説明

フェントン酸化法を利用した廃プラスチック類の洗浄・脱臭処理方法及び装置

【課題】廃プラスチック類に付着した有機物を、分解し脱臭処理すること。
【解決手段】スラリー槽10に破砕された廃プラスチック類を入れ、過酸化水素12と硫酸第1鉄13と循環水14を加え、かつ酸性に調整して攪拌する。フェントン洗浄タンク20は、上下方向に多数の層20a、20b、20cに分割され、各層を貫いた回転軸22が攪拌羽根23a、23b、23cを回転させる。層を隔てる仕切り板24a、24bには連通孔48が設けられている。フェントン洗浄タンク30も同様な構成であり、夫々の最下層同士が配管40で接続されている。配管18からフェントン洗浄タンク20の最上層に攪拌された廃プラスチック類が投入され、フェントン洗浄タンク30の最上層から廃プラスチック類をオーバーフローさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器・包装として使用された廃プラスチック類をフェントン酸化法により洗浄・脱臭処理するプラスチックの洗浄・脱臭処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ類は、産業廃棄物の他に一般廃棄物としての家庭ごみ、建築に伴って排出される建築廃棄物、土地改良掘削によるごみなどに発生原因別に区別できる。これらのごみ類を資源として有効活用を図るため、これらに含まれている原材料ごとに分別収集されている。ごみ類に含まれる材料は、鉄、非鉄金属、土砂、石ころや紙、木、廃プラスチック類(プラスチックやビニールを含む)等多種多様であり、一般にこれらは鉄などの重量物と紙、木などの軽量物とに選別されて処理される。
【0003】
この中で、廃プラスチック類については、ペットボトル(plastic bottle)とそれ以外の容器・包装廃棄物について分別収集して処理するリサイクルシステムの法制化や、これに対応するシステム化が図られており、一部の廃プラスチック類については有効利用が開始されている。
【0004】
しかし、使用済みのペットボトルや容器・包装プラスチックは、きちんと粗選別が行われていないと、生ゴミが混入したり内容物が残存したままとなる。また、容器・包装として利用された廃プラスチック類には、食品包装に用いられたものも含んでおり、回収された廃プラスチック類に糖類・芳香類・汚物などの有機物が付着し、腐敗臭(ゴミ臭気)を伴う。このため、廃プラスチック類の再生品もゴミ臭気が抜けず、廃プラスチック類を再生材料として利用するのを妨げている。
【0005】
このため、本来ならば国内で再生されるべきところ、圧縮してヒモをかけたベールの状態のまま、資源として海外に輸出されているものもある。また、再生材料として使用するにしても、例えばペットボトルの場合、糖類等が混入するとバージン材料とは性質が異なってしまうため、使用の用途が限定される。
【0006】
一方、家庭の下水および産業排水のCODを低下させる処理を行う技術として、フェントン酸化法によるCOD処理技術が知られている。フェントン酸化法は過酸化水素と触媒となる鉄イオンの供給源の硫酸第1鉄とを用いて、酸性下においてヒドロキシルラジカル (hydroxyl radical) を発生せ、ヒドロキシルラジカルの酸化力により有機物を分解処理するものである。ヒドロキシルラジカルは、最も酸化力が強く糖質、タンパク質や脂質などあらゆる物質と反応する。一方、その反応性の高さゆえ、通常の環境下では長時間存在することはできず(存続時間は、1億分の1秒間(10-8秒)程度)、この時間内に他の分子と反応し消滅する。このため、汚水処理においてはプロペラやエアー噴射などで攪拌して、汚水と鉄イオンと過酸化水素とを均一に接触させ反応させる。例えば特許文献1においては、汚水と薬剤との混合ができるだけ均一になるようにしたフェントン反応槽の構造を提案し、これらを直列につないで汚水の連続処理を行う技術を開示している。
【0007】
さらに、ヒドロキシルラジカルを用いて基板を洗浄する技術が特許文献2に開示されている。特許文献2におけるヒドロキシルラジカルはフェントン法により得られたものではない。むしろ特許文献2では、ヒドロキシルラジカルは酸性下においては短い時間で分解されてしまうため、基板の洗浄に応用することは不向きであるとして、酸性ではない条件下でヒドロキシルラジカルを発生する技術を開示している。本技術においては、基板を洗浄バスに浸けた状態で、バッチ的にヒドロキシルラジカルにて洗浄を行う。
【0008】
また、特許文献3、4は、処理装置や酸化容器に有機物を滞留したバッチ状態で、フェントン酸化法によるヒドロキシルラジカルを用いて分解することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4173706号公報
【特許文献2】特開2002‐92089号公報
【特許文献3】特開2004‐42043号公報
【特許文献4】特開2003‐200141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヒドロキシルラジカルは、その存在時間が極めて短いため、汚水液と水溶液からなる薬剤のような水溶液同士の反応に対してはプロペラやエアー等で液同士を攪拌して混合する。特許文献1では、汚水も薬剤も水溶液であるので、水面上に延びた仕切り板をフェントン反応槽内に設置し、浮上した未反応物が次の反応槽へ流れて行くことを防止するのみでよい。
【0011】
廃プラスチック類には、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)等の様々な材料が含まれているが、破砕された容器・包装系の廃プラスチック類(主にPP、PE、PS、但しPSには発泡PSも含む)には空気が付着し、反応槽の中で浮き上がってしまう。PETは水よりも重いが、包装に利用されているプラスチックは水よりも軽いものが主である。一方、反応層で廃プラスチック類が浮き上がったままでは、存在期間の極めて短いヒドリキシルラジカルを廃プラスチック類に触れさせられない。また、連続して次の反応層に送ることも出来ない。特許文献1では、反応槽内の攪拌に攪拌装置又はエアーを使用しているが、エアーでは空気が廃プラスチック類片にさらに付着して浮き上がらせてしまい、廃プラスチック類に対して十分に薬剤を触れさせた状態を長く維持することが出来ない。攪拌装置については、どのようにすべきか開示が無い。また、特許文献2乃至4のように、処理容器の中で滞留したバッチ状態で薬剤と反応させ、さらに必要であれば攪拌したとしても、これでは次から次に供給される廃プラスチック類に対する連続したフェントン処理を行うことができない。特に、廃プラスチック類を紙吹雪状に破砕した場合、廃プラスチック類は処理容器への導入バルブ、排出バルブを容易に詰まり故障させるため、処理容器を安定して可動させることができない。
【0012】
また、連続処理を行うとしても、投入された廃プラスチック類片に対して均一にフェントン処理の時間をかけないと、短いものについては脱臭が十分でなく、一方長い処理時間を経たものはプラスチックの素材が影響を受けることになる。
【0013】
酸化力が強く、排水処理や或いは土壌の改良等に利用されるフェントン酸化法であるが、破砕された廃プラスチック類の洗浄・脱臭に対して適用された例が無く、専ら界面活性剤による洗浄や、消臭剤の投入等による脱臭が試みられている。しかしながら、採算性が合わず商業ベースの可動が困難な状況にある。
【0014】
本発明は、破砕した廃プラスチック類に付着した有機物を、分解し脱臭処理する廃プラスチック類の洗浄・脱臭処理装置及び方法であって、連続的に供給される廃プラスチック類を長時間薬剤に触れさせたまま、連続して処理する廃プラスチック類の洗浄・脱臭処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の廃プラスチック類の洗浄・脱臭方法は、破砕した腐敗臭を伴う廃プラスチック類と洗浄水と過酸化水素と硫酸第1鉄とをタンクに投入して攪拌羽根により攪拌し、前記タンク内で攪拌された廃プラスチック類を取り出して遠心分離により液体から廃プラスチック類を分離し、一方、前記遠心分離により分離された液体を前記洗浄水として循環させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、水洗除去不可能な有機物及び腐敗臭の付着した廃プラスチック類を破砕して洗浄水と過酸化水素と硫酸第1鉄を加えてフェントン酸化法によって廃プラスチック類を脱臭処理する廃プラスチック類の洗浄・脱臭処理装置であって、仕切り板により上下方向に多数の層に分割され、各層を貫いた回転軸が夫々の層に攪拌羽根を有しており、かつ夫々の層が前記仕切り板に設けられた連通孔により接続されている2台のタンクと、一方台のタンクの最下層同士を接続する配管と、他方台のタンクの最上層に前記攪拌された廃プラスチック類を投入する配管と、他方のタンクの最上層から廃プラスチック類をオーバーフローさせる配管とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
フェントン酸化・洗浄を用いた洗浄・脱臭システムは、フェントン酸化液自体に自己浄化作用があるため、廃プラスチック類表面に付着した有機物、ゴミ臭気を浄化すると同時に、洗浄水に溶解した有機物、ごみ臭気をも同時に浄化する。そのため、洗浄水の再利用が可能な点に最大の特徴を有する。すなわち、遠心脱水又は遠心分離した液体は洗浄に再循環させるため、洗浄に必要な水の量を大幅に削減できる。このように、洗浄水の再利用システムを併用することで通常、必要な洗浄水量の1/10〜1/30と大幅な水使用量の低減で経済的な洗浄・脱水システムを構成できる。また、遠心分離の結果、廃プラスチック類側に残留した洗浄水に含まれる腐敗臭を伴う有機物が残留にないため、乾燥によって濃縮されることが無い。
【0018】
これまで、容器・包装のリサイクルプラスチックは、農業資材、土木資材、プラスチックパレット等の臭気や異物の混入を許容される製品にしか使用されてこなかった。産業廃棄物においても臭気や異物の混入のあるものは、焼却や埋め立て処理されていた。本発明による装置で処理された廃プラスチック類は、腐敗臭が消失しており、主要な有機物も分解されており、今まで使用できないとされてきた屋内用途の建材、自動販売機、自動車部品などの工業製品への利用用途の拡大が期待できる。
【0019】
さらに、廃プラスチック類上下方向に多層化された洗浄タンクの中で、廃プラスチック類片が攪拌されながら、上下層を順に搬送されるため、廃プラスチック類を長期間の間、薬剤に触れさせることができる。このため、腐敗臭のする廃プラスチック類の洗浄・脱臭に対して強い酸化力を持つフェントン酸化法を利用して洗浄・脱臭をすることができる。また、処理時間の均一化が図れるため、洗浄・脱臭が不十分なままの廃プラスチック類が混在することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】処理フローを示す図である。
【図2】洗浄装置及び最終水処理装置を示す図である。
【図3】フェントン洗浄タンクの一部内部を拡大した斜視図である。
【図4】すすぎ装置を示す図である。
【図5】水再生装置を示す図である。
【図6】フェントン洗浄タンク及びすすぎタンクの動作原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を用いて実施例を説明する。本実施例では特に比重が1以下で菓子、冷凍食品の袋や、レジ袋、ゴミ袋、調味料チューブ、シャンプーボトル等の容器・包装に使用されているPE、PP等の廃プラスチック類を脱臭・洗浄して回収する装置について説明する。
【0022】
尚、図面2、4及び5においては、基準高さをハッチングした地面で表しており、各構成要素が紙面の上に向かって地面より高い位置に配置されていることを表すように製図されている。また、水等の液面を点線により表している。
【0023】
図1は、廃プラスチック類の洗浄のフローを示す図である。図において、3重線は、廃プラチスチックの流れを示し、実線、一点鎖線は水の流れを示す。
圧縮された廃プラスチック類をベールから取り出して、土砂除去後、手作業により異物を除去する(S1〜S4)。この状態で、凡そ質量の7〜8%が除去される。次に、廃プラスチック類を破砕して廃プラスチック類片とする(S5)。廃プラスチック類片の大きさは、1cm角程度の紙吹雪状である。水に浸けて比重による分離を行う(S6)。この工程により、発泡ポリスチレン、比重の重い金属、或いはPET、PVC等を除去する。これらは、凡そ、ベール質量の25%程度である。
【0024】
遠心脱水(I)を行ったのち(S7)、洗浄装置100(図2)、すすぎ装置200(図4)によりフェントン酸化による有機物分解処理(S8)を行う。尚、フェントン酸化による有機物分解処理(S8)には、利用する水をリサイクルする水再生処理及び排水処分する最終水処理も含まれている。
【0025】
図2には、洗浄装置100と最終水処理装置400(一点鎖線が囲った部分)が示されている。まず、洗浄装置100において、遠心脱水(I)(S7)された廃プラスチック類をベルトコンベア2により、スラリータンク10に投入する。スラリータンク10には、過酸化水素、硫酸第一鉄、後述する循環水、そして循環水が循環する過程で失われた分の補給水が、夫々配管12、13、14、11から加えられる。廃プラスチック類は、処理水全体に対する重量比で4%程度である。また、フェントン酸化を促進するように、ペーハーセンサー17を用いて配管17aにより硫酸を加えてペーハーをPH2.0〜8.0に調整する。破砕されて空気をはらんで膨らんだ廃プラスチック類片に対して、重量比で25倍となるような水を使用して洗浄する。
【0026】
廃プラスチック類片はスラリータンク10内において、攪拌機16により攪拌され、廃プラスチック類片が混入したフェントン液としてポンプ15により配管18を通して、断面円形のフェントン洗浄タンク20へ送られる。以下、廃プラスチック類片が混入しているフェントン液を廃プラ混入液と称する。
【0027】
フェントン洗浄タンク20は、仕切り板24aと24bにより上下に積み重ねられた複数の層(本実施例では、20aから20c)に分かれており、攪拌機21の回転軸22が上下に伸びて各層を貫いている。回転軸22の位置はフェントン洗浄タンク20の中心位置に対して偏芯した位置にあり、攪拌を促している。各層においては、回転軸22には下向きの旋回流を作る攪拌羽根23a〜22cが設けられている。下向きの旋回流としているのは、廃プラスチック類片が液面上で大気に触れ、空気をはらまないようにするためである。
【0028】
図3に、フェントン洗浄タンク20の仕切り板24aと24b(代表して24a)の斜視図を示す。フェントン洗浄タンク20は平面視断面において円形をしており、仕切り板24aの上面視も点Xを中心とする円形である。回転軸は中心点Xよりも偏芯した位置に垂直に設置される。各層の仕切り板24aには、偏芯した回転軸と外周壁との間が広くなっている箇所に、廃プラスチック類片が通る連通孔48が設けられている。また、連通孔48には開度θの調整ができる板25aが設けられている。
【0029】
図2に戻り、フェントン洗浄タンク20の最上層20aの上から配管18の廃プラ混入液が投入される。上から投入するのは、ポンプ15が停止したとしても、フェントン洗浄タンク20内の内容物をスラリータンク10へ逆流させないためである。最上層20aは、オーバーフロー構造となっており、比重の軽い発泡ポリスチレンなどを攪拌機21による攪拌流による越流で配管29に排出する。一方、最下層20cは、すり鉢状の底面26を有しており、その底面26の最も低い箇所から直列に接続した電磁バルブ27a、27bを通して底面26に沈下した比重の重い物質をドレイン槽45へ落とす構造となっている。ドレイン槽45からは、ポンプ28により、後述の処理タンク50へ配管46を介して送られる。また、最下層20cの電磁バルブ27aよりも高い位置には、隣に設置されるフェントン洗浄タンク30への連絡管40が設けられており、途中に開閉弁44が設けられている。開閉弁44は、設備の保守点検の際に、装置を止める場合に使用されるものであって、運転中には使用しない。
【0030】
フェントン洗浄タンク30はフェントン洗浄タンク20と同様に上下に積み重ねられた複数の層(30a〜30c)に分かれている。攪拌機31、仕切り板34a、34bも、連通孔48に設けられる板35a〜35cもフェントン洗浄タンク20と同様である。また、攪拌羽根33a〜33cも、フェントン洗浄タンク20と同様に下向きの旋回流を発生させて、フェントン洗浄タンク20からの廃プラ混入液の動きが相殺するようにしている。フェントン洗浄タンク20、30の仕切り板に設けられた板25a〜25c、35a〜35cの開度を調整することにより、攪拌機21、31が発生する旋回流の強さのアンバランスを調整できるようにしている。
【0031】
一方、フェントン洗浄タンク30がフェントン洗浄タンク20と相違する点は、最下層30cの底面がすり鉢状となっていない点と、廃プラスチック類の流れが最下層30cから最上層30aとなっている点である。最上層30aもオーバーフロー構造を有しているが、フェントン洗浄タンク20の配管29の開口高さよりも低い位置36から配管39へオーバーフローするようになっている。上記のようにフェントン洗浄タンク20と30の攪拌羽根による廃プラ混入液の動きは相殺されているから、フェントン洗浄タンク20と30の液面は、配管39によるオーバーフロー高さで決まっており、配管29へのオーバーフローは攪拌流により起こることになる。
【0032】
配管39に越流した廃プラ混入液は、遠心脱水機70に案内され、脱水が行われる。脱水された廃プラスチック類片は次のすすぎ装置200(図4)に送られる。遠心脱水機70は、垂直方向に螺旋状の回転軸を有し、周囲にフェントン液の通る小さな孔が設けられた円筒であり、図2の下側から入れられた廃プラ混入液がフェントン液を失いながら、上側へ連続的に排出される。一方、遠心脱水機70により遠心分離されたフェントン液は、未だ消費されていない鉄イオンや過酸化水素を含んでおり、一旦シンク71に集められた後ポンプ72により循環水として、配管14を介してスラリータンク10へ送られる。洗浄水として使用される水の量は膨大であるが、本実施例においては、この水は、自浄作用を持つフェントン液であるので、廃プラスチック類を連続処理する過程でこれを循環して新たに補給すべき水量を低減している。
【0033】
最終水処理装置400においては、配管29とシンク71からのオーバーフロー水を一旦メッシュ52により濾過した後、処理タンク50に投入する。また、ドレイン槽45からの回収液も、配管46を通して一旦メッシュ51により濾過した後、処理タンク50に投入される。
【0034】
処理タンク50では、内部のペーハーをセンサー58により検出して、アルカリ(pH10〜11)となるように配管54から苛性ソーダを投入する。さらに、底面からブロアー57により曝気することにより過酸化水素を除去し、配管55を介して中和タンク60に送る。中和タンク60では、内部のペーハーをセンサー63により検出して、中和するように配管64から硫酸を加えて、中和させる。そして、配管62を介して排水する。処理タンク50は、そのほか、水再生装置300から配管56、59の水を処理するが、これらについては後述する。
【0035】
一方、遠心脱水機70で回収された廃プラスチック類片は、すすぎ装置200へ送られる。図4において、廃プラスチック類片はベルトコンベア201により、すすぎスラリータンク210に投入される。すすぎスラリータンク210では、すすぎ水を配管211及び217により注入し、攪拌機212で攪拌し、配管218を介しポンプ213によりすすぎタンク220に送る。すすぎ水としては、再生すすぎ水(配管211)、リサイクルすすぎ水(配管217)があるが、これらについては、後述する。すすぎタンク220は、フェントン洗浄タンク30と同一の多層構成であり、層の間に仕切り板と連通孔の開度を調整する開閉板を有している。最上層222aから廃プラスチック類片を取り入れ、最下層222cから配管231を通して隣接されたオーバーフロー槽230へ送り、オーバーフロー口229からオーバーフローした廃プラスチック類片は配管239を介して遠心分離機240に送られ遠心分離される。遠心分離機240は、図2の遠心脱水機70と同じ構成である。遠心分離機240で分離された水は、シンク250に溜まりポンプ251により、配管252を経由して水処理装置300へ送られる。
【0036】
図1に戻り、遠心分離機240により分離された廃プラスチック類片は、熱風乾燥され(S9)、チャージタンクに蓄えられた後(S10)、押し出し機により樹脂ペレットに成形される(S11、S12)。
【0037】
次に、洗浄、すすぎに使用される水のリサイクルについて説明する。
図5に水再生装置300を示す。配管233からの遠心分離機240で分離された水が配管252を介して送られて一旦貯留タンク310に蓄えられる。貯留タンク310をオーバーフローする水は、スラリータンク10へ配管11を介して補給水として送られる。
【0038】
貯留タンク310からポンプに311より汲み上げられた水は計量マス312で計測され、凡そ半分が配管217を介してすすぎスラリー槽210に送られ、半分は配管313を介して、”すずきリサイクル水”として、凝集反応槽に送られる。計量マス312をオーバーフローした水は、貯留タンク310に戻される。凝集反応槽320では凝集剤321が添加され、凝集反応が行われる。凝集反応槽320内では攪拌機322により攪拌が行われ、凝集処理水は、配管323を介して加圧浮上分離タンク340に送られる。加圧浮上分離タンク340では、加圧浮上ユニット350により、タンク内の水が一旦取り入れられ気泡を取り込んだ状態で圧縮された水流をノズル341から、タンク底部の配管323内に噴出させ凝縮処理水と混合することにより、凝集処理水に含まれる鉄分や廃プラスチック類(破砕の際に発生した粉状の破片クズ)を積極的にフロックにして浮上させる。浮上した鉄分や廃プラスチック類は浮上スカムとして回収される(342)。一方、浮上スカムを除去した凝縮処理水は、配管231を介して”すすぎ再生水”としてすすぎスラリー槽210へ送られる。加圧浮上分離タンク340の底部には、ロート状のドレインが設けられ、浮上スカムと共に処理タンク50へ配管59を介して送られる。
【0039】
フェントン洗浄タンク20、30、すすぎタンク220の動作について説明する。
図6に、他のタンクを代表してのフェントン洗浄タンク20の最上層を示す。攪拌羽根23aが回転すると渦Tが発生するが、廃プラスチック類片w混入している状態であるので、大気を引き込むかわりに廃プラスチック類片wが引き込まれる。渦中心は、攪拌羽根23aの上の回転軸22の位置pにまで伸びており、廃プラスチック類片wは攪拌羽根23aにより叩きつけられて、付着した気泡や汚れを落とす。回転軸22中心に廃プラスチッ片wが集まり仕切り板24aの箇所qで四方に飛散する。連通孔48の位置においては、フェントン液と廃プラスチック類片wが良く混合された状態である。また、攪拌羽根23aは下向きの水流を発生させるため、廃プラスチック類片wは、大気に触れて気体を含むことが抑制される。
【0040】
最後に、図1に戻り有機物分解処理S8の流れを全体的に説明する。
スラリータンク10において攪拌されて(S81)、廃プラ混入液は、1時間当たり22立方メートル(22m/h)の水量でフェントン洗浄タンク20に送出される。洗浄処理(S82)においては、同一の構成であるフェントン洗浄タンク20、30が水流の方向を逆にして繋がっており、廃プラ混入液の移動は、フェントン洗浄タンク20に流入した量が、殆どそのままフェントン洗浄タンク30から流出する。この量は22m/hである。遠心脱水機(II)(S83、70(図2))により、この量のフェントン液が回収される。また、フェントン洗浄タンク20のオーバーフロー及びドレインにより失われる量を2m/hと想定しており、配管56で補給される給水はこれを補う量の2m/hである。
【0041】
一方、すすぎスラリー槽210においては、貯留タンクからの水量を10m/hとし、水再生装置300からの再生すすぎ水を10m/hとし、給水を2.1m/hとしており、合計で22.1m/hが投入され、攪拌される(S84)。これがすすぎタンク220に送られ、すすぎ処理が行われる(S85)。遠心分離(S89)の工程において遠心分離機240で分離される水量は同量程度であり、これが貯留タンク310に送られる。貯留タンク310においては、凝集反応槽320へは10.1m/hを送る(S86)。水再生装置300においては、加圧浮上分離タンク340で10m/hを再生すすぎ水としてすすぎスラリー槽210にリサイクルし、0.1m/hを浮上スカム等として処理タンク50へ送る(S87)。また、貯留タンク310のオーバーフロー分として2m/hをスラリータンク10へ送る。最終水処理装置400において処理タンク50で排出されるのは、合計で2m/h程度である(S88)。
【0042】
本実施例によれば、破砕された廃プラスチック類を連続的にフェントン処理することが出来る。また、廃プラスチック類片に対して処理時間を均一化させることができる。洗浄工程で使用される水は、フェントン液であり、自らが自浄作用を有していることから、循環水として繰り返し使用することが出来る。排水或いは給水される水量は、全体の使用量に対して少量でよい。
【0043】
本実施例においては、洗浄装置100におけるスラリー槽15から遠心脱水機70にいたる工程および、すすぎ装置200におけるすすぎスラリー槽210から遠心分離機240にいたる工程において、廃プラ混合液を開閉する弁により工程制御を行なっておらず、弁詰まりを起こす要因が無いため安定して稼動できる。
【0044】
尚、実施例において、複数の洗浄装置100、すすぎ装置200に対して、1つの水再生装置300、水最終水処理装置400を共通に設けても良い。
【0045】
また、フェントン洗浄タンク20、30は、組み合わせで複数段連続させても良い。この場合、次段のフェントン洗浄タンク20におけるオーバーフロー、ドレインは必ずしも必要はない。
【0046】
上記実施例においては、廃プラスチック類として比重の軽いPEやPPを例にして示したが、水より比重の重い、PET、PVC等であっても、破砕された状態では気泡が付着しやすく、そのままでは浮かんでしまうものが多いが、本実施例ではこれに対しても処理することができる。
【0047】
本実施例によれば、有機物分解処理S8を経て得られた廃プラスチック類は、腐敗臭が消失しており、加熱溶融してもプラスチック自体が持つ臭気のみであった。このため、廃プラスチック類をリサイクル利用できる範囲を広げるものと期待できる。

【0048】
廃プラスチック類類の再生・洗浄にフェントン酸化法を使用して洗浄説臭する最大の特徴は、フェントン酸化液には、廃プラスチック類から溶出した有機物やゴミ臭気の原因物質を廃プラスチック類の表面に付着した有機物やゴミ臭気と同時並行して酸化・分解が行われるため、廃プラスチック類から溶出した物質が廃プラスチック類に再付着せず、洗浄水も同時に浄化する。そのため、洗浄水の再利用が可能な点にある。
【0049】
廃プラスチック類は、比重が軽く、かさばるため、洗浄には、大量の水を必要とする。1ライン当たりの洗浄水の使用量は、フェントン処理とすすぎ洗浄で、1時間当たり、40mの水を必要とし、工場3ラインを有した場合、120m/hの水を必要とし、8時間稼働すると、960mの水を必要とする。
【0050】
工場の立地に依り、水の価格は、150円/m〜500円/m程度必要となり、144000円から480000円のコストがかかり、実用的な洗浄とは言えないものとなる。フェントン酸化洗浄は、この水の消費を再利用することで1/10〜1/30に低減させることができる。当然のことながら水のみで洗浄しても廃プラスチック類に付着した有機物やゴミ臭気を完全に除去することはできない。廃プラスチック類類の洗浄・脱臭処理を行う上でフェントン酸化法を用いた洗浄法は、理想的な洗浄法といえる。
【0051】
廃プラスチック類の再生工程においてそれに付着した水洗いでは除去が困難な有機物やそれに伴う腐敗臭をフェントン酸化法を用い、ヒドリキシラジカルを発生させることで酸化・分解除去を行うが、フェントン酸化洗浄液と廃プラスチック類と共に洗浄水を投入し十分に洗浄を行った後、それらを脱水機により分離する。フェントン酸化液は、自己浄化作用を有するため、フェントン酸化液に移行した有機物やこれに伴う腐敗臭が酸化・分解により、浄化されると同時に、消費した過酸化水素と鉄イオンを追加投入することでその大部分を循環、再利用することが出来る。
【0052】
フェントン酸化洗浄液により浄化され、脱水機により分離された廃プラスチック類をすすぎ水や補給水と共に洗浄槽に投入し、フェントン酸化浄化工程によって廃プラスチック類に付着した残留物質を十分にすすぎ、洗浄水に移行させた後、遠心分離機により廃プラスチック類とすすぎ水に分離し、そのすすぎ水には、鉄分や過酸化水素は残留しているものの廃プラスチック類に付着していた腐敗臭を伴う有機物は、酸化・分解されているため、残留がなく、洗浄水として再利用が可能でその一部を浄化しながらすすぎ水全体を循環させ再利用すること、及びその一部をフェントン酸化洗浄液としても再利用し、補給水使用水の消費量を大幅に抑制できる。
【0053】
洗浄タンク或いはすすぎタンクは、洗浄槽を仕切板によって多層に分割され、夫々の層に攪拌羽根を設けてその仕切板に設けられた連通孔により接続されており、それらの層を用いてフェントン酸化洗浄或いはすすぎを行うため、水と比重の異なる廃プラスチック類をフェントン酸化洗浄液或いはすすぎ水と共に装置の中を円滑に移動させ、尚且つ滞留時間を均一に保ちながらムラなく十分な洗浄或いはすすぎを行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
100 洗浄装置
200 すすぎ装置
300 水再生装置
400 最終水処理装置
10 スラリー槽
20 フェントン洗浄タンク
30 フェントン洗浄タンク
70 遠心脱水機(II)
210 すすぎスラリー槽
220 すすぎタンク
240 遠心分離機
310 貯留タンク
320 凝縮反応槽
340 加圧浮上分離タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕した腐敗臭を伴う廃プラスチック類と洗浄水と過酸化水素と硫酸第1鉄とをタンクに投入して攪拌羽根により攪拌し、
前記タンク内で攪拌された廃プラスチック類を取り出して遠心分離により液体から廃プラスチック類を分離し、
一方、前記遠心分離により分離された液体を前記洗浄水として循環させることを特徴とする廃プラスチック類の洗浄・脱臭方法。

【請求項2】
前記タンクは、仕切り板により上下方向に多数の層に分割され、回転軸が各層を貫き夫々の層に攪拌羽根が設けられ、かつ夫々の層が前記仕切り板に設けられた連通孔により接続されており、前記廃プラスチック類と洗浄水と過酸化水素と硫酸第1鉄は、前記タンクの最上層に投入され、
前記タンクの最下層から攪拌した廃プラスチック類を取り出すことを特徴とする請求項1の廃プラスチック類の洗浄・脱臭方法。

【請求項3】
前記タンクの下層を経由した廃プラスチック類を、仕切り板により上下方向に多数の層に分割され、回転軸が各層を貫き夫々の層に設けられた攪拌羽根を回転させ、かつ夫々の層が前記仕切り板に設けられた連通孔により接続された他のタンクの最下層に導入し、
前記遠心分離は、他のタンクの最上層を経由した廃プラスチック類に対して行うことを特徴とする請求項2の廃プラスチック類の洗浄・脱臭方法。

【請求項4】
水洗除去不可能な有機物及び腐敗臭の付着した廃プラスチック類を破砕して洗浄水と過酸化水素と硫酸第1鉄を加えてフェントン酸化法によって廃プラスチック類を脱臭処理する廃プラスチック類の洗浄・脱臭処理装置であって、
仕切り板により上下方向に多数の層に分割され、各層を貫いた回転軸が夫々の層に攪拌羽根を有しており、かつ夫々の層が前記仕切り板に設けられた連通孔により接続されている2台のタンクと、
一方台のタンクの最下層同士を接続する配管と、
他方台のタンクの最上層に前記攪拌された廃プラスチック類を投入する配管と、
他方のタンクの最上層から廃プラスチック類をオーバーフローさせる配管とを有することを特徴とする廃プラスチック類の洗浄・脱臭処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−167176(P2012−167176A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28894(P2011−28894)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(511039544)株式会社 アクアトリム (1)
【Fターム(参考)】