説明

ピロロピリミジン及びピロロトリアジン誘導体

本発明の目的は、うつ症、不安症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、摂食障害、高血圧、消化器疾患、薬物依存症、てんかん、脳梗塞、脳虚血、脳浮腫、頭部外傷、炎症、免疫関連疾患、脱毛症、過敏性腸症候群、睡眠障害、皮膚炎、統合失調症、疼痛など、CRFが関連していると考えられる疾患に対する治療又は予防薬として有効である、CRF受容体拮抗薬を提供することである。次式[I]で表される、


カルバモイル基で置換されたピロロピリミジン又はピロロトリアジン誘導体は、CRF受容体に対して高い親和性を有し、CRFが関連していると考えられる疾患に対して有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うつ症、不安症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、摂食障害、高血圧、消化器疾患、薬物依存症、脳梗塞、脳虚血、脳浮腫、頭部外傷、炎症、免疫関連疾患、脱毛症、過敏性腸症候群、睡眠障害、てんかん、皮膚炎、統合失調症、疼痛など、コルチコトロピン放出因子(CRF)が関連していると考えられる疾患に対する治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
CRFは、41個のアミノ酸からなるホルモンであって(Science、213巻、1394〜1397頁、1981年、及びJ.Neurosci.、7巻、88〜100頁、1987年)、ストレスに対する生体反応の中核的役割を果たしていることが示唆されている(Cell.Mol.Neurobiol.、14巻、579〜588頁、1994年、Endocrinol.、132巻、723〜728頁、1994年、及びNeuroendocrinol.、61巻、445〜452頁、1995年)。CRFは視床下部−下垂体−副腎系を介して末梢の免疫系、交感神経系に作用する経路と中枢神経系において神経伝達物質として機能する2つの経路がある(コルチコトロピン放出因子−神経ペプチドの基礎的及び臨床的研究(Corticotropin Releasing Factor:Basic and Clinical Studies of a Neuropeptide、29〜52頁、1990年、Corticotropin Releasing Factor)。下垂体除去ラット及び正常ラットにCRFを脳室内投与すると両ラットで不安様症状(Pharmacol.Rev.、43巻、425〜473頁、1991年、及びBrain Res.Rev.、15巻、71〜100頁、1990年)が惹起される。すなわち、CRFは視床下部−下垂体−副腎系に対する関与と中枢神経系において神経伝達物質として機能する経路が考えられる。
【0003】
CRFが関与した疾患は1991年Owens及びNemeroffの総説(Pharmacol.Rev.、43巻、425〜474頁、1991年) にまとめられている。すなわち、うつ症、不安症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、摂食障害、高血圧、消化器疾患、薬物依存症、炎症、免疫関連疾患などにCRFが関与している。最近はてんかん、脳梗塞、脳虚血、脳浮腫、頭部外傷にもCRFが関与していることが報告されている(Brain Res.、545巻、339〜342頁、1991年、Ann.Neurol.、31巻、48〜498頁、1992年、Dev.Brain Res.、91巻、245〜251頁、1996年、及びBrain Res.、744巻、166〜170頁、1997年)。従って、CRF受容体拮抗薬はこれら疾患の治療剤として有用である。
【0004】
WO98/35967は、CRF受容体拮抗薬としてそれぞれピロロピリミジン又はピロロトリアジン誘導体を開示している。しかし、本発明で提供される化合物は開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、うつ症、不安症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、摂食障害、高血圧、消化器疾患、薬物依存症、てんかん、脳梗塞、脳虚血、脳浮腫、頭部外傷、炎症、免疫関連疾患、脱毛症、過敏性腸症候群、睡眠障害、皮膚炎、統合失調症、疼痛など、CRFが関連していると考えられる疾患に対する治療又は予防薬として有効である、CRF受容体拮抗薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、CRF受容体に対して高い親和性を有する、カルバモイル基で置換されたピロロピリミジン又はピロロトリアジンを鋭意検討した結果、本発明を完成したのである。
【0007】
本発明は、以下で説明するカルバモイル基で置換されたピロロピリミジン又はピロロトリアジン誘導体である。
【0008】
すなわち、次式[I]で表される、
【化1】


カルバモイル基で置換されたピロロピリミジン又はピロロトリアジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物であって、式中、
Eは、N又はCR10であり、
は、−OR、−S(O)又は−NRであり、
は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ハロゲン、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ又は−N(R)Rであり、
は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル又はアリールであり、
及びRは、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル、シアノ−C1〜6アルキル、カルバモイル−C1〜6アルキル又はジ(C1〜6アルキル)アミノ−C2〜6アルキルであるか、或いはRとRが一緒になって−(CH−A−(CH−(ここで、Aは、メチレン、酸素、硫黄、NR又はCHRである)を形成し、
及びRは、同一又は異なって、独立に、水素又はC1〜6アルキルであり、
は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、アリール又はアリール−C1〜6アルキルであり、
は、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシ−C1〜6アルキル、シアノ又はシアノ−C1〜6アルキルであり、
10は、水素、ハロゲン又はC1〜6アルキルであり、
lは、0、1及び2から選択される整数であり、
mは、1、2、3及び4から選択される整数であり、
nは、0、1、2及び3から選択される整数であり、
但し、Aが酸素、硫黄又はNRである場合には、nは1、2又は3であり、
Arは、非置換の又は1個若しくは複数の置換基で置換されたアリール又はヘテロアリールであり、該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルスルフィニル、C1〜6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、−CO11、−C(=O)R12、−CONR1314、−OC(=O)R15、−NR16CO17、−S(=O)NR1819、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ及び−N(R20)R21からなる群から選択され、
11及びR17は、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜5アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜5アルキル、アリール又はアリール−C1〜5アルキルであり、
12、R13、R14、R15、R16、R18、R19、R20及びR21は、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜5アルキル又はC3〜8シクロアルキルであり、
rは、1又は2である。
【0009】
本明細書中で使用される用語は、以下の意味を有する。
【0010】
用語「C1〜9アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、ヘキシル、イソヘキシル、1−エチルプロピル、1−エチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1−プロピルブチル、1−プロピルペンチル、1−ブチルペンチルなど、炭素原子が1〜9個の直鎖又は分枝鎖アルキル基を意味する。
【0011】
用語「C3〜7シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど、炭素原子が3〜7個の環状アルキル基を意味する。
【0012】
用語「C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル」は、シクロプロピルメチル、1−シクロプロピルエチル、1−シクロブチルエチル、1−シクロペンチルエチル、2−シクロプロピルエチル、2−シクロブチルエチル、2−シクロペンチルエチル、1−シクロプロピルプロピル、1−シクロブチルプロピル、1−シクロペンチルプロピル、1−シクロプロピルメチルプロピル、1−シクロプロピルメチルブチルなど、置換基として上で述べたC3〜7シクロアルキルを有する置換C1〜6アルキル基を意味する。
【0013】
用語「C3〜8シクロアルキルオキシ」は、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシなど、炭素原子が3〜8個の環状アルコキシ基を意味する。
【0014】
用語「ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル」は、ジ(シクロプロピル)メチル、ジ(シクロブチル)メチル、ジ(シクロペンチル)メチルなど、置換基として上述のC3〜7シクロアルキル基を2個有する置換C1〜6アルキル基を意味する。
【0015】
用語「C1〜6アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシなど、炭素原子が1〜6個の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基を意味する。
【0016】
用語「C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル」は、メトキシメチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、1−メトキシメチルプロピル、1−メトキシメチルブチルなど、置換基として上述のC1〜6アルコキシ基を有する置換C1〜6アルキル基を意味する。
【0017】
用語「ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル」は、2,3−ジ(メトキシ)プロピル、2−メトキシ−1−メトキシメチル−エチル、2,4−ジ(エトキシ)ペンチルなど、置換基として上述のC1〜6アルコキシ基を2個有する置換C1〜6アルキル基を意味する。
【0018】
用語「ヒドロキシ−C1〜6アルキル」は、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル,1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、5−ヒドロキシペンチル、1−ヒドロキシメチルプロピル、1−ヒドロキシメチルブチル、1−ヒドロキシメチル−3−メチルブチルなど、ヒドロキシ基を有する置換C1〜6アルキル基を意味する。
【0019】
用語「シアノ−C1〜6アルキル」は、シアノメチル、1−シアノエチル、2−シアノエチル、1−シアノプロピル、1−シアノブチル、5−シアノペンチル、2−シアノ−1−エチルエチル、1−シアノメチルブチル、1−シアノ−3−メチルブチル、1−シアノメチルメチル−3−メチル−ブチルなど、シアノ基を有する置換C1〜6アルキル基を意味する。
【0020】
用語「カルバモイル−C1〜6アルキル」は、カルバモイルメチル、1−カルバモイルエチル、2−カルバモイルエチル、1−カルバモイルプロピル、1−カルバモイルブチル、5−カルバモイルペンチル、1−カルバモイル−3−メチルブチル、1−カルバモイルメチルブチル、1−カルバモイルメチルプロピル、1−カルバモイルメチル−3−メチルブチルなど、カルバモイル基を有する置換C1〜6アルキル基を意味する。
【0021】
用語「ジ(C1〜6アルキル)アミノ」は、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノなど、上述のC1〜6アルキル基を2個有するアミノ基を意味する。
【0022】
用語「ジ(C1〜6アルキル)アミノ−C2〜6アルキル」は、2−ジメチルアミノエチル、3−ジメチルアミノプロピルなど、上述のジ(C1〜6アルキル)アミノ基を有する置換C2〜6アルキル基を意味する。
【0023】
用語「アリール」は、フェニル、ナフチルなど、少なくとも1個の芳香環を有する、環炭素原子が6〜12個の単環式又は二環式基を意味する。
【0024】
用語「ヘテロアリール」は、ピリジル、ピリミジニル、イミダゾリル、キノリル、インドリル、ベンゾフラニル、キノキサリニル、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾリル、ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾリルなど、その環中に、窒素、酸素及び硫黄から選択される同一又は異なってもよい1〜4個の原子を有する少なくとも1個の芳香環を有する、環原子が5〜12個の単環式又は二環式基を意味する。
【0025】
用語「アリール−C1〜5アルキル」は、ベンジル、フェネチルなど、置換基として上で述べたアリールを有する置換C1〜5アルキル基を意味する。
【0026】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を意味する。
【0027】
用語「C2〜6アルケニル」は、ビニル、イソプロペニル、アリルなど、炭素原子が2〜6個の直鎖又は分枝鎖アルケニル基を意味する。
【0028】
用語「C2〜6アルキニル」は、エチニル、プロプ−1−イニル、プロプ−2−イニルなど、炭素原子が2〜6個の直鎖又は分枝鎖アルキニル基を意味する。
【0029】
用語「C1〜6アルキルチオ」は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオなど、炭素原子が1〜6個の直鎖又は分枝鎖アルキルチオ基を意味する。
【0030】
句「非置換であるか或いは1個又は複数の置換基で置換され、該置換基が、同一又は異なって、ハロゲン、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルスルフィニル、C1〜6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、−CO、−C(=O)R10、−CONR1112、−OC(=O)R13、−NR14CO15、−S(=O)NR1617、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ及び−N(R18)R19からなる群から選択されるアリール又はヘテロアリール」には、例えば、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4−ジブロモフェニル、2−ブロモ−4−イソプロピルフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2−クロロ−4−トリフルオロメチルフェニル、4−メトキシ−2−メチルフェニル、2−クロロ−4−トリフルオロメトキシフェニル、4−イソプロピル−2−メチルチオフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル、4−ブロモ−2,6−ジエチルフェニル、4−クロロ−2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリブロモフェニル、2,4,5−トリブロモフェニル、2,4,6−トリクロロフェニル、2,4,5−トリクロロフェニル、4−ブロモ−2,6−ジクロロフェニル、6−クロロ−2,4−ジブロモフェニル、2,4−ジブロモ−6−フルオロフェニル、2,4−ジブロモ−6−メチルフェニル、2,4−ジブロモ−6−メトキシフェニル、2,4−ジブロモ−6−メチルチオフェニル、2,6−ジブロモ−4−イソプロピルフェニル、2,6−ジブロモ−4−トリフルオロメチルフェニル、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルフェニル、4−ブロモ−2−クロロフェニル、2−ブロモ−4−クロロフェニル、4−ブロモ−2−メチルフェニル、4−クロロ−2−メチルフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、2,6−ジメチル−4−メトキシフェニル、4−クロロ−2,6−ジブロモフェニル、4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル、2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル、2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメトキシフェニル、2,6−ジブロモロ−4−トリフルオロメトキシフェニル、2−クロロ−4,6−ジメチルフェニル、2−ブロモ−4,6−ジメトキシフェニル、2−ブロモ−4−イソプロピル−6−メトキシフェニル、2,4−ジメトキシ−6−メチルフェニル、6−ジメチルアミノ−4−メチルピリジン−3−イル、2−クロロ−6−トリフルオロメチルピリジン−3−イル、2−クロロ−6−トリフルオロメトキシピリジン−3−イル、2−クロロ−6−メトキシピリジン−3−イル、6−メトキシ−2−トリフルオロメトキシピリジン−3−イル、2−クロロ−6−ジフルオロメチルピリジン−3−イル、6−メトキシ−2−メチルピリジン−3−イル、2,6−ジメトキシピリジン−3−イル、4,6−ジメチル−2−トリフルオロメチルピリミジン−5−イル又は2−ジメチルアミノ−6−メチルピリジン−3−イルが含まれる。
【0031】
本発明の「薬学上許容される塩」には、例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸などの無機酸との塩、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ガラクタル酸、ナフタレン−2−スルホン酸などの有機酸との塩、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンなどの1種又は複数の金属イオンとの塩、アンモニア、アルギニン、リシン、ピペラジン、コリン、ジエチルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、2−アミノエタノール、ベンザチンなどのアミンとの塩が含まれる。
【0032】
本発明の化合物には、ジアステレオマー、エナンチオマー、幾何異性体及び互変異性形などの任意の異性体が存在し得る。本発明の化合物には、個々の異性体、並びに異性体のラセミ及び非ラセミ混合物が含まれる。
【0033】
本発明化合物の好ましい例は、次の通りである。
【0034】
【化2】

【0035】
すなわち、好ましいのは、式中、R、R、R及びArが式[I]で定義した通りである、式[II]の化合物である。より好ましいのは、式中、Rが−OR又は−NRであり、RがC1〜6アルキルであり、Rが水素又はC1〜6アルキルであり、R及びRが、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Arが、2又は3個の置換基[該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3アルキルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及び−N(R20)R21(ここで、R20及びR21は、同一又は異なって、独立に、水素又はC1〜3アルキルである)からなる群から選択される]で置換されたフェニルである、式[II]の化合物である。より好ましいのは、式中、RがOR又は−NRであり、RがC1〜6アルキルであり、Rが水素又はC1〜6アルキルであり、Rが、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Rが水素であり、Arが、2又は3個の置換基(該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン及びC1〜3アルキルからなる群から選択される)で置換されたフェニルである、式[II]の化合物である。
【0036】
【化3】

【0037】
他に好ましいのは、式中、R、R、R及びArが式[I]で定義した通りである、式[III]の化合物である。より好ましいのは、式中、Rが−OR又は−NRであり、RがC1〜6アルキルであり、Rが水素又はC1〜6アルキルであり、R及びRが、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Arが、2又は3個の置換基[該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3アルキルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及び−N(R20)R21(ここで、R20及びR21は、同一又は異なって、独立に、水素又はC1〜3アルキルである)からなる群から選択される]で置換されたフェニルである、式[III]の化合物である。より好ましいのは、式中、RがOR又は−NRであり、RがC1〜6アルキルであり、Rが水素又はC1〜6アルキルであり、Rが、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Rが水素であり、Arが、2又は3個の置換基(該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン及びC1〜3アルキルからなる群から選択される)で置換されたフェニルである、式[III]の化合物である。
【0038】
式[I]の化合物は、例えば、次の反応スキーム1に示す工程によって製造できる(次の反応スキームで、R、R、R及びArは、前に定義した通りであり、LGは、クロロ、ブロモ、ヨード、メタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基であり、Rは、C1〜6アルキル又はベンジルであり、pは、1又は2である)。
【0039】
【化4】

【0040】
ステップ1:
化合物(2)は、不活性溶媒中で塩基の存在下又は不存在下に、化合物(1)を対応するアミンと反応させることによって得ることができる。この場合、塩基には、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどのアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水素化ナトリウムなどの無機塩基類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどの金属アルコラート類、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミド類、及びメチルマグネシウムブロミドなどのグリニャール試薬が含まれる。不活性溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、酢酸エチル、ギ酸エチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ピリジン、水、及びこれらの不活性溶媒から選択される溶媒の混合物が含まれる。
【0041】
ステップ2:
化合物(2)中のシアノ基のカルバモイル基への変換は、不活性溶媒の存在下又は不存在下、酸又は塩基の存在下で達成できる。Rがシアノ基を有する場合には、そのシアノ基も同時にカルバモイル基に変換できる。この場合、その酸には、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、ポリリン酸、硝酸などの無機酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸が含まれる。その塩基には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムなどの無機塩基が含まれる。その不活性溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ピリジン、水、及びこれらの不活性溶媒から選択される溶媒の混合物が含まれる。
【0042】
本発明の化合物は、不活性溶媒中で、酸との塩に変換できる。その酸には、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ガラクタル酸、ナフタレン−2−スルホン酸などの有機酸が含まれる。
【0043】
その不活性溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、酢酸エチル、ギ酸エチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ピリジン、水、及びこれらの不活性溶媒から選択される溶媒の混合物が含まれる。
【0044】
【化5】

【0045】
ステップ3:
化合物(4)から化合物(5)への変換は、不活性溶媒中、チオウレアで(4)を処理し、続いて不活性溶媒中、塩基の存在下又は不存在下にアルキル化試薬と反応させることによって達成できる。この場合、そのアルキル化試薬には、ヨウ化メチル、臭化メチル、ジメチル硫酸、ヨウ化エチル、臭化エチル、ジエチル硫酸、塩化ベンジル、臭化ベンジルなどの慣用のアルキル化試薬が含まれる。その塩基には、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどのアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水素化ナトリウムなどの無機塩基類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどの金属アルコラート類、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミド類、及びメチルマグネシウムブロミドなどのグリニャール試薬が含まれる。その不活性溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ピリジン、水、及びこれらの不活性溶媒から選択される溶媒の混合物が含まれる。
【0046】
ステップ4:
化合物(5)から化合物(6)への変換は、ステップ2と同様の方法で達成できる。
【0047】
ステップ5:
化合物(6)から化合物(7)への変換は、不活性溶媒中、化合物(6)を酸化試薬と反応させることによって達成できる。この場合、その酸化試薬には、過酢酸、過酸化水素、3−クロロ過安息香酸、オキソン(Oxone)、過ヨウ素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなど、スルフィド基を酸化するための慣用の酸化試薬が含まれる。その不活性溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ピリジン、水、及びこれらの不活性溶媒から選択される溶媒の混合物が含まれる。
【0048】
ステップ6:
化合物(7)から化合物(8)への変換は、ステップ1と同様の方法で達成できる。
【0049】
本発明の化合物は、CRFが関連していると考えられる疾患のための治療又は予防薬として有用である。この目的のために、本発明の化合物は、慣用の増量剤、結合剤、崩壊剤、pH調整剤、溶媒などを添加することによる慣用の調合技術によって、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤などに製剤化できる。
【0050】
本発明の化合物は、成人患者に対して、1日当たり0.1〜500mgの投与量で、1回又は数回に分けて、経口又は非経口で投与できる。投与量は、疾患の種類、並びに患者の年齢、体重及び症状に応じて適切に増減できる。
【実施例】
【0051】
以下の例及び試験例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0052】
(例1)
8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−(1−プロピル−ブチルアミノ)−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド塩酸塩(化合物1−001)の合成
【化6】

【0053】
(1)8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−4−クロロ−2−メチル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリル(30.0g)、1−プロピル−ブチルアミン(18.5g)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(15.5g)のエタノール(90mL)中混合物を、還流下に2時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に注入し、次いで、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得た。この固体をジイソプロピルエーテルで洗浄して、8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−(1−プロピル−ブチルアミノ)−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリルを得た(27.0g)。
【0054】
【化7】

【0055】
(2)8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−(1−プロピル−ブチルアミノ)−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリル(10.0g)を濃HSO(50mL)中に添加し、55℃で5時間加熱した。反応混合物を、室温まで冷却し、氷水中に注入し、次いで、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を添加して水性混合物をアルカリ性(pH=8)とし、酢酸エチルで抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコーゲルC200、溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/クロロホルム=10:3:1)で精製し、固体を得た。その固体を酢酸エチルで再結晶し、8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−(1−プロピル−ブチルアミノ)−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド(5.8g)を得た。
【0056】
(3)8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−(1−プロピル−ブチルアミノ)−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド(5.8g)のエタノール(30mL)中懸濁液に、氷冷浴中、4M HCl/酢酸エチル(3.7mL)を添加した。得られた溶液を減圧下に濃縮した。残留物を酢酸エチルで結晶化し、表題化合物を得た。
【0057】
表1及び表2に、例1で得られた化合物及び例1に記載したのと同様の手順で得られた化合物を列挙する。
【0058】
(例2)
8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−(N,N−ジプロピルアミノ)−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド(化合物1−022)の合成
【化8】

【0059】
(1)8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−4−クロロ−2−メチル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリル(7.50g)、チオウレア(7.11g)のエタノール(50mL)中混合物を、還流下に2時間加熱した。反応混合物を、室温まで冷却し、0.5M NaOH水溶液に注入し、1時間撹拌し、酢酸エチルで抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコーゲルC200、溶離液:クロロホルム/メタノール=10:1)で精製し、8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−4−メルカプト−2−メチル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリル(7.52g)を得た。
【0060】
【化9】

【0061】
(2)8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−4−メルカプト−2−メチル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリル(7.50g)、MeI(12.5mL)の1M NaOH水溶液(100mL)中混合物を、室温で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、粗8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−メチルスルファニル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリル(5.75g)を得た。この生成物は、さらに精製することなく次のステップで使用した。
【0062】
【化10】

【0063】
(3)8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−メチルスルファニル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボニトリル(5.70g)を濃HSO(100mL)中に添加し、60℃で5時間加熱した。反応混合物を、室温まで冷却し、氷水中に注入し、次いで、10%NaOH水溶液を添加して水性混合物をアルカリ性(pH=8)とし、酢酸エチルで抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコーゲルC200、溶離液:酢酸エチル)で精製し、8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−メチルスルファニル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド(3.12g)を得た。
【0064】
【化11】

【0065】
(4)オキソン(9.12g)の水(50mL)溶液に、氷冷浴中、8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−2−メチル−4−メチルスルファニル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド(3.00g)のエタノール(50mL)中溶液を添加した。反応混合物を、氷冷下で30分間撹拌し、水に注入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液及びブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコーゲルC200、溶離液:酢酸エチル)で精製し、8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−4−メタンスルフィニル−2−メチル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド(1.68g)を得た。
【0066】
【化12】

【0067】
(5)8−(4−ブロモ−2,6−ジメチル−フェニル)−4−メタンスルフィニル−2−メチル−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸アミド(100mg)、N,N−ジプロピルアミン(48mg)のエタノール(1mL)中混合物を、還流下に1時間加熱した。反応混合物を、室温まで冷却し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に注入し、次いで酢酸エチルで抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコーゲルC200、溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製し、固体を得た。その固体をジイソプロピルエーテルと酢酸エチルとの混合液で洗浄し、表題化合物(50mg)を得た。
【0068】
表1に、例2で得られた化合物及び例2に記載したのと同様の手順で得られた化合物を列挙する。
【0069】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】

【0070】
非結晶性化合物の分析データを以下に記載する。
【0071】
【化13】


*2:HCl塩(化合物1−015は2HCl塩である)
*3:精製した化合物(シリカゲルカラムクロマトグラフィー)からそのまま結晶化し乾燥
【0072】
【表2】

【0073】
試験例[CRF受容体結合試験]
受容体標本としてサル小脳扁桃膜を使用した。
【0074】
125I−標識化リガンドとして125I−CRFを使用した。
【0075】
125I−標識化リガンドを使用する結合反応は、Journal of Neuroscience、7巻、88頁(1987年)に記載されている次の方法によって実施した。
【0076】
受容体膜の調製
サル小脳扁桃を、10mMのMgCl、2mMのEDTAを含有する50mMのTris−HCl緩衝液(pH7.0)中でホモジナイズし、48,000×gで20分間遠心し、沈殿物をTris−HCl緩衝液で1回洗浄した。洗浄した沈殿を、10mMのMgCl、2mMのEDTA、0.1%のウシ血清アルブミン及び100カリクレイン単位/mlのアプロチニンを含有する50mMのTris−HCl緩衝液(pH7.0)中に懸濁し、膜標本を得た。
【0077】
CRF受容体結合試験
膜標本(0.3mgタンパク質/ml)、125I−CRF(0.2nM)及び供試薬剤を25℃で2時間反応させた。反応完結後、反応混合物を、0.3%ポリエチレンイミンで処理したガラスフィルター(GF/C)を通して吸引濾過し、次いで、ガラスフィルターを、0.01%Triton X−100を含むリン酸塩緩衝化食塩水で3回洗浄した。洗浄後、フィルターペーパーの放射能をガンマ計数管で測定した。
【0078】
1μMのCRFの存在下で反応を実施したときに結合した125I−CRFの量を125I−CRFの非特異的結合度とし、125I−CRFの総結合度と125I−CRFの非特異的結合度との差を125I−CRFの特異的結合度とした。上記の条件下で一定濃度(0.2nM)の125I−CRFを様々な濃度の各供試薬剤と反応させることによって、阻害曲線を得た。阻害曲線から、125I−CRFの結合を50%阻害する供試薬剤の濃度(IC50)を求めた。
【0079】
その結果、100nM以下のIC50値を有する典型的な化合物として、化合物1−001、1−002、1−003、1−004、1−005、1−006、1−007、1−008、1−009、1−010、1−011、1−012、1−013、1−016、1−017、1−018、1−019、1−022、1−027、2−001、2−002、2−003、2−004、2−005及び2−006が挙げられることがわかった。
【0080】
本発明により、CRF受容体に対して高い親和性を有する化合物が提供された。これらの化合物は、うつ症、不安症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、摂食障害、高血圧、消化器疾患、薬物依存症、てんかん、脳梗塞、脳虚血、脳浮腫、頭部外傷、炎症、免疫関連疾患、脱毛症、過敏性腸症候群、睡眠障害、皮膚炎、統合失調症、疼痛など、CRFが関連していると考えられる疾患に対して有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式[I]で表されるカルバモイル基で置換されたピロロピリミジン又はピロロトリアジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物、
【化1】


(式中、
Eは、N又はCR10であり、
は、−OR、−S(O)又は−NRであり、
は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ハロゲン、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ又は−N(R)Rであり、
は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル又はアリールであり、
及びRは、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル、シアノ−C1〜6アルキル、カルバモイル−C1〜6アルキル又はジ(C1〜6アルキル)アミノ−C2〜6アルキルであるか、或いはRとRが一緒になって−(CH−A−(CH−(ここで、Aは、メチレン、酸素、硫黄、NR又はCHRである)を形成し、
及びRは、同一又は異なって、独立に、水素又はC1〜6アルキルであり、
は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、アリール又はアリール−C1〜6アルキルであり、
は、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシ−C1〜6アルキル、シアノ又はシアノ−C1〜6アルキルであり、
10は、水素、ハロゲン又はC1〜6アルキルであり、
lは、0、1及び2から選択される整数であり、
mは、1、2、3及び4から選択される整数であり、
nは、0、1、2及び3から選択される整数であり、
但し、Aが酸素、硫黄又はNRである場合には、nは1、2又は3であり、
Arは、非置換の又は1個若しくは複数の置換基で置換されたアリール又はヘテロアリールであり、該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキルスルフィニル、C1〜6アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、−CO11、−C(=O)R12、−CONR1314、−OC(=O)R15、−NR16CO17、−S(=O)NR1819、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ及び−N(R20)R21からなる群から選択され、
11及びR17は、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜5アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル−C1〜5アルキル、アリール又はアリール−C1〜5アルキルであり、
12、R13、R14、R15、R16、R18、R19、R20及びR21は、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜5アルキル又はC3〜8シクロアルキルであり、
rは、1又は2である)。
【請求項2】
次式[II]で表される、請求項1に記載のカルバモイル基で置換されたピロロピリミジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物、
【化2】


(式中、R、R、R及びArは、請求項1で定義した通りである)。
【請求項3】
式[II]において、Rは−OR又は−NRであり、RはC1〜6アルキルであり、Rは水素又はC1〜6アルキルであり、R及びRは、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Arは、2又は3個の置換基[該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3アルキルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び−N(R20)R21(ここで、R20及びR21は、同一又は異なって、独立に、水素又はC1〜3アルキルである)からなる群から選択される]で置換されたフェニルである、請求項2に記載のカルバモイル基で置換されたピロロピリミジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物。
【請求項4】
式[II]において、Rは−OR又は−NRであり、RはC1〜6アルキルであり、Rは水素又はC1〜6アルキルであり、Rは、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Rは水素であり、Arは、2又は3個の置換基(該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン及びC1〜3アルキルからなる群から選択される)で置換されたフェニルである、請求項2に記載のカルバモイル基で置換されたピロロピリミジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物。
【請求項5】
次式[III]で表される、請求項1に記載のカルバモイル基で置換されたピロロトリアジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物、
【化3】


(式中、R、R、R及びArは、請求項1で定義した通りである)。
【請求項6】
式[III]において、Rは−OR又は−NRであり、RはC1〜6アルキルであり、Rは水素又はC1〜6アルキルであり、R及びRは、同一又は異なって、独立に、水素、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Arは、2又は3個の置換基[該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3アルキルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及び−N(R20)R21(ここで、R20及びR21は、同一又は異なって、独立に、水素又はC1〜3アルキルである)からなる群から選択される]で置換されたフェニルである、請求項5に記載のカルバモイル基で置換されたピロロトリアジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物。
【請求項7】
式[III]において、Rは−OR又は−NRであり、RはC1〜6アルキルであり、Rは水素又はC1〜6アルキルであり、Rは、C1〜9アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、ジ(C3〜7シクロアルキル)−C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ−C1〜6アルキル、ジ(C1〜6アルコキシ)−C1〜6アルキル、ヒドロキシ−C1〜6アルキル又はシアノ−C1〜6アルキルであり、Rは水素であり、Arは、2又は3個の置換基(該置換基は、同一又は異なって、ハロゲン及びC1〜3アルキルからなる群から選択される)で置換されたフェニルである、請求項5に記載のカルバモイル基で置換されたピロロトリアジン誘導体、その個々の異性体又はその異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、或いは薬学上許容されるその塩及び水和物。
【請求項8】
有効成分として、請求項1から7までのいずれか一項に記載のカルバモイル基で置換されたピロロピリミジン又はピロロトリアジン誘導体、薬学上許容されるその塩又は水和物を含む、CRF受容体拮抗薬。
【請求項9】
CRF受容体拮抗薬としての治療薬を製造するための、請求項1から7までのいずれか一項に記載のカルバモイル基で置換されたピロロピリミジン又はピロロトリアジン誘導体、薬学上許容されるその塩又は水和物の使用。

【公表番号】特表2007−517794(P2007−517794A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546614(P2006−546614)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000319
【国際公開番号】WO2005/066142
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【復代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
【復代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
【復代理人】
【識別番号】100107504
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 克則
【復代理人】
【識別番号】100102897
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 幸弘
【Fターム(参考)】