説明

ビデオマイクロスコープ

【課題】反射光学系を併用した場合に撮像光学系のみを用いた場合と同じ像を得ることが可能なビデオマイクロスコープを提供する。
【解決手段】複数のレンズ21A〜21Eよりなる撮像光学系20の光軸OAを、載置面の上方斜めから載置面上の被写体に向ける。撮像光学系20の下端には、第1ミラー31および第2ミラー32よりなる反射光学系30を、反射光学系支持機構40により支持させると共に、撮像光学系20の光軸OAの回りに回転可能とする。撮像光学系20の上端には、CCDなどの撮像素子50を配置する。第1ミラー31の回転方向位置に応じて撮像素子50を撮像光学系20の光軸OAの回りに回転させることにより、反射光学系30の回転によって生じた被写体2の像の傾きを低減ないし解消させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な対象物を様々な角度から観察するのに好適なビデオマイクロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板のはんだ付け箇所の検査など、微小立体物の観察にビデオマイクロスコープが用いられている。ビデオマイクロスコープでは、例えば、特許文献1に記載されたように、載置面に被写体を載せ、上方斜め方向からカメラで観察・撮像し、その画像をモニターに表示させる。カメラは左右に旋回可能とされ、被写体の正面だけでなく左右側面も上方斜め方向から観察可能となっている。
【0003】
また、特許文献2には、カメラ先端に二枚のミラーによる反射光学系を追加し、このミラーを回転させて観察の俯角を90°(垂直)〜0°(水平)の範囲で調整することが記載されている。これにより特許文献2のビデオマイクロスコープでは、上方斜めからの観察に加えて、垂直〜水平方向からの観察をも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―28133
【特許文献2】特開2009−186728
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献2のビデオマイクロスコープでは、オリジナルの撮像光学系のみを用いて観察した被写体の像と、反射光学系を併用して観察した被写体の像とでは、被写体の傾き具合などが微妙に異なってしまう場合があり、更に改善の余地があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、反射光学系を併用した場合に撮像光学系のみを用いた場合と同じ像を得ることが可能なビデオマイクロスコープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるビデオマイクロスコープは、以下の(A)〜(E)の構成要素を含むものである。
(A)観察対象となる被写体が載置される載置面
(B)載置面の上方斜めから載置面上の被写体に向けられた光軸を有する撮像光学系
(C)載置面と撮像光学系の下端との間に、載置面側から順に、撮像光学系の光軸の外側の第1ミラーおよび撮像光学系の光軸上の第2ミラーを含む複数のミラーを有し、被写体の像を複数のミラーを経て撮像光学系に導く屈曲光路を形成する反射光学系
(D)反射光学系を撮像光学系の光軸の回りに回転可能に支持する反射光学系支持機構
(E)撮像光学系の上端に配置され、反射光学系支持機構による第1ミラーの回転方向位置に応じて撮像光学系の光軸の回りに回転可能な撮像素子
【0008】
本発明のビデオマイクロスコープでは、載置面に置かれた被写体の像は、反射光学系の複数のミラーを経る屈曲光路により撮像光学系に導かれ、撮像光学系の上端に配置された撮像素子により撮像される。このとき、反射光学系支持機構により反射光学系が撮像光学系の光軸の回りに回転されると、第1ミラーの回転方向位置に応じて、撮像素子が撮像光学系の光軸の回りに回転される。これにより、反射光学系の回転によって生じた被写体の像の傾きが低減ないし解消される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のビデオマイクロスコープによれば、反射光学系の第1ミラーの回転方向位置に応じて撮像素子を回転可能としたので、反射光学系を併用した場合に撮像光学系のみを用いた場合と同じ像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係るビデオマイクロスコープの外観を表す斜視図である。
【図2】図1に示したビデオマイクロスコープの側面図である。
【図3】図2に示した撮像光学系および反射光学系の内部構造を表す図である。
【図4】図2に示した撮像光学系の旋回を説明するための図である。
【図5】撮像光学系の旋回による被写体の像を表す図である。
【図6】図2に示した反射光学系の回転を説明するための図である。
【図7】第1ミラーの回転基準位置を説明するための側面図である。
【図8】図2に示した反射光学系支持機構の構成を表す分解斜視図および組立斜視図である。
【図9】反射光学系の回転による被写体の像を表す図である。
【図10】図2に示した第2ミラーが第1の揺動位置にある場合の側面図である。
【図11】第2ミラーが第2の揺動位置にある場合の側面図である。
【図12】反射光学系を併用して図5(B)と同じ像を得ようとする場合の手順を表す正面図である。
【図13】図11に続く手順を表す正面図である。
【図14】図13に示した手順により得られた像を表す図である。
【図15】図13に続く手順を表す正面図である。
【図16】図15に示した手順により得られた像を表す図である。
【図17】第1ミラーが回転基準位置にある場合の撮像素子の回転を表す上面図である。
【図18】第1ミラーが回転基準位置から時計回り方向に90°回転された場合の撮像素子の回転を表す上面図である。
【図19】第1ミラーが回転基準位置から180°回転された場合の撮像素子の回転を表す上面図である。
【図20】第1ミラーが回転基準位置から反時計回りに90°回転された場合の撮像素子の回転を表す上面図である。
【図21】第1ミラーの回転方向位置および撮像素子の傾き量の関係の一例を表す図である。
【図22】第1ミラーの回転方向位置および撮像素子の傾き量の関係の他の例を表す図である。
【図23】第1ミラーの回転方向位置および撮像素子の傾き量の関係の更に他の例を表す図である。
【図24】反射光学系および撮像素子の両方を回転させた場合の被写体の像を表す図である。
【図25】撮像素子回転機構の第1の例を表す斜視図である。
【図26】図25に示した反射光学系側ギアを拡大して表す図である。
【図27】図26に続く動作を説明するための図である。
【図28】撮像素子回転機構の第2の例を表す斜視図である。
【図29】図28に示した撮像素子回転機構の動作を説明するための図である。
【図30】反射光学系を図29とは反対方向に回転させた場合の撮像素子回転機構の動作を説明するための図である。
【図31】撮像素子回転機構の第3の例を表す斜視図である。
【図32】図31に示した撮像素子回転機構の構成を表すブロック図である。
【図33】撮像素子回転機構の第4の例を表す斜視図である。
【図34】図33に示した撮像素子回転機構の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.撮像素子回転機構の第1〜第4の例
【0012】
(構成)
図1および図2は、本発明の一実施の形態に係るビデオマイクロスコープの外観を表したものである。このビデオマイクロスコープ1は、プリント配線板のはんだ付け箇所の検査など微小立体物の観察に用いられるものであり、観察対象となる被写体2が置かれる載置台11の上方に、カメラ12およびモニター13を有している。
【0013】
載置台11は、矩形板状であり、その上面は、観察対象となる被写体が載置される平坦な矩形状の載置面10となっている。載置台11の前方側面には、操作部14が設けられている。操作部14は、例えば、光量調整用ボリュームスイッチ14A、ライトパターンスイッチ14B、ポインタスイッチ14C、電源スイッチ14Dを含んでいる。
【0014】
載置台11の後縁の幅方向中央には、アーム15が設けられている。アーム15の先端部は前方に屈曲し、載置台11の載置面10と間隔をおいて対向している。アーム15の上面にはモニター13が配設されると共に、被写体2の位置決めのためのレーザ光を発生するレーザポインタ16と、載置面11を照明するための照明部17とが内蔵されている。アーム15の先端にはカメラ12が支持されている。
【0015】
モニター13は、カメラ12の後述する撮像素子50によって生成された撮像信号に基づいて生成された画像信号が供給されることにより、被写体2の画像を表示するものであり、例えば液晶表示装置により構成されている。モニター13は、アーム15の上面に着脱可能に取り付けてもよいし、あるいは、ビデオマイクロスコープ1と離れた箇所に配置してもよい。
【0016】
レーザーポインタ16は、載置面10に向けて位置決め用のレーザ光を照射するものである。載置面10上のレーザ光の照射位置に被写体2を位置決めすることにより、カメラ12の後述する撮像光学系20の光軸OA上に被写体2を位置させ、被写体2の撮像を容易にすることが可能となる。
【0017】
照明部17は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等よりなる複数の光源と、拡散板と、フレネルレンズとを含んで構成されている。
【0018】
レーザポインタ16および照明部17は、制御部18により制御されている。制御部18は、光量調整用ボリュームスイッチ14Aの操作に応じて照明部17の光源を一括してオンオフするとともに光源全体の光量の制御を行い、ライトパターンスイッチ14Bの操作に応じて照明部17の光源の点滅を個別に制御する。また、制御部18は、ポインタスイッチ14Cの操作に応じてレーザーポインタ16の点灯、滅灯の制御を行う。なお、電源スイッチ14Dは、カメラ12、モニター13,照明部17,制御部18等への電源供給のオン、オフ制御を行うためのものである。
【0019】
図3は、図1に示したカメラ12の内部構造を表したものである。カメラ12は、複数のレンズ21A〜21E(以下、レンズ21と総称する。)よりなる撮像光学系20を有している。撮像光学系20の光軸OA(レンズ21のすべての光学中心を結んだ線)は、載置面10の上方斜めから載置面10上の被写体2に向けられている。撮像光学系20の光軸OAが載置面10に対してなす角度α(図2参照)は、例えば45°程度である。撮像光学系20の下端には、反射光学系30が、反射光学系支持機構40により支持されている。撮像光学系20の上端には、CCD(Charge Coupled Device ;電荷結合素子)などの撮像素子50が配置されている。
【0020】
撮像光学系20は、レンズ21を収容した多数のレンズマウント22を連結した筒構造23を有している。この筒構造23の上部は、撮像素子50と共に、先端が半球状の筐体24で覆われている。図3では、光軸OAの左半分にレンズマウント22を、光軸OAの右半分にレンズ21および筒構造23の外形を表している。なお、レンズマウント22にはそれぞれ対応するレンズ21が収容されているが、図3では、そのうち主だった五つのレンズ21A〜21Eのみを表している。また、レンズ21はズームレンズであり、倍率セッティングにより光軸OA方向に移動可能となっている。
【0021】
この撮像光学系20は、撮像光学系支持機構60によりアーム15の先端に支持されている。撮像光学系支持機構60は、載置面10と直交する旋回中心軸TAを中心に撮像光学系20を旋回可能に支持している。このように撮像光学系20を水平旋回させることにより、プリズムアセンブリ等の高価な光学部品を用いることなく、被写体2の像を正立状態としたままで左右側面を観察することが可能となっている。旋回範囲は、例えば図4に示したように、アーム15の先端の幅方向中心(使用者からみて手前側正面)の旋回基準位置T0から左方に45°、右方に45°、合計90°とすることができる。撮像光学系支持機構60による撮像光学系20の旋回は、手動により行ってもよいし、またはモータなどの動力源により行ってもよい。
【0022】
撮像光学系支持機構60は、例えば、アーム15の前方側面の溝15Aに緩挿された棒状のガイド部材61と、このガイド部材61に結合された環状部材62とを有している。環状部材62は、ネジ62Aにより筒構造23の中央付近に固定されている。アーム15の溝15A内には公知のガイドレールなどのガイド部材(図示せず)が設けられており、ガイド部材61は、このガイド部材に滑動可能に結合されている。なお、環状部材62には筐体24の下端を嵌め込み可能となっている。
【0023】
図5は、図4に示した撮像光学系20の旋回により得られる被写体2の像を表したものである。図5(B)に示したように、撮像光学系20が撮像光学系支持機構60により旋回基準位置T0に支持されている場合には、被写体2の主に正面および上面を観察可能となる。図5(A)に示したように、撮像光学系20が撮像光学系支持機構60により左方に旋回された場合には、被写体2の主に上面および左側面を観察可能となる。図5(C)に示したように、撮像光学系20が撮像光学系支持機構60により右方に旋回された場合には、被写体2の主に上面および右側面を観察可能となる。
【0024】
撮像光学系20の旋回中心軸TAと撮像光学系20の光軸OAとは、載置面10上の被写体2の上面またはその近傍で交差していることが望ましい。旋回中心軸TAと光軸OAとが交差する箇所に被写体2が位置していれば、撮像光学系20が旋回中心軸TAを中心として旋回した場合、その旋回位置に拘わらず、撮像光学系20の光軸OAは被写体2を通り、被写体2の像が撮影光学系20によって撮像素子50に導かれて撮像されることが可能となる。そのためには、上述したレーザポインタ16は、旋回中心軸TA上に配置されていることが望ましい。
【0025】
なお、撮像光学系支持機構60は、撮像光学系20の光軸OAと載置面10とのなす角度αを、上述した約45°から例えば±5度の範囲で増減する調整機構(図示せず)を有していることが望ましい。これにより、被写体2の寸法・形状に応じて撮像光学系20を揺動させて光軸OAが被写体2を通るように調整することが可能となる。そのような調整機構としては、例えば、操作ダイヤルの回転量に応じて撮像光学系20を支軸回りに揺動させるなど従来公知のさまざまな構造が採用可能である。
【0026】
図3に示した反射光学系30は、載置面10と撮像光学系20の下端との間に、載置面10側から順に、撮像光学系20の光軸OAの外側の第1ミラー31と、撮像光学系20の光軸OA上の第2ミラー32を有している。被写体2の像は、第1ミラー31および第2ミラー32を通る屈曲光路OPを経て撮像光学系20に導かれるようになっている。
【0027】
第1ミラー31および第2ミラー32は、例えば、表面反射ミラーで構成されている。表面反射ミラーは、ガラス表面に蒸着された反射膜で入射光を直接反射させるものであり、入射光がガラスを通過しないものである。これに対して、一般的なミラーはガラスの裏面に反射膜を蒸着し、ガラス表面から入射した光を反射膜で反射させる構成としている。しかしながら、裏面反射ミラーを用いた場合には、仮にガラス表面での反射が無視できるほど小さいときであっても、収差が発生して画像を乱すおそれがあり、それを補正するための光学部品が必要となる。第1ミラー31および第2ミラー32を表面反射ミラーで構成することで収差を抑えた撮像が可能となり、被写体2の像の品質向上が可能となる。また、第1ミラー31および第2ミラー32を構成する表面反射ミラーの基板面精度は、可視光線の平均波長よりも小さいものであることが望ましい。これにより、被写体2の像の品質を更に向上させることが可能となる。
【0028】
図3に示した反射光学系支持機構40は、反射光学系30を撮像光学系20の光軸OAの回りに回転可能に支持するものである。回転範囲は、例えば図6に示したように、回転基準位置R0から、時計回りに360°、反時計回りにも360°とすることができる。反射光学系支持機構40による反射光学系30の旋回は、手動により行ってもよいし、またはモータなどの動力源により行ってもよい。
【0029】
ここで回転基準位置R0とは、第1ミラー31が使用者からみて手前側正面、すなわち、図7に示したように、第1ミラー31と載置面10との距離Hが最小になる位置である。ちなみに、図1,図2および図6では、第1ミラー31が回転基準位置R0から時計回りまたは反時計回りに180°回転した位置(回転基準位置R0に180°対向する位置)にある場合を表しており、このとき第1ミラー31と載置面10との距離Hは最大となっている。なお、以下の説明においては、時計回りの場合には度数に+を付し、反時計回りの場合には度数に−を付して表す。
【0030】
このような反射光学系支持機構40は、具体的には、第1ミラー31を支持する第1ステー41を有している。この第1ステー41は、筒構造23の下端に取り付けられた筒部材42に、ネジ41Aにより固定されている。また、第1ステー41の内側には、第2ミラー32を支持する第2ステー43が、支軸43Aにより支持されている。
【0031】
図8は、筒部材42の一例を表したものである。筒部材42は、内側筒部材42Aおよび外側筒部材42Bを有している。内側筒部材42Aは、筒構造23に着脱可能であると共に外周面にガイド溝42A1を有している。ガイド溝42A1は、内側筒部材42Aの外周面に連続して一周(360°)設けられている。外側筒部材42Bは、内周面にガイド溝42A1に係合するボールプランジャ42B1を有している。このボールプランジャ42B1により、外側筒部材42Bは、内側筒部材42Aに対して時計回りまたは反時計回りに360°回転可能に支持されると共に内側筒部材42Aから取り外し可能となっている。また、外側筒部材42Bには第1ステー41が固定されており、外側筒部材42Bの回転に伴って、第1ステー41および第2ステー43も外側筒部材42Bと共に回転可能となっている。
【0032】
具体的には、ボールプランジャ42B1は、外側筒部材42Bの内周面に、周方向に間隔をおいて複数の球体および各球体に対応するスプリングを有している。スプリングは、対応する球体を外側筒部材42Bの内周面から突出する方向に付勢するものである。これにより、球体は外側筒部材42Bの半径方向に往復移動可能となっている。
【0033】
例えば、外側筒部材42Bを内側筒部材42Aから抜き出す方向に所定値以上の外力を与えると、球体が外側筒部材42B内に没入し、外側筒部材42Bを内側筒部材42Aから取り外すことが可能となる。
【0034】
また、例えば、外側筒部材42Bを内側筒部材42Aに被せる方向に所定値以上の外力を与えると、球体が外側筒部材42B内に一旦没入したのちガイド溝42A1に係合する。これにより外側筒部材42Bは、第1ステー41および第2ステー43と共に、内側筒部材42Aに回転可能に支持される。なお、このような反射光学系支持機構40の構成としては、従来公知のさまざまな脱着構造が採用可能である。
【0035】
図9は、図6に示した反射光学系30の回転による被写体2の像を表したものである。図9(G)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により回転基準位置R0に支持されている場合には、被写体2の主に正面を観察可能となる。図9(F),図9(D)および図9(A)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により時計回りに回転された場合には、被写体2の主に上面および左側面を観察可能となる。図9(B)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により180°回転された場合には、被写体2の主に上面を観察可能となる。図9(H),図9(E)および図9(C)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により反時計回りに旋回された場合には、被写体2の主に上面および右側面を観察可能となる。このように反射光学系30を回転することにより被写体2を垂直方向から水平方向までの様々な方向から観察する、いわゆるマルチアングル観察が可能となる。
【0036】
図10および図11は、反射光学系支持機構40の構成の一例を表したものである。第2ステー43は、第1ステー41により支軸43Aを中心として揺動可能に支持されている。すなわち、第2ステー43は、図10に示したように、撮像光学系20の光軸OA上において屈曲光路OPを形成する第1の揺動位置P1と、図11に示したように、撮影光学系20の光軸OAから退避した第2の揺動位置P2との間で切り替え可能となっている。第2ステー43が第1の揺動位置P1にある場合には、被写体2の像は反射光学系30による屈曲光路OPを経て撮像光学系20に導かれる。一方、第2ステー43が第2の揺動位置P2にある場合には、被写体2の像は、反射光学系30を介さずに直接、撮像光学系20に導かれる。このように、反射光学系30を筒構造23に取り付けたままで、撮像光学系20および反射光学系30を併用する観察と、撮像光学系20のみを用いる観察とを切り替えることが可能となり、操作の利便性が向上する。なお、第2ステー43と第1ステー41との間には、第2ステー43が第1の揺動位置P1または第2の揺動位置P2に位置した際にそれぞれ第1ステー41に係合することで第2ステー43の位置を保持する公知のクリック機構が設けられていてもよい。
【0037】
図3に示した撮像素子50は、撮像光学系20によって導かれた被写体2の像を撮像し撮像信号を生成するものであり、例えば矩形形状のCCD回路基板により構成されている。撮像素子50は、信号処理部70を介してモニター13に接続されている。信号処理部70は、撮像素子50によって生成された撮像信号に対して信号処理を行って画像信号を生成し、その画像信号をモニター13に供給するものである。
【0038】
この撮像素子50は、反射光学系支持機構40による第1ミラー31の回転方向位置に応じて撮像光学系20の光軸OAの回りに回転可能とされている。これにより、このビデオマイクロスコープ1では、反射光学系30を併用した場合に撮像光学系20のみを用いた場合と同じ像を得ることが可能となっている。
【0039】
すなわち、光軸OAを中心に回転可能な反射光学系30により、様々な観察方向を実現しようとする場合には、カメラ・レンズの回転に伴って被写体の像が回転することがある。特にレンズを被写体に対して垂直に向けた状態では、完全な倒立状態にもなりえる。このような不自然な観察状態を解消するためには、プリズム等の光学アセンブリを追加することも考えられるが、コストの増大は避けられない。本実施の形態では、反射光学系30の回転に伴って被写体2の像に傾きが生じるが、撮像素子50を回転させることにより被写体2の像の傾きを補正し、自然な観察状態を維持することが可能となる。以下、このような反射光学系30および撮像素子50の回転について更に詳しく説明する。
【0040】
(動作)
このビデオマイクロスコープ1では、載置面10に置かれた被写体2の像は、反射光学系30の第1ミラー31により光軸OA側に反射されたのち、第2ミラー32により、光軸OA上で撮像光学系20に向けて反射される屈曲光路OPを経て撮像光学系20に導かれ、撮像光学系20の上端に配置された撮像素子50により撮像され、モニター13に表示される。
【0041】
ここで、撮像光学系20のみを用いて被写体2を手前側正面から観察した場合、被写体2の像では、図5(B)に示したように、像の上方が被写体2の奥側、像の下方が被写体2の手前側となっており、かつ被写体2の底辺が水平に見えるのが自然である。被写体2は通常、観察者の方を向くように置かれるからである。
【0042】
図12および図13は、反射光学系30を併用して図5(B)と同じく手前側正面からみた像を得ようとする場合の手順を表したものである。まず、図12に示したように、撮像光学系20を旋回基準位置T0において、反射光学系支持機構40により反射光学系30を撮像光学系20の光軸OAの回りに回転させる。これにより、第1ミラー31を右方または左方の約45°上方斜めの位置まで回転させ、観察の俯角を上方斜め方向とする。なお、反射光学系30の回転方向は反時計回りまたは時計回りのいずれでもよいが、図12では、反射光学系30を矢印R方向に反時計回りに回転させ、第1ミラー31を右上方斜めの位置まで回転させた場合を表している。
【0043】
図12の状態では、被写体2を右方または左方のいずれかから観察することになる。そこで、図13に示したように、撮像光学系支持機構60により撮像光学系20を左方または右方に旋回させて、第1ミラー31を観察者からみて手前側正面まで移動させ、左右成分を打ち消す。なお、図13では、第1ミラー31が右上方斜めの位置にあるので、撮像光学系20を左方に旋回させるようにしている。
【0044】
ところが、このようにして実際に得られる観察画像では、図14に示したように、被写体2の底辺が水平ではなく左上がりまたは右上がりに傾いてしまう。図14では、被写体2の像の底辺は、水平方向に対して約30°右上がりとなっている。
【0045】
図15は、図13に続く手順を表したものである。図15(A)は、図13における撮像素子50の状態を表したものである。撮像素子50は正立状態、すなわち矩形形状の撮像素子50の底辺が、旋回中心軸TAと光軸OAとを結ぶ線に対して直交している状態で配設されている。撮像素子50の中央には、撮像素子50とCCD制御回路(図示せず)とを接続するフレキシブルケーブル51が配設されている。
【0046】
ここで、図15(B)に示したように、撮像素子50を、反射光学系30と同方向すなわち反時計回りに回転させ、水平方向に対して右上がりに傾ける。これにより、図16に示したように、被写体2の像の底辺が水平となり、図5(B)と同じ像が得られる。第1ミラー31の回転量が上述した約45°である場合、撮像素子50の傾きθが約30°で被写体2の像の底辺が水平となる。
【0047】
このように第1ミラー31の回転方向位置に応じて撮像素子50が撮像光学系20の光軸OAの回りに回転されることにより、反射光学系30の回転によって生じた被写体2の像の傾きが低減ないし解消されることが分かる。
【0048】
図17は、シミュレーションおよび実測により、第1ミラー31の回転方向位置に応じた撮像素子50の最適な傾きθを求めたものである。図17に示したように、第1ミラー31が回転基準位置R0から±135°以内の範囲で回転される場合には、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50が第1ミラー31と同じ方向に回転され、撮像素子50の傾きθは第1ミラー31の回転角度の3分の1(1/3)である。第1ミラー31が±135°を超えて更に回転された場合(+135°〜+180°、−135°〜−180°)には、撮像素子50の回転方向は反転される。すなわち、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50が第1ミラー31と逆方向に回転される。第1ミラー31が180°または−180°に到達したときに、撮像素子50は傾きのない正立状態(θ=0°)に戻る。
【0049】
ただし、図17における135°、3分の1等の数値については、反射光学系30の寸法などによって最適値は増減するものであり、また、正確に最適値になっていなかった場合にも一定の効果を得ることが可能である。例えば、撮像素子50の回転方向を反転させる角度(回転方向反転角度)X°は90°以上の角度であれば、被写体2の像の見た目に違和感が少なくなり、図17と同様の効果が得られる。具体的には、図18に示したようにX=120°,−120°、または図19に示したようにX=90°,−90°としてもよい。
【0050】
以上に基づいて、第1ミラー31の回転方向位置に応じた撮像素子50の回転を、図20ないし図23を参照して説明する。まず、図20に示したように、第1ミラー31が回転基準位置R0(被写体2から第1ミラー31に至る光路が載置面10に対して平行(ほぼ平行)になる位置;図7参照)にある場合には、撮像素子50は傾きのない正立状態(θ=0°)に配置されている。
【0051】
図21および図22に示したように、第1ミラー31が回転基準位置R0から時計回りまたは反時計回りにX°以内の範囲で回転される場合には、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50が第1ミラー31と同じ方向に回転される。この場合には、第1ミラー31の回転角度と撮像素子50の傾きθとが正の係数(例えば3分の1(1/3))による比例関係を代表例とする正の相関を有することが好ましい。
【0052】
第1ミラー31の回転方向位置が±X°を超えた場合、すなわち第1ミラー31が回転基準位置R0から時計回りにX°と180°との間、または反時計回りにX°と180°との間の範囲で回転される場合には、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50が第1ミラー31と反対方向に回転される。このようにすることにより、撮像素子50をずっと同じ方向に回し続けてフレキシブルケーブル51がよじれてしまうという深刻な問題が生じることが回避される。また、被写体2の像の傾き程度は倒立状態までいかず、左上がり45°〜右上がり45°の範囲と比較的小さいので、撮像素子50の回転により十分に修正可能である。図23に示したように、第1ミラーが回転基準位置R0から180°または−180°回転される場合には、撮像素子50は傾きのない元の正立状態(θ=0°)に戻る。
【0053】
図24は、このようにして反射光学系30および撮像素子50の両方を回転させた場合に得られる被写体2の像を表したものである。図24(A)〜図24(G)の各図の右下の数字は撮像素子50の傾きθを表し、時計回りの場合は+、反時計回りの場合は−を度数の前に付している。図24(G)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により回転基準位置R0に支持されている場合には、被写体2の主に正面を観察可能となる。図24(F),図24(D)および図24(A)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により時計回りに回転された場合には、被写体2の主に上面および左側面を観察可能となる。図24(B)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により180°回転された場合には、被写体2の主に上面を観察可能となる。図24(H),図24(E)および図24(C)に示したように、反射光学系30が反射光学系支持機構40により反時計回りに旋回された場合には、被写体2の主に上面および右側面を観察可能となる。
【0054】
図24から分かるように、反射光学系30および撮像素子50の両方を回転させた場合には、図9のように反射光学系30のみを回転させた場合に比べて、マルチアングル観察がより自然な見え方に近くなっていることが分かる。この相違は、特に斜め方向から被写体2を見たときに明瞭なものとなる。また、反射光学系30を併用した場合にも、撮像光学系20のみを用いた場合と同じ俯角で同じ像を得ることが可能となるので、事実上水平旋回範囲が拡大されたことになる。
【0055】
撮像素子50は手動で回転可能としてもよいし、あるいは、以下第1〜第4の例で説明するように、撮像素子回転機構により自動的に撮像光学系20の光軸OAの回りに回転可能としてもよい。
【0056】
(第1の例)
図25は、撮像素子回転機構の第1の例を表したものである。この撮像素子回転機構110は、撮像素子50の回転を、ギアによる機械的な機構を用いて行うようにしたものであり、撮像素子側ギア111およびこれに噛み合う撮像素子側小ギア112を有している。撮像素子側ギア111には撮像素子50が取り付けられている。一方、反射光学系30側には、反射光学系側ギア113A,113Bと、それぞれに噛み合う反射光学系側小ギア114A,114Bとが設けられている。反射光学系側小ギア114Aおよび撮像素子側小ギア112は、伝達用小ギア115A,115B,115C,116および軸117により連結されている。反射光学系側小ギア114Bおよび撮像素子側小ギア112は、伝達用小ギア118,116および軸117により連結されている。なお、図25は、第1ミラー31が回転基準位置R0から180°にある場合を表している。
【0057】
図26は、図25に示した反射光学系側ギア113A,113Bおよびその周辺を拡大して表したものである。反射光学系側ギア113A,113Bは、前後に分けて歯が設けられている。また、反射光学系側ギア113A,113Bは、撮像素子50の回転方向反転角度X°を境にして、円周方向において異なる範囲に歯が設けられている。すなわち、反射光学系側ギア113Aは、第1ミラー31の回転方向位置が回転基準位置R0から例えばX°=±135°以内の範囲にある場合のためのものであり、回転基準位置R0から例えばX°=±135°以内の範囲のみに歯が設けられている。反射光学系側ギア113Bは、第1ミラー31の回転方向位置が回転基準位置R0から例えば+135°〜+180°、または−135°〜−180°の範囲にある場合のためのものであり、+135°から180°を通過して−135°までの範囲のみに歯が設けられている。
【0058】
図26に示したように、第1ミラー31の回転方向位置が回転基準位置R0から例えば+135〜+180°、または−135°〜−180°の範囲にある場合には、反射光学系側ギア113Bの回転力は、反射光学系側小ギア114Bで受け取られる。反射光学系側小ギア114Bで受け取られた回転力は、伝達用小ギア118,116を用いて軸117を介して撮像素子側小ギア112および撮像素子側ギア111に伝えられる。ギア枚数の偶数・奇数の関係から、撮像素子50の回転方向は第1ミラー31の回転方向とは逆になる。よって、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50が第1ミラー31と逆方向に回転され、撮像素子50の回転角度(傾きθ)は第1ミラー31の回転角度と同じになる。
【0059】
このとき、反射光学系側小ギア114Bと伝達用小ギア118との間にある反射光学系側小ギア114Aおよび伝達用小ギア115Aは、回転伝達の点で反射光学系側小ギア114Bおよび伝達用小ギア118とは分離されている。反射光学系側小ギア114Aおよび伝達用小ギア115Aは筒状の軸(外筒)119Aで連結されており、この外筒119Aは、反射光学系側小ギア114Bおよび伝達用小ギア118を接続する内軸119Bに差し込まれている。
【0060】
なお、第1ミラー31の回転方向位置が回転基準位置R0から例えば+135〜+180°、または−135°〜−180°の範囲にある場合に、反射光学系側小ギア114Bの回転に起因して反射光学系側小ギア114Aが回転することは無害である。なぜなら、この場合には反射光学系側小ギア114Aには噛み合う歯がなくフリーだからである。
【0061】
図27は、図26に続いて、第1ミラー31の回転方向位置が−135°になった状態を表したものである。すなわち、図27は、反射光学系側小ギア114Bおよび伝達用小ギア118,116を介して、撮像素子50を逆方向に回転させる力が伝わる最後の瞬間を表している。第1ミラー31が図27よりも少しでも時計回りに回転すると、反射光学系側小ギア114Bには噛み合う歯がなくなりフリーとなる。代わって、撮像素子側ギア111に回転力を与えるのは反射光学系側小ギア114Aとなる。
【0062】
反射光学系側小ギア114Aは、第1ミラー31の回転方向位置が−135°を過ぎ、回転基準位置R0を通過して+135°に達するまでの間は、反射光学系側ギア113Aからの回転力を受け取る。反射光学系側小ギア114Aで受け取られた回転力は、筒119Aを通って伝達用小ギア115Aへ伝達され、伝達用小ギア115Bで3分の1(1/3)の速度に減速される。更に伝達用小ギア115C,116により軸117を介して撮像素子側小ギア112および撮像素子側ギア111に伝えられる。これにより、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50が第1ミラー31と同じ方向に回転され、撮像素子50の回転角度(傾きθ)は第1ミラー31の回転角度の3分の1になる。
【0063】
このように、反射光学系側小ギア114A,114B,伝達用小ギア115A〜115C,116,118は常時かみ合っており、第1ミラー31の回転方向位置に応じて反射光学系側小ギア114A,114Bのいずれかが反射光学系30からの回転力を得て、伝達用小ギア116により撮像素子50が第1ミラー31と同じ方向または逆方向に回転される。
【0064】
そのため、反射光学系側小ギア114Aが反射光学系30からの回転力を得ている場合には反射光学系側小ギア114Bは従属的に回転し、反射光学系側小ギア114Bが反射光学系30からの回転力を得ている場合には反射光学系側小ギア114Aは従属的に回転する。従属的に回転するとは、反射光学系側ギア113A,113Bに相対する歯がないということであり、反射光学系側小ギア114A,114Bはフリーになるので無害である。ただし、反射光学系30を高速に回転した場合には、反射光学系側小ギア114A,114Bは瞬時に交代することになり、衝撃をうける可能性があるので、この部分は特に耐久性に優れた設計にすることが望ましい。
【0065】
(第2の例)
図28は、撮像素子回転機構の第2の例を表したものである。この撮像素子回転機構120は、撮像素子50の回転をカム121および制御アーム122を用いた機械的な機構により行うようにしたものである。なお、図28は、第1ミラー31が回転基準位置R0から180°にある場合を表している。
【0066】
カム121は、反射光学系支持機構40に取り付けられている。また、カム121は、第1ミラー31の回転方向位置に応じて撮像素子50を適切な回転方向および回転量で回転させることが可能な形状を有している。例えば、以下の説明では、カム121が、第1ミラー31の回転方向位置が−180°〜−135°の範囲では撮像素子50が45度右上がりとなり、第1ミラー31の回転方向位置が+180°〜+135°の範囲では撮像素子50が45度左上がりとなるような形状を有している場合について説明する。
【0067】
制御アーム122は、例えば、一端にカム121の周に接するボール部122Aを有し、他端122Bが撮像素子50の右側に取り付けられている。なお、制御アーム122の他端122Bは撮像素子50の右側または左側のいずれかに取り付けられていればよい。
【0068】
図29は、反射光学系30を−180°から−135°に、時計回り方向に回転させた場合を表したものである。この場合には、カム121によりボール部122Aが下がり、これに伴って撮像素子50の右側が制御アーム122により上方に引っ張られて、撮像素子50が反時計回り(右上がり)に回転する。
【0069】
図30は、反射光学系30を図29とは反対方向に、すなわち+180°から+135°に、反時計回り方向に回転させた場合を表したものである。この場合には、カム121によりボール部122Aが上がり、これに伴って撮像素子50の右側が制御アーム122により下方に下げられ、撮像素子50が時計回り(左上がり)に回転する。
【0070】
(第3の例)
図31は、撮像素子回転機構の第3の例を表したものである。この撮像素子回転機構130は、原点付ロータリーエンコーダ131により第1ミラー31の回転方向位置を検出し、その回転方向位置情報に基づいてサーボモータ132により撮像素子50を回転させるようにしたものである。
【0071】
反射光学系30側には、反射光学系側ギア133と、それに噛み合う反射光学系側小ギア134とが設けられている。反射光学系側ギア133は、全周にわたって連続して歯が設けられている。反射光学系側小ギア134は、軸135を介して原点付ロータリーエンコーダ131に連結されている。一方、撮像素子50側には、撮像素子側ギア136およびこれに噛み合う撮像素子側小ギア137が設けられている。撮像素子側ギア136には撮像素子50が取り付けられている。撮像素子側小ギア137は、軸138を介してサーボモータ132に連結されている。
【0072】
図32は、この撮像素子回転機構130の構成を表すブロック図である。原点付ロータリーエンコーダ131は、反射光学系側ギア133の回転量に基づいて第1ミラー31の回転方向位置を検出するものであり、インタフェース139を介してCPU140に接続されている。CPU140は、原点付ロータリーエンコーダ131により検出された第1ミラー31の回転方向位置情報に基づいて、撮像素子50の回転方向および回転量を算出し、その情報をドライバ141に供給するものである。サーボモータ駆動部141は、CPU140から供給された情報に基づいてサーボモータ132を駆動するものである。
【0073】
この撮像素子回転機構130では、原点付ロータリーエンコーダ131が、反射光学系側ギア133の回転量に基づいて第1ミラー31の回転方向位置を検出し、検出結果をインタフェース139を介してCPU140に供給する。CPU140は、原点付ロータリーエンコーダ131から供給された第1ミラー31の回転方向位置情報に基づいて、撮像素子50の回転方向および回転量を算出し、その情報をサーボモータ駆動部141に供給する。サーボモータ駆動部141は、CPU140から供給された情報に基づいてサーボモータ132を駆動し撮像素子側ギア136を回転させることにより、撮像素子50を所定の方向に所定量回転させる。第3の例は、プログラムによりきめ細やかな制御が可能となるという利点を有する。また、第3の例は、第1の例または第2の例に比べて部品コストが低くなるので大量生産に有利である。
【0074】
(第4の例)
図33は、撮像素子回転機構の第4の例を表したものである。この撮像素子回転機構150は、原点付ロータリーエンコーダ131により第1ミラー31の回転方向位置を検出し、その回転方向位置情報に基づいて、撮像素子50によって撮像された画像データを処理することにより、撮像素子50を回転させたのと同様の画像をモニター13に表示するようにしたものである。
【0075】
反射光学系30側には、第3の例と同様に、反射光学系側ギア133と、それに噛み合う反射光学系側小ギア134とが設けられている。反射光学系側ギア133は、全周にわたって連続して歯がつけられている。反射光学系側小ギア134は、軸135を介して原点付ロータリーエンコーダ131に連結されている。
【0076】
図34は、この撮像素子回転機構150の構成を表すブロック図である。原点付ロータリーエンコーダ131は、反射光学系側ギア133の回転量に基づいて第1ミラー31の回転方向位置を検出するものであり、インタフェース139を介してCPU140に接続されている。CPU140は、原点付ロータリーエンコーダ131により検出された第1ミラー31の回転方向位置情報を信号処理部70(図3参照。)に供給するものである。信号処理部70は、撮像素子50およびモニター13に接続されており、撮像素子50により撮像された画像データおよびCPU140から供給された第1ミラー31の回転方向位置情報に基づいて画像処理(回転)を行い、モニター13に表示させるものである。
【0077】
この撮像素子回転機構150では、原点付ロータリーエンコーダ131が、反射光学系側ギア133の回転量に基づいて第1ミラー31の回転方向位置を検出し、検出結果をインタフェース139を介してCPU140に供給する。CPU140は、原点付ロータリーエンコーダ131により検出された第1ミラー31の回転方向位置情報を信号処理部70に供給する。信号処理部70は、撮像素子50により撮像された画像データおよびCPU140から供給された第1ミラー31の回転方向位置情報に基づいて画像処理(回転)を行い、モニター13に表示させる。
【0078】
このように本実施の形態では、反射光学系30の第1ミラー31の回転方向位置に応じて撮像素子50を回転可能としたので、反射光学系30の回転によって生じた被写体2の像の傾きを低減ないし解消し、反射光学系30を併用した場合に撮像光学系20のみを用いた場合と同じ像を得ることが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態では、更に以下の二つの利点を得ることも可能となる。第1に、撮像光学系20のみを用いる場合と、反射光学系30を併用する場合とでは総光路長が大きく異なっており、これらを切替可能とするためにはレンズ21に大きなフォーカス範囲が要求されていた。本実施の形態では、反射光学系30を併用した場合に撮像光学系20のみを用いた場合と同じ像を得ることが可能となるので、レンズ21としてフォーカス範囲の小さなレンズを使用することが可能となり、レンズ21のコストを低減することが可能となる。
【0080】
また、第2に、テレセントリックなどの特別な設計をされていない一般のレンズを用いた場合には、作動距離に応じて光学倍率が変動するのが一般的であり、レンズのズームカバーの位置を固定していても、光学系切替の際にモニター13に表示される被写体2のサイズが変動してしまっていた。しかしながら、本実施の形態では、反射光学系30を併用した場合に撮像光学系20のみを用いた場合と同じ像を得ることが可能となるので、光学系切替をあえて行う必要はなくなり、このような問題も解消される。
【0081】
特に、第1ミラー31が回転基準位置R0にある場合には、撮像素子50を正立状態で配置し、第1ミラー31が回転基準位置R0から時計回りまたは反時計回りにX°以内の範囲で回転される場合には、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50を第1ミラー31と同じ方向に回転させ、第1ミラー31が回転基準位置R0から時計回りにX°と180°との間、または反時計回りにX°と180°との間の範囲で回転される場合には、第1ミラー31が回転されると共に撮像素子50を第1ミラー31と反対方向に回転させ、第1ミラーが回転基準位置R0から180°にある場合には、撮像素子50を正立状態にするようにしたので、第1ミラー31の回転方向位置に応じて撮像素子50の傾きθを最適化することが可能となる。よって、より自然な見え方に近いマルチアングル観察を実現可能となると共に、事実上の水平旋回範囲の拡大が可能となる。
【0082】
また、特に、第1ミラー31が回転基準位置R0から時計回りまたは反時計回りにX°以内の範囲で回転される場合には、第1ミラー31の回転角度と撮像素子50の傾きとが比例関係を有するようにしたので、より高い効果を得ることが可能となる。
【0083】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、反射光学系30が第1ミラー31および第2ミラー32の2枚のミラーを有する場合について説明したが、反射光学系30は3枚以上のミラーを有していてもよい。ただし、反射光学系30は偶数枚のミラーを有していることが好ましい。偶数枚ではない場合には被写体2の像を画像信号処理にて左右反転する必要があるからである。
【符号の説明】
【0084】
1…ビデオマイクロスコープ、2…被写体、10…載置面、11…載置台、12…カメラ、13…モニター、14…操作部、15…アーム、16…レーザポインタ、17…照明部、18…制御部、20…撮像光学系、21…レンズ、22…レンズマウント、23…筒構造、30…反射光学系、31…第1ミラー、32…第2ミラー、40…反射光学系支持機構、41…第1ステー、42…筒部材、43…第2ステー、50…撮像素子、51…フレキシブルケーブル、60……撮像光学系支持機構、61…ガイド部材、62…環状部材、70…信号処理部、110,120,130,150…撮像素子回転機構、OA……光軸、OP…屈曲光路、RA…回転中心軸、TA…旋回中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象となる被写体が載置される載置面と、
前記載置面の上方斜めから前記載置面上の前記被写体に向けられた光軸を有する撮像光学系と、
前記載置面と前記撮像光学系の一端との間に、前記載置面側から順に、前記撮像光学系の光軸の外側の第1ミラーおよび前記撮像光学系の光軸上の第2ミラーを含む複数のミラーを有し、前記被写体の像を前記複数のミラーを経て前記撮像光学系に導く屈曲光路を形成する反射光学系と、
前記反射光学系を前記撮像光学系の光軸の回りに回転可能に支持する反射光学系支持機構と、
前記撮像光学系の他端に配置され、前記反射光学系支持機構による前記第1ミラーの回転方向位置に応じて前記撮像光学系の光軸の回りに回転可能な撮像素子と
を備えたビデオマイクロスコープ。
【請求項2】
前記第1ミラーが、前記第1ミラーと前記載置面との距離が最小になる回転基準位置にある場合には、前記撮像素子は正立状態で配置され、
前記第1ミラーが前記回転基準位置から時計回りまたは反時計回りにX°以内の範囲で回転される場合には、前記第1ミラーが回転されると共に前記撮像素子が前記第1ミラーと同じ方向に回転され、
前記第1ミラーが前記回転基準位置から時計回りにX°と180°との間、または反時計回りにX°と180°との間の範囲で回転される場合には、前記第1ミラーが回転されると共に前記撮像素子が前記第1ミラーと反対方向に回転され、
前記第1ミラーが前記回転基準位置から180°にある場合には、前記撮像素子は正立状態になる
請求項1記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項3】
前記第1ミラーが前記回転基準位置から時計回りまたは反時計回りにX°以内の範囲で回転される場合には、前記第1ミラーの回転角度と前記撮像素子の傾きとが比例関係を有する
請求項2記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項4】
前記X°は90°以上の角度である
請求項3記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項5】
前記撮像素子を前記撮像光学系の光軸の回りに回転させる撮像素子回転機構を備えた
請求項4記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項6】
前記撮像素子回転機構は、
前記反射光学系支持機構に取り付けられたカムと、
一端に前記カムの周に接するボール部を有し、他端が前記撮像素子の左側または右側のいずれかに取り付けられた制御アームと
を備えた請求項5記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項7】
前記撮像素子回転機構は、
前記撮像素子が取り付けられた撮像素子側ギアと、
前記撮像素子側ギアに噛み合う撮像素子側小ギアと、
前記反射光学系支持機構に設けられた反射光学系側ギアと、
前記反射光学系側ギアに噛み合う反射光学系側小ギアと、
前記撮像素子側小ギアおよび前記反射光学系側小ギアを連結する伝達用小ギアおよび軸と
を備えた請求項5記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項8】
前記撮像素子回転機構は、
前記第1ミラーの回転方向位置を検出する原点付ロータリーエンコーダと、
前記原点付ロータリーエンコーダにより検出された前記第1ミラーの回転方向位置情報に基づいて前記撮像素子を回転させるサーボモータと
を備えた請求項5記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項9】
前記載置面と直交する旋回中心軸を中心に前記撮像光学系を旋回可能に支持する撮像光学系支持機構を備えた
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項10】
前記反射光学系は偶数枚のミラーを有する
請求項9記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項11】
前記撮像光学系を収容する筒構造を有し、
前記反射光学系支持機構は、
前記筒構造に着脱可能であると共に外周面にガイド溝を有する内側筒部材と、
内周面に前記ガイド溝に係合するボールプランジャを有し、前記ボールプランジャにより前記内側筒部材に対して回転可能に支持されると共に前記内側筒部材から取り外し可能な外側筒部材と、
前記外側筒部材に取り付けられ、前記第1ミラーを支持する第1ステーと、
前記第1ステーに取り付けられ、前記第2ミラーを支持する第2ステーと
を備えた請求項10記載のビデオマイクロスコープ。
【請求項12】
前記第2ステーは、前記撮像光学系の光軸上において前記屈曲光路を形成する第1の揺動位置と、前記撮影光学系の光軸から退避した第2の揺動位置との間で揺動可能である
請求項11記載のビデオマイクロスコープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate


【公開番号】特開2011−186223(P2011−186223A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51978(P2010−51978)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】