説明

フォークリフトの速度制限装置

【課題】 フォークリフトの安全性を向上させる。
【解決手段】 フォークリフトが走行する速度V(車速)を制限する速度制限装置では、フォークリフトにおけるオペレータの速度Vsip(オペレータ速度)が上限値V以下となるように、車速Vを制限する。また、フォークリフトでは、車速Vの検出位置がオペレータ速度Vsipの検出位置とは異なっている。これにより、フォークリフトの上限速度Vlimは、フォークリフトの操舵(旋回)操作に応じて可変することとなる。このため、操舵(旋回)操作時にオペレータが減速動作を行わなかったとしても、車速Vが自動的に制限(減速)されるので、オペレータに対して想像以上の加速感を与えてしまうことを抑制できる。したがって、フォークリフトの操舵(旋回)時における運転がしやすくなるので、フォークリフトの安全性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトが走行する速度を制限する速度制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトには、フォークリフトが走行する速度(車速)を検出する速度センサが設けられており、この種のフォークリフトでは、車速が所定の上限速度を超えないように、車速を制限するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このようにされたフォークリフトには、車体(フォークリフト)後方に重りをつけることによりこの車体のバランスをとるように構成された、いわゆるカウンタ式のフォークリフトがある。
【0004】
カウンタ式のフォークリフトは、一般に、運転席よりも後方に配置された2つの後輪が操舵用の車輪とされており、運転席よりも前方に配置された2つの前輪が駆動輪とされている。そして、車速センサは、トランスミッションに取り付けられており、この車速センサは、トランスミッションの出力軸(すなわち、ディファレンシャルギアの入力軸)の回転数に基づいて、車速を検出するようにされている。
【0005】
つまり、このフォークリフトでは、デフの入力軸の回転数(すなわち各前輪の回転数の平均値)に基づいて、フォークリフトの車速が検出される。このため、前輪同士を連結する車軸の中心部分における速度が、フォークリフトの車速として検出されることとなる。
【特許文献1】特開2000−204977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したフォークリフトでは、車速として検出される位置が運転席から離れた位置、詳しくは運転席よりも前方の位置にある。このため、フォークリフトが操舵される場合には、フォークリフトにおけるオペレータの速度(体感速度)と車速とが異なるので、フォークリフトの操舵角が大きくなるほど、フォークリフトにおけるオペレータの速度と車速との差が大きくなり、オペレータに対して想像以上の加速感を与えてしまう。
【0007】
そして、このことは、上限速度が低く設定されたフォークリフトに対して顕著である。つまり、上限速度が高く設定されていた場合、オペレータは、通常、フォークリフトの操舵(旋回)前に、ブレーキを踏んだりアクセルを緩めたりする等の減速動作を行うので、オペレータに対して想像以上の加速感を与えてしまうことは少ない。
【0008】
一方、上限速度が低く設定されていた場合(例えば、上限速度が「5km/h」)には、オペレータにとって車速が遅く感じるので、オペレータは、常に上限速度でフォークリフトを走行させ、フォークリフトの操舵(旋回)前であっても減速動作を行わないことがある。
【0009】
そして、このように減速操作が行われないと、上限速度を低く設定しているにもかかわらず、操舵(旋回)操作時にオペレータに対して想像以上の加速感を与えてしまい、オペレータは、操舵(旋回)操作に余裕がなくなってしまうことがある。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、フォークリフトの安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のフォークリフトの速度制限装置は、フォークリフトが走行する速度を検出する速度検出手段と、フォークリフトにおけるオペレータの速度が、予め設定された上限値以下となるように、速度検出手段による検出結果に基づいて、フォークリフトが走行する速度を制限する速度制限手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、車速の検出位置と、フォークリフトにおけるオペレータの速度の検出位置(すなわち運転席)が異なる場合には、フォークリフトの操舵(旋回)時において、フォークリフトにおけるオペレータの速度と車速とが異なるので、本発明では、オペレータによるフォークリフトの操舵(旋回)操作に応じて、速度制限装置が制限すべきフォークリフトの上限速度が可変することとなる。
【0013】
このため、操舵(旋回)操作時にオペレータが減速動作を行わなかったとしても、車速が自動的に制限(減速)されるので、オペレータに対して想像以上の加速感を与えてしまうことを抑制できる。したがって、フォークリフトの操舵(旋回)時における運転がしやすくなるので、フォークリフトの安全性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、フォークリフトの操舵角を検出する操舵角検出手段を備え、速度制限手段は、速度制限手段及び操舵角検出手段による検出結果に基づいて、フォークリフトが走行する速度を制限することを特徴とする。
【0015】
つまり、操舵角検出手段及び速度検出手段は、通常、フォークリフトに予め搭載されており、本発明では、その既存の部品(操舵角検出手段及び速度検出手段)を流用することが可能なので、簡単な構成で本発明を実現することができる。
【0016】
また、速度制限手段は、請求項3に記載のように、操舵角検出手段により検出された操舵角が所定角度よりも大きかった場合に、上記上限値の値を、その上限値よりも小さい値に変更するようにされているとよい。
【0017】
このようにされていれば、例えば上限値が大きな値に設定されていたとしても、オペレータがフォークリフトを大きく操舵した場合、すなわち操舵角が所定角度よりも大きかった場合には、上限値が小さくなるので、仮に操舵操作が困難な速度でフォークリフトが操舵し始めたとしても、適切な減速制御を行うことができ、スムーズに操舵(旋回)を行うことができる。
【0018】
つまり、例えば、上限速度で走行中のフォークリフトが所定角度以上操舵されると、フォークリフトが転倒してしまう可能性がある場合には、その角度以上操舵されると、上記上限値が小さい値に変更されるように設定されていれば、フォークリフトが転倒しないように、車速を制限することができる。
【0019】
このようにされていれば、仮に上限速度で走行中のフォークリフトが操舵されたとしても、フォークリフトが所定角度以上操舵された場合には、フォークリフトが減速されるので、フォークリフトが転倒してしまうのを防止することができる。したがって、フォークリフトの安全性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.フォークリフトの全体構成
図1は、第1実施形態のフォークリフト1の構成を説明する説明図であり、図1(a)はフォークリフト1の平面図であり、図1(b)はフォークリフト1の側面図である。また、図2は、フォークリフト1の速度制限装置30の電気的構成を説明するブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のフォークリフト1は、車体(フォークリフト1)後方に重りをつけることによりこの車体のバランスをとるように構成された、いわゆるカウンタ式のフォークリフト1であり、このフォークリフト1はエンジン3(図2参照)を動力源としている。
【0022】
フォークリフト1は、図1及び図2に示すように、オペレータが乗り込んで着座するための運転席10、フォーク12、車輪14,16,18,20、車速センサ22、ステアリングセンサ26、アクセルセンサ28、及び、本発明の特徴部分である速度制限装置30等を有して構成されている。
【0023】
フォーク12は、荷物を昇降させるためのものであり、このフォーク12は運転席10より前方側に設けられている。
車輪14,16,18,20は、運転席10よりも前方と後方とに2つずつ配置されている。そして、4つの車輪14,16,18,20のうち、運転席10よりも後方に配置された2つの車輪(後輪)18,20は操舵用の車輪である。一方、運転席10よりも前方に配置された2つの車輪(前輪)14,16は駆動輪である。
【0024】
また、本実施形態のフォークリフト1には、ディファレンシャルギア(デフ)が設けられており、このデフは、フォークリフト1が操舵(旋回)された場合に、その操舵角に応じて、前輪14,16間(外輪14(16)と内輪16(14)との間)に回転差を発生させる。これにより、操舵(旋回)動作がスムーズに行われるようになる。
【0025】
なお、本実施形態において、直進時における左右の前輪14,16の回転比は、「1:1」であり、操舵角が最大となる最大操舵時に上記回転比(内輪の回転数:外輪の回転数)がほぼ「0:2」となるように、操舵角の変化に伴い上記回転比が徐々に変化する。また、ここでいう「0」とは厳密に回転数が0となるわけではなく、内輪の回転数が限りなく0に近いことを意味している。
【0026】
車速センサ22は、車速V(フォークリフト1が走行する速度)を検出するためのものであり、この車速センサ22は、トランスミッション(図示省略)に取り付けられている。
【0027】
そして、車速センサ22は、トランスミッションの出力軸(すなわち、デフの入力軸)の回転数に基づいて、車速Vを検出するようにされている。つまり、前輪14,16同士を連結する車軸4(図4参照)の中心部分における速度が、フォークリフトの車速Vとして検出される。
【0028】
また、ステアリングセンサ26は、フォークリフト1の操舵角を検出するためのものであり、詳しくは、ステアリングの切れ角θ(ステアリング角θ)を検出する。また、アクセルセンサ28は、アクセルペダル(図示省略)の踏込量を検出するためのものである。
【0029】
本発明の特徴部分である速度制限装置30は、フォークリフト1の車速Vを制限するものであり、この速度制限装置30は、CPU,RAM,ROM等を中心に構成されたマイクロコンピュータにて構成されている。速度制限装置30には、車速センサ22、ステアリングセンサ26、及び、アクセルセンサ28からの検出信号が入力される。
【0030】
そして、速度制限装置30は、これら各センサ22,26,28からの検出信号に基づいて、フォークリフト1におけるオペレータ(運転席10)の速度Vsip(以下、「オペレータ速度Vsip」という。)が上限値V以下となるように、車速Vを制限する速度制限処理を行う。なお、本実施形態では、上限値Vとして、「5[km/h]」が設定されており、オペレータ速度Vsipは、計算により求められる。
【0031】
具体的に説明すると、本実施形態では、図3に示すように、ステアリングセンサ26からの検出信号及び上限値Vに基づいて、上限速度Vlimを算出するための係数cが予め設定されている。
【0032】
そして、速度制限装置30は、ステアリングセンサ26からの検出信号に基づいて、上限値Vに上記係数cを乗ずることで、フォークリフト1の上限速度Vlimを算出し、車速Vがこの上限速度Vlim以下となるように、車速Vを制限する。なお、図3は、フォークリフト1の上限速度Vlimと操舵角との関係を表すグラフである。
【0033】
このようにして、本実施形態では、オペレータ速度Vsip(計算値)が上限値V以下となるように、車速Vを制限するようにされている。
例えば、フォークリフト1の直進時には、ステアリング角θが「0」であるので、係数cが「1.0」となり、上限速度Vlimが5(=5×1.0)[km/h]として算出される。また、例えばステアリング角θが800[deg]の状態でフォークリフト1が操舵された場合には、係数cが「0.5」となり、上限速度Vlimが、2.5(=5×0.5)[km/h]として算出される。
【0034】
このように本実施形態では、図3に示すように、ステアリング角θが大きくなるに従い、上記係数cの値が段階的に小さくなるようにされている。
ここで、係数cは、次式(1)に基づいて予め設定されたものであり、以下、係数cの求め方について、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4及び図5は、係数cの求め方を説明する説明図である。また、以下の説明では、フォークリフト1が右操舵された場合における係数cの求め方について説明されているが、フォークリフト1が左操舵された場合についても、右操舵と同様に求めることができる。
【0035】
【数1】

まず、一方の前輪14(16)を中心にフォークリフト1が回転するときを最大操舵(旋回)時として仮定すると、デフの特性上、他方の前輪16(14)が約2倍の速度で回転し、両輪14,16の回転数の平均値がギア(トランスミッション)の回転数と等しくなるので、操舵中心からデフ位置までの距離(2L/2=L)と車速Vとが比例する。
【0036】
これにより、求めたい位置における速度と、その位置から操舵中心までの距離とが比例するので、上式(1)に示すように、車速Vとオペレータ速度Vsipの比は、車速Vが検出される位置から操舵中心までの距離Lと、運転席10から操舵中心までの距離Lsipとの比と等しくなる。
【0037】
そして、図4(a)に示すように、図4における時計回転方向及び右方向を「正方向」とし、更に、運転席10から車軸4までの長さを「I」、運転席10から左前輪14までの左右方向の長さを「L」、運転席10から左前輪14までの左右方向の長さを「L」とすると、運転席10から操舵中心までの距離Lsipは、次式(2)のように表すことができ、この式(2)を上式(1)に代入すると、上式(1)は、次式(3)のように表すことができる。
【0038】
【数2】

【0039】
【数3】

そして、図4(b)、(c)及び図5に示すように、右後輪20の切れ角を「θrr」、左後輪18の切れ角を「θrl」、キングピン5同士の間隔を「T」、車軸4,6間の長さ(ホイールベース)を「W」とすると、車速Vが検出される位置から操舵中心までの距離Lは、次式(4)のように表すことができる。
【0040】
【数4】

ところで、上式(4)において、「T」及び「W」は定数であり、「θrr」及び「θrl」は、ステアリング角θの式で表すことができる。
【0041】
すなわち、図4(b)、(c)及び図5に示すように、後方の車軸6に設けられているシリンダ7からキングピン5までの前後方向の間隔を「Xcyl」、上記シリンダ7の長さを「Cyl」、オービットロールの押しのけ容量を「q」、シリンダ7の受圧面積を「A」、シリンダ7のストロークを「Δy」とし、更に、ナックルアーム8とシリンダ7とを連結するリンク9と車軸6(詳しくは、シリンダ7のピストンロッド)とを接続するピンQと、右後輪20側のキングピン5との線分を「B」、車軸6に平行な直線であってキングピン5を通る直線を「M」、直線Mと線分Bとのなす角を「θ1r」とすると、「tanθ1r」は次式(5)のように表すことができ、「θ1r」は式(5)に基づいて次式(6)のように表すことができる。なお、「B」は次式(7)のように表すことができる。
【0042】
【数5】

【0043】
【数6】

【0044】
【数7】

また、図4(b)、(c)及び図5に示すように、線分Bと右後輪20側のナックルアーム8とのなす角を「θ2r」、ナックルアーム8の半径を「R」、リンク9の長さを「T」とすると、「cosθ2r」は次式(8)のように表すことができ、「θ2r」は式(7)及び(8)に基づいて次式(9)のように表すことができる。
【0045】
【数8】

【0046】
【数9】

これにより、ナックルアーム角を「θ」とすると、「θrr」は、上式(5)〜(9)に基づいて次式(10)のように表すことができ、「θrr」がステアリング角θの式で表される。
【0047】
【数10】

これと同様に、図4(b)、(c)及び図5に示すように、ピンQと左後輪18側のキングピン5との線分を「B」、直線Mと線分Bとのなす角を「θ1l」とすると、「tanθ1l」は次式(11)のように表すことができ、「θ1l」は次式(12)のように表すことができる。なお、「B」は次式(13)のように表すことができる。
【0048】
【数11】

【0049】
【数12】

【0050】
【数13】

そして、図4(b)、(c)及び図5に示すように、線分Bと左後輪18側のナックルアーム8とのなす角を「θ2l」とすると、「cosθ2l」は次式(14)のように表すことができ、「θ2l」は式(13)及び(14)に基づいて次式(15)のように表すことができる。
【0051】
【数14】

【0052】
【数15】

これにより、「θrl」は、上式(11)〜(15)に基づいて次式(16)のように表すことができ、「θrl」がステアリング角θの式で表される。
【0053】
【数16】

したがって、上式(4)、すなわち上式(1)は、上式(10)及び(16)から、ステアリング角θの式で表すことができる。
【0054】
以上のことから、本実施形態では、上式(1)〜(16)によって導き出されたステアリング角θの式に、適当な値を代入することにより、係数c(=V/Vsip)を設定することが可能である。
【0055】
なお、定数I、L、L、T、W、Xcyl、Cyl、q、A、R、T、θは、フォークリフト1において一定であるが、これらの値は、車両の機種によって異なることがあるのは言うまでもない。
【0056】
2.速度制限装置の作動
以下、速度制限装置30が実行する速度制限処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図6は、速度制限装置30が実行する速度制限処理を表すフローチャートであり、この速度制限処理は、フォークリフト1に電源が投入されたときに実行される。
【0057】
フォークリフト1に電源が投入されることで図6に示す速度制限処理が開始されると、まず車速センサ22からの検出信号に基づいて車速Vが検出され(S110)、続いて、ステアリングセンサ26からの検出信号に基づいて、図3に示す係数cが決定され、フォークリフト1の上限速度Vlim(=c×V)が算出される(S120)。
【0058】
そして、S120にて、フォークリフト1の上限速度Vlimが算出されると、オペレータ速度Vsipが上限値V以下であるか否かが判定される(S130)。
ここで、S130では、車速VがS120にて算出された上限速度Vlim以下であるか否かが判定され、車速Vが上限速度Vlim以下であると判定された場合には、オペレータ速度Vsipが上限値V以下であると判定され、逆に、車速Vが上限速度Vlim以下でないと判定された場合には、オペレータ速度Vsipが上限値V以下でないと判定される。
【0059】
そして、S130にて、オペレータ速度Vsipが上限値V以下であると判定された場合には(S130:YES)、処理がS110に移行される。一方、S130にて、オペレータ速度Vsipが上限値V以下でない(上限値Vを超えた)と判定された場合には(S130:NO)、処理がS140に移行される。
【0060】
S140では、エンジン3の回転数が目標回転数となるように、燃料供給量を調節する(減らす)、といった減速処理が実行され、この減速処理の実行後、処理がS110に移行される。
【0061】
3.本実施形態に係る速度制限装置の特徴
以上説明したように、本実施形態では、オペレータ速度Vsipの上限速度(オペレータ速度Vsipの上限値V)を一定にし、オペレータ速度Vsipが上限値V以下となるように、車速Vを制限するようにされている。また、本実施形態のフォークリフト1では、車速Vの検出位置(前輪14,16同士を連結する車軸4の中心部分)が、オペレータ速度Vsipの検出位置(運転席10)とは異なっている。
【0062】
これにより、フォークリフト1が操舵(旋回)されると、速度制限装置が制限すべきフォークリフト1の上限速度Vlimが減少することとなる。このため、操舵(旋回)操作時にオペレータが減速動作を行わなかったとしても、車速Vが自動的に制限(減速)されるので、オペレータに対して想像以上の加速感を与えてしまうことを抑制できる。
【0063】
したがって、フォークリフト1の操舵(旋回)時における運転がしやすくなるので、フォークリフト1の安全性を向上させることができる。
また、本実施形態では、既存の部品(車速センサ22、及びステアリングセンサ26)を流用して速度制限処理を実行しているので、簡単な構成で本発明を実現することができる。
【0064】
4.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、車速センサ22が特許請求の範囲に記載された速度検出手段に相当し、S110〜S140の処理が特許請求の範囲に記載された速度制限手段に相当し、ステアリングセンサ26が特許請求の範囲に記載された操舵角検出手段に相当する。
【0065】
(第2実施形態)
第1実施形態では、フォークリフト1の上限速度Vlimを、ステアリングセンサ26の検出結果に応じて段階的に代えていたが(図3参照)、本実施形態は、図7に示すように、車速Vの上限速度Vlimをステアリングセンサ26の検出結果に応じて連続的に代えるようにしたものである。なお、図7は、第2実施形態のフォークリフト1の上限速度Vlimと操舵角との関係を表すグラフである。
【0066】
以上のような構成の本実施形態によれば、オペレータ速度Vsipが上限値V以下となるように車速Vが制限され、車速Vの検出位置がオペレータ速度Vsipの検出位置とは異なっているので、上述した第1実施形態と同様に、フォークリフト1の操舵(旋回)時における運転がしやすくなる。したがって、フォークリフト1の安全性を向上させることができる。
【0067】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、上限値V(オペレータ速度Vsipの上限速度)を一定としていたが、本実施形態では、図8に示すように、ステアリング角θに応じて上限値Vを可変するようにしている。なお、図8は、車速V及びオペレータ速度Vsipと操舵角との関係を表すグラフであり、図8における一点鎖線で記載された曲線よりも上側の領域は、フォークリフト1が転倒する危険のある領域を表している。
【0068】
すなわち、本実施形態では、図8に示すように、ステアリングセンサ26からの検出結果が所定角度θよりも大きかった場合に、上限値Vを上限値Vよりも小さい値に変更するようにされている。
【0069】
具体的に説明すると、本実施形態では、ステアリング角θが0からθまでの間は、上限値Vが5[km/h]とされ、ステアリング角θがθよりも大きくなると、上限値Vが徐々に小さくなるようにされている。
【0070】
このような本実施形態によれば、オペレータがフォークリフト1を大きく操舵した場合、すなわちステアリング角θがθよりも大きかった場合には、上限値Vが初期値(5[km/h])よりも小さくなるので、仮に操舵操作が困難な速度でフォークリフト1が操舵し始めたとしても、適切な減速制御を行うことができ、スムーズに操舵(旋回)を行うことができる。
【0071】
つまり、図8に示すように、上限速度Vlimで走行中のフォークリフト1が所定角度θ以上操舵されると、フォークリフト1が転倒してしまう可能性があるので、本実施形態では、フォークリフト1が所定角度θ操舵されると、オペレータ速度Vsipの上限値Vを減少(上限値Vに変更)させることで、フォークリフト1が転倒しないように、車速Vを制限している。
【0072】
このため、仮に上限速度Vlimで走行中のフォークリフト1が操舵されたとしても、フォークリフト1が所定角度θ以上操舵された場合には、フォークリフト1が減速されるので、フォークリフト1が転倒してしまうのを防止することができる。したがって、フォークリフト1の安全性をより向上させることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
上記実施形態では、オペレータ速度Vsipを実測値として検出せず、車速Vに上記係数cを割った値としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、オペレータ速度Vsipを実測値として検出してもよい。この場合、運転席10に加速度センサや車速センサ等の速度を検出可能な部品を設けるとよい。
【0075】
また、上記実施形態では、フォークリフト1の動力源がエンジン3であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、動力源が電気であってもよい。
上記実施形態では、操舵角を検出する手段として、ステアリングセンサ26を用いていたが、操舵角を検出することが可能であれば何でもよく、例えば、フォークリフト1のトレール角を検出するトレール角センサを用いてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、カウンタ式のフォークリフトを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、リーチ式のフォークリフトに本発明を適用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、後輪18,20が操舵用の車輪であるものを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前輪14,16が操舵用の車輪であってもよいし、前輪14,16及び後輪18,20が操舵用の車輪であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1実施形態のフォークリフトの構成を説明する説明図である。
【図2】同実施形態の速度制限装置の電気的構成を説明するブロック図である。
【図3】同実施形態のフォークリフトの上限速度と操舵角との関係を表すグラフである。
【図4】同実施形態の係数の求め方を説明する説明図である。
【図5】同実施形態の係数の求め方を説明する説明図である。
【図6】同実施形態の速度制限装置が実行する速度制限処理を表すフローチャートである。
【図7】第2実施形態のフォークリフトの上限速度と操舵角との関係を表すグラフである。
【図8】第3実施形態の車速及びオペレータ速度と操舵角との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1…フォークリフト、3…エンジン、10…運転席、12…フォーク、14,16,18,20…車輪、22…車速センサ、26…ステアリングセンサ、28…アクセルセンサ、30…速度制限装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトが走行する速度を検出する速度検出手段と、
前記フォークリフトにおけるオペレータの速度が、予め設定された上限値以下となるように、前記速度検出手段による検出結果に基づいて、前記フォークリフトが走行する速度を制限する速度制限手段と
を備えたことを特徴とするフォークリフトの速度制限装置。
【請求項2】
前記フォークリフトの操舵角を検出する操舵角検出手段を備え、
前記速度制限手段は、前記速度制限手段及び前記操舵角検出手段による検出結果に基づいて、前記フォークリフトが走行する速度を制限すること
を特徴とする請求項1に記載のフォークリフトの速度制限装置。
【請求項3】
前記速度制限手段は、前記操舵角検出手段により検出された操舵角が所定角度よりも大きかった場合に、前記上限値の値を、前記上限値よりも小さい値に変更すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフォークリフトの速度制限装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−95354(P2010−95354A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268688(P2008−268688)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000183222)住友ナコ マテリアル ハンドリング株式会社 (39)
【Fターム(参考)】