フィルムコンデンサ
【課題】メタリコン電極と金属膜との接触不良対策。
【解決手段】フィルムコンデンサ(10)は、一対のフィルム(11,11)のそれぞれの片面に金属膜(12)が形成されて構成された金属化フィルム(13)を備え、金属化フィルム(13)が巻回されて形成され、且つ巻回された金属化フィルム(13)の幅方向の両端のそれぞれにメタリコン電極(17,17)が接続されたものを対象としている。フィルム(11)の幅方向の端部には、フィルム(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成され、一対のフィルム(11,11)は、一方のフィルム(11)が、他方のフィルム(11)に対して幅方向に突出して配置され、金属化フィルム(13)は、一側面側の端部が突出させたフィルム(11)の上面の少なくとも突出部分(15)でメタリコン電極(17)に接続する一方、他側面側の端部が突出部分(15)のフィルム(11)の下面の金属膜(12)と接続される導通部(19)を備えている。
【解決手段】フィルムコンデンサ(10)は、一対のフィルム(11,11)のそれぞれの片面に金属膜(12)が形成されて構成された金属化フィルム(13)を備え、金属化フィルム(13)が巻回されて形成され、且つ巻回された金属化フィルム(13)の幅方向の両端のそれぞれにメタリコン電極(17,17)が接続されたものを対象としている。フィルム(11)の幅方向の端部には、フィルム(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成され、一対のフィルム(11,11)は、一方のフィルム(11)が、他方のフィルム(11)に対して幅方向に突出して配置され、金属化フィルム(13)は、一側面側の端部が突出させたフィルム(11)の上面の少なくとも突出部分(15)でメタリコン電極(17)に接続する一方、他側面側の端部が突出部分(15)のフィルム(11)の下面の金属膜(12)と接続される導通部(19)を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関し、特に、電極部材との接触不良対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すようなフィルムコンデンサの構造が知られている。そして、図7に示すように、フィルムコンデンサ(a)は、2枚のフィルム(b,b)の表面にアルミニウム又は亜鉛等の金属膜(c)を蒸着して形成した金属化フィルム(d)を巻回して形成されている。このフィルム(b,b)は、互いを幅方向にずらして配置されている。そしてフィルムコンデンサ(a)は、ずらした端部に金属(e)を溶射(メタリコン)することで端子電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−98957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、フィルムコンデンサの小型化の要請から、フィルムの厚みを薄くすることが検討されている。しかしながら、図8に示すように、フィルム(b)の厚みを薄くすると、フィルム(b,b)をずらした端部の間にメタリコン金属(e)が侵入せず、金属膜(c)と端子電極であるメタリコン金属(e)との接触面積が減少してしまう。このため、メタリコン金属(e)と金属膜(c)との電気的、又は機械的な接触不良が発生するという問題があった。また、特にメタリコン金属(e)と金属膜(c)との間での接触不良に起因したメタリコン金属(e)と金属膜(c)との接触部分の電気抵抗の増加によって該接触部分が発熱するという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、メタリコン金属と金属膜との電気的、又は機械的な接触不良を防止すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、重畳した一対のフィルム部材(11,11)の少なくとも一の外側面と少なくとも一の内側面のそれぞれに金属膜(12)が形成されて構成された金属化フィルム(13)を備え、該金属化フィルム(13)が巻回されて形成され、且つ巻回された金属化フィルム(13)の幅方向の両端のそれぞれに電極部材(17,17)が接続されたフィルムコンデンサであって、上記フィルム部材(11)の幅方向の端部には、該フィルム部材(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成され、上記一対のフィルム部材(11,11)は、少なくとも一方のフィルム部材(11)が、他方のフィルム部材(11)に対して幅方向に突出するように配置され、上記金属化フィルム(13)は、一側面側の端部が上記突出させたフィルム部材(11)の一側面の少なくとも突出部分(15)で電極部材(17)に接続される一方、他側面側の端部が上記突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面の金属膜(12)と接続される導通部(19)を備えている。
【0007】
上記第1の発明では、一対のフィルム部材(11,11)が重畳され、且つ少なくとも一の外側面と少なくとも一の内側面のそれぞれに金属膜(12)が形成されることで金属化フィルム(13)を構成している。フィルムコンデンサは、この金属化フィルム(13)を巻回し、幅方向の両端のそれぞれに電極部材(17)を接続している。
【0008】
また、フィルム部材(11)は、その幅方向の端部に該フィルム部材(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成されている。そして、一対のフィルム部材(11,11)は、少なくとも一方のフィルム部材(11)が他方のフィルム部材(11)に対して幅方向に突出するように配置されている。導通部(19)は、突出させたフィルム部材(11)の一側面の少なくとも突出した部分(15)で一側面側の端部が電極部材(17)と接続する。一方、他側面側の端部が突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面の金属膜(12)と接続する。こうすることで、金属膜(12)と電極部材(17)とがフィルム部材(11)を挟んで電気的に接続される。つまり、金属膜(12)と電極部材(17,17)との接触面積が増加する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記導通部(19)は、上記突出させたフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面と、該フィルム部材(11)の突出部分(15)の他側面とを連通させる一方、内部に金属が充填される連通路(20)を備えて構成されている。
【0010】
上記第2の発明では、連通路(20)は、一端が突出させたフィルム部材(11)の少なくとも突出部分(15)の一側面で開口し、他端が突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面で開口する。そして、連通路(20)内には、金属が充填されている。こうすることで、金属が充填された連通路(20)を介してフィルム部材(11)を挟んだ金属膜(12)と電極部材(17)とが電気的に接続される。つまり、金属膜(12)と電極部材(17)との接触面積が増加する。
【0011】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記導通部(19)は、上記一側面側の端部の周囲を覆って形成される接触拡大部(21)を備えている。
【0012】
上記第3の発明では、突出させたフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面における、導通部(19)の端部の周囲に接触拡大部(21)を形成している。接触拡大部(21)によって導通部(19)の上記突出させたフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面側の端部での電極部材(17)との接触面積が増加する。
【0013】
第4の発明は、上記第2又は第3の発明において、上記連通路(20)は、突出させた上記フィルム部材(11)の突出部分(15)において複数形成され、上記導通部(19)は、複数の上記連通路(20)のうち、互いに隣り合う上記一側面側の端部の間に設けられる金属接続部(21)を備えている。
【0014】
上記第4の発明では、連通路(20)が突出させたフィルム部材(11)の突出部分において複数形成される。そして、複数の連通路(20)の一面側の端部のうち、互いに隣り合う端部の間には金属接続部(21)が設けられ、該金属接続部(21)は両端部間を電気的に接続する。つまり、複数の連通路(20)内の金属が、金属接続部(21)を介して互いに接続される。こうすることで、電極部材(17)と金属膜(12)との間の電気的な接触抵抗が低減する。
【0015】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記金属接続部(21)は、上記電極部材(17)によって構成されている。
【0016】
上記第5の発明では、複数の連通路(20)の一側面側の端部のうち、互いに隣り合う端部の間には電極部材(17)が設けられ、電極部材(17)によって両端部間を電気的に接続している。すなわち、金属接続部(21)が電極部材(17)によって構成されている。こうすることで、電極部材(17)と金属膜(12)との間の電気的な接触抵抗が低減する。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明によれば、導通部(19)を備えたため、フィルム部材(11)を挟んだ金属膜(12)と電極部材(17)とを電気的に接続することができる。このため、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0018】
また、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させたため、フィルム部材(11)を薄くしても、電極部材(17)と金属膜(12)との接続代を十分に確保することができる。
【0019】
上記第2の発明において、フィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面と、該突出部分(15)の他側面の金属膜(12)との間に金属が充填された連通路(20)を設けるようにしたため、フィルム部材(11)を挟んだ電極部材(17)と金属膜(12)とを導通させることができる。このため、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0020】
上記第3の発明によれば、接触拡大部(21)を設けたため、導通部(19)のフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面側の端部と電極部材(17)との間の接触面積を増加させることができる。このため、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0021】
上記第4の発明によれば、互いに隣り合う連通路(20)の端部の金属間に金属接続部(21)を設けたため、各連通路(20)内の金属を互いに電気的に接続することができる。これにより、電極部材(17)と各連通路(20)の金属との接触部分の電気抵抗を下げることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0022】
上記第5の発明によれば、金属接続部(21)を電極部材(17)によって構成するようにしたため、フィルム部材(11)の端部に電極部材(17)を接続することのみによって、金属接続部(21)を形成することができる。つまり、簡易的に金属接続部(21)を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態1に係るフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図2】本実施形態1に係る一のフィルムを示す図であって、(a)はフィルムの表面を示す図であり、(b)はフィルムの断面を示す図であり、(c)はフィルムの裏面を示す図である。
【図3】本実施形態1に係るフィルムの製造工程を示す図である。
【図4】本実施形態1の変形例に係るフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図5】本実施形態2に係るフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図6】本実施形態2に係るフィルムの製造工程を示す図である。
【図7】従来例に係る厚いフィルムを用いたフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図8】従来例に係る薄いフィルムを用いたフィルムコンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
〈発明の実施形態1〉
本発明の実施形態1について説明する。図1に本実施形態1に係るフィルムコンデンサ(10)を示す。このフィルムコンデンサ(10)は、金属化フィルム(13)と、メタリコン電極(17)と、巻芯(図示なし)とで構成されている。具体的には、フィルムコンデンサ(10)の形成では、まず、一対のフィルム(11,11)のそれぞれの片面に金属膜(12)を蒸着させ、それらを上下2枚重ねにして金属化フィルム(13)を形成する。次に、金属化フィルム(13)を巻芯に巻回し、巻回した金属化フィルム(13)の幅方向(図1の左右方向)の両端にメタリコン電極(17,17)を接続して形成している。このフィルムコンデンサ(10)は、インバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等に用いられる。
【0026】
上記金属化フィルム(13)は、一対のフィルム(11,11)を上下に重ね合わせて形成されている。上記各フィルム(11)は、材質がPET(ポリエチレンテレフタラート、又はポリエチレンテレフタレート)で構成され、厚さ4μmの帯状のフィルムである。尚、フィルム(11)の厚みは、例示であって、3〜10μm程度に適宜形成することができる。このフィルム(11)は、本発明に係るフィルム部材を構成している。各フィルム(11)の片側の表面には、アルミニウム(Al)の金属膜(12)が蒸着形成されている。この金属膜(12)は、その膜厚が50Å〜400Å程度に形成されている。尚、本実施形態1では、金属膜(12)としてアルミニウムを材料としたが、金属膜(12)の材料は、これに限られず、亜鉛等の金属材料を用いることができる。
【0027】
各フィルム(11)は、金属膜(12)とメタリコン電極(17)との接触を防ぐためのサイドマージン(14)が形成されている。このサイドマージン(14)は、フィルム(11)の片面の金属膜(12)の形成面のうち、該金属膜(12)が形成されておらず、フィルム(11)表面が外部に露出した領域をいう。サイドマージン(14)は、各フィルム(11)の金属膜(12)の形成面の幅方向の一端部に形成されている。サイドマージン(14)は、幅方向の端部で2〜3mmの幅を有して形成されている。
【0028】
上記両フィルム(11,11)は、互いを左右方向に1mm程度、ずらした状態で重ねられている。つまり、図1における上側のフィルム(11)は、下側のフィルム(11)に対して左方向に1mm幅の突出部分(15)を有する一方、下側のフィルム(11)は、上側のフィルム(11)に対して右方向に1mm幅の突出部分(15)を有している。上記各フィルム(11)の突出部分(15)には、導通部(19)が設けられている。この導通部(19)については後述する。
【0029】
上記メタリコン電極(17,17)は、フィルムコンデンサ(10)の電極を構成するものであって、本発明に係る電極部材を構成するものである。メタリコン電極(17,17)は、上記金属膜(12)と電気的に接続されると共に、外部へ延びる接続端子となるものである。このメタリコン電極(17,17)は、巻回させた金属化フィルム(13)の端部に、亜鉛(Zn)等の金属を溶融噴射することで形成されている。具体的には、両フィルム(11,11)は、その幅方向の突出部分(15,15)が、吹き付けられたメタリコン電極(17,17)の内部に埋没することでメタリコン電極(17,17)に固定支持されている。つまり、メタリコン電極(17,17)が各フィルム(11,11)の突出部分(15,15)を上下方向から挟み込むことで、メタリコン電極(17,17)と金属膜(12)との電気的な接触性を確保すると共に、該フィルム(11)を安定して固定支持している。
【0030】
上記導通部(19)は、フィルム(11)に形成された金属膜(12)と、メタリコン電極(17)との接触部分を増やすためのものであって、膜部(21)と孔部(20)を備えている。導通部(19)は、各フィルム(11)の突出部分(15)に設けられている。
【0031】
上記孔部(20)は、金属膜(12)を構成する金属を充填してメタリコン電極(17)と金属膜(12)とを電気的に接続させるためのものであって、本発明に係る連通路を構成している。孔部(20)は、各フィルム(11)の幅方向の端部のうちの突出部分(15)に、レーザ等を用いてフィルム(11)の厚さ方向に延びて形成された孔である。図2に示すように、孔部(20)は、その一端が金属膜(12)が形成されたフィルム(11)の上面(本発明に係るフィルム部材の他側面)に開口する一方、他端が金属膜(12)が形成されていないフィルム(11)の下面(本発明に係るフィルム部材の一側面)に開口している。そして、孔部(20)の内部には、金属膜(12)を構成する金属が充填されている。孔部(20)は、本実施形態1では、複数箇所形成されている。
【0032】
上記膜部(21)は、導通部(19)とメタリコン電極(17)との接触面積を拡大させるためのものであって、本発明に係る接触拡大部を構成している。膜部(21)は、金属膜(12)を構成する金属を孔部(20)の他端側の開口の周囲を覆うように設けることで、メタリコン電極(17)との接触面積を増やしている。また、膜部(21)を設けることで、複数の孔部(20)内の金属が膜部(21)を介して電気的に接続されることになる。具体的には、隣り合う孔部(20)の他端側の開口周辺の金属が膜部(21)を介して接続される。つまり、この膜部(21)は、本発明に係る金属接続部を構成している。
【0033】
−フィルムコンデンサ(10)の製造工程−
次に、本実施形態1に係るフィルムコンデンサ(10)の製造工程について説明する。
【0034】
本製造工程では、まず、600mm幅の広幅長尺のロールフィルム原反(18)の各フィルム(11)の突出部分(15)となる位置に、レーザを用いて厚さ方向に複数の孔部(20)を形成する。次に、このロールフィルム原反(18)の片面にサイドマージン(14)を作成するためのマスク処理を行う。このマスク処理は、オイルマスク又はテープマスクを用いて行われる。
【0035】
次に、図3に示すように、ロールフィルム原反(18)の片面にアルミニウム(Al)を蒸着して金属膜(12)を形成する。このとき、孔部(20)の一端側(図3ではロールフィルム原反(18)の上面側)の金属膜(12)を構成する金属が、複数の孔部(20)内に進入し、孔部(20)の他端側(図3ではロールフィルム原反(18)の下面側)に流れる。その後、孔部(20)内の金属は、孔部(20)の他端側のロールフィルム原反(18)の表面に流れ出てアルミニウム(Al)の膜が形成される。この金属の膜が、膜部(21)を構成している。こうすることで、導通部(19)が形成される。
【0036】
そして、ロールフィルム原反(18)に30mm幅に形成されたスリット部分をカットすることでフィルム(11)が完成する。このフィルム(11)を2枚重ねにして巻回機にかけて巻回することで金属化フィルム(13)が完成する。最後に、巻回した金属化フィルム(13)の幅方向の両端に亜鉛等の金属を溶射してメタリコン電極(17,17)を形成すればフィルムコンデンサ(10)が完成する。
【0037】
−実施形態1の効果−
上記本実施形態1によれば、導通部(19)を備えたため、フィルム(11)を挟んだ金属膜(12)とメタリコン電極(17)とを電気的に接続することができる。このため、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0038】
また、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触代を十分に確保することができるため、図4に示すように、フィルム(11)を薄く形成しても、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を確実に増加させることができる。
【0039】
次に、フィルム(11)の突出部分(15)の下面と金属膜(12)との間に金属が充填された孔部(20)を設けるようにしたため、フィルム(11)を挟んだメタリコン電極(17)と金属膜(12)とを導通させることができる。このため、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0040】
さらに、膜部(21)を設けたため、孔部(20)のフィルム(11)の上面側の端部の金属とメタリコン電極(17)との間の接触面積を増加させることができる。このため、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0041】
また、互いに隣り合う孔部(20)の端部の金属間に膜部(21)を設けたため、各孔部(20)の金属を電気的に接続することができる。これにより、メタリコン電極(17)と各孔部(20)の金属との接触部分の電気抵抗を下げることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0042】
〈発明の実施形態2〉
次に、図5に示すような本実施形態2に係るフィルムコンデンサ(10)について説明する。本実施形態2に係るフィルムコンデンサ(10)は、上記実施形態1のフィルムコンデンサ(10)に代えて一対のフィルム(11,11)のそれぞれの両端に金属膜(12)を形成するようにしたものである。
【0043】
具体的には、図5に示すように、各フィルム(11)は、その両側の表面に金属膜(12)が形成されている。そして、一対のフィルム(11,11)を重ね合わせて金属化フィルム(13)を形成している。
【0044】
各フィルム(11)は、金属膜(12)とメタリコン電極(17)との接触を防ぐためのサイドマージン(14)が形成されている。このサイドマージン(14)は、フィルム(11)の両面の金属膜(12)の形成面のうち、該金属膜(12)が形成されておらず、フィルム(11)表面が外部に露出した領域をいう。サイドマージン(14)は、各フィルム(11)の金属膜(12)の形成面の幅方向の一の端部に形成されている。サイドマージン(14)は、幅方向の端部で2〜3mmの幅を有して形成されている。
【0045】
上記両フィルム(11,11)は、互いを左右方向に1mm程度、ずらした状態で重ねられている。つまり、図5における上側のフィルム(11)は、下側のフィルム(11)に対して左方向に1mm幅の突出部分(15)を有する一方、下側のフィルム(11)は、上側のフィルム(11)に対して右方向に1mm幅の突出部分(15)を有している。上記各フィルム(11)の突出部分(15)には、膜部(21)と孔部(20)とを備えた導通部(19)が設けられている。
【0046】
上記孔部(20)は、フィルム(11)の幅方向の端部のうちの突出部分(15)に、レーザ等を用いてフィルム(11)の厚さ方向に延びて形成された孔である。図5に示すように、孔部(20)は、その一端が金属膜(12)が形成された該フィルム(11)の上面(本発明に係るフィルム部材の他側面)に開口する一方、他端がフィルム(11)の下面(本発明のフィルム部材の一側面)のサイドマージン(14)が形成された領域に開口している。つまり、孔部(20)の他端は、フィルム(11)のサイドマージン(14)で、且つ突出部分(15)となる領域に開口している。そして、孔部(20)の内部には、金属膜(12)を構成する金属が充填されている。また、本実施形態2でも、孔部(20)は複数箇所形成されている。
【0047】
−フィルムコンデンサの製造工程−
次に、本実施形態2に係るフィルムコンデンサ(10)の製造工程について説明する。
【0048】
本製造工程では、まず、600mm幅の広幅長尺のロールフィルム原反(18)の各フィルム(11)の突出部分(15)となる位置に、レーザを用いて厚さ方向に複数の孔部(20)を形成する。次に、このロールフィルム原反(18)の両面にサイドマージン(14)を作成するためのマスク処理を行う。このマスク処理は、オイルマスク又はテープマスクを用いて行われる。
【0049】
次に、図6に示すように、ロールフィルム原反(18)の両面にアルミニウム(Al)を蒸着して金属膜(12)を形成する。このとき、孔部(20)の一端側(図6ではロールフィルム原反(18)の上面側)の金属膜(12)を構成する金属が、複数の孔部(20)内に進入し、孔部(20)の他端側(図6ではロールフィルム原反(18)の下面側)に流れる。その後、孔部(20)内の金属は、孔部(20)の他端側のロールフィルム原反(18)の表面に流れ出てアルミニウム(Al)の膜が形成される。この金属の膜が、膜部(21)を構成している。こうすることで、導通部(19)が形成される。
【0050】
そして、ロールフィルム原反(18)に30mm幅に形成されたスリット部分をカットすることでフィルム(11)が完成する。このフィルム(11)を2枚重ねにして巻回機にかけて巻回することで金属化フィルム(13)が完成する。最後に、巻回した金属化フィルム(13)の幅方向の両端に亜鉛等の金属を溶射してメタリコン電極(17,17)を形成すればフィルムコンデンサ(10)が完成する。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0051】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1又は2について、以下のような構成としてもよい。
【0052】
本実施形態1及び2では、金属膜(12)及び膜部(21)をアルミニウムで形成するようにしたが、本発明の構成はこれに限られず、その他の金属によって形成するようにしてもよい。また、メタリコン電極(17)を亜鉛で形成したが、メタリコン電極(17)は、その他の金属によって形成するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態1及び2では、金属膜(12)を構成する金属によって膜部(21)を形成するようにしたが、本発明はこれに限られず、メタリコン電極(17)によって膜部(21)を形成するようにしてもよい。具体的には、複数の孔部(20)の他端の金属間を膜部(21)を介して接続するようにする。
【0054】
これによれば、膜部(21)をメタリコン電極(17)によって構成するようにしたため、フィルム(11)の端部にメタリコン電極(17)を接続することによって、本発明に係る金属接続部を形成することができる。つまり、簡易的に金属接続部を形成することができる。
【0055】
また、本実施形態1及び2では、少なくとも片面、又は両面に金属膜(12)が形成された一対のフィルム(11)を用いて金属化フィルム(13)を構成するようにしたが、本発明はこれに限られず、例えば両面に金属膜(12)が形成された一枚のフィルム(11)と、金属膜(12)を形成しないフィルム(いわゆる合わせフィルム)を重畳させて金属化フィルム(13)を構成するようにしてもよい。
【0056】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、フィルムコンデンサについて有用である。
【符号の説明】
【0058】
11 フィルム
12 金属膜
13 金属化フィルム
14 サイドマージン
17 メタリコン電極
19 導通部
20 連通路
21 膜部
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関し、特に、電極部材との接触不良対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すようなフィルムコンデンサの構造が知られている。そして、図7に示すように、フィルムコンデンサ(a)は、2枚のフィルム(b,b)の表面にアルミニウム又は亜鉛等の金属膜(c)を蒸着して形成した金属化フィルム(d)を巻回して形成されている。このフィルム(b,b)は、互いを幅方向にずらして配置されている。そしてフィルムコンデンサ(a)は、ずらした端部に金属(e)を溶射(メタリコン)することで端子電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−98957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、フィルムコンデンサの小型化の要請から、フィルムの厚みを薄くすることが検討されている。しかしながら、図8に示すように、フィルム(b)の厚みを薄くすると、フィルム(b,b)をずらした端部の間にメタリコン金属(e)が侵入せず、金属膜(c)と端子電極であるメタリコン金属(e)との接触面積が減少してしまう。このため、メタリコン金属(e)と金属膜(c)との電気的、又は機械的な接触不良が発生するという問題があった。また、特にメタリコン金属(e)と金属膜(c)との間での接触不良に起因したメタリコン金属(e)と金属膜(c)との接触部分の電気抵抗の増加によって該接触部分が発熱するという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、メタリコン金属と金属膜との電気的、又は機械的な接触不良を防止すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、重畳した一対のフィルム部材(11,11)の少なくとも一の外側面と少なくとも一の内側面のそれぞれに金属膜(12)が形成されて構成された金属化フィルム(13)を備え、該金属化フィルム(13)が巻回されて形成され、且つ巻回された金属化フィルム(13)の幅方向の両端のそれぞれに電極部材(17,17)が接続されたフィルムコンデンサであって、上記フィルム部材(11)の幅方向の端部には、該フィルム部材(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成され、上記一対のフィルム部材(11,11)は、少なくとも一方のフィルム部材(11)が、他方のフィルム部材(11)に対して幅方向に突出するように配置され、上記金属化フィルム(13)は、一側面側の端部が上記突出させたフィルム部材(11)の一側面の少なくとも突出部分(15)で電極部材(17)に接続される一方、他側面側の端部が上記突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面の金属膜(12)と接続される導通部(19)を備えている。
【0007】
上記第1の発明では、一対のフィルム部材(11,11)が重畳され、且つ少なくとも一の外側面と少なくとも一の内側面のそれぞれに金属膜(12)が形成されることで金属化フィルム(13)を構成している。フィルムコンデンサは、この金属化フィルム(13)を巻回し、幅方向の両端のそれぞれに電極部材(17)を接続している。
【0008】
また、フィルム部材(11)は、その幅方向の端部に該フィルム部材(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成されている。そして、一対のフィルム部材(11,11)は、少なくとも一方のフィルム部材(11)が他方のフィルム部材(11)に対して幅方向に突出するように配置されている。導通部(19)は、突出させたフィルム部材(11)の一側面の少なくとも突出した部分(15)で一側面側の端部が電極部材(17)と接続する。一方、他側面側の端部が突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面の金属膜(12)と接続する。こうすることで、金属膜(12)と電極部材(17)とがフィルム部材(11)を挟んで電気的に接続される。つまり、金属膜(12)と電極部材(17,17)との接触面積が増加する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記導通部(19)は、上記突出させたフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面と、該フィルム部材(11)の突出部分(15)の他側面とを連通させる一方、内部に金属が充填される連通路(20)を備えて構成されている。
【0010】
上記第2の発明では、連通路(20)は、一端が突出させたフィルム部材(11)の少なくとも突出部分(15)の一側面で開口し、他端が突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面で開口する。そして、連通路(20)内には、金属が充填されている。こうすることで、金属が充填された連通路(20)を介してフィルム部材(11)を挟んだ金属膜(12)と電極部材(17)とが電気的に接続される。つまり、金属膜(12)と電極部材(17)との接触面積が増加する。
【0011】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記導通部(19)は、上記一側面側の端部の周囲を覆って形成される接触拡大部(21)を備えている。
【0012】
上記第3の発明では、突出させたフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面における、導通部(19)の端部の周囲に接触拡大部(21)を形成している。接触拡大部(21)によって導通部(19)の上記突出させたフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面側の端部での電極部材(17)との接触面積が増加する。
【0013】
第4の発明は、上記第2又は第3の発明において、上記連通路(20)は、突出させた上記フィルム部材(11)の突出部分(15)において複数形成され、上記導通部(19)は、複数の上記連通路(20)のうち、互いに隣り合う上記一側面側の端部の間に設けられる金属接続部(21)を備えている。
【0014】
上記第4の発明では、連通路(20)が突出させたフィルム部材(11)の突出部分において複数形成される。そして、複数の連通路(20)の一面側の端部のうち、互いに隣り合う端部の間には金属接続部(21)が設けられ、該金属接続部(21)は両端部間を電気的に接続する。つまり、複数の連通路(20)内の金属が、金属接続部(21)を介して互いに接続される。こうすることで、電極部材(17)と金属膜(12)との間の電気的な接触抵抗が低減する。
【0015】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記金属接続部(21)は、上記電極部材(17)によって構成されている。
【0016】
上記第5の発明では、複数の連通路(20)の一側面側の端部のうち、互いに隣り合う端部の間には電極部材(17)が設けられ、電極部材(17)によって両端部間を電気的に接続している。すなわち、金属接続部(21)が電極部材(17)によって構成されている。こうすることで、電極部材(17)と金属膜(12)との間の電気的な接触抵抗が低減する。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明によれば、導通部(19)を備えたため、フィルム部材(11)を挟んだ金属膜(12)と電極部材(17)とを電気的に接続することができる。このため、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0018】
また、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させたため、フィルム部材(11)を薄くしても、電極部材(17)と金属膜(12)との接続代を十分に確保することができる。
【0019】
上記第2の発明において、フィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面と、該突出部分(15)の他側面の金属膜(12)との間に金属が充填された連通路(20)を設けるようにしたため、フィルム部材(11)を挟んだ電極部材(17)と金属膜(12)とを導通させることができる。このため、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0020】
上記第3の発明によれば、接触拡大部(21)を設けたため、導通部(19)のフィルム部材(11)の突出部分(15)の一側面側の端部と電極部材(17)との間の接触面積を増加させることができる。このため、電極部材(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0021】
上記第4の発明によれば、互いに隣り合う連通路(20)の端部の金属間に金属接続部(21)を設けたため、各連通路(20)内の金属を互いに電気的に接続することができる。これにより、電極部材(17)と各連通路(20)の金属との接触部分の電気抵抗を下げることができる。これにより、電極部材(17)と金属膜(12)との電気的な接触不良を防止することができる。特に、電極部材(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0022】
上記第5の発明によれば、金属接続部(21)を電極部材(17)によって構成するようにしたため、フィルム部材(11)の端部に電極部材(17)を接続することのみによって、金属接続部(21)を形成することができる。つまり、簡易的に金属接続部(21)を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態1に係るフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図2】本実施形態1に係る一のフィルムを示す図であって、(a)はフィルムの表面を示す図であり、(b)はフィルムの断面を示す図であり、(c)はフィルムの裏面を示す図である。
【図3】本実施形態1に係るフィルムの製造工程を示す図である。
【図4】本実施形態1の変形例に係るフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図5】本実施形態2に係るフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図6】本実施形態2に係るフィルムの製造工程を示す図である。
【図7】従来例に係る厚いフィルムを用いたフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図8】従来例に係る薄いフィルムを用いたフィルムコンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
〈発明の実施形態1〉
本発明の実施形態1について説明する。図1に本実施形態1に係るフィルムコンデンサ(10)を示す。このフィルムコンデンサ(10)は、金属化フィルム(13)と、メタリコン電極(17)と、巻芯(図示なし)とで構成されている。具体的には、フィルムコンデンサ(10)の形成では、まず、一対のフィルム(11,11)のそれぞれの片面に金属膜(12)を蒸着させ、それらを上下2枚重ねにして金属化フィルム(13)を形成する。次に、金属化フィルム(13)を巻芯に巻回し、巻回した金属化フィルム(13)の幅方向(図1の左右方向)の両端にメタリコン電極(17,17)を接続して形成している。このフィルムコンデンサ(10)は、インバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等に用いられる。
【0026】
上記金属化フィルム(13)は、一対のフィルム(11,11)を上下に重ね合わせて形成されている。上記各フィルム(11)は、材質がPET(ポリエチレンテレフタラート、又はポリエチレンテレフタレート)で構成され、厚さ4μmの帯状のフィルムである。尚、フィルム(11)の厚みは、例示であって、3〜10μm程度に適宜形成することができる。このフィルム(11)は、本発明に係るフィルム部材を構成している。各フィルム(11)の片側の表面には、アルミニウム(Al)の金属膜(12)が蒸着形成されている。この金属膜(12)は、その膜厚が50Å〜400Å程度に形成されている。尚、本実施形態1では、金属膜(12)としてアルミニウムを材料としたが、金属膜(12)の材料は、これに限られず、亜鉛等の金属材料を用いることができる。
【0027】
各フィルム(11)は、金属膜(12)とメタリコン電極(17)との接触を防ぐためのサイドマージン(14)が形成されている。このサイドマージン(14)は、フィルム(11)の片面の金属膜(12)の形成面のうち、該金属膜(12)が形成されておらず、フィルム(11)表面が外部に露出した領域をいう。サイドマージン(14)は、各フィルム(11)の金属膜(12)の形成面の幅方向の一端部に形成されている。サイドマージン(14)は、幅方向の端部で2〜3mmの幅を有して形成されている。
【0028】
上記両フィルム(11,11)は、互いを左右方向に1mm程度、ずらした状態で重ねられている。つまり、図1における上側のフィルム(11)は、下側のフィルム(11)に対して左方向に1mm幅の突出部分(15)を有する一方、下側のフィルム(11)は、上側のフィルム(11)に対して右方向に1mm幅の突出部分(15)を有している。上記各フィルム(11)の突出部分(15)には、導通部(19)が設けられている。この導通部(19)については後述する。
【0029】
上記メタリコン電極(17,17)は、フィルムコンデンサ(10)の電極を構成するものであって、本発明に係る電極部材を構成するものである。メタリコン電極(17,17)は、上記金属膜(12)と電気的に接続されると共に、外部へ延びる接続端子となるものである。このメタリコン電極(17,17)は、巻回させた金属化フィルム(13)の端部に、亜鉛(Zn)等の金属を溶融噴射することで形成されている。具体的には、両フィルム(11,11)は、その幅方向の突出部分(15,15)が、吹き付けられたメタリコン電極(17,17)の内部に埋没することでメタリコン電極(17,17)に固定支持されている。つまり、メタリコン電極(17,17)が各フィルム(11,11)の突出部分(15,15)を上下方向から挟み込むことで、メタリコン電極(17,17)と金属膜(12)との電気的な接触性を確保すると共に、該フィルム(11)を安定して固定支持している。
【0030】
上記導通部(19)は、フィルム(11)に形成された金属膜(12)と、メタリコン電極(17)との接触部分を増やすためのものであって、膜部(21)と孔部(20)を備えている。導通部(19)は、各フィルム(11)の突出部分(15)に設けられている。
【0031】
上記孔部(20)は、金属膜(12)を構成する金属を充填してメタリコン電極(17)と金属膜(12)とを電気的に接続させるためのものであって、本発明に係る連通路を構成している。孔部(20)は、各フィルム(11)の幅方向の端部のうちの突出部分(15)に、レーザ等を用いてフィルム(11)の厚さ方向に延びて形成された孔である。図2に示すように、孔部(20)は、その一端が金属膜(12)が形成されたフィルム(11)の上面(本発明に係るフィルム部材の他側面)に開口する一方、他端が金属膜(12)が形成されていないフィルム(11)の下面(本発明に係るフィルム部材の一側面)に開口している。そして、孔部(20)の内部には、金属膜(12)を構成する金属が充填されている。孔部(20)は、本実施形態1では、複数箇所形成されている。
【0032】
上記膜部(21)は、導通部(19)とメタリコン電極(17)との接触面積を拡大させるためのものであって、本発明に係る接触拡大部を構成している。膜部(21)は、金属膜(12)を構成する金属を孔部(20)の他端側の開口の周囲を覆うように設けることで、メタリコン電極(17)との接触面積を増やしている。また、膜部(21)を設けることで、複数の孔部(20)内の金属が膜部(21)を介して電気的に接続されることになる。具体的には、隣り合う孔部(20)の他端側の開口周辺の金属が膜部(21)を介して接続される。つまり、この膜部(21)は、本発明に係る金属接続部を構成している。
【0033】
−フィルムコンデンサ(10)の製造工程−
次に、本実施形態1に係るフィルムコンデンサ(10)の製造工程について説明する。
【0034】
本製造工程では、まず、600mm幅の広幅長尺のロールフィルム原反(18)の各フィルム(11)の突出部分(15)となる位置に、レーザを用いて厚さ方向に複数の孔部(20)を形成する。次に、このロールフィルム原反(18)の片面にサイドマージン(14)を作成するためのマスク処理を行う。このマスク処理は、オイルマスク又はテープマスクを用いて行われる。
【0035】
次に、図3に示すように、ロールフィルム原反(18)の片面にアルミニウム(Al)を蒸着して金属膜(12)を形成する。このとき、孔部(20)の一端側(図3ではロールフィルム原反(18)の上面側)の金属膜(12)を構成する金属が、複数の孔部(20)内に進入し、孔部(20)の他端側(図3ではロールフィルム原反(18)の下面側)に流れる。その後、孔部(20)内の金属は、孔部(20)の他端側のロールフィルム原反(18)の表面に流れ出てアルミニウム(Al)の膜が形成される。この金属の膜が、膜部(21)を構成している。こうすることで、導通部(19)が形成される。
【0036】
そして、ロールフィルム原反(18)に30mm幅に形成されたスリット部分をカットすることでフィルム(11)が完成する。このフィルム(11)を2枚重ねにして巻回機にかけて巻回することで金属化フィルム(13)が完成する。最後に、巻回した金属化フィルム(13)の幅方向の両端に亜鉛等の金属を溶射してメタリコン電極(17,17)を形成すればフィルムコンデンサ(10)が完成する。
【0037】
−実施形態1の効果−
上記本実施形態1によれば、導通部(19)を備えたため、フィルム(11)を挟んだ金属膜(12)とメタリコン電極(17)とを電気的に接続することができる。このため、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0038】
また、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触代を十分に確保することができるため、図4に示すように、フィルム(11)を薄く形成しても、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を確実に増加させることができる。
【0039】
次に、フィルム(11)の突出部分(15)の下面と金属膜(12)との間に金属が充填された孔部(20)を設けるようにしたため、フィルム(11)を挟んだメタリコン電極(17)と金属膜(12)とを導通させることができる。このため、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0040】
さらに、膜部(21)を設けたため、孔部(20)のフィルム(11)の上面側の端部の金属とメタリコン電極(17)との間の接触面積を増加させることができる。このため、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触面積を増加させることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的、又は機械的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0041】
また、互いに隣り合う孔部(20)の端部の金属間に膜部(21)を設けたため、各孔部(20)の金属を電気的に接続することができる。これにより、メタリコン電極(17)と各孔部(20)の金属との接触部分の電気抵抗を下げることができる。これにより、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との電気的な接触不良を防止することができる。特に、メタリコン電極(17)と金属膜(12)との接触部分の発熱を確実に防止することができる。
【0042】
〈発明の実施形態2〉
次に、図5に示すような本実施形態2に係るフィルムコンデンサ(10)について説明する。本実施形態2に係るフィルムコンデンサ(10)は、上記実施形態1のフィルムコンデンサ(10)に代えて一対のフィルム(11,11)のそれぞれの両端に金属膜(12)を形成するようにしたものである。
【0043】
具体的には、図5に示すように、各フィルム(11)は、その両側の表面に金属膜(12)が形成されている。そして、一対のフィルム(11,11)を重ね合わせて金属化フィルム(13)を形成している。
【0044】
各フィルム(11)は、金属膜(12)とメタリコン電極(17)との接触を防ぐためのサイドマージン(14)が形成されている。このサイドマージン(14)は、フィルム(11)の両面の金属膜(12)の形成面のうち、該金属膜(12)が形成されておらず、フィルム(11)表面が外部に露出した領域をいう。サイドマージン(14)は、各フィルム(11)の金属膜(12)の形成面の幅方向の一の端部に形成されている。サイドマージン(14)は、幅方向の端部で2〜3mmの幅を有して形成されている。
【0045】
上記両フィルム(11,11)は、互いを左右方向に1mm程度、ずらした状態で重ねられている。つまり、図5における上側のフィルム(11)は、下側のフィルム(11)に対して左方向に1mm幅の突出部分(15)を有する一方、下側のフィルム(11)は、上側のフィルム(11)に対して右方向に1mm幅の突出部分(15)を有している。上記各フィルム(11)の突出部分(15)には、膜部(21)と孔部(20)とを備えた導通部(19)が設けられている。
【0046】
上記孔部(20)は、フィルム(11)の幅方向の端部のうちの突出部分(15)に、レーザ等を用いてフィルム(11)の厚さ方向に延びて形成された孔である。図5に示すように、孔部(20)は、その一端が金属膜(12)が形成された該フィルム(11)の上面(本発明に係るフィルム部材の他側面)に開口する一方、他端がフィルム(11)の下面(本発明のフィルム部材の一側面)のサイドマージン(14)が形成された領域に開口している。つまり、孔部(20)の他端は、フィルム(11)のサイドマージン(14)で、且つ突出部分(15)となる領域に開口している。そして、孔部(20)の内部には、金属膜(12)を構成する金属が充填されている。また、本実施形態2でも、孔部(20)は複数箇所形成されている。
【0047】
−フィルムコンデンサの製造工程−
次に、本実施形態2に係るフィルムコンデンサ(10)の製造工程について説明する。
【0048】
本製造工程では、まず、600mm幅の広幅長尺のロールフィルム原反(18)の各フィルム(11)の突出部分(15)となる位置に、レーザを用いて厚さ方向に複数の孔部(20)を形成する。次に、このロールフィルム原反(18)の両面にサイドマージン(14)を作成するためのマスク処理を行う。このマスク処理は、オイルマスク又はテープマスクを用いて行われる。
【0049】
次に、図6に示すように、ロールフィルム原反(18)の両面にアルミニウム(Al)を蒸着して金属膜(12)を形成する。このとき、孔部(20)の一端側(図6ではロールフィルム原反(18)の上面側)の金属膜(12)を構成する金属が、複数の孔部(20)内に進入し、孔部(20)の他端側(図6ではロールフィルム原反(18)の下面側)に流れる。その後、孔部(20)内の金属は、孔部(20)の他端側のロールフィルム原反(18)の表面に流れ出てアルミニウム(Al)の膜が形成される。この金属の膜が、膜部(21)を構成している。こうすることで、導通部(19)が形成される。
【0050】
そして、ロールフィルム原反(18)に30mm幅に形成されたスリット部分をカットすることでフィルム(11)が完成する。このフィルム(11)を2枚重ねにして巻回機にかけて巻回することで金属化フィルム(13)が完成する。最後に、巻回した金属化フィルム(13)の幅方向の両端に亜鉛等の金属を溶射してメタリコン電極(17,17)を形成すればフィルムコンデンサ(10)が完成する。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0051】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1又は2について、以下のような構成としてもよい。
【0052】
本実施形態1及び2では、金属膜(12)及び膜部(21)をアルミニウムで形成するようにしたが、本発明の構成はこれに限られず、その他の金属によって形成するようにしてもよい。また、メタリコン電極(17)を亜鉛で形成したが、メタリコン電極(17)は、その他の金属によって形成するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態1及び2では、金属膜(12)を構成する金属によって膜部(21)を形成するようにしたが、本発明はこれに限られず、メタリコン電極(17)によって膜部(21)を形成するようにしてもよい。具体的には、複数の孔部(20)の他端の金属間を膜部(21)を介して接続するようにする。
【0054】
これによれば、膜部(21)をメタリコン電極(17)によって構成するようにしたため、フィルム(11)の端部にメタリコン電極(17)を接続することによって、本発明に係る金属接続部を形成することができる。つまり、簡易的に金属接続部を形成することができる。
【0055】
また、本実施形態1及び2では、少なくとも片面、又は両面に金属膜(12)が形成された一対のフィルム(11)を用いて金属化フィルム(13)を構成するようにしたが、本発明はこれに限られず、例えば両面に金属膜(12)が形成された一枚のフィルム(11)と、金属膜(12)を形成しないフィルム(いわゆる合わせフィルム)を重畳させて金属化フィルム(13)を構成するようにしてもよい。
【0056】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、フィルムコンデンサについて有用である。
【符号の説明】
【0058】
11 フィルム
12 金属膜
13 金属化フィルム
14 サイドマージン
17 メタリコン電極
19 導通部
20 連通路
21 膜部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重畳した一対のフィルム部材(11,11)の少なくとも一の外側面と少なくとも一の内側面のそれぞれに金属膜(12)が形成されて構成された金属化フィルム(13)を備え、該金属化フィルム(13)が巻回されて形成され、且つ巻回された金属化フィルム(13)の幅方向の両端のそれぞれに電極部材(17,17)が接続されたフィルムコンデンサであって、
上記フィルム部材(11)の幅方向の端部には、該フィルム部材(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成され、
上記一対のフィルム部材(11,11)は、少なくとも一方のフィルム部材(11)が、他方のフィルム部材(11)に対して幅方向に突出するように配置され、
上記金属化フィルム(13)は、一側面側の端部が上記突出させたフィルム部材(11)の一側面の少なくとも突出部分(15)で電極部材(17)に接続される一方、他側面側の端部が上記突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面の金属膜(12)と接続される導通部(19)を備えている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
請求項1において、
上記導通部(19)は、上記突出させたフィルム部材(11)の該突出部分(15)の一側面と、該フィルム部材(11)の突出部分(15)の他側面とを連通させる一方、内部に金属が充填される連通路(20)を備えて構成されている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記導通部(19)は、上記一側面側の端部の周囲を覆って形成される接触拡大部(21)を備えている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項4】
請求項2又は3において、
上記連通路(20)は、突出させた上記フィルム部材(11)の突出部分(15)において複数形成され、
上記導通部(19)は、複数の上記連通路(20)のうち、互いに隣り合う上記一側面側の端部の間に設けられる金属接続部(21)を備えている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項5】
請求項4において、
上記金属接続部(21)は、上記電極部材(17)によって構成されている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項1】
重畳した一対のフィルム部材(11,11)の少なくとも一の外側面と少なくとも一の内側面のそれぞれに金属膜(12)が形成されて構成された金属化フィルム(13)を備え、該金属化フィルム(13)が巻回されて形成され、且つ巻回された金属化フィルム(13)の幅方向の両端のそれぞれに電極部材(17,17)が接続されたフィルムコンデンサであって、
上記フィルム部材(11)の幅方向の端部には、該フィルム部材(11)が露出して形成されるサイドマージン(14)が形成され、
上記一対のフィルム部材(11,11)は、少なくとも一方のフィルム部材(11)が、他方のフィルム部材(11)に対して幅方向に突出するように配置され、
上記金属化フィルム(13)は、一側面側の端部が上記突出させたフィルム部材(11)の一側面の少なくとも突出部分(15)で電極部材(17)に接続される一方、他側面側の端部が上記突出部分(15)のフィルム部材(11)の他側面の金属膜(12)と接続される導通部(19)を備えている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
請求項1において、
上記導通部(19)は、上記突出させたフィルム部材(11)の該突出部分(15)の一側面と、該フィルム部材(11)の突出部分(15)の他側面とを連通させる一方、内部に金属が充填される連通路(20)を備えて構成されている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記導通部(19)は、上記一側面側の端部の周囲を覆って形成される接触拡大部(21)を備えている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項4】
請求項2又は3において、
上記連通路(20)は、突出させた上記フィルム部材(11)の突出部分(15)において複数形成され、
上記導通部(19)は、複数の上記連通路(20)のうち、互いに隣り合う上記一側面側の端部の間に設けられる金属接続部(21)を備えている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項5】
請求項4において、
上記金属接続部(21)は、上記電極部材(17)によって構成されている
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−156156(P2012−156156A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11182(P2011−11182)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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