説明

ピストンカップ、ブレーキチャンバー装置、アクチュエーター装置

【課題】ピストンの滑らかな移動およびシール性を考慮したピストンカップを提供すること。
【解決手段】ピストンカップ7は、ピストン(4)と係合する係合部16と、前記ピストン(4)の移動方向Xにおいて、前記係合部16より一端側に設けられた封止部18と、前記ピストン(4)の移動方向Xにおいて、前記封止部18と異なる位置に設けられ、前記ピストン(4)を案内するガイド部22と、を備え、該ガイド部22は、第1頂部23を有しており、前記封止部18は、第2頂部20aを有しており、該第1頂部23および前記第2頂部20aが前記チャンバーの内側面2aと接触した状態では、前記第1頂部23と前記第2頂部20aとの間の箇所24は、前記厚み方向Yにおいて、該第1頂部23および前記第2頂部20aより低くなる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の圧力が作用するチャンバー内を移動するピストンに取り付けられるピストンカップ、該ピストンカップを備えるブレーキチャンバー装置およびアクチュエーター装置に関する。
本明細書において、アクチュエーター装置とは、房室であるチャンバー内に設けられたピストンが、ピストンを基準とした少なくとも一の側の空間の流体の圧力が変化することにより、ピストンが移動する構成である装置をいう。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、ブレーキチャンバー装置は、房室であるチャンバーと、ピストンと、ピストンカップとを備えていた。このうち、ピストンはチャンバー内部を移動可能に設けられていた。また、ピストンカップは、ピストンの外周に取り付けられ、ピストンとチャンバーの内側面との間の隙間をなくし、ピストンによって分けられたチャンバーの一方の空間の空気を他方へ漏らさないようにすることができるように設けられていた。従来のピストンカップの構造を図7(A)(B)に示す。
【0003】
図7(A)に示すのは、従来のピストンカップの要部を示す断面図である。
図7(A)に示す如く、従来のピストンカップ50は、ピストン55の外周に取り付けられるべく、リング状に形成されていた。そして、ピストンカップ50のリング内側には、ピストン55の外周に形成された凸部56が嵌る内側凹部51が形成されていた。また、ピストン55の移動方向Xにおいて、内側凹部51を基準とした一方には、断面が二股に分岐したY字状のリップ部52が設けられていた。これにより、前記一方の空間の空気を他方へ漏らさないようにすることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP0451638A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ピストンカップ50のリング外側の面である外側面53の全体が、チャンバーの内側面54と広い範囲で面接触する構成であったため、ピストン55が移動する際の摺動抵抗が大きく、滑らかに摺動することができない虞があった。
ここで、図7(B)に示す如く、外側面53に外側凹部57を形成し、グリスを溜めることが考えられるが、面接触であることから、摺動抵抗が大きいままであった。また、外側凹部57が面接触する箇所によって囲われており、グリスが外側凹部57から逃げやすい。面接触により封止する所謂、面シールは、接触する箇所への力が接触する面によって分散されるため、シール性が十分でないからである。また、リップ部52もチャンバーの内側面54と面接触するため、シール性が十分ではない虞がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、ピストンの滑らかな移動およびシール性を考慮したピストンカップ、該ピストンカップを備えるブレーキチャンバー装置およびアクチュエーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様のピストンカップは、気体の圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、を有するブレーキチャンバー装置における前記ピストンに取り付けられるピストンカップであって、前記ピストンと係合する係合部と、前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように前記チャンバーの内側面と前記ピストンとの間を封止する封止部と、前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記チャンバーの内側面と接触し該内側面と前記ピストンとの間の距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第1頂部を有しており、前記封止部は、前記厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第2頂部を有しており、該第1頂部および前記第2頂部が前記チャンバーの内側面と接触した状態では、前記第1頂部と前記第2頂部との間の箇所は、前記厚み方向において、該第1頂部および前記第2頂部より低くなる構成であることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記ピストンカップは、前記第1頂部および前記第2頂部において、前記チャンバーの内側面と線接触することができる。従って、従来技術のピストンカップと比較して、摺動面積を大幅に小さくして摺動抵抗を大幅に小さくすることができる。
また、前記ピストンの移動方向における前記第1頂部と前記第2頂部との間において、前記ピストンカップと前記チャンバーの内側面との間に隙間を設けることができ、該隙間に摺動を滑らかにするためのグリスを溜めることができる。所謂、グリス溜まりである。そして、従来技術のピストンカップと比較して、前記グリス溜まりを大きくすることができる。
【0009】
またさらに、線接触によって封鎖する所謂、線シールである。線シールすることによって、面接触によって封鎖する所謂、面シールの構成と比較して、力を集中させて、シール性を高めることができる。その結果、グリスを逃がさないようにすることができる。即ち、摺動抵抗が大きくなる虞がない。また、前記一端側の空気を他端側に逃がさないようにすることができる。
【0010】
本発明の第2の態様のピストンカップは、気体の圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、を有するブレーキチャンバー装置における前記ピストンに取り付けられるピストンカップであって、前記ピストンと係合する係合部と、前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように前記チャンバーの内側面と前記ピストンとの間を封止する封止部と、前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記チャンバーの内側面と接触し該内側面と前記ピストンとの間の距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第1頂部を有しており、該第1頂部は、前記ピストンの移動方向における前記係合部の中心より前記他端側に設けられており、前記ピストンの移動方向における前記第1頂部と、前記封止部との間の箇所は、前記厚み方向において、前記第1頂部より低く形成された構成であることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記チャンバーの内側面と線接触することができるので、第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
ここで、ピストンが移動した際、前記チャンバーの内側面とガイド部との間に生じる摩擦力により、ガイド部がピストンから離れる方向に位置を変える所謂、浮き上がりが生じる虞がある。最悪の場合、ピストンカップとピストンとの係合が外れる虞がある。
そこで、前記第1頂部は、前記ピストンの移動方向における前記係合部の中心より他端側に設けられている。従って、前記ピストンカップを前記ピストンへ押さえ付けるように力を作用させることができ、前記浮き上がりを防止することができる。その結果、前記ピストンとの係合が外れる虞がない。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1または2の態様において、前記係合部は、前記ピストンの外周に形成された凸状部と係合する凹状に形成されており、前記封止部は、断面が前記一端側へ向かって二股に分岐する形状に形成されており、前記係合部における凹の底面の位置は、前記厚み方向において、前記封止部の前記二股の分岐点の位置より前記チャンバーの内側面側であることを特徴とする。
ここで、前記チャンバー内における前記ピストンの前記一端側の空気圧によって前記一端側の封止部が圧力を受け、ひずみが生じる。そして、該ひずみが前記封止部より他端側の前記係合部および前記ガイド部まで影響を及ぼす虞がある。
【0013】
そこで、本態様によれば、第1または2の態様と同様の作用効果に加え、前記係合部より封止部側に隙間(グリス溜まり)があるので、前記係合部より前記封止部側で前記ひずみを完結することができる。そのため、前記係合部近傍のグリス溜まりは小さくならない。即ち、確実にグリス溜まりを形成することができる。また、他端側にひずみの影響がないので、該ひずみによって係合が弛んで外れる虞がない。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記ピストンの移動方向における前記第1頂部と前記封止部との間は、前記チャンバーの内側面に対して滑らかな凹状面となる形状に形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、容易に線シールすることができ、かつ、グリス溜まりを大きくすることができる。また、節がない形状とすることができ、ひずみが大きい場合であっても、裂けて切れる所謂、キレが生じる虞がない。
【0015】
本発明の第5の態様のピストンカップは、気体の圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、を有するブレーキチャンバー装置における前記ピストンに取り付けられるピストンカップであって、前記ピストンの外周に形成された凸状部と係合する凹状に形成された係合部と、前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように前記チャンバーの内側面と前記ピストンとの間を封止する封止部と、を備え、前記封止部は、断面が前記一端側へ向かって二股に分岐する形状に形成されており、前記封止部の二股の分岐点より先端側に、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第2頂部を有しており、前記係合部における凹の底面の位置は、前記厚み方向において、前記封止部の前記二股の分岐点の位置より前記チャンバーの内側面側であり、該第2頂部が前記チャンバーの内側面と接触した状態では、前記ピストンの移動方向における前記第2頂部と、前記係合部との間の箇所は、前記厚み方向において、前記第2頂部より低くなる構成であることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記ピストンの移動方向における前記第2頂部と前記係合部との間において、前記ピストンカップと前記チャンバーの内側面との間に隙間を設けることができる。従って、上記第3の態様と同様の作用効果を得ることができる。即ち、前記係合部より前記封止部側で前記ひずみを完結することができる。前記係合部より前記封止部側で前記ひずみを完結することができる。その結果、前記ひずみによって係合が弛んで外れる虞がない。
また、前記ピストンカップは、前記第2頂部において、前記チャンバーの内側面と線接触することができる。従って、従来技術のピストンカップと比較して、摺動面積を大幅に小さくして摺動抵抗を大幅に小さくすることができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、少なくとも前記チャンバーの内側面と接触する箇所の表面には、粗面化処理が施されていることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記表面と前記チャンバーの内側面との間に、グリスが僅かに入り込み摺動抵抗を小さくすることができる。また、前記ピストンカップと前記チャンバーの内側面との接触面積をミクロで小さくして摺動抵抗を小さくすることができる。
【0018】
本発明の第7の態様のブレーキチャンバー装置は、気体の圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、該ピストンに取り付けられるピストンカップと、を有するブレーキチャンバー装置であって、前記ピストンカップは、上記第1から第6のいずれか一の態様の前記ピストンカップであることを特徴とする。
本態様によれば、前記ピストンカップは、上記第1から第6のいずれか一の態様の前記ピストンカップである。従って、前記ブレーキチャンバー装置において、上記第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0019】
本発明の第8の態様のアクチュエーター装置は、流体による圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、該ピストンと前記チャンバーとが接触する箇所における前記ピストン側および前記チャンバー側の一方に取り付けられるシール部材と、を有するアクチュエーター装置であって、前記シール部材は、前記一方と係合する係合部と、前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ流体が流れないように前記箇所におけるチャンバー側と前記ピストン側との間を封止する封止部と、前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記ピストン側および前記チャンバー側の他方と接触し前記移動方向と直交する方向における前記一方と他方との相対的な距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記他方に向かう第1頂部を有しており、前記封止部は、前記厚み方向において、前記他方に向かう第2頂部を有しており、該第1頂部および前記第2頂部が前記他方と接触した状態では、前記第1頂部と前記第2頂部との間の箇所は、前記厚み方向において、該第1頂部および前記第2頂部より低くなる構成であることを特徴とする。
本態様によれば、アクチュエーター装置において、上記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。尚、前記シール部材を設ける位置は、移動する前記ピストン側でもよいし、移動しない前記チャンバー側でもよい。
【0020】
本発明の第9の態様のアクチュエーター装置は、流体による圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、該ピストンと前記チャンバーとが接触する箇所における前記ピストン側および前記チャンバー側の一方に取り付けられるシール部材と、を有するアクチュエーター装置であって、前記シール部材は、前記一方と係合する係合部と、前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ流体が流れないように前記箇所におけるチャンバー側と前記ピストン側との間を封止する封止部と、前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記ピストン側および前記チャンバー側の他方と接触し前記移動方向と直交する方向における前記一方と他方との相対的な距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するシール部材の厚み方向において、前記他方に向かう第1頂部を有しており、該第1頂部は、前記ピストンの移動方向における前記係合部の中心より前記他端側に設けられており、前記ピストンの移動方向における前記第1頂部と、前記封止部との間の箇所は、前記厚み方向において、前記第1頂部より低く形成された構成であることを特徴とする。
本態様によれば、アクチュエーター装置において、上記第2の態様と同様の作用効果を得ることができる。尚、前記シール部材を設ける位置は、移動する前記ピストン側でもよいし、移動しない前記チャンバー側でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例のブレーキチャンバー装置を示す側断面図(ブレーキ解除時)。
【図2】本実施例のブレーキチャンバー装置を示す側断面図(フットブレーキ時)。
【図3】本実施例のブレーキチャンバー装置を示す側断面図(パーキングブレーキ時)。
【図4】(A)(B)は本実施例のピストンカップの要部を示す断面図。
【図5】(A)(B)は本実施例のピストンカップの要部を示す断面図。
【図6】(A)(B)は他の実施例のピストンカップの要部を示す断面図。
【図7】(A)(B)は従来技術におけるピストンカップの要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、アクチュエーター装置の一例である本実施例のスプリング式ブレーキチャンバー装置(以下、単にブレーキチャンバー装置という)のブレーキ解除時の状態を示す側断面図である。また、図2に示すのは、フットブレーキのペダルが踏まれたときのブレーキチャンバー装置の状態を示す側断面図である。またさらに、図3に示すのは、パーキングブレーキレバーが引かれたときのブレーキチャンバー装置の状態を示す側断面図である。尚、パーキングブレーキは、ペダルが踏まれることによってブレーキがかかる構成でもよい。
【0023】
図1に示す如く、ブレーキチャンバー装置1は、所謂、ピギーバックである一次側チャンバー2と、所謂、サービスチャンバーである二次側チャンバー11とを備えている。
このうち、一次側チャンバー2の内部には、第1ピストン4と、圧縮ばね3と、シール部材としてのピストンカップ7と、第1プッシュロット8とが設けられている。第1ピストン4は、ピストン軸26と一体に該ピストン軸26の軸方向へ移動可能に構成されている。また、圧縮ばね3は、第1ピストン4を二次側チャンバー側へ付勢するように設けられている。尚、図1に示す状態は、圧縮ばね3が縮んでいる状態である。
【0024】
またさらに、ピストンカップ7は、ゴムなどの弾性素材によってリング状の形成されており、第1ピストン4の外周に取り付けられている。そして、詳しくは後述するように、一次側チャンバー2の内側面2aと接触して第1ピストン4をピストン軸26の軸方向へ案内するように設けられている。さらに、一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした一方側の空間の空気を封止して該一方側の空気が他方側へ漏れないように構成されている。
【0025】
また、第1プッシュロット8は、第1ピストン4と一体に軸方向Xへ移動可能に設けられている。そして、後述するように、パーキングブレーキレバーが引かれたとき、二次側チャンバー側へ移動することにより、第2プッシュロット14を押すことができるように構成されている。
またさらに、一次側チャンバー2には、一例として、一次側流出入孔(図示せず)、一次側流入弁(図示せず)および一次側流出弁10が設けられている。このうち、一次側流出入孔(図示せず)は、一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側の空間の空気を一次側チャンバー2の外へ出すこと、および該空間に一次側チャンバー2の外の空気を入れることができるように構成されている。
【0026】
また、一次側流入弁(図示せず)は、開放時に一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側と反対側に、空気を流入することができるように設けられている。
またさらに、一次側流出弁10は、開放時に一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側と反対側の空気を、一次側チャンバー2の外へ流出することができるように設けられている。
【0027】
尚、第1プッシュロット8と一次側チャンバー2とが接触する箇所における一次側チャンバー側には、封止リング部材9が設けられている。封止リング部材9は、一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側と反対側の空間の空気を、一次側チャンバー2の外側へ逃がさないように構成されている。ピストン軸26と一次側チャンバー2とが接触する箇所における一次側チャンバー側にも、図示しない封止リング部材が設けられているものとする。
【0028】
一方、二次側チャンバー11の内部には、第2ピストン12と、ダイヤフラム13と、第2プッシュロット14とが設けられている。第2ピストン12は、第2プッシュロット14が延設されている方向Xに移動可能に設けられている。言い換えると、前述したピストン軸26の軸方向Xへ移動可能に設けられている。
また、ダイヤフラム13は、ある程度伸縮自在な材質で形成されている。言い換えると、弾性素材で形成された膜である。そして、ダイヤフラム13の縁が二次側チャンバー11に固定されており、ダイヤフラム13の中央部分は、第2ピストン12に取り付けられ、第2ピストン12と一体に移動するように構成されている。言い換えると、ダイヤフラム13は、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした一方側の空間の空気を封止して該一方側の空気が他方側へ漏れないように構成されている。
【0029】
またさらに、第2プッシュロット14は、第2ピストン12と一体に取り付けられている。さらに、第2プッシュロット14には、図示しないくさび部材が取り付けられている。そして、第2プッシュロット14が移動することにより、図示しないブレーキ装置のブレーキシューにくさびを打ち込むように作用し、ブレーキが作用するように構成されている。
また、二次側チャンバー11には、一例として、二次側流入弁15、二次側流出弁(図示せず)および二次側流出入孔(図示せず)が設けられている。このうち、二次側流入弁15は、開放時に二次側チャンバー11の外の空気を、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした一次側チャンバー側の空間へ流入することができるように設けられている。
【0030】
また、二次側流出弁(図示せず)は、開放時に二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした一次側チャンバー側の空間の空気を、二次側チャンバー11の外へ流出することができるように設けられている。
またさらに、二次側流出入孔(図示せず)は、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした第2プッシュロット14が設けられている側の空間の空気を、二次側チャンバー11の外に流出することができるように構成されている。さらに、二次側チャンバー11の外の空気を、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした第2プッシュロット14が設けられている側の空間に流入することができるように構成されている。
【0031】
そして、一次側流出弁10が閉じた状態では、一次側チャンバー2の内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側と反対側の空間に空気が流入して、空気圧が高い状態となる。この空気圧は、第1ピストン4を圧縮ばね3が設けられている側へ移動させ、圧縮ばね3のばね力に抗して圧縮ばね3を縮ませる。
【0032】
従って、ピストン軸26は、一次側チャンバー2から図1中の左側へ突出した位置となり、第1プッシュロット8は、二次側チャンバー11の第2ピストン12に対して何ら作用していない状態となる。
このとき、二次側チャンバー11の二次側流入弁15は、閉じた状態である。二次側流入弁15が閉じた状態では、第2ピストン12は、第2ピストン12の移動範囲において、一次側チャンバー側へ接近した位置に安定するように構成されている。例えば、図示しないばねの付勢力によって前記接近した位置に安定させることができる。
【0033】
図2に示す如く、ブレーキペダルが踏まれると、二次側チャンバー11の二次側流入弁15が開く。そして、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした一次側チャンバー側の空間へ、空気が流入される。このとき、圧力が加えられた空気が流入するため、第2ピストン12を基準とした一次側チャンバー側の空間が、押し広げられるように力が作用する。
【0034】
従って、第2ピストン12および第2プッシュロット14は、図1の状態から図2に示す如く、図2中の右側へ移動する。その結果、ブレーキが作用する。
尚、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした第2プッシュロット側の空間の空気は、二次側流出入孔(図示せず)から二次側チャンバー11の外へ排出されるものとする。
【0035】
踏まれたブレーキペダルが解放されると、二次側流入弁15が閉じる。そして、二次側流出弁(図示せず)が開く。従って、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした一次側チャンバー側の空間の空気は、二次側チャンバー11の外へ排出される。その結果、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした一次側チャンバー側の空間の空気圧は低下する。
【0036】
そして、第2ピストン12および第2プッシュロット14は、図1に示す位置に戻り、ブレーキは解除される。例えば、第2ピストン12および第2プッシュロット14は、前述した図示しないばねの付勢力によって図1に示す位置に戻る。
尚、この際、二次側流出入孔(図示せず)を介して、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした第2プッシュロット側の空間に、圧力が加えられた空気を流入させてもよい。係る場合、第2ピストン12および第2プッシュロット14を、図1に示す位置に、より確実に戻すことができる。
【0037】
図3に示す如く、パーキングブレーキレバーが引かれると、一次側チャンバー2の一次側流出弁10が開く。このとき、一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側と反対側の空気の圧力と、圧縮ばね3の力との均衡が崩れる。そして、該反対側の空気は、一次側チャンバー2の外へ流出され、第1ピストン4および第1プッシュロット8は、圧縮ばね3のばね力によって、二次側チャンバー側へ移動する。
尚、この際、一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側の空間に、一次側チャンバー2の外の空気が一次側流出入孔(図示せず)を介して流入される。従って、第1ピストン4および第1プッシュロット8の移動を妨げる虞がない。
【0038】
そして、第1プッシュロット8は、第2ピストン12と接触・押圧する。従って、第2ピストン12および第2プッシュロット14は、図1の状態から図3に示す如く、図3中の右側へ移動する。その結果、ブレーキが作用する。
尚、この際、二次側チャンバー内部における第2ピストン12を基準とした一次側チャンバー側の空間には、例えば、一次側流出弁10を介して一次側チャンバー2の空気が自然に入り込むように構成してもよい。係る場合、第2ピストン12および第2プッシュロット14の移動を妨げる虞がない。
【0039】
引かれたパーキングブレーキレバーが元に戻されると、一次側流出弁10が閉じると共に、一次側流入弁(図示せず)が開く。そして、一次側チャンバー内部における第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側と反対側の空間へ、空気が流入される。このとき、圧力が加えられた空気が流入するため、第1ピストン4を基準とした圧縮ばね3が設けられている側と反対側の空間が、押し広げられるように力が作用する。
【0040】
そして、空気の圧力は、圧縮ばね3のばね力に抗して、第1ピストン4を圧縮ばね3が設けられている側へ移動させ、圧縮ばね3を縮ませる。従って、第1ピストン4および第1プッシュロット8を図1に示す位置に戻すことができる。これに伴い、第2ピストン12および第2プッシュロット14は、第1プッシュロット8の作用を受けなくなるため、図1に示す位置に戻り、ブレーキは解除される。
【0041】
続いて、ピストンカップ7の形状および作用効果について詳しく説明する。
図4(A)(B)に示すのは、本実施例のピストンカップの要部を示す断面図である。このうち、図4(A)は第1ピストンに取り付ける前の状態の断面図である。一方、図4(B)は第1ピストンおよび一次側チャンバーに取り付けた状態の断面図である。
図4(A)(B)に示す如く、ピストンカップ7は、第1ピストン4の外周に取り付けるためにリング状に形成されている。そして、取り付けられた状態では、第1ピストン4と一次側チャンバー2の内側面2aとの間において、二つの役割を果たすように設けられている。
【0042】
第1の役割は、第1ピストン4が内側面2aを摺動する際において第1ピストン4をピストン軸26の軸方向Xへ案内することである。言い換えると、一次側チャンバー2の内側面2aと第1ピストン4との間の距離を精度良く保つことにより、内側面2aに対する第1ピストン4の相対的な位置関係を精度良く決めることである。
第2の役割は、第1ピストン4を基準とした少なくとも一方の空間の空気を封止することである。言い換えると、前記一方の空間の空気が他方へ移動しないように封止することである。
【0043】
具体的には、ピストンカップ7は、係合部16と、ガイド部22と、封止部18と、を備えている。このうち、係合部16は、リングの内側において、第1ピストン4と係合するように形成されている。係合部16は、凹形状に形成され、第1ピストン4の外周に形成された凸状部5が嵌るように構成されている。
尚、第1ピストン4の外周に凹状の溝が形成されている場合は、係合部16をリングの内側に向かって凸状に形成してもよい。
【0044】
また、ガイド部22は、前記第1の役割を果たすべく、少なくとも一部(後述する第1頂部23)において第1ピストン4の外周と、一次側チャンバー2の内側面2aとの間を厚み方向Yにおいて隙間無く埋めるように形成されている。本実施例において、ガイド部22は、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、係合部16の中心を基準として、少なくとも封止部18が形成されている側と反対側に形成されている。また、ガイド部22は、一次側チャンバー2の内側面2aに対して第1頂部23を有する形状に形成されている。
【0045】
そして、図4(A)に示す如く、ピストンカップ7を第1ピストン4に取り付け一次側チャンバー2に組み込む前の状態では、第1頂部23は、該組み込んだとした場合の一次側チャンバー2と僅かにオーバーラップするように形成されている。即ち、断面の厚み方向Yにおける第1頂部23の長さ(高さ)は、第1ピストン4の基準面6から一次側チャンバー2の内側面2aまでの距離より僅かに長くなるように構成されている。
尚、このときのピストンカップ7の位置は、第1ピストン4に取り付けたとした場合の位置を基準とする。
【0046】
またさらに、封止部18は、断面が図中の右側に向かって二股に分岐するY字状に形成されている。Y字状におけるリングの外側となる外側部20は、一次側チャンバー2の内側面2aと接触し、内側となる内側部21は、第1ピストン4の基準面6と接触するように構成されている。
図4(A)に示す如く、ピストンカップ7をピストンに取り付け一次側チャンバー2に組み込む前の状態では、外側部20は、先端側へ行くに従って、一次側チャンバー2とオーバーラップする範囲が広くなるように形成されている。同様に、内側部21は、先端側へ行くに従って、第1ピストン4とオーバーラップする範囲が広くなるように形成されている。尚、第1頂部23と封止部18との間の箇所25は、厚み方向Yにおいて、第1頂部23より低く形成されている。
【0047】
そして、図4(B)に示す如く、ピストンカップ7を第1ピストン4に取り付け一次側チャンバー2に組み込んだ状態では、ガイド部22の第1頂部23および封止部18の外側部20の先端近傍の第2頂部20aが、弾性変形して一次側チャンバー2の内側面2aと線接触する。ここで、第2頂部20aは、ピストンカップ7が前記組み込まれた状態において、外側部20における厚み方向Y外側へ向かって高くなる箇所である。
線接触は、接触箇所が細い線であることが望ましいが、ピストンカップ7が弾性素材で形成されているので、接触箇所がある程度太さのある線となってもよい。これにより、従来技術であるピストンカップ7の周方向外側全体がチャンバーの内側面2aと面接触する構成と比較して、接触面積を著しく小さくすることができる。その結果、第1ピストン4が一次側チャンバー2の内部を摺動する際の摺動抵抗を、従来の面接触する構成と比較して、著しく小さくすることができる。
【0048】
また、ピストンカップ7を組み込んだ状態では、形状が変形した状態から戻ろうとする力およびY字状の先端側(図中右側)の空間の空気の圧力によって、Y字の先端側の一方の外側部20の第2頂部20aは外側(図中上側)の一次側チャンバー2の内側面2aと隙間無く接触する。同様に、他方の内側部21は内側(図中下側)の第1ピストン4の基準面6と隙間無く接触する。従って、前記一方の空間の空気が他方へ移動しないように封止することができる。ここで、外側部20の第2頂部20aと、一次側チャンバー2の内側面2aとの接触は、線接触であるため、従来の面接触する構成と比較して、接触箇所に密に力が作用する。その結果、従来の面接触する構成と比較して、より確実に前記封止することができる。
【0049】
尚、Y字状の分岐点19は、断面の厚み方向Yにおいて、封止部18の略中央となるように構成されている。これは、係合部16を基準とした場合の封止部側の空気の圧力を受けたとき、分岐点19を基準として一次側チャンバー2の内側面側へ作用する力と、第1ピストン4の基準面側に作用する力とのバランスをとるためである。さらに、Y字状の分岐点19は、厚み方向Yにおいて、凹状の底面17の位置より第1ピストン4の基準面側に設けられている。言い換えると、Y字状の分岐点19は、第1ピストン4の凸状部5の高さより低い位置に設けられている。これは、詳しくは後述するように、隙間S’の作用と相俟って、封止部側に作用する大きな圧力による応力が、係合部16より封止部側で完結し、係合部16を介して反対側のガイド部22に作用しないようにするためである。
【0050】
また、第1ピストン4の移動方向Xにおける第1頂部23と第2頂部20aとの間において、ピストンカップ7と一次側チャンバー2の内側面2aとの間に隙間Sが形成されるように構成されている。言い換えると、第1頂部23と第2頂部20aとの間の箇所24が、第1頂部23および第2頂部20aより低くなるように構成されている。ピストンカップ7を組み込む際、ピストンの移動を滑らかにするためのグリスを隙間Sに入れることができる。ここで、前述したように、第1頂部23および第2頂部20aが、一次側チャンバー2の内側面2aと線接触している。従って、その間の前記隙間Sを、従来の面接触する構成(図7(B)の符号57)と比較して、広くすることができる。その結果、隙間Sに必要十分な量のグリスを溜めることができる。
【0051】
またさらに、第1頂部23および第2頂部20aが、一次側チャンバー2の内側面2aと線接触しているので、従来の面接触する構成と比較して、接触箇所に密に力が作用する。従って、第1ピストン4が摺動を繰り返した場合であっても、グリスを隙間Sに留めることができる。その結果、グリス切れにより摺動抵抗が大きくなる虞がない。即ち、摺動抵抗が低いままの状態で一次側チャンバー2を使用し続けることができる。
【0052】
これにより、ピストンカップ7が摩耗する量を小さくすることができるので、ピストンカップ7を交換する頻度を少なくすることができる。安全性を確保することが重要なブレーキチャンバー装置1としては、非常に有効である。
尚、第1頂部23と第2頂部20aとの間の箇所24は、側視滑らかな凹状な面となるように形成されている。即ち、節がないように形成されている。これにより、第1頂部23と外側部20の先端近傍との間の箇所24において、応力等により亀裂が入ることを防止することができる。
【0053】
さらに続けて、本実施例のピストンカップ7の作用効果について説明する。
図5(A)(B)に示すのは、本実施例のピストンカップの要部を示す断面図である。このうち、図5(A)は第1ピストンが摺動中の図である。具体的には、引かれたパーキングブレーキレバーが元に戻され、空気の圧力が、圧縮ばねのばね力に抗して、第1ピストンを圧縮ばねが設けられている側へ移動させるときの図である。
一方、図5(B)は第1ピストンが移動範囲の一端へ到達したときの図である。具体的には、圧縮ばねが設けられている側へ第1ピストンが移動しきって度当たったときの図である。
【0054】
図5(A)に示す如く、第1ピストン4が、係合部16を基準とした封止部側の空間の空気の圧力を受けて、図中における左側へ摺動する。ここで、ガイド部22の第1頂部23は、前述したように、組み込まれる前の状態では一次側チャンバー2と僅かにオーバーラップするように形成されている。従って、第1頂部23は、移動方向Xにおける係合部16の中心より進行方向前側の部分が第1ピストン4の基準面6から離間しないように、該進行方向前側の部分を第1ピストン4の基準面6に向かって押さえ付けるように作用することができる。
【0055】
即ち、該進行方向前側の部分が第1ピストン4の基準面6に向かって押さえ付けられるように、力Fを作用させることができる。その結果、前記進行方向前側の部分が第1ピストン4の基準面6から離間する所謂、浮き上がりを防止することができる。これにより、ピストンカップ7の係合部16と、第1ピストン4の凸状部5との係合が外れることを、防止することができる。
【0056】
さらに、第1頂部23は、移動方向Xにおける係合部16の中心より進行方向前側に位置する構成である。具体的には、第1頂部23は、係合部16の進行方向前側端部より僅かに進行方向前側に位置する構成である。これにより、第1ピストン4が図中の左側へ移動する際、第1頂部23に作用する摺動抵抗力を、係合部16より進行方向前側の部分が凸状部5をくわえ込む力F’に変換することができる。即ち、係合部16より進行方向前側の部分が凸状部5をくわえ込む効果を発生させることができる。これにより、ピストンカップ7の係合部16と、第1ピストン4の凸状部5との係合が外れることを、より確実に防止することができる。尚、前記くわえ込む効果は、凸状部5の角の形状を考慮して移動方向Xにおける凸状部5に対する第1頂部23の位置を、適度な位置に決めることによって発生させることができる。
【0057】
図5(B)に示す如く、例えば、第1ピストンの移動範囲の一端へ到達したとき、第1ピストンはそれ以上移動することができないので、封止部18には、移動中よりも大きな空気の圧力が作用する。
ここで、ピストンカップ7の素材はゴムであるため、力を受けた場合、形状は変化するが、体積は変化しない。従来の隙間を有さない構成(図7(A)参照)では、封止部に相当するリップ部側で大きな圧力を受けた場合、リップ部側のゴムが、係合部に相当する内側凹部51を介してリップ部52と反対側(図7(A)における左側)へ移動しようとする。即ち、内側凹部51より図中の左側の形状に影響を及ぼす虞が生じる。これにより、内側凹部51とピストン55の凸部56との係合が緩み、係合が外れる虞が生じる。
【0058】
そこで、本実施例のピストンカップ7は、隙間Sを有している。特に、移動方向Xにおける係合部16と第2頂部20aとの間の箇所27は、厚み方向Yにおいて第2頂部20aより低くなっている。これにより、隙間Sの範囲内における係合部16と第2頂部20aとの間の箇所27に対応する範囲に隙間S’が形成されている。さらに、Y字状の分岐点19は、第1ピストン4の凸状部5の高さより低い位置に設けられている。これらの構成により、封止部側で大きな圧力を受けた場合であっても、隙間Sにおける係合部16より封止部側の箇所S’が小さくなるように、ゴムが変形して、前記大きな圧力による応力を受け止めることができる。即ち、前記大きな圧力による応力が、係合部16より封止部側で完結し、係合部16を介して反対側のガイド部22に作用しないようにすることができる。その結果、係合部16およびガイド部22が変形しないので、係合部16と、第1ピストン4の凸状部5との係合が緩む虞、および係合が外れる虞がない。
【0059】
さらに、この際、隙間Sにおける係合部16より封止部側の箇所S’が小さくなるが、隙間Sにおける係合部16に対応する箇所は、小さくならない。即ち、隙間Sが完全に無くなる虞がない。従って、隙間Sに溜められたグリスの全てが隙間Sの外に押し出される虞がない。その結果、グリス切れにより摺動抵抗が大きくなる虞がない。
ここで、前述したように、第1頂部23と第2頂部20aとの間の箇所24は、側視滑らかな凹状な面となるように形成されている。従って、隙間S’が小さくなったときであっても、第1頂部23と一次側チャンバー2の内側面2aとの線接触、および第2頂部20aと一次側チャンバー2の内側面2aとの線接触を維持することができる。
【0060】
尚、想定された空気の圧力よりも、大きな空気の圧力が封止部18に作用するのは、第1ピストン4の移動範囲の一端へ到達したときのみに限られない。例えば、何らかの原因により急激な圧力の変化が生じたときに作用する場合もある。
また、前記大きな空気の圧力が作用した場合であって、隙間S’が小さくなったとき、基本的には、前記線接触を維持するが、一時的に外側部20が一次側チャンバー2の内側面2aと軽く面接触してもよいのは勿論である。摺動抵抗が僅かに大きくなるが、従来の常に全体で面接触する構成と比較して、摺動抵抗を小さくすることができるからである。
【0061】
またさらに、本実施例のピストンカップ7の表面に、粗面化処理(ブラスト加工)の一例である所謂、サンドブラスト加工を施して、該表面に、微細な凹凸を形成してもよい。尚、サンドブラスト加工は、ピストンカップ7の表面に直接施してもよいし、ピストンカップ7を成形する金型の内側に施してもよい。金型に施すことにより結果としてピストンカップ7の表面に直接施した場合と同様、ピストンカップ7の表面に微細な凹凸を形成することができる。
【0062】
これにより、ミクロでみて、ピストンカップ7のガイド部22の第1頂部23と、一次側チャンバー2の内側面2aとの接触面積を、サンドブラスト加工しなかった場合と比較して、より小さくすることができる。同様に、第2頂部20aと一次側チャンバー2の内側面2aとの接触面積を、より小さくすることができる。その結果、より摺動抵抗を小さくすることができる。
【0063】
さらに、この微小な凹凸形状にグリスが入り込むことができるので、より一層、摺動抵抗を小さくすることができる。
尚、サンドブラスト加工は、少なくとも、一次側チャンバー2の内側面2aと接触する第1頂部23および第2頂部20aに施されていればよい。言い換えると、表面全体に施されている必要はない。
【0064】
また、シール部材の一例として摺動する側である第1ピストン4に取り付けられるピストンカップ7について説明したが、これに限らない。一次側チャンバー2の房室側に設けられ、摺動するピストン軸26や第1プッシュロット8と接触するシール部材でもよい。例えば、封止リング部材9(図1〜図3参照)に第1頂部23、係合部16、封止部18および第2頂部20aを形成してもよい。係る場合も、摺動抵抗を小さくする等、同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
またさらに、第2ピストン12にはダイヤフラム13が取り付けられている構成としたが、ダイヤフラムに換えてピストンカップを取り付ける構成としてもよいのは勿論である。
また、ピストンカップ7と一次側チャンバー2の内側面2aとの間の接触を線接触にして摺動抵抗を小さくすることに関しては、ピストンカップ7と第1ピストン4との係合の凹凸は、ピストンカップ側が凸で第1ピストン側が凹でもよいのは勿論である。
【0066】
また、本実施例では、空気圧によって第1ピストン4が移動する構成としたが、空気圧に限られない。流体の圧力が作用する構成であればよい。流体には液体と気体とがある。さらに、液体として、水やオイル等を用いることができる。気体として、空気やガス等を用いることができる。一般に潤滑作用を有さない気体である場合に本実施例のピストンカップ7は特に有効である。
またさらに、本実施例において、封止部18を、断面が二股に分岐する形状に形成したが、二股に限られない。封止できる形状であればよい。
また、前述した第1頂部23および第2頂部20aにおいて、線接触する作用効果を得ることに関しては、取り付ける前の状態の第1頂部23と封止部18との間の箇所25、および取り付けた状態の第1頂部23と第2頂部20aとの間の箇所24は、第1頂部23より低ければよく、滑らかな凹状面でなくてもよいのは言うまでもない。またさらに、取り付ける前の状態では、第1頂部23と封止部18との間の箇所25が、第1頂部23より低くなくてもよい。取り付けたときに、低くなればよいからである。
【0067】
本実施例のピストンカップ7は、気体の圧力が作用するチャンバーとしての一次側チャンバー2と、一次側チャンバー内を移動するピストンとしての第1ピストン4と、を有するブレーキチャンバー装置1における第1ピストン4に取り付けられるピストンカップ7であって、第1ピストン4と係合する係合部16と、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、係合部16より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように一次側チャンバー2の内側面2aと第1ピストン4との間を封止する封止部18と、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、封止部18と異なる位置に設けられ、一次側チャンバー2の内側面2aと接触し内側面2aと第1ピストン4との間の距離を保ちながら第1ピストン4を案内するガイド部22と、を備え、ガイド部22は、第1ピストン4の移動方向Xと直交するピストンカップ7の厚み方向Yにおいて、一次側チャンバー2の内側面2aに向かう第1頂部23を有しており、封止部18は、前記厚み方向Yにおいて、一次側チャンバー2の内側面2aに向かう第2頂部20aを有しており、第1頂部23および第2頂部20aが一次側チャンバー2の内側面2aと接触した状態では、第1頂部23と第2頂部20aとの間の箇所24は、前記厚み方向Yにおいて、第1頂部23および第2頂部20aより低くなる構成であることを特徴とする。
【0068】
また、本実施例のピストンカップ7は、第1ピストン4と係合する係合部16と、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、係合部16より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように一次側チャンバー2の内側面2aと第1ピストン4との間を封止する封止部18と、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、封止部18と異なる位置に設けられ、一次側チャンバー2の内側面2aと接触し内側面2aと第1ピストン4との間の距離を保ちながら第1ピストン4を案内するガイド部22と、を備え、ガイド部22は、第1ピストン4の移動方向Xと直交するピストンカップ7の厚み方向Yにおいて、一次側チャンバー2の内側面2aに向かう第1頂部23を有しており、第1頂部23は、第1ピストン4の移動方向Xにおける係合部16の中心より前記他端側に設けられており、第1ピストン4の移動方向Xにおける第1頂部23と、封止部18との間の箇所25は、前記厚み方向Yにおいて、第1頂部23より低く形成された構成であることを特徴とする。
【0069】
またさらに、本実施例において、係合部16は、第1ピストン4の外周に形成された凸状部5と係合する凹状に形成されており、封止部18は、断面が前記一端側へ向かって二股に分岐する形状に形成されており、係合部16における凹の底面17の位置は、前記厚み方向Yにおいて、封止部18の前記二股の分岐点19の位置より一次側チャンバー2の内側面側であることを特徴とする。
また、本実施例において、第1ピストン4の移動方向Xにおける第1頂部23と封止部18との間25は、一次側チャンバー2の内側面2aに対して滑らかな凹状面となる形状に形成されていることを特徴とする。尚、ピストンリング7を取り付けた状態では、第1頂部23と第2頂部20aとの間24が、一次側チャンバー2の内側面2aに対して滑らかな凹状面となる形状に形成される。
【0070】
またさらに、本実施例のピストンカップ7の封止部18は、断面が一端側へ向かって二股に分岐する形状に形成されており、封止部18の二股の分岐点19より先端側に、第1ピストン4の移動方向Xと直交するピストンカップ7の厚み方向Yにおいて、一次側チャンバー2の内側面2aに向かう第2頂部20aを有しており、係合部16における凹の底面17の位置は、前記厚み方向Yにおいて、封止部18の前記二股の分岐点19の位置より一次側チャンバー2の内側面側であり、第2頂部20aが一次側チャンバー2の内側面2aと接触した状態では、第1ピストン4の移動方向Xにおける第2頂部20aと、係合部16との間の箇所27は、前記厚み方向Yにおいて、第2頂部20aより低くなる構成であることを特徴とする。
【0071】
またさらに、本実施例において、少なくとも一次側チャンバー2の内側面2aと接触する箇所の表面には、粗面化処理が施されていることを特徴とする。
本実施例のブレーキチャンバー装置1は、気体の圧力が作用する一次側チャンバー2と、一次側チャンバー内を移動する第1ピストン4と、第1ピストン4に取り付けられるピストンカップ7と、を有することを特徴とする。
【0072】
本実施例のアクチュエーター装置(1)は、流体による圧力が作用する一次側チャンバー2と、一次側チャンバー内を移動する第1ピストン4および第1プッシュロット8(以下、第1ピストン側という)と、第1ピストン側と一次側チャンバー2とが接触する箇所における第1ピストン側および一次側チャンバー側の一方に取り付けられるシール部材(7、9)と、を有するアクチュエーター装置(1)であって、シール部材(7、9)は、前記一方と係合する係合部16と、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、係合部16より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ流体が流れないように前記箇所におけるチャンバー側と前記ピストン側との間を封止する封止部18と、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、封止部18と異なる位置に設けられ、第1ピストン側および一次側チャンバー側の他方と接触し移動方向Xと直交する方向における前記一方と他方との相対的な距離を保ちながら第1ピストン4を案内するガイド部22と、を備え、ガイド部22は、第1ピストン4の移動方向Xと直交するピストンカップ7の厚み方向Yにおいて、前記他方に向かう第1頂部23を有しており、封止部18は、前記厚み方向Yにおいて、前記他方に向かう第2頂部20aを有しており、第1頂部23および第2頂部20aが前記他方と接触した状態では、第1頂部23と第2頂部20aとの間の箇所24は、前記厚み方向Yにおいて、第1頂部23および第2頂部20aより低くなる構成であることを特徴とする。
尚、シール部材(7、9)は、第1ピストン側に取り付けられる場合は、上記実施例で説明したピストンカップ7である。一方、一次側チャンバー側に取り付けられる場合は、前述した封止リング部材9である(図1〜図3参照)。
【0073】
また、本実施例のアクチュエーター装置(1)のシール部材(7、9)は、前記一方と係合する係合部16と、第1ピストン4の移動方向Xにおいて、係合部16より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ流体が流れないように前記箇所におけるチャンバー側と前記ピストン側との間を封止する封止部18と、第1ピストン側および一次側チャンバー側の他方に対する第1頂部23が、第1ピストン4の移動方向Xにおける係合部16の中心より他端側に設けられ、前記他方と接触し移動方向Xと直交する方向における前記一方と他方との相対的な距離を保ちながら第1ピストン4を案内するガイド部22と、を備え、ガイド部22は、第1ピストン4の移動方向Xと直交するシール部材(7、9)の厚み方向Yにおいて、前記他方に向かう第1頂部23を有しており、該第1頂部23は、第1ピストン4の移動方向Xにおける係合部16の中心より前記他端側に設けられており、第1ピストン4の移動方向Xにおける第1頂部23と、封止部18との間の箇所25は、前記厚み方向Yにおいて、第1頂部23より低く形成された構成であることを特徴とする。
尚、シール部材(7、9)は、第1ピストン側に取り付けられる場合は、上記実施例で説明したピストンカップ7である。一方、一次側チャンバー側に取り付けられる場合は、前述した封止リング部材9である(図1〜図3参照)。
【0074】
[他の実施例1]
図6(A)に示すのは、他の実施例1のピストンカップの要部を示す断面図である。
図6(A)に示す如く、他の実施例1のピストンカップ30のガイド部33は、第1ガイド頂部31と、第2ガイド頂部32とをさらに有している。このうち、第1ガイド頂部31は、前述した実施例の第1頂部23と同じである。一方、第2ガイド頂部32は、ピストンの移動方向Xにおける係合部16の中央より封止部側に設けられている。
尚、その他の部材については、前述した実施例と同様であるので、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0075】
第2ガイド頂部32は、第1ガイド頂部31と同様に、一次側チャンバー2の内側面2aと線接触するように構成されている。言い換えると、第1ガイド頂部31と一次側チャンバー2の内側面2aとの接触箇所と、外側部20の先端近傍(第2頂部20a)と一次側チャンバー2の内側面2aとの接触箇所との間において、第2ガイド頂部32が一次側チャンバー2の内側面2aと線接触する構成である。係る構成である場合も前述した実施例と同様、従来の面接触する構成と比較して、摺動抵抗を著しく小さくすることができる。
【0076】
また、二つの隙間S1、S2において、グリスと溜めることができ、グリスにより摺動抵抗を小さくすることができる。
さらに、第1ピストン4の移動方向Xにおける凸状部5の両側において、第1ピストン4の基準面6へ押し付ける力Fを作用させることができる。その結果、係合部16と、凸状部5との係合をより確実に強くすることができ、係合が外れることを防止することができる。
【0077】
[他の実施例2]
図6(B)に示すのは、他の実施例2のピストンカップの要部を示す断面図である。
図6(B)に示す如く、他の実施例2のピストンカップ40は、第1封止部41と、第2封止部42とをさらに有している。このうち、第1封止部41は、前述した実施例の封止部18(図4および図5参照)と同じである。一方、第2封止部42は、第1ピストン4の移動方向Xにおける係合部16の中央を基準とした第1封止部41と反対側に設けられている。
【0078】
そして、一方の第1封止部41は、係合部16の中央を基準とした第1封止部側の空間の空気を封止することができるように設けられている。他方の第2封止部42は、反対側である第2封止部側の空間の空気を封止することができるように設けられている。他の実施例2では、圧縮ばね3(図1〜図3参照)のばね力を必要とせず、係合部16の中央を基準とした第1封止部側の空間の空気の圧力と、第2封止部側の空間の空気の圧力との大小関係によって、第1ピストン4が摺動する構成である。
尚、その他の部材については、前述した実施例(他の実施例1を含む)と同様であるので、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0079】
第2封止部42の外側部20の先端近傍は、第1封止部41の外側部20と同様、一次側チャンバー2の内側面2aと線接触するように構成されている。係る構成である場合も前述した実施例と同様、従来の面接触する構成と比較して、摺動抵抗を著しく小さくすることができる。
また、三つの隙間S3〜S5において、グリスと溜めることができ、グリスにより摺動抵抗を小さくすることができる。
【0080】
尚、シール部材の一例として摺動する側である第1ピストン4に取り付けられるピストンカップ40について説明したが、これに限らない。一次側チャンバー2の房室側に設けられ、摺動するピストン軸26や第1プッシュロット8と接触するシール部材でもよい。例えば、封止リング部材9(図1〜図3参照)に第1頂部、第2頂部、係合部、第1封止部および第2封止部を形成してもよい。係る場合も、摺動抵抗を小さくする等、同様の作用効果を得ることができる。
また、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1 ブレーキチャンバー装置、2 一次側チャンバー(ピギーバック)、
2a 内側面、3 圧縮ばね、4 第1ピストン、5 凸状部、6 基準面、
7 ピストンカップ、8 第1プッシュロット、9 封止リング部材、
10 一次側流出弁、11 二次側チャンバー(サービスチャンバー)、
12 第2ピストン、13 ダイヤフラム、14 第2プッシュロット、
15 二次側流入弁、16 係合部、17 (凹部の)底面、18 封止部、
19 分岐点、20 外側部、20a 第2頂部、21 内側部、22 ガイド部、
23 第1頂部、24 第1頂部と第2頂部との間の箇所、
25 第1頂部と封止部との間の箇所、26 ピストン軸、
27 係合部と第2頂部との間の箇所、30 (他の実施例1の)ピストンカップ、
31 第1ガイド頂部、32 第2ガイド頂部、33 ガイド部、
40 (他の実施例2の)ピストンカップ、41 第1封止部、42 第2封止部、
50 (従来技術の)ピストンカップ、51 内側凹部、52 リップ部、
53 外側面、54 チャンバーの内側面、55 ピストン、56 凸部、
57 外側凹部、F 力、F’ 力、S 隙間、S’ 隙間における封止部側、
S1、S2 隙間、 S3〜S5 隙間、X 移動方向(摺動方向、軸方向)、
Y 厚み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、を有するブレーキチャンバー装置における前記ピストンに取り付けられるピストンカップであって、
前記ピストンと係合する係合部と、
前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように前記チャンバーの内側面と前記ピストンとの間を封止する封止部と、
前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記チャンバーの内側面と接触し該内側面と前記ピストンとの間の距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、
該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第1頂部を有しており、
前記封止部は、前記厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第2頂部を有しており、
該第1頂部および前記第2頂部が前記チャンバーの内側面と接触した状態では、前記第1頂部と前記第2頂部との間の箇所は、前記厚み方向において、該第1頂部および前記第2頂部より低くなる構成であるピストンカップ。
【請求項2】
気体の圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、を有するブレーキチャンバー装置における前記ピストンに取り付けられるピストンカップであって、
前記ピストンと係合する係合部と、
前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように前記チャンバーの内側面と前記ピストンとの間を封止する封止部と、
前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記チャンバーの内側面と接触し該内側面と前記ピストンとの間の距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、
該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第1頂部を有しており、該第1頂部は、前記ピストンの移動方向における前記係合部の中心より前記他端側に設けられており、
前記ピストンの移動方向における前記第1頂部と、前記封止部との間の箇所は、前記厚み方向において、前記第1頂部より低く形成された構成であるピストンカップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のピストンカップにおいて、前記係合部は、前記ピストンの外周に形成された凸状部と係合する凹状に形成されており、
前記封止部は、断面が前記一端側へ向かって二股に分岐する形状に形成されており、
前記係合部における凹の底面の位置は、前記厚み方向において、前記封止部の前記二股の分岐点の位置より前記チャンバーの内側面側であることを特徴とするピストンカップ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のピストンカップにおいて、前記ピストンの移動方向における前記第1頂部と前記封止部との間は、前記チャンバーの内側面に対して滑らかな凹状面となる形状に形成されていることを特徴とするピストンカップ。
【請求項5】
気体の圧力が作用するチャンバーと、該チャンバー内を移動するピストンと、を有するブレーキチャンバー装置における前記ピストンに取り付けられるピストンカップであって、
前記ピストンの外周に形成された凸状部と係合する凹状に形成された係合部と、
前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ気体が流れないように前記チャンバーの内側面と前記ピストンとの間を封止する封止部と、を備え、
前記封止部は、断面が前記一端側へ向かって二股に分岐する形状に形成されており、
前記封止部の二股の分岐点より先端側に、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記チャンバーの内側面に向かう第2頂部を有しており、
前記係合部における凹の底面の位置は、前記厚み方向において、前記封止部の前記二股の分岐点の位置より前記チャンバーの内側面側であり、
該第2頂部が前記チャンバーの内側面と接触した状態では、前記ピストンの移動方向における前記第2頂部と、前記係合部との間の箇所は、前記厚み方向において、前記第2頂部より低くなる構成であるピストンカップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のピストンカップにおいて、少なくとも前記チャンバーの内側面と接触する箇所の表面には、粗面化処理が施されていることを特徴とするピストンカップ。
【請求項7】
気体の圧力が作用するチャンバーと、
該チャンバー内を移動するピストンと、
該ピストンに取り付けられるピストンカップと、を有するブレーキチャンバー装置であって、
前記ピストンカップは、請求項1から6のいずれか1項に記載の前記ピストンカップであることを特徴とするブレーキチャンバー装置。
【請求項8】
流体による圧力が作用するチャンバーと、
該チャンバー内を移動するピストンと、
該ピストンと前記チャンバーとが接触する箇所における前記ピストン側および前記チャンバー側の一方に取り付けられるシール部材と、を有するアクチュエーター装置であって、
前記シール部材は、
前記一方と係合する係合部と、
前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ流体が流れないように前記箇所におけるチャンバー側と前記ピストン側との間を封止する封止部と、
前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記ピストン側および前記チャンバー側の他方と接触し前記移動方向と直交する方向における前記一方と他方との相対的な距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、
該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するピストンカップの厚み方向において、前記他方に向かう第1頂部を有しており、
前記封止部は、前記厚み方向において、前記他方に向かう第2頂部を有しており、
該第1頂部および前記第2頂部が前記他方と接触した状態では、前記第1頂部と前記第2頂部との間の箇所は、前記厚み方向において、該第1頂部および前記第2頂部より低くなる構成であることを特徴とするアクチュエーター装置。
【請求項9】
流体による圧力が作用するチャンバーと、
該チャンバー内を移動するピストンと、
該ピストンと前記チャンバーとが接触する箇所における前記ピストン側および前記チャンバー側の一方に取り付けられるシール部材と、を有するアクチュエーター装置であって、
前記シール部材は、
前記一方と係合する係合部と、
前記ピストンの移動方向において、前記係合部より一端側に設けられ、該一端側から他端側へ流体が流れないように前記箇所におけるチャンバー側と前記ピストン側との間を封止する封止部と、
前記ピストンの移動方向において、前記封止部と異なる位置に設けられ、前記ピストン側および前記チャンバー側の他方と接触し前記移動方向と直交する方向における前記一方と他方との相対的な距離を保ちながら前記ピストンを案内するガイド部と、を備え、
該ガイド部は、前記ピストンの移動方向と直交するシール部材の厚み方向において、前記他方に向かう第1頂部を有しており、該第1頂部は、前記ピストンの移動方向における前記係合部の中心より前記他端側に設けられており、
前記ピストンの移動方向における前記第1頂部と、前記封止部との間の箇所は、前記厚み方向において、前記第1頂部より低く形成された構成であることを特徴とするアクチュエーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−87870(P2012−87870A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234832(P2010−234832)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(510063502)ナブテスコオートモーティブ株式会社 (34)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】