説明

ファクシミリシステム、ファクシミリ装置及び送信先特定装置

【課題】 構内交換機に接続したファクシミリ機どうしのファクシミリ通信をインターネット経由で実現する。
【解決手段】 IP−FAX装置115aは、G3方式に従ってファクシミリデータの送受信を行う「FAX機能」と、電子メールによってファクシミリデータの送受信を行う「FAXメール機能」とを備えている。前者のFAX機能は、IP−FAX装置115aと、ファクシミリシステム100a内のファクシミリ機111a,112aと間でファクシミリデータをやり取りするときに利用される。一方、後者のFAXメール機能は、IP−FAX装置115aとファクシミリシステム100b〜100dのIP−FAX装置との間でファクシミリデータをやり取りするときに利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネットを介してファクシミリ送受信するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークの多様化に伴い、従来のPSTN(Public Switched Telephone Networks:公衆電話網)やISDN(Integrated Services Digital Network)に代えて、IP(Internet Protocol)網を利用してファクシミリ通信を行うための技術が実用化されている。
【0003】
図6は、専用線によってIP網を構築したシステムの構成を示す図である。図6において、構内交換機1aにはファクシミリ機2aが接続されており、構内交換機1bにはファクシミリ機2bが接続されている。このように構内交換機とファクシミリ機とによって構成されたファクシミリシステムは、例えば企業の本店・支店、事業所、工場などの組織単位で設けられていることが多い。そして、双方の構内交換機1a,1bにはVoIP(Voice over Internet Protocol)Gateway装置3a,3bが接続されている。VoIP Gateway装置3aとVoIP Gateway装置3bとの間には、専用線によってIP網4が構築されている。このシステムにおいて、VoIP Gateway装置3a,3bが “みなし音声”やT.38といったデータ通信技術を利用することによって、ファクシミリ機2aとファクシミリ機2bと間でファクシミリ通信を行うことが可能となる。また、図7は、IP網としてIP電話網を利用したシステムの構成を示す図であり、構内交換機1a,1bがルータを内蔵したブロードバンドVoIP Gateway装置3a’,3b’を介してIP電話網5に接続されている。この場合は、ブロードバンドVoIP Gateway装置3a’,3b’による“みなし音声”機能によって、IP電話網5を介したファクシミリ通信が実現される。
【0004】
上述したように、構内交換機に接続したファクシミリ機どうしのファクシミリ通信をIP網上で実現するためには、VoIP Gateway装置やブロードバンドVoIP Gateway装置の“みなし音声”或いはT.38の技術を利用する方法が一般的である。世界規模で最も普及している最大のIP網はもちろんインターネットであるが、このインターネットをそのまま利用してファクシミリ通信を実現することができれば非常に便利である。そこで、例えば特許文献1には、パーソナルコンピュータからインターネットを介してファクシミリ機にファクシミリ送信するためのシステムが開示されている。ただし、このシステムは、パーソナルコンピュータによって受信された電子メールに含まれていた画像をファクシミリ機に送信することを実現するものであり、図6,7に示したように異なる構内交換機に接続されたファクシミリ機どうしでIP網を経由したファクシミリ通信を実現することはできない。
【0005】
【特許文献1】特許第3437533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような背景に鑑みてなされたものであり、構内交換機に接続したファクシミリ機どうしのファクシミリ通信をインターネット経由で実現するための仕組みを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、1又は複数のファクシミリ機と、前記1又は複数のファクシミリ機に接続され、各々のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号に基づいて回線交換を行う構内交換機と、前記構内交換機から供給されてくる信号に基づいて、ファクシミリデータの送信先であるファクシミリ機を特定する送信先特定装置と、前記構内交換機を介して前記ファクシミリ機に接続されるとともに、インターネットに接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置とを備え、前記インターネットプロトコルファクシミリ装置は、前記ファクシミリ機から前記構内交換機を介して供給されてくるファクシミリデータを受信するデータ受信手段と、前記データ受信手段によって受信されたファクシミリデータと、前記送信先特定装置によって特定されたファクシミリ機のダイヤル番号とを含み、当該ファクシミリ機に接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置を宛先とした電子メールを生成するメール生成手段と、前記メール生成手段によって生成された電子メールをインターネットに送信するメール送信手段とを備えるファクシミリシステムを提供する。
【0008】
このシステムによれば、インターネットプロトコルファクシミリ装置は、送信元のファクシミリ機から構内交換機を介してファクシミリデータを受信する。そして、受信したファクシミリデータと送信先特定装置によって特定されたファクシミリ機のダイヤル番号とを含み、送信先のファクシミリ機に接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置を宛先とした電子メールを生成し、これをインターネットに送信する。よって、送信元のファクシミリ機からインターネットを介して、送信先のファクシミリ機が接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置へとファクシミリデータを送信することが可能となる。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、前記インターネットプロトコルファクシミリ装置は、インターネット経由で電子メールを受信するメール受信手段と、前記メール受信手段によって受信された電子メールからダイヤル番号を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出されたダイヤル番号を前記構内交換機に通知する通知手段と、前記構内交換機によって前記ダイヤル番号のファクシミリ機との間で回線が接続されると、前記メール受信手段によって受信された電子メールに含まれていたファクシミリデータを接続された回線経由で送信するデータ送信手段とを備えるようにしてもよい。この態様によれば、インターネットプロトコルファクシミリ装置は、インターネット経由で受信した電子メールからダイヤル番号を抽出し、抽出したダイヤル番号を構内交換機に通知する。そして、構内交換機によって、送信先のファクシミリ機との間で回線が接続されると、電子メールに含まれていたファクシミリデータを接続された回線経由で送信する。よって、インターネットプロトコルファクシミリ装置が受信したファクシミリデータを、そのファクシミリデータの送信先であるファクシミリ機へと送信することが可能となる。
【0010】
また、別の好ましい態様においては、前記送信先特定装置は、前記構内交換機から供給されてくるDTMF(Dial Tone Multi Frequency)信号に基づいて、ファクシミリデータの送信先であるファクシミリ機のファクシミリ機IDを特定し、前記インターネットプロトコルファクシミリ装置は、前記送信先特定装置によって特定された前記ファクシミリ機IDをダイヤル番号に変換する変換手段を備え、前記メール生成手段は、前記変換手段によって得られたダイヤル番号を含む前記電子メールを生成するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明は、ファクシミリ機から構内交換機を介して供給されてくるファクシミリデータを受信するデータ受信手段と、前記データ受信手段によって受信されたファクシミリデータと、当該ファクシミリデータの送信先のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号とを含み、当該ファクシミリ機に接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置を宛先とした電子メールを生成するメール生成手段と、前記メール生成手段によって生成された電子メールをインターネットに送信するメール送信手段とを備えるインターネットプロトコルファクシミリ装置を提供する。
【0012】
別の好ましい態様においては、インターネット経由で電子メールを受信するメール受信手段と、前記メール受信手段によって受信された電子メールからダイヤル番号を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出されたダイヤル番号を前記構内交換機に通知する通知手段と、前記構内交換機によって前記ダイヤル番号が割り当てられたファクシミリ機との間で回線が接続されると、前記メール受信手段によって受信された電子メールに含まれていたファクシミリデータを、接続された回線経由で前記ファクシミリ機へ送信するデータ送信手段とを備えるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、コンピュータに、ファクシミリ機から構内交換機を介して供給されてくるファクシミリデータを受信するデータ受信機能と、前記データ受信機能によって受信されたファクシミリデータと、当該ファクシミリデータの送信先のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号とを含み、当該ファクシミリ機に接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置を宛先とした電子メールを生成するメール生成機能と、前記メール生成機能によって生成された電子メールをインターネットに送信するメール送信機能とを実現させるためのプログラムを提供する。
【0014】
さらに、前記コンピュータに、インターネット経由で電子メールを受信するメール受信機能と、前記メール受信機能によって受信された電子メールからダイヤル番号を抽出する抽出機能と、前記抽出機能によって抽出されたダイヤル番号を前記構内交換機に通知する通知機能と、前記構内交換機によって前記ダイヤル番号が割り当てられたファクシミリ機との間で回線が接続されると、前記メール受信機能によって受信された電子メールに含まれていたファクシミリデータを、接続された回線経由で前記ファクシミリ機へ送信するデータ送信機能とを実現させるようにしてもよい。
【0015】
また、本発明は、インターネットプロトコルファクシミリ装置が接続される第1のインタフェースと、構内交換機が接続される第2のインタフェースと、前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に接続され、ファクシミリデータの送信先を前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に通知するための送信先通知インタフェースと、前記第2のインタフェースを介して受信したDTMF信号に基づいて、送信先のファクシミリ機に割り当てられたファクシミリ機IDを特定する特定手段と、特定されたファクシミリ機IDを前記送信先通知インタフェース経由で前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に送信する送信先通知手段と、前記第2のインタフェースを介して受信したファクシミリデータを、前記第1のインタフェースを介して前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に送信するデータ送信手段とを備えた送信先特定装置を提供する。
【0016】
別の好ましい態様においては、前記第1のインタフェースを介して受信したDTMF信号に基づいて送信先のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号を特定する特定手段と、特定されたダイヤル番号を前記第2のインタフェースを介して前記構内交換機に通知する通知手段と、前記第1のインタフェースを介して受信したファクシミリデータを前記構内交換機に送信する送信手段と備えるようにしてもよい。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
A:構成
図1は、本実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。図1において、インターネット10は、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)群を標準プロトコルとしたIPネットワークである。このインターネット10にはメールサーバ装置11が接続されている。メールサーバ装置11は、TCP/IPの上位プロトコルであるSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)、POP3(Post Office Protocol Version3)或いはIMAP4(Internet Mail Access Protocol version 4)等のプロトコルで規定された手順に従い、メールクライアントに対して電子メールの配信サービスを提供する。
【0018】
インターネット10には、図示せぬルータ等を介して、複数のファクシミリシステムが接続されている。図1では、4つのファクシミリシステム100a,100b,100c,100dが接続されている例が示されている。これらの各ファクシミリシステム100a〜100dは、例えば企業の本店・支店、事業所、工場などの各組織、或いは取引先企業などに設けられている。本実施形態では、ファクシミリシステム100aが支店Aに設けられ、ファクシミリシステム100bが支店Bに設けられ、ファクシミリシステム100cが支店Cに設けられ、ファクシミリシステム100dが取引先企業Dに設けられている場合を想定している。これらのファクシミリシステム100a〜100dはいずれも、ファクシミリ機、構内交換機、送信先特定装置及びインターネットプロトコルファクシミリ装置(以下の説明及び図面においてIP−FAX装置という)といった構成装置によって構成されている点で共通しており、違いは、これら構成装置の数が各ファクシミリシステム100a〜100dで異なる点である。
【0019】
以下では、ファクシミリシステム100aを例に挙げて、ファクシミリシステムの構成について説明する。ファクシミリシステム100aは、図1に示すように、複数のファクシミリ機(図1では2つのファクシミリ機111a,112a)と、これらのファクシミリ機111a,112aに接続された構内交換機113aと、これらの構内交換機113aに接続された送信先特定装置114aと、この送信先特定装置114a及びインターネット10に接続されたIP−FAX装置115aとを備えている。ファクシミリ機111a,112aは、G3方式に従ってファクシミリ送受信を行う装置であり、例えばファクシミリ専用機や、電話機と兼用されるファクシミリ機のほか、プリンタ機能やコピー機能をも備えた複合機などである。
【0020】
これらファクシミリ機111a,112aには、ファクシミリ機IDと、ダイヤル番号(内線番号ないしダイヤルイン番号)という2種類の識別子が割り当てられている。ファクシミリ機IDは、全てのファクシミリ機においてユニークな識別子である。これに対し、ダイヤル番号は、支店A内の複数のファクシミリ機においてユニークな識別子である。構内交換機113aは、配下の(つまり支店A内の)ファクシミリ機111a,112aに割り当てられたダイヤル番号に基づいて回線交換を行う装置であり、例えばPBX(Private Branch Exchange)やボタン電話主装置である。これらのファクシミリ機111a,112a及び構内交換機113aは、従来のファクシミリシステムを構成するファクシミリ機及び構内交換機と同じである。
【0021】
次に、送信先特定装置114aは、ファクシミリデータの送信先であるファクシミリ機を特定するための装置である。より具体的には、送信先特定装置は114a、支店Aのファクシミリシステム100aから支店B,Cのファクシミリシステム100b,100cや取引先企業Dのファクシミリシステム100dへ送信されるファクシミリデータの送信先のファクシミリ機を特定する。また、送信先特定装置114aは、支店B,Cのファクシミリシステム100b,100cや取引先企業Dのファクシミリシステム100dから支店Aのファクシミリシステム100aへ送信されてきたファクシミリデータの送信先のファクシミリ機を特定する。
【0022】
IP−FAX装置115aは、G3方式に従ってファクシミリデータの送受信を行う「FAX機能」と、電子メールによってファクシミリデータの送受信を行う「FAXメール機能」とを備えたインターネットプロトコルファクシミリ装置である。前者のFAX機能は、IP−FAX装置115aと、ファクシミリシステム100a内のファクシミリ機111a,112aと間でファクシミリデータをやり取りするときに利用される。一方、後者のFAXメール機能は、IP−FAX装置115aとファクシミリシステム100b〜100dのIP−FAX装置との間でファクシミリデータをやり取りするときに利用される。
【0023】
ここで、図2のブロック図を参照しながら、IP−FAX装置115aの構成について説明する。このIP−FAX装置115aは、インターネット10を介してファクシミリデータを送受信するための手順が記述されたIPファクシミリソフトウエアをパーソナルコンピュータにインストールすることで実現される。図2に示すように、IP−FAX装置115aは、CPU(Central Processing Unit)21aと、ROM(Read Only Memory)22aと、RAM(Random Access Memory)23aと、通信部24aと、通信部25aと、ハードディスク26aと、表示部27aと、操作部28aとを備えている。通信部24aは、第1のアナログ2線式インタフェース241aと、送信先通知インタフェース242aとを備えている。これらのインタフェース241a,242aは、いずれも送信先特定装置114aに接続されている。そして、通信部25aはインターネット10に接続されている。
【0024】
ハードディスク26aには、上述したIPファクシミリソフトウェア200が記憶されている。CPU21aは、IPファクシミリソフトウェア200を実行することによって、通信部24a(第1のアナログ2線式インタフェース241a)がアナログ回線を介して受信したファクシミリデータを電子メール形式に変換し、これを通信部25aによってインターネット10に送信する。また、CPU21aは、IPファクシミリソフトウェア200を実行することによって、通信部25aがインターネット10経由で受信した電子メールをファクシミリデータに変換し、これを通信部24a(第1のアナログ2線式インタフェース241a)によって送信先のファクシミリ機111a,112aのいずれかに送信する。
【0025】
さらに、ハードディスク26aには、ルーティングテーブル201が記憶されている。このルーティングテーブル201には、ファクシミリシステム100a〜100dに含まれるファクシミリ機とIP−FAX装置との対応関係を示す情報が記述されている。図3はこのルーティングテーブル201に記述された情報の一例を示す図である。図3に示すように、ルーティングテーブル201には、ファクシミリ機の「ファクシミリ機ID」と、そのファクシミリ機の「ダイヤル番号」と、そのファクシミリ機が接続されているIP−FAX装置の識別子(「IP−FAX装置ID」)と、そのIP−FAX装置の「メールアドレス」とが対応付けられている。図3では、例えばファクシミリ機ID「100」のファクシミリ機のダイヤル番号は「2042」であり、そのファクシミリ機が接続されているIP−FAX装置のIP−FAX装置IDは「ip01」であり、そのメールアドレスは「ip-fax1@abc.co.jp」である例が示されている。前述したように、ファクシミリ機IDは、全てのファクシミリ機においてユニークな識別子であり、ダイヤル番号は各支店においてユニークな識別子であるから、図3に示すように、ファクシミリ機ID「104」,「105」という異なるファクシミリ機IDが割り当てられたファクシミリ機であっても、ダイヤル番号は共通の「1000」が割り当てられることがあり得る。
【0026】
次に、図4のブロック図を参照しながら、送信先特定装置114aの構成について説明する。送信先特定装置114aは、制御回路31aと、第1のアナログ2線式インタフェースを有するNCU(Network Control Unit)32aと、第2のアナログ2線式インタフェースを有するNCU33aと、送信先通知インタフェースとして機能する着番通知回路34aと、着番特定回路35aと、ダイヤルイン情報送出回路36aと、着番特定回路37aと、切替回路38aとを備えている。制御回路31aは、CPU等の演算装置とROMやRAM等のメモリとを備えている。このメモリには、送信先特定装置114aの各回路を制御するためのソフトウェアが記憶されており、CPU等の演算蔵置はこの制御プログラムを実行することによって装置全体を統括的に制御する。NCU(第2のアナログ2線式インタフェース)33aは、アナログ回線を介して構内交換機113aに接続されている。NCU(第1のアナログ2線式インタフェース)32aは、アナログ回線を介して、IP−FAX装置115aの第1のアナログ2線式インタフェース241aに接続されている。これらNCU32a,33aは、構内交換機113aやIP−FAX装置115aとの間でファクシミリデータ等のアナログデータをやり取りするために用いられる。切替回路38aは、必要に応じて、NCU32aとNCU33aとの間で回線の接続/非接続を行う。
【0027】
着番特定回路35aは、構内交換機113aから供給されてくるDTMF(Dial Tone Multi Frequency)信号に基づいて、ファクシミリデータの送信先となるファクシミリ機のファクシミリ機IDを特定する。着番通知回路(送信先通知インタフェース)34aは、IP−FAX装置115aの送信先通知インタフェース242aに接続されており、着番特定回路35aによって特定されたファクシミリ機IDをIP−FAX装置115aに通知する。
【0028】
一方、着番特定回路37aは、IP−FAX装置115aから供給されてくるDTMF信号に基づいて、ファクシミリデータの送信先となるファクシミリ機のダイヤル番号を特定する。ダイヤルイン情報送出回路36aは、着番特定回路37aによって特定されたダイヤル番号に基づいてダイヤルイン情報を生成し、生成したダイヤルイン情報をNCU33a経由で構内交換機113aへ送出する。
以上が本実施形態の構成である。
【0029】
B:動作
次に、本実施形態の動作について説明する。ここでは、図5に示すシーケンスを参照しながら、ファクシミリシステム100aに含まれるファクシミリ機111aから、ファクシミリシステム100bに含まれるファクシミリ機111bへファクシミリ送信する場合について説明する。なお、ファクシミリ機111aのファクシミリ機IDは「100」であり、そのダイヤル番号は「2042」であり、IP−FAX装置115aのIP−FAX装置IDは「ip01」であり、そのメールアドレスは「ip-fax1@abc.co.jp」であると仮定する(図3参照)。また、ファクシミリ機111bのファクシミリ機IDは「101」であり、そのダイヤル番号は「3011」であり、IP−FAX装置115bのIP−FAX装置IDは「ip02」であり、そのメールアドレスは「Ip-Fax2@abc.co.jp」であると仮定する(図3参照)。また、IP−FAX装置115bの各構成要素を、IP−FAX装置115aの各構成要素に付された符号のうち「a」を「b」に置き換えた符号で表すものとする。送信先特定装置114bの構成要素についても同様に、送信先特定装置114aの各構成要素に付された符号のうち「a」を「b」に置き換えた符号で表すものとする。
【0030】
まず、ユーザは、ファクシミリ機111aのスキャナに原稿をセットしてから、送信先特定装置114aへの接続特番「9」の後に「*」(アスタリスク)を入力し、続けて、送信先のファクシミリ機111bのファクシミリ機ID「101」を入力(ダイヤル)する。ファクシミリ機111aは、入力された接続特番「9」、「*」、ファクシミリ機ID「101」を表すDTMF信号を構内交換機113aに送信する(ステップS1)。構内交換機113aは、接続特番「9」を受信すると、ファクシミリ機111aと送信先特定装置114aとの間で回線を接続し、「*」とファクシミリ機ID「101」を表すDTMF信号を送信先特定装置114aに送信する(ステップS2)。このDTMF信号は、送信先特定装置114aのNCU33a(第2のアナログ2線式インタフェース)によって受信される。送信先特定装置114aの着番特定回路35aは、受信した上記DTMF信号に基づいて、送信先のファクシミリ機のファクシミリ機IDが「101」であることを特定する(ステップS3)。
【0031】
次に、送信先特定装置114aの制御回路31aは、特定されたファクシミリ機ID「101」を、着番通知回路(送信先通知インタフェース)34a経由でIP−FAX装置115aへ送信(通知)する(ステップS4)。これと同時に、送信先特定装置114aの制御回路31aは、NCU(第1のアナログ2線式インタフェース)32aを用いてIP−FAX装置115aを発呼する(ステップS5)。IP−FAX装置115aがこれに応答すると(ステップS6)、IP−FAX装置115aとファクシミリ機111aとの間の回線が接続される。この回線が接続されると、ファクシミリ機111aは、IP−FAX装置115aに対して、原稿をスキャンして得られたファクシミリデータを送信する(ステップS7)。
【0032】
IP−FAX装置115aのCPU21aは、ファクシミリデータを受信すると、図3に示したルーティングテーブル201を参照して、送信先のファクシミリ機に接続されたIP−FAX装置を宛先とした電子メールを生成する(ステップS8)。具体的には、IP−FAX装置115aのCPU21aは、ルーティングテーブル201を参照して、ステップS4において受信したファクシミリ機ID「101」に対応するダイヤル番号「3011」及びメールアドレス「ip-fax2@abc.co.jp」を取得する。そして、IP−FAX装置115aのCPU21aは、メールアドレス「ip-fax2@abc.co.jp」を電子メールの「TO」フィールドに書き込み、ダイヤル番号「3011」を暗号化して電子メールの「Subject」フィールドに書き込む。さらに、IP−FAX装置115aのCPU21aは、ステップS7において受信したファクシミリデータをTIFF(Tagged Image File Format)形式の画像ファイルに変換し、その画像ファイルをMIME(Multiple Internet Mail Extensions)形式で上記電子メールに添付する。
【0033】
次いで、IP−FAX装置115aのCPU21aは、通信部25aを用いて、上記のようにして生成した電子メールをインターネット10に送信する(ステップS9)。この電子メールはメールサーバ装置11を介してIP−FAX装置115bによって受信される。IP−FAX装置115bのCPU21bは、受信した電子メールの「Subject」フィールドに書き込まれている情報を復号してダイヤル番号「3011」を得る(ステップS10)。そして、IP−FAX装置115bのCPU21bは、第1のアナログ2線式インタフェース241bを用いて、ダイヤル番号「3011」でダイヤルし、DTMF信号を送信先特定装置114bに送信する(ステップS11)。このDTMF信号は、送信先特定装置114bのNCU32bによって受信される。
【0034】
送信先特定装置114bの着番特定回路37bは、受信したDTMF信号に基づいて、送信先のファクシミリ機のダイヤル番号が「3011」であることを特定する(ステップS12)。次いで、送信先特定装置114bのダイヤルイン情報送出回路36bは、ダイヤル番号「3011」を示すダイヤルイン情報を生成した後、NCU33b経由で構内交換機113bを発呼し、そのダイヤルイン情報を構内交換機113bへ送出する(ステップS13)。構内交換機113bは、ステップS13にて取得したダイヤルイン情報に基づいてファクシミリ機111bへの回線を接続する(ステップS14)。これによって、IP−FAX装置115bとファクシミリ機111bと間の回線が接続されるので、IP−FAX装置115bは接続された回線を利用して、電子メールに添付されていたファクシミリデータをファクシミリ機111bに送信する。(ステップS15)。ファクシミリ機111bはファクシミリデータを受信すると、このデータが示す画像を記録紙に出力する。
【0035】
以上のように、既存のファクシミリ機と構内交換機に対し送信先特定装置とIP−FAX装置とを加えてファクシミリシステムを構築することにより、ファクシミリ機から別のファクシミリ機へインターネットを経由してファクシミリ送信を行うことが可能となる。また、電子メールの送受信が可能な既存のインターネットの通信環境をそのまま利用しているので、専用線IP網やIP電話網を新たに導入する必要がない。
【0036】
C:変形例
本発明は上述した実施形態に限定されず、次のような変形が可能である。
上記実施形態ではファクシミリ通信方式としてG3方式を想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばG4方式を採用するものであってもよい。
実施形態では、1つのファクシミリシステムに複数のファクシミリ機が含まれることを想定したが、必ずしもこれに限らず、1つのファクシミリシステムに含まれるファクシミリ機は1台であってもよい。送信先特定装置から構内交換機に送信されるダイヤルイン情報は、構内交換機の配下に複数のファクシミリ機が存在する場合にのみ必要とされるので、ファクシミリ機を1台しか含まないようなファクシミリシステムがファクシミリデータの受信側になる場合には、送信先特定装置はダイヤルイン情報を生成する必要がない。
また、送信先特定装置とIP−FAX装置とはそれぞれ別体の装置である必要はなく、これらが一体の装置であってもよいし、送信先特定装置とIP−FAX装置とをそれぞれ複数の装置に分けて構成してもよい。また、IP−FAX装置は、実施形態で例示したようにパーソナルコンピュータに限らず、ゲートウェイ装置に組み込んだり、或いは、専用の装置であってもよい。
また、IP−FAX装置間の送受信方法は、実施形態で例示した電子メールプロトコルSMTP、IMAP4及びPOP3に限らず、インターネット上で使用可能な他のプロトコルであってもよい。また、ファクシミリデータを電子メールに添付する際のファイル形式はTIFF形式に限定されず、任意の圧縮方法で圧縮されたファイルであってもよいし、圧縮しなくてもよい。例えば、PDF(Portable Document Format)やBMP(Bit Map)などであってもよい。
また、実施形態では、IP−FAX装置のメールアドレスを電子メールの「TO」フィールドに書き込み、ダイヤル番号を暗号化して電子メールの「Subject」フィールドに書き込むようにしていたが、このような実施態様に限定されるわけではなく、書き込み先のフィールを例えばメール本文にするなどのように任意に選択し得るし、ダイヤル番号の暗号化も必須ではない。
また、実施形態では、ファクシミリを送信する際に、ユーザが送信先特定装置への接続特番「9」の後に「*」及びファクシミリ機IDを入力するようになっていたが、必ずしもこのような入力操作である必要はない。例えば、接続特番は構内交換機により桁数や使用する数字が異なるため、構内交換機の仕様に従って適宜定めればよい。また、接続特番の後に入力した「*」は、「*」の後に続く番号がファクシミリ機IDであることを分かりやすくするための種別であったが、この「*」に代えて他の種別(例えば「#」等)を用いてもよいし、或いは、このような「*」を入力しなくてもよい。
また、IP−FAX装置が動作するためのコンピュータプログラムは、CPUによって読み取り可能な磁気記録媒体、光記録媒体あるいはROMなどの記録媒体に記録して提供することができる。また、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態におけるIP−FAX装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態におけるIP−FAX装置が記憶しているルーティングテーブルの内容の一例を表す図である。
【図4】同実施形態における送信先特定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】同実施形態におけるシステム全体の動作例を示すシーケンス図である
【図6】従来のシステム構成を示す図である。
【図7】従来のシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
10・・・インターネット、100a,100b,100c,100d・・・ファクシミリシステム、111a,112a,111b,112b・・・ファクシミリ機、113a,113b・・・構内交換機、113a,114a,114b・・・送信先特定装置、115a,115b・・・IP−FAX装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のファクシミリ機と、
前記1又は複数のファクシミリ機に接続され、各々のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号に基づいて回線交換を行う構内交換機と、
前記構内交換機から供給されてくる信号に基づいて、ファクシミリデータの送信先であるファクシミリ機を特定する送信先特定装置と、
前記構内交換機を介して前記ファクシミリ機に接続されるとともに、インターネットに接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置とを備え、
前記インターネットプロトコルファクシミリ装置は、
前記ファクシミリ機から前記構内交換機を介して供給されてくるファクシミリデータを受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段によって受信されたファクシミリデータと、前記送信先特定装置によって特定されたファクシミリ機のダイヤル番号とを含み、当該ファクシミリ機に接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置を宛先とした電子メールを生成するメール生成手段と、
前記メール生成手段によって生成された電子メールをインターネットに送信するメール送信手段と
を備えるファクシミリシステム。
【請求項2】
前記インターネットプロトコルファクシミリ装置は、
インターネット経由で電子メールを受信するメール受信手段と、
前記メール受信手段によって受信された電子メールからダイヤル番号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出されたダイヤル番号を前記構内交換機に通知する通知手段と、
前記構内交換機によって、前記ダイヤル番号が割り当てられたファクシミリ機との間で回線が接続されると、前記メール受信手段によって受信された電子メールに含まれていたファクシミリデータを、接続された回線経由で前記ファクシミリ機へ送信するデータ送信手段と
を備える請求項1記載のファクシミリシステム。
【請求項3】
前記送信先特定装置は、前記構内交換機から供給されてくるDTMF(Dial Tone Multi Frequency)信号に基づいて、ファクシミリデータの送信先であるファクシミリ機のファクシミリ機IDを特定し、
前記インターネットプロトコルファクシミリ装置は、前記送信先特定装置によって特定された前記ファクシミリ機IDをダイヤル番号に変換する変換手段を備え、
前記メール生成手段は、前記変換手段によって得られたダイヤル番号を含む前記電子メールを生成する請求項1記載のファクシミリシステム。
【請求項4】
ファクシミリ機から構内交換機を介して供給されてくるファクシミリデータを受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段によって受信されたファクシミリデータと、当該ファクシミリデータの送信先のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号とを含み、当該ファクシミリ機に接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置を宛先とした電子メールを生成するメール生成手段と、
前記メール生成手段によって生成された電子メールをインターネットに送信するメール送信手段と
を備えるインターネットプロトコルファクシミリ装置。
【請求項5】
インターネット経由で電子メールを受信するメール受信手段と、
前記メール受信手段によって受信された電子メールからダイヤル番号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出されたダイヤル番号を前記構内交換機に通知する通知手段と、
前記構内交換機によって前記ダイヤル番号が割り当てられたファクシミリ機との間で回線が接続されると、前記メール受信手段によって受信された電子メールに含まれていたファクシミリデータを、接続された回線経由で前記ファクシミリ機へ送信するデータ送信手段と
を備える請求項4記載のインターネットプロトコルファクシミリ装置。
【請求項6】
コンピュータに、
ファクシミリ機から構内交換機を介して供給されてくるファクシミリデータを受信するデータ受信機能と、
前記データ受信機能によって受信されたファクシミリデータと、当該ファクシミリデータの送信先のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号とを含み、当該ファクシミリ機に接続されたインターネットプロトコルファクシミリ装置を宛先とした電子メールを生成するメール生成機能と、
前記メール生成機能によって生成された電子メールをインターネットに送信するメール送信機能と
を実現させるためのプログラム。
【請求項7】
前記コンピュータに、
インターネット経由で電子メールを受信するメール受信機能と、
前記メール受信機能によって受信された電子メールからダイヤル番号を抽出する抽出機能と、
前記抽出機能によって抽出されたダイヤル番号を前記構内交換機に通知する通知機能と、
前記構内交換機によって前記ダイヤル番号が割り当てられたファクシミリ機との間で回線が接続されると、前記メール受信機能によって受信された電子メールに含まれていたファクシミリデータを、接続された回線経由で前記ファクシミリ機へ送信するデータ送信機能と
を実現させるための請求項6記載のプログラム。
【請求項8】
インターネットプロトコルファクシミリ装置が接続される第1のインタフェースと、
構内交換機が接続される第2のインタフェースと、
前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に接続され、ファクシミリデータの送信先を前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に通知するための送信先通知インタフェースと、
前記第2のインタフェースを介して受信したDTMF信号に基づいて、送信先のファクシミリ機に割り当てられたファクシミリ機IDを特定する特定手段と、
特定されたファクシミリ機IDを前記送信先通知インタフェース経由で前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に送信する送信先通知手段と、
前記第2のインタフェースを介して受信したファクシミリデータを、前記第1のインタフェースを介して前記インターネットプロトコルファクシミリ装置に送信するデータ送信手段と
を備えた送信先特定装置。
【請求項9】
前記第1のインタフェースを介して受信したDTMF信号に基づいて送信先のファクシミリ機に割り当てられたダイヤル番号を特定する特定手段と、
特定されたダイヤル番号を前記第2のインタフェースを介して前記構内交換機に通知する通知手段と、
前記第1のインタフェースを介して受信したファクシミリデータを前記構内交換機に送信する送信手段と
を備えた請求項8記載の送信先特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−5677(P2006−5677A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180178(P2004−180178)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(597085992)株式会社 インターコム (4)
【Fターム(参考)】