説明

ファン装置

【課題】 複数の電動ファンのうち、ある電動ファンが故障、寿命などにより停止した場合であっても、ファン装置を停止することなく継続使用することができるファン装置を提供する。
【解決手段】 複数の電動ファン8が並列に配置されたファン装置において、電動ファン個々に設けられ、ファン装置駆動中に各電動ファン8の駆動状態を検知するセンサーSと、このセンサーSにより検知された送風できない電動ファン8bの空気流通路を閉鎖する閉鎖手段1bとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機の冷却装置などに使用される、複数の電動ファンが並列に配置されたファン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、ファンモータとファンとを有する複数個の電動ファンが並列に配置されたファン装置が、回転電機の冷却装置に適用された従来例を示すものである。
図9において、回転電機は、周知のとおり、フレーム3と、このフレーム3の外周部に放射状に設けられた複数のフレームフィン3Aと、フレーム3の内周部に設けられたステータコア5と、このステータコア5に設けられたステータコイル6と、ローター10と、このローター10を、軸受け4を介して回転自在に支承するブラケット7と、フレーム3の反負荷側開口を覆うカバー9と、フレームフィン3Aの外周部に設けられ、フレーム3との間に空気流通路を形成するフレームカバー2とから構成されている。
またファンカバー11内に、整流板1を有する4個の同一容量の電動ファン8が図2に示すように並列配置されることにより構成されたファン装置が、前記回転電機の反負荷側に配置されている。
【0003】
図9に示すものにおいて、回転電機を動作させるためにステータコイル6に通電すると、ステータコイル6およびステータコア5、ローター10各部が発熱し各部の温度が上昇する。この温度上昇を抑制するためにフレーム3にフレームフィン3Aが取り付けられており、電動ファン8が動作することにより、空気流れ0が生じ、フレームフィン3Aに風が当たることによって、回転電機外部へ熱が放熱される。フレームカバー2、電動ファンカバー11、整流板1で風路が形成されており、フレームフィン2の放熱能力を向上させている。
【0004】
また他の従来技術として、複数のファンが使用される冷却システムにおいて、複数のファン各々の異常を検出し、異常が検出されたファンを交換するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開昭61−116094号公報(第593−597頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図9に示すものにおいて、ファン装置の駆動中に、複数ある電動ファン8のうち、ある電動ファン8bが故障あるいは寿命により停止した場合、図10に示すようにフレームフィン3Aを通る流路の圧力損失よりも、停止した電動ファン8bを入口とした流路の圧力損失の方が小さくなるため、動作している電動ファン8aの駆動によって空気の流れ0は停止した電動ファン8bを入口とした流路に変化し、フレームフィン3Aへ風が流れなくなり放熱能力が激減する。
このため、故障した電動ファン8bを修理あるいは交換するまで、機器を停止しなければならない課題があった。
また、特開昭61−116094号公報に開示のものも、同様の課題があった。
【0007】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたもので、複数の電動ファンのうち、ある電動ファンが故障、寿命などにより停止した場合であっても、ファン装置を停止することなく継続使用することができるファン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のファン装置は、複数の電動ファンが並列に配置されたファン装置において、前記電動ファンの各空気流通路に設けられ、送風できない電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段を備えたものである。
【0009】
またこの発明のファン装置は、前記電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段が、前記電動ファンの整流板を兼用するものである。
【0010】
またこの発明のファン装置は、前記電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段が、前記電動ファンの送風量を可変制御するものである。
【0011】
またこの発明のファン装置は、複数の電動ファンが並列に配置されたファン装置において、前記電動ファン個々に設けられ、ファン装置駆動中に各電動ファンの駆動状態を検知するセンサーと、このセンサーにより検知された送風できない電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段とを備えてなるものである。
【0012】
またこの発明のファン装置は、前記電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段が、前記センサーの出力に基づいて、各電動ファンの送風量を可変制御するものである。
【0013】
またこの発明のファン装置は、前記センサーが、1対のチップ抵抗器が所定の間隙を介して対向配置され、且つ前記チップ抵抗器の反間隙側に熱電対が夫々設けられているものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複数の電動ファンのうち、ある電動ファンが故障、寿命などにより停止した場合であっても、ファン装置を停止することなく継続使用でき、ひいてはこのファン装置を使用した機器を停止させることなく継続使用できる。
【0015】
またこの発明によれば、電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段が、整流板を兼用しているため、電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段を設けたとしても、ファン装置が大型化せず、またコストもさほど上がらない。
【0016】
またこの発明によれば、電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段が、電動ファンの送風量を可変制御するので、最適な送風量を得ることができる。
【0017】
またこの発明によれば、電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段を自動で動作させているため、ファン装置駆動中にある電動ファンが停止したとしても、ファン装置としての機能を自動的に維持できる。
【0018】
またこの発明によれば、電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段が、センサーの出力に基づいて、各電動ファンの送風量を可変制御するので、自動的に最適な送風量を得ることができる。
【0019】
またこの発明によれば、センサーとして、1対のチップ抵抗器が所定の間隙を介して対向配置され、且つ前記チップ抵抗器の反間隙側に熱電対が夫々設けられているものを用いたので、風向き及び風量を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例1に係る回転電機の冷却装置を示す断面図である。
【図2】この発明の実施例1に係る冷却装置を電動ファン吐出側から俯瞰した図である。
【図3】この発明の実施例1に係る電動ファンが通常動作しているときの閉鎖手段の状態を示す図である。
【図4】この発明の実施例1に係る閉鎖手段の詳細構成図である。
【図5】この発明の実施例1に係る電動ファンが異常停止したときの閉鎖手段の状態を示す図である。
【図6】この発明の実施例2に係る閉鎖手段の動作を説明するための図である。
【図7】この発明の実施例2に係る閉鎖手段の詳細構成図である。
【図8】この発明の実施例3に係るサンサーの説明図である。
【図9】従来の回転電機の冷却装置を示す断面図である。
【図10】従来の課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例1.
以下この発明の実施例1を、図1〜図5を用いて説明する。なお、この実施例1は、図1及び図2に示すように、複数の電動ファンが並列に配置されたファン装置が、回転電機の冷却装置に適用された例を示すものである。
即ち、この実施例1のものは、各電動ファン8の各空気流通路に、ファン装置駆動中に各電動ファン8の駆動状態を検知するセンサーSが、各電動ファン8の空気流通路内に夫々設置されている。なお、このセンサーは、ファン装置駆動中に各電動ファン8の駆動状態、即ち、電動ファン8が故障あるいは寿命により停止したか否かの状態、送風力が低下したか否かの状態などを検知するものであればどのようなセンサーでもよく、例えば公知の流速センサー、風量サンサー、本願の背景技術の欄で説明した特開昭61−116094号公報に記載の回転数センサーなどを使用することができる。
【0022】
また、各電動ファン8の各空気流通路の流入側に、前記センサーSによりある電動ファン8の停止が検知されたとき、停止した電動ファン8の空気流通路を閉鎖する閉鎖手段1が夫々設置されている。なおこの閉鎖手段1は整流板を兼用しており、1aは電動ファン8が正常動作していて整流板の役目をしている状態を示し、また1bは停止した電動ファン8の空気流通路を閉鎖している状態を示す。
また、8aは正常な電動ファンを、8bは異常により停止し送風できなくなった電動ファンを示す。
【0023】
この閉鎖手段1は、図3〜図5にその詳細を示すように、互いに重なり合い、開いているとき(電動ファン8が正常なとき)、各電動ファン8の各空気流通路径を最適なものとする(整流板の役目をなす)とともに、ある電動ファン8の停止時に、停止した電動ファン8の空気流通路を閉鎖する複数のプレート20と、これらのプレート20と夫々一体化され、各プレート20を稼動させる複数のピニオン21(回転軸は回転するが軸移動はしない)と、これらのピニオン21と噛み合うギアを内周部に有し、回転自在に設けられた外輪22と、この外輪22と電動ファン8の周辺の基体部との間に張架された引っ張りバネ23と、外輪22に設けられた穴と電動ファン8の周辺の基体部に形成された穴とに挿入され、外輪22の回転を停止させる留めピン24とで構成されている。
【0024】
なお、留めピン24は、各電動ファン8が正常に動作しているときは、図3に示すように、複数のプレート20が整流板の役目をなすよう(電動ファン8の空気流通路径が最適な大きさになるよう)、複数のプレート20を引っ張りバネ23の引っ張り力に抗して、開かせる役目をなしている。
また、留めピン24は、センサーSがある電動ファン8の停止を検知したとき、外輪22に設けられた穴と電動ファン8の周辺の固定部に形成された穴とから引抜かれる引抜き装置に結合している。なおこの引抜き装置は、センサーSの検知信号にて動作するもので、構成としては周知の引抜き装置を使用できる。
以上のようにこの実施例1に係る回転電機の冷却装置は構成されており、他の構成は図9に示すものと同様である。
【0025】
そしてこの回転電機の冷却装置は、ファン装置駆動中に所定の電動ファン8が停止したことをセンサーSが検知すると、前記引抜き装置が駆動し、停止した電動ファン8bの留めピン24が、引抜き装置にて、外輪22に設けられた穴と電動ファン8の周辺の固定部に形成された穴とから引き抜かれる。
この結果、引っ張りバネ23が縮んで外輪22が回転し、外輪22のギアと噛み合っているピニオン21が回転することでプレート20が起伏し、図5に示すように、停止した電動ファン8bの閉鎖手段1bの内径を完全に閉じることにより、停止した電動ファン8bの空気流通路を閉鎖する。
このため、停止した電動ファン8bの閉鎖手段1bの内径が閉じられることにより、停止した電動ファン8bからの逆流(図10に示す逆流)が防止され、図1に示すように、正常動作している残り3個の電動ファン1aの作用により、4個の電動ファン8が正常に動作しているときと同様に、空気の流れ0が生じフレームフィン3Aに冷却風が当たり、回転電機の放熱能力が回復する。
従って、ある電動ファン8bが停止したとしても、ファン装置を継続動作でき、ひいてはこのファン装置を使用した回転電機を、電動ファン8bを修理あるいは交換するまで、回転電機の負荷を減じて継続動作させることができる。
【0026】
以上説明したように、この実施例1によれば、複数の電動ファンのうち、ある電動ファンが故障あるいは寿命により停止した場合であっても、ファン装置を停止することなく継続使用でき、ひいてはこのファン装置を使用した機器を停止させることなく継続使用できる。
また、電動ファンの空気流通路を閉鎖する閉鎖手段が、整流板を兼用しているため、電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段を設けたとしても、ファン装置が大型化せず、またコストもさほど上がらない。
また、電動ファンの空気流通路を閉鎖する閉鎖手段を自動で動作させているため、ファン装置駆動中にある電動ファンが停止したとしても、ファン装置としての機能を自動的に維持できる。
【0027】
なお、この実施例1においては、センサーSによりある電動ファン8の停止が検知されたとき、電動ファン8の空気流通路を閉鎖する手段として、図3〜図5に示すような整流板を兼用するものについて説明したが、センサーSにより電動ファン8の停止が検知されたとき、電動ファン8の空気流通路を閉鎖すれば初期の目的は達成するので、この手段として図3〜図5に示すような整流板を兼用する構成に限定されるものではない。
また、この実施例1においては、センサーSによりある電動ファン8の停止が検知されたとき、電動ファン8の空気流通路を閉鎖する閉鎖手段1を自動で動作させるものについて説明したが、センサーSが電動ファン8の停止を検知したとき警報を出すようにし、この警報に基づいて人がピン24を引抜き、電動ファン8の空気流通路を閉鎖する閉鎖手段1を動作させるように構成してもよい。
また、この実施例1においては、ファン装置を回転電機の冷却装置に適用したものについて説明したが、それ以外の機器にも適用できる。
【0028】
実施の形態2.
また、上記実施例1では、ファン装置が正常なときは一定の空気流通径を保ち、ある電動ファンが停止したとき、停止した電動ファンの空気流通路を閉鎖する閉鎖手段の構成について述べたが、閉鎖手段1を、図7に示すように、バネ23、留めピン24を廃止する代りに、外輪22の外周部にもギアを設け、このギアにウォームギヤ31を噛み合わせる構成としてもよい。なお、他の構成は実施例1のものと同様である。
閉鎖手段1をこのように構成すれば、ウォームギヤ31を回転させるだけで、図6に示すように、閉鎖手段1の内径(空気流通径)を自由に変更でき、風量が最大となる閉鎖手段1の内径を容易にセッティングすることができるようになる。
また、センサーSとして風量・風向サンサーを用い、且つウォームギヤ31がこのセンサーの信号にて回転制御されるモータにて駆動される構成とすれば、閉鎖手段1の内径を、風量が最大となる径に自動的に常時設定することができるようになる。
【0029】
実施例3.
また、実施例1、2に使用するセンサーSとして、図8に示すような風向および風量を検出できるセンサーを用いることができる。
このセンサーSは、1対のチップ抵抗器41を所定間隙を介して対向配置し、且つこのチップ抵抗器41の反間隙側に熱電対42を夫々設けたもので、空気流通路中に、一方のチップ抵抗器41及び熱電対42が風上に、また他方のチップ抵抗器41及び熱電対42が風下となるように配置されて使用される。
この1対のチップ抵抗器41に同じ電流を印加しチップ抵抗器41の発熱量を一定にしておくと、チップ抵抗器41の温度は上昇する。無風の場合、チップ抵抗器41に取り付けられている熱電対42の指示値はそれぞれ同じ温度を示すが、チップ抵抗器41に風4aが当たると、風下のチップ抵抗器41の温度は風上のチップ抵抗器42温度よりも上昇する。従って熱電対42の温度指示値の高いほうのチップ抵抗器が風下に位置していることがわかる。なお、サーミスタ等を利用して、直接空気流の温度を測定して風向を測定するセンサーも考えられるが、この場合空気流の温度が低い場合には検出の誤差範囲が大きく、風向を検出するためには温度の高い空気流である必要がある。
ところが、図8で示すセンサーSはチップ抵抗器41で昇温しているため、風向による温度差が生じやすく感度良く風向を測定することができる。
また、このセンサーに当たる風速の変化によりチップ抵抗器41の温度が変化するため、風速センサーとしても利用できる。このため整流板の内径による面積と風速を掛け算すると、閉鎖手段1を通過する風量を高精度に測定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明に係るファン装置は、回転電機の冷却装置などの複数の電動ファンが並列に配置される冷却装置に使用されるのに適している。
【符号の説明】
【0031】
1 閉鎖手段、8 電動ファン、20 プレート、21 ピニオン、22 外輪、23 バネ、
24 留めピン、31 ウォームギヤ、41 チップ抵抗器、42 熱電対。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電動ファンが並列に配置されたファン装置において、前記電動ファンの各空気流通路に設けられ、送風できない電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段を備えてなるファン装置。
【請求項2】
前記電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段は、前記電動ファンの整流板を兼用するものであることを特徴とする請求項1に記載のファン装置。
【請求項3】
前記電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段は、前記電動ファンの送風量を可変制御するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のファン装置。
【請求項4】
複数の電動ファンが並列に配置されたファン装置において、前記電動ファン個々に設けられ、ファン装置駆動中に各電動ファンの駆動状態を検知するセンサーと、このセンサーにより検知された送風できない電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段とを備えてなるファン装置。
【請求項5】
前記電動ファンの空気流通路を閉鎖する手段は、前記センサーの出力に基づいて、各電動ファンの送風量を可変制御するものであることを特徴とする請求項4に記載のファン装置。
【請求項6】
前記センサーは、1対のチップ抵抗器が所定の間隙を介して対向配置され、且つ前記チップ抵抗器の反間隙側に熱電対が夫々設けられているものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のファン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−180857(P2010−180857A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27397(P2009−27397)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】