説明

ピストン冷却ノズルの制御された漏出バルブ

【課題】摩耗影響を低減することを可能にし、同時に、バルブ型供給装置が取り付けられたエンジンにおける寄生的雑音及び振動を低減する取り外し可能及び交換可能な手段を、エンジンブロックの変更及び改変なく、設計することを目的とする。
【解決手段】内燃エンジンのピストン用の冷却及び潤滑ノズルに冷却及び潤滑流体を供給する装置において、上流チャネル(13)と下流チャネル(14)を有する少なくとも1つのバルブ(21)を有し、このバルブは、座部(19)の開口(18)を遮断するようコンパートメント(17)内で可動な遮断素子(16)を有する。バルブは、上流圧力が閾値圧力より大きい場合に開き、上流圧力が閾値圧力未満である場合に閉じることによって冷却流体の圧力に反応する。較正された漏出の手段(20)は、バルブの閉鎖のゾーンに並列して、上流チャネルを下流チャネルに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンにおけるピストンの冷却ノズル用の供給装置であって、ピストンの頂面、即ち、燃焼室の外側のピストンの表面に対して、又は、ピストンの頂面のギャラリー内に油といった冷却流体を発射可能にする供給装置に係る。
【背景技術】
【0002】
習慣的に使用されているピストン冷却ノズルは、エンジン内に固定され、冷却流体用の流入開口と連通する取り外し可能な部品である。ノズルの位置は、冷却流体の噴流がピストン頂面の又はピストン頂面のギャラリーの正確なゾーンに向けて方向付けられるような精度で決定される。ノズルは交換可能な部品であって、その差し替えは、原則的に、エンジンブロック自体のオーバーホールを必要としない。
【0003】
今日のエンジンでは、ピストンの冷却ノズルは、エンジンの潤滑回路によって供給される。その回路内を、冷却及び潤滑流体が、エンジン自体によって回転駆動される油ポンプによって推進される。
【0004】
従って、冷却流体は、2つの役割を有する。第1の役割は、エンジン、特に、ピストンの加熱した素子を冷却し、それらの素子が発生する熱エネルギーを、冷却流体を介して運び去ることである。冷却流体の流速及び熱容量は良好に選択される。冷却流体の第2の役割は、クランク軸受、連接棒の大小の端、ピストンとライナーの間の摺動面といったエンジンの動く部品の潤滑を確実にすることである。使用される流体は一般的に油である。従って、本願では、油、冷却流体、又は更には冷却及び潤滑流体を区別することなく使用する。
【0005】
競争力があるように機器の費用を下げる絶え間ない努力において、自動車設計者は、油ポンプのサイズを減少することを試みる。この油ポンプの小規模化によって、エンジン設計者に、低いエンジン回転数において、潤滑のための油の低い流速で対処しなくてはならなくなる。従って、小型の油ポンプに適応し、同時に依然として、油の容認された低い流速においても低回転数のエンジンの動く部分の良好な潤滑を確実にすることが可能な手段を設計することが必要である。
【0006】
このために、冷却流体の圧力が特定の閾値を超えるまで冷却流体の循環を、バルブによって阻止可能な冷却ノズル用の一般的な供給装置がある。冷却ノズル用の供給装置のそのような構造のバルブは、時に、冷却流体の通過のための開口を遮断するよう座部に対して圧縮バネによって押される球の形である。
【0007】
エンジンが、低回転数で回転する際、冷却流体の圧力は、特定の閾値圧力未満である。即ち、座部の開口は遮断されるので、ピストン頂面のゾーンに向けて方向付けられる冷却流体の噴流はない。このようにすると、低エンジン回転数において、油の大部分は、クランク軸受、連接棒の大端、更には小端といったエンジンのより敏感な動く部品の潤滑のために取っておかれる。
【0008】
高エンジン回転数では、冷却流体の圧力は、特定の閾値圧力より大きく、そして、冷却ノズルの油供給装置のバルブは開かれ、ピストン頂面のゾーンに対して冷却流体の噴流が方向付けられることを可能にする。
【0009】
本発明は、そのようなバルブ型供給装置を用いた際のエンジンの内部の動く部品への摩耗影響の観察の結果生まれたものである。
【0010】
同様に、周知のバルブ型冷却ノズルでは、人間の耳が知覚可能な雑音及び振動が、冷却ノズル用の供給装置のバルブを開くときに生成され、これは、ユーザにとって寄生的雑音源となる。
【0011】
低エンジン回転数での潤滑を向上するために、2つの回路を有する油流入装置が既に、特許文献1に提案されている。この文献では、油は、エンジンブロック内で主チャンネルと二次チャンネルとに分かれる、エンジンブロック内に形成された共通チャネルからエンジン気筒内に入れられる。バルブ型ノズルは、エンジンブロックの主チャンネルの端において接続され、上流セグメントと、制御バルブと、主油噴流をピストン頂面に向けて長手方向に案内する下流セグメントを含む。エンジンブロックの二次チャネルは、エンジンブロック内の油を、バルブの上流にある共通チャンネルからエンジン気筒内に直接的に運び、二次油噴流をエンジン気筒において横断するよう案内する。主油噴流と二次油噴流は交差する。横断するよう案内される二次油噴流は、気筒におけるピストンの移動に対して垂直であり、従って、ピストンの移動によって不安定にされる。その結果、その効率は最適ではない。二次チャンネルの形成は、エンジンブロックの更なる機械加工を必要とし、この機械加工は費用がかかりまた変更可能ではなく或いは全ての現行のエンジンブロック構成に容易に適応可能ではない。
【特許文献1】特開第2004−346766号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、摩耗影響を低減することを可能にし、同時に、バルブ型供給装置が取り付けられたエンジンにおける寄生的雑音及び振動を低減する取り外し可能及び交換可能な手段を、エンジンブロックの変更及び改変なく、設計することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的及び他の目的を達成するために、本発明は、内燃エンジンの1つ以上のピストンに冷却及び潤滑流体を供給する装置において、該装置は、内燃エンジンのピストン用の1つ以上の取り外し可能な冷却及び潤滑ノズルを含み、該装置は、少なくとも1つの取り外し可能なバルブを有し、バルブは、供給チャネルに接続可能な上流チャネルと、冷却流体をピストンに運ぶ下流チャネルを有し、取り外し可能なバルブは、座部の開口を遮断するようコンパートメント内を可動な遮断素子を含む閉鎖手段を有し、取り外し可能なバルブは、上流の圧力が閾値圧力より大きい場合には開き、上流の圧力が閾値圧力未満である場合には閉じることによって冷却流体の圧力に反応する装置を提供し、本発明では、取り外し可能なバルブは更に、バルブの閉鎖手段と並列して、上流チャネルを下流チャネルに接続する較正された漏出の手段を有する。
【0014】
このような構造は、エンジンが低回転数で回転しているときにも冷却ノズル内に低流速の流体を供給し、それにより、ピストンとライナーの間の摺動接触に潤滑油を差すことが依然として可能である。漏れ量は、低エンジン回転数における油流速は、摺動接触の潤滑を可能にするのにちょうど十分であり、有意にエンジンの他の動く部品の潤滑を低減しないよう較正される。
【0015】
高エンジン回転数では、摺動接触にあるピストンとライナーを冷却することが一般的に必要となる。エンジン回転数における増加は、冷却回路における流体の圧力を増加する。その結果、可動な遮断素子は、座部から離れるよう動き、それにより、油が、座部に形成された開口を通過することを可能にする。その結果、エンジンの動く部品の潤滑と、熱エネルギーを運び去ることによるそれらの冷却の両方を確実にする十分な油流速を有する。
【0016】
このようにすると、エンジンが低回転数で回転する、即ち、冷却流体の圧力が特定の閾値圧力未満である場合を含むエンジンの動く部品の永久且つ良好に分布された潤滑を確実にすることによって摩耗の影響を最小限にする。噴流の方向は変わらず、また、バルブの状態に関係なくピストン頂面に対して長手方向のままである。従って、もたらされる潤滑は最適である。何故なら、潤滑は、ピストンの動作によって妨げられないからである。
【0017】
低エンジン回転数において、冷却流体の低流速が、ピストン頂面のゾーンを指すノズルを冷却するのに十分である。これは十分である。何故なら、低エンジン回転数において、冷却流体が潤滑の役割以外の役割を果たす必要がないからである。
【0018】
同時に、冷却流体の圧力が特定の閾値圧力未満である場合に下流チャネル内に僅かな油循環を維持することは、供給装置のバルブの開放時の上流チャネルにおける圧力と下流チャネルにおける圧力との差を低減することが可能である。その結果、供給装置のバルブの遮断素子の動作を減衰し、それにより、バルブの遮断素子の移動によって生成される雑音を顕著に低減する。
【0019】
第1の実施例では、冷却流体供給装置は、ピストンの頂面用の幾つかの冷却及び潤滑ノズルに共通の較正された漏出の手段を有するバルブを含むことが可能である。
【0020】
第2の実施例では、冷却流体供給装置は、ピストンの頂面の各冷却及び潤滑ノズルは、較正された漏出の手段を有するバルブを含むよう構成されることが可能である。
【0021】
有利には、閾値圧力は、ガソリンエンジンについては、約1.8乃至約2.8バールであり、ディーゼルエンジンについては、約1.2乃至約2.5バールである。
【0022】
好適には、較正された漏出の手段は、バルブの座部に形成された少なくとも1つのノッチを含むことが可能である。
【0023】
従って、漏出手段を、経済的、単純、且つ高速な方法で実現することができ、この漏出手段は、形成されたノッチの深度によって容易に寸法調整可能である。
【0024】
本発明の構成された漏出の手段の第2の実施例は、以下のように考えられる。即ち、
−バルブは、コンパートメントの周りに配置され、下流チャネルと連通する環状室を有するバルブ本体を含み、
−遮断素子は、座部の開口と、環状室と連通するようコンパートメントに設けられた少なくとも1つのラジアル通路とを同時に遮断するピストンであり、
−較正された漏出の手段は、コンパートメントを環状室と永久連通させるラジアル孔であり、
−少なくとも1つのラジアル通路は、ラジアル孔の直径より大きい直径を有する。
【0025】
本発明の装置の別の実施例は、以下のように考えられる。即ち、
−較正された漏出の手段は、バルブの座部に形成された少なくとも1つのノッチを含み、
−遮断素子は、ヘッドを有するピストンであり、
−ピストンのヘッドは、コンパートメントを下流チャネルと連通させる軸方向通路と連通する横通路を有する。
【0026】
本発明では、内燃エンジンは、上述したような装置によって冷却及び循環流体が供給される1つ以上のピストンを有しうる。
【0027】
有利には、本発明のバルブ型供給装置は、以下を場合により含むバルブノズルを形成するようノズル内に全体的に組み込まれることが可能である。即ち、
−上流チャネル及び下流チャネルを有するバルブ本体と、
−上流チャネルと下流チャネルとの間の座部の開口を遮断するようコンパートメント内を可動な遮断素子を含む、バルブ本体内における閉鎖手段と、
−閉鎖手段と並列して上流チャネルを下流チャネルに接続する較正された漏出の手段とを含み、遮断素子は、上流の圧力が閾値圧力より大きい場合には開き、上流の圧力が閾値圧力未満である場合には閉じることによって冷却流体の圧力に反応する。
【0028】
好適には、バルブ本体は、上流チャネルを有し、貫通の軸方向に沿ってエンジンのボア内に軸方向に適合し且つボアによって到着する冷却及び潤滑流体を受容するよう形作られる上流セグメントを含む。
【0029】
別の面では、バルブノズルは、バルブ本体における少なくとも1つの下流チャネルと、冷却及び潤滑流体の少なくとも1つの噴流を冷却されるべきピストン上に案内するための少なくとも1つの下流管を有する流出構造を含むことが可能である。
【0030】
有利には、冷却及び潤滑流体の下流流出管は、その自由端はピストンに向けられ、縮小部を含む湾曲管である。
【0031】
本発明では、バルブノズルは、ガソリンエンジンについては、約1.8乃至約2.8バールであり、ディーゼルエンジンについては、約1.2乃至約2.5バールの閾値圧力を有することが可能である。
【0032】
有利には、較正された漏出の手段は、バルブの座部に形成された少なくとも1つのノッチを含むことが可能である。
【0033】
好適には、バルブノズルは、以下のようであることが可能である。
【0034】
−バルブ本体は、コンパートメントの周りに配置され、下流チャネルと連通する環状室を含み、
−遮断素子は、座部の開口と、環状室と連通するようコンパートメントに設けられた少なくとも1つのラジアル通路とを同時に遮断するピストンであり、
−較正された漏出の手段は、コンパートメントを環状室と永久連通させるラジアル孔であり、
−少なくとも1つのラジアル通路は、ラジアル孔の直径より大きい直径を有すること。
【0035】
有利な方法では、バルブノズルは以下のようであることが可能である。
【0036】
−較正された漏出の手段は、バルブの座部に形成された少なくとも1つのノッチを含み、
−遮断素子は、ヘッドを有するピストンであり、
−ピストンのヘッドは、コンパートメントを下流チャネルと連通させる軸方向通路と連通する横通路を有する。
【0037】
本発明では、内燃エンジンは、該内燃エンジンの1つ以上のピストンに冷却及び潤滑流体を供給する上述したようなバルブノズルを有しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、添付図面と関連して与える特定の実施例の以下の説明から明らかとなろう。
【0039】
図1は、内燃エンジンのピストン用の冷却及び潤滑油供給装置の本発明による第1の実施例を示す。ここでは、4気筒インラインエンジンの冷却ノズルの油供給装置を示すが、本発明は、異なる構成(V字型、スター型、W字型等)及び異なる数の気筒を有する任意の他のエンジンにも困難なく適応可能であることは明白である。
【0040】
この配置では、較正された漏出量を有する中心の取り外し可能バルブ21が、エンジンブロック内の供給チャネル7から、取り外し可能な冷却及び潤滑ノズル8a、8b、8c、及び8dへの冷却及び潤滑流体の流れを制御し、取り外し可能な冷却及び潤滑ノズル8a、8b、8c、及び8dは、それぞれの下流チャネル9a、9b、9c、及び9dによって、冷却及び潤滑流体の噴流を、冷却されるべき各ピストン10a、10b、10c、及び10dの頂面に案内する。
【0041】
この配置では、取り外し可能な冷却及び潤滑ノズル8a、8b、8c、及び8dは、内部バルブを有さない。このようなノズル8a、8b、8c、及び8dの例示的な実施例を、図3に示す。図3は、ダブルノズル11とシングルノズル12を示す。
【0042】
シングルノズル12は、供給チャネル7(図1)に接続されるよう設計される1つの分岐先12aを有し、また、シングルノズル12は、冷却及び潤滑流体の噴流を冷却されるべきピストン10a、10b、10c、及び10dの頂面に対して案内するよう設計される湾曲管12bを有し、また、シングルノズル12は、湾曲管12bの自由端12cに位置付けられる縮小部12dにおいて終端する。
【0043】
ダブルノズル11は、その分岐先11aによって供給チャネル7に接続され、また、2つの湾曲した流出管11b及び11cを有する。それらの自由端11d及び11eは、縮勝負11f及び11gを有する。湾曲した流出管11b及び11cの自由端11d及び11eは、それぞれ、冷却及び潤滑流体の少なくとも1つの噴流を、冷却されるべきピストン10a−10dの頂面に対して案内するよう設計される。
【0044】
図2は、本発明によるピストン10a、10b、10c、及び10dの冷却及び潤滑ノズル8a、8b、8c、及び8dの油供給装置の第2の実施例を示す概略図である。この実施例では、冷却及び潤滑流体は、供給チャネル7によって、ノズル8a、8b、8c、及び8dに供給され、各ノズル8a、8b、8c、及び8d自体が、較正された漏出量の手段を有するバルブ21a、21b、21c、及び21dを含む。
【0045】
バルブ21a−21dと較正された漏出の手段を含むこのようなバルブノズル8a、8b、8c、及び8dは、図4に示す。図4では、較正された漏出の手段のバルブ21と、2つの湾曲した流出管11b及び11cを有するダブルバルブノズル110を示す。更に、較正された漏出の手段のバルブ21が組み合わされ、1つの湾曲した流出管12bを有するシングルバルブノズル120も示す。
【0046】
このようなバルブノズル110又は120は、バルブ本体210を有し、その上流セグメント21eは、貫通の軸方向に沿ってエンジンのボア内に軸方向に適合するよう設計される。バルブノズルは、エンジンブロックにおいて取り外し可能な素子であり、エンジンブロック自体の変更なく容易に交換可能及び適応可能である。
【0047】
図5aは、閉状態にある本発明のバルブ21の第1の実施例を断面で示す。バルブ21は、エンジン冷却回路の供給チャネル7に連通可能な上流チャネル13を有するバルブ本体210を含み、エンジン冷却回路内の圧力は、エンジン設計者に選択された特定の閾値圧力より低い。バネ15が、座部19に対して、コンパートメント17内で可動の遮断素子16を、座部19の開口18を遮断するよう押し、それにより、上流チャネル13からコンパートメント17及び下流チャネル14内に冷却及び潤滑流体が通過することを阻止する。
【0048】
2つのノッチ20が座部19に形成され、これらは、バルブ21の閉鎖のゾーンと並列して、上流チャネル13によってコンパートメント17内に到着する冷却及び潤滑流体の漏れ手段を構成する。この漏れ手段は、座部19に形成されるノッチ20の深度によって較正される。従って、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力より低い冷却回路の圧力についてでも、ノッチ20の断面積及び冷却流体の圧力によって決定される速度でのバルブ21を通る冷却及び潤滑流体の循環がある。
【0049】
図5bは、図5aのバルブ21の開状態を示す。この場合、冷却流体の圧力は、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力より大きく、従って、遮断素子16は、圧力下で上流チャネル13を通り到着する冷却及び潤滑流体によって押し戻され、バネ15を圧縮する。従って、遮断素子16は、その行程の終わりに到達し、停止部22に接する。その結果、冷却及び潤滑流体は、バルブ21の上流チャネル13から下流チャネル14に、コンパートメント17を通過して、自由に循環可能である。
【0050】
図6a及び6bは、それぞれその閉状態及び開状態にある本発明によるバルブ機構の第2の実施例を示す。
【0051】
図6aでは、冷却及び潤滑流体は、上流チャネル13によってバルブ21内に到着する。冷却流体の圧力が、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力未満である場合、コンパートメント17内で可動の遮断素子16は、座部19の開口18を遮断し、それにより、冷却及び潤滑流体が、大きい直径D2(図6b)を有するラジアル通路へのアクセスを得ることがないようにする。その結果、冷却及び潤滑流体の減少された流速が、小さい直径D1を有するラジアル孔25によって流入室23から環状室24内に流れ、その後、下流チャネル14を通り出る。遮断素子16は、バネ15によって座部19に対して保持される。
【0052】
図6bでは、最大開状態にある図6aのバルブ21を示す。この場合、冷却流体の圧力は、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力より大きく、これは、上流チャネル13によって到着する冷却及び潤滑流体に、コンパートメント17内に遮断素子16を押し戻させ、バネ15を圧縮させる。従って、遮断素子16は、座部19の開口18を空け、油が、大きい直径D2のラジアル通路26に到達しその後流入室23から下流チャネル14に接続される環状室24内に流れることを可能にする。ラジアル通路26の直径D2は、ラジアル孔25の直径D1より大きく、バルブ21を通る冷却流体の循環は、潤滑及び冷却の両方を確実にしながらより高い速度で行われることが可能である。
【0053】
従って、較正された漏れの手段は、一旦開かれると、バルブ21によって油のために残された通路、即ち、バルブ21のコンパートメント17と環状室24との間の側壁に形成される直径D2のラジアル通路26の直径より小さい直径D1のラジアル孔25を含み、冷却及び潤滑流体が、上流チャネル13に接続された供給チャネル7から下流チャネルに流れることを可能にする。
【0054】
図7a及び7bは、それぞれその閉状態及び開状態にある本発明によるバルブ機構の第3の実施例を示す。
【0055】
図7aは、その閉状態にある本発明の第3の実施例によるバルブを断面で示す。上流チャネル13は、冷却回路の供給チャネル7と連通し、その中では、圧力は、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力より低い。バネ15は、コンパートメント17内で可動なピストンである遮断素子16を、座部19の開口18を遮断するよう押し、それにより、上流チャネル13からコンパートメント17及び下流チャネル14への冷却及び潤滑流体の通過を阻止する。
【0056】
2つのノッチ20が座部19に形成され、これらは、バルブ21の閉鎖のゾーンと並列して、上流チャネル13によってコンパートメント17内に到着する冷却及び潤滑流体の漏れ手段を構成する。この漏れの手段は、座部19に形成されるノッチ20の深度によって較正される。一旦コンパートメント17内に入ると、冷却及び潤滑流体は、下流チャネル14に到達するようピストンヘッド29内に位置付けられる横通路27と、軸方向通路28を通ることが可能である。
【0057】
従って、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力より低い冷却回路の圧力についてでも、ノッチ20の断面積及び冷却流体の圧力によって決定される流速でのバルブ21を通る冷却及び潤滑流体の僅かな循環が依然としてある。
【0058】
図7bは、図7aのバルブ21の開状態を示す。この場合、冷却流体の圧力は、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力より大きく、従って、遮断素子16は、圧力下で上流チャネル13を通り到着する冷却及び潤滑流体によって押し戻される。従って、遮断素子16は、その行程の終わりに到達し、停止部22に接する。その結果、冷却及び潤滑流体は、バルブ21の上流チャネル13から下流チャネルに、コンパートメント17を通過して、バルブ21が閉状態にある場合に可能であるよりもより実質的な流速で、自由に循環可能である。
【0059】
図5a、5b、6a、6b、7a、7bに記載する3つの実施例において、同じバルブ21において、幾つかの流出管に接続され、幾つかの冷却及び潤滑流体を冷却されるべきピストンに案内する幾つかの下流チャネル14を有することは想到可能である。
【0060】
図8は、冷却流体の圧力の関数として3つの流速の曲線を示す。
【0061】
これらのうち、曲線1は、内燃エンジン(図1及び2)のピストン10a、10b、10c、及び10dの冷却及び潤滑ノズル8a、8b、8c、及び8d用の油供給バルブ21を有さない冷却回路の場合において、圧力の関数として冷却及び潤滑流体の流速を示す。油の通過を中断するバルブ21がないので、ゼロに等しくなく、また、略ゼロの圧力からより高い圧力まで非常に増加する油流速を認識するであろう。
【0062】
同じ図8において、曲線2は、冷却回路が、冷却流体の圧力に応答し、従って、上流圧力が閾値圧力より大きい場合に開き、また、上流圧力が閾値圧力未満である場合に完全に閉じる一般的なバルブを有する場合において、冷却流体の圧力の関数として冷却及び潤滑流体の流速を示す。例示的に、ここでは、閾値圧力は、2バールとする。冷却及び潤滑流体の流速は、ゼロ圧力と、ここでは2バールである閾値圧力の間の冷却流体の圧力に対してゼロである。冷却流体の圧力が2バールに到達すると、ピストン10a、10b、10c、及び10d(図1及び2)の冷却及び潤滑ノズル8a、8b、8c、及び8dの油供給装置の一般的なバルブは、以下のように反応する。即ち、遮断素子がコンパートメント内で動き、そして、冷却及び潤滑流体が座部の開口を通り流れることを可能にする。従って、油流速は、曲線1の流速と実質的に同じになるまで増加する。
【0063】
同じ図8において、曲線3は、エンジンのピストン10a−10dに油を供給するために本発明の漏れ装置を使用する場合において、冷却流体の圧力の関数として冷却流体の流速を示す。冷却流体の圧力が、基本的にゼロ圧力から増加するとき、流速が確立され、また更に、流速Q及び圧力Pにおいて曲線3上に位置付けられる点Aまで有意に増加する。圧力Pは、エンジン設計者によって選択された特定の閾値圧力に等しい(ここでは、2バール)。点Aは、低エンジン回転数(即ち、冷却流体の圧力は閾値圧力未満である)において、ピストンとライナーの間の摺動接触を滑らかにするのにちょうど十分である非ゼロ流速を確実にするよう設計者によって選択される。
【0064】
曲線1及び3の間の領域4は、低エンジン回転数において本発明の油供給装置があることにより節約される冷却及び潤滑流体の量を示し、その結果、この油量は、クランク軸受、連接棒の大端及び小端といったエンジンのより重要な動く部品に潤滑油を差すために使用されることが可能である。
【0065】
曲線3及び曲線2の間の領域5は、低エンジン回転数におけるピストンとライナーの間の摺動接触の潤滑のために使用される冷却及び潤滑流体の量を示し、これは、従って、低エンジン回転数における摺動接触への摩耗影響を大幅に減少することを可能にする。
【0066】
当業者は、図8のグラフの点Aの位置は調節可能であることを容易に理解するであろう。即ち、漏出量は、ノッチ20の深度又はラジアル孔25の直径の関数として較正される。トリガ閾値は、バネ15の選択された剛性によって決定される。
【0067】
本発明は、本願に明示的に記載した実施例に限定されない。むしろ、本発明は、請求項の範囲に含まれる様々な変形及び一般化を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】冷却及び潤滑ノズルに冷却及び潤滑流体を供給するための本発明の装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】冷却及び潤滑ノズルに冷却及び潤滑流体を供給するための本発明の装置の第2の実施例を示す図である。
【図3】図1の実施例において使用可能なノズルの異なるタイプを示す図である。
【図4】図2の実施例において使用可能なバルブノズルの異なるタイプを示す図である。
【図5a】閉状態における本発明のバルブ機構の第1の実施例を示す互いに対して90°ずらされた平面に沿っての2つの断面図である。
【図5b】開状態における図5aのバルブ機構の第1の実施例を示す互いに対して90°ずらされた平面に沿っての2つの断面図である。
【図6a】閉状態における本発明のバルブ機構の第2の実施例を示す互いに対して90°ずらされた平面に沿っての2つの断面図である。
【図6b】開状態における図6aのバルブ機構の第2の実施例を示す互いに対して90°ずらされた平面に沿っての2つの断面図である。
【図7a】閉状態における本発明のバルブ機構の第3の実施例を示す互いに対して90°ずらされた平面に沿っての2つの断面図である。
【図7b】開状態における図6aのバルブ機構の第3の実施例を示す互いに対して90°ずらされた平面に沿っての2つの断面図である。
【図8】冷却回路内の圧力の関数として冷却及び循環流体の流速を示すグラフである。
【符号の説明】
【0069】
7 供給チャネル
8a、8b、8c、8d 冷却及び潤滑ノズル
9a、9b、9c、9d 下流チャネル
10a、10b、10c、10d ピストン
11 ダブルノズル
12 シングルノズル
13 上流チャネル
14 下流チャネル
15 バネ
16 遮断素子
17 コンパートメント
18 開口
19 座部
20 ノッチ
21 バルブ
21a、21b、21c、21d バルブ
210 バルブ本体
22 停止部
23 流入室
24 環状室
25 ラジアル孔
26 ラジアル通路
27 横通路
28 軸方向通路
29 ピストンヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンの1つ以上のピストン(10a、10b、10c、10d)に冷却及び潤滑流体を供給する装置において、
前記装置は、前記内燃エンジンの前記ピストン用の1つ以上の取り外し可能な冷却及び潤滑ノズル(8a、8b、8c、8d)を含み、
前記装置は、少なくとも1つの取り外し可能なバルブ(21)を有し、
前記バルブは、供給チャネル(7)に接続可能な上流チャネル(13)と、前記冷却流体を前記ピストンに運ぶ下流チャネル(14)を有し、
前記取り外し可能なバルブは、座部(19)の開口(18)を遮断するようコンパートメント(17)内を可動な遮断素子(16)を含む閉鎖手段を有し、
前記取り外し可能なバルブは、前記上流の圧力が閾値圧力より大きい場合には開き、前記上流の圧力が前記閾値圧力未満である場合には閉じることによって前記冷却流体の圧力に反応する装置であって、
前記取り外、し可能なバルブは更に、前記バルブの前記閉鎖手段(16、17、18、19)と並列して、前記上流チャネルを前記下流チャネルに接続する較正された漏出の手段(20、25)を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ピストンの頂面(10a、10b、10c、10d)用の幾つかの冷却及び潤滑ノズル(8a、8b、8c、8d)に共通の較正された漏出の手段を有するバルブ(21)を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ピストンの頂面(10a、10b、10c、10d)の各冷却及び潤滑ノズル(8a、8b、8c、8d)は、較正された漏出の手段(20、25)を有するバルブ(21a、21d)を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記閾値圧力は、ガソリンエンジンについては、約1.8乃至約2.8バールであり、ディーゼルエンジンについては、約1.2乃至約2.5バールであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記較正された漏出の手段は、前記バルブ(21)の前記座部(19)に形成された少なくとも1つのノッチ(20)を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記バルブ(21)は、前記コンパートメント(17)の周りに配置され、前記下流チャネル(9a、9b、9c、9d)と連通する環状室(24)を有するバルブ本体(210)を含み、
前記遮断素子(16)は、前記座部(19)の前記開口(18)と、前記環状室(24)と連通するよう前記コンパートメント(17)に設けられた少なくとも1つのラジアル通路(26)とを同時に遮断するピストンであり、
前記較正された漏出の手段は、前記コンパートメント(17)を前記環状室(24)と永久連通させるラジアル孔(25)であり、
前記少なくとも1つのラジアル通路(26)は、前記ラジアル孔(25)の直径(D1)より大きい直径(D2)を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記較正された漏出の手段は、前記バルブ(21)の前記座部(19)に形成された少なくとも1つのノッチ(20)を含み、
前記遮断素子(16)は、ヘッド(29)を有するピストンであり、
前記ピストンの前記ヘッド(29)は、前記コンパートメント(17)を前記下流チャネル(9a、9b、9c、9d)と連通させる軸方向通路(28)と連通する横通路(27)を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置を実施するためのバルブノズル(110、120)であって、
上流チャネル(13)及び下流チャネル(14)を有するバルブ本体(210)と、
前記上流チャネル(13)と前記下流チャネル(14)との間の座部(19)の開口(18)を遮断するようコンパートメント(17)内を可動な遮断素子(16)を含む、前記バルブ本体(210)内における閉鎖手段と、
前記閉鎖手段(16、17、18、19)と並列して、前記上流チャネル(13)を前記下流チャネル(14)に接続する較正された漏出の手段と、
を含み、
前記遮断素子(16)は、前記上流の圧力が閾値圧力より大きい場合には開き、前記上流の圧力が前記閾値圧力未満である場合には閉じることによって冷却流体の圧力に反応することを特徴とするバルブノズル。
【請求項9】
前記バルブ本体(210)は、前記上流チャネル(13)を有し、貫通の軸方向に沿ってエンジンのボア内に軸方向に適合し且つ前記ボアによって到着する冷却及び潤滑流体を受容するよう形作られる上流セグメント(21e)を含むことを特徴とする請求項8記載のバルブノズル。
【請求項10】
前記バルブ本体(210)における少なくとも1つの下流チャネル(14)と、冷却及び潤滑流体の少なくとも1つの噴流を冷却されるべきピストン(10a、10b、10c、10d)上に案内するための少なくとも1つの下流管(9a、9b、9c、9d)を有する流出構造を含むことを特徴とする請求項8記載のバルブノズル。
【請求項11】
冷却及び潤滑流体の前記下流流出管(9a、9b、9c、9d)は、その自由端(12c)は前記ピストン(10a、10b、10c、10d)に向けられ、縮小部(12d)を含む湾曲管(12b)であることを特徴とする請求項8記載のバルブノズル。
【請求項12】
前記閾値圧力は、ガソリンエンジンについては、約1.8乃至約2.8バールであり、ディーゼルエンジンについては、約1.2乃至約2.5バールであることを特徴とする請求項8記載のバルブノズル。
【請求項13】
前記較正された漏出の手段は、前記バルブ(21)の前記座部(19)に形成された少なくとも1つのノッチ(20)を含むことを特徴とする請求項8記載のバルブノズル。
【請求項14】
前記バルブ本体(210)は、前記コンパートメント(17)の周りに配置され、前記下流チャネル(9a、9b、9c、9d)と連通する環状室(24)を含み、
前記遮断素子(16)は、前記座部(19)の前記開口(18)と、前記環状室(24)と連通するよう前記コンパートメント(17)に設けられた少なくとも1つのラジアル通路(26)とを同時に遮断するピストンであり、
前記較正された漏出の手段は、前記コンパートメント(17)を前記環状室(24)と永久連通させるラジアル孔(25)であり、
前記少なくとも1つのラジアル通路(26)は、前記ラジアル孔(25)の直径(D1)より大きい直径(D2)を有することを特徴とする請求項8記載のバルブノズル。
【請求項15】
前記較正された漏出の手段は、前記バルブ(21)の前記座部(19)に形成された少なくとも1つのノッチ(20)を含み、
前記遮断素子(16)は、ヘッド(29)を有するピストンであり、
前記ピストンの前記ヘッド(29)は、前記コンパートメント(17)を前記下流チャネル(9a、9b、9c、9d)と連通させる軸方向通路(28)と連通する横通路(27)を有することを特徴とする請求項8記載のバルブノズル。
【請求項16】
請求項1記載の装置によって冷却及び潤滑流体が供給される1つ以上のピストン(10a、10b、10c、10d)を有する内燃エンジン。
【請求項17】
内燃エンジンの1つ以上のピストン(10a、10b、10c、10d)に冷却及び潤滑流体を供給する請求項8に記載するバルブノズル(110、120)を有する内燃エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−312936(P2006−312936A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123845(P2006−123845)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(503302735)
【氏名又は名称原語表記】BONTAZ CENTRE
【Fターム(参考)】