フォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置
【課題】ブランクスにおけるレジスト膜のアミン性化合物の吸着によるパターン寸法精度の低下を抑えることが可能なフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置を提供する。
【解決手段】基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、第1のプリベーク処理を行った後、大気露出させることなく、或いは化学増幅型レジスト膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行う。
【解決手段】基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、第1のプリベーク処理を行った後、大気露出させることなく、或いは化学増幅型レジスト膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画に用いられるフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンを形成するためのフォトマスクの形成に、優れた解像度を有する荷電粒子ビーム描画装置が用いられている。このような荷電粒子ビーム描画装置により、電子ビームなどの荷電粒子ビームを、例えば石英ガラス基板上に順次Cr膜(遮光膜)、レジスト膜が形成されたブランクスに照射してパターン描画を行う。そして、現像、エッチングを行うことにより、Crの遮光パターンを有するマスクパターンが形成される。
【0003】
このようなフォトマスクの形成に用いられるレジストとして、少ない露光量で高感度が得られる化学増幅型レジスト(Chemically Amplified Resist:以下CARと記す)が用いられる。CARは、例えばアルカリ可溶性樹脂、酸発生剤などを含有するレジストであり、電子ビームなどの照射により、酸発生剤が分解して酸を発生し、酸により溶解抑止剤を分解、或いは架橋を進行させ、アルカリ現像を行うことにより、パターンを形成することができる。
【0004】
このとき、雰囲気中の極微量のアミン系化合物などの塩基性物質がレジスト膜に吸着されるため、その後照射される電子ビームなどにより発生した酸が失活し、レジスト膜の感度が低下するという問題が生じる。通常、ブランクスは、レジストの塗布均一性を向上させるために同時期に複数枚形成されたものが、順次パターン描画に供される。従って、保管時間に差が生じるため、保管時間に依存して吸着量が変動し、感度が変動するPCD(Post Coating Delay)現象が生じる。その結果、パターン寸法が変動してしまう。
【0005】
そこで、例えば特許文献1において、描画前の3時間以内に再度ベーキングを行い、感度を復元することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−30868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、フォトマスクパターンの寸法精度の向上が要求されている。例えば、線幅が20nm以下のパターンとなると、1nmの変動であっても許容され得なくなる。そこで、よりアミン性化合物の吸着を抑え、寸法精度をより向上させることが必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、ブランクスにおけるCAR膜のアミン系化合物の吸着によるパターン寸法精度の低下を抑えることが可能なフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のフォトマスクの製造方法は、基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、プリベーク処理を行った後、大気露出させることなく荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様のフォトマスクの製造方法は、基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、第1の加熱処理を行った後、化学増幅型レジスト膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着し、アミン系化合物が実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様のフォトマスクの製造方法において、描画の5時間以上前から、基板を、1.33×10−4Pa以下の真空雰囲気下で保持することにより、アミン系化合物を脱着することができる。
【0012】
また、本発明の一態様のフォトマスクの製造方法において、描画前に、基板に第2の加熱処理を施すことにより、アミン系化合物を脱着することができる。
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、化学増幅型レジスト膜を有する基板を搬入・搬出するためのロードロックチャンバと、基板が搬入され、化学増幅型レジスト膜に吸着したアミン系化合物を実質的に全て脱着するための脱着チャンバと、アミン系化合物が実質的に全て脱着された基板の搬送を真空下で行うための搬送チャンバと、搬送チャンバより搬送された基板に荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う描画チャンバと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様のフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置によれば、ブランクスにおけるCAR膜のアミン系化合物の吸着によるフォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図1b】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示すフローチャートである。
【図3a】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図3b】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置を示す図である。
【図8】本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置を示す図である。
【図9】本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施態様のフォトマスクの製造方法は、基板上にCAR膜を形成し、プリベーク処理を行った後、大気露出させることなく、或いはCAR膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着し、アミン系化合物が実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行うものである。
【0017】
ここで基板としては、通常フォトマスクに用いられる石英ガラスなどに、遮光膜であるCr膜などが形成された基板が用いられる。
【0018】
このような基板上に、一般に用いられるCAR材料を、溶剤(有機溶剤)に溶解して所定の粘度とした後、スピンコータ、アプリケータ、バーコータ、スピナー、カーテンフローコータなどの公知の装置を用いて塗布することにより、CAR膜が形成される。
【0019】
ここで用いられるCAR材料は、酸により現像剤に可溶化/不溶化する樹脂、荷電粒子ビームの照射により酸を発生させる酸発生剤、および発生した酸がCAR膜中で過剰に拡散し、パターンのプロファイルを劣化させることを防止するクエンチャーが含まれるものであれば、特に限定されない。
【0020】
酸により現像剤に可溶化し、ポジ型レジストとして用いられる樹脂としては、アルカリ現像可能なノボラック樹脂などのフェノール樹脂、置換ポリスチレンを用いることができる。その他、メチルイソブチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合溶媒によって現像されるPMMA(ポリメチルメタクリレート)なども用いることが可能である。
【0021】
また、酸により現像剤に不溶化し、ネガ型レジストとして用いられる樹脂としては、アルカリ現像可能なアルキルエーテル化メラミン樹脂、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、アルキルエーテル化ユリア樹脂、アルキルエーテル基含有フェノール系化合物などを用いることができる。
【0022】
荷電粒子ビームの照射により酸を発生させる酸発生剤としては、ビススルホニウジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体、ポリヒドロキし化合物と脂肪族または芳香族スルホン酸エステル類、オニウム塩、スルホニルカルボニルアルカン類、スルホニルカルボニルジアゾメタン類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、オキシムスルホネート系化合物類、フェニルスルホニルオキシフタルイミド類などの化合物を用いることができる。
【0023】
発生した酸がCAR膜中で過剰に拡散し、パターンのプロファイルを劣化させることを防止するクエンチャーとしては、第三級アミン類、ベンジルカルバメート類、ベンゾインカルバメート類、o−カルバモイルヒドロキシアミン類、o−カルバモイルオキシム類、ジチオカルバメート第四級アンモニウム塩などを用いることができる。
【0024】
このようにして基板上に形成されたCAR膜について、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)が行われる。このプリベーク処理は、CAR膜中の溶剤など揮発性成分を除去するために行われる。プリベーク処理条件は、CAR膜自体の構造に影響を与えない条件であればよく、例えば大気中或いは不活性ガス雰囲気で80〜150℃で10分〜20分とすることができる。
【0025】
このようにして基板上にCAR膜を有するブランクスが形成される。このようなブランクスは、通常同時に複数枚形成され、大気中で保管された後、それぞれ描画に供される。従って、描画時期の違いが生じ、保管時間はブランクスにより異なるため、保管雰囲気中(大気中)に極微量に含まれるアミン系化合物が、CAR膜に吸着され、保管時間により、吸着量が変動する。そこで、描画まで大気露出させることなく保管するか、描画前にCAR膜に吸着されたアミン系化合物を、実質的に全て脱着させる。
【0026】
ここで、アミン系化合物とは、アミノ基を有する化合物であり、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0027】
描画まで大気露出させることなく保管する方法としては、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)後、プリベーク装置から直接例えば1.33×10−4Pa以下の真空化が可能な保管チャンバなどにブランクスを導入し、真空で保管する方法が挙げられる。プリベーク処理は、真空雰囲気で行うことが好ましいが、大気中、或いは不活性ガス雰囲気中で行われる場合、保管チャンバなどに導入後、速やかに真空化することが必要である。このようにして、ブランクスにアミン系化合物を吸着させることなく、保管することができる。
【0028】
CAR膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着するための手法としては、具体的には、脱着チャンバなどを用いて、或いは既存の装置内で条件を制御することにより、真空下で保持する、プリベーク処理(第2のプリベーク処理)を行うなどが挙げられる。なお、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)後のアミン系化合物のCAR膜への吸着力は比較的弱く、容易に脱着することができる。
【0029】
真空で保持する方法としては、真空ポンプなどを備え、例えば1.33×10−4Pa以下の真空化が可能な脱着チャンバにブランクスを導入し、真空で保持する方法が挙げられる。長時間(例えば1週間〜1か月)大気中などに晒された場合であっても、描画の5時間以上、好ましくは12時間以上ブランクスを真空で保持することにより、アミン系化合物の脱着が可能となる。なお、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)後、例えば搬送の際のみに大気中(アミン系化合物が存在する雰囲気)に晒されたなど、大気中への露出が短時間場合は、真空保持時間はより短時間でもよい。
【0030】
プリベーク処理(第2のプリベーク処理)を行う方法としては、ホットプレート、ヒータなどの加熱機構、脱着したアミン系化合物を排気する排気機構を備えた脱着チャンバにブランクスを導入し、所定条件で加熱する方法が挙げられる。このとき、80〜150℃で10〜20分間、真空又は高純度不活性ガス雰囲気で加熱することにより、アミン系化合物の脱着が可能となる。ここで、高純度不活性ガス雰囲気とは、少なくともアミン系化合物が存在しない不活性ガス雰囲気をいう。なお、必ずしも加熱機構を備えた脱着チャンバを設ける必要はなく、既存の装置内に加熱機構、脱着機構を設け、加熱処理を行うことも可能である。
【0031】
このようにして、脱着されるアミン系化合物は、脱着チャンバなどにアミン系化合物検出機構を設けることにより、脱着状態をモニタすることができる。例えば、pH、圧力(全圧又はアミン系化合物の分圧)をモニタし、その変動がなくなった時点を、アミン系化合物が実質的に全て脱着された状態とみなすことができる。或いは、所定の条件でアミン系化合物が脱着されたブランクスに、荷電粒子ビームで描画を行い、パターン寸法変動がなくなる条件を実験的に見出す。そして、その条件で脱着処理を行った状態をアミン系化合物が実質的に全て脱着された状態としてもよい。
【0032】
このようにして、ブランクスにアミン系化合物を吸着させることなく、或いはブランクスに吸着したアミン系化合物を実質的に全て脱着し、この状態を維持したまま、荷電粒子ビームを照射して、マスクパターンの描画を行う。
【0033】
アミン系化合物を吸着させることなく、或いはアミン系化合物を脱着した状態を維持するために、ブランクスを大気露出させることなく、描画装置(描画チャンバ)に搬入する必要がある。但し、搬入時に短時間大気露出させた場合であっても、描画装置導入前に(例えばロードロックチャンバなどにおいて)、所定時間真空保持することにより、アミン系化合物を脱着することができる。
【0034】
そして、ブランクスに荷電粒子ビームを照射してマスクパターンの描画を行った後、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
(実施形態1)
図1a〜1cに本実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図を、図2にそのフローチャートを示す。
【0037】
図1aに示すように、先ず、例えば石英ガラス基板sub.上にCr膜11を形成した後、樹脂中に酸発生剤、クエンチャーを分散させたCAR膜12を塗布し、プリベーク装置(図示せず)により、例えばArフロー中130℃で10分間プリベーク処理を行う(Step1−1)。プリベーク処理により、CAR膜中の有機溶剤などの揮発性成分が除去されたブランクス10が形成される。
【0038】
プリベーク処理後、ブランクス10を大気中に露出させることなく、図1bに示すように、排気ポンプ(図示せず)、圧力計(図示せず)などを備えた排気機構21を備えた保管チャンバ22に搬入し(Step1−2)、排気機構21により、保管チャンバ22内を1.33×10−4Pa以下の真空とする。そして、この状態でブランクス10を保管する(Step1−3)。このとき、大気中に極微量存在するアミン化合物13は、保管チャンバ22内には存在していないため、ブランクス10のCAR膜に吸着されることはない。
【0039】
次いで、真空保管されたブランクス10を、大気露出することなく、荷電粒子ビーム描画装置に導入し、荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う(Step1−4)。さらに、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0040】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスを、アミン化合物を吸着させることなく保管して描画に供することにより、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。具体的には、大気中に保管した場合、感度変動が1μC/cm2以上、パターンの線幅寸法変動が1nm以上となるが、1か月真空保管した場合、感度変動が1μC/cm2未満、パターンの線幅寸法変動が1nm未満となり、PCDの影響を十分抑制することが可能となる。従って、CAR膜を塗布後の基板の保存時間を管理、制御することなく、良好なパターン寸法精度を得ることができる。
【0041】
(実施形態2)
図3a、3bに本実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図を、図4にそのフローチャートを示す。
【0042】
実施形態1と同様に、プリベーク処理(Step2−1)されたブランクス10を、図3aに示すように、保管ケース31中に保管する(Step2−2)。このとき、保管ケース31内の雰囲気は、特に限定されるものではないが、ダストなどの付着を防止するために、不活性ガスなどがパージされた清浄雰囲気であることが好ましい。
【0043】
このようにして保管されたブランクス10のCAR膜には、雰囲気中の微量のアミン系化合物13などが吸着されている。そのため、CAR膜よりアミン系化合物を脱着させる。
【0044】
先ず、図3bに示すように、ブランクス10を排気ポンプ32、圧力計33などを有する排気機構34を備えた脱着チャンバ35に搬入する(Step2−3)。次いで、排気機構34により、脱着チャンバ35内を1.33×10−4Pa以下の真空として(Step2−4)、ブランクス10をアミン系化合物13が実質的に全て脱着されるまで保持する(Step2−5)。
【0045】
このとき、圧力計33をモニタして、アミン系化合物などが揮発しなくなり、圧力変動がなくなった時点を、アミン系化合物が実質的に全て脱着された状態とすることができる。なお、pHや、アミン系化合物の分圧をモニタしてもよい。
【0046】
また、保持時間を予め実験的に求めてもよい。例えば、所定時間真空保持されたブランクスに、荷電粒子ビームで描画を行い、パターン寸法を測定する。そして、パターン寸法の変動がなくなる保持時間を求め、保持時間とすることができる。保持時間は、通常の保管条件(例えば、大気中で1週間〜1か月)であれば、5時間以上とすることが好ましい。より好ましくは12時間以上である。
【0047】
次いで、アミン系化合物が実質的に全て脱着されたブランクス10を、大気露出することなく、荷電粒子ビーム描画装置に導入し、荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う(Step2−6)。さらに、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0048】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスに吸着したアミン化合物を脱着させて描画に供することにより、実施形態1と同様に、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。
【0049】
(実施形態3)
図5に本実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図を、図6にそのフローチャートを示す。
【0050】
実施形態1と同様に、第1のプリベーク処理(Step3−1)されたブランクス10を、実施形態2と同様に、保管ケース31中に保管する(Step3−2)。
【0051】
そして、CAR膜12よりアミン系化合物を脱着させるために、先ず、図5に示すように、ブランクス10を排気ポンプ42、圧力計43などを有する排気機構44と、ホットプレートなどの加熱機構45を備えた脱着チャンバ46に搬入する(Step3−3)。
【0052】
次いで、排気機構44により、脱着チャンバ46内を1.33×10−4Pa以下の真空とする(Step3−4)。このとき、必ずしも真空にする必要はなく、高純度不活性ガス雰囲気としてもよい。
【0053】
そして、加熱機構45により、ブランクスを例えば130℃で10分間加熱し、第2のプリベーク処理を行う(Step3−5)。そして、この状態でブランクス10をアミン系化合物が実質的に全て脱着されるまで加熱を続ける(Step3−6)。
【0054】
このとき、圧力計43をモニタして、アミン系化合物などが揮発しなくなり、圧力変動がなくなった時点を、アミン系化合物が実質的に全て脱着された状態とすることができる。なお、pHや、アミン系化合物の分圧をモニタしてもよい。
【0055】
また、保持時間を実験的に求めてもよい。例えば、所定時間加熱されたブランクスに、荷電粒子ビームで描画を行い、パターン寸法を測定する。そして、パターン寸法の変動がなくなる加熱時間を求め、加熱時間とすることができる。第2のプリベーク処理時間は、通常の保管条件(例えば、大気中で1週間〜1か月)であれば、10分以上とすることが好ましい。
【0056】
次いで、アミン系化合物が実質的に全て脱着されたブランクス10を、大気露出することなく、荷電粒子ビーム描画装置に導入し、荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う(Step3−7)。さらに、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0057】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスに吸着したアミン化合物を脱着させて描画に供することにより、実施形態1と同様に、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
これら実施形態1〜3において、保管チャンバ、脱着チャンバより荷電粒子ビーム描画装置にブランクスを搬送しているが、このとき、これらのチャンバを荷電粒子ビーム描画装置に接続して搬送してもよい。具体的には、図7に示すように、ブランクスを搬入、搬出するための真空化可能なロードロックチャンバ51と、ブランクス10を真空で搬送するための搬送アーム52aを備えた搬送チャンバ52と、アライメントを行うためのアライメントチャンバ53と、ブランクスに描画を行うための荷電粒子ビーム描画チャンバ54が設けられた荷電粒子ビーム描画装置において、ロードロックチャンバ51のゲート55に、これらのチャンバ(保管チャンバ、脱着チャンバ)56のゲート57を接続し、ゲート55、57を開放することにより、ブランクス10を大気露出することなく荷電粒子ビーム描画装置に搬入することができる。
【0059】
(実施形態4)
本実施形態は、実施形態3と同様のフローでフォトマスクが形成されるが、脱着チャンバを設置した荷電粒子ビーム描画装置を用いている点で異なっている。
【0060】
図8に本実施形態の荷電粒子ビーム描画装置を示すように、ブランクスを搬入、搬出するための真空化可能なロードロックチャンバ61と、ブランクス10を真空で搬送するための搬送アーム62aを備えた搬送チャンバ62と、アライメントを行うためのアライメントチャンバ63と、ブランクスに描画を行うための荷電粒子ビーム描画チャンバ64が設けられ、ロードロックチャンバ61と搬送チャンバ62の間に、排気機構65a、加熱機構65bを備えた脱着チャンバ65を接続した構造となっている。
【0061】
このような荷電粒子ビーム描画装置を用いて、先ず、ブランクス10をロードロックチャンバ61に搬入し、脱着チャンバ65に搬送する。次いで、実施形態3と同様に、真空中、或いは高純度不活性ガス雰囲気で、プリベーク処理(第2のプリベーク処理)を行う。そして、ブランクス10をアミン系化合物が実質的に全て脱着された状態で、搬送チャンバ62を介してアライメントチャンバ63、荷電粒子ビーム描画チャンバ64に搬送し、同様に荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う。
【0062】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスに吸着したアミン化合物を脱着させて描画に供することにより、実施形態1と同様に、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。
【0063】
なお、図9に示すように、新たに脱着チャンバを設けることなく、ロードロックチャンバ71内にホットプレートなどの加熱機構74を設け、ロードロックチャンバ71に脱着チャンバの機能を持たせてもよい。
【0064】
また、本実施形態と同様に、荷電粒子ビーム描画装置において、実施形態1の保管チャンバ、実施形態2の脱着チャンバを設置した構造とすることも可能である。
【0065】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…ブランクス
11…Cr膜
12…CAR膜
13…アミン系化合物
21、34、44、65a…排気機構
22…保管チャンバ
31…保管ケース
32、42…排気ポンプ
33、43…圧力計
35、46、65…脱着チャンバ
45、65b、74…加熱機構
51、61、71…ロードロックチャンバ
52、62…搬送チャンバ
52a、62a…搬送アーム
53、63…アライメントチャンバ
54、64…荷電粒子ビーム描画チャンバ
55、57…ゲート
56…チャンバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画に用いられるフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンを形成するためのフォトマスクの形成に、優れた解像度を有する荷電粒子ビーム描画装置が用いられている。このような荷電粒子ビーム描画装置により、電子ビームなどの荷電粒子ビームを、例えば石英ガラス基板上に順次Cr膜(遮光膜)、レジスト膜が形成されたブランクスに照射してパターン描画を行う。そして、現像、エッチングを行うことにより、Crの遮光パターンを有するマスクパターンが形成される。
【0003】
このようなフォトマスクの形成に用いられるレジストとして、少ない露光量で高感度が得られる化学増幅型レジスト(Chemically Amplified Resist:以下CARと記す)が用いられる。CARは、例えばアルカリ可溶性樹脂、酸発生剤などを含有するレジストであり、電子ビームなどの照射により、酸発生剤が分解して酸を発生し、酸により溶解抑止剤を分解、或いは架橋を進行させ、アルカリ現像を行うことにより、パターンを形成することができる。
【0004】
このとき、雰囲気中の極微量のアミン系化合物などの塩基性物質がレジスト膜に吸着されるため、その後照射される電子ビームなどにより発生した酸が失活し、レジスト膜の感度が低下するという問題が生じる。通常、ブランクスは、レジストの塗布均一性を向上させるために同時期に複数枚形成されたものが、順次パターン描画に供される。従って、保管時間に差が生じるため、保管時間に依存して吸着量が変動し、感度が変動するPCD(Post Coating Delay)現象が生じる。その結果、パターン寸法が変動してしまう。
【0005】
そこで、例えば特許文献1において、描画前の3時間以内に再度ベーキングを行い、感度を復元することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−30868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、フォトマスクパターンの寸法精度の向上が要求されている。例えば、線幅が20nm以下のパターンとなると、1nmの変動であっても許容され得なくなる。そこで、よりアミン性化合物の吸着を抑え、寸法精度をより向上させることが必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、ブランクスにおけるCAR膜のアミン系化合物の吸着によるパターン寸法精度の低下を抑えることが可能なフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のフォトマスクの製造方法は、基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、プリベーク処理を行った後、大気露出させることなく荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様のフォトマスクの製造方法は、基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、第1の加熱処理を行った後、化学増幅型レジスト膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着し、アミン系化合物が実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様のフォトマスクの製造方法において、描画の5時間以上前から、基板を、1.33×10−4Pa以下の真空雰囲気下で保持することにより、アミン系化合物を脱着することができる。
【0012】
また、本発明の一態様のフォトマスクの製造方法において、描画前に、基板に第2の加熱処理を施すことにより、アミン系化合物を脱着することができる。
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、化学増幅型レジスト膜を有する基板を搬入・搬出するためのロードロックチャンバと、基板が搬入され、化学増幅型レジスト膜に吸着したアミン系化合物を実質的に全て脱着するための脱着チャンバと、アミン系化合物が実質的に全て脱着された基板の搬送を真空下で行うための搬送チャンバと、搬送チャンバより搬送された基板に荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う描画チャンバと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様のフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置によれば、ブランクスにおけるCAR膜のアミン系化合物の吸着によるフォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図1b】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示すフローチャートである。
【図3a】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図3b】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の一態様のフォトマスクの製造工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置を示す図である。
【図8】本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置を示す図である。
【図9】本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施態様のフォトマスクの製造方法は、基板上にCAR膜を形成し、プリベーク処理を行った後、大気露出させることなく、或いはCAR膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着し、アミン系化合物が実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行うものである。
【0017】
ここで基板としては、通常フォトマスクに用いられる石英ガラスなどに、遮光膜であるCr膜などが形成された基板が用いられる。
【0018】
このような基板上に、一般に用いられるCAR材料を、溶剤(有機溶剤)に溶解して所定の粘度とした後、スピンコータ、アプリケータ、バーコータ、スピナー、カーテンフローコータなどの公知の装置を用いて塗布することにより、CAR膜が形成される。
【0019】
ここで用いられるCAR材料は、酸により現像剤に可溶化/不溶化する樹脂、荷電粒子ビームの照射により酸を発生させる酸発生剤、および発生した酸がCAR膜中で過剰に拡散し、パターンのプロファイルを劣化させることを防止するクエンチャーが含まれるものであれば、特に限定されない。
【0020】
酸により現像剤に可溶化し、ポジ型レジストとして用いられる樹脂としては、アルカリ現像可能なノボラック樹脂などのフェノール樹脂、置換ポリスチレンを用いることができる。その他、メチルイソブチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合溶媒によって現像されるPMMA(ポリメチルメタクリレート)なども用いることが可能である。
【0021】
また、酸により現像剤に不溶化し、ネガ型レジストとして用いられる樹脂としては、アルカリ現像可能なアルキルエーテル化メラミン樹脂、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、アルキルエーテル化ユリア樹脂、アルキルエーテル基含有フェノール系化合物などを用いることができる。
【0022】
荷電粒子ビームの照射により酸を発生させる酸発生剤としては、ビススルホニウジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体、ポリヒドロキし化合物と脂肪族または芳香族スルホン酸エステル類、オニウム塩、スルホニルカルボニルアルカン類、スルホニルカルボニルジアゾメタン類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、オキシムスルホネート系化合物類、フェニルスルホニルオキシフタルイミド類などの化合物を用いることができる。
【0023】
発生した酸がCAR膜中で過剰に拡散し、パターンのプロファイルを劣化させることを防止するクエンチャーとしては、第三級アミン類、ベンジルカルバメート類、ベンゾインカルバメート類、o−カルバモイルヒドロキシアミン類、o−カルバモイルオキシム類、ジチオカルバメート第四級アンモニウム塩などを用いることができる。
【0024】
このようにして基板上に形成されたCAR膜について、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)が行われる。このプリベーク処理は、CAR膜中の溶剤など揮発性成分を除去するために行われる。プリベーク処理条件は、CAR膜自体の構造に影響を与えない条件であればよく、例えば大気中或いは不活性ガス雰囲気で80〜150℃で10分〜20分とすることができる。
【0025】
このようにして基板上にCAR膜を有するブランクスが形成される。このようなブランクスは、通常同時に複数枚形成され、大気中で保管された後、それぞれ描画に供される。従って、描画時期の違いが生じ、保管時間はブランクスにより異なるため、保管雰囲気中(大気中)に極微量に含まれるアミン系化合物が、CAR膜に吸着され、保管時間により、吸着量が変動する。そこで、描画まで大気露出させることなく保管するか、描画前にCAR膜に吸着されたアミン系化合物を、実質的に全て脱着させる。
【0026】
ここで、アミン系化合物とは、アミノ基を有する化合物であり、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0027】
描画まで大気露出させることなく保管する方法としては、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)後、プリベーク装置から直接例えば1.33×10−4Pa以下の真空化が可能な保管チャンバなどにブランクスを導入し、真空で保管する方法が挙げられる。プリベーク処理は、真空雰囲気で行うことが好ましいが、大気中、或いは不活性ガス雰囲気中で行われる場合、保管チャンバなどに導入後、速やかに真空化することが必要である。このようにして、ブランクスにアミン系化合物を吸着させることなく、保管することができる。
【0028】
CAR膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着するための手法としては、具体的には、脱着チャンバなどを用いて、或いは既存の装置内で条件を制御することにより、真空下で保持する、プリベーク処理(第2のプリベーク処理)を行うなどが挙げられる。なお、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)後のアミン系化合物のCAR膜への吸着力は比較的弱く、容易に脱着することができる。
【0029】
真空で保持する方法としては、真空ポンプなどを備え、例えば1.33×10−4Pa以下の真空化が可能な脱着チャンバにブランクスを導入し、真空で保持する方法が挙げられる。長時間(例えば1週間〜1か月)大気中などに晒された場合であっても、描画の5時間以上、好ましくは12時間以上ブランクスを真空で保持することにより、アミン系化合物の脱着が可能となる。なお、プリベーク処理(第1のプリベーク処理)後、例えば搬送の際のみに大気中(アミン系化合物が存在する雰囲気)に晒されたなど、大気中への露出が短時間場合は、真空保持時間はより短時間でもよい。
【0030】
プリベーク処理(第2のプリベーク処理)を行う方法としては、ホットプレート、ヒータなどの加熱機構、脱着したアミン系化合物を排気する排気機構を備えた脱着チャンバにブランクスを導入し、所定条件で加熱する方法が挙げられる。このとき、80〜150℃で10〜20分間、真空又は高純度不活性ガス雰囲気で加熱することにより、アミン系化合物の脱着が可能となる。ここで、高純度不活性ガス雰囲気とは、少なくともアミン系化合物が存在しない不活性ガス雰囲気をいう。なお、必ずしも加熱機構を備えた脱着チャンバを設ける必要はなく、既存の装置内に加熱機構、脱着機構を設け、加熱処理を行うことも可能である。
【0031】
このようにして、脱着されるアミン系化合物は、脱着チャンバなどにアミン系化合物検出機構を設けることにより、脱着状態をモニタすることができる。例えば、pH、圧力(全圧又はアミン系化合物の分圧)をモニタし、その変動がなくなった時点を、アミン系化合物が実質的に全て脱着された状態とみなすことができる。或いは、所定の条件でアミン系化合物が脱着されたブランクスに、荷電粒子ビームで描画を行い、パターン寸法変動がなくなる条件を実験的に見出す。そして、その条件で脱着処理を行った状態をアミン系化合物が実質的に全て脱着された状態としてもよい。
【0032】
このようにして、ブランクスにアミン系化合物を吸着させることなく、或いはブランクスに吸着したアミン系化合物を実質的に全て脱着し、この状態を維持したまま、荷電粒子ビームを照射して、マスクパターンの描画を行う。
【0033】
アミン系化合物を吸着させることなく、或いはアミン系化合物を脱着した状態を維持するために、ブランクスを大気露出させることなく、描画装置(描画チャンバ)に搬入する必要がある。但し、搬入時に短時間大気露出させた場合であっても、描画装置導入前に(例えばロードロックチャンバなどにおいて)、所定時間真空保持することにより、アミン系化合物を脱着することができる。
【0034】
そして、ブランクスに荷電粒子ビームを照射してマスクパターンの描画を行った後、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
(実施形態1)
図1a〜1cに本実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図を、図2にそのフローチャートを示す。
【0037】
図1aに示すように、先ず、例えば石英ガラス基板sub.上にCr膜11を形成した後、樹脂中に酸発生剤、クエンチャーを分散させたCAR膜12を塗布し、プリベーク装置(図示せず)により、例えばArフロー中130℃で10分間プリベーク処理を行う(Step1−1)。プリベーク処理により、CAR膜中の有機溶剤などの揮発性成分が除去されたブランクス10が形成される。
【0038】
プリベーク処理後、ブランクス10を大気中に露出させることなく、図1bに示すように、排気ポンプ(図示せず)、圧力計(図示せず)などを備えた排気機構21を備えた保管チャンバ22に搬入し(Step1−2)、排気機構21により、保管チャンバ22内を1.33×10−4Pa以下の真空とする。そして、この状態でブランクス10を保管する(Step1−3)。このとき、大気中に極微量存在するアミン化合物13は、保管チャンバ22内には存在していないため、ブランクス10のCAR膜に吸着されることはない。
【0039】
次いで、真空保管されたブランクス10を、大気露出することなく、荷電粒子ビーム描画装置に導入し、荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う(Step1−4)。さらに、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0040】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスを、アミン化合物を吸着させることなく保管して描画に供することにより、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。具体的には、大気中に保管した場合、感度変動が1μC/cm2以上、パターンの線幅寸法変動が1nm以上となるが、1か月真空保管した場合、感度変動が1μC/cm2未満、パターンの線幅寸法変動が1nm未満となり、PCDの影響を十分抑制することが可能となる。従って、CAR膜を塗布後の基板の保存時間を管理、制御することなく、良好なパターン寸法精度を得ることができる。
【0041】
(実施形態2)
図3a、3bに本実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図を、図4にそのフローチャートを示す。
【0042】
実施形態1と同様に、プリベーク処理(Step2−1)されたブランクス10を、図3aに示すように、保管ケース31中に保管する(Step2−2)。このとき、保管ケース31内の雰囲気は、特に限定されるものではないが、ダストなどの付着を防止するために、不活性ガスなどがパージされた清浄雰囲気であることが好ましい。
【0043】
このようにして保管されたブランクス10のCAR膜には、雰囲気中の微量のアミン系化合物13などが吸着されている。そのため、CAR膜よりアミン系化合物を脱着させる。
【0044】
先ず、図3bに示すように、ブランクス10を排気ポンプ32、圧力計33などを有する排気機構34を備えた脱着チャンバ35に搬入する(Step2−3)。次いで、排気機構34により、脱着チャンバ35内を1.33×10−4Pa以下の真空として(Step2−4)、ブランクス10をアミン系化合物13が実質的に全て脱着されるまで保持する(Step2−5)。
【0045】
このとき、圧力計33をモニタして、アミン系化合物などが揮発しなくなり、圧力変動がなくなった時点を、アミン系化合物が実質的に全て脱着された状態とすることができる。なお、pHや、アミン系化合物の分圧をモニタしてもよい。
【0046】
また、保持時間を予め実験的に求めてもよい。例えば、所定時間真空保持されたブランクスに、荷電粒子ビームで描画を行い、パターン寸法を測定する。そして、パターン寸法の変動がなくなる保持時間を求め、保持時間とすることができる。保持時間は、通常の保管条件(例えば、大気中で1週間〜1か月)であれば、5時間以上とすることが好ましい。より好ましくは12時間以上である。
【0047】
次いで、アミン系化合物が実質的に全て脱着されたブランクス10を、大気露出することなく、荷電粒子ビーム描画装置に導入し、荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う(Step2−6)。さらに、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0048】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスに吸着したアミン化合物を脱着させて描画に供することにより、実施形態1と同様に、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。
【0049】
(実施形態3)
図5に本実施形態に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図を、図6にそのフローチャートを示す。
【0050】
実施形態1と同様に、第1のプリベーク処理(Step3−1)されたブランクス10を、実施形態2と同様に、保管ケース31中に保管する(Step3−2)。
【0051】
そして、CAR膜12よりアミン系化合物を脱着させるために、先ず、図5に示すように、ブランクス10を排気ポンプ42、圧力計43などを有する排気機構44と、ホットプレートなどの加熱機構45を備えた脱着チャンバ46に搬入する(Step3−3)。
【0052】
次いで、排気機構44により、脱着チャンバ46内を1.33×10−4Pa以下の真空とする(Step3−4)。このとき、必ずしも真空にする必要はなく、高純度不活性ガス雰囲気としてもよい。
【0053】
そして、加熱機構45により、ブランクスを例えば130℃で10分間加熱し、第2のプリベーク処理を行う(Step3−5)。そして、この状態でブランクス10をアミン系化合物が実質的に全て脱着されるまで加熱を続ける(Step3−6)。
【0054】
このとき、圧力計43をモニタして、アミン系化合物などが揮発しなくなり、圧力変動がなくなった時点を、アミン系化合物が実質的に全て脱着された状態とすることができる。なお、pHや、アミン系化合物の分圧をモニタしてもよい。
【0055】
また、保持時間を実験的に求めてもよい。例えば、所定時間加熱されたブランクスに、荷電粒子ビームで描画を行い、パターン寸法を測定する。そして、パターン寸法の変動がなくなる加熱時間を求め、加熱時間とすることができる。第2のプリベーク処理時間は、通常の保管条件(例えば、大気中で1週間〜1か月)であれば、10分以上とすることが好ましい。
【0056】
次いで、アミン系化合物が実質的に全て脱着されたブランクス10を、大気露出することなく、荷電粒子ビーム描画装置に導入し、荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う(Step3−7)。さらに、ポストベーク処理、現像などを行うことにより、フォトマスクが形成される。
【0057】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスに吸着したアミン化合物を脱着させて描画に供することにより、実施形態1と同様に、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
これら実施形態1〜3において、保管チャンバ、脱着チャンバより荷電粒子ビーム描画装置にブランクスを搬送しているが、このとき、これらのチャンバを荷電粒子ビーム描画装置に接続して搬送してもよい。具体的には、図7に示すように、ブランクスを搬入、搬出するための真空化可能なロードロックチャンバ51と、ブランクス10を真空で搬送するための搬送アーム52aを備えた搬送チャンバ52と、アライメントを行うためのアライメントチャンバ53と、ブランクスに描画を行うための荷電粒子ビーム描画チャンバ54が設けられた荷電粒子ビーム描画装置において、ロードロックチャンバ51のゲート55に、これらのチャンバ(保管チャンバ、脱着チャンバ)56のゲート57を接続し、ゲート55、57を開放することにより、ブランクス10を大気露出することなく荷電粒子ビーム描画装置に搬入することができる。
【0059】
(実施形態4)
本実施形態は、実施形態3と同様のフローでフォトマスクが形成されるが、脱着チャンバを設置した荷電粒子ビーム描画装置を用いている点で異なっている。
【0060】
図8に本実施形態の荷電粒子ビーム描画装置を示すように、ブランクスを搬入、搬出するための真空化可能なロードロックチャンバ61と、ブランクス10を真空で搬送するための搬送アーム62aを備えた搬送チャンバ62と、アライメントを行うためのアライメントチャンバ63と、ブランクスに描画を行うための荷電粒子ビーム描画チャンバ64が設けられ、ロードロックチャンバ61と搬送チャンバ62の間に、排気機構65a、加熱機構65bを備えた脱着チャンバ65を接続した構造となっている。
【0061】
このような荷電粒子ビーム描画装置を用いて、先ず、ブランクス10をロードロックチャンバ61に搬入し、脱着チャンバ65に搬送する。次いで、実施形態3と同様に、真空中、或いは高純度不活性ガス雰囲気で、プリベーク処理(第2のプリベーク処理)を行う。そして、ブランクス10をアミン系化合物が実質的に全て脱着された状態で、搬送チャンバ62を介してアライメントチャンバ63、荷電粒子ビーム描画チャンバ64に搬送し、同様に荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う。
【0062】
このようにして、プリベーク処理後、ブランクスに吸着したアミン化合物を脱着させて描画に供することにより、実施形態1と同様に、フォトマスクのパターン寸法精度の低下を抑制することが可能となる。
【0063】
なお、図9に示すように、新たに脱着チャンバを設けることなく、ロードロックチャンバ71内にホットプレートなどの加熱機構74を設け、ロードロックチャンバ71に脱着チャンバの機能を持たせてもよい。
【0064】
また、本実施形態と同様に、荷電粒子ビーム描画装置において、実施形態1の保管チャンバ、実施形態2の脱着チャンバを設置した構造とすることも可能である。
【0065】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…ブランクス
11…Cr膜
12…CAR膜
13…アミン系化合物
21、34、44、65a…排気機構
22…保管チャンバ
31…保管ケース
32、42…排気ポンプ
33、43…圧力計
35、46、65…脱着チャンバ
45、65b、74…加熱機構
51、61、71…ロードロックチャンバ
52、62…搬送チャンバ
52a、62a…搬送アーム
53、63…アライメントチャンバ
54、64…荷電粒子ビーム描画チャンバ
55、57…ゲート
56…チャンバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、プリベーク処理を行った後、大気露出させることなく荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とするフォトマスクの形成方法。
【請求項2】
基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、第1のプリベーク処理を行った後、
前記化学増幅型レジスト膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着し、
前記アミン系化合物が実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とするフォトマスクの形成方法。
【請求項3】
前記描画の5時間以上前から、前記基板を、1.33×10−4Pa以下の真空雰囲気下で保持することにより、前記アミン系化合物を脱着することを特徴とする請求項2に記載のフォトマスクの形成方法。
【請求項4】
前記描画前に、前記基板に第2のプリベーク処理を施すことにより、前記アミン系化合物を脱着することを特徴とする請求項2に記載のフォトマスクの形成方法。
【請求項5】
化学増幅型レジスト膜を有する基板を搬入・搬出するためのロードロックチャンバと、
前記基板が搬入され、前記化学増幅型レジスト膜に吸着したアミン系化合物を実質的に全て脱着するための脱着チャンバと、
前記アミン系化合物が実質的に全て脱着された前記基板の搬送を真空下で行うための搬送チャンバと、
前記搬送チャンバより搬送された前記基板に荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う描画チャンバと、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項1】
基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、プリベーク処理を行った後、大気露出させることなく荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とするフォトマスクの形成方法。
【請求項2】
基板上に化学増幅型レジスト膜を形成し、第1のプリベーク処理を行った後、
前記化学増幅型レジスト膜に吸着されたアミン系化合物を実質的に全て脱着し、
前記アミン系化合物が実質的に全て脱着した状態で、荷電粒子ビームにより描画を行うことを特徴とするフォトマスクの形成方法。
【請求項3】
前記描画の5時間以上前から、前記基板を、1.33×10−4Pa以下の真空雰囲気下で保持することにより、前記アミン系化合物を脱着することを特徴とする請求項2に記載のフォトマスクの形成方法。
【請求項4】
前記描画前に、前記基板に第2のプリベーク処理を施すことにより、前記アミン系化合物を脱着することを特徴とする請求項2に記載のフォトマスクの形成方法。
【請求項5】
化学増幅型レジスト膜を有する基板を搬入・搬出するためのロードロックチャンバと、
前記基板が搬入され、前記化学増幅型レジスト膜に吸着したアミン系化合物を実質的に全て脱着するための脱着チャンバと、
前記アミン系化合物が実質的に全て脱着された前記基板の搬送を真空下で行うための搬送チャンバと、
前記搬送チャンバより搬送された前記基板に荷電粒子ビームを照射することにより描画を行う描画チャンバと、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−129698(P2011−129698A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286641(P2009−286641)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
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