説明

フイルム状基材の洗浄方法及び洗浄装置

【課題】フイルム状基材表面に付着した粘着力のある異物を、フイルム状基材の全面を均一に洗浄して効率よく除去するとともに、除去した異物が再付着しにくく、しかもデリケートなフイルム表面にすり傷等の外観欠陥を発生させない洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】搬送されてくるフイルム状基材9を洗浄する洗浄装置であって、前記洗浄を行う洗浄部がスキージ4と洗浄液吹き出しノズル5とを有するフイルム状基材の洗浄装置である。また、搬送されてくるフイルム状基材を洗浄する方法において、スキージをフイルム上に押付けながら洗浄液をスキージ押付け部付近に吹き出すフイルム状基材の洗浄方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフイルム状基材を連続的に移動させながらスキージをフイルム状基材に押し当て、且つ、洗浄液をスキージ押付け部付近に吹き出して、フイルム面に付着した異物を効率的に除去するフイルム状基材の洗浄方法及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ及びプラズマディスプレイの出現により、様々な種類の機能性フイルムが多用されている。特にテレビ用ディスプレイでは高精細、高画質化が進行し、フイルム状基材に異物が存在すると画質欠陥となるので付着異物を洗浄することが要求されてきている。そのため、フイルム面に付着した異物を効率的に洗浄するフイルム状基材の洗浄方法及び洗浄装置を考案する必要がある。
【0003】
液晶ディスプレイ及びプラズマディスプレイに使用されるガラス基板の枚葉式洗浄機については、既に多くの洗浄装置が考案されているが、いわゆるロールツーロール(ロール状に巻いた樹脂フイルム状基材を繰り出して、搬送しながらフイルム状基材を連続して処理し、ロールに巻き取る方式)でフイルム状基材を高度に洗浄する洗浄方法及び洗浄装置は、未だあまり知られていない。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、ロールツーロールのフイルム洗浄装置についての発明が記載されており、被洗浄物を連続的に移動させながら洗浄液を高圧で噴霧することにより洗浄する方法が記載されている。また、例えば、特許文献3及び特許文献4にはブラシロールを使用したフイルム洗浄についての発明が記載されている。
【特許文献1】特開2008−29990号公報
【特許文献2】特開2008−23466号公報
【特許文献3】実開平1−66848号公報
【特許文献4】実開平2−83081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フイルム状基材に付着した異物には浮遊異物が付着したものや製品を加工する際に発生して付着した樹脂状異物等、数種類の異物がある。浮遊異物でも粘着性の少ないものは洗浄を行うことにより比較的簡単に除去できる。このような異物は前記記載の洗浄液を高圧で噴霧する洗浄方法でも除去できる。
【0006】
しかしながら、粘着性のある浮遊異物や製品を加工する際に発生して付着した樹脂状異物は粘着力が強く簡単に除去することは困難である。しかもロール状に強く巻かれているために巻き締められて扁平形状になり、粘着力も増していっそう除去することが困難になっている。そのため、洗浄液を高圧噴霧する洗浄方法や、洗浄液と高圧エアーを混合して噴霧する二流体洗浄方法が採用されたりしているが十分な洗浄効果が得られていないのが実情である。
【0007】
フイルムの洗浄方法としてはブラシを被洗浄物であるフイルム状基材に直接接触させて洗浄する方法も採用されている。しかし、ブラシでは接触するところと非接触のところが生じ、フイルム全面を均一に洗浄することが困難である。しかも、ブラシが接触したところはブラシ先端が点接触で激しくフイルム面と衝突するために微細なすり傷等が発生し易い。それから、使用していくなかでブラシの劣化が進み、ブラシ先端部分が破損したりして新たな異物発生源となる場合もあり、いくつかの問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、フォルム状基材表面に付着した粘着力のある異物を、フイルム状基材の全面を均一に洗浄して効率よく除去するとともに、除去した異物が再付着しにくく、しかもデリケートなフイルム表面にすり傷等の外観欠陥を発生させない洗浄装置及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のものに関する。
(1) 搬送されてくるフイルム状基材を洗浄する洗浄装置であって、前記洗浄を行う洗浄部がスキージと洗浄液吹き出しノズルとを有することを特徴とするフイルム状基材の洗浄装置。
(2) 搬送されてくるフイルム状基材を洗浄する洗浄装置であって、スキージと洗浄液吹き出しノズルを有し前記洗浄を行う洗浄部と、リンス液吹き出しノズルを有し前記洗浄後の洗浄液を洗い流すリンス部と、水切り用エアーナイフを有し前記リンス後のリンス液を切る液切り部と、乾燥用エアーナイフを有し前記液切り後の液を乾燥する乾燥部と、を有することを特徴とするフイルム状基材の洗浄装置。
(3) スキージがフイルム状基材表面に押付けられるスキージ押付け部付近に、洗浄液吹き出しノズルからの洗浄液が、前記スキージ押付け部よりも上流側から当たるように、前記洗浄液吹き出しノズルが設けられることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のフイルム状基材の洗浄装置。
(4) スキージはフイルム状基材に対して角度調整及び押し込み量調整ができる機構部を有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
(5) スキージが樹脂板であることを特徴とする上記(1)から(4)の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
(6) スキージが樹脂板であり、且つ、被洗浄物のフイルム状基材よりも硬度が低いことを特徴とする上記(1)から(5)の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
(7) スキージ材質がテフロン(登録商標)であることを特徴とする上記(1)から(6)の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
(8) スキージ材質が金属であり、かつ、フイルム状基材と接触するスキージエッジ部分のRが0.5mm乃至3mmであることを特徴とする除木(1)から(7)の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
(9) スキージ長さが被洗浄物であるフイルム幅より長いことを特徴とする上記(1)から(8)の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
(10) 搬送されてくるフイルム状基材を洗浄する方法において、スキージをフイルム上に押付けながら洗浄液をスキージ押付け部付近に吹き出すことを特徴とするフイルム状基材の洗浄方法。
(11) スキージに角度を付けて、スキージエッジ部分がフイルム面に接触するようにした上記(10)記載にフイルム基材の洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フォルム状基材表面に付着した粘着力のある異物を、フイルム状基材の全面を均一に洗浄して効率よく除去するとともに、除去した異物が再付着しにくく、しかもデリケートなフイルム表面にすり傷等の外観欠陥を発生させない洗浄装置及び洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係わる実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図7は本発明の実施の形態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、フイルム状基材9は巻出部1から繰出され、ローラ3を経由して搬送され、洗浄部、リンス部、液切り部、乾燥部を経由して巻取部2に巻き取られる。洗浄部は、スキージ4と洗浄液吹き出しノズル5を有し、搬送されてくるフイルム状基材9の洗浄を行う。リンス部は、リンス液吹き出しノズル6を有し、洗浄後に残留した洗浄液14を洗い流す。液切り部は、エアーナイフ7を有し、リンス後のリンス液を液切りする。乾燥部は、熱風を吹き出すエアーナイフ8を有し、液切り後のリンス液を乾燥する。これらの洗浄部、リンス部、液切り部、乾燥部は、筐体10の中に設置されている。図1では詳細機構部は省略されているがスキージ4の角度や押付け圧力を調節する機構部、洗浄液吹き出しノズル5及びリンス液吹き出しノズル6の角度や圧力を調節する機構部、エアーナイフ7、8の角度や距離や圧力を調節する機構部、フイルム状基材のテンションを調節する機構部や排気口等も配置されている。
【0013】
スキージ4を保持する方法は、特に限定されないが、例えば、図3、図4に示すように、スキージ4をスキージホルダー13に保持した状態で、洗浄装置内に保持することができる。また、洗浄液吹き出しノズル5やリンス液吹き出しノズル6を保持する方法は、特に限定されないが、例えば、図5、図6に示すように、これらのノズルを、フイルム状基材9の幅方向に、複数並べて共通の配管に繋げた状態で、洗浄装置内に保持することができる。なお、図5、図6では、洗浄液吹き出しノズル5やリンス液吹き出しノズル6を洗浄液吹き出しノズル5で、洗浄液14やリンス液を洗浄液14で代表させて示している。スキージ4は、フイルム状基材9表面に押付けられるように、スキージ4の角度及び押付け圧力を調整されると同時に、洗浄液吹き出しノズル5からの洗浄液14の吹き出しは、スキージ4よりも上流側(図1の搬送方向とは逆側)から、スキージ押付け部11付近に当たるように、洗浄液吹き出しノズル5の角度及び距離が調整される。つまり、スキージ4がフイルム状基材9表面に押付けられるスキージ押付け部11付近に、洗浄液吹き出しノズル5からの洗浄液14が、スキージ押付け部11よりも上流側から当たるように、洗浄液吹き出しノズル5が設けられる。これにより、スキージをフイルム上に押付けながら、洗浄液吹き出しノズル5から洗浄液14をスキージ押付け部11付近に向けて吹き出す洗浄装置及び洗浄方法が可能となる。
【0014】
図2は図1の平面図である。フイルム状基材9の幅方向(搬送方向に対して直角方向)を全てカバーするためのスキージ4長さと洗浄液吹き出しノズル5数を有している。通常、洗浄液ノズル5はスキージ4の下流側(搬送方向に対して)に位置し、スキージ押付け部11に吹き出される。スキージ4と洗浄液吹き出しノズル5は洗浄仕様に応じてフイルム状基材9の両側に配置することができるし、同じ面に二段乃至三段、配置してもよい。スキージ4の長さはフイルム状基材9の幅(搬送方向に対して直角方向の長さ)より大きくすることにより、スキージ4とフイルム状基材9の幅方向全面の接触が均一になるようにしている。
【0015】
フイルム状基材9の付着異物はいくつか種類がある。単に浮遊異物が付着したものは洗浄液14を吹き出すだけで簡単に除去できる。しかし、樹脂状異物は粘着性があり、ロール状に巻かれたりすると巻き締められて扁平形状となり、強く粘着しているために、洗浄液14を吹き出すだけでは除去することが困難である。このような粘着力の強い異物を高度に洗浄するには、まず、かなり強い洗浄力が必要である。本発明では、洗浄部は、スキージ4と洗浄液吹き出しノズル5を有するため、スキージ4の角度及び押付け圧力を調整しながらスキージ4をフイルム状基材9表面に押付けると同時に、スキージ押付け部11付近に洗浄液14を吹き出しながら洗浄する方法が採れる。このため、フイルム基材9の表面に存在する樹脂系のへばりついた付着異物も、スキージ4で剥がされた後、洗浄液吹き出しノズル5から吹き出した洗浄液14と一緒に洗い流される。このように、スキージ4によってかき落としながら、洗浄液14で除去できるので、効果的に除去できる。
【0016】
フイルム状基材9の洗浄で重要なのは上記の洗浄力の他に、除去した異物を再付着させることなく洗い流すことである。これについては、スキージ押付け部11付近に向けて洗浄液14を吹き出すことにより、スキージ押付け部11に当たった洗浄液14が、スキージ4とフイルム基材9に囲まれて行き場を失い、スキージ4に沿ってフイルム基材9の幅方向に勢いよく排出されるので、除去した付着異物も一緒にフイルム基材9の外へ洗い流されることにより、除去した異物の再付着を防止することができる。
【0017】
また、フイルム状基材9の洗浄で重要なことは洗浄の際にすり傷を発生させないことである。特にスキージ4を直接接触させる場合はこれに留意する必要がある。すり傷が発生する要因の一つは、除去した異物がスキージ4とフイルム基材9表面に挟まれた状態になることであり、フイルム基材9より硬い異物の場合はすり傷が発生する可能性がある。本発明では、スキージ押付け部11付近に洗浄液14を吹き出して瞬時に洗い流すので、異物の挟み込みを防止できる。また、洗浄液14をスキージ押付け部11付近に吹き出すことにより、フイルム基材9表面とスキージ4との接触摩擦力を著しく低下させ、フイルム基材9表面のスキージ4の移動を滑らかにすることにより防止できる。ほとんどのフイルム状基材9及び樹脂系スキージ4は液体に濡れると接触摩擦力が著しく低下するという特性があるが、そのなかでもテフロン(登録商標)は特に顕著であり、スキージ4材質にテフロン(登録商標)を使用するとより好適である。
【0018】
すり傷を防止する方法としては、使用する樹脂系スキージ4の硬度を、被洗浄物のフイルム状基材9の硬度より低くすることである。これに洗浄液14による接触摩擦力低下を組合わせれば、すり傷発生は完全に防止できる。フイルム状基材9よりも硬度の低いスキージ4用の樹脂の種類としては、例えば、ウレタン樹脂で硬度50Hs乃至90Hsのなかから選択することもできる。フイルム状基材9よりわずかに低硬度であればよく、著しく低硬度にする必要はない。あまり低硬度にすると異物と接触したときにスキージ4の方が変形して、洗浄力が低下する。なお、本発明において、Hsとは、Hardness springの略であり、JIS K 6253に基づいて、タイプAデュロメータを用いて測定されたデュロメータ硬さ(スプリング式)をいう。
【0019】
異物除去を効果的に実施するには、フイルム状基材9の幅方向全てにスキージ4を完全に接触させる必要がある。そのためにはスキージ4長さをフイルム基材9の幅より大きくすることが重要であると同時に、フイルム状基材9の張力制御が必要である。張力は、フイルム状基材9の材質及び厚みにもよるが20Nm乃至250Nm付加することが好適であるし、100Nm乃至200Nmがより好適である。張力が20Nm以下ではフイルム状基材9とスキージ4が全幅にわたって均一に接触することが困難になるし、250Nm以上ではフイルム状基材9が伸びたり、切断したりして好ましくない。
【0020】
フイルム状基材9表面にスキージ4を軽く接触させ、この状態からのスキージ4押し込み量は3mm乃至50mmが好適であるし、10mm乃至20mmがより好適である。押し込み量3mm以下ではスキージ4とフイルム状基材9表面が均一に接触しないし、押し込み量50mm以上ではフイルム状基材9が伸びたり、切断したりして好ましくない。
【0021】
スキージ4は、図1に示すような方向(矢印で示したフイルム状基材9の搬送方向)に、あるいは図1とは逆の方向(矢印の反対方向)に、フイルム状基材9表面と垂直な姿勢から5度乃至60度程傾けて、スキージエッジ部12が接触するようにすると好適であるが、30度乃至45度がより好適である。垂直な姿勢から5度以下ではスキージエッジ部がフイルム全幅にわたって安定して接触しないし、60度以上ではスキージでの押付け圧力がフイルム面に伝えることが困難になり好ましくない。
【0022】
スキージ材質に耐食性のある金属を使用するときは、スキージエッジ部にRをとる必要がある。金属は樹脂と比較すると硬いし、液体に濡れても接触摩擦力が樹脂のときほど低下しないので、エッジ部にRを取ってカバーする必要がある。金属性スキージ4のエッジ部にRをとるときは0.5mm乃至0.3mmのRをとると好適であるし、1mm乃至2mmがより好適である。Rが0.5mm以下ではフイルム状基材9表面にすり傷を発生させる可能性があるし、Rが3mm以上では微小な異物を逆に押しつぶすようになり好ましくない。
【0023】
フイルム状基材はフイルム幅が300mm〜2000mmと広範囲にある。特に問題となるのは幅広になるときで、洗浄方法としては高圧で洗浄液14を噴霧する方法や高圧エアーと洗浄液14を混合して噴霧する二流体洗浄方法があるが、使用するユーティリティが増大するために、ランニングコストや装置価格が高価になる。本発明はスキージ4と洗浄液吹き出しノズル5を設置するだけなので、ランニングコストや装置価格を安価にできる。
【0024】
洗浄液吹き出しノズル5やリンス液吹き出しノズル6に用いるノズルは、吹き出し時のスプレー形状が扇型で、扇形に広がったスプレー形状の全域にわたって流量分布が均等ないわゆるフラットタイプであるのが望ましい。つまり、スプレー形状15の正面からの形状は扇形(図7(a))で、スプレー形状15の断面形状は、細長い楕円(図7(b))となるものが望ましい。このようなものとして、例えば、均等扇形ノズルのVEPシリーズ(株式会社いけうち製、商品名)が挙げられる。そして、洗浄液吹き出しノズル5から吹き出す洗浄液が、フイルム状基材9の幅方向全体に扇型に広がった状態で、スキージ押付け部11付近に上流側から当たるように、洗浄液吹き出しノズル5が配置される。また、リンス液吹き出しノズル6から吹き出すリンス液が、フイルム状基材9の幅方向全体に扇型に広がった状態で、フイルム状基材9に当たるように、リンス液吹き出しノズル6が配置される。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
図1に示すように、異物が付着した440mm幅のPET(ポリエチレンテレフタレート)フイルム9(50μm厚)を巻出部1に装着し、張力100Nmを付加し、搬送速度3m/minで洗浄した。洗浄液14及びリンス液は純水を使用し、スキージ4には角形状テフロン(登録商標)(長さ550mm×高さ40mm×厚み10mm)を使用し、PETフイルム9表面に垂直に押し当てた状態から、矢印で示した搬送方向とは逆方向に、30度程斜めにしてスキージエッジ部12が、PETフイルム9の幅方向全体に亘って、PETフイルム9表面と均一に接触するようにした。スキージ4の押し込み量は15mmとし、洗浄液吹き出しノズル5からの洗浄液14の吹き出しが、スキージ4よりも上流側(搬送方向とは逆側)から、スキージ押付け部11付近に当たるように、洗浄液吹き出しノズル5のノズル角度及び距離を調整し、吹き出し圧力0.35Mpaで、洗浄液14量は0.7L/ノズル/minとした。スキージ4の形状は、角形状スキージや剣形状スキージ等の中から選択できるが、ここでは角形状スキージを選択し、表面は研磨してある。図7(a)、(b)に示すように、洗浄液吹き出しノズル5には、フラット型の均等扇形ノズルであるVEPシリーズ(株式会社いけうち製、商品名)のうち、噴角90°、噴量0.7L/ノズル/min(0.3MPa)のノズルを用いた。
【0026】
洗浄されたPETフイルム9はリンス部に移動し、リンス液吹き出しノズル6で両面同時に洗い流される。このとき、リンス液吹き出しノズル6からの吹き出し圧力は0.35Mpaで純水量は0.7L/ノズル/minである。このあと、液切り部に送られ両面同時にエアーナイフ7で水切りを行うが、このときのエアー圧力は0.2MPaでエアーナイフとフイルムとの距離は5mm乃至10mm程度である。水切り後は乾燥部に移動し、ヒータで60℃に加温された熱風が両面同時にエアーナイフ8で吹き出される。エアー圧力と距離は液切り部と同じである。
【0027】
洗浄されたPETフイルム9を巻取部2に巻取り、異物有無及びすり傷有無を詳細に観察した結果、異物及びすり傷は観察されず、異物除去が効果的に行われていた。
(実施例2)
【0028】
実施例1ではスキージ4の材質に水に濡れると接触摩擦力が特に著しく低下するテフロン(登録商標)を使用したが、ここではコストを下げるためにテフロン(登録商標)より安価なウレタン樹脂を使用することにした。ウレタン樹脂の硬度は50Hs乃至90Hsの範囲のなかから選択することが可能で、ここでは70Hsを選択した。スキージ4の形状は実施例1のときと同じである。
【0029】
洗浄プロセス、洗浄条件は実施例1のときと同じであるが、洗浄後のPETフイルム9を詳細に観察した結果、異物及びすり傷は観察されず、異物除去が効果的に行われていた。
(実施例3)
【0030】
スキージ4にSUS304材質を使用し、PETフイルム9と接触するスキージエッジ部12には0.5mmのRをとり、R部は研磨してなめらかにした。スキージ4の角度やスキージ4の押し込み量、洗浄液14の吹き出し条件等は実施例1と同じである。
【0031】
洗浄プロセス、洗浄条件は実施例1のときと同じであるが、洗浄後のPETフイルム9を詳細に観察した結果、異物及びすり傷は観察されず、異物除去が効果的に行われていた。
【0032】
(比較例)
実施例1と同じ条件で、洗浄液14の吹き出しを停止して、スキージ4のみで洗浄を行った。異物除去は行われるが、除去された異物がスキージエッジ部12に付着したり、PETフイルム9の他のところに再付着する現象が観察された。すり傷についても数箇所で観察された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】フイルム状基材の洗浄装置全体構成図(正面図)
【図2】フイルム状基材の洗浄装置構成図(平面図)
【図3】スキージの正面図
【図4】スキージの側面図
【図5】洗浄液及びリンス液の吹き出しノズル正面図
【図6】洗浄液及びリンス液の吹き出しノズル側面図
【図7】スプレー形状の正面図(a)及びスプレー形状の断面図(b)
【符号の説明】
【0034】
1 巻出部
2 巻取部
3 ローラ
4 スキージ
5 洗浄液吹き出しノズル
6 リンス液吹き出しノズル
7 水切り用エアーナイフ
8 乾燥用エアーナイフ
9 フイルム状基材(PETフイルム)
10 筐体
11 スキージ押付け部
12 スキージエッジ部
13 スキージホルダー
14 洗浄液
15 スプレー形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてくるフイルム状基材を洗浄する洗浄装置であって、前記洗浄を行う洗浄部がスキージと洗浄液吹き出しノズルとを有することを特徴とするフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項2】
搬送されてくるフイルム状基材を洗浄する洗浄装置であって、スキージと洗浄液吹き出しノズルを有し前記洗浄を行う洗浄部と、リンス液吹き出しノズルを有し前記洗浄後の洗浄液を洗い流すリンス部と、水切り用エアーナイフを有し前記リンス後のリンス液を切る液切り部と、乾燥用エアーナイフを有し前記液切り後の液を乾燥する乾燥部と、を有することを特徴とするフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項3】
スキージがフイルム状基材表面に押付けられるスキージ押付け部付近に、洗浄液吹き出しノズルからの洗浄液が、前記スキージ押付け部よりも上流側から当たるように、前記洗浄液吹き出しノズルが設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項4】
スキージはフイルム状基材に対して角度調整及び押し込み量調整ができる機構部を有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項5】
スキージが樹脂板であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項6】
スキージが樹脂板であり、且つ、被洗浄物のフイルム状基材よりも硬度が低いことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項7】
スキージ材質がテフロン(登録商標)であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項8】
スキージ材質が金属であり、かつ、フイルム状基材と接触するスキージエッジ部分のRが0.5mm乃至3mmであることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項9】
スキージ長さが被洗浄物であるフイルム幅より長いことを特徴とする請求項1から8の何れかに記載のフイルム状基材の洗浄装置。
【請求項10】
搬送されてくるフイルム状基材を洗浄する方法において、スキージをフイルム上に押付けながら洗浄液をスキージ押付け部付近に吹き出すことを特徴とするフイルム状基材の洗浄方法。
【請求項11】
スキージに角度を付けて、スキージエッジ部分がフイルム面に接触するようにした請求項10記載にフイルム基材の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−94577(P2010−94577A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265186(P2008−265186)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(501041159)日化設備エンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】