説明

ヒトを除く哺乳類動物の心不全の治療用組成物および治療方法

ヒトを除く哺乳類動物の心不全の治療用の薬量学に従ったアルドステロン拮抗薬を含む新規な組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトを除く哺乳類動物の心不全の治療用の薬量学に従ったアルドステロン拮抗薬から成る新規組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心臓病はヒト以外の哺乳類、例えばイヌおよびネコにおいて頻繁に見られる疾患であり、心不全を発生させる。心不全は心臓機能の異常によって組織が要求する必要なエネルギーをカバーするのに充分な血液吐出量を心臓へ確保することができなくなる症候群である。この欠陥は心室心筋の収縮異常(心収縮機能不全)または心臓の拡張異常(拡張機能不全)、おそらくはこれら両方の機構を反映したものである。
獣医学では心不全の重症度はISACHC(国際小型動物心臓健康協会)の分類に従うとその症状に応じて3つのクラスに分類される。クラスIはいわゆる無症候群で、例えば心臓のざわめきまたは心臓肥大のような心臓障害のサインがある単に検出可能であるものである。クラスIIは穏やかまたは中度心不全に対応する心不全で努力後のうっ血性の症状の発生によって検出される。クラスIIIは進行したまたは重度の心不全に対応し、安静時でも臨床症状が見られ、腹水および肺浮腫の存在を伴う。
【0003】
病気の発達開始時には容積維持をその原始的役割とするレニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAAS)を主とする補償機構によって心機能は維持される。このRAASは心腎内分泌調節で、組織の塩水(ハイドロソーデ)恒常性すなわち電解質(ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、マグネシウムイオン(Mg2+)および水との間のバランスを維持する。これは内分泌および酵素の調節カスケードによって作動する。RAASの活動は腎動脈の圧力降下時に腎臓レニンによる酵素分泌でスタートするが、他の刺激、例えば湾曲した末梢部管近傍の無振戦(natremia)低下またはベータアドレナリン系による傍糸球体細胞の刺激作用もある。レニンは肝臓から分泌されるアンギオテンシノーゲンを切断し、アンギオテンシンIとよばれる不活性がデカペプチドにする。次いで、このアンギオテンシンIは主として肺臓の近くでアンギオテンシン変換酵素(ACE)によってアンギオテンシンIIに変わる。アンギオテンシンIIはそのトランスメンブレンレセプターに接着し、各種の機構によって動脈の圧力を上昇させる。特に、アンギオテンシンIIは細動脈に強力な血管収縮神経影響を及ぼし、副腎腺から分泌されるホルモンアルドステロンの分泌を刺激し、腎臓の近くの湾曲末梢部の管および回収管中でナトリウムと水を逆吸収して容積を増加させる。さらに、抵尿水ホルモンのバソプレシンの分泌を刺激し、尿中の水の減失を制限し、レニンの分泌を抑制する。
【0004】
心不全時にはアルドステロン合成が増加し、レニン‐アンギオテンシン系が活性化される。アルドステロン、副腎腺、心臓、血筋および脳で合成されるミネラルコルチコイドホルモンはミネラルコルチコイド(mineralcorticoid)レセプターに接着する。アルドステロンの主たる生物作用は以下にある:
(1)腎臓でナトリウムおよび水の逆吸収と、カリウムおよびマグネシウムの排出とを刺激する。その結果はvolemyの増加である。
(2)心臓上および導管で直接作用して心筋および脈管内皮の組織のリモデリングし、心筋の線維を発達させる。これらの効果はアルドステロンが、ミネラルコルチコイドレセプターへの結合形成に依存する。
【0005】
ヒト医学では使用されている心不全の標準治療薬は主としてアンギオテンシン変換酵素インヒビター(AIEC)、遮断剤、利尿剤、血管拡張剤、変力剤、ジギタリス剤および昇圧薬である。カプトプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、リシノプリルまたはラミピリルのようなアンギオテンシン変換酵素インヒビター(AIEC)はRAASのカスケードを制御して動脈圧力を制御する。多数の大規模臨床検査によってIECの効果を示すことができ、心不全の場合の生残率を大きく増加できる。逆に、高カリウム血症のような逆指数も示す。
【0006】
ヒトの心不全の標準治療はIECと利尿剤とを組合せたものから成る。現在では多くの利尿剤が利用できる:アンス利尿剤、例えばフロスミド、トルスミド、ブメタニド、チアジック利尿剤、例えばヒドロクロルチアジトまたはキオラタリドンまたはカリウム貯蓄剤、例えばトリアムテレン、アミロライド、エプレレノンおよびスピロノラクトン。
【0007】
これまでにもアルドステロン拮抗薬のスピロノラクトンの心不全での効果が評価された。以前の実験研究では腎臓および心血管でのアルドステロンの有害効果が示されていた。従って、心不全時にアルドステロン効果をブロックする効果を有し、特に、心機能を改善し、リズムの乱れを減らすことができるかもしれないという仮説をもとにテストが行なわれた。
【0008】
実験の結果、利尿剤効果(≧50mg)を有する投与量でスピロノラクトンを単独またはIECと一緒に投与した時には、心不全の治療とは相容れない高カリウム血症副作用を示した。特にIECと一緒の場合には。広域臨床研究RALES (Randomized Aldactone EvaluAT−1on Study)では低投与量いわゆる副利尿剤の投与量で心不全を患っているヒトの患者でスピロノラクトンの臨床効果が示された。より正確には、RALES研究ではヒトの心不全治療にスピロノラクトンを副利尿剤の1〜25mgl/日の投与量でIECと一緒に使用することを記載している。この組合せは特許文献1(国際特許第WO 96/24373号公報)および特許文献2(欧州特許第EP 808172B1号公報)にも記載されている。RALES研究では(プラセボ)に対する二重盲式研究を含めて左心室吐出が35%以下である1663人の重症心不全患者の研究では、IEC、利尿剤、ジゴキシンと一緒に治療をした。822人は25mgのスピロノラクトンを投与され、841人は偽薬を投与された。この研究ではスピロノラクトングループは284人(35%)が死亡したのに対して、偽薬グループでは386人(46%)が死亡したことが報告されている。生存解析から死亡危険率は偽薬グループに対してスピロノラクトンを投与されたグループの患者は30%減少することが示された。
【0009】
心不全患者のヒト被験者ではスピロノラクトンの投与で高カリウム血症の危険性が増加することは知られていたが、現在では、スピロノラクトンの毎日の投与量を下げることで治療に使うことができるということが確認されている。これは副作用およびアルドステロン拮抗薬の高投与量時の高カリウム血症の危険を避けつつ心不全の生理病理学上のアルドステロン効果を減らすための妥協である。従って、ヒトの患者の場合には、保護効果がを観測でき、しかも、利尿剤投与量を考慮した低投与量であるのに充分なスピロノラクトンの効率的治療量はヒトの患者では一般に12.5〜50mg/日でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許第WO 96/24373号公報
【特許文献2】欧州特許第EP 808172B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、ヒトの心不全治療のためのアルドステロン拮抗薬の投与量に関して決められてきた投与量より多いアルドステロン拮抗薬の投与量の投与とは逆に、ヒト以外の哺乳類動物の亜属を構成する特定の被検者の場合には、これまでの投与量より多量のアルドステロン拮抗薬の投与量を使用することで、死亡および/または羅病の危険性が大幅に減少し、カリウム値に大きな変動を誘発しないか被検者のカリウム値の変動が小さいということを発見した。すなわち、驚くことに、アルドステロン拮抗薬を多量投与されたヒト以外の哺乳類動物では高カリウム血症の副作用は観測されなかった。逆に、生存率に関しては予想以上のより大きな効率が見られ、死亡および羅病の危険率も大きく減少することが示された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者の治療をするための、所定の薬量学に従って投与されるアルドステロン拮抗薬と、薬学的許容されるビヒクルとから成る新規な獣医学組成物にある。
【0013】
より正確には、アルドステロン拮抗薬の薬量学または効果的治療量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下で、一回当り1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または約4mg/kg/日である。この治療量は心不全用の標準治療薬、例えばIEC、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはサルタン(sartans))、ジギタリス(digitalic)医薬、イノトロプ(inotropes)、イノディラトール(inodilators)、利尿剤、血管拡張剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストの有効治療量と組合せることができる。
【0014】
本発明組成物はヒト以外の哺乳類動物、例えばイヌ、ネコ、ウマおよび一般には全てのペット動物の心不全の治療および/または予防に有用である。本発明組成物は高カリウム血症の副作用を引き起こさずに死亡および/または羅病の危険率を減らすことができる。本発明が定義する薬量学のスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトを投与したイヌは偽薬グループに対して死亡危険率が50〜80%、55〜80%、60〜80%、65〜80%、70〜80%、75〜80%だけ減少する。
【0015】
本発明のさらに他の対象は、心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者の治療用の獣医学キットにある。本発明キットはアルドステロン拮抗薬単独の有効量または心不全治療に関する標準薬、例えばIEC、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはサルタン(sartans))、ジギタリス(digitalic)医薬、イノトロプ(inotropes)、イノディラトール(inodilators)、利尿剤、血管拡張剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストの有効量を毎日の投与量に分離したものまたは分離しないものをいれる少なくとも一つの区画を有する。従って、この区画には1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下で一回の投与量が1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日のアルドステロン拮抗薬の毎日の投与量を含むことができる。
【0016】
本発明のさらに他の対象は、ヒト以外の哺乳類動物の心不全を、高カリウム血症副作用を引き起こさずに治療および/または予防し、および/または、死亡率および/または羅病率を低下させるための獣医学医薬製造での、アルドステロン拮抗薬の治療有効量またはそれとIEC、アンギオテンシンII AT−1-レセプターンタゴニスト、ジギタリス(digitalic)医薬、イノトロプ(inotropes)、イノディラトール(inodilators)、利尿剤、血管拡張剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストとを組合せたもの使用にある。アルドステロン拮抗薬の有効治療量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下で、一回の投与量は1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。
【0017】
本発明のさらに他の対象は、1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下で、一回の投与量が1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日の有効治療量のアルドステロン拮抗薬を投与することから成るヒト以外の哺乳類の心不全の初期段階での治療方法にある。
【0018】
本発明のさらに他の対象は、アルドステロン拮抗薬の治療有効量単独またはそれとIEC、アンギオテンシンII AT−1-レセプターンタゴニスト、ジギタリス(digitalic)医薬、イノトロプ(inotropes)、イノディラトール(inodilators)、利尿剤、血管拡張剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストとを組合せたもの投与することから成る心不全を患うヒト以外の哺乳類動物被検者の死亡率および/または羅病率を低下させる方法にある。アルドステロン拮抗薬の投与量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下で、一回の投与量が1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。本発明のこの対象では死亡の危険率は少なくとも50%減少する。好ましくは死亡の危険率は約80%〜50%、80%〜55%、80〜60%、80%〜65%、80%〜70または80%〜75%、例えば約80%、73%、67%、65%または59%低下する。この対象では罹病−死亡率は少なくとも40%または少なくとも46%減少する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ラベル化した22−14Cスピロノラクトンを2mg/kg/日の投与量で経口または経静脈でラット、イヌおよびサルに投与後、48時間後のスピロノラクトンの血漿濃度の半対数グラフ(黒○−黒○:全材料4C、黒Δ−黒Δ:材料14C酢酸エチル、黒口、黒口:カンレノン)。
【図2】スピロノラクトンを0.8mg/kg、2mg/kgおよび8mg/kgの投与量で投与した後のカンレノン濃度の時間に対する半対数グラフ。
【図3】ハイパーアルドステロン症の15匹のイヌにスピロノラクトンのみを単独投与した後の1日当りのスピロノラクトン投与量と([Na+]尿中×10[K+]尿中)ログ比の相対投与量/応答関係を表すグラフ。このグラフはスピロノラクトンによって0〜6時間以内にLog(NaxlO/K)比を元に戻すことができることを示している。
【図4】一群のイヌに経口でスピロノラクトン(2mg/kg/日)とIECとの組成物を投与したグループ(スピロノラクトングループ)と偽薬とCEとを投与した第2グループとで実施した臨床研究で14〜15ヵ月以上生存する確率を表すグラフ(p=0.Ol1)。スピロノラクトンによって死亡率の危険を65%だけ減らすことができる。
【図5】一群のイヌに経口でスピロノラクトン(2mg/kg/日)とCETとの組成物を投与したグループ(スピロノラクトングループ)と、偽薬とIECとを投与した第2のグループで実施した臨床研究での14〜15ヵ月後の死亡率を表すグラフ(p=O.0029)。
【図6】一群のイヌで経口でスピロノラクトン(2mg/kg/日)とIECとの組成物を投与したグループ(スピロノラクトングループ)と、偽薬とIECとを投与した第2のグループで実施した臨床研究で3年以上の生存確率を表すグラフ(p=O.017)。スピロノラクトンによって死亡の危険を59%だけ減らすことができる。
【図7】心不全段階Iで治療中の一群のイヌで経口でスピロノラクトン(2mg/kg/日)とIECとの組成物を投与したグループ(スピロノラクトングループ)と、偽薬とIECとを投与した第2のグループで実施した臨床研究で3.5年以上の生存確率を表すグラフ。
【図8】一群のイヌで経口でスピロノラクトン(2mg/kg/日)とIECとの組成物を投与したグループ(スピロノラクトングループ)と、偽薬とIECとを投与した第2のグループで実施した臨床研究での14〜15ヵ月に得られた羅病率-死亡率を表すグラフ。羅病率-死亡率は死亡、安楽死または心不全悪化で超さから除外したイヌの数を足して得た。
【図9】スピロノラクトン(2mg/kg/日)とCETとの組成物を投与したイヌのグループ(スピロノラクトングループ)を偽薬とCEとを投与したイヌのグループと比較した時に観測される血漿カリウム平均濃度またはカルシウムの変化を表すグラフ(p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者を治療するためのアルドステロン拮抗薬と薬学的に許容されるビヒクルとから成る新規な獣医学組成物に関するものであり、アルドステロン拮抗薬の有効治療量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下で、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日の間にあり、一回の投与量は好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日にする。
【0021】
本発明の他の対象は、アルドステロン拮抗薬と、心不全治療用の標準的治療剤、例えばたとえばIEC、アンギオテンシンII AT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはサルタン(sartans))、ジギタリス(digitalic)医薬、イノトロプ(inotropes)、イノディラトール(inodilators)、利尿剤、血管拡張剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストと、薬学的に許容されるビヒクルとを組合せた心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者の治療を目的とする新しい獣医学組成物にある。
【0022】
本発明でのアルドステロン拮抗薬はアルドステロンレセプターに結合可能な全ての薬剤(アルドステロンレセプターアンタゴニストともよばれる)を含み、従って、結合することによってミネラルコルチコイドの結合部とアルドステロン拮抗薬と競争作用する。アルドステロンインヒビターの例としてはステロイド核に結合したラクトン環を有するスピロノラクトン型の化合物が挙げられる。
【0023】
本発明の新規獣医学組成物はアルドステロン拮抗薬レセプターと、アンギオテンシン変換酵素インヒビター(IEC)と、薬学的に許容されるビヒクルとから成る心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者の治療で使用される。本発明組成物はアルドステロンレセプターアンタゴニストを有効治療量の約0.88〜5mg/kg/日、好ましくは約2mg/kg/日含む。本発明組成物はさらにIECを有効治療量の約0.1〜0.6mg/kg/日、好ましくは約0.25mg/kg/日含む。本発明では心不全を患うヒト以外の哺乳類動物の死亡率のおよび/または羅病率を減らすための獣医学医薬の製造で、治療有効量のアルドステロンレセプターアンタゴニストと、アンギオテンシン変換酵素インヒビターとを使用する。本発明の特徴はアルドステロンレセプターアンタゴニストの有効治療量が約0.88〜5mg/kg/日の範囲内、好ましくは約2mg/kg/日である点にある。心不全を患うヒト以外の哺乳類動物の死亡率のおよび/または羅病率を減らすための本発明方法ではアルドステロンレセプターアンタゴニストとアンギオテンシン変換酵素インヒビターとを有効治療量で投与し、アルドステロンレセプターアンタゴニストの毎日の投与量を約0.88〜5mg/kg/日、好ましくは約2mg/kg/日にする。
【0024】
本発明の治療法の効果は死亡率で観察できるが、死亡の危険率として表すこともできる。本発明では死亡の危険率が少なくとも50%減少し、死亡率は34%以上減少する。好ましくは、死亡の危険率は約80%〜50%、80%〜55%、80%〜60%、80%〜65%、80%〜70%、80%〜75%減少し、例えば約80%、73%、67%、65%または59%死亡の危険率は減少する。同様に、死亡率は約34%〜0%であり、例えば約34%、30%、20%、15%、9%、6%または0%である。この対象では罹病−死亡の危険性は少なくとも40%または少なくとも46%〜50%減少する。
【0025】
(上記のようにアルドステロンレセプター上で競争的に結合可能な)アルドステロンのアンタゴニストまたは競争インヒビターは下記にすることができる:
【0026】
(i)下記一般式(I)の化合物:

【0027】
(ここで、

【0028】
(Rは1〜5つの炭素原子を有する低級アルキル)

【0029】
上記の低級アルキルは直鎖でも直鎖でなくてもよい、好ましくはメチル、エチルおよびn-プロピル基である。
上記の式(I)に属するスピロノラクトン型化合物の例を下記に示す。これらの化合物の製造方法は公知であり、下記特許文献1(米国特許第US4,129,564号明細書に記載されている。
【特許文献3】米国特許第US4,129,564号明細書
【0030】
7α-アセチルチオ-3-オキソ-4,15-アンドロスタジエン-[17(β-1')−スピロ-5']ペルヒドロフラン-2'-オン、
3-オキソ-7α-プロピオニルチオ-4,15-アンドロスタジエン-[17(β-1')−スピロ5'] ペルヒドロフラン-2'-オン、
6β,7β-メチレン-3-オキソ−4,15-アンドロスタジエン-[l7(β-1')−スピロ-5'] ペルヒドロフラン-2'-オン、
15α,16α-メチレン-3-オキソ-4,7α-プロピオニルチオ-4−アンドロステン[17(β-1')−スピロ-5'] ペルヒドロフラン-2'-オン、
6β、7β、15α、16α-ジエチレン-3-オキソ-4-アンドロステン[17(β-1')−スピロ-5'] ペルヒドロフラン-2'-オン、
7α-アセチルチオ-15β、16β−メチレン-3-オキソ-4-アンドロステン−[17(β-1')−スピロ-5'] ペルヒドロフラン-2'-オン、
15β、16β-メチレン-3-オキソ-7ss-プロピオニルチオ-4-アンドロステン−[17(β-1')−スピロ-5'] ペルヒドロフラン-2'-オン、
6β,7β,15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-4-アンドロステン-[17(β-1')−スピロ-5'] ペルヒドロフラン-2'-オン、
10,13-ジメチルスピロ[2,8,9,11,12,14,15,l6-オクタヒドロ-1H-シクロペンタ[α]フェナントレン-l7,5-オキソラン]-2',3-ジオン(カンレノン)
【0031】
(ii)下記一般式(II)の化合物:

【0032】
(ここで、R1はCl〜C3アルキルまたはアシルであり、R2は水素またはC1〜C3アルキルである)
このファミリに属する化合物の例は1α-アセチルチオ−15β、16β−メチレン-7α−メチルチオ-3-オキソ-17α−プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンおよび15β、16β-メチレン−1α,7α-ジメチルチオ-3-オキソ-17α-プレグン−4-エン-21、17-カルボラクトンである。
【0033】
(iii)下記一般式(III)の化合物:

【0034】
(ここで、Rは低級アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびブチルである)
例としては下記が挙げられる:
3β、21-ジヒドロキシ-l7α-プレグナ-5,l5-ジエン-l7-カルボキシルy−ラクトン酸、
3β、21-ジヒドロキシ-l7α-プレグナ-5,l5-ジエン-l7-カルボキシルラクトン3-アセテート酸、
3β、21-ジヒドロキシ-l7α-プレグナ-5-エン-17-カルボキシルγ-ラクトン酸、
3β、21-ジヒドロキシ-l7α-プレグナ-5-エン-17-カルボキシルγ-ラクトン3-アセテート酸、
21-ヒドロキシ-3-オキソ-l7α-プレグナ-4-エン-17-カルボキシルγ-ラクトン酸、
21-ヒドロキシ-3-オキソ-l7α-プレグナ-4,6-ジエン-17-カルボキシルγ-ラクトン酸、
21−ヒドロキシ-3-オキソ-l7α-プレグナ1,4-ジエン-17-カルボキシルγ-ラクトン酸、
7α-アシルチオ-21-ヒドロキシ-3-オキソ-l7α-プレグナ-4-エン-17-カルボキシルγ-ラクトン酸、
7α-アセチルチオ-21−ヒドロキシ-3-オキソ-l7α-プレグナ-4-エン-17-カルボキシルγ-ラクトン酸、
【0035】
(iv) 下記一般式(IV)の化合物:

【0036】
(ここで、E'はエチレン、ビニレンおよび低級アルカノイルチオエチレンの中から選択される基であり、E''はエチレン、ビニレンおよび低級アルカノイルチオエチレンの中から選択される基であり、Rはメチル基であり、但し、E'およびE''がエチレン基の場合は除く)
【0037】
(v)下記一般式(V)の化合物:

【0038】
特に、1-アセチルチオ-7α-(2-カルボキシルエチル)-17β-ヒドロキシ-アンドロスト-4-エン-3-オンラクトンを挙げることができる。
【0039】
(vi) 下記一般式(VI)の化合物:

【0040】
例としては下記が挙げられる:
7α-アセチルチオ-17α-(2-カルボキシシエチル)-17β-ヒドロキシ−アンドロスト-4-エン-3-オン ラクトン、
7α-アセチルチオ-17α-(2-カルボキシシエチル)-17β-ヒドロキシ−アンドロスト-4-エン-3-オン ラクトン、
lα,7α-ジアセチルチオ-17α-(2-カルボキシエチル)-l7ss-ヒドロキシ−アンドロスト-4,6-ジエン-3-オン ラクトン、7α-アセチルチオ-17α-(2-カルボキシエチル)-17β-ヒドロキシ-アンドロスト-1,4-ジエン-3-オン ラクトン、7α-アセチルチオ17α-(2-カルボキシエチル)-17β-ヒドロキシ-19-ノアンドロスト-4-エン-3-オン ラクトン、
7α-アセチルチオ-17α-(2-カルボキシエチル)-17β-ヒドロキシ-6α-メチルアンドロスト-4-エン-3-オン ラクトン
【0041】
(vii)下記一般式(VII)の化合物:

【0042】
例としてはカリウム3-[(8R,9S,10R,13S,14S,17R)-l7-ヒドロキシ-l0,13-ジメチル-3-オキソ-2,8,9,11,12,14,15,16-オクタヒドロ-1H-シクロペンタ[α]フェナントレン-17-イル]プロパノエート(カネロエート(caneroate))を挙げることができる。
【0043】
本発明の獣医学組成物はアルドステロン拮抗薬としてスピロノラクトンまたはエプレノノン(eplerenone)を含むのが好ましい。本明細書でスピロノラクトンおよびエプレノノン(eplerenone)という用語はこれらの化合物の誘導体またはメタボライトを含む。本発明で使用するスピロノラクトンは上記(I)に属する17-ラクトンの合成ステロイド化合物であるのが好ましい。さらに好ましくは7α-アセチルチオ-3-オキソ-17α-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンを使用する。スピロノラクトンはヒト用医学で周知のもので、アル濁トン(Aldactone、登録商標)、ノボ−スピルトン(Novo-Spiroton、登録商標)、スピラクラン(Spiractin、登録商標)、スピロトン(Spirotone、登録商標)およびベルラクトン(Berlactone、登録商標)の商品名で市販されている。一般化学式は以下の通り(http://www.chemblink.com):
【0044】

【0045】
エプレルノン(Eplerenone)(エポキシメクセレノン(epoxymexrenone)ともよばれる)はエポキシ誘導体:9,11-エポキシ−スピロラクトン(米国特許第US 4,559,332号明細書)である。完全な化学名はプレグン-4-エン-7,21-ジカルボン酸、9,11-エポキシ-17-ヒドロキシ-3-オキソ,γ-ラクトン メチルエステル(7α、11α、17α)である。ヒト医学では特にインスプラ(Inspra、登録商標)の名称で市販されている。一般式は下記の通り(http://www.chemblink.com):
【0046】

【0047】
本発明でスピロノラクトンとはこの化合物そのものと、その誘導体および/またはそのメタボライト(代謝産物)を含むものである。スピロノラクトンの誘導体の例としてはスピロノラクトンの光学活性異性体、スピロノラクトンのモノまたはビス-シクロプロピル誘導体またはエポキシ誘導体、例えば9α,11α-エポキシスピロノラクトンまたはエプレルノン、より一般的には活性スピロノラクトンの全ての官能化誘導体すなわち本発明のスピロノラクトンの治療活性を有するものを挙げることができる。スピロノラクトンのメタボライトの例としてはカンレノン、カンレン酸、15β-OHカンレノン、21-OH-カンレノン、カリウムカンレノエート、7α-チオ−スピロノラクトン、7α-チオメチル−スピロノラクトンまたは6-β-ヒドロキシ-7-α-チオメチルスピロノラクトンを挙げることがてきるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
スピロノラクトン型化合物、例えばスピロノラクトン、エプレルノンまたはこれら化合物の誘導体またはメタボライトはヒトの心不全の治療で従来から使用されていた投与量より多量に投与される。この投与量はヒトの患者では一般に利尿および高カリウム血症の副作用がある投与量とされている量である。本発明者は、ヒトで利尿効果が生じる量と全く同じ投与量のスピロノラクトン型化合物をヒト以外の哺乳類動物に投与した時には、ヒトで観測されるのとは逆に、ヒト以外の哺乳類動物で構成される亜種患者グループでは高カリウム血症の副作用は誘発されないということを発見した。
【0049】
本発明のアルドステロン拮抗薬としてのスピロノラクトンまたはエプレルノンまたはこれら化合物の誘導体またはメタボライトを含む組成物は、それを所定の薬学量に従って投与した時にヒト以外の動物、例えばイヌおよび/またはネコの心不全、特に病気の初期段階の特に心不全の治療および/または予防に特に有用である。本発明組成物は病気の動物に水腫が見られる前に投与するのが好ましい。
【0050】
ヒトで従来使用されてきたスピロノラクトンの投与量は約1〜25mg/日で、一日の平均投与量は12.5mg/日でなり、高カリウム血症を引き起こさないようにするために決して50mg/日を超えてヒトに投与してはならなかった。多くの場合、ヒトの投与量は薬物動態学のような種々の生理パラメータを考慮して相対(allometric)外挿法によって動物にも適用される。現在使用されている相対外挿式は下記である:
【0051】
Log(Cl)=0.5408×Log(BW)−0.2764
(ここで、BW=体重である)
これから、クリアランス(Cl)または物質の原形質精製係数すなわち単位時間に所定体積の動脈血漿が所定物質を完全に除去する能力は下記の式で推論される:
Cl=0.5291×BW0.5408
この相対式を用いて重量が70kgおよび10kgのヒトおよびイヌのそれぞれのクリアランスが計算される。クリアランスの計算結果は[表1]に示してある。
【0052】
【表1】

【0053】
式:投与量イヌ=(投与量ヒト×Clイヌ)/Clヒトに従って計算したイヌ(投与量mg/kg/日)で推定される体重が12.5mg、25mg、50mgおよび75mgの投与量(ヒトの患者用投与量mg/日)は[表2]に示してある。
【0054】
【表2】

【0055】
本発明による、高カリウム血症の副作用なしの、ヒト以外の哺乳類動物のアルドステロン拮抗薬の治療有効量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下であり、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg、好ましくは25mg/kg/日であり、さらに好ましくは一回の投与量は約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。
【0056】
すなわち、アルドステロンレセプターアンタゴニストの遷移的副作用無しでのヒト以外の哺乳類動物の治療有効量は約0.88〜5mg/kg/日または約1〜5mg/kg/日または約1〜4mg/kg/日または約1〜3mg/kg/日、好ましくは約2mg/kg/日または約4mg/kg/日である。
【0057】
スピロノラクトンのこの投与量はヒトにおいて利尿作用がある量として一般に確立されており、従って、治療すべきヒトの患者に強い高カリウム血症の副作用を生じさせるため、ヒトではこれ単独またはIECと一緒に使用することはできない量であり、心不全の望ましい治療法とは相容れないものである。
【0058】
驚くことに、この1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下、24時間毎、単一投与で2〜5mg/kg/日、好ましくは1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日という高いスピロノラクトンの投与量でヒト以外の哺乳類動物には高カリウム血症類似の副作用を誘発しないか、わずかな高カリウム血症を誘発するだけである。すなわち、ヒト以外の哺乳類動物を本発明組成物で治療すると、循環カリウム量は実質的に一定であるか、少なく、一時的に5.9〜6.4mmol/Lまたは6.5〜7.5mmol/Lに増加するが、常に7.5mmol/L以下の濃度である。実施例で示すように、ヒト以外の哺乳類動物の治療で重大な高カリウム血症の副作用は観測されなかった。
【0059】
アルドステロン拮抗薬、例えばスピロノラクトン、エプレルノンまたはこれらの化合物の誘導体またはメタボライトの投与量は重量を関数にした治療すべき各哺乳類に適した本発明が定める薬学量である1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、さらに好ましくは単一回の投与で約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。
【0060】
本発明に従ってスピロノラクトンのようなアルドステロン拮抗薬を24時間当り単一回の高い投与量で投与しても経口投与後4時間にはスピロノラクトンの血漿濃度は急速に低下する([図1])。アルドステロン拮抗薬、例えばスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトは病気の動物に食事時または食品と混合してまたは食後に直接経口で一日に一回、単一回で与えるのが好ましい。本発明組成物は心不全の初期段階およびこの病気の動物に水腫が見られる前に投与するのが好ましい。本発明で治療した動物には高カリウム血症の副作用は観測されない。
【0061】
以下の実施例で示すように、ヒト以外の動物、例えばイヌにスピロノラクトンの毎日の最適投与量が決定される。驚くことに、この投与量はヒトの患者を治療するの現在使われる投与量よりはるかに多い。この最適投与量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日であり、ヒト以外の動物の治療には6または7mg/kg/日までであり、最大は8mg/kg/日にすることができる。
【0062】
スピロノラクトンのこの新しい薬学量の使用によって心不全モデルを生じるアルドステロン過剰症によって誘発される血漿ナトリウム/カリ比を元に戻すことができる。また、スピロノラクトンのこの新しい薬学量の使用によって生理的な尿のナトリウムおよびカリウムの濃度([Na+尿×10/[K+]尿])をノーマルな割合へ戻すことができる。本発明のスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの非毒性な治療有効量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以上である1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、log比([Na+尿×10/[K+]尿])をノーマルにし、ヒト以外の動物の主要な疾患である心不全を治療および/または予防するために、より好ましくは動物へ単一回の投与で24時間毎に約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。
【0063】
本発明に従ってスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物を単一回の投与でかつ1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下である1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日の投与量で投与することは、心不全を患ったヒト以外の動物を高カリウム血症の副作用なしに治療するの特に有用である。心不全に至る心臓障害は先天的心臓障害または後天的心臓障害の2つのカテゴリに分けることができる。前者は先天的心臓奇形である。この先天的疾患とは違って後天的心臓障害は動物の年齢の一般に後期段階(>6〜8年)に現れる。その原因は種々あるが、退行性弁膜症(MVD)および拡張型心筋症(CMD)の2つの症状はイヌに明らかに多い。
【0064】
MVDは弁心内膜症、弁障害または弁疾患ともよばれ、イヌの心臓障害の80%にもなる。MVDの特徴は房室弁の変質(主として僧帽弁、混合症状も場合もある)により、心室心収縮期に密封性の欠陥が生じることにある。組成物の結果、血液が心房に戻り、心収縮期の吐出量が低下し、心房中が過剰容積になる。弁の傷害が進行すると、腱索が攻撃され、破断され、それによって弁の漏れを引き起して生命の危険に曝される。MVDを検出する第1の方法は聴診法である、僧帽の漏れがあるとざわめき(心収縮期)が起る。その強度は吐出の強さと関係する。心エコー検査法もよく使われる。症状が進行すると心房性拡張が最初に観測され、次に心室拡張が観察される。この段階で心収縮期の機能が非常に早くなる。僧帽弁が当ると先ず最初に左側に心不全が起こり、症状が進行かた段階では左右全体になる。補償機構が徐々に働き、うっ血心不全(Congestive Heart Failure、CHF)が比較的早期に始まり、CHFが左側の場合には肺の水腫および高血圧が誘発され、右心不全の場合には腹水が生じる。MVDの進行は月または年で数える。
【0065】
CDMはヒト以外の動物のイヌまたはネコの主たる心筋疾患である。その従来形では心臓空間の壁が薄くなり、心室心筋が膨張する。心収縮期の機能障害は早くかつ激しい。CMDは一般に極めて速く進行し、ICCを伴う。スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物はネコ科心筋肥大症(CMDまたは拡張型心筋症および/またはCMHまたは心筋肥大症)であるネコの疾患の予防および/または治療に使用できる。心筋肥大症は心室心筋の肥厚によって心室キャビティの容積が徐々に減る特徴がある。心室キャビティが受け入れる血液容積も減少する。その結果、CMDでは鬱血性心不全(ICC)が誘発される。
【0066】
本発明によるスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物を上記投与量で使用することは特に吐出弁での鬱血性心不全を患うヒト以外の哺乳類動物の治療で有用である。上記のように心臓弁に欠陥が生じ、心臓が十分に他の器官へ血液を送ることができなくなる。血液は静脈中によどみ、血漿液が組織中に拡散し、水腫および溢血が起きる。
【0067】
ヒト以外の哺乳類動物とは一般に全ての哺乳類種を意味する。本発明組成物はペット、例えばイヌ、ネコおよびウマを対象にするのが好ましい。
【0068】
スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトのようなアルドステロン拮抗薬の高投与量は、心不全治療のための標準的治療法と一緒に使用される。スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物は鬱血性心不全の標準的治療法と一緒に使用するのが好ましい。
【0069】
本発明で心不全の標準的な治療法とはIEC、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはsartans)、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、血管拡張剤、利尿剤、ジギタル(digitalic)医薬、β遮断剤およびカルシウムアンタゴニストを意味する。
【0070】
本発明の好ましい実施例では、スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物はIECと一緒に使用される。IECとしては特にベナゼプリル(benazepril)、エナラプリル(Enalapril)、カプトプリル(Captopril)、シラザプリル(cilazapril)、フォシノプリル(fosinopril)、イミダプリル(imidapril)、リシノプリル(Lisinopril)、モエキシプリル(moexipril)、ペリンドプリル(perindopril)、キナプリラ(quinaprilat)、ラミプリル(ramipril)、スピラプリラ(spirapril)トランドラプリル(trandolapril)を挙げることができる。本発明組成物ではスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトと一緒にベナゼプリル(benazepril)またはエナラプリル(Enalapril)を用いるのが好ましい。この組成物弟子用するアンギオテンシン変換酵素インヒビターの治療有効量は約0.1〜0.6mg/kg/日であり、ベナゼプリル(benazepril)は約0.25のmg/kg/日、エナラプリル(Enalapril)は約0.5mg/kg/日で使用するのが好ましい。
【0071】
また、本発明のスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物はアンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンのタゴニスト(ARA−IIまたはsartansともよばれる)と一緒に使用できる。これらの化合物はアンギオテンシンのAT−1レセプターの所でアンギオテンシンIIの競合阻害剤として働き、AT−1レセプターの所でアンギオテンシンIIの作用をブロックする。この化合物の例としてはカンデサルタン(candesartan)、カンデサルタン シレクスティル(candesartan cilexetil)、プロサルタン(prosartan)、イルベサルタン(irbesartan)、ロサルタン(losartan)、ロサルタンのカリ塩、オルメサルタン(olmesartan)、テルミサルタン(telmisartan)またはヴァルサルタン(valsartan)を挙げることができる。これらは本発明と組合せて治療有効量で使用される。
【0072】
本発明の他の好ましい実施例の組成物は、薬量学に従った毎日単一回の上記定義の治療有効量のアルドステロン拮抗薬、例えば、スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトと一緒に、治療有効量のイノトロープ(inotropes)またはイノジラトール(inodilators)、例えばたとえばピモベンダン(pimobendane)またはレボシメンダン(levosimendane)を含む。ピモベンダンは下記化学構造として知られる4,5-ジヒドロ-6[2-(4-メトキシフェニル)-1H-ベンズイミダゾール-5-イル]-5-メチル-3(2H)-ピリダゾンに対応する:
【0073】

【0074】
ピモベンダンは米国特許第4,361,563号明細書および欧州特許第EP008391号公報に記載されており、Boehringer Ingelheim 社からVetmedinRの名称で市販されている。これはその作用機構(カルシウム感受化剤およびホスホジエステラーゼIIIの抑制剤)からイノトロプ(inotrope)ポジティブ(収縮性増加)、ルシトロープ(lusitrope)ポジティブ(緩和改善)、動脈血管拡張性(ポスト充填減少)、静脈性(プレ充填減少)かつ冠状動脈性(心筋酸素出産改善)である。そのイノトロプ(inotrope)ポジティブな作用(カルシウムに対するトロポニンの親和性の増加)から、心筋エネルギーの使用量を増加せずに作動する。血管拡張性効果は強くかつ直接的である(血管平滑筋細胞のAMPcの劣化を抑制する)。ピモベンダンの治療有効量を経口投与で本発明組成物と一緒に投与する。この投与量は例えば2mg/kg/日、好ましくは約0.25〜約0.5mg/kg/日である。
【0075】
欧州特許第EP383449号公報にイノディレイター(inodilator)として記載の下記化学構造を有する[{4-(1,4,5,6−テトラヒドロ-4-メチル-6-オキソ-3-ピリダジニル)フェニル]ヒドラゾノ]プロパンニトリルに対応するレボシメンダン(Levosimendane)も挙げることができる:
【0076】

【0077】
このレボシメンダンは経口または注射で投与できる。本発明組成物でレボシメンダンの治療有効量を使用する。その投与量は0.025〜0.5mg/kg/日で、投与方法に従って選択される。例えば、経口投与の場合の治療有効量は2回の投与で0.1mg/kg 〜0.2mg/kg(朝晩に0.05〜0.1mg/kg)である。
【0078】
本発明組成物は薬量学に従った上記の治療有効量のアルドステロン拮抗薬、例えばスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトと、治療有効量のピモベンダン(pimobendane)またはレボシメンダン(levosimendane)のようなイノトロプ(inotrope)またはイノディレイター(inodilator)およびベンザプリル(benazepril)またはエナラプリルのようなIECとを一緒に含むのがさらに好ましい。これらの組成物はネコのMVD、イヌおよびネコのCMD、イヌのCMHの治療および/または予防に対して特に有効である。
【0079】
スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトのようなアルドステロン拮抗薬の本発明組成物は血管拡張剤、例えばニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリンまたはイソソルビド硝酸塩および/または利尿剤、例えばフロセミド、ブメタニド、トラセミドまたはチアジド系(thiazidic)医薬品、例えばクロロチアジドまたはヒドロクロロチアジドと一緒に投与できる。利尿剤は著しいうっ血性兆個(肺の水腫、腹水等)がある場合に必要最少投与量で使用する。本発明組成物を利尿剤と一緒に投与する場合には、後者はフロセミドを4〜8mg/kg/日の投与量で投与するのが好ましい。
【0080】
スピロノラクトンの、その誘導体または以前に記載されているそのメタボライトようなアルドステロン拮抗薬組成物は心不全に使われている他の治療法、例えばジギタリス(digitalic)医薬品、例えばジゴキシンや、心不全のための標準治療薬、特に、上室アリトミー(artyhmias)の治療、特に心房性フィブリル化の治療薬と一緒に投与できる。
【0081】
心不全用のこれら普通の治療薬の毎日の投与量を心不全を患うヒト以外の哺乳類に本発明組成物と一緒に投与できる。
【0082】
本発明組成物はイヌの弁疾患(MVD)、イヌおよびネコの拡張型心筋症(CMD)の退行性、ネコの肥大性心筋症(CMH)の治療および/または予防に利用される。特に、心不全を患うヒト以外の動物の治療に適している。
【0083】
治療有効量または活性量とは血漿中のナトリウム/カリウム比を元に戻すことができ、および/または、死亡率および/または羅病率の速度を大きく減少させることができる量を意味する。また、活性治療量とは組合せによって充分な治療効果を生じ、従って、死亡率および/または羅病率が減少する量を意味する。
【0084】
本発明を使用すると、観測される死亡率の危険は少なくとも50%減少する。さらに、この死亡率の危険は約80%〜50%、80%〜55%、80%〜60%、80%〜65%、80%〜70%、80%〜75%、例えば約80%、73%、67%、65%または59%減少する。特に早期段階の心不全の動物に対して高い保護効果がある。罹病率−死亡率の危険は少なくとも40%または少なくとも46%減少する。
【0085】
スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物を24時間に一回投与するか、および/または、IEC、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはsartans)、ジギタリス(digitalic)医薬品、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、血管拡張剤、利尿剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストの治療有効量と一緒に投与することでヒト以外の哺乳類動物の心不全の治療および/または予防に効率的である。本発明組成物は特に、弁吐出鬱血性心不全の治療に効率的である。すなわち、特に、弁吐出鬱血性心不全を患うイヌに標準的治療薬と一緒にスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの組成物を上記薬学量で一回投与することで、標準的治療薬のみを投与したイヌに比べて生存期間が長くなることが示されている。この薬量学的効果は長期的な治療、例えば15ヵ月〜36ヵ月以上も続くであろう。事実、ヒト以外の動物の心不全は標準治療のみを受けたイヌより長期にわたって悪化がしないということが証明されている。
【0086】
ヒト以外の哺乳類動物はスピロノラクトンと治療有効量のベナツェプリル(benazepril)とを摂取するのが好ましい。これらは各動物の治療に適した例えば経鼻、経口および非経口の周知の投与方法で順次または同時に投与することができる。本発明方法を使用することで心不全を患った被検者、特にペット、例えばイヌ、ネコまたはウマを治療することができる。本発明の実施例に従った方法で心不全の疾患のあるイヌの治療を行なう場合、アルドステロンレセプターアンタゴニストを毎日の投与量を0.88〜5mg/kg/日、好ましくは、2mg/kg/日とし、アンギオテンシン変換酵素インヒビターの毎日の投与量を0.1〜0.6mg/kg/日、好ましくは約0.25mg/kg/日にする。本発明の実施例に従った方法で心不全の疾患のあるネコの治療を行なう場合、アルドステロンレセプターアンタゴニストのを毎日の投与量を0.88〜5mg/kg/日、好ましくは、2mg/kg/日とし、アンギオテンシン変換酵素インヒビターの毎日の投与量を0.1〜0.6mg/kg/日、好ましくは約0.25mg/kg/日にする。本発明の実施例に従った方法で心不全の疾患のあるウマの治療を行なう場合、アルドステロンレセプターアンタゴニストを毎日の投与量を0.88〜5mg/kg/日、好ましくは、2mg/kg/日とし、アンギオテンシン変換酵素インヒビターの毎日の投与量を0.1〜0.6mg/kg/日、好ましくは約0.25mg/kg/日にする。上記と同様に、投与は同時または順次に行なうことができる。
【0087】
本発明組成物または獣医学医薬は任意の投与モード、例えば経鼻、経口、皮内、経皮または非経口で投与できる。従って、経鼻、経口、注射用の液体懸濁液または溶液の形や、固体、半固体、粉末、ペレット、カプセル、顆粒、糖衣錠、ゼリー、噴霧剤、ピル、錠剤、ペースト、注入剤またはゲルにすることができる。
【0088】
使用する組成物および医薬品の調合法に従って、皮内、経皮、経鼻、経口、非経口投与用の液体または固形物の調合物を製造する方法で通常使用される成分をさらに含むことができる。すなわち、本発明組成物は調合法に応じて、流動化剤、滑剤、賦形剤、例えばラクトース、セルロースまたはデンプン等を含むことができる。滑剤としてはステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、L-ロイシンまたはグリセリントリベヘネート等が挙げられる。壊変剤としてはカルボキシメチルアミドンナトリウム、架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウムまたは架橋したポリビニルピロリドンを使うことができる。流動化剤としては純粋シリカまたはコロイド状二酸化珪素を使うことができる。
【0089】
経口投与薬の形は即溶解性ペレットまたは本発明組成物に発泡剤を加えて得られる発泡剤または被覆ペレットにすることができる。発泡剤としては酒石酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸および重炭酸ナトリウムを使用することができる。
【0090】
本発明組成物をペレットの形にした場合、スピロノラクトンを例えば10mg、40mgまたは80mg含むペレットにする。このペレットを分割可能にして毎日、単一回で本発明の薬量学に合うように切断できるようにするのが好ましい。
【0091】
注射用製薬物は治療有効量のアルドステロン拮抗薬と例えばIECおよび/またはイノトロープ(inotropes)またはイノジラトール(inodilators)と、pH調節剤、緩衝剤、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤とを混合し、得られた混合物を従来法に従って経静脈、経皮、皮下、筋肉内または潅流に適した形にすることで得られる。注射用薬剤は従来法に従って凍結乾燥できる。懸濁剤の例はメチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウレートである。可溶化剤の例はポリオキシエチレンで固化したひまし油、ポリソルベート80、ニコチンアミド、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウレート、カースト油の脂肪酸のマクロゲルおよびエチルエステルである。安定化剤は亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよびエーテルである。防腐剤の例はメチルフェニルベンゾエート、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸、フェノール、クレゾールおよびクロロクレゾールである。強健剤の例はマンニトールである。注射可能医薬の懸濁液または溶液を製造する場合は等張液であるのが望ましい。
【0092】
本発明の他の対象は、心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者の治療を目的とする獣医が使用するキットにある。このキットは殺菌済みまたは未殺菌の分離したまたは分離していない少なくとも一つの包装用区画を有し、この区画にはアルドステロン拮抗薬の毎日の投与量または連続投与量と、心不全治療の標準薬、例えばIEC、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはsartans)、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、血管拡張剤、利尿剤、ジギタル(digitalic)医薬、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストが収容される。すなわち、この区画には1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以上、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日のアルドステロン拮抗薬の毎日の投与量と、および/または、アンギオテンシン変換酵素インヒビターの毎日の投与量である約0.1〜0.6mg/kg/日、ベナゼプリルの場合は約0.25mg/kg/日、エナラプリルの場合は0.5mg/kg/日、ピモベンダンの場合は約0.25〜2mg/kg/日、および/またはヘベシメンダンの場合は約0.025〜0.5mg/kg/日とが収容される。
【0093】
この実施例に従ったキットは各被検者に対する少なくとも一日一回の同時または順次の薬量学の投与を容易にする。さらに、本発明キットは殺菌済みまたは未殺菌の分離したまたは分離していない経口、経鼻、皮内、経皮、非経口投与用包装物と、調合物の投与手段とを含んでいる。本発明キットはさらに、操作方法および調合物の投与モードに関する指示書を含んでいる。
【0094】
上記組成物のアルドステロン拮抗薬および心不全の標準治療薬、例えばIEC、アンギオテンシンIlのAT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-Ilまたはsartans)、ジギタル(digitalic)医薬、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、利尿剤、血管拡張剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストは経鼻、経口、皮内、経皮、非経口で同時または順次に投与される。治療されるヒト以外の哺乳類動物への適切な投与量はイヌ、ネコまたはウマのために上記で例示した通りである。
【0095】
本発明はさらに、高カリウム血症の副作用を引き起こさない、代償全性心不全を患うヒト以外の動物の予防および/または治療用獣医医薬の製造での、アルドステロン拮抗薬、例えばスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの治療有効量の使用に関するものである。この場合、アルドステロン拮抗薬の毎日の投与量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下で、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは一日一回で約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。本発明組成物はヒト以外の動物の心不全の初期段階、特に水腫開始期の前に投与するのが好ましい。
【0096】
本発明はさらに他の対象は、高カリウム血症の副作用を起こさない、心不全を患うヒト以外の哺乳類動物の死亡率および/または羅病率を減らすための獣医用医薬の製造での治療有効量のアルドステロン拮抗薬と、標準治療薬、例えばIEC、アンギオテンシンII AT−1-レセプターンタゴニスト)(ARA-Ilまたはsartans)、ジギタル(digitalic)医薬、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、利尿剤、血管拡張剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストとの使用にある。上記アルドステロン拮抗薬の一日の投与量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下であり、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日)、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは一日一回、約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。
【0097】
アルドステロン拮抗薬は上記のものであり、好ましくはスピロノラクトンまたはエプレノンおよびこれら化合物の誘導体またはメタボライトの中から選択する。心不全の標準的治療薬は上記のものであり、IEC、アンギオテンシンII AT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはsartans)、ジギタリス(digitalic)医薬品、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、血管拡張剤、利尿剤、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストの中から選択できる。IECの例はアラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル(delapril)、エナラプリル(Enalapril)、エナラプリラート(enalaprilat)、フォシノプリル、フォシノプリラート(fosinoprilat)、イミダプリル、イドプリル(idrapril)、リシノプリル、ペリンドプリル(perindopril)、キナプリラート(quinaprilat)、ラミプリル、サララシンアセテート、ペリンドプリラート(perindoprilat)、テンポカプリル(temocapril)、トランドラプリル、セラナプリル(ceranapril)、モエキシプリル、クイナプリラート(quinaprilat)、スピラプリラおよびこれらの化合物の薬学的に許容される塩またはエステルである。好ましくはベナゼプリルとその誘導体、例えばベナゼプリルクロロハイドレートおよび/またはエナラプリルを使用する。
【0098】
本発明の実施例を使用することによってヒト以外の哺乳類動物、特にペット、例えばイヌ、ネコまたはウマの治療用獣医学医薬の製造できる。この使用によって特にイヌのMVD、イヌおよびネコのCMDおよびネコのCMHを治療するための獣医学的医薬が製造できる。
【0099】
この獣医学的医薬をイヌの治療に使用する場合のアルドステロン拮抗薬の毎日の投与量は1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、さらに好ましくは一日一回約2mg/kg/日または4mg/kg/日である。アンギオテンシン変換酵素インヒビターの毎日の投与量は0.1〜0.6mg/kg/日、ベナゼプリルの場合は好ましくは約0.25mg/kg/日、エナラプリルの場合は好ましくは0.5mg/kg/日である。これらはさらに、ピモィンダン(pimobendane)またはレボシメンダン(levosimendane)のようなイノトロープ(inotrope)の治療有効量を含んでいてもよい。ピモィンダンの場合の治療有効量は例えば0.25〜2mg/kg/日であり、レボシメンダンの場合の治療有効量は例えば0.025〜0.5mg/kg/日である。
【0100】
既に述べたように、ペットの治療用獣医学組成物および医薬は所望の投与形態に従って経鼻、経口、皮内、経皮、非経口で投与できる。すなわち、経口および注射用液体溶液の形、懸濁液の形、固体、半固体形、粉末、ペレット、カプセル、顆粒、糖衣錠、被覆ピル、ゼリー、噴霧薬、ピル、錠剤、ペースト、インプラントまたはゲルにすることができる。
【0101】
本発明のさらに他の対象は、上記薬量学に従って一日一回スピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトのようなアルドステロン拮抗薬の組成物を投与することから成る、高カリウム血症の副作用も引き起こさない、非代償障害性心不全を患うヒト以外の動物を治療および/または予防方法にある。本発明の治療方法は心不全の初期段階、従って治療すべきヒト以外の動物の水腫が始まる前に上記組成物を投与するのが好ましい。
【0102】
本発明のさらに他の対象は、心不全、特にイヌのMVD、イヌおよびネコのCMDおよびネコのCMHを患うヒト以外の動物にスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトのようなアルドステロン拮抗薬の組成物を心不全の標準的治療薬と一緒に本発明の薬量学に従って一日一回投与することから成る治療方法にある。
【0103】
本発明のさらに他の対象は、治療有効量のアルドステロン拮抗薬単独またはそれとIEC、、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト(ARA-IIまたはsartans)、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、血管拡張剤、利尿剤、ジギタル(digitalic)医薬、β遮断剤およびカルシウムアンタゴニストと一緒に投与することから成る、心不全を患うヒト以外の哺乳類動物被検者の死亡率および/または羅病率の速度を低下させる方法にある。本発明ではアルドステロン拮抗薬を毎日一回1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg、好ましくは2〜5mg/kg/日、さらに好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日で投与することで、観測される死亡率は少なくとも50%減少する。より好ましくは死亡率は約80%〜50%、80%〜55%、80%〜60%、80%〜65%、80%〜70%、80〜75%、例えば約80%、73%、67%、65%または59%減少する。この保護効果は病理学的に早期段階の心不全を患う動物で特に高い。
【0104】
この実施例では羅病率−死亡率は少なくとも40%または少なくとも46%減少する。また、本発明の治療方法では高カリウム血症の副作用は生じない。本発明の治療方法ではアルドステロン拮抗薬は単独で使用するか、心不全の標準的な治療薬と一緒に使うことができる。このの標準的な治療薬は約0.1〜0.6mg/kg/日の投与量で使用でき、ベナゼプリル(benazepril)では約0.25mg/kg/日、エナラプリルでは約0.5mg/kg/日、ピモィンダン(pimobendane)では0.25〜2mg/kg/日、レボシメンダン(levosimendane)では約0.025〜0.5mg/kg/日の量にすることができる。
【0105】
本発明方法ではアルドステロン拮抗薬と心不全の標準的治療薬とを使用できる。好ましくはスピロノラクトンまたはプレノンおよびこれら化合物の誘導体またはメタボライトをIECと一緒に使用できる。このIECの例はアラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、フォシノプリラート、イミダプリル、イドプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、キナプリラート、ラミプリル、サララシンアセテート、ペリンドプリラート、テンポカプリル、トランドラプリル、セラナプリル、モエキシプリル、クイナプリラート、スピラプリラおよびこれらの化合物の薬学的に許容される塩またはエステルである。
【0106】
ヒト以外の哺乳類動物にはスピロノラクトン、その誘導体またはそのメタボライトの治療有効量と、ベナゼプリル、エナラプリルおよび/またはピモィンダンおよび/またはレボシメンダンを投与するのが好ましい。これらは各動物の治療に適した周知の任意の方法、例えば鼻でありえる、経口、皮内、経皮、非経口で順次または同時に投与できる。
【0107】
本発明方法を用いて心不全の疾患の動物、特にペット、例えばイヌ、ネコまたはウマを治療できる。
【0108】
この実施例の方法ではMVDまたはCMDのイヌに一日一回、アルドステロン拮抗薬を0.88〜5mg/kg/日または1〜1.5mg/kg/日、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日または2〜5mg/kg/日、好ましくは約2mg/kg/日投与し且つそれと一緒にIECのような標準的治療薬を0.1〜0.6mg/kg/日および/またはイノトロープ(おinodilator)、例えばピモベンダンを投与する。ピモベンダン治療有効量は例えば0.25〜2mg/kg/日である。
【0109】
この実施例方法でネコのCMDまたはCMHを治療するときのアルドステロン拮抗薬を単独で毎日一回1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、さらに好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日で投与するか、それと一緒にICEを0.1〜0.6mg/kg/日、ピモィンダンでは0.25〜2mg/kg/日の投与量で投与する。CMHの疾患のあるネコの治療では本発明に従って一日一回、アルドステロン拮抗薬を1mg/kg/日以上且つ5mg/kg/日以下、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、さらに好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日投与し、それと一緒にIECを例えば0.1〜0.6mg/kg/日の投与量で投与する。
【0110】
上記の投与は個別に行なうか、同時または順次に行なうことができる。また、本発明方法で投与される上記組成物は上記した種々の形、例えば液体溶液、懸濁液、固形物、粉末、ペレット、カプセル、顆粒、糖衣錠、ピル、ゼリー、噴霧剤、ピル、錠剤、ペースト、注射液、ゲル、半固体にすることができる。
【実施例】
【0111】
実施例1
ラベルル化したスピロノラクトン(22−14Cスピロノラクトン)を使用し、種が異なるラット、イヌおよびサルに経口投与した時のスピロノラクトンの薬理学的研究を行なった。結果は[図1]に対数関数曲線の形で示してある。スピロノラクトンを経口投与した後の4時間後に血漿中の放射活性の上昇百分比が上がることを示している:ラット(66%)、イヌ(76%)、サル(33%)。
【0112】
ヒトの患者を治療するの使われる投与量とは逆に、イヌ、ネコ、ウマのようなペットの心不全の治療するためのスピロノラクトンの最適投与量は2mg/kg/日の近くであることを本発明は発見した。スピロノラクトン治療後にアルドステロンに起因する対数関数値([Na+尿×10/[K+尿)の変化が測定された。
【0113】
この研究では研究開始時の体重が11.9〜14.3kgの健康な1才以下のビーグル犬(n=15)を使用した。各ビーグル犬には予め簡単な入れ墨を入れて識別が容易にできるようにし、ステンレス製個体ボックスに入れた。室温は17〜21℃、湿度は45〜65%の間に維持した。部屋は12時間暗闇にし、12時間明るくした。
【0114】
抗アルドステロン活性はHofinan L.M et al. (1975), The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics. 194, 450-456に記載のモデルを使用して評価した。この実験モデルではスピロノラクトンペレット(10mg、40mgまたは80mg)を経口投与した直後にアルドステロンを注入する。アルドステロン単独でのナトリウム利尿効果を調べるために事前の研究でED80値を求めた。0.3μg/kg、1μg/kgおよび3μg/kgと投与量を増やして投与したアルドステロンの存在下で全ての動物にビヒクル(対照グループ)を服用させた。各投与間には少なくとも48時間の間隔を開けた。この事前研究の終わりにアルドステロンの最適投与量である3μg/kgを選択した。これは心不全を患うイヌで観測されたアルドステロネミア(aldosteronemia)との相関を確立するための対照投与量を構成する。
【0115】
上記イヌを異なる治療グループ(A、B、C、D、E)に分けた。各治療の間には休止期間を入れた。
【0116】
テストしたスピロノラクトンの投与量は単一回の投与で餌と一緒に食べさせた。スピロノラクトンのペレットを2つの部分に分割し、所定投与量にするためにイヌには最大で3つのペレットを与えた。ネガティブ対照グループAには医薬賦形剤のみを与えた。ポジティブ対照群Bにはアルドステロンを3μg/kgのみを与えた。グループCには3μg/kgのアルドステロンと0.88mg/kgのスピロノラクトンとを与えた。グループDには3μg/kgのアルドステロンと2mg/kgのスピロノラクトンとを与えた。グループEには3μg/kgのアルドステロンと8mg/kgのスピロノラクトンとを与えた。各動物は個体ボックス中で空腹状態で飼い、治療の約16時間前に尿を回収した。それから治療直後に200gの食品を与えた。
【0117】
スピロノラクトン投与直後と、治療後の3、6、9、12および24時間後に静脈から血液サンプル(5ml)を採取した。採取管は直ちに1500回転数/分で10分間+4℃±2℃で遠心分離し、血漿を2つのプロピレン管(1.2mL)に分けた。各サンプルを約−80℃で凍結し、暗闇に保管した。テストの日に動物の膀胱をカテーテル法で空にし、それから6時間および24時間後に治療。また、尿は、T0〜T6h、T6h〜T12hおよびT12h〜T24hの時間の間回収した。
【0118】
次に、ポリプロピレンチューブの壁に固定したアルドステロン特異抗体を使用して固相抗体法(Coat-A-Count(登録商標)R Aldosterone)でアルドステロンの血漿濃度を測定した。ラベル化した251-アルドステロンはサンプル(200のj.tL)中のアルドステロンと抗体へ結合形成を競争する。較正および計数後、サンプルに存在するアルドステロンの量を決定した。それは25〜1200pg/mLであった。
【0119】
尿中のナトリウムおよびカリウムの含有量は浸透圧計を使用して決定した。スピロノラクトンおよびメタボライト(7α-チオメチル-スピロノラクトンおよびカンレノン)の血漿レベルを測定するためにHPLC検査法にUV−検出器を連結して使用した。この方法では500μLの血漿を酢酸エチル溶剤と混合する(80/20,V/V)する。液−液抽出でスピロノラクトン、1,1,1トリクロロエタン7α-チオメチル-スピロラクトンおよびカンレノンを抽出する。各化合物と内部標準(メチルテストステロン)とをKromasil Cl8カラムで分離した。全ての化合物で数量化レベルは10μg/Lであった(変動+/-14%)。
【0120】
スピロノラクトンおよびメタボライトの血漿濃度の薬学的研究は線形回帰分析プログラムを用いて実施した(Kinetica、バージョン4.0、THERMO ELECTRON社、USA)。
【0121】
0時すなわちスピロノラクトン投与直後と6時間後に回収したNa+/K+尿濃度の対数比([Na+尿×10[K+尿)を測定することによってスピロノラクトン投与後のNa+/K+レスポンスを評価した。対数底([Na+尿×10[K+尿)の計算には修正はせず、スピロノラクトン投与からEmaxモデルのモデルのみを実行した。最初の6時間の対数比([Na+尿×10[K+尿)の関係を従来のシグノイドモデルEmax(式3)に従ってスピロノラクトン投与量の関数で分析した。
【0122】

【0123】
(ここで、E0はアルドステロンのみ(ポジティブ対照)を投与した後の0〜6時間の間のlog([Na+尿×10[K+尿)の変化として測定したベースの効果であり、Emaxはスピロノラクトン投与後の0〜6時間のlog([Na+尿×10[K+尿)で表したNa+およびK+レベルの最大レスポンスであり、ED50は最大レスポンスの50%(すなわちlog([Na+尿×10[K+尿)の半分)に達するのに必要なスピロノラクトンの量に対応し、Emax−Eoはスピロノラクトン投与後の0〜6時間の間のlog([Na+]×10[K+])の効果の違いであり、Elog(Na+×10/K+)はスピロノラクトン存在の効果である。Dose(スピロノラクトンmg/kg)、E0、Elog(Na+×10/K+)およびED50は非線形回帰によって得た。nは投与−効果関係を記載すヒル係数である。
【0124】
統計解析はSTATGRAPHICS Plusバージョン4のソフトウエア(Manugestics、Rockville、メリーランド、米国)を用いて行なった。結果は平均値±SDで示した。p<0.05を有意とみなした。
[表3]はスピロノラクトンの投与量を0.8mg/kg、2mg/kgおよび8mg/kgにした時に得られたカンレノンの薬理生理学的パラメータを示す。各投与量での見かけのクリアランスは26±8L/kg/h-1であった。
【0125】
【表3】

【0126】
AUCinfは台形の規則に従って計算した時間を関数とするカンレノン濃度曲線の下側の全表面積であり、Cmaxはカンレノンの最大血漿濃度であり、Tmaxはカンレノンの血漿濃度が最高になる時間である。
[図2]は15匹のイヌにカンレノンを経口で0.8mg/kg、2mg/kgおよび8mg/kgの投与量で投与した後のカンレノンの血漿濃度の時間を関数とした半対数グラフを表す。カンレノン濃度は投与後、5〜6時間まで検出された。これらの3つの曲線は平行な終末スロープを示した。AUCカンレノン値は427±307、1099±358および4794±1393μg.h.L-1であった。Cmaxの場合、対応値は30.9±18.3、74.7±23.9および261.9±53.8μg/Lであった。
【0127】
この実験ではスピロノラクトンの投与量は0.8mg/k、2mg/kgおよび8mg/kgで、log([Na+尿×10[K+尿)でのアルドステロン効果の抑制投与量は2mg/kgおよび8mg/kgの投与量で観測され、投与後、最初の6時間および12時間で効果を完全に逆にすることができた。アルドステロン単独ではNaの排出が約65%減り、Kの尿レベルは25%だけ増加した。アルドステロン治療後、スピロノラクトンはNa/K比を増加させた。スピロノラクトン投与後の0〜6時間に回収した尿サンプルで、平均してlog([Na+尿×10[K+尿)は0.70±0.22から1.14±0.18へ減少した。スピロノラクトンの投与量が2mg/kgの場合、ナトリウム利尿反応は完全に逆になり、0.8mg/kgの投与量ではイヌに影響を及ぼさない。スピロノラクトンの投与量を(8mg/kg)よりさらに多くするとNaの排出がさらに増加するのが観測された。
【0128】
[図3]はスピロノラクトン投与量と([Na+尿×10[K+尿)比との間の投与-効果関係を表す。[図3]はモデル(式3)を使用することによって投与−効果関係が存在することを示している。スピロノラクトン投与後のED50値は1.09mg/kgであった。Emax値(すなわちスピロノラクトンの最大効果)は1.089で、E0値(対照群)は0.527であった。Emax−E0は0.5625で、増幅100%に対応する。従って、スピロノラクトンの投与でアルドステロンを摂取したイヌの尿中のNa+/K+比は元に戻され、約2mg/kgの投与と同様な心不全の状況(すなわちE(2mg/kg)−E0=0.4933)で、効果の88%を元に戻す。一方、0.8mg/kgの投与量は57%に対応する(すなわちE(0.8mg/kg)−E0=0.3233)。ED50値はEmaxモデルから1.08±0.28mg/kgと計算された。元に戻し、ノーマルにすることができる治療有効量は1.80mg/kg/日であり、これは効果の88%を元に戻すことに対応する。多くのイヌは1日当り約2mg/kgのスピロノラクトンの治療でポジティブに応答した。
【0129】
実施例2
2mg/kg/日の投与量のスピロノラクトンとIEC(例えばベナゼプリルまたはエナラプリルのクロロハイドレート)とで治療した時の長期的効果(14〜15ヵ月、3年)を調べるために心不全を患ったイヌで臨床研究を実施した。
【0130】
広域臨床研究をランダム二重盲式偽薬試験で実施した。一つの研究例では最初にIEC治療をした心臓肥大症または心筋症の症状が持続した心不全と認定された221匹のイヌで臨床研究を行なった。221匹のイヌの中の109匹には経口で、IEC(例えば、ベナゼプリルを0.25mg/kg/日の投与量で)と一緒に、2mg/kg/日の投与量でスピロノラクトンを投与した(10mg、40mgおよび/または80mgのペレットの形)。112匹の偽薬グループのイヌにはIEC(例えば、ベナゼプリルを0.25mg/kg/日の投与量で)と一緒に偽薬を投与した。
【0131】
治療効果を測定するために、両方のグループを5回すなわち治療初日(D1)、84日目(D84)、162日目(D162)、252日目(D252)および336日目(D336)で健さした。この検査ではイヌの臨床検査、尿と血液の分析およびラジオグラフとを行なった。Dl、D168およびD336にエコーグラフも撮った。
【0132】
死亡率および死亡−羅病の率を標準治療薬のみを投与した場合と比較して、心不全の疾患のあるイヌの標準的治療薬と一緒に、スピロノラクトンを2mg/kg/日の投与量で投与したときの効果および無毒性が証明された。死亡−羅病の率はイヌの死亡、安楽死または激しい衰弱のような全てのイベントを含む。また、治療効果を咳や活動性のような症状、呼吸困難、肺の水腫や効果への寛容性等の症状の維持でも評価した。15ヵ月で得られた結果は[表4]に示してある。
【0133】
【表4】

【0134】
他に実施した長期臨床研究では、スピロノラクトン+標準治療薬で治療したイヌのグループと標準治療薬グループ(対照グループ)との間に生存確率(死亡および/または羅病なし)に大きな違いが見られた。これらの異なる研究結果は[図2]〜[図6]に示してある。
【0135】
[図4]は14〜15ヵ月継続治療した時のイヌの生存確率を示し、対照グループが74%であるのに対して91%である(p=0.011)。
【0136】
[図5]は14〜15ヵ月継続治療した時の死亡率を示し、対照グループが20%であるのに対して6%である(p=0.0029)。
【0137】
[図6]は3年の継続時間で、対照グループが64%であるのに対して、治療したイヌの生存確率が80%である(p=0.0017)。
【0138】
[図7]は弁故障を有する継続的心不全のI段階から約3.5年の継続期間でイヌを治療した時の生存確率を示し、対照グループ53%に対して100%である(p=0.033)。
【0139】
[図8]は14〜15ヵ月の期間で得られた羅病−死亡率の例で、25%に対して11%である。
さらに、スピロノラクトン投与グループのイヌには咳および活動度のような症状の改善が観測され、呼吸困難、肺の水腫、効果寛容性の維持も観察された。対照グループではこれらの臨床症状が全て強く、より大きな劣化を示した。
【0140】
実施例3
治療の間、血漿カリウム濃度(mmol/L)を測定した。ヒトおよびイヌでは通常は利尿作用のある投与量の2mg/kg/日のスピロノラクトンを毎日投与したが、イヌではカリウム血症は変化しないかわずかにカリウム血症への遷移を示した。以前に行なった臨床研究でのカリウム血症の測定値の結果を[表5]に示してある。低度または中度の高カリウム血症が時々観測され、これらのイベントは遷移状態である。すなわち、これらの高カリウム血症が観測されたのは検査した一組のみである。そのいくつかは治療の始めのDl日目に観察された。
【0141】
【表5】

【0142】
[図9]はさらに、治療したイヌのグループおよび偽薬のイヌグループの両方でカリウム血症は安定し、極まれに低度または中度の高カリウム血症および遷移性とを示すことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルドステロン拮抗薬と、び薬学的に許容されるビヒクルとから成る心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者の治療用獣医学組成物において、
アルドステロン拮抗薬が1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以下の治療有効量として存在し、一回の投与量が1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または約4mg/kg/日であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
アルドステロン拮抗薬がスピロノラクトン型化合物、例えばスピロノラクトン、エプレノン(eplerenone)およびこれら化合物の誘導体またはメタボライトの中から選択される請求項1に記載の獣医学組成物。
【請求項3】
心不全の治療用の少なくとも一つの標準治療法と一緒に使用される請求項1または2に記載の獣医学組成物。
【請求項4】
標準治療法がアンギオテンシン変換酵素インヒビター、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、血管拡張剤、利尿剤、ジギタル(digitalic)医薬、β遮断剤およびカルシウムアンタゴニストの中から選択される化合物の少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか一項に記載の獣医学組成物。
【請求項5】
アンギオテンシン変換酵素インヒビターが約0.1〜0.6mg/kg/日、好ましくは約0.25〜0.5mg/kg/日の治療有効量で存在する請求項4に記載の獣医学組成物。
【請求項6】
アンギオテンシン変換酵素インヒビターがアラセプリル、ベナゼプリル(benazepril)、カプトプリル、シラザプリル(cilazapril)、デラプリル(delapril)、エナラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル(fosinopril)、フォシノプリラ(fosinoprilat)、イミダプリル(imidapril)、イデラプリル(idrapril)、リシノプリル、ペリンドプリル(perindopril)、クイナプリル(quinapril)、ラミプリル(ramipril)、サ酢酸サラシン、ペリンドロピラ(perindropilat)、テモカプリル(temocapril)、トランドラプリル(trandolapril)、セラナプリル(ceranapril)、モエキシプリル(moexipril)、キナプリラ(quinaprilat)、スピラプリラ(spirapril)、これらの化合物の薬学的許容される塩またはエステルの中から選択される請求項4または5に記載の獣医学組成物。
【請求項7】
ベナゼプリル(benazepril)の投与量が0.25mg/kg/日で、エナラプリルの投与量が0.5mg/kg/日である請求項6に記載の獣医学組成物。
【請求項8】
イノトロープ(inotropes)またはイノジラトール(inodilators)がピモィンダン(pimobendane)またはレボシメンダン(levosimendane)の中から選択される請求項4〜7のいずれか一項に記載の獣医学組成物。
【請求項9】
ピモィンダン(pimobendane)またはレボシメンダン(levosimendane)が治療有効量存在する請求項8に記載の獣医学組成物。
【請求項10】
ピモィンダン(pimobendane)またはレボシメンダン(levosimendane)が経口または注射で投与される請求項8または9に記載の獣医学組成物。
【請求項11】
アルドステロン拮抗薬が、2mg/kg/日の投与量で単独で投与されるスピロノラクトンであるか、および/または、有効量のアンギオテンシン変換酵素インヒビターと一緒か、および/または、有効量のピモィンダン(pimobendane)またはレボシメンダン(levosimendane)と一緒に投与される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の獣医学組成物。
【請求項12】
心不全を患う前記被検者がペット、例えばイヌ、ネコまたはウマの中から選択される請求項1〜11のいずれか一項に記載の獣医学組成物。
【請求項13】
経口、経鼻、皮内、経口経皮または非経口で投与される形をした請求項1〜12のいずれか一項に記載の獣医学組成物。
【請求項14】
溶液、懸濁液、固形物または半固体、粉末、球、カプセル、顆粒、糖衣錠、液体、ピル、ゲル、噴霧剤、錠剤、ペースト、注射約またはゲルの形をした請求項1〜13のいずれか一項に記載の獣医学組成物。
【請求項15】
1mg/kg/日以上かつ5mg/kg/日以上で、1.5〜5mg/kg/日、1.8〜5mg/kg/日、1.5〜4mg/kg/日、1.5〜3mg/kg/日、好ましくは2〜5mg/kg/日、より好ましくは約2mg/kg/日または4mg/kg/日であるアルドステロン拮抗薬の毎日の投与量を含む少なくとも一つの区画を有する心不全を患うヒト以外の哺乳類被検者の治療用獣医学キット。
【請求項16】
アルドステロン拮抗薬がスピロノラクトン型化合物、例えばスピロノラクトン、エプレノン(eplerenone)およびこれら化合物の誘導体またはメタボライトの中から選択され、さらに、アンギオテンシン変換酵素インヒビター、アンギオテンシンIIのAT−1-レセプターンタゴニスト、イノトロープ(inotropes)、イノジラトール(inodilators)、血管拡張剤、利尿剤、ジギタル(digitalic)医薬、β遮断剤および/またはカルシウムアンタゴニストの中から選択される化合物の中から選択される心不全治療用の標準治療薬の毎日の投与量を含む区画を有する請求項15に記載のキット。
【請求項17】
上記標準治療薬とアンタゴニストの毎日の投与量が同時または順次投与される請求項16に記載のキット。
【請求項18】
操作モードおよび上記組成物の投与モードに関する指示書をいれる区画をさらに有する請求項15〜17のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−531333(P2010−531333A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513898(P2010−513898)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058054
【国際公開番号】WO2009/000843
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(510000851)
【Fターム(参考)】