説明

ヒータマット

【課題】 少量の発熱部材でマット全面を均一に発熱させることができる安価で耐久性に優れたヒータマットを提供する。
【解決手段】 ヒータマット1のベース部材2上に発熱部材3を装着する。発熱部材3に薄くて細長いリボンヒータ7を用い、リボンヒータ7の発熱導体を帯状のステンレス鋼で形成する。発熱導体に接着層を介して表裏二枚の絶縁フィルムを加圧接着する。リボンヒータ7をジグザグ状に折り曲げて配線し、上下二枚の絶縁用ゴムシート16,17で被覆する。上側のゴムシート16に伝熱用の金属板8を被せ、金属板8にコントローラ10をネジ18で組み付ける。金属板8に接合するクッション部材5を通水性のゴムチップ集合材で成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部材を内蔵したヒータマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱部材にシートヒータやコードヒータを使用した融雪または凍結防止用のマットが知られている。例えば、特許文献1には、図6に示すように、周縁部材51の内側に下層チューブ52と上層チューブ53とを縦横に配列し、上層チューブ53にコードヒータ54を挿通した電熱マット55が記載されている。特許文献2には、ゴム製のマット本体に炭素繊維混抄紙からなるシートヒータを埋設した融雪用マットが記載されている。
【特許文献1】特開平6−341653号公報
【特許文献2】特開平7−90823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1の電熱マット55は、発熱部材としてコードヒータ54を使用しているので、マット全面を均一に発熱させるためには、多量のコードヒータ54を配線する必要があるうえ、チューブ52,53等の配線用部品の数も増え、構成が複雑化し、製作コストが高くつくという問題点があった。特許文献2の融雪マットは、靴鋲や落下物等の衝撃荷重によってシートヒータが早期に破損するという不具合があった。
【0004】
本発明の目的は、上記課題を解決し、少量の発熱部材でマット全面を均一に発熱させることができる安価で耐久性に優れたヒータマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明のヒータマットは、床面に敷設されるベース部材と、ベース部材上に装着された発熱部材と、発熱部材を覆う伝熱部材と、伝熱部材に接合するクッション部材とを備え、発熱部材にリボン状のヒータを用い、該リボンヒータをステンレス鋼からなる帯状の発熱導体と、発熱導体を被覆する絶縁フィルムとから構成したことを特徴とする。
【0006】
ここで、伝熱部材としては、発熱部材の熱を拡散する機能と、リボンヒータを衝撃から保護する機能とを備えた材料、例えば、金属板やカーボンプレート等の高剛性、高熱伝導性材料を使用できる。特に、ヒータマットを安価に製作できる点で、伝熱部材にリボンヒータの装着域全体を覆う面積の金属板を用いるのが好ましい。また、金属板にリボンヒータの通電を制御するコントローラを組み付けることで、コントローラと電源コードをヒータマット上に強固に保持することができる。
【0007】
発熱部材の構成に関しては、絶縁性能を高めるために、リボンヒータを上下二枚の絶縁シートで被覆するのが好ましい。リボンヒータ自体を二重絶縁構造とすることも可能で、例えば、リボンヒータに熱硬化性樹脂からなる接着層を設け、発熱導体に接着層を介して表裏二枚の絶縁フィルムを加圧接着してもよい。
【0008】
リボンヒータの発熱導体には帯状のステンレス鋼を使用しているので、発熱導体の幅または厚さを変えることで、所要の電気抵抗値が容易に得られる。また、ステンレス鋼製の発熱導体は折り曲げたときの形状を自己保持するので、別途の配線部材を使用することなく、リボンヒータを多様なパターンで配線できる利点がある。例えば、リボンヒータをジグザグ状に折り曲げて配線することで、伝熱効率を高めることができる。
【0009】
ベース部材およびクッション部材には、ゴムまたは樹脂からなる柔軟材料を使用できる。特に、踏面側に位置するクッション部材は、排水をよくするために、通水性のゴムチップ集合材で成形するのが好ましい。ベース部材には、床面上で滑りにくいSBRゴム等を好ましく使用できる。
【0010】
なお、本発明のヒータマットは融雪、凍結防止、暖房、保温等の目的で使用される。具体的な用途としては、住宅の床マット、浴室マット、玄関マット、路面の融雪・凍結防止マット、自動車用床マット、ペット用暖房マット、育苗マット等を例示できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヒータマットによれば、帯状ステンレス鋼からなるリボンヒータを伝熱部材で被覆したので、少量の発熱部材でマット全面を均一に発熱させることができる。伝熱部材に金属板を使用した場合は、衝撃荷重によるリボンヒータの絶縁不良や断線を確実に防止でき、マットの耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を具体化した融雪用ヒータマットの全体的な構成を示す。図2はヒータマットの内部構造を示す。図3はヒータマットの発熱部に使用するリボンヒータの一部を拡大して示す。図4はリボンヒータの絶縁構造を示し、(a)は二重絶縁構造を示し、(b)は三重絶縁構造を示し、(c)は接着剤を使用しない絶縁構造を示す。図5(a),(b)はそれぞれヒータマットの変更例を示す。
【0013】
図1、図2に示すように、この実施形態のヒータマット1は、玄関や車庫入口等の床面に敷設されるベース部材2と、ベース部材2上に装着された発熱部材3と、発熱部材3を覆う伝熱部材4と、伝熱部材4に接合するクッション部材5とを備えている。ベース部材2は、床面上で滑りにくいSBRゴムで矩形に成形されている。クッション部材5はゴムチップをバインダで結合した通水性のゴムチップ集合材で矩形に成形されている。クッション部材5の上面には凹凸の滑り止め6が設けられている。
【0014】
発熱部材3には薄くて細長いリボンヒータ7が用いられ、ジグザグ状に折り曲げた状態で配線されている。リボンヒータ7は上下二枚の絶縁用ゴムシート16,17で被覆され、下側のゴムシート17がベース部材2の上面に接着され、上側のゴムシート16が伝熱部材4の下面に接着されている。伝熱部材4には、リボンヒータ7の装着域全体を覆い得る面積の鉄板、アルミ板、ステンレス板等の金属板8が用いられている。
【0015】
ベース部材2上には、発熱部材3の温度を検出する温度センサー9と、リボンヒータ7への通電を制御するコントローラ10とが設けられ、コントローラ10に電源コード11が接続されている。コントローラ10の上面は金属板8で覆われ、金属板8にコントローラ10が複数のネジ18で組み付けられている。金属板8は絶縁用ゴムシート16,17と一緒にベース部材2とクッション部材5との間に挟着固定され、コントローラ10が金属板8と共にヒータマット1の内部に強固に保持されている。
【0016】
図3、図4(a)に示すように、リボンヒータ7はステンレス鋼からなる帯状の発熱導体12を備え、発熱導体12が接着層13を介して表裏二枚の絶縁フィルム14で被覆されている。接着層13にはエポキシ等の絶縁用熱硬化性樹脂が用いられ、絶縁フィルム14にポリイミド等の耐熱可撓性樹脂が用いられている。そして、発熱導体12が絶縁性の接着層13および絶縁フィルム14によって二重に絶縁されている。
【0017】
図4(b)に示すリボンヒータ7では、発熱導体12の全面に絶縁皮膜15が予め薄膜コーティング加工され、発熱導体12が絶縁皮膜15、接着層13および絶縁フィル14によって三重に絶縁されている。図4(c)に示すリボンヒータ7では、絶縁フィルム14にポリエーテルイミド樹脂が用いられている。ポリエーテルイミド樹脂は、寸法安定性に優れかつ金属との熱融着力が強いので、接着層13を介さずに発熱導体12を絶縁することができる。
【0018】
上記構成のヒータマット1は次のような作用効果を発揮する。
(1)リボンヒータ7の発熱導体12に帯状のステンレス鋼を使用したので、従来のコードヒータと比較し、より少ない配線量でクッション部材5の全面を効率よく発熱させることができる。
(2)金属板8がリボンヒータ7の発熱をクッション部材5の全域に拡散するため、マット1の表面全体を均一に発熱させ、融雪または凍結防止効果を高めることができる。
(3)発熱導体12の幅や厚さを変えることでリボンヒータ7の電気抵抗値を容易に変更でき、ヒータマット1の用途や大きさ適合する発熱量が得られる。
【0019】
(4)リボンヒータ7はジグザグ状の配線形態を自己保持するので、別途の配線部品を使用することなく、発熱部材3を簡単に装着でき、ヒータマット1を安価に製作できる。
(5)発熱導体12に接着層13を介して絶縁フィルム14を加圧接着したので、発熱導体12を接着層13中に空隙なく埋設し、浸水を確実に防止して、リボンヒータ7の電気絶縁性能を高めることができる。
(6)さらに、リボンヒータ7を上下二枚の絶縁用ゴムシート16,17で被覆したので、発熱部材3の電気絶縁を万全とすることができる。
【0020】
(7)発熱部材3のほぼ全域が金属板8で被覆されているので、リボンヒータ7、温度センサー9、コントローラ10等の電気部品を靴鋲や落下物等による衝撃荷重から確実に保護できる。
(8)コントローラ10はネジ18で金属板8に固定されているので、電源コード11が強く引かれた場合でも、コントローラ10がずれたり脱落したりするおそれがない。
(9)金属板8が通行人の踏圧を発熱部材3の全域に分散するので、特に、リボンヒータ7の折曲部の金属疲労を軽減できる。
(10)踏面側のクッション部材5が通水性のゴムチップ集合材で成形されているので、雨水や融雪水を金属板8の四方へスムーズに排水できる。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)図5(a)に示すように、伝熱部材4の金属板8と同様の金属板21をベース部材2側にも設け、上下二枚の金属板8,21でリボンヒータ7を保護すること。こうすれば、ヒータマット1を凹凸の床面や砂利道等において耐久性よく使用できる。
(2)図5(b)に示すように、ベース部材2とクッション部材5を共に通水性のゴムチップ集合材で成形し、ベース部材2の表面に凹凸の滑り止め22を形成すること。こうすれば、ヒータマット1をリバーシブルに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示すヒータマットの斜視図である。
【図2】該ヒータマットの内部構造を示す断面図である。
【図3】該ヒータマットの発熱部材に使用するリボンヒータの斜視図である。
【図4】該リボンヒータの絶縁構造を示す断面図である。
【図5】ヒータマットの変更例を示す断面図である。
【図6】従来のヒータマットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ヒータマット
2 ベース部材
3 発熱部材
4 伝熱部材
5 クッション部材
7 リボンヒータ
8 金属板
12 発熱導体
13 接着層
14 絶縁フィルム
16 絶縁用ゴムシート
17 絶縁用ゴムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に敷設されるベース部材と、ベース部材上に装着された発熱部材と、発熱部材を覆う伝熱部材と、伝熱部材に接合するクッション部材とを備え、前記発熱部材にリボン状のヒータを用い、該リボンヒータをステンレス鋼からなる帯状の発熱導体と、発熱導体を被覆する絶縁フィルムとから構成したことを特徴とするヒータマット。
【請求項2】
前記伝熱部材にリボンヒータの装着域全体を覆う面積の金属板を用いた請求項1記載のヒータマット。
【請求項3】
前記金属板にリボンヒータの通電を制御するコントローラを組み付けた請求項2記載のヒータマット。
【請求項4】
前記リボンヒータを上下二枚の絶縁シートで被覆した請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒータマット。
【請求項5】
前記リボンヒータをジグザグ状に折り曲げて配線した請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒータマット。
【請求項6】
前記クッション部材を通水性のゴムチップ集合材で成形した請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒータマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−275213(P2008−275213A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117020(P2007−117020)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(503207913)株式会社SOHKi (13)
【Fターム(参考)】