説明

ヒンジ構造及び電子装置

【課題】本発明はクリック感を得られるヒンジ構造及びこれを用いた電子装置に関し、耐久性の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】回転体12に設けられた第1の軸受部21、装置本体11に設けられ内周部に複数の凹凸部28が形成された第2の軸受部22、及び軸部材23によりヒンジ構造を構成する。そして、軸部材23を第1及び第2の軸受部21,22内に装着されるよう構成すると共に、バネ性を有するアーム部41と、アーム部41に設けられ凹凸部28と係合する係合突起42と、第1の軸受部21に固定される抜け防止爪43及び固定用溝44とを有した構成とする。そして、装置本体11と回転体12が相対的に回動する際、アーム部41が弾性変形することにより係合突起42が凹凸部28を順次乗り越えなから第2の軸受部22内を移動するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒンジ構造及び電子装置に係り、特にクリック感を得られるヒンジ構造及びこれを用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子装置の小型化及び携帯性の向上が望まれており、このため電子装置を2つのパーツに分離し、これをヒンジで連結して折り畳み可能としたものが多種提供されている。具体的には、携帯電話に代表される携帯端末装置では、テンキー等が配設された本体部と、液晶表示画面が設けられた蓋体とを分離し、これをヒンジで連結した構成とされている。また、無線LANを用いる際にパーソナルコンピュータのUSBポートに接続されるUSB無線LANアンテナでは、USBコネクタ部分とアンテナ部分とを分離し、これをヒンジで連結した構成とされている。
【0003】
また、このように電子装置を第1の部材と第2の部材に分離し、これをヒンジ用いて回動可能に連結した装置では、第1の部材と第2の部材の開閉を使用者が感覚的に認知するため、また装置の高級感を延出するために、回動に伴いクリック感を得られるよう構成したものがある。
【0004】
従来では、このクリック感を出すため、ヒンジを構成する軸の外周に複数の歯を有した歯車を形成すると共に、この軸を軸承する軸受部の内部に突起を形成し、この突起と歯車とが係合するように構成したものが知られている(特許文献1、第0012段落、図9参照)。このヒンジ構造では、軸が軸受部内で回動すると、突起が谷の部分から歯を乗り越えて隣の谷に向け動く。そして、突起が隣の谷に嵌合した際に、使用者はクリック感を感じることができる。
【特許文献1】特開2007−334632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のクリック感を実現できるヒンジ構造では、クリック感を実現するために突起が歯車の歯を乗り越える必要がある。しかしながら、電子機器に用いられる従来のヒンジ構造では軸及び軸受部は樹脂により形成することが一般的であり、突起が歯を乗り越える際には突起及び歯が樹脂の有する弾性により変形し、これにより突起が歯を乗り越える構成とされていた。
【0006】
このため従来のヒンジ構造では、突起が歯を乗り越える際に、突起及び歯に強い圧力が印加され、これにより突起及び歯に摩耗が発生し易いという問題点があった。また、突起及び歯に摩耗が発生すると、クリック感を得ることができなくなり、また軸と軸受との間に間隙が発生し、ヒンジ構造の耐久性が著しく低下してしまう。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、摩耗の発生を抑制することにより耐久性の向上を図ったヒンジ構造及び電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、本発明の第1の観点からは、
第1の部材(12)と第2の部材(11)を回動可能に連結するヒンジ構造であって、
前記第1の部材(12)に設けられた第1の軸受部(21)と、
前記第2の部材(11)に設けられ、内周部に複数の凹凸(28)が形成された第2の軸受部(22)と、
バネ性を有する変形部(41)と、該変形部(41)に設けられ前記第2の軸受部(22)の凹凸(28)と係合する係合部(42)と、前記第1の軸受部(21)に固定される固定部(43,44)とを有し、前記第1及び第2の軸受部(21,22)内に装着される軸部材(23)とを有し、
前記第1の部材(12)と前記第2の部材(11)とが相対的に回動する際、前記変形部(41)が弾性変形することにより前記係合部(42)が前記複数の凹凸(28)を順次乗り越えなから前記第2の軸受部(22)内を移動するよう構成したヒンジ構造により解決することができる。
【0009】
上記発明によれば、第1の部材(12)と第2の部材(11)とが相対的に回動する際、係合部(42)が複数の凹凸(28)を順次乗り越えなから第2の軸受部(22)内を移動するため、この回動に伴いクリック感を得ることができる。また、係合部(42)は変形部(41)が弾性変形することにより複数の凹凸(28)を順次乗り越えるため、係合部(42)と凹凸(28)との間で摩耗が発生することを抑制することができる。
【0010】
また、上記発明において、前記弾性変形部を片持ち梁状のアーム(41)とし、該アーム(41)の先端部分に前記係合部(42)を形成することが望ましい。
【0011】
この構成とすることにより、簡単な構成でクリック感を得ることができると共にアーム(41)にバネ性を持たせることができる。
【0012】
また、上記発明において、前記凹凸(28)の前記第1の部材(12)と前記第2の部材(11)との回動を規制する回動規制角度に対応する位置に、前記係合部(42)との係合力が他の部位に比べ強くなる強係合部(29a)を設けることが望ましい。
【0013】
この構成とすることにより、第1の部材(12)と第2の部材(11)が回動規制角度にあるとき、係合部(42)は凹凸(28)の強係合部(29a)と係合し、その回動が規制される。よって第1の部材(12)と第2の部材(11)を回動規制角度に保つことができる。
【0014】
また、上記発明において、前記固定部は、前記第1の軸受部(21)に形成された突起(27)と、前記軸部材(23)に設けられ前記突起(27)と嵌合する溝部(44)と、前記軸部材(23)が前記第1の軸受部(21)から抜け出ることを防止する爪部(43)とにより構成することが望ましい。
【0015】
この構成とすることにより、接着剤等の他の材料を用いることなく、軸部材(23)を第1の軸受部(21)に固定することができる。
【0016】
また、上記発明に係るヒンジ構造は、電子装置(10)の装置本体(11)と回動体(12)とを回動可能に接続するのに適用することができる。
【0017】
なお、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、特許請求の範囲の記載が限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の部材と第2の部材とが相対的に回動する際にクリック感を得ることができると共に、係合部と凹凸との間で摩耗が発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0020】
図1乃至図4は、本発明の一実施例であるヒンジ構造を適用した電子装置10を示している。図1及び図2は電子装置10の斜視図であり、また図3及び図4は電子装置10の分解斜視図である。本実施例では、電子装置10としてUSB無線LANアンテナを例に挙げて説明する。
【0021】
電子装置10は、大略すると装置本体11(請求項に記載の第2の部材に相当する),回転体12(請求項に記載の第1の部材に相当する),及びヒンジ装置13等を有している。なお、各図における装置本体11及び回転体12の図示は、カバーを取り外して内部構造が見える図示としている。
【0022】
装置本体11は樹脂成型品であり、内部空間16が形成されている。この内部空間16には、USB無線LANアンテナを構成する図示しないアンテナ装置や回路基板等が装着される。回転体12も樹脂成型品であり、USBコネクタ17及び基板18が取り付けられている。ヒンジ装置13は装置本体11と回転体12を連結するためのものであり、本実施例では第1のヒンジ構造部20及び第2のヒンジ構造部30の二種類のヒンジ構造が適用されている。本発明に係るヒンジ構造は、第1のヒンジ構造部20に適用されている。
【0023】
先ず、説明の便宜上、第2のヒンジ構造部30について説明する。第2のヒンジ構造部30は、装置本体11に一体的に形成された軸受部31と、回転体12に一体的に形成された円盤状軸部34とを有している。
【0024】
軸受部31は、円盤状軸部34を内包しうる扁平な円柱形状を有し、内部に装着溝32が形成されている。また軸受部31は、側部に円盤状軸部34の装着溝32内への挿入を許容する切欠き部35が形成されている。装着溝32は円盤状軸部34の形状に対応した円盤状の溝であり、円盤状軸部34は装着溝32内で回動可能な構成となっている。
【0025】
円盤状軸部34は、回転体12から延出形成された軸部材23に形成された支柱部36(図4参照)に固定されている。この円盤状軸部34は、軸受部31に形成された切欠き部35から装着溝32内に挿入される。この挿入された状態において、円盤状軸部34は装着溝32内に回動可能な状態で保持され、よって装置本体11と回転体12は第2のヒンジ構造部30により軸承された状態となる。
【0026】
次に、本発明に係るヒンジ構造を適用した第1のヒンジ構造部20について説明する。第1のヒンジ構造部20は、第1の軸受部21、第2の軸受部22、及び軸部材23を有している。
【0027】
第1の軸受部21は、回転体12に一体的に形成されている。この第1の軸受部21は大径孔26aが形成されると共に、図中矢印X1方向側にフランジ部25が形成され、このフランジ部25に小径孔26bが形成された構成とされている。この大径孔26a及び小径孔26bと、前記した円盤状軸部34及び支柱部36は、同軸的となるよう構成されている。
【0028】
また、第1の軸受部21に形成された大径孔26aの内壁には、複数の固定用突起27が一体的に形成されている。(図3参照)。この固定用突起27は、後述する軸部材23の固定用溝44と係合し、軸部材23を第1の軸受部21に固定する機能を奏する。本実施例では、4個の固定用突起27が形成されている。
【0029】
第2の軸受部22は、装置本体11に一体的に形成されている。この装置本体11には孔24が形成されており、この孔24の内壁には凹凸部28が形成されている。この凹凸部28は、孔24の内壁全体に形成されているのではなく、孔24の内壁の図中矢印X2方向側の略半分の部分に形成され、矢印X1側の残り半分は平滑な面(軸承面24aという)とされている。更に、凹凸部28が形成された孔24と軸受部31は、同軸的となるよう構成されている。
【0030】
図7(A)は第2の軸受部22を拡大して示しており、図7(B)は図7(A)に矢印Aで示す一点鎖線の円で囲まれた部分を更に拡大して示す図である。孔24の内周には前記のように凹凸部28が形成さるが、この凹凸部28は高凸部28a,低凸部28b,強係合凹部29a,及び凹部29bにより構成されている。
【0031】
ここで、高凸部28a及び低凸部28bの高さの基準として、凹凸部28を構成する凹部29a,29bの谷部を接続した線分を設定する(図7(B)に一点鎖線の示す線分L。以下、基準線Lという)。高凸部28aの基準線Lに対する高さはHaとなっており、低凸部28bの基準線Lに対する高さHbに対して高く設定されている(Ha>Hb)。また、高凸部28aは隣接する一対で一組とされており、この一対の高凸部28aの間は強係合凹部29aとされている。これに対し、隣接する一対の低凸部28bの間は凹部29bとされている。
【0032】
後述するように、凹凸部28には軸部材23に形成された係合突起42が係合するが、ここでこの係合突起42が強係合凹部29aに係合したときと、凹部29bに係合したときの係合力について説明する。強係合凹部29aは一対の高凸部28aの間に形成されている。また、高凸部28aの高さは、低凸部28bに比べて高く設定されている(Ha>Hb)。即ち、強係合凹部29aの両側部には、背の高い高凸部28aが立設した構成となっている。
【0033】
よって、この強係合凹部29aに係合突起42が係合した場合の係合力は、強係合凹部29a以外の凹部29bに係合突起42が係合した場合の係合力に比べて強くなる。従って、係合突起42が凹部29bと係合している場合は、軸部材23の回動により容易に係合突起42は凹部29bから離脱するが、係合突起42が強係合凹部29aと係合している場合は、軸部材23の回動しても係合突起42は強係合凹部29aから容易に離脱しない。これにより、係合突起42を強係合凹部29aに仮止めすることができる。
【0034】
本実施例では、22.5°間隔で合計16個の凸部が形成されており、2個の強係合凹部29aが形成された後に3個の凹部29bが形成され、これが一組として4組形成された構成とされている。即ち、本実施例では、強係合凹部29aが45.0°間隔で形成された構成とされている。なお、強係合凹部29aに係合した係合突起42は、強係合凹部29aと係合突起42との係合力以上の力を加えることにより、高凸部28aを乗り越えることができる。
【0035】
次に、軸部材23について説明する。図5及び図6は、軸部材23を示している。この軸部材23は、樹脂成型品である前記した装置本体11及び回転体12の樹脂材料(例えば、エポキシ系樹脂)よりも体磨耗性の高いポリアセタール等の樹脂により一体的に形成されている。この軸部材23は、本体部40、アーム部41、係合突起42、抜け防止爪43、及び固定用溝44等を有している。
【0036】
本体部40は円柱形状を有しており、その直径は第1の軸受部21の大径孔26a及び第2の軸受部22の孔24内に挿入されるよう構成されている。この本体部40の図中矢印X2方向側には、アーム部41が設けられている(請求項に記載の弾性変形部に相当する)。このアーム部41は、一端が本体部40と一体的に接続し、他端が矢印X2方向に延出した形状とされている。よってアーム部41は片持ち梁を構成し、板バネとして機能する。これによりアーム部41は、図5及び図6(B)に矢印Bで示す方向(半径方向)に弾性変形可能な構成となる。
【0037】
このアーム部41は、本体部40に対向するよう一対設けられている。また、各アーム部41の先端近傍の外側位置には、係合突起42が一体的に形成されている。この係合突起42は、前記した凹凸部28に形成された強係合凹部29a及び凹部29bに係合しうる形状とされている。
【0038】
上記のようにアーム部41はバネ性を有しているため、係合突起42はこのアーム部41の有する弾性力をもって凹凸部28に押圧される。このため、係合突起42を凹凸部28に確実に係合させることができる。また、係合突起42を凹凸部28に弾性付勢する際、別箇にコイルスプリング等のバネ手段を設ける必要はなく、ヒンジ構造の簡単化を図ることができる。なお本実施例では、係合突起42が図中矢印X1,X2方向に延在する形状としているが、強係合凹部29a及び凹部29bに係合しうる形状であれば他の形状(例えば、半球状の突起)としてもよい。
【0039】
一方、本体部40の図中矢印X2方向側には、抜け防止爪43が設けられている。この抜け防止爪43は、本体部40の矢印X1方向側の側面46から矢印X1方向に延出するよう形成されている。この抜け防止爪43は、側面46に対向するよう一対設けられている。
【0040】
抜け防止爪43は、第1の軸受部21のフランジ部25に形成された小径孔26bに弾性変形しつつ矢印X1方向に挿入される。そして、挿入後に抜け防止爪43が弾性復元することにより、抜け防止爪43の先端部分の爪部がフランジ部25と係合する。これにより、軸部材23が第1の軸受部21から矢印X2方向に抜け出ることが防止される。
【0041】
固定用溝44は、本体部40の側面46の4ヶ所に形成されている。この固定用溝44の形成位置は、前記した第1の軸受部21の大径孔26aの内壁に形成された固定用突起27の形成位置と対応する位置に設定されている。よって、軸部材23が大径孔26aに矢印X1方向に挿入された場合、固定用溝44は固定用突起27と係合し、軸部材23は第1の軸受部21(大径孔26a)内における回動が規制される。
【0042】
また、前記のように軸部材23が大径孔26aに矢印X1方向に挿入されることにより、抜け防止爪43はフランジ部25(小径孔26bの周縁)と係合し、軸部材23の第1の軸受部21から矢印X2方向への抜けは防止される。更に、軸部材23が大径孔26aに挿入された状態で、軸部材23の側面46はフランジ部25と当接する。このため、軸部材23の第1の軸受部21から矢印X1方向への抜けも防止される。即ち、軸部材23は、大径孔26aに挿入されることにより、第1の軸受部21に固定された状態となる(抜け防止爪43及び固定用溝44は、請求項に記載の固定部に相当する)。
【0043】
なお、上記のようにアーム部41は図中矢印B方向に弾性変形するため、アーム部41と本体部40との接合位置近傍に応力が集中したり、また本体部40に変形が発生したりするおそれがある。これを防止するため、軸部材23はアーム部41の形成位置の近傍に補強用突起45を形成している。この補強用突起45を設けることにより、本体部40に応力や変形が発生することを防止することができる。
【0044】
次に、上記した電子装置10の組み立て方法について説明する。電子装置10を組み立てるには、先ず回転体12に設けられた円盤状軸部34を装置本体11の軸受部31に形成された装着溝32内に装着する。この際、支柱部36は、切欠き部35を介して装着溝32に挿入される。
【0045】
円盤状軸部34が装着溝32に装着された状態で、軸受部31、円盤状軸部34、第1の軸受部21、及び第2の軸受部22は、同軸上に配置された状態となる。この状態において、ヒンジ装置13を構成する第2のヒンジ構造部30では、軸受部31により円盤状軸部34が軸承された状態となる。しかしながら、第1のヒンジ構造部20においては、第1の軸受部21と第2の軸受部22が単に矢印X1,X2方向に並設された状態であり、また軸承構造は取られていない。
【0046】
続いて、軸部材23を第2の軸受部22孔24内に挿入する。前記のように、第2の軸受部22と第1の軸受部21は同軸的に配置されているため、孔24、大径孔26a、及び小径孔26bも同軸的に配置されている。よって、軸部材23を第2の軸受部22孔24内に挿入することにより、軸部材23は大径孔26a内にも挿入される。そして、軸部材23の矢印X1方向側に形成された抜け防止爪43は、弾性変形しつつ小径孔26b内に挿入し、挿入後弾性復元してフランジ部25と係合する。この際、前記のように軸部材23に形成された固定用溝44は、大径孔26a内に形成された固定用突起27と係合し、よって軸部材23は第1の軸受部21に固定される。
【0047】
このように、軸部材23が第1の軸受部21に固定された状態において、本体部40の一部は孔24の内壁の軸承面24aと対向し、またアーム部41に形成された係合突起42は凹凸部28と係合する。上記のように、電子装置10の組み立ては、円盤状軸部34を軸受部31に装着した後に軸部材23を第1及び第2の軸受部21,22に挿入するだけの簡単な作業で行うことができる。また、軸部材23を第1の軸受部21に固定する際、接着剤等の他の材料を用いる必要はなく、組み立て工数の低減及び部品点数の削減を図ることができる。
【0048】
続いて、本発明に係るヒンジ構造の動作について説明する。以下の説明では、図1に示すように、装置本体11と回転体12が水平状態となるよう開かれた状態から、回転体12に対して装置本体11を図中矢印C方向に回動させるときの動作を例に挙げて説明するものとする。
【0049】
また、本実施例に係る電子装置10は、ヒンジ装置13を中心とした装置本体11と回転体12とのなす角度が、0°(折り畳まれた状態)、90°(装置本体11と回転体12が直角となっている状態)、及び180°(装置本体11と回転体12が水平になっている状態。図1に示す状態)において、装置本体11に対する回転体12の相対的な回動が規制されるよう構成されている(この回動が規制される0°,90°,180°を回動規制角度という)。このように回動規制角度を設けたのは、電子装置10を使用する場合、装置本体11と回転体12のなす角度は回動規制角度である場合が多いからである。
【0050】
装置本体11と回転体12が水平状態となるよう開かれた状態では、図7(A)に示すように、係合突起42は凹凸部28の強係合凹部29aに係合した状態となっている。この状態より、装置本体11を回転体12に対して矢印C方向に回動させる。前記のように、強係合凹部29aの両側には他の低凸部28bよりも高い高凸部28aが形成されており、強係合凹部29aと係合突起42との係合力は、凹部29bと係合突起42との係合力よりも強い。よって、この強係合凹部29aと係合突起42との係合力よりも強い力で、装置本体11を回動させる。これにより、係合突起42は高凸部28aを乗り越えて、隣に設けられた凹部29bに係合する。
【0051】
この際、本実施例に係るヒンジ構造では、係合突起42がバネ性を有するアーム部41に形成されているため、係合突起42は強係合凹部29aを乗り越える際、アーム部41は弾性変形する。よって、上記のように係合突起42が高い高凸部28aを乗り越える場合でも、係合突起42及び高凸部28aに過剰な負荷(圧力)が印加されることはなく、係合突起42及び高凸部28aに摩耗が発生することを抑制することができる。また、係合突起42は強係合凹部29aを乗り越え、隣の凹部29bに係合する際、係合突起42はアーム部41の弾性復元力と共に隣の凹部29bと係合するため、この際に操作者はクリック感を得ることができる。
【0052】
係合突起42が凹部29bと係合した後、更に装置本体11を矢印C方向に回動させると、第2の軸受部22内の移動に伴い係合突起42は低凸部28bを順次乗り越えて隣の凹部29bに係合してゆく。この際も、係合突起42はバネ性を有するアーム部41の弾性復元力と共に凹部29bと係合するため、操作者はクリック感を得ることができる。
【0053】
また、係合突起42が低凸部28bを乗り越える場合も、アーム部41は弾性変形するため、係合突起42及び低凸部28bに過剰な負荷(圧力)が印加されることはなく、係合突起42及び低凸部28bに摩耗が発生することを抑制することができる。
【0054】
更に装置本体11を回転体12に対して矢印C方向に回動することにより、装置本体11と回転体12とのなす角度が直角となる90°の位置に至ると、係合突起42は高凸部28aを乗り越えて強係合凹部29aと係合する。これにより、係合突起42と強係合凹部29aとの係合力は強くなり、回転体12は装置本体11に対して直角となる位置に保持される。この係合突起42が強係合凹部29aと係合する際も、操作者はクリック感を得ることができる。なお、以後における装置本体11と回転体12とが折り畳まれた状態となるまでの回動動作は、上記した動作の繰り返しとなるため、その説明は省略するものとする。
【0055】
上記のように実施例に係るヒンジ構造では、係合突起42をバネ性を有するアーム部41に設けたことにより、装置本体11と回転体12との相対的な回動操作時にクリック感を得ることができると共に、係合突起42と各凸部28a,28bとの間で過剰な摩耗が発生することを防止することがでる。また、装置本体11と回転体12の回動を回動規制角度において規制するために、他の低凸部28bよりも高い高凸部28aを設けても、係合突起42が高凸部28aを乗り越える場合もアーム部41は弾性変形するため、この場合も係合突起42と高凸部28aとの間に過剰な摩耗が発生することを抑制することができる。よって、本実施例に係るヒンジ構造によれば、確実なクリック感を得つつ、かつ耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の一実施例であるヒンジ構造を適用した電子装置を正面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例であるヒンジ構造を適用した電子装置を背面側から見た斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例であるヒンジ構造を適用した電子装置を正面側から見た分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例であるヒンジ構造を適用した電子装置を背面側から見た分解斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例であるヒンジ構造に用いる軸部材の斜視図である。
【図6】図6は本発明の一実施例であるヒンジ構造に用いる軸部材を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図である。
【図7】図7(A)は凹凸部と係合突起との係合を説明するための図であり、図7(B)は図7(A)において矢印Aで示す部分を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 電子装置
11 装置本体
12 回転体
13 ヒンジ装置
16 内部空間
17 USBコネクタ
18 基板
20 第1のヒンジ構造部
21 第1の軸受部
22 第2の軸受部
23 軸部材
25 フランジ部
26a 大径孔26a
26b 小径孔26b
27 固定用突起
28 凹凸部
28a 高凸部
28b 低凸部
29a 強係合凹部
29b 凹部
30 第2のヒンジ構造部
31 軸受部
32 装着溝
33 支持部
34 円盤状軸部
40 本体部
41 アーム部
42 係合突起
43 抜け防止爪
44 固定用溝
45 補強用突起
46 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材を回動可能に連結するヒンジ構造であって、
前記第1の部材に設けられた第1の軸受部と、
前記第2の部材に設けられ、内周部に複数の凹凸が形成された第2の軸受部と、
バネ性を有する変形部と、該変形部に設けられ前記第2の軸受部の凹凸と係合する係合部と、前記第1の軸受部に固定される固定部とを有し、前記第1及び第2の軸受部内に装着される軸部材とを有し、
前記第1の部材と前記第2の部材とが相対的に回動する際、前記変形部が弾性変形することにより前記係合部が前記複数の凹凸を順次乗り越えなから前記第2の軸受部内を移動するよう構成したヒンジ構造。
【請求項2】
前記弾性変形部を片持ち梁状のアームとし、該アームの先端部分に前記係合部を形成した請求項1記載のヒンジ構造。
【請求項3】
前記凹凸の前記第1の部材と前記第2の部材との回動を規制する回動規制角度に対応する位置に、
前記係合部との係合力が他の部位に比べ強くなる強係合部を設けてなる請求項1または2記載のヒンジ構造。
【請求項4】
前記固定部は、前記第1の軸受部に形成された突起と、前記軸部材に設けられ前記突起と嵌合する溝部と、前記軸部材が前記第1の軸受部から抜け出ることを防止する爪部とにより構成される請求項1乃至3のいずれか一項に記載のヒンジ構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のヒンジ構造を有した電子装置であって、
前記第1または第2の部材の内のいずれか一方を装置本体とし、前記第1または第2の部材の内の他方を装置本体に対し回動する回動体とした電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−121742(P2010−121742A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297254(P2008−297254)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】