説明

ピラジンジカルボキサミド類およびそれらの使用

本発明は、新規ピラジンジカルボキサミド類、それらの使用方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用、特に血栓塞栓性障害のためのものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ピラジンジカルボキサミド類、それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用、特に血栓塞栓性障害のためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、生物の保護メカニズムであり、それは、血管壁の欠損を迅速かつ確実に「封止」するのを助ける。かくして、血液の損失を回避または最小に維持できる。血管損傷後の止血は、主に、血漿タンパク質の複雑な酵素反応のカスケードが誘起される凝血系により実行される。多数の血液凝固因子がこの過程に関与し、それら因子の各々は、活性化されると、各々の次の不活性な前駆体をその活性形態に変換する。カスケードの終わりでは、可溶性のフィブリノーゲンが不溶性のフィブリンに変換されるに至り、血餅の形成をもたらす。血液凝固では、共通の反応経路で終わる内因性と外因性のシステムは、伝統的に区別されている。ここで、酵素前駆体のX因子から形成されるXa因子は、この2つの凝血経路を連結するので、鍵となる役割を果たす。活性化されたセリンプロテアーゼXaは、プロトロンビンをトロンビンに切断する。生じるトロンビンは、次いで、フィブリノーゲンをフィブリンに切断する。続くフィブリン単量体のクロスリンクは、血餅の形成を、従って止血を引き起こす。加えて、トロンビンは、同様に止血にかなり貢献する血小板凝集の強力なエフェクターである。
【0003】
止血は、複雑な調節メカニズムに従う。凝血系の制御されない活性化または活性化過程の阻害の欠陥は、血管(動脈、静脈、リンパ管)または心腔における局所的な血栓または塞栓の形成を引き起こし得る。これは、深刻な血栓塞栓性障害を導き得る。加えて、消費性凝固障害の場合、過凝固状態−全身的な−は、汎発性の血管内凝血をもたらし得る。血栓塞栓性の合併症は、さらに、微小血管障害性の溶血性貧血、血液透析などの体外血液循環、および心臓代用弁(prosthetic heart valves)とも関連して起こる。
【0004】
血栓塞栓性障害は、最も工業化された国々における最も頻繁な罹患と死亡の原因である [Heart Disease: A Textbook of Cardiovascular Medicine, Eugene Braunwald, 5th edition, 1997, W.B. Saunders Company, Philadelphia]。
【0005】
先行技術から知られている抗凝血剤、即ち、血液凝固を阻害または予防する物質は、様々な、しばしば深刻な、欠点を有する。従って、血栓塞栓性障害の有効な処置方法または予防は、実際のところ非常に困難かつ不満足なものである。
【0006】
血栓塞栓性障害の治療および予防では、ヘパリンが最初に使用され、非経腸で、または皮下に投与される。現今では、より好適な薬物動態学的特性のために、低分子量ヘパリンがますます好まれている;しかしながら、低分子量ヘパリンを用いても、ヘパリン治療に伴う後述する既知の欠点を回避するのは不可能である。このように、ヘパリンは、経口投与されると効果がなく、比較的短い半減期である。ヘパリンは血液凝固カスケードの複数の因子を同時に阻害するので、作用は非選択的である。さらに、高い出血のリスクがある;特に脳出血および消化管での出血が起こり得、それは、血小板減少、薬物誘導脱毛症または骨粗鬆症をもたらし得る [Pschyrembel, Klinisches Woerterbuch, 257th edition, 1994, Walter de Gruyter Verlag, page 610, entry "Heparin"; Roempp Lexikon Chemie, Version 1.5, 1998, Georg Thieme Verlag Stuttgart, entry "Heparin"]。
【0007】
第2のクラスの抗凝血剤は、ビタミンKアンタゴニストである。これらには、例えば1,3−インダンジオン類、並びに、ことさらに、肝臓におけるある種のビタミンK依存性凝血因子の様々な生成物の合成を非選択的に阻害する、ワーファリン、フェノプロクモン(phenprocoumon)、ジクマロールおよび他のクマリン誘導体などの化合物が含まれる。しかしながら、作用メカニズムのために、作用の開始は非常に遅い(作用開始までの潜伏期間36ないし48時間)。この化合物は経口投与できる;しかしながら、出血のリスクが高く治療係数が狭いために、時間のかかる患者の個別の調整と監視が必要である。[J. Hirsh, J. Dalen, D.R. Anderson et al., "Oral anticoagulants: Mechanism of action, clinical effectiveness, and optimal therapeutic range" Chest 2001, 119, 8S-21S; J. Ansell, J. Hirsh, J. Dalen et al., "Managing oral anticoagulant therapy" Chest 2001, 119, 22S-38S; P.S. Wells, A.M. Holbrook, N.R. Crowther et al., "Interactions of warfarin with drugs and food" Ann. Intern. Med. 1994, 121, 676-683]。
【0008】
最近、血栓塞栓性障害の処置および予防のための新規治療アプローチが記載された。この新規治療アプローチのねらいは、Xa因子の阻害である。血液凝固カスケードにおいてXa因子が果たす中心的役割のために、Xa因子は、抗凝血剤の最も重要な標的の1つである [J. Hauptmann, J. Stuerzebecher, Thrombosis Research 1999, 93, 203; S.A.V. Raghavan, M. Dikshit, "Recent advances in the status and targets of antithrombotic agents" Drugs Fut. 2002, 27, 669-683; H.A. Wieland, V. Laux, D. Kozian, M. Lorenz, "Approaches in anticoagulation: Rationales for target positioning" Curr. Opin. Investig. Drugs 2003, 4, 264-271; U.J. Ries, W. Wienen, "Serine proteases as targets for antithrombotic therapy" Drugs Fut. 2003, 28, 355-370; L.-A. Linkins, J.I. Weitz, "New anticoagulant therapy" Annu. Rev. Med. 2005, 56, 63-77 (online publication August 2004)]。
【0009】
動物モデルで、様々なペプチド性および非ペプチド性化合物がXa因子阻害剤として有効であることが示された。既に、多数の直接的Xa因子阻害剤が知られている [J.M. Walenga, W.P. Jeske, D. Hoppensteadt, J. Fareed, "Factor Xa Inhibitors: Today and beyond" Curr. Opin. Investig. Drugs 2003, 4, 272-281; J. Ruef, H.A. Katus, "New antithrombotic drugs on the horizon" Expert Opin. Investig. Drugs 2003, 12, 781-797; M.L. Quan, J.M. Smallheer, "The race to an orally active Factor Xa inhibitor: Recent advances" Curr. Opin. Drug Discovery & Development 2004, 7, 460-469]。非ペプチド性低分子量Xa因子阻害剤も、例えば、WO03/026652、WO02/079145、WO01/019788およびWO01/064642に記載されている。
【発明の開示】
【0010】
本発明の目的は、障害、特に血栓塞栓性障害を制御するための新規物質を提供することである。
【0011】
本発明は、一般式(I)
【化1】

式中、Aは、式
【化2】

[式中、Rは、水素、(C−C)−アルキル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノ、(C−C)−アルカノイルアミノまたは(C−C)−アルコキシカルボニルアミノを表し、
ここで、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、モノ−およびジ−(C−C)−アルキルアミノは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノまたは4員ないし7員の飽和複素環{これは、窒素原子を介して結合しており、N−RおよびO(式中、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表す)からなる群から環の構成員を含有していてもよい}により各場合で置換されていてもよく、
そして、*は、フェニル環への結合点を表す]
の基を表し、
【0012】
Zは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニルまたはチエニルを表し、これらは、各場合で、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル(これは、アミノにより置換されていてもよい)、エチニルおよびアミノからなる群から選択される同一かまたは異なる置換基により一置換または二置換されていてもよく、
およびRは、同一かまたは異なり、相互に独立して、水素、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシまたはアミノであり、
ここで、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルコキシは、ヒドロキシルまたはアミノにより置換されていてもよく、
そして、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表し、これらは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノまたはモノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノにより置換されていてもよい、
の化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0013】
本発明による化合物は、式(I)の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、式(I)に包含される後述する式の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、並びに、式(I)に包含される実施態様として後述する化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物(後述する式(I)に含まれる化合物が、既に塩、溶媒和物および塩の溶媒和物でない場合に)である。
【0014】
本発明による化合物は、それらの構造によって、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在できる。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物を含む。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、立体異性的に均一な構成分を既知のやり方で単離できる。
本発明による化合物が互変異性体で存在できる場合、本発明は、全ての互変異性体を含む。
【0015】
本発明に関して、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。本発明はまた、それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も含む。
【0016】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0017】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、また、常套の塩基の塩、例えば、そして好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩)、および、アンモニアまたは1個ないし16個の炭素原子を有する有機アミン(例えば、そして好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩が含まれる。
【0018】
本発明に関して、溶媒和物は、固体または液体状態で溶媒分子との配位により錯体を形成する本発明による化合物の形態である。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。本発明に関して、好ましい溶媒和物は水和物である。
【0019】
さらに、本発明はまた、本発明による化合物のプロドラッグも含む。用語「プロドラッグ」は、それら自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、それらが体内に滞在する時間中に、本発明による化合物に変換される(例えば代謝的または加水分解的に)化合物を含む。
【0020】
本発明に関して、断りのない限り、置換基は、以下の意味を有する:
本発明に関して、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、各々、1個ないし6個、1個ないし4個および1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す。好ましいのは、1個ないし4個または1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルである。特に好ましいのは、1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチルおよびn−ヘキシル。
【0021】
本発明に関して、(C−C)−シクロアルキルは、3個ないし7個の炭素原子を有する単環式シクロアルキル基を表す。好ましいのは、3個ないし6個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル。
【0022】
本発明に関して、(C−C)−アルコキシ、(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルコキシは、各々、1個ないし6個、1個ないし4個および1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルを表す。好ましいのは、1個ないし4個または1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルである。特に好ましいのは、1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびtert−ブトキシ。
【0023】
本発明に関して、(C−C)−アルカノイル[(C−C)−アシル]は、1個ないし6個の炭素原子を有し、二重結合した酸素原子を1位に有し、1位を介して結合している、直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有するアルカノイルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:ホルミル、アセチル、プロピオニル、n−ブチリル、イソブチリルおよびピバロイル。
【0024】
本発明に関して、(C−C)−アルコキシカルボニルは、1個ないし6個の炭素原子を有し、カルボニル基を介して結合している、直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルを表す。好ましいのは、アルコキシ基中に1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシカルボニルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニル。
【0025】
本発明に関して、モノ−(C−C)−アルキルアミノおよびモノ−(C−C)−アルキルアミノは、各々、1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のモノアルキルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノおよびtert−ブチルアミノ。
【0026】
本発明に関して、ジ−(C−C)−アルキルアミノおよびジ−(C−C)−アルキルアミノは、各場合で、1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する2個の同一かまたは異なる直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、各場合で、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のジアルキルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノ、N−tert−ブチル−N−メチルアミノ、N−エチル−N−n−ペンチルアミノおよびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノ。
【0027】
本発明に関して、(C−C)−シクロアルキルアミノは、3個ないし7個の炭素原子を有するシクロアルキル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、3個ないし6個の炭素原子を有するシクロアルキルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、シクロヘキシルアミノおよびシクロヘプチルアミノ。
【0028】
本発明に関して、(C−C)−アルカノイルアミノは、1個ないし6個の炭素原子を有し、カルボニル基を介して結合している直鎖または分枝鎖のアルカノイル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有するアルカノイルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、n−ブチルアミドおよびピバロイルアミド。
【0029】
本発明に関して、(C−C)−アルコキシカルボニルアミノは、アルコキシラジカル中に1個ないし6個の炭素原子を有し、カルボニル基を介して結合している直鎖または分枝鎖のアルコキシカルボニル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、アルコキシ基中に1個ないし4個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、n−プロポキシカルボニルアミノおよびtert−ブトキシカルボニルアミノ。
【0030】
本発明に関して、4員ないし7員の複素環は、環の窒素原子を含有し、この環の窒素原子を介して結合しており、NおよびOからなる群からさらなるヘテロ原子を含有していてもよい、4個ないし7個の環原子を有する飽和複素環を表す。好ましいのは、窒素を介して結合しており、NおよびOからなる群からさらなるヘテロ原子を含有していてもよい、5員または6員の飽和複素環である。以下のラジカルは、例として言及し得る:ピロリジニル、オキサゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、アゼピニルおよび1,4−ジアゼピニル。特に好ましいのは、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニルである。
【0031】
本発明による化合物中のラジカルが置換されている場合、そのラジカルは、断りのない限り、一置換または多置換されていてよい。本発明に関して、1回以上出てくるラジカルの意味は、相互に独立している。1個、2個または3個の同一または異なる置換基による置換が好ましい。1個の置換基による置換がことさら特に好ましい。
【0032】
好ましいのは、式中、
Aが、式
【化3】

[式中、R4Aは、水素、ヒドロキシル、メトキシまたはアミノを表し、
4Bは、メチルまたはエチル(これらの各々は、ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよい)、またはアミノを表し、
4Cは、水素、メチルまたはエチルを表し、ここで、メチルまたはエチルは、各々ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよく、
そして、*は、フェニル環への結合点を表す]
の基を表し、
Zが、式
【化4】

(式中、Rは、フッ素、塩素、メチル、シアノまたはエチニルを表し、
そして、#は、窒素原子への結合点を表す)
の基を表し、
が水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、Rが水素を表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0033】
特に好ましいのは、式中、
Aが、式
【化5】

(式中、*はフェニル環への結合点を表す)
の複素環の基を表し、
Zが、式
【化6】

(式中、#は窒素原子への結合点を表す)
の基を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、Rが水素を表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0034】
ラジカルの各々の組合せまたは好ましい組合せで示される個々のラジカルの定義は、特に与えられたラジカルの組合せから独立して、他の組合せのいかなるラジカルの定義によっても置き換えられ得る。
上述の好ましい範囲の2つまたはそれ以上の組合せがことさら特に好ましい。
【0035】
本発明は、さらに、本発明による化合物の製造方法を提供し、その方法は、
[A]式(II)
【化7】

(式中、A、RおよびRは、上記定義の通りである)
の化合物を、最初に、不活性溶媒中、例えばトリエチルアミンなどの塩基および例えば塩化ピバロイルなどの脱水剤の存在下、式(III)
【化8】

(式中、Rは、上記定義の通りである)
の化合物と反応させ、式(IV)
【化9】

(式中、A、R、RおよびRは、上記定義の通りである)
の化合物を得、次いで、これらを、不活性溶媒中、酸の存在下、式(V)
【化10】

(式中、Zは上記定義の通りである)
の化合物で、式(I)の化合物に変換する;
または、
【0036】
[B]式(V)の化合物を、最初に、不活性溶媒中、必要に応じて塩基の存在下、式(III)の化合物と反応させ、式(VI)
【化11】

(式中、RおよびZは、上記定義の通りである)
の化合物を得、次いで、これらを、不活性溶媒中、カルボン酸官能基の活性化後、式(II)の化合物を用いて式(I)の化合物に変換する;
のいずれかを特徴とし、
そして、式(I)の化合物を、必要に応じて、適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸を用いて、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換する。
【0037】
必要に応じて、本発明による化合物は、上記方法により得られる式(I)の化合物から出発して、個々の置換基、特に、RおよびRで挙げる置換基の官能基のさらなる変換によっても製造できる。これらの変換は常套の方法により実施され、例えば、アルキル化、アミノ化、アシル化、エステル化、エステル切断、アミド形成、酸化または還元並びに保護基の導入および除去の反応が含まれる。
【0038】
工程(II)+(III)→(IV)および(IV)+(V)→(I)用の不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレンもしくはクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、または、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)もしくはアセトニトリルなどの溶媒である。言及した溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、ジメチルホルムアミドである。
【0039】
工程(II)+(III)→(IV)に、また、必要に応じて工程(V)+(III)→(VI)に適する塩基は、常套の有機アミン塩基である。これらには、特に、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標))、または、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)が含まれる。好ましいのは、トリエチルアミンである。
【0040】
工程(II)+(III)→(IV)に適する脱水剤は、例えば、有機塩化カルボニル、例えば、塩化アセチルまたは塩化ピバロイル、有機塩化スルホニル、例えば塩化メタンスルホニル、クロロギ酸エステル、例えばメチルクロロホルメートまたはイソブチルクロロホルメート、または無機酸塩化物または無水物、例えばオキシ塩化リン、五塩化リン、三塩化リン、五酸化リンまたは塩化チオニルである。好ましいのは、塩化ピバロイルを使用することである。
【0041】
工程(IV)+(V)→(I)に適する酸は、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機カルボン酸またはスルホン酸、または、塩化水素、臭化水素、硫酸またはリン酸などの無機酸である。好ましいのは、トリフルオロ酢酸を使用することである。
【0042】
工程(V)+(III)→(VI)に適する不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは鉱油留分(mineral oil fractions)などの炭化水素類、または、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)もしくはアセトニトリルなどの他の溶媒である。言及した溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、テトラヒドロフランまたはジメチルホルムアミドである。
【0043】
工程(II)+(III)→(IV)および(V)+(III)→(VI)は、一般的に、−20℃ないし+60℃、好ましくは0℃ないし+40℃の温度範囲で実施する。この反応は、大気圧、高圧または低圧(例えば0.5ないし5bar)で実施できる。一般に、この反応は、大気圧で実施する。
【0044】
工程(IV)+(V)→(I)は、一般的に、+20℃ないし+100℃、好ましくは+50℃ないし+80℃の温度範囲で実施する。この反応は、大気圧、高圧または低圧(例えば0.5ないし5bar)で実施できる。一般に、この反応は、大気圧で実施する。
【0045】
工程(VI)+(II)→(I)用の不活性溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは鉱油留分などの炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレンもしくはクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、または、酢酸エチル、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリルもしくはアセトンなどの他の溶媒である。言及した溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドまたはこれらの溶媒の混合物である。
【0046】
工程(VI)+(II)→(I)のアミド形成に適する縮合剤は、例えば、N,N'−ジエチル−、N,N'−ジプロピル−、N,N'−ジイソプロピル−、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノイソプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)などのカルボジイミド類、または、N,N'−カルボニルジイミダゾールなどのホスゲン誘導体、または、2−エチル−5−フェニル−1,2−オキサゾリウム3−サルフェートもしくは2−tert−ブチル−5−メチルイソキサゾリウムパークロレートなどの1,2−オキサゾリウム化合物、または、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンなどのアシルアミノ化合物、または、イソブチルクロロホルメート、プロパンホスホン酸無水物(PPA)、ジエチルシアノホスホネート、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスホリルクロリド、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−(2−オキソ−1−(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)またはO−(1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TCTU)であり、適するならば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)またはN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)などのさらなる補助剤と、また、塩基としてアルカリ金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムまたは重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウム、または、トリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基と組み合わせる。好ましいのは、TBTU、HATUまたはPPAを、各々N,N−ジイソプロピルエチルアミンと組み合わせて使用することである。
【0047】
工程(VI)+(II)→(I)は、一般的に、−20℃ないし+60℃、好ましくは0℃ないし+40℃の温度範囲で実施する。この反応は、大気圧、高圧または低圧(例えば0.5ないし5bar)で実施できる。一般に、この反応は、大気圧で実施する。
【0048】
式(II)、(III)および(V)の化合物は、購入できるか、文献からわかるか、または、文献からわかる方法と同様に製造できる。
【0049】
本発明による化合物の製造は、下記の合成スキームにより例示説明できる:
スキーム
【化12】

[略語:Bu=tert−ブチル;Et=エチル;TBTU=O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート;TFA=トリフルオロ酢酸]
【0050】
本発明による化合物は、予想し得なかった有用な薬理活性スペクトル、特に、高い効力および好都合な半減期を有する。
従って、それらは、ヒトおよび動物における疾患の処置および/または予防のための医薬としての使用に適する。
本発明による化合物は、特に抗凝血剤として作用する、血液凝固因子Xaの選択的阻害剤である。
本発明はさらに、障害、好ましくは血栓塞栓性障害および/または血栓塞栓性合併症の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
【0051】
本発明の目的上、「血栓塞栓性障害」には、特に、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術などの冠動脈介入後の再閉塞および再狭窄、末梢動脈閉塞疾患、肺栓塞症、深部静脈血栓および腎静脈血栓、一過性虚血発作および血栓性および血栓塞栓性卒中などの障害が含まれる。
【0052】
従って、これらの物質は、例えば心房細動などの急性、間欠性または持続性心不整脈を有する患者、および電気的除細動を受けている者、さらに、心臓弁障害を有するか、または人工心臓弁を有する患者における、心原性血栓塞栓症、例えば、脳虚血、卒中および全身性血栓塞栓症および虚血の予防および処置にも適する。加えて、本発明による化合物は、汎発性血管内凝固症候群(DIC)の処置に適する。
【0053】
血栓塞栓性合併症は、さらに、微小血管障害性溶血性貧血、血液透析などの体外血液循環において、そして心臓代用弁と関連して起こる。
【0054】
さらに、本発明による化合物は、アテローム硬化性血管障害および炎症障害、例えば運動器のリウマチ性障害の予防および/または処置にも、およびそれに加えて、アルツハイマー病の予防および/または処置にも適する。さらに、本発明による化合物は、腫瘍成長および転移形成の阻害、微小血管障害、加齢に伴う黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症および他の微小血管の障害、また、例えば、腫瘍患者における、特に大きい外科的介入または化学もしくは放射線治療を受けている患者における、静脈血栓塞栓症などの血栓塞栓性合併症の予防および処置にも使用できる。
【0055】
本発明による化合物は、さらに、エクスビボの凝血の防止、例えば、血液および血清製品の保存、カテーテルおよび他の医療器具および装置の清浄化/予処理、インビボまたはエクスビボで使用される医療器具および装置の合成表面(synthetic surface)の被覆、または、Xa因子を含む生物学的サンプルにも使用できる。
【0056】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、抗凝血的に有効な量の本発明による化合物を使用する、障害、特に上述の障害の処置および/または予防方法を提供する。
【0057】
本発明はさらに、抗凝血的に有効な量の本発明による化合物を添加することを特徴とする、インビトロの、特に、保存血液またはXa因子を含む生物学的サンプルにおける、血液凝固を防止する方法を提供する。
【0058】
本発明はさらに、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物および1種またはそれ以上のさらなる活性化合物を含む医薬を提供する。以下の化合物は、組合せに適する活性化合物として、例として、そして好ましく言及し得る:
・脂質低下剤、特にHMG−CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A)リダクターゼ阻害剤;
・冠血管治療剤/血管拡張剤、特にACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤;AII(アンジオテンシンII)受容体アンタゴニスト;β−アドレナリン受容体アンタゴニスト;アルファ−1−アドレナリン受容体アンタゴニスト;利尿剤;カルシウムチャネル遮断剤;環状グアノシン一リン酸(cGMP)濃度の上昇をもたらす物質、例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤;
・プラスミノーゲン活性化剤(血栓溶解剤/線維素溶解剤)および血栓溶解/線維素溶解を高める化合物、例えば、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子の阻害剤(PAI阻害剤)またはトロンビン活性型繊維素溶解阻害因子の阻害剤(TAFI阻害剤);
・抗凝血剤;
・血小板凝集阻害性物質(血小板凝集阻害剤、栓球凝集阻害剤);
・フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト(糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト);
・並びに抗不整脈薬。
【0059】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物を、通常1種またはそれ以上の不活性、非毒性の医薬的に許容し得る補助剤と共に含む医薬、および上述の目的でのそれらの使用を提供する。
【0060】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、それらは、適するやり方で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜もしくは耳の経路で、またはインプラントもしくはステントとして、投与できる。
これらの投与経路のために、本発明による化合物を適する投与形で投与できる。
【0061】
経口投与に適するのは、先行技術で説明される通りに働き、本発明による化合物を迅速におよび/または改変された形態で送達し、本発明による化合物を結晶および/または無定形および/または溶解形態で含むものであり、例えば、錠剤(非被覆および被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、溶解が遅延されるか、または不溶であり、本発明による化合物の放出を制御する被覆を施された錠剤)、口腔中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤、エアゾル剤または液剤である。
【0062】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、なかんずく、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤形態の注射および点滴用製剤である。
【0063】
他の投与経路に適する例は、吸入用医薬形態(なかんずく、粉末吸入器、噴霧器)、点鼻薬/液/スプレー;舌、舌下または頬側投与用の錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、眼または耳用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
好ましいのは、経口または非経腸投与、特に経口投与である。
【0064】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知のやり方で行うことができる。これらの補助剤には、なかんずく、担体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の隠蔽剤が含まれる。
【0065】
一般に、非経腸投与で約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになった。経口投与の投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0066】
それにも拘わらず、必要に応じて、体重、投与経路、活性化合物に対する個体の応答、製剤の様式および投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合、これらを1日に亘る数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0067】
下記の実施例により、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
以下の試験および実施例における百分率は、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【実施例】
【0068】
A.実施例
略語および頭字語:
【表1】

【0069】
LC−MSおよびHPLCの方法
方法1
MS装置:Micromass ZQ;HPLC装置:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分、2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0070】
方法2
MS装置:Micromass ZQ;HPLC装置:HP 1100 Series; UV DAD;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分、2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0071】
方法3
装置:HPLC Agilent Series 1100 を有する Micromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分、2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:208−400nm。
【0072】
方法4
装置:HPLC Agilent Series 1100 を有する Micromass Platform LCZ;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分、2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0073】
方法5
装置:HPLC Agilent Series 1100 を有する Micromass Platform LCZ;カラム:Thermo HyPURITY Aquastar 3μ 50 mm x 2.1 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分100%A→0.2分100%A→2.9分30%A→3.1分10%A→5.5分10%A;オーブン:50℃;流速:0.8ml/分;UV検出:210nm。
【0074】
方法6
MS装置:Micromass ZQ;HPLC装置:Waters Alliance 2795;カラム:Merck Chromolith SpeedROD RP-18e 50 mm x 4.6 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分10%B→3.0分95%B→4.0分95%B;オーブン:35℃;流速:0.0分1.0ml/分→3.0分3.0ml/分→4.0分3.0ml/分;UV検出:210nm。
【0075】
方法7
装置:DAD 検出を有するHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分0%B→9.2分2%B→10分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0076】
方法8
装置:DAD 検出を有するHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%)5ml/水ll、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→15分90%B→15.2分2%B→16分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0077】
方法9
装置:DAD 検出を有するHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→6.5分90%B→6.7分2%B→7.5分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0078】
出発物質および中間体:
実施例1A
1−(4−アミノフェニル)ピロリジン−2−オン
【化13】

この化合物は、1−(4−ニトロフェニル)−2−ピロリジノンの還元により製造した。Reppe et al., Justus Liebigs Ann. Chem. 1955, 596, 209 参照。
【0079】
実施例2A
3−(4−アミノフェニル)−1,3−オキサゾリジン−2−オン
【化14】

この化合物は、文献からわかる経路により製造した。M. Artico et al., Farmaco Ed. Sci. 1969, 24, 179-190 参照。
【0080】
実施例3A
1−(4−アミノフェニル)イミダゾリジン−2−オン
【化15】

1−(4−ニトロフェニル)イミダゾリジン−2−オン[1−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−ニトロフェニル)ウレアの光延反応により製造、T.H. Kim, G.J. Lee, M.-H. Cha, Synth. Commun. 1999, 29, 2753-2758 参照]2.0g(9.6mmol)を、DMF/THF(1:1)20mlに溶解し、パラジウム/炭素(5%)200mgを添加し、混合物を室温、大気圧、水素雰囲気中で水素化する。12時間後、反応混合物を、Tonsil を使用して、Celite を通して吸引濾過し、濾過ケーキをTHFで洗浄し、濾液を濃縮し、残渣を高真空下で乾燥させる。
収量:1.7g(理論値の93%)
LC−MS(方法7):R=0.31分;
MS(ESIpos):m/z=178[M+H].
【0081】
実施例4A
1−(4−アミノ−3−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−2−オン
【化16】

文献[A. Klapers et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 7421-7428]からわかる方法と同様に、2−フルオロ−4−ヨードアニリンおよび3−ヒドロキシピペリジン−2−オン[製造は、I.S. Hutchinson et al., Tetrahedron 2002, 58, 3137-3143 参照]から化合物を製造する:
【0082】
ジオキサン157ml中の、2−フルオロ−4−ヨードアニリン6.45g(27.2mmol)、3−ヒドロキシピペリジン−2−オン3.92g(34.0mmol、1.25当量)、ヨウ化銅(I)1.04g(5.5mmol、0.2当量)、リン酸カリウム11.56g(54.5mmol、2当量)およびN,N−ジメチルエチレンジアミン1.2ml(10.9mmol、0.4当量)の懸濁液を、アルゴン下、還流下で終夜撹拌する。さらに1.04g(5.5mmol、0.2当量)のヨウ化銅(I)および0.9ml(8.2mmol、0.3当量)のN,N−ジメチルエチレンジアミンを添加し、反応混合物を還流下にさらに8時間撹拌する。懸濁液を珪藻土の層を通して濾過し、残渣をジクロロメタンおよびメタノール(1:1)の混合物で洗浄する。合わせた濾液を減圧下で濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル60、移動相:ジクロロメタン/メタノール100:1→40:1)により精製する。
収量:2.57g(理論値の41%)
HPLC(方法9):R=1.52分;
MS(DCI,NH):m/z=242[M+NH
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 6.94 (d, 1H), 6.81-6.65 (m, 2H), 5.12 (br. s, 2H), 3.99 (dt, 1H), 3.63-3.39 (m, 2H), 2.12-2.00 (m, 1H), 2.00-1.62 (m, 4H).
【0083】
実施例5A
tert−ブチル[1−(4−アミノフェニル)−2−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【化17】

この化合物は、文献[A. Klapers et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 7421-7428]からわかる方法と同様に、4−ヨードアニリン7.48g(34.2mmol)およびtert−ブチル(2−オキソピペリジン−3−イル)カルバメート[製造には、K.-L. Yu et al., J. Med. Chem. 1988, 31, 1430-1436 を参照]9.00g(42.0mmol、1.23当量)から製造する;実施例4Aも参照。
収量:6.4g(理論値の60%)
HPLC(方法9):R=3.50分;
MS(ESIpos):m/z=306[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 6.85 (d, 1H), 6.52 (d, 2H), 5.00 (s, 2H), 4.10-3.94 (m, 1H), 3.52-3.42 (m, 2H), 2.08-1.95 (m, 1H), 1.95-1.69 (m, 3H).
【0084】
実施例6A
4−(4−アミノフェニル)モルホリン−3−オン
【化18】

この化合物は、4−フルオロニトロベンゼンのモルホリン−3−オン[J. M. Lehn, F. Montavon, Helv. Chim. Acta 1976, 59, 1566-1583]による置換および、その後の4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オンの還元により製造する(WO01/47919、出発物質IおよびII、55−57頁参照)。
【0085】
実施例7A
4−(4−アミノ−3−フルオロフェニル)モルホリン−3−オン
【化19】

この化合物は、文献[A. Klapers et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 7421-7428]からわかる方法と同様に、2−フルオロ−4−ヨードアニリン5.0g(21.1mmol)およびモルホリン−3−オン2.6g(26mmol、1.23当量)から製造した;実施例4Aも参照。
収量:4.2g(理論値の94%)
HPLC(方法2):R=0.85分;
MS(ESIpos):m/z=211[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 7.06 (dd, 1H), 6.87 (dd, 1H), 6.73 (dd, 1H), 5.18 (br. s, 2H), 4.14 (s, 2H), 3.92 (t, 2H), 3.62 (t, 2H).
【0086】
実施例8A
4−(4−アミノフェニル)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)モルホリン−3−オン
【化20】

【0087】
段階a):2−アリル−4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オン
【化21】

−70℃、アルゴン下で、4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オン [J.-M. Lehn, F. Montavon, Helv. Chim. Acta 1976, 59, 1566-1583]13.0g(58.5mmol)を、THF400ml中のリチウム1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン−2−イド13.7g(81.9mmol、1.4当量)の溶液に添加する。反応混合物を10分間撹拌し、次いで、前もって少量のアルミナを通してTHFで濾過した3−ヨード−1−プロパン5.4ml(58.5mmol、1.0当量)を添加する。反応混合物をゆっくりと室温に温まらせ、約100mlの体積に濃縮し、ジクロロメタンと水の混合物を添加する。相の分離後、水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル60、移動相:シクロヘキサン→シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)により精製する。
収量:4.1g(理論値の27%)
LC−MS(方法1):R=1.78分;
MS(ESIpos):m/z=263[M+H].
【0088】
段階b):2−(2−ヒドロキシエチル)−4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オン
【化22】

室温で、4%強度四酸化オスミウム水溶液0.62ml(0.10mmol、0.02当量)および過ヨウ素酸ナトリウム3.25g(15.2mmol、3当量)を、テトラヒドロフラン/水(1:1)60ml中の2−アリル−4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オン1.33g(5.07mmol)の溶液に添加する。反応混合物を、室温で1.3時間撹拌し、水とジクロロメタン混合物で希釈する。相の分離後、水相をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をテトラヒドロフラン/水(1:1)40mlに取り、室温で、水素化ホウ素ナトリウム96mg(2.5mmol、0.5当量)を反応溶液に添加し、混合物を室温で5分間撹拌する。水とジクロロメタンの混合物の添加および相の分離の後、水相をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル60、移動相:ジクロロメタン→ジクロロメタン/メタノール10:1)により精製する。
収量:1.1g(理論値の80%)
LC−MS(方法2):R=1.49分;
MS(ESIpos):m/z=267[M+H].
【0089】
段階c):2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オン
【化23】

室温で、イミダゾール563mg(8.26mmol、2当量)およびtert−ブチルジメチルシリルクロリド934mg(6.20mmol、1.5当量)を、DMF7ml中の2−(2−ヒドロキシエチル)−4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オン1.10g(4.13mmol)の溶液に添加し、混合物を90℃で終夜撹拌する。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に添加する。ジエチルエーテルの添加および相の分離の後、水相をジエチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をこれ以上精製せずに次の段階に使用する。
収量:1.67g(純度97%)
LC−MS(方法1):R=2.87分;
MS(ESIpos):m/z=381[M+H].
【0090】
段階d):4−(4−アミノフェニル)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)モルホリン−3−オン
【化24】

室温で、5%強度三塩化鉄溶液5.0mlおよび鉄粉末652mg(11.7mmol、3.7当量)を、エタノール15mlおよび水10ml中の2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オン1.2g(3.15mmol)の溶液に添加し、混合物を還流下で2.5時間撹拌する。熱い反応溶液を Celite を通して濾過し、減圧下で濃縮する。水およびジクロロメタンの添加後、アンモニア溶液の滴下を使用して反応溶液をアルカリ性にし、Celite を通して再度濾過する。相の分離後、水相をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
収量:899mg(純度95%、理論値の77%)
LC−MS(方法1):R=2.23分;
MS(ESIpos):m/z=351[M+H]
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.00 (d, 2H), 6.61 (d, 2H), 4.30 (dd, 1H), 4.08-3.98 (m, 1H), 3.87 (dd, 1H), 3.82-3.70 (m, 3H), 3.50-3.39 (m, 1H), 2.36-2.21 (m, 1H), 1.95-1.81 (m, 1H), 0.84 (s, 9H), 0.01 (s, 6H).
【0091】
実施例9A
1−(4−アミノフェニル)−3−メチルテトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン
【化25】

【0092】
段階a):1−メチル−3−(4−ニトロフェニル)テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン
【化26】

アルゴン下、室温で、カリウムtert−ブトキシド14.8g(131.4mmol、1.5当量)を、DMF300ml中の1−メチルテトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン [製造は、DE 1 121 617; Chem. Abstr. 1962, 56, 11601g 参照]10.0g(87.6mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で45分間撹拌する。次いで、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン14.8g(105.1mmol、1.2当量)を、少しずつ反応混合物に添加し、混合物を室温で終夜撹拌し、次いで減圧下で濃縮する。残渣を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチルの混合物に取る。相の分離後、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をトルエン中で撹拌し、濾過し、減圧下で乾燥させる。
収量:9.4g(理論値の46%)
LC−MS(方法2):R=1.68分;
MS(ESIpos):m/z=236[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 8.14 (d, 2H), 7.55 (d, 2H), 3.77 (t, 2H), 3.38 (t, 2H), 2.90 (s, 3H), 2.05 (t, 2H).
【0093】
段階b):1−(4−アミノフェニル)−3−メチルテトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン
【化27】

アルゴン下、パラジウム/炭素(5%)2.0gを、THF400ml中の1−メチル−3−(4−ニトロフェニル)テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン10.0g(42.5mmol)の溶液に添加し、混合物を、水素雰囲気中、室温、大気圧下で終夜水素化する。Tonsil を用いて、Celite を通して反応混合物を濾過し、濾過ケーキをメタノールで洗浄し、濾液を減圧下で濃縮し、乾燥させる。
収量:8.6g(理論値の99%)
LC−MS(方法5):R=2.00分;
MS(ESIpos):m/z=206[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 6.82 (d, 2H), 6.48 (d, 2H), 4.88 (br. s, 2H), 3.49 (t, 2H), 3.28 (t, 2H), 2.80 (s, 3H), 1.98 (五重線, 2H).
【0094】
実施例10A
1−(4−アミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン
【化28】

【0095】
段階a):1−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−ニトロフェニル)テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン
【化29】

文献[A. Klapers et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 7421-7428]からわかる方法と同様に、1−ヨード−4−ニトロベンゼン5.00g(20.1mmol)および1−(2−ヒドロキシエチル)テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン3.56g(24.7mmol、1.23当量)から化合物を製造する[製造は、DE 1 121 617; Chem. Abstr. 1962, 56, 11601g参照];実施例4Aも参照。
収量:2.93g(理論値の51%)
LC−MS(方法2):R=1.49分;
MS(ESIpos):m/z=266[M+H].
【0096】
段階b):1−(4−アミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン
【化30】

アルゴン下、パラジウム/炭素(10%)35mgを、メタノール10ml中の1−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−ニトロフェニル)テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン200mg(0.75mmol)の溶液に添加し、混合物を、水素雰囲気中、室温、大気圧下で2時間水素化する。シリカゲル層を通して触媒を除去し、濾液を減圧下で濃縮する。残渣をジエチルエーテル中で撹拌し、濾過し、減圧下で乾燥させる。
収量:156mg(理論値の88%)
HPLC(方法9):R=2.47分;
MS(ESIpos):m/z=236[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 6.84 (d, 2H), 6.48 (d, 2H), 4.92 (s, 1H), 3.54-3.43 (m, 4H), 3.39 (t, 2H), 3.29 (t, 2H), 1.95 (q, 2H).
【0097】
実施例11A
1−(4−アミノ−3−フルオロフェニル)−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2(1H)−オン
【化31】

実施例4Aの合成と同様に、4−ヨード−2−フルオロアニリン5.39g(22.8mmol)および3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2(1H)−オン[製造には、S. McN. Sieburth et al., Chem. Commun. 1996, 19, 2249-2250参照]4.00g(28.5mmol、1.25当量)から化合物を製造する。
収量:3.46g(理論値の65%)
HPLC(方法9):R=2.44分;
MS(ESIpos):m/z=235[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 7.48 (m, 2H), 7.10 (dd, 1H), 6.89 (dd, 1H), 6.80 (t, 1H), 6.30 (t, 1H), 5.39 (s, 2H), 5.11 (t, 1H), 4.31 (d, 2H).
【0098】
実施例12A
3−{[(5−クロロピリジン−2−イル)アミノ]カルボニル}ピラジン−2−カルボン酸
【化32】

2−アミノ−5−クロロピリジン68.0g(0.53mol)を、THF1100mlに溶解し、2,3−ピラジンジカルボン酸無水物95.3g(0.63mol)を少しずつ添加する。懸濁液を室温で1時間撹拌する。次いで、沈殿を濾過する。濾液を濃縮し、残渣を沈殿と合わせる。生成物をジエチルエーテル中で撹拌し、再度濾過し、減圧下で乾燥させる。
収量:154g(理論値の99%)
HPLC(方法9):R=3.50分;
MS(ESIpos):m/z=279[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 13.89 (br. s, 1H), 11.07 (s, 1H), 8.90 (dd, 2H), 8.44 (s, 1H), 8.20 (d, 1H), 8.01 (dd, 1H).
【0099】
実施例13A
3−{[(4−エチニルフェニル)アミノ]カルボニル}ピラジン−2−カルボン酸
【化33】

4−エチニルアニリン500mg(4.27mmol)および2,3−ピラジンジカルボン酸無水物641mg(4.27mmol)を、実施例12Aについて記載した方法と同様に反応させる。
収量:1.08g(純度96%、理論値の91%)
HPLC(方法3):R=1.49分;
MS(ESIpos):m/z=224[M+H−CO.
【0100】
実施例14A
3−{[(4−クロロフェニル)アミノ]カルボニル}ピラジン−2−カルボン酸
【化34】

4−クロロアニリン100mg(0.78mmol)および2,3−ピラジンジカルボン酸無水物118mg(0.78mmol)を、実施例12Aについて記載した方法と同様に反応させる。
収量:115mg(理論値の53%)
HPLC(方法1):R=1.28分;
MS(ESIpos):m/z=234[M+H−CO
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 13.80 (br. s, 1H), 10.92 (s, 1H), 8.90 (dd, 2H), 7.82 (d, 2H), 7.44 (d, 2H).
【0101】
実施例15A
7−{[4−(2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)フェニル]イミノ}フロ[3,4−b]ピラジン−5(7H)−オン
【化35】

アルゴン下、3−(4−アミノフェニル)−1,3−オキサゾリジン−2−オン(実施例2A)1.07g(6mmol)を、無水DMF15mlに溶解する。次いで、ピラジンジカルボン酸無水物0.9g(6mmol)を添加し、反応溶液を1時間撹拌する。トリエチルアミン0.75ml(0.55g、5.4mmol)および塩化ピバロイル0.81ml(0.8g、6.6mmol)の添加後、反応混合物を0.5時間室温で撹拌し、次いで水で希釈する。結晶を吸引濾過し、メタノールおよびtert−ブチルメチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させる。
収量:1.4g(理論値の75%)
LC−MS(方法3):R=1.51分;
MS(ESIpos):m/z=311[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 9.05 (s, 2H), 7.75 (d, 2H), 7.5 (d, 2H), 4.5 (tr, 2H), 4.15 (tr, 2H).
【0102】
実施例16A
7−{[4−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェニル]イミノ}フロ[3,4−b]ピラジン−5(7H)−オン
【化36】

実施例15Aの合成と同様に、1−(4−アミノフェニル)ピロリジン−2−オン(実施例1A)1.06g(6mmol)およびピラジンジカルボン酸無水物0.9g(6mmol)から化合物を製造する。
収量:0.98g(理論値の53%)
LC−MS(方法3):R=1.59分;
MS(ESIpos):m/z=309[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 9.05 (s, 2H), 7.85 (d, 2H), 7.45 (d, 2H), 3.9 (tr, 2H), 2.55 (tr, 2H), 2.1 (五重線, 2H).
【0103】
実施例17A
7−{[4−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)フェニル]イミノ}フロ[3,4−b]ピラジン−5(7H)−オン
【化37】

実施例15Aの合成と同様に、1−(4−アミノフェニル)イミダゾリジン−2−オン(実施例3A)1.32g(7.45mmol)およびピラジンジカルボン酸無水物1.12g(7.45mmol)から、化合物を製造する。
収量:1.08g(理論値の47%)
LC−MS(方法1):R=1.18分;
MS(ESIpos):m/z=310[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 9.05 (s, 2H), 7.75 (d, 2H), 7.4 (d, 2H), 7.05 (s, 1H), 3.9 (tr, 2H), 3.45 (tr, 2H).
【0104】
実施例18A
7−{[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]イミノ}フロ[3,4−b]ピラジン−5(7H)−オン
【化38】

実施例15Aの合成と同様に、4−(4−アミノフェニル)モルホリン−3−オン(実施例6A)1.15g(6mmol)およびピラジンジカルボン酸無水物0.9g(6mmol)から、化合物を製造する。
収量:1.3g(理論値の69%)
LC−MS(方法2):R=1.30分;
MS(ESIpos):m/z=325[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 9.1 (s, 2H), 7.6 (d, 2H), 7.5 (d, 2H), 4.25 (s, 2H), 4.05 (tr, 2H), 3.8 (dd, 2H).
【0105】
実施例19A
7−{[4−(3−メチル−2−オキソテトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル)フェニル]イミノ}フロ[3,4−b]ピラジン−5(7H)−オン
【化39】

実施例15Aの合成と同様に、1−(4−アミノフェニル)−3−メチルテトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン(実施例9A)1.23g(6mmol)およびピラジンジカルボン酸無水物0.9g(6mmol)から、化合物を製造する。
収量:1.3g(理論値の64%)
LC−MS(方法3):R=1.56分;
MS(ESIpos):m/z=338[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 9.05 (s, 2H), 7.45 (d, 2H), 7.35 (d, 2H), 3.75 (tr, 2H), 3.4 (tr, 2H), 2.9 (s, 3H), 2.1 (五重線, 2H).
【0106】
実施例20A
N−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)ベンゼン−1,4−ジアミン
【化40】

【0107】
段階a):2−[(4−ニトロフェニル)アミノ]エタノール
【化41】

2−アミノエタノール130ml(2.15mol、3当量)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン274ml(1.57mol、2.2当量)を、エタノール500ml中の4−フルオロニトロフェノール101g(716mmol)の溶液に添加する。反応混合物を50℃で終夜撹拌し、次いで、さらに86ml(1.43mol、2.0当量)の2−アミノエタノールおよびN,N−ジイソプロピルエチルアミン249ml(1.43mol、2.0当量)を添加し、混合物を50℃でさらに12時間撹拌する。反応溶液を減圧下で濃縮し、残渣を水600mlで撹拌する。形成される沈殿を濾過し、水で繰り返し洗浄し、乾燥させる。
収量:127g(理論値の97%)
LC−MS(方法5):R=2.32分;
MS(ESIpos):m/z=183[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 7.99 (d, 2H), 7.30 (t, 1H), 6.68 (d, 2H), 4.82 (t, 1H), 3.63-3.52 (m, 2H), 3.30-3.19 (m, 2H).
【0108】
段階b):N−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−4−ニトロアニリン
【化42】

室温で、tert−ブチルジメチルクロロシラン30.6g(203mmol、1.2当量)およびイミダゾール17.3g(254mmol、1.5当量)を、DMF300ml中の2−[(4−ニトロフェニル)アミノ]エタノール30.8g(169mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で2.5時間撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をジクロロメタン200mlおよび水100mlに溶解する。相の分離後、水相を各回80mlのジクロロメタンで3回抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
収量:49.7g(定量的)
LC−MS(方法3):R=3.09分;
MS(ESIpos):m/z=297[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 7.98 (d, 2H), 7.29 (t, 1H), 6.68 (d, 2H), 3.77-3.66 (m, 2H), 3.35-3.24 (m, 2H), 0.81 (s, 9H), 0.0 (s, 6H).
【0109】
段階c):N−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)ベンゼン−1,4−ジアミン
【化43】

アルゴン下、パラジウム/炭素(10%)4gを、エタノール500ml中のN−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−4−ニトロアニリン59.5g(201mmol)の溶液に添加し、混合物を、水素雰囲気中、室温、大気圧で水素化する。触媒をフィルター層で除去し、エタノールで洗浄し、濾液を減圧下で濃縮する。
収量:53g(定量的)
LC−MS(方法2):R=1.83分;
MS(ESIpos):m/z=267[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 6.42-6.30 (m, 4H), 4.48 (t, 1H), 4.21 (br. s, 2H), 3.68-3.58 (m, 2H), 3.04-2.93 (m, 2H), 0.82 (s, 9H), 0.0 (s, 6H).
【0110】
実施例21A
3−{[(4−シアノフェニル)アミノ]カルボニル}ピラジン−2−カルボン酸
【化44】

4−アミノベンゾニトリル1.0g(8.5mmol)および2,3−ピラジンジカルボン酸無水物1.3g(8.5mmol)を、実施例12Aについて記載した方法と同様に反応させる。
収量:2.1g(理論値の92%)
HPLC(方法3):R=1.06分;
MS(ESIpos):m/z=225[M+H−CO
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 13.92 (br. s, 1H), 11.22 (s, 1H), 8.92 (dd, 2H), 7.99 (d, 2H), 7.87 (d, 2H).
【0111】
実施例22A
2−{2−[2−アミノ−5−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェノキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
【化45】

【0112】
段階a):2−[2−(5−フルオロ−2−ニトロフェノキシ)エチル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
【化46】

DMF130mlおよび炭酸カリウム92.6g(670.2mmol、1.5当量)を、5−フルオロ−2−ニトロフェノール70.2g(446.8mmol)に添加する。DMF200ml中のヨウ化カリウム11.1g(67.0mmol、0.15当量)およびN−(2−ブロモエチル)フタルイミド113.5g(446.8mmol、1.0当量)の溶液を添加する。懸濁液を80℃で16時間撹拌する。室温に冷却後、水1300mlを添加する。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、固体を濾過する。残渣を、水200mlおよびジエチルエーテル200mlで各々3回洗浄する。固体を85℃、高真空下で乾燥させる。
収量:89.1g(純度90%、理論値の54%)
LC−MS(方法1):R=2.09分;
MS(ESIpos):m/z=331[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.97-7.93 (m, 1H), 7.91-7.82 (m, 4H), 7.38 (dd, 1H), 6.97 (dd, 1H), 4.45 (t, 2H), 4.00 (t, 2H).
【0113】
段階b):2−{2−[2−ニトロ−5−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェノキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
【化47】

カリウムtert−ブトキシド3.02g(26.87mmol、1.5当量)および2−[2−(5−フルオロ−2−ニトロフェノキシ)エチル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン7.10g(21.50mmol、1.2当量)を、DMF100ml中のモルホリン−3−オン[E. Pfeil, U. Harder, Angew. Chem. 1967, 79, 188]1.81g(17.91mmol)の溶液に添加する。混合物を室温で18時間、次いで80℃で4時間撹拌する。冷却後、水400mlおよびジクロロメタン200mlを添加する。有機相を分離し、水相を各回100mlのジクロロメタンで2回再抽出する。合わせた有機相を減圧下で濃縮する。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(移動相:ジクロロメタン/メタノール98:2)により、次いで分取RP−HPLCにより精製する。
収量:940mg(理論値の13%)
LC−MS(方法1):R=1.73分;
MS(ESIpos):m/z=412[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.91-7.84 (m, 5H), 7.47 (d, 1H), 7.20 (dd, 1H), 4.41 (t, 2H), 4.24 (s, 2H), 4.02-3.97 (m, 4H), 3.81 (t, 2H).
【0114】
段階c):2−{2−[2−アミノ−5−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェノキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
【化48】

パラジウム/炭素(10%)121mg(0.11mmol、0.05当量)を、アルゴンで覆ったエタノール/メタノール/ジクロロメタン混合物(1:1:1)100ml中の2−{2−[2−ニトロ−5−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェノキシ]エチル}−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン935mg(2.27mmol)の懸濁液に添加する。混合物を、室温、大気圧下で16時間水素化する。珪藻土を通して濾過した後、溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(移動相:酢酸エチル/メタノール98:2)により精製する。得られる生成物をジエチルエーテル中で撹拌し、高真空下で乾燥させる。
収量:547mg(純度78%、理論値の49%)
LC−MS(方法1):R=1.37分;
MS(ESIpos):m/z=382[M+H].
【0115】
実施例:
一般的方法1:フェニルイミノフロ[3,4−b]ピラジン−5(7H)−オンの開環
アルゴン下、フェニルイミノフロ[3,4−b]ピラジン−5(7H)−オン0.1mmolを、無水DMF0.15mlに溶解する。次いで、トリフルオロ酢酸7.7μl(11.4mg、0.1mmol)およびアニリン誘導体0.1または0.2mmolを添加し、反応混合物を70℃で終夜撹拌する。冷却後、反応混合物をDMF0.1mlおよび少量の水で希釈し、濾過する。濾液を分取HPLC(カラム:Machery Nagel VP50/21 Nucleosil 100-5 C18 Nautilus, 5 μm, 21 x 50 mm;注入量:500μl;移動相A=水+0.1%ギ酸、移動相B=アセトニトリル;グラジエント:0分10%B→2分10%B→6分90%B→7分90%B→7.1分10%B→8分10%B;流速:25ml/分;波長:220nm)で精製する。生成物含有画分を減圧下で濃縮する。
【0116】
一般的方法2:アミドカップリング−方法I
3−{[アリールアミノ]カルボニル}ピラジン−2−カルボン酸およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.05当量)を、最初にジクロロメタンに入れ、室温で15分間撹拌する。次いで、アニリン誘導体(1.0当量)のジクロロメタン溶液を滴下して添加する。O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(1.05当量)を添加し、混合物を室温で終夜撹拌する。次いで、反応溶液を、水、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および再度水で洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、酢酸エチルを残渣に添加する。沈殿した固体を濾過し、ペンタンで洗浄する。濾液を減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0117】
一般的方法3:アミドカップリング−方法II
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(10.0当量)を、アニリン誘導体(1.0当量)のジクロロメタン溶液に添加する。次いで、3−{[アリールアミノ]カルボニル}ピラジン−2−カルボン酸(1.1当量)およびn−プロパンホスホン酸無水物(n−PPA)(2.0当量)を添加する。反応懸濁液を室温で終夜撹拌する。溶媒を減圧下で除去する。残渣をDMSOに取り、RP−HPLC(移動相:水/アセトニトリル90:10→2:98)により精製する。
【0118】
以下の化合物を、一般的方法1により、実施例16Aから出発して製造する:
実施例1
N−(4−クロロフェニル)−N'−[4−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化49】

収量:11.3mg(理論値の26%)
LC−MS(方法1):R=1.84分;
MS(ESIpos):m/z=436[M+H].
【0119】
実施例2
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[4−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化50】

収量:3mg(理論値の7%)
LC−MS(方法2):R=1.96分;
MS(ESIpos):m/z=437[M+H].
【0120】
実施例3
N−(6−クロロピリジン−3−イル)−N'−[4−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化51】

収量:12mg(理論値の27%)
LC−MS(方法2):R=1.76分;
MS(ESIpos):m/z=437[M+H].
【0121】
実施例4
N−(4−フルオロフェニル)−N'−[4−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化52】

収量:26mg(理論値の62%)
LC−MS(方法4):R=2.07分;
MS(ESIpos):m/z=420[M+H].
【0122】
実施例5
N−(4−メチルフェニル)−N'−[4−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化53】

収量:14mg(理論値の34%)
LC−MS(方法2):R=1.98分;
MS(ESIpos):m/z=416[M+H].
【0123】
実施例6
N−(4−クロロフェニル)−N'−[4−(2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化54】

一般的方法1に従い、実施例15Aから出発して、表題化合物を製造する。
収量:5mg(理論値の11%)
LC−MS(方法1):R=1.82分;
MS(ESIpos):m/z=438[M+H].
【0124】
実施例7
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[4−(2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化55】

【0125】
段階a):N−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−N'−(5−クロロピリジン−2−イル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化56】

一般的方法2に従い、実施例12A由来の化合物104.5g(0.38mol)を、実施例20A由来の化合物100.0g(0.38mol)と反応させる。
収量:101.3g(理論値の51%)
LC−MS(方法3):R=2.96分;
MS(ESIpos):m/z=527[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.07 (s, 1H), 10.37 (s, 1H), 8.85 (s, 2H), 8.38 (s, 1H), 8.21 (d, 1H), 7.95 (d, 1H), 7.45 (d, 2H), 6.53 (d, 2H), 5.40 (t, NH), 3.67 (t, 2H), 3.10 (dt, 2H), 0.83 (s, 9H), 0.00 (s, 6H).
【0126】
段階b):N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−{4−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化57】

N−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−N'−(5−クロロピリジン−2−イル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミド10.0g(19.0mmol)を、THF50mlに溶解し、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド37.9ml(9.9g、37.9mmol)を0℃で添加する。反応溶液を室温に温まらせ、この温度で1時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンおよび水を残渣に添加する。有機相を除去し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られる固体をジエチルエーテル中で撹拌し、濾過し、減圧下で乾燥させる。
収量:4.9g(理論値の63%)
LC−MS(方法2):R=1.54分;
MS(ESIpos):m/z=413[M+H].
【0127】
段階c):N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[4−(2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化58】

1,1'−カルボニルジイミダゾール295mg(1.8mmol)を、THF20ml中のN−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−{4−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミド500mg(1.2mmol)に添加する。次いで、N,N−4−ジメチルアミノピリジン74mg(0.6mmol)を添加し、反応混合物を80℃で16時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、残渣を分取HPLCにより精製する。
収量:100mg(理論値の19%)
HPLC(方法7):R=3.89分;
MS(ESIpos):m/z=439[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.12 (s, 1H), 10.80 (s, 1H), 8.96 (s, 2H), 8.42 (s, 1H), 8.24 (d, 1H), 7.99 (d, 1H), 7.81 (d, 2H), 7.53 (dd, 2H), 4.43 (t, 2H), 4.05 (t, 2H).
【0128】
実施例8
N−(4−クロロフェニル)−N'−[4−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化59】

一般的方法1に従い、実施例17Aから出発して表題化合物を製造する。
収量:34.9mg(理論値の40%)
LC−MS(方法3):R=1.92分;
MS(ESIpos):m/z=437[M+H].
【0129】
実施例9
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[2−フルオロ−4−(3−ヒドロキシ−2−オキソピペリジン−1−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化60】

一般的方法2に従い、実施例4A由来の化合物2.57g(11.46mol)を、実施例12A由来の化合物3.19g(11.46mol)と反応させる。
収量:3.23g(理論値の58%)
LC−MS(方法2):R=1.94分;
MS(ESIpos):m/z=485[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.06 (s, 1H), 10.54 (s, 1H), 8.96 (s, 2H), 8.41 (s, 1H), 8.23 (d, 1H), 7.99 (dd, 1H), 7.86 (t, 1H), 7.41 (dd, 1H), 7.18 (d, 1H), 5.30 (d, 1H), 4.12-4.02 (m, 1H), 3.74-3.64 (m, 1H), 3.61-3.50 (m, 1H), 2.17-2.04 (m, 1H), 2.02-1.81 (m, 2H), 1.81-1.69 (m, 1H).
【0130】
キラル相のクロマトグラフィーによりエナンチオマーを分離する[カラム:KBD 5326, 640 x 40 mm、セレクターのポリ(N−メタクリロイル−L−ロイシンジシクロプロピルメチルアミド)をベースとする;注入量:10ml;移動相A:イソヘキサン、移動相B:酢酸エチル;グラジエント:0分70%B→40分100%B→45分70%B;流速:50ml/分;カラム温度:24℃;波長:280nm]。
エナンチオマー1:
>99%ee、R=3.58分[カラム:ent-KBD 5326, 250 x 4.6 mm;移動相:酢酸エチル;流速:1.0ml/分;カラム温度:24℃;波長:270nm]。
エナンチオマー2:
98%ee、R=4.38分[カラム:KBD 5326, 250 x 4.6 mm;移動相:酢酸エチル;流速:1.0ml/分;カラム温度:24℃;波長:270nm]。
【0131】
実施例10
N−[4−(3−アミノ−2−オキソピペリジン−1−イル)フェニル]−N'−(4−クロロフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミド塩酸塩
【化61】

【0132】
段階a):tert−ブチル[1−(4−{[(3−{[(4−クロロフェニル)アミノ]カルボニル}ピラジン−2−イル)カルボニル]アミノ}フェニル)−2−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【化62】

一般的方法3に従い、実施例5A由来の化合物560mg(1.83mmol)を、実施例14A由来の化合物560mg(2.02mmol)と反応させる。
収量:0.12g(理論値の12%)
LC−MS(方法1):R=2.13分;
MS(ESIpos):m/z=565[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 10.88 (s, 1H), 10.78 (s, 1H), 8.95 (s, 2H), 7.79 (d, 2H), 7.74 (d, 2H), 7.42 (d, 2H), 7.25 (d, 2H), 6.99 (d, 1H), 4.16-4.03 (m, 1H), 3.69-3.52 (m, 2H), 2.09-1.76 (m, 4H), 1.39 (s, 9H).
【0133】
段階b):N−[4−(3−アミノ−2−オキソピペリジン−1−イル)フェニル]−N'−(4−クロロフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミド塩酸塩
【化63】

ジオキサン中の4N塩化水素溶液2mlを、室温で、ジオキサン5ml中のtert−ブチル[1−(4−{[(3−{[(4−クロロフェニル)アミノ]カルボニル}ピラジン−2−イル)カルボニル]アミノ}フェニル)−2−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート100mg(0.18mmol)の溶液に添加する。反応懸濁液を室温で終夜撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、残渣をジエチルエーテル中で撹拌し、吸引濾過し、高真空下で乾燥させる。
収量:76mg(理論値の92%)
LC−MS(方法1):R=1.21分;
MS(ESIpos):m/z=465[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 10.92 (s, 1H), 10.85 (s, 1H), 8.97 (s, 2H), 8.42-8.28 (m, 3H), 7.8 (t, 4H), 7.41 (d, 2H), 7.3 (d, 2H), 4.13-4.0 (m, 1H), 3.78-3.53 (m, 2H), 2.21-2.31 (m, 1H), 1.98-2.31 (m, 1H), 1.98-1.84 (m, 1H).
【0134】
一般的方法1に従い、以下の化合物を実施例18Aから出発して製造する:
実施例11
N−(4−クロロフェニル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化64】

収量:9.7mg(理論値の22%)
LC−MS(方法1):R=1.71分;
MS(ESIpos):m/z=452[M+H]
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ = 10.9 (s, 1H), 10.83 (s, 1H), 8.97 (s, 2H), 7.9-7.7 (m, 4H), 7.5-7.3 (m, 4H), 4.21 (s, 2H), 3.98 (t, 2H), 3.61 (t, 2H).
【0135】
実施例12
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化65】

一般的方法2に従い、実施例12A由来の化合物10.0g(34.1mmol)を、実施例6A由来の化合物6.6g(34.1mmol)と反応させる。
収量:12.3g(理論値の79%)
LC−MS(方法4):R=1.84分;
MS(ESIpos):m/z=453[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 11.06 (s, 1H), 10.82 (s, 1H), 8.93 (s, 2H), 8.41 (s, 1H), 8.23 (d, 1H), 8.02-7.92 (dd, 1H), 7.8 (d, 2H), 7.36 (d, 2H), 4.19 (s, 2H), 3.97 (t, 2H), 3.71 (t, 2H).
【0136】
実施例13
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化66】

一般的方法3に従い、実施例7A由来の化合物500mg(1.79mmol)を、実施例12A由来の化合物415mg(1.97mmol)と反応させる。
収量:96mg(理論値の11%)
LC−MS(方法2):R=1.90分;
MS(ESIpos):m/z=471[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.05 (s, 1H), 10.57 (s, 1H), 8.98 (s, 2H), 8.42 (s, 1H), 8.25 (d, 1H), 7.98 (d, 1H), 7.87 (t, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.29 (d, 1H), 4.22 (s, 2H), 3.98 (t, 2H), 3.77 (t, 2H).
【0137】
実施例14
N−(6−クロロピリジン−3−イル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化67】

収量:5mg(理論値の11%)
LC−MS(方法3):R=1.6分;
MS(ESIpos):m/z=453[M+H].
【0138】
実施例15
N−(2−クロロフェニル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化68】

収量:0.2mg(理論値の0.2%)
LC−MS(方法3):R=1.92分;
MS(ESIpos):m/z=452[M+H].
【0139】
実施例16
N−(3,5−ジクロロフェニル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化69】

収量:6mg(理論値の12%)
LC−MS(方法3):R=2.13分;
MS(ESIpos):m/z=486[M+H].
【0140】
実施例17
N−(4−フルオロフェニル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化70】

収量:28mg(理論値の64%)
LC−MS(方法4):R=1.95分;
MS(ESIpos):m/z=436[M+H].
【0141】
実施例18
N−(4−メチルフェニル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化71】

収量:24mg(理論値の56%)
LC−MS(方法3):R=1.82分;
MS(ESIpos):m/z=432[M+H].
【0142】
実施例19
N−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−N'−フェニルピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化72】

収量:31mg(理論値の74%)
LC−MS(方法2):R=1.65分;
MS(ESIpos):m/z=418[M+H].
【0143】
実施例20
N−(4−エチニルフェニル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化73】

一般的方法2に従い、実施例6A由来の化合物72mg(0.37mmol)を、実施例13A由来の化合物100mg(0.37mmol)と反応させる。
収量:19mg(理論値の11%)
LC−MS(方法1):R=1.61分;
MS(ESIpos):m/z=442[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 10.92 (s, 1H), 10.84 (s, 1H), 8.96 (s, 2H), 7.78 (dd, 4H), 7.48 (d, 2H), 7.38 (d, 2H), 4.20 (s, 2H), 4.13 (s, 1H), 3.97 (dd, 2H), 3.72 (dd, 2H).
【0144】
実施例21
N−(4−クロロフェニル)−N'−{4−[2−(2−ヒドロキシエチル)−3−オキソモルホリン−4−イル]フェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化74】

【0145】
段階a):N−{4−[2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−3−オキソモルホリン−4−イル]フェニル}−N'−(4−クロロフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化75】

室温、アルゴン下で、2,3−ピラジンジカルボン酸無水物64mg(0.43mmol、1.0当量)を、DMF1.5ml中の4−(4−アミノフェニル)−2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)モルホリン−3−オン(実施例8A)150mg(0.43mmol)の溶液に添加し、混合物を0.5時間撹拌する。次いで、トリエチルアミン50μl(0.39mmol、0.9当量)および2,2−ジメチルプロパノイルクロリド60μl(0.47mmol、1.1当量)を添加する。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、4−クロロアニリン55mg(0.43mmol、1.0当量)を添加し、混合物を室温でさらに4時間撹拌する。水および飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加および相の分離の後、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物を分取HPLCにより精製する。
収量:66mg(純度70%、理論値の70%)
LC−MS(方法1):R=2.80分;
MS(ESIpos):m/z=611[M+H].
【0146】
段階b):N−(4−クロロフェニル)−N'−{4−[2−(2−ヒドロキシエチル)−3−オキソモルホリン−4−イル]フェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化76】

室温で、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド160μl(0.16mmol、2.0当量)を、THF1ml中のN−{4−[2−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−3−オキソモルホリン−4−イル]フェニル}−N'−(4−クロロフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミド66mg(70%、0.08mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で終夜撹拌する。反応混合物を水およびジクロロメタンで希釈し、相の分離後、水相をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
収量:25mg(純度97%、理論値の64%)
LC−MS(方法1):R=1.63分;
MS(ESIpos):m/z=496[M+H]
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 9.05 (d, 2H), 8.7 (s, 2H), 7.73 (d, 2H), 7.68 (d, 2H), 7.3 (dd, 4H), 4.42 (t, 1H), 4.12-4.2 (m, 1H), 3.98 (d, 2H), 3.89-3.8 (m, 2H), 3.62-3.52 (m, 1H), 2.4 (t, 1H), 2.32-2.08 (m, 2H).
【0147】
一般的方法1に従い、実施例19Aから出発して以下の化合物を製造する:
実施例22
N−(4−クロロフェニル)−N'−[4−(3−メチル−2−オキソテトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化77】

収量:17.3mg(理論値の37%)
LC−MS(方法1):R=1.85分;
MS(ESIpos):m/z=465[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 10.85 (s, 1H), 10.69 (s, 1H), 8.94 (s, 2H), 7.8 (d, 2H), 7.66 (d, 2H), 7.42 (d, 2H), 7.21 (d, 2H), 3.62 (t, 2H), 3.39-3.34 (m, 2H), 2.85 (s, 3H), 1.98-2.09 (m, 2H).
【0148】
実施例23
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[4−(3−メチル−2−オキソテトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化78】

収量:2.3mg(理論値の5%)
LC−MS(方法3):R=1.93分;
MS(ESIpos):m/z=466[M+H].
【0149】
実施例24
N−(6−クロロピリジン−3−イル)−N'−[4−(3−メチル−2−オキソテトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化79】

収量:9mg(理論値の19%)
LC−MS(方法3):R=1.74分;
MS(ESIpos):m/z=466[M+H].
【0150】
実施例25
N−(4−フルオロフェニル)−N'−[4−(3−メチル−2−オキソテトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化80】

収量:30mg(理論値の67%)
LC−MS(方法4):R=2.07分;
MS(ESIpos):m/z=448[M+H].
【0151】
実施例26
N−[4−(3−メチル−2−オキソテトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル)フェニル]−N'−(4−メチルフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化81】

収量:22mg(理論値の49%)
LC−MS(方法3):R=1.94分;
MS(ESIpos):m/z=445[M+H].
【0152】
実施例27
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−{4−[3−(2−ヒドロキシエチル)−2−オキソテトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル]フェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化82】

0℃で、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)231mg(0.61mmol、1.1当量)、実施例10A由来の化合物130mg(0.55mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン340μl(1.93mmol、3.5当量)を、ジクロロメタン2mlおよびDMF2ml中の実施例12A由来の化合物169mg(0.61mmol、1.1当量)の溶液に添加する。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで、室温に温まらせ、終夜撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をRP−HPLCにより精製する。
収量:17mg(理論値の6%)
LC(方法3):R=1.74分;
MS(ESIpos):m/z=496[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.11 (s, 1H), 10.75 (s, 1H), 8.92 (s, 2H), 8.42 (s, 1H), 8.25 (d, 1H), 7.99 (dd, 1H), 7.40 (d, 2H), 7.22 (d, 2H), 4.68 (t, 1H), 3.61 (t, 2H), 3.52 (m, 2H), 3.43 (t, 2H), 2.01 (五重線, 2H).
【0153】
実施例28
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−{4−[2−オキソ−3−(2−ピロリジン−1−イルエチル)テトラヒドロピリミジン−1(2H)−イル]フェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化83】

−78℃で、トリフルオロメタンスルホン酸無水物60μl(0.34mmol、1.2当量)および2,6−ジメチルピリジン0.10ml(0.85mmol、3当量)を、THF10mlおよびDMF5ml中の実施例27由来の化合物140mg(0.28mmol)の懸濁液に添加する。反応混合物を−78℃で2時間撹拌し、次いでゆっくりと−5℃に温まらせ、次いで、ピロリジン0.24ml(2.82mmol、10当量)を添加する。反応溶液をゆっくりと室温に温め、室温で終夜撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をRP−HPLCにより精製する。
収量:25mg(理論値の15%)
LC(方法3):R=1.54分;
MS(ESIpos):m/z=549[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 11.20-11.03 (br. s, 1H), 10.77 (s, 1H), 8.92 (s, 2H), 8.40 (s, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.00 (dd, 1H), 7.70 (d, 2H), 7.23 (d, 2H), 3.65-3.58 (m, 2H), 3.14-3.05 (m, 4H), 2.77-2.60 (m, 6H), 2.07-1.96 (m, 2H), 1.87-1.79 (m, 4H), 1.77-1.68 (m, 4H).
【0154】
実施例29
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−{2−フルオロ−4−[3−(ヒドロキシメチル)−2−オキソピリジン−1(2H)−イル]フェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化84】

一般的方法2に従い、実施例11A由来の化合物2.00g(8.54mmol)を、実施例12A由来の化合物2.38g(8.54mmol)と反応させる。
収量:2.55g(理論値の60%)
LC−MS(方法1):R=1.58分;
MS(ESIpos):m/z=495[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 11.08 (s, 1H), 10.69 (s, 1H), 8.98 (s, 2H), 8.43 (s, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.08-7.94 (m, 2H), 7.59 (dd, 1H), 7.51 (dd, 2H), 7.29 (dd, 1H), 6.39 (t, 1H), 5.18 (t, 1H), 4.34 (d, 2H).
【0155】
実施例30
N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−{4−[3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−2−オキソピリジン−1(2H)−イル]−2−フルオロフェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミドトリフルオロ酢酸塩
【化85】

【0156】
段階a):N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[2−フルオロ−4−(3−ホルミル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化86】

アルゴン下、室温で、デス・マーチン・ペルヨージナン(Dess-Martin periodinane)2.14g(5.04mmol、1.1当量)を、ジクロロメタン60ml中の実施例29由来の化合物2.27g(4.58mmol)の懸濁液に添加する。反応混合物を室温で1時間撹拌する。数分の内に、懸濁液は溶液になり、次いで、沈殿が形成される。沈殿を濾過し、乾燥させ、これ以上精製せずに次の段階に使用する。
収量:2.21g
【0157】
段階b):N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−{4−[3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−2−オキソピリジン−1(2H)−イル]−2−フルオロフェニル}ピラジン−2,3−ジカルボキサミドトリフルオロ酢酸塩
【化87】

アルゴン下、室温で、シクロプロピルアミン70μl(1.01mmol、5当量)を、メタノール5ml中のN−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[2−フルオロ−4−(3−ホルミル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド100mg(0.20mmol)の懸濁液に添加し、混合物を室温で3時間撹拌する。次いで、反応混合物を氷浴中で冷却し、水素化ホウ素ナトリウム19mg(0.51mmol、2.5当量)を少しずつ添加し、次いで、混合物を室温で終夜撹拌する。飽和塩化ナトリウム水溶液およびジクロロメタンを残渣に添加し、相の分離後、水相をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物を分取HPLC(Kromasil 100 C18 5 μm、移動相:水/アセトニトリル/1%強度トリフルオロ酢酸48:40:12)により精製する。
収量:4.8mg(理論値の4%)
LC−MS(方法1):R=1.26分;
MS(ESIpos):m/z=534[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 11.08 (s, 1H), 10.70 (s, 1H), 8.98 (d, 2H), 8.75 (br. s, 2H), 8.41 (s, 1H), 8.22 (d, 1H), 8.08 (t, 1H), 7.99 (dd, 1H), 7.86 (dd, 1H), 7.78 (dd, 1H), 7.55 (dd, 1H), 7.32 (dd, 1H), 6.49 (t, 1H), 4.10 (s, 2H), 2.78-2.69 (m, 1H), 0.84-0.75 (m, 4H).
【0158】
実施例31
N−(4−シアノフェニル)−N'−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化88】

一般的方法2に従い、実施例6A由来の化合物143mg(0.75mmol)を、実施例21A由来の化合物200mg(0.75mmol)と反応させる。
収量:24mg(理論値の7%)
LC−MS(方法3):R=1.63分;
MS(ESIpos):m/z=443[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.18 (s, 1H), 10.87 (s, 1H), 8.98 (s, 2H), 7.96 (d, 2H), 7.83 (d, 2H), 7.79 (d, 2H), 7.38 (d, 2H), 4.20 (s, 2H), 3.98 (t, 2H), 3.72 (t, 2H).
【0159】
実施例32
N−[2−(2−アミノエトキシ)−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−N'−(5−クロロピリジン−2−イル)ピラジン−2,3−ジカルボキサミドトリフルオロ酢酸塩
【化89】

【0160】
段階a):N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[2−[2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)エトキシ]−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド
【化90】

一般的方法2に従い、実施例12A由来の化合物146mg(0.52mmol)を、実施例22A由来の化合物200mg(0.52mmol、1.0当量)と反応させる。混合物を室温で16時間撹拌し、次いで、さらに563mg(2.02mmol、3.9当量)の実施例12A由来の化合物を添加する。さらに16時間撹拌した後、水20mlを添加し、有機相を取り出す。後者を飽和重炭酸ナトリウム水溶液20mlおよび水20mlで洗浄する。有機相を減圧下で濃縮し、残渣を分取RP−HPLCにより精製する。
収量:127mg(理論値の38%)
LC−MS(方法3):R=2.18分;
MS(ESIpos):m/z=642[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.10 (s, 1H), 10.03 (s, 1H), 8.93-8.91 (m, 1H), 8.79-8.77 (m, 1H), 8.38-8.36 (m, 1H), 8.23 (d, 1H), 8.20 (d, 1H), 7.96 (d, 1H), 7.82-7.75 (m, 4H), 7.24-7.22 (m, 1H), 6.95 (d, 1H), 4.37 (t, 2H), 4.16 (s, 2H), 4.02 (t, 2H), 3.94 (t, 2H), 3.68 (t, 2H).
【0161】
段階b):N−[2−(2−アミノエトキシ)−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−N'−(5−クロロピリジン−2−イル)−ピラジン−2,3−ジカルボキサミドトリフルオロ酢酸塩
【化91】

メタノール5ml中のN−(5−クロロピリジン−2−イル)−N'−[2−[2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)エトキシ]−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]ピラジン−2,3−ジカルボキサミド113mg(0.18mmol)および40%強度メチルアミン水溶液0.205ml(82.0mg、2.64mmol、15当量)の懸濁液を、40℃で15分間撹拌する。次いで、混合物を60℃で25分間撹拌し、次いで、室温に冷却し、濃縮し、残渣を分取RP−HPLC(移動相:水/アセトニトリル/1%強度トリフルオロ酢酸56:30:14)により精製する。
収量:61mg(理論値の52%)
LC−MS(方法3):R=1.33分;
MS(ESIpos):m/z=512[M+H−CFCOOH]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.16 (s, 1H), 10.26 (s, 1H), 8.99-8.97 (m, 1H), 8.95-8.93 (m, 1H), 8.44 (s, 1H), 8.23 (d, 1H), 8.07 (d, 1H), 8.01 (br. s, 3H), 8.01-7.98 (m, 1H), 7.24 (s, 1H), 7.03 (d, 1H), 4.29 (t, 2H), 4.21 (s, 2H), 3.99 (t, 2H), 3.74 (t, 2H), 3.29-3.27 (m, 2H).
【0162】
B. 薬理活性の評価
本発明による化合物は、特に凝血因子Xaの選択的阻害剤として作用し、プラスミンまたはトリプシンなどの他のセリンプロテアーゼを阻害しないか、または、顕著に高い濃度でのみ阻害する。
【0163】
凝血因子Xaの阻害剤は、Xa因子阻害のIC50値が、他のセリンプロテアーゼ、特にプラスミンおよびトリプシンの阻害のIC50値と比較して、少なくとも100倍小さいならば、「選択的」と呼ばれる。ここで、選択性の試験方法に関して、下記の実施例Ba.1)およびa.2)の試験方法を参照する。
【0164】
本発明による化合物の有利な薬理特性は、以下の方法により測定できる。
a)試験の説明(インビトロ)
a.1)Xa因子阻害の測定
ヒトXa因子(FXa)の酵素的阻害を、FXa特異的発色基質の変換を使用して測定する。Xa因子は、発色基質からp−ニトロアニリンを切断する。測定は、マイクロタイタープレートで以下の通りに実施する。
【0165】
試験物質を様々な濃度でDMSOに溶解し、ヒトFXa(0.5nmol/l、50mmol/lトリスバッファー[C,C,C−トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン]、150mmol/l NaCl、0.1%BSA[ウシ血清アルブミン]、pH=8,3に溶解)と、25℃で10分間インキュベートする。純粋なDMSOを対照として使用する。次いで、発色基質(150μmol/l Pefachrome(登録商標) FXa、Pentapharm より)を添加する。25℃で20分間のインキュベーション時間の後、405nmの吸光度を測定する。試験物質を含有する試験混合物の吸光度を、試験物質を含まない対照混合物と比較し、これらのデータからIC50値を算出する。
【0166】
この試験の代表的活性データを下表1に示す:
表1
【表2】

【0167】
a.2)選択性の測定
選択的FXa阻害を評価するために、トリプシンおよびプラスミンなどの他のヒトセリンプロテアーゼの阻害について試験物質を調べる。トリプシン(500mU/ml)およびプラスミン(3.2nmol/l)の酵素活性を測定するために、これらの酵素をTrisバッファー(100mmol/l、20mmol/l CaCl、pH=8.0)に溶解し、試験物質または溶媒と10分間インキュベートする。次いで、対応する特異的発色基質(Chromozym Trypsin(登録商標)および Chromozym Plasmin(登録商標);Roche Diagnostics より)を添加することにより酵素反応を開始し、405nmの吸光度を20分後に測定する。全ての測定は37℃で実行する。試験物質を含有する試験混合物の吸光度を、試験物質を含まない対照サンプルと比較し、これらのデータからIC50値を算出する。
【0168】
a.3)抗凝血作用の測定
試験物質の抗凝血作用をインビトロでヒトおよびウサギの血漿で測定する。この目的で、0.11モル濃度クエン酸ナトリウム溶液を採血液として使用して、クエン酸ナトリウム/血液の混合比1/9で血液を採取する。血液を採取した直後に、それを徹底的に混合し、約2500gで10分間遠心分離する。上清をピペットで取り出す。市販の試験キット(Hemoliance(登録商標) RecombiPlastin、Instrumentation Laboratory より)を使用して、プロトロンビン時間(PT、同義語:トロンボプラスチン時間、クイック試験(quick test))を様々な濃度の試験物質または対応する溶媒の存在下で測定する。試験化合物を血漿と37℃で3分間インキュベートする。次いで、トロンボプラスチンの添加により凝血を開始し、凝血が起こる時間を測定する。プロトロンビン時間の倍増をもたらす試験物質の濃度を測定する。
【0169】
b)抗血栓活性(インビボ)の測定
b.1)動静脈シャントモデル(ウサギ)
絶食しているウサギ(系統:Esd:NZW)を、Rompun/Ketavet 溶液(各々5mg/kgおよび40mg/kg)の筋肉内投与により麻酔する。C.N. Berry ら [Semin. Thromb. Hemost. 1996, 22, 233-241] により記載された方法に従い、動静脈シャントにおいて、血栓形成を開始させる。この目的で、左頸静脈および右頸動脈を露出させる。長さ10cmの静脈カテーテルを使用して、2本の血管を体外シャントにより連結する。中央で、このカテーテルを、ループを形成するように配列した粗いナイロン糸を含む長さ4cmのさらなるポリエチレンチューブ(PE160、Becton Dickenson)に取り付け、血栓形成性表面を形成させる。体外循環を15分間維持する。次いでシャントを除去し、血栓を伴うナイロン糸の重さを直ちに測定する。ナイロン糸自体の重量は、実験開始前に測定した。体外循環を設置する前に、耳静脈を介して静脈内に、または咽頭チューブを使用して経口で、試験物質を投与する。
【0170】
C.医薬組成物の実施例
本発明による化合物は、以下のやり方で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明による化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)(BASF, Ludwigshafen, Germanyより)10mgおよびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg。直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明による化合物、ラクトースおよびデンプンの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、次いで、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機を使用して打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のガイドラインとして、打錠力15kNを使用する。
【0171】
経口投与できる懸濁液:
組成:
本発明による化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標)(FMC, Pennsylvania, USAのキサンタンガム)400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明による化合物の単回用量100mgに相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明による化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0172】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明による化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明による化合物の単回用量100mgに相当する。
製造:
本発明による化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明による化合物が完全に溶解するまで、撹拌を継続する。
【0173】
i.v.液剤:
本発明による化合物を、飽和溶解度より低い濃度で、生理的に許容し得る溶媒(例えば等張塩水、グルコース溶液5%および/またはPEG400溶液30%)に溶解する。溶液を濾過滅菌に付し、無菌のパイロジェン不含の注射容器に満たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、Aは、式
【化2】

[式中、Rは、水素、(C−C)−アルキル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノ、(C−C)−アルカノイルアミノまたは(C−C)−アルコキシカルボニルアミノを表し、
ここで、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、モノ−およびジ−(C−C)−アルキルアミノは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノまたは4員ないし7員の飽和複素環{これは、窒素原子を介して結合しており、N−RおよびO(式中、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表す)からなる群から環の構成員を含有していてもよい}により各場合で置換されていてもよく、
そして、*は、フェニル環への結合点を表す]
の基を表し、
Zは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニルまたはチエニルを表し、これらは、各場合で、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル(これは、アミノにより置換されていてもよい)、エチニルおよびアミノからなる群から選択される同一かまたは異なる置換基により一置換または二置換されていてもよく、
およびRは、同一かまたは異なり、相互に独立して、水素、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシまたはアミノであり、
ここで、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルコキシは、ヒドロキシルまたはアミノにより置換されていてもよく、
そして、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表し、これらは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノまたはモノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノにより置換されていてもよい、
の化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
Aが、式
【化3】

[式中、R4Aは、水素、ヒドロキシル、メトキシまたはアミノを表し、
4Bは、メチルまたはエチル(これらの各々は、ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよい)、またはアミノを表し、
4Cは、水素、メチルまたはエチルを表し、ここで、メチルまたはエチルは、各々ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよく、
そして、*は、フェニル環への結合点を表す]
の基を表し、
Zが、式
【化4】

(式中、Rは、フッ素、塩素、メチル、シアノまたはエチニルを表し、
そして、#は、窒素原子への結合点を表す)
の基を表し、
が水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、Rが水素を表す、
請求項1に記載の式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項3】
式中、
Aが、式
【化5】

(式中、*はフェニル環への結合点を表す)
の複素環の基を表し、
Zが、式
【化6】

(式中、#は窒素原子への結合点を表す)
の基を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、Rが水素を表す、
請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項4】
請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
[A]式(II)
【化7】

(式中、A、RおよびRは、請求項1で定義の通りである)
の化合物を、最初に、式(III)
【化8】

(式中、Rは、請求項1で定義の通りである)
の化合物と反応させ、式(IV)
【化9】

(式中、A、R、RおよびRは、請求項1で定義の通りである)
の化合物を得、次いで、これらを、式(V)
【化10】

(式中、Zは請求項1で定義の通りである)
の化合物を用いて、式(I)の化合物に変換する;
または、
[B]式(V)の化合物を、最初に、式(III)の化合物と反応させ、式(VI)
【化11】

(式中、RおよびZは、請求項1で定義の通りである)
の化合物を得、次いで、これらを、式(II)の化合物を用いて、式(I)の化合物に変換する;
のいずれかを特徴とし、
そして、式(I)の化合物を、必要に応じて、適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸を用いて、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換する、方法。
【請求項5】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
インビトロで血液凝固を防止するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)の化合物を、不活性、非毒性の医薬的に許容し得る補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)の化合物を、さらなる活性化合物と組み合わせて含む、医薬。
【請求項10】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防のための、請求項8または請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
抗凝血的に有効な量の少なくとも1種の請求項1に記載の式(I)の化合物または請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の医薬を使用することを含む、ヒトおよび動物における血栓塞栓性障害の処置および/または予防方法。
【請求項12】
抗凝血的に有効な量の請求項1に記載の式(I)の化合物を添加することを特徴とする、インビトロで血液凝固を防止する方法。

【公表番号】特表2008−522992(P2008−522992A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544770(P2007−544770)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012681
【国際公開番号】WO2006/061116
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】