粧品組成物の一部分である。前述したように、いくつかのブドウ球菌種は、皮膚のような患者の身体の周囲に露出した表面に刺激を引き起こし得る。このような刺激を防ぐために、または前記ブドウ球菌病原菌の軽微な症状を解消するために、特殊な化粧品調製物が使用され得、これは、既に存在するかまたは新しく定着しつつあるブドウ球菌を溶解するために十分な量の本発明のポリペプチドを含む。
【0068】
さらなる局面において、本発明は、食料品、食品加工機器、食品加工工場、食料品と接触する表面、例えば、棚および食品保管区域、ならびにブドウ球菌細菌が食品材料に潜在的に寄生し得る他のあらゆる状況における、本発明による前記ポリペプチドの使用に関する。
【0069】
本発明の別の局面は、ブドウ球菌の診断学における、本発明による前記ポリペプチドの使用に関する。この局面において、本発明によるポリペプチドは、ブドウ球菌細菌を特異的に溶解する手段として使用される。本発明によるポリペプチドによる細菌細胞の溶解は、Triton X-100のような界面活性剤、または細菌の細胞外被を弱めるポリミキシンBのような他の添加物を添加することによって支援することができる。特異的細胞溶解は、PCRのような核酸に基づいた方法、核酸ハイブリダイゼーションもしくはNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)、IMS、免疫蛍光法、もしくはELISA法のような免疫学的方法、またはブドウ球菌細菌に特異的なタンパク質を使用する酵素アッセイ法のような細菌細胞の細胞内容物に依拠する他の方法を用いた後続のブドウ球菌細菌の特異的検出のための最初の段階として必要とされる。
【0070】
本発明のさらなる局面は、本発明によるポリペプチド、Triton X-100のような界面活性剤、または細菌の細胞外被を弱めるポリミキシンBのような他の添加物を含む診断キットに関する。キットは、PCR手段、核酸ハイブリダイゼーションもしくはNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)手段、IMS、免疫蛍光法、もしくはELISA法のような免疫学的方法、またはブドウ球菌細菌に特異的なタンパク質を使用する酵素アッセイ法のような細菌細胞の細胞内容物に依拠する他の方法のような、検出用のさらなる手段および物質を含んでよい。
【0071】
実施例
クローニング手順はすべて、Sambrook et al.(Molecular cloning. A laboratory manual; 第2版 Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989)に従い、標準的技術を用いて実施した。変異および欠失もまた、標準的技術を用いて導入した。
【0072】
実施例1:本発明によるエンドリシンのクローニング
EADplypitti26_CBDplyUSAの場合、CHAP-Ami2ドメインのヌクレオチド配列を溶菌性ファージpitti26(独自の分離株(own isolate) )から増幅し、CBD配列をplyUSAから増幅した。EADplypitti26_CBDplypitti20の場合、CBDはplypitti20(独自の分離株)に由来した。これらの断片をライゲーションによって結合し、制限部位NcoIおよびBamHIを介して発現ベクターpET14b中にクローニングした。配列にC末端Hisタグを付加するために、制限部位NcoIおよびBamHIを介して発現ベクターpQE60中に新しい構築物をクローニングした。この構築物は、C末端の付加的な配列Ser-Arg-Ser-(His6)を含む。
【0073】
実施例2:本発明によるエンドリシンの発現および溶解性の試験
クローニングされた構築物を発現させるために、大腸菌HMS174(DE3)(pET14b構築物)および大腸菌M15(pQE構築物)をそれぞれ使用した。アンピシリンおよびリファンピシン(HMS174(DE3))またはアンピシリン(M15)を含むLB培地中で、30℃または37℃で振盪しながら細胞を増殖させ、OD600nm 0.4〜0.6(中期対数期)で、1mM IPTGを用いて誘導した。さらに3〜4時間振盪した後、遠心分離によって細胞を回収し、-20℃で凍結した。
【0074】
溶解性試験のために、回収した細胞を溶解緩衝液(20mM Tris/HCl pH8.0、5mM EDTA)中に再懸濁し、超音波処理し(2×30秒)、遠心分離した。上清とちょうど同じ体積の緩衝液中に沈殿物を溶解した。試料体積が同一の沈殿物画分および上清画分を12% SDS-PAGEで解析した。
【0075】
37℃で発現した際、組換えによって作製したエンドリシンの溶解性は一般に良くなかったのに対し、EADplypitti26_CBDplyUSAの溶解性は、30℃では、野生型plypitti26より有意に高かった。ほぼすべてのタンパク質が、plypitti26を含む不溶性沈殿物画分中に存在したが、約30%〜40%の可溶性画分が、EADplypitti26_CBDplyUSAの発現の際に存在した。これは、EADplypitti26_CBDplypitti20にも同様にあてはまる。
【0076】
実施例3:本発明によるエンドリシンの精製
本発明によるエンドリシン構築物の可溶性Hisタグ化型を精製するために、製造業者の取扱い説明書に従ってNi-NTA-セファロースカラム(Amersham)を使用した。細胞沈殿物を平衡緩衝液(25mM Tris/HCl pH8.0、500mM NaCl、20mMイミダゾール、0.1% Tween 20、10%グリセロール)中に再懸濁し、遠心分離し、同じ緩衝液で平衡にしたカラムに添加した。溶出緩衝液(25mM Tris/HCl pH8.0、500mMイミダゾール、0.1% Tween 20、10%グリセロール)中でタンパク質の溶出を実施し、溶出した画分をSDS-PAGEで解析した。精製されたエンドリシンを含む合一した画分を、保存緩衝液(20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4)に対して透析し、-20℃で保存した。
【0077】
Hisタグ無しの本発明によるエンドリシンの可溶型の精製は、例えば、Streamline HSTカラム、Superdexカラム、およびHiTrap Capto MMCカラム(GE Healthcare)を用いる、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および疎水性クロマトグラフィーによる標準的な精製手順に従った。
【0078】
封入体中に沈積した不溶性エンドリシン材料(実施例2の沈殿物画分)が、変性条件下で可溶化され、続いてリフォールディングされる場合には、活性エンドリシンの量が増加し得る。封入体中に沈積するタンパク質の量は、例えば発現温度を37℃に上げることによって増加させることができる。可溶化およびリフォールディングのために適切な条件は、例えば、Navarre et al., 1999, J. Biol. Chem. 274, 15847-15856に記載されている。
【0079】
実施例4:寒天プレート活性アッセイ法
脳心臓浸出物培地(Oxoid)中で、37℃で約18時間増殖させたブドウ球菌株の一晩培養物を遠心分離によって採取し、細胞沈殿物を1×DPBS(Merck)中に再懸濁し、それによって、元の体積の100分の1に減少させ、80℃で20分間、加熱不活性化した。これらの細胞を超音波処理し、アンピシリンおよびIPTGを含むLB上層寒天(0.7%寒天(Bacto);100μg/mlアンピシリン(Sigma);1mM IPTG(Roth))中に溶解し、「溶解プレート」の調製のために使用した。タンパク質溶液、または所望のタンパク質をコードするプラスミドを含む大腸菌の溶液で、これらのプレートの表面を覆うことができる。溶菌タンパク質が活性であり、少なくとも部分的に可溶型および活性型でそれぞれ発現される場合には、プレート上の溶解領域が視認できる。
【0080】
寒天プレートアッセイ法を用いて、異なるコアグラーゼ陽性ブドウ球菌株(黄色ブドウ球菌)およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌株(例えば、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.サプロフィチカス、S.シミュランス)を用いてEADplypitti26_CBDplyUSAの溶解活性を野生型形態のpitti26と比べて試験した。これは、寒天プレート溶解アッセイ法において実施した。濃縮し熱失活させた(例えば、80℃で20分)ブドウ球菌細胞を、密集した細菌叢が実現されるように上層寒天中に定着させる。単離されたエンドリシン溶液(5μl〜10μl)または各エンドリシンを含むプラスミドを含む大腸菌形質転換体のいずれかを、上層寒天の表面に点描する。これらのプレートを30℃で数時間(1時間〜12時間)インキュベートし、次いで、エンドリシンスポットの周囲の溶解領域を確認する。通常、溶解領域の直径の増加はまた、より効率的な細胞溶解を示唆する溶解領域の透明化(clearing)と同時に起こる。これらの結果を表1に示す。
【0081】
(表1)EADplypitti26_CBDplyUSAおよびplypitti26による溶解の宿主域
【0082】
表1は、野生型エンドリシンPitti26と比べたEADplypitti26_CBDplyUSAの宿主域を示す。寒天プレート活性アッセイ法を用いて、様々なブドウ球菌株に対する溶解活性を試験した。図2の説明文で説明するように、強い(+++)、中程度(++)、弱い(+)、および溶解無し(-)と定義する。最初の列は、PROFOSカルチャーコレクションに対応する株番号を示す。2番目の列では、個々の株の由来を挙げる。「臨床分離株」とは、ブドウ球菌感染症と診断された患者から分離された株を意味する。DSMZの番号は、「Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen」(Braunschweig)から取り寄せることができる株を表し、残りのものは、本発明者らの研究室に由来する独自の分離株である。溶解アッセイ法により、特に、黄色ブドウ球菌以外のコアグラーゼ陰性株に対して、EADplypitti26_CBDplyUSAの活性が野生型酵素plypitti26の活性よりもしばしば優れていることが実証された。これはまた、EADplypitti26_CBDplyUSAがplypitti26と比べて広い宿主域を有することも意味する。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌以外の種)は、衰弱し免疫力が低下した者における感染症に関与しており、留置器具または他の移植物を装着している者においてバイオフィルム形成の問題を引き起こし、乳腺炎に関与している。S.サプロフィチカスは、尿路感染症において特殊な問題を引き起こす。
【0083】
実施例5:溶解活性を検査するための濁度アッセイ法
エンドリシン機能に関して本発明者らが使用する第2の活性試験は、細菌細胞の溶解を光度計中で「稼働状態で」測定する濁度試験である。600nmでの吸光度は、細胞培養物の密度の指標であり、細胞が溶解すると減少し、その際、試料も目に見えて透明になる。前述の寒天プレートアッセイ法とは異なり、このアッセイ法は、熱処理されていない細菌細胞を使用し、したがって、より厳密で、医学的用途における実状により近い。ファージエンドリシンによる細菌溶解の結果、濁度アッセイ法によって測定される光学濃度(OD)は急減少する。OD600が約0.8に達するまで(対数期)、脳心臓浸出物(Oxoid)中で標的細菌を増殖させた。細胞を回収し、OD600が1になるまで、2mM CaCl2を加えたTBST緩衝液(20mM Tris/HCl pH7.5、60mM NaCl、0.1% Tween)中に再懸濁した。図面に示した最終タンパク質濃度になるまで、少量の濃縮したエンドリシン溶液を添加する。安定なベースラインに到達するまで、光度計(Jasco)において試料体積1mlで、OD600の変化を30℃で追跡した。試験タンパク質の添加は、測定を中断せずに行った。
【0084】
様々な濃度の単離されたplypitti26エンドリシンおよびEADplypitti26_CBDplyUSAエンドリシンを、黄色ブドウ球菌細胞に対して試験した。EADplypitti26_CBDplyUSAは、同じタンパク質濃度でplypitti26よりも高い活性を一般に示したことから、天然に存在するエンドリシンと比べて優れた特性がやはり示唆された。アッセイ法で使用した比較的低いタンパク質濃度において、完全な溶解(残留する吸光が無いことによって示される)は、EADplypitti26_CBDplyUSAでは、数分間という非常に短い時間間隔で実現される。また、1μg、0.5μg、およびさらに0.2μgという低いタンパク質濃度でも試験を実施したところ、より長い期間に渡って同様に完全な溶解が起こった。結果として得られる比活性(タンパク質1mgおよび1分当たりのΔOD600と定義される)をEADplypitti26_CBDplyUSAに関して算出したところ、値は約50ユニットであった。この比活性を現況技術の完全長型phi11エンドリシンおよび切断型phi11エンドリシン(0.8ユニットと1.5ユニットの間である(Donovan et al., 2006, FEMS Microbiol. Lett, 265, 133-139))と比較すると、EADplypitti26_CBDplyUSAが極めて効率的なブドウ球菌エンドリシンであることが判明する。plypitti26でさえ、phi11エンドリシンより有意に優れている。
【0085】
実施例6:ヒト血清における活性アッセイ法
血清におけるEADplypitti26_CBDplyUSAの活性を、実施例5による光度測定濁度アッセイ法を用いて試験した。対数期の黄色ブドウ球菌細胞を血清中に再懸濁し、続いて、様々な濃度のEADplypitti26_CBDplyUSAを用いた溶解アッセイ法を実施した。このアッセイ法により、ヒト血清中の黄色ブドウ球菌細胞の溶解を直接測定することが可能になる。血清中での効率的な溶解のためには、オスモルを(osmolytically)最適化した溶解緩衝液中での溶解と比較して約10倍の量のタンパク質が必要とされる。さらに、溶解の動態は、緩衝液中よりも血清中の方が遅い。
【0086】
ヒト血清におけるEADplypitti26_CBDplyUSAの活性を試験した。最適化された標準的アッセイ法条件下よりも、いくらか高いタンパク質濃度が必要とされ、溶解はいくらか遅いが、EADplypitti26_CBDplyUSAはまた、ヒト血漿中に存在する条件下でも黄色ブドウ球菌細胞に対する効率的なリシンであることが実証され得る。
【0087】
実施例7:室温での長期のインキュベーションの間の安定性
保存緩衝液中(20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4)、25℃で最長1週間インキュベートした後、plypitti26と比較したEADplypitti26_CBDplyUSAの安定性を試験した。タンパク質の分解をSDS-PAGEおよび濁度アッセイ法によってモニターした。EADplypitti26_CBDplyUSAは試験期間全体に渡って安定であり、変化は観察されなかったが、plypitti26は、インキュベーション時間が9時間より長いと明らかに分解し、120時間のインキュベーション後には完全長タンパク質は視認できなかったが、より小さな断片に相当するタンパク質バンドが視認できるようになった。
【0088】
試験したタンパク質の残存する活性を、標準条件下で濁度アッセイ法を用いて記録した(実施例5を参照されたい)。SDS-PAGEによって得た安定性データによれば、EADplypitti26_CBDplyUSAは、plypitti26と比較して遅い活性低下を示す。EADplypitti26_CBDplyUSAは、長期間、完全に活性なままであるが、plypitti26の活性は4時間後に既に顕著に低下する。
【0089】
これは活性低下と相関関係があり、完全長エンドリシンのみがこれらの条件下で酵素的に活性であることが示唆された。この実験により、特にEADplypitti26_CBDplyUSAが、室温でさえ、妥当な期間、安定であることが実証された。タンパク質を低温、例えば冷蔵庫中で4℃で、またはディープフリーザー中で-20℃もしくは-80℃の温度で保存した場合、この安定性は大幅に増す。
【0090】
実施例8:トロンビンおよびV8プロテアーゼに対するプロテアーゼ安定性
プロテアーゼ安定性アッセイ法のために、トロンビン50μgを最終濃度1.1mg/mlの各タンパク質と共に25℃で一晩インキュベートした。インキュベーション緩衝液は20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4であった。翌日、タンパク質試料をSDS-ゲル上および濁度アッセイ法において解析した。少量のEADplypitti26_CBDplyUSAしか、アッセイ法の時間の間に分解しないのに対し、plypitti26の完全長タンパク質は同じ条件下で全く残らない。これは、EADplypitti26_CBDplyUSAがトロンビンとのインキュベーション後に依然として著しく活性であるのに対し、plypitti26はその活性を完全に失うことを意味する。EADplypitti26_CBDplyUSAはトロンビン耐性を性質として示し、これにより、創傷内または静脈内に適用するのに役立つ。
【0091】
エンドリシン(濃度0.2mg/ml)およびV8プロテアーゼ(1μg/ml)を次の緩衝液:20mM Tris/HCl、100mM NaCl、pH8.0中、25℃で一晩インキュベートして、V8プロテアーゼに対するプロテアーゼ安定性を試験した。翌日、タンパク質試料をSDS-ゲル上および濁度アッセイ法において解析した。
【0092】
実施例9:ヒト血液における安定性
保存緩衝液(20mM Tris/HCl pH7.5、10mM DTE、0.1mM ZnSO4)またはヒトEDTA-血液中で、指定した時間、37℃でEADplypitti26_CBDplyUSAをプレインキュベーションした後、濁度アッセイ法(実施例5)によって活性を測定した。指定した時間、ヒト血液試料を遠心分離して赤血球を沈降させ、上清に由来するタンパク質溶液100μlを添加して濁度アッセイ法を開始する。最長で2時間インキュベーションすると、緩衝液中でのプレインキュベーションおよび血液中でのプレインキュベーション後にほぼ同一の活性が測定される。EADplypitti26_CBDplyUSAは血液中37℃で4時間のインキュベーション後にほぼ完全に不活性化されるのに対し、対照のインキュベーションでは80%の残存活性が測定される。
【0093】
実施例10:改変エンドリシン
本発明者らは、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplypitti20、EADplypitti26_CBDALE1、およびEADplypitti26_CBDLSの配列から開始して、いくつかの改変キメラエンドリシンを作製した。
【0094】
N末端切断
いくつかのN末端切断型のEADplypitti26_CBDplyUSAを構築し、寒天プレートアッセイ法によって活性を試験した。N末端をそれぞれアミノ酸4個および9個分短縮した2つの構築物は、プレーティングアッセイ法において溶菌活性を示したが、アミノ酸29個分短縮した構築物はもはや活性を示さなかった。
【0095】
部位特異的変異誘発
plypitti26、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplypitti20、EADplypitti26_CBDALE1、およびEADplypitti26_CBDLSをさらに安定化し可溶化するために、単一アミノ酸置換に対する特異的プライマーを用いて、アミノ酸配列内の選択した位置における部位特異的変異を実施し、寒天プレート活性アッセイ法を用いて各変異体の活性を試験した。本発明者らは、標準的な部位特異的変異誘発方法によって、疎水性アミノ酸(F、W、Y、I、L)を疎水性のより低いアミノ酸R、D、E、N、K、Q、H、S、T、M、G、Aに置換した。荷電アミノ酸EおよびRは、非荷電アミノ酸と優先的に交換した(Eの代わりにQまたはA、Rの代わりにA)。Cは、AまたはSと優先的に交換した。表2に挙げた置換は、ブドウ球菌感染症に対する治療物質、診断用物質、および予防物質としてのエンドリシンの活性を維持するか、または特性を改善することが判明した。
【0096】
(表2)ブドウ球菌に対する溶菌活性を示すplypitti26、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplypitti20、EADplypitti26_CBDALE1、およびEADplypitti26_CBDLSにおける単一アミノ酸変異を示す改変エンドリシン
好ましい態様であるEADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5、またはEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8と同様に、アミノ酸が付加されたplypitti26変種中、例えば、位置2に付加的なAを有する変種中に単一アミノ酸変異が存在する場合には、単一アミノ酸変異の番号は変わることを理解すべきである。
【0097】
実施例11:黄色ブドウ球菌細胞に対する様々な溶解タンパク質の緩衝液中での溶解活性の比較
このアッセイ法は、実施例5で説明したプロトコール「溶解活性を検査するための濁度アッセイ法」に従って実施した。吸光度の減少がほぼ直線状になる溶解曲線の最初の傾きから比活性(ΔA600/(分・mg))を算出した。1μg/mlおよび10μg/mlの溶解タンパク質濃度を用いて、このアッセイ法を実施した。タンパク質濃度10μg/mlでの比活性の方が一般に低く、測定される吸光度減少(ΔA600/分)は、タンパク質濃度と比例関係にはないことが認められる。実験から、緩衝液中の溶解活性は次の順序で得られた:優れたものから順に、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA、plypitti26、リソスタフィン。リソスタフィンは、このアッセイ法において最も弱い能力を示し、plypitti26が2番目に弱い。しかしながら、驚くべきことに、組合せまたはplypitti26のEADおよびリソスタフィンのCBD、すなわちEADplypitti26_CBDLS-Add2_M5は、2番目に良い能力を示す。これはまた、ALE1リシンはリソスタフィンと非常に良く似ているため、変種EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5にも反映される。plypitti26変種であるEADplypitti26_CBDplyUSAおよびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、plypitti26より優れた溶解活性を示す。
【0098】
実施例12:黄色ブドウ球菌細胞に対する、様々な溶解タンパク質のヒト血清における溶解活性の比較
このアッセイ法は、実施例6で説明したプロトコール「ヒト血清における活性アッセイ法」に従って実施した。吸光度の減少がほぼ直線状になる溶解曲線の最初の傾きから比活性(ΔA600/(分・mg))を算出した。10μg/mlおよび25μg/mlの溶解タンパク質濃度を用いて、このアッセイ法を実施した。タンパク質濃度25μg/mlでの比活性の方がいくらか低く、測定される吸光度減少(ΔA600/分)は、タンパク質濃度と比例関係にはないことが認められる。10μg/mlの溶解タンパク質を用いた実験から、ヒト血清中の溶解活性は次の順序で得られた:優れたものから順に、EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8。ヒト血清中の様々なエンドリシン構築物の溶解効率は、緩衝液で測定されたものと異なることが判明した。エンドリシンplypitti26は、ヒト血清中では黄色ブドウ球菌に対して溶菌活性を示さなかったが、未知の因子によって阻害されるように思われる。plyUSAのCBDを提示するplypitti26の改変変種、すなわちEADplypitti26_CBDplyUSAおよびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5およびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8は、plypitti26よりも優れた特異的溶解活性をヒト血清中で示す。リソスタフィンのCBDを使用する構築物EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5は、ヒト血清において最も優れた特異的溶解活性を示すが、リソスタフィンの緩衝液中での溶解活性は非常に乏しかった。ALE-1リシンのCBDを使用する構築物EADplypitti26_CBDALE1-Add2_M5は、ヒト血清において3番目に優れた特異的溶解活性を示す。
【0099】
実施例13:熱安定性アッセイ法
光度計中で波長360nmでタンパク質凝集を測定する熱安定性アッセイ法において、ブドウ球菌エンドリシンの熱安定性を測定した。タンパク質(濃度0.1mg/ml)を緩衝液(20mM Hepes、10mM CaCl2、50mMアルギニンを含む、pH7.5)中に溶解した。緩衝化したタンパク質溶液を含むキュベットを光度計中に置き、1分当たり1℃ずつ上げて加熱した。室温〜約65℃の間の温度で、360nmでの吸光度(A360)を測定した。タンパク質変性が無い場合、A360シグナルはわずかな勾配しか示さないが、特定の温度、凝集温度Taggrから始まって、吸光線は上昇し始め、ある種のピークを示す。このシグナル変化は、タンパク質の凝集および付随する不活性化と一致する。したがって、観察される凝集温度Taggrは、タンパク質の熱安定性の指標である。様々なブドウ球菌エンドリシン変種のTaggrの比較を表3に示す。
【0100】
(表3)
【0101】
この実験で測定したうちで、ply_pitti26が最も安定度の低い酵素であることが判明した。ply_pitti26のCBDをplyUSA由来のCBDまたはリソスタフィン由来のCBDに交換すると、安定性が5℃上昇する。EADplypitti26_CBDLS-Add2_M5は最も安定なエンドリシンで、Taggrは56℃であり、続いて、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5、EADplypitti26_CBDplyUSA、およびEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M8がそれぞれ55℃のTaggrを示す。ply_pitti26のCBDをALE-1リシン由来のCBDと交換しても、わずか1℃の安定化しか起こらない。
【0102】
実施例14:ブドウ球菌感染症に対する治療物質、診断用物質、および予防物質として使用するために有利な特性に関する、plypitti26およびその変種の特徴付け
plypitti26に由来する様々なキメラエンドリシンおよび最高7個の単一アミノ酸変異を示す改変タンパク質を、エンドリシンの活性および安定性に関する様々な特性に関して比較した。プロテアーゼ耐性は実施例8で説明したプロトコールに従って試験し、緩衝液中および血清中での溶解活性はそれぞれ実施例5および実施例6に従って試験し、宿主域は寒天プレートアッセイ法(実施例4)で決定し、長期のインキュベーションの間の安定性は実施例7で説明したアッセイ法を用いて試験した。これらの結果を表4に半定量的様式で要約する。
【0103】
(表4)本発明による用途のためのブドウ球菌エンドリシンply_pitti26の様々なタンパク質変種の特性の比較
+++:各アッセイ法で測定された特性が、測定された他のエンドリシン構築物と比べて非常に良い
++:各アッセイ法で測定された特性が、測定された他のエンドリシン構築物と比べて良い
+:各アッセイ法で測定された特性が、測定された他のエンドリシン構築物と比べて目立たない
-:測定された他のエンドリシン構築物と比べて、各アッセイ法で使用した条件下で特性は測定不可能である
n.d.:各エンドリシン構築物を用いて決定されない特性
【0104】
本発明において説明したようにして構築したplypitti26の変種はすべて、安定性もしくは活性または両方が、天然に存在するエンドリシンよりも有利である。変異E164A(またはEADpitti26_CBDUSAにおけるE163A)および変異R168A(またはEADpitti26_CBDUSAにおけるR167A)を示す変種だけでなく、キメラ構築物EADpitti26_CBDUSA、EADpitti26_CBDUSA-Add2、およびEADpitti26_CBDpitti20も、plypitti26より優れたトロンビン耐性を示す。変種EADpitti26_CBDUSA-Add2_M5(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)において、ならびに程度は落ちるが、変種EADpitti26_CBDUSA、EADpitti26_CBDUSA-Add2、およびEADpitti26_CBDpitti20において、トロンビン消化後に残存するエンドリシン活性を試験すると、同様にこれが顕著である。このことから、2つの戦略がプロテアーゼ耐性の改善をもたらすことが示される。第1に、プロテアーゼの基質認識に関与している残基の変異(この場合、R168Qのような単一アミノ酸置換)であり、第2に、プロテアーゼの消化部位の接近容易性が低減する可能性が高い、タンパク質の全体的な立体構造の変化(この場合、CBD交換によるキメラ構築物の構築)である。変種EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T)、ならびに特に変種EADPitti26_CBDUSA-Add2、EADpitti26_CBDUSA-Add2(E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)、EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)、およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)のブドウ球菌細胞に対する溶解活性は、plypitti26より優れていた。変種EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)はまた、ヒト血清中で非常に良い〜良い溶解活性を示す。特に変異L56H、L57T、およびY201Hが、タンパク質の溶解活性のために有益であることが判明した。ブドウ球菌属67株、黄色ブドウ球菌32株、および黄色ブドウ球菌MRSA 12株を用いて、plypitti26変種の宿主域を試験した。宿主域に関する非常に良い感受性(+++)は、80%を超えるブドウ球菌株、90%を超える黄色ブドウ球菌株、および75%を超える黄色ブドウ球菌MRSA株の溶解を意味し、ほぼすべての変種がブドウ球菌細胞に対して非常に良い宿主域感受性を示す。Plypitti26宿主域感受性は若干低く、キメラ構築物EADpitti26_CBDpitti20の感受性は、ブドウ球菌属およびMRSA株由来の細胞に対して弱い。室温での長期の安定性は、試験した全変種においてplypitti26と比べて改善していた。保存安定性に関して特に好ましいのは、変種EADpitti26_CBDUSA、EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T)、およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201Hである。変異L56HおよびL57Tは、plypitti26の安定性および溶解性に対して正の効果をもたらす。要約すれば、提示した変種はすべて、天然に存在するエンドリシンplypitti26より優れた利点を示す。試験した特性すべてに渡って最も優れた能力を示す変種EADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、Y201H)およびEADpitti26_CBDUSA-Add2(L56H、L57T、E164A、R168A、E180A、E190Q、Y201H)が特に好ましい。
【0105】
実施例15:免疫原性研究
ブドウ球菌感染症に対する治療物質または予防物質としてエンドリシンを使用する場合、外来タンパク質によって誘発される生物の免疫応答に関する情報を得るために、これらのタンパク質の免疫原性を動物モデルにおいて試験しなければならない。静脈内療法の免疫原性研究のために、1群当たり10匹の雌Balb/cマウスを動物モデルとして使用した。調合緩衝液(25 mM Tris pH7.5、10mMクエン酸、10mM CaCl2、300mMアルギニン)に溶かしたplypitti26エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を、3つの群に対してt=0時間、24時間、および48時間に、15mg/kg体重の投与量でゆっくりと低圧で静脈ボーラス注射することにより適用した。終点の血清抜き取り(withdrawal)は、3つの群に対してそれぞれ2週間後または4週間後または8週間後に行った。各群のマウス3匹には、エンドリシンを含まない緩衝液の投薬を対照として行った。腹腔内注射の免疫原性対照研究のために、1群当たり3匹の雌Balb/cマウスを動物モデルとして使用した。この場合、plypitti26エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を、3つの群に対してt=0時間、14日目、および28日目に、15mg/kg体重の投与量でアジュバント(aduivans)と共に水/油乳濁液を腹腔内注射することにより適用した。終点の血清抜き取りは、3つの群に対してそれぞれ10日後または21日後または35日後に行った。マイクロタイタープレートに結合させたEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5および免疫応答をもたらす多様な抗体グループに対する二次抗体による比色シグナル検出を用いたELISAアッセイ法によって、免疫原性の程度を試験した。静脈内注射および腹腔内注射の結果を表5および表6に示す。対照に由来するバックグラウンドシグナルより有意に低いシグナルが引き続き得られる最も低い抗体力価を示す。
【0106】
(表5)EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の静脈内注射後の抗体力価
【0107】
(表6)EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の腹腔内注射後の抗体力価
【0108】
EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を静脈内注射した後の方が、強力な免疫応答の対照として使用した腹腔内注射の場合と比べて抗体力価は低かったことが認められる。
【0109】
実施例16:マウス抗血清によるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の活性の中和
静脈内注射後の免疫応答の間に作られた、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5に対する抗体が、エンドリシンの活性を中和できるかどうかを試験するために、ブドウ球菌細胞壁調製物に対する溶解活性をマイクロタイタープレート濁度アッセイ法において試験した。緩衝液(20mM Hepes、150mM NaCl、pH7.4)に溶かしたEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5(0.1mg/ml)を、実施例15で説明したプロトコールに従う静脈内注射後4週目および8週目に生成したマウス抗血清の段階希釈物(希釈率0、0.5、0.2、0.1、0.05、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001)と共に30℃で1時間、インキュベートした。様々な段階希釈物をインキュベートした溶液10μlをブドウ球菌細胞壁調製物190mlと混合し、約2.0のA620から開始して、620nmでの吸光度の減少を経時的に測定した。ΔA620=0.1の吸光度減少に必要とされる時間は、エンドリシン活性の指標である。各希釈率の免疫前血清を添加した後に測定される試料の活性は、活性の対照としての機能を果たした。表7に示す活性値は、実施例15で説明したようにしてEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5をそれぞれ静脈内注射したマウス7匹の血清に由来する平均値を表す。
【0110】
(表7)EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の静脈内注射によって得られる血清による中和後のブドウ球菌細胞壁調製物に対するエンドリシン活性
【0111】
活性アッセイ法により、本発明によるブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、静脈内注射後に生成する抗体によって有意なレベルまで不活性化されないことが示される。これに対して、抗血清添加後には大半の試料においてエンドリシン活性の軽微な活性化が観察される。したがって、静脈内注射後の免疫応答の間に生成した抗体は、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のエンドリシン活性を有意な程度まで中和できない。
【0112】
実施例17:マウスにおけるブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の高用量での毒性
EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の潜在的な毒性を試験するために、健常な雌CFW1マウス10匹に、体重1kg当たりエンドリシン100mgの投与量で静脈内にボーラス注射した。1時間、6時間、および22時間後に、注射を繰り返した。注射体積は、緩衝液(20mM Tris、10mM CaCl2、10mMクエン酸、300mMアルギニン、pH7.5)中、それぞれ0.2mlであった。次の5日間、マウスの臨床徴候、体重、および死亡率を毎日管理した。試験したマウスのどれも、次の5日間の間に体重減少も発熱または振戦のような他の臨床徴候も示さなかったことから、高用量のブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5でさえ、静脈内注射を繰り返した後に健常マウスに対して毒性ではないことが示唆された。動物モデルから、ブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、毒性作用を伴わずにブドウ球菌感染症の療法または予防に適用できると思われる。
【0113】
実施例18:ブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5を用いた薬物動態試験
生体におけるEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の半減期を決定するために、ラットでの薬物動態試験を実施した。雄のスプラーグドーリー(CD)ラット24匹の脚静脈に、体重1kg当たりエンドリシン12mgの投与量で静脈内接種した。EADplypitti26_CBDplyUSA_M5を緩衝液(20mM Tris、10mM CaCl2、10mMクエン酸、300mMアルギニン、pH7.5)中に溶解した。静脈内注射後5分目、15分目、30分目、60分目、120分目、240分目、または480分目に各3匹の動物を屠殺した。対照群の動物3匹には、緩衝液のみを注射して与えた。屠殺後、血液試料を直ちに採取し、血清を調製し、液体窒素中で凍結させた。さらに、器官である心臓、腎臓、肝臓、脾臓、および肺を調製し、同様に液体窒素中で凍結させた。マイクロリットルプレート形式で濁度アッセイ法を実施して、エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の残存活性を測定した。血清20μlを、620nmでの吸光度がA620=2.0であるブドウ球菌細胞壁調製物200μlと混合した。A620が0.1減少する(ΔA620=0.1)のに必要とされる時間を、エンドリシン活性の指標として利用した。対照として、緩衝液および免疫前血清に溶かした、それぞれ濃度(150μg/ml)のEADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5エンドリシンの活性を測定した。EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5エンドリシンの半減期を測定するための第2のアッセイ法は、希釈率1:105の抗EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5エンドリシンポリクローナルウサギ抗血清および二次抗体としてのアルカリホスファターゼ-ヤギ抗ウサギIgGコンジュゲートを用いた、タンパク質のウェスタンブロット解析であった。また、解凍した器官をガラスビーズおよびスパーテルを用いてホモジナイズすることによって調製した器官抽出物に対しても、このウェスタンブロット解析を使用した。器官抽出物、血液試料、および血清試料をSDS-ポリアクリルアミドゲルに添加し、分離されたポリペプチドバンドをPVDFメンブランにブロットし、説明した抗体を用いて発色させた。
【0114】
活性アッセイ法から、ラットでの静脈内注射後の変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5の半減期は約60分であることが示された。添加後2時間目には、測定可能な残存活性はほとんど無かった。5分後に採取した最初の試料を、免疫前血清および調合緩衝液中のタンパク質の活性と比較したところ、添加直後には活性損失はほとんど無いことが示され、これは、血液細胞または血管上皮細胞にタンパク質が吸着することが原因であり得る。様々な器官から採取した試料においても実施したウェスタンブロットアッセイ法から、EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5のタンパク質バンドの消滅は、活性損失と一致することが明らかになった。血液、血清、および検査した器官で非常に類似した薬物動態が観察されたことから、タンパク質のクリアランスは、身体の様々な部分で類似していることが示唆された。観察された唯一の相違は、血液試料、血清試料、心臓試料、肺試料、肝臓試料、および脾臓試料中では完全長型としてエンドリシンは視認できるのに対し、腎臓試料中ではすべての時点でタンパク質断片が検出されることであった。エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5は、ラット腎臓中では、この器官中に存在するプロテアーゼによって消化されるように思われる。薬物動態試験により、ブドウ球菌感染症の療法および予防において使用するのに適した潜在的な薬学的物質として、ブドウ球菌エンドリシン変種EADplypitti26_CBDplyUSA-Add2_M5が確認された。
【0115】
実施例19:黄色ブドウ球菌細胞によるマウスの全身感染後のエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5の有効性の研究
ブドウ球菌感染症に対する治療物質としてのエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5の有効性を試験するために、黄色ブドウ球菌細胞を静脈内投与してマウスを感染させ、エンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5を用いた静脈経由治療を、試験動物の生存に関して他の治療と比較した。雌の健常なCFW1マウス48匹の静脈内に、DSMZ11823株の黄色ブドウ球菌細胞をマウス1匹当たり2×108個接種した。これらのマウスを動物6匹ずつの7群に分けた。最初の3群のマウスは、高投薬量(タンパク質100mg/kg体重)、中程度の投薬量(タンパク質25mg/kg体重)、または低投薬量(タンパク質5mg/kg体重)のエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-AAd2_M5で処置した。これらは感染後1時間目、6時間目、および22時間目の3回の静脈内注射で与えた。マウスの1つの群には、調合緩衝液(20mM Tris、10mM CaCl2、10mMクエン酸、300mMアルギニン、pH7.5)を同じように注射した。3群のマウスは、高投薬量(タンパク質20mg/kg体重)、中程度の投薬量(タンパク質5mg/kg体重)、または低投薬量(タンパク質1.25mg/kg体重)の抗生物質バンコマイシンで処置した。マウスの1つの群には、まったく処置を施さず、これは黄色ブドウ球菌細胞の菌力に関する対照としての機能を果たした。感染後の5日間、マウスの生存を観察した。これらの結果を表8に要約する。
【0116】
(表8)様々な処置を実行した後の、黄色ブドウ球菌感染後のマウスの生存
【0117】
黄色ブドウ球菌細胞を2×108細胞の濃度でマウスに静脈内接種した後にエンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5を静脈内適用すると、試験した3種の投薬量すべてで、観察期間内の全マウスの生存が保証されることが判明した。処置をしない場合、対照群の動物はすべて3日目に死亡していた。この群の動物すべてが2日目に既に死亡していたことから、エンドリシン用の調合緩衝液それ自体が、いくらか負の効果を有するように思われた。抗生物質バンコマイシンによる処置後、高投薬量および中投薬量で処置した群の動物はすべて生存したが、低投薬量の抗生物質で処置した群では一部の動物が死亡した。有効性研究から、エンドリシンEADpitti26_CBDUSA-Add2_M5は、黄色ブドウ球菌感染症を治療するための優良な手段、および耐性がしばしば発生する抗生物質治療の代替手段であると思われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチド、または以下であるその変種:
a)SEQ ID NO: 1のCBDが別のブドウ球菌(Staphlococci)特異的エンドリシンのCBDドメインで置換された配列を含むポリペプチド、または
b)SEQ ID NO: 1の少なくとも最初のN末端アミノ酸および多くとも最初の28個のN末端アミノ酸を除いて、SEQ ID NO: 1の配列を含むポリペプチド、または
c)SEQ ID NO: 1の配列中に1つもしくは複数の点変異もしくはアミノ酸置換を含むポリペプチド、または
d)SEQ ID NO: 1の配列に加えて、マーカー部分、タグ、もしくは他の機能的ポリペプチド配列に相当する配列を含むポリペプチド、または
e)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列中に挿入された1つもしくは複数の付加的なアミノ酸残基を含むポリペプチド、または
f)変種a)、b)、c)、d)、およびe)の任意の組合せに相当するポリペプチド配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、S.ヘモリチカス(haemolyticus)、S.シミュランス(simulans)、S.サプロフィチカス(saprophyticus)、色素産生ブドウ球菌(S.chromogenes)、S.ヒイカス(hyicus)、S.ワーネリ(warneri)、および/またはS.キシローサス(xylosus)を溶解する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSH3タイプのエンドリシン細胞結合ドメインを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がply_USAまたはply_pitti20のエンドリシンCBDドメインより選択されるCBDドメインを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSEQ ID NO: 3またはSEQ ID NO: 5に示すCBDドメインを含む、請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO: 7またはSEQ ID NO: 11に示す配列を含む、請求項5記載のポリペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSEQ ID NO: 1の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、または28個のN末端アミノ酸残基を欠く、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSEQ ID NO: 1に対して単一または複数の置換を示し、置換される残基が、SEQ ID NO: 1の次のアミノ酸残基:F19、W22、W36、F42、Y44、L55、L56、F67、L74、Y78、W107、Y115、I116、Y119、W123、W128、W137、W139、W154、E163、R167、E179、E189、Y200、Y275、Y276、C282、F300、およびC303より選択される、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
アミノ酸残基F、W、Y、I、Lの置換が、アミノ酸残基R、D、E、N、K、Q、H、S、T、M、G、またはAと交換される、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項10】
W22R、F42A、F44A F67T、Y115S、W123M、W137A、W139A、W154H、E163A、E179Q、E179A、E187Q、Y200A、Y200H、Y275A、Y275M、Y276A、C282A、F300A、C303S、W310A、およびW310Mを含む群より選択される1つまたは複数の置換をSEQ ID NO: 1の配列に対して示す、請求項9記載のポリペプチド。
【請求項11】
SEQ ID NO: 1に対して以下の置換の内の1つを含む、請求項10記載のポリペプチド:
F67T+Y115S、F67T+W137A、F67T+W139A、F67T+W154H、Y115S+W137A、Y115S+W139A、E163Q+R169A、E163A+R169A、E163Q+R167A+E189Q、E163A+R167A+E189Q、E163Q+R167A+E179Q+E189Q、E163Q+R167A+E179A+E189Q、E163A+R167A+E179Q+E189Q、E163A+R167A+E179A+E189Q、Y200A+Y275A、Y200A+Y276A、Y200A+C282A、Y200A+F300A、Y275A+Y276A、L55H+L56T+E163A+R167A+Y200H、E163A+R167A+E179A+E189Q+Y200H、L55H+L56T+E163A+R167A+E179A+E189Q+Y200H、S237L+R354Q+A367V、およびL55H+L56T+E163A+R167A+Y200H+S237L+R354Q+A367V。
【請求項12】
付加的なマーカー部分としてビオチンまたはストレプトアビジンを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項13】
HA-タグ、His-タグ、Strep-タグ、Myc-タグ、またはGST-タグをさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項14】
SEQ ID NO: 9またはSEQ ID NO: 13に示す配列を含む、請求項13記載のポリペプチド。
【請求項15】
SEQ ID NO: 15、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 20、もしくはSEQ ID NO: 22に示す配列を含むポリペプチド、またはその変種。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子。
【請求項17】
SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 21、またはSEQ ID NO: 23より選択される配列を含む、請求項16記載の核酸分子。
【請求項18】
請求項16または17記載の核酸を含むベクター。
【請求項19】
請求項16もしくは17記載の核酸分子または請求項18記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
医薬として使用するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項21】
担体と共に投与される、請求項20記載のポリペプチド。
【請求項22】
ブドウ球菌感染症を治療または予防するための医薬として使用するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項23】
ブドウ球菌感染症が、黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.シミュランス、S.サプロフィチカス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、および/またはS.キシローサスの感染に起因する、請求項22記載のポリペプチド。
【請求項24】
ブドウ球菌感染が疾患状態をもたらす、請求項22または23記載のポリペプチド。
【請求項25】
疾患が、菌血症、心内膜炎、角膜炎、エンドプラスチチス、またはウシ乳房炎である、請求項22〜24のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項26】
担体と共に投与される、請求項22〜25のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項27】
局所的に、経口的に、または静脈内注射によって投与される、請求項22〜26のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項28】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項19記載の宿主細胞を含む、消毒組成物。
【請求項29】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項19記載の宿主細胞を含む、化粧用組成物。
【請求項30】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項19記載の宿主細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
食料品、食品加工機器、食品加工工場、または食料品と接触する表面のブドウ球菌汚染を処理または予防するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項32】
医薬品、食品、もしくは飼料の診断または環境の診断における診断手段としての、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項33】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドを含む診断キット。
【請求項1】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチド、または以下であるその変種:
a)SEQ ID NO: 1のCBDが別のブドウ球菌(Staphlococci)特異的エンドリシンのCBDドメインで置換された配列を含むポリペプチド、または
b)SEQ ID NO: 1の少なくとも最初のN末端アミノ酸および多くとも最初の28個のN末端アミノ酸を除いて、SEQ ID NO: 1の配列を含むポリペプチド、または
c)SEQ ID NO: 1の配列中に1つもしくは複数の点変異もしくはアミノ酸置換を含むポリペプチド、または
d)SEQ ID NO: 1の配列に加えて、マーカー部分、タグ、もしくは他の機能的ポリペプチド配列に相当する配列を含むポリペプチド、または
e)SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列中に挿入された1つもしくは複数の付加的なアミノ酸残基を含むポリペプチド、または
f)変種a)、b)、c)、d)、およびe)の任意の組合せに相当するポリペプチド配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、S.ヘモリチカス(haemolyticus)、S.シミュランス(simulans)、S.サプロフィチカス(saprophyticus)、色素産生ブドウ球菌(S.chromogenes)、S.ヒイカス(hyicus)、S.ワーネリ(warneri)、および/またはS.キシローサス(xylosus)を溶解する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSH3タイプのエンドリシン細胞結合ドメインを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がply_USAまたはply_pitti20のエンドリシンCBDドメインより選択されるCBDドメインを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSEQ ID NO: 3またはSEQ ID NO: 5に示すCBDドメインを含む、請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO: 7またはSEQ ID NO: 11に示す配列を含む、請求項5記載のポリペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSEQ ID NO: 1の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、または28個のN末端アミノ酸残基を欠く、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
SEQ ID NO: 1に示す配列を含むポリペプチドの変種がSEQ ID NO: 1に対して単一または複数の置換を示し、置換される残基が、SEQ ID NO: 1の次のアミノ酸残基:F19、W22、W36、F42、Y44、L55、L56、F67、L74、Y78、W107、Y115、I116、Y119、W123、W128、W137、W139、W154、E163、R167、E179、E189、Y200、Y275、Y276、C282、F300、およびC303より選択される、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
アミノ酸残基F、W、Y、I、Lの置換が、アミノ酸残基R、D、E、N、K、Q、H、S、T、M、G、またはAと交換される、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項10】
W22R、F42A、F44A F67T、Y115S、W123M、W137A、W139A、W154H、E163A、E179Q、E179A、E187Q、Y200A、Y200H、Y275A、Y275M、Y276A、C282A、F300A、C303S、W310A、およびW310Mを含む群より選択される1つまたは複数の置換をSEQ ID NO: 1の配列に対して示す、請求項9記載のポリペプチド。
【請求項11】
SEQ ID NO: 1に対して以下の置換の内の1つを含む、請求項10記載のポリペプチド:
F67T+Y115S、F67T+W137A、F67T+W139A、F67T+W154H、Y115S+W137A、Y115S+W139A、E163Q+R169A、E163A+R169A、E163Q+R167A+E189Q、E163A+R167A+E189Q、E163Q+R167A+E179Q+E189Q、E163Q+R167A+E179A+E189Q、E163A+R167A+E179Q+E189Q、E163A+R167A+E179A+E189Q、Y200A+Y275A、Y200A+Y276A、Y200A+C282A、Y200A+F300A、Y275A+Y276A、L55H+L56T+E163A+R167A+Y200H、E163A+R167A+E179A+E189Q+Y200H、L55H+L56T+E163A+R167A+E179A+E189Q+Y200H、S237L+R354Q+A367V、およびL55H+L56T+E163A+R167A+Y200H+S237L+R354Q+A367V。
【請求項12】
付加的なマーカー部分としてビオチンまたはストレプトアビジンを含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項13】
HA-タグ、His-タグ、Strep-タグ、Myc-タグ、またはGST-タグをさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項14】
SEQ ID NO: 9またはSEQ ID NO: 13に示す配列を含む、請求項13記載のポリペプチド。
【請求項15】
SEQ ID NO: 15、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 20、もしくはSEQ ID NO: 22に示す配列を含むポリペプチド、またはその変種。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子。
【請求項17】
SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 21、またはSEQ ID NO: 23より選択される配列を含む、請求項16記載の核酸分子。
【請求項18】
請求項16または17記載の核酸を含むベクター。
【請求項19】
請求項16もしくは17記載の核酸分子または請求項18記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
医薬として使用するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項21】
担体と共に投与される、請求項20記載のポリペプチド。
【請求項22】
ブドウ球菌感染症を治療または予防するための医薬として使用するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項23】
ブドウ球菌感染症が、黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.シミュランス、S.サプロフィチカス、色素産生ブドウ球菌、S.ヒイカス、S.ワーネリ、および/またはS.キシローサスの感染に起因する、請求項22記載のポリペプチド。
【請求項24】
ブドウ球菌感染が疾患状態をもたらす、請求項22または23記載のポリペプチド。
【請求項25】
疾患が、菌血症、心内膜炎、角膜炎、エンドプラスチチス、またはウシ乳房炎である、請求項22〜24のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項26】
担体と共に投与される、請求項22〜25のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項27】
局所的に、経口的に、または静脈内注射によって投与される、請求項22〜26のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項28】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項19記載の宿主細胞を含む、消毒組成物。
【請求項29】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項19記載の宿主細胞を含む、化粧用組成物。
【請求項30】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項19記載の宿主細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
食料品、食品加工機器、食品加工工場、または食料品と接触する表面のブドウ球菌汚染を処理または予防するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項32】
医薬品、食品、もしくは飼料の診断または環境の診断における診断手段としての、請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項33】
請求項1〜15のいずれか一項記載のポリペプチドを含む診断キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−536354(P2010−536354A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521353(P2010−521353)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006813
【国際公開番号】WO2009/024327
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510046402)ヒグロス インベスト ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006813
【国際公開番号】WO2009/024327
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510046402)ヒグロス インベスト ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】
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