説明

フォトレジスト用共重合体の製造方法

【課題】モノマー組成比の偏りの小さいフォトレジスト用共重合体の製造方法の提供。
【解決手段】本発明によるフォトレジスト用共重合体の製造方法は、少なくとも2種の繰り返し単位を含むフォトレジスト用共重合体の製造方法であって、モノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給する供給工程を有し、重合反応開始からモノマー溶液の供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の変動幅が上下15%以内である、あるいは未反応モノマーのモノマー組成比の標準偏差が2以内である、フォトレジスト用共重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工技術、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超微細フォトリソグラフィープロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられるフォトレジスト材料、フォトレジスト組成物、及びそのベースポリマーとして有用な高分子化合物の製造方法、並びにその製造方法により得られたフォトレジスト材料、フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSI等の半導体集積素子の製造に代表される微細加工の分野においては、集積回路の超高集積化の流れに伴い、サブミクロンからクォーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されている。それに伴い、露光波長もg線からi線により高い集積度を得るために、最近ではArFエキシマレーザー(波長193nm)、Fエキシマレーザ(波長157nm)等より短波長の光源を用いるとともに、液浸リソグラフィーなどの技術と組み合わせることにより50nm程度以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。このようなエキシマレーザーによるフォトリソグラフィーに適した感放射線性樹脂組成物に用いられるベースポリマーには、微細化の進展に伴い、分子量、分子量分布の制御(例えば、特許文献1を参照)、安定性、共重合組成分布の均一性、超高分子量成分や低分子量成分その他の不純物量の低減など、より高度な品質が要求されている。
【0003】
ところで、重合体の製造においては、反応様式の違いにより生成する重合体の組成に偏りが生じることがある。組成の偏った重合体ができるのは、数種類の原料モノマーの重合反応速度に差があるためである。全ての原料モノマーを反応器に投入してから反応させるバッチ式(一括式)の反応様式では、初期に反応性の高いモノマーが平均組成より多く含まれる共重合体が生成し、中盤には平均組成に近い組成の共重合体が生成し、終盤には反応性の低いモノマーが平均組成より多く含まれる共重合体が生成する。
【0004】
このような状況を改善するために、現在までに種々の研究がなされてきた。例えば、原料モノマーを連続供給する滴下重合法が知られている。滴下重合法とは、溶媒のみもしくは溶媒と原料モノマーの一部だけを反応器に仕込み、反応温度に加熱した後に、残る大部分の原料モノマーをゆっくり時間をかけて反応器に供給する反応様式である。滴下重合法においても、初期、中盤、終盤にできる共重合体に組成の偏りは発生するが、一括式と比較すると相対的に中盤に相当する時間帯が長くなるため、共重合体混合物中に占める中盤の時間帯に生成した平均組成に近い共重合体の割合が高くなるのである。その結果、初期と終盤に生成する組成の偏った共重合体の影響が小さくなり、重合体のレジスト溶媒への溶解性の向上や、ディフェクトとLERの改善効果が見られるのである。
【0005】
さらに、上記状況を改善するために、少なくとも2種類以上の単量体を含むレジスト用共重合体の製造方法において、各単量体の3連子の割合を特定量以下にすることで、共重合体のレジスト溶媒への溶解性等を改善することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
しかしながら、近年のフォトレジストパターンの微細化に伴って、より一層のディフェクトとLERを改善する必要に迫られている。そのためには、これまで以上に組成偏りの少ない共重合体が要求されている。
【0007】
特に、フォトレジストにおいて、ベースポリマーのモノマー組成比の偏りは、レジスト溶媒への溶解性の向上や、ディフェクトとLERなどに影響を及ぼすため、ベースポリマーの製造工程においては、モノマー組成比の均一性(偏りの小さいこと)が要求されている。したがって、モノマー組成比の偏りの小さいベースポリマーを提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−295894
【特許文献2】特開2003−246825
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、モノマー組成比の偏りの小さいフォトレジスト用共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、フォトレジスト用共重合体の製造方法において、重合反応系内の未反応モノマーのモノマー組成比(以下、「未反応モノマー組成比」ということがある)を一定または一定に近い状態とすることによって解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
少なくとも2種の繰り返し単位を含むフォトレジスト用共重合体の製造方法であって、
モノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給する供給工程を有し、
重合反応開始からのモノマー溶液の供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の変動幅が上下15%以内である、フォトレジスト用共重合体の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、他の態様によれば、本発明は、
少なくとも2種の繰り返し単位を含むフォトレジスト用共重合体の製造方法であって、
モノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給する供給工程を有し、
重合反応開始からモノマー溶液の供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の標準偏差が2以内である、フォトレジスト用共重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モノマー組成比の偏りの小さいフォトレジスト用共重合体の製造方法を提供することができる。このような方法によれば、フォトレジスト用共重合体のモノマー組成比の偏りを小さくすることにより、レジスト溶媒への溶解性の向上や、ディフェクトとLERを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】比較合成例1における重合反応系内の未反応モノマー組成比の時間変化を示す図である。
【図2】比較合成例2における重合反応系内の未反応モノマー組成比の時間変化を示す図である。
【図3】実施例1における重合反応系内の未反応モノマー組成比の時間変化を示す図である。
【図4】実施例2における重合反応系内の未反応モノマー組成比の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
共重合体の構造
本発明の好ましい態様によれば、共重合体は、酸によりアルカリ可溶性になる繰り返し単位(A)、極性基含有脂環基を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)、および酸安定性溶解抑制構造を有する繰り返し単位(E)からなる群から選択される少なくとも2種の繰り返し単位を含むものである。なお、共重合体は、その他の任意の繰り返し単位(F)をさらに含んでもよい。
【0017】
繰り返し単位(A)
本発明の好ましい態様によれば、酸によりアルカリ可溶性になる繰り返し単位(A)としては、アルカリ可溶性置換基を含有する繰返し単位に、酸解離性保護基が結合した化合物、アルカリ可溶性置換基を含有する繰返し単位を、酸解離性保護基で修飾した化合物などを挙げることができ、具体的には例えば、非極性の酸解離性保護基で保護されたフェノール性ヒドロキシ基、カルボキシル基、およびヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物などを挙げることができる。また、他の好ましい態様によれば、繰り返し単位(A)は、アルキルアダマンタン類、アルキル多環式炭化水素類、および1−アルキル置換(シクロアルキル)基からなる群から選択される少なくとも1種を有するものであることが好ましい。
【0018】
アルカリ可溶性置換基を含有する繰返し単位としては、例えばp−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等のヒドロキシスチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、2−トリフルオロメチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸類、p−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレン、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルアクリレート、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルトリフルオロメチルアクリレート、5−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)メチル−2−ノルボルネンなどのヒドロキシフルオロアルキル基を有する単量体などを挙げることができる。
【0019】
酸解離性保護基としては、例えば、tert−ブチル基、tert−アミル基、1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−メチル-1−シクロヘキシル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−プロピル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−メチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基、8−エチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の飽和炭化水素基;1−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、1−iso−プロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエチル基、1−メトキシメチル基、2−エトキシメチル基、1−iso−プロポキシメチル基、1−n−ブトキシメチル基、1−tert−ブトキシメチル基、1−シクロペンチルオキシメチル基、1−シクロヘキシルオキシメチル基、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシメチル基、tert−ブトキシカルボニル基等の含酸素炭化水素基などを挙げることができる。
【0020】
これらの酸解離性保護基の中でも、脂環構造を含むものは、得られたレジストポリマーのエッチング耐性が高くなり、又、酸解離性保護基の有無によるアルカリ現像液への溶解性の差が大きくなるので好ましい。脂環構造の具体的な例としては、脂環構造が、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、イソボルナン環、ノルボルナン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の、炭素数5〜20の脂環構造を挙げることができる。
【0021】
上記繰り返し単位(A)の具体的な構造としては、構造式(A1)〜(A3)で表される構造を有するアルカリ可溶性置換基のヒドロキシ基および/またはカルボキシル基を、構造式(a4)〜(a5)で表される構造を有する酸解離性保護基で保護して形成した構造が好ましい。
【0022】
構造式(A1):
【化1】

(式中、R10は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ素原子が置換しても良いアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R11は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基等のフッ素原子が置換してもよい炭素数1〜4のアルキレン基を挙げることができ、好ましくは、単結合、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基であり、特に好ましくは単結合である。iは1又は2の整数を表す。)
【0023】
構造式(A2):
【化2】

(式中、R12は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ素原子が置換しても良いアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R13はフッ素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い炭素数2〜12の2〜4価の炭化水素基を表し、具体的には、エチレン基、イソプロピレン基等の直鎖状若しくは分岐状の飽和炭化水素基と、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を有する飽和脂環炭化水素基を挙げることができ、好ましくは、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環である。R14は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を挙げることができ、好ましくは、単結合、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基である。R13がアダマンチル基、R14が単結合である組合せが特に好ましい。jは1〜3の整数を表す。)
【0024】
構造式(A3):
【化3】

(式中、R15は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R16は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数6〜12の2価の脂環炭化水素基を表し、具体的には、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を有する飽和脂環炭化水素基を挙げることができ、好ましくはノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環である。kは0又は1の整数を表す。)
【0025】
構造式(a4):
【化4】

(式中、oは式(a4)の結合部位を表す。R23及びR24はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。R25は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を挙げることができる。尚、R25はR23又はR24と結合して環、具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の炭素数5〜12の飽和脂環を形成しても良い。)
【0026】
構造式(a5):
【化5】

(式中、oは式(a5)の結合部位を表す。R26及びR27はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。R28は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を挙げることができる。尚、R26は、R27又はR28と結合して環を形成しても良く、R26がR27と結合した環の具体例として、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を、又、R26がR28と結合した環の具体例として、ヒドロフラン環、ヒドロピラン環等をそれぞれ挙げることができる。)
【0027】
繰り返し単位(B)
本発明の好ましい態様によれば、極性基含有脂環基を有する繰り返し単位(B)は、半導体基板に対する密着性を高めるためのものであり、例えば、極性基含有脂環基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、フルオロアルコール基、およびシアノ基等の極性基を含有する脂環式炭化水素基を挙げることができる。好ましくは、繰り返し単位(B)は、ヒドロキシ基により置換された有橋脂環基を有する繰り返し単位である。
【0028】
アルカリ可溶性極性置換基又は極性置換基を含有する脂環式炭化水素基を含む繰返し単位としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5]ドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等にアルカリ可溶性を付与する極性基又は極性基が結合した単量体が挙げられる。アルカリ可溶性を付与する極性基又は極性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基などが挙げられる。
【0029】
脂環式炭化水素基としては、レジスト用重合体とした際の光線透過性が高い点から、飽和脂環式炭化水素基が好ましい。飽和脂環式炭化水素基としては、単環性脂環式炭化水素基、および多環性脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0030】
単環性脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、レジスト用重合体とした際に感度、解像度に優れる点から、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0031】
多環性脂環式炭化水素基としては、例えば、架橋環式炭化水素基、スピラン系炭化水素基、環集合型炭化水素基等が挙げられる。具体例としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5]ドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられる。
【0032】
繰り返し単位(B)を与える単量体の具体的な構造としては、以下の構造が好ましい。本発明においては、下記の1種類または異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0033】
【化6】

(式中、Rは水素又はメチル基を示し、nは1から3を示す。)
【0034】
繰り返し単位(C)
本発明の好ましい態様によれば、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)は、基板や下地膜への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御するためのものである。繰り返し単位(C)を与える単量体の構造の好ましい例として、式(C1)で表される構造を挙げることができる。
【0035】
【化7】

式(C1)中、R30は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R31は式(c)で表されるラクトン構造含有基を表す。
【0036】
【化8】

式(c)中、R32〜R39のいずれか1つは、R31としての結合部位を有する単結合を表し、残りのR32〜R39は、水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基又はアルコキシ基を表すか、或いは、R32〜R39のいずれか1つは、R31としての結合部位を有し、他のR32〜R39のいずれか1つ又は2つと結合して炭素数5〜15の脂環を形成する、酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い炭素数3〜12の炭化水素基を表し、残りのR32〜R39は、いずれか1つ又は2つが前記炭素数5〜15の脂環を形成するための単結合を表し、その他のR32〜R39は、水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基又はアルコキシ基を表す。mは0又は1の整数を表す。
【0037】
脂環の具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等、好ましくは、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環を挙げることができる。炭素数1〜4の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができ、炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。
【0038】
32〜R39のいずれか1つがR31としての結合部位を有する単結合を表し、残りのR32〜R39は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表すラクトン構造の特に好ましい例として、γ−ブチロラクトン構造、δ−バレロラクトン構造を挙げることができる。R32〜R39のいずれか1つがR31としての結合部位を有し、他のR32〜R39のいずれか1つ又は2つと結合して炭素数5〜15の脂環を形成する、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数3〜14の炭化水素基を表し、残りのR32〜R39は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表すラクトン構造の特に好ましい例として、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン構造、2,6−ノルボルナンカルボラクトン構造、7−oxa−2,6−ノルボルナンカルボラクトン構造、4−oxa−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン構造を挙げることができる。
【0039】
繰り返し単位(C)を与える単量体の具体的な構造としては、以下の構造が好ましい。本発明においては、下記の1種類または異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
繰り返し単位(D)
本発明の好ましい態様によれば、環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)は、基板や下地膜への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したり、硬化剤と反応して架橋構造を形成したりする働きをするものである。繰り返し単位(D)を与える単量体の構造の好ましい例として、式(D1)で表される構造を挙げることができる。
【0047】
【化15】

式(D1)中、R40は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R41は3乃至6員環の環状エーテル構造を含む炭素数3〜7の炭化水素基を表し、具体的には、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環を有する炭化水素基であり、より具体的にはグリシジル基、オキセタニルメチル基、テトラヒドロフラニルメチル基、テトラヒドロピラニルメチル基等を挙げることができ、特に好ましくはグリシジル基である。
【0048】
繰り返し単位(D)を与える単量体の具体的な構造としては、以下の構造が好ましい。本発明においては、下記の1種類または異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0049】
【化16】

【0050】
繰り返し単位(E)
本発明の好ましい態様によれば、酸安定性溶解抑制構造を有する繰り返し単位(E)は、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性、薄膜の屈折率や光線透過率等の光学特性等を制御する働きをするためのものである。繰り返し単位(E)を与える単量体の構造の好ましい例として、構造式(A1)、(A2)、および(A3)で表される構造のヒドロキシ基の水素原子と酸安定性溶解抑制基が置換した繰り返し単位を与えることができる単量体、それぞれ単量体(E1)、単量体(E2)、および単量体(E3)を挙げることができる。
【0051】
単量体(E1)〜(E3)の酸安定性溶解抑制基としては、ヒドロキシ基の水素原子と置換して酸素原子と結合する炭素が1〜3級炭素である炭素数1〜12の炭化水素基、または1−アダマンチル基が結合した構造を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−ノルボルニル基、2−イソボルニル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、4−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を挙げることができる。
【0052】
また、もう一つの好ましい例として、式(E4)で表される単量体(E4)を挙げることができる。
【0053】
【化17】

【0054】
式(E4)中、R60は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R61は水素原子、又は、R62と結合する単結合又は炭素数1〜4の炭化水素基であり、具体的には、水素原子、単結合、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基等を挙げることができる。R62は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、具体的にはベンゼン環、ナフタレン環、およびアントラセン環等を挙げることができる。
【0055】
繰り返し単位(E)を与える単量体の具体的な構造としては、以下の構造が好ましい。本発明においては、下記の1種類または異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
【化20】

【0059】
末端構造
本発明の好ましい態様によれば、共重合体は、公知の末端構造を含む。通常、ラジカル重合開始剤から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。連鎖移動剤を用いる場合は、連鎖移動剤から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。溶媒や単量体等に連鎖移動する場合は、溶媒や単量体から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。停止反応が再結合停止の場合は両末端に重合開始末端を含むことができ、不均化停止の場合は片方に重合開始末端を、もう片方に単量体由来の末端構造を含むことができる。重合停止剤を用いる場合は、一方の末端に重合開始末端を、もう片方の末端に重合停止剤由来の末端構造を含むことができる。これらの開始反応及び停止反応は、一つの重合反応の中で複数発生する場合があり、その場合、複数の末端構造を有する共重合体の混合物となる。本発明で用いることができる重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒については後述する。
【0060】
分子量、分散度
本発明の共重合体は、重量平均分子量(以下、「Mw」と言うことがある。)が高すぎるとレジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性が低くなり、一方、低すぎるとレジストの塗膜性能が悪くなることから、Mwは1,000〜50,000の範囲内であることが好ましく、1,500〜30,000の範囲内であることがより好ましく、2,000〜20,000の範囲内であることがさらにより好ましく、3,000〜15,000の範囲内であることが特に好ましい。又、分子量分布が広すぎたり狭すぎたりするとリソグラフィー工程において所望のパターン形状が得られないことがあるため、分散度(以下、「Mw/Mn」と言うことがある)は1.0〜5.0の範囲内であることが好ましく、1.0〜3.0の範囲内であることがより好ましく、1.2〜2.5の範囲内であることがさらにより好ましく、1.4〜2.0の範囲内であることが特に好ましい。
【0061】
塗膜形成用溶媒
塗膜形成用溶媒は、リソグラフィー組成物を構成する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、塗膜形成用溶媒として公知のものの中から任意のものを1種の単独溶媒又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。溶解性に優れるため、ケトン結合、エステル結合、エーテル結合、ヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を有する溶媒が好ましい。中でも常圧での沸点が110〜220℃の溶媒は、スピンコーティングの後のベークにおいて蒸発速度が適度であり、製膜性に優れるため、特に好ましい。このような溶媒の具体例として、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン結合を有する溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル結合とヒドロキシ基を有する溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエーテル結合とエステル結合を有する溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等のエステル結合とヒドロキシ基を有する溶媒、γ−ブチロラクトン等のエステル結合を有する溶媒等を挙げることができる。特に好ましくは、PGMEAを含む溶媒である。
【0062】
共重合体溶液
リソグラフィー用共重合体溶液は、上記の共重合体および塗膜形成用溶媒を含んでなる。また、リソグラフィー組成物として使用するために必要な添加剤を含んでも良い。
【0063】
溶液中に含まれる共重合体の濃度は、基板に塗布した場合に適度な膜厚が得られるような粘度となるように適宜設定することができるが、後で当該溶液に含まれる溶媒、当該溶液に含まれない他の溶媒、他のリソグラフィー用共重合体溶液等と混合できるように、共重合体が溶解可能な範囲で比較的高めに設定することもできる。通常、溶液中の共重合体濃度は2〜60質量%、好ましくは3〜50質量%、特に好ましくは5〜35質量%の範囲内となるように調整する。
【0064】
リソグラフィー組成物として使用するために必要な添加剤を含む場合の例として、リソグラフィー組成物が化学増幅型レジスト組成物の場合は、感放射線性酸発生剤、放射線に暴露されない部分への酸の拡散を防止するための含窒素有機化合物等の酸拡散抑制剤、必要に応じてその他添加剤を含むことができる。
【0065】
上記の感放射線性酸発生剤には、これまで化学増幅型レジスト用の感放射線性酸発生剤として提案されているものから適宜選択して用いることができる。このような例として、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩、オキシムスルホネート類、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類等のジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類、イミノスルホネート類、ジスルホン類等を挙げることができ、中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。感放射線性酸発生剤は、共重合体100質量部に対して通常0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部の範囲で用いられる。
【0066】
上記の酸拡散抑制剤には、これまで化学増幅型レジスト用の酸拡散抑制剤として提案されているものから適宜選択することができる。このような例として、含窒素有機化合物を挙げることができ、第一級〜第三級のアルキルアミン若しくはヒドロキシアルキルアミンが好ましい。特に第三級アルキルアミン、第三級ヒドロキシアルキルアミンが好ましく、中でもトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。酸拡散抑制剤は、共重合体100重量部に対して通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0067】
上記のその他の添加剤としては、酸発生剤の感度劣化防止やレジストパターンの形状、引き置き安定性等の向上を目的とした有機カルボン酸類やリンのオキソ酸類、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑止剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等、レジスト用添加剤として慣用されている化合物を必要に応じて適宜添加することができる。有機カルボン酸の例としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等を挙げることができ、これらは単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。有機カルボン酸は、共重合体100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0068】
共重合体の製造方法
本発明の製造方法は、少なくとも2種の繰り返し単位を含むフォトレジスト用共重合体の製造方法であって、モノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給する供給工程を有し、重合反応開始からモノマー溶液の供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の変動幅(各モノマー組成比の変動幅の全て)が、上下15%以内、好ましくは上下10%以内、より好ましくは5%以内である、フォトレジスト用共重合体の製造方法である。好ましい態様によれば、全供給量の1/6〜1/3の質量のモノマー溶液を供給後から供給終了までの間(例えば、全供給量の1/4の質量のモノマー溶液を供給後から供給終了までの間)の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の変動幅が、上下7%以内、好ましくは上下5%以内である、なお、未反応モノマー組成比の変動幅は、中盤安定時の未反応モノマー組成比(下記で決定するモノマー組成比(I))を基準とすることができる。また、他の態様によれば、重合反応開始からモノマー溶液の供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の標準偏差(各モノマー組成比の標準偏差の全て)が2以内、好ましくは1.5以内、より好ましくは1.3以内である。未反応モノマー組成比の変動幅あるいは標準偏差が上記程度であれば、重合反応系内において安定して組成均一性の高い共重合体を生成することができる。
【0069】
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、供給工程における供給開始時のモノマー溶液のモノマー組成比および/または予め重合反応系内に仕込むモノマー溶液のモノマー組成比(以下、両者を合わせて「初期モノマー組成比」ということがある)が、以下の手順(a)〜(d):
(a)共重合体の製造目標組成比(X)と同一または同一に近いモノマー組成比(II)を有するモノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給すること、
(b)重合反応系内における未反応モノマーの組成比の時間変化を測定すること、
(c)手順(b)で測定した組成比が一定または一定に近い状態となる時のモノマー組成比を決定すること、および
(d)手順(c)で決定したモノマー組成比(I)を、前記供給工程における供給開始時のモノマー溶液のモノマー組成比および/または予め重合反応系内に仕込むモノマー溶液のモノマー組成比とすること
を含む共重合体の重合反応手順により決定されることが好ましい。このような手順により、初期モノマー組成比を決定することで、重合反応系内の未反応モノマー組成比を早期に安定させることができる。
【0070】
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、モノマー組成比(I)は、重合反応系内においてモノマーがモノマー組成比(II)で消費される組成比であることが好ましい。このように、モノマーが消費されることで、重合反応系内の未反応モノマー組成比は安定した状態となり、生成するモノマーは偏りが小さいものとなるからである。
【0071】
供給工程においては、供給するモノマー溶液のモノマー組成比を段階的または連続的に変化させることが好ましい。例えば、モノマー組成比を、モノマー組成比(I)からモノマー組成比(II)へと段階的または連続的に変化させることが好ましく、モノマー組成比(I)のモノマー溶液とモノマー組成比(II)のモノマー溶液との供給量の質量比が、1:3〜1:30であることがさらに好ましい。また、他の好ましい態様では、供給工程において、全供給量の1/30〜1/3の質量のモノマー溶液を供給した後に、モノマー組成比を段階的または連続的に変化させることが好ましい。このように、モノマー溶液の組成比および供給量を適切に調整することで、重合反応系内の未反応モノマー組成比は安定した状態となり、生成するモノマーはより偏りが小さいものとなるからである。
【0072】
なお、製造目標組成比(X)と同一または同一に近いモノマー組成比(II)とは、各モノマーの組成比の全てが、製造目標組成比(X)に対して、それぞれ、上下10%以内、好ましくは上下5%以内、より好ましくは上下4%以内の範囲内にあることをいう。例えば、上下10%以内の場合、(X)=40/40/20では、(II)=36〜44/36〜44/18〜22の範囲内にあることをいう。
【0073】
本発明の製造方法は、上記の繰り返し単位(A)〜(E)を与えることができる単量体、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤、およびその他添加剤等を用いて行うことができ、以下の工程を含むことができる。
【0074】
重合反応工程
本発明の好ましい態様によれば、酸によりアルカリ可溶性になる繰り返し単位(A)、極性基含有脂環基を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)、酸安定性溶解抑制構造を有する繰り返し単位(E)、およびその他の任意の繰り返し単位(F)からなる群から選択される少なくとも2種の繰り返し単位を与えることができる単量体の重合工程には、ラジカル重合、カチオン重合、リビングアニオン重合、開環重合など、公知の総ての重合方法を適用することができる。
【0075】
例えば、アルカリ可溶性の構造を有する単量体を重合させた後、アルカリ可溶性の構造におけるアルカリ可溶性置換基を、酸解離性保護基で保護する場合は、前記のアルカリ可溶性基を有する化合物をそのまま重合反応に用い、その後、酸触媒のもとでビニルエーテルやハロゲン化アルキルエーテルなどのアルカリに溶解しない置換基を与える化合物と反応(アセタール化反応)させることにより、酸解離性保護基を導入することができる。酸解離性のアルカリ不溶性の保護基によりアルカリ可溶性の置換基を保護することで、酸でアルカリ可溶性を発現するフォトレジストとしての性能を発揮することができる。反応に用いる酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、強酸性イオン交換樹脂等を挙げることができる。
【0076】
本発明では、重合装置として、公知の重合装置を用いることができる。工業的に量産可能な装置として、少なくとも熱媒体供給用の外套缶と、攪拌翼、凝縮器を備えた重合槽を用いることが好ましい。材質は、金属分のコンタミを避ける必要があること、熱伝導性や安全性が高いことから、金属をグラスライニングした容器が好ましい。攪拌翼は、三枚後退翼、神鋼環境ソリューション(株)製ツインスター翼等の部分翼、神鋼環境ソリューション(株)製フルゾーン翼、八光産業株製ベンドリーフ翼等の全面翼が好ましい。撹拌効率が高いことから、フルゾーン翼、ベンドリーフ翼等の全面翼が特に好ましい。
【0077】
本発明の重合は、加熱した溶媒に単量体(モノマー溶液)と重合開始剤を滴下する、いわゆる滴下法によって行うことが好ましい。加熱した溶媒に、予め単量体の一部を含ませても良い。また、単量体組成や重合開始剤濃度、連鎖移動剤濃度の異なる複数の液を滴下して、例えば、滴下時間と共に滴下する単量体の組成や、単量体、重合開始剤、及び連鎖移動剤の組成比等を変化させても良い。
【0078】
滴下法の中でも、単量体を重合開始剤と共に、必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に滴下して重合させる混合滴下法、単量体と重合開始剤をそれぞれ必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に別々に滴下して重合させるいわゆる独立滴下法が採用可能である。しかし、混合滴下法は重合反応系内に滴下する前の滴下液貯槽内において、未反応単量体の濃度が高い状態で低濃度のラジカルと接触する機会があるため、マイクロゲルの発生原因となるハイポリマーが生成し易い。一方、独立滴下法は、滴下液貯槽で重合開始剤と共存しないことから、ハイポリマーが生成しない。したがって、独立滴下法が特に好ましい。
【0079】
独立滴下法において、単量体溶液及び開始剤溶液は、重合槽の直前で予備混合することも可能であるが、滴下されるまでの間にハイポリマーが生成する可能性があるため、別々の貯槽から各々独立して滴下することが特に好ましい。単量体溶液と開始剤溶液の供給速度は、所望の分子量分布を有する共重合体が得られるように、それぞれ独立して設定することができる。二液の供給速度をどちらか一方あるいは両方とも変化させることで、狭分散から多分散まで広範な分子量分布を持つ共重合体を再現性良く得ることも可能である。例えば、反応前期の開始剤溶液の供給量を減らし、反応後期に開始剤溶液の供給量を増加させた場合、ラジカル濃度が低い反応前期に比較的分子量の高い共重合体が生成するので、多分散の共重合体を得ることができる。各供給速度は連続的もしくは段階的に変化させることができる。
【0080】
滴下法における、反応槽内に初期に張り込む重合溶媒(以下、「初期張り溶媒」と言うことがある)の量は、攪拌が可能な最低量以上であればよいが、必要以上に多いと、供給できる単量体溶液量が少なくなり、生産効率が低下するため好ましくない。通常は、最終仕込み量(即ち、初期張り溶媒と、滴下する単量体溶液及び開始剤溶液の総量)に対して、例えば容量比で1/30以上、好ましくは1/20〜1/2、特に好ましくは1/10〜1/3の範囲から選択する。なお、初期張り溶媒に単量体の一部を予め仕込んでも良い。予め仕込む単量体の組成比は、供給開示時のモノマー組成比(I)と同様であることが好ましい。予め混合する単量体量は、全供給モノマー溶液量の0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。
【0081】
滴下液中の単量体、及び重合開始剤の濃度は、生産性の面で言えば高い方が好ましい。特に重合性単量体若しくは重合開始剤が液体の場合は、溶媒に溶解することなく、そのまま供給することも可能であるが、重合性単量体若しくは重合開始剤が粘調な液体や、固体である場合は、溶媒に溶解して用いる必要がある。重合性単量体若しくは重合開始剤を溶媒に溶解して用いる場合、濃度が高すぎると溶液粘度が高くなって操作性が悪い。また、重合性単量体又は重合開始剤が固体である場合は析出したり、重合反応系内での拡散に時間がかかったりしてハイポリマーが生成しやすい場合がある。したがって、供給操作に問題のない粘度範囲で、各単量体及び重合開始剤が十分に溶解し、且つ、供給中に析出せず、重合反応系内で拡散し易い濃度を選択することが好ましい。具体的な濃度は、各溶液の溶質と溶媒の組合せ等により異なるが、通常、全単量体の合計濃度及び重合開始剤濃度が、例えば各々5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲となるように調製する。
【0082】
重合温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、又、必要以上に高温にすると、単量体及び共重合体の安定性の点で問題がある。したがって、好ましくは40〜160℃、特に好ましくは60〜120℃の範囲を選択する。
【0083】
共重合体の分子量や、共重合する場合の共重合組成を目標通りとするために、重合温度を精密に制御する必要がある。重合反応は一般的に発熱反応であり、重合反応によって、重合温度が上昇する傾向があるため、一定温度に制御することが難しい。重合温度が上昇しすぎると、重合反応が制御できなくなって暴走しまうことがある。このため、本発明では、重合溶媒として、目標とする重合温度に近い沸点を有する少なくとも1種以上の化合物を含有させ、重合温度を、重合溶媒として含まれる成分の、重合圧力における初留点以上に設定することが好ましい。この方法によれば、重合溶媒の気化潜熱によって重合温度の上昇を抑制することができる。このような化合物の具体例としては、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等を挙げることができる。単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、共重合体の溶解性と沸点から、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、アセトニトリルが好ましい。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコージメチルエーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、共重合体の溶解性が高く、高沸点の化合物を混合して用いても良い。
【0084】
重合に用いられる重合開始剤は、ラジカル重合開始剤として公知のものを用いることができる。好ましくは、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤である。アゾ化合物の具体例として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等を挙げることができる。過酸化物の具体例として、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。取り扱いの安全性から、アゾ化合物が特に好ましい。これらは単独若しくは混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、目的とするMw、原料である単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、及び溶媒の種類や組成比、並びに重合温度や滴下方法等の製造条件に応じて選択することができる。
【0085】
連鎖移動剤は、連鎖移動剤として公知のものを、必要に応じて用いることができる。中でもチオール化合物が好ましく、公知のチオール化合物の中から幅広く選択することができる。具体的には、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等を挙げることができる。連鎖移動剤の使用量は、目的とするMw、原料である単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、及び溶媒の種類や組成比、重合温度や滴下方法等の製造条件に応じて選択することができる。なお、連鎖移動剤は、単量体と混合して滴下しても良く、重合開始剤と混合して滴下しても良く、予め加熱する溶媒中に溶解して使用しても良い。
【0086】
重合反応停止工程
本発明の好ましい態様によれば、製造方法は、モノマー溶液を全量供給後に、冷却あるいは重金属の添加によって重合反応を停止させる工程を含むことができる。例えば、モノマー溶液を全量供給後、直ちに重合反応系内を急冷することが好ましい。急冷により重合反応を即座に停止させ、モノマー組成の偏りの大きい重合体の生成を防ぐことができる。あるいは、重金属の添加によって重合反応を停止させてもよいが、その後に重金属の除去処理を要することから、急冷によって重合反応を停止させることがより好ましい。
【0087】
精製工程
本発明の好ましい態様によれば、製造方法は、重合後、溶媒に再沈殿させるなどの公知の方法により、共重合体溶液を精製する工程を含むことができる。例えば、反応溶液を大量の貧溶媒(トルエン、ヘキサン、メタノール、水など)中に滴下して、生成樹脂を析出させ、残モノマーおよび低分子量体を含む貧溶媒と分離する。続いて、樹脂を貧溶媒で洗浄する操作を数回繰り返し、樹脂を精製する。このような一連の操作により、共重合体溶液から単量体や重合開始剤等の未反応物やオリゴマー等の低分子量成分を溶媒に抽出して除去することで、低分子量成分含有量の少ない、良好な特性のフォトレジストに適した樹脂を得ることができる。
【0088】
脱メタル工程
本発明の好ましい態様によれば、製造方法は、共重合体溶液をフィルターでろ過して、金属イオン等を除去する工程を含むことができる。好ましくは、上記の精製工程後に脱メタル化を行うのが良い。精製された共重合体溶液を、脱メタルフィルターを用いて、金属イオン等を除去することで、含有金属量の少ない、良好な特性のフォトレジストに適した樹脂を得ることができる。
【0089】
上記のフィルターの例としては、珪藻土等のろ過助剤、セルロース等からなるデプスフィルター、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリルなどの極性基含有樹脂、フッ化ポリエチレンなどのフッソ含有樹脂から選ばれる材質からなるメンブレインフィルター等を挙げることができる。デプスフィルターの例としてはキュノ社製ゼータプラス40QSH、ゼータプラス020GN等を挙げることができる。メンブレインフィルターの例としては、日本インテグリス製のマイクロガード、オプチマイザーD等のポリエチレン製フィルター、日本ポール製のウルチプリーツP−ナイロン66、ウルチポアN66、キュノ製のフォトシールド、エレクトロポアIIEF等のナイロン製フィルター、日本ポール製ペンフロン等のフッ化ポリエチレン製フィルター等を挙げることができる。フィルターの濾過精度は、通常1μm以下のものを使用するが、好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.05μm以下のものを使用する。これらのフィルターはそれぞれ単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0090】
モノマー組成比の決定方法
本発明の好ましい態様によれば、供給工程における供給開始時のモノマー溶液のモノマー組成比および/または予め重合反応系内に仕込むモノマー溶液のモノマー組成比を、上記の手順(a)〜(d)を含む共重合体の重合反応手順により決定することができる。
【0091】
ここでは、X、Y、およびZの3種類のモノマーを共重合して製造目標組成比a/b/c(ただしa+b+c=100%)となる共重合体を合成する場合を例に取り手順を説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。なお、本発明における組成比とは、モル比のことである。
【0092】
手順(a)
製造目標組成比a/b/cと同一の組成を有するモノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを、少量ずつ長時間(2〜6時間程度)かけて供給し、滴下重合を行う。
【0093】
手順(b)
反応の初期から一定時間ごとに反応液の一部をサンプリングして未反応モノマー組成を分析し、未反応モノマー組成比の時間変化を測定する。分析の手段は、LCやGCなどの汎用の分析手段を用いて良い。
【0094】
手順(c)
時間帯と反応液組成の関係を調べると、反応初期には未反応モノマー組成比は変動するが、その後中盤にはモノマー組成比はほぼ安定(一定または一定に近い状態)となり、モノマー溶液を全て供給し終わった後の終盤に再度未反応モノマー組成比は変動する。中盤の安定時の未反応モノマー組成比測定値(平均値)をA/B/Cとする。なお、モノマー組成比の安定(一定または一定に近い状態)とは、各モノマーそれぞれの組成(モル)のが、中盤の安定時の未反応モノマー組成比に対して、全て上下10%以内、好ましくは上下5%以内、より好ましくは上下4%以内の状態をいう。
【0095】
手順(d)
手順(c)で決定したモノマー組成比A/B/Cを初期モノマー組成比(I)とする。以上の手順を含む共重合体の重合反応手順により、初期モノマー組成比(I)を決定することができる。
【0096】
続いて、上記決定の結果に基づいて、組成偏りの小さい共重合体を合成する手順を述べる。まず、原料モノマー溶液を2種類調製する。モノマー溶液(I)はモノマーX,Y,Zを組成比A/B/Cの比率で混合した溶液とし、モノマー溶液(II)はモノマーX,Y,Zを組成比a/b/cの比率で混合した溶液とする。モノマー溶液(I)とモノマー溶液(II)の重量は、モノマー溶液(I)/モノマー溶液(II)で1/30から1/3程度が好ましい。
【0097】
反応器に、溶媒投入、反応温度に加熱、その後、モノマー溶液(I)と重合開始剤を供給して反応を開始させる。モノマー溶液(I)を供給し終わった後に、モノマー溶液(II)をゆっくり時間をかけて(2〜6時間程度が好ましい)供給する。この手順によって常に反応器内の未反モノマー組成比はA/B/Cに近い値となり、生成する共重合体の組成はa/b/cに近い値とすることができる。モノマー溶液(II)の供給が完了したら、速やかに反応を停止させる。好ましくは反応液を急速に冷却すればよい。この手順によって、従来滴下重合法の終盤の組成が偏った共重合体の生成は抑えられる。
【0098】
改良された合成法では、理論上は、反応器内の未反応モノマー組成がA/B/Cの目標値から大きくずれる可能性があるのは、モノマー溶液(I)供給開始から、モノマー溶液(II)供給に切り替えて安定するまでである。モノマー溶液(I)の供給量が多く、かつモノマー溶液(II)の供給開始が遅すぎる場合には、低反応性モノマー組成が多めに偏った共重合体の生成が懸念される。また、モノマー溶液(I)の供給量が少なすぎる場合には、従来滴下重合法でモノマー溶液(II)だけを共重合した場合と差が少なく初期には高反応性モノマー組成が多めに偏った共重合体の生成が懸念される。よってこの改良された合成方法では、反応液を時間ごとにサンプリングして未反応モノマー組成を分析し、未反応モノマー組成比率がA/B/Cから大きく変動していないことを確認するのが好ましい。未反応モノマー組成比率に変動が見られた場合には、モノマー溶液(I)とモノマー溶液(II)の供給量比率と供給速度を調節することで安定化は可能である。
【0099】
上記の供給開始時のモノマー組成比の決定は、下記の装置を用いて、下記の手順で行うことができる。反応器はパイレックス製の2L4つ口フラスコを用い、Nガスをブローして気相をN置換し、冷却器と原料投入ノズル2つを付け、撹拌はマグネットスターラーチップで行う。原料モノマー溶液の供給は送液ポンプ1台、重合開始剤溶液の供給は別の送液ポンプ1台で行う。熱源はオイルバス用い、モーターにて撹拌して油温度を均一として、油温は1度単位で制御する。サンプリングは一定時間ごとにフラスコの栓の一つを開けて行いサンプリング量は約0.05gとする。反応液の未反応モノマー量は、LCを用いて測定できる。
【0100】
本発明では、重合反応系内の未反応モノマー組成比を早期に安定させることで、生成する共重合体のモノマー組成比を製造目標組成に調整することができる。このメカニズムとしては、およそ以下のようなものではないかと推察される。もっとも、本発明が以下の説明によって限定されることがあってはならないことは言うまでもない。まず、各モノマーは各官能基の構造の違いにより重合反応の反応性に差異が生じる。そのため、目標組成比と同一の組成比のモノマー溶液を用いて重合反応を行った場合、相対的に反応性の高いモノマーは反応量が多くなり、相対的に反応性の低いモノマーは反応量が少なくなるため、生成する共重合体におけるモノマー組成比に偏りが生じることがある。出願人は、重合反応系内の未反応モノマーの組成比を一定または一定に近い状態とすることで、生成する共重合体におけるモノマー組成比の偏りが小さくなることを見出した。これは、重合反応系内の未反応モノマー組成比において、反応性の低いモノマーの量が増すことで、反応性の低いモノマーが重合に消費され易くなり、速度論的に平衡状態となるためであると考えられる。そこで、予め、特定の複数種のモノマーを重合反応に用いた場合の重合反応系内の未反応モノマー組成比を測定して、安定または安定に近い状態のモノマー組成比を決定する。決定したモノマー組成比(初期モノマー組成比)を有するモノマー溶液を初期に用いて、重合反応を行う。この手順により、早期に未反応モノマー組成を安定させることができ、その結果、生成する共重合体の組成比の偏りを早期に小さくすることができるものと考えられる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【0102】
検査方法
下記のGPC、LC、および13C−NMRの検査方法は以下のとおりである。
【0103】
GPC:共重合体のMwおよびMw/Mnの測定
GPCにより測定した。分析条件は以下の通りである。
装 置:東ソー製GPC8220
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム:昭和電工製KF−804L(×3本)
試 料:共重合体の粉体約0.02gをテトラヒドロフラン約1mlに溶解して測定用試料を調製した。GPCへの注入量は60μlとした。
【0104】
LC:反応液のモノマー組成比の測定
装 置:東ソー製GPC8220
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム:東ソー製TSKgel SuperHZ1000(×4本)
試 料:重合反応溶液約0.10gをテトラヒドロフラン約1mlに溶解して測定用試料を調製した。LCへの注入量は5μlとした。
【0105】
13C−NMR:共重合体の繰り返し単位組成の測定および反応生成物の検出
装 置:Bruker製AV400
試 料:共重合体の粉体約1gとアセチルアセトンクロム0.1gをメチルエチルケトン0.5gおよび重アセトン1.5gに溶解して調製した。
測 定:40℃、測定チューブ径10mm、積算回数10,000回
共重合体の組成は、13C−NMRスペクトルで検出可能な成分の合計を100%とする表記とした。(アクリル酸とメタクリル酸は検出できないために除かれる)
【0106】
初期モノマー組成比の決定
初期モノマー組成比を以下の手順により決定した。なお、各比較合成例において、供給モノマー組成比(モル比)は、反応性の低いモノマーを製造目標組成比よりわずかに多めに、反応性の高いモノマーを製造目標組成比よりわずかに少なめに調製した。これは、従来技術の滴下重合法にて、モノマー組成比を目標に合わせて合成する手順である。
【0107】
比較合成例1
製造目標組成比:G/M/O=40/40/20
三種のモノマーG、M、およびOを用い、供給モノマー組成比(モル比)をG/M/O=39/42/19として、以下の手順で共重合体の製造を行った。
【0108】
容器にメチルエチルケトン(MEK)590g、モノマーG(ガンマブチロラクトンメタクリレート)159g、モノマーM(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート)236g、およびモノマーO(3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート)108gを加えて溶解させ、均一なモノマー溶液を調製した。別の容器に、MEK150g、およびMAIB(2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル)28gを溶解させ、均一な重合開始剤溶液を調製した。
【0109】
パイレックス製の2L4つ口フラスコ反応器にMEK300gを仕込んで窒素雰囲気とした後、温度79℃に加熱した。室温(約25℃)に保ったモノマー溶液と開始剤溶液を、それぞれ定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて別々に79〜81℃に保った反応槽中に滴下した。滴下終了後、さらに79〜81℃に保ったまま2時間熟成させたのち、室温まで冷却して反応液を取り出した。開始後1時間までは30分ごとに、その後は60分ごとにサンプリングをして反応液をLCで分析した。未反応モノマー組成比とポリマー濃度の時間変化の測定結果を表1および図1に示す。表中の標準偏差(不偏分散の正の平方根)は、重合反応開始後から1時間おきに4時間目までの未反応モノマー組成比の標準偏差を示す。本発明においては、標準偏差は、下記式(1)で求めることができる。本発明においては、0、1、2、3、および4時間の各測定値を用いた(n=5)。重合反応開始から供給終了までの時間が変われば、nの値も変更することができる。各測定値は等間隔の時間で測定された値であることが好ましい。
[式1]
S={Σ(x−x/(n−1)}1/2 式(1)
S:標準偏差
n:測定数
:各測定値(モノマー比)、(i:1〜n)
:各測定の平均値
測定結果より、未反応モノマー組成比は、反応開始後2〜4時間で安定していることがわかる。中盤安定時の未反応モノマー組成比は、G/M/O=32/50/18であった。
【0110】
共重合体の溶液は、メタノールと水の混合溶媒に再沈殿して生成した樹脂粉をろ過して未反応モノマー等を取り除いた。さらに樹脂粉はメタノールで洗浄した。
【0111】
樹脂粉は減圧下に50度で乾燥させて乾燥樹脂粉を得た。得られた樹脂を上記の検査方法により分析した。分析結果は、以下のとおりであった。
分子量(GPC):Mw=8700、Mw/Mn=1.85
組成(13C−NMR):G/M/O=40/40/20
【0112】
さらに、モノマー溶液供給開始後、一定時間内に生成した共重合体の組成と収量を表2に示す。ここでは、反応によって消費したモノマー減少量分は全て共重合体に取り込まれたものと見て、生成共重合体の組成を計算した。供給開始初期には、製造目標組成比から大きく偏った組成の共重合体が生成していることがわかる。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
比較合成例2
製造目標組成比:G/Ma/Oa=41/39/20
三種のモノマーG、Ma、およびOaを用い、供給モノマー組成比をG/Ma/Oa=38/42/20として、以下の手順で共重合体の製造を行った。
【0116】
容器にメチルエチルケトン(MEK)561g、モノマーG(ガンマブチロラクトンメタクリレート)155g、モノマーMa(2−メチル−2−アダマンチルアクリレート)222g、およびモノマーOa(3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート)107g加えて溶解させ、均一なモノマー溶液を調製した。別の容器に、MEK150g、およびMAIB17gを溶解させ、均一な開始剤溶液を調製した。
【0117】
比較合成例1と同様に重合反応と反応液の分析を行った。未反応モノマー組成比の時間変化の測定結果を表3および図2に示す。表中の標準偏差は、重合反応開始後から1時間おきに4時間目までの未反応モノマー組成比の標準偏差を示す。未反応モノマー組成は、2〜4時間で安定していることがわかる。中盤安定時(2〜4時間)の未反応モノマー組成比は平均すると、G/Ma/Oa=20/56/24であった。
【0118】
共重合体の溶液は、n−ヘキサンに再沈殿して生成した樹脂粉をろ過して未反応モノマー等を取り除いた。さらに樹脂粉はMEK/ヘキサン混合溶媒で洗浄した。
【0119】
樹脂粉は減圧下に50度で乾燥させて乾燥樹脂粉を得た。得られた樹脂を上記の検査方法により分析した。分析結果は、以下のとおりであった。
分子量(GPC):Mw=10500、Mw/Mn=2.10
組成(13C−NMR)G/Ma/Oa=41/39/20
【0120】
さらに、モノマー溶液供給開始後、一定時間内に生成した共重合体の組成と収量を表4に示す。供給開始初期には、製造目標組成比から大きく偏った組成の共重合体が生成していることがわかる。
【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
実施例1
製造目標組成比:G/M/O=40/40/20
モノマー溶液(I) 組成比:G/M/O=32/50/18
モノマー溶液(II)組成比:G/M/O=40/40/20
比較合成例1を踏まえて、上記のように組成比を決定し、以下の手順で共重合体の製造を行った。
【0124】
容器にMEK84g、モノマーG18.4g、モノマーM39.6g、およびモノマーO14.4gを加えて溶解させ、均一なモノマー溶液(I)を調製した。また、別の容器にMEK506g、モノマーG138.0g、モノマーM190.3g、およびモノマーO96.0gを加えて溶解させ、均一なモノマー溶液(II)を調製した。さらに別の容器に、MEK150g、およびMAIB28gを溶解させ、均一な重合開始剤溶液を調製した。モノマー溶液(I)とモノマー溶液(II)のモノマー量比を1/7とし、溶液の容積も約1/7とした。
【0125】
パイレックス製の2L4つ口フラスコ反応器にMEK300gを仕込んで窒素雰囲気とした後、温度79℃に加熱した。室温(約25℃)に保ったモノマー溶液(I)と開始剤溶液を、それぞれ定量ポンプを用いて滴下開始した。開始剤溶液は4時間で供給が終わるように流速を調整した。モノマー溶液(I)は30分で供給を完了し、その後ポンプをモノマー溶液(II)に速やかに付け替えて、モノマー溶液(II)を3時間30分で供給した。この間反応器内の温度は79〜81℃に保った。開始後1時間までは30分ごとに、その後は60分ごとにサンプリングをして反応液を分析した。すべてのモノマー溶液(II)を供給終了後には、反応器をオイルバスから取り出して水浴に浸して室温まで冷却した。
【0126】
未反応モノマー組成比の時間変化の測定結果を表5および図3に示す。表中の標準偏差は、重合反応開始後から1時間おきに4時間目までの未反応モノマー組成比の標準偏差を示す。比較合成例1と比べると未反応モノマー組成比の変動幅が大幅に小さくなっていることを確認でき、初期から終盤まで全ての時間帯で未反応モノマー組成比は、G/M/O=32/50/18の初期モノマー組成比に対して変動幅が4%以内であった。
【0127】
共重合体の溶液は、メタノールと水の混合溶媒に再沈殿して生成した樹脂粉をろ過して未反応モノマー等を取り除いた。さらに樹脂粉はメタノールで洗浄した。
【0128】
樹脂粉は減圧下に50度で乾燥させて乾燥樹脂粉を得た。得られた樹脂を上記の検査方法により分析した。分析結果は、以下のとおりであった。
分子量(GPC):Mw=8800、Mw/Mn=1.85
組成(13C−NMR):G/M/O=40/40/20
【0129】
さらに、モノマー溶液供給開始後、一定時間内に生成した共重合体の組成と収量を表6に示す。比較合成例1に比べて、供給開始初期においても製造目標組成比からの偏りが小さい組成の共重合体が生成していることがわかる。
【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
実施例2
製造目標組成比:G/Ma/Oa=41/39/20
モノマー溶液(I) 組成比:G/Ma/Oa=20/56/24
モノマー溶液(II)組成比:G/Ma/Oa=41/39/20
比較合成例2を踏まえて、上記のように組成比を決定し、以下の手順で共重合体の製造を行った。
【0133】
容器にMEK53.6g、モノマーG7.3g、モノマーMa26.6g、およびモノマーOa11.5g加えて溶解させ、均一なモノマー溶液(I)を調製した。また、容器にMEK536.4g、モノマーG150.2g、モノマーMa197.5g、およびモノマーOa101.9g加えて溶解させ、均一なモノマー溶液(II)を調製した。さらに別の容器に、MEK150g、およびMAIB17gを溶解させ、均一な開始剤溶液を調製した。モノマー溶液(I)とモノマー溶液(II)のモノマー量比を1/11とし、溶液の容積も約1/11とした。
【0134】
パイレックス製の2L4つ口フラスコ反応器にMEK300gを仕込んで窒素雰囲気とした後、温度79℃に加熱した。室温(約25℃)に保ったモノマー溶液(I)と開始剤溶液を、それぞれ定量ポンプを用いて滴下開始した。開始剤溶液は4時間で供給が終わるように流速を調整した。モノマー溶液(I)は20分で供給を完了し、その後ポンプをモノマー溶液(II)に速やかに付け替えて、モノマー溶液(II)を3時間40分で供給した。この間反応器内の温度は79〜81℃に保った。開始後1時間までは30分ごとに、その後は60分ごとにサンプリングをして反応液を分析した。すべてのモノマー溶液(II)を供給終了後には、反応器をオイルバスから取り出して水浴に浸して室温まで冷却した。
【0135】
未反応モノマー組成比の時間変化の測定結果を表7および図4に示す。表中の標準偏差は、重合反応開始後から1時間おきに4時間目までの未反応モノマー組成比の標準偏差を示す。比較合成例2と比べると未反応モノマー組成比の変動幅が大幅に小さくなっていることを確認でき、初期から終盤まで全ての時間帯で未反応モノマー組成比は、G/Ma/Oa=20/56/24の初期モノマー組成比に対して変動幅が6%以内であった。
【0136】
共重合体の溶液は、n−ヘキサンに再沈殿して生成した樹脂粉をろ過して未反応モノマー等を取り除いた。さらに樹脂粉はMEK/ヘキサン混合溶媒で洗浄した。
【0137】
樹脂粉は減圧下に50度で乾燥させて乾燥樹脂粉を得た。得られた樹脂を上記の検査方法により分析した。分析結果は、以下のとおりであった。
分子量(GPC):Mw=10600、Mw/Mn=2.10
組成(13C−NMR):G/Ma/Oa=41/39/20
【0138】
さらに、モノマー溶液供給開始後、一定時間内に生成した共重合体の組成と収量を表8に示す。比較合成例2に比べて、供給開始初期においても製造目標組成比からの偏りが小さい組成の共重合体が生成していることがわかる。
【0139】
【表7】

【0140】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の繰り返し単位を含むフォトレジスト用共重合体の製造方法であって、
モノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給する供給工程を有し、
重合反応開始からモノマー溶液の供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の変動幅が上下15%以内である、フォトレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項2】
全供給量の1/6〜1/3の質量のモノマー溶液を供給後から供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の変動幅が上下7%以内である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
少なくとも2種の繰り返し単位を含むフォトレジスト用共重合体の製造方法であって、
モノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給する供給工程を有し、
重合反応開始からモノマー溶液の供給終了までの間の重合反応系内において、未反応モノマーのモノマー組成比の標準偏差が2以内である、フォトレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項4】
供給工程における供給開始時のモノマー溶液のモノマー組成比および/または予め重合反応系内に仕込むモノマー溶液のモノマー組成比が、以下の手順(a)〜(d):
(a)共重合体の製造目標組成比(X)と同一または同一に近いモノマー組成比(II)を有するモノマー溶液と、重合開始剤を含む溶液とを重合反応系内に供給すること、
(b)重合反応系内における未反応モノマーの組成比の時間変化を測定すること、
(c)手順(b)で測定した組成比が一定または一定に近い状態となる時のモノマー組成比を決定すること、および
(d)手順(c)で決定したモノマー組成比(I)を、前記供給工程における供給開始時のモノマー溶液のモノマー組成比および/または予め重合反応系内に仕込むモノマー溶液のモノマー組成比とすること
を含む共重合体の重合反応手順により決定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
モノマー組成比(I)は、重合反応系内においてモノマーがモノマー組成比(II)で消費される組成比である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記供給工程において、供給するモノマー溶液のモノマー組成比を段階的または連続的に変化させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記供給工程において、供給するモノマー溶液のモノマー組成比を、モノマー組成比(I)からモノマー組成比(II)へと段階的または連続的に変化させる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
モノマー組成比(I)のモノマー溶液とモノマー組成比(II)のモノマー溶液との供給量の質量比が、1:3〜1:30である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
全供給量の1/30〜1/3の質量のモノマー溶液を供給した後に、モノマー組成比を段階的または連続的に変化させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
モノマー溶液を全量供給した後、冷却あるいは重金属の添加によって重合反応を停止させる工程を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記共重合体が、酸によりアルカリ可溶性になる繰り返し単位(A)、極性基含有脂環基を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)、および酸安定性溶解抑制構造を有する繰り返し単位(E)からなる群から選択される少なくとも2種の繰り返し単位を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記繰り返し単位(A)が、アルキルアダマンタン類、アルキル多環式炭化水素類、および1−アルキル置換(シクロアルキル)基からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記繰り返し単位(B)が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、フルオロアルコール基、およびシアノ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する脂環式炭化水素を有する繰り返し単位である、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記繰り返し単位(E)が、ヒドロキシ基の水素原子と置換して酸素原子と結合する炭素が1〜3級炭素である炭素数1〜12の炭化水素基、または1−アダマンチル基が結合した構造を有する繰り返し単位である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
少なくとも1基以上のモノマー溶液供給装置と、少なくとも1基以上の重合開始剤含有溶液供給装置とを有する重合反応装置を用いる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−202699(P2010−202699A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46851(P2009−46851)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】