説明

ヒトシクロオキシゲナーゼ−3およびその用途

本発明は、本明細書でヒトシクロオキシゲナーゼ−3と命名されるシクロオキシゲナーゼ酵素の新規イソ酵素を記述する核酸およびポリペプチド配列を提供する。本発明の単離された核酸若しくはポリペプチド分子は、検出アッセイ、遺伝子治療およびスクリーニングアッセイで使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシクロオキシゲナーゼイソ酵素に関する。具体的には、本発明は、新規ヒトシクロオキシゲナーゼイソ酵素COX−3の単離された核酸分子およびポリペプチド、ならびにそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は多様な形態で3,500年以上も使用されている。この分類の抗炎症剤は抗炎症、鎮痛および解熱作用を発揮する。NSAIDの例は、限定されるものでないがアスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、スリンダク、サリチル酸コリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、インドメタシン、メクロフェナメート、サルサラート、トルメチンおよびサリチル酸マグネシウムを挙げることができる。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼ(COX)経路を介してプロスタグランジン(PG)(不飽和の20炭素脂肪酸、主としてアラキドン酸由来の一群の化合物)の生成を阻害することによりはたらくと考えられている。
【0003】
炎症の部位でCOXはアラキドン酸をエンドペルオキシドPGGに転化し、それはその後プロスタグランジンH(PGH)に分解する。PGHは、順に、PGD、PGE、PGF2α、PGIおよびトロンボキサンA(TxA)を包含するプロスタノイドに転化される。PGEのようなプロスタノイドの局所生成が疼痛神経末端を過敏にしかつ血流を増大させて痛みの感覚を促進しかつ組織の腫脹および発赤を駆動し得る。
【0004】
NSAIDはCOX活性を選択的に阻害してそれによりPGE形成を阻害しかつ炎症を最小化する(非特許文献1)。不幸なことに、NSAIDの使用はしばしば胃腸出血、潰瘍、腎不全および他者のような副作用により制限される。これらの副作用は、一般にプロスタグランジンの望ましくない減少により引き起こされる。プロスタグランジンは、正常な生理学の維持のために正常な細胞中でオートクリンおよびパラクリン刺激物質として機能し得る。正常細胞中でのプロスタグランジン生成を変えることなく標的細胞中でのプロスタグランジンの減少を達成することによりより特異的に作用することができる新たな作用剤の開発は、NSAID研究の主要な最終目標の1つである。
【0005】
アセトアミノフェンは、口腔外科手術、会陰切開、分娩後疼痛、癌、変形性関節症、頭痛、月経困難症などに関連する軽度ないし中等度の疼痛の緩和のための安全かつ有効な鎮痛薬である。アスピリンのようなNSAIDと異なり、アセトアミノフェンは強力な解熱および鎮痛作用を有する(非特許文献2)。臨床試験は、アセトアミノフェンがアスピリンの胃腸の副作用を欠くことを示した。さらに、アセトアミノフェンは小児において止血機構に対する影響を有さず、そしてアスピリンの使用が危険な出血を引き起こしうる臨床状況で使用し得る。その広範な使用にもかかわらず、アセトアミノフェンの作用機序は完全に解明されてはいない。
【0006】
ごく最近までに、シクロオキシゲナーゼの2種のアイソフォーム、すなわち、構成的に発現されるCOX−1および誘導可能であるCOX−2のみが同定された。COX−1は胃腸(GI)管中でのPGIおよびPGEのような生理学的に関連するプロスタノイドの生成の原因であるようであり、それによりそれらは胃に対し保護的である。Cox−1はまた血小板凝集の強力な誘導物質TxAの生成にも関与しかつ血管攣縮を引き起こす。抗炎症におけるそれらの役割に加え、アスピリンのようなCOX−1の阻害剤は血液凝固を阻害し、また、GI毒性を伴う。COX−2は炎症部位で迅速にアップレギュレー
トされ、そして炎症前プロスタノイドの形成の原因であるようである。より選択的なCOX−2阻害剤はGI毒性を低下させていたことがありそうであるとみられるがしかしそれでもなお疼痛ならびに熱、発赤および腫脹のような炎症の他の古典的兆候を緩和すると思われる。COX−1もCOX−2も、全細胞若しくは細胞ホモジェネートでアッセイする場合に治療濃度のアセトアミノフェンで該薬物に対し感受性でなく、COX−1もCOX−2もアセトアミノフェンの作用の良好な標的でないことを示唆している。
【0007】
第三のシクロオキシゲナーゼイソ酵素すなわちCOX−3をコードする遺伝子がイヌ大脳皮質から最近同定された(非特許文献3)。COX−3の阻害はアセトアミノフェンの主要な中心的作用機序を表すことが示唆された。イヌCOX−3遺伝子はイントロン1の保持を伴うイヌCOX−1遺伝子のスプライシングバリアントである。イヌCOX−3タンパク質はカルボキシル末端にイヌCOX−1タンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列、およびアミノ末端に33アミノ酸の挿入を含有する。イヌCOX−3のmRNAはイヌ大脳皮質で、および分析した他の組織中でより少量で発現される。機能研究は、イヌCOX−3がグリコシル化依存性のシクロオキシゲナーゼ活性を有しかつ数種の(しかし全部ではない)NSAIDにより強力に阻害されることを示した。イヌCOX−3活性のネズミのCOX−1および−2との比較は、イヌCOX−3がアセトアミノフェン、フェナセチン、アンチピリンおよびジピロンのような鎮痛/解熱薬により選択的に阻害されることを示している。例えば、5mMの基質濃度で、アセトアミノフェンはネズミのCOX−2に対しイヌCOX−3の阻害について100倍選択的、およびネズミのCOX−1に対し2倍選択的である(非特許文献3)。
【0008】
イヌCOX−3はイヌ大脳皮質から同定されたとは言え、ヒトCOX−3の存在はさらなる実験を必要とした。公表されたヒトゲノム配列に基づけばヒトCOX−1のイントロン1はヒトCOX−1のコーディング配列の残りと同じフレームでないからである。公表されたヒトゲノム配列が真正の多型であるか若しくはシークェンシングの誤りであるかは知られていなかった(非特許文献3)。ヒトCOX−3の存在若しくはその欠如を示すための慎重に設計された研究が実施される必要がある。ヒトCOX−3研究からの結果は、アセトアミノフェンのような既存の鎮痛薬の機序の解明において、また、より少ない副作用を伴うより特異的な鎮痛薬を開発するために有用であり得る。
【非特許文献1】Warnerら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99:13371−13373
【非特許文献2】Botting、2000、Clin.Infect.Diseases.31:S202−10
【非特許文献3】Chandrasekharanら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99:13926−31
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
本発明は、本明細書でヒトCOX−3と称される新規ヒトシクロオキシゲナーゼイソ酵素をコードする単離された核酸分子、該単離された核酸配列によりコードされるポリペプチド、ならびに該核酸分子およびそのポリペプチドの使用に関する。
【0010】
本発明の他の局面、特徴および利点は、本発明の詳細な記述およびその好ましい態様ならびに付属として付けられる請求の範囲を包含する以下の開示から明らかであろう。
[発明の詳細な記述]
本出願で引用される全部の刊行物はこれにより引用することにより組み込まれる。別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される全部の技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されると同一の意味するところを有する。
【0011】
「包含すること」、「含んでなること」、「含有すること」および「有すること」という用語は、本明細書でそれらの公然の制限しない意味で使用する。
【0012】
以下は本明細でときに使用される略語である:
bp=塩基対
cDNA=相補DNA
CNS=中枢神経系
COX=シクロオキシゲナーゼ
kb=キロ塩基対;1000塩基対
kDa=キロダルトン;1000ダルトン
NSAID=非ステロイド性抗炎症薬
nt=ヌクレオチド
PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PCR=ポリメラーゼ連鎖反応
PG=プロスタグランジン
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
siRNA=低分子干渉RNA
UTR=非翻訳領域
本発明のポリペプチド若しくは核酸の「活性」、「生物活性」若しくは「機能的活性」は、標準的技術に従ってin vivo若しくはin vitroで測定されるところの本発明のポリペプチド若しくは核酸分子により発揮される活性を指す。こうした活性は第二のタンパク質との会合若しくはそれに対する酵素活性のような直接活性、または該タンパク質の第二のタンパク質との相互作用により媒介される細胞シグナル伝達活性のような間接的活性であり得る。ヒトCOX−3と関連する例示的一生物活性はアラキドン酸をPGHに転化するその酵素活性であり、そして、本活性はアセトアミノフェンのような鎮痛/解熱薬により選択的に阻害される。
【0013】
「鎮痛剤(analgesic)」若しくは「鎮痛薬(analgesic drug)」は意識の喪失を引き起こすことなく疼痛を軽減する剤である。「解熱剤(antipyretic)」若しくは「解熱薬(antipyretic drug)」は熱を緩和すなわち低下させる剤である。「解熱剤(antipyretic)」は解熱剤(antifebrile)、解熱剤(antithermic)若しくは解熱剤(febrifuge)と同義語である。「抗炎症薬」は炎症を打ち消す若しくは抑制する剤である。「鎮痛/解熱薬」は「鎮痛」および「解熱」双方の活性を有する剤である。
【0014】
本明細書で使用されるところの「抗体」は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分、すなわち本発明のポリペプチドのような抗原、例えば本発明のポリペプチドのあるエピトープを特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明の所定のポリペプチドに特異的に結合する分子は、該ポリペプチドを結合するがしかし該ポリペプチドを天然に含有するサンプル、例えば生物学的サンプル中の異なる型の分子を実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分の例は、ペプシンのような酵素で抗体を処理することにより生成させ得るFabおよびF(ab)’フラグメントを包含する。
【0015】
「抗体」はモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体であり得る。「モノクローナル抗体」若しくは「モノクローナル抗体組成物」という用語は、特定の一エピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位の1種のみを含有する抗体分子の一集団を指す。「ポリクローナル抗体」という用語は1種以上のエピトープと免疫反応することが可能な本発明のポリペプチド(1種若しくは複数)に向けられた抗体を指す。とりわけ好ましいポリクローナル抗体調製物は、本発明のポリペプチド(1種若しくは複数)に向けられた
抗体のみを含有するものである。
【0016】
本明細書で使用されるところの「抗原」は、宿主の免疫系を刺激して体液性および/若しくは細胞性の抗原特異的応答をなすことができる1種若しくはそれ以上のエピトープを含有する分子を指す。該用語はまた本明細書で「免疫原」と互換的にも使用する。本明細書で使用されるところの「エピトープ」という用語は、特異的抗体分子が結合する抗原若しくはハプテン上の部位を指す。該用語はまた本明細書で「抗原決定基」若しくは「抗原決定基部位」と互換的にも使用する。
【0017】
「生物学的サンプル」という用語は生物体(例えば患者)若しくは生物体の構成成分(例えば細胞)から得られるサンプルを指す。サンプルはいずれの生物学的組織、細胞(1個若しくは複数)または液体のものであってよい。サンプルは、患者由来のサンプルである「臨床サンプル」であってよい。こうしたサンプルは、限定されるものでないが唾液、血液、血液細胞(例えば白血球)、羊水、血漿、精液、骨髄および組織若しくは細径針生検サンプル、尿、腹水および胸水またはそれらからの細胞を挙げることができる。生物学的サンプルはまた、組織学的目的上採取される凍結切片のような組織の切片も包含してよい。生物学的サンプルはまた「患者サンプル」とも称されることがある。「生物学的サンプル」はまた、実質的に精製若しくは単離されたタンパク質、膜調製物、または細胞培養物も包含してよい。
【0018】
「クローン」は有糸分裂により単一細胞若しくは共通の祖先に由来する細胞の一集団である。「細胞株」は多世代の間in vitroで安定な増殖が可能である初代細胞のクローンである。
【0019】
「プロスタグランジンエンドペルオキシドHシンターゼ」すなわち「PGHS」ともまた称される「シクロオキシゲナーゼ」、「シクロオキシゲナーゼ酵素」、「COX」若しくは「COX酵素」という用語は、プロスタグランジン生合成において2段階を触媒しかつアラキドン酸からプロスタグランジンおよびトロンボキサンを生成する、大部分の組織中に存在する酵素である。シクロオキシゲナーゼは、アラキドン酸のヒドロペルオキシドプロスタグランジンGへの酸化(シクロオキシゲナーゼ反応)およびプロスタグランジンH(PGH)へのそのその後の還元(ペルオキシダーゼ反応)の双方を触媒する。PGHは、PGD、PGE、PGF2α、PGIおよびトロンボキサンA(TxA)を包含するプロスタノイドへのその後の異性化若しくは環化の共通の中間体である。NSAIDはシクロオキシゲナーゼ活性を阻害し、これがそれらの抗炎症効果を説明する。
【0020】
「COX−3活性に関係する障害」は、COX−3酵素の過活性若しくは不十分な活性と関連する障害若しくは疾患、およびこの障害若しくは疾患に付随する状態を包含する。「COX−3酵素の過活性」は、1)COX−3を通常は発現しない細胞中でのCOX−3発現;2)増大したCOX−3発現;3)COX−3酵素1単位あたりの増大したCOX−3活性;または4)1種若しくはそれ以上のCOX−3の生物活性の構成的活性化につながる突然変異のいずれかを指す。「COX−3酵素の不十分な活性」は、1)COX−3を通常発現する細胞中でのCOX−3発現の非存在;2)低下したCOX−3発現;3)COX−3酵素1単位あたりの低下したCOX−3活性;または4)1種若しくはそれ以上のCOX−3の生物活性の構成的不活性化につながる突然変異のいずれかを指す。
【0021】
「遺伝子」は、コーディング領域、コーディング領域に先行する(「5’UTR」)および後に続く(「3’UTR」)非コーディング領域を包含するペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質の生成に関与するDNAの一セグメントである。「遺伝子」はまた個々のコーディングセグメント(「エキソン」)間に介在する非コーディング配列(「イン
トロン」)も包含しうる。「プロモーター」は遺伝子の転写を開始するRNAポリメラーゼの結合に関与するDNAの制御配列を意味している。プロモーターはしばしば遺伝子の転写開始部位の上流(「に対し5’」)にある。「制御配列」は遺伝子の発現を制御し得る遺伝子の部分を指す。「制御配列」は、プロモーター、エンハンサー、ならびにポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位(細菌発現について)および/若しくはオペレーターのような他の発現制御要素を包含し得る。「コーディング領域」は、トリプレット塩基コドンを介してアミノ酸ならびに翻訳の開始および終止シグナルをコードする遺伝子の部分を指す。
【0022】
「遺伝子治療」は、遺伝子欠損を是正するための生存細胞中へのいずれかの適する手段による何らかの供給源からの機能的遺伝子(1種若しくは複数)すなわち核酸フラグメントの導入を意味している。
【0023】
「遺伝的バリアント」若しくは「バリアント」は、一集団中の最低1個体の特定の一遺伝子座に存在しかつ野性型対立遺伝子と異なる特定の一対立遺伝子を意味している。「野性型対立遺伝子」は一集団中の所定のヌクレオチド配列の最も頻繁に遭遇する対立遺伝子を意味している。
【0024】
「宿主細胞」はベクター上か若しくは細胞染色体中に組込まれたかのいずれかの本発明のDNA分子を含有する細胞を指す。「宿主細胞」は本発明のDNA分子を内因性に発現する内因性宿主細胞若しくは組換え宿主細胞のいずれでもあり得る。
【0025】
本明細書で使用されるところの「ヒトシクロオキシゲナーゼ−3」、「ヒトCOX−3」若しくは「hCOX−3」は、アラキドン酸をプロスタグランジン前駆体プロスタグランジンHに転化することが可能でありかつ配列番号4若しくは配列番号6に対する約60%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるシクロオキシゲナーゼの新規1メンバーを指す。hCOX−3の例は、アラキドン酸をプロスタグランジン前駆体プロスタグランジンHに転化することが可能でありかつ配列番号4若しくは配列番号6に対する約60、65、70、75、80、85、90若しくは95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるシクロオキシゲナーゼ酵素の新規1メンバーを包含する。一態様においてhCOX−3は配列番号9を含んでなる。別の態様においてhCox−3は配列番号11を含んでなる。
【0026】
1フラグメント若しくはフラグメントの物理的会合は完全長のhCOX−3と関連する生物活性を有し得るが、しかしながら、個々のhCOX−3フラグメントと関連するhCOX−3活性の程度は変動し得る。「ヒトシクロオキシゲナーゼ−3の活性フラグメント」は、アラキドン酸をプロスタグランジン前駆体プロスタグランジンHに転化することがなお可能であるヒトシクロオキシゲナーゼ−3のフラグメントを指す。「ヒトシクロオキシゲナーゼ−3の活性フラグメント」の例は、配列番号4若しくは配列番号6の最低5個の隣接するアミノ酸配列の配列に対する約90若しくは95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含み得、そして、hCOX−3のこうした活性フラグメントはアラキドン酸をプロスタグランジン前駆体プロスタグランジンHに転化することがなお可能である。
【0027】
「炎症」という用語は、有害な剤および傷害された組織双方を破壊する、効力を弱める若しくは遮断(隔離)するようはたらく組織の傷害若しくは破壊により導き出される限局した保護応答を指す。「炎症」は、急性の形態において、疼痛(dolor)、発熱(calor)、発赤(rubor)、腫脹(tumour)および機能喪失(functio laesa)の古典的兆候を特徴とする。組織学的には、炎症は、炎症の中心への血漿タンパク質および白血球遊走を包含する、増大した透過性および血流、液体の滲出を伴
う小動脈、毛細血管および細静脈の拡張を包含する複雑な一連の事象を伴う。
【0028】
「単離された」核酸分子は他の核酸分子から分離されているものである。「単離された」核酸分子は、例えば、該核酸が由来する生物体のゲノムDNA中でその5’および3’端で該核酸分子に天然に隣接するヌクレオチド配列の最低1種を含まない核酸分子であり得る。単離された核酸分子は、制限なしに、他の配列に依存しない分離した核酸分子(例えばPCR若しくは制限エンドヌクレアーゼ処理により生じられるcDNA若しくはゲノムDNAフラグメント)、ならびにベクター、自律複製性プラスミド、ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス若しくはヘルペスウイルス)または原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA中に組込まれている核酸分子を包含する。加えて、単離された核酸分子はハイブリッド若しくは融合核酸分子の一部である核酸分子を包含し得る。単離された核酸分子は:(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりin vitroで増幅される;(ii)例えば化学合成により合成される;(iii)クローニングにより組換え的に製造される;または(iv)切断および電気泳動若しくはクロマトグラフィー分離によるように精製される核酸配列であり得る。
【0029】
「単離された」若しくは「精製された」タンパク質若しくはその生物学的に活性の部分は、該タンパク質が由来する細胞若しくは組織供給源からの細胞性物質若しくは他の汚染するタンパク質を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合は化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞性物質を実質的に含まない」という語は、該タンパク質が単離若しくは組換え的に製造される細胞の細胞性成分から該タンパク質が分離されているタンパク質の調製物を包含する。従って、細胞性物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%若しくは5%(乾燥重量)未満の異種タンパク質(「汚染するタンパク質」ともまた本明細書で称される)を有するタンパク質の調製物を包含する。タンパク質若しくはその生物学的に活性の部分を組換え的に製造する場合、それはまた好ましくは培地を実質的に含まない。すなわち、培地はタンパク質調製物の体積の約20%、10%若しくは5%未満を表す。タンパク質を化学合成により製造する場合、それは好ましくは化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。すなわち、それは化学的前駆体若しくは該タンパク質の合成に関与する他の化学物質から分離されている。従って、タンパク質のこうした調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量)未満の化学的前駆体若しくは目的のポリペプチド以外の他の化学物質を有する。単離された生物学的に活性のポリペプチドはいくつかの異なる物理的形態を有する。単離されたポリペプチドは、完全長の生来のすなわちプロセシングされないポリペプチドとして、または部分的にプロセシングされたポリペプチド若しくはプロセシングされたポリペプチドの組合せとして存在し得る。単離された若しくは実質的に精製されたポリペプチドは、単離された核酸配列によりコードされるポリペプチド、ならびに例えば化学合成の方法により合成されたポリペプチド、および生物学的材料から分離されかつその後それらが本明細書に記述される方法により使用されることを可能にする程度まで慣習的なタンパク質分析若しくは調製手順を使用して精製されたポリペプチドであり得る。
【0030】
本明細書で使用されるところの「核酸」は、1個若しくはそれ以上のヌクレオチドすなわちリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド若しくは双方から構成される分子を指す。該用語はリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの単量体および多量体を包含し、リボヌクレオチドおよび/若しくはデオキシリボヌクレオチドは、多量体の場合に5’から3’の結合を介して一緒に結合される。リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの多量体は一本鎖であっても若しくは二本鎖であってもよい。しかしながら、結合は、例えば5’から3’の結合を含んでなる核酸を包含する当該技術分野で既知の結合のいずれを包含してもよい。ヌクレオチドは天然に存在しても、若しくは天然に存在する塩基対と塩基対の関係を形成することが可能である合成で製造したアナログであってもよい。天然に存在する塩基対の例は、チミジン、アデニン、シトシン、グアニン、ウラ
シルであり;それぞれT、A、C、GおよびUと略記される。塩基対形成の関係を形成することが可能である天然に存在しない塩基の例は、限定されるものでないが、アザおよびデアザピリミジンアナログ、アザおよびデアザプリンアナログ、ならびにピリミジン環の炭素および窒素原子の1個若しくはそれ以上がヘテロ原子、例えば酸素、イオウ、セレン、リンなどにより置換されている他の複素環塩基アナログを挙げることができる。さらに、「核酸配列」という用語は相補配列を企図しており、そして、具体的には、核酸配列およびその相補物双方に実質的に相同であるいかなる核酸配列も包含する。
【0031】
「オリゴヌクレオチド」という用語は比較的短い長さ(例えば100残基長未満)の一本鎖DNA若しくはRNA配列を指す。多くの方法について長さ約16〜25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが有用であるとは言え、約25ヌクレオチド以上のより長いオリゴヌクレオチドをときには利用しうる。数種のオリゴヌクレオチドは相補的核酸鎖の合成のための「プライマー」として使用し得る。例えば、DNAプライマーは、相補配列にハイブリダイズしてDNAポリメラーゼを使用する反応で相補DNA鎖の合成を開始させ得る。オリゴヌクレオチドはまた、例えばノーザンブロッティングでの核酸検出のためのハイブリダイゼーションにも有用である。
【0032】
「多型」は一集団中の個体間の特定の一遺伝子座の一組の遺伝的バリアントを指す。
【0033】
「ポリヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合により一緒に結合された最低2ヌクレオチドの直鎖状ポリマーを指し、そしてリボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチドのいずれを含んでもよい。
【0034】
「ポリペプチド」若しくは「タンパク質」は1ポリマー中のアミノ酸残基の配置を指す。ポリペプチドは希なアミノ酸および合成アミノ酸アナログに加えて標準的な20種の天然に存在するアミノ酸から構成され得る。より短いポリペプチドは一般にペプチドと称される。「組換えポリペプチド」は組換えDNA技術により製造される;すなわち所望のポリペプチドをコードする外因性DNA構築物により形質転換された細胞から生成されるポリペプチドを指す。「合成ポリペプチド」は化学合成により製造されるものを指す。
【0035】
「プロモーター」は遺伝子の転写を開始するRNAポリメラーゼの結合に関与するDNAの制御配列を意味している。プロモーターはしばしば遺伝子の転写開始部位の上流(「に対し5’」)にある。
【0036】
「プロスタノイド」はプロスタグランジン、プロスタサイクリンおよびトロンボキサンの集合的用語である。それは、シクロオキシゲナーゼ経路を介して不飽和の20炭素脂肪酸(主としてアラキドン酸)から生じる一群の化合物を包含する。それらは炎症を包含する多彩な一群の生理学的過程の極めて強力な媒介物質である。プロスタノイドの例は、限定されるものでないがPGD、PGE、PGF2α、PGIおよびトロンボキサンA(TxA)を挙げることができる。
【0037】
「組換え」は、分子生物学技術を使用してその天然の状態以外の何かに改変されている核酸、核酸によりコードされるタンパク質、細胞、若しくはウイルス粒子を指す。例えば、組換え細胞は、天然の(非組換え)形態の該細胞内で見出されないヌクレオチド配列を含有し得るか、または、別の方法で異常に発現されるか、過少発現されるか、若しくは全く発現されない天然の遺伝子を発現し得る。組換え細胞はまた、人工的手段により改変されかつ天然の形態の細胞中に再導入されている該細胞中で見出される遺伝子も含有し得る。該用語は、細胞から核酸を取り出すことなく改変されている、細胞に対し内因性の核酸を含有する細胞もまた包含し;こうした改変は例えば遺伝子置換および部位特異的突然変異により得られるものを包含する。
【0038】
「組換え宿主細胞」は組換えDNA配列を含有する細胞である。組換えDNA配列は、例えば電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、微小注入法、形質転換、微粒子銃およびウイルス感染を包含するいずれかの適する方法を使用して宿主細胞に導入し得る。組換えDNAは、該細胞のゲノムを構成している染色体DNAに組込まれ(共有結合され)ても組込まれなくてもよい。例えば、組換えDNAはプラスミドのようなエピソーム要素上に維持され得る。あるいは、安定に形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞に関しては、組換えDNAは、それが染色体複製により娘細胞により遺伝されるように染色体中に組込まれたようになっている。この安定性は、外因性DNAを含有する娘細胞の一集団から構成される細胞株すなわちクローンを樹立する安定に形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞の能力により示される。組換え宿主細胞は、大腸菌(E.coli)のような細菌、酵母のような真菌細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サルおよびげっ歯類起源の細胞株のような哺乳動物細胞、ならびにキイロショウジョウバエ属(Drosophila)およびカイコ由来の細胞株のような昆虫細胞を包含する原核生物若しくは真核生物であってよい。「組換え宿主細胞」という用語が特定の一細胞を指すのみならずしかしまたこうした細胞の子孫若しくは潜在的な子孫も指すことがさらに理解される。突然変異若しくは環境の影響のいずれかにより後続世代である種の改変が起こり得るため、こうした子孫は事実上親細胞に同一でないかもしれないが、しかしなお本明細書で使用されるところの該用語の範囲内に包含される。
【0039】
「配列」は、単量体が多量体中に存在する直線状の順序、例えばポリペプチド中のアミノ酸の順序若しくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序を意味している。
【0040】
当該技術分野で既知のところの「配列の同一性若しくは類似性」は、配列を比較することにより決定されるところの2種若しくはそれ以上のポリペプチド配列または2種若しくはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、同一性はまた、場合によっては一連のこうした配列間の適合により決定されるところのポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列間の配列の関連性の程度も意味している。2種のアミノ酸配列若しくは2種の核酸の同一性若しくは類似性のパーセントを決定するために、配列を至適の比較の目的上整列する(例えば、第二のアミノ酸若しくは核酸配列との至適のアライメントのために第一のアミノ酸の配列若しくは核酸配列中にギャップを導入し得る)。対応するアミノ酸位置若しくはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基若しくはヌクレオチドをその後比較する。第一の配列中のある位置が第二の配列中の対応する位置と同一の若しくは類似のアミノ酸残基若しくはヌクレオチドにより占有される場合には、該分子はその位置で同一若しくは類似である。2配列間の同一性若しくは類似性のパーセントは、該配列により共有される同一若しくは類似の位置の数の関数である(すなわち同一性%=同一の位置の数/位置(例えばオーバーラップする位置)の総数×100)。一態様において、該2配列は同一長さである。
【0041】
同一性および類似性の双方は容易に計算し得る。配列間の同一性若しくは類似性の一般に使用される決定方法は、限定されるものでないがCarilloら、(1988)、SIAM J.Applied.Math.48、1073に開示されるものを挙げることができる。同一性の好ましい決定方法は試験される配列間で最大の適合を与えるように設計する。同一性および類似性の決定方法はコンピュータプログラムにコード化されている。
【0042】
2配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの制限しない一例は、Karlinら、(1993)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877中のとおり改変されたKarlinら、(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268のアルゴリズムである。こうしたアルゴ
リズムはAltschulら、(1990)、J Mol.Biol 215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組込まれている。比較の目的上、ギャップをつけたアライメントを得るために、Gapped BLASTをAltschulら、(1997)、Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記述されるとおり利用し得る。あるいは、分子間の離れた関係を検出するPSI−Blastを使用して反復検索を実施し得る。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI−Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用し得る。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。加えて、FASTA法(Atschulら、(1990)、J.Molec.Biol.215、403)もまた使用し得る。
【0043】
配列の比較に有用な数学的アルゴリズムの別の制限しない例はMyersら、(1988)、CABIOS 4:11−17のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組込まれている。
【0044】
好ましい一態様において、2配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.accelrys.comで入手可能)に組込まれているNeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.(48):444−453(1970))のアルゴリズムを使用して決定される。GCGのGAPプログラムは、適合の数を最大化しかつギャップの数を最小化するように2種の完全な配列を整列する。
【0045】
別の好ましい態様において、2配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのBestFitプログラム(http://www.accelrys.comで入手可能)に組込まれているSmithとWaterman(J Mol Biol.1981、147(1):195−7)の局部的相同性アルゴリズムを使用して決定される。BestFitプログラムは2配列間の最良の類似セグメントの至適のアライメントを作成する。至適のアライメントは、適合の数を最大化するようにギャップを挿入することにより見出される。
【0046】
ハイブリダイゼーションは、2種のポリヌクレオチドが相互に実質的に同一であることを示すための試験としてもまた使用し得る。十分な程度の同一性を共有するポリヌクレオチドはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で相互とハイブリダイズすることができる。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、(1989)に記述されるところの当該技術分野で既知の意味するところを有する。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、次いで50〜65℃での0.2×SSCおよび0.1%SDS中での1回若しくはそれ以上の洗浄を含んでなる。
【0047】
本明細書で使用されるところの「実質的に類似」は、同一の配列、ならびに、いずれかの生物学的に活性の部分を維持しかつその保存されたモチーフのいずれかを有するポリヌクレオチド若しくはポリペプチド配列に対する欠失、置換若しくは付加を包含する。
【0048】
本明細書で使用されるところの「被験体」は、処置、観察若しくは実験の対象である動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0049】
本明細書で使用されるところの「標識(tag)」は、該標識を含有するタンパク質の単離、精製若しくは検出を助長するアミノ酸配列若しくはアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を指す。多様なこうした標識が当業者に既知でありかつ本発明での使用に適する。適する標識は、限定されるものでないがHAペプチド、ポリヒスチジンペプチド、ビオチン/アビジン、および多様な抗体エピトープ結合部位を挙げることができる。
【0050】
本明細書で使用されるところの「治療上有効な量」という用語は、治療されている疾患若しくは障害の症状の軽減を包含する、研究者、獣医師、医師若しくは他の臨床家により探究されている組織系、動物若しくはヒトにおいて生物学的若しくは医学的応答を導き出す有効成分若しくは製薬学的剤の量を意味している。本製薬学的組成物の治療上有効な用量の決定方法は当該技術分野で既知である。
【0051】
「ベクター」は、結合されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、付加的なDNAセグメントを挿入し得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の型のベクターは付加的なDNAセグメントを挿入し得るウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律複製が可能である(例えば細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は宿主細胞中への導入に際して宿主細胞のゲノム中に組込まれ、そしてそれにより宿主のゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクター、発現ベクターは、それらが作動可能に結合されている遺伝子の発現を指図することが可能である。一般に、組換えDNA技術に有用なベクターはしばしばプラスミドの形態である。しかしながら、本発明は、同等の機能を供するウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のようなこうした他の形態のベクターを包含することを意図している。
本発明の単離された核酸分子
本発明は、ヒトCOX−1遺伝子のエキソン1とエキソン2との間のイントロン1の保持の後の1回若しくは1回以上のRNA編集事象を介して形成されるヒトCOX−3遺伝子の存在を初めて示した。ヒトCOX−3aタンパク質(配列番号9)は、ヒトCOX−1のエキソン1によりコードされるアミノ酸配列、RNA編集後のヒトCOX−1のイントロン1によりコードされる31アミノ酸(配列番号4)の挿入(配列番号3)、およびヒトCOX−1のエキソン2ないし11によりコードされるアミノ酸配列を含んでなる。ヒトCOX−3bタンパク質(配列番号11)は、ヒトCOX−1のエキソン1によりコードされるアミノ酸配列、異なる部位でのRNA編集後のヒトCOX−1のイントロン1によりコードされる31アミノ酸(配列番号6)の挿入(配列番号5)、およびヒトCOX−1のエキソン2ないし11によりコードされるアミノ酸配列を含んでなる。ヒトCox−1のクローニングは以前に記述された(Yokoyamaら、(1989)、Biochem Biophys Res Commun、165(2):888−94)。ヒトCOX−1のcDNA若しくはタンパク質のGenBank受託番号はそれぞれNM_000962若しくはNP_000953である。ヒトCOX−3およびCOX−1の遺伝子構造の比較を図2に具体的に説明する。
【0052】
本発明の一局面は、ヒトCOX−3若しくはその生物学的に活性の部分をコードする単離された核酸分子、ならびに本発明のヒトCOX−3ポリペプチドをコードする核酸分子を同定若しくは増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ若しくはPCRプライマーとしての使用のための長さ最低12の連続したヌクレオチドの核酸分子に関する。
【0053】
一態様において、本発明は、アラキドン酸をプロスタグランジン前駆体プロスタグランジンH2に転化することが可能でありかつ配列番号4若しくは配列番号6に対する約60%以上のアミノ酸配列の同一性、好ましくは約65、70、75、80、85、90若しくは95%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、シクロオキシゲ
ナーゼ酵素の1メンバーをコードするヌクレオチド配列またはそれらの相補物を含んでなる単離された核酸分子を提供する。所定のヌクレオチド配列の相補物である核酸分子は、それが高ストリンジェンシーすなわちストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で所定のヌクレオチド配列にハイブリダイズしてそれにより安定な二重鎖を形成し得るように該所定のヌクレオチド配列に対し十分に相補性であるものである。
【0054】
別の態様において、本発明は配列番号3若しくは配列番号5またはそれらの相補物の最低12の連続するヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子を提供する。こうした単離された核酸分子は、他の細胞型中、例えば他の組織からのCOX−3の相同体ならびに他の哺乳動物からの相同体を同定かつ/若しくはクローン化するための核酸プローブとして使用し得る。該プローブ/プライマーは、典型的には、ストリンジェントな条件下で配列番号3若しくは配列番号5のセンス若しくはアンチセンス配列の最低約12、25、50、75若しくは90の隣接するヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列を含んでなる。
【0055】
好ましい一態様において、本発明は配列番号8若しくは配列番号10のヌクレオチド配列またはそれらの相補物を含んでなる単離された核酸分子を提供する。
【0056】
別の好ましい態様において、本発明は、配列番号9若しくは配列番号11のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはそれらの相補物を含んでなる単離された核酸分子を提供する。例えば、本発明は、配列番号8若しくは配列番号10に示されるところのヒトCOX−3 cDNAの保存的置換である核酸分子若しくはその相補物を含んでなる単離された核酸分子を提供する。特定の1アミノ酸をコードするのに1種以上の遺伝暗号が使用される可能性があることが既知であり、そして従って配列番号9若しくは配列番号11に描かれるところのヒトCOX−3のアミノ酸配列は一組の類似のDNA分子のいずれかによりコードされ得る。該組の1メンバーのみが配列番号8若しくは配列番号10に示されるところのcDNA配列に同一であることができる。しかしながら、下で縮重バリアントと称される全バリアントが本発明の範囲内で企図されている。この中で、配列番号9若しくは配列番号11として示されるアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードする1種若しくはそれ以上の代替コドンをもつ核酸分子は、それぞれ配列番号8若しくは配列番号10に示されるところのヒトCOX−3 DNAの保存的置換として定義される。
【0057】
ヒトCOX−3核酸分子の天然の対立遺伝子バリアントがこの点に関してとりわけ好ましい。アミノ酸配列中の変化に至るDNA配列の多型が集団(例えばヒト集団)内に存在し得る。こうした遺伝子多型は天然の対立遺伝子変異により1集団内の個体間で存在し得る。対立遺伝子は所定の遺伝子座で代替に存在する一群の遺伝子の1つである。こうした天然の対立遺伝子変異は、典型的に、所定の1遺伝子のヌクレオチド配列中の1〜5%の不一致をもたらし得る。代替の対立遺伝子は、多数の異なる個体中の目的の遺伝子をシークェンシングすることにより、若しくは多様な個体中の同一の遺伝子座を同定するためにハイブリダイゼーションプローブを使用することにより同定し得る。
【0058】
天然に存在するヒトCOX−3タンパク質と異なるがしかしその機能的活性をなお維持する特性を有するポリペプチドをコードする天然に存在することが知られていないいかなるおよび全部のこうしたヌクレオチド変異を有する核酸分子が、この点に関してさらにとりわけ好ましい。天然に存在する対立遺伝子バリアントのような天然に存在するバリアントに加え、ポリヌクレオチド若しくはポリペプチドのバリアントは天然に存在することが知られていないバリアントでもまたあり得る。DNA配列は、天然に存在するペプチドのものと異なる特性を有するペプチドをコードするように人的に変えることができる。DNA配列の変更方法は、限定されるものでないが部位特異的突然変異誘発、キメラ置換および遺伝子融合を挙げることができる。部位特異的突然変異誘発はサイレント変異、保存的
変異若しくは非保存的変異をもたらし得る1若しくはそれ以上のDNA残基を変えるのに使用する。キメラ遺伝子は類似の若しくは異なる遺伝子のドメインを交換してCOX−3遺伝子中の類似のドメインを置き換えることにより製造する。同様に、遺伝子およびタンパク質の同定および単離を助長するための親和性標識のようなドメインをCOX−3に付加する融合遺伝子を製造し得る。
【0059】
本発明のヒトCOX−3核酸分子のバリアントは、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号3若しくは配列番号5にハイブリダイズすることが可能である。
【0060】
本発明の核酸分子のなお別の好ましい態様はヒトCOX−3遺伝子に対応するsiRNAである。多くの生物体は、遺伝子に対応する二本鎖RNA(dsRNA)が細胞中に存在する場合にRNA干渉として知られる過程により遺伝子発現を抑制させるための機構を有する。特定の1遺伝子の活性を低下させるためにdsRNAを使用する技術は、蠕虫C.エレガンス(C.elegans)を使用して最初に開発され、そしてRNA干渉すなわちRNAiと命名された(Fireら、(1998)、Nature 391:806−811)。RNAiは以来、多くの生物体で有用であることが見出され、そして最近、哺乳動物細胞に拡大された(Mossによる総説、(2001)、Curr Biol 11:R772−5を参照されたい)。
【0061】
RNAiが21〜25ヌクレオチドの低分子RNAの生成を伴うことが示された場合に重要な進歩がなされた(Hammondら、(2000)Nature 404:293−6;Zamoreら、(2000)Cell 101:25−33)。これらの低分子干渉RNAすなわちsiRNAは、最初は該過程を開始するより大きなdsRNAに由来するとみられ、そして最終的に分解される標的RNAに相補的である。siRNAはそれら自身が各端で短い突出と二本鎖形成する。それらはガイドRNAとしてはたらき、相補性領域中の標的の単一の切断を指図する(Elbashirら、(2001)Genes
Dev 15:188−200;Zamoreら、(2000)Cell 101:25−33)。
【0062】
好ましくは、本発明のsiRNAは配列番号3若しくは配列番号5に示されるCOX−1のイントロン1のヌクレオチド配列に相補的である約21〜25ヌクレオチドを含んでなる。
【0063】
in vitro系からの長さが好ましくは21〜23ヌクレオチド(nt)のsiRNAの製造方法、および細胞若しくは生物体中の遺伝子のmRNAを妨害するためのsiRNAの使用は、第WO0175164 A2号明細書に記述されている。
【0064】
siRNAは安定発現系を使用してin vivoで哺乳動物細胞からもまた作成し得る。例えば哺乳動物細胞中でのsiRNAの合成を指図するpSUPERと命名されたベクター系が報告された(Brummelkampら、(2002)Science 296:550−3.)。
【0065】
本発明はヒトCOX−3核酸分子の単離方法を提供する。ヒトCOX−3転写物、好ましくは高レベルのhCOX−3転写物を有する細胞若しくは組織がhCOX−3のcDNA若しくはmRNAの単離に適する。適するcDNA源の選択は、配列番号3若しくは配列番号5に描かれるところのCOX−1のイントロン1の転写物に特異的にハイブリダイズするプライマーを使用するヌクレオチドハイブリダイゼーション若しくはRT−PCR分析により細胞抽出物若しくは全細胞中のhCOX−3転写物の存在についてスクリーニングすることにより実施し得る。COX−3核酸の単離のための例示的一供給源は大脳皮
質である。
【0066】
当該技術分野で既知の多様な手順のいずれかを使用してヒトCOX−3タンパク質をコードする核酸分子を単離し得る。例えば、cDNA若しくはゲノムDNAライブラリー、または上で同定された適する細胞からの全mRNAを鋳型としてかつ適切なオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、本発明の核酸分子を標準的なPCR増幅技術により増幅し得る。PCRからそのように増幅された核酸を適切なベクターにクローン化しかつDNA配列分析により特徴付けし得る。当業者は、配列番号3若しくは配列番号5の最低12の隣接するヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドがプライマーとしてとりわけ有用であることを認識するであろう。プライマーは標準的合成技術により、例えば自動化DNA合成機を使用して製造し得る。とりわけ好ましいプライマーは、hCOX−3遺伝子を検出するのに使用し得るがしかしCOX−1若しくはCOX−2のような他の既知のCOX遺伝子に結合しないものである。
【0067】
hCOX−3核酸分子の別の単離方法は、当業者により認識される手順を使用して1種若しくはそれ以上の天然の若しくは人工的に設計したプローブでゲノム若しくはcDNAライブラリー、またはあるいは全mRNAをプロービングすることである。例えば“Current Protocols in Molecular Biology”、Ausubelら(編)Greene Publishing Association and John Wiley Interecience、ニューヨーク、1989、1992を参照されたい。当業者は、配列番号3若しくは配列番号5の最低12の隣接するヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドがとりわけ有用なプローブであることを認識するであろう。プローブは最低20、30、40若しくは50塩基のような異なる長さを有し得る。こうしたプローブが、該プローブの同定を助長するように分析上検出可能な試薬で標識され得かつ好ましくは標識されることもまた認識される。有用な試薬は、限定されるものでないが放射性同位元素、蛍光色素若しくは検出可能な生成物の形成を触媒することが可能な酵素を挙げることができる。該プローブは、当業者が、全部過度の実験を伴わずに、ヒト、哺乳動物若しくは他の動物の供給源からのCOX−3タンパク質をコードするゲノムDNA、cDNA若しくはRNAポリヌクレオチドの相補的なコピーを単離するか、またはこうした供給源、例えば家族の付加的なメンバー、型および/若しくはサブタイプを、転写調節および制御要素ならびに本明細書で開示されるコーディング配列に関し5’および/若しくは3’である領域からの他の安定性、プロセシング、翻訳および組織特異性を決定する領域を包含する関連配列についてスクリーニングすることを可能にする。
【0068】
本発明の核酸分子の全部若しくは一部分に対応する核酸分子の別の製造方法は、標準的合成技術、例えば自動化DNA合成機を使用することによる。
【0069】
hCOX−3核酸分子の別の単離方法は逆遺伝学の方法を使用することによる。この例において、COX−3を精製し、そして部分的アミノ酸配列を自動化アミノ酸配列決定装置により決定する。特定の一アミノ酸配列の長さ全体を決定することは必要でないが、しかし、タンパク質からの4ないし8アミノ酸の2領域の直鎖配列が部分的なCOX−3のcDNAフラグメントのPCR増幅のためのプライマーの製造に必要である。適するアミノ酸配列が一旦同定されれば、それらをコードすることが可能なDNA配列を標準的合成技術により、例えば自動化DNA合成機を使用するか、あるいはcDNA若しくはゲノムDNAライブラリーまたは全mRNAを鋳型としてかつ該アミノ酸配列から推定される15ないし30の縮重オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用する確立したPCR増幅技術に従った縮重PCRによるかのいずれかで合成し得る。1種以上の遺伝暗号が特定の1アミノ酸をコードするのに使用されている可能性があるため、アミノ酸配列は一組の類似のDNAオリゴヌクレオチドのいずれかによりコードされ得る。従って、既知のアミノ
酸配列に基づく縮重PCRプライマーの設計において、特定の宿主におけるコドン使用頻度を考慮に入れる。しばしば、各プライマーは、鋳型DNAへの特異的ハイブリダイゼーションを助長するようにオリゴヌクレオチドのプールを含有する。最大でプールの1メンバーのみがhCOX−3配列に同一であることができかつhCOX−3 DNAにハイブリダイズすることが可能であることができるとは言え、わずかに不適合のプライマーもまた、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でhCOX−3 DNAにハイブリダイズしてPCR増幅反応を開始することが可能である。
【0070】
同定された供給源細胞からのcDNAライブラリーの調製もまた当該技術分野で公知の標準的技術により実施し得る。公知のcDNAライブラリー構築技術は、例えばManiatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二版(Cold Spring Harbor Laboratry、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989)に見出し得る。
【0071】
同定された供給源細胞からの全mRNAの単離は当該技術分野で公知の標準的技術により実施し得る。公知の全mRNA単離技術は、例えばManiatisら、上記に見出し得る。
【0072】
ゲノムDNAライブラリーの構築は当該技術分野で公知の標準的技術により実施し得る。公知のゲノムDNAライブラリーの構築技術は、Maniatisら、上記に見出し得る。
組換え発現ベクターおよび宿主細胞
本発明の別の局面は本発明の核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。
【0073】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での核酸の発現に適する形態の本発明の核酸を含んでなる。組換え発現ベクターは発現に使用されるべき宿主細胞に基づき選択された1個若しくはそれ以上の制御配列を包含する。これらの制御配列は発現されるべき核酸配列に作動可能に結合される。組換え発現ベクター内で、「作動可能に結合される」という用語は、目的のヌクレオチド配列が該ヌクレオチド配列の発現(例えばin vitro転写/翻訳系で、若しくはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞中で)を見込む様式で制御配列(1種若しくは複数)に結合されることを意味している。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベル、および遺伝子発現の当業者に既知であるその他の考慮のような因子に依存し得ることが当業者により認識されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入して、本明細書に記述されるところの核酸によりコードされる融合タンパク質若しくはペプチドを包含するタンパク質若しくはペプチドを生成させ得る。
【0074】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物(例えば大腸菌(E.coli))若しくは真核生物細胞(例えば、例えばバキュロウイルス発現ベクターを使用する昆虫細胞)、酵母細胞若しくは哺乳動物細胞)中での本発明のポリペプチドの発現のため設計し得る。適する宿主細胞は当業者に既知である。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを使用してin vitroで転写かつ翻訳し得る。
【0075】
原核生物中でのタンパク質の発現は、しばしば、融合若しくは非融合いずれかのタンパク質の発現を指図する構成的若しくは誘導可能なプロモーターを含有するベクターを用いて大腸菌(E.coli)で実施する。融合ベクターは該ベクターによりコードされるタンパク質に多数のアミノ酸を付加する(通常は組換えタンパク質のアミノ末端にアミノ酸を付加する)。こうした融合ベクターは、典型的に4つの目的、すなわち1)組換えタン
パク質の発現を増大させること;2)組換えタンパク質の溶解性を増大させること;3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製にて補助すること;4)マーカーとしてはたらくことにより組換えタンパク質の検出を助長することにかなう。しばしば、融合発現ベクターにおいては、融合タンパク質の精製後の融合部分からの組換えタンパク質の精製を可能にするように、タンパク質分解性の切断部位が融合部分および組換えタンパク質の結合部に導入される。こうした酵素およびそれらのコグネイトの認識配列は第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを包含する。典型的な融合発現ベクターは、標的組換えタンパク質にそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、プロテインA、若しくはポリ−Hisを融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smithら、(1988)、Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs、マサチューセッツ州ビバリー)、pRIT5(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、若しくはpQE(Qiagen)を包含する。こうしたベクターは本発明の範囲内に企図されている。
【0076】
適する誘導可能な非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの例は、pTrc(Amannら、(1988)、Gene 69:301−315)およびpETIId(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)60−89)を包含する。大腸菌(E.coli)中での組換えタンパク質発現を最大化するための一戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解性に切断する損なわれた能力を伴う宿主細菌中でタンパク質を発現させることである。別の戦略は、各アミノ酸の個々のコドンが大腸菌(E.coli)中で優先的に利用されるものとなるように、発現ベクター中に挿入されるべき核酸の核酸配列を変えることである。本発明の核酸配列のこうした変更は標準的DNA合成技術により実施し得る。
【0077】
別の態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母、ビール酵母菌(S.cerevisae)中での発現のためのベクターの例は、例えば、pYepSec1(Baldariら、(1987)、EMBO J 6:229−234)、pMFa(KurJanら、(1982)、Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら、(1987)、Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州サンディエゴ)およびpPicZ若しくはPichia(Invitrogen Corp、カリフォルニア州サンディエゴ)を包含する。
【0078】
あるいは、発現ベクターはバキュロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞中でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターは、限定されるものでないがpAc系列(Smithら、(1983)、Mol.Cell Biol.3:2156−2165)およびpVL系列(Lucklowら、(1989)、Virology 170:31−39)ならびにpBlueBacIII(Invitrogen)を挙げることができる。
【0079】
なお別の態様において、発現ベクターは哺乳動物発現ベクターである。哺乳動物細胞中で使用される場合、発現ベクターの制御機能はしばしばウイルスの調節要素により提供される。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびSV40由来である。哺乳動物発現ベクターの例は、限定されるものでないがpCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufinanら、(1987)、EMBO J 6:187−195)を挙げることができる。組換えCOX−3発現に適し得る商業的に入手可能な哺乳動物発現ベクターは、限定されるものでないがpMAMneo(Clontech)、pcD
NA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)pBPV−1(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)およびlZD35(ATCC 37565)を挙げることができる。
【0080】
別の態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは特定の細胞型中で優先的に核酸の発現を指図することが可能である(例えば、組織特異的調節要素を使用して核酸を発現させる)。組織特異的調節要素は当該技術分野で既知である。適する組織特異的プロモーターの制限しない例は、アルブミンプロモーター(肝特異的;Pinkertら、(1987)、Genes Dev.1:268−277)、T細胞受容体(Winotoら、(1989)、EMBO J 8:729−733)および免疫グロブリン(BaneiJiら、(1983)、Cell 33:729−740;Queenら、(1983)、Cell 33:741−748)のプロモーターを包含するリンパ球様特異的プロモーター(Calameら、(1988)、Adv.Immunol.43:235−275)を包含する。他のプロモーターはニューロン特異的プロモーター(例えば神経フィラメントプロモーター;Bymeら、(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵特異的プロモーター(Edlundら、(1985)、Science 230:912−916)および乳腺特異的プロモーター(例えばミルクホエイプロモーター;米国特許第4,873,316号明細書および欧州特許出願公開第264,166号明細書)を包含する。発達で調節されるプロモーターは例えば海生hox(marine hox)プロモーター(Kesselら、(1990)、Science 249:374−379)およびβ−フェトプロテインプロモーター(Campesら、(1989)、Genes Dev.3:537−546)もまた包含する。
【0081】
本発明はさらに、アンチセンスの向きで発現ベクターにクローン化された本発明のDNA分子を含んでなる組換えベクターを提供する。すなわち、該DNA分子は、本発明のポリペプチドをコードするmRNAに対しアンチセンスであるRNA分子の(DNA分子の転写による)発現を見込む様式で制御配列に作動可能に結合される。多様な細胞型においてアンチセンスRNA分子の継続的発現を指図することが可能である、アンチセンスの向きでクローン化された核酸に作動可能に結合された制御配列を選択し得、例えば、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的若しくは細胞型特異的発現を指図するウイルスのプロモーターおよび/若しくはエンハンサーまたは制御配列を選ぶことができる。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率の調節領域(その活性は該ベクターが導入された細胞型により決定され得る)の制御下で生成される、組換えプラスミド、ファージミド若しくは弱毒性ウイルスの形態であり得る。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節の論考については、Weintraubら(Reviews−Trends in Genetics、Vol.1(1)1986)を参照されたい。
【0082】
本発明はまた、哺乳動物細胞中での低分子干渉RNA(siRNA)の合成を指図する組換えベクター系も提供する。哺乳動物細胞中でのsiRNAの合成を指図する例示的一ベクター系はpSUPER(Brummelkampら、2002、上記)である。pSUPER上で、H1−RNAプロモーターを遺伝子特異的ターゲッティング配列(同一配列の逆相補物から短いスペーサーにより分離されている標的転写物からの19ntの配列)および終止シグナルとしての5個のチミジン(T5)の前にクローン化した。生じる転写物は、それ自身上で折り返されてC.エレガンス(C.elegans)のLet−7のものに似た19塩基対のステム−ループ構造を形成すると予測される。該ループ(短い
スペーサー)の大きさは好ましくは9bpである。ポリアデノシン尾部を欠き、十分に定義された転写開始および一列の5個のチミジン(T5)よりなる終止シグナルを伴う低分子RNA転写物が生成された。最も重要なことには、終止部位での該転写物の切断が第二のウリジンの後であり2個の3’の突出したT若しくはUヌクレオチドもまた含有する合成siRNAの末端に似た転写物を生じる。pSUPERから発現されるsiRNAは合成siRNAと同じくらい効率的に遺伝子発現を崩壊させることが可能である。
【0083】
特別に設計されたベクターは、細菌−酵母若しくは細菌−動物細胞若しくは細菌−真菌細胞若しくは細菌−無脊椎動物細胞のような宿主間のDNAのシャトリングを可能にする。多数のクローニングベクターが当業者に既知であり、そして適切なクローニングベクターの選択は選択の問題である。原核生物および真核生物双方の細胞のための他の適する発現系については、Maniatisら、上記の第16および17章を参照されたい。
【0084】
本発明の別の局面は、本発明の組換え発現ベクターが導入された組換え宿主細胞に関する。
【0085】
トランスフェクションに適することができかつ商業的に入手可能である哺乳動物種由来の細胞株は、限定されるものでないが、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、MRC−5(ATCC CCL 171)、キイロショウジョウバエ属(Drosophila)若しくはネズミのL−細胞、およびHEK−293(ATCC CRL1573)ならびにサル腎細胞を挙げることができる。
【0086】
ベクターDNAは慣習的な形質転換若しくはトランスフェクション技術を介して原核生物若しくは真核生物細胞に導入し得る。本明細書で使用されるところの「形質転換」若しくは「トランスフェクション」という用語は、細胞が外来DNAを取り込みかつその外来DNAをそれらの染色体に組込んでも若しくは組込まなくてもよい過程を指す。トランスフェクションは例えばリン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクション、リポフェクション、または電気穿孔法、プロトプラスト融合を包含する多様な技術により達成し得る。宿主細胞の適する形質転換若しくはトランスフェクション方法はManiatisら(上記)および他の実験室手引き書に見出し得る。
【0087】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのために、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、細胞の小画分のみが外来DNAをそれらのゲノム中に組込みうることが既知である。これらの組込み体を同定かつ選択するために、選択可能なマーカー(例えばある薬物に対する耐性についての)をコードする遺伝子を一般に目的の遺伝子と一緒に宿主細胞に導入する。好ましい選択可能なマーカーは、G418、ヒグロマイシンおよびメトトレキセートのような薬物に対する耐性を賦与するものを包含する。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞を薬物選択により同定し得る(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組込んだ細胞は生き残ることができる一方、他の細胞は死ぬ)。
【0088】
別の態様において、細胞、細胞株若しくは微生物内の内因性のhCOX−3核酸の発現の特徴を、挿入された調節要素が内因性遺伝子と効果的に結合しかつ該内因性遺伝子を制御、調節若しくは活性化するような細胞、安定細胞株若しくはクローン化微生物のゲノム中に目的の内因性遺伝子に対し異種のDNA調節要素を挿入することにより改変し得る。
【0089】
異種調節要素は安定細胞株若しくはクローン化微生物中に挿入し得、その結果、それは当業者に公知でありかつ例えばChappel、米国特許第5,272,071号明細書;1991年5月16日公開のPCT公開第WO 91/06667号明細書に記述されるターゲッティングされた(targeted)相同的組換えのような技術を使用して、内因性のhCOX−3遺伝子に効果的に結合されかつそれの発現を活性化する。
【0090】
本発明の組換え宿主細胞はまたヒト以外のトランスジェニック動物を製造するのにも使用し得る。例えば、一態様において、本発明の宿主細胞は、本発明のポリペプチドをコードする配列を導入した受精卵若しくは胚幹細胞である。こうした宿主細胞をその後、本発明のポリペプチドをコードする外因性の配列がそれらのゲノム中に導入されたヒト以外のトランスジェニック動物、若しくは本発明のポリペプチドをコードする内因性の配列が変えられた相同的組換え動物を創製するのに使用し得る。こうした動物は該ポリペプチドの機能および/若しくは活性を研究するため、ならびにポリペプチド活性の調節物質を同定かつ/若しくは評価するために有用である。本明細書で使用されるところの「トランスジェニック動物」は、該動物の細胞の1個若しくはそれ以上が導入遺伝子を包含するヒト以外の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラット若しくはマウスのようなげっ歯類である。トランスジェニック動物の他の例はヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などを包含する。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中に組込まれかつ成熟動物のゲノム中に留まってそれにより該トランスジェニック動物の1種若しくはそれ以上の細胞型若しくは組織中でのコードされる遺伝子産物の発現を指図する外因性DNAである。ヒト以外のトランスジェニック動物のクローンはWilmutら、(1997)、Nature 3 8 5:8 10−813ならびにPCT公開第WO 97/07668号および同第WO 97/07669号明細書に記述される方法に従ってもまた製造し得る。
本発明の単離されたポリペプチド
本発明の他の一局面は実質的に精製されたhCOX−3ポリペプチドに関する。本発明は、アラキドン酸をプロスタグランジン前駆体プロスタグランジンH2に転化することが可能でありかつ配列番号4若しくは配列番号6に対する約60%以上のアミノ酸配列の同一性、好ましくは約65、70、75、80、85、90若しくは95%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、実質的に精製されたポリペプチドを提供する。2種のポリペプチド間の配列の同一性は上述された方法を使用して決定し得る。
【0091】
好ましい一態様において、本発明のポリペプチドは配列番号9若しくは配列番号11に実質的に同一であるアミノ酸配列を含んでなる。
【0092】
本発明の単離されたポリペプチドはキメラ若しくは融合タンパク質を包含する。本明細書で使用されるところの「キメラタンパク質」若しくは「融合タンパク質」は異種ポリペプチド(すなわち本発明の同一のポリペプチド以外のポリペプチド)の全部若しくは一部に作動可能に結合された本発明のポリペプチドの全部若しくは(好ましくは生物学的に活性の)一部を含んでなる。融合タンパク質内で、「作動可能に結合される」という用語は、本発明のポリペプチドおよび該異種ポリペプチドが相互にインフレームで融合されることを示すことを意図している。異種ポリペプチドは本発明のポリペプチドのN末端若しくはC末端に融合し得る。
【0093】
有用な融合タンパク質の一例は、本発明のポリペプチドがHAおよびポリHisから作成される標識にC末端で融合されるHAHis融合タンパク質である。こうした融合タンパク質は本発明の組換えポリペプチドの検出および精製を助長する。
【0094】
本発明は本発明のポリペプチドの発現若しくは単離方法に関する。一態様において、ポ
リペプチドは標準的なタンパク質精製技術を使用した適切な精製スキームにより、天然に該タンパク質を発現する細胞若しくは組織供給源から単離し得る。別の態様において、本発明のポリペプチドは組換えDNA技術により製造する。あるいは、本発明のポリペプチドはin vitro翻訳および/若しくは転写系で合成し得る。さらにあるいは、本発明のポリペプチドは標準的ペプチド合成技術を使用して化学的に合成し得る。
【0095】
本発明のポリペプチドは、本発明のDNA分子を上述された発現ベクターにクローン化すること、こうしたベクターを本明細書に記述される原核生物若しくは真核生物宿主細胞に導入すること、および組換えhCOX−3タンパク質の生成に適する条件下で該宿主細胞を増殖させることにより組換え的に発現させ得る。発現ベクターを含有する細胞をクローン的に繁殖させ、そして個別に分析してそれらがhCOX−3タンパク質を生成するかどうかを決定する。hCOX−3を発現する宿主細胞クローンの同定は、限定されるものでないが、抗hCOX−3抗体との免疫学的反応性および宿主細胞と関連するhCOX−3活性の存在を挙げることができるいくつかの手段により行うことができる。適切な増殖条件および回収方法の選択は当該技術分野の熟練内にある。ポリペプチドの組換え的発現技術はManiatis,T,ら、上記に完全に記述され、そして当該技術分野で公知である。
【0096】
本発明のポリペプチドはin vitro翻訳および/若しくは転写系を使用してもまた製造し得る。こうした方法は当業者に既知である。例えば、合成のhCOX−3 mRNA若しくはhCOX−3生成細胞から単離したmRNAは、限定されるものでないがコムギ胚芽抽出物および網状赤血球抽出物を挙げることができる多様な細胞を含まない系で効率的に翻訳され得る。あるいは、hCOX−3 cDNAのコーディング配列をT7プロモーターの制御下にクローン化し得る。その後、この構築物を鋳型として使用して、例えばPromega(ウィスコンシン州マディソン)から商業的に入手可能なもののようなTNT T7と組み合わせた(coupled)網状赤血球ライセート系を使用して、hCOX−3タンパク質をin vitro転写および翻訳系で生成させ得る。
【0097】
本発明のポリペプチドはまた、既知のアミノ酸配列若しくは目的の遺伝子のDNA配列由来のアミノ酸配列を使用する自動化ペプチド合成機での固相ペプチド合成のような化学合成によっても製造し得る。
【0098】
ヒトCOX−3タンパク質は当業者に既知の方法により精製し得る。例えば、天然の宿主細胞からのhCOX−3、若しくは組換え宿主からの組換えhCOX−3を、塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、HPLC、ならびにFPLC、ならびに抗体/リガンドアフィニティークロマトグラフィーの多様な組合せ若しくは個別の適用により、細胞ライセートおよび抽出物若しくは馴化培地から精製し得る。
【0099】
例えば、hCOX−3タンパク質は、生来のhCOX−3若しくはそのフラグメントに特異的なモノクローナル若しくはポリクローナル抗体を用いて作成した免疫親和性カラムの使用により他の細胞性タンパク質から分離し得る。抗体アフィニティーカラムは、該抗体がゲルビーズ支持体と共有結合を形成するようなゲル支持体に抗体を添加することにより作成する。好ましい共有結合は抗体上に含有されるアミン、アルデヒド若しくはスルフヒドリル残基により作成される。抗体上のアルデヒド若しくは遊離スルフヒドリル基の生成方法は当該技術分野で公知であり、例えば、アミン基は一例においてN−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応性である。該アフィニティー樹脂をその後、適する緩衝液、例えばリン酸緩衝生理的食塩水(pH7.3)で平衡化し、そしてhCOX−3を含有する細胞培養上清若しくは細胞抽出物にカラムをゆっくりと通過させる。カラムをその後、
光学密度(A280)がバックグラウンドまで下落するまで緩衝液で洗浄する。その後、0.23Mグリシン−HCl(pH2.6)のような緩衝液を使用してpHを低下させることによるような緩衝条件を変えることによりタンパク質を溶出する。精製したhCOX−3タンパク質をその後、リン酸緩衝生理的食塩水のような適する緩衝液に対し透析する。
本発明のポリペプチドに対する抗体
本発明の別の局面は本発明のヒトCOX−3に特異的に結合する抗体に関する。とりわけ、該抗体は配列番号4若しくは配列番号6に対する約60%以上のアミノ酸配列の同一性、好ましくは約65、70、75、80、85、90若しくは95%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列をもつポリペプチドに特異的に結合する。好ましくは、本発明の抗体はヒトCOX−1若しくはヒトCOX−2を認識することができないがしかしヒトCOX−3のみを認識することができる。多様な態様において、本発明の実質的に精製された抗体若しくはそれらのフラグメントはヒト、ヒト以外、キメラおよび/若しくはヒト化抗体であり得る。本発明のこうした抗体および抗体フラグメントは、限定されるものでないがヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウマ、ニワトリ若しくはウサギ抗体のような多様な供給源由来であり得る。本発明に関する抗体はポリクローナル若しくはモノクローナル抗体であり得る。
【0100】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体製造のための標準的技術を使用して抗体を生成するための免疫原として使用し得る配列番号4若しくは配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド、またはそれらのフラグメント。とりわけ好ましい免疫原組成物は、例えば動物以外の宿主細胞すなわち細菌宿主細胞から組換え的に発現された免疫原若しくは化学合成したオリゴペプチドのような他の動物タンパク質を含有しないものである。
【0101】
ポリクローナル抗体は、免疫アジュバントとともに若しくは伴わずに本発明の免疫原でマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ウマなど(ウサギが好ましい)のような適する被験体動物を免疫することにより生じさせ得る。免疫前血清を第一の免疫化前に収集し得る。好ましくは、各動物は許容できる免疫アジュバントと会合した若しくはしていない約0.001mgと約1000mgとの間の免疫原を受領する。こうした許容できるアジュバントは、限定されるものでないがフロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、ミョウバン沈殿物、ざ瘡プロピオンバクテリウム(Corynebacterium parvum)およびtRNAを含有する油中水型乳剤を挙げることができる。初期免疫化は、皮下(SC)、腹腔内(IP)のいずれか若しくは双方の複数の部位での好ましくはフロイントの完全アジュバント中の免疫原よりなる。各動物は定期的な間隔で(好ましくは毎週)採血して抗体力価を測定する。動物は初期免疫化後に追加免疫注入を受領しても若しくはしなくてもよい。追加免疫注入を受領する動物は、一般に、フロイントの不完全アジュバント中の等量の抗原を同一経路により与えられる。追加免疫注入は最大の力価が得られるまで約3週間隔で与える。各追加免疫注入後7日に、若しくは単一の免疫化後ほぼ毎週、動物を採血し、血清を収集し、そしてアリコートを約−20℃で保存する。
【0102】
モノクローナル抗体(mAb)は近交系マウス(好ましくはBalb/c)を免疫原で免疫して製造する。マウスは、上で論考されたとおり、等容量の許容できるアジュバント中に組込んだ約0.1mlの緩衝液若しくは生理的食塩水中の約0.001mgないし約1.0mg、好ましくは約0.1mgの免疫原でIP若しくはSC経路により免疫する。フロイントのアジュバントが好ましく、フロイントの完全アジュバントを初回免疫化に使用しかつフロイントの不完全アジュバントをその後使用する。マウスは第0日に初回免疫化を受領しかつ約2ないし約30週間休ませる。免疫したマウスに、リン酸緩衝生理的食塩水のような緩衝溶液中の約0.001ないし約1.0mgのヒトCOX−3若しくはそ
のフラグメントの1回若しくはそれ以上の追加免疫を静脈内(IV)経路により与える。抗体陽性マウスからのリンパ球(好ましくは脾リンパ球)は、免疫したマウスから当該技術分野で既知の標準的手順により脾を取り出すことにより得る。ハイブリドーマ細胞は、安定なハイブリドーマの形成を可能にすることができる条件下で脾リンパ球を適切な融合パートナー、好ましくは骨髄腫細胞と混合することにより製造する。融合パートナーは限定されるものでないが:マウス骨髄腫P3/NS1/Ag 4−1;MPC−11;S−194およびSp2/0を挙げることができ、Sp2/0が一般に好ましい。抗体生成細胞および骨髄腫細胞を約30%から約50%までの濃度のポリエチレングリコール(分子量約1000)中で融合させる。融合したハイブリドーマ細胞を、当該技術分野で既知の手順によりヒポキサンチン、チミジンおよびアミノプテリンを補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中での増殖により選択する。上清液体を増殖陽性のウェルから約第14、18および21日に収集し、そして抗原としてヒトCOX−3若しくはそのフラグメントを使用する固相イムノラジオアッセイ(SPIRA)のようなイムノアッセイにより抗体生成についてスクリーニングする。培養液体はまた、mAbのアイソタイプを決定するためにオークターロニー沈降アッセイでも試験し得る。抗体陽性のウェルからのハイブリドーマ細胞を、MacPherson、Soft Agar Techniques、Tissue Culture Methods and Applications、KruseとPaterson編、Academic Press、1973中のソフトアガー技術のような既知の技術若しくは制限希釈技術によりクローン化する。
【0103】
モノクローナル抗体は、プライミング後最低約4日の約1×10ないし約6×10ハイブリドーマ細胞を用いるマウスあたりおよそ0.5mlのプリスタンでプライミングしたBalb/cマウスの注入によりin vivoで生成させる。細胞移入後およそ8〜12日に腹水を収集し、そしてモノクローナル抗体を当該技術分野で既知の技術により精製する。
【0104】
モノクローナルAbはまた、当該技術分野で公知の組織培地中でハイブリドーマを増殖させることによりin vitroでも製造し得る。高密度のin vitro細胞培養物を伝導して、当該技術分野で公知の中空ファイバー培養技術、エアリフトリアクター、ローラーボトル若しくはスピナーフラスコ培養技術を使用して大量のmAbを生成させる。mAbは当該技術分野で既知の技術により精製する。
【0105】
腹水若しくはハイブリドーマ培養液体の抗体力価は、限定されるものでないが沈降法、受動凝集、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)技術およびラジオイムノアッセイ(RIA)技術を挙げることができる多様な血清学的若しくは免疫学的アッセイにより測定する。類似のアッセイを使用して体液若しくは組織および細胞抽出物中のCOX−3の存在を検出する。
【0106】
抗体分子は哺乳動物(例えば血液)若しくは培養細胞から単離しかつプロテインAクロマトグラフィーのような公知の技術によりさらに精製してIgG画分を得ることができる。あるいは、本発明のタンパク質若しくはポリペプチドに特異的な抗体は例えばアフィニティークロマトグラフィーについて選択(例えば部分的に精製)若しくはそれにより精製し得る。例えば、本発明の組換えで発現されかつ精製(若しくは部分的に精製)されるタンパク質を本明細書に記述されるとおり製造し、そして例えばクロマトグラフィーカラムのような固体支持体に共有若しくは非共有結合する。その後該カラムを使用して、多数の異なるエピトープに向けられた抗体を含有するサンプルから本発明のタンパク質に特異的な抗体をアフィニティー精製して、それにより実質的に精製された抗体組成物、すなわち汚染する抗体を実質的に含まないものを生成させ得る。実質的に精製された抗体組成物により、この情況において、抗体サンプルがせいぜいわずか30%(乾燥重量)の本発明の所望のタンパク質若しくはポリペプチド上のもの以外のエピトープに向けられた汚染する
抗体を含有することを意味しており、そして、好ましくはサンプルのせいぜい20%、なおより好ましくはせいぜい10%、および最も好ましくはせいぜい5%(乾燥重量)が汚染する抗体である。精製された抗体組成物は、該組成物中の抗体の最低99%が本発明の所望のタンパク質若しくはポリペプチドに向けられていることを意味している。
【0107】
加えて、標準的な組換えDNA技術を使用して作成し得るヒトおよびヒト以外の双方の部分を含んでなるキメラおよびヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗体が本発明の範囲内にある。キメラ抗体は、その中で多様な部分がマウスmAb由来の可変領域−およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもののような異なる動物種由来である分子である(例えばCabillyら、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。ヒト化抗体はヒト以外の種からの1種若しくはそれ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からの枠組み領域を有するヒト以外の種からの抗体分子である(例えばQueen、米国特許第5,585,089号明細書を参照されたい)。こうしたキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、例えばPCT公開第WO 87/02671号明細書に記述される方法を使用して、当該技術分野で既知の組換えDNA技術により製造し得る。
【0108】
完全にヒトの抗体がヒト患者の治療的処置にとりわけ望ましい。こうした抗体は例えば内因性の免疫グロブリンHおよびL鎖遺伝子を発現することが不可能でありかつヒトHおよびL鎖遺伝子もまた発現し得るトランスジェニックマウスを使用して製造し得る。該トランスジェニックマウスを、選択した抗原、例えば本発明のポリペプチドの全部若しくは一部分で通常の様式で免疫する。該抗原に向けられたモノクローナル抗体は慣習的ハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスにより担持されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子がB細胞分化の間に再配列し、そしてその後クラススイッチおよび体細胞突然変異を受ける。従って、こうした技術を使用して、治療上有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を製造することが可能である。ヒト抗体の製造のためのこの技術の概要については、Lonbergら、(1995)、Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照されたい。
【0109】
選択したエピトープを認識する完全にヒトの抗体は「誘導選択(guided selection)」と称される技術を使用して生成し得る。このアプローチにおいて、選択したヒト以外のモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を使用して、同一エピトープを認識する完全にヒトの抗体の選択が誘導される(Jespersら、(1994)、Bioltechnology 12:899−903)。
【0110】
本発明の抗体(例えばモノクローナル抗体)を使用して、アフィニティークロマトグラフィー若しくは免疫沈降法のような標準的技術により本発明のポリペプチドを単離し得る。さらに、こうした抗体を使用して、該ポリペプチドの豊富さおよび発現パターンを評価するために(例えば細胞ライセート若しくは細胞上清または細胞膜調製物中の)該タンパク質を検出し得る。該抗体は例えば、例えば所定の処置レジメンの有効性を決定するための臨床試験手順の一部として組織中のタンパク質レベルをモニターするために診断的にもまた使用し得る。検出は抗体を検出可能な物質に結合することにより助長し得る。検出可能な物質の例は、多様な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射活性物質を包含する。適する酵素の例は、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼを包含し;適する補欠分子団複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを包含し;適する蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド若しくはフィコエリトリンを包含し;発光物質の一例はルミノールを包含し;生物発光物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを包含し、そして適する放
射活性物質の例は125I、131I、35S若しくはHを包含する。
【0111】
さらに、抗体(若しくはそのフラグメント)はサイトトキシン、治療薬若しくは放射活性金属イオンのような治療的部分に複合させ得る。サイトトキシンすなわち細胞傷害性の剤は細胞に有害であるいかなる剤も包含する。例は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、I−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにそれらのアナログ若しくは相同体を包含する。治療薬は、限定されるものでないが、代謝拮抗薬(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCN−LJ)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびcis−ジクロロジアミン白金(11)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソラビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂薬(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)を挙げることができる。
【0112】
本発明の複合物は所定の生物学的応答を改変するのに使用し得、該薬物部分は古典的な化学的治療薬に制限されると解釈されるべきでない。例えば、薬物部分は所望の生物活性を有するタンパク質若しくはポリヌクレオチドであり得る。あるいは、抗体を第二の抗体と複合させて米国特許第4,676,980号明細書にSegalにより記述されるところの抗体異種複合物を形成し得る。
検出方法
本発明はまた、サンプル中の本発明のポリペプチド若しくは核酸の検出方法にも関する。該サンプルは、限定されるものでないが被験体から採取した生物学的サンプル、化学合成したサンプルおよび実質的に精製されたサンプルを挙げることができるいかなる型のサンプルでもあり得る。こうしたアッセイを診断目的上使用し得る。
【0113】
一態様において、本発明は、配列番号3若しくは配列番号5の配列をもつ核酸分子にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸プローブとサンプルを接触させる段階、および該プローブ−核酸分子複合体を検出する段階を含んでなる、ヒトCOX−3遺伝子の核酸分子の検出方法を提供する。限定されるものでないがノーザン若しくはサザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーションおよびRT−PCRを挙げることができる核酸分子の検出方法は当業者に既知である。
【0114】
別の態様において、本発明は、配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%、80%若しくは90%の配列の同一性を有するポリペプチドに選択的に結合する抗体とサンプルを接触させる段階、および該タンパク質−抗体複合体を検出する段階を含んでなる、ヒトCOX−3タンパク質の検出方法を提供する。限定されるものでないが酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降法および免疫組織化学を挙げることができるポリペプチドの検出方法が当業者に既知である。
【0115】
hCOX−3タンパク質はまたサンプル内のシクロオキシゲナーゼ−3活性を測定することによっても検出し得る。こうしたアッセイは:a)シクロオキシゲナーゼ−1若しくは−2のいずれよりもシクロオキシゲナーゼ−3の阻害においてより強力である剤とともに試験サンプルをインキュベートする段階;b)シクロオキシゲナーゼの基質を試験サン
プルに曝露する段階;およびc)試験サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性を測定する段階、およびそれを対照のものと比較する段階を含んでなり、ここで、試験サンプルはシクロオキシゲナーゼの基質に曝露され、そしてシクロオキシゲナーゼ−1若しくは−2のいずれよりもシクロオキシゲナーゼ−3の阻害においてより強力である剤に曝露されない。
【0116】
シクロオキシゲナーゼ−1若しくは−2のいずれよりもシクロオキシゲナーゼ−3の阻害においてより強力である剤はイヌCOX−3の研究に基づき当該技術分野で既知である(Chandrasekharanら、2002、上記)。こうした剤はアセトアミノフェン、フェナセチン、ジピロン、アスピリン、ジクロフェナク、イブプロフェンなどから選択し得る。
【0117】
上に列挙される剤はCOX−3活性を優先的に阻害するため、これらの剤は、COX−1若しくはCOX−2を含んでなるサンプル中よりもCOX−3を含んでなるサンプル中でより大きくシクロオキシゲナーゼ活性を低下させるであろう。
【0118】
多数の方法を使用して生物学的サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性を測定し得る。好ましい一態様において、COX活性は放射測定(Dyerら、1995、Inflam.Res.44、S241)若しくはイムノアッセイ技術(Reitzら、1994、J.Med.Chem.37:3878−3881)を使用して、アラキドン酸から生成されるプロスタノイドの量により測定し得る。アラキドン酸から生成されるプロスタノイドは、限定されるものでないがPGD、PGE、PGF2α、PGIおよびトロンボキサンA(TxA)を挙げることができる。一態様において、COX活性は、Amersham Corp.からのキット、バイオトラク[BioTrak]TM PGEを使用するエンザイムイムノアッセイにより、アラキドン酸から生成されるPGEの量により測定し得る。別の例において、COX活性は、Cayman Chemical Companyからの商業的に入手可能なキット(カタログ番号560131若しくは560101)を使用して、EIAを介してのCOX由来のPGH2のSnCl還元により生成されるPGF2αの量により測定し得る。あるいは、COX活性は、PGE若しくはPGF2αの量を測定するためのものに類似の方法を使用して、アラキドン酸から生成される他のプロスタノイドの量により測定し得る。
【0119】
別の態様において、COX活性は基質の存在下でのCOX依存性の酸素消費量を測定することにより測定し得る(Scheweら、1991、Pharmazie、46、804−809;Hsuanyuら、1992、J.Biol.Chem.267、17649−17657)。
【0120】
別の好ましい態様において、COX活性はCOX酵素と関連するペルオキシダーゼ活性により測定し得る。ペルオキシダーゼ活性はヒドロペルオキシドPGのPGHへのその後の還元を触媒する。COXのペルオキシダーゼ活性は、ホモバリニン酸(Percivalら、1994、Arch.Biochem.Biophys.315:111−118)若しくはN,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン(TMPD)(Copelandら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:11202−11206)のような色素形成性若しくは蛍光発生性である還元剤の補助基質を使用して測定し得る。あるいは、COXのペルオキシダーゼ活性はリアルタイム発光アッセイ(Faranzら、1998、Anal.Biochem.264:216−221)でのルミノール(5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1−4−フタラジンジオン)の還元により測定し得る。
【0121】
多様な商業的に入手可能なキットを使用してCOXと関連するペルオキシダーゼ活性を測定し得る。例えば、ペルオキシダーゼに誘導されるルミノール発光アッセイキットがA
ssay Designs,Inc.(カタログ番号907−003)から入手可能であり;また、化学発光アッセイキットはCayman Chemical Company(カタログ番号760101)から入手可能であり;および比色アッセイキット(カタログ番号760111)はCayman Chemical Companyから。
【0122】
本発明はまた、生物学的サンプル(試験サンプル)中の本発明のポリペプチド若しくは核酸の存在を検出するためのキットも包含する。こうしたキットを使用して、被験体がhCOX−3に関係する障害に罹っているか若しくはそれを発症する増大した危険にさらされているかどうかを決定し得る。こうしたキットは、好ましくは、緊密な局限の最低1個の容器中に保持するのに適する区分された担体を含んでなる。該担体は標識抗原若しくは酵素基質などのような検出のための手段を含有し得る。例えば、該キットは、該ポリペプチド若しくは該ポリペプチドをコードするmRNAを検出することが可能な標識化合物若しくは剤、ならびにサンプル中のポリペプチド若しくはmRNAの量を測定するための手段(例えば、該ポリペプチドを結合する抗体、または該ポリペプチドをコードするDNA若しくはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を含み得る。該キットはまた、該ポリペプチド若しくは該ポリペプチドをコードするmRNAの量が正常レベルより上若しくは下である場合に試験被験体が該ポリペプチドの異常発現と関連する障害に罹っているか若しくはそれを発症する危険にさらされているかどうかを決定するための説明書も包含し得る。
【0123】
抗体に基づくキットについて、該キットは、例えば:(1)配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに選択的に結合する第一の抗体(例えば固体支持体に結合された抗体)、および、場合によっては;(2)第一の抗体、若しくは、第一の抗体が異なるエピトープに結合しかつ第二の抗体が検出可能な剤に複合するポリペプチドのいずれかに結合する第二の抗体;および(3)陽性対照としての精製された組換えhCOX−3タンパク質を含み得る。好ましくは、第一の抗体はヒトCOX−3にのみ結合するがしかしヒトCOX−1若しくはヒトCOX−2、またはイヌのような他の種からのCOX−3に結合しない。
【0124】
hCOX−3活性に基づくキットについて、該キットは、例えば:(1)COX−1若しくはCOX−2のいずれよりもCOX−3の阻害においてより強力である剤;(2)COX−3の基質;(3)COX活性を検出するのに使用し得る手段、および(4)陽性対照としての精製された組換えhCOX−3タンパク質を含み得る。シクロオキシゲナーゼ−1若しくはCOX−2のいずれよりもシクロオキシゲナーゼ−3の阻害においてより強力である剤は、アセトアミノフェン、フェナセチン、ジピロン、アスピリン、ジクロフェナク、イブプロフェンなどから選択し得る。COX−3の基質は、結合されたアラキドン酸、またはCOX−3のペルオキシダーゼ活性により触媒される場合に色素形成性、蛍光発生性若しくは発光を生成することが可能である還元剤の補助基質と結合されたアラキドン酸であり得る。こうした還元剤の補助基質は、限定されるものでないがホモバニリン酸、TMPD、ルミノールなどを挙げることができる。COX活性を検出するのに使用し得る手段は、EIAによりアラキドン酸からの生成されたプロスタノイドを検出する、または還元剤の補助基質から生じる色素形成、蛍光発生若しくは発光反応を検出するための手段であり得る。
【0125】
オリゴヌクレオチドに基づくキットについて、該キットは、例えば:(1)配列番号3若しくは配列番号5に対する最低80%の配列の同一性を有する核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、または(2)配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の配列の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を増幅するのに有用な一対のプライマーを含み得る。該キットはまた、例えば緩衝剤、保存剤若しくはタンパク質安定剤も含み得る。該キットはまた、
検出可能な剤(例えば酵素若しくは基質)を検出するのに必要な成分も含み得る。該キットはまた、アッセイしかつ試験サンプルと比較し得る1種の対照サンプル若しくは一連の対照サンプルも含有し得る。キットの各成分は通常は個々の容器内に入れられ、そして多様な容器の全部が好ましくは単一包装内に含有される。
【0126】
本発明はまた、hCOX−3遺伝子中の遺伝子の損傷若しくは突然変異の検出方法も提供する。好ましい態様において、該方法は:(a)サンプルからヒトシクロオキシゲナーゼ−3のポリヌクレオチドを単離する段階;および(b)該ヒトシクロオキシゲナーゼ−3のポリヌクレオチドをシークェンシングして遺伝子配列中の変化を検出する段階を含んでなる。
【0127】
目的の遺伝子突然変異若しくは遺伝子の損傷の例は、限定されるものでないが:1)遺伝子からの1個若しくはそれ以上のヌクレオチドの欠失;2)遺伝子への1個若しくはそれ以上のヌクレオチドの付加;3)遺伝子の1個若しくはそれ以上のヌクレオチドの置換;4)遺伝子の染色体再配列;5)遺伝子のメッセンジャーRNA転写物のレベルの変化;6)ゲノムDNAのメチル化パターンのような遺伝子の異常な修飾;7)遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野性型のスプライシングパターンの存在;8)該遺伝子によりコードされるタンパク質の非野性型のレベル;9)遺伝子の対立遺伝子喪失;および10)該遺伝子によりコードされるタンパク質の不適切な翻訳後修飾の検出を挙げることができる。これらの遺伝子の損傷若しくは突然変異の検出方法は当該技術分野で公知である。PCR反応、制限酵素切断パターン、サンプルおよび対照核酸をハイブリダイズすること、シークェンシング反応、電気泳動の移動度の変化、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅および選択的プライマー伸長のような遺伝子中の損傷を検出するのに使用し得る当該技術分野で既知の多数のアッセイ技術が存在する。
遺伝子治療を使用する処置方法
本発明は、遺伝子治療を使用してhCOX−3の発現を増大若しくは減少させることによるhCOX−3に関係する障害の危険にさらされている若しくはそれに罹っている被験体の治療方法を提供する。
【0128】
イヌにおいて、COX−3はアセトアミノフェンのような鎮痛/解熱薬により選択的に阻害され、COX−3がこの型の薬物の標的でありうることを示唆している(Chandrasekharanら、2002、上記)。従って、遺伝子治療を介してCOX−3の発現を低下させることが、熱を低下させることおよび疼痛を緩和することのようなアセトアミノフェン型の薬物で得られるものと類似の治療効果を達成するであろうことが予見可能である。遺伝子治療は、鎮痛薬の継続投与が必要とされる慢性の疼痛若しくは発熱の治療において好ましい。とりわけ、全部のNSAIDでそうであるため、アセトアミノフェンの鎮痛作用は、用量の増大が効果の小さな増大のみを生じさせる天井効果により制限される(Beaver、1988、Am J.Med.、84(Supple 5A):3−15)。
【0129】
加えて、統計学的に有意の逆相関がアセトアミノフェンの使用と卵巣癌の危険との間で見出された(Cramerら、1998、Lancet 351:104−7)。従って、遺伝子治療を介してヒトCOX−3の発現を減少させることは、アセトアミノフェンを毎日服用していると報告した女性が使用を報告していない女性よりも卵巣癌からの45%よりより低い死亡率を有したという前向き試験からの結果(Rodriguezら、1998、Lancet、352:1354−5)に基づき、卵巣癌の死亡率の低下において有用な治療でありうる。
【0130】
一態様において、COX−3アンチセンス治療を使用して細胞中のhCOX−3の発現を低下させ得る。COX−3アンチセンス治療は低下されたhCOX−3活性が望ましい
場合にとりわけ有用である。
【0131】
アンチセンスに基づく戦略の原理は、遺伝子発現の配列特異的抑制がmRNAと相補アンチセンス種との間の細胞内ハイブリダイゼーションにより達成され得るという仮説に基づく。ハイブリッドRNA二重鎖の形成は、その場合、標的COX−3 mRNAのプロセシング/輸送/翻訳および/若しくは安定性を妨害し得る。ハイブリダイゼーションはアンチセンス効果が起こるために必要とされる。アンチセンス戦略は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、アンチセンスRNAの注入およびアンチセンスRNA発現ベクターのトランスフェクションを包含する多様なアプローチを使用し得る。センス鎖へのアンチセンスのハイブリダイゼーションにより誘導される表現型の効果は、タンパク質レベル、タンパク質活性の測定値および標的mRNAレベルのような基準の変化に基づく。
【0132】
アンチセンス核酸は、hCOX−3遺伝子のコーディング鎖全体若しくはその一部分にのみ相補的であり得る。アンチセンス核酸分子はまた、hCOX−3遺伝子のコーディング鎖の非コーディング領域の全部若しくは一部に相補的であり得る。非コーディング領域(「5’および3’UTR」)はコーディング領域に隣接しかつアミノ酸に翻訳されない5’および3’配列である。好ましくは、非コーディング領域はhCOX−3遺伝子の転写若しくは翻訳のための調節領域である。
【0133】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば配列番号3若しくは配列番号5の相補配列から取られた長さ約15、25、35、45若しくは65ヌクレオチド若しくはそれ以上であり得る。該配列は、標的mRNA配列への十分に強いアニーリングを達成して該配列の翻訳を予防するために長さが最低18ヌクレオチドであることが好ましい。(Izantら、1984、Cell、36:1007−1015;Rosenbergら、1985、Nature、313:703−706)。アンチセンス核酸は、当該技術分野で既知の手順を使用する化学合成および酵素的ライゲーション反応を使用して構築し得る。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または、分子の生物学的安定性を増大若しくはアンチセンスとセンス核酸との間で形成される二重鎖の物理的安定性を増大させるように設計した多様に修飾したヌクレオチドを使用して化学合成し得、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用し得る。アンチセンス核酸を生成させるのに使用し得る修飾ヌクレオチドの例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシトネチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、I−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルエシトシン、.5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンを包含する。アンチセンス核酸分子はCC−アノマー核酸分子であり得る。CC−アノマー核酸分子は、通常のP単位と対照的に鎖が相互に平行に走る特異的二本鎖ハイブリッドを相補RNAと形成する(Gaultierら(1987)Nucleic Acids Res.15:6625−664 1)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリ
ボヌクレオチド(Inoueら(1987)Nucleic Acids Res.15:6131−6148)若しくはキメラRNA−DNAアナログ(Inoueら(1987)FEBS Lett.215:327−330)も含み得る。
【0134】
あるいは、アンチセンス核酸は、核酸が上述されたとおりアンチセンスの向きにサブクローニングされている発現ベクターを使用して生物学的にもまた製造し得る。アンチセンス発現ベクターは、高効率の調節領域(その活性は該ベクターが導入された細胞型により決定され得る)の制御下でアンチセンス核酸が生成される、組換えプラスミド、ファージミド若しくは弱毒性ウイルスの形態であり得る。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、アンチセンス核酸分子が強力なpol II若しくはpol IIIプロモーターの制御下に置かれているベクター構築物が好ましい。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節の論考については、Weintraubら(1985、Trends in Genetics、Vol.1(1)、pp.22−25)を参照されたい。
【0135】
典型的には、アンチセンス核酸は、微小注入、リポソーム被包化により被験体に投与するか、または該アンチセンス配列をもつベクターからの発現によりin situで生成させる。アンチセンス核酸分子の投与経路の一例は組織部位での直接注入を包含する。アンチセンス核酸は、ウイルスベクターを宿主細胞に導入する場合に該アンチセンス核酸の移入を媒介するウイルスベクターに連結し得る。適するウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルスなどを包含する。あるいは、アンチセンス核酸分子は選択した細胞を標的とするように改変し得、そしてその後全身投与し得る。例えば、全身投与のため、アンチセンス分子は、例えば細胞表面の受容体若しくは抗原に結合するペプチド若しくは抗体に該アンチセンス核酸分子を結合することにより選択した細胞表面上で発現される受容体若しくは抗原にそれらが特異的に結合するように改変し得る。
【0136】
一旦細胞の内側にあれば、アンチセンス核酸分子はCOX−3タンパク質をコードする細胞mRNAおよび/若しくはゲノムDNAとハイブリダイズすなわち結合してそれにより例えば転写および/若しくは翻訳を阻害することにより発現を阻害する。ハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖を形成するための慣習的ヌクレオチド相補性、若しくは、例えばDNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合には二重らせんの主溝中での特異的相互作用によることができる。
【0137】
好ましい一態様において、COX−3活性を低下させることが有益である場合は、COX−3の発現を低下させることが必要な被験体におけるCOX−3の発現の低下方法は、低分子干渉RNA(siRNA)の使用を必要とする。
【0138】
数種の生物体において、二本鎖RNAの導入がRNA干渉として知られる過程により遺伝子発現を抑制するための強力なツールであることが判明している。hCOX−3に対応するsiRNAおよびsiRNAの製造方法は上述されている。本発明は、(a)分解のためヒトCOX−3遺伝子のmRNAを標的とするsiRNAを被験体の細胞に導入する段階;(b)被験体の細胞中でのヒトCOX−3遺伝子のmRNAのsiRNA干渉が起こる条件下で(a)で生じられた細胞を維持する段階を含んでなる、hCOX−3の発現の低下を必要とする被験体の細胞におけるhCOX−3の発現の低下方法を提供する。siRNAは、本明細書に記述されるアンチセンス核酸のものに類似に手順を使用して被験体の細胞に導入し得る。
【0139】
別の態様において、被験体の細胞中でヒトCOX−3タンパク質を発現することが可能な核酸分子を導入することによりhCOX−3の発現を増大させるのに遺伝子治療を使用
し得る。COX−3遺伝子治療は、COX−3活性を上昇させることが有益である疾患の処置にとりわけ有用であり得る。
【0140】
ex vivo遺伝子治療の実施手順は米国特許第5,399,346号明細書およびまたその特許の出願歴で提出された証拠物(それらの全部は公的に入手可能な文書である)に概説されている。一般に、遺伝子治療は、遺伝子の機能的1コピーの被験体の細胞(1個若しくは複数)中へのin vitroでの導入、および遺伝子的に工作した細胞(1個若しくは複数)を該被験体に戻すことを必要とし得る。遺伝子の機能的コピーは、遺伝子的に工作した細胞(1個若しくは複数)での遺伝子の発現を可能にする調節要素の作動可能な制御下にある。多数のトランスフェクションおよび形質導入技術、ならびに適切な発現ベクターは当業者に公知であり、それらのいくつかはPCT出願第WO95/00654号明細書に記述されている。in vivo遺伝子治療はアデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、およびエプスタイン−バーウイルスのようなヘルペスウイルスのようなベクターを使用する。遺伝子治療はまた、in
vitroで感染を必要とする非ウイルス手段を使用しても達成し得る。こうした手段は、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、電気穿孔法およびプロトプラスト融合を包含し得る。標的を定めたリポソームもまた細胞中へのDNAの送達に潜在的に有益であり得る。
【0141】
一例として、ヒトCOX−3タンパク質をコードするDNA分子を最初にレトロウイルスベクターにクローン化し得る。該ベクターからのCOX−3タンパク質の発現は、その内因性プロモーター若しくはレトロウイルスの末端反復配列若しくはある種の標的細胞に特異的なプロモーターから駆動され得る。該ベクターをその後被験体の細胞に導入して、標的細胞中でhCOX−3タンパク質を成功裏に発現させ得る。該遺伝子は、好ましくは、有効な機能を提供するのに十分なタンパク質をコードするように細胞により使用され得る形態でそれらの細胞に送達され得る。レトロウイルスベクターは、しばしば、とりわけそれらの高い感染効率ならびに安定な組込みおよび発現により、遺伝子治療のための好ましい遺伝子送達ベクターである。あるいは、hCOX−3 DNAは、リガンド−DNA複合物若しくはアデノウイルス−リガンド−DNA複合物、リポフェクション膜融合または直接微小注入法を使用する受容体に媒介される標的を定めたDNA移入を包含する非ウイルス技術により遺伝子治療のため細胞中に移入し得る。これらの手順およびそれらの変形はex vivoならびにin vivoのCOX−3遺伝子治療に適する。hCOX−3遺伝子とともにの使用に適する遺伝子治療の分子方法論のプロトコルは、Gene Therapy Protocols、Paul D.Robbinsにより編、Human press、ニュージャージー州トトワ、1996に記述されている。
【0142】
処置の間、個体に投与される本発明の核酸分子の有効量は、患者の型、種、齢、重量、性および医学的状態;治療されるべき状態の重症度;投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに使用されるその特定の核酸分子を包含する多様な因子により変動し得る。遺伝子治療の特化した熟練の医師若しくは獣医師は、状態の進行を予防する、打ち消す若しくは停止するのに必要とされる有効量を決定かつ処方し得る。毒性を伴わずに有効性を生じる範囲内の濃度の達成における至適の精度は、標的部位への該核酸分子の利用可能性のキネティクスに基づくレジメンを必要とする。これは、遺伝子治療に関与する核酸分子の分布、平衡および排泄の考慮を必要とする。
【0143】
本明細書に開示される遺伝子治療は、いかなる潜在的な毒性も最小化しつつhCOX−3活性の至適の増大若しくは減少を得るために、慣例の試験により定義される適切な投薬量で単独で使用し得る。加えて、他剤の共投与若しくは連続投与も望ましいことがある。数種の剤を組合せて所望の効果を達成する場合には、投与の投薬量を調節する。これらの多様な剤の投薬量は、独立に至適化し得、かつ、相乗的な結果を達成するように組合せ得
、そこでは、病状は、いずれかの剤を単独で使用した場合にそれがそうであろうよりも低下される。
【0144】
本発明はまた:
(a)細胞中でのヒトシクロオキシゲナーゼ−3の発現若しくは活性を増大若しくは減少させる有効量の組成物を細胞に投与する段階;
(b)治療上有効な量の鎮痛/解熱薬を細胞に投与する段階:
(c)細胞に対する該鎮痛/解熱薬の治療効果を測定する段階、および
(d)該治療効果を対照のものと比較する段階
を含んでなる、細胞中での鎮痛/解熱薬の作用機序の評価方法も企図している。
【0145】
一態様において、該比較する段階は、該治療効果を、細胞中のヒトシクロオキシゲナーゼ−3の発現若しくは活性が該鎮痛/解熱薬の投与前の増大もしくは減少されていない対照のものと比較することを含んでなる。
【0146】
細胞の内側のヒトCOX−3を標的とする鎮痛/解熱薬は、COX−3発現若しくは活性のレベルが細胞の内側で変化される場合にその治療効果の明瞭な識別を示すことができる。COX−3発現のレベルは上述されたとおりアンチセンス若しくはsiRNA技術により減少させ得る。COX−3発現のレベルは、機能的シクロオキシゲナーゼ−3タンパク質をコードすることが可能な核酸分子を被験体中の細胞に導入することにより増大させ得る。hCOX−3活性のレベルはhCOX−3の活性化物質若しくは阻害剤を使用して増大若しくは減少させ得、また、hCOX−3の活性化物質若しくは阻害剤は下述される化合物同定方法を使用して得ることができる。
hCOX−3の調節物質の同定方法
hCOX−3の「阻害剤」、「活性化物質」および「調節物質」は、ヒトCOX−3のin vitroおよびin vivo結合アッセイを使用して同定される阻害若しくは活性化する分子を指す。好ましくはヒトCOX−3のシクロオキシゲナーゼ活性を測定することにより。
【0147】
とりわけ、「阻害剤」はCOX−3発現若しくは活性を減少、予防、不活性化、脱感作若しくはダウンレギュレートする化合物を指す。「活性化物質」はCOX−3発現若しくは活性を増大、活性化、助長、感作若しくはアップレギュレートする化合物である。「調節物質」は「阻害剤」および「活性化物質」双方を包含する。
【0148】
化合物の同定方法は、慣習的な実験室での形式を使用して若しくはハイスループットに適合されたアッセイで実施し得る。「ハイスループット」という用語は複数のサンプルの容易なスクリーニングを同時に可能にするアッセイ設計を指し、そしてロボット操作についての能力を包含し得る。ハイスループットアッセイの別の所望の特徴は、所望の分析を達成するための試薬使用を減少させるか若しくは操作の数を最小化するように至適化されているアッセイ設計である。アッセイ形式の例は、液体を取り扱う実験に使用される96ウェル若しくは384ウェルプレート、空中浮遊液滴および「実験室チップ(lab on a chip)」微小チャンネルチップを包含する。プラスチック型の小型化および液体取扱い装置が進歩しているため、若しくは改良されたアッセイ装置が設計されているために、本発明の設計を使用してそのより多数のサンプルを実行し得ることが当業者に公知である。
【0149】
候補化合物は多数の化学的分類を包含するとは言え、典型的にはそれらは有機化合物である。好ましくはそれらは低分子有機化合物である。候補化合物は、ポリペプチドとの構造上の相互作用に必要な官能性化学基を含んでなり、そして典型的には最低1個のアミン、カルボニル、ヒドロキシル若しくはカルボキシル基、好ましくは該官能性化学基の最低
2個およびより好ましくは該官能性化学基の最低3個を包含する。候補化合物は、上で同定された官能基の1個若しくはそれ以上で置換されている環状炭素若しくは複素環構造および/または芳香族若しくは多芳香族構造を含み得る。候補化合物はまた、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジン、上の誘導体若しくは構造アナログ、またはそれらの組合せなどでもあり得る。化合物が核酸である場合、該化合物は典型的にはDNA若しくはRNA分子であるとは言え、非天然の結合若しくはサブユニットを有する修飾核酸もまた企図している。
【0150】
候補化合物は合成若しくは天然の化合物のライブラリーを包含する多様な供給源から得られる。例えば、無作為化オリゴヌクレオチドの発現、合成有機コンビナトリアルライブラリー、ランダムペプチドのファージディスプレイライブラリーなどを包含する多様な有機化合物および生体分子の無作為のおよび有向の合成に多数の手段が利用可能である。候補化合物はまた:生物学的ライブラリー;空間的に接近可能な平行固相若しくは溶液相ライブラリー:デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物(one−bead one−compound)」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)を包含する当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれを使用しても得ることができる。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然の化合物のライブラリーが利用可能であるか若しくは容易に製造される。加えて、天然および合成で製造したライブラリーおよび化合物は、慣習的な化学的、物理的および生化学的手段により容易に改変し得る。
【0151】
さらに、既知の薬理学的剤をアシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような有向の若しくは無作為の化学修飾にかけて該剤の構造的アナログを製造し得る。候補化合物は無作為に選択し得るか、あるいは、COX−1若しくはCOX−2の活性に結合かつ/またはその機能を調節する既存の化合物に基づき得る。従って、候補の剤の供給源は、より多い若しくはより少ない化学的部分または異なる化学的部分を含有するように該分子の1個若しくはそれ以上の位置で該化合物の構造が変えられている既知のCOX活性化物質若しくは阻害剤に基づく分子のライブラリーである。アナログの活性化物質/阻害剤のライブラリーの創製において該分子になされる構造変化は、有向性、無作為、または有向のおよび無作為双方の置換および/若しくは付加の組合せであり得る。コンビナトリアルライブラリーの製造の当業者は、既存のNSAID若しくは鎮痛/解熱性化合物に基づくこうしたライブラリーを容易に製造し得る。
多様な他の試薬もまた該混合物中に包含し得る。これらは、至適のタンパク質−タンパク質および/若しくはタンパク質−核酸結合を助長するのに使用し得る塩、緩衝剤、中性タンパク質(例えばアルブミン)、洗剤などのような試薬を包含する。こうした試薬はまた、反応成分の非特異的すなわちバックグラウンドの相互作用も低下させ得る。ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などのようなアッセイの効率を向上させる他の試薬もまた使用し得る。
【0152】
分子ライブラリーの合成方法の例は当該技術分野、例えば:Zuckermannら(1994).J Med.Chem.37:2678に見出し得る。化合物のライブラリーは溶液中(例えばHoughten(1992)Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌(米国特許第5,223,409号明細書)、胞子(特許第5,571,698号明細書)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)若しくはファージ(例えばScottとSmith(1990)Science 249:3 86−390を参照されたい)上に提示し得る。
【0153】
一態様において、本発明は:(a)ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の活性フラグメントを含んでなるポリペプチドを試験化合物およびシクロオキシゲナーゼの基質と接触させる段階;ならびに(b)(a)中のシクロオキシゲナーゼ活性を測定する段階、およびヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の活性フラグメントを含んでなるポリペプチドがシクロオキシゲナーゼの基質にのみ曝露されるがしかし試験化合物に曝露されない対照のものとそれを比較する段階を含んでなる、ヒトCOX−3により触媒されるプロスタグランジン合成を増大若しくは減少させる化合物の同定方法を提供する。hCOX−3の活性化物質である化合物は、基質転化速度を増大させかつ時間の関数としての対照と比較したサンプル中のより大きなCOX活性をもたらすことができる。COX−3の阻害剤である化合物は、基質転化速度を低下させかつ時間の関数としての対照と比較したサンプル中のより低いCOX活性をもたらすことができる。
【0154】
好ましい一態様において、上述されたヒトCOX−3により触媒されるプロスタグランジン合成を増大若しくは減少させる化合物の同定方法は、試験化合物がヒトCOX−1若しくはヒトCOX−2のような別のシクロオキシゲナーゼ酵素のシクロオキシゲナーゼ活性を変えるかどうかを試験する段階をさらに含んでなる。好ましくは、試験化合物はhCOX3のシクロオキシゲナーゼ活性のみを増大若しくは低下するが、しかしhCOX−1若しくはhCOX−2のものを増大若しくは低下させない。
【0155】
生物学的サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性を測定するのに多数の方法を使用し得、そしてそれらは上述した。
【0156】
好ましい一態様において、該アッセイ方法で使用されるCOXタンパク質は、天然若しくは組換えの宿主細胞と会合している。米国特許第5837479号明細書は、COX−2の組換え細胞株を使用するCOX−2活性を阻害する化合物の同定方法を特許請求する。hCOX−3の宿主細胞を使用してhCOX−3活性を阻害する化合物を同定するのに類似の方法を使用し得る。「細胞」という用語は最低1個の細胞を指すが、しかし、検出方法の感度に適切な複数の細胞を包含する。好ましくは、本発明の方法に適する細胞は真核生物である。
【0157】
別の好ましい態様において、該アッセイで使用されるCOXタンパク質は単離された膜調製物の一部である。COX−1若しくは−2と同様にCOX−3は膜タンパク質である。ヒトCOX−3を含有する膜を当業者に既知の方法を使用してhCOX−3宿主細胞から単離し得、そしてスクリーニングアッセイでhCOX−3の供給源として使用し得る。
【0158】
なお別の好ましい態様において、該アッセイで使用されるCOXタンパク質は精製すなわち単離され得る。
【0159】
別の好ましい態様において、結合アッセイを使用して、ヒトCOX−3タンパク質に結合しかつhCOX−3タンパク質の生物活性を増大若しくは減少させることが潜在的に可能である化合物を同定し得る。例示的一方法は:(a)試験化合物をhCOX−3タンパク質およびhCOX−3タンパク質の標識リガンドとともにインキュベートする段階;(b)hCOX−3タンパク質を未結合の標識リガンドから分離する段階;ならびに(c)hCOX−3に結合する標識リガンドの量の減少により該サブユニットへのリガンド結合を阻害する化合物を同定する段階を含んでなる。hCOX−3タンパク質の標識リガンドの一例は、上述されたところの標識hCOX−3特異的抗体、またはアセトアミノフェン、フェナセチン、ジピロン、アスピリン、ジクロフェナクおよびイブプロフェンのようなhCOX−1若しくはhCOX−2のいずれよりもhCOX−3の阻害においてより強力
である剤である。好ましくは、hCOX−3を発現するがしかしhCOX−1若しくはhCOX−2を発現しないhCOX−3宿主細胞(組換え若しくは天然の)を結合アッセイに使用し得る。より好ましくは、hCOX−3宿主細胞から調製した細胞膜を結合アッセイに使用し得る。さらに好ましくは、実質的に精製されたhCOX−3タンパク質を結合アッセイに使用し得る。
【0160】
未結合の標識リガンドからのhCOX−3タンパク質の分離は多様な方法で達成し得る。慣習的には、成分の最低1種を固体支持体上に固定し、それから未結合の成分を容易に分離し得る。固体支持体は多様な素材からおよび多様な形状で作成し得る(例えばマイクロタイタープレート、マイクロビーズ、ディップスティック、樹脂粒子など)。該支持体は、好ましくはS/N比を最大化する(主としてバックグラウンド結合を最小化する)ように、ならびに分離の容易さおよび費用のために選ばれる。
【0161】
分離は、例えばビーズ若しくはディップスティックをリザーバから取り出すこと、マイクロタイタープレートのウェルのようなリザーバを空にするか若しくは希釈すること、またはビーズ、粒子、クロマトグラフィーカラム若しくはフィルターを洗浄溶液若しくは溶媒ですすぐことにより遂げることができる。分離段階は好ましくは複数のすすぎ若しくは洗浄を包含する。例えば、固体支持体がマイクロタイタープレートである場合、塩、緩衝剤、洗剤、非特異的タンパク質などのような特異的結合に参画しないインキュベーション混合物の成分を典型的に包含する洗浄溶液でウェルを数回洗浄し得る。固体支持体が磁性ビーズである場合、該ビーズを洗浄溶液で1回若しくはそれ以上洗浄しかつ磁石を使用して単離し得る。
【0162】
直接検出(例えば放射活性、発光、光学若しくは電子密度など)、または間接的検出(例えばFLAGエピトープのようなエピトープ標識、ワサビペルオキシダーゼのような酵素標識など)を提供するもののような多様な標識を、hCOX−3のリガンドを標識するのに使用し得る。
【0163】
本発明の上のアッセイ方法の一以上の態様において、複合体形成した形態のhCOX−3タンパク質の複合体形成していないものからの分離を助長するため、ならびにアッセイの自動化を適合するために、hCOX−3若しくはそのリガンドのいずれかを固定することが望ましい可能性がある。ポリペプチドへの試験化合物の結合、若しくは候補化合物の存在および非存在下での標的分子とのポリペプチドの相互作用は、反応体を含有するのに適するいかなる容器中でも達成し得る。こうした容器の例はマイクロタイタープレート、試験管および微小遠心管を包含する。一態様において、hCOX−3およびそのリガンドの一方若しくは双方をマトリックスに結合させるドメインを付加するhCOX−3の融合タンパク質を提供し得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとのhCOX−3の融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical;ミズーリ州セントルイス)若しくはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させ得、それをその後試験化合物若しくは試験化合物およびhCOX−3の標識リガンドと組合せ得、そして複合体形成を実施しうる条件(例えば塩およびpHについて生理学的条件)下で該混合物をインキュベートし得る。インキュベーション後に、ビーズ若しくはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄していかなる未結合成分も除去し、そして複合体形成を例えば上述されたとおり直接若しくは間接的にのいずれかで測定する。あるいは、複合体をマトリックスから解離させ得、そして標準的技術を使用して本発明のポリペプチドの結合若しくは活性のレベルを測定し得る。
【0164】
マトリックス上にタンパク質を固定するための他の技術もまた、本発明のスクリーニングアッセイで使用し得る。例えば、hCOX−3若しくはそのリガンドのいずれかを、ビオチンおよびストレプトアビジンの複合を利用して固定し得る。
【0165】
ビオチニル化したポリペプチド若しくは標的分子を、当該技術分野で公知の技術(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals;イリノイ州ロックフォード)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシスセインイミド)から製造し得、そしてストレプトアビジン被覆した96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定し得る。あるいは、hCOX−3と反応性しかしhCOX−3のその標的分子への結合を妨害しない抗体をプレートのウェルに誘導体化し得、そしてhCOX−3を抗体複合により該ウェル中で捕捉し得る。こうした複合体の検出方法は、GSTで固定した複合体について上述されたものに加え、本発明のポリペプチドすなわち標的分子と反応性の抗体を使用する複合体の免疫検出、ならびに本発明のポリペプチドすなわち標的分子と関連した酵素活性を検出することに頼る酵素結合アッセイを包含する。
【0166】
本発明は本明細書に記述される特定の方法論、データベース、遺伝子配列および遺伝子配列分析方法などに制限されないことが理解される。これらは変動しうるからである。本明細書で使用される専門用語は本発明の範囲を制限することを意図していないこともまた理解されるべきである。本明細書および付属として付けられる請求の範囲で使用されるところの単数形「a」、「an」(1つの)および「the」(該)は、情況が別の方法で明瞭に決定しない限り複数の言及を包含することを留意しなければならない。従って、例えば、「a gene(1遺伝子)」への言及は1若しくはそれ以上の遺伝子への言及でありかつ当業者に既知のその同等物を包含する、などである。事実、当業者は、本明細書に記述される方法を使用して、現在若しくは後に知られるいかなるCOX−3遺伝子およびタンパク質も同定かつ利用し得る。
実施例
【実施例1】
【0167】
ヒトCox−1のイントロン1配列の確認
完全長のヒトCOX−1 cDNA配列(GenBank受託番号:NM_000962)をNCBIヒトゲノムデータベースを検索するためのクエリとして使用した。ヒトCOX−1遺伝子は第9染色体上に位置推定され、そして約22kbにわたる11のエキソンおよび10のイントロンを含んでなる。NCBIからのエキソン1、イントロン1およびエキソン2の配列を図1Aに示す。イヌCox−3と同様にヒトCox−3がヒトCOX−1のイントロン1全体を保持する場合、ヒトゲノムデータベースから得られる配列は翻訳でフレームがずれることができる。3種の可能な読み枠(a、bおよびc)のいずれも、ヒトCox−1のエキソン1、イントロン1およびエキソン2によりコードされるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをもたらさないとみられる(図1B)。従って、第一の疑問は、公表されたヒトゲノム配列が確かに正しいかどうかである。あるいは、公表されたゲノム配列が翻訳の早期終止をもたらすフレームシフト変異を含有するかどうか。
【0168】
ヒトCOX−1のエキソン1−イントロン1−エキソン2のゲノム配列を増幅するために2個のオリゴヌクレオチドを設計した。フォワードプライマーはエキソン1およびイントロン1配列の一部に基づき設計し、配列番号1、5’ATGAGCCGTGAGTGCGACCCCGGT3’、そしてリバースプライマーはエキソン2に基づき、配列番号2、5’CTACCTGGCGTGGGCGCCCCTGGGT3’であった。PCRはBD Bioscience Clontech(カリフォルニア州パロアルト)から購入したアドバンテージ[Advantage](R)−GCゲノムPCRキットを用いて実施した。反応混合物は、1μgのヒトゲノムDNA(BD Bioscience Clontech、カリフォルニア州パロアルト)、10μlの5×GCゲノム反応緩衝液、0.5M GC−Melt、1.1mM Mg(OAc)、200μM dNTP、200nMの各プライマーおよび1μlの50×アドバンテージ(Advantage)−GCゲノムDNAポリメラーゼ混合物を含有した。ゲノムPCRのサーマルサイクラーの
パラメータは:94℃で1分間の初期変性、94℃/30秒および68℃/2分の35周期であった。PCR産物(約190bpのフラグメント)をpPCRScriptクローニングベクター(Stratagene、カリフォルニア州)にサブクローニングしかつシークェンシングした。
【0169】
配列分析は、ヒトCOX−1のエキソン1−イントロン1−エキソン2の配列がヒトゲノムデータベースに公表されたものと一致したことを示した。従って、イントロン1全体(94bp)がhCOX−3中に保持される場合、読み枠のシフトが存在してヒト組織中での活性のCOX3酵素の生成をもたらさないとみられる。少なくとも2つの機構、すなわち1)RNA編集、すなわちmRNAレベルでのイントロン1全体の保持、次いで数ヌクレオチドの除去;若しくは2)イントロン1の部分的保持がオープンリーディングフレームを維持して活性のCOX3酵素の生成につながる可能性がある。
【実施例2】
【0170】
ヒトCOX−3のN末端をコードするcDNAのクローニング
ヒトCOX−3を同定するため、ゲノムDNA配列を増幅するために使用したものすなわち配列番号1と同一であるフォワードプライマー、およびヒトCOX−1のおよそbp位置600に位置するリバースプライマー 配列番号7、5’−TATGAACTTCCTCCTGAGCAGGAA−3’を用いて、ヒト脳、胃および慢性骨髄性白血病のcDNAライブラリーからcDNAフラグメントを増幅した。PCRは、5μlのマラソン−レディ[Marathon−Ready]TMヒト脳cDNA、5μlの10×反応緩衝液、200μMのdNTP、200nMの各プライマーおよび1μlの50×アドバンテージ(Advantage)−GC2 DNAポリメラーゼ混合物(Clontech、カリフォルニア州)を含有する50μlの最終容量中で実施した。PCR反応パラメータは:94℃で1分間の初期変性、次いで94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリングおよび72℃で2分間の伸長の30周期であった。PCR後に0.6kbのPCRフラグメントを精製し、平滑化し(polished)かつpPCRscriptにサブクローニングした。約20個の独立したクローンを拾い、それらのプラスミドDNAを単離しかつシークェンシングした。
【0171】
二本鎖DNAのシークェンシング分析は、ヒト組織中に3種の型のCOX−3スプライシングバリアントが存在することを示した。第一の型(型I)は、94bpのイントロン1全体が保持されて読み枠中のシフトをもたらし、COXが不活性のタンパク質でありそうである非常に短いペプチドをコードするものである。第二の型(型II若しくはCOX−3a、図1C)はイントロン1のほぼ全体を保持するがしかし位置64のグアニジンが欠けており、読み枠中の短くかつ自己整流性の(self−rectifying)シフトにつながり、完全長かつCOX活性のタンパク質をコードする。COX−3aのアミノ末端のヌクレオチド配列を配列番号3に描き、また、配列番号3によりコードされるアミノ酸配列を配列番号4に描く。II型のスプライシングバリアントと同様、第三の型(型III若しくはCOX−3b、図1D)もまたイントロン1のほぼ全体を保持するがしかしbp位置43のシトシンが欠けており、読み枠中の別の短くかつ自己整流性のシフトにつながり、完全長かつCOX活性のタンパク質をコードする。COX−3bはそのN末端でCox−3aとわずかに異なるタンパク質をコードする。COX−3bのアミノ末端のヌクレオチド配列を配列番号5に描き、そして、配列番号5によりコードされるアミノ酸配列を配列番号6に描く。
【0172】
これらの結果はヒトCox−3の存在を示し、ヒトCOX−3がイントロン1の保持後に1個若しくは1個以上のRNA編集事象を介して形成され得ることを示唆する。ヒトCox−1のイントロン1の保持によりコードされるhCox−3a若しくはhCox−3bのN末端はイヌのものと大きく異なり、イヌCox−3のものに対しそれぞれ約33%
若しくは26%の配列の同一性を表す(図1E)。ヒトCOX−1のイントロン1のヌクレオチド配列はイヌCOX−1のイントロン1のものに対する約75%の配列の同一性を共有する(Chandrasekharanら、2002、上記)。
【実施例3】
【0173】
ヒトCOX−1およびCOX−3のゲノム構造およびスプライシングバリアント
ヒトCOX−1およびCOX−3遺伝子の完全長のcDNA配列を使用してGenbankヒトゲノムデータベースを検索した。該検索は、ヒトCOX−1/COX−3タンパク質をコードする遺伝子が約22kbでありかつ第9染色体上に位置推定されることを示した。図2に示されるとおり、ヒトCOX−1タンパク質をコードする遺伝子は11のエキソンおよび10のイントロンから構成される。COX−1はエキソン1からエキソン11によりコードされる一方、新規スプライシングバリアントCOX−3は、同一の数のエキソンおよびエキソン1とエキソン2との間の保持されたイントロン1によりコードされ、RNA編集後にアミノ末端に31残基の挿入をもたらす。
【実施例4】
【0174】
完全長のヒトCOX−3の集成
完全長のヒトCOX−3を集成するために、2種のヒトCOX−1特異的プライマー、すなわちフォワードプライマー、配列番号12、5’CAT ATG AGC CGG AGT CTC TTG CTC TGG TTC、3’、およびSalI制限酵素部位を含有するリバースプライマー、配列番号13、5’GTC GAC TCA GAG CTC TGT GGA TGG TCG CTC CAC 3’を用いて、カルボキシル末端のcDNAフラグメントをマラソン−レディ[Marathon−Ready]TMヒト脳cDNAライブラリー(BD Bioscience Clontech、カリフォルニア州パロアルト)から最初に増幅した。該PCRは、5μlのマラソン−レディ[Marathon−Ready]TMヒト脳cDNA、5μlの10×反応緩衝液、200μMのdNTP、200nMの特異的プライマーおよび1μlの50×アドバンテージ(Advantage)HF2 DNAポリメラーゼ混合物(Clontech)を含有する50μlの最終容量中で実施した。PCR反応パラメータは:94℃で1分間の初期変性、次いで94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリングおよび72℃で2分間の伸長の30周期であった。PCR後に、1.75kbのPCRフラグメントを精製し、EcoRIおよびSalIで消化し、1%アガロースゲル上で分離し、そして最終的に1.55kbのカルボキシル末端フラグメントを切り出した。
【0175】
完全長のヒトCOX−3a cDNAを標準的な分子生物学の方法に従って集成しそしてpAGA4ベクターにサブクローニングした。簡潔には、bp位置1(開始コドンを含むNdeI部位)からpb位置332(EcoRI部位)までの0.33kbのN末端フラグメントおよび1.55kbのC末端フラグメント(EcoRIからSalIまで、上を参照されたい)を、NdeIおよびSalIにより予め消化したpAGA4ベクターに直接サブクローニングした。生じる構築物をhCOX−3/pAGA4と呼称した。最終構築物をDNAシークェンシングにより確認した。完全長のヒトCOX−3a cDNAのヌクレオチド配列を配列番号8に描き、また、完全長のヒトCOX−3aのアミノ酸配列を配列番号9に描く。
【0176】
類似の手順に従って完全長のヒトCox−3b cDNAもまた集成し得る。完全長のヒトCOX−3b cDNAのヌクレオチド配列を配列番号10に描き、また、完全長のヒトCOX−3bのアミノ酸配列を配列番号11に描く。
【実施例5】
【0177】
ヒトCOX−3aおよびCOX−1タンパク質のin vitro翻訳分析
ヒトCOX−3aおよびCOX−1タンパク質のin vitro翻訳を、供給元が推奨するプロトコルに従ってTnT(R)T7 Quick Coupled転写/翻訳系(Promega)を用いて実施した。簡潔には、1μlの0.1μg/μl hCOX−3/pAGA4およびhCOX−1/pAGA4構築物を、0.2μlの[35S]メチオニン(10mCi/mlで1000Ci/mmmol)を伴う9μlのTNT Quickマスターミックスに添加した。反応混合物を30℃で90分間インキュベートした。等容量の2×SDS−PAGE負荷緩衝液反応を添加することにより反応を停止し、そしてその後サンプルを10〜20%勾配SDS−PAGE分離にかけた。電気泳動後にゲルをクマシーブルーR250で染色し、乾燥しそしてX線フィルムに露光させた。in vitroで翻訳されたヒトCOX−3aタンパク質はCOX−1タンパク質よりわずかにより大きく、そして、双方とも、対応する核酸配列からのアミノ酸配列の翻訳により予測されるとおり、約70kDaの推定される分子量まで移動した。
【0178】
in vitroで翻訳されたヒトCOX−3aおよびCOX−1タンパク質をウエスタンブロットによってもまた分析した。簡潔には、2μlのin vitroで翻訳されたヒトCOX−3およびCOX−1タンパク質を10〜20%勾配SDS−PAGEにかけた。ゲル上のタンパク質をその後ニトロセルロースに転写した。ブロットをTTBS(pH=7.5の0.5%Tween 20、100mMトリス−HClおよび0.9%NaCl)中5%粉乳で室温で1時間ブロッキングし、そしてその後500倍希釈の抗ヒトCOX−1モノクローナル抗体(Sigma)とともに4℃で一夜インキュベートした。翌日、ブロットを100mlのTTBSで3回洗浄し、そしてワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗マウスIgG抗体(Pierce)とともに室温で1時間インキュベートした。100mlのTTBSで3回洗浄した後にブロットを発光試薬ECL−Plus(Amersham−Pharmacial Biotech)で可視化した。ウエスタンブロットの結果はin vitro翻訳分析からのものと一致した。
【実施例6】
【0179】
ヒトCOX−3発現のノーザンブロット分析
ノーザンブロット分析を使用してヒトCOX−3の組織分布を評価した。COX−3のbp34−71(イントロン1内)に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドhcxl−12をプローブとして使用した。hcxl−12、配列番号14のヌクレオチド配列は5’−TGGCATTCAAGGCTCCACCAGGAGGCCAAGAAAATTCC−3’である。オリゴヌクレオチドプローブを[γ−32P]ATPにより5’末端標識した。簡潔には、10pmolのhcxl−12オリゴヌクレオチドを、25μlの総容量中で、3.5μlの6000mCi/mmolの[γ−32P]ATP(Amersham Pharmacia Biotech)、1μlの10単位/μlのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Roche Applied Science)および供給元により提供された2.5μlの10×キナーゼ緩衝液の存在下、37℃で30分間インキュベートした。5μlの0.5M EDTAの添加により反応を停止した。標識プローブをその後、供給元のプロトコルに従ってクロマスピン(CHROMA SPIN)+STE−30カラム(Clontech、カリフォルニア州)を使用して精製した。
【0180】
ヒトMTN(多組織ノーザン(ultiple issue orthern))ブロットをClontech(カリフォルニア州パロアルト)から購入した。それらはヒトMTNブロット(カタログ番号7760−1)、ヒトII MTNブロット(カタログ番号7767−1)、ヒトIII MTNブロット(カタログ番号7767−1)およびヒト腫瘍MTNブロット(カタログ番号7792−1)である。各ブロットを5mlのエクスプレスハイブ(ExpressHyb)溶液(Clontech)を用いて42℃で30分間プレイハイブリダイズし、そしてその後2×10cpm/μlのヒトCOX−3オリゴヌクレオチドプローブの存在下に42℃で2時間ハイブリダイズさせた。ブロ
ットを2×SSC/0.5%SDSですすぎ、そしてその後200mlの0.1×SSC/0.1%SDS溶液で室温で2時間2回洗浄した。最後にブロットを−80℃の冷凍庫中で3日までX線フィルムに露光させた。
【0181】
ノーザンブロット分析は、ヒトCOX−3の主要な転写物が約4.5kbであることを示す。該4.5kbのCOX−3転写物はヒト胃中で最も豊富であり、次いで骨格筋、心、胎盤、肝、膵、脾、精巣、副腎および腎である。それは比較的低レベルで脳、肺、前立腺、小腸、白血球、甲状腺、脊髄、リンパ節および気管でもまた発現されている。胸腺、卵巣、結腸若しくは骨髄では有意の転写は観察されなかった。興味深いことに、4.5kbのヒトCOX−3転写物のレベルは、われわれが試験した全部のヒト腫瘍組織で劇的に増大されたことが見出され、それが発癌である役割を演じているかもしれないことを示唆する。
【実施例7】
【0182】
hCox−3に特異的なポリクローナル抗体の生成
ヒトCOX−3aおよびCox−3bのアミノ末端由来のオリゴペプチド配列を、ウサギでポリクローナル抗体を生じさせるために選択した。より良好な結合のため、該ペプチド中の内的システインをセリンに変えた。該オリゴペプチドのアミノ酸配列は配列番号15、Ac−MSRECDPGARWGC−アミドであった。
【0183】
該ペプチドを合成しかつ抗体を生じさせ、そしてBioSource International,Inc.により精製した。生じる抗体を該抗原ペプチドに対するELISAにより試験し、そして同一ペプチドを用いてアフィニティー精製した。血清およびアフィニティー精製した抗体を、ウエスタンブロット、免疫沈降法、イムノPCR、免疫細胞化学および免疫組織化学を包含する免疫分析に使用した。
【実施例8】
【0184】
ヒトCOX−3発現のウエスタンブロット分析
ヒトCOX−3タンパク質発現を分析するために、特異的抗ヒトCOX−3ポリクローナル抗体を生成させかつ実施例7に記述されたとおりアフィニティー精製した。作成済みヒト多組織全タンパク質ブロットをBiochain(カリフォルニア州)から購入した。簡潔には、作成済みブロットをTTBS(pH=7.4の0.5% Tween 20/100mM NaCl/10mMトリス−HCl)中5%粉乳を用い室温で2時間ブロッキングし、そしてその後、5%粉乳/TTBS中1000倍希釈のアフィニティー精製した抗ヒトCOX−3抗体とともに4℃で一夜インキュベートした。10,000倍希釈のHRPと結合した二次ヤギ抗ウサギIgG(Pierce)を該ブロットにRTで1時間適用した。最後に、ECL−plusキット(Amersham)を使用してシグナルをX線フィルム上で可視化した。
【0185】
結果は、2種の主要な免疫反応性のタンパク質(それぞれ80および55kDa)がヒト全タンパク質ライセート中で同定されたことを示した。おそらくヒトCOX−3a若しくは−3bを表す80kDaのタンパク質は、心、脳、腎、肝、骨格筋、胃および小腸中で発現されている。Chandrasekharanら(PNAS、2002、Vol.99、pp13926)により記述される別のCOX−1のスプライシングバリアントPCOX−1aに類似である55kDaのタンパク質は、試験したヒト組織中でより広範に発現されている。数種のより小さい特徴付けられていないタンパク質もまた同定された。
【実施例9】
【0186】
昆虫Sf9細胞中でのヒトCOX−3aの組換え発現
構造および機能研究のため、完全長のヒトCOX−3a cDNAをバキュロウイルス
発現ドナーベクター、pFastBac(Invitrogen、カリフォルニア州)にサブクローニングした。構築物の転位後にDH10Bac大腸菌(Ecoli)細胞中で組換えバクミド(Bacmid)を作成した。組換えバクミド(Bacmid)でのトランスフェクション後に高力価(1×10pfu/ml)の組換えバキュロウイルスを得、そしてその後2回増幅した。約75kDaで移動する顕著なペプチドのバンドが、クマシーブルーR250により染色したSDS−PAGEゲルで観察され、その同一性は抗COX−1モノクローナル抗体を使用するウエスタンブロットによりさらに確認された。
【実施例10】
【0187】
COX活性アッセイ
ミクロソームタンパク質画分をhCOX−3a組換えバキュロウイルスに感染させたSf9細胞から調製した。ミクロソーム膜タンパク質(20μg)を、0.1Mトリス−HCl(pH8.0)、5mM EDTA、2mMフェノールおよび1.5μMハマチンを含有する150μlの容量の緩衝液中で、指定された濃度のアラキドン酸とともにインキュベートした。室温で5分間インキュベートした後に、混合を伴う40μlの1N HClの添加により反応を停止した。サンプルを40μlの1N NaOHで中性にした。PGF2α産物の形成を、製造元により指示されるとおりにPGF2αイムノアッセイキット(Assay Designs,Inc.)を使用して測定した。
【0188】
COX−1およびXOC−2と同様、ヒトCOX−3aは、それぞれ0.54μMおよび3.07pmol/mg/分のKおよびVmax値を伴い、濃度依存性の様式でのアラキドン酸からのPGF2αの合成を触媒することが可能であった(図3)。
【0189】
本発明の多様な局面を実施例および好ましい態様への言及により上に具体的に説明したとは言え、本発明の範囲は前述の記述により定義されず、しかし特許法の原理のもとで適正に解釈される以下の請求の範囲により定義されることが認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】図1Aは、NCBIヒトゲノムデータベースに公表されたところのヒトCox−1のエキソン1、イントロン1およびエキソン2のDNA配列を示す。図1Bは、3個の読み取り枠(a、bおよびc)のいずれも、エキソン1、イントロン1およびエキソン2によりコードされるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをもたらさないことを示す。翻訳の終止は*により示す。エキソン1およびエキソン2のヌクレオチド配列、ならびにCox−1中でのようなそれらのコードされるアミノ酸配列は影を付けられる。図1Cは、RNA編集後のCox−3aの翻訳を示す。図1Dは、RNA編集後のCox−3bの翻訳を示す。図1Eは、RNA編集を伴う(ヒト)若しくは伴わない(イヌ)ヒトおよびイヌCOX−3中のCOX−1のイントロン1によりコードされるペプチド配列の比較を示す。アライメントは、NeedlemanとWunschのアルゴリズムを使用して2種の完全な配列のアライメントを見出すように実施した。該アライメントは適合の数を最大化しかつギャップの数を最小化する。適合はアライメント(1種若しくは複数)のための閾値を表す。すなわち、|=同一性;:=2;.=1。
【図2】ヒトCOX−3およびCOX−1の遺伝子構造を具体的に説明する。
【図3】ヒトCox−3aタンパク質がアラキドン酸からのPGF2aの合成を触媒したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3若しくは配列番号5に対する最低80%の同一性を有するヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の同一性を有するアミノ酸配列、またはそれらの相補配列を含んでなるポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項3】
配列番号3若しくは配列番号5の最低12の連続する塩基、またはそれらの相補配列を含んでなる単離された核酸分子。
【請求項4】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低約70%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるシクロオキシゲナーゼ−3酵素をコードするヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる、請求項2に記載の単離された核酸分子
【請求項5】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低約80%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるシクロオキシゲナーゼ−3酵素をコードするヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる、請求項2に記載の単離された核酸分子
【請求項6】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低約90%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるシクロオキシゲナーゼ−3酵素をコードするヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる、請求項2に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
配列番号4若しくは配列番号6のアミノ酸配列を含んでなるシクロオキシゲナーゼ−3酵素をコードするヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる、請求項2に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
配列番号9若しくは配列番号11のアミノ酸配列を含んでなるシクロオキシゲナーゼ−3酵素をコードするヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる、請求項2に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
配列番号3若しくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる、請求項2に記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
配列番号8若しくは配列番号10のヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含んでなる、請求項2に記載の単離かつ精製された核酸分子。
【請求項11】
請求項1に記載の核酸分子を含んでなる発現ベクター。
【請求項12】
請求項2に記載の核酸分子を含んでなる発現ベクター。
【請求項13】
請求項3に記載の核酸分子を含んでなる発現ベクター。
【請求項14】
請求項11に記載の発現ベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項15】
請求項12に記載の発現ベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項16】
請求項13に記載の発現ベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項17】
アラキドン酸をプロスタグランジンHに転化することが可能である、配列番号4若し
くは配列番号6に対する最低約70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる実質的に精製されたポリペプチド。
【請求項18】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項17に記載の実質的に精製されたポリペプチド。
【請求項19】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項17に記載の実質的に精製されたポリペプチド。
【請求項20】
配列番号4若しくは配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる、請求項17に記載の実質的に精製されたポリペプチド。
【請求項21】
配列番号9若しくは配列番号11のアミノ酸配列を含んでなる、請求項17に記載の実質的に精製されたポリペプチド。
【請求項22】
(a)ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質をコードすることが可能な発現ベクターを細胞に導入する段階;および
(b)該発現ベクターからのヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の発現を可能にする条件下で該細胞を培養する段階
を含んでなる、組換え宿主細胞中でのヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の発現方法。
【請求項23】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに選択的に結合する抗体。
【請求項24】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低80%の配列の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子に選択的にハイブリダイズする核酸プローブを含んでなるキット。
【請求項25】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の配列の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに選択的に結合する抗体を含んでなるキット。
【請求項26】
配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、シクロオキシゲナーゼ−1若しくは−2のいずれよりもヒトシクロオキシゲナーゼ−3活性を阻害することにおいてより強力である作用剤、シクロオキシゲナーゼの基質、およびシクロオキシゲナーゼ活性を検出するための手段を含んでなるキット。
【請求項27】
シクロオキシゲナーゼ−1若しくは−2のいずれよりもヒトシクロオキシゲナーゼ−3活性を阻害することにおいてより強力である剤が、アセトアミノフェン、フェナセチン、ジピロン、アスピリン、ジクロフェナク若しくはイブプロフェンから選択される、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
シクロオキシゲナーゼの基質がアラキドン酸である、請求項26に記載のキット。
【請求項29】
シクロオキシゲナーゼの基質が、シクロオキシゲナーゼのペルオキシダーゼ活性により触媒される場合に色素形成性、蛍光発生性、若しくは発光を生成することが可能である還元剤の補助基質と結合されているアラキドン酸を含んでなる、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
(a)配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする核酸分子またはそれらの相補配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブと試験サンプルを接触させる段階;および
(b)プローブ−核酸分子複合体を検出する段階
を含んでなる、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3遺伝子の核酸分子の検出方法。
【請求項31】
(a)配列番号4若しくは配列番号6に対する最低70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに選択的に結合する抗体と試験サンプルを接触させる段階;および
(b)タンパク質−抗体複合体を検出する段階
を含んでなる、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の検出方法。
【請求項32】
a)シクロオキシゲナーゼ−1若しくは−2のいずれよりもシクロオキシゲナーゼ−3の阻害においてより強力である作用剤とともに試験サンプルをインキュベートする段階;b)シクロオキシゲナーゼの基質を試験サンプルに曝露させる段階;
c)試験サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性を測定する段階、およびそれを対照の該活性と比較する段階[ここで、該試験サンプルはシクロオキシゲナーゼの基質にのみ曝露されるがしかしシクロオキシゲナーゼ−1若しくは−2のいずれよりもシクロオキシゲナーゼ−3の阻害においてより強力である作用剤に曝露されない]
を含んでなる、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3活性の測定方法。
【請求項33】
シクロオキシゲナーゼ−1若しくはシクロオキシゲナーゼ−2のいずれよりもシクロオキシゲナーゼ−3の阻害においてより強力である作用剤が、アセトアミノフェン、フェナセチン、ジピロン、アスピリン、ジクロフェナク若しくはイブプロフェンから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
試験サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性が、基質アラキドン酸から生成されるプロスタノイドの量により測定される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
試験サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性が、プロスタグランジンD、プロスタグランジンE、プロスタグランジンF2α、プロスタグランジンI若しくはトロンボキサンAから選択されるプロスタノイドの量により測定され、また、該プロスタノイドは基質アラキドン酸から生成される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
試験サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性が、基質の存在下での酸素消費の量により測定される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
生物学的サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性が、シクロオキシゲナーゼと関連するペルオキシダーゼ活性により測定される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
シクロオキシゲナーゼと関連するペルオキシダーゼ活性が、色素形成性若しくは蛍光発生性である還元剤の補助基質を使用して測定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
還元剤の補助基質がホモバニリン酸若しくはN,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン(TMPD)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
シクロオキシゲナーゼと関連するペルオキシダーゼ活性が発光アッセイにより測定される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
発光アッセイがルミノール還元を伴うリアルタイム発光アッセイである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
(a)サンプルからヒトシクロオキシゲナーゼ−3のポリヌクレオチドを単離する段階;および
(b)ヒトシクロオキシゲナーゼ−3のポリヌクレオチドをシークェンシングして該遺伝子配列中の変化を検出する段階
を含んでなる、サンプル中のヒトシクロオキシゲナーゼ−3遺伝子配列中の変異の同定方法。
【請求項43】
細胞中のシクロオキシゲナーゼ−3の発現を減少させる治療上有効な量の組成物と細胞を接触させることを含んでなる、細胞中のヒトシクロオキシゲナーゼ−3レベルの低下方法。
【請求項44】
組成物が、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3遺伝子に特異的なアンチセンス核酸若しくはsiRNA分子を含んでなり、かつ、該アンチセンス核酸若しくはsiRNA分子がヒトシクロオキシゲナーゼ−3遺伝子発現を特異的に抑制する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
(a)細胞中のヒトシクロオキシゲナーゼ−3の発現若しくは活性を増大若しくは減少させる有効量の組成物を細胞に投与する段階;
(b)治療上有効な量の鎮痛/解熱薬を細胞に投与する段階;
(c)細胞に対する該鎮痛/解熱薬の治療効果を測定する段階、および
(d)該治療効果を対照のものと比較する段階
を含んでなる、細胞中での鎮痛/解熱薬の作用機序の評価方法。
【請求項46】
a)ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の活性フラグメントを含んでなるポリペプチドを試験化合物およびシクロオキシゲナーゼの基質と接触させる段階;
b)段階(a)のシクロオキシゲナーゼ活性を測定する段階、および、それを対照の該活性と比較する段階[ここで、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくは該ポリペプチドはシクロオキシゲナーゼの基質に曝露されかつ試験化合物に曝露されない]
を含んでなる、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3により触媒されるプロスタノイド合成を変える化合物の同定方法。
【請求項47】
ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはポリペプチドが単離若しくは実質的に精製されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはポリペプチドが単離された膜調製物の一部である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはポリペプチドが組換え宿主細胞から発現される、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
シクロオキシゲナーゼ活性が、基質アラキドン酸から生成されるプロスタノイドの量により測定される、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
シクロオキシゲナーゼ活性が、プロスタグランジンD、プロスタグランジンE、プロスタグランジンF2α、プロスタグランジンI若しくはトロンボキサンAから選択されるプロスタノイドの量により測定され、かつ、該プロスタノイドは基質アラキドン酸から生成される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
生物学的サンプルのシクロオキシゲナーゼ活性が、シクロオキシゲナーゼの基質の存在下での酸素消費の量により測定される、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
シクロオキシゲナーゼ活性が、シクロオキシゲナーゼと関連するペルオキシダーゼ活性により測定される、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
シクロオキシゲナーゼと関連するペルオキシダーゼ活性が、色素形成性若しくは蛍光発生性である還元剤の補助基質を使用して測定される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
還元剤の補助基質が、ホモバニリン酸若しくはN,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミンである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
シクロオキシゲナーゼと関連するペルオキシダーゼ活性が発光アッセイにより測定される、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
発光アッセイが、ルミノール還元を伴うリアルタイム発光アッセイである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
試験化合物が別のシクロオキシゲナーゼ酵素のシクロオキシゲナーゼ活性を変えるかどうかを試験する段階をさらに含んでなる、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
他のシクロオキシゲナーゼがヒトシクロオキシゲナーゼ−1若しくはヒトシクロオキシゲナーゼ−2から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
(a)試験化合物を、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはその活性フラグメント、およびヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の標識リガンドとともにインキュベートする段階;
(b)ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはその活性フラグメントを未結合の標識リガンドから分離する段階;ならびに
(c)ヒトシクロオキシゲナーゼ−3若しくはその活性フラグメントに結合する標識リガンドの量の減少によりヒトシクロオキシゲナーゼ−3へのリガンド結合を阻害する化合物を同定する段階
を含んでなる、ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質に結合する化合物の同定方法。
【請求項61】
前記ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはその活性フラグメントが単離若しくは実質的に精製されている、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはその活性フラグメントが単離された膜調製物の一部である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質若しくはその活性フラグメントが組換え宿主細胞から発現される、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
ヒトシクロオキシゲナーゼ−3タンパク質の前記標識リガンドが、アセトアミノフェン、フェナセチン、ジピロン、アスピリン、ジクロフェナク若しくはイブプロフェンから選択される、請求項60に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−527202(P2007−527202A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502504(P2006−502504)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001039
【国際公開番号】WO2004/074311
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】