説明

ファン騒音低減装置

【課題】ターボファンエンジンのダクトを伝播する音響波をより効果的に打ち消す。
【解決手段】ターボファンエンジンS1のダクト11内に配置されると共に電圧が印加されることによって音を発するプラズマアクチュエータ22と、ダクト11内の音響波と逆位相にてプラズマアクチュエータ22に音を発させる制御手段24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン騒音低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボファンエンジンでは、ファン動翼の回転及び静翼の存在によって生じる音が繰り返し発生することによって音響波が生じ、この音響波がダクト内を伝播して外部に漏れることに起因する騒音が発生することが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、ターボファンエンジンのダクトにスピーカを設置することによって、音響波を打ち消す方法が提案されている。
この方法では、スピーカから音響波と逆位相の音響波を発生させることによって、これらの音響波同士を打ち消し合わせ、これによって外部に漏出する音響波を低減させて騒音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ulf Tapken and Roland Bauers, German Aerospace Center (DLR), Institute of Propulsion Technology, Berlin, Germany 他2名、「 Turbomachinery Exhaust Noise Radiation Experiments - Part 2: In-Duct and Far-Field Mode Analysis 」, 14th AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference (29th AIAA Aeroacoustics Conference), 5 - 7 May 2008, Vancouver, British Columbia Canada, AIAA 2008-2858
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5478199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ターボファンエンジンにスピーカを設置するとなると、当然ながらスピーカを設置するだけターボファンエンジンの重量増加及び大型化に繋がる。
一方、特許文献2には、小型のスピーカやピエゾデバイスを用いることによって、同様に音響波を打ち消す方法が提案されているが、これらの小型のスピーカやピエゾデバイスでは、出力される音量が小さく、十分に音響波を打ち消すことができない。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ターボファンエンジンのダクトを伝播する音響波をより効果的に打ち消すことが可能なファン騒音低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、ファン騒音低減装置であって、ターボファンエンジンのダクト内に配置されると共に電圧が印加されることによって音を発するプラズマアクチュエータと、前記ダクト内の音響波と逆位相にて前記プラズマアクチュエータに音を発させる制御手段とを備えるという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記プラズマアクチュエータがファン動翼の上流側と下流側との両方に設置されているという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、前記プラズマアクチュエータが前記ダクトの周方向に複数設置されているという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、前記ダクト内の流速を計測する流速計測器と、ファン動翼の回転数を計測する回転数計測器とを備え、前記制御手段が、ダクト内の流速とファン動翼の回転数に関連付けて音響波の波形を予め記憶し、前記流速計測器での計測結果及び前記回転数計測器での計測結果に基づいて前記音響波の波形を取得すると共に取得した波形に基づいて前記プラズマアクチュエータを駆動するという構成を採用する。なお、ここでいう波形とは、振幅および周期を指す。
【0013】
第5の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、前記ファン動翼と前記プラズマアクチュエータとの間に配置される音響波計測器を備え、前記制御手段が、前記音響波計測器の計測結果に基づいて前記音響波の波形を取得すると共に取得した波形に基づいて前記プラズマアクチュエータを駆動するという構成を採用する。
【0014】
第6の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、前記ファン動翼から見て前記プラズマアクチュエータの外側に配置される音響波計測器を備え、前記制御手段が、前記音響波計測器の計測結果に基づいて前記音響波の波形を取得すると共に取得した波形に基づいて前記プラズマアクチュエータを駆動するという構成を採用する。
【0015】
第7の発明は、上記第5または第6の発明において、前記音響波計測器が前記ダクトの周方向に複数設置されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ターボファンエンジンのダクト内に配置されるプラズマアクチュエータからダクトを伝播する音響波と逆位相で音を発することによって音響波を打ち消す。
また、このようなプラズマアクチュエータは、駆動されることによって体積力を発生して空気流れを形成する。このため、ダクト内のインピーダンスを変化させ、吸音材と同じようにプラズマアクチュエータを機能させることができる。
つまり、本発明によれば、プラズマアクチュエータが発する音と空気流れの両方で音響波を打ち消すことができる。
したがって、本発明によれば、ターボファンエンジンのダクトを伝播する音響波をより効果的に打ち消すことができ、小型ながら大きな消音効果を発揮することができる。このため、ターボファンエンジンの重量化及び大型化を招くことなく、騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態におけるファン騒音低減装置が設置されるターボファンエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるファン騒音低減装置が備えるプラズマアクチュエータ22の模式図である。
【図3】図1の紙面と直交する直交面での断面図であり、(a)が図1のA−A線断面図であり、(b)が図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるファン騒音低減装置がターボファンエンジンに設置された様子を模式的に示す概略断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるファン騒音低減装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るファン騒音低減装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のファン騒音低減装置20が設置されるターボファンエンジンS1の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、ターボファンエンジンS1は、アウターカウル1と、インナーカウル2と、ファン3と、低圧圧縮機4と、高圧圧縮機5と、燃焼器6と、高圧タービン7と、低圧タービン8と、シャフト9と、主ノズル10とを備えている。
【0021】
アウターカウル1は、ターボファンエンジンS1のなかで最も上流側に配置された円筒形部材であり、空気の流れ方向の上流端及び下流端が開口端とされ、上流端が空気取込口として機能するものである。
そして、アウターカウル1は、図1に示すように、その内部にインナーカウル2の上流側及びファン3を収容している。
【0022】
インナーカウル2は、アウターカウル1よりも小径の円筒形部材であり、アウターカウル1と同様に、空気の流れ方向の上流端及び下流端が開口端とされている。
このインナーカウル2は、ターボファンエンジンS1の主要部である低圧圧縮機4と、高圧圧縮機5と、燃焼器6と、高圧タービン7と、低圧タービン8と、シャフト9と、主ノズル10等を内部に収容している。
【0023】
そして、本実施形態においては、軸方向(図1の左右方向)においてインナーカウル2が存在しない領域ではアウターカウル1の内部空間が、軸方向においてインナーカウル2が存在する領域ではアウターカウル1とインナーカウル2で挟まれた空間が空気流の流れるダクト11として機能する。
【0024】
なお、インナーカウル2の内部は、アウターカウル1に取込まれた空気の一部及び燃焼器6で生成される高温ガスが通る流路(以下、コア流路と称する)とされている。
また、図1に示すように、アウターカウル1とインナーカウル2とは、空気の流れ方向から見て同心円状に配置されており、隙間を空けて配置されている。そして、アウターカウル1とインナーカウル2との隙間は、アウターカウル1内に取込まれた空気のうち、コア流路に流れこまない残部を外部に排出するバイパス流路とされている。
また、アウターカウル1及びインナーカウル2は、不図示のパイロンにより航空機の機体に取り付けられている。
【0025】
ファン3は、アウターカウル1内に流れ込む空気流を形成するものであり、シャフト9に固定される複数のファン動翼3aと、バイパス流路に配置される複数のファン静翼3bとを備えている。
なお、後に詳説するシャフト9は、空気の流れ方向から見て、半径方向に2つに分割されている。より詳細には、シャフト9は、芯部である中実の第1シャフト9aと、第1シャフト9aを囲って外側に配置される中空の第2シャフト9bとによって構成されている。
そして、ファン動翼3aは、シャフト9の第1シャフト9aに固定されている。
【0026】
低圧圧縮機4は、図1に示すように、高圧圧縮機5よりも上流側に配置されており、ファン3によってコア流路に送り込まれた空気を圧縮するものである。
この低圧圧縮機4は、シャフト9の第1シャフト9aに固定される動翼と、インナーカウル2の内壁に固定される静翼とを備えている。
なお、動翼4aは、環状に等間隔で複数配列されて1つの動翼列を構成している。また、静翼4bも環状に等間隔で複数配列されて1つの静翼列を構成している。そして、低圧圧縮機4では、空気の流れ方向において、静翼列から始まり、静翼列と動翼列とが交互に複数配置されている。
【0027】
高圧圧縮機5は、図1に示すように、低圧圧縮機4よりも下流側に配置されており、低圧圧縮機4から送り込まれた空気をさらに高圧に圧縮するものである。
この高圧圧縮機5は、シャフト9の第2シャフト9bに固定される動翼5aと、インナーカウル2の内壁に固定される静翼5bとを備えている。
なお、低圧圧縮機4と同様に、動翼5aは、環状に等間隔で複数配列されて1つの動翼列を構成している。また、静翼5bも環状に等間隔で複数配列されて1つの静翼列を構成している。そして、空気の流れ方向において、静翼列と動翼列とが交互に複数配置されている。
【0028】
燃焼器6は、高圧圧縮機5の下流側に配置されており、高圧圧縮機5から送り込まれる圧縮空気と、不図示のインジェクタから供給される燃料との混合気を燃焼することによって高温ガスを生成するものである。
【0029】
高圧タービン7は、燃焼器6の下流側に配置されており、燃焼器6から排出される高温ガスから回転動力を回収するものである。
この高圧タービン7は、シャフト9の第2シャフト9bに固定される複数のタービン動翼7aと、コア流路に固定される複数のタービン静翼7bとを備えており、タービン静翼7bに整流された高温ガスをタービン動翼7aで受けて第2シャフト9bを回転駆動する。
【0030】
低圧タービン8は、高圧タービン7の下流側に配置されており、高圧タービン7を通過した高温ガスからさらに回転動力を回収するものである。
この低圧タービン8は、シャフト9の第1シャフト9aに固定される複数のタービン動翼8aと、コア流路に固定される複数のタービン静翼8bとを備えており、タービン静翼8bによって整流された高温ガスをタービン動翼8aで受けて第1シャフト9aを回転駆動する。
【0031】
シャフト9は、空気の流れ方向に向いて配置される棒状部材であり、タービン(高圧タービン7及び低圧タービン8)にて回収された回転動力をファン3及び圧縮機(低圧圧縮機4及び高圧圧縮機5)に伝達するものである。
このシャフト9は、上述のように、半径方向に2つ分割されて、第1シャフト9aと、第2シャフト9bとによって構成されている。
そして、第1シャフト9aは、上流側に低圧圧縮機4の動翼4a及びファン3のファン動翼3aが取り付けられ、下流側に低圧タービン8のタービン動翼8aが取り付けられている。
また、第2シャフト9bは、上流側に高圧圧縮機5の動翼5aが取り付けられ、下流側に高圧タービン7のタービン動翼7aが取り付けられている。
【0032】
主ノズル10は、低圧タービン8のさらに下流側に設けられると共に、ターボファンエンジンS1の後方に向けて低圧タービン8を通過した高温ガスを噴射するものである。
そして、この主ノズル10から高温ガスが噴射される際の反作用によってターボファンエンジンS1の推力が得られる。
【0033】
このような構成を有するターボファンエンジンS1においては、定常状態では、ファン3の駆動によってアウターカウル1内に空気が取込まれ、その一部がコア流路に流入する。
コア流路に流入した空気は、低圧圧縮機4及び高圧圧縮機5によって順次圧縮され、燃焼器6に供給される。
燃焼器6に供給された圧縮空気は、燃料と混合されて混合気とされる。そして、当該混合気が燃焼器6によって燃焼されることによって高温ガスが生成される。
燃焼器6において生成された高温ガスは、高圧タービン7及び低圧タービン8を通過して主ノズル10からターボファンエンジンS1の後方に噴射される。これによって推進力が得られる。
【0034】
なお、高温ガスが高圧タービン7を通過する際に、高圧タービン7によって回転動力が回収され、第2シャフト9bを介して高圧圧縮機5の動翼5aが回転駆動される。
また、高温ガスが低圧タービン8を通過する際に、低圧タービン8によって回転動力が回収され、第1シャフト9aを介して低圧圧縮機4の動翼4a及びファン3のファン動翼3aが回転駆動される。
【0035】
このようなターボファンエンジンS1では、ファン動翼3aが回転駆動されると、空気流が形成される。そして、この空気流れの中にファン動翼3aと静翼3bとが存在によって、音が繰り返し発せられて、音響波が発生する。
この音響波は、ファン動翼の回転数とダクト11内部の空気流速とに依存する周期にて繰り返される粗密波であり、ダクト11内を伝播して外部に漏出することによって騒音となる。
【0036】
そして、本実施形態のファン騒音低減装置20は、上述のような音響波を打ち消すことによって、ファンの駆動が原因となる騒音(ファン騒音)を低減させるものである。
ファン騒音低減装置20は、図1に示すように、流速計測器21と、プラズマアクチュエータ22と、回転数計測器23と、制御器24(制御手段)とを備えている。
【0037】
流速計測器21は、ダクト11内の空気流の流速を計測するものであり、プラズマアクチュエータ22及び回転数計測器23に対して空気流の上流側に配置されており、本実施形態においては、ダクト11内であって当該ダクト11の入口端近傍に設置されている。
【0038】
プラズマアクチュエータ22は、ダクト11内に配置されると共に電圧が印加されることによって音を発する。
図2は、プラズマアクチュエータ22の模式図である。この図に示すように、プラズマアクチュエータ22は、絶縁層30と、絶縁層30の上面に配置される第1電極板32と、絶縁層30の下面に配置される第2電極板31とを備えている。
そして、図2に示すように、第1電極板32と第2電極板31とが、絶縁層30の厚さ方向から見て変位して配置された構成を有している。
このようなプラズマアクチュエータ22の第1電極板32と第2電極板31とに制御器24の制御の下、電力を供給すると、第2電極板32の側方であって絶縁層30の厚さ方向から見て第2電極板31と重なる領域にプラズマが生成される。この際、プラズマアクチュエータ22から音が発せられる。また、プラズマが生成された領域の空気がイオン化されて体積力が発生し、矢印で示す空気流が形成される。
【0039】
そして、図1に示すように、プラズマアクチュエータ22は、ファン動翼3aの上流側と下流側との両方に配置されている。なお、以下の説明においては、ファン動翼3aの上流側に配置されるプラズマアクチュエータ22を上流側プラズマアクチュエータ22aと称し、ファン動翼3aの下流側に配置されるプラズマアクチュエータ22を下流側プラズマアクチュエータ22bと称する。
【0040】
図3は、図1の紙面と直交する直交面での断面図であり、(a)が図1のA−A線断面図であり、(b)が図1のB−B線断面図である。
これらの図に示すように、上流側プラズマアクチュエータ22a及び下流側プラズマアクチュエータ22bは、ダクト11の周方向に等間隔で複数設置されている。
【0041】
図1に戻り、回転数計測器23は、ファン動翼3aの回転数を計測し、この測定結果を出力するものであり、
そして、本実施形態において回転数計測器23は、図1に示すように、ファン動翼3aのチップ側に配置されている。
【0042】
制御器24は、本実施形態のファン騒音低減装置20の動作全体を制御するものであり、流速計測器21と、プラズマアクチュエータ22と、回転数計測器23とに電気的に接続されている。
そして、本実施形態において制御器24は、ダクト11内を伝播する音響波の波形を取得するためのデータベースを予め記憶している。
ダクト11内を伝播する音響波の波形は、ダクト11内の流速とファン動翼3aの回転数に依存して変化する。このため、制御器24に予め記憶されるデータベースは、ダクト11内の流速とファン動翼の回転数とに音響波の波形が関連付けられたものとなっている。
【0043】
そして、制御器24は、流速計測器21の計測結果と回転数計測器23の計測結果とをデータベースに照らし合わせてダクト11内を伝播する音響波の波形を取得し、取得した音響波の波形に基づいてプラズマアクチュエータ22を駆動する。
具体的には、制御器24は、ダクト11内を伝播する音響波と逆位相の音が発せられるようにプラズマアクチュエータ22を駆動する。
【0044】
なお、制御器24には、上記データベースに換えて、ダクト11内の流速とファン動翼の回転数とをパラメータとする音響波の波形の演算式を記憶させておくことも可能である。
この場合には、制御器24は、流速計測器21の計測結果と回転数計測器23の計測結果とを演算式に代入して音響波の波形を算出(取得)し、この算出した音響波の波形に基づいてプラズマアクチュエータ22を駆動する。
【0045】
このような構成を有する本実施形態のファン騒音低減装置20によれば、ターボファンエンジンS1のダクト11内に配置されるプラズマアクチュエータ22から、ダクト11を伝播する音響波と逆位相で音を発することによって音響波を打ち消す。
また、このようなプラズマアクチュエータ22は、駆動されることによって体積力を発生して空気流れを形成する。このため、ダクト11内のインピーダンスを変化させ、プラズマアクチュエータ22を吸音材と同じように機能させることができる。
つまり、本発明によれば、プラズマアクチュエータが発する音と空気流れの両方で音響波を打ち消すことができる。
したがって、本実施形態のファン騒音低減装置20によれば、ターボファンエンジンS1のダクト11を伝播する音響波をより効果的に打ち消すことができ、小型ながら大きな消音効果を発揮することができる。このため、ターボファンエンジンS1の重量化及び大型化を招くことなく、騒音の低減を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態のファン騒音低減装置20においては、プラズマアクチュエータ22がファン動翼3aの上流側と下流側との両方に設置されている。
このため、ファン動翼3aの上流側に伝播する音響波を上流側に配置されるプラズマアクチュエータ22である上流側プラズマアクチュエータ22aによって打ち消することができ、ファン動翼3aの下流側に伝播する音響波を下流側に配置されるプラズマアクチュエータ22である下流側プラズマアクチュエータ22bによって打ち消すことができる。
したがって、ダクト11の入口側及び出口側の両方から音響波が外部に漏出することを防止することができ、よりファン騒音を低減させることができる。
【0047】
また、本実施形態のファン騒音低減装置20においては、プラズマアクチュエータ22がダクト11の周方向に複数設置されている。
このため、ダクト11の全周に亘って音響波を打ち消すことができ、よりファン騒音を低減させることができる。
【0048】
また、本実施形態のファン騒音低減装置20においては、制御器24が予めデータベースを記憶し、流速計測器21での計測結果及び回転数計測器23の計測結果に基づいて音響波の波形を取得した。このため、簡素な構成で音響波の波形を求めることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図4は、本実施形態のファン騒音低減装置20AがターボファンエンジンS1に設置された様子を模式的に示す概略断面図である。
【0050】
この図に示すように、ファン騒音低減装置20は、ファン動翼3aとプラズマアクチュエータ22との間に配置される音響波計測器25を備え、制御器24は、音響波計測器25の計測結果に基づいて音響波の波形を取得すると共に取得した波形に基づいてプラズマアクチュエータ22を駆動する。
【0051】
より詳細には、音響波計測器25は、ファン動翼3aの上流側と下流側との両方に配置されている。
そして、制御器24は、ファン動翼3aの上流側に配置された音響波計測器25(以下、上流側音響波計測器25aと称する)によってファン動翼3aの上流側に伝播する音響波の波形を取得し、上流側プラズマアクチュエータ22aを駆動する。
また、制御器24は、ファン動翼3aの下流側に配置された音響波計測器25(以下、下流側音響波計測器25bと称する)によってファン動翼3aの下流側に伝播する音響波の波形を取得し、下流側プラズマアクチュエータ22bを駆動する。
【0052】
また、上流側音響波計測器25aは、上流側プラズマアクチュエータ22aと同様に、ダクト11の周方向に等間隔で複数配置されている。
また、下流側音響波計測器25bは、下流側プラズマアクチュエータ22bと同様に、ダクト11の周方向に等間隔で複数配置されている。
【0053】
このような構成を有する本実施形態のファン騒音低減装置20Aによれば音響波計測器25の計測結果から音響波の波形を取得し、これらの音響波の波形を用いてより正確な音響波の波形を取得する。
したがって、本実施形態のファン騒音低減装置20Aによれば、より確実に騒音の低減を図ることができる。
【0054】
なお、本実施形態のファン騒音低減装置20Aでは、音響波計測器25をプラズマアクチュエータ22よりも音響波の音源側に配置することで、いわゆるフィードフォワード制御にてプラズマアクチュエータ22を駆動する構成を採用した。
しかしながら、図5に示すように、音響波計測器25をファン動翼3aから見て前記プラズマアクチュエータ22の外側に配置しても良い。このような場合には、音響波計測器25で計測される音響波が小さくなるようにプラズマアクチュエータ22を制御するフィードバック制御を行う。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、プラズマアクチュエータ22をダクト11の周方向に等間隔で複数配置する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、プラズマアクチュエータ22をダクト11の周方向に不等間隔で複数配置するようにしても良い。また、ダクト11の周方向に配置されるプラズマアクチュエータ22を空気の流れ方向にずらして配置して良い。また、ダクト11の周方向に配置されるプラズマアクチュエータ22の数は任意である。
【符号の説明】
【0057】
20,20A……ファン騒音低減装置、21……流速計測器、22……プラズマアクチュエータ、23……回転計測器、24……制御器(制御手段)、25……音響波計測器、S1……ターボファンエンジン、11……ダクト、3a……ファン動翼、3b……ファン静翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボファンエンジンのダクト内に配置されると共に電圧が印加されることによって音を発するプラズマアクチュエータと、
前記ダクト内の音響波と逆位相にて前記プラズマアクチュエータに音を発させる制御手段と
を備えることを特徴とするファン騒音低減装置。
【請求項2】
前記プラズマアクチュエータがファン動翼の上流側と下流側との両方に設置されていることを特徴とする請求項1記載のファン騒音低減装置。
【請求項3】
前記プラズマアクチュエータが前記ダクトの周方向に複数設置されていることを特徴とする請求項1または2記載のファン騒音低減装置。
【請求項4】
前記ダクト内の流速を計測する流速計測器と、ファン動翼の回転数を計測する回転数計測器とを備え、
前記制御手段は、ダクト内の流速とファン動翼の回転数に関連付けて音響波の波形を予め記憶し、前記流速計測器での計測結果及び前記回転数計測器での計測結果に基づいて前記音響波の波形を取得すると共に取得した波形に基づいて前記プラズマアクチュエータを駆動する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のファン騒音低減装置。
【請求項5】
前記ファン動翼と前記プラズマアクチュエータとの間に配置される音響波計測器を備え、
前記制御手段は、前記音響波計測器の計測結果に基づいて前記音響波の波形を取得すると共に取得した波形に基づいて前記プラズマアクチュエータを駆動する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のファン騒音低減装置。
【請求項6】
前記ファン動翼から見て前記プラズマアクチュエータの外側に配置される音響波計測器を備え、
前記制御手段は、前記音響波計測器の計測結果に基づいて前記音響波の波形を取得すると共に取得した波形に基づいて前記プラズマアクチュエータを駆動する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のファン騒音低減装置。
【請求項7】
前記音響波計測器が前記ダクトの周方向に複数設置されていることを特徴とする請求項5または6記載のファン騒音低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−246808(P2012−246808A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118106(P2011−118106)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】