フィルタ及びその製造方法
【課題】濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる生産性に優れたフィルタを提供する。
【解決手段】本フィルタは、流入口2aを有する第1ケース構成部材(下ケース2)と、第1ケース構成部材との間で濾過室4を形成し、流出口3aを有する第2ケース構成部材(上ケース3)と、濾過室内に収容され、ひだ折部13及び平坦部14を有するひだ折状の濾材5と、を備えるフィルタであって、第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、濾材のひだ折部の側縁と接触する側壁11a,11bを有し、濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、第1及び第2ケース構成部材のそれぞれには、濾材の平坦部を挟持する挟持部17,18が設けられており、濾材の平坦部は、第2ケース構成部材の挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光L1により挟持部に溶着されており、濾材のひだ折部の側縁は、第2ケース構成部材の側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光L2により側壁に溶着されている。
【解決手段】本フィルタは、流入口2aを有する第1ケース構成部材(下ケース2)と、第1ケース構成部材との間で濾過室4を形成し、流出口3aを有する第2ケース構成部材(上ケース3)と、濾過室内に収容され、ひだ折部13及び平坦部14を有するひだ折状の濾材5と、を備えるフィルタであって、第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、濾材のひだ折部の側縁と接触する側壁11a,11bを有し、濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、第1及び第2ケース構成部材のそれぞれには、濾材の平坦部を挟持する挟持部17,18が設けられており、濾材の平坦部は、第2ケース構成部材の挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光L1により挟持部に溶着されており、濾材のひだ折部の側縁は、第2ケース構成部材の側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光L2により側壁に溶着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる生産性に優れたフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機用フィルタとして、ひだ折状の濾材を上下ケースの間で挟持させ、これら濾材及び上下ケースを振動溶着で一体化するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この特許文献1の技術では、振動溶着を採用しているため、濾材の外周縁に樹脂製の保持枠を一体的に設けると共に、この保持枠に振動溶着で生じるバリを捕捉するバリ溜を形成する必要があり、上下ケースの濾過室内で濾過できない部分が多くなり、またケースの外側方に突出するフランジ部(濾材の挟持部)の寸法が大きくなってしまう。その結果、濾過効率を高めつつフィルタの小型軽量化を図ることができない。
【0003】
そこで、上記問題を解決する技術として、樹脂保持枠を設けることなく濾材の外周縁を上下ケースに直接的に挟持させ、これら濾材及び上下ケースをレーザ溶着で一体化するフィルタが提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
【0004】
上記特許文献2及び3には、平板状の濾材の外周縁を上下ケースに挟持させ、これら濾材及び上下ケースをレーザ溶着で一体化するフィルタが開示されている。また、上記特許文献4及び5には、ひだ折状の濾材のひだ折部の側縁を上下ケースのそれぞれに設けたくし歯状部の間で挟持させると共に、濾材の長尺方向の両端の平坦部を上下ケースのそれぞれに設けた挟持部で挟持させ、これら濾材及び上下ケースをレーザ溶着で一体化するフィルタが開示されている。
【0005】
しかし、上記特許文献2及び3の技術では、平板状の濾材を採用しているので、濾材の濾過面積が小さく濾過効率が悪い。また、上記特許文献4及び5の技術では、レーザ溶着の前工程として上下ケースの各くし歯状部の間に濾材のひだ折部の側縁を挟持させているので、その挟持作業が煩雑であり生産性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−273116号公報
【特許文献2】特開2003−311838号公報
【特許文献3】特開2006−231875号公報
【特許文献4】特開2007−144287号公報
【特許文献5】特開2007−313406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる生産性に優れたフィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.流入口を有する第1ケース構成部材と、
前記第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する第2ケース構成部材と、
前記濾過室内に収容され、ひだ折部及び該ひだ折部のひだ折方向の両端に連なる平坦部を有するひだ折状の濾材と、を備えるフィルタであって、
前記第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、前記濾材の前記ひだ折部の側縁と接触する側壁を有し、前記濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれには、前記濾材の前記平坦部を挟持する挟持部が設けられており、
前記濾材の前記平坦部は、前記第2ケース構成部材の前記挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光(L1)により該挟持部に溶着されており、前記濾材の前記ひだ折部の側縁は、前記第2ケース構成部材の前記側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光(L2)により該側壁に溶着されていることを特徴とするフィルタ。
2.前記側壁の内壁面には、前記濾材の前記ひだ折部の側縁が係止する係止部が設けられている上記1.記載のフィルタ。
3.前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の前記挟持部には、前記濾材の前記平坦部に係止する突起が設けられている上記1.又は2.に記載のフィルタ。
4.自動変速機用である上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のフィルタ。
5.上記1.乃至4.のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法であって、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材の前記挟持部に前記濾材の前記平坦部を挟持させた状態で、前記第2ケース構成部材の該挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光を照射する第1工程と、
前記第2ケース構成部材の前記側壁に前記濾材の前記ひだ折部の側縁を接触させた状態で、前記第2ケース構成部材の該側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光を照射する第2工程と、を備えることを特徴とするフィルタの製造方法。
6.前記第2工程では、前記レーザ光を前記濾材の前記ひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動させつつ照射する上記5.記載のフィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルタによると、濾材の平坦部が、第2ケース構成部材の挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光により挟持部に溶着されており、濾材のひだ折部の側縁が、第2ケース構成部材の側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光により側壁に溶着されている。このように、ひだ折状の濾材の平坦部及びひだ折部の側縁を第2ケース構成部材に直接的に溶着すると共に、濾材のひだ折部の側縁を挟持する部位を設けていないので、従来のように樹脂保持枠を備える濾材を採用したり、平板状の濾材を採用したりするものに比べて、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる。また、レーザ溶着の前工程として濾材のひだ折部の側縁を第2ケース構成部材の側壁に接触させればよく、従来のように濾材のひだ折部の側縁をケース構成部材の各くし歯状部の間に挟持させるものに比べて、レーザ溶着の前工程作業を簡易化でき生産性を高めることができる。
また、前記側壁の内壁面に係止部が設けられている場合は、係止部と濾材のひだ折部の側縁との係止によって、ケース構成部材に対して濾材のひだ折部の側縁を正確な溶着位置に位置決めした状態で溶着することができる。
また、前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の前記挟持部に突起が設けられている場合は、突起と濾材の平坦部との係止によって、ケース構成部材に対する濾材の抜けを抑制しつつ濾材の平坦部を溶着することができる。
さらに、自動変速機用である場合は、自動変速機用として好適なフィルタを提供することができる。
【0010】
本発明にフィルタの製造方法によると、第1及び第2ケース構成部材の挟持部に濾材の平坦部を挟持させた状態で、第2ケース構成部材の挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光が照射されて、濾材の平坦部が第2ケース構成部材の挟持部に溶着される。また、第2ケース構成部材の側壁の内壁面に濾材のひだ折部の側縁を接触させた状態で、第2ケース構成部材の側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光が照射されて、濾材のひだ折部の側縁が第2ケース構成部材の側壁に溶着される。このように、ひだ折状の濾材の平坦部及びひだ折部の側縁を第2ケース構成部材に直接的に溶着すると共に、濾材のひだ折部の側縁を挟持する部位を設けていないので、従来のように樹脂保持枠を備える濾材を採用したり、平板状の濾材を採用したりするものに比べて、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる。また、レーザ溶着の前工程として濾材のひだ折部の側縁を第2ケース構成部材の側壁に接触させればよく、従来のように濾材のひだ折部の側縁をケース構成部材の各くし歯状部の間に挟持させるものに比べて、レーザ溶着の前工程作業を簡易化でき生産性を高めることができる。
また、前記第2工程では、前記レーザ光を前記濾材の前記ひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動させつつ照射する場合は、比較的低出力のレーザを用いて濾材のひだ折部の側縁を第2ケース構成部材に溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るオイルフィルタを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図5】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図6】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図7】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図8】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図9】その他の形態のオイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図10】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図11】更にその他の形態のオイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図12】更にその形態のオイルフィルタを示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
1.フィルタ
本実施形態1.に係るフィルタは、流入口を有する第1ケース構成部材と、第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する第2ケース構成部材と、濾過室内に収容され、ひだ折部及び該ひだ折部のひだ折方向の両端に連なる平坦部を有するひだ折状の濾材と、を備えるフィルタであって、第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、濾材のひだ折部の側縁と接触する側壁を有し、濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材のそれぞれには、濾材の平坦部を挟持する挟持部が設けられており、濾材の平坦部は、第2ケース構成部材の挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光(L1)により挟持部に溶着されており、濾材のひだ折部の側縁は、第2ケース構成部材の側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光(L2)により側壁に溶着されていることを特徴とする(例えば、図2及び図3参照)。
【0014】
上記「第1ケース構成部材」は、例えば、レーザ吸収性樹脂を用いてなされたり、レーザ透過性樹脂を用いてなされたりすることができる。これらの樹脂としては、例えば、ポリスチレン(PS)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリカーボネート(PC)等の非晶性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂などを挙げることができる。また、第1ケース構成部材の形状としては、例えば、箱状、皿状、椀状、トレイ状、板状等を挙げることができる。
【0015】
上記「第2ケース構成部材」を構成するレーザ透過性樹脂としては、例えば、ポリスチレン(PS)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリカーボネート(PC)等の非晶性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂などを挙げることができる。また、第2ケース構成部材の形状としては、例えば、箱状、皿状、椀状、トレイ状、板状等を挙げることができる。
【0016】
上記第2ケース構成部材は、例えば、一方を開放した箱状に形成されていることができる。この場合の第2ケース構成部材としては、例えば、(1)2方又は3方を開放した箱状の本体に、1又は2つの側壁を接合してなる形態(例えば、図5参照)、(2)側壁が予め一体成形されている形態(例えば、図9参照)等を挙げることができる。
【0017】
上記「濾材」としては、例えば、不織布、織物、編物、濾紙等を挙げることができる。この不織布の構成材料としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ナイロン、レーヨン等の合成樹脂繊維の他に、パルプ、ガラス繊維等を挙げることができる。なお、上記「ひだ折方向」とは、濾材のひだ折部においてひだが連なる方向(P)を意図する(例えば、図2参照)。
【0018】
なお、上記レーザ光(L1)及びレーザ光(L2)の照射方向は、通常、交差している。また、これらレーザ光(L1)及びレーザ光(L2)は、例えば、同じレーザ照射装置から照射されてもよいし、異なるレーザ照射装置から照射されてもよい。また、これらレーザ光(L1)及びレーザ光(L2)としては、例えば、半導体、気体、固体、液体レーザ光等を挙げることができる。
【0019】
ここで、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記第2ケース構成部材を構成する側壁の内壁面に、濾材のひだ折部の側縁が係止する係止部が設けられている形態を挙げることができる。この係止部としては、例えば、濾材のひだ折部の側縁に沿うくし歯状に形成されている形態(例えば、図4及び図5参照)を挙げることができる。これにより、第2ケース構成部材に対して濾材をより正確な溶着位置に位置決めすることができる。
【0020】
また、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の挟持部に、濾材の平坦部に係止する突起が設けられている形態を挙げることができる。この突起と濾材の平坦部との係止位置は、例えば、レーザ光(L1)の照射位置より外側(即ち、反濾過室側)とされていてもよいし、レーザ光(L1)の照射位置と重なっていてもよい。
【0021】
また、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記レーザ光(L1)の照射により濾材の平坦部と第2ケース構成部材の挟持部との間には第1レーザ溶着部(W1)が形成され、上記レーザ光(L2)の照射により濾材のひだ折部の側縁と第2ケース構成部材の側壁との間には第2レーザ溶着部(W2)が形成されている形態(例えば、図2及び図3参照)を挙げることができる。この第1レーザ溶着部は、例えば、濾材の平坦部と第1及第2ケース構成部材の挟持部との間に形成されていることができる。
【0022】
2.フィルタの製造方法
本実施形態2.に係るフィルタの製造方法は、上記実施形態1.のフィルタの製造方法であって、第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材の挟持部に濾材の平坦部を挟持させた状態で、第2ケース構成部材の挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光を照射する第1工程と、第2ケース構成部材の側壁に濾材のひだ折部の側縁を接触させた状態で、第2ケース構成部材の側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光を照射する第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0023】
上記第1工程では、通常、レーザ光の照射により濾材の平坦部の一部が溶融され、その溶融熱で第2ケース構成部材の挟持部の一部が溶融され、濾材の平坦部と第2ケース構成部材の挟持部との間に第1レーザ溶着部(W1)が形成され、この第1レーザ溶着部(W1)により濾材の平坦部が第2ケース構成部材の挟持部に溶着される(例えば、図7参照)。この場合、例えば、濾材の平坦部の一部の溶融熱により第1ケース構成部材の挟持部の一部が溶融され、濾材の平坦部と第1及び第2ケース構成部材の挟持部との間に第1レーザ溶着部(W1)が形成され、この第1レーザ溶着部(W1)により濾材の平坦部が第1及び第2ケース構成部材の挟持部に溶着されることができる。
【0024】
上記第2工程では、通常、レーザ光の照射により濾材のひだ折部の側縁が溶融され、その溶融熱で第2ケース構成部材の側壁の一部が溶融され、濾材のひだ折部の側縁と第2ケース構成部材の側壁との間に第2レーザ溶着部(W2)が形成され、この第2レーザ溶着部(W2)により濾材のひだ折部の側縁が第2ケース構成部材の側壁に溶着される(例えば、図8参照)。また、上記第2工程では、例えば、レーザ光を濾材のひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動(L2a)させつつ照射することができる(例えば、図1参照)。なお、上記第1工程及び第2工程は、その順序を問わず、また同時に行われてもよい。
【実施例】
【0025】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「フィルタ」として自動変速機用のオイルフィルタを例示する。
【0026】
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1〜図3に示すように、流入口2aを有する下ケース2(本発明に係る「第1ケース構成部材」として例示する。)と、流出口3aを有する上ケース3(本発明に係る「第2ケース構成部材」として例示する。)と、これら上下ケース2,3の間に形成される濾過室4内に収容されるひだ折状の濾材5と、を備えている。
【0027】
この下ケース2は、レーザ吸収性樹脂からなる。また、この下ケース2は、平面矩形状の底壁7と、この底壁7の長尺方向の両端縁側から上方に延びる側壁8a,8bと、を有し、全体としてトレイ状に形成されている。また、上ケース3は、レーザ透過性樹脂からなる。この上ケース3は、平面矩形状の天井壁9と、この天井壁9の長尺方向の両端縁側から下方に延びる側壁10a,10bと、この天井壁9の短尺方向の両端縁側から下方に延び且つ側壁10a,10bに連なる側壁11a,11bと、を有し、全体として一方を開放した箱状に形成されている。また、濾材5は、レーザ吸収性樹脂を用いてなる不織布製である。この濾材5は、連続するひだ折部13と、このひだ折部13のひだ折方向P(図2参照)の両端に連なる平坦部14と、を有している。なお、本実施例では、本発明に係る「第2ケース構成部材」として、上方及び側方の2方を開放した箱状の本体15に一方の側壁11aを後付けしてなる上ケース3を採用することとする。
【0028】
また、下ケース2の側壁8a、8bには、下ケース2の外方に屈曲して延びる挟持部17が形成されている。この挟持部17の上面には、濾材5の平坦部14を収納する凹部17a(図7参照)が形成されている。また、上ケース3の側壁10a,10bには、上ケース3の外方に屈曲して延びる挟持部18が形成されている。この挟持部18の下面には、濾材5の平坦部14を収納する凹部18a(図7参照)が形成されている。そして、上下ケース2,3の各挟持部17,18には、濾材5の平坦部14が挟持されている。
【0029】
また、上ケース3の側壁11a,11bの内壁面には、図4及び図5に示すように、濾材5のひだ折部13の側縁13aが係止するように内方(濾過室側)に突出する係止部19が形成されている。この係止部19は、濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿うくし歯状に形成されている。そして、上ケース3の側壁11a,11bの内壁面には、係止部19に係止された濾材5のひだ折部13の側縁13aが接触(圧接)している。
【0030】
また、上記濾材5の平坦部14は、図7に示すように、上ケース3の挟持部18の挟持面と略直交する方向に照射されるレーザ光L1により挟持部18に溶着されている。すなわち、この濾材5の平坦部14と上下ケース2,3の挟持部17,18との間には第1レーザ溶着部W1が形成されており、濾材5の平坦部14と挟持部17,18とが一体化されている。また、濾材5のひだ折部13の側縁13aは、図8に示すように、上ケース3の側壁11a,11bの壁面と略直交する方向に照射されるレーザ光L2により側壁11a,11bに溶着されている。すなわち、この濾材5のひだ折部13の側縁13aと側壁11a,11bとの間には第2レーザ溶着部W2が形成されおり、濾材5のひだ折部13と上ケース3の側板11a,11bとが一体化されている。なお、上記第1及び第2レーザ溶着部W1,W2は、上下ケース2,3の隅部で連なっている。
【0031】
(2)オイルフィルタの製造方法
次に、上記構成のオイルフィルタ1の製造方法について説明する。
先ず、図4に示すように、上ケース3を構成する本体15を上下を反転させて、その本体15に対して上方から濾材5をセットする。このとき、本体15の一方の側壁11bの係止部19に濾材5のひだ折部13の側縁13aを係止させる。次に、図5に示すように、本体15に対して側方から他方の側壁11aを接着、溶着、嵌合等の適宜接合手段で接合する。このとき、濾材5のひだ折部13の側縁13aは、係止部19に係止されて側壁11aの内壁面に圧接された状態となる。次いで、図6に示すように、上ケース3に対して下ケース2を上方からセットし、両ケース2,3を接着、溶着、嵌合等の適宜接合手段で接合してフィルタ仮組体(図示省略)とする。
【0032】
その後、フィルタ仮組体の上下を反転させて、上下ケース2、3の各挟持部17,18をジグにより所定の加圧力(例えば、約50N)で加圧する。そして、図7に示すように、上下ケース2,3の挟持部17,18に濾材5の平坦部14を挟持させた状態で、挟持面と略直交する方向のレーザ光L1を、濾材5の平坦部14の長手方向に沿って直線状に移動L1a(図1参照)させつつ上ケース3の挟持部18に向かって照射する。すると、レーザ光L1の照射により濾材5の平坦部14の一部が溶融され、その溶融熱で上下ケース2,3の挟持部17,18の一部が溶融され、濾材5の平坦部14と挟持部17,18との間に第1レーザ溶着部W1が形成される。この第1レーザ溶着部W1により濾材5の平坦部14が上下ケース2,3の挟持部17,18に溶着される。
【0033】
また、図8に示すように、上ケース3の側壁11a,11bに濾材5のひだ折部13の側縁13aを圧接させた状態で、側壁11a,11bの壁面と交差する方向のレーザ光L2を、濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動L2a(図1参照)させつつ上ケース3の側壁11a,11bに向かって照射する。すると、レーザ光L2の照射により濾材5のひだ折部13の側縁13aが溶融され、その溶融熱で上ケース3の側壁11a,11bの一部が溶融され、濾材5のひだ折部13の側縁13aと側壁11a,11bとの間に第2レーザ溶着部W2が形成される。この第2レーザ溶着部W2により濾材5のひだ折部13の側縁13aが上ケース3の側壁11a,11bに溶着される。その結果、オイルフィルタ1が得られることとなる。
【0034】
なお、本実施例のオイルフィルタ1によると、下ケース2の流入口2aを介して外部から濾過室4内に流入されるオイルが濾材5を通過する際に濾過され、その濾過後のオイルは上ケース3の流出口3aを介して外部に供給される。
【0035】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のオイルフィルタによると、上下ケース2,3の挟持部17,18に濾材5の平坦部14を挟持させた状態で、上ケース3の挟持部17に向かって挟持面と略直交する方向にレーザ光L1を照射して、濾材5の平坦部14を上ケース3の挟持部18に溶着させると共に、上ケース3の側壁11a,11bに濾材5のひだ折部13の側縁13aを接触させた状態で、上ケース3の側壁11a,11bに向かって壁面と略直交する方向にレーザ光L2を照射して、濾材5のひだ折部13の側縁13aを上ケース3の側壁11a,11bに溶着させるようにしたので、ひだ折状の濾材5の平坦部14及びひだ折部13の側縁13aを上ケース3に直接的に溶着できると共に、濾材5のひだ折部13の側縁13aを挟持する部位を設ける必要がない。そのため、従来のように樹脂製の保持枠を備える濾材を採用するものに比べて、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる。また、レーザ溶着の前工程として濾材5のひだ折部13の側縁13aを上ケース3の側壁11a,11bに接触させればよく、従来のように濾材のひだ折部の側縁をケース構成部材の各くし歯状部の間に挟持させるものに比べて、レーザ溶着の前工程作業を簡素化でき生産性を高めることができる。
【0036】
また、本実施例では、レーザ光L2を濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動L2aさせつつ照射するようにしたので、比較的低出力のレーザを用いて濾材5のひだ折部13の側縁13aを上ケース3に溶着することができる。これに対して、上ケース3の挟持部18の挟持面と略直交する方向のレーザ光を濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動させつつ照射する場合では、レーザ光の移動制御が複雑となる。特に、濾材5のひだ折部13の側縁13aにおける谷部を適正に溶着できない恐れがある。
【0037】
また、本実施例では、上ケース3の側壁11a,11bの内壁面にくし歯状の係止部19を設けたので、係止部19と濾材5のひだ折部13の側縁13aとの係止によって、上ケース3に対して濾材5のひだ折部13の側縁13aを正確な溶着位置に位置決めした状態で溶着することができる。
【0038】
さらに、本実施例では、上下ケース2,3の挟持部17,18に不織布製の濾材5の平坦部14を挟持させた状態でレーザ溶着するようにしたので、上下ケース2,3の挟持部14に適切な平面度(例えば、0.2以下)を持たせるためのジグによる加圧力を比較的小さな値(例えば、約50N)に抑えることができる。また、レーザ溶着のための入熱量幅を広い範囲(例えば、約1.94J/mm2)とすることができるためレーザ照射装置の選択の自由度が高まる。これに対して、上下ケース2,3の挟持部17,18に濾材5の樹脂保持枠を挟持させた状態でレーザ溶着する場合には、上下ケース2,3の挟持部17,18に適切な平面度(例えば、0.2以下)を持たせるためのジグによる加圧力を比較的大きな値(例えば、約250N)とする必要がある。また、レーザ溶着のための入熱量幅が狭い範囲(例えば、約1.0J/mm2)となりレーザ照射装置の選択自由度が低い。
【0039】
なお、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、本体15に側壁11aを後付けして上ケース3を構成するようにしたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、左右の側壁11a,11bが予め一体成形された一方を開放した箱状の上ケース3’を採用してもよい。この場合、例えば、図9に示すように、上下を反転させた上ケース3’に対して上方から濾材をセットし、その後、図10に示すように、その濾材がセットされた上ケース3’に対して上方から下ケース2をセットし、両ケース2,3’を接着、溶着、嵌合等の適宜接合手段で接合してフィルタ仮組体とすることができる。
【0040】
上述の場合、例えば、図11に示すように、対向する側壁11a,11bには上ケース3の開放部の外側に向かって拡がる斜面20を形成するようにしてもよい。これにより、上ケース3の開放部から濾材5を挿入する際に、側壁11a,11bの斜面20により濾材5のひだ折部13の側縁13aが案内されて、濾材5のひだ折部13の側縁13aを側壁11a,11bの内壁面に好適に圧接させることができる。
【0041】
また、上記実施例において、例えば、図12に示すように、上下ケース2,3のうちの少なくとも一方のケースの挟持部17,18に、濾材5の平坦部14に形成された貫通穴22に係止する突起23を設けたり、濾材5の平坦部14を突き破って係止するスパイク状の突起を設けたりすることができる。これにより、突起23と濾材5の平坦部14との係止によって、ケースに対して濾材5の抜けを抑制しつつ濾材5の平坦部14を溶着することができる。
【0042】
さらに、本実施例では、上ケース3の挟持部18の挟持面に略直交するレーザ光L2を濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動L2aさせつつ照射するようにしたが、これに限定されず、例えば、上ケース3の挟持部18の挟持面に略直交するレーザ光L2を側壁11a,11bの長尺方向に沿って直線状に移動させつつ照射するようにしてもよい。
【0043】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0044】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
自動変速機用フィルタ、燃料フィルタ、ギヤフィルタ、エアフィルタ等の各種流体を濾過する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0046】
1;オイルフィルタ、2;下ケース、2a;流入口、3,3’;上ケース、3a;流出口、4;濾過室、5;濾材、11a,11b;側壁、13;ひだ折部、13a;側縁、14;平坦部、17,18;挟持部、19;係止部、23;突起、L1,L2;レーザ光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる生産性に優れたフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機用フィルタとして、ひだ折状の濾材を上下ケースの間で挟持させ、これら濾材及び上下ケースを振動溶着で一体化するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この特許文献1の技術では、振動溶着を採用しているため、濾材の外周縁に樹脂製の保持枠を一体的に設けると共に、この保持枠に振動溶着で生じるバリを捕捉するバリ溜を形成する必要があり、上下ケースの濾過室内で濾過できない部分が多くなり、またケースの外側方に突出するフランジ部(濾材の挟持部)の寸法が大きくなってしまう。その結果、濾過効率を高めつつフィルタの小型軽量化を図ることができない。
【0003】
そこで、上記問題を解決する技術として、樹脂保持枠を設けることなく濾材の外周縁を上下ケースに直接的に挟持させ、これら濾材及び上下ケースをレーザ溶着で一体化するフィルタが提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
【0004】
上記特許文献2及び3には、平板状の濾材の外周縁を上下ケースに挟持させ、これら濾材及び上下ケースをレーザ溶着で一体化するフィルタが開示されている。また、上記特許文献4及び5には、ひだ折状の濾材のひだ折部の側縁を上下ケースのそれぞれに設けたくし歯状部の間で挟持させると共に、濾材の長尺方向の両端の平坦部を上下ケースのそれぞれに設けた挟持部で挟持させ、これら濾材及び上下ケースをレーザ溶着で一体化するフィルタが開示されている。
【0005】
しかし、上記特許文献2及び3の技術では、平板状の濾材を採用しているので、濾材の濾過面積が小さく濾過効率が悪い。また、上記特許文献4及び5の技術では、レーザ溶着の前工程として上下ケースの各くし歯状部の間に濾材のひだ折部の側縁を挟持させているので、その挟持作業が煩雑であり生産性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−273116号公報
【特許文献2】特開2003−311838号公報
【特許文献3】特開2006−231875号公報
【特許文献4】特開2007−144287号公報
【特許文献5】特開2007−313406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる生産性に優れたフィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.流入口を有する第1ケース構成部材と、
前記第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する第2ケース構成部材と、
前記濾過室内に収容され、ひだ折部及び該ひだ折部のひだ折方向の両端に連なる平坦部を有するひだ折状の濾材と、を備えるフィルタであって、
前記第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、前記濾材の前記ひだ折部の側縁と接触する側壁を有し、前記濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれには、前記濾材の前記平坦部を挟持する挟持部が設けられており、
前記濾材の前記平坦部は、前記第2ケース構成部材の前記挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光(L1)により該挟持部に溶着されており、前記濾材の前記ひだ折部の側縁は、前記第2ケース構成部材の前記側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光(L2)により該側壁に溶着されていることを特徴とするフィルタ。
2.前記側壁の内壁面には、前記濾材の前記ひだ折部の側縁が係止する係止部が設けられている上記1.記載のフィルタ。
3.前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の前記挟持部には、前記濾材の前記平坦部に係止する突起が設けられている上記1.又は2.に記載のフィルタ。
4.自動変速機用である上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のフィルタ。
5.上記1.乃至4.のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法であって、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材の前記挟持部に前記濾材の前記平坦部を挟持させた状態で、前記第2ケース構成部材の該挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光を照射する第1工程と、
前記第2ケース構成部材の前記側壁に前記濾材の前記ひだ折部の側縁を接触させた状態で、前記第2ケース構成部材の該側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光を照射する第2工程と、を備えることを特徴とするフィルタの製造方法。
6.前記第2工程では、前記レーザ光を前記濾材の前記ひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動させつつ照射する上記5.記載のフィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルタによると、濾材の平坦部が、第2ケース構成部材の挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光により挟持部に溶着されており、濾材のひだ折部の側縁が、第2ケース構成部材の側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光により側壁に溶着されている。このように、ひだ折状の濾材の平坦部及びひだ折部の側縁を第2ケース構成部材に直接的に溶着すると共に、濾材のひだ折部の側縁を挟持する部位を設けていないので、従来のように樹脂保持枠を備える濾材を採用したり、平板状の濾材を採用したりするものに比べて、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる。また、レーザ溶着の前工程として濾材のひだ折部の側縁を第2ケース構成部材の側壁に接触させればよく、従来のように濾材のひだ折部の側縁をケース構成部材の各くし歯状部の間に挟持させるものに比べて、レーザ溶着の前工程作業を簡易化でき生産性を高めることができる。
また、前記側壁の内壁面に係止部が設けられている場合は、係止部と濾材のひだ折部の側縁との係止によって、ケース構成部材に対して濾材のひだ折部の側縁を正確な溶着位置に位置決めした状態で溶着することができる。
また、前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の前記挟持部に突起が設けられている場合は、突起と濾材の平坦部との係止によって、ケース構成部材に対する濾材の抜けを抑制しつつ濾材の平坦部を溶着することができる。
さらに、自動変速機用である場合は、自動変速機用として好適なフィルタを提供することができる。
【0010】
本発明にフィルタの製造方法によると、第1及び第2ケース構成部材の挟持部に濾材の平坦部を挟持させた状態で、第2ケース構成部材の挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光が照射されて、濾材の平坦部が第2ケース構成部材の挟持部に溶着される。また、第2ケース構成部材の側壁の内壁面に濾材のひだ折部の側縁を接触させた状態で、第2ケース構成部材の側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光が照射されて、濾材のひだ折部の側縁が第2ケース構成部材の側壁に溶着される。このように、ひだ折状の濾材の平坦部及びひだ折部の側縁を第2ケース構成部材に直接的に溶着すると共に、濾材のひだ折部の側縁を挟持する部位を設けていないので、従来のように樹脂保持枠を備える濾材を採用したり、平板状の濾材を採用したりするものに比べて、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる。また、レーザ溶着の前工程として濾材のひだ折部の側縁を第2ケース構成部材の側壁に接触させればよく、従来のように濾材のひだ折部の側縁をケース構成部材の各くし歯状部の間に挟持させるものに比べて、レーザ溶着の前工程作業を簡易化でき生産性を高めることができる。
また、前記第2工程では、前記レーザ光を前記濾材の前記ひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動させつつ照射する場合は、比較的低出力のレーザを用いて濾材のひだ折部の側縁を第2ケース構成部材に溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るオイルフィルタを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図5】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図6】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図7】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図8】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図9】その他の形態のオイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図10】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図11】更にその他の形態のオイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図12】更にその形態のオイルフィルタを示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
1.フィルタ
本実施形態1.に係るフィルタは、流入口を有する第1ケース構成部材と、第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する第2ケース構成部材と、濾過室内に収容され、ひだ折部及び該ひだ折部のひだ折方向の両端に連なる平坦部を有するひだ折状の濾材と、を備えるフィルタであって、第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、濾材のひだ折部の側縁と接触する側壁を有し、濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材のそれぞれには、濾材の平坦部を挟持する挟持部が設けられており、濾材の平坦部は、第2ケース構成部材の挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光(L1)により挟持部に溶着されており、濾材のひだ折部の側縁は、第2ケース構成部材の側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光(L2)により側壁に溶着されていることを特徴とする(例えば、図2及び図3参照)。
【0014】
上記「第1ケース構成部材」は、例えば、レーザ吸収性樹脂を用いてなされたり、レーザ透過性樹脂を用いてなされたりすることができる。これらの樹脂としては、例えば、ポリスチレン(PS)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリカーボネート(PC)等の非晶性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂などを挙げることができる。また、第1ケース構成部材の形状としては、例えば、箱状、皿状、椀状、トレイ状、板状等を挙げることができる。
【0015】
上記「第2ケース構成部材」を構成するレーザ透過性樹脂としては、例えば、ポリスチレン(PS)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリカーボネート(PC)等の非晶性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂などを挙げることができる。また、第2ケース構成部材の形状としては、例えば、箱状、皿状、椀状、トレイ状、板状等を挙げることができる。
【0016】
上記第2ケース構成部材は、例えば、一方を開放した箱状に形成されていることができる。この場合の第2ケース構成部材としては、例えば、(1)2方又は3方を開放した箱状の本体に、1又は2つの側壁を接合してなる形態(例えば、図5参照)、(2)側壁が予め一体成形されている形態(例えば、図9参照)等を挙げることができる。
【0017】
上記「濾材」としては、例えば、不織布、織物、編物、濾紙等を挙げることができる。この不織布の構成材料としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ナイロン、レーヨン等の合成樹脂繊維の他に、パルプ、ガラス繊維等を挙げることができる。なお、上記「ひだ折方向」とは、濾材のひだ折部においてひだが連なる方向(P)を意図する(例えば、図2参照)。
【0018】
なお、上記レーザ光(L1)及びレーザ光(L2)の照射方向は、通常、交差している。また、これらレーザ光(L1)及びレーザ光(L2)は、例えば、同じレーザ照射装置から照射されてもよいし、異なるレーザ照射装置から照射されてもよい。また、これらレーザ光(L1)及びレーザ光(L2)としては、例えば、半導体、気体、固体、液体レーザ光等を挙げることができる。
【0019】
ここで、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記第2ケース構成部材を構成する側壁の内壁面に、濾材のひだ折部の側縁が係止する係止部が設けられている形態を挙げることができる。この係止部としては、例えば、濾材のひだ折部の側縁に沿うくし歯状に形成されている形態(例えば、図4及び図5参照)を挙げることができる。これにより、第2ケース構成部材に対して濾材をより正確な溶着位置に位置決めすることができる。
【0020】
また、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の挟持部に、濾材の平坦部に係止する突起が設けられている形態を挙げることができる。この突起と濾材の平坦部との係止位置は、例えば、レーザ光(L1)の照射位置より外側(即ち、反濾過室側)とされていてもよいし、レーザ光(L1)の照射位置と重なっていてもよい。
【0021】
また、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記レーザ光(L1)の照射により濾材の平坦部と第2ケース構成部材の挟持部との間には第1レーザ溶着部(W1)が形成され、上記レーザ光(L2)の照射により濾材のひだ折部の側縁と第2ケース構成部材の側壁との間には第2レーザ溶着部(W2)が形成されている形態(例えば、図2及び図3参照)を挙げることができる。この第1レーザ溶着部は、例えば、濾材の平坦部と第1及第2ケース構成部材の挟持部との間に形成されていることができる。
【0022】
2.フィルタの製造方法
本実施形態2.に係るフィルタの製造方法は、上記実施形態1.のフィルタの製造方法であって、第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材の挟持部に濾材の平坦部を挟持させた状態で、第2ケース構成部材の挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光を照射する第1工程と、第2ケース構成部材の側壁に濾材のひだ折部の側縁を接触させた状態で、第2ケース構成部材の側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光を照射する第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0023】
上記第1工程では、通常、レーザ光の照射により濾材の平坦部の一部が溶融され、その溶融熱で第2ケース構成部材の挟持部の一部が溶融され、濾材の平坦部と第2ケース構成部材の挟持部との間に第1レーザ溶着部(W1)が形成され、この第1レーザ溶着部(W1)により濾材の平坦部が第2ケース構成部材の挟持部に溶着される(例えば、図7参照)。この場合、例えば、濾材の平坦部の一部の溶融熱により第1ケース構成部材の挟持部の一部が溶融され、濾材の平坦部と第1及び第2ケース構成部材の挟持部との間に第1レーザ溶着部(W1)が形成され、この第1レーザ溶着部(W1)により濾材の平坦部が第1及び第2ケース構成部材の挟持部に溶着されることができる。
【0024】
上記第2工程では、通常、レーザ光の照射により濾材のひだ折部の側縁が溶融され、その溶融熱で第2ケース構成部材の側壁の一部が溶融され、濾材のひだ折部の側縁と第2ケース構成部材の側壁との間に第2レーザ溶着部(W2)が形成され、この第2レーザ溶着部(W2)により濾材のひだ折部の側縁が第2ケース構成部材の側壁に溶着される(例えば、図8参照)。また、上記第2工程では、例えば、レーザ光を濾材のひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動(L2a)させつつ照射することができる(例えば、図1参照)。なお、上記第1工程及び第2工程は、その順序を問わず、また同時に行われてもよい。
【実施例】
【0025】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「フィルタ」として自動変速機用のオイルフィルタを例示する。
【0026】
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1〜図3に示すように、流入口2aを有する下ケース2(本発明に係る「第1ケース構成部材」として例示する。)と、流出口3aを有する上ケース3(本発明に係る「第2ケース構成部材」として例示する。)と、これら上下ケース2,3の間に形成される濾過室4内に収容されるひだ折状の濾材5と、を備えている。
【0027】
この下ケース2は、レーザ吸収性樹脂からなる。また、この下ケース2は、平面矩形状の底壁7と、この底壁7の長尺方向の両端縁側から上方に延びる側壁8a,8bと、を有し、全体としてトレイ状に形成されている。また、上ケース3は、レーザ透過性樹脂からなる。この上ケース3は、平面矩形状の天井壁9と、この天井壁9の長尺方向の両端縁側から下方に延びる側壁10a,10bと、この天井壁9の短尺方向の両端縁側から下方に延び且つ側壁10a,10bに連なる側壁11a,11bと、を有し、全体として一方を開放した箱状に形成されている。また、濾材5は、レーザ吸収性樹脂を用いてなる不織布製である。この濾材5は、連続するひだ折部13と、このひだ折部13のひだ折方向P(図2参照)の両端に連なる平坦部14と、を有している。なお、本実施例では、本発明に係る「第2ケース構成部材」として、上方及び側方の2方を開放した箱状の本体15に一方の側壁11aを後付けしてなる上ケース3を採用することとする。
【0028】
また、下ケース2の側壁8a、8bには、下ケース2の外方に屈曲して延びる挟持部17が形成されている。この挟持部17の上面には、濾材5の平坦部14を収納する凹部17a(図7参照)が形成されている。また、上ケース3の側壁10a,10bには、上ケース3の外方に屈曲して延びる挟持部18が形成されている。この挟持部18の下面には、濾材5の平坦部14を収納する凹部18a(図7参照)が形成されている。そして、上下ケース2,3の各挟持部17,18には、濾材5の平坦部14が挟持されている。
【0029】
また、上ケース3の側壁11a,11bの内壁面には、図4及び図5に示すように、濾材5のひだ折部13の側縁13aが係止するように内方(濾過室側)に突出する係止部19が形成されている。この係止部19は、濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿うくし歯状に形成されている。そして、上ケース3の側壁11a,11bの内壁面には、係止部19に係止された濾材5のひだ折部13の側縁13aが接触(圧接)している。
【0030】
また、上記濾材5の平坦部14は、図7に示すように、上ケース3の挟持部18の挟持面と略直交する方向に照射されるレーザ光L1により挟持部18に溶着されている。すなわち、この濾材5の平坦部14と上下ケース2,3の挟持部17,18との間には第1レーザ溶着部W1が形成されており、濾材5の平坦部14と挟持部17,18とが一体化されている。また、濾材5のひだ折部13の側縁13aは、図8に示すように、上ケース3の側壁11a,11bの壁面と略直交する方向に照射されるレーザ光L2により側壁11a,11bに溶着されている。すなわち、この濾材5のひだ折部13の側縁13aと側壁11a,11bとの間には第2レーザ溶着部W2が形成されおり、濾材5のひだ折部13と上ケース3の側板11a,11bとが一体化されている。なお、上記第1及び第2レーザ溶着部W1,W2は、上下ケース2,3の隅部で連なっている。
【0031】
(2)オイルフィルタの製造方法
次に、上記構成のオイルフィルタ1の製造方法について説明する。
先ず、図4に示すように、上ケース3を構成する本体15を上下を反転させて、その本体15に対して上方から濾材5をセットする。このとき、本体15の一方の側壁11bの係止部19に濾材5のひだ折部13の側縁13aを係止させる。次に、図5に示すように、本体15に対して側方から他方の側壁11aを接着、溶着、嵌合等の適宜接合手段で接合する。このとき、濾材5のひだ折部13の側縁13aは、係止部19に係止されて側壁11aの内壁面に圧接された状態となる。次いで、図6に示すように、上ケース3に対して下ケース2を上方からセットし、両ケース2,3を接着、溶着、嵌合等の適宜接合手段で接合してフィルタ仮組体(図示省略)とする。
【0032】
その後、フィルタ仮組体の上下を反転させて、上下ケース2、3の各挟持部17,18をジグにより所定の加圧力(例えば、約50N)で加圧する。そして、図7に示すように、上下ケース2,3の挟持部17,18に濾材5の平坦部14を挟持させた状態で、挟持面と略直交する方向のレーザ光L1を、濾材5の平坦部14の長手方向に沿って直線状に移動L1a(図1参照)させつつ上ケース3の挟持部18に向かって照射する。すると、レーザ光L1の照射により濾材5の平坦部14の一部が溶融され、その溶融熱で上下ケース2,3の挟持部17,18の一部が溶融され、濾材5の平坦部14と挟持部17,18との間に第1レーザ溶着部W1が形成される。この第1レーザ溶着部W1により濾材5の平坦部14が上下ケース2,3の挟持部17,18に溶着される。
【0033】
また、図8に示すように、上ケース3の側壁11a,11bに濾材5のひだ折部13の側縁13aを圧接させた状態で、側壁11a,11bの壁面と交差する方向のレーザ光L2を、濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動L2a(図1参照)させつつ上ケース3の側壁11a,11bに向かって照射する。すると、レーザ光L2の照射により濾材5のひだ折部13の側縁13aが溶融され、その溶融熱で上ケース3の側壁11a,11bの一部が溶融され、濾材5のひだ折部13の側縁13aと側壁11a,11bとの間に第2レーザ溶着部W2が形成される。この第2レーザ溶着部W2により濾材5のひだ折部13の側縁13aが上ケース3の側壁11a,11bに溶着される。その結果、オイルフィルタ1が得られることとなる。
【0034】
なお、本実施例のオイルフィルタ1によると、下ケース2の流入口2aを介して外部から濾過室4内に流入されるオイルが濾材5を通過する際に濾過され、その濾過後のオイルは上ケース3の流出口3aを介して外部に供給される。
【0035】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のオイルフィルタによると、上下ケース2,3の挟持部17,18に濾材5の平坦部14を挟持させた状態で、上ケース3の挟持部17に向かって挟持面と略直交する方向にレーザ光L1を照射して、濾材5の平坦部14を上ケース3の挟持部18に溶着させると共に、上ケース3の側壁11a,11bに濾材5のひだ折部13の側縁13aを接触させた状態で、上ケース3の側壁11a,11bに向かって壁面と略直交する方向にレーザ光L2を照射して、濾材5のひだ折部13の側縁13aを上ケース3の側壁11a,11bに溶着させるようにしたので、ひだ折状の濾材5の平坦部14及びひだ折部13の側縁13aを上ケース3に直接的に溶着できると共に、濾材5のひだ折部13の側縁13aを挟持する部位を設ける必要がない。そのため、従来のように樹脂製の保持枠を備える濾材を採用するものに比べて、濾過効率を高めつつ小型軽量化を図ることができる。また、レーザ溶着の前工程として濾材5のひだ折部13の側縁13aを上ケース3の側壁11a,11bに接触させればよく、従来のように濾材のひだ折部の側縁をケース構成部材の各くし歯状部の間に挟持させるものに比べて、レーザ溶着の前工程作業を簡素化でき生産性を高めることができる。
【0036】
また、本実施例では、レーザ光L2を濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動L2aさせつつ照射するようにしたので、比較的低出力のレーザを用いて濾材5のひだ折部13の側縁13aを上ケース3に溶着することができる。これに対して、上ケース3の挟持部18の挟持面と略直交する方向のレーザ光を濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動させつつ照射する場合では、レーザ光の移動制御が複雑となる。特に、濾材5のひだ折部13の側縁13aにおける谷部を適正に溶着できない恐れがある。
【0037】
また、本実施例では、上ケース3の側壁11a,11bの内壁面にくし歯状の係止部19を設けたので、係止部19と濾材5のひだ折部13の側縁13aとの係止によって、上ケース3に対して濾材5のひだ折部13の側縁13aを正確な溶着位置に位置決めした状態で溶着することができる。
【0038】
さらに、本実施例では、上下ケース2,3の挟持部17,18に不織布製の濾材5の平坦部14を挟持させた状態でレーザ溶着するようにしたので、上下ケース2,3の挟持部14に適切な平面度(例えば、0.2以下)を持たせるためのジグによる加圧力を比較的小さな値(例えば、約50N)に抑えることができる。また、レーザ溶着のための入熱量幅を広い範囲(例えば、約1.94J/mm2)とすることができるためレーザ照射装置の選択の自由度が高まる。これに対して、上下ケース2,3の挟持部17,18に濾材5の樹脂保持枠を挟持させた状態でレーザ溶着する場合には、上下ケース2,3の挟持部17,18に適切な平面度(例えば、0.2以下)を持たせるためのジグによる加圧力を比較的大きな値(例えば、約250N)とする必要がある。また、レーザ溶着のための入熱量幅が狭い範囲(例えば、約1.0J/mm2)となりレーザ照射装置の選択自由度が低い。
【0039】
なお、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、本体15に側壁11aを後付けして上ケース3を構成するようにしたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、左右の側壁11a,11bが予め一体成形された一方を開放した箱状の上ケース3’を採用してもよい。この場合、例えば、図9に示すように、上下を反転させた上ケース3’に対して上方から濾材をセットし、その後、図10に示すように、その濾材がセットされた上ケース3’に対して上方から下ケース2をセットし、両ケース2,3’を接着、溶着、嵌合等の適宜接合手段で接合してフィルタ仮組体とすることができる。
【0040】
上述の場合、例えば、図11に示すように、対向する側壁11a,11bには上ケース3の開放部の外側に向かって拡がる斜面20を形成するようにしてもよい。これにより、上ケース3の開放部から濾材5を挿入する際に、側壁11a,11bの斜面20により濾材5のひだ折部13の側縁13aが案内されて、濾材5のひだ折部13の側縁13aを側壁11a,11bの内壁面に好適に圧接させることができる。
【0041】
また、上記実施例において、例えば、図12に示すように、上下ケース2,3のうちの少なくとも一方のケースの挟持部17,18に、濾材5の平坦部14に形成された貫通穴22に係止する突起23を設けたり、濾材5の平坦部14を突き破って係止するスパイク状の突起を設けたりすることができる。これにより、突起23と濾材5の平坦部14との係止によって、ケースに対して濾材5の抜けを抑制しつつ濾材5の平坦部14を溶着することができる。
【0042】
さらに、本実施例では、上ケース3の挟持部18の挟持面に略直交するレーザ光L2を濾材5のひだ折部13の側縁13aに沿ってひだ折状に移動L2aさせつつ照射するようにしたが、これに限定されず、例えば、上ケース3の挟持部18の挟持面に略直交するレーザ光L2を側壁11a,11bの長尺方向に沿って直線状に移動させつつ照射するようにしてもよい。
【0043】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0044】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
自動変速機用フィルタ、燃料フィルタ、ギヤフィルタ、エアフィルタ等の各種流体を濾過する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0046】
1;オイルフィルタ、2;下ケース、2a;流入口、3,3’;上ケース、3a;流出口、4;濾過室、5;濾材、11a,11b;側壁、13;ひだ折部、13a;側縁、14;平坦部、17,18;挟持部、19;係止部、23;突起、L1,L2;レーザ光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口を有する第1ケース構成部材と、
前記第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する第2ケース構成部材と、
前記濾過室内に収容され、ひだ折部及び該ひだ折部のひだ折方向の両端に連なる平坦部を有するひだ折状の濾材と、を備えるフィルタであって、
前記第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、前記濾材の前記ひだ折部の側縁と接触する側壁を有し、前記濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれには、前記濾材の前記平坦部を挟持する挟持部が設けられており、
前記濾材の前記平坦部は、前記第2ケース構成部材の前記挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光(L1)により該挟持部に溶着されており、前記濾材の前記ひだ折部の側縁は、前記第2ケース構成部材の前記側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光(L2)により該側壁に溶着されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記側壁の内壁面には、前記濾材の前記ひだ折部の側縁が係止する係止部が設けられている請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の前記挟持部には、前記濾材の前記平坦部に係止する突起が設けられている請求項1又は2に記載のフィルタ。
【請求項4】
自動変速機用である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法であって、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材の前記挟持部に前記濾材の前記平坦部を挟持させた状態で、前記第2ケース構成部材の該挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光を照射する第1工程と、
前記第2ケース構成部材の前記側壁に前記濾材の前記ひだ折部の側縁を接触させた状態で、前記第2ケース構成部材の該側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光を照射する第2工程と、を備えることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記第2工程では、前記レーザ光を前記濾材の前記ひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動させつつ照射する請求項5記載のフィルタの製造方法。
【請求項1】
流入口を有する第1ケース構成部材と、
前記第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する第2ケース構成部材と、
前記濾過室内に収容され、ひだ折部及び該ひだ折部のひだ折方向の両端に連なる平坦部を有するひだ折状の濾材と、を備えるフィルタであって、
前記第2ケース構成部材は、レーザ透光性樹脂を用いてなり、前記濾材の前記ひだ折部の側縁と接触する側壁を有し、前記濾材は、レーザ吸収性樹脂を用いてなり、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれには、前記濾材の前記平坦部を挟持する挟持部が設けられており、
前記濾材の前記平坦部は、前記第2ケース構成部材の前記挟持部の挟持面と交差する方向に照射されるレーザ光(L1)により該挟持部に溶着されており、前記濾材の前記ひだ折部の側縁は、前記第2ケース構成部材の前記側壁の壁面と交差する方向に照射されるレーザ光(L2)により該側壁に溶着されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記側壁の内壁面には、前記濾材の前記ひだ折部の側縁が係止する係止部が設けられている請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のうちの少なくとも一方のケース構成部材の前記挟持部には、前記濾材の前記平坦部に係止する突起が設けられている請求項1又は2に記載のフィルタ。
【請求項4】
自動変速機用である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法であって、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材の前記挟持部に前記濾材の前記平坦部を挟持させた状態で、前記第2ケース構成部材の該挟持部に向かって挟持面と交差する方向にレーザ光を照射する第1工程と、
前記第2ケース構成部材の前記側壁に前記濾材の前記ひだ折部の側縁を接触させた状態で、前記第2ケース構成部材の該側壁に向かって壁面と交差する方向にレーザ光を照射する第2工程と、を備えることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記第2工程では、前記レーザ光を前記濾材の前記ひだ折部の側縁に沿ってひだ折状に移動させつつ照射する請求項5記載のフィルタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−20051(P2011−20051A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167106(P2009−167106)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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