説明

フィルムアンテナ基材及びその製造法

【課題】視界性が良好でありかつ美観を損なうことのないフィルムアンテナ基材であって、次工程、検査工程、耐久性試験下などにおいてもアンテナエレメントが基材から容易に剥離せず、密着性の良いフィルムアンテナ基材を提供する。
【解決手段】透明樹脂層を含む透明基材上に金属配線層からなるアンテナエレメントが積層されているフィルムアンテナ基材において、上記金属配線層の断面形状は、断面形状全体又は断面形状の上部が台形状であって、当該金属配線層は、少なくとも上面の一部又は上記台形状の一部が透明樹脂層からは露出し、少なくとも最大幅の部分から下の部分が上記透明樹脂層に埋設されてなるフィルムアンテナ基材。金属配線層の断面形状の台形部分の高さが0.1〜10μm、断面形状の台形部分の側辺の角度が30〜80°の範囲内であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や建物の窓ガラスなどに配設される透明アンテナの作製に好適に使用され、特に自動車等の乗り物の車内外からの視界の妨げにならず、地上デジタル放送波やGPS(global positioning system)の電波、ラジオ電波の受信や、ITS(intelligent transport system)電波の送受信などに使用される透明アンテナの作製に好適なフィルムアンテナ基材及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車には移動中にも電波の受信等を可能にするアンテナが搭載されており、一般に、車両が受信する電波は、FMラジオ用やアナログテレビ用の超短波(VHF)や極超短波(UHF)が主なものであった。
【0003】
一方、これらの周波数帯の電波に加えて、高周波数帯のデジタルテレビ放送用の衛星電波やその再放送波(ギャップフィラー波)を受信するアンテナや、GPS(グローバル・ポジショニング・システム:全地球測位システム)用のアンテナ、携帯電話等の電話用の電波を送受信するアンテナが車両に必要になりつつある。さらには、2011年以降テレビ放送のデジタル化後は、その空き周波数を、ITS(高度道路交通システム)の一環として、高速道路や有料道路の料金を自動的に徴収するETC(自動料金所システム)や、道路交通情報を提供するVICS(道路交通情報通信システム)の電波ビーコンに対しても電波の送受信を行うアンテナが必要となっている。
【0004】
従来、上記電波を受信するアンテナとしてポールアンテナが実用化されているが、車上部より突起状に飛び出している為、美観を損い、洗車時の弊害となる可能性があり、安全面においても好ましくない。また、比較的周波数帯域が狭い為、所望の広帯域の周波数を得る為に、整合器等が別に必要になる。
【0005】
また、アンテナの広帯域の電波を充分な利得を得る為に、板状アンテナが考案されている。これは、整合器等を用いる事無く、広帯域化を図ることができるが、自動車の窓ガラスに貼り付けて使用した場合は、美観を損なわせるだけでなく、走行中の運転手の安全を著しく悪化させる問題があった。
【0006】
上記、ポールアンテナに対して突起が無く、板状アンテナに対して透明度を確保して美観を保つことを目的として、例えば透明フィルム上に導電ペーストなどでループ上にアンテナパターンを印刷することにより構成し、そのフィルムを自動車の前面窓ガラスや後面窓ガラスに貼合したフィルムアンテナが実用化されているが、上記ポールアンテナと同様に周波数帯域が狭い為、所望の広帯域の周波数を得る為に、整合器等が別に必要になる。
【0007】
そこで、透明度を確保して整合器等を必要とせず広帯域化を図ることができ、自動車の走行時にも視界を妨げること無く安全性を充分に確保し、また、美観も損なわない形状としてアンテナエレメントを金属配線等の格子状やハニカム形状の導電性パターンより形成したフィルムアンテナが考案されている。
【0008】
上記フィルムアンテナの製造方法としては、透明フィルム上に導電性ペースト(銀ペースト)で配線形状を印刷し、乾燥し、硬化する方法(特許文献1参照)、2枚の透明フィルムに接着剤層を設けて、片方の透明フィルムの接着剤層の表面に配線形状の金属箔を貼り付け、金属箔を挟むように、もう一方の透明フィルムの接着剤層の表面を合わせることにより、ラミネートする方法(特許文献2参照)、および、透明フィルムの表面に蒸着またはスパッタリング法で金属薄膜を形成し、さらに、電解めっき法で銅層を形成し、エッチング工法を用いたスクリーン印刷またはフォトレジスト法により、金属薄膜および銅層の一部を溶解し、アンテナエレメントとなる配線形状を形成する方法などがある。
【0009】
しかし、導電ペースト(銀ペースト)で配線形状を印刷する方法では、例えば格子状の微細配線パターンを形成することができずに、所望の透明性が得る事ができない。また、電気抵抗の少ないアンテナ配線基材を得ようとすると、銀ペーストを塗布、乾燥した後、加熱処理して銀ペースト中の樹脂成分を揮発させることが必要となる。しかし、加熱時のフィルム状基材の損傷を防止するためには、フィルム状基材として耐熱性の高いポリイミドフィルムを用いたとしても、せいぜい400℃程度までしか加熱温度を上げることができない。このため、銀ペースト中の樹脂成分の除去は不十分なものとならざるを得ず、アンテナ配線の電気抵抗は不十分なものとなる。この結果、銀ペーストを用いて得たフィルム状アンテナ配線基材を用いてフィルム状アンテナを得ると、雑音の多いフィルム状アンテナとなってしまう。また、樹脂フィルムの熱収縮により銀ペースト部が樹脂フィルム表面からはがれてしまうなどの問題があり、取扱性に劣ったものとなってしまう。
【0010】
これに対して、透明基材表面に接着剤を介して銅箔を設けられた基板を用い、この基板の銅箔をエッチングなどの加工により格子状配線からなるアンテナエレメントを作製する手法であれば、電気抵抗の小さなアンテナを形成することができる。
しかし、こうした基板では銅箔と接着剤層との密着力を確保するために銅箔の接着剤層と接合される面側に微細な凹凸が設けられており、この凹凸に光が乱反射する為、充分な透明性は確保されない。また、この凹凸を可能な限り低減させた場合、接着剤層と銅箔の充分な密着力を確保する上で問題が発生する。すなわち、次工程や輸送時に銅配線が接着剤より剥がれてしまうという問題がある。
【0011】
【特許文献1】特開昭64−49302号公報
【特許文献2】特開2006−5400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記した問題を解消する為になされたものであり、視界性が良好でありかつ美観を損なうことのないフィルムアンテナ基材であって、次工程、検査工程、耐久性試験下などにおいてもアンテナエレメントが基材から容易に剥離せず、密着性の良いフィルムアンテナ基材とその製造法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、次のものに関する。
1. 透明樹脂層を含む透明基材上に金属配線層からなるアンテナエレメントが積層されているフィルムアンテナ基材において、上記金属配線層の断面形状は、断面形状全体又は断面形状の上部が台形状であって、当該金属配線層は、少なくとも上面の一部又は上記台形状の一部が透明樹脂層からは露出し、少なくとも最大幅の部分から下の部分が上記透明樹脂層に埋設されてなるフィルムアンテナ基材。
2. 金属配線層の断面形状の台形部分の高さが0.1〜10μm、断面形状の台形部分の側辺の角度が30〜80°の範囲内である項1記載のフィルムアンテナ基材。
3. 金属配線層の厚さが0.1〜30μm、最大幅が1〜50μmの範囲である項1又は2のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
4. 金属配線層の開口率が70%以上である項1〜3のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
5. 金属配線層及び透明樹脂層から成る平面上に粘着剤層が積層されている項1〜4のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
6. 上記透明基材の金属配線層が存在する面とは反対面に粘着剤層が設けられている項1〜4のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
7. 金属配線層及び透明樹脂層から成る平面上に保護樹脂層又は粘着剤層を介した透明基材が積層されている項1〜4のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
8.(A)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広となった、めっきを形成するための凹部のパターンが形成されているめっき用導電性基材に、その凹部内に又は凹部からはみ出るようにめっきして断面形状が台形状の金属配線層又は断面形状が台形状の部分とこの部分に連続しており、この部分より幅広の部分からなるアンテナエレメントを構成する金属配線層を形成する工程、(B)上記導電性基材の凹部に析出した金属配線層を表面に樹脂層を含む透明基材に転写する工程を含み、上記の転写の工程中に又は転写工程後で、上記金属配線層の少なくとも上面の一部又は上記台形状の一部又は全部を樹脂層からは露出させながら、上記金属配線層の少なくとも最大幅の部分から下の部分を上記基材の樹脂層に埋設させることを特徴とするフィルムアンテナ基材の製造法。
9.上記めっきを形成するための凹部のパターンが形成されている導電性基材が、(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程、(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程及び(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程を含む方法で作製されたものである項8に記載のフィルムアンテナ基材の製造法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフィルムアンテナ基材において、アンテナエレメントである金属配線層は、少なくともその最大幅の箇所以下が樹脂層に埋設されているので、基材に対する強固な密着性を発現する為、粘着剤層その他の積層工程、検査工程等の次工程や被着体への貼着工程の際の取扱時に金属配線層が剥がれたりすることがなく、取扱性に優れる。さらに、耐湿試験下における水分の金属配線層の背面へ回り込みを防止し、金属配線層を腐食することが防止される。
【0015】
本発明に係るフィルムアンテナ基材の製造法によれば、上記の特長を有するフィルムアンテナ基材の作製が容易であり、生産性が優れる。また、めっき用導電性基材のめっきにより金属配線層が形成される凹部が開口方向に向かった幅広となっているため、めっきにより得られるアンテナエレメントである金属配線層の剥離が容易であり、透明基材への転写が円滑に行われる。また、めっき用導電性基材の絶縁層をDLC又は無機材料により形成することにより導電性基材への絶縁層の密着性が特に優れ、その耐剥離性が特に優れる。
また、金属配線層の幅が微細で、開口率が高く、電気抵抗の低い電極基材を、生産効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明に係るフィルムアンテナ基材1の一例を示す平面図である。図1において、透明基材2上にアンテナエレメントである格子状の導電性の金属配線層3が積層されており、格子状の金属配線層3には、T字形に一部欠切されたスリット部分4がある。このスリット部分4のT字形の下部分に四角形の板状金属箔からなる給電部5a,5bが、その周りの金属配線層と電気的に導通して透明基材2上に形成されている。
図2は、図1に示すフィルムアンテナ基材1を使用したアンテナ装置の一例を示す平面図である。フィルムアンテナ基材1の構成は前記の通りであり、給電部5a,5bには、ケーブル6(例えば、同軸ケーブル)が、アンプ7及び取り出し線8a、8bを介して、接続されている。なお、GPS用のアンテナ装置などであれば、アンプ7は不要であり、ケーブル6が、同軸ケーブルであれば、例えば、網線を5aに、中心線を5bにハンダ接続することができる。
図3は、本発明に係るフィルムアンテナ基材の他の例を示す平面図である。このフィルムアンテナ基材1は、透明基材上に格子状の金属配線3が全面に積層されており、たとえば、パッチアンテナ装置のアース板として利用可能である。図4は、本発明に係るフィルムアンテナ基材1の他の例を示す平面図である。このフィルムアンテナ基材1は、透明基材2上の中央にそれより面積の小さな範囲に格子状の金属配線3が積層されており、たとえば、パッチアンテナ装置の放射素子板として利用可能である。
【0017】
以上のように、本発明に係るアンテナ基材は、アンテナエレメントとして、上記の格子状の金属配線以外に、ストライプ状又は櫛形状に配置される導電性の金属配線層などを利用することができる。また、このような複数の異なるアンテナエレメントが一つの透明基材上に共存していても良い。例えば、格子状、ストライプ状又は櫛形状に配置される金属配線層からなるアンテナエレメントに線上のアンテナエレメントが接続され、線上アンテナエレメントが給電部に接続している構成であってもよい。また、給電部は、板状銅箔でもよく、格子状、ストライプ状又は櫛形状に配置される金属配線層でもよく、線上の金属配線からなっていてもよい。このとき、線上の金属配線は、ケーブルの先端に設置される給電部との接触面積が多くなるように、繰り返し屈曲していること、螺旋状に配置されることが好ましい。
【0018】
前記したいずれのフィルムアンテナ基材において、アンテナエレメントである金属配線層の上に透明な樹脂層(粘着剤層若しくは接着剤層を含む)がさらに積層されていてもよい。この場合には、給電部は露出するようにしてもよいし、同様に樹脂層で覆ってもよい。
【0019】
図5は、他の例のフィルムアンテナ基材の平面図である。この例では、図1に示すフィルムアンテナ基材1のアンテナエレメントである格子状の金属配線層3が、一つの透明基材上に繰り返し配置されている状態をしめす。図5では、左右上下にアンテナエレメントが2回づつ繰り返され、合計4個のアンテナエレメントが配置されているが、その個数等は適宜決定できる。図1に示すような個々のフィルムアンテナ基材は、図5に示すような大判のフィルムアンテナ基材を裁断して得ることができる。
【0020】
図6は、本発明に係るフィルムアンテナ基材の一例を示し、その一部の斜視図を示す。フィルムアンテナ基材10は、透明な支持基材11上に透明な樹脂層12を有する透明基材13の表面にアンテナエレメントである格子状金属配線層14が埋設されている。粘着剤層を支持基材11又は樹脂層12の上に適宜積層して被着体に貼り付けることができる。
【0021】
図7は、本発明に係るフィルムアンテナの他の例を示し、その一部の斜視図を示す。フィルムアンテナ基材10は、支持基材11上に樹脂層12を有する透明基材13の表面にアンテナエレメントである格子状金属配線層14が埋設されており、その上に透明な粘着剤層15が積層されて構成されている。粘着剤層の面を車窓、建物の窓その他の被着体に貼り付けることができる。粘着剤層の変わりに、透明な樹脂層を積層して保護層としても良い。この場合、粘着剤層を支持基材又は樹脂層の上に適宜積層して被着体に貼り付けることができる。
【0022】
本発明におけるフィルムアンテナ基材の透明基材は、特に可視領域で透明性を有することが好ましく、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。
上記透明基材は、その表面のうち金属配線層を埋設する側に金属配線層を埋設するための透明樹脂層を有する。
この透明樹脂層は、熱可塑性樹脂でもよいが、硬化性樹脂が硬化した硬化樹脂であることが好ましい。
また、透明樹脂層は、透明な支持基材上に積層されていることが好ましいが、樹脂層だけで透明基材を構成していてもよい。
【0023】
透明な支持基材としては、ソーダガラス、耐熱ガラス、石英ガラス等のガラス、プラスチック板、樹脂フィルム等がある。中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムは、車載用フィルムアンテナ用として、特にフロントガラスに後貼りで貼合する際の取扱い性が優れている点で、好適に用いられる。
樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等の透明な樹脂が使用される。樹脂フィルムとしては、単層フィルム又は前記樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。樹脂フィルムの厚さは、5〜300μmが好ましい。樹脂フィルムが薄すぎると、しわ、折れなどが発生しやすくなり、取扱性が低下する傾向があり、樹脂フィルムが厚すぎるとコストが高くになり、また、被着体との間で段差が目立ちやすくなる。また、給電部が樹脂層や支持基材で覆われている場合は、導通をとる為にその厚さは、50μm以下と薄い方が好ましく、給電部が樹脂層や支持基材で覆われていない場合は、工程中やフロントガラスへの貼合の際の取扱い性(折れやシワ)を考慮し、50〜300μmと厚い方が好ましい。
【0024】
透明樹脂層を形成するための樹脂としては、前記の通り、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が使用される。
上記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然
ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ
−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポ
リ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類のポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオ
キシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニル
ブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネー
トなどのポリビニルエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポ
リアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノ
キシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシ
ルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレ
ート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイ
ソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレ
ート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシ
ルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピル
メタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリ
レートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポ
リアミド樹脂などが使用可能である。これらのポリマを構成するモノマーは、必要に応じ
て、2種以上共重合させて得られるコポリマとして用いてもよいし、以上のポリマ又はコ
ポリマを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
【0025】
前記硬化性樹脂のうち、活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エ
ポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重
合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能
基として、アクリル基(アクリロイル基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、ビニル
基、アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイ
ル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエ
ーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用
いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、
エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アク
リレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外
線、電子線等が利用される。
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始
剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジ
アゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。
【0026】
また、前記硬化性樹脂のうち、熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ク
ロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル
−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオ
プレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂
、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレ
ンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹
脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリ
ン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで
用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促
進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0027】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポ
キシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、ア
ミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属
塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで
用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を
使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹
脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が
例示される。
【0028】
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又は
メタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48
〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレー
ト(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)
なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリ
レート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、
6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエー
テル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、
アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコ
ールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリ
ントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビト
ールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシア
クリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これ
らの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0029】
なお、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂には、汎用の熱可塑性樹脂が
ブレンドされていてもよい。
また、透明樹脂層には、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤などの添加剤が配合されていてもよい。
前記透明樹脂層の厚さは、少なくとも、金属配線層を埋設させる厚さよりも厚いことが必要である。より確実に金属配線層を樹脂中に埋没させるためには、樹脂層の厚さは、金属配線層を埋設させる厚さの1.5倍以上であることがさらに好ましい。また、樹脂層の厚さは、100μm以下が好ましい。必要以上に厚くしても無駄になるだけある。
【0030】
本発明における金属配線層は、断面形状が台形状のもの又は断面形状が台形状の上部とこれに連続した下部からなる。以下、図面を用いて説明する。
図8は、金属配線層の一部を切り取った斜視図である。図8(a)は、断面形状が台形状の金属配線層であり、図8(b)は、断面形状が台形状の上部とこの上部より幅広の下部からなる金属配線層である。図9は、図8(b)に示す金属配線層の幅方向の断面図であり、断面が台形状の上部16とこの上部に連続しており、この上部より幅広な摧円形状の下部17からなり、上部16の台形状の底辺と下部17の摧円形の弦の部分で一体となっている。図8(b)及び図9において、下部は断面形状が摧円形であるが、これにかぎらない。図8(b)及び図9に示されるような場合には、下部17の上部底辺から突出したような肩部18は、一つの特徴となりうる。なお、上記の摧円形とは、必ずしも真円を切り取った形だけでなく、楕円又は楕円や真円を変形させたような形状を切り取ったものを包含する。例えば、図10(図8(b)に示す金属層配線層の幅方向の断面図の他の例)の(a)、(b)又は(c)であらわされるような形状であってもよい。
また、図8及び図9において、下部の最大幅(したがって金属配線層の最大幅)は、平面部にそってあるが、肩部より下部に最大幅が存在する形状であってもよい。
さらに、金属配線層は、その横断面において、前記したような上部に対し連続している
下部が、上部の最大幅よりも狭い最大幅を有するものであってもよい。また、下部の断面
形状が矩形状であってもよい。
【0031】
金属配線層の寸法として、金属配線層全体の厚さは0.1〜30μmであることが好ましい。1μm未満では、十分に低い抵抗を得ることが困難となる傾向があり、30μmを越えると、抵抗はほとんど変化しないため、材料費、工程時間が増え、コスト的に不利になる。また、以上を考慮して3〜15μmの範囲であることがさらに好ましい。
また、金属配線層の最大幅は1〜50μmであることが好ましい。金属配線層の幅が狭すぎると表面抵抗が上昇する傾向があり、広すぎると可視光透過率が低下し、光電変換層に達する光量が低下するため、光電変換効率が低下する傾向がある。また、以上を考慮して、幅を5〜30μmとすることがさらに好ましい。
【0032】
金属配線層の寸法を図面を用いてさらに説明する。
図11は、金属配線層の横断面図を示す。図11(a)は台形状であり、図11(b)は、台形状の上部とこの上部より幅広な摧円形状の下部が一体となったものである。両者において、上面幅(台形状の上辺の長さ)L1、金属配線層の断面形状における最大幅Lは、それぞれ次のようにすることが好ましい。
【0033】
金属配線層の厚さTは、前記の通り、0.1〜30μmであることが好ましく、3〜15μmの範囲であることがさらに好ましい。
図11(b)における形状である場合、台形形状の上部の厚さT1と下部の厚さT2の合計厚さTが0.1〜30μmの範囲となっていれば、T1とT2の値に制限はないが、樹脂層と金属配線層との密着性をより高めるためには、T2が0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。
【0034】
また、金属配線層の最大幅Lは、前記したとおり1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmとすることがさらに好ましい。
【0035】
図11(b)における形状である場合、上部台形形状の上底の幅L1と下底の幅L2は、最大幅Lが1〜50μmの範囲となり、後述するように、台形形状の側辺の角度が後記する条件を満たせば、その幅に特に制約はない。下部が完全に埋没し、樹脂層が肩部及び上部の一部を被覆するようになると、金属配線層と樹脂層の密着性が向上することになるが、この観点からは、最大幅Lと上部台形形状の下底の幅L2の差は、1.0μm以上であることが好ましい。
【0036】
図11の(a)又は(b)における形状である場合、L1は後記する製法上、1〜40μmとすることが好ましい。
【0037】
図11の(a)及び(b)において、台形状であることは、条件としてその側辺が内側に傾きを持つということであるが、樹脂層に金属配線層を埋設した場合に、上面のみが露出している場合だけでなく、上部の一部が露出している場合にも、その上に積層される粘着材層を良好な被覆状態が実現されているので、耐湿環境下における水分子の侵入による金属配線層の耐腐食性にとって好ましい。台形状の側辺の傾きは、左右のぞれぞれの内角αが30°以上90°未満が好ましく、30度以上80度以下がより好ましく、30度以上60度以下がさらに好ましく、40度以上60度以下が特に好ましい。台形形状の角度が小さいと、台形形状の高さに対して幅が広くなるため、透明性を阻害しやすくなる。また、角度が大きくなるほど、製法上、透明導電膜によって側面が覆われにくくなり、電解質液におかされて腐食されやすくなる。台形状の側辺の傾きは、左右のぞれぞれの内角は、等しくなくてもよい。
【0038】
また、金属配線層の断面形状が台形の部分は、その幅が、上面に向かって全体として狭まっていればよい。上記図面のように勾配α一定勾配で狭まっている必要は必ずしもなく、上面に向かって広がっておらず全体として狭まっていればよい。特に、側面が上面に対して垂直となっている部分がないようにすることが好ましい。
【0039】
前記の金属配線層の断面形状が台形状の部分に相当する側面は、必ずしも平面ではない。この場合には、図12にその金属配線層の横断面図を示すように、前記の勾配αは、台形の高さhと台形の側辺の幅s(水平方向で台形の側辺の幅方向)を求め、
【数1】

によってαを決定する。
αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上80度以下がより好ましく、30度以上60度以下がさらに好ましく、40度以上60度以下が特に好ましい。
【0040】
金属配線層のライン間隔は50μm以上の範囲とすることが好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。本発明における金属配線層の開口率は50%以上が好ましく、60%以上がさらに好ましい。ライン間隔が大きくなり過ぎると、表明抵抗の低下効果が低下するため、ライン間隔は1000μm(1mm)以下とするのが好ましく、特に100〜400μmであることが好ましい。なお、ライン間隔は、金属配線層で囲まれる幾何学図形等の組合せで複雑となる場合、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。
また、金属配線層のライン間隔は、金属配線層の厚さ及び幅を考慮して、同質の素材の適当な厚さの板状金属箔とアンテナエレメントとして等価となる範囲が好ましい。
【0041】
本発明における金属配線層は、少なくとも上面が露出した状態で全体又は一部が樹脂層に埋設されていることが好ましい。これにより、アンカー効果が発現するので金属配線層の透明樹脂層への密着性が向上する。
図13及び図14に、金属配線層が樹脂層に埋設されている状態を示す部分断面図である。図13(a)では、断面形状が台形の金属配線層14が一部、透明樹脂層6に埋設されている状態を示し、図13(b)は、上面が透明樹脂層12からは露出しながら金属配線層1全体が透明樹脂層12に埋設されている状態を示す。図14(a)は、断面が台形状の上部16とこの上部より幅広な下部17が、上部16の台形状の底辺と下部17の摧円形の弦の部分で一体となっている金属配線層の下部17全体が樹脂層12に埋設されている状態を示す。図14(b)は、同様の金属配線層が上部16の上面を含む一部が透明樹脂層12からは露出した状態で透明樹脂層6に埋設されている状態を示す。また、図14(c)は、同様の金属配線層が上部16の上面のみ樹脂層12からは露出した状態で樹脂層12に埋設されている状態を示す。これらの何れの場合も金属配線層の最大幅の部分は、樹脂層12に埋設されている。
【0042】
本発明に係るフィルムアンテナ用基材は、前記透明樹脂層に少なくとも部分的に埋設されている金属配線層が積層されている。図13及び図14におけるでは、金属配線層14及び透明樹脂層12の上に透明な粘着剤層を積層することにより、被着体(例えば、自動車の車体の前部または後部のガラスなど)への貼着を可能にすることができる。
【0043】
上記粘着剤層を形成するための樹脂としては、熱可塑性樹脂でもよいが、硬化性樹脂が硬化した硬化樹脂であることが好ましく、前記した透明樹脂層を形成するための樹脂と同様のものが使用できる。さらには、自動車の車体の前部や後部のガラスや透明基材と充分に接着している為に、硬化後に粘着性を有していることが好ましく、さらには、車載用である場合に視認性が低下せず、かつ、美観を損なわないように変色が起きない程度に充分な耐光性を有することが好ましい。
【0044】
粘着剤層の厚さは、当該金属配線層の上部と当該透明樹脂層から成る平面に形成され、当フィルムアンテナ用電極基材の透明性が十分に確保され、車載の前部または後部のガラスとの十分な接着に使用する厚さとして、10〜300μmが好ましい。
【0045】
当該金属配線層の上部と当該透明樹脂層から成る平面の表面粗さの最大高さRz〔JIS B 0601(2001年)に規定されるもの〕が4μm以下であると、ロール・トゥ・ロール(Roll−to−Roll)の工程を円滑に行うことができ、従って、透明基材への金属配線層の積層、上記表面への接着剤、保護樹脂等の塗布などを効率よく行うことができ、生産性の向上及び低コストの達成が可能となる。
【0046】
本発明に係るフィルムアンテナ基材の製造法について、説明する。
本発明に係るフィルムアンテナ基材は、まず、めっき用導電性基材上に金属配線層をめっきにより形成する金属配線層作製工程、その後、めっき用導電性基材上に形成された金属配線層を前記の透明基材に転写する転写工程を含む方法により行うことができる。樹脂層に金属配線層を埋設する工程は、前記の転写工程において行われるか又は転写工程の後に行われる。
【0047】
上記金属配線層作製工程に使用されるめっき用導電性基材は、パターン状のめっき部を有する導電性基材であって、導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広なめっきを形成するための凹部(めっき部)が形成されている。この凹部の底面には導電性材料が露出している。
【0048】
上記導電性基材に用いられる導電性材料は、その露出表面に電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが特に好ましい。また、その基材は表面に電解めっきにより形成された金属層を接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層との密着力が低く、容易に剥離できるものであることが好ましい。このような導電性基材の材料としてはステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料、ニッケルなどが特に好ましい。
【0049】
前記の導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、シート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。導電性基材をロールに巻きつけて使用する場合、ロールとして導電性のものを使用し、ロールと導電性基材が容易に導通するようにしたものが好ましい。
【0050】
絶縁層の厚さは、凹部の深さに対応する。凹部の深さは、析出するめっきの厚さとも関係するため、目的に応じて適宜決定される。絶縁層の厚さは、0.10μm以上20μm以下の範囲であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下の範囲であることがより好ましい。絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。絶縁層の厚さは、1〜5μmであることが特に好ましい。
【0051】
上記の絶縁層は、ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとする)薄膜のうち、絶縁性を有するものにて形成することができる。DLC薄膜は、特に、耐久性、耐薬品性に優れているため、特に好ましい。
さらに、絶縁層をAl、SiOのような無機材料で形成することもできる。
【0052】
凹部又は絶縁層の形状は、目的応じて適宜決定されるが、平面形状が、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などの幾何学図形があり、これらを適宜組み合わせた模様としてもよい、これらの単位は、単独で又は2種類以上組み合わせて繰り返されることが可能である。一つのめっき用導電性基材において、凹部の形状と絶縁層の形状は、互いに対応した形状となる。
アンテナエレメントの作製の観点からは、溝状の凹部が格子状、ストライプ状又は櫛形状になるように絶縁層を形成することが好ましい。
【0053】
本発明の一例を図面を用いて説明する。
図15は、本発明におけるめっき用導電性基材の一例を示す部分斜視図である。図16は、図15のA−A断面図を示す。図16の(a)は凹部の側面が平面的であるが、(b)は凹部の側面になだらかな凹凸がある場合を示す。めっき用導電性基材51は、導電性基材52の上に絶縁層53が積層されており、絶縁層53に凹部54が形成されており、凹部54の底部は、導電性基材52が露出している。凹部54の底部は、導電性基材に導通している導体層であってもよい。
この例においては、絶縁層53は、幾何学図形としては正方形であり、この正方形の周りに溝状の凹部54が格子状に形成されている。
導電性基材52と絶縁層53の間には、絶縁層53の接着性の改善等を目的として、導電性又は絶縁性の中間層(図示せず)が積層されていてもよい。または、凹部16は、その幅が、開口方向に向かって全体として幅広になっている。図面のよう勾配αで一定に幅広になっている必要は必ずしもない。めっきにより形成される導体層パターンの剥離に問題がなければ、凹部は、開口方向に向かって幅が狭くなっている部分があってもよいが、このような部分がない方が良く、凹部は開口方向に向かって狭まっておらず全体として広がっていることが好ましい。特に、凹部の一側面がその対面と共に、底面に対して垂直となっている部分がないようにすることが好ましいが、高さ方向で1μm以上そのような部分が続かないようにすることでもよい。このようなめっき用導電性基材であれば、それを用いてめっきを行った後、析出した金属層をめっき用導電性基材から剥離するに際し、金属配線層と絶縁層との間の摩擦又は抵抗を小さくすることができ、その剥離がより容易になる。
【0054】
凹部の側面は、必ずしも平面ではない。この場合には、図16(b)に示すように、前記の勾配αは、凹部の高さh(図16(b)において、これは、絶縁層の厚さとなる)と凹部の側面の幅s(水平方向で凹部の側面の幅方向)を求め、
【数2】

によってαを決定する。
αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上80度以下がより好ましく、30度以上60度以下が特に好ましい。この角度が小さいと作製が困難となる傾向があり、大きいと凹部にめっきにより形成し得た金属層(導体層パターン)を剥離する際、又は、透明基材に転写する際の抵抗が大きくなる傾向がある。
【0055】
本発明のめっき用導電性基材における絶縁層の平面形状及びその厚さ若しくは凹部の深さは、本発明のめっき用導電性基材を用いて得られる金属配線層にとって好ましい形状を考慮して適宜決定される。
【0056】
また、絶縁層の厚さは、前記と同様であるが、これに対応するように、本発明のめっき用導電性基材における凹部54の深さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。
【0057】
本発明のめっき用導電性基材において、図16に示すような凹部54の幅は、底部の幅d′が1〜40μmで有ることが好ましい。d′が小さすぎると作製が難しくなり、大きすぎると線福が大きくなる傾向がある。開口部の幅dは、d′、絶縁層の厚さ及び角度αから決まるが、1〜40μmが好ましい。また、凹部54の開口部の幅dは10〜25μm、底部の幅d′は5〜20μmであることが特に好ましい。凹部54の中心間隔(ラインピッチ)は50〜1000μmであることが好ましく、特に100〜400μmであることが好ましい。溝の幅及びその間隔は、可視光透過性を考慮して金属配線層のパターンの開口率を好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上とすることを考慮して決定する。
なお、本発明において、凹部の中心間隔(ラインピッチ)は、凹部によって形成されている絶縁層の図形パターンが複雑な図形であったり、複数の図形の組み合わせであったりして簡単に決定できない場合は、パターンの繰り返し単位を基準としてその面積を正方形の面積に換算し、その一辺の長さであると定義する。
【0058】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法としては、導電性基材の表面に、導電性基材を露出させている凹部によって幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を含む。
この工程は、(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程、(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程を含む。
【0059】
上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程は、フォトリソグラフ法を利用して、レジストパターンを形成する方法を利用することができる。
この方法は、
(a−1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(a−2)感光性レジスト層を導体層パターンに対応したマスクを通して露光する工程及

(a−3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
【0060】
また、上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程は、
(b−1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(b−2)感光性レジスト層に導体層パターンに対応した部分にマスクをせずレーザー光を照射する工程及び(b−3)レーザー光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程を含む。
【0061】
感光性レジストとしては、よく知られたネガ型レジスト(光が照射された部分が硬化する)を使用することができる。また、このとき、マスクもネガ型マスク(凹部に対応する部分は光が通過する)が使用される。また、感光性レジストとしてはポジ型レジストを用いることができる。これらの方式に対応して上記a法及びb法における光照射部分が適宜決定される。
【0062】
具体的方法として、導電性基材上にドライフィルムレジスト(感光性樹脂層)をラミネートし、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することができる。また、凸状パターンは、導電性基材に液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥するかあるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することもできる。液状レジストは、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。
【0063】
上記において、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後に、マスクを介して露光する代わりにレーザー光などでマスクを使用せず直接に露光する方法を採用することもできる。光硬化性樹脂にマスクを介して又は介さずして活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。
導電性基材のサイズが大きい場合などはドライフィルムレジストを用いる方法が生産性の観点からは好ましく、導電性基材がめっきドラムなどの場合は、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザー光などで直接に露光する方法が好ましい。
【0064】
前記において、感光性レジストの代わりに熱硬化性樹脂を用い、レーザー光の照射により熱硬化性樹脂の不要部を除去する方法によっても行うことができる。
【0065】
印刷法を用いてレジストパターン(凸状パターン)を形成することができるが、この場合には、レジストパターンの印刷方法としては様々な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凸版オフセット印刷、凸版反転オフセット印刷、凹版印刷、凹版オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いることができる。レジストとしては光硬化性又は熱硬化性の樹脂が使用できる。印刷後、光照射又は熱によりレジストを硬化させる。
【0066】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法の一例を図面を用いて説明する。
図17は、めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を示す断面図である。
【0067】
導電性基材52の上に感光性レジスト層(感光性樹脂層)55形成されている(図17
(a))。
この積層物の感光性レジスト層(感光性樹脂層)55に対し、フォトリソグラフ法を適用して感光性レジスト層17をパターン化する(図17(b))。パターン化は、パターンが形成されたフォトマスクを感光性レジスト層55の上に載置し、露光した後、現像して感光性レジスト層17の不要部を除去して突起部56を残すことにより行われる。突起部18の形状とそれからなる凸状パターンは、導電性基材52上の凹部53とそのパターンに対応するよう考慮される。
【0068】
この時、突起部56の断面形状において、その側面は、導電性基材に対して垂直である
こと、又は、突起部56が導電性基材52に接する端部に対して、突起部56の側面上方の少なくとも一部がその端部に覆い被さるような位置にあることが好ましい。突起部56の幅で言う場合は、凸状パターン幅の最大値dは、凸状パターンと導電性基材52に接する幅dと等しいか大きくすることが好ましい。これは、形成される密着性のよい絶縁層の凹部幅はdによって決定されるからである。ここで、突起部52の断面形状で、突起部52の幅の最大値dが突起部56と導電性基材2に接する幅dと等しいか大きくする方法としては、突起部56の現像時にオーバ現像するか、形状がアンダーカットとなる特性を有するレジストを使用すれば良い。dは凸部の上部で実現されていることが好ましい。
除去可能な凸部のパターンを形成する突起部56の形状は、凹部の形状に対応づけられるが、その作製の容易性から、最大幅1μm以上、間隔が1μm以上、高さが1〜50μmであることが好ましい。めっき用導電性基材を、光透過性電磁波遮蔽部材用の導体層パターンを作製するために使用するときは、突起部6は、最大幅1〜40μm、間隔が50〜1000μm及び高さ1〜30μmであることがそれぞれ好ましい。特に最大幅3〜10μm、間隔が100〜400μmであることが好ましい。また、めっき用導電性基材を、穴明き金属箔を作製するために使用するときは、前記したような絶縁層57が形成されるように、平面形状が適宜の大きさの円形又は矩形である突起部を適当な間隔に配置する。
【0069】
前記した(B)除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層
を形成する工程について、説明する。
突起部56からなる凸状パターンを有する導電性基材52の表面に絶縁層57を形成す
る(図17(c))。
【0070】
絶縁層としてDLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イ
オンプレーティング法、アーク放電法、イオン化蒸着法等の物理気相成長法、プラズマC
VD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温か
ら制御できる高周波やパルス放電を利用するプラズマCVD法が特に好ましい。
【0071】
上記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。上記のガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして上記した炭素源と水素ガスとの混合物、上記した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0072】
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、金属板等の導電性基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
上記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
中間層は、前記したようなドライコーティング法により形成させることができる。
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
【0073】
絶縁層をAl、SiOのような無機材料で形成する場合にも、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。例えばスパッタリング法で形成する場合には、ターゲットをSiまたはAlにして反応性ガスとして酸素、窒素などの導入することでSiO、Siなどの酸化物、窒化物を成膜することができる。また、イオンプレーティング法を用いる場合にはSiやAlを原料とし、電子ビームをこれらに照射することで蒸発させ、基板に成膜することができる。その際に、酸素、窒素、アセチレンといった反応性ガスを導入することで酸化物、窒化物、炭化物を成膜することができる。
また、CVD法で成膜する場合には金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物などのような化合物ガスを原料とし、それらの化学反応を利用して成膜することでできる。酸化シリコンのCVDは、例えばTEOS、オゾンを用いたプラズマCVDで行える。窒化シリコンのCVDは、例えばアンモニアとシランを用いたプラズマCVDで行える。
【0074】
次に、前記した(C)絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程について説明
する。絶縁層57が付いている状態(図17(c)参照)で、突起部56からなる凸状パターンを除去する(図17(d)参照)。
絶縁層の付着しているレジストの除去には、市販のレジスト剥離液や無機、有機アルカリ、有機溶剤などを用いることができる。また、パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば、それを用いることもできる。
剥離の方法としては、例えば薬液に浸漬することでレジストを膨潤、破壊あるいは溶解させた後これを除去することが可能である。液をレジストに十分含浸させるために超音波、加熱、撹拌等の手法を併用しても良い。また、剥離を促進するためにシャワー、噴流等で液をあてることもできるし、柔らかい布や綿棒などでこすることもできる。
また、絶縁層の耐熱が十分高い場合には高温で焼成してレジストを炭化させて除去することもできるし、レーザーを照射して焼き飛ばす、といった方法も利用できる。
剥離液としては、例えば、3%NaOH溶液を用い、剥離法としてシャワーや浸漬が適用できる。
【0075】
導電性基材52上に形成される絶縁層と、突起部56の側面に形成される絶縁層とでは、性質又は特性が異なるようにする。すなわち、硬度が、前者の方が後者より大きい。DLC膜をプラズマCVD法で形成するときは、このようになる。一般に絶縁膜を形成するときに、絶縁材料の移動速度が例えば90度の角度で異なるような場合に、上記のように形成される膜の性質又は特性が異なるようになる。
導電性基材に形成される絶縁層と凸状パターンの側面に形成される絶縁層との境界面の凸状パターンの側面(基材に対して垂直面として)からの距離が、凸状パターンの立位方向に向かって小さくなっておらず、全体として大きくなっていることが好ましい。
凸状パターンの側面(導電性基材に対して垂直面として)とは、凸状パターンの側面が基材に対して垂直面であれば、その面であるが、凸状パターンの側面が基材側に覆い被さるような場合は、凸状パターンの側面が導電性基材で終わる地点から垂直に立ち上げた垂直面である。
突起部56を除去するとき、絶縁層は、この境界で分離され、その結果、凹部の側面が、傾斜角αを有するようになる。傾斜角αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上80度以下がより好ましく、30度以上60度以下がさらに好ましく、40度以上60度以下が特に好ましく、DLC膜をプラズマCVDで作製する場合、ほぼ40〜60度に制御することが容易になる。すなわち、凹部54は、開口方向に向かって幅広になるように形成される。傾斜角αの制御方法としては、突起部56の高さを調整する方法が好ましい。突起部56の高さが大きくなるほど、傾斜角αを大きく制御しやすくなる。
【0076】
上記の絶縁層の形成において、導電性基材はレジストの影にならないので、導電性基材上の絶縁層は性質が均一である。これに対し、凸状パターンの側面への絶縁層の形成は、凸状パターンの側面が導電性基材上の膜厚方向に対し角度を有しているため、形成される絶縁層(特にDLC膜)は、導電性基材上の絶縁層と同じ特性(例えば、同じ硬度)の絶縁層が得られない。このような異質な絶縁層の接触面においては、絶縁層の成長に伴い絶縁層の境界面が形成され、しかも、その境界面は絶縁層の成長面であることから、滑らかである。このため、突起部からなる凸状パターンを除去するとき、絶縁層(特にDLC膜)は、この境界で容易に分離される。さらに、この境界面、即ち、凹部側面となる傾斜角αは、導電性基材上の膜厚方向に対し突起部の側面で絶縁層の成長が遅れるため、結果として、境界面の傾斜角は、上記のように制御される。
【0077】
本発明において導電性基材上に形成された絶縁層の硬度は、10〜40GPaであることが好ましい。硬度が10GPa未満の絶縁層は軟質であり、本導電性基材をめっき用版として用いる際に、繰り返し使用における耐久性が低くなる。硬度が40GPa以上では、導電性基材を折り曲げ等の加工をした際に基材の変形に追随できなくなり、絶縁層にひびや割れが発生しやすくなる。導電性基材上に形成される絶縁層の硬度は、より好ましくは12〜30GPaである。
これに対して、凸部側面に形成される絶縁層の硬度は1〜15GPaであることが好ましい。凸部側面に形成される絶縁層は、少なくとも導電性基材上に形成される絶縁層の硬度よりも低くなるように形成しなければならない。そうすることにより両者間に境界面が形成され、後の絶縁層の付着した突起部からなる凸状パターンを剥離する工程を経た後に、幅広な凹部が形成されることになる。突起部側面に形成される絶縁層の硬度は1〜10GPaであることがより好ましい。
【0078】
絶縁層の硬度は、ナノインデンテーション法を用いて測定することができる。ナノインデンテーション法とは、先端形状がダイヤモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を薄膜や材料の表面に押込み、そのときの圧子にかかる荷重と圧子の下の射影面積から硬度を求める。ナノインデンテーション法による測定として、ナノインデンターという装置が市販されている。導電性基材上に形成された膜の硬度はそのまま導電性基材上から圧子を押し込んで測定することができる。また、凸部側面に形成される膜の硬度を測定するためには、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、断面から凸部側面に形成された絶縁層に圧子を押し込んで測定することができる。通常ナノインデンテーション法では圧子に1〜100mNの微少荷重をかけて硬度測定を行うが、本発明では3mNの荷重で10秒間負荷をかけて測定した値を硬度の値として記載している。
このようにして、めっき用導電性基材1を作製することができる。
【0079】
図18は、中間層を有するめっき用導電性基材とその前駆体の断面図を示す。
突起部6からなる凸状パターンが形成された導電性基材52の表面に、絶縁層57を形成する前に、中間層58を形成することが好ましい(図18(c′))。中間層としては、前記したものが使用でき、その形成方法も前記したとおりである。中間層58を形成した場合、得られるめっき用導電性基材は、凹部54の底部は、導電性基材52が露出しており、それ以外では、中間層58の上に絶縁層57が形成されている(図18(d′))。また、中間層は、凸状パターン56の形成前に、導電性基材52の表面に形成しても良い。この後、その表面に、前記したように導電性基材を露出させている凹部によって幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を行っても良い。この場合、中間層として、電界めっきが十分可能な程度に導電性のものを使用した場合、凹部の底部はその中間層のままでよいが、十分な導電性を有していない場合は、ドライエッチング等の方法により、凹部の底部の中間層を除去し、導電性基材52を露出させる。
【0080】
前記金属配線層作製工程において適用されるめっき法は公知の方法を採用することができる。めっき法としては、電解めっき法、無電解めっき法その他のめっき法を適用することができるが、めっき速度や材料コストを考慮すると、電解めっき法が最も好ましい。
電解めっきについてさらに説明する。例えば、電解銅めっきであれば、めっき用の電解浴には硫酸銅浴、ほうふっ化銅浴、ピロリン酸銅浴、または、シアン化銅浴などを用いることができる。このときに、めっき浴中に有機物等による応力緩和剤(光沢剤としての効果も有する)を添加すれば、より電着応力のばらつきを低下させることができることが知られている。また、電解ニッケルめっきであれば、ワット浴、スルファミン酸浴などを使用することができる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。さらに、電解金めっきの場合は、シアン化金カリウムを用いた合金めっきや、クエン酸アンモニウム浴やクエン酸カリウム浴を用いた純金めっきなどが用いられる。合金めっきの場合は、金−銅、金−銀、金−コバルトの2元合金や、金−銅−銀の3元合金が用いられる。他の金属に関しても同様に公知の方法を用いることができる。電界めっき法としては、例えば、「現場技術者のための実用めっき」(日本プレーティング協会編、1986年槇書店発行)第87〜504頁を参照することができる。
【0081】
めっきによって出現又は析出する金属(金属配線層の金属)としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ニッケル、鉄、クロム等の導電性を有するものが使用されるが、20℃での体積抵抗率(比抵抗)が20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むことが望ましい。本発明により得られる構造体を電磁波遮蔽シートとして用いる場合には電磁波を電流としてアースするためにこれを構成する金属は導電性が高い方が電磁波遮蔽性に優れるためである。このような金属としては、銀(1.62μΩ/cm)、銅(1.72μΩ/cm)、金(2.4μΩ/cm)、アルミニウム(2.75μΩ/cm)、タングステン(5.5μΩ/cm)、ニッケル(7.24μΩ/cm)、鉄(9.0μΩ/cm)、クロム(17μΩ/cm、全て20℃での値)などがあるが特にこれらに限定するものではない。できれば体積抵抗率が10μΩ/cmであることがより好ましく、5μΩ/cmであることがさらに好ましい。金属の価格や入手の容易さを考慮すると銅を用いることが最も好ましい。これらの金属は単体で用いてもよく、さらに機能性を付与するために他の金属との合金でも構わないし、金属の酸化物であってもよい。ただし、体積抵抗率が20μΩ/cmである金属が成分として最も多く含まれていることが導電性の観点から好ましい。
【0082】
前記した導電性基材の凹部にめっきにより形成される金属配線層の厚さ(めっき厚さ)、幅、間隔等の調整は、前記した金属配線層について説明したとおりである。凹部へのめっきの程度は、めっき液の選択、めっき液組成(例えば、光沢剤の選択や使用量)、めっき時間、電流密度等を適宜調整することによって行うことができる。
【0083】
本発明における金属配線層は、前記しためっき用導電性基材の表面形状に対応した形状となる。その形状及び寸法については前記したとおりである。
【0084】
前記した金属配線層作成工程において、めっき用導電性基材上に作製された金属配線層は、次の転写工程において、透明基材に転写される。
【0085】
透明樹脂層については前記したとおりであるが、転写工程においては、その透明樹脂層は、粘着性を有しているもの又は粘着性を示すもの(以下、これらを、「粘着性透明樹脂層」という)からなる。この粘着性透明樹脂層には、必要に応じて、架橋剤、硬化剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合していてもよい。また、粘着性透明樹脂層は、加熱したときに粘着性を発現するものであっても良い。
【0086】
粘着性透明樹脂層の厚さは、薄すぎると十分な強度が得られないため、めっきで形成
された金属配線層を転写する際に、金属配線層が粘着性透明樹脂層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着性透明樹脂層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着性透明樹脂層の厚さが厚いと、粘着性透明樹脂層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に、粘着性透明樹脂層の変形量が多くなるため、粘着性透明樹脂層の厚みは50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
粘着性透明樹脂層を、めっき用導電性基材の金属配線層が形成されている面に貼り合わせる際には、粘着性透明樹脂層の特性に応じて、特に、粘着性透明樹脂層が適度な流動性又は粘着性を発揮するために、必要ならば加熱される。透明基材を粘着性透明樹脂層を保持する支持基材を有する場合、支持基材は、このような加熱に際しても形状を維持する程度に十分な耐熱性を有することが好ましい。
【0087】
上記のめっき用導電性基材を用いフィルムアンテナ基材の作製例を次に示す。
図19は、フィルムアンテナ基材の作製例の前半を示す断面図である。また、図20はその後半を示す断面図である。
上記のめっき用導電性基材上に、前記しためっき工程により、凹部内にめっきを施し、金属配線層59を形成する(図19(e))。ついで、別個に準備された転写用基材である透明支持基材付き透明樹脂層60、これは、透明支持基材61に透明樹脂層62が積層されている。金属配線層59が形成されためっき用導電性基材に透明支持基材付き透明樹脂層60を透明樹脂層62を向けて圧着する準備を行う(図19(f))。
ついで、金属配線層59が形成されためっき用導電性基材に透明支持基材付き透明樹脂層60を透明樹脂層62を向けて圧着する(図20(g))。このとき、透明樹脂層62が絶縁層57に接触してもよい。
ついで、透明支持基材付き透明樹脂層60を引きはがすと金属配線層59は、その透明樹脂層62に接着してめっき用導電性基材の凹部54から剥離され、この結果、金属配線層付き透明基材63(フィルムアンテナ基材)が得られる(図20(h))。
【0088】
図21は、めっき用導電性基材の凹部内にめっきにより金属配線層59を形成した状態を示す断面図、図22は、その凹部内の金属配線層59を転写して得られた金属配線層付き透明基材63の断面図を示す。
めっき用導電性基材にめっきした際、めっきは等方的に生長するため、導電性基材の露出部分から始まっためっきの析出は、それが進むと凹部からあふれて絶縁層に覆い被さるように突出して析出する。透明基材への貼着の観点から、突出するようにめっきを析出させることが好ましい。しかし、このとき、めっきの析出を凹部54内に収まる程度に施しても良い。この状態を図21に示す。この場合でも、図22に示すように、透明基材を圧着することにより、金属配線層59を透明樹脂層62に転着して、めっき用導電性基材から金属配線層59を剥離して、金属配線層付き透明基材63を作製することができる。この金属配線層付き透明基材63において、金属配線層は、樹脂層に埋設されていないので、さらに、適宜加熱しながら、プレス、加圧ローラ等により、金属配線層を樹脂層に埋設して、本発明おけるフィルムアンテナ基材とする必要がある。
【0089】
前記金属配線層付き透明基材(フィルムアンテナ基材)63(図20(h)又は図22に示すもの)は、給電部を備え、それに必要なケーブルを接続した上で、使用に供し、ガラス板、例えば、自動車のフロントガラス若しくはリアガラス、建物の窓硝子等に、その粘着剤層62を押し当てて貼着し、アンテナとすることができる。
【0090】
図23に他の態様のフィルムアンテナ基材の断面図を示す。図23において、支持基材61に積層されている透明な粘着剤層62上にアンテナエレメントである金属配線層59が貼り付けられ、この上に透明な他の基材64(透明なプラスチックフィルム等)が積層されており、金属配線層59は、粘着剤層62に埋設されている。これは、図20(h)の金属配線層付き透明基材(フィルムアンテナ基材)63の金属配線層59側を他の基材64に加熱又は非加熱下に加圧することにより作製することができる。この場合、粘着剤層62が十分な流動性を有するものであるか十分な流動性を有するうちに、適度な圧力を加えることにより金属配線層59を粘着剤層62に埋設する。支持基材61及び基材(他の基材)64として、透明性を有し、しかもその表面の平滑性が優れるものを使用することにより、透明性が高いフィルムアンテナ基材とすることができる。
【0091】
図24に、さらに他の態様のフィルムアンテナ基材の断面図を示す。支持基材61に積層されている粘着剤層62上に金属配線層59が貼り付けられており、これらは、透明な保護樹脂又は粘着剤65によって被覆されている。粘着剤65により被覆することにより、このフィルムアンテナ基材は、そのまま、ガラス板等の被着体に貼着可能である。なお、粘着剤65の層は、使用時まで剥離フィルムにより保護されていてもよい。
【0092】
図25は、アンテナフィルム基材の使用状態の一例を示す断面図である。図24に示すフィルムアンテナ基材が、支持基材61の金属配線層59がある面とは反対の面で、接着剤層66を介してガラス板67に貼り合わされている。アンテナフィルム基材の給電部、それに接続されているケーブル等は省略している。ガラス板67は自動車のフロントガラス若しくはリアガラス、建物の窓硝子である。
【0093】
また、本発明で用いられる導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができる
ことは前記したが、さらに、この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい
。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好
ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめ
っきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめ
っき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いる
ことにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となる
ため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。
【0094】
回転体を用いて、電界めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図26を用いて説明する。図26は、導電性基材としてドラム電極を用いた場合に、ドラム電極を回転させつつ、金属を電界めっきにより連続的に析出させ、また、析出した金属を連続的に剥離する装置の概念を示す断面図(一部正面図)である。
【0095】
すなわち、電解浴100内の電解液101が陽極102とドラム電極などの回転体103の間のスペースに配管104とポンプ105により供給されるようになっている。陽極102と回転体103の間に電圧をかけ、回転体103を一定速度で回転させると、回転体103の表面に金属が電解析出し、電解液101の外で、回転体103表面の導電性の凹部に析出した金属配線層106に、粘着剤層を積層した可撓性で透明な支持基材(例えば、フィルム)である透明基材107の粘着剤層を圧着ロール108で圧着し、連続的に回転体103から金属配線層106を剥離しつつ、表面に粘着層を含む透明基材107にその金属配線層106を転写し、金属配線層付き基材(フィルムアンテナ基材)109とする。これはロール(図示せず)に巻き取ることができる。このようにして金属配線層付き基材109を製造することができる。なお、上記の回転体103の表面には、凹部とそれにより描かれている幾何学図形状の絶縁層が形成されている。また、回転中の回転体103から、凹部に析出した金属配線層106が剥離させられた後で、電解液101に浸かる前に、回転体103表面をエッチング洗浄したり(図示せず)してもよい。なお、図示していないが陽極102の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水切りロールを設置しても良く、水切りロールによってせき止められた電解液は陽極102の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間に消費された銅イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する態様を加えることが好ましい。
【0096】
さらに、本発明で用いられる導電性基材として、フープ状の導電性基材を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。
フープ状の導電性基材に関しては、帯状の導電性基材の表面に絶縁層と凹部を形成した後、端部をつなぎ合わせるなどして作製できる。導電性基材の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的小さい材料を用いることが好ましい。フープ状の導電性基材を用いた場合には、黒化処理、防錆処理、転写等の工程を、1つの連続した工程で処理可能となるため導電性パターン付き基材の生産性が高く、また、導電性パターン付き基材を連続的に作製して巻物として製品とすることができる。フープ状の導電性基材の厚さは適宜決定すればよいが、100〜1000μmであることが好ましい。
【0097】
フープ状の導電性基材を用いて、電界めっきにより形成された金属配線層を連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図27を用いて説明する。図27は、導電性基材としてフープ状導電性基材を用いた場合に、連続的に金属配線層を電界めっきにより析出させながら剥離する装置の概念図である。
【0098】
フープ状の導電性基材110を、搬送ロール111〜128を用い、前処理槽129、めっき槽130、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次とおり、周回運動するように設置する。前処理槽129で導電性基材110の脱脂もしくは酸処理等の前処理を行う。その後、めっき槽130で、導電性基材110上に金属を析出させる。この後に、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次通して、それぞれで、導電性基材110上に析出した金属の表面を黒化し、さらに防錆処理する。各処理工程後にある水洗槽は、1槽しか図示していないが、必要に応じて複数の槽を用いたり、各処理工程の前に他の前処理槽等があってもよい。次いで、接着層(樹脂層)を積層した可撓性で透明は支持基材(例えば、プラスチックフィルム)である透明基材136を導電性基材110の導電性の凹部に析出した金属配線層が転写されるように搬送ロール128上の導電性基材110と圧着ロール137の間を通し、上記金属配線層を透明基材136に転写して、金属配線層付き基材138を連続的に製造することができる。得られる金属配線層付き基材(フィルムアンテナ基材)138は、ロール状に巻き取ることができる。必要に応じて、圧着ロール137を加熱することもできるし、図示はしないが、透明基材136を、圧着ロールを通過させる前にプレヒート槽を通して予備加熱してもよい。また、金属配線層が転写された透明基材の巻取りには、必要に応じて、離型PET等を挿入してもよい。さらに、金属が転写された後、フープ状導電性基材は、上記の工程を繰り返すこととなる。このようにして、連続的に、高い生産性で金属配線層付き基材を製造することができる。
【0099】
透明基材に転写された金属配線層は、その一部又は上面を露出した状態で全部が透明基材の樹脂層に埋設されていることが好ましい。その態様は前記したとおりであるが、そのために、前記転写工程において、金属配線層を樹脂層に埋設するか又は転写工程の後で金属配線層を樹脂層に埋設する工程を行う。
【0100】
本発明における金属配線層の樹脂層への埋設方法を記載するが、これに限るものではない。
まず、めっき用導電性基材の凹部に析出しためっきを透明基材に転写した直後においては、金属配線層の少なくとも最大幅となる部分以下が既に樹脂層に埋没していてもよいし、埋没していなくてもよい。転写した直後において金属配線層の少なくとも最大幅となる部分以下を既に埋没させるためには、転写時における透明基材の樹脂層の流動性を高くする必要がある。それには、例えば、ラミネート温度を高くする方法、樹脂層の組成として反応性の低分子量物を添加しておく方法、樹脂層として液状樹脂を使用する方法等がある。また、この場合、透明基材がめっき用導電性基材に接触している状態で、樹脂層を硬化反応又は個化させてから、透明基材を剥離することが好ましい。硬化反応は、加熱、紫外線等の活性エネルギー線の照射などによるものであるが、瞬時に硬化させた方が生産性が向上するので、紫外線等の活性エネルギー線の照射による硬化が好ましい。
また、金属配線層を透明基材に転写した直後において、未だ金属配線層の最大幅となる部分が樹脂層に埋没していない場合(全く又はほとんど埋設されていない場合を含む)には、別工程で金属配線層を樹脂層中に少なくとも金属配線層の最大幅となる部分以下を樹脂層に埋没させる必要がある。そのためには、金属配線層を透明基材に転写後、金属配線層の付いている透明基材をロールラミネータやプレスなどで、必要に応じて加熱又は活性エネルギー線しながら、加圧して少なくとも金属配線層の少なくとも最大幅の部分以下を樹脂中に埋没させる。このとき、必要に応じて加熱又はエネルギー線を照射して硬化反応を同時に行ってもよく、加熱は流動性を高めるために行ってもよい。また、この場合、表面を保護したり、加圧工程又は後工程で樹脂をUV硬化する場合の酸素遮断を目的に、別途フィルムを金属配線層の付いている透明基材の金属配線層の上から積層しても良い。樹脂層に硬化性樹脂を使用した場合は、加圧と同時に硬化させない場合は、上記の加圧後に加熱又は活性エネルギー線を照射するなどして樹脂層を硬化させることが好ましい。
また、樹脂層に硬化性樹脂を用いた場合には、透明基材を上記の転写に供する前、転写後の埋設工程に供する前に、樹脂層の流動性を調整するために、部分的に硬化反応を行っても良いが、転写前に行うときには、転写に必要な粘着性を損なわない程度に行われる。
【0101】
透明基材の樹脂層は、転写の際にめっき用導電性基材の絶縁層に接触するため、樹脂厚が厚くなると密着性が高くなり、引き剥がしが困難になったり、引き剥がし時にハンチングが発生しめっき折れが発生することがあるので、厚さとしては、50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましいといえるが、この場合樹脂層が硬化性樹脂であるなら、透明基材を転写に供する前に密着性又は流動性を調整するために部分硬化させてもよい。
本発明においては、透明導電層を形成したときの段切れを防止するためには、断面形状において、樹脂層と金属配線層の間に影になるような段差が生じないことが重要であり、このような状態になるように樹脂層に金属配線層を埋設することが重要である。
また、図13(a)、(b)、図14の(b)、(c)において、金属配線層の上部の台形形状における全部(上面を除く)又はその一部までが樹脂層に覆われている。これは転写時又は転写後の埋設工程で、加圧して(さらに、必要に応じて加熱して)樹脂を流動させることにより行う。このためには、樹脂が金属配線層の形状に沿って回り込むように流動することが必要である。従って、金属配線層が図11(a)のような形状をしている場合の厚さT、また、金属配線層が図11(b)のような形状をしている場合の上部の厚さT1が厚いと、樹脂の流動量が大きくなるため、完全に被覆することが困難であったり、あるいは、加熱加圧工程の時間が長くなり生産性が低下することがあるが、これを回避するためには、上記のT又はT1は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。また、金属配線層が図11(b)のような形状をしている場合、T1が薄いと、下部の上方に存在する樹脂厚が薄くなり、密着性向上効果が小さくなるため、T1の厚みは1.0μm以上が好ましい。
【実施例1】
【0102】
(パターン仕様1)
以下の仕様で、パターン形成用のネガフィルムを作製した。光透過部のライン幅が12μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°(正四角形のなかに、ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で、格子状にパターンを120mm角のサイズで形成した。
【0103】
(凸状パターンの形成)
レジストフィルム(フォテックRY3315、10μm厚、日立化成工業株式会社製)を150mm角のステンレス板(SUS316L、#400研磨仕上げ、厚さ500μm、日新製鋼(株)製)の両面に貼り合わせた(図17(a)に対応する)。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、パターン仕様1のネガフィルムを、ステンレス板の片面に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置したステンレス板の上下から、紫外線を250mJ/cm照射した。さらに、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、SUS板の上にライン幅15〜17μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45度の突起部レジスト膜(突起部;高さ10μm)を得た。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面露光されているため、現像されず、全面にレジスト膜が形成されている(図17(b)に対応する)。
【0104】
(絶縁層の形成)
PBII/D装置(TypeIII、株式会社栗田製作所製)によりDLC膜を形成する。チャンバー内にレジスト膜が付いたままのステンレス基板を入れ、チャンバー内を真空状態にした後、アルゴンガスで基板表面のクリーニングを行った。次いで、チャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを導入し、膜厚0.1μmとなるように中間層を成膜した。次いで、トルエン、メタン、アセチレンガスを導入し、膜厚が2〜3μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した(図17(c)に対応する)。
【0105】
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸状パターンの除去)
絶縁層が付着したステンレス基板を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。凸状パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た(図17(d)に対応する)。
凹部の形状は、開口方向に向かって幅広になっており、その凹部側面の傾斜角は、前記境界面の角度と同じであった。凹部の深さは2〜3μmであった。また、凹部の底部での幅は、15〜17μm、開口部での幅(最大幅)は19〜23μmであった。凹部のピッチはピッチ300μmであった。
【0106】
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸70g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、30℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を10A/dmとして、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ6μmになるまでめっきした。めっき用導電性基材の凹部の中とそれからあふれるようにめっきが形成された。
【0107】
(透明基材の作製)
厚さ100μm、120mm角の透明基材であるポリエチレンテレフタレート(PET
)フィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の表面にアクリル系の透明性粘着剤(Tg:−32℃、重量平均分子量:60〜70万)を塗布し、100℃乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布して透明基材上に粘着剤層を形成して透明樹脂層を作製した。乾燥条件は100℃10分間であった。
【0108】
(転写及び埋設)
上記透明基材を粘着剤層の面と、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度70℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.1m/minとした。次いで、めっき用導電性基材に貼り合わせた透明基材を剥離したところ、上記めっき用導電性基材上に析出した銅が転写されていた。さらに、上記で得た銅が転写されている透明樹脂層の銅の上から厚さ38μmのカバーフィルム(E−7002、東洋紡績株式会社製)をロールラミネートで貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度80℃、圧力0.3MPa、ラインスピード0.5m/minとした。
銅が転写された透明基材を一部分切り取り、その断面を、走査型電子顕微鏡写真(倍率
2000倍)にとって、観察した。任意に五カ所選択し、金属配線層の断面形状が図11(b)のような形状であり、上部の上底の幅L1は15〜17μm、下底の幅L2は17〜19μm、角度αは45°、最大幅Lは21〜24μm、LとL2の差は2〜3μmで、上部層の厚みT1は2〜3μm、下部層の厚みT2は3〜4μm、全体の厚みは5〜6μm、ラインピッチ300μmの格子状金属パターンからなる金属配線層付き基材が得られていることを確認した。また、同時に図14(c)に示すように、金属配線層の全部が、その上面が透明樹脂層から露出した状態で樹脂層に埋設されていることを確認した。
【0109】
得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面に、10mm幅テープ(日東電工(株)製 ポリエステルテープ#31B 10mm)を15cm貼り付け引き剥がしたところ、金属配線層の剥離は無かった。
得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面の表面粗さの最大高さRzは1.4μmであった。表面粗さは、微細形状測定機Surfcorder3000(小阪研究所製)を用いて、サンプルサイズ10mm×50mm角で測定した。
上記得られた金属配線層の上面と透明樹脂からなる平面の透明樹脂をガラスにラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度70℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.1m/minとした。得られたガラス付きフィルムアンテナ基材の透過率Yは78%であった。なお、ガラス板のみの透過率は92.2%であった。
【実施例2】
【0110】
<透明基材の作製>
(配合組成物1)
2−エチルヘキシルメタクリレート 70重量部
ブチルアクリレート 15重量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10重量部
アクリル酸 5重量部
アゾビスイソブチロニトリル 0.1重量部
トルエン 60重量部
酢酸エチル 60重量部

温度計、冷却管、窒素導入管を備えた500cm3の三つ口フラスコに、上記した配合組成物1を投入し、穏やかに撹拌しながら、60℃に加熱して重合を開始させ、窒素でバブリングさせながら、60℃で8時間、還流中で攪拌を行い、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂を得た。その後、カレンズ MOI(2−イソシアナトエチルメタクリレート;昭和電工(株)製)5質量部を添加し、穏やかに撹拌しながら50℃で反応させ、側鎖に光重合性官能基を有する反応性ポリマーの溶液1を得た。
得られた反応性ポリマー1は、側鎖にメタクリロイル基を有しており、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は800,000であった。反応性ポリマーの溶液1を100重量部(固形分)に光重合開始剤として2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名イルガキュア907、チバガイギー(株))を1重量部、イソシアネート系架橋剤(商品名コロネートL−38ET、日本ポリウレタン(株)製)を3重量部、トルエンを50重量部添加し、樹脂組成物1とした。
得られた樹脂組成物を、厚さ100μmの支持基材であるポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(Q65FA、帝人デュポンフィルム株式会社製)の表面に、100℃乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布して、支持基材上にUV硬化性を有する粘着剤層を形成して、透明基材を作製した。乾燥条件は、100℃10分間であった。
【0111】
(転写及び埋設)
実施例1と同様のめっき用版を用いて、実施例1と同様にめっき用導電性基材上に銅めっきを施した。
次いで、上記透明基材のUV硬化性を有する透明樹脂層の面と、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度30℃、圧力0.3MPa、ラインスピード1.0m/minとした。次いで、めっき用導電性基材に貼り合わせた透明基材を剥離したところ、上記めっき用導電性基材上に析出した銅が透明基材に転写されていた。
銅が転写されている透明基材の一部を切り取り、その断面を、走査型電子顕微鏡写真(倍率2000倍)にとり、観察し、金属配線層が図11(b)の様な断面形状であること確かめ、また、任意に五カ所選択し、上部層の厚みT1は2〜3μm、下部の厚みT2は3〜4μmであり、下部がその下側の1〜2μmだけ樹脂層に埋没していることを確認した。
さらに、上記で得た銅が転写されている透明基材の銅の上から厚さ38μmのカバーフィルム(E−7002、東洋紡績株式会社製)をロールラミネートで貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度80℃、圧力0.3MPa、ラインスピード0.5m/minとした。この後、金属配線層が形成された面とは反対の面から、照射量1J/cmとなるように、紫外線を照射して、金属配線層付き基材を得た。
この金属配線層付き基材の一部を切り取り、その断面を、走査型電子顕微鏡写真(倍率
2000倍)にとり、観察し、図14(c)に示すように、金属配線配線層の全部が、その上面が樹脂層から露出した状態で樹脂層に埋設されていることを確認し、また、任意に五カ所選択して、金属配線層の上部層の上底の幅L1は15〜17μm、下底の幅L2は17〜19μm、角度は45°、最大幅Lは21〜24μm、LとL2の差は2〜3μmで、上部層の厚みT1は2〜3μm、下部層の厚みT2は3〜4μm、全体の厚みは5〜6μm、ラインピッチ300μmの格子状金属パターンからなる金属配線層付き基材が得られたことを確認した。金属配線層の開口率は84.0%であった。
【0112】
得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面に、10mm幅テープ(日東電工(株)製 ポリエステルテープ#31B 10mm)を15cm貼り付け引き剥がしたところ、金属配線層の剥離は無かった。

得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面の表面粗さの最大高さRzは2.5μmであった。表面粗さは、微細形状測定機Surfcorder3000(小阪研究所製)を用いて、サンプルサイズ10mm×50mm角で測定した。

上記得られた金属配線層の上面と透明樹脂からなる平面にアクリル系の透明性粘着剤(Tg:−32℃、重量平均分子量:60〜70万)ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度70℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.1m/minとした。得られたフィルムアンテナ基材の粘着剤面をガラス板に貼合した。この時のガラス板付きフィルムアンテナ基材の透過率Yは80%であった。なお、ガラス板のみの透過率は92.2%であった。
【実施例3】
【0113】
(転写及び埋設)
実施例1のめっき用導電性基材に、実施例1と同様にめっき用導電性基材上に銅めっきを施した。
また、別個に、厚さ100μmの支持基材であるポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(Q65FA、帝人デュポンフィルム株式会社製)の上に、液状の無用剤型UV硬化型樹脂(商品名:アデカオプトマーKRX−400、旭電化(株)製)を、100mmの幅で10ml滴下し、粘着剤層(紫外線硬化型樹脂層)を形成し、透明基材を作製した。
次いで、銅めっきが施されためっき用導電性基材の上に、上記透明基材をラミネートした。ラミネート条件は、ロール温度30℃、圧力0.1MPa、ラインスピード2.0m/minとした。これにより、粘着剤が一様に広がり銅パターンを被覆した。その後、支持基材側から、照射量1J/cmとなるように、紫外線を照射して粘着剤層を硬化した後、透明基材を剥離して、金属配線層付き基材を得た。剥離転写時のめっき折れは発生しなかった。
この金属配線層付き基材の一部を切り取り、その断面を、走査型電子顕微鏡写真(倍率
2000倍)にとり、観察し、図14(a)に示すように、金属配線層の断面が台形形状である上部が、樹脂層から露出した状態で金属配線層が樹脂層に埋設されていることを確認し、また、樹脂層の厚さが25μmであることを確認し、さらに、任意に五カ所選択して、金属配線層の上部の上底の幅L1は15〜17μm、下底の幅L2は17〜19μm、角度は45°であった。また、最大幅Lは21〜24μm、LとL2の差は2〜3μmであった。上部層の厚みT1は2〜3μm、下部層の厚みT2は3〜4μm、全体の厚みは5〜6μm、ラインピッチ300μmであることを確認した。金属配線層の開口率は84.0%であった。
【0114】
得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面に、10mm幅テープ(日東電工(株)製 ポリエステルテープ#31B 10mm)を15cm貼り付け引き剥がしたところ、金属配線層の剥離は無かった。
得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面の表面粗さの最大高さRzは3.2μmであった。表面粗さは、微細形状測定機Surfcorder3000(小阪研究所製)を用いて、サンプルサイズ10mm×50mm角で測定した。
上記得られた金属配線層の上面と透明樹脂からなる平面にアクリル系の透明性粘着剤(Tg:−32℃、重量平均分子量:60〜70万)をロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度70℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.1m/minとした。得られたフィルムアンテナ基材の粘着剤面をガラス板に貼合した。この時のガラス板付きフィルムアンテナ基材の透過率Yは81%であった。なお、ガラス板のみの透過率は92.2%であった。
【0115】
(比較例1)
実施例2と同様の樹脂組成物を、厚さ100μmの支持基材であるポリエチレンテレフタレート(PET、東洋紡績製、A−4100)に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布して、透明基材を作製した。乾燥条件は、100℃10分間であった。その樹脂組成物面側に、金属箔として選定した厚さ10μmの電解銅箔(日本電解(株)製、PBR10A)をロールラミネートを用いてラミネートした。ラミネート条件は、ロール温度130℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1.0m/minとした。次にこのクラッド材をケミカルエッチングしてエッチングメッシュを得た。ケミカルエッチングの工程は以下のとおりである。銅箔へのドライフィルムレジストラミネートーガラスマスクを用いてのパターン露光―現像(炭酸ナトリウム水溶液)−乾燥。得られたメッシュの高さは10μmであった。また、このエッチングメッシュのエッチング部(接着剤面)は銅箔表面の凹凸を転写しており可視光を乱反射して不透明であった。
得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面の表面粗さの最大高さRzは11.2μmであった。表面粗さは、微細形状測定機Surfcorder3000(小阪研究所製)を用いて、サンプルサイズ10mm×50mm角で測定した。
得られた金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面に、10mm幅テープ(日東電工(株)製 ポリエステルテープ#31B 10mm)を15cm貼り付け引き剥がしたところ、金属配線層は容易に剥離した。
上記エッチングにより得られた金属配線層の上面と接着剤面からなる面にアクリル系の透明性粘着剤(Tg:−32℃、重量平均分子量:60〜70万)をロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度70℃、圧力0.5MPa、ラインスピード0.1m/minとした。得られたフィルムアンテナ基材の粘着剤面をガラスに貼合した。この時のガラス付きフィルムアンテナ基材の透過率Yは45%であった。
【0116】
上記の各サンプルを65℃95%RHの恒湿恒温層に投入し、金属配線層の上面と透明樹脂層からなる平面に、10mm幅テープ(日東電工(株)製 ポリエステルテープ#31B 10mm)を15cm貼り付け引き剥がした結果を表1にしめす。
【0117】
【表1】

○ :剥離無し
× :剥離
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係るフィルムアンテナ基材1の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示すフィルムアンテナ基材1を使用したアンテナ装置の一例を示す平面図。
【図3】本発明に係るフィルムアンテナ基材の他の例を示す平面図。
【図4】本発明に係るフィルムアンテナ基材の他の例を示す平面図。
【図5】本発明に係る他の例のフィルムアンテナ基材の平面図。
【図6】本発明に係るフィルムアンテナの一例を示す一部斜視図。
【図7】本発明に係るフィルムアンテナの他の例を示す一部斜視図。
【図8】金属配線層の一部を切り取った斜視図。
【図9】図8(b)に示す金属層配線層の幅方向の断面図。
【図10】図8(b)に示す金属層配線層の幅方向の他の例の断面図。
【図11】金属配線層の横断面図。
【図12】金属配線層の横断面図。
【図13】金属配線層が樹脂層に埋設されている状態を示す部分断面図。
【図14】金属配線層が樹脂層に埋設されている状態を示す部分断面図。
【図15】本発明におけるめっき用導電性基材の一例を示す部分斜視図。
【図16】図15のA−A断面図。
【図17】めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を示す断面図。
【図18】中間層を有するめっき用導電性基材とその前駆体の断面図。
【図19】フィルムアンテナ基材の作製例の前半を示す断面図。
【図20】フィルムアンテナ基材の作製例の後半を示す断面図。
【図21】めっき用導電性基材の凹部内にめっきにより金属配線層を形成した状態を示す断面図。
【図22】図21に示す凹部内の金属配線層を転写して得られた金属配線層付き基材の断面図。
【図23】他の態様のフィルムアンテナ基材の断面図
【図24】他の態様のフィルムアンテナ基材の断面図
【図25】アンテナフィルム基材の使用状態の一例を示す断面図。
【図26】回転体を用いて金属配線層付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【図27】フープ状のめっき用導電性基材を用いて金属配線層付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【符号の説明】
【0119】
1:フィルムアンテナ基材
2:透明基材
3:金属配線層(アンテナエレメント)
4:スリット
5a、5b:給電部
6:ケーブル
7:アンプ
8a、8b:取り出し線
10:フィルムアンテナ基材
11:支持基材
12:樹脂層
13:透明基材
14:アンテナエレメントである格子状金属配線層
15:上部
16:下部
17:肩部
51:めっき用導電性基材
52:導電性基材
53:絶縁層
54:凹部
55:感光性レジスト層(感光性樹脂層)
56:突起部
57:DLC膜
58:中間層
59:金属配線層
60:透明支持基材付き透明樹脂層
61:透明支持基材
62:透明樹脂層
63:金属配線層付き透明基材(フィルムアンテナ基材)
64:他の基材
65:保護樹脂又は粘着剤
66:接着剤層
67:ガラス板
100:電解浴
101:電解液
102:陽極
103:回転体
104:配管
105:ポンプ
106:金属配線層
107:透明基材
108:圧着ロール
109:金属配線層付き基材(フィルムアンテナ基材)
110:フープ状の導電性基材
111〜128:搬送ロール
129:前処理槽
130:めっき槽(電解浴槽)
131:水洗槽
132:黒化処理槽
133:水洗槽
134:防錆処理槽
135:水洗槽
136:透明基材
137:圧着ロール
138:金属配線層付き基材(フィルムアンテナ基材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂層を含む透明基材上に金属配線層からなるアンテナエレメントが積層されているフィルムアンテナ基材において、上記金属配線層の断面形状は、断面形状全体又は断面形状の上部が台形状であって、当該金属配線層は、少なくとも上面の一部又は上記台形状の一部が透明樹脂層からは露出し、少なくとも最大幅の部分から下の部分が上記透明樹脂層に埋設されてなるフィルムアンテナ基材。
【請求項2】
金属配線層の断面形状の台形部分の高さが0.1〜10μm、断面形状の台形部分の側辺の角度が30〜80°の範囲内である項1記載のフィルムアンテナ基材。
【請求項3】
金属配線層の厚さが0.1〜30μm、最大幅が1〜50μmの範囲である請求項1又は2のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
【請求項4】
金属配線層の開口率が70%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
【請求項5】
金属配線層及び透明樹脂層から成る平面上に粘着剤層が積層されている請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
【請求項6】
上記透明基材の金属配線層が存在する面とは反対面に粘着剤層が設けられている請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
【請求項7】
金属配線層及び透明樹脂層から成る平面上に保護樹脂層又は粘着剤層を介した透明基材が積層されている請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムアンテナ基材。
【請求項8】
(A)導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広となった、めっきを形成するための凹部のパターンが形成されているめっき用導電性基材に、その凹部内に又は凹部からはみ出るようにめっきして断面形状が台形状の金属配線層又は断面形状が台形状の部分とこの部分に連続しており、この部分より幅広の部分からなるアンテナエレメントを構成する金属配線層を形成する工程、(B)上記導電性基材の凹部に析出した金属配線層を表面に樹脂層を含む透明基材に転写する工程を含み、上記の転写の工程中に又は転写工程後で、上記金属配線層の少なくとも上面の一部又は上記台形状の一部又は全部を樹脂層からは露出させながら、上記金属配線層の少なくとも最大幅の部分から下の部分を上記基材の樹脂層に埋設させることを特徴とするフィルムアンテナ基材の製造法。
【請求項9】
上記めっきを形成するための凹部のパターンが形成されている導電性基材が、(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程、(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程及び(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程を含む方法で作製されたものである請求項8に記載のフィルムアンテナ基材の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−147860(P2010−147860A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323716(P2008−323716)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】