説明

ヒト成長ホルモン製剤

本開示は、タンパク質治療剤の製剤に関し、より詳しくは、ヒト成長ホルモンの製剤に関する。複合体型ヒト成長ホルモン結晶を含む製剤を記載する。本開示は、改善された安定性を有する結晶性hGHの製剤を提供する。さらに、本開示は、かかる製剤の調製方法を提供する。また、結晶性タンパク質用の無針注射システムを記載する。また、本開示において、被検体に無針(ジェット式)注射システムで投与され得る結晶性タンパク質製剤、およびかかる製剤の使用方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本願は、2006年12月18日に出願された米国特許出願第60/870,605号に対する優先権を主張する。米国特許出願第60/870,605号の内容は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、タンパク質治療剤の製剤に関し、より詳しくは、ヒト成長ホルモンの製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ソマトトロピンあるいは成長ホルモン(「GH」)は、内分泌系の主要な腺である腺性下垂体によって脳内で合成および分泌される刺激ホルモンの一類型を構成する哺乳動物のタンパク質である。腺性下垂体によるGHおよび他の刺激性ホルモンの分泌により、体全体の他の内分泌腺および組織内の細胞の活性が調節される。具体的には、GHは、下垂体前葉の成長ホルモン分泌細胞によって分泌され、肝臓および他の組織を刺激してIGF−1を合成および分泌する機能を果たす。IGF−1は、細胞分裂を制御し、代謝プロセスを調節し、遊離状態で存在するか、またはIGFBP−1〜6で指定される6つの他のタンパク質の1つに結合するタンパク質である。この分泌プロセスそれ自体は、ソマトリベリン(GH放出を促進)およびソマトスタチン(GH放出を阻害)の作用に対抗することによりモジュレートされる。
【0004】
ヒト成長ホルモン(「hGH」)は、細胞および器官の成長の調節、ならびに加齢の種々の段階における生理学的機能において、重要なホルモンである。例えば、hGHの過剰産生により、小児における巨人症および成人における末端肥大症がもたらされ、一方、不充分な産生により、小児における小人症[非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3]、ターナー症候群(女性のみ)[非特許文献4;非特許文献5]および慢性腎不全[非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8]がもたらされる。成人では、hGHの欠乏により、タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル分および結合組織の代謝プロセスに影響が及ぼされ得、筋肉、骨または皮膚の萎縮がもたらされ得る[非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11]。成長不全を特徴とする他のhGH欠乏障害としては、AIDSるいそう症候群[非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15]ならびにプラーダー‐ヴィリ症候群[非特許文献16;非特許文献17]が挙げられる。
【0005】
これまで、ヒトにおけるhGHの欠乏の治療レジメンは、主に、組換えDNA技術によって作製された精製hGHの皮下注射を中心としたものである。この治療剤は、カートリッジ内に液剤、または使用時に再構成が必要とされる凍結乾燥粉末剤のいずれかとしてパッケージングされる。注射の頻度は、治療される疾患および使用される市販の製剤に応じて異なる。
【0006】
溶液中での該タンパク質の固有の不安定性により、hGHの迅速な送達経路として皮下投与の使用が必要とされる。この不安定性は、該タンパク質のアミノ酸配列内の特定の位置で重要な細胞内架橋が切断され、これにより、患者の細胞表面によって認識され、該表面と結合する必須の3次元構造が破壊されることに起因する。hGHの切断または分解の機構は、主に、溶解の際のメチオニン残基の酸化またはアスパラギン酸残基の脱アミド化によって組織化され、それにより該タンパク質が不活性となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Maurasら,J.Clin.Endocrinology and Metabolism,85(10),3653−3660(2000)
【非特許文献2】Frindikら,Hormone Research,51(1),15−19(1999)
【非特許文献3】Legerら,J.Clin.Endocrinology and Metabolism,83(10),3512−3516(1998)
【非特許文献4】Bramswig,Endocrine,15(1),5−13(2001)
【非特許文献5】Pasquinoら,Hormone Research,46(6),269−272(1996)
【非特許文献6】Carrollら,Trends in Endocrinology and Metabolism,11(6),231−238(2000)
【非特許文献7】Uelandら,J.Clin.Endocrinology and Metabolism,87(6),2760−2763(2002)
【非特許文献8】Simpsonら,Growth Hormone & IGF Research,12,1−33(2002)
【非特許文献9】MehlsおよびHaas,Growth Hormone & IGF Research,Supplement B,S31−S37(2000)
【非特許文献10】Fineら,J.Pediatrics,136(3),376−382(2000)
【非特許文献11】Motoyamaら,Clin.Exp.Nephrology,2(2),162−165(1998)
【非特許文献12】Hirschfeld,Hormone Research,46,215−221(1996)
【非特許文献13】Tritosら,Am.J.Medicine,105(1),44−57(1998)
【非特許文献14】Mulliganら,J.Parenteral and Enteral Nutrition,23(6),S202−S209(1999)
【非特許文献15】TorresおよびCadman,BioDrugs,14(2),83−91(2000)
【非特許文献16】Ritzen,Hormone Research,56(5−6),208(2002)
【非特許文献17】Eiholzerら,Eur.J.Pediatrics,157(5),368−377(1998)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本開示は、改善された安定性を有する結晶性hGHの製剤を提供する。さらに、本開示は、かかる製剤の調製方法およびかかる製剤を用いた治療方法を提供する。
【0009】
また、本開示において、被検体に無針(ジェット式)注射システムで投与され得る結晶性タンパク質製剤、およびかかる製剤の使用方法を記載する。
【0010】
ある態様において、本開示は、高分子電解質(好ましくは、ポリアルギニン);複合体型組換えヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体(hGH)結晶;緩衝液(例えば、塩緩衝液);60〜200mMのナトリウムイオン濃度範囲を有するナトリウム塩;および懸濁化剤の1種類以上、好ましくは全部を含むhGH調製物を提供する。
【0011】
ある実施形態において、該懸濁化剤はポリエチレングリコール(例えば、PEG3350、6000、または8000)である。
【0012】
ある実施形態では、該懸濁化剤が約2.5〜約20%w/vのポリエチレングリコールである。
【0013】
ある実施形態において、hGHまたはhGH誘導体は、所定の期間および/または所定の条件で安定である。ある実施形態では、該期間が少なくとも6、9、10、12、14、16、17、18、20、22、または24ヶ月である。
【0014】
ある実施形態では、該期間は、少なくとも約12、約18、約24、約30または約36ヶ月である。
【0015】
ある実施形態において、該調製物のpHはpH6〜7である。
【0016】
ある実施形態では、該調製物がリン酸緩衝液を含み、該調製物のpHは6〜7のpHを有する。
【0017】
ある実施形態では、該ポリアルギニン複合体型hGH結晶の濃度は約5mg/mL〜約50mg/mLである。ある好ましい実施形態では、該濃度が約20〜約30mg/mlである。
【0018】
ある実施形態において、該ポリアルギニン複合体型hGH結晶は、約2〜約100μm(例えば約5〜約20μm、例えば約3〜約15μm)の粒径分布を有する。
【0019】
ある実施形態では、ポリアルギニンに対するhGHの比が約3〜約15、例えば約5〜約8である。
【0020】
ある実施形態において、該hGH調製物は、シリンダー型のシリコーン処理された容器内の上部空間がないか、または10mmまでの上部空間を有する容器内に配置される。
【0021】
ある実施形態では、該hGH調製物は反復投与量を収容する容器内に配置される。
【0022】
ある実施形態では、該hGH調製物は単回投与量を収容する容器内に配置される。
【0023】
ある実施形態では、該容器が、テフロン(登録商標)コートされた栓またはゴム配合物4432のいずれかである閉鎖部を含む。
【0024】
ある実施形態において、該hGH調製物は0.2mL〜1.0mLの充填容積を有する容器内に配置される。
【0025】
ある実施形態において、該調製物は、送達デバイス、例えば、皮下注射に適したシリンジ(例えば、プレフィルドシリンジ)内に配置される。
【0026】
ある実施形態では、該調製物は、29ゲージ以下の針を有するシリンジ内に配置される。
【0027】
ある実施形態では、該調製物はニードルフリー注射器内に配置される。
【0028】
ある実施形態において、hGHは、約5〜約100mg/ml、約10〜約50mg/l、または約20〜約30mg/mlで存在する。
【0029】
ある実施形態では、該調製物はまた、抗菌剤、例えば、フェノールまたはm−クレゾールも含む。
【0030】
ある実施形態では、該調製物はまた、ヒアルロン酸も含む。
【0031】
ある実施形態において、該調製物は懸濁剤以外のポリマーを含まない。
【0032】
ある実施形態では、該調製物はヒスチジン緩衝液を含まない。
【0033】
ある実施形態において、該調製物はまた保存料も含む。好ましい実施形態において、保存料はフェノールまたはm−クレゾールである。より好ましい実施形態では、保存料がフェノールである。
【0034】
ある態様において、本開示は、5〜50mg/mlのポリアルギニン複合体型組換えヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体(hGH)結晶;6.1〜6.8のpHのリン酸緩衝液;60〜200mMの塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム;2.5〜20%のポリエチレングリコール、例えば、6000または8000を含み;10mm以下の上部空間を有するシリコーン処理されたプレフィルドシリンジ内に;0.2〜1.0mlの容量配置されたhGH調製物を特徴とする。
【0035】
ある実施形態では、該シリンジが29ゲージ以下の針を有する。
【0036】
ある実施形態では、該調製物がニードルフリー注射器内に配置される。
【0037】
ある態様において、本開示は、高分子電解質(例えば、ポリアルギニン(aginine))でコートされたhGH結晶の懸濁液であって、該結晶性hGHの濃度が5〜100mg/mL、10〜50mg/mL、または20〜30mg/mLである懸濁液;該複合体の結晶化度を好ましくはpH範囲5.0〜8.0に維持する生物学的に適合性の緩衝液;前記複合体の結晶化度を維持または増大させる結晶化度促進剤;および前記組成物の総重量オスモル濃度が250〜450mOsm/kg、270〜350mOsm/kg、または280〜330mOsm/kgとなるようにする張度調整剤の1種類以上、好ましくは全部を含むhGH調製物を含むhGH調製物を特徴とする。
【0038】
ある実施形態において、該hGH調製物は、保存料、例えばフェノールを含む。ある実施形態では、該フェノールが約0.25%または約0.2〜約0.3%w/vの濃度である。
【0039】
ある実施形態において、該hGH調製物は、化学的安定剤、例えば、メチオニンまたはEDTAを含む。
【0040】
ある実施形態では、該生物学的に適合性の緩衝液が、約1〜約150mM、約2〜約50mM、または約10mMの範囲の緩衝塩濃度を有する。
【0041】
ある実施形態において、該緩衝塩は、酢酸塩、トリエタノールアミン、イミダゾール、リン酸塩、クエン酸塩およびTris−HClを含む(からなる)群から選択される。他のある実施形態では、該緩衝塩は、リン酸塩、グリシン、ヒスチジン、クエン酸塩、酢酸塩およびTrisを含む群から選択される。
【0042】
ある実施形態において、該生物学的に適合性の緩衝液は、例えば、5.8〜7.0または6.0〜6.5のpH範囲のリン酸ナトリウムである。
【0043】
ある実施形態では、該生物学的に適合性の緩衝液が、リン酸ナトリウム緩衝液とクエン酸ナトリウム緩衝液(例えば、2mMクエン酸Na塩と8mMリン酸Na塩を含む)。
【0044】
ある実施形態において、前記複合体の結晶化度を維持または増大させる結晶化度促進剤は、酢酸Na塩、またはポリエチレングリコール(例えば、PEG3350〜PEG8000)を含む。
【0045】
ある実施形態では、前記複合体の結晶化度を維持または増大させる結晶化度促進剤は、約1〜約25w/v%(例えば、約2〜約10w/v%;または約4〜約6w/v%)のPEGを含む。
【0046】
ある実施形態では、前記複合体の結晶化度を維持または増大させる結晶化度促進剤は、例えば、約0.1〜約0.5%w/vの濃度のフェノールを含む。
【0047】
ある実施形態では、張度調整剤が、中性塩(1種類または複数種)、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、Tris−HCl、その作用緩衝pH範囲外の緩衝塩、その緩衝pH範囲外のpH範囲内のアミノ酸(1種類または複数種)の塩(1種類または複数種)、グリシンナトリウム塩、ポリオール(マンニトールまたはソルビトールなど)、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される。
【0048】
ある実施形態では、該hGH調製物は、反復投与量を収容する容器内に配置される。
【0049】
ある実施形態では、該hGH調製物は、単回投与量を収容する容器内に配置される。
【0050】
ある実施形態では、該容器が、テフロン(登録商標)コートされた栓またはゴム配合物4432のいずれかである閉鎖部を含む。
【0051】
ある実施形態では、該hGH調製物は、0.2mL〜1.0mLの充填容積を有する容器内に配置される。
【0052】
ある実施形態では、該hGH調製物は、送達デバイス、例えば、皮下注射に適したシリンジ(例えば、プレフィルドシリンジ)内に配置される。
【0053】
ある実施形態では、該hGH調製物は、ニードルフリー注射器内に配置される。
【0054】
ある実施形態では、該hGH調製物はヒアルロン酸を含む。
【0055】
ある態様において、本開示は、本明細書に記載の調製物の成分を合わせることを含むhGH調製物の作製方法を特徴とする。例えば、合わせたものは、高分子電解質(好ましくは、ポリアルギニン);複合体型組換えヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体(hGH)結晶;緩衝液(例えば、塩緩衝液);60〜200mMのナトリウムイオン濃度範囲を有するナトリウム塩;および懸濁化剤の1種類以上、好ましくは全部を含むhGH調製物である。別の例として、5〜50mg/mlのポリアルギニン複合体型組換えヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体(hGH)結晶;6.1〜6.8のpHのリン酸緩衝液;60〜200mMの塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム;2.5〜20%のポリエチレングリコール、例えば、6000または8000を合わせる。
【0056】
ある態様において、本開示は、本明細書に記載の調製物の成分を容器内に0.2〜1.0mlの充填容積まで配置することを含み、前記容器が、例えば10mm以下の上部空間を有するシリンジであり、好ましくは患者への皮下注射に適した容器である、hGH調製物のパッケージング方法を特徴とする。
【0057】
ある態様において、本開示は、請求項1または請求項26の調製物の成分を容器内に、0.2〜1.0mlの反復用量を収容する充填容積まで配置することを含む、hGH調製物のパッケージング方法を特徴とする。
【0058】
ある態様において、本開示は、hGH調製物を患者に送達する方法を特徴とする。該方法は、
本明細書に記載のhGH調製物を提供すること、および
例えば、注射によって、2、3、4、5、6、7、8、9または10日に1回以下で投与すること
を含む。
【0059】
ある態様において、本開示は、hGH調製物またはhGH調製物に関する情報を関係者に、例えば、流通業者、医師、薬局、病院、HMO、卸売業者、小売業者、政府、患者または医療関連機関に提供する方法を特徴とする。該方法は、
該関係者に、本明細書に記載の調製物の成分を含むhGH調製物が所定の期間および/または所定の条件で安定であることを指示することを含む(includes comprising)。
【0060】
ある実施形態において、該期間は、少なくとも6、9、10、12、14、16、17、18、20、22、または24ヶ月である。
【0061】
ある実施形態では、該期間は、少なくとも12、18、24、30または36ヶ月である。
【0062】
ある実施形態において、該条件は温度、例えば2〜8℃である。
【0063】
ある実施形態では、該条件は室温、例えば約25℃である。
【0064】
ある態様において、本開示は、標準、例えば、政府機関(例えば、FDA)によって課された標準、例えば、公表明細もしくはラベル明細、または調合薬一覧(compendium)を満たす方法を特徴とする。該方法は、
hGH調製物、例えば本明細書に記載のhGH調製物が所定の期間および/または所定の条件で安定であることのエビデンスを提供すること、または安定であると明示すること
を含む。
【0065】
ある実施形態では、該期間は少なくとも6、9、10、12、14、16、17、18、20、22、または24ヶ月である。
【0066】
ある実施形態では、該期間は少なくとも12、18、24、30または36ヶ月である。
【0067】
ある実施形態では、該条件は温度、例えば2〜8℃である。
【0068】
ある実施形態では、該条件は室温、例えば約25℃である。
【0069】
ある態様において、本開示は、内部に結晶化タンパク質の調製物が配置されたニードルフリー注射器を特徴とする。
【0070】
ある実施形態において、該調製物は結晶の溶液である。
【0071】
ある実施形態において、該結晶は架橋されたものである。
【0072】
ある実施形態では、該結晶は、高分子電解質(例えば、ポリアルギニン)との複合体型である。
【0073】
ある実施形態では、該調製物はhGHまたはhGH誘導体のものである。
【0074】
ある実施形態では、該調製物は、本明細書に記載のhGHまたはhGH誘導体調製物である。
【0075】
ある実施形態では、該調製物はワクチンではない。
【0076】
ある実施形態では、該調製物中の結晶は、注射器の送達オリフィスの直径の0.5、0.33もしくは0.25またはそれより小さい平均最大寸法を有する。
【0077】
ある実施形態では、該調製物は、さらにヒアルロン酸を含む。
【0078】
ある実施形態では、前記調製物中のタンパク質の濃度は約100mg/ml未満であるか、または約2〜約50mg/mlである。
【0079】
ある態様において、本開示は、結晶化タンパク質調製物を被検体に送達する方法を特徴とする。該方法は、結晶化タンパク質調製物をニードルフリー注射器内に配置して供給すること、および該調製物を該被検体に注射することを含む。
【0080】
ある実施形態において、該調製物は結晶の溶液である。
【0081】
ある実施形態において、前記結晶は架橋されたものである。
【0082】
ある実施形態では、該結晶は、高分子電解質(例えば、ポリアルギニン)との複合体型である。
【0083】
ある実施形態では、該調製物は、hGHまたはhGH誘導体のものである。
【0084】
ある実施形態では、該調製物は、本明細書に記載のhGHまたはhGH誘導体調製物である。
【0085】
ある実施形態において、該調製物はワクチンではない。
【0086】
ある実施形態において、前記調製物中の結晶は、注射器の送達オリフィスの直径の0.5、0.33もしくは0.25またはそれより小さい平均最大寸法を有する。
【0087】
ある実施形態において、該調製物は、さらにヒアルロン酸を含む。
【0088】
ある実施形態において、前記調製物中のタンパク質の濃度は約100mg/ml未満であるか、または約2〜約50mg/mlである。
【0089】
ある態様において、本開示は、再懸濁させると、hGHまたはhGH誘導体結晶の懸濁液(例えば、ポリアルギニン複合体型hGH結晶の懸濁液)、緩衝液、塩およびポリエチレングリコールを含む懸濁液をもたらすhGHまたはhGH誘導体の凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0090】
ある実施形態において、該結晶の懸濁液は約20〜約50mg/mlの量で存在する。
【0091】
ある実施形態において、該緩衝液はTrisを含む。
【0092】
ある実施形態では、該緩衝液はリン酸塩を含む。ある実施形態では、緩衝液は、さらにTrisまたはヒスチジンを含む。
【0093】
ある実施形態において、該懸濁液のpHは約7〜約9である。
【0094】
ある実施形態において、該塩は、塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウムを含む。ある実施形態において、該塩は約50mM〜約100mMの量で存在する。
【0095】
ある実施形態において、該ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール3350、6000または8000を含む。ある実施形態において、該ポリエチレングリコールは約2.5%〜約10%の量で存在する。
【0096】
ある実施形態において、該懸濁液は、約20〜約50mg/mLのhGH結晶の懸濁液;Trisまたはリン酸塩とTrisもしくはヒスチジンいずれかとの併用緩衝液;約7〜約9のpH;約50mM〜約100mMの量の塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム;および約2.5%〜約10%の量のポリエチレングリコール3350、6000または8000を含む。
【0097】
ある実施形態において、該調製物はまた保存料も含む。ある実施形態において、保存料は、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、またはベンジルアルコール(例えば、好ましくは、フェノール、m−クレゾール、またはクロロブタノール、より好ましくはフェノール)である。
【0098】
ある実施形態において、該懸濁液は、シリコーン処理されたバイアルまたは表面コートされた容器閉鎖部内に配置される。
【0099】
ある態様において、本開示は、凍結乾燥された結晶性hGHの作製方法を特徴とする。該方法は、
約−30℃〜約10℃の一次乾燥サイクル
を含む。
【0100】
ある実施形態において、該方法は、さらに、約20℃〜約40℃の二次乾燥サイクルを含む。
【0101】
ある実施形態において、本開示は、本明細書に記載の方法によって作製される凍結乾燥された結晶性hGH製剤を特徴とする。
【0102】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0103】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0104】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、0.2%のHA、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0105】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、0.2%のHA、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0106】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG6000、pH7.0を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0107】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG6000、pH7.0からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0108】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG6000、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0109】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG6000、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0110】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG8000、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0111】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG8000、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0112】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG3350、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0113】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG3350、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0114】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0115】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0116】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMのNaCl、5%のPEG8000、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0117】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMのNaCl、5%のPEG8000、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0118】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMのNaCl、5%のPEG3350、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0119】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMのNaCl、5%のPEG3350、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0120】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのヒスチジン、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.0を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0121】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのヒスチジン、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.0からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0122】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、1%のスクロース、5%のPEG6000、pH7.5を含むhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0123】
ある態様において、本開示は、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、1%のスクロース、5%のPEG6000、pH7.5からなるhGHの凍結乾燥調製物を特徴とする。
【0124】
ある態様において、本開示は、再懸濁させた本明細書に記載の凍結乾燥物を特徴とする。
【0125】
ある態様において、本開示は、hGH調製物を患者に送達する方法を特徴とする。該方法は、凍結乾燥された本明細書に記載のhGH調製物を提供すること、および
該調製物(例えば、該凍結乾燥物を再懸濁した後)を、例えば注射によって前記患者に、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10日に1回以下で投与すること
を含む。
【0126】
特に規定のない限り、本明細書で用いるすべての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、その定義を記載する本出願書類に支配される。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料を本開示の実施および試験において使用することができるが、好適な方法および材料は以下に記載するものである。
【0127】
本明細書に挙げたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、その定義を記載する本明細書に支配される。また、材料、方法および実施例は、例示にすぎず、限定を意図しない。
【0128】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の詳細説明に示す。本開示の他の特徴、目的および利点は、詳細説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】pHとCEXによる分解のパーセンテージとの相関を示すグラフである:25℃で3ヶ月のデータを相関に使用した。
【図2】ナトリウム塩を含有する製剤(高イオン強度)が、塩を含有しない製剤よりもCEXによる分解が少ないことを示すグラフである。40℃で1週間の安定性データ。
【図3】40℃で2週間後の賦形剤スクリーニングでのCEXによる分解のパーセンテージを示すグラフである。
【図4】pH6.8における種々の懸濁化剤でのCEXによる分解(賦形剤)のパーセンテージを示すグラフである。製剤はすべて、以下の成分:リン酸塩、NaCl(pH6.8)を含むものとした。
【図5】CEXによる分解に対する塩の種と濃度の効果を示すグラフである。製剤はすべて、以下の成分リン酸塩とPEG6000またはPEG8000のいずれかを含むものとした。
【図6】PEG濃度に対するCEXによる分解のパーセンテージを示すグラフである(10%のPEGの結果は図示せず)。
【図7】回収されたhGHの濃度比較を示す一連のグラフである。図7Aは、反転処理に供された1mlの送達容量で得られた結果を示す;図7Bは、旋回処理に供された1mlの送達容量で得られた結果を示す;図7Cは、反転処理に供された0.2mlの送達容量で得られた結果を示す;図7Dは、旋回処理に供された0.2mlの送達容量で得られた結果を示す。
【図8】体重回復パーセンテージの比較を示す一連のグラフである。図8Aは、反転処理に供された1mlの送達容量で得られた結果を示す;図8Bは、旋回処理に供された1mlの送達容量で得られた結果を示す;図8Cは、反転処理に供された0.2mlの送達容量で得られた結果を示す;図8Dは、旋回処理に供された0.2mlの送達容量で得られた結果を示す。
【図9】元々、結晶性凝集体を含まないALTU−238試料における、BioJector 2000注射システムでの1回目の注射後および2回目の注射後の粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図10】BioJector 2000注射システムでの注射前、1回目の注射後および2回目の注射後のHA−ALTU−238試料における粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図11A】30G×1/2インチ針が予め取り付けられたBDシリンジ、BioJector 2000システム、およびVetJetシステムによる注射前および注射後の、BC−Lipase(20μm)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図11B】30G×1/2インチ針が予め取り付けられたBDシリンジ、BioJector 2000システム、およびVetJetシステムによる注射前および注射後の、BC−Lipase(20μm)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図12A】30G×1/2インチ針が予め取り付けられたBDシリンジ、BioJector 2000システムおよびVetJetシステムによる注射前および注射後の、BC−Lipase(30μm)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図12B】30G×1/2インチ針が予め取り付けられたBDシリンジ、BioJector 2000システムおよびVetJetシステムによる注射前および注射後の、BC−Lipase(30μm)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図13A】BioJector 2000、30G×1/2インチ針が予め取り付けられたBDシリンジ、および25G×5/8インチ針を有するシリンジでの注射前および注射後の、BC−Lipase(80μm)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図13B】BioJector 2000、30G×1/2インチ針が予め取り付けられたBDシリンジ、および25G×5/8インチ針を有するシリンジでの注射前および注射後の、BC−Lipase(80μm)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図14A】BioJector 2000の使用、30G×1/2インチ針、および25G×5/8インチ針および18G×1インチが予め取り付けられたBDシリンジによる注射前および注射後の、グルタリルアルカラーゼ(Glutaryl Alcalase)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図14B】BioJector 2000の使用、30G×1/2インチ針、および25G×5/8インチ針および18G×1インチが予め取り付けられたBDシリンジによる注射前および注射後の、グルタリルアルカラーゼ(Glutaryl Alcalase)試料の体積−(A)および数−(B)に基づく粒径分布のオーバーレイを示すグラフである。
【図15】上清み中の溶在hGHの量に対するPEG濃度の効果を示すグラフである。製剤基剤はpH7.5のTris緩衝液とした。
【図16】種々の溶解(lyo)サイクルによって作製した試料の粒径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0130】
詳細な説明
概論:結晶性hGHの安定性
経時的に、結晶性hGHの懸濁液では、可溶性タンパク質の凝集体が現れることがあり得、hGHが酸化、脱アミド化、化学分解および結晶形態の変化を受けることがあり得、hGHが溶液中に溶解することがあり得る。
【0131】
本開示は、安定性が増大した結晶性hGHの懸濁液、例えば、ポリアルギニン複合体型hGH結晶の懸濁液を提供する。本明細書に記載の実施形態は、1つ以上の安定性の課題に対処するための1つ以上の手段を含む。
【0132】
一例として、結晶性hGH製剤の安定性を増大させるために、種々の要素、例えば、タンパク質濃度、緩衝液の選択、塩の選択および濃度、pH、懸濁化剤の選択および濃度、保存容器の選択、保存料の選択および濃度、ならびに充填容積に対処されている。これらの要素の1つ、2つ、3つ、4つまたは全部が、対象のタンパク質の安定性を増大させるために改変または制御され得る。
【0133】
安定性が改善された結晶性hGHの液状懸濁液の一例として、該懸濁液は、以下の特性の1つ以上を有するものであり得る:約5〜50mg/mlのhGH結晶の懸濁液を含む;リン酸塩含有緩衝液を含む;約6.1〜約6.8のpH範囲に含まれる;約60mM〜約200mMの濃度の塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウムを含む;約2.5%〜約20%のポリエチレングリコール6000または8000を含む;約0.2〜約1mlの充填容積で等分される;限定的な上部空間(例えば、上部空間なしから約10mmまでの上部空間)を有するシリコーン処理されたプレフィルドシリンジまたは限定的な上部空間を有する別のシリンダー型の容器もしくはデバイス内に配置される。
【0134】
一例として、本開示は、5±3℃(冷蔵)で18〜24ヶ月、および室温25±2℃(使用時)条件で少なくとも1ヶ月安定である結晶性hGHの懸濁液の製剤を提供する。
【0135】
本明細書に記載の製剤、例えば、結晶性タンパク質(例えば、ポリArg複合体型結晶性hGH)を含有する液状製剤は、安定性が増大している。例えば、容器内に2〜8℃の温度で3、6、9、12または24ヶ月まで(あるいは、ある実施形態では、より長期)の期間保存すると、該組成物中のタンパク質は、保存前に有していた安定性の少なくとも50、75、85、90、95または100%を保持している(例えば、該タンパク質は、25℃で3ヶ月間にわたって該安定性の約77%を保持することができる)。安定性は、本明細書で用いる場合、タンパク質の構造(例えば、タンパク質構造の変化、例えば、タンパク質凝集もしくはタンパク質分解の最小化もしくは抑制)および/またはタンパク質の有効性、例えば治療有効性(例えば、体重の増加を引き起こす能力)などのパラメータを包含する。
【0136】
本明細書で用いる場合、用語「安定性増大」は、試験条件または一定の保存条件下での一定期間におけるタンパク質の脱アミド化、タンパク質の酸化、タンパク質の凝集、タンパク質の溶解、または治療有効性の量の減少(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の減少)をいう。
【0137】

ヒト成長ホルモン
用語「成長ホルモン(GH)」は、一般的に、哺乳動物の下垂体によって分泌される成長ホルモンをいう。網羅的列挙ではないが、哺乳動物の例としては、ヒト、類人猿、サル、ラット、ブタ、イヌ、ウサギ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラットおよびヤギが挙げられる。本開示の好ましい実施形態によれば、哺乳動物はヒトである。
【0138】
「ヒト成長ホルモン(hGH)」は、天然のヒト成長ホルモンに特徴的なアミノ酸配列、構造および機能を有するタンパク質を表す。本明細書で用いる場合、ヒト成長ホルモン(hGH)はまた、天然のヒト成長ホルモンの任意のアイソフォーム、例えば限定されないが、5、17、20、22、24、36および45kDaの分子量を有するアイソフォーム(Haroら,J.Chromatography B,720,39−47(1998))を包含する。したがって、用語hGHには、191個のアミノ酸配列の天然のhGH、ソマトトロピンと、N末端メチオニンを含む192個のアミノ酸配列(Met−hGH)およびソマトレム(米国特許第4,342,832号および同第5,633,352号)が包含される。hGHは、生物学的供給源からの単離および精製または組換えDNA法によって得られ得る。組換えDNA手法によって作製されたものである場合、hGHは、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)と表示する。Met−hGHは、典型的には組換えDNA手法によって調製される。
【0139】
用語「ヒト成長ホルモン誘導体」は、hGHの191個のアミノ酸配列またはMet−hGHの192個のアミノ酸配列のアミノ酸配列と、少なくとも約1%であって約20%以下異なるタンパク質をいう。例えば、該誘導体は、hGHの191個のアミノ酸配列またはMet−hGHの192個のアミノ酸配列と、約1%〜約20%、約2%〜約15%、または約5%〜約10%異なるものであり得る。該タンパク質は、hGHの191個のアミノ酸配列またはMet−hGHの192個のアミノ酸配列と、約1%、約2%、約3%、約4%、約51%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、または約15%異なるものであり得る。該誘導体と191アミノ酸hGHまたは192アミノ酸Met−hGHとのアミノ酸配列の違いは、1つ以上の置換(例えば、同類もしくは非同類置換)、欠失、付加(例えば、挿入もしくはアミノ−もしくはカルボキシ末端付加))、修飾、またはその組合せであり得る。ある実施形態において、該誘導体は、191アミノ酸hGHまたは192アミノ酸Met−hGHのアミノ酸配列の生物学的活性、および/または化学的および/または物理的特性を維持している。同様に、ある実施形態では、誘導体を有する製剤(例えば、ポリArg複合体型結晶性hGH誘導体の製剤)は、191アミノ酸hGHまたは192アミノ酸Met−hGHのアミノ酸配列を含む同様にして調製された製剤(例えば、ポリArg複合体型結晶性hGHの製剤)の化学的および/または物理的特性を有するものである。
【0140】
本開示の種々の実施形態において、ヒト成長ホルモン誘導体は、hGHまたはMet−hGHの有機カチオン、生物学的に合成されたhGHまたはMet−hGHタンパク質の置換、欠失および挿入バリアント、翻訳後修飾されたhGHおよびMet−hGHタンパク質(例えば、脱アミド化、リン酸化、グリコシル化、アセチル化、凝集および酵素的切断反応[Haroら,J.Chromatography B,720,39−47(1998)])、生物学的供給源由来の化学修飾されたhGHまたはMet−hGHタンパク質、ポリペプチド類縁体、ならびにhGHまたはMet−hGHのものと類似したアミノ酸配列を含む化学合成されたペプチドを含む。
【0141】
hGHまたはMet−hGHを調製するために使用される方法としては、生物学的供給源からの単離、組換えDNA手法、合成化学的経路またはその組合せが挙げられる。これまでで、異なるDNA配列のhGHをコードする遺伝子としては、hGH−NおよびhGH−V [Haroら,J.Chromatography B,720,39−47(1998);Bennani−Baitiら、Genomics,29,647−652(1995)]が挙げられる。
【0142】
用語「原子価」は、元素が他の元素と結合する能力と定義され、その原子の最外殻の電子の数によって決定され、その原子と結合する(または置き換える)ことができる水素原子(または任意の他の標準的な一価の元素)の数で表示される[Webster’s New World Dictionary of Science,Lindley,D.およびMoore T.H.編.,Macmillan,New York,N.Y.,1998]。用語「一価のカチオン」および「二価のカチオン」は、それぞれ原子価状態1または2のいずれかを有する正の電荷を有するイオンをいう。カチオンは、種々の原子価状態を有し、天然で有機系または無機系のものであり得る。一価の無機カチオンの例としては、アンモニウム(NH4+)ならびに周期表の第I族の元素(H+、Li+、Na+、K+、Rb30、Cs+、およびFr+)が挙げられ、二価の無機カチオンとしては、第II族の元素(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Mo2+およびRa2+)が挙げられる。
【0143】
「ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の有機カチオン結晶」は、有機カチオンの存在下で結晶化されたヒト成長ホルモンをいう。用語「有機カチオン」は、正の電荷を有する原子または炭素を含む原子の群をいう。有機カチオンの例としては、第4級アンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウム(TEA)、トリブチルメチルアンモニウム(TBuMA)、プロカインアミドエトブロミド(PAEB)、アジドプロカインアミドメトイオダイド(APM)、d−ツボクラリン、メトクリンベクロニウム、ロクロニウム、1−メチル−4−フェニルピリジニウム、コリンおよびN−(4,4−アキソ−n−ペンチル)−21−デオキシアジム−アリニウム(APDA)が挙げられる。
【0144】
hGHは、凍結乾燥形態で市販されており、典型的には組換えDNA法で作製される。hGHの結晶化は、hGHの緩衝溶液を調製し、精製および/または脱塩し、溶液を透析および濃縮し、一価または二価のカチオンまたは塩を溶液に添加することにより行なわれ得る。後者の工程により、hGHに結合された有機または無機カチオンの形成がもたらされる。
【0145】
本開示の好ましい一実施形態は、hGHまたはhGH誘導体の一価のカチオン結晶に関する。より好ましい実施形態において、一価のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムからなる群より選択される。
最も好ましい実施形態において、一価のカチオンはナトリウムである。最も好ましい実施形態において、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のモノマーまたはモノマー鎖1つあたり約1〜約500個の一価のカチオン分子を含む。
【0146】
用語「一価のカチオンの塩」は、一価のイオンとイオン結合を形成する無機および有機両方の対イオンまたは分子を包含する。好ましい実施形態において、一価のカチオンの塩はナトリウム塩である。より好ましい実施形態では、ナトリウム塩が、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムからなる群より選択される。最も好ましい実施形態では、ナトリウム塩が酢酸ナトリウムである。
【0147】
好ましい一実施形態において、プロタミンと複合体形成された結晶性hGHまたは結晶性hGH誘導体を提供する。同様に、別の好ましい実施形態では、ポリアルギニンと複合体形成された結晶性hGHまたは結晶性hGH誘導体を提供する。
【0148】
長期作用性hGHを作製するため、hGHの結晶化および複合体形成のプロセスが開発され、この製剤は、臨床試験において制御放出プロフィールを示した(米国特許出願公報2004−0209804号、WO2004/060310、WO2004/060920参照)。ポリアルギニン(ポリArg)複合体形成により、制御放出プロフィールが改善される。この薬物送達方法により、患者はよりユーザーフレンドリーな治療選択肢を得られるため、ポリマーまたは融合タンパク質を使用することなく、注射がより少なくなるように設計されたものである。この結晶化技術の特異性は、上清み中に存在する遊離hGHが限定的であるため、可溶性凝集体の増加がほとんどまたは全く観察されないことである。
【0149】
例えば、ポリArg結晶性hGHは、以下のようにして調製され得る。
【0150】
可溶性の組換えにより作製されたhGH(rhGH)の凍結バルク仕込み溶液を得る、例えば、大腸菌(Novartis)または酵母(Lucky Gold)から得る。およそ3.5ml(Tris−HCl(10mM、pH8.0)中12mg/mlのrhGH)の解凍rhGH仕込み溶液を、10DG−脱塩カラム(Bioradにより供給)を用いて精製する。試料の負荷前、カラムを30mlのTris−HCl(10mM、pH8.0)で洗浄することにより、カラムを調整する。次いで、rhGH試料を負荷し、重力によってカラム内に導入させる。最初の3mlの溶出液を廃棄した後、次いで、さらに5.0mlの10mMのTris−HCl(pH8.0)を添加する。4.5mlの脱塩rhGHが溶出され、収集する。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を3500rpmで20〜30分用い、遠心分離による濃縮を行なう。hGHの濃度は、280nmでの吸光度/0.813(1mg/mlのhGH A280=0.813吸光度単位)で測定した場合、30mg/mlの範囲である。1MのTris−HCl(pH8.6)、50%のPEG−6000および1Mの酢酸Ca塩をrhGHの30mg/mlストック調製物に、最終濃度が、15mg/mlのrhGH、100mMのTris−HCl(pH8.6)、2%(v/v)PEG−6000および85mMの酢酸Ca塩が得られるように添加することにより、結晶を成長させる。次いで、この溶液を静かに混合し、33℃で12〜16時間インキュベートする。およそ2〜25μmの範囲の長さの針状結晶が得られる。上清みを抽出し、結晶を遠心分離してペレット化した後、結晶化収率を測定する。例えば、該収率は85%より大きいものであり得る。また、結晶は、33℃〜15℃の温度でも形成され得るが、より長い結晶化時間が必要とされ、収率が低下する場合があり得る。結晶化後、収率を測定し、カルシウムrhGH結晶を製剤化ビヒクル(例えば、5mM CaOAc、100mMのTris−HCl(pH8.6)、6%PEG−6000、および4.2mg/mlポリアルギニン)中に、最終濃度21mg/mlまたは25mg/mlのカルシウムrhGH結晶が得られるように再懸濁させる。ポリアルギニンに対するrhGHのタンパク質対添加剤比は、5:1(mg:mg)とした。この比は、rhGH:ポリアルギニンがおよそ1:0.587のモル比となるように計算する。上記のrhGHペレットを適切な母液中に均一に再懸濁させ、2〜8℃で一晩インキュベートした後、遠心分離し、濃縮ペレットを得る。上清みを除去し、ペレットは、イオン系添加剤を含まない同じ母液中に再懸濁させ、4℃で保存され得る。
【0151】
本開示のさらに好ましい実施形態は、プロタミンまたはポリアルギニンと複合体形成または共結晶化されたhGHまたはhGH誘導体の一価または二価の結晶を含む。より好ましくは、該結晶は、プロタミンまたはポリアルギニンと複合体形成または共結晶化されたナトリウム結晶である。
【0152】
可溶性形態のhGHは、さまざまな方法、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)および疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(Wuら,J.Chromatography,500,595−606(1990);“Hormone Drugs”,FDA publication,(1982))によって特徴付けられ得る。他方、結晶性形態のhGHは、光学顕微鏡法およびX線回折によって特徴付けられ得る。一般に、結晶化の条件によって、タンパク質結晶の形状、すなわち、球状、針状、棒状、板状(六角形および四角形)、菱形、立方形、両錐形またはプリズム形からなる群より選択される形状が決定される。
【0153】
本開示によるhGHまたはhGH誘導体の結晶は、光学顕微鏡法で画像形成させると、棒状または針状形態構造を形成したものである。一実施形態において、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約0.1〜約200μmの長さの棒状体または針状体を形成したものである。好ましい実施形態において、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約3〜約100μmの長さの棒状体または針状体を形成したものである。より好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約10〜約25μmの長さの棒状体または針状体を形成したものである。
【0154】
ALTU−238は、ポリ−L−アルギニンと複合体形成されたhGH結晶が製剤化ビヒクル中に含まれた長期作用性(例えば、29ゲージ以下の針による皮下投与後、hGHの1週間にわたる放出をもたらす)の既製の懸濁液である。ALTU−238製剤は、25mg/mLのrhGH、5mg/mLのポリArg、25mMのTris、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000 pH7.5であり、例えば、本明細書に記載の製剤の安定性を評価するための比較試験の標準として使用され得る。
【0155】
液状と凍結乾燥状態の2種類の製剤は、hGH結晶と複合体形成されたポリ−L−アルギニンを用いて調製され得る。各々の説明を示す。
【0156】

液状懸濁剤製剤
製剤化ビヒクル
ポリArg複合体型hGH結晶を懸濁させるpH、緩衝液、塩、懸濁化剤、ヒアルロン酸(「HA」)および/または保存料の配合物を「製剤化ビヒクル」と称することがあり得る。該ビヒクルの各成分は、個々に、または組合せで種々であり得、所望の特性、例えば安定性が増大した複合体型hGH結晶の懸濁液がもたらされるように最適化され得る。
【0157】

pH
懸濁液のpHは、hGH複合体型結晶(ポリArg複合体型hGH結晶の懸濁液)の安定性に影響を及ぼす主な因子であり得る。例えば、該懸濁液のpHは、hGH複合体型結晶の脱アミド化と酸化に影響を及ぼし得る。ある実施形態において、約7.0または7.5(他の製剤化条件に応じて)より上のpHにより、タンパク質の(図1)と酸化の両方の増大が引き起こされ得る。脱アミド化は、例えば、カチオン交換HPLC(CEX−HPLC)によって測定され得る。酸化は、例えば、逆相HPLC(RP−HPLC)によって測定され得る。約5.5または約5.0より下のpHでは、例えば、該懸濁液の他の特性にもよるが、タンパク質の混濁がもたらされ得る。濁度は、例えば、320nmで読み取りが行なわれるUV吸光度によって測定され得る。
【0158】
ある実施形態において、該懸濁液のpHは約6〜約7.5である。好ましい実施形態では、該pHは6.1〜6.8である。例えば、該pHは、約6.1、約6.3、約6.5、または約6.8であり得る。
【0159】
候補pHは、25mg/mLのrhGH、5mg/mLのポリArg、25mMのTris、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000を含有する候補pH値のポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば酸化または分解の割合として測定される候補pHを有する該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、該懸濁液のpHが調整されていないこと以外は試験条件と類似した懸濁液であり得、例えば、標準のpHは7.5であり得る。試験品(候補pHに調整された該懸濁液)と標準(pHが調整されていない)懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、試験懸濁液の安定性が増大していること(例えば、酸化または脱アミド化の量がより少ないことで測定)により示され得る。別の標準は、該懸濁液が候補pHの代わりに本明細書に記載の別のpH、例えばpH6.5を有すること以外は試験懸濁液と類似した懸濁液であり得る。好適性は、候補pHの該懸濁液が安定性についてpH6.5の該懸濁液と同等または、それよりも良好な効果を有することにより示され得る。
【0160】

緩衝液
懸濁液を作製するために使用される緩衝液は、hGH複合体型結晶(ポリArg複合体型hGH結晶の懸濁液)の安定性に影響を及ぼす主な因子であり得る。例えば、該懸濁液の緩衝液は、hGH複合体型結晶の懸濁液の結晶の大きさと濁度(例えば、不溶性凝集体による)に影響を及ぼし得る。濁度は、例えば、320nmで読み取りが行なわれるUV吸光度によって測定され得る。結晶の大きさは、例えば、顕微鏡法およびレーザー回折粒径計測器によって評価され得る。
【0161】
ある実施形態において、緩衝液は、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、またはTris緩衝液であり得る。
好ましい実施形態では、緩衝液は、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、またはTris緩衝液である。より好ましい実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液である。また、緩衝液の濃度は種々であり得、例えば、緩衝液成分、例えば、リン酸塩、グリシン、ヒスチジン、クエン酸塩、酢酸塩、またはTrisの濃度は、種々であり得る。
【0162】
候補緩衝液は、25mg/mLのrhGH、5mg/mLのポリArg、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000をpH6.5の試験緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば混濁の量として測定される候補緩衝液中での該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、組成物の緩衝液が本明細書に記載の緩衝液であること以外は試験条件と類似した組成物であり得、例えば、標準の緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。試験品(試験緩衝液中の該懸濁液)と標準(リン酸緩衝液中の該懸濁液)の懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、試験懸濁液の安定性が増大していること(例えば、混濁の量がより少ないことで測定)により示され得る。別の標準は、該懸濁液が候補緩衝液の代わりに別の本明細書に記載の緩衝液、例えばTris緩衝液を有すること以外は試験懸濁液と類似した懸濁液であり得る。好適性は、候補緩衝液中の該懸濁液がリン酸緩衝液中の該懸濁液よりも、安定性に対して良好または同等な効果を有することにより示され得る。また、別の例として緩衝液の濃度が試験され得、例えば、試験濃度、例えば50mMのTris中の懸濁液の安定性(例えば、混濁)が、本明細書に記載の標準濃度、例えば25mMのTris中の懸濁液と比較され得る。好適性は、候補濃度の該懸濁液が安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有することにより示され得る。
【0163】


懸濁液に使用される塩は、hGH複合体型結晶(ポリArg複合体型hGH結晶の懸濁液)の安定性に影響を及ぼす主な因子であり得、例えば、該懸濁液中の塩の含有量は、脱アミド化速度および/または懸濁液中のhGH複合体型結晶のレベルに影響を及ぼし得る。一例として、塩の含有量が高い(例えば、イオン強度が増大する)ほど、もたらされ得る脱アミド化は少なくなる。脱アミド化は、例えば、カチオン交換HPLC(CEX−HPLC)によって測定され得る。
【0164】
ある実施形態において、塩は、塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウムなどのナトリウム塩であり得る。好ましい実施形態では、塩化ナトリウムが該懸濁液に使用される。また、塩濃度は種々であり得、例えば、該濃度は、約1mM〜約200mM、例えば約60mM〜約200mMであり得る。
【0165】
候補緩衝液は、試験塩、25mg/mLのrhGH、5mg/mLのポリArg、5%w/vのPEG6000をpH6.5のリン酸緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば脱アミド化の量として測定される候補塩を有する該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、組成物の塩が本明細書に記載の塩であること以外は試験条件と類似した組成物であり得、例えば、標準の塩は塩化ナトリウムであり得る。試験品(試験塩を有する該懸濁液)と標準(塩化ナトリウムを有する該懸濁液)の懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、試験懸濁液の安定性が増大していること(例えば、脱アミド化の量がより少ないことで測定)により示され得る。別の標準は、該懸濁液が候補塩の代わりに本明細書に記載の別の塩、例えば酢酸ナトリウムを有すること以外は試験懸濁液と類似した懸濁液であり得る。好適性は、候補塩を有する該懸濁液が酢酸ナトリウムを有する該懸濁液よりも、安定性に対して良好または同等な効果を有することにより示され得る。また、別の例として、所与の塩の濃度も試験され得、例えば、試験濃度、例えば20mMの塩化ナトリウムを有する懸濁液の安定性(例えば、脱アミド化)が、本明細書に記載の標準濃度、例えば60mMの塩化ナトリウムを有する懸濁液のものと比較され得る。好適性は、候補濃度の該懸濁液が安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有することにより示され得る。
【0166】

懸濁化剤
懸濁液に使用される懸濁化剤は、hGH複合体型結晶(ポリArg複合体型hGH結晶の懸濁液)の安定性に影響を及ぼす主な因子であり得る。例えば、該懸濁液中の懸濁化剤は、化学分解速度および/または脱アミド化速度および/または懸濁液中のhGH複合体型結晶のレベルに影響を及ぼし得る。懸濁化剤がないか、または少量だと、該懸濁液のケーキングがもたらされ得る。化学分解は、例えば、RP−HPLCによって測定され得る。脱アミド化は、例えば、カチオン交換HPLC(CEX−HPLC)によって測定され得る。
【0167】
ある実施形態において、懸濁化剤は、ポリエチレングリコール、マンニトール、グリシン、またはスクロースであり得る。好ましい実施形態では、懸濁化剤は、ポリエチレングリコール、マンニトール、またはグリシンであり得る。より好ましい実施形態では、懸濁化剤は、PEG3350、PEG6000またはPEG8000などのポリエチレングリコールである。また、懸濁化剤の量は種々であり得、例えば、該量は約2.5%〜約20%であり得る。
【0168】
候補懸濁化剤は、試験懸濁化剤、25mg/mLのrhGH、5mg/mLのポリArg、100mMの酢酸NaをpH6.5のリン酸緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば脱アミド化の量として測定される候補懸濁化剤を有する該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、組成物の懸濁化剤が本明細書に記載の懸濁化剤であること以外は試験条件と類似した組成物であり得、例えば、標準はPEG8000であり得る。試験品(試験懸濁化剤を有する該懸濁液)と標準(PEG8000を有する該懸濁液)の懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、試験懸濁液の安定性が増大していること(例えば、脱アミド化の量がより少ないことで測定)により示され得る。別の標準は、該懸濁液が、候補懸濁化剤の代わりに本明細書に記載の別の懸濁化剤、例えばPEG6000を有すること以外は試験懸濁液と類似した懸濁液であり得る。好適性は、候補懸濁化剤を有する該懸濁液がPEG6000を有する該懸濁液よりも、安定性に対して良好または同等な効果を有することにより示され得る。また、別の例として、所与の懸濁化剤の濃度が試験され得、例えば、試験量、例えば25%のPEGを有する懸濁液の安定性(例えば、脱アミド化)が、本明細書に記載の標準濃度、例えば5%のPEGを有する懸濁液のものと比較され得る。好適性は、候補量の該懸濁液が安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有することにより示され得る。
【0169】

hGHの濃度
懸濁液中のポリArg複合体型結晶の濃度は、hGH複合体型結晶(ポリArg複合体型hGH結晶の懸濁液)の安定性に影響を及ぼす別の因子であり得る。例えば、高濃度では、該懸濁液は粘稠性となり得る。タンパク質の安定性は、RP−HPLCにより、酸化のレベルまたは速度に関してアッセイされ得る。また、安定性は、カチオン交換HPLC(CEX−HPLC)により、脱アミド化のレベルまたは速度に関して測定され得る。
【0170】
ある実施形態において、該濃度は約5〜約50mg/mlであり得る。好ましい実施形態では、該濃度は約20〜約30mg/mlである。
【0171】
候補濃度は、試験濃度のrhGH、5mg/mLのポリArg、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000をpH6.5のリン酸緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば脱アミド化の量として測定される候補濃度における該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、組成物の濃度が本明細書に記載の濃度、例えば約35mg/mlであること以外は試験条件と類似した組成物であり得る。試験品(試験濃度の該懸濁液)と標準(25mg/mlの該懸濁液)の懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、候補濃度の該懸濁液が安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有すること(例えば、脱アミド化の量がより少ないことで測定)により示され得る。
【0172】

hGH対ポリArg比
懸濁液中の該複合体型結晶におけるポリArgに対するhGHの比は、該結晶の安定性に影響を及ぼす別の因子であり得る。例えば、ポリArgに対するhGHの比が小さいと、ポリArgに対するhGHの比が大きい(例えば、比(ration)が7)ときより分解レベルが高くなり得ることが考えられ得る。分解は、例えば逆相HPLC(RP−HPLC)によって測定され得る。
【0173】
ある実施形態において、ポリArgに対するhGHの比は約3〜約15であり得る。好ましい実施形態では、該比は約7〜約11である。
【0174】
候補比は、ポリArgに対するhGHの比を改変させる試験量のポリArg、25mg/mlのrhGH、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000をpH6.5のリン酸緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば酸化の量として測定される候補比の該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、組成物のポリArgに対するhGHの比が本明細書に記載の比、例えば5である(すなわち、ポリArgが5mg/mlの濃度で存在する)こと以外は試験条件と類似した組成物であり得る。試験品(試験比の該懸濁液)と標準(比が5の該懸濁液)の懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、候補比の該懸濁液が安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有すること(例えば、酸化レベルがより低いことで測定)により示され得る。
【0175】

保存容器および容器の閉鎖部
懸濁液を保存するために使用する容器の選択および/または容器の閉鎖部の選択は、hGH複合体型結晶(ポリArg複合体型hGH結晶の懸濁液)の安定性に影響を及ぼし得る。例えば、容器および/または閉鎖部の選択は、用量の一貫性または製剤の減損に影響を及ぼし得る。例えば、結晶は、バイアルのボトルネック部に蓄積されることがあり得、あるいは閉鎖部(例えば、閉鎖部の壁面上)に蓄積されることがあり得る。さらに、容器および/またはその閉鎖部の形状もまた、用量の一貫性に影響を及ぼし得る。用量の一貫性は、例えば、回収されたhGH濃縮物の量を測定することにより、または例えば試料の撹拌後の抽出可能重量を測定することにより測定され得る。
【0176】
ある実施形態では、種々の材質で作製されたバイアルおよびプレフィルドシリンジが使用され、例えば、シリコーン処理された、プラスチック(例えば、CZ)レジン製、またはポリプロピレン製のバイアルが使用される。ある実施形態では、該閉鎖部は、テフロン(登録商標)コーティングされた栓(例えば、Diekyo Flurotec栓)またはゴム栓、例えばブチルゴム栓、例えばWest 4432/50であり得る。好ましい実施形態では、シリコーン処理された容器、特に円筒状のシリコーン処理またはコーティングされた表面を有する容器が使用される。より好ましい実施形態では、シリコーン処理されたプレフィルドシリンジが使用される。好ましい実施形態では、テフロン(登録商標)またはブチルゴム栓が閉鎖部として使用される。
【0177】
候補容器は、25mg/mlのrhGH、5mg/mlのポリArg、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000をpH6.5のリン酸緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を、試験容器内に提供することにより試験され得る。例えば抽出可能重量の量として測定される候補容器内の該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、本明細書に記載の容器内、例えばプレフィルドシリンジに保存された組成物であり得る。候補容器内および標準容器内の該懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、候補容器内の該懸濁液が安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有すること(例えば、体重回復によって測定)により示され得る。
【0178】
候補容器閉鎖部は、同様にして評価され得る。
【0179】

上部空間
最後に、容器の上部空間もまたタンパク質の安定性に影響を及ぼし得る。例えば、容器の閉鎖部の上部空間は、送達用量の一貫性に対して有意な影響を有し得る。
【0180】
ある実施形態において、ニードルステイクを有するプレフィルドシリンジは、hGH複合体型結晶または任意のタンパク質結晶製剤のための限定的な死容積(2〜5μLの範囲)があるため好ましい。プレフィルドシリンジにはボトルネックがない;また、上部空間はずっと小さく、栓の配置によって調整され得る;プランジャーにより、ほぼすべての結晶がシリンジバレル(死容積を除く)から押出され得る。他の容器、例えばバイアルもまた使用され得る。好ましい実施形態では、容器の閉鎖部内に存在する上部空間は最小限であるか、または存在しない。製造会社は、上部空間なしで材料を充填することがあり得る。限定的な上部空間は、用量の一貫性のため、タンパク質結晶に使用される容器の閉鎖部に好ましい。最も好ましい実施形態では、ニードルステイクおよび10mm未満の上部空間を有するプレフィルドシリンジが、タンパク質結晶の非経口製剤に、より適している。
【0181】

保存料
保存料は、例えば抗菌性保存料が、反復用量医薬製剤の調製物に使用され得る。懸濁液状のポリArg複合体型結晶製剤における保存料の任意選択的な添加およびその濃度は、hGH複合体型結晶(ポリArg複合体型hGH結晶の懸濁液)の安定性に影響を及ぼす因子であり得る。例えば、保存料の存在は、該複合体型hGHの安定性、結晶構造および/または有効性(例えば、放出プロフィール)に影響を及ぼし得る。結晶構造は、顕微鏡法によってアッセイされ得る。放出プロフィールは、製剤の上清み中のhGHの濃度をアッセイすること、または製剤中の遊離hGHの割合を計算することにより測定され得る。
【0182】
ある実施形態において、保存料は、フェノール、メタ−クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、クロロブタノール(clorobutanol)であり得る。好ましい実施形態では、保存料がフェノールまたはm−クレゾールである。より好ましい実施形態では、保存料がフェノールである。また、保存料の量は種々であり得、例えば、該量は、好ましくは約0.1%〜約1%であり得る。
【0183】
候補保存料は、候補保存料、25mg/mlのrhGH、5mg/mLのポリArg、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000をpH6.5のリン酸緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば製剤の上清み中のhGHの濃度として測定される候補保存料を有する該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、保存料を存在させないこと以外は試験条件と類似した組成物であり得る。試験品(製剤の上清み中に試験濃度のhGHを有する該懸濁液)と標準(保存料を含まない該懸濁液)の懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、候補保存料を有する該懸濁液が安定性に対して良好または同等な効果を有すること(例えば、上清み中のhGHの量がより少ないことで測定)により示され得る。また、別の例として、所与の保存料の濃度が試験され得、例えば、試験量、例えば2%のフェノールを有する懸濁液の安定性が、本明細書に記載の標準濃度、例えば0.5%のフェノールを有する懸濁液と比較され得る。好適性は、該候補量の該懸濁液が安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有することにより示され得る。
【0184】

ヒアルロン酸
ヒアルロン酸(「HA」)もまた、本明細書に記載の製剤に含めることがあり得る。本開示においては、HAとその塩の両方の使用が想定される。例えば、HAにより、結晶の過剰な電荷が緩和され得、それにより、HAを使用しない場合は複合体型hGH結晶製剤の投与によって引きこされ得る注射部位での反応の可能性が低減され得る。他の利点としては、被検体(例えば、ヒト)への投与後の複合体型結晶の徐放プロフィールへの寄与、微細ゲージ(fine gauged)(例えば、非常に微細なゲージ、例えば30ゲージ)針での注射が可能、複合体の結晶化度および完全性の経時的な保持が挙げられ得る。ある実施形態では、HAの使用により、hGHの放出プロフィールまたはインビボ有効性は改変されない。
【0185】
好ましい実施形態において、HAを製剤中に、約0.01%〜0.5%(w/v)、より好ましくは約0.2%(w/v)の量で存在させる。
【0186】
HAの候補濃度は、試験濃度のHA、25mg/mlのrhGH、5mg/mLのポリArg、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000をpH6.5のリン酸緩衝液中に含有するポリArg複合体型結晶性rhGH懸濁液を提供することにより試験され得る。例えば溶解速度(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定)として測定される該候補濃度での該懸濁液の安定性を、所定の時点で、1つ以上の標準と比較する。例えば、好適な標準は、組成物のHA濃度が本明細書に記載の濃度、例えば約0.2%(w/v)であること以外は試験条件と類似した組成物であり得る。試験品(試験濃度の該懸濁液)と標準(0.2%HAの該懸濁液))の懸濁液の安定性を比較する。好適性は、標準と比べて、候補濃度の該懸濁液が、安定性について標準濃度の該懸濁液と同等またはそれよりも良好な効果を有すること(例えば、溶解速度の増大がないことによって測定)により示され得る。
【0187】

凍結乾燥製剤
hGH結晶の凍結乾燥製剤
凍結乾燥されたhGHまたはhGH誘導体タンパク質製剤(例えば、ポリArgと複合体形成されたもの)(例えば、凍結乾燥調製物の再構成後)では、hGH製剤の安定性が増大され得る。例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤は、冷蔵温度または室温で約24ヶ月以上の化学安定性が得られることが予測される。
【0188】
該製剤のの安定性に影響を及ぼし得る因子としては、緩衝液、pH、塩、懸濁化剤、保存料、および保存容器の選択が挙げられる。対象のタンパク質の安定性を増大させるために、これらの因子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは全部が改変または制御され得る。
【0189】
例えば、本明細書に記載のように、ポリArg複合体型hGH結晶の凍結乾燥製剤は、好ましくは、以下:7〜9のpH範囲の緩衝液(好ましくは、Trisまたはヒスチジンとリン酸塩の組合せ)を用いて調製されていること、塩(好ましくは、塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム)、および懸濁化剤(好ましくは、ポリエチレングリコール6000または8000)の1つ以上を含むものである。また、一部の製剤では、保存料が含まれる。このような製剤に適合する容器の閉鎖部系としては、シリコーン処理またはコーティングされたバイアル、例えば、Schott I型+コーティングガラスバイアルが挙げられる。
【0190】
これらの成分および量は、凍結乾燥前の製剤に適したものであり、また、凍結乾燥hGHを再構成させた後の製剤に適したものである。例えば、所与の容量の凍結乾燥前の製剤は、所与の組成、例えば、25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、5%のPEG8000、pH7.5を有するものであり得る。凍結乾燥後の結晶を再構成するため、凍結乾燥前の製剤の容量に相当する容量の液体(例えば、生理食塩水または水、好ましくは水)を添加して凍結乾燥調製物を再構成する。同じ容量を使用したため、凍結乾燥後の調製物は、凍結乾燥前の製剤と同じまたは実質的に同じ組成を有する。調製物を再構成するためにどのような液体を使用したかに応じて、凍結乾燥後の調製物中にはさらなる成分が存在することがあり得る(例えば、水の代わりに生理食塩水を再構成に使用した場合、塩濃度が増大し得る)。任意選択で、再構成のために添加される液体の量は、該タンパク質結晶によって占められていた凍結乾燥前容量となるように調整され得る。したがって、凍結乾燥後の製剤の総容量が凍結乾燥前の総容量にする容量の液体が添加される。別の択一例として、再構成のために異なる(例えば、より少ない、またはより多い容量)の液体を用いて、製剤の成分を希釈(より多くの容量を使用した場合)、または濃縮(より少ない容量を使用した場合)することができる。
【0191】
これらの因子の最適化および好適性の決定は、上記のようにして行なわれ得る。
【0192】
一般的に、凍結乾燥(フリーズドライとしても知られる)は、傷みやすい物質を保存するするため、または該物質の移送をより簡便にするために典型的に使用される脱水プロセスである。フリーズドライは、物質を凍結させ、次いで周辺圧を下げ、充分な熱を加えて該物質内の凍結水を固相から気体に直接昇華させることによりなされる。製剤、例えばタンパク質またはタンパク質結晶を凍結乾燥させると、より安定となり得るか、またはその後の使用で水に溶解し易くなり得る。
【0193】
典型的な凍結乾燥の説明は以下のとおりである。完全な凍結乾燥プロセスには、凍結、一次乾燥、および二次乾燥の3つの段階がある。
【0194】
凍結:凍結プロセスは、物質を凍結することからなる。これは、多くの場合、物質をフリーズドライ用フラスコ内に入れ、このフラスコをドライアイスとメタノールの浴内、または液体窒素中で回転させることにより行なわれる。大規模では、凍結は、通常フリーズドライ機を用いて行なわれる。物質をその共融点より下の温度で凍結させることは重要である。共融点は、物質の固相と液相が共存し得る最低温度に存在するため、この点より下の温度での物質の凍結により、その後の工程で融解ではなく昇華が起こることが確実となる。
【0195】
一次乾燥:一次乾燥期の間は、圧力を下げ、充分な熱を物質に供給して水分を昇華させる。必要な熱の量は、分子の昇華潜熱の転化を用いて計算され得る。この最初の乾燥期で、物質中の水分の約98%を昇華させる。熱を加えすぎると物質の構造が改変され得るため、この期は低速で行なわれ得る。
【0196】
この期では、圧力は、部分真空の適用により制御される。真空により昇華が加速され、意図的な乾燥プロセスとして有用となる。さらに、低温冷却器チャンバおよび/または冷却器プレートにより、水蒸気に再凝固のための表面(1つまたは複数)が提供される。この冷却器は、物質を凍結状態で維持する役割は果たさない。そうではなく、水蒸気が真空ポンプに達すること(これは、ポンプの性能を低下させ得る)を妨げる。冷却器の温度は、多くの場合、10℃未満、例えば−30℃または−50℃、例えば、これらの温度より下の範囲である。
【0197】
二次乾燥:可動性の水分子は一次乾燥期で昇華されているため、二次乾燥期では、凍結プロセス中に吸着された水分子を昇華させることを目的とする。フリーズドライプロセスのこの部分は、物質の吸着等温線に支配される。この期では、温度を一次乾燥期よりもさらに高く上昇させ、水分子と凍結した物質間に形成されたいかなる物理化学的相互作用をも破壊させる。また、通常、この段階では昇華を促すために圧力を下げる。しかしながら、圧力上昇の恩恵を受ける製剤もある。
【0198】
フリーズドライプロセスの終了後、通常、窒素などの不活性ガスで真空を解除した後、該物質を密封する。
【0199】
フリーズドライ製剤の特性:湿分の再吸収を抑制するためにフリーズドライ物質を密封した場合、該物質は冷蔵せずに室温で保存され得、該プロセスにより、医薬品の貯蔵寿命を長くすることができる。
【0200】
また、凍結乾燥により、高温を用いる他の脱水方法よりは少ないが、該物質への損傷がが引き起こされる。通常、凍結乾燥では、乾燥対象の物質の収縮または強化は引き起こされない。
【0201】
凍結乾燥製剤は、微小細孔が生じているため、ずっと速く容易に再水和(再構成)され得る。この細孔は、氷の結晶が昇華してその位置に隙間または細孔が残ったことにより生成したものである。これは、医薬用途に関する場合、特に重要である。
【0202】

解析方法
製剤の開発は、以下の特徴:種々の温度での保存安定性、用量の一貫性の関数としての容器と閉鎖部の適合性、付着の可能性、製剤の投与の容易さ、および容器の閉鎖部に対するロスによって評価され得る。安定性の試験方法およびその適用を以下の表1に示す。
【0203】
【表1】

化学分解
アレニウスプロット反応速度論を使用し、短期安定性データ(例えば、50℃、40℃、35℃、30℃および25℃などの高い保存温度でストレス負荷した試料から得られたもの)を用いて、2〜8℃での化学分解速度が予測され得る。2〜8℃の外挿データを用いて、提案貯蔵寿命または有効期限が確立され得る。
【0204】
アレニウスの安定性予測を用いて、候補製剤が試験され得る。アレニウスストレスモデルは、加速試験に使用される一般的な寿命ストレスに関連するものである。これは、刺激または加速可変量(脱アミド化、酸化など)が熱的なもの(すなわち、温度)である場合に広く使用されている。これは、スウェーデンの物理化学者スヴァンテ・アレニウスによって示されたアレニウス反応速度式から誘導される。5℃での分解速度は、いくつかの高温での安定性の結果を用いて予測され得る。例えば、Fluroteck栓を有するプレフィルドシリンジ内のポリArg(pR)複合体型結晶の試料を、2〜8℃、25℃、30℃、35℃、40℃および50℃で置く。既報のデータに基づき、アレニウスの式を適用して5℃での分解速度を予測する。その結果は、同じ方法によって解析された既知/標準ロットの実際の安定性と比較され得る。
【0205】
また、製剤は、溶解プロフィールアッセイにより、比較用の標準hGH製剤を用いて試験され得る。
【0206】
以下は、結晶性hGHを含有する製剤を評価するために行なわれ得る解析方法の例である。
【0207】

hGH含有量
ポリArgと複合体形成されたhGH結晶を含む懸濁液のhGH含有量は、UV分光測光法によって測定され得る。ポリArgと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液を50mMグリシン、pH2.6に溶解させ、280nmにおける吸光度を測定する。HGHの濃度は、測定された吸光度値に希釈率を乗算し、次いで、rhGHの吸光係数0.75mL・mg−1・cm−1で除算することにより計算される。
【0208】

濁度
ポリArgと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液の濁度は、UV分光測光法によって測定され得る。ポリArgと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液を50mMグリシン、pH2.6に溶解させ、320nmにおける吸光度を測定する。
【0209】

粒径分布
粒径分布を値を求めると、ポリArgと複合体形成されたhGH結晶を含む懸濁液の製造プロセスの一貫性が評価され得る。粒径分布は、微小容量モジュールを備えたCoulter LS 230 Particle Size Analyzer (Coulter Corp.,Miami、Florida)を使用し、レーザー回折によって測定され得る。試料を、試料緩衝液または1×PBSまたは製剤化ビヒクル中に希釈し、8〜12%の不透明性の機能範囲を得る。各試料を3連で解析し、フラウンホーファー光学モデルを用いてデータ解析を行なう。10%(dl10)、50%(メジアン)および90%(dl90)の累積分布限界を表す容量を報告する。この試験方法は、製剤安定性試験でも同様に行なわれ得る(すなわち、保存時の粒子分布の変化の可能性を評価するため)。
【0210】

RP−HPLC(酸化のパーセンテージ、およびポリ−L−アルギニン含有量)
これらの解析には、同じ移動相とカラムが使用され得る。ポリLアルギニン(ポリArg)定量のための方法は、214nmで行なわれ得、hGHの定量は280nmで行なわれ得る。ポリLアルギニンおよびhGHの量を用いて、上清みおよび総ポリ−L−アルギニン含有量に対する遊離hGHを計算し、報告する。HGH/ポリArg比(質量対質量)は、消散係数0.75を用い、OD280から誘導される総hGH濃度を用いて計算され得る。ポリ−L−アルギニンの定量は、ポリ−L−アルギニン標準の較正曲線を使用することにより行なわれ得る。試験試料中のポリL−アルギニンの濃度は、ポリ−L−アルギニン標準の線形回帰直線に基づいて測定され得る。C5 Supelco Discovery Bio Wide Poreカラム(5cm×4.6mm、3μm粒径、300A細孔径)が使用され得る。HPLC解析用のhGH試料は、50mMグリシン緩衝液、pH2.6での溶解によって調製され得る。rhGHの溶出は、1.0mL/分の流速で、移動相A(0.1%トリフルオロ酢酸を含む水)および移動相B(0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル)で構成される移動相勾配を使用し、以下のとおりに行なわれる:95%A/5%Bで0〜2分間保持、2〜8分間で50%A/50%Bに線形変更、8〜20分間で30%A/70%Bに線形変更、20〜22分間で10%A/90%Bに線形変更、10%A/90%Bで22〜25分間保持した後、初期条件95%A/5%Bに戻す。酸化型rhGHのピーク面積を計算し、非酸化型rhGHのものと比較する。純度を、rhGHに関連するすべてのピークの総面積に対する酸化型のピークのピーク面積の割合として計算する。
【0211】

可溶性凝集体(高分子量の%)
rhGHの高分子量の可溶性凝集体はrhGHモノマーから、サイズ排除HPLCによって分離され得る。Phenomenex BioSep−SEC−S 2000(7.8mm内径×60cm)カラムが使用され得る。HPLC解析用のhGH試料は、pH2.6の50mMグリシン緩衝液での溶解によって調製され得る。rhGHの溶出は、0.4mL/分の流速で、60mMリン酸ナトリウム、3%イソプロパノール、pH7.0からなる移動相を用いて定組成的に行なわれる。rhGHモノマーおよび凝集体の検出は、280nmで行なわれる。凝集rhGHのピーク面積を測定し、rhGHモノマーピークのものと比較する。rhGHのメインピークより前のピークはrhGHの凝集種である。凝集体の割合を、rhGHタンパク質のすべてのピークの総面積に対する凝集体のピークのピーク面積の割合として計算する。
【0212】

脱アミド化および他の分解
脱アミド化型rhGHのピークは非脱アミド化型rhGHから、カチオン交換HPLC(CEX−HPLC)によって分離され得る。PolyLC PolySULFOETHYL A(4.6mm×50mm、5μm、300Å)カラムが使用され得る。HPLC解析用のhGH試料は、50mMグリシン緩衝液、pH2.6での溶解によって調製され得る。rhGHの溶出は、1.0mL/分の流速で、移動相A(50mMの酢酸ナトリウム、pH4.6)および移動相B(50mMの酢酸ナトリウム、250mMの塩化ナトリウム、pH4.6)で構成される漸増塩濃度の移動相勾配を用いて、以下のとおりに行なわれる:100%A/0%Bで開始、0 5分間で80%A/20%Bに線形変更、5〜40分間で40%A/60%Bに線形変更、4〜45分間で0%A/100%Bに線形変更、そして5分で初期条件(100%A)に戻す。脱アミド化型および非脱アミド化型rhGHの検出は、280nmで行なった。ストレス負荷試料におけるrhGHのメインピークより前のピークは、おそらく脱アミド化型および分解されたrhGH種である。脱アミド化型rhGHのピーク面積を計算し、非脱アミド化型rhGHのものと比較する。純度を、rhGHに関連するすべてのタンパク質ピークの総面積に対する分解された種のピークのピーク面積の割合として計算する。
【0213】

溶解プロフィール
hGH結晶の溶解試験を開発し、適当な緩衝液中へのポリLアルギニンコートhGH結晶の溶解が行なわれている際の関連パラメータをモニターする。溶解緩衝液として、クエン酸塩、pH5.0が使用され得る。複合体型hGHの溶解速度を、一定mgのhGH結晶、クエン酸塩(pH5.0)媒体中、一定の攪拌速度および37℃の条件下で測定する。最初に分散を行なった後、遠心分離により上清みを除去し、次いで生理学的条件と類似した新たな媒体を補給する。この手順を15分毎に1時間まで繰り返し、次いで溶解速度を計算する。
【0214】
また、溶解速度はUV吸光度またはRP−HPLC(例えば、Agilent Technologies)によっても測定され得る。
【0215】

生体活性およびpKプロフィール
インビボ評価に使用される種は、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(ウィスターラット、下垂体を切除したもの)であり得る。処置群は、適合週用量レベルで結晶性hGHと市販のhGH製剤との同等性が測定されるように設計する。希釈した試験品を、脊椎の両側の胸腰領域にゆっくりと皮下注射する。針を脊椎から遠いところに指向し、中心(hub)まで挿入した後、いずれかの物質を注射した。注射部位は、注射を容易にする必要性に応じて、投与3日前および投与後に剃毛し、印をつける。
用量はすべて、300μL容シリンジ(BDパーツ番号BD 320438)に装着した30ゲージ×8mmの針を用いて投与する。シリンジ上に印が付けられた各単回単位は、10μLに相当する。懸濁液または溶液の均一性を確実にするため、希釈した対照および試験品を、シリンジ内に吸引する前に気泡が発生しないように注意深く反転させる。この実験は、下垂体を切除した雄ウィスターラットに投与した場合のhGH製剤の生体活性を比較するための方法を提供する。比較が行なわれる対象の対照hGH製剤の選択は、一部、標準的なラット体重増加アッセイで既に確立された有効性に基づいて行なわれ得る。試験物質または対照物質を、下垂体を切除した雄ウィスターラット(9ラット/群)に皮下(SC)注射によって投与する。例えば、5.6mg/kgの対照製剤および試験製剤の単回SC注射を受けた後の下垂体を切除したラットの成長が比較され得る。別の例として、0.8mg/kgの市販の可溶性rhGH(例えば、Nutropin AQ)のSC注射を毎日7日間(すなわち、5.6mg/kg/週)が、対照として使用され得る。投与開始前毎週および第−7日から(投与前の7日間)第8日の観察期間の最後まで毎日、体重を測定する。また、別個の試験におけるpKプロフィールアッセイでの血中hGHレベルの測定のための血液が採取され得る。血中hGHレベルは、ELISAによって測定され得る。
【0216】

医薬製剤
本明細書に記載の結晶性タンパク質製剤、例えば、ポリArg複合体型hGH結晶は、治療用途のため、例えば、hGHの不足または欠乏に苦しむ被検体を治療するための医薬製剤に製剤化され得る。
【0217】
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶は、任意の薬学的に許容され得る賦形剤と合わされ得る。本開示によれば、「薬学的に許容され得る賦形剤」は、医薬組成物に使用される充填剤または充填剤の組合せとしての機能を果たす賦形剤である。このカテゴリーに含まれる好ましい賦形剤は、1)アミノ酸(グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アスパラギン、グルタミン、プロリンなど);2)糖質、例えば、単糖類(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボースなど);3)二糖類(ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロースなど);4)多糖類(マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲンなど);5)アルジトール(マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトールなど);6)グルクロン酸、ガラクツロン酸;7)シクロデキストリン(メチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど);8)無機分子(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ナトリウムおよびカリウムのリン酸塩、ホウ酸、炭酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウムなど);9)有機分子(アセテート、シトレート、アスコルベート、ラクテートなど);10)乳化剤または可溶化剤/安定化剤(アカシア、ジエタノールアミン、グリセリルモノステアレート、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、および他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、ワックス、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体など);ならびに11)増粘試薬(寒天、アルギン酸およびその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースおよびその誘導体 プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チロキサポールなど)である。また、かかる化合物の塩も使用され得る。さらに好ましい賦形剤の群には、スクロース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、イノシトール、ナトリウムおよびカリウムの塩(酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩およびホウ酸塩など)、グリシン、アルギニン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリリシンならびにポリアルギニンが含まれる。
【0218】
本開示のある実施形態において、賦形剤は、アミノ酸、塩、アルコール、糖質、タンパク質、脂質、界面活性剤、ポリマー、ポリアミノ酸およびその混合物からなる群より選択される。ある好ましい実施形態では、賦形剤が、プロタミン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、デキストラン、グルコン酸カルシウム、ポリアミノ酸(ポリアルギニンなど)、ポリリシンおよびポリグルタメート、ポリエチレングリコール、デンドリマー、ポリオルニチン(orthinine)、ポリエチレンイミン、キトサンおよびその混合物からなる群より選択される。より好ましい実施形態では、賦形剤が、プロタミン、ポリアルギニン、ポリエチレングリコールおよびその混合物からなる群より選択される。
【0219】
また、本開示によるヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶は、治療剤に添加するとその作用が加速または改善される物質である担体または賦形剤と合わされ得る(例えば、http://cancerweb.ncl.ac.uk/omd/index.htmlのThe On−Line Medical Dictionaryを参照のこと)。担体または賦形剤の例としては、例えば、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩(slat)、コロイド状シリカ、マグネシウム、三ケイ酸塩、セルロース系物質およびポリエチレングリコールが挙げられる。ゲル基剤形態のための担体または賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックコポリマー、ポリエチレングリコールおよびウッドワックスアルコールが挙げられ得る。
【0220】
また他の好ましい実施形態において、賦形剤はプロタミンである。さらに、hGHまたはhGH誘導体の結晶とプロタミンは、約5:1〜約1:10(w/w)のhGH:プロタミン比で存在する。また、該比は、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。最も好ましくは、該比は、約12:1〜約15:1(w/w)の範囲である。代替的な実施形態によれば、該比は約3:1〜約1:10(w/w)である。他のある実施形態において、該比は約5:1〜約40:1(w/w)である。また、さらなる実施形態では、該比は約5:1(w/w)である。
【0221】
別の態様において、薬学的に許容され得る賦形剤は、ポリアミノ酸、例えば、ポリリシン、ポリアルギニンおよびポリグルタメートからなる群より選択される。好ましい実施形態では、賦形剤がポリリシンである。より好ましい実施形態では、ポリリシンが、約1,500〜約8,000kDの分子量を有するものである。他のある実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶とポリリシンが約5:1〜約40:1(w/w)のhGH:ポリリシン比で存在する。また、該比は、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。最も好ましくは、該比は、約12:1〜約15:1(w/w)の範囲である。代替的な実施形態によれば、該比は約5:1〜約1:50(w/w)である。さらなる実施形態では、該比は約5:1(w/w)である。
【0222】
また他の好ましい実施形態において、賦形剤はポリアルギニンである。より好ましい実施形態では、ポリアルギニンは、約15,000〜約60,000kDの分子量を有するものである。他のある実施形態において、hGHまたはhGH誘導体の結晶とポリアルギニンは、約5:1〜約40:1(w/w)のhGH:ポリアルギニン比で存在する。また、該比は、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。最も好ましくは、該比は、約12:1〜約3:1(w/w)の範囲である。代替的な実施形態によれば、該比は約5:1〜約1:50(w/w)である。他のある実施形態では、該比は約12:1〜約15:1(w/w)である。さらなる実施形態では、該比は約5:1(w/w)である。
【0223】
本開示の他の実施形態は、約20mg/mlのhGHまたはhGH誘導体の結晶を含む注射用結晶性懸濁液を含む。該懸濁液は、易再懸濁可能性、低速沈降、および約7日間の時間作用(time action)プロフィールを特徴とする。これは、週に1回、30ゲージシリンジを用いて80%の有効負荷量レベルが提供されるように注射され得る。該懸濁液は、実質的に純粋であり、これは、パラメータ0.02%凝集(SE−HPLC)および2.3%の関連タンパク質(RP−HPLC)に反映される。この純度は、冷蔵され条件下で少なくとも約4ヶ月維持される。
【0224】
本開示の他の実施形態は、個体に導入されると、従来の可溶性のhGHまたはhGH製剤と比べて、遅延溶解挙動を有することを特徴とするhGHまたはhGH誘導体の結晶に関する。本開示によれば、hGHまたはhGH誘導体の結晶の溶解は、インビトロまたはインビボいずれかの溶解パラメータで特徴付けられる。例えば、インビトロ溶解は、逐次溶解プロセスにおいて、15分あたりまたは洗浄工程1回あたりで得られた可溶性hGHの濃度として示される(最初に存在していたhGHまたはhGH誘導体結晶すべての総量またはmgに対するパーセンテージとして表示)。他の実施形態において、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、37℃の温度で溶解緩衝液(50mMのHEPES(pH7.2)、140mMのNaCl、10mMのKClおよび0.02%(v/v)NaN3)に曝露させ、該hGHの濃度またはhGH誘導体が溶液中に約2mg/mlの濃度で存在しているとき、洗浄工程1回あたりの前記結晶約2〜約16%のインビトロ溶解速度を特徴とする。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、逐次溶解プロセスの洗浄工程1回あたり前記結晶約0.04〜約0.32mgのインビトロ溶解速度を特徴とする。他方、インビボ溶解は、哺乳動物へのhGHの単回注射後の哺乳動物における経時的なhGHの血清レベルによって示される。
【0225】
治療用途および投薬量
哺乳動物において、GHは、組織を刺激してタンパク質IGF−1を合成および分泌させ、このタンパク質は、次いで細胞分裂および代謝プロセスにある役割を果たす。当業者には認識されるように、血清hGHおよびIGF−1レベルは、多くの因子、例えば、生理学的および処置関連因子に依存する。かかる因子としては、限定されないが、生理学的因子、例えば、実年齢および骨年齢、性別、体重、発達段階(例えば、思春期の成長レベル)ならびに処置関連因子、例えば、用量、投与速度(動態)および投与経路など、ならびに患者の診断および病歴などが挙げられる。また、当業者には、種々の患者集団に対して種々のhGHレベルおよびIGF−1レベルが、安全性と有効性の両方の観点から有益であり得ることが認識される。
【0226】
さまざまなhGHの不足、疾患状態または症候群に苦しむ成人または小児は、本開示によるhGH結晶またはhGH誘導体結晶を用いたhGHを体外からの送達する種々のレジメンによって処置され得る。例えば、内分泌科医は、小児に対して、約0.2mg/kg/週の用量を用いて治療を開始し、処置の数週間または数ヶ月後、用量を約0.3mg/kg/週まで増大させ得、思春期の頃は、用量をさらに約0.7mg/kg/週まで増大させることがあり得る。また、当業者には認識されるように、hGH送達を必要とする成人または小児に投与されるかかる体外送達hGHのレベルは、hGHの既存の生理学的レベルまたは濃度に依存する。
【0227】
成人または小児におけるhGHの投薬レジメンは、多くの場合、mg/kgまたは国際単位(IU/kg)で示される。かかるレジメンは、一般的に、1日または1週間のいずれかで、すなわち、mg/kg/日またはmg/kg/週で計画される。かかる考慮事項を念頭におき、本開示の一実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与、例えば、30kg小児に対して毎週約9mgの単回投与により、投与後第1日目および第2日目に約10ng/mlより大きい、投与後第3日目および第4日目に約5ng/mlより大きい、投与後第5日目〜第7日目に約0.3ng/mlのインビボhGH血清濃度がもたらされる。あるいはまた、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、前記哺乳動物において、投与後約0.5時間〜約40日間で、好ましくは投与後、約0.5時間〜約10日間、7日間または1日のいずれかで、約0.3ng/ml〜約2,500ng/mlのhGH、好ましくは約0.5ng/ml〜約1,000ng/mlのhGH、最も好ましくは約1ng/ml〜約100ng/mlのhGHのインビボhGH血清濃度がもたらされる。同様に、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、前記哺乳動物において、投与後約0.5時間〜約40日間で、好ましくは、投与後約10日間、7日間または1日のいずれかで、約2ng/ml hGHより上、好ましくは約5ng/ml hGHより上、最も好ましくは約10ng/ml hGHより上のインビボ血清濃度がもたらされる。本開示のより好ましい実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、哺乳動物において、約0.5時間〜約40日間で、好ましくは、投与後約10日間、7日間または1日のいずれかの期間で、約0.3ng/mlより大きいhGHのインビボ血清濃度がもたらされる。本開示の一実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の毎週の単回投与により、投与後第1日目および第2日目に約10ng/ml hGHより大きい、投与後第3日目および第4日目に約5ng/ml hGHより大きい、投与後第5日目〜第7日目に約0.3ng/ml hGHより上のインビボhGH血清濃度がもたらされる。さらなる実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、投与後約0.5時間〜約10日間で、約0.3ng/ml hGHより大きいインビボ血清濃度がもたらされる。
【0228】
本開示の他の実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、投与後約10時間〜約72時間で50ng/mlより大きい、投与後約72時間〜約15日間、投与後好ましくは約10日間で約0.5ng/ml〜約50ng/mlの、前記投与前のベースラインIGF−1レベルからのインビボでの血清IGF−1上昇がもたらされる。あるいはまた、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、投与後約0.5時間〜約40日間、好ましくは投与後約7日間で、約5ng/ml〜約2,500ng/ml、好ましくは約100ng/ml〜約1,000ng/mlのインビボでの血清IGF−1上昇がもたらされる。あるいはまた、本開示によるhGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、投与後約0.5時間〜約40日間、好ましくは投与後約7日間で約50ng/mlより上、好ましくは約100ng/mlより上のインビボでの血清IGF−1上昇がもたらされ得る。本開示の一実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物の単回投与により、投与後約10時間〜約72時間で約50ng/mlより大きい、投与後約72時間〜約15日間または投与後72時間〜約10日間で約0.5ng/ml〜約50ng/mlの、前記投与前のベースラインIGF−1レベルからのインビボでの血清IGF−1上昇がもたらされる。
【0229】
本開示によれば、単回投与は、約0.01mg/kg/週〜約100mg/kg/週のhGH結晶もしくはhGH誘導体結晶またはかかる結晶を含む組成物と規定され、このとき、投与容量は0.1ml〜約1.5mlである。例えば、小児の成長ホルモンの欠乏には、hGH結晶もしくはhGH誘導体結晶またはかかる結晶を含む組成物が約0.3mg/kg/週で、例えば、30kgの小児には約9mgが投与され得る。ターナー症候群には、hGH結晶もしくはhGH誘導体結晶またはかかる結晶を含む組成物が約0.375mg/kg/週で、例えば、30kgの小児には約11.25mgが投与され得る。さらに、成人の成長ホルモンの欠乏には、hGHが約0.2mg/kg/週で、例えば、80kgの成人には約16mgが投与され得る。AIDSるいそうには、hGHが6mg/日で、例えば42mg/週で投与され得る。
【0230】
また他の実施形態において、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはかかる結晶を含む組成物は、哺乳動物において可溶性hGHのものと類似した相対バイオアベイラビリティを示す。本開示による結晶は、同じ経路(例えば、皮下または筋肉内注射)によって送達される可溶性hGHのものと比べて少なくとも50%以上の相対バイオアベイラビリティを有し、ここで、バイオアベイラビリティは、前記可溶性hGHと前記結晶の総インビボhGH血清濃度の曲線下面積(AUC)によって測定される。したがって、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、好都合なインビボ溶解速度を特徴とする。
【0231】
本開示は、さらに、ヒト成長ホルモンの欠乏もしくは不足と関連する障害、またはhGHでの処置によって改善される障害を有する哺乳動物に、hGHまたはhGH誘導体の結晶を投与する方法を提供する。該方法は、哺乳動物に、治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶を投与する工程を含むものである。あるいはまた、該方法は、哺乳動物に、hGHまたはhGH誘導体の結晶を単独または賦形剤とともに含む組成物の有効量を投与する工程を含むものである。本開示によるhGHまたはhGH誘導体の結晶の種々の実施形態は、カルシウム結晶、一価の結晶、プロタミン結晶またはポリアルギニンhGHもしくはhGH誘導体の結晶である。かかる結晶または該結晶を含む組成物は、約3日に1回、約週1回、約2週間に1回または約1ヶ月に1回の時間レジメンによって投与され得る。
【0232】
本開示により処置され得るhGHの不足または欠乏に関連する障害としては、限定されないが、成人の成長ホルモンの欠乏、小児の成長ホルモンの欠乏、プラーダー‐ヴィリ症候群、ターナー症候群、短腸症候群、慢性腎不全、特発性低身長、小人症、下垂体機能低下性小人症、骨再生、女性の不妊症、胎内発育遅延、AIDS関連悪液質、クローン病、火傷、ならびに他の遺伝的および代謝性障害が挙げられる。本開示の一実施形態において、該障害は、小児の成長ホルモンの欠乏であり、処置すると、処置を受けている小児において、年間約7cm〜約11cmの成長速度がもたらされる。
【0233】
別の実施形態において、カルシウムのhGHまたはhGH誘導体の結晶が、哺乳動物において、骨治療の有用な補佐剤として、ならびにヒト成長ホルモンの欠乏の処置剤として供され得る。
【0234】
本開示はまた、前記哺乳動物に、治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶を投与する工程を含む、哺乳動物において体重増加を誘導するための方法を提供する。あるいはまた、かかる方法は、前記哺乳動物に、hGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤を含む組成物の治療有効量を投与する工程を含む。かかる方法の一実施形態において、下垂体を切除したラットにおいて誘導される体重増加は、週1回の注射による前記結晶の投与後で、約5%〜約40%である。
【0235】
hGHの結晶、hGH誘導体の結晶、またはこれらを単独もしくは賦形剤とともに含む組成物は、単独、または医薬調製物、治療用調製物もしくは予防用調製物の一部として投与され得る。これらは、任意の慣用的な投与経路、例えば、非経口、経口、肺経由、経鼻、耳経由、肛門経由、皮膚経由、眼経由、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、粘膜経由、舌下、皮下、経皮、局所、口腔または頭蓋内経路などによって投与され得る。
【0236】
一部のある実施形態において、hGHもしくはhGH誘導体の結晶、またはこれらを賦形剤とともに、もしくはなしで含む組成物(例えば、結晶性hGHの懸濁液を含有する製剤)は、経口経路または非経口経路によって投与される。好ましい実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶、またはこれらを賦形剤とともに、もしくはなしで含む組成物は、皮下または筋肉内経路によって投与される。
【0237】
好ましい実施形態において、本開示の結晶または組成物は、27以上のゲージを有する針を用いて、皮下経路により投与される。本開示の一実施形態において、針のゲージは30であり得る。該結晶または組成物は、プレフィルドシリンジまたは定量(meta dose)注入ポンプで投与され得る。あるいはまた、これらは、ニードルフリー注射によって投与され得る。
【0238】
本開示により、哺乳動物内にhGHの徐放が好都合に可能となる。一実施形態において、本開示による結晶または組成物は、約週1回投与される。別の実施形態では、本開示による結晶または組成物は、約2週間に1回投与される。また別の実施形態では、本開示による結晶または組成物は、約1ヶ月に1回投与される。当業者には、具体的な処置レジメンが、処置対象の疾患、処置される患者の年齢および体重、患者の全身的な体調ならびに処置担当医師の判断などの因子に依存することが認識される。
【0239】

キット
ポリArg複合体型結晶性hGHを含有する製剤と、使用説明書と、任意選択で、該製剤を投与するためのデバイスとを含むキットもまた、本開示の一部である。製剤は、適当な容器内(例えば、バイアル、プレフィルドシリンジなど)に存在させ得る。使用説明書には、任意の形態、例えば、パンフレットもしくはシート、または使用説明書が得られるサイトへのワールドワイドウェブのアドレスが採用され得る。使用説明書には、例えば、保存および/または投与のための使用説明が含まれ得る。
【0240】

概論:結晶性タンパク質製剤のための無針注射システム
本開示は、さらに、被検体への投与のためのニードルフリー(ジェット式)注射器での使用のための治療用タンパク質の結晶性懸濁液の分野に関する。本開示はまた、無針(needless)注射に適した結晶性タンパク質製剤の調製方法を特徴とする。
【0241】
無針注射デバイスは、薬物投与の容易性を改善すること、注射回数を減らすこと、および場合によっては、注射時の痛みを軽減することにより、被検体のコンプライアンスを増大させることを補助する。一部のある態様において、結晶性タンパク質製剤は、可溶性製剤と比べて利点を有する。結晶化によりタンパク質の放出時間が延長され得、それにより投与頻度が低減され、場合によっては、被検体のコンプライアンスが増大する。一例として、結晶性インスリン製剤が利用可能である。結晶化技術を使用することによりインスリンの放出時間が延長され、それにより薬物の投与頻度が低減され、被検体のコンプライアンスを増大させることが可能となった。
【0242】
また、患者集団の約5〜10%で針恐怖症が報告されているため、ニードルフリー選択肢により、結晶性薬物の被検体のコンプライアンスの増大が補助され得る。さらに、これは、被検体が、結晶性製剤(例えば、非経口製剤)の投与に対して多くの送達選択肢、例えば、ニードルフリー選択肢を有するのに有益であり得る。
【0243】
結晶性タンパク質製剤に関連するニードルフリー注射器の適用の別の例は、獣医学的市場である。ジェット式注射器との組合せで長期薬物放出をもたらす結晶性製剤を使用し、動物処置のコンプライアンスを改善することが可能である。コンプライアンスは、一部、投与頻度の低減、注射に要する時間の短縮、および注射時の痛みの軽減のため、増大され得る。ニードルフリージェット式注射器は、表皮を貫通させる皮下注射針の代わりに高圧の細い注射用液の噴出を使用する型の医療用注射シリンジである。これは、大きなシリンダーからの圧力ホース、または内臓型ガスカートリッジもしくは小シリンダーのいずれかにより、圧縮された空気またはガスによって動力供給される。マルチショット型のものもあり、ワンショット型のものもある。ニードルフリー注射システムは既知である。例としては、BioJector 2000、VetJet、Vitajet、JET2000、MIT−Vジェット式注射器、LectraJet、Akra Dermojet、およびMed−E−Jet注射器が挙げられる。
【0244】
ジェット式注射器、例えば、BioJectorニードルフリー(ジェット式)注射システムを用いて、結晶性タンパク質製剤でのジェット式注射器の使用の実現可能性が試験され得る。BioJectorのニードルフリー注射技術は、液状の適用薬物を高速で、皮膚に対して保持された小さなオリフィスに通すことにより機能を発揮する。これにより、微細な高圧の適用薬物の流れが生成され、これが皮膚を貫通し、下部組織内に適用薬物が沈着される。
【0245】

BioJector 2000:BioJector 2000は、2つの構成要素:手持ち型の再度使用可能なジェット式注射器と、滅菌された単回使用の使い捨てプラスチック製シリンジからなる。BioJector 2000には、動力供給源として使い捨て二酸化炭素カートリッジが使用されている。この二酸化炭素ガスが、一貫した確実な圧力を使い捨てシリンジのプランジャーに供給し、それにより適用薬物が組織内に推進される。
【0246】
該システムの第2の構成要素であるBioJector単回使用使い捨てシリンジは、プラスチック製でニードルフリーの可変用量シリンジからなる。シリンジ本体は透明であり、正確な充填のための目盛を有する。BioJectorシリンジには5つの異なる種類があり、これらは各々、異なる注射深度または体格が意図される。
【0247】

VetJetおよびVitajet:VetJetは、獣医学的市場における使用のための改良型Vitajetである。VetJetもまた携帯型注射器ユニットおよび使い捨てシリンジの2つの構成要素で構成されている。VetJetはバネによって動力供給される。
【0248】

ニードルフリー注射器は、液状の非結晶性タンパク質製剤の投与に使用されている。結晶性タンパク質の懸濁液に対するニードルフリーデバイスの報告例がない考えられ得る理由は、タンパク質結晶が懸濁液中で微粒子状を呈し、これによりニードルフリーデバイスによる注射が困難となり得るため、または結晶性製剤に物理的変化が引き起こされ、それにより該製剤の治療作用が害され得るためである。
【0249】
ワクチンは、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)を用いて製剤化された抗原の懸濁液の例である。ニードルフリージェット式注射器は、ワクチンを投与するために使用されている。対照的に、結晶性タンパク質製剤は、ワクチン製剤と比べると、種々の作用様式、種々の目的、製剤の完全性に対する種々の要件、および種々の懸濁液特性を有する。
【0250】
可溶性で結晶性の治療用非経口製剤の投与の標準的なアプローチは、皮下注射針によるものである。注射時の痛みは、針のサイズおよび針が被検体の注射部位に保持される時間量に関係している。大きな針ゲージおよび注射時間の増大はともに、針によって引き起こされる注射部位の痛みの増大を伴う。ジェット式注射器は比較的小さいオリフィスサイズ(表2)を有し、注射時間が非常に短いため、注射時の痛みは、針注射システムと比べて有意に少ない。
【0251】
しかしながら、治療用懸濁液(例えば、結晶性タンパク質の懸濁液)でのニードルフリー(ジェット式)注射器の使用には、さらなる考慮事項が必要とされる。本明細書に記載のように、結晶性タンパク質懸濁製剤の送達のためのニードルフリー注射器の使用を評価した。30〜18ゲージのBecton Dickinson針を本試験での比較に使用した。G30の針は標準壁であり、G25、21および18の針は壁厚が薄いものであった。針の内径と外径の比較を表2に示す。
【0252】
【表2】

結晶性懸濁液を投与できる可能性を、ニードルフリージェット式注射器を用いて評価した。ニードルフリー注射器に使用され得る結晶性懸濁液には制限がある。驚くべきことに、適切に製剤化および選択された結晶性懸濁液を含有する製剤は、ニードルフリー(ジェット式)注射システムを用いて投与され得ることが測定された。
【0253】
本開示の利点としては、
− 結晶性タンパク質懸濁製剤の投与のためのニードルフリー(ジェット式)注射デバイスの使用;
− 前記結晶性製剤の治療作用の保持;および
− ニードルフリー(ジェット式)注射器使用時の注射時の痛みの軽減
が挙げられる。:
本明細書に示したように、無針注射器の使用可能性に影響を及ぼす因子としては、
− 結晶性タンパク質の沈降速度、および
− 粒子(すなわち、結晶)の大きさ
が挙げられる。
【0254】
例えば、結晶性タンパク質の沈降速度が高い場合、注射後、該タンパク質の一部が注射器内に残留し、被検体に送達されないことがあり得る。その結果、被検体には必要投薬量の該タンパク質が与えられないことがあり得る。該結晶の最大寸法が大きすぎる場合、例えば、オリフィスより大きいか、または場合によってはオリフィスの直径の1/3より大きい場合、該結晶がオリフィスに詰まることがあり得る、該結晶が注射モジュール内に良好に負荷されないことがあり得る、および/または該結晶がオリフィスの縁との相互作用によって損傷される(例えば、結晶の形態構造または大きさが変化する)ことがあり得る。
【0255】
一定の条件が満たされていれば、ニードルフリー注射を用いて結晶性タンパク質懸濁液を含有する任意の製剤が投与され得る。例えば、結晶性タンパク質懸濁液が低い沈降速度を有する場合、例えば、該タンパク質の大部分が被検体に送達され、注射器内に残留しない場合(例えば、シリンジ調製と被検体への投与との間に遅滞があった場合であっても、および/または注射器が保持される位置(例えば、上下逆さ、水平)とは無関係に)、該懸濁液は無針投与に適したものであり得る。
【0256】
同様に、該結晶の粒径がオリフィスより小さい場合、理想的には、該粒径(例えば、該粒子の最大寸法)がほぼオリフィスの直径の1/3またはそれ未満である場合、該結晶性タンパク質は、無針投与に適したものであり得る。
【0257】
結晶性タンパク質製剤が、例えば、沈降速度および/または該結晶の粒径の評価に基づいて、あるいは該結晶性タンパク質の投与に無針投与を使用する試行(例えば、試行の不成功)に基づいて無針投与に充分適していると思われない場合、例えば、該製剤が無針投与システムでの使用に適したものとなるようにpH、緩衝液、塩濃度、懸濁化剤、保存料などを変えることにより、該製剤の特性を最適化することができる(例えば、許容され得ない量によって該タンパク質の有効性が低下することなく結晶の大きさが小さくなる、または沈降速度が低減される)。
【0258】

粒径
結晶性タンパク質の粒径は、例えば、レーザー回折(例えば、微小容量モジュールを備えたCoulter LS 230 Particle Size Analyzer(Coulter Corp.,Miami、Florida)を使用)によって測定され得る。粒径(例えば、最大寸法)がオリフィスサイズより小さい(例えば、約1/2より小さい)場合、特に、粒径がオリフィスの直径の約1/3より小さい場合、
該製剤は、無針投与に適したものであり得る。
【0259】
所与の粒径を有する結晶性タンパク質の無針投与に対する好適性は、例えば、結晶性タンパク質製剤をニードルフリー注射器(例えば、BioJector 2000)で注射し、最初の注射後および反復注射後の粒径を観察し、注射後の粒径を注射前の粒径と比較することにより試験され得る。粒径は、Coulter LS 230粒径測定装置を用いて、注射前ならびに最初の注射後および反復注射後に測定され得る。データの解析には、フラウンホーファー光学モデルが使用され得る。粒径は顕微鏡観察により確認され得る。また、起こり得る結晶形態構造の変化を検出するためにも、顕微鏡観察が使用され得る。観察される粒径の変化がないか最小限であり、用量の大部分が注射器から送達される場合、該結晶性タンパク質は、無針投与に適したものであり得る。
【0260】
結晶性タンパク質がこの解析で充分な性能を発揮しない場合、すなわち、粒径がオリフィスより大きい場合、製剤化ビヒクルが最適化され得るか、または該結晶それ自体(例えば、結晶は薬剤(例えば、ポリカチオンもしくはポリアミノ酸例えば、ポリArg)と複合体形成されたであり得るか、またはタンパク質に対する複合体化薬剤の比は種々であり
得る)が、結晶の大きさに影響を及ぼすように最適化され得る。
【0261】

沈降速度
沈降速度は、結晶性タンパク質の無針投与に対する好適性に影響を及ぼし得る。沈降速度が高い場合、被検体に送達される用量は、一貫性がなくなることがあり得る。結晶性懸濁液の高い沈降速度は、用量調製および投与に必要とされる時間中にニードルフリーデバイス内で用量の再分布させる速度、例えば、水平位置でのデバイスの1時間の定温放置後、約90%再分布させる速度と定義され得る。低い沈降速度は、実質的な用量の再分布なく用量の調製および投与を可能にする速度と定義され得る。一実施形態では、高い沈降速度は、水平位置でニードルフリーデバイスを定温放置すると、注射されるのが用量の90%未満となる速度と定義され得る。一部のある実施形態では、低い沈降速度は、任意の位置での1時間を越える定温放置後、均一な用量(例えば、用量の再分布が最小限またはなし;例えば、約35%未満、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%)を可能にする速度と定義され得る。
【0262】
例えば、沈降速度は間接的に測定され得る。一例として、懸濁液を3分間、水平、まっすぐ垂直または逆さまの位置に保持する。例えば、10分または20分の定温放置期間後、実質的な(例えば、約80%)用量の再分布が観察または測定された場合、沈降速度が高いとみなす。別の例として、用量の再分布なく種々の位置で1時間定温放置される懸濁液は、低い沈降速度を有するとみなす。
【0263】
沈降速度に基づいた結晶性タンパク質の無針投与に対する好適性は、例えば、懸濁液をBioJectorシリンジ内に負荷し、該懸濁液を負荷直後、または水平、まっすぐ垂直および逆さまの位置で1時間保持した後のいずれかで注射することにより評価され得る。保持する試料を、ジェット式注射器のシリンジ内への負荷直後に注射する試料と比較する。注射された該タンパク質の注射後の含有量と、シリンジ内部に残留している量と測定し、シリンジ内に負荷された該タンパク質を100%とみなしてパーセンテージで表示する。すぐに注射された試料と注射前に保持された注射された試料との間で、用量分布に差が観察されないか、または微量である場合、該結晶性タンパク質は、無針投与に適したものであり得る。
【0264】
結晶性タンパク質がこの解析で充分な性能を発揮しない場合、すなわち、注射前に保持された試料について送達用量が徐々に減少する場合、製剤化ビヒクルが最適化され得るか、または該結晶それ自体(例えば、結晶は薬剤(例えば、ポリカチオンもしくはポリアミノ酸例えば、ポリArg)と複合体形成され得るか、またはタンパク質に対する複合体化薬剤の比は種々であり得る)が、結晶の大きさまたは該タンパク質の濃度に影響を及ぼすように最適化され得る。
【0265】

使用方法
無針注射システムを用いて、結晶性タンパク質を含有する製剤が被検体に投与され得る。例えば、被検体は該結晶性タンパク質での処置を必要とする患者であり得、例えば、該結晶性タンパク質は結晶性hGHであり得、患者は、hGHの欠乏に苦しむ患者であり得る。用量および用量投与スケジュールは、さまざまな因子に基づいて決定される。かかる因子としては、限定されないが、生理学的因子、例えば、実年齢および骨年齢、性別、体重、発達段階(例えば、思春期の成長レベル)ならびに処置関連因子、例えば、用量、投与速度(動態)および投与経路など、ならびに患者の診断および病歴が挙げられる。
【0266】

キット
結晶性タンパク質を含有する製剤および無針投与における使用説明書、ならびに任意選択で無針投与のためのデバイスを含むキットもまた、本開示の一部である。製剤は、適当な容器内(例えば、バイアル、プレフィルドシリンジなど)に存在させ得る。使用説明書には、任意の形態、例えば、パンフレットもしくはシート、または使用説明書が得られるサイトへのワールドワイドウェブのアドレスが採用され得る。使用説明書には、例えば、保存および/または投与のための使用説明が含まれ得る。
【0267】

解析方法
結晶性タンパク質の無針投与に対する好適性の評価に使用され得る解析方法としては、以下のものが挙げられる。
【0268】

注射
結晶性製剤は、1S021シリンジを備えたBioJector 2000システム、および0.0062インチノズルシリンジRef# K7000、30G×1/2インチ針(BDパーツ番号 328466)が予め装着されたBD 0.5ccシリンジ、30G×1/2インチ(BDパーツ番号305106)、25G×5/8インチ(BDパーツ番号305122)、18G×1.5インチ(BDパーツ番号305196 )(1mL容シリンジに対するルアーロック(BDパーツ番号 309628)が取り付けられている)を備えたVetJetシステムの使用を伴って注射される。0.25mLの試料を2連で試験する。BioJector 2000システムおよびVetJetシステムは、BioJectorの推奨に従って使用する。
【0269】

SE−HPLC
SE−HPLC(サイズ排除HPLC)法を用いて純度を測定するためには、Phenomenex BioSep SEC−S−2000カラムを使用する。10マイクロリットルの2mg/mL濃度の試料をカラム内に注入する。泳動バッファーは、3%IPAおよび60mMリン酸ナトリウム、pH7.0で構成する。流速を0.6mL/分に設定し、泳動時間を30分間とする。検出は214nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合(モノマー)は、ピーク面積に基づいて計算した。
【0270】

RP−HPLC
RP−HPLCは、純度の試験に使用する。タンパク質の純度をRP−HPLC法を用いて測定するためには、C5 Supelco Discovery Bio Wide Pore Column(5cm×4.6mm、3μm粒径、30nm細孔径)を使用する。カラムのサーモスタット温度を37℃に設定する。10マイクロリットルの試料を2mg/mL濃度で注入する。溶出は、1.0mL/分の流速で、移動相A(0.1%TFA含有水)および移動相B(0.8%TFA含有MeCN)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から2.5分で5%Bから50%Bに、次いで2.5分から15.5分で50%から70%Bに、次いで15.5分から17分で70%から90%に変化させ、この直後に再度5%Bを確立させる。その後3分保持した後、次の泳動を開始する。検出は214nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0271】

SCX−HPLC(強カチオン交換)クロマトグラフィー
SCX−HPLC法は、安定性の試験において脱アミド化特異的測定のために使用する。IEX−HPLC法を用いてタンパク質の純度を測定するため、PolyLC(NEST Groupカタログ番号P054SE0503)カラムを使用した。カラムのサーモスタット温度を30℃に設定した。20マイクロリットルの試料を2mg/mL濃度で注入した。溶出は、1mL/分の流速で、移動相A(50mMの酢酸Na、pH4.6)および移動相B(50mMの酢酸Na、pH4.6 250mMのNaCl)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から5分で0%Bから20%Bに、次いで5分から25分で20%から70%Bに、次いで25分から25.1分で70%から100%に変化させ、100%Bを27分まで維持した後、27.1分から再度0%Bを確立させた後、5分間置く。検出は、214nmおよび280nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分した。純度割合は、ピーク面積に基づいて計算した。
【0272】

粒径分布(PSD)
PSDは、微小容量モジュールを備えたCoulter LS 230 Particle Size Analyzer(Coulter Corp.,Miami、Florida)を用いて、レーザー回折によって測定される。試料を試料緩衝液中に希釈し、8〜12%の不透明性の機能範囲を得る。データ解析は、フラウンホーファー光学モデルを用いて行なう。10%(dl10)、50%(メジアン)および90%(dl90)の累積分布限界を表す粒径(単位:μm)の割合を報告する。
【0273】

3−pH溶解試験
この試験は、タンパク質試料における溶解プロフィールの変化を評価するために使用する。
【0274】

粒子表面の変化
粒子表面の変化は、Zetasizer Nano−Z(Malvern Instruments Ltd.UK)を用いて測定される。泳動バッファーは、20mMのTris、pH7.5とした。ゼータ電位変換標準(Zeta Potential Transfer Standard)を用いて、機器(Malvernカタログ番号DTS 1050)を較正する。各試料に対し、12μlの結晶性アリコート(濃度10〜30mg/ml)を588μlの泳動バッファーに添加し、室温で3回の測定値を得る。
【0275】

顕微鏡像
結晶性試験品の顕微鏡像を評価し、注射による試験品の関連する変化を検出する。
【実施例】
【0276】
実施例1
制御放出プロフィールを有する長期作用性hGHを作製するためのhGHの結晶化および複合体形成のプロセスが開発されている(米国特許出願公開公報第2004/0209804号)。ポリArg複合体形成は、裸の(bare)hGH結晶が市販の日常注射製剤と同じ性能を示すため、制御放出プロフィールの寄与において重要である。ポリArg複合体型hGH結晶もしくはhGH誘導体、またはこれらをを含有する組成物もしくは製剤は、いくつかの利点、例えば、週1回の送達が可能であること、使用の準備ができた結晶性懸濁液形態であること、安全性、有効性、純度、安定性および一定期間にわたる注射針通過可能性を有する。該複合体型hGH薬物の送達方法は、ポリマーまたは融合タンパク質を使用せず、注射を少なくするため、および被検体に対してよりユーザーフレンドリーな処置選択肢がもたらされるように設計される。この結晶化技術の特異性は、上清み中に存在する遊離hGHが限定的であるため、可溶性凝集体の増加が観察されないことである。
【0277】
pHおよび緩衝液種の影響を評価するため、製剤開発の試験を行なった。その結果に基づき、次いで、賦形剤とイオン強度をスクリーニングした。許容され得る製剤の開発を、以下の特徴:種々の温度での保存安定性、用量の一貫性の関数としての容器と閉鎖部の適合性、付着の可能性、製剤の投与の容易さ、および容器の閉鎖部に対するロスによって評価した。安定性の試験方法およびその適用は表1に示している。
【0278】
pRに対するhGHの比、粒径分布などのいくつかの因子は、注射時の放出プロフィールにおいて重要であった。ALTU−238の安定性の際にこれらの因子における変化を試験した。また、改善した製剤は、既存の製剤と同等の放出プロフィールを示す必要があるため、溶解プロフィールアッセイを用いて制御放出プロフィールを評価した。
【0279】
開発期間中、最終薬物製剤の容器の閉鎖部の潜在的構成として、ガラス製バイアルとプレフィルドシリンジの両方を評価した。さらなる開発試験では、シリコーン処理されたものを、非ガラス製バイアルおよび/またはシリンジに対して評価した。
【0280】
0.2mL〜1.0mLの範囲の送達用量を含む一定のタンパク質充填濃度を評価した。
【0281】
アレニウスプロット反応速度論を使用し、短期安定性データ(例えば、50℃、40℃、35℃、30℃〜25℃などの高い保存温度でストレス負荷した試料から得られたもの)を用いて、2〜8℃における化学分解速度を予測した。2〜8℃の外挿データを用いて、提案貯蔵寿命または有効期限を確立した。
【0282】
また、選択した製剤を、下垂体切除(hypox)ラットモデルを用いて試験し、比較用の治験製剤を用いて制御放出プロフィールを評価した。
【0283】
本明細書に記載のように、複合体型hGHの好ましい液状懸濁タンパク質製剤は、
6〜7のpH範囲の緩衝液(好ましくは、リン酸塩)、塩(好ましくは、塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム)、および懸濁化剤(好ましくはポリエチレングリコール6000または8000)を用いて調製される。このような製剤と適合する容器の閉鎖部系は、10mm未満の上部空間を有するシリコーン処理されたプレフィルドシリンジ、または上部空間のないバイアルである。
【0284】
結果は、化学分解および結晶形態の変化がALTU−238の安定性に関する考慮事項であり、その程度は緩衝液種、イオン強度およびpHに影響されることを示す。pHは、化学分解に対するhGH複合体型結晶の安定性に影響を及ぼす主な因子であり、pHを>7.0に増大させると脱アミド化が増大する。図示したように、pHは、脱アミド化に対して有意な影響を及ぼす(図1)。好ましくは、pHは、pH6.1〜7.2の範囲、より好ましくはpH6.1〜6.8の範囲であるのがよい。
【0285】
表3は、グリシン緩衝液に溶解させた結晶のOD320のデータを示し、不溶性凝集体が形成されたことを示す。ヒスチジンのpH5.0および5.5試料は、溶解緩衝液の添加後、非常に混濁していた。この混濁は、0.45μmフィルターによって除去することができ、不溶性凝集体が形成されたことを示した。さらに、pH6.0、6.5および7.0のヒスチジン含有試料もまた、同じpHの他のリン酸緩衝液と比べて高いOD320を有していた。これは、グリシン緩衝液中に溶解不可能な複合体型結晶をもたらす不溶性凝集体の存在または結晶形態の変化を示唆する。これらの結果もまた、リン酸塩が、同じpH範囲のヒスチジンと比べて好ましい緩衝液であることを示す。ヒスチジンは、不溶結晶または不溶性凝集体のため、高レベルの光散乱には好ましくない。
【0286】
【表3−1】

【0287】
【表3−2】

これらのヒスチジンおよびクエン酸塩含有試料の結晶の大きさは、その他のものよりも小さく、これは、該結晶が溶解性であったことを示す。クエン酸緩衝液では高い可溶性が観察される(表4)。hGH複合体型結晶の可溶性は、リン酸緩衝液中0.1mg/mL未満である。
【0288】
【表4】

したがって、ヒスチジンおよびクエン酸塩は、好ましい緩衝液ではない。種々のpHのリン酸緩衝液におけるhGH複合体型結晶の可溶性は、0.1mg/mL未満であった。好ましい製剤には、ポリArg複合体型hGHまたはhGH誘導体結晶に対してリン酸塩塩緩衝液種を使用する。
【0289】
図2は、イオン強度の影響を評価するための、NaClの存在下、種々のpH値でのポリArg複合体型hGH結晶の安定性の結果を示す。この図は、イオン強度の増大が、脱アミド化速度に影響を及ぼすことを示す。高い塩含有量では、40℃での保存後、脱アミド化および酸化のレベルが低いこと観察された。
【0290】
ポリエチレングリコール(「PEG」)は、既存の製剤に使用されている懸濁化剤である。PEG3350、PEG8000、マンニトールおよびスクロースなどの択一的な懸濁化剤を比較した。また、脱アミド化速度または酸化に対するグリシンでの塩置換の影響を評価した。この試験では、pH6.8のリン酸緩衝液を使用した。図3〜5に結果を示す。NaClを含有する製剤は、脱アミド化の量が最も少ないようである。同じpH6.8の種々の塩(酢酸ナトリウムもしくは塩化ナトリウム)または懸濁化剤(PEG3350、PEG6000もしくはPEG8000)について、化学分解に有意差は観察されない(図3〜5)。同じpHの試験製剤間では、酸化レベルに関して有意差は観察されなかった。
【0291】
一実施形態において、hGH複合体型結晶に使用する好ましい塩は、酢酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムである。より好ましい実施形態において、hGHのポリArg複合体型結晶に対する塩濃度は60mM〜200mMのナトリウム塩である。
【0292】
また、ポリエチレングリコールの濃度範囲(2.5%、5%、10%および20%)が確立された。懸濁化剤を含まない場合、ケーキングの可能性が問題となり得る。図6は脱アミド化の結果を示すが、安定性における差は観察されない。また、試料はすべて、振らずに1分以内に再懸濁され得た。一実施形態において、hGH複合体型結晶に使用する好ましいPEG濃度は2.5%〜20%である。
【0293】
また、これらの実験により、該複合体型結晶に望ましいポリArgに対するhGHの比が確立される。目標とすべき比は、種々のロットの複合体型タンパク質で3〜11であった。hGH/ポリArg比が3では、高温において、7および15の比のものよりも酸化レベルが有意に高くなる。試料にはすべて、Tris、酢酸ナトリウムおよびPEG6000(pH7.5)を含有する同じ製剤を使用した。しかしながら、脱アミド化レベルに関して有意差は観察されなかった。
【0294】
インビトロ溶解プロフィールを、選択した時間点の試料において行ない、試験期間中の変化(あれば)を評価した。結果は、すべての試験hGH/ポリArg比間で溶解プロフィールに有意差はないことを示した(表5)。好ましいhGH/pR比は5〜15である。
【0295】
【表5−1】

【0296】
【表5−2】

本開示によるhGHまたはhGH誘導体の結晶は、光学顕微鏡法およびSEMで画像形成すると、輝いた棒状または針状の形態構造を形成している。一部のある実施形態において、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約0.1〜約200μmの長さの針状体を形成したものである。好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約2〜約100μmの長さの針状体を形成したものである。より好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、平均粒径分布の50%が約2〜約25μmの長さの針状体を形成したものである。
【0297】
ポリArg複合体型hGH結晶の濃度もまた規定された。5〜50mg/mLの範囲のポリArg複合体型hGH結晶の安定性データにより、安定性において観察される差はないことが示された。この結果に基づくと、上清み中の遊離hGHおよびポリArgは、すべての試験濃度で同等である。しかしながら、50mg/mLレベルでは、該懸濁液は非常に粘稠性であり、製剤を噴出させるのに、より多くの力が必要とされた。したがって、一部のある実施形態では、hGH複合体型結晶の濃度は5〜50mg/mLである。好ましい実施形態では、該濃度は、20〜30mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶であるのがよい。
【0298】
hGH結晶に対する容器の閉鎖部の選択は、用量の一貫性に重点が置かれた。シリコーン処理された種々の材質およびCZ樹脂で作製されたバイアルおよびプレフィルドシリンジを比較した。2つの異なる型の処理、反転または旋回を、それぞれバイアル/シリンジに、各構成に対して1日1回で10回適用した。抽出可能重量およびALTU−238濃度を各時間点(第1日、第3日、第5日および第7日)で記録した。この撹拌試験によると、上部空間によりプレフィルドシリンジに対する製剤の減損は、バイアルよりもずっと少ない。図7A〜7Dおよび8A〜8Dに結果をまとめる。
【0299】
見てわかる結晶がバイアルのボトルネックに蓄積され、該結晶は容器の閉鎖部の壁面にも蓄積された。したがって、形状と容器の閉鎖部の上部空間の両方が送達用量の一貫性に影響を及ぼす。ニードルステイクを有するプレフィルドシリンジは、hGH複合体型結晶または任意のタンパク質結晶製剤のための限定的な死容積(2〜5μLの範囲)に最も理想的なようである。プレフィルドシリンジにはボトルネックがない;また、上部空間は、ずっと小さく、栓の配置によって制御され得る;プランジャーにより、ほぼすべての結晶がシリンジバレル(死容積を除く)から押出され得る。しかしながら、これは、容器の閉鎖部に上部空間を存在させない場合、解決され得る。一部の企業(例えば、Hyauron))では、物質を上部空間なしで充填している。要するに、用量の一貫性のためには、タンパク質結晶に使用する容器の閉鎖部に上部空間がないか、または限定的であることが好ましい。
プレフィルドシリンジ/ニードルステイクおよび10mm未満の上部空間は、タンパク質結晶非経口製剤に、より好適である。
【0300】
テフロン(登録商標)コーティングされた栓(すなわち、Diekyo Flurotec)および4432配合物の栓を、pR複合体型hGH結晶閉鎖部として試験した。そのデータは、どちらの栓も、適合性に問題がないことを示す。
【0301】
また、ポリArgコーティングhGH結晶の充填容積、例えば0.2〜1.0mLについても調べた。すべての試験充填容積間に差はない。hGH複合体型結晶は、好ましくは0.2mL〜1.0mLの充填容積を有する。
【0302】
リード(lead)製剤を、アレニウス安定性予測のために特定した。アレニウスストレスモデル(または関係)は、刺激または加速可変量(例えば、脱アミド化、酸化など)が熱的なもの(すなわち、温度)である場合に広く使用されている。5℃での分解速度は、いくつかの高温での安定性の結果を用いて予測され得る。Fluroteck栓を有するプレフィルドシリンジ内のポリArg複合体型結晶の試料を、2〜8℃、25℃、30℃、35℃、40℃および50℃で置いた。既報のデータに基づき、アレニウスの式を適用して5℃での分解速度を予測した。その結果を、同じ方法によって解析した先のロットの実際の安定性と比較した。また、リード製剤のリアルタイム安定性を比較のために示した。5℃で24ヶ月の保存後、ALTU−238ではCEXによる約7%の分解増大が推定される(表6および7)。
【0303】
【表6】

【0304】
【表7】

本開示に基づいて製剤の溶解プロフィールを先の解析に使用されたものと、分散溶解プロフィールアッセイと下垂体切除ラット試験モデルの両方によって比較した。結果(表8)は、同等の溶解速度ならびにラットPDおよびPKプロフィールが得られたことを示す。したがって、本明細書において規定される製剤は、ヒト治療に対して週1回注射の制御放出プロフィールをもたらすものであり得る。
【0305】
【表8】

下垂体を切除したラットモデルにおいて、既存の製剤と本発明のALTU−238製剤間で、PDプロフィールに有意差は観察されなかった。この下垂体を切除したラットモデルにおいて、日常rhGH対照、既存の製剤および本発明の製剤間で、体重増加ならびにpKプロフィールに有意差は観察されなかった。平均体重変化は、それぞれ18%、18%および16%であった。
【0306】

実施例2
5±3℃(冷蔵)で約18〜約24ヶ月および室温25±2℃(使用時)条件で少なくとも1週間安定である目標のポリArg複合体型結晶製剤性hGHの懸濁液を調製するための試験を行なった。
【0307】
hGH分子の安定性と系の安定性の両方を考慮した。分子の不安定性としては、化学分解と凝集が挙げられる。系の安定性は、1週間の放出プロフィールに対する安定性、ならびに該懸濁液(結晶凝集、沈降および表面吸着)の安定性をもたらすものであるのがよい。
【0308】
一連の解析方法を用いて、複合体型hGH製剤における分解を試験した。化学安定性またはhGH関連不純物の形成を、RP−HPLCおよびIEX−HPLCアッセイによりモニターした。凝集は、SE−HPLCアッセイを用いてモニターした。粒径分布の変化を、レーザー光散乱技術を用いて試験した。懸濁液の外観の変化を目視により観察した。
【0309】
対照安定性の測定値は、5つの代表的なバッチの既存の製剤に基づくものとした。例えば、化学安定性に関して、既存の製剤の安定性は、2〜8℃で8〜12ヶ月および室温で1〜3ヶ月である。
【0310】
凝集に関して、計画される安定性は、2〜8℃で3年超および室温で1〜3年である。この既存の懸濁液は、粒径分布、外観および沈降に関して、2年の観察期間にわたって安定である。
【0311】
hGH分子における化学不安定性としては、脱アミド化、スクシンイミド中間体の形成、酸化、およびクリッピングが挙げられ得る。本明細書に記載の最適化により、複合体型hGH製剤中のhGHの化学安定性の増大が補助される。
【0312】
hGHの分解は、プロセス誘導型分解および/または製剤誘導型分解であり得る。製剤誘導型分解は、準最適製剤化ビヒクル組成物の使用ならびにビヒクルの成分および特徴(pH、緩衝液、塩、懸濁化剤、保存料、およびこれらの成分に由来する混入物など)の結果であり得る。
【0313】
これらの試験の際、ポリアルギニンでコーティングされた結晶性hGHの懸濁液中のhGHの安定性に影響を及ぼす条件を試験した。hGHの安定性の増大を可能にする製剤化ビヒクルを特定した。その製剤は、治療作用に関して既存の製剤と同様であった。
【0314】
製剤中のhGHの化学安定性に対するpHおよび緩衝液の組成の影響を試験するための実験を行なった。ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶を、表9に列挙した製剤化ビヒクル中に再懸濁させた。試料中のhGH濃度は25mg/mLとし、ポリアルギニン含有量は約5mg/mlとした。試料は5±3℃〜25±2℃条件で保存した。
【0315】
【表9】

試験の開始時、対照試料の純度を測定した(表10)。室温で1ヶ月保存後、逆相(RP−HPLC)およびアニオン交換(IEX−HPLC)HPLCで試料を解析した(IEX−HPLCの結果を表10に示す)。
【0316】
【表10】

【0317】
【表11】

驚いたことに、RP−HPLC安定性データに基づくと、緩衝液成分は、製剤の化学安定性に影響を及ぼした。驚くべきことに、ヒスチジン緩衝液は、製剤において有意に高速の化学分解を引き起こすことがわかった。したがって、緩衝液成分は、RP−HPLCでの解析によると、hGHの化学分解に対して強く影響する。調べた試験条件の緩衝液の範囲では、至適pHは7.5であり、この値を外れるいずれの側でも安定性は低下した。
【0318】
興味深いことに、IEX−HPLCによれば、脱アミド化は、製剤化ビヒクルのpHに強く影響される。pHが大きいと脱アミド化が促進される。pHを下げると、脱アミド化速度は有意に低下した(表11)。
【0319】
この実施例のデータに基づき、複合体型hGH製剤における全体的なhGHの化学分解は、緩衝液成分、製剤化ビヒクルの組成およびpHに影響されることがわかった。hGH製剤の他のパラメータを維持したままhGHタンパク質の化学安定性の増大を得るため、このデータに基づいて、さらなるスクリーニングを行ない、これらのパラメータを確認した。
【0320】
改善された安定性の製剤をスクリーニングするため、さらなる製剤化ビヒクルを試験した(表12〜16)。ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶を製剤化ビヒクル中に再懸濁し、hGH濃度を25mg/mLとした。試料を5±3℃〜25±2℃条件で保存した後、安定性を試験した。
【0321】
【表12】

【0322】
【表13−1】

【0323】
【表13−2】

【0324】
【表14】

【0325】
【表15−1】

【0326】
【表15−2】

【0327】
【表16】

1ヶ月および3ヶ月の時間点の安定性結果の基づき、好ましい安定性製剤を特定した(表17)。また、好ましい安定性製剤の選択は、結晶化度、ポリArg含有量および溶解特性に基づいて行なった。
【0328】
【表17】

6ヶ月の時点で、試料を、解析対象の冷蔵条件および室温条件で保存した(表19および20)。純度を、対照製剤と同一の組成を示す対照試料02と比較した。時間0の対照試料の純度の結果を表18に示す。
【0329】
【表18】

【0330】
【表19】

【0331】
【表20】

最適製剤の分解速度の推定の方法論および選択:分解速度を用いて製剤同士を比較し、最適安定性製剤を特定した。分解速度は、hGH関連物質の蓄積速度として示す。速度は、時間0と6ヶ月の分解生成物の含有量の差を、冷蔵条件で保存した月数(この場合は6ヶ月)で除算したものとして計算する。
【0332】
不純物の割合は、それぞれのHPLCクロマトグラムのメインピーク以外のすべてのピークの含有量として求める。脱アミド化以外の化学分解はRP−HPLCによって測定した。脱アミド化は、IEX−HPLCによって測定した。
【0333】
分解速度は、所与の時点(6ヶ月)と試験開始時の試料中の分解生成物の含有量の差を、観察期間(6ヶ月)で除算したものとして計算した。化学分解速度は、RP−HPLCおよびIEX−HPLCで得られた分解速度を合わせることにより示した。最も小さい分解速度を有する製剤が最適製剤である。試料における5±3℃で6ヶ月保存した分解速度を表21に示す。
【0334】
【表21】

安定性を比較するため、従来の既存バッチの純度を測定し(表22)、分解速度を計算した(表23)。従来バッチにおける分解速度を、対照試料と当該新規製剤と比較した。
【0335】
【表22】

【0336】
【表23】

驚くべきことに、最適化された製剤における分解速度は、対照試料および従来バッチのものよりも有意に低かった。本スクリーニングにおいて、分解速度が大きく低減されたいくつかの製剤が特定された。2つの好ましい安定性が改善された製剤:#13(10mMのNa2HPO4、25mMのTris、100MMのNaAc、5%のPEG6000、pH6.5)および#55−01N(10mMのクエン酸Na、0.2%のTween20、0.25%のフェノール、150mMのNaCl pH6.0)が特定された。
【0337】

室温での分解速度の推定
室温での当該新規製剤の安定性の解析により、同じ改善された安定性製剤#55−01Nが得られた(表24)。冷蔵保存条件で最適と特定された他の製剤は、室温で保存した場合も対照製剤よりも良好な安定性を有した。
【0338】
【表24】

化学安定性の改善をもたらす当該新規製剤化ビヒクルが、どのようにしてポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液におけるhGH凝集に影響を及ぼすかを調べるための実験を行なった。ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶を、最適化した安定性製剤化ビヒクル中に再懸濁させた。試料を5±3℃で保存した後、SE−HPLCを用いて凝集を試験した。
【0339】
【表25】

驚いたことに、当該新規製剤化ビヒクルでは、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液において、凝集体形成速度が増大しなかった。実際、一部の最適化された安定性製剤では、凝集hGH形成速度が、対照試料と比べて2倍低下した(表25)。
【0340】

インビボ結果:下垂体を切除したラットでの試験
これらの実験は、最適化された安定性製剤ビヒクルにおけるポリアルギニン複合体型hGH結晶の治療作用が、対照製剤のhGH放出プロフィールと同等であるか否かを調べるために行なった。下垂体を切除した雄ウィスターラットにおいて、対照ロットと最適化された安定性製剤ロット番号299−35−06(10mMのクエン酸Na、0.2%のTween20、0.25%のフェノール、150mMのNaCl pH6.0)間で、治療作用に有意差は観察されなかった。
【0341】


標準的なラット体重増加アッセイにおける有効性の確認は、hGH製剤の臨床的開発および商品開発のための重要な工程である。試験物質または対照物質を、下垂体を切除した雄ウィスターラット(9ラット/群)にSC(皮下)注射により投与した。この試験では、5.6mg/kgの単回用量および反復用量の対照および当該新規製剤の単回SC注射、または0.8mg/kgの市販の可溶性rhGH(Nutropin AQ)の毎日のSC注射を7日間(すなわち、5.6mg/kg/週)受けた後の、下垂体を切除したラットの成長を比較した。投与開始前および第−7日から毎日(投与前の7日間)第8日の観察期間の最後まで毎日、体重を毎週測定した。この下垂体を切除したラットモデルにおいて、日常rhGH注射製剤、対照、および最適化された安定性製剤間で、体重増加に有意差は観察されなかった。平均体重変化は、それぞれ18±3%、18±2%、および16±4%であった。
【0342】

結論
これらの試験により、製剤化ビヒクル中にポリアルギニンでコーティングされたhGH結晶含む懸濁液用の製剤化ビヒクルが特定された。該製剤は、
a)安定性の改善をもたらす
b)該複合体において対照製剤と同等の結晶化度を維持する
c)29以下のゲージ針での投与を可能にする

このような製剤は、以下のものを提供する
a)高分子電解質でコートされたhGH結晶の懸濁液、ここで、該結晶性hGHの濃度は、
5〜100mg/mL、好ましくは10〜50mg/mLの範囲、より好ましくは20〜30mg/mLの範囲である。
【0343】

b)5.0〜8.0の範囲pHでhGH複合体の結晶化度を維持する生物学的に適合性の緩衝液で構成された製剤化ビヒクル中の懸濁液。緩衝塩濃度は、濃度1〜150mMの範囲である。好ましくは、2〜50mM;より好ましくは10mM濃度である。緩衝塩の例としては、酢酸塩、トリエタノールアミン、イミダゾール、リン酸塩、クエン酸塩、Tris−HClが挙げられる。好ましい緩衝液は、5.8〜7.0、好ましくは6.0〜6.5のpH範囲のリン酸ナトリウムである。緩衝液の組合せ、例えば、リン酸ナトリウムとクエン酸ナトリウムの緩衝液、例えば、2mMのクエン酸Na塩と8mMのリン酸Na塩が使用され得る。
【0344】

c)hGH複合体の結晶化度を維持または増大させる成分。一例(as example)は中性塩、例えば、酢酸Naまたはポリエチレングリコール(PEG3350〜PEG8000)などである。好ましいPEG濃度は、1〜25w/v%、より好ましくは2〜10w/v%;より好ましくは4〜6w/v%の範囲である。フェノールは、0.1〜0.5%の濃度で使用され得る。
【0345】

d)組成物の総重量オスモル濃度が、250〜450mOsm/kg、好ましくは270〜350mOsm/kg、より好ましくは280〜330mOsm/kgの範囲となるようにする張度調整剤。例としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、Tris−HClなどの中性塩が挙げられる。作用緩衝pH範囲外の緩衝塩も中性塩として使用され得る。好ましい塩は、酢酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムである。アミノ酸の塩も、緩衝pH範囲外のpH範囲で中性塩として使用され得る。好ましいアミノ酸の塩は、グリシンナトリウム塩である。マンニトール、ソルビトールなどのポリオールもまた、張度調整剤として使用され得る。ポリエチレングリコールも張度調整剤として使用され得る。
【0346】

e)任意選択で、約0.25%w/vの濃度の保存料、例えばフェノール。好ましいフェノール濃度範囲は0.2〜0.3%である。
【0347】

f)任意選択で、前記製剤の化学安定性を増大させる成分、例えば、メチオニン、EDTAなど。
【0348】

リード製剤化ビヒクルの具体例:
10mMのリン酸Na、25mMのTris、100mMのNaAc、5%のPEG6000、pH6.5
10mMのリン酸Na、0.25%のフェノール、150mMのNaCl、5%のPEG6000 pH6.0
10mMのクエン酸Na、0.2%のTween20、0.25%のフェノール、150mMのNaCl、pH6.0
30mMのトリエタノールアミン、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000 pH6.8
25mMのトリエタノールアミン、10mMのメチオニン、100mMのNaCl、2%のPEG3350 pH6.8
25mMのイミダゾール、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000 pH6.5

潜在的に有益な製剤化ビヒクルの具体例:
2mMのクエン酸Na塩、8mMのリン酸Na塩、120mMのNaCl、0.3%のフェノール pH6.0
10mMのリン酸Na、100mMのグリシン、0.3%のフェノール、pH6.0
10mMのリン酸Na、100mMのNaCl、0.3%のフェノール、pH6.0
10mMのリン酸Na、100mMの酢酸Na塩、5%のPEG6000、pH6.0
10mMのリン酸Na、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH6.0
10mMのリン酸Na、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH6.5
2mMのクエン酸Na塩、8mMのリン酸Na塩、120mMのNaCl、0.3%のフェノール pH5.4
10mMのリン酸Na塩、100mMのNaCl、10%w/vのPEG3350 pH6.0
10mMのクエン酸Na塩、80mMのNa グリシン、10%w/vのPEG6000 pH5.4
10mMの酢酸Na塩、120mMのNaCl、10%w/vのPEG6000 pH5.6

前記製剤の調製:プロトコル
(1)ポリアルギニン複合体型hGH結晶、25mg/mlの作製(Govardhanら,2004:WO2004/060310)
(2)工程1生成物の遠心分離、3,5000rpm、15分、4℃
(3)上清みの除去、容量記録
(4)同容量の製剤化ビヒクルの添加
(5)ペレットの再懸濁
(6)工程3を反復、次いで、再懸濁時に所望のhGH濃度が得られる容量の製剤化ビヒクルの添加、再懸濁
(7)最終懸濁液を2〜8℃で保存

試料を低pH勾配RP−HPLC法により解析し、化学分解をモニターして脱アミド化を排除する;脱アミド化は、カチオン交換HPLCの使用により検出する;最後に、化学分解を、RP−HPLCおよびIEX−HPLCで得られた不純物数を合わせることにより示す。SE−HPLCを用いて凝集をモニターする。遊離ポリアルギニンに対する結合ポリアルギニンの比を、RP−HPLCで測定された上清み中に存在する総ポリアルギニン濃度に基づいて計算する。結晶化度は、RP−HPLC較正により、製剤の結晶性相中のhGH濃度に対する上清み中のhGH濃度の比として求める。
【0349】

HPLC解析用の試料調製:RP−、IEX−およびSE−HPLC解析を行なうために、結晶を溶解させる。結晶を遠心分離し、上清みを除去する;結晶性ペレットをpH2.8の酢酸水溶液に、2mg/mL濃度となるように溶解させる。2分間の定温放置後、溶液を、12000rpmで4分間遠心分離する。次いで、HPLCを用いて試料を解析する。
【0350】

RP−HPLC:RP−HPLCは、RP−HPLC法を用いてhGHの純度を調べるために使用する。C5 Supelco Discovery Bio Wide Pore Column(5cm×4.6mm、3μm粒径、30nm細孔径)を使用する。カラムのサーモスタット温度を37℃に設定する。10μLの試料を2mg/mL濃度で注入する。溶出は、1.0mL/分の流速で、移動相A(0.1%TFA含有水)および移動相B(0.1%TFA含有MeCN)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。
勾配系は、0分から2.5分で5%Bから50%Bに、次いで2.5分から15.5分で50%から70%Bに、次いで15.5分から17分で70%から90%に変化させる。この直後、再度5%Bを確立させ、その後3分保持する。検出は214nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0351】

IEX−HPLC弱アニオン交換クロマトグラフィー:WAX−hGH法は、特に時間点0での安定性の試験における脱アミド化を測定するために使用する。WAX法を用いてhGHの純度を測定するためには、PolyMA WAX(Supelcoカタログ番号59602−U)を使用する。カラムのサーモスタット温度を37℃に設定する。5μLの試料を2mg/mL濃度で注入する。溶出は、0.5mL/分の流速で、移動相A(50mMのTRIS、pH8.0)および移動相B(50mMのTRIS、pH8.0 500mMのNaCl)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から30分で5%Bから30%Bに、次いで30分から40分で30%から50%Bに、次いで40分から42分で50%から95%に変化させ、45分まで95%Bで維持した後、再度50%Bを確立させ、その後3分保持する。検出は、214nmおよび280nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0352】

IEX−HPLC強カチオン交換クロマトグラフィー:SCX−hGH法は、安定性の試験において脱アミド化特異的に使用する。IEX−HPLC法を用いてhGHの純度を測定するためには、PolyLC(NEST Groupカタログ番号P054SE0503)を使用する。カラムのサーモスタット温度を30℃に設定する。20μLの試料を2mg/mL濃度で注入する。溶出は、1mL/分の流速で、移動相A(50mMの酢酸Na、pH4.6)および移動相B(50mMの酢酸Na、pH4.6 250mMのNaCl)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から5分で0%Bから20%Bに、次いで5分から25分で20%〜70%Bに、次いで25分から25.1分で70%から100%に変化させ、100%Bを27分まで維持した後、27.1分から再度0%Bを確立させた後、5分間置く。検出は、214nmおよび280nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0353】

SE−HPLC:試料中の凝集体の含有量を測定するために使用する。SE−HPLC Phenomenex BioSep SEC−S−2000カラムを使用する。10μlの2mg/mL濃度の試料をカラム内に注入する。泳動バッファーは、3%IPAおよび60mMリン酸ナトリウム、pH7.0で構成する。流速を0.6mL/分に設定し、泳動時間を30分間とする。検出は214nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0354】

結晶化度:結晶化度は、試料中の総hGH濃度に対する上清み中のhGH濃度(RP−HPLC較正に基づいたもの)の比として計算する。
【0355】
【数1】

遊離ポリアルギニンに対する結合ポリアルギニンの比:比は、RP−HPLCで測定された(ポリアルギニン較正に基づいて)上清み中に存在する総ポリアルギニン濃度に基づいて計算する。
【0356】
【数2】

外観: 試験品の外観を目視評価し、試験品の関連する変化を検出する。
【0357】

実施例3
本開示は、高分子電解質と複合体形成されたhGH結晶の徐放性反復用量懸濁液の分野に関する。
【0358】
ヒト成長ホルモンの一部の液状製剤は、反復用量製剤である。これは、反復投与用の単一のバイアルにおける製剤の使用を可能にする抗菌性保存料を含むものである。hGH液剤はまた、hGHの反復投与を可能にする抗菌性保存料を入れたカートリッジ内に充填され得る。反復用量であるにもかかわらず、これらの液状製剤は、薬理学的効果を得るのに投与の必要が1日1回であることは、言及に値する。これは、hGHが徐放製剤(例えば、週1回注射製剤)として製剤化され得る場合、患者、特に小児に大いに有益である。また、これは、週1回製剤の反復用量製剤が市場で入手可能である場合でも、患者に大いに有益である。抗菌性保存料の添加は、反復用量医薬製剤の調製に既知の方法である。
【0359】
高分子電解質をhGH結晶と複合体形成させることは(例えば、29G針により投与)、hGH放出を5〜6日間持続させるのにインビボで有効であり、IGF−1の上昇を刺激して少なくとも7日間ベースライン値より上にすることが示されている。
【0360】
このような試験では、hGH製剤の化学安定性を増大させるために行なわれ、ポリアルギニンと複合体形成された結晶性hGHを、洗浄剤、塩および抗菌性保存料も含有するクエン酸ナトリウム含有緩衝溶液またはリン酸ナトリウム緩衝液に懸濁させた。
【0361】
驚くべきことに、抗菌性保存料の添加は、ポリアルギニンと複合体形成されたhGHの結晶化度に対して有害な影響を与えない;結晶化度は懸濁液中で維持された。
【0362】
興味深いことに、クエン酸緩衝液により、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液において、遊離(可溶性)hGH含有量の増加がもたらされた。これは、放出プロフィールの有意な短縮がもたらされ得る製剤中への結晶溶解の表示である。対照的に、リン酸緩衝液の添加では、製剤中の遊離hGHの含有量は増加せず、後に、インビボ動物試験で、複合体型hGHの既知製剤の放出プロフィールとの同等性が確認された。
【0363】
実験の別の部分では、ポリアルギニンと複合体形成されていないhGH(裸の結晶)を種々の緩衝溶液に投入した。これらの結晶は、前記製剤に易可溶性であった。この実験により、裸のhGH結晶では、ここで試験した反復用量製剤化ビヒクル中で結晶化度が維持され得ないことが示された。対照的に、ポリアルギニンと複合体形成されたrhGH結晶は、種々の抗菌性保存料を用いた反復用量製剤の目的に使用され得た。
【0364】
この実験は、抗菌性保存料フェノールの添加が、製剤中の遊離hGHの含有量に影響を及ぼすか否かを評価するために行なった。対照として既知(対照)製剤を試験した。さらに3種類の試料を、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶のペレットを、塩を含む、界面活性剤およびフェノールを含むまたは含まないクエン酸緩衝液系製剤化ビヒクルに再懸濁させることにより調製した。
【0365】
【表26】

この試験の結果により、フェノールの添加は、対照製剤と、界面活性剤および塩を含有するクエン酸緩衝液系溶液の両方において、遊離hGHの含有量に対して有害効果をもたらさないことが示された(表26)。驚くべきことに、フェノール含有製剤で示された、懸濁液中の遊離hGHの濃度は低く、界面活性剤(Tween)含有製剤で示された懸濁液中の遊離hGHの濃度は高かった。
【0366】

この実験は、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液中の遊離hGHの含有量に対するクエン酸塩およびリン酸緩衝液の影響を評価するために行なった。対照として、既知hGH(対照)製剤を使用した。さらに2種類の試料を、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶のペレットを、界面活性剤、塩およびフェノールも含むクエン酸緩衝液系製剤化ビヒクルまたはリン酸緩衝液系製剤化ビヒクルに再懸濁させることにより、調製した。
【0367】
【表27】

この実験の結果により、対照製剤は、遊離(可溶性)hGHの含有量が非常に微量であることが示された。これは、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の完全性を示す(表27)。驚くべきことに、遊離(可溶性)hGHの含有量は、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶をクエン酸系緩衝液に移すと高くなり、これは、hGH結晶の一部溶解を示す。この結晶溶解により、インビボhGH放出プロフィールの有意な短縮がもたらされ得る。対照的に、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶をリン酸系緩衝液に移すと、遊離(可溶性)hGHの含有量は、クエン酸系緩衝液の場合よりも1桁小さくなった。したがって、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶用の製剤化ビヒクルとしてのリン酸系緩衝液の使用は、対照製剤で見られる週1回放出プロフィールの維持に関して利点をもたらし得る。
【0368】
懸濁液中のポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の結晶化度が維持され得る反復用量製剤は、好ましくは、リン酸緩衝液、保存料としてフェノール、および張度調整成分を含むものである。
【0369】

ポリアルギニンと複合体形成されていないhGH結晶(すなわち、裸のhGH結晶)の懸濁液中の遊離hGHの含有量に対するクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液の影響を示すための実験を行なった。対照として、既存の(対照)複合体型hGH製剤の基準製剤化ビヒクルを使用した。さらに2種類の試料を、裸の結晶のペレットを、界面活性剤、塩およびフェノールも含有するクエン酸またはリン酸緩衝液系製剤化ビヒクルに再懸濁することにより調製した。
【0370】
【表28】

この実験の結果により、対照基準製剤化ビヒクルは、裸のhGH結晶を一部溶解させることが示された(表28)。驚くべきことに、裸のhGH結晶は、界面活性剤、塩および保存料も含むクエン酸系またはリン酸系緩衝液に易可溶性であった。製剤中への結晶の溶解により、インビボhGH放出プロフィールの有意な短縮がもたらされ得る。
【0371】

次の実験は、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の対照製剤化ビヒクルまたはリン酸ナトリウム低pH製剤化ビヒクルでの懸濁液中の遊離hGHおよびポリアルギニンの含有量に対する、種々の濃度の種々の保存料の影響を示すために行なった。対照として、保存料の添加なしの製剤化ビヒクルを使用した。試料の上清み中の遊離hGHおよびポリアルギニンの含有量を、室温で1ヶ月間定温放置後に解析した。
【0372】
【表29−1】

【0373】
【表29−2】

【0374】
【表30−1】

【0375】
【表30−2】

この実験の結果により、抗菌性保存料の添加は、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の10mMのNaHPO4、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH6.0製剤化ビヒクルでの懸濁液中の遊離hGHおよびポリアルギニンの量を有意に変化させないことが示された(表29および30)。1.5%のベンジルアルコールおよび0.5%のクロロブタノール(clorobutanol)を対照製剤化ビヒクルに添加した実施例では、上清み中の遊離ポリアルギニンの量の増加が観察された。しかしながら、この遊離ポリアルギニンの増加によって、遊離hGH濃度の増大は引き起こされなかった。
【0376】

この実験は、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の対照製剤化ビヒクルおよびリン酸ナトリウム低pH製剤化ビヒクルでの懸濁液中のhGHの化学安定性に対する、種々の濃度の種々の保存料の影響を示すために行なった。対照として、保存料の添加なしの対照ビヒクルおよびリン酸ナトリウム低pH製剤化ビヒクルを使用した。hGH分解生成物の含有量の増加を、室温で1ヶ月間定温放置後に解析した。
【0377】
【表31−1】

【0378】
【表31−2】

【0379】
【表31−3】

【0380】
【表32】

驚くべきことに、抗菌性保存料の添加により、10mMのNaHPO4、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH6.0製剤化ビヒクルで、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の懸濁液中のhGHの化学安定性が増大され得る(表31および32)。この改善は、クロロブタノールの場合ほど顕著ではなかった。また、基準ALTU−238製剤へのへの0.5%のクロロブタノールの添加により、hGHの化学安定性が低下した。したがって、クロロブタノールは、複合体型hGHを含有する製剤での使用に好ましい抗菌性保存料ではない。
【0381】

この実験は、種々の製剤化ビヒクル中のポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の形態構造に対する抗菌性保存料の影響を評価するために行なった。対照として、保存料の添加なしの対照ビヒクルおよびおよびリン酸ナトリウム低pH製剤化ビヒクルを使用した。室温で1ヶ月間定温放置後に、顕微鏡観察を行なった。抗菌性保存料無含有で0.5%のフェノールと0.3%のメタ−クレゾールを含む対照製剤化ビヒクル(右)の懸濁液中のポリアルギニンでコーティングされたhGH結晶の顕微鏡像を調べた。また、抗菌性保存料無含有で0.2%のフェノールと0.2%のメタ−クレゾールを含む低pHリン酸系製剤化ビヒクル(10mMのNaHPO4、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH6.0)の懸濁液中のポリアルギニンでコーティングされたhGH結晶の顕微鏡像も調べた。
【0382】
驚くべきことに(Surprisngly)、抗菌性保存料の添加は、ポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の形態構造に対して有害な影響を及ぼさなかった。
【0383】

インビボ結果:下垂体を切除したラットでの試験
この実験は、反復用量製剤化ビヒクル(保存料を含む)でのポリアルギニン複合体型hGH結晶の放出プロフィールが、単回用量の対照hGH製剤のhGH放出プロフィールと同等であるか否かを評価するために行なった。下垂体を切除した雄ウィスターラットにおいて、保存料なしの対照緩衝液中の複合体型hGHの単回用量製剤と、フェノールを含む対照緩衝液中の複合体型hGHの反復用量製剤間で、薬力学的プロフィールに有意差は観察されなかった。
【0384】

標準的なラット体重増加アッセイにおける有効性の確認は、hGH製剤の臨床的開発および商品開発のための重要な工程である。試験物質または対照物質を、下垂体を切除した雄ウィスターラット(9ラット/群)にSC(皮下)注射により投与した。この試験では、5.6mg/kgの単回用量および反復用量の対照緩衝液中(保存料を含む)のhGH製剤の単回SC注射、または0.8mg/kgの市販の可溶性rhGH(Nutropin AQ)の毎日のSC注射を7日間(すなわち、5.6mg/kg/週)受けた後の、下垂体を切除したラットの成長を比較した。投与開始前および第−7日から毎日(投与前の7日間)第8日の観察期間の最後まで毎日、体重を毎週測定した。この下垂体を切除したラットモデルにおいて、日常rhGH対照、単回用量製剤および反復用量製剤間で、体重増加に有意差は観察されなかった。平均体重変化は、それぞれ18±3%、18±2%、および16±4%であった。
【0385】

インビボ結果:下垂体を切除したラットでの試験
この実験は、反復用量製剤化ビヒクル(保存料を含む)でのポリアルギニン複合体型hGH結晶の放出プロフィールが、単回用量の対照hGH製剤のhGH放出プロフィールと同等であるか否かを評価するために行なった。下垂体を切除した雄ウィスターラットにおいて、保存料なしの対照緩衝液中の複合体型hGHの単回用量製剤と、フェノールを含む対照緩衝液中の複合体型hGHの反復用量製剤間で、PDプロフィールに有意差は観察されなかった。試験物質または対照物質を、下垂体を切除した雄ウィスターラット(9ラット/群)にSC(皮下)注射により投与した。この試験では、5.6mg/kgの単回用量および反復用量の製剤を受けた後の、下垂体を切除したラットの成長を比較した。
【0386】

投与開始前および第−7日から毎日(投与前の7日間)第8日の観察期間の最後まで毎日、体重を毎週測定した。この下垂体を切除したラットモデルにおいて、単回用量製剤と反復用量製剤間で、体重増加に有意差は観察されなかった。平均体重変化は、それぞれ15±2%および16±1%(平均±SE)であった。
【0387】

前記製剤の調製:プロトコル:
(1)ポリアルギニン複合体型hGH結晶、25mg/mlの作製
(Govardhanら,2004−WO2004/060310)
(2)工程1生成物の遠心分離、3,5000rpm、15分、4℃
(3)上清みの除去、容量記録
(4)同容量の反復用量製剤化ビヒクルの添加
(5)ペレットの再懸濁
(6)工程3を反復、次いで、
再懸濁時に所望のhGH濃度が得られる容量の製剤化ビヒクルの添加、再懸濁
(7)最終懸濁液を2〜8℃で保存

解析方法
RP−HPLCは、脱アミド化hGH以外のすべてのhGH関連不純物を検出するために使用され(脱アミド化はIEX−HPLCの使用により測定される、下記参照)、C5 Supelco Discovery Bio Wide Pore Column(5cm×4.6mm、3um粒径、30nm細孔径)において行なわれる。サーモスタットの温度は37℃である。溶出は、移動相A(0.1%TFA含有H2O)および移動相B(0.1%TFA含有MeCN)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から2.5分で5%Bから50%Bに、次いで2.5分から15.5分で50%から70%Bに、次いで1.5分で70%から90%に変化させ、この直後に再度5%Bを確立させる。その後3分保持した後、次の泳動を開始する。流速は1.0ml/分である。注入容量は、2mg/ml濃度のhGH試料で10μlである。検出は214nmで行なう。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0388】


IEX−HPLCは、脱アミド化特異的アッセイとして使用する。hGHの純度を測定するためには、PolyLC(NEST Groupカタログ番号P054SE0503)を使用する。カラムのサーモスタット温度を30℃に設定する。20μLの試料を2mg/mL濃度で注入する。溶出は、1mL/分の流速で、移動相A(50mMの酢酸Na、pH4.6)および移動相B(50mMの酢酸Na、pH4.6 250mMのNaCl)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から5分で0%Bから20%Bに、次いで5分から25分で20%〜70%Bに、次いで25分から25.1分で70%から100%に変化させ、100%Bを27分まで維持した後、27.1分から再度0%Bを確立させた後、5分間置く。検出は280nmで行なう。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0389】

実施例4
これらの実験は、ニードルフリー(ジェット式)注射器での投与での使用のための治療用タンパク質の結晶性懸濁液の分野に関する。液状可溶性製剤の医薬品の投与には、種々のデバイス、例えばニードルフリー(ジェット式)注射器デバイスを使用する。このようなデバイスは、薬物投与の容易性を改善すること、注射回数を減らすこと、および場合によっては、注射時の痛みを軽減することにより、患者のコンプライアンスの増大を補助する。
【0390】
結晶性タンパク質製剤は、可溶性製剤と比べて利点を有するものであり得る。さらに多くの結晶性薬物を使用する場合、ニードルフリー選択肢により患者のコンプライアンスが増大され得る。しかしながら、結晶性インスリン懸濁液に対してニードルフリー送達選択肢は利用可能でない。患者集団の約5〜10%で針恐怖症が報告されている。患者が、ニードルフリー選択肢を含む結晶性非経口製剤の投与のための多くの送達可能性を持てることは有益であり得る。
【0391】
結晶性タンパク質製剤に関連するジェット式注射器の考えられ得る別の適用は、獣医学的市場である。例えばジェット式注射器との組合せでの結晶性製剤の使用により、長期薬物放出がもたらされ得、例えば、投与頻度の低減、注射に要する時間の短縮、および注射時の痛みの軽減の結果、動物処置のコンプライアンスが改善され得る。
【0392】
ニードルフリー注射器は、液状治療用タンパク質製剤の投与における使用のためのものである。結晶性タンパク質に対するニードルフリーデバイスの報告例がない考えられ得る理由は、タンパク質結晶が懸濁液(fsuspension)中で微粒子状を呈し、これによりニードルフリーデバイスによる注射が不可能となり得るため、または結晶性製剤に物理的変化が引き起こされ、前記製剤の治療作用が害され得るためである。
【0393】
可溶性で結晶性の治療用非経口製剤の投与の標準的なアプローチは、皮下注射針の使用である。注射時の痛みは、針のサイズおよび針が患者の注射部位に保持される時間量に関係する。針ゲージが大きく注射時間が増大すると、針によって引き起こされる注射部位での痛みが増大する。ジェット式注射器はオリフィスサイズが比較的小さく(表2)、注射時間が非常に短いため、注射時の痛みは、針注射システムと比べて有意に少ない。ニードルフリー(ジェット式)注射器の使用は、製剤に対してさらなる要件を課す。
【0394】
本明細書では、結晶性タンパク質懸濁製剤に対するニードルフリー注射器の影響を、針注射システムと比較した。30〜18ゲージのBD針を本試験での比較器として使用した。G30の針は標準壁であり、G25、21および18の針は壁厚が薄いものであった。針の内径と外径の比較を表2に示している。
【0395】
BioJectorニードルフリー(ジェット式)注射システムを用いて、結晶性タンパク質製剤でのジェット式注射器の使用の実現可能性を試験した。
【0396】
BioJector 2000:B−2000は、2つの構成要素:手持ち型の再度使用可能なジェット式注射器と、滅菌された単回使用の使い捨てプラスチック製シリンジからなる。BioJector 2000注射器には、動力供給源として使い捨て二酸化炭素カートリッジが使用されている。この二酸化炭素ガスが、一貫した確実な圧力を使い捨てシリンジのプランジャーに供給し、それにより適用薬物が組織内に推進される。
【0397】
該システムの第2の構成要素であるBioJector単回使用使い捨てシリンジは、プラスチック製でニードルフリーの可変用量シリンジからなる。シリンジ本体は透明であり、正確な充填のための目盛を有する。BioJectorシリンジには5つの異なる種類があり、これらは各々、異なる注射深度または体格が意図される。
【0398】
VetJetおよびVitajet:VetJetは、獣医学的市場における使用のための改良型Vitajetである。VetJetもまた2つの構成要素携帯型注射器ユニットおよび使い捨てシリンジで構成されている。VetJetはバネによって動力供給される。
【0399】

結晶性懸濁液を投与できる可能性を、ニードルフリージェット式注射器を用いて評価した。ニードルフリー注射器に使用され得る結晶性懸濁液に対する制限を特定した。しかしながら、適切に製剤化および選択された結晶性製剤は、ニードルフリー(ジェット式)注射システムを用いて投与され得る。
【0400】
結晶性タンパク質製剤でのニードルフリー注射器の使用の実現可能性を試験するため、ポリアルギニンでコーティングされたhGH結晶の懸濁液を、25mg/mLのrhGH、5mg/mLのポリArg、25mMのTris、100mMの酢酸Na、5%w/vのPEG6000 pH7.5を含有する緩衝溶液(ALTU−238)とし、0.2%のヒアルロン酸(HA)を含有する同様の製剤(HA−ALTU−238)もまた使用した。また、本発明者らは、可溶性の市販のhGH製剤に対するニードルフリーシステムおよび針系システムを用いた注射の影響を比較した(表33参照)。
【0401】
【表33】

ニードルフリーシステムならびに針系注射システムを用いて注射した場合での、種々の結晶の大きさおよび種々のタンパク質濃度(表34参照)を有するモデルタンパク質の結晶性懸濁液の特性もまた調べた。
【0402】
【表34】

この実験は、結晶性ALTU−238懸濁液におけるhGHの凝集および化学純度に対する種々の注射システムの影響を試験するために行なった。注射は3連で行なった。注射後、結晶を溶解させ、可溶性hGHを、凝集(SE−HPLCにより解析)ならびに化学分解(RP−HPLCおよび脱アミド化特異的IEX−HPLCにより解析)に関して解析した。
【0403】
【表35】

30G×1/2インチ針、BioJector 2000またはVetJet注射システムの使用により注射した対照試料および試験試料において、モノマーまたはhGH関連物質の含有量に有意差はなかった(表35)。これらのデータは、試験対象注射システムのいずれかを使用した結果、分子レベルでの剪断の影響は測定されなかったという結論を裏付ける。
【0404】

結晶性hGHの懸濁液に対する剪断応力の考えられ得る影響を試験するため、注射前および注射後の試料を、結晶性hGHの懸濁液の上清み中の遊離hGHおよびポリアルギニンの含有量について解析した。対照懸濁液ALTU−238は、ポリアルギニンでコーティングまたはポリアルギニンと複合体形成されたhGH結晶の製剤化ビヒクルでの既知懸濁液である。剪断応力により、前記製剤の放出特性が変化し得る。ALTU−238は、典型的な範囲の遊離hGHおよびポリアルギニンを含む。これらのパラメータの変化は、懸濁液中の結晶に対する前記注射システムの有害な影響の表示であり得、hGH放出プロフィールに影響を及ぼし得る。注射は3連で行なった。対照試料ならびに種々の注射システムを使用した後の試料の上清みを、hGHおよびポリアルギニンの含有量について解析した。3回の連続操作の遊離hGHおよびポリアルギニンの平均含有量を表36に示す。
【0405】
【表36】

30G×1/2インチ針、BioJector 2000またはVetJet注射システムの使用の結果、遊離hGHまたはポリアルギニンの含有量の増加は観察されなかった。これらのデータは、試験した注射システムが結晶性hGHの懸濁液に有害な影響を及ぼさないことを示す。
【0406】
複合体型hGH結晶製剤の溶解プロフィールに対する種々の注射システムの影響を試験するため、注射後のALTU−238対照試料およびALTU−238試料を3−pH溶解試験での溶解について解析した。注射は2連で行なった。2回の連続操作の平均を表37に示す。
【0407】
【表37】

対照試料と、30G×1/2インチ針、BioJector 2000またはVetJet注射システムで注射した試料間で、hGH溶解に有意差は見られなかった(表37)。これらのデータは、ALTU−238の投与のためのニードルフリー(ジェット式)注射器の使用の実現可能性を裏付ける。
【0408】
粒子の表面電荷に対する種々の注射システムの影響を示すための実験を行なった。ALTU−238試料におけるゼータ電位を、BioJector 2000注射器での注射後に試験した。1回目の注射後、試料を収集し、反復して注射した。
【0409】
【表38】

注射前の元の試料と比べて、BioJector 2000での1回目および反復注射後の粒子の表面電荷に有意な変化はなかった(表38)。BioJector 2000での注射は、ALTU−238製剤におけるゼータ電位を変化させない。
【0410】

この実験では、結晶性hGHの懸濁液(ALTU−238)の粒径に対するBioJector 2000ジェット式注射の影響を調べた。粒径は、Coulter LS 230粒径測定装置を用いて、注射前ならびに1回目および反復注射後に測定した。フラウンホーファー光学モデルを用いてデータを解析した。起こり得る結晶形態構造の変化の検出には、顕微鏡観察を使用した。
【0411】
【表39】

注射前の元の試料と比べて、BioJector 2000での1回目および反復注射後、粒径に有意な変化はなかった(表39;図9)。これらの数値は、顕微鏡観察と整合する。
【0412】
いずれかの注射システムでのALTU−238の注射後、粒径の縮小または結晶形態構造の変化は観察されなかった。同様に、反復注射後でも変化は観察されなかった。
【0413】

ポリアルギニンでコーティングされたhGH結晶のヒアルロン酸を含有する製剤化ビヒクルでの懸濁液HA−ALTU−238を使用し、この結晶性タンパク質懸濁製剤でのジェット式注射器の使用の実現可能性を試験した。この実験では、hGH凝集に対する種々の注射システムの影響を調べた。注射は2連で行なった。注射後、結晶を溶解させ、可溶性hGHを凝集についてSE−HPLCによって解析した。
【0414】
【表40】

対照HA−ALTU−238試料、および30G×1/2インチ針、BioJector 2000またはVetJet注射システムの使用により注射された試料において、モノマーhGH含有量に有意差はなかった(表40)。これらのデータは、試験対象注射システムのいずれかを使用した結果、分子レベルでの剪断の影響は測定されなかったという結論を裏付ける。
【0415】

この実験では、結晶性hGHの懸濁液(HA−ALTU−238)の粒径に対するBioJector 2000ジェット式注射の影響。粒径は、Coulter LS 230粒径測定装置を用いて、注射前ならびに1回目の注射後および反復注射後に測定した。フラウンホーファー光学モデルを用いてデータを解析した。起こり得る結晶形態構造の変化の検出には、顕微鏡観察を使用した。
【0416】
【表41−1】

【0417】
【表41−2】

注射前の試料との比較に使用した注射システムすべてついて、1回目および反復注射後に試料の粒径に有意な変化はなかった(表41)。図10も参照のこと。これらの数値は顕微鏡観察と整合する。ALTU−238製剤について、同様の観察結果が得られた。
【0418】
HA−ALTU−238試料を注射に使用した場合、粒径の縮小または結晶形態構造の変化は観察されなかった。反復注射後、元々結晶性凝集体を含まない試料で観察された粒径と比べて、さらなる粒径の縮小はなかった。これらのデータは、結晶性タンパク質懸濁製剤の投与のためのニードルフリー注射器の使用の実現可能性を示す。
【0419】

可溶性hGH製剤に対するジェット式注射器の影響を試験するため、Nutropin AQ試料を使用した。30G×1/2針による注射前または注射後のNutropin AQ試料では、微粒状物質の形成は観察されなかった。しかしながら、BioJector 2000およびVetJet注射器での注射後のNutropin AQ試料では微粒状物質の形成が観察された。この微粒状物質は、おそらくジェット式注射器の使用の結果形成されたものである。これらのデータは、Nutropin AQ製剤がニードルフリー注射システムには適切でないかもしれないことを示し、タンパク質製剤に対するニードルフリー注射器の良好な使用には適切な製剤開発が必要とされ得るという考えを確証するものである。
【0420】

ALTU−238は、ポリアルギニンでコーティングされたhGH結晶の懸濁液である。該結晶は、約10〜20μmの長さおよび約1〜2μmの厚みの針状形態を有する。該懸濁液自体は安定である。先の試験では、結晶の有意な沈降は少なくとも6ヶ月の保存期間の間、観察されなかった。しかしながら、結晶が高速で沈降する傾向がある一例として、市販のインスリン懸濁製剤がある。
【0421】
本明細書における試験の範囲を拡張するため、結晶が種々の大きさおよび/または形態構造および/または沈降特性を有する他の結晶性タンパク質懸濁液の特性に対するジェット式注射システムの影響を調べた。市販のインスリンHumulin Ultra製剤をBioJectorシリンジに負荷し、水平、まっすぐ垂直または逆さまの位置に3分間保持した後、注射した。これらの保持試料を、製剤をジェット式注射器のシリンジに負荷したほぼ直後に注射された試料と比較した。注射後、注射分中のインスリンの量とシリンジ内部に残留した量を測定し、シリンジ内に負荷された物質を100%とみなしてパーセンテージで表示した。
【0422】
【表42】

直後に注射した試料では、用量の90%が送達された。注射を遅延させ、注射器を水平位置に保持した場合、送達された用量は、シリンジへの負荷分の29%と低かった(表42)。これは、患者には深刻な危険を伴い得る。ジェット式注射器の使用は、このインスリン製剤の投与には推奨されない。インスリン懸濁製剤は、高い結晶沈降速度を有する結晶性タンパク質製剤の一例である。ジェット注射器は、高い沈降速度を有する結晶性タンパク質懸濁液での使用には不適切であり得る。
【0423】

同じ実験を、ALTU−238製剤を用いて行なった。製剤をBioJectorのシリンジ内に負荷し、水平、まっすぐ垂直または逆さまの位置に1時間保持した後、注射した。これらの保持試料を、製剤をジェット式注射器のシリンジに負荷したほぼ直後に注射された試料と比較した。注射後、注射分中のhGHの量とシリンジ内部に残留した量を測定し、シリンジ内に負荷された物質を100%とみなしてパーセンテージで表示した。
【0424】
【表43】

インスリンを試験した実施例とは異なり、直後に注射したALTU−238試料と、注射前に保持した試料間で、用量分布に差は観察されかった(表43)。ALTU−238で使用した保持時間は有意に長かった。
【0425】
ALTU−238製剤中の結晶性hGHの凝集および化学純度に対するジェット式注射システムの有害な影響は観察されなかった。さらに、ジェット式注射システムの使用の結果、粒径、形態構造、粒子の表面電荷および放出特性は変化しなかった。
【0426】
本試験の範囲を拡張するため、結晶が種々の大きさ、形態構造および沈降特性を有する他のモデル結晶性タンパク質懸濁液の特性に対するジェット式注射システムの影響を調べた。この実験では、小粒径六角形Burkholderia Cepacia(「BC」)Lipase結晶の懸濁液に対するジェット式注射システムの影響を調べた。注射前および注射後のBC−Lipase結晶について、懸濁液中の結晶の大きさまたは形態構造の視覚による顕微鏡的変化は観察されなかった。
【0427】
【表44】

試験対象注射システムのいずれかの使用の結果、BC−Lipaseの粒径(表44、図11Aおよび11B)または形態構造に影響はないようであった。ジェット式注射システムは、結晶が約20マイクロメートルのメジアン粒径を有する六角形である場合、結晶性タンパク質懸濁製剤の注射に使用され得る。
【0428】

次に、結晶が大粒径および六角形の形態構造を有する他のモデル結晶性タンパク質懸濁液の特性に対するジェット式注射システムの影響を調べた。この実験では、約30μmの中粒径を有する六角形BC−Lipase結晶の懸濁液に対するジェット式注射システムの影響を調べた。注射の際に結晶形態構造の変化は検出されず、体積基準分布に有意な変化は検出されなかった(表45)。
【0429】
【表45】

BioJector 2000またはVetJetニードルフリー(ジェット式)注射システムによるBC−Lipase結晶の注射の結果、数基準粒径分布に有意な減少が観察された(図12Aおよび12B)。これは、おそらく30G針ではなくジェット式システムの使用により多数の小粒子が生成したことによるものである。試料はすべて容易に注射されたが、ジェット式注射システムの使用により小粒径粒子の量が増加する結果、製剤の放出プロフィールが変化し得ることは考慮すべきである。
【0430】

結晶がさらに大きく六角形の形態構造を有する他のモデル結晶性タンパク質懸濁液の特性に対するジェット式注射システムの影響を調べた。この実験では、約80μmの中粒径を有する大きな結晶を有するひし形の3次元BC−Lipase結晶の懸濁液に対するジェット式注射システムの影響を調べた。
【0431】
【表46】

試料を注射モジュール内に吸引しようとすると、有意な濾過が観察された。試料は、プランジャー側から注射モジュール内に負荷した。試料をVetJetシステム内に負荷することは、デバイス設計の特異性のため可能ではなかった。
【0432】
粒径が注射デバイスのオリフィスサイズに近い場合、結晶性試料は、注射モジュール内に負荷され得ないか、または注射デバイスのオリフィスとの相互作用による破壊を受け得るかのいずれかである。30G針の場合、その濾過効果のため、結晶の大きさの有意な縮小が観察された。該結晶性懸濁液は内外を通過できる最も小さい針ゲージは25ゲージシリンジであった。この場合であっても、剪断応力により、小さい結晶性の残屑の形成がもたらされた(表46、図13Aおよび13B)。したがって、ジェット式注射器で使用可能であるためには、懸濁液中の結晶の最大寸法は、ジェット式注射器のオリフィスの直径の少なくとも約3倍小さい大きさを有するものであるのがよい。
【0433】
他の実験では、結晶性グルタリルアルカラーゼのモデル懸濁液でのジェット式注射器の使用の実現可能性を調べた。この細長い両錐型結晶は、最大寸法約150μmの大きさを有し、断面の大きさは約30μmである。
【0434】
【表47】

試料を注射モジュール内に吸引しようとすると、有意な濾過が観察された。試料は、18G針を使用した場合のみ、自由にシリンジ内吸引された。試料は、プランジャー側から注射モジュール内に負荷した(18G針の例を含まない)。試料をVetJetシステム内に負荷することは、デバイス設計の特異性のため可能(possible possible)ではなかった。結晶性グルタリルアルカラーゼ懸濁液では、BioJector 2000を使用すると、注射時間の増加が観察された。ジェット式注射器および微細ゲージ針の使用後、試料中に結晶性の残屑の蓄積が観察された。
【0435】
Coulter LS230での測定時、粒径において有意な変化が測定されなかったにもかかわらず(表47)、BioJector 2000ニードルフリー注射システムおよび30G針によるグルタリルアルカラーゼ結晶注射の結果、数基準粒径分布に有意な減少(図14Aおよび14B)が観察された。これは、注射にジェット式システムまたは30G針を使用した場合の結晶の破壊によって説明され得る。粒径が注射デバイスのオリフィスサイズに近い場合、結晶性試料は、注射モジュール内に負荷され得ないか、または注射デバイスのオリフィス壁との相互作用による破壊を受け得るかのいずれかである。針の直径を大きくするほど、観察される結晶の破壊は少なくなった。
【0436】

方法プロトコル
注射:結晶性製剤は、1S021シリンジを備えたBioJector 2000システム、および0.0062インチノズルシリンジRef# K7000、30G×1/2インチ針(BDパーツ番号 328466)が予め装着されたBD 0.5ccシリンジ、30G×1/2インチ(BDパーツ番号305106)、25G×5/8インチ(BDパーツ番号305122)、18G×1.5インチ(BDパーツ番号 305196)(1mL容シリンジに対するルアーロック(BDパーツ番号 309628)が取り付けられている)を備えたVetJetシステムを用いて注射される。0.25mLの試料を2連で試験する。BioJector 2000システムおよびVetJetシステムは、BioJectorの推奨に従って使用する。
【0437】

SE−HPLC:SE−HPLC法を用いて純度を測定するためには、Phenomenex BioSep SEC−S−2000カラムを使用する。10マイクロリットルの2mg/mL濃度の試料をカラム内に注入する。泳動バッファーは、3%IPAおよび60mMリン酸ナトリウム、pH7.0で構成する。流速を0.6mL/分に設定し、泳動時間を30分間とする。検出は214nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合(モノマー)は、ピーク面積に基づいて計算した。
【0438】

RP−HPLC:RP−HPLCは、純度の試験に使用する。hGHの純度をRP−HPLC法を用いて測定するためには、C5 Supelco Discovery Bio Wide Pore Column(5cm×4.6mm、3μm粒径、30nm細孔径)を使用する。カラムのサーモスタット温度を37℃に設定する。10マイクロリットルの試料を2mg/mL濃度で注入する。溶出は、1.0mL/分の流速で、移動相A(0.1%TFA含有水)および移動相B(0.8%TFA含有MeCN)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から2.5分で5%Bから50%Bに、次いで2.5分から15.5分で50%から70%Bに、次いで15.5分から17分で70%から90%に変化させ、この直後に再度5%Bを確立させる。その後3分保持した後、次の泳動を開始する。検出は214nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合をピーク面積に基づいて計算する。
【0439】

IEX−HPLC(強カチオン交換)クロマトグラフィー:SCX−hGHは、安定性の試験において脱アミド化特異的に使用する。IEX−HPLC法を用いてhGHの純度を測定するため、PolyLC(NEST Groupカタログ番号P054SE0503)カラムを使用する。カラムのサーモスタット温度を30℃に設定する。20マイクロリットルの試料を2mg/mL濃度で注入する。溶出は、1mL/分の流速で、移動相A(50mMの酢酸Na、pH4.6)および移動相B(50mMの酢酸Na、pH4.6 250mMのNaCl)によって提示される勾配系を用いて行なわれる。勾配系は、0分から5分で0%Bから20%Bに、次いで5分から25分で20%から70%Bに、次いで25分から25.1分で70%から100%に変化させ、100%Bを27分まで維持した後、27.1分から再度0%Bを確立させた後、5分間置く。検出は、214nmおよび280nmで行なう。得られたクロマトグラムを手作業で積分する。純度割合は、ピーク面積に基づいて計算する。
【0440】

粒径分布(PSD):粒径分布は、微小容量モジュールを備えたCoulter LS 230 Particle Size Analyzer(Coulter Corp.,Miami、Florida)を用いて、レーザー回折によって測定される。試料を試料緩衝液(結晶性タンパク質3用の製剤化ビヒクル)中に希釈し、8〜12%の不透明性の機能範囲を得る。データ解析は、フラウンホーファー光学モデルを用いて行なう。10%(dl10)、50%(メジアン)および90%(dl90)の累積分布限界を表す粒径(単位:μm)の割合を報告する。
【0441】

3−pH溶解試験:3−pH溶解試験は、ALTU−238試料における溶解プロフィールの変化を評価するために使用する。
【0442】

粒子表面の変化:粒子表面の変化は、Zetasizer Nano−Z(Malvern Instruments Ltd.UK)を用いて測定される。泳動バッファーは、20mMのTris、pH7.5とする。ゼータ電位変換標準(Zeta Potential Transfer Standard)を用いて、機器(Malvernカタログ番号DTS 1050)を較正する。各試料に対し、12μlの結晶性アリコート(濃度10〜30mg/ml)を588μlの泳動バッファーに添加し、室温で3回の測定値を得る。
【0443】

顕微鏡像:結晶性試験品の外観を顕微鏡によって評価し、注射による試験品の関連する変化を検出する。
【0444】

実施例5
ALTU−238は、長期作用性のポリアルギニン(ポリArg)コート結晶性ヒト成長ホルモン(ソマトロピン)である。さらなる開発として、凍結乾燥形態および再構成凍結乾燥製剤を開発した。再構成凍結乾燥製剤では、再懸濁後、2〜8℃で24ヶ月以上の化学安定性が得られることが予測される。
【0445】
hGHまたはhGH誘導体の例示的な凍結乾燥製剤は、
1.約20〜約50mg/mLのhGH結晶の懸濁液
2.緩衝液として、Trisまたはリン酸塩とTrisもしくはヒスチジンいずれかとの併用緩衝液
3.7〜9のpH範囲
4.塩:50mM〜100mMの範囲の塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム
5.懸濁化剤およびケーキング剤として、2.5%〜10%の範囲のポリエチレングリコール6000または8000
6.シリコーン処理されたバイアルまたはコーティングされたバイアル、例えば、Schott I型+ガラス製バイアル、または表面コートされた容器の閉鎖部
7.溶解サイクルパラメータとして、−50℃〜−60℃の凍結貯蔵温度、−30℃〜10℃の一次乾燥貯蔵温度、および20℃〜40℃の二次乾燥
を含む。
【0446】

これらの成分および量は、凍結乾燥前の製剤に適したものであり、また、凍結乾燥hGHを再構成させた後の製剤にも適したものである。
【0447】

表48に列挙した試験方法の1つ以上を用いて、再構成凍結乾燥形態の製剤の安定性が評価される。該試験方法を実施するための詳細は、当該技術分野で知られており、本明細書に記載している。
【0448】
【表48】

最初の凍結乾燥試験では、上清み中の溶存hGH、および凍結乾燥時の安定性に対する賦形剤の影響を評価した。製剤基剤はpH7.5のTris緩衝液とした。種々の濃度のPEG;糖質(スクロース、マンニトール、ソルビトールおよびラクトース);ならびに塩を有する製剤および塩を有しない製剤を試験した。上清み中の遊離hGHは、結晶の完全性の表示である。したがって、制御放出プロフィールが凍結乾燥後に変化しないことを確認するため、上清み中の溶存hGHの量をモニターした。凍結乾燥前の(prelyo)試料の上清み中の溶存hGH濃度の結果を図15に示す。これは、PEG濃度が結晶の可溶性に対して影響を及ぼすことを示し、PEGのパーセンテージが少ないほど、上清み中により多くの結晶が溶解する。この図に示した実験では、製剤基剤はPH7.5のTris緩衝液とした。また、PEGを含まない試料は、上清み中、最大量の溶存hGHを有する。
【0449】
水中においてALTU−238は、密でない粉末の外観を有し、凍結乾燥後、ケークの出現はなかった。それ以外、すべての試料は、バイアルの縁ではわずかに収縮していたが妥当なケーキ形成を示した。再構成させると、いずれの賦形剤も含なまいポリArg複合体型結晶は、懸濁化剤がないためバイアルの底部に沈降した。糖質(マンニトール、スクロース、ソルビトールまたはラクトースなど)を含有する製剤は、再構成させると直ちに懸濁されたが15分間以内に沈降し、これは、凍結乾燥後の沈降速度の差を示す。出発材料またはprelyo懸濁液は、ほとんどが、小さい棒形状の結晶の2〜20μmの小クラスターであった。しかしながら、凍結乾燥後の一部の製剤では、結晶の大きさが有意に大きくなっているようである。凍結乾燥の前および後で調べた製剤は、Tris、pH7.5中に25mg/mLのAltu−238;Tris、5%ラクトース、pH7.5中に25mg/mLの複合体型結晶;またはTris、酢酸ナトリウムおよび5%のPEG6000、pH7.5中に25mg/mLの複合体型結晶を含むものであった。結果は、5%のPEGを含有する製剤では、凍結乾燥後に結晶形態構造が維持されたことを示す。
【0450】
prelyo懸濁液の目標hGH/pR比は5〜7.5であった。しかしながら、prelyo懸濁液のhGH/ポリArg比は、1%のPEGまたは糖質を含有する製剤では、ずっと大きかった(約20)。これは、これらの製剤におけるポリArgコーティングの減損を示し、おそらく結晶の溶解に起因している。このことは、prelyo懸濁液について上清み中のhGH濃度も高いことによって確認された。また、溶解後の結晶は、1%のPEGまたは糖質を含む試料では5%のPEGを含むものよりも塊状物であり、この場合も、これはポリArgの減損を示し、結晶同士の付着、したがって形態構造の変化をもたらす。したがって、PEGの濃度は、溶解プロセス中のALTU−238の安定化に重要である。
【0451】
また、再構成溶解試料のpHは、Trisを含有する製剤では、溶解プロセス後、pH7.5から8.2へと高い方にシフトする。その原因を特定するため、これらの試験製剤の凍結/解凍試験を、FTS凍結乾燥機において、溶解サイクルとして同じ凍結速度l℃/分を用いて行なった。次いで、すべての試料を室温で解凍した。結果は、pHシフトがpH単位あたり約0.05〜0.09のみであることを示した。したがって、pH変化を誘導したのは乾燥プロセスであった。
【0452】

製剤を改善するため、以下の試験は、緩衝液種の選択および緩衝液濃度を中心として行なった。Tris含有prelyo懸濁液では、TrisがこのpHで最大緩衝能を有するため;および/または再構成させると、緩衝液成分の1つとしてリン酸塩を添加によりリン酸塩がpH7.5で緩衝し得るため、pHを約8まで上げた。ヒスチジンを第2の緩衝液として選択する考えは、凍結乾燥プロセス中、リン酸塩の存在のためpHが低い方にシフトし過ぎ、結晶溶解がもたらされるのを抑制するためであった。0.2mLおよび1.0mLの薬物製剤を送達するのに、2つの充填容積:0.5mLおよび1.2mLを評価した。本発明者らの目的が達成され得る3つの緩衝液系を、Tris、pH8.0;ヒスチジン(リン酸塩を有する)pH7.5において製剤化した。興味深い観察結果の1つは、Tris、pH8.6において製剤化した試料で、pHが8.0に低下したことであり、これにより、複合体型hGH結晶の最適緩衝液範囲は8あたりであるばずという説が確認された。これらのすべての結果に基づき、pH8のTrisを用いた緩衝液;ならびにヒスチジンとリン酸塩またはTris/リン酸塩を含有する2つの緩衝液組合せを、ポリArg複合体型hGH結晶に選択する。
【0453】
選択した製剤を安定性について試験し、種々の保存期間後にpH測定値を得た。初期のpHシフト以外、保存期間中にpHの変化はなかった。
【0454】
インビトロ分散溶解速度を試験したが、保存の際、有意な変化は観察されない;溶解速度は、臨床試験ロットと同等であった。
【0455】
また、2.5%、5%、および10%ならびに2.5%〜10%の範囲のポリエチレングリコール濃度も確立された。試料はすべて、1分以内に再懸濁され得た。2〜8℃または40℃で3ヶ月後、これらの製剤において酸化、脱アミド化、凝集、または溶存hGHに差は観察されなかった。
【0456】
また、20〜50mg/mLの範囲のhGH濃度のポリArg複合体型hGH結晶では、再構成の際、安定性に差は観察されなかった。この結果に基づくと、上清み中の遊離hGHおよび分散溶解プロフィールは、すべての試験濃度で同等である。また、化学安定性プロフィールに差はない。
【0457】
溶解サイクルは、Tris、酢酸ナトリウムおよびPEG6000(pH7.5)製剤を用いて最適化された。種々の溶解パラメータを試験した。PEG含有試料の凍結DSCサーモグラムは、−20℃あたりで起こった熱事象を示し、これはPEGに起因するものである。PEGによる問題を回避するため、製剤温度に対して<−20℃を、溶解サイクル開発での一次乾燥温度の選択の目標とした。表49に示されるように、−60℃または−50℃の凍結温度および−30〜10℃の一次乾燥貯蔵温度範囲では、最終溶解製剤はすべて、バイアルの縁ではわずかに収縮していたが平滑な表面を有する妥当なケーキ形成を示した。種々の溶解サイクルでの溶解ケークのケーク外観に差は観察されない。また、測定された製剤温度はすべて、所望のとおり−20℃より低かった。
【0458】
【表49】

粒径分布を解析した。粒径分布を図16に示す。試験した全サイクルで、粒径分布に差はなかった。
【0459】
要するに、本明細書の実施形態で規定する溶解サイクルは、
a.凍結速度 1℃/分
b.−50℃〜−60℃で凍結
c.一次乾燥貯蔵温度範囲 −30℃〜10℃
d.二次乾燥貯蔵温度 20℃〜40℃
である。
【0460】

リード製剤の一例の安定性の結果を以下の表にまとめる。データはすべて、これらの2つのサイクルで作製した試料と比較した場合、同等である。
【0461】
種々の容器の閉鎖部もまた、溶解製剤で比較した。ポリArgコーティング結晶は、シリコーン油および表面コートがないと、ガラス製バイアルに急速に容易に付着する。この結晶は、シリコーン処理されていないバイアルの容易に付着し、この付着により、反復用量製剤は劣化する。したがって、ポリArg複合体型hGH結晶のための容器の閉鎖部は、シリコーン処理されたもの、または表面コートされたを有するバイアル(I型+コーティングされたバイアルなど)である必要がある。
【0462】
保存料を含有する希釈剤を用いて再構成させた場合、再構成製剤は反復用量製剤として使用され得る。反復用量製剤の利点は、患者にとって使い易さが助長される、バイアル内容物が完全に使用可能となることにより無駄が低減され、それにより有意な節約がもたらされることである。
【0463】
一般に使用されている4種類の保存料:フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、およびベンジルアルコールを、複合体型hGH結晶での好適性について試験した。Tris、酢酸ナトリウム、およびPEGを含有する溶解製剤を、これらの保存料のうちの1種類を含む水で再構成させ、再構成試料の安定性を解析した。バイアルはすべて、10秒以内に再構成/再懸濁され得、ベンジルアルコールを含む試料で塊状物が多かったこと以外、結晶形態構造の変化は見られなかった。
【0464】
保存料を含有するこれらの再構成懸濁液の安定性を解析した。結果は、再構成懸濁液はすべて、2〜8℃で少なくとも1ヶ月間安定であることを示す。したがって、m−クレゾール、フェノールまたはクロロブタノールは、溶解製剤での保存料として使用され得る。
【0465】
本発明のいくつかの実施形態を説明した。とはいうものの、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の変形が行なわれ得ることは理解される。したがって、他の実施形態も添付の特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質複合体型組換えヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体(hGH)結晶;
塩緩衝液;
60〜200mMのナトリウムイオン濃度範囲を有するナトリウム塩;および
懸濁化剤
の1種類以上を含むhGH調製物。
【請求項2】
前記懸濁化剤がポリエチレングリコールである、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項3】
前記懸濁化剤が2.5〜20%w/vのポリエチレングリコールである、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項4】
前記hGHまたはhGH誘導体が所定の期間または所定の条件で安定である、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項5】
前記hGHまたはhGH誘導体が所定の期間安定であり、前記期間が少なくとも6ヶ月である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記hGHまたはhGH誘導体が所定の期間安定であり、前記期間が少なくとも12ヶ月である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
pHがpH6〜7である、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項8】
リン酸緩衝液を含み、pHが6〜7のpHを有する、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項9】
ポリアルギニン複合体型hGH結晶の濃度が5mg/mL〜50mg/mLである、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項10】
該ポリアルギニン複合体型hGH結晶が約2〜約100μmの粒径分布を有する、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項11】
ポリアルギニンに対するhGHの比が約3〜約15である、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項12】
シリンダー型のシリコーン処理された容器内の上部空間がないか、または10mmまでの上部空間を有する容器内に配置された、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項13】
前記容器が、テフロン(登録商標)コートされた栓またはゴム配合物4432のいずれかである閉鎖部を含む、請求項12に記載のhGH調製物。
【請求項14】
反復用量を収容する容器内に配置された、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項15】
単回用量を収容する容器内に配置された、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項16】
0.2mL〜1.0mLの充填容積を有する容器内に配置された、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項17】
送達デバイス内に配置された、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項18】
29ゲージ以下の針を有するシリンジ内に配置された、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項19】
ニードルフリー注射器内に配置された、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項20】
前記hGHが5〜100mg/mlで存在する、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項21】
さらに抗菌剤を含む、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項22】
さらにヒアルロン酸を含む、請求項1に記載の調製物。
【請求項23】
前記調製物が懸濁剤以外のポリマーを含まない、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項24】
前記調製物がヒスチジン緩衝液を含まない、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項25】
さらに保存料を含む、請求項1に記載のhGH調製物。
【請求項26】
前記保存料がフェノールである、請求項25に記載のhGH調製物。
【請求項27】
5〜50mg/mlのポリアルギニン複合体型組換えヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体(hGH)結晶;
6.1〜6.8のpHのリン酸緩衝液;
60〜200mMの塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム;
2.5〜20%のポリエチレングリコール
を含み;
10mm以下の上部空間を有するシリコーン処理されたプレフィルドシリンジ内に;
0.2〜1.0mlの容量で、
配置されたhGH調製物。
【請求項28】
前記シリンジが29ゲージ以下の針を有する、請求項27に記載のhGH調製物。
【請求項29】
ニードルフリー注射器内に配置された、請求項27に記載のhGH調製物。
【請求項30】
高分子電解質でコートされたhGH結晶の懸濁液であって、該結晶性hGHの濃度が5〜100mg/mLである懸濁液;
前記複合体の結晶化度を、好ましくはpH範囲5.0〜8.0に維持する生物学的に適合性の緩衝液;
前記複合体の結晶化度を維持または増大させる結晶化度促進剤;および
前記組成物の総重量オスモル濃度が250〜450mOsm/kgの範囲内となるようにする張度調整剤
の1種類以上を含むhGH調製物。
【請求項31】
さらに保存料を含む、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項32】
前記保存料がフェノールである、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項33】
前記フェノールが0.2〜0.3%w/vの濃度である、請求項32に記載のhGH調製物。
【請求項34】
さらに化学的安定剤を含む、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項35】
前記生物学的に適合性の緩衝液が1〜150mMの範囲の緩衝塩濃度を有する、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項36】
前記緩衝塩が、酢酸塩、トリエタノールアミン、イミダゾール、リン酸塩、クエン酸塩およびTris−HClからなる群より選択される、請求項35に記載のhGH調製物。
【請求項37】
前記生物学的に適合性の緩衝液がリン酸ナトリウムである、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項38】
前記生物学的に適合性の緩衝液がリン酸ナトリウム緩衝液とクエン酸ナトリウム緩衝液を含む、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項39】
前記複合体の結晶化度を維持または増大させる前記結晶化度促進剤が酢酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールを含む、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項40】
前記複合体の結晶化度を維持または増大させる前記結晶化度促進剤が1〜25w/v%のPEGを含む、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項41】
前記複合体の結晶化度を維持または増大させる結晶化度促進剤がフェノールを含む、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項42】
前記張度調整剤が、中性塩、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、Tris−HCL、その作用緩衝pH範囲外の緩衝塩、その緩衝pH範囲外のpH範囲内のアミノ酸の塩、グリシンナトリウム塩、ポリオール、およびポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項43】
反復用量を収容する容器内に配置された、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項44】
単回用量を収容する容器内に配置された、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項45】
前記容器が、テフロン(登録商標)コートされた栓またはゴム配合物4432のいずれかである閉鎖部を含む、請求項44に記載のhGH調製物。
【請求項46】
0.2mL〜1.0mLの充填容積を有する容器内に配置された、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項47】
送達デバイス内に配置された、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項48】
ニードルフリー注射器内に配置された、請求項30に記載のhGH調製物。
【請求項49】
さらにヒアルロン酸を含む、請求項30に記載の調製物。
【請求項50】
請求項1に記載の調製物の成分を合わせることを含む、hGH調製物の作製方法。
【請求項51】
請求項30に記載の調製物の成分を合わせることを含む、hGH調製物の作製方法。
【請求項52】
請求項1または請求項30の調製物の成分を容器内に0.2〜1.0mlの充填容積まで配置することを含み、前記容器がシリンジである、hGH調製物のパッケージング方法。
【請求項53】
請求項1または請求項30の調製物の成分を容器内に0.2〜1.0mlの反復用量を収容する充填容積まで配置することを含む、hGH調製物のパッケージング方法。
【請求項54】
請求項1または請求項30のhGH調製物を提供すること、および該調製物を患者に投与することを含む、hGH調製物を患者に送達する方法。
【請求項55】
関係者に、 請求項1または請求項30の調製物の成分を含むhGH調製物が所定の期間または所定の条件で安定であることを指示することを含む、hGH調製物またはhGH調製物に関する情報を関係者に提供する方法。
【請求項56】
該調製物が所定の期間安定であり、前記期間が少なくとも6ヶ月である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
該調製物が所定の期間安定であり、前記期間が少なくとも12ヶ月である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
該調製物が所定の条件で安定であり、前記条件が温度である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
該調製物が所定の条件で安定であり、前記条件が室温である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
hGH調製物が所定の期間または所定の条件で安定であることのエビデンスを提供すること、または安定であると明示することを含む、標準を満たす方法。
【請求項61】
該調製物が所定の期間安定であり、前記期間が少なくとも6ヶ月である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
該調製物が所定の期間安定であり、前記期間が少なくとも12ヶ月である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
該調製物が所定の条件で安定であり、前記条件が温度である、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
該調製物が所定の条件で安定であり、前記条件が室温である、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
内部に結晶化タンパク質の調製物が配置されたニードルフリー注射器。
【請求項66】
前記調製物が結晶の溶液である、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項67】
前記結晶は架橋されたものである、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項68】
前記結晶が高分子電解質との複合体型である、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項69】
前記調製物がhGHまたはhGH誘導体のものである、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項70】
前記調製物が、請求項1または請求項30のhGHまたはhGH誘導体調製物である、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項71】
前記調製物がワクチンではない、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項72】
前記調製物中の結晶が、注射器の送達オリフィスの直径の0.5以下の平均最大寸法を有する、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項73】
前記調製物が、さらにヒアルロン酸を含む、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項74】
前記調製物中のタンパク質の濃度が約100mg/ml未満である、請求項65に記載のニードルフリー注射器。
【請求項75】
結晶化タンパク質調製物をニードルフリー注射器内に配置して供給すること、および前記薬物を前記被検体に注射することを含む、結晶化タンパク質調製物を被検体に送達する方法。
【請求項76】
前記調製物が結晶の溶液である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記結晶は架橋されたものである、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記結晶が高分子電解質との複合体型である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記調製物がhGHまたはhGH誘導体のものである、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記調製物が、請求項1または請求項30のhGHまたはhGH誘導体調製物である、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記調製物がワクチンではない、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
前記調製物中の結晶が、注射器の送達オリフィスの直径の0.5以下の平均最大寸法を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
前記調製物が、さらにヒアルロン酸を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
前記調製物中のタンパク質の濃度が約100mg/ml未満である、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
再懸濁させると、
hGHまたはhGH誘導体結晶の懸濁液、
緩衝液、
塩および
ポリエチレングリコール
を含む懸濁液をもたらすhGHまたはhGH誘導体の凍結乾燥調製物。
【請求項86】
該結晶の懸濁液が約20〜約50mg/mlの量で存在する、請求項85に記載の調製物。
【請求項87】
緩衝液がTrisを含む、請求項85に記載の調製物。
【請求項88】
緩衝液がリン酸塩を含む、請求項87に記載の調製物。
【請求項89】
緩衝液が、さらにTrisまたはヒスチジンを含む、請求項88に記載の調製物。
【請求項90】
該懸濁液のpHが約7〜約9である、請求項85に記載の調製物。
【請求項91】
前記塩が塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウムを含む、請求項85に記載の調製物。
【請求項92】
前記塩が約50mM〜約100mMの量で存在する、請求項91に記載の調製物。
【請求項93】
前記ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール3350、6000または8000を含む、請求項85に記載の調製物。
【請求項94】
前記ポリエチレングリコールが約2.5%〜約10%の量で存在する、請求項93に記載の調製物。
【請求項95】
該懸濁液が、
約20〜約50mg/mLのhGH結晶の懸濁液;
Trisまたはリン酸塩とTrisもしくはヒスチジンいずれかとの併用緩衝液;
約7〜約9のpH;
約50mM〜約100mMの量の塩化ナトリウムまたは酢酸ナトリウム;および
約2.5%〜約10%の量のポリエチレングリコール3350、6000または8000
を含む、請求項85に記載の調製物。
【請求項96】
さらに保存料を含む、請求項85に記載の調製物。
【請求項97】
前記保存料がフェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、またはベンジルアルコールである、請求項96に記載の調製物。
【請求項98】
該懸濁液が、シリコーン処理されたバイアルまたは表面コートされた容器閉鎖部内に配置される、請求項85に記載の調製物。
【請求項99】
約−30℃〜約10℃の一次乾燥サイクル
を含む、凍結乾燥された結晶性hGHの作製方法。
【請求項100】
さらに、約20℃〜約40℃の二次乾燥サイクルを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
請求項99に記載の方法によってもたらされる生産物。
【請求項102】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項103】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項104】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、0.2%のHA、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項105】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのTris、0.2%のHA、100mMの酢酸Na、5%のPEG6000、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項106】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG6000、pH7.0
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項107】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG6000、pH7.0
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項108】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG6000、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項109】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG6000、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項110】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG8000、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項111】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG8000、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項112】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG3350、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項113】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、5%のPEG3350、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項114】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項115】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項116】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、100mMのNaCl、5%のPEG8000、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項117】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、100mMのNaCl、5%のPEG8000、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項118】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、100mMのNaCl、5%のPEG3350、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項119】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、100mMのNaCl、5%のPEG3350、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項120】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのヒスチジン、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.0
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項121】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのヒスチジン、100mMのNaCl、5%のPEG6000、pH7.0
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項122】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、1%のスクロース、5%のPEG6000、pH7.5
を含むhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項123】
25mg/mLのポリArg複合体型hGH結晶、25mMのtris、1%のスクロース、5%のPEG6000、pH7.5
からなるhGHの凍結乾燥調製物。
【請求項124】
再懸濁させた請求項85に記載の凍結乾燥物。
【請求項125】
請求項85または124に記載のhGH調製物を提供すること、および
患者に投与すること
を含む、hGH調製物を患者に送達する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−513309(P2010−513309A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541592(P2009−541592)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/087417
【国際公開番号】WO2008/076819
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(500498730)アルタス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】