説明

ビタミンB部分構造を持つ粘膜付着性ポリマー

ポリマー化合物の粘膜付着特性はチオール下部構造がこれらの化合物と共有結合することにより極めて向上する。その理由は粘液糖タンパク質がジスルフィド架橋を形成するからである。ポリマー上の自由チオール基がメルカプトニコチンアミド又はメルカプトピロリドキシンとジスルフィド結合をすることによりこれらのチオール基はより活性化され粘膜付着特性極めて向上する。さらに、ポリマーがメルカプトニコチンアミド又はメルカプトピロリドキシンとジスルフィド下部構造を持つことにより、これらのポリマーは酸化に対して保護の必要がなくなる。さらに、これらのポリマーは含浸に対して優れた特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粘膜付着性ポリマーは粘膜に比較的高度の粘着特性を示すポリマー化合物である。粘膜付着性ポリマーは、例えば、(架橋)ポリメタクリル酸、(トリメチラート)キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ペクチン及びセルロース誘導体の様な化合物である。ポリメタクリル酸の架橋は、重合時にジビニルグリコール又はペンタエリチリトール アリルエ‐テルの様な少なくとも2つのビニル下部構造を示す化合物の添加により達成される。粘膜付着性を示すセルロース誘導体は、中でもカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースである。小腸の粘膜が薬剤の取り込みを行う様に、粘膜に対する薬物送達システムの改良された付着力のため、薬剤は比較的効率良く及びシステムの循環においてより持続可能に取込まれる。粘膜付着性ポリマーを、現在利用されている薬物送達システムと比較した場合の優れた効果の証拠は種々の研究において見ることができる(例えば、アキヤマ等による「薬学及び薬理学」 ( Journal of Pharmacy and Pharmacology) 50 (1998) 159-16))。
【0002】
その様なポリマーにチオール下部構造を共有結合により結合させることにより、その粘膜付着特性を本質的に向上させることができる。なぜならこれらのチオール基は、粘膜のチオール下部構造とジスルフィド架橋により共有結合を形成することができるからである(粘膜付着性ポリマー、その使用及びその生産方法、EP 1126881)。チオール下部構造を持つポリマーの略称チオマー(thiomer)(チオール化されたポリマー)は、種々の粘膜に100倍を超える改良された付着特性を示す(例えば、Roldo 他、Eur. J. Pharm. Biopharm., 57, 115-121)。
【0003】
チオール化にもかかわらず、ポリマーの粘膜付着特性は望ましい効果を達成するにはしばしば不十分である。
【発明の概要】
【0004】
本願発明は、上に述べた技術的問題を解決するためのものであり、優れた特性を持つ粘膜付着性ポリマーを提供することを目的とする。
【0005】
この課題は本願発明の請求項1乃至7に記載のポリマー化合物により、請求項8及び9のポリマー化合物の使用により、及び請求項10の組成物により解決される。本願発明においては、メルカプト(イソ)ニコチンアミド又はメルカプトピリドキシンの様なビタミンB誘導体が、図1の6−メルカプトニコチンアミドに示す様にジスルフィド架橋によりチオマーの自由チオール基に結合する。これらの下部構造がチオマーに結合していることにより、これらの部分は粘液糖タンパク質のチオール基及びチオマーの自由チオール基とそれぞれ、非常に急速に及び比較的により高度な程度に反応する。
【0006】
メルカプト(イソ)ニコチンアミド及びメルカプトピリドキシンとは別に、メルカプトニコチン酸もまたこの目的には好適である。これらは血管拡張又は脂肪代謝の変化の様な多くの副作用の原因である。しかし、メルカプトニコチンアミド及びメルカプトピリドキシン、すなわち、これらはビタミンB3及びビタミンB6誘導体であるが、この発明では好ましいものである。本願発明の基本ポリマーには特に以下のものが適している:
ポリアクリル酸システアミン共役(polyacrylic acid-cysteamine conjugates)の様な、チオール化された(架橋)ポリ(メタ)アクリレート(thiolated (crosslinked)poly(meth)acrylates) [Hombach et al., J Pharm Sci. 98、(2009) 555-564]、又はポリカルボフィル−システイン共役(polycarbophil-cysteine conjugates) [Vetter et al.,J Pharm Sci. 99 (2010) 1427-1439]、キトサン−チオグリコール酸共役(chitosan-thioglycolic acid conjugates)の様なチオール化されたキトサン(thiolated chitosans) [Bernkop-Schnurch及びHopf Sci. Pharm., 69 (2001) 109-118], キトサン メルカプトニコチン共役(chitosan- mercaptonicotinic acid conjugates) [Millotti et al. Biomacromolecules, 10 (2009) 3023-3027]、又はキトサン グルタチオン共役(chitosan- glutathione conjugates) [Kafedjiiski et al., Pharm Res., 22 (2005) 1480-1488]、又はペクチン−システイン結合体(pectin-cysteine conjugates)の様なチオール化されたペクチン(thiolated pectins) [Majzoob et al., J. Pharm. Pharmacol., 58 (2006) 1601-1610]、又はペクチン−4−メルカプトアミノフェノール共役(pectin-4-mercaptoaminophenol conjugate)[Perera et al., AAPS PharmSciTech. , 11 (2010) 174-180]、アルギン酸- システイン共役(alginate-cysteine conjugates)の様なチオール化されたアルギン酸(thiolated alginate) [Bernkop-Schnurch et al., J. Control. Release, 71 (2001) 277-285]、ヒアルロン酸‐システイン エチル エステル結合体(hyaluronic acid-cysteine ethyl ester conjugate)の様なチオール化されたヒアルロン酸(thiolated hyaluronic acid)[Kafedjiiski et al., Int. J. Pharm., 343, (2007) 48-58]、ポリアリルアミン-チオグリコール酸結合体(polyallylamine-thioglycolic acid conjugates)、チオール化されたポリリシン(thiolated polylysine)、チオール化されたポリオルニチン(thiolated polyornithine)、チオール化されたポリアリルアミン(thiolated polyallylamine)、チオール化されたポリアミノアミド(thiolated polyaminoamide)、の様なカルボキシメチルセルロ−ス−システイン共役体(carboxymethylcellulose-cysteine conjugates) の様なチオール化されたセルロ−ス誘導体(thiolated cellulose derivatives) [Bernkop-Schnurch, Int. J. Pharm., 194, (2000) 239-247]、チオール化された(架橋)ポリビニルピロリドン(thiolated (crosslinked)polyvinylpyrrolidones)であって、これらはビニルピロリドン(vinylpyrrolidone)の重合中にS-アセチル−システイン アクリルアミド(S-acetyl-cysteine-acrylamide)の様なS保護のチオール基を持つビニル化合物を追加することにより生成されるポリビニルピロリドン、及びチオール化されたポリビニルピロリドン(thiolated polyvinylpyrrolidones)同様に生成されるチオール化された(架橋)メタアクリル酸/エチルアクリレートコポリマー(thiolated (crosslinked) (meth)acrylic acid/ethylacrylate co-polymers)である。
【0007】
さらにアリルアミン(allylamine)モノマーとは別に、ビニルピロリドン(vinylpyrrolidone)、(メタ)アクリル酸((meth)acrylic acid )及び
エチルアクリル酸(ethylacrylate)及び、さらにビニルアルコール(vinylalcohol),ビニルイミダゾール(vinylimidazole),ビニルカプロラクトン(vinylcaprolactone)又は(メタ)アクリルアミド((meth)acrylamide)の様なビニル下部構造を持つモノマーもまたS保護のチオール基を持つビニル化合物と任意の比率で重合させることができる。チオール基を持つリガンドはさらに以下の化合物に好適である:メルカプト安息香酸(mercaptobenzoic acid)、N−アセチル−システイン(N-acetyl-cysteine)、ホモシステイン(homocysteine)、3−チオ−プロピオン酸(3-thio-proprionic acid)、4−チオ−ブタン酸(4-thio-butanoic acid)、チオブチルアミジン(thiobutylamidine)及びチオエチルアミジン(thioethylamidine) [Kafedjiiski et al., Biomaterials, 27 (2006) 127-135] である。
【0008】
酸化によって、メルカプトニコチンアミド(mercaptonicotinamides)及びメルカプトピリドキシン(mercaptopyridoxines)は各々これらの粘膜付着性ポリマーと共有結合し、特定のビタミンB誘導体の特定のチオマー及び自由チオール基の間でジスルフィド架橋を形成する。
【0009】
本発明の好ましい方法によればメルカプトニコチンアミド(mercaptonicotinamides)及びメルカプトピリドキシン(mercaptopyridoxines)の各の分子が、ポリマーの自由チオール基に対して余剰であることは有利な点である。過酸化尿素(urea peroxide)及び無水マレイン酸(maleinic acid anhydride)を添加することによりこの酸化プロセスはKamari により説明されている[Karami 他Molecules, 10 (2005) 1385-63]様にさらに加速される。さらにある特定の方法では、過酸化水素を添加することにより酸化を加速することができる。一般的に、酸化プロセスはpHが高いとより急速に進む。本発明のポリマーはグラム当たりポリマーに対して、各々10-1000 μmolのメルカプト(イソ)ニコチンアミド及びメルカプトピリドキシンを持ち、特に各々100-1000 μmolのメルカプト(イソ)ニコチンアミド及びメルカプトピリドキシンを持つ。リガンドとジスルフィド架橋を形成しない、残りのチオール基の数は、各ビタミンB誘導体の添加量によりコントロールすることができる。
【0010】
本発明では特に、2−メルカプトニコチンアミド及び6−メルカプトニコチンアミド並びに2‐及び6‐メルカプトイソニコチンアミドが有用なメルカプトニコチンアミドである。6−メルカプトニコチンアミドの合成は実施例1に記載されている。上に述べたその他の誘導体の合成は、実施例1に倣って実施される。特に6−メルカプトピリドキシンは本発明において好適なメルカプトニコチンピリドキシンである。その合成は6−クロロピリドキシンをベースとし、これはBlackwood 他により説明されている[Blackwood他, J. Am. Chem. Soc., 80 (1958) 6244-6249]。塩素をメルカプト基により置換することは実施例1の方法により実施することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の態様においては、この調製方法に替えて、システイン−アクリルアミド(cysteine-acrylamide)の様なビニル基を持つ化合物とジスルフィド結合をしているS‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド及びS‐(6‐メルカプトピロリドキシン)ジスルフィド(S-(2-or 6-mercapto(iso)nicotinamide- and S-(6-mercaptopyridoxine)-disulfides)は他のビニル基を持つモノマー、例えば、メタクリル酸、ビニルピロリドン、ビニルアルコール又はエチルアクリレートのモノマーと重合させることができる。
【0012】
本発明のポリマーの合成の他の可能性としては、事前に活性化されたリガンドとS-(2-又は6-メルカプト(イソ)ニコチンアミド又はS-(6-メルカプトピリドキシン)‐ジスルフィドと共有結合させることである。例えば、N-スクシンイミド3−(2−ニコチンアミジルジチオ)−プロピオン酸塩(N-succinimidyl 3-(2-nicotinamidyldithio)-propionate)は、第1級アミノ基(例えば、ポリアリルアミン、キトサン)を持つポリマーとアミド結合を形成し非常に効果的に結合する。
【0013】
このように生成された化合物の更なる有利な点は、自由チオール基が各々メルカプトニコチンアミド及びメルカプトピリドキシンとジスルフィド結合するため、これらは最早酸化に反応しない。その理由はチオール基は既に酸化された形で存在するからである。本発明のポリマーと自由チオール基を持つポリマーの組み合わせはこれらの2つのポリマーの間にジスルフィド結合を形成し、そして、粘度を比較的急速に増大させる。この効果はまた、チオマー上のチオール基の全てが、各々メルカプトニコチンアミド及びメルカプトピリドキシンとジスルフィド結合と形成する様な場合でないときにも実現され得る。これらの粘膜付着性特性、及び本発明の改善された安定性の理由により、本発明のポリマーは特に薬剤及び化粧品分野並びに健康管理製品において広い範囲で適用される。したがって、また本発明の粘膜付着性ポリマーは薬剤及び化粧品並びに健康管理製品に適用され得る。
【0014】
さらに、本発明は本発明の一又は幾つかのポリマー、薬剤、賦形剤及び/又は溶媒を含む組成物を提供する。これらの改良された粘膜付着性特性とは別に、チオールの透過促進特性はまた本発明の(イソ)ニコチンアミド−及びピリドキシン−ジスルフィド側鎖により改善される。例えば、蛍光標識デキストラン(分子量:4.4 kDa; FD4) の透過係数(Papp)は、Foger他により記述されている方法 [Foger他, Amino Acids, 35 (2008) 233-241] により新しく切除されたネズミの腸粘膜にポリマーを加えることなく、9.6+−3.5 x 10-7 cm/sと決定された。一方、0.5% (m/v)キトサンチオグリコール酸共役体(分子量:450 kDa; ポリマーグラム当たり 234 μmolチオール基)を添加することにより1.8倍改善され、さらに、全ての自由チオール基が事前に6−メルカプトニコチンアミドとジスルフィド結合をする様に転換された、0.5% (m/v)の同じポリマーを添加することにより5.3倍にも改善された。
【0015】
本発明のポリマーは、薬剤分野において錠剤中の薬物担体マトリクス、半固形及び液状製剤のゲル化賦形剤、粘着性創傷包帯、再生医療の分野での骨格、並びにミクロ及びナノ粒子薬物送達システムの生成において有用である。化粧品分野において、特にヘアスタイルゲル、固着剤、着色剤、洗浄剤、及びヘア、まつ毛及び眉毛用コーティングでの適用が有用である。ヘア、爪、及び皮膚の
チオール下部構造のタンパク質構造は本発明のポリマーと反応することがあり得るからである。マニキュア液、メークアップ及び発汗抑制剤での使用もまた有益である。タンパク質中のシステイン下部構造のため皮もまた自由チオール基を持つため、本発明のポリマーはまた皮の含浸にも有用である。本発明のポリマーのラッカー及び種々の洗浄剤及び潤滑剤として適用することも可能である。
【0016】
本発明は以下の変形を含む:
(1) 2-及び6-メルカプト(イソ)ニコチンアミドとのジスルフィドの形で利用が可能なチオール下部構造を持つポリマー化合物である。
【0017】
(2) (1)のポリマー化合物であって、直径が5mmの試験錠剤(30mg)の形の回転シリンダ粘膜付着性試験において、豚の小腸の粘膜に付着する粘膜付着性ポリマーであり、試験時間は8時間を超え、特別な場合は24時間を超える。
【0018】
(3) (1)又は(2)のポリマー化合物であり、前記ポリマー化合物は(架橋)ポリメタクリル酸、(トリメチラート)キトサン、ヒアルロン酸、ペクチン、アルギン酸、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0019】
(4) (1)から(3)のポリマー化合物であり、前記ポリマー化合物は、1より多いチオール基を持つ化合物と組み合わされてその粘度が増大する。
【0020】
(5)(1)から(4)のポリマー化合物であり、請求項3に記載のポ
リマーのチオール化は、システイン、システアミン、N‐アセチルシステイン、チオグリコール酸、メルカプト安息香酸、メルカプトニコチン酸、グルタチオン又はメルカプトアニリンとアミド結合を形成することにより実現される。
【0021】
(6)(1)から(5)のポリマー化合物であり、前記ポリマー化合物は、ポリマーグラム当たり10-1000μmolのメルカプト(イソ)ニコチンアミド下部構造を持ち、特に100-1000μmolのメルカプト(イソ)ニコチンアミド下部構造を持つ。
【0022】
(7)(1)から(5)のポリマー化合物であり、前記ポリマー化合物は、製薬、化粧品及び健康管理製品中の補助剤として用いられる。
【0023】
(8)(1)から(6)のポリマー化合物であり、前記重ポリマー化合物は皮の含浸に用いられる。
【0024】
実施例
以下の実施例は本発明の代表的な例を開示する。以下の実施例の改変及び種々の変更は本発明の範囲内で実施することができる。
【0025】
実施例1
6−メルカプトニコチンアミドの合成
5.0 gの6-クロロ-ニコチンアミド (31.9 mmol) 及び2.65 gのチオ尿素 (34.8 mmol)が無水アルコール(50 ml)中で懸濁され、還流下で6時間加熱された(加熱槽温度:約90℃)。反応混合物は時間の経過と共に黄色に変色した。その後反応混合物は室温に冷却された。生成されたS-(5−カルバミルー2−ピリジル)チウロリニウムクロライド(S-(5-carbamyl-2- pyridyl)thiuroniumchloride)がろ過により分離され、乾燥された。6.7 g の目標の化合物 (90 %)が黄色粉末として分離された。1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6、δ):7.76 (br s, 1H); 7.83 (d, 1 H, J = 8.4 Hz); 8.33 (dd, 1 H, J = 8.4 Hz, J =2.0 Hz); 8.38 (br s, 1 H); 9.05 (d, 1 H, J = 2.0 Hz); 9.69 (brs, 4 H)。6.7 g の S-(5−カルバミルー2−ピリジル)チウロニウムクロライド(S-(5-carbamyl-2-pyridyl)thiuronium chloride) (28.8 mmol)が水(30 ml) 中で懸濁され、そして20 mlの5 MのNaOHが加えられた。懸濁液が室温で30分間攪拌された。その後pHが氷酢酸の添加により4.9に調整された。生の製品がろ過により分離され、適切な溶媒中(例えば、水)で再結晶させ、目標の化合物(クロロニコチンアミドが69%)3.4gが黄色粉末の形で生成された。1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6, δ) : 7.29 (d, 1 H, J = 9.1 Hz); 7.46 (br s, 1H); 7.76 (dd, 1 H, J = 9.1 Hz, J = 2.2 Hz); 7.95 (br s, 1 H) ; 8.13 (d, 1 H, J = 2.2 Hz); 13.74 (br s, 1 H).
実施例2:
ポリアクリル酸−システイン−6−メルカプトニコチンアミド共役の合成
450 kDa (Sigma-Aldrich, Vienna)ポリアクリル酸1gが200mlの脱塩水中で水和され、そしてpHが1MのNAOHの添加で5に調整された。ポリマーのカルボン酸グループに室温で、l-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide) carbodiimide
hydrochloride)が添加され、30分攪拌することで事前に活性化され、最終濃度が200 mMとされた。
【0026】
1 gのシステインを添加後に、必要な場合は溶液のpHはHCL又はNAOHによりさらに5に再調整され、そして反応混合物は室温で6時間攪拌された。生成されたポリアクリル酸−システイン共役は水性の1mM HCL溶液で透析され、この透析は同じ透析媒体に対して2度実施されたが、さらに1%のNACLを含み、そして最終的に遮光下で、10℃の水で行われた。その後共役のpHは1Mの1 NaOHにより5に調整された。単離された共役は−30 ℃で凍結乾燥され、4 ℃で保存された。共有結合したチオール基の量はEllman 試薬により決定された。
【0027】
上に述べた様に合成されたチオーマーは、1グラム当たりポリマーに50-250μmolの共有結合したチオール基を持つている。
【0028】
上に述べた様に合成された2.50gの共役(1グラム当たりポリマーに65 μmol −SH)は水 (200 ml)に溶解された。溶液は、1MのNaOHよりpH6にされ、そして50 mgの6−メルカプトニコチンアミド(6-mercaptonicotinamide)又は2−メルカプトニコチンアミド(2-mercaptonicotinamide)(5 mlのDMSO 及び5 mlの水で溶解)及び20mgの過酸化尿素及び30mgの無水マレイン酸(共に10mlの水により溶解されたもの)が添加された。溶液は室温で24時間攪拌された。その後溶液は水により十分透析されそして凍結乾燥された。
【0029】
実施例3
キトサン―チオグリコール酸―2−又は6−メルカプトニコチンアミド−共役
1グラムのキトサンが10 mlの1 M HCl中で水和され、続いて脱塩水で希釈され1% (m/v)の最終濃度とされた。1gのチオグリコール酸(TGA)及び最終濃度200 mMのl-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイジミド塩酸塩((l-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride)が添加され、必要な場合は1 M HC1又は1 M NaOHによりpHが5に調整される。そして反応混合物は室温で6時間攪拌された。共役は、1mMの水性塩酸溶液により透析され、同じ透析媒体であるが2度透析され、さらに1%のNaCIを含む透析媒体に対し透析され、そして最終的に遮光条件下で10℃の水により透析された。その後共役のpHは5に調整された。単離された共役は−30℃で凍結乾燥されそして4℃で保存された。共役結合したチオール基の量がEllman試薬により決定された。
【0030】
2.50 g のキトサン-TGA (550 μmol SH/g ポリマー)が水(200 ml)に溶解された。溶液は1 MNaOHによりpH6に調整され、そして215 mgの6−メルカプトニコチンアミド(6-mercaptonicotinamide)又は2−メルカプトニコチンアミド(2-mercaptonicotinamide)(5 mlのDMSO 及び5 mlの水で溶解)及び130 mgの過酸化尿素(10mlの水に溶解)が加えられた。溶液は室温で24時間攪拌された。その後共役は、脱塩水で十分に透析されそして凍結乾燥された。
【0031】
実施例4
ペクチン−4−アミノチオフェノ−ル−2−メルカプトニコチンアミド共役の合成
1グラムのペクチンが250 mlの水/ジオキサン(2+1)中に溶解された。3 mlのジオキサン中に溶解された0.2 gの4-メルカプトアニリンを連続して添加した後に、pHが0.5 M NaOHにより4.5に調整され、l-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイジミド塩酸塩(l-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride)が200mMの最終濃度で添加された。室温で3時間攪拌した後にpHが7.5に調整され、0.2gの水素化ホウ素ナトリウムが添加された。反応混合物は4℃で1時間攪拌された。その後未結合の4-メルカプトアニリンが酢酸エチルにより数度に渡り抽出して除去された。生成された共役はイソプロピルアルコールを添加して沈殿させ、そして沈殿物は純イソプロピルアルコール及びアセトンで洗浄された。精製された共役物は乾燥器で乾燥された。
【0032】
0.5グラムのペクチンー4−アミノチオフェノール共役(pectin-4-aminothiophenol conjugate) (420 μmol SH/gポリマー)が水(200 ml)中で水和された。溶液は1 M NaOHによりpH6.5に調整され、25 mlのDMSO及び25 mlの水で溶解された500 mgの2-メルカプトニコチンアミド(2-mercaptonicotinamide)が添加された。溶液は室温で24時間攪拌された。その後、共役物は、脱塩水で十分透析され、そして凍結乾燥された。
【0033】
実施例5
粘膜付着性試験
実施例3に記載の方法で合成されたポリマーの粘膜付着特性がBernkop-Schnurch他の示す方法により決定された[Bernkop-Schnurch et al., Int. J. Pharm., 260 (2003) 229-237]。メルカプトニコチンアミド下部構造を持つ、又は持たないポリマーが直径5mmの錠剤(30mg)に圧縮調剤された。続いて鋼製シリンダに載せた、新たに切除された豚の小腸粘膜に低圧で付着された。シリンダは欧州薬局方に従い、37℃でpH6.5の50mMのリン酸緩衝液で満たした溶解試験装置中で100回転/分で攪拌された。粘膜から錠剤を分離する時点は視認により決定された。この結果は図2(平均+−標準偏差;n=4)に示す。
【0034】
実施例6
流動学的研究
0.25 gのキトサン−チオグリコール酸−6−メルカプトニコチンアミドが50mlの脱塩水中で水和された。生成されたゲルは50mlの0.5% (m/v)キトサン−チオグリコール酸溶液に添加された。反応混合物は均質化され、pHが6.0に調整された。図3に示す各点においてゲルの粘度が測定(1HZの一定周波数による振動測定)された。図3に示す様に粘度は数時間内に1000倍より大きく増大する(平均+−標準偏差;n=4)。
【0035】
実施例7
錠剤の調製
20gのポリアクリル酸−システインー6−メルカプトニコチンアミド(実施例2)が1gのミコナゾールにより均質化され、直接0.2g重量の錠剤に圧縮調製された。これらの錠剤は十分高い粘着特性を持ち、抗真菌性薬剤を制御される形で放出することを示す。
【0036】
実施例8
点鼻薬の調製
0.1 gのキトサン−チオグリコール酸−6−メルカプトニコチンアミド(実施例3)及び0.05 gのオキシメタゾリンHCLが100 mlの脱塩水で溶解され、10 mlのスポイド瓶に移された。任意選択的に最終濃度0.015% (m/v) の塩化ベンズアルコニウム及び最終濃度0.05% (m/v)のEDTAが保存料として添加された。
【0037】
実施例9
整髪用ジェルの調製
0.25 gのキトサン−チオグリコール酸−6−メルカプトニコチンアミド(実施例3)及び0.25 gのキトサン−チオグリコール酸(実施例3)が100mlの水/イソプロピルアルコール(9+1)中で水和された。もし必要なら1 M HC1又は1 M NaOHによりpHが6.0に調整される。生成されたジェルはアルミ/プラスチック複合体の小袋に各10mlを充填される。小袋を開封して髪に振りかけた後に、ジェルの粘度が大きく増大し、髪の型及び形を整える効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1:6-メルカプト(イソ)ニコチンアミドがジスルフィド架橋によりチオマーの自由チオール基に結合する状態を示す。
【0039】
図2:実施例5による各ポリマーの粘膜付着特性を示す。
【0040】
図3:キトサン−チオグリコール酸−6−メルカプトニコチンアミドの時間経過による粘度の増大を示す。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−(イソ)ニコチンアミド−ジスルフィド側鎖、6−(イソ)ニコチンアミド−ジスルフィド側鎖、又は6−ピリドキシン−ジスルフィド側鎖を持つポリマー化合物。
【請求項2】
請求項1のポリマー化合物であって、前記化合物は2−(イソ)ニコチンアミド−ジスルフィド側鎖、6−(イソ)ニコチンアミド−ジスルフィド側鎖、又は6−ピリドキシン‐ジスルフィド側鎖が共有結合しており、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、アリルアミン、(トリメチル)キトサン、ヒアルロン酸、ペクチン、アルギン酸、(架橋)ポリアリルアミン、ポリリシン、ポリオルニチン、ポリアミノアミド、メチルセルロース、エチルセルロース、
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムよりなる(架橋)ホモ−又はコポリマーであり、これらは任意選択的に自由チオール基を側鎖に持つ、前記化合物。
【請求項3】
請求項1又は2のポリマー化合物であり、前記側鎖は、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−(ホモ)システイン−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−システアミン−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−N‐アセチルシステイン−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−チオグリコール酸−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−3−チオプロピオン酸−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−4−チオブタン酸−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−メルカプト安息香酸−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−メルカプトニコチン酸−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−グルタチオン−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−チオエチルアミジン−ジスルフィド、
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−4−チオブチルアミジン−ジスルフィド、又は
S‐(2‐又は6−メルカプト(イソ)ニコチンアミド)−又はS‐(6‐メルカプトピリドキシン)−メルカプトアニリン−ジスルフィド、の側鎖であって、アミド、アミジン又はエステル結合により前記ポリマーに結合している、前記ポリマー化合物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項のポリマー化合物であって、ポリマーグラム当たり10-1000μmolのメルカプト(イソ)ニコチンアミド又はメルカプトピリドキシン下部構造を持つ、前記ポリマー化合物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項のポリマー化合物であって、ポリマーグラム当たり100-1000μmolのメルカプト(イソ)ニコチンアミド又はメルカプトピリドキシン下部構造を持つ、前記ポリマー化合物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項のポリマー化合物であって、前記ポリマーが、重量30mgの試験錠剤であり、その直径が5mmの錠剤の形で回転シリンダの粘膜付着試験システム中で豚の小腸粘膜に8時間を超え、特別な場合は24時間を超えて付着する、粘膜付着性を持つ前記ポリマー化合物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項のポリマー化合物であって、前記ポリマー化合物が、1より多いチオール基を持つ化合物と組み合わされてその粘度を増大させる、前記ポリマー化合物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項のポリマー化合物の使用であって、前記ポリマー化合物が、製薬、化粧品及び健康管理製品中の活性成分又は補助剤として用いられる、前記ポリマー化合物の使用。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項のポリマー化合物の使用であって、前記ポリマー化合物は、皮の含浸、接着剤、洗浄剤又は潤滑剤に使用される、前記ポリマー化合物の使用。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項の1以上のポリマー化合物、並びにさらに薬剤、賦形剤及び/又は溶媒を含む組成物。

【公表番号】特表2013−506728(P2013−506728A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531410(P2012−531410)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064464
【国際公開番号】WO2011/039259
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(507022097)ティオマトリックス・フォルシュンクス・ウント・べラートゥンクス・ゲーエムベーハー (2)
【出願人】(512066750)クローマ・ファルマ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】