説明

ピストンシリンダアッセンブリ

【課題】自動車の車体のレベル調整が簡単な手段で可能になるようにピストンシリンダアッセンブリを改良する。
【解決手段】本発明は、作業シリンダを有し、該作業シリンダ内に、緩衝ピストンを担持するピストン棒が軸線方向に可動に配置され、緩衝ピストンが作業シリンダを2つの作業室に分割し、ピストン棒によって排除された緩衝媒体のために、一部を緩衝媒体で、一部をガスで充填される作業室が設けられているピストンシリンダアッセンブリに関する。補償室(7,8)は容積可変なリザーバー(9)の作用を直接および/または間接に受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業シリンダを有し、該作業シリンダ内に、緩衝ピストンを担持するピストン棒が軸線方向に可動に配置され、緩衝ピストンが作業シリンダを2つの作業室に分割し、ピストン棒によって排除された緩衝媒体のために、一部を緩衝媒体で、一部をガスで充填される作業室が設けられているピストンシリンダアッセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業シリンダがピストン棒に配置される緩衝ピストンを有している振動ダンパーはすでに知られている(特許文献1)。緩衝ピストンは作業シリンダ内で軸線方向に変位可能に配置され、下部作業室を起点として流動連通部が設けられ、該流動連通部は下部作業室を補償室と連通させている。ピストン棒が作業シリンダ内へ走入するときにピストン棒によって排除される緩衝媒体は、この流動連通部を介して補償室内へ移動する。補償室の内部では、緩衝媒体と補償室の上部領域にあるガス媒体とが互いに分離されている。なお補償室とはピストンシリンダアッセンブリの外側にある補償室であり、シングルパイプ型振動ダンパーとして構成され、緩衝媒体とガス状媒体で充填されている。
【0003】
さらに、自動吸排出型流体圧力式サスペンションストラッドが知られている。この種のサスペンションストラッドでは、作業室に対し同軸に、緩衝媒体を収容するための低圧室と、緩衝媒体およびガスクッションとを収容するための高圧室とが形成されている。中空のピストン棒はポンプ棒とともにレベルコントローラを形成し、レベルコントローラは、自動車の走行中に、中空のピストン棒がポンプ棒とともにポンプ運動することにより緩衝媒体が低圧室から高圧室へ搬送されることで、完全負荷状態の車両を適当なノーマルレベルへ高める用を成す。このような車体のコントロールは車両が走行中にのみ操作することができる。というのは、道路の凹凸により、ピストン棒がポンプ棒に対し相対的に移動するからである。完全負荷された自動車をノーマルレベルへ調整するため、いわゆるレベルコントロール(電動機と、伝動装置を介して駆動されるピストンとから成る)を介して緩衝媒体が自動吸排出型流体圧力式サスペンションストラッドの低圧室から高圧室へ搬送される。
【0004】
【特許文献1】独国特許第102005025511B3号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、自動車の車体のレベル調整が簡単な手段で可能になるようにピストンシリンダアッセンブリを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、この課題を解決するため、補償室が容積可変なリザーバーの作用を直接および/または間接に受けることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、本来ピスト棒によって排除された緩衝媒体を収容するために設けられているピストンシリンダアッセンブリの補償室が補助的なリザーバーを介して補助的な緩衝媒体で直接および/または間接に付勢され、その結果作業室が補助的な緩衝媒体で付勢され、これに対応して、ガスで充填される補償室がプレテンション状態になり、ピストン棒が緩衝ピストンとともに上昇運動を行なうので有利である。
【0008】
有利な構成によれば、リザーバー内に、該リザーバーの容積を変化させるディスプレーサー要素が設けられている。この場合、ディスプレーサー要素が外部制御されるのが有利である。
【0009】
他の構成によれば、ディスプレーサー要素は電動機の作用を受ける。この場合、ディスプレーサー要素と電動機との間に伝動装置が設けられているのが有利である。
【0010】
適宜な作用効率を達成するため、伝動装置としてねじスピンドル、ボール循環型伝動装置、ウォーム歯車装置、または遊星歯車装置が設けられている。種々の伝動装置を設けることができ、この場合伝動装置は適当なセルフロッキング方式のものを使用するのが有利であるが、しかし摩擦の少ないボール循環型伝動装置を設けてもよい。ただしボール循環型伝動装置には、ディスプレーサー要素の変位を阻止する手段を設けねばならない。
【0011】
コンパクトな構成を得るため、補償室は作業シリンダと外側管との間に同軸に配置され、リザーバーは直接外側管に開口している。
【0012】
しかし、取り付け空間が上記のようなコンパクトな構成の実現を許さないようであれば、リザーバーが流動連通部を介して補償室と連通しているように構成してよい。
【0013】
他の構成によれば、補償室とリザーバーとはピストンシリンダアッセンブリの外側に配置されている。この場合、車体と車輪懸架装置との間にピストンシリンダアッセンブリのみを設け、リザーバーと補償室の双方を適当な流動連通部を介して車両の適当な個所に、ピストンシリンダアッセンブリのすぐ近くでない個所に配置するのが有利である。
【0014】
他の有利な構成によれば、電動機は手動または自動で検知可能に制御される。この解決手段によれば、ピストンシリンダアッセンブリを手動で付勢するか、或いは、適当な車体検知部を介して自動的な、独立的に作動するレベルコントロールを得ることができる。
【0015】
車両の異なる車輪に設けられるそれぞれのピストンシリンダアッセンブリの制御に応じては、ロールスタビライジングのために使用してもよい。この場合には、それぞれの車輪のカーブ内側のピストンシリンダアッセンブリとカーブ外側のピストンシリンダアッセンブリとを互いに独立に制御すればよい。
【0016】
他の実施態様によれば、補償室とリザーバーとの間に、流量に依存して作動する遮断弁が設けられ、或いは、補償室とリザーバーとの間に、圧力に依存して作動する遮断弁が設けられている。この場合、ピストンシリンダアッセンブリに急激に作用する衝撃が本来のレベルコントロールに影響せず、車両の見せかけの無負荷状態または負荷状態を印象付けないので有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付の図面を用いて詳細に説明する。
図1に図示したピストンシリンダアッセンブリ1は、実質的に、作業シリンダ2と外側管3とから構成され、作業シリンダ2内には、ピストン棒4に固定されている緩衝ピストン5が軸線方向に変位可能に配置されている。固定要素6a,6bは自動車の車体または車輪懸架装置(図示せず)にピストンシリンダアッセンブリ1を固定するために用いる。
【0018】
外側管3と作業シリンダ2との間には補償室が設けられ、補償室は、緩衝媒体で充填される緩衝媒体充填領域7と、ガスで充填されるガス充填領域8とから成っている。
【0019】
ディスプレーサー要素10の作用を受けるリザーバー9は概略的に図示されている。リザーバー9は外側管3を通じて直接緩衝媒体充填領域7に開口している。図1はリザーバー9を弛緩作動状態で示している。
【0020】
図2から、図1に図示したピストンシリンダアッセンブリ1が見て取れ、この場合ディスプレーサー要素10はリザーバー9の容積を最小へ減じており、その結果リザーバー9内に存在していた緩衝媒体は補償室内へ、すなわち緩衝媒体充填領域7内へ達している。したがってガス充填領域8は圧縮され、作業シリンダ2内には、緩衝ピストン5をピストン棒とともに上方へ押し上げるようなより高い内圧が支配する。
【0021】
すなわち、車載量が著しい場合、図2のピストン5の位置は図1の場合と同じ個所であるが、作業シリンダ2内の内圧はより高くなっている。
【0022】
図3から、ディスプレーサー要素10が電動機11と伝動装置12とを介して軸線方向に変位可能であるようなリザーバー9が見て取れる。ディスプレーサー要素10の内部空間内にはねじスピンドル13が設けられており、ねじスピンドル13はディスプレーサー要素10に固定されているナット14を介して電動機11により駆動され、ディスプレーサー要素10を軸線方向へ移動させる。これとは択一的に、ナット14を伝動装置12に固定して、ねじスピンドル13をディスプレーサー要素10と結合させてもよい。
【0023】
図4は、リザーバー9の容積が最小に減少したときのディスプレーサー要素10の位置を示している。この場合、ディスプレーサー要素10内に配置されているナット14は位置固定されており、ねじスピンドル13は電動機11または伝動装置12によって駆動される。リザーバー9内にある緩衝媒体は流動連通部15を介して圧力だめ16と補償室(緩衝媒体充填領域7)内へ流れ、その結果ガス充填領域8が圧縮される。これにより作業シリンダ2内の圧力が上昇するので、緩衝ピストン5はその圧力作用面を介してリザーバー9の圧力によって上方へ押される。
【0024】
図5は、ピストンシリンダアッセンブリ1とリザーバー9とが手動切換え回路16または少なくとも1つのセンサ17によって制御される自動電子装置18のいずれかによって切換えられる回路の構成図である。この回路により自動車内でのレベル制御を実現でき、或いは、回路をロールスタビライジングのためにも使用できる。
【0025】
図6は、ピストンシリンダアッセンブリ1と、流動連通部15を介して該ピストンシリンダアッセンブリ1と連通している、より厳密には緩衝媒体充填領域8と連通しているリザーバー9とを示す図である。
【0026】
図7はリザーバー9を単独で示すたもので、ディスプレーサー要素10はねじスピンドル13と伝動装置12と電動機11とを介して作用を受ける。電動機11はディスプレーサー要素10を軸線方向において両方向へ変位させるために用いる。
【0027】
図8は、リザーバー9がピストンシリンダアッセンブリ1に対し軸線が平行になるように配置され、流動連通部15を介してピストンシリンダアッセンブリ1の緩衝媒体充填領域7と連通しているピストンシリンダアッセンブリ1を示している。
【0028】
さらに、図9に図示したように、2つのピストンシリンダアッセンブリ1が適当な流動連通部15を介して2つの別個のリザーバー9と結合されているような解決手段も考えられる。この場合、リザーバー9を自動車の任意の個所に簡単に格納することができる。
【0029】
図10と図11は、流動連通部15内に流量に依存して作動する遮断弁19を配置した、ピストンシリンダアッセンブリ1とリザーバー9との実施形態の概略図である。遮断弁19内に配置されている、軸線方向に変位可能な弁板20は、流量が増すと移動し、すなわち作業シリンダ2内への緩衝ピストン5の進入速度が速くなると、ばね21に抗して移動し、したがって通路22を閉鎖する(図11を参照)。流動速度が衰えると、ばね21によって通路22は再び開放される。補助的にディスプレーサー要素10内には衝撃緩衝要素23があり、該衝撃緩衝要素23は、遮断弁10が閉じるとディスプーレーサー要素10をブロックさせない。
【0030】
図12および図13によれば、流動連通部15内に圧力に依存して作動する遮断弁24が配置されている。その弁体25はばね21に抗して作動し、管路25内に圧力が発生すると、ばね21に抗して変位して通路22を閉鎖させる。遮断弁24による遮断状態は図13から見て取れる。ピストンシリンダアッセンブリ内の急激な圧力衝撃が食い止められて対応的に圧力が正常化されると、ばね21によってピストン25が再びそのホームポジションへ移動し、通路22は再び開放される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】補償室およびリザーバーをも併せて図示したピストンシリンダアッセンブリの断面図である。
【図2】補償室およびリザーバーをも併せて図示したピストンシリンダアッセンブリの断面図である。
【図3】リザーバーを単独で示した図である。
【図4】リザーバーを単独で示した図である。
【図5】図1に図示したピストンシリンダアッセンブリの回路構成図である。
【図6】流動連通部を介してリザーバーと連通しているピストンシリンダアッセンブリを示す図である。
【図7】電動機および伝動装置を併せて示したリザーバーの断面図である。
【図8】リザーバーを並列に配置したピストンシリンダアッセンブリを示す図である。
【図9】それぞれ流動連通部を介してリザーバーと連通している2つのピストンシリンダアッセンブリを示す図である。
【図10】リザーバーと、流動連通部に配置される、流量に依存して作動する遮断弁とを併せて示したピストンシリンダアッセンブリの図である。
【図11】リザーバーと、流動連通部に配置される、流量に依存して作動する遮断弁とを併せて示したピストンシリンダアッセンブリの図である。
【図12】リザーバーと、流動連通部に配置される、圧力に依存して作動する遮断弁とを併せて示したピストンシリンダアッセンブリの図である。
【図13】リザーバーと、流動連通部に配置される、圧力に依存して作動する遮断弁とを併せて示したピストンシリンダアッセンブリの図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ピストンシリンダアッセンブリ
2 作業シリンダ
4 ピストン棒
5 緩衝ピストン
7 緩衝媒体充填領域
8 ガス充填領域
9 リザーバー
10 ディスプレーサー要素
11 電動機
12 伝動装置
13 ねじスピンドル
15 流動連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業シリンダを有し、該作業シリンダ内に、緩衝ピストンを担持するピストン棒が軸線方向に可動に配置され、緩衝ピストンが作業シリンダを2つの作業室に分割し、ピストン棒によって排除された緩衝媒体のために、一部を緩衝媒体で、一部をガスで充填される作業室が設けられているピストンシリンダアッセンブリにおいて、
補償室が容積可変なリザーバー(9)の作用を直接および/または間接に受けることを特徴とするピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項2】
リザーバー(9)内に、該リザーバーの容積を変化させるディスプレーサー要素(10)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項3】
ディスプレーサー要素(10)が外部制御されることを特徴とする、請求項2に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項4】
ディスプレーサー要素(10)が電動機(11)の作用を受けることを特徴とする、請求項2に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項5】
ディスプレーサー要素(10)と電動機(1)との間に伝動装置(12)が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項6】
伝動装置(12)としてねじスピンドル(13)、ボール循環型伝動装置、ウォーム歯車装置、または遊星歯車装置が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項7】
補償室が作業シリンダ(2)と外側管(3)との間に同軸に配置され、リザーバー(9)が直接外側管(3)に開口していることを特徴とする、請求項1に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項8】
リザーバー(9)が流動連通部(15)を介して補償室と連通していることを特徴とする、請求項1に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項9】
補償室とリザーバー(9)とがピストンシリンダアッセンブリ(1)の外側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項10】
電動機(11)が手動または自動で検知可能に制御されることを特徴とする、請求項4に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項11】
補償室とリザーバー(9)との間に、流量に依存して作動する遮断弁(19)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のピストンシリンダアッセンブリ。
【請求項12】
補償室とリザーバー(9)との間に、圧力に依存して作動する遮断弁(24)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のピストンシリンダアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−2515(P2009−2515A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163120(P2008−163120)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(504115002)ツェットエフ フリードリッヒスハーフェン アーゲー (23)
【Fターム(参考)】